JP2024061203A - 表面処理鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】着色された化成処理層の表面に疵が発生したとしても、疵を目立ちにくくすることが可能な、表面処理鋼板を提供する。【課題手段】鋼板の少なくとも片面に配された、Al及びZnを含有するZn系めっき層と、Zn系めっき層上に配された、片面当たりの付着量0.01~5g/m2のクロメートフリーの第1化成処理層と、片面当たりの付着量0.10~15g/m2のクロメートフリーの第2化成処理層と、が備えられ、第1化成処理層には、樹脂と、シリカ粒子と、Cu、CoまたはFeの1種または2種以上を含有する顔料と、が含有されており、第2化成処理層には、樹脂と、シリカ粒子と、が含有されており、外観をCIE1976(L*,a*,b*)色空間で評価した場合のb*が-30以上-2以下であり、JIS Z 8741:1997で規定される60度鏡面光沢Gs(60°)が50~200であり、金属外観を示す、表面処理鋼板を採用する。【選択図】なし

Description

本発明は表面処理鋼板に関する。
耐食性の良好なめっき鋼板として最も使用されるめっき鋼板にZn系めっき鋼板がある。Zn系めっき鋼板は、自動車、家電、建材分野など種々の製造業において使用されている。その中でも特に、Alを添加しためっきは耐食性が高いため近年使用量が増加している。
耐食性を向上させることを目的として開発されたZn系めっき鋼板の一例として、Zn-Al-Mg-Siめっき鋼板が知られている。このめっき鋼板は、外観が梨地模様を呈することから、外観美麗性にも優れているという特徴がある。
しかしながら、Zn-Al-Mg-Siめっき鋼板は、経時によって黒変したり、めっき層の表面に明度の不均一性が生じたり、めっき層の耐食性が十分でない場合がある。そこで、特許文献1~4に記載されているように、めっき層に化成処理層を被覆させたり、各種の塗膜を形成する場合がある。
特許文献1には、金属板と、金属板上に配置される上塗り塗膜と、を有する壁材用塗装金属板であって、金属板は、Zn-Al-Mg合金めっき鋼板であり、上塗り塗膜のCIE L*a*b*表色系におけるL*値が86.0以上であり、a*値が-4.0~2.0の範囲内であり、b*値が-3.0~4.0の範囲内である、壁材用塗装金属板が記載されている。
特許文献2には、鋼材と、この鋼材の表面上の被覆物と、を備え、被覆物が、鋼材から近い順に、めっき層と、めっき層の表面上の有機樹脂を含む塗膜とを有し、めっき層が構成元素としてAl、Zn、Si及びMgを含み、且つAl含有量が25~75質量%、Mg含有量が0.1~10質量%であり、めっき層が0.2~15体積%のSi-Mg相を含み、Si-Mg相中のMgの、めっき層中のMg全量に対する質量比率が3%以上100%以下であり、有機樹脂が、シランカップリング剤、架橋性ジルコニウム化合物、架橋性チタン化合物、エポキシ化合物、アミノ樹脂から選ばれる少なくとも1種によって架橋されている表面処理溶融めっき鋼材が記載されている。
特許文献3には、鋼板と、めっき層と、保護層と、をこの順に積層して備え、めっき層は、Al、Zn、及びMgを含有し、保護層は、樹脂及び屈折率が1.5以上である無機粒子を含有する、被覆めっき鋼板が記載されている。
特許文献4には、着色顔料を含有する樹脂塗膜が形成された着色樹脂塗装金属板であって、着色樹脂塗膜形成前の金属板の60°鏡面光沢度をGとするとき、Gが下式(1)を満足する着色樹脂塗装金属板が記載されている。
40<G<310 …(1)
そこで、特許文献5に記載されているように、化成処理層を着色させたZn系めっき鋼板が提案されている。しかし、特許文献5に記載されたZn系めっき鋼板において、化成処理層の表面に軽微な疵が発生すると、疵が生じた箇所で化成処理層が欠損してしまい、これにより、化成処理層に着色の薄い箇所が生じて、疵がより目立ちやすくなる場合があった。
特開2019-105098号公報 国際公開第2013/027827号 特開2019-155871号公報 特開平9-122578号公報 特許第7047993号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、Alを含有するZn系めっき鋼板において、着色された化成処理層の表面に疵が発生したとしても、疵を目立ちにくくすることが可能な、表面処理鋼板を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 鋼板と、
前記鋼板の少なくとも片面に配された、0.05~60質量%のAl、及びZnを含有するZn系めっき層と、
前記Zn系めっき層上に配された、片面当たりの付着量0.01~5g/mのクロメートフリーの第1化成処理層と、
前記第1化成処理層上に配された、片面当たりの付着量0.10~15g/mのクロメートフリーの第2化成処理層と、が備えられ、
前記第1化成処理層には、20質量%以上の樹脂と、1.0~20質量%の平均粒径5~200nmのシリカ粒子と、Cu、CoまたはFeの1種または2種以上を含有する顔料と、が含有されており、
前記第2化成処理層には、20質量%以上の樹脂と、1.0~20質量%の平均粒径5~200nmのシリカ粒子と、が含有されており、
前記Zn系めっき層、前記第1化成処理層および前記第2化成処理層の外観をCIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合のbが-30以上-2以下であり、JIS Z 8741:1997で規定される60度鏡面光沢G(60°)が50~200であり、金属外観を示す、表面処理鋼板。
[2] 前記Zn系めっき層に、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成され、
前記パターン部及び前記非パターン部は、それぞれ、下記の決定方法1~5のうちのいずれかによって決定される第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、
前記パターン部における前記第1領域の面積率と、前記非パターン部における前記第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上である、[1]に記載の表面処理鋼板。
[決定方法1]
前記Zn系めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、各領域の重心点を中心とする直径0.5mmの円内を測定領域Aとし、各測定領域AにおけるL値を測定する。得られたL値の中から任意の50点を選定し、得られたL値の50点平均を基準L値としたとき、L値が基準L値以上になる領域を第1領域、基準L値未満となる領域を第2領域とする。
[決定方法2]
前記Zn系めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、各領域の重心点を中心とする直径0.5mmの円内を測定領域Aとし、各測定領域AにおけるL値を測定し、L値が45以上になる領域を第1領域、L値が45未満となる領域を第2領域とする。
[決定方法3]
前記Zn系めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、算術平均高さSa2を測定する。得られた算術平均高さSa2が1μm以上になる領域を第1領域、1μm未満となる領域を第2領域とする。
[決定方法4]
前記Zn系めっき層の表面に1mm間隔または10mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域にそれぞれX線を入射させるX線回折法により、前記領域毎に、Zn相の(0002)面の回折ピーク強度I0002と、Zn相の(10-11)面の回折ピーク強度I10-11とを測定し、これらの強度比(I0002/I10-11)を配向率とする。前記配向率が3.5以上の領域を第1領域とし、前記配向率が3.5未満の領域を第2領域とする。
[決定方法5]
前記Zn系めっき層の表面に1mm間隔で仮想格子線を描き、次いで、前記仮想格子線によって区画される複数の領域毎に、各領域の重心点Gを中心とする円Sを描く。前記円Sは、前記円Sの内部に含まれる前記Zn系めっき層の表面境界線の合計長さが10mmとなるように直径Rを設定する。複数の領域の円Sの直径Rのうち最大の直径Rmaxと最小の直径Rminとの平均値を基準直径Raveとし、直径Rが基準直径Rave未満の円Sを有する領域を第1領域とし、直径Rが基準直径Rave以上の円Sを有する領域を第2領域とする。
[3] 前記第1化成処理層の片面当たりの付着量が0.01~1g/mであり、
前記第2化成処理層の片面当たりの付着量が0.10~5g/mである、[2]に記載の表面処理鋼板。
[4] 前記第2化成処理層の上から前記Zn系めっき層の外観をCIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合の、前記第1領域のbと、前記第2領域のbとの差Δbが、3以上である、[2]または[3]に記載の表面処理鋼板。
[5] 前記顔料が、銅(II)フタロシアニン、コバルト(II)フタロシアニン、硫酸銅、硫酸コバルト、硫酸鉄または酸化鉄のいずれか1種または2種以上である、[1]乃至[4]の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
[6] 前記第1化成処理層中における、前記シリカ粒子と前記顔料の混合比を、前記シリカ粒子のSi換算量[Si]と、前記顔料のCu換算量[Cu]、Co換算量[Co]またはFe換算量[Fe]とで表した場合に、[Si]/([Cu]+[Co]+[Fe])が1~200の範囲である、[1]乃至[5]の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
[7] 前記Zn系めっき層が、平均組成で、Al:4質量%以上22質量%以下、Mg:1質量%以上10質量%以下を含有し、残部がZnおよび不純物からなる、[1]乃至[6]の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
[8] 前記Zn系めっき層が、更に、平均組成で、下記A群、B群からなる群から選択される1種または2種を含有する、[1]乃至[6]の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
[A群]Si:0.0001~2質量%
[B群]Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%
[9] 前記Zn系めっき層が、更に、平均組成で、下記A群、B群からなる群から選択される1種または2種を含有する、[7]に記載の表面処理鋼板。
[A群]Si:0.0001~2質量%
[B群]Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%
本発明によれば、Alを含有するZn系めっき鋼板において、着色された化成処理層の表面に疵が発生したとしても、疵を目立ちにくくすることが可能な、表面処理鋼板を提供できる。
本発明者らが検討したところ、顔料によって着色された着色透明の化成処理層の上に、顔料を含まない無色透明の化成処理層を積層することで、最上層の化成処理層の表面に疵が発生したとしても、着色した化成処理層には疵が到達せず、これにより着色した化成処理層の部分的な欠損の発生が抑制されて、疵が目立ちにくくなることを見出した。
更に、本発明者らが検討したところ、めっき層の表面状態を制御してパターン部及び非パターン部を設けることによって、めっき層の表面に文字等の任意の形状を表した場合に、顔料を含む化成処理層と顔料を含まない化成処理層とを積層することで、任意の形状が識別しやすくなる効果が得られることを見出した。
以下、本発明の実施形態である表面処理鋼板について説明する。本実施形態の表面処理鋼板は、鋼板と、鋼板の少なくとも片面に配された、0.05~60質量%のAl、及びZnを含有するZn系めっき層と、Zn系めっき層上に配された、片面当たりの付着量0.01~5g/mのクロメートフリーの第1化成処理層と、第1化成処理層上に配された、片面当たりの付着量0.10~15g/mのクロメートフリーの第2化成処理層と、が備えられ、第1化成処理層には、20質量%以上の樹脂と、1.0~20質量%の平均粒径5~200nmのシリカ粒子と、Cu、CoまたはFeの1種または2種以上を含有する顔料と、が含有されており、第2化成処理層には、20質量%以上の樹脂と、1.0~20質量%の平均粒径5~200nmのシリカ粒子と、が含有されており、Zn系めっき層、第1化成処理層および第2化成処理層の外観をCIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合のbが-30以上-2以下であり、JIS Z 8741:1997で規定される60度鏡面光沢G(60°)が50~200であり、金属外観を示す、表面処理鋼板である。
[表面処理鋼板]
以下、本実施形態の表面処理鋼板について説明する。
Zn系めっき層の下地となる鋼板は、材質に特に制限はない。材質として、一般鋼などを特に制限はなく用いることができ、Alキルド鋼や一部の高合金鋼も適用することも可能であり、形状にも特に制限はない。鋼板に対して後述する溶融めっき法を適用することで、本実施形態に係るZn系めっき層が形成される。
[Zn系めっき層]
次に、Zn系めっき層の化学成分について説明する。
Zn系めっき層は、0.05~60質量%のAlと、Znとを含有することが好ましく、0.05~60質量%のAlを含有し、残部がZn及び不純物からなることがより好ましい。Alを0.05質量%以上含有することで、Zn系めっき層の耐食性を高めることができ、また、Alの含有量を60質量%以下とすることで、Zn系めっき層に含まれるZn量を相対的に多くして、犠牲防食性を確保することが可能になる。Zn系めっき層には、40質量%以上のZnが含まれていてもよい。
また、本実施形態のZn系めっき層は、平均組成で、Al:4~22質量%、Mg:1~10質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物からなるものであってもよい。
以下、Al:4~22質量%、Mg:1~10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物からなるZn系めっき層の成分限定理由を説明する。
Alの含有量は、4~22質量%の範囲である。Alは、耐食性を確保するために含有させるとよい。Zn系めっき層中のAlの含有量が4質量%以上であれば、耐食性を向上させる効果がより高まる。Alの含有量が22質量%以下であることで、金属外観を維持しつつも、耐食性および耐候性を向上させる効果が担保されやすくなる。
Mgの含有量は、1~10質量%の範囲である。Mgは、耐食性を向上させるために含有させるとよい。Zn系めっき層中のMgの含有量が1質量%以上であれば、耐食性を向上させる効果がより高まる。Mgの含有量が10質量%以下であることで、めっき浴でのドロス発生が抑制され、ドロスがめっきに付着することによってめっきが正常に形成されない箇所が生じることを抑制でき、耐食性の低下を抑えることができる。
Mgの含有量は0%であってもよい。すなわち、本実施形態のZn系めっき鋼板のZn系めっき層は、Zn-Al-Mg系溶融めっき層に限定されるものではなく、Zn-Al系溶融めっき層であってもよい。
また、Zn系めっき層は、更に、平均組成で、下記A群、B群からなる群から選択される1種または2種を含有してもよい。
[A群]Si:0.0001~2質量%
[B群]Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%
Siは、Zn系めっき層の密着性を向上させる場合があるので、Siを含有させてもよい。Siを0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上を含有させることで密着性を向上させる効果が発現するため、Siを0.0001質量%以上含有させることが好ましい。一方、Siを2質量%を超えて含有させてもめっき密着性を向上させる効果が飽和するため、Siの含有量は2質量%以下とする。めっき密着性の観点からは、Siの含有量を0.001~1質量%の範囲としてもよく、0.01~0.8質量%の範囲としてもよい。
また、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%、好ましくは0.001~2質量%を含有していてもよい。これらの元素を含有することで、さらに耐食性を改善することができる。
Zn系めっき層の化学成分の残部は、亜鉛(Zn)及び不純物である。不純物には、亜鉛やほかの地金中に不可避的に含まれるもの、めっき浴中で、鋼が溶解することによって含まれるものがある。
なお、Zn系めっき層の平均組成は、次のような方法で測定できる。まず、めっきを浸食しない塗膜剥離剤(例えば、三彩化工社製ネオリバーSP-751)により、第1化成処理層および第2化成処理層を除去する。第2化成処理層の上に表層塗膜が存在している場合には、表層塗膜も併せて除去する。その後、インヒビター(例えば、スギムラ化学工業社製ヒビロン)入りの塩酸でZn系めっき層を溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析に供することで求めることができる。
[化成処理層]
次に、化成処理層について説明する。本実施形態の第1化成処理層には、20質量%以上の樹脂と、1.0~20質量%の平均粒径5~200nmのシリカ粒子と、Cu、CoまたはFeの1種または2種以上を含有する顔料とが含有されている。また、第2化成処理層には、20質量%以上の樹脂と、1.0~20質量%の平均粒径5~200nmのシリカ粒子とが含有されている。本実施形態の第1化成処理層は、樹脂、シリカ粒子、顔料を含有する水性組成物を、鋼板上に形成されたZn系めっき層に塗布し、乾燥させることにより得られる皮膜である。また、第2化成処理層は、樹脂、シリカ粒子を含有する水性組成物を、鋼板上に形成された第1化成処理層に塗布し、乾燥させることにより得られる皮膜である。以下、第1化成処理層および第2化成処理層の構成成分について説明する。
[樹脂]
第1化成処理層および第2化成処理層に含まれる樹脂は、一般的な樹脂であればよく、例えば、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、水溶性樹脂であってもよく、本来水不溶性でありながらエマルジョンやサスペンジョンのように水中に微分散された状態になりうる樹脂(水分散性樹脂)であってもよい。水溶性樹脂のほか、本来水不溶性でありながらエマルジョンやサスペンジョンのように水中に微分散された状態になりうる樹脂(水分散性樹脂)を含めて樹脂と言う。特に、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂のうちのいずれか1種以上の樹脂を含むことが耐候性に優れるため好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレンとメタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸とを高温高圧下でラジカル重合したのち、アンモニアやアミン化合物、KOH、NaOH、LiOH等の金属化合物あるいは上記金属化合物を含有するアンモニアやアミン化合物等で中和し、水分散化させて得られるもの等を挙げることができる。
フッ素樹脂としては特に限定されず、例えば、フルオロオレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。共重合体の場合は、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィン以外の含フッ素単量体および/またはフッ素原子を有しない単量体との共重合体が挙げられる。
アクリル樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、アルコキシシラン(メタ)アクリレート類等の不飽和単量体を、水溶液中で重合開始剤を用いてラジカル重合することによって得られるものを挙げることができる。上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を使用することができる。
ウレタン樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1、6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ビスフェノールヒドロキシプロピルエーテル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類とヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とを反応させ、さらにジアミン等で鎖延長し、水分散化させて得られるもの等を挙げることができる。
ポリエステル樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1、6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ビスフェノールヒドロキシプロピルエーテル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類と、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水ハイミック酸等の多塩基酸とを脱水縮合させ、アンモニアやアミン化合物等で中和し、水分散化させて得られるもの等を挙げることができる。
エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂をジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン等のアミン化合物と反応させ、有機酸又は無機酸で中和して得られるものや上記エポキシ樹脂の存在下で、高酸価アクリル樹脂をラジカル重合したのち、アンモニアやアミン化合物等で中和し、水分散化させて得られるもの等を挙げることができる。
フェノール樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノール、レゾルシン、クレゾール、ビスフェノールA、パラキシリレンジメチルエーテル等の芳香族類とホルムアルデヒドとを反応触媒の存在下で付加反応させたメチロール化フェノール樹脂等のフェノール樹脂をジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン等のアミン化合物類と反応させ、有機酸又は無機酸で中和することによって得られるもの等を挙げることができる。
樹脂は、第1化成処理層および第2化成処理層中に、20質量%以上の割合で含有させる。樹脂の含有量を20質量%以上にすることで、第1化成処理層および第2化成処理層自体が脆くなることがなく、Zn系めっき層を安定して被覆することができる。なお、第1化成処理層および第2化成処理層には、樹脂、シリカ粒子及び顔料とともに、Nb化合物、リン酸化合物等の樹脂以外の成分を含有させる場合があり、樹脂の含有量は、これらの成分の残部としてよい。
[シリカ粒子]
シリカ粒子は、第1化成処理層および第2化成処理層の耐食性を向上させるために配合する。シリカ粒子としては、平均粒径が5~200nmの範囲のものが好適である。シリカ粒子は、第1化成処理層および第2化成処理層中に1.0~20質量%の割合で含有させる。シリカ粒子の含有量を1.0質量%以上にすることで、耐食性の向上効果が得られる。また、シリカ粒子の含有量を20質量%以下とすることで、第1化成処理層および第2化成処理層自体が脆くならず、Zn系めっき層を安定して被覆できる。平均粒径5nm未満のシリカ粒子は入手自体が困難であり、平均粒径5nm未満のシリカ粒子を含む第1化成処理層および第2化成処理層は、事実上、作製・製造が困難であるため、シリカ粒子の平均粒径の下限は5nm以上にする。また、シリカ粒子の平均粒径が200nmを超えると、第1化成処理層および第2化成処理層が白濁してZn系めっき層の金属外観が損なわれるおそれがある。シリカ粒子の含有量は、第1化成処理層および第2化成処理層の耐食性と強度の両方を維持するという観点から、第1化成処理層および第2化成処理層中に3.0~15質量%含有されることがより好ましい。
一般に、シリカ粒子のような無機顔料は粒径が小さいため、一次粒径よりも大きな粒径を持つ二次粒子の形態で第1化成処理層および第2化成処理層中に存在する場合がある。この二次粒子(無機顔料が凝集した粒子)の粒径を、以下「二次粒径」と記載する。本実施形態におけるシリカ粒子は、一次粒子及び二次粒子が混在していてもよく、また、一次粒子と二次粒子が混在していたとしても、いずれも平均粒径が5~200nmの範囲であればよい。シリカ粒子の平均粒径は、第1化成処理層および第2化成処理層の透過性を高く保つという観点から、5~150nmがより好ましい。
第1化成処理層および第2化成処理層中のシリカの平均粒径は、以下の方法によって測定する。まず、本発明の鋼板の圧延方向に垂直な断面を観察できるように、ミクロトーム法により第1化成処理層および第2化成処理層の薄膜試料を作製する。得られた薄膜試料の20μm×tμmの領域(板幅方向に平行な方向に20μm、板厚方向に膜厚tμmとなる領域)において、200kV電界放出型透過電子顕微鏡(FE-TEM)を用いて倍率10万倍で少なくとも5領域観察する。下記式1を用いて、観察領域における全てのシリカ粒子の円相当径を算出し、この円相当径をそれぞれのシリカ粒子の粒径とし、平均することで平均粒径を求める。
円相当径=2√(S/π) … 式1
ただし、Sはシリカ粒子の面積であり、πは円周率である。
第1化成処理層および第2化成処理層中のシリカ粒子の含有量は、以下の方法によって測定する。まず、目的のサンプルとは別に、シリカ粒子の含有量が既知の化成処理層を有する比較サンプルを複数準備し、これらの表面を蛍光X線装置によって測定し、得られたSiの検出強度とシリカ粒子の含有量の関係から検量線を引く。次に、比較サンプルと同じ条件で目的のサンプルを蛍光X線装置によって測定し、得られたSiの検出強度から上記の検量線を用いて、第1化成処理層および第2化成処理層のシリカ粒子の含有量の合計を求める。次に、目的のサンプルの表面を研磨することで第2化成処理層を除去する。第2化成処理層の除去は、サンプルの外観色の変化から判断する。第2化成処理層を除去したサンプルを蛍光X線装置によって測定し、得られたSiの検出強度から上記の検量線を用いて、第1化成処理層のシリカ粒子の含有量を求める。第2化成処理層のシリカ粒子の含有量は上述の含有量の差分から求める。
また、本発明においては、塗料に分散する前の水分散したシリカの状態での平均粒径を第1化成処理層および第2化成処理層中でも維持しているため、その値を用いてもよい。
また、第1化成処理層および第2化成処理層の耐食性を向上させるために、シリカ粒子以外に、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子等を含有させてもよい。
[顔料]
第1化成処理層には、Cu、CoまたはFeを1種または2種以上含有する顔料が含まれる。顔料は、Cu、CoまたはFeを1種含んでもよく、2種以上含んでもよい。また、第1化成処理層には、Cu、CoまたはFeの1種または2種以上を含有する1種の顔料、又は2種以上の顔料が含まれていてもよい。顔料としては、銅(II)フタロシアニン、コバルト(II)フタロシアニン、硫酸銅、硫酸コバルト、硫酸鉄または酸化鉄を挙げることができる。第1化成処理層に顔料を含有させることで、第1化成処理層が青色に着色され、めっき層表面に現れた黒変部分を目立ちにくくする。この効果を得るためには、第1化成処理層中の顔料の含有量を、0.1~10質量%の範囲にすることが好ましい。第1化成処理層中の顔料の含有量を0.1質量%以上とすることで、Zn系めっき層表面の黒変部分を目立たなくさせることができる。また、顔料の含有量を10質量%以下とすることで、Zn系めっき層の金属外観が損なわれなくなる。顔料の含有量は、金属外観の維持という観点から、0.1~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましい。なお、第2化成処理層には、顔料を含有させない。
第1化成処理層中の顔料の含有量は、以下の方法によって測定する。まず、本実施形態の表面処理鋼板の圧延方向に垂直な断面を観察できるように、ミクロトーム法により第1化成処理層の薄膜試料を作製する。得られた薄膜試料の20μm×tμmの領域(板幅方向に平行な方向に20μm、板厚方向に膜厚tμmとなる領域)において、200kV電界放出型透過電子顕微鏡(FE-TEM)を用いて倍率10万倍で少なくとも5領域観察し、エネルギー分散型X線分析装置(EDSまたはEDX)を用いて、元素マッピングを行う。元素マッピング結果から、Cu、CoまたはFeが存在する領域の面積率を求める。ここで、上記と同様の方法によって、顔料の含有量が既知の化成処理層を有する複数の比較サンプルにおける、Cu、CoまたはFeが存在する領域の面積率を求め、顔料の含有量との関係から検量線をあらかじめ準備しておく。当該検量線を用いて、目的のサンプルの顔料の含有量を求める。
顔料は、第1化成処理層を青色に着色して、Zn系めっき層の表面の黒変部分を目立ちにくくするが、第1化成処理層に顔料が含まれると、第1化成処理層の耐食性が低下する場合がある。そこで、第1化成処理層の耐食性の低下を防止するために、本実施形態の第1化成処理層では、シリカ粒子と顔料の混合比を最適化してもよい。すなわち、第1化成処理層中におけるシリカ粒子と顔料との混合比(質量比)を、シリカ粒子のSi換算量[Si](g/m)と、顔料のCu換算量[Cu](g/m)、Co換算量[Co](g/m)またはFe換算量[Fe](g/m)とで表した場合に、[Si]/[Cu]、[Si]/[Co]または[Si]/[Fe]が1~200の範囲であることが好ましい。[Si]/[Cu]、[Si]/[Co]または[Si]/[Fe]を1以上とすることで、第1化成処理層に顔料を含む場合であっても、第1化成処理層の耐食性を向上できる。また、[Si]/[Cu]、[Si]/[Co]または[Si]/[Fe]を200以下とすることで、Zn系めっき層の外観の低下を防止できる。[Si]/[Cu]、[Si]/[Co]または[Si]/[Fe]は、外観の低下防止と耐食性の両方を維持するという観点から、10~150がより好ましい。また、第1化成処理層の青色着色をより美麗にするという観点から、[Si]/([Cu]+[Co]+[Fe])が1~200の範囲であることがより好ましい。
第1化成処理層および第2化成処理層には、更に、Nb化合物、リン酸化合物のいずれか一方または両方が含まれていてもよい。Nb化合物、リン酸化合物を含有させた場合、Zn系めっき層の耐食性が向上する。
Nb化合物としては、従来公知のニオブ含有化合物を用いることができ、例えば、酸化ニオブ、ニオブ酸及びその塩、フルオロニオブ酸塩、フルオロオキソニオブ酸塩等を挙げることができる。なかでも、耐食性の向上の点から酸化ニオブを用いることが好ましい。
リン酸化合物としては、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等のリン酸類及びそれらの塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシエチリデン-1、1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類及びそれらの塩;フィチン酸等の有機リン酸類及びそれらの塩等を挙げることができる。塩類のカチオン種としては特に制限されず、例えば、Cu、Co、Fe、Mn、Sn、V、Mg、Ba、Al、Ca、Sr、Nb、Y、Ni及びZn等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
Nb化合物やリン酸化合物は、合計で、0.5~30質量%の割合で第1化成処理層および第2化成処理層にそれぞれ含有されるとよい。Nb化合物やリン酸化合物の含有量が0.5質量%以上であれば耐食性の向上効果が得られ、Nb化合物やリン酸化合物の含有量が30質量%以下であれば第1化成処理層および第2化成処理層が脆くならず、Zn系めっき層を安定して被覆できる。
第1化成処理層および第2化成処理層中のNb化合物やリン酸化合物の含有量は、以下の方法によって測定する。まず、目的のサンプルとは別に、Nb化合物やリン酸化合物の含有量が既知の化成処理層を有する比較サンプルを複数準備し、これらの表面を蛍光X線装置によって測定し、得られたNbやPの検出強度と、Nb化合物やリン酸化合物の含有量の関係から検量線を引く。次に、比較サンプルと同じ条件で目的のサンプルを蛍光X線装置によって測定し、得られたSiの検出強度から上記の検量線を用いてNb化合物やリン酸化合物の含有量を求める。
第1化成処理層および第2化成処理層には、更に、シランカップリング剤、架橋性ジルコニウム化合物及び架橋性チタン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤を含有してもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記シランカップリング剤、架橋性ジルコニウム化合物及び架橋性チタン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤を含有させた場合、Zn系めっき層と化成処理層との密着性が更に向上する。
上記シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、信越化学工業、日本ユニカー、チッソ、東芝シリコーン等から販売されている、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルエトキシシラン、N-〔2-(ビニルベンジルアミノ)エチル〕-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカブトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。上記シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記架橋性ジルコニウム化合物としては、カルボキシル基や水酸基と反応しうる官能基を複数個有するジルコニウム含有化合物であれば特に限定されないが、水又は、有機溶剤に可溶である化合物が好ましく、水溶性のジルコニウム化合物であることがより好ましい。このような化合物としては炭酸ジルコニルアンモニウムを挙げることができる。
上記架橋性チタン化合物としては、カルボキシル基や水酸基と反応しうる官能基を複数個有するチタン含有化合物であれば特に限定されないが、ジプロポキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジプロポキシ・ビス(ジエタノールアミナト)チタン、プロポキシ・トリス(ジエタノールアミナト)チタン、ジブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジブトキシ・ビス(ジエタノールアミナト)チタン、ジプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジブトキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジヒドロキシ・ビス(ラクタト)チタンモノアンモニウム塩、ジヒドロキシ・ビス(ラクタト)チタンジアンモニウム塩、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、オキソチタンビス(モノアンモニウムオキサレート)、イソプロピルトリ(N-アミドエチル・アミノエチル)チタネート等を挙げることができる。上記架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記シランカップリング剤、架橋性ジルコニウム化合物及び架橋性チタン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤は、樹脂の固形分100質量%に対して0.1~50質量%含有することが好ましい。この架橋剤の含有量が0.1質量%未満の場合、密着性の向上効果が得られない場合があり、この架橋剤の含有量が50質量%を超えると、水性組成物の安定性が低下する場合がある。
第1化成処理層および第2化成処理層には、更に、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、そのブロック体、エポキシ化合物及びカルボジイミド化合物からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤を含有してもよい。これらの架橋剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、そのブロック体、エポキシ化合物及びカルボジイミド化合物からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤を含有させた場合、架橋密度が大きくなり第1化成処理層および第2化成処理層のバリア性が向上し、耐食性が更に向上する。
上記アミノ樹脂としては特に限定されず、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、グリコールウリル樹脂等を挙げることができる。
上記ポリイソシアネート化合物としては特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等を挙げることができる。また、そのブロック化物は、上記ポリイソシアネート化合物のブロック化物である。
上記エポキシ化合物は、オキシラン環を複数個有する化合物であれば特に限定されず、例えば、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ソルビタンポリグルシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレンレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレンレングリコールジグリシジルエーテル、2、2-ビス-(4’-グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリス(2、3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
上記カルボジイミド化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成した後、更にイソシアネート基との反応性を有する官能基を持つ親水性セグメントを付加した化合物等を挙げることができる。
上記アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、そのブロック体、エポキシ化合物及びカルボジイミド化合物からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤は、樹脂の固形分100質量%に対して0.1~50質量%含有することが好ましい。この架橋剤の含有量が0.1質量%未満の場合、耐食性の向上効果が得られない場合があり、この架橋剤の含有量が50質量%を超えると、第1化成処理層および第2化成処理層が脆くなり耐食性が低下する場合がある。
第1化成処理層および第2化成処理層には、更に、バナジウム化合物、タングステン化合物及びモリブデン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記バナジウム化合物、タングステン化合物及びモリブデン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することで化成処理層の耐食性が向上する。
上記バナジウム化合物としては特に限定されず、従来公知のバナジウム含有化合物を用いることができ、例えば、バナジウム酸及びバナジウム酸アンモニウム、バナジウム酸ナトリウム等のバナジウム酸塩、リンバナジウム酸及びリンバナジウム酸アンモニウム等のリンバナジウム酸塩等を挙げることができる。
上記タングステン化合物としては特に限定されず、従来公知のタングステン含有化合物を用いることができ、例えば、タングステン酸及びタングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム等のタングステン酸塩、リンタングステン酸及びリンタングステン酸アンモニウム等のリンタングステン酸塩等を挙げることができる。
上記モリブデン化合物としては特に限定されず、従来公知のモリブデン含有化合物を用いることができ、例えば、モリブデン酸塩等を用いることができる。上記モリブデン酸塩は、その骨格、縮合度に限定はなく、例えば、オルトモリブデン酸塩、パラモリブデン酸塩、メタモリブデン酸塩等を挙げることができる。また、単塩、複塩等のすべての塩を含み、複塩としてはリン酸モリブデン酸塩等を挙げることができる。
上記バナジウム化合物、タングステン化合物及びモリブデン化合物からなる群より選択される少なくとも1種は樹脂の固形分100質量%に対して0.01~20質量%含有することが好ましい。上記バナジウム化合物、タングステン化合物及びモリブデン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の含有量が0.01質量%未満の場合、耐食性の向上効果が得られない場合があり、上記バナジウム化合物、タングステン化合物及びモリブデン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の含有量が20質量%を超えると、第1化成処理層および第2化成処理層が脆くなり耐食性が低下する場合がある。
第1化成処理層および第2化成処理層には、更に、ポリフェノール化合物を含有してもよい。
上記ポリフェノール化合物を含有することで化成処理層の耐食性や後塗装用途等に使用される場合の後塗装皮膜の密着性が向上する。
上記ポリフェノール化合物は、ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物又はその縮合物である。上記ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物としては、例えば、没食子酸、ピロガロール、カテコール等を挙げることができる。ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物の縮合物としては特に限定されず、例えば、通常タンニン酸と呼ばれる植物界に広く分布するポリフェノール化合物等を挙げることができる。タンニン酸は、広く植物界に分布する多数のフェノール性水酸基を有する複雑な構造の芳香族化合物の総称である。上記タンニン酸は、加水分解性タンニン酸でも縮合型タンニン酸でもよい。上記タンニン酸としては特に限定されず、例えば、ハマメリタンニン、カキタンニン、チャタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン、ミロバランタンニン、ジビジビタンニン、アルガロビラタンニン、バロニアタンニン、カテキンタンニン等を挙げることができる。
上記タンニン酸としては、市販のもの、例えば、「タンニン酸エキスA」、「Bタンニン酸」、「Nタンニン酸」、「工用タンニン酸」、「精製タンニン酸」、「Hiタンニン酸」、「Fタンニン酸」、「局タンニン酸」(いずれも大日本製薬株式会社製)、「タンニン酸:AL」(富士化学工業株式会社製)等を使用することもできる。上記ポリフェノール化合物は単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。
上記ポリフェノール化合物は、樹脂の固形分100質量%に対して0.1~50質量%含有することが好ましい。上記ポリフェノール化合物の含有量が0.1質量%未満の場合、耐食性の向上効果が得られない場合があり、上記ポリフェノール化合物の含有量が50質量%を超えると、水性組成物の安定性が低下する場合がある。
第1化成処理層および第2化成処理層には、更に、固形潤滑剤を含有してもよい。
上記固形潤滑剤を含有することで化成処理層の潤滑性が向上し、プレス成形時の加工性向上、金型や取り扱い等による疵入り防止、成形品やコイル輸送時の摩耗傷防止に対して効果がある。
上記固形潤滑剤としては特に制限なく、公知のフッ素系、炭化水素系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石鹸系及び無機系等の潤滑剤が挙げられる。加工性向上のための潤滑添加物の選択基準としては、添加した潤滑剤が成膜した第1化成処理層および第2化成処理層に分散して存在するよりも、特に第2化成処理層表面に存在するような物質を選択するのが、成型加工物の表面と金型の摩擦を低減させ潤滑効果を最大限発揮させる点から必要である。即ち、潤滑剤が成膜した第1化成処理層および第2化成処理層に分散して存在する場合、表面摩擦係数が高く化成処理層が破壊され易く粉状物質が剥離堆積してパウダリング現象と言われる外観不良及び加工性低下を生じる。第2化成処理層表面に存在するような物質としては、樹脂に相溶せずかつ表面エネルギーの小さいものが選ばれる。
中でもポリオレフィンワックスを使用すると表面の動摩擦係数が低下し、加工性が大きく向上し、加工後の耐食性も良好にするためより好ましい。このワックスとしては、パラフィン、マイクロクリスタリンまたはポリエチレン等の炭化水素系のワックスが上げられる。加工時には、素材の変形熱と摩擦熱によって皮膜温度が上昇するため、ワックスの融点は70~160℃がより好ましい。ワックスの融点が70℃未満では加工時に軟化溶融して固体潤滑剤としての優れた特性が発揮されない場合がある。また、ワックスの融点が160℃を超えると、硬い粒子が表面に存在することとなり摩擦特性を低下させるので高度の成形加工性は得られない場合がある。
これらのワックスの粒子径は、0.1~5μmがより好ましい。ワックスの粒子径が5μmを超えるものは固体化したワックスの分布が不均一となったり、化成処理層からの脱落が生じたりする可能性がある。また、ワックスの粒子径が0.1μm未満の場合は、加工性が不十分である場合がある。
上記固形潤滑剤は樹脂の固形分100質量%に対して0.1~30質量%含有することが好ましい。上記固形潤滑剤の含有量が0.1%未満の場合、加工性向上効果が小さく、上記固形潤滑剤の含有量が30%を超えると、耐食性が低下する場合がある。
第1化成処理層の付着量は、片面当たり0.01~5g/mである。第1化成処理層の付着量が0.01g/m以上であれば、付着量が十分となり、青色の外観を呈することができ、更にZn系めっき層の耐食性を向上できる。また、付着量が5g/m以下であれば、化成処理層に顔料が含まれていたとしても、化成処理層表面での光の反射が少なくなり、Zn系めっき層の表面の金属外観を視認できる。更に好ましい付着量は、0.05~1g/mである。
第2化成処理層の付着量は、片面当たり0.10~15g/mである。第2化成処理層の付着量が0.10g/m以上であれば、付着量が十分となり、第2化成処理層表面に疵が発生したとしても、着色された第1化成処理層に欠損を生じさせることがなく、疵を目立たなくさせることができ、更にZn系めっき層の耐食性を向上できる。なお、付着量が15g/mを超えても更なる特性の向上の効果は見込めないため、上限は15g/m以下とする。更に好ましい付着量は、0.20~2g/mである。第1化成処理層の付着量と第2化成処理層の付着量の合計は片面当たり0.2~15g/mであることが好ましい。
第1化成処理層は、樹脂、シリカ粒子、青色有機顔料、Nb化合物、リン酸化合物等の成分を含有する水性組成物を、Zn系めっき層の表面に塗布、乾燥することにより得られる。第2化成処理層は、樹脂、シリカ粒子、Nb化合物、リン酸化合物等の成分を含有する水性組成物を、第1化成処理層の表面に塗布、乾燥することにより得られる。これらの水性組成物には、造膜性を向上させ、より均一で平滑な皮膜を形成するために溶剤を用いてもよい。溶剤としては、塗料に一般的に用いられるものであれば、特に限定されず、例えば、レベリングの点から、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系の親水性溶剤等を挙げることができる。
第1化成処理層の形成に使用する水性組成物の被覆方法は、水性組成物をZn系めっき層表面に塗布して皮膜を形成するものである。被覆方法は特に限定されず、一般に使用されるロールコート、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬等を適宜採用することができる。第1化成処理層の硬化性を高めるために、あらかじめ被塗物を加熱しておくか、被覆後に被塗物を熱乾燥させることが好ましい。熱乾燥方法としては、熱風、誘導加熱、近赤外、遠赤外等のいずれの方法でもよいし、併用してもよい。被塗物の加熱温度は50~250℃、好ましくは70~220℃である。加熱温度が50℃未満では、水分の蒸発速度が遅く充分な成膜性が得られないため、耐食性が低下する場合がある。一方、加熱温度が250℃を超えると樹脂の熱分解が生じて耐食性が低下し、また黄変等により外観が悪くなる。被覆後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は1秒~5分が好ましい。また、樹脂が電子線や紫外線で硬化するものであればこれらの照射による硬化でもよいし、熱乾燥との併用であってもよい。
また、第2化成処理層の形成に使用する水性組成物の被覆方法は、第1化成処理層の場合と同様でよい。第2化成処理層の硬化性を高めるために、あらかじめ被塗物を加熱しておくか、被覆後に被塗物を熱乾燥させることならびのその条件は、第1化成処理層の場合と同様である。第2化成処理層の形成時には、互いに混じりあわないように、第1化成処理層が十分に乾燥されている必要がある。
また、Zn系めっき層の算術平均粗さRaは0.5~2.0μmであることが好ましい。Zn系めっき層の算術平均粗さRaが2.0μm以下であることにより、Zn系めっき層の金属外観を高く維持することができる。Raが2.0μmを超えるとZn系めっき層表面に当たる光が乱反射しやすくなり、金属外観が低下しやすくなる。また、Zn系めっき層の算術平均粗さRaを下限未満にしても金属外観を保つ効果が飽和するので、それぞれ下限値以上とする。Zn系めっき層の算術平均粗さRaは、3Dレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製)によって測定・計算する。20倍の標準レンズを用いて、測定間隔50μmで高さZを測定する。測定点数は100点とすることが好ましい。測定点数を100点とし、得られた高さZ100点を高さZ1~高さZ100を用いて、下記の式2より算術平均粗さRaを算出する。Zaveは高さZ100点の平均とする。
Ra=1/100×Σ[x=1→100](|高さZx-Zave|) … 式2
第1化成処理層は、他の皮膜等を介さずに、Zn系めっき層の表面に形成されることが好ましい。また、第1化成層の上には、他の着色皮膜や低透過性の皮膜等を設けずに、第2化成処理層を形成することが好ましい。
第1化成処理層および第2化成処理層があっても、Zn系めっき層表面の金属外観を反映するという観点からは、本実施形態の表面処理鋼板を多角度分光測色計によって測定した際、第2化成処理層の表面と直交する平面において、第2化成処理層の表面から60°の角度から第2化成処理層の表面へ向けて光を入射し、反射する光を化成処理層の表面から135°の角度で受光した際に得られるLをL とし、上記平面において、第2化成処理層の表面から120°の角度から化成処理層の表面へ向けて光を入射し、反射する光を化成処理層の表面から135°の角度で受光した際に得られるLをL としたとき、L /L ≧2を満たすことが好ましい。この特徴は、第1化成処理層および第2化成処理層があっても金属光沢感を有し、その結果金属外観を持つ表面処理鋼板の固有の性質であることを見出した。このような範囲にした上で、CIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合のbを後述する範囲に設定することで、黒変を目立たなくさせつつも、より美麗な金属外観を維持することができる。L /L は、3以上であることがより好ましい。
[外観]
次に、本実施形態の表面処理鋼板の外観について説明する。本実施形態の表面処理鋼板を化成処理層側から見た外観は、CIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合のbが-30以上-2以下であり、JIS Z 8741:1997で規定される60度鏡面光沢G(60°)が50~200であり、金属外観を示すものとなる。以下、b及び60度鏡面光沢G(60°)の限定理由を説明する。
CIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合のbが-30未満になると、表面処理鋼板表面の青色が濃くなり、Zn系めっき層の金属外観が視認されなくなる。また、bが-2を超えると、青色が薄くなってしまい、外観が悪化する。従ってbは-30以上-2以下の範囲とする。bの下限値は、金属外観の維持の観点から、-22が好ましく、-15がより好ましい。bの上限値は、外観低下防止の観点から、-3.5が好ましく、-5がより好ましい。
また、本実施形態の表面処理鋼板を化成処理層側から見た外観としては、CIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合のLが85以下であってもよい。Lが85以下であることで、金属外観がより美麗に視認できる効果がある。Lは、80以下でもよく、75以下でもよい。
また、60度鏡面光沢G(60°)が50未満になると、表面処理鋼板の外観が白色に近づき、Zn系めっき層の金属外観が視認されなくなる。また、60度鏡面光沢G(60°)が200を超えると、第2化成処理層または第1化成処理層の表面での反射が強くなり、Zn系めっき層の金属外観が視認できにくくなる。ここで、本発明における外観とは、表面処理鋼板を、鋼板の少なくとも片面に配されたZn系めっき層側から見たときの外観を意味する。
また、本実施形態に係るZn系めっき層の表面には、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成されていてもよい。
パターン部は、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることが好ましい。また、非パターン部は、パターン部以外の領域である。また、パターン部の形状は、ドット抜けのように一部が欠けていても、全体として認識できれば許容される。また、非パターン部は、パターン部の境界を縁取るような形状であってもよい。
Zn系めっき層表面に、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状が配置されている場合に、これらの領域をパターン部とし、それ以外の領域を非パターン部とすることができる。パターン部と非パターン部の境界は、肉眼で把握することができる。パターン部と非パターン部の境界は、光学顕微鏡や拡大鏡などによる拡大像から把握してもよい。
パターン部は、肉眼、拡大鏡下または顕微鏡下でパターン部の存在を判別可能な程度の大きさに形成されるとよい。また、非パターン部は、Zn系めっき層(Zn系めっき層の表面)の大部分を占める領域であり、非パターン部内にパターン部が配置される場合がある。
パターン部は、非パターン部内において所定の形状に配置されている。具体的には、パターン部は、非パターン部内おいて、直線部、曲線部、図形、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されている。パターン部の形状を調整することによって、Zn系めっき層の表面に、直線部、曲線部、図形、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状が現される。例えば、Zn系めっき層の表面には、パターン部からなる文字列、数字列、記号、マーク、線図、デザイン画あるいはこれらの組合せ等が現される。この形状は、後述する製造方法によって意図的若しくは人工的に形成された形状であり、自然に形成されたものではない。
このように、パターン部及び非パターン部は、Zn系めっき層の表面に形成された領域であり、また、パターン部及び非パターン部には、それぞれ、第1領域、第2領域のうちの1種または2種が含まれる。
パターン部及び非パターン部は、それぞれ、下記の決定方法1~5のうちのいずれかによって決定される第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上である。パターン部における第1領域の面積率と非パターン部における第1領域の面積割合との差が、絶対値で30%以上の場合に、パターン部と非パターン部とを識別できるようになる。この面積割合の差が30%未満では、パターン部における第1領域の面積割合と、非パターン部における第1領域の面積割合との差が小さく、パターン部及び非パターン部の外観が似たような外観になり、パターン部を識別することが困難になる。面積割合の差は、大きければ大きいほどよく、この面積割合の差が40%以上であることがより好ましく、この面積割合の差が60%以上であることが更に好ましい。
すなわち、パターン部においては、第1領域及び第2領域のそれぞれの面積割合を求めることができる。そして、第1領域の面積分率が70%を超える場合は、第1領域の面積分率が70%以下である場合に対しパターン部が相対的に白色もしくは白色に近い色に見える。第1領域の面積分率が30%以上70%以下である場合は、パターン部が相対的に梨地状に見える。また、第1領域の面積分率が30%未満である場合、パターン部は相対的に金属光沢があるように見える。このように、パターン部の外観は、第1領域の面積分率に依存する。
一方、非パターン部においても、第1領域及び第2領域のそれぞれの面積割合を求めることができる。パターン部と同様、非パターン部の外観は、第1領域の面積分率に依存する。
そして、パターン部における第1領域の面積割合と、非パターン部における第1領域の面積割合との差が、絶対値で30%以上の場合に、パターン部と非パターン部とを識別できるようになる。この面積割合の差が30%未満では、パターン部における第1領域の面積割合と、非パターン部における第1領域の面積割合との差が小さく、パターン部及び非パターン部の外観が似たような外観になり、パターン部を識別することが困難になる。面積割合の差は、大きければ大きいほどよく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
[決定方法1]
決定方法1では、Zn系めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、各領域の重心点を中心とする直径0.5mmの円内を測定領域Aとし、各測定領域AにおけるL値を測定する。得られたL値の中から任意の50点を選定し、得られたL値の50点平均を基準L値としたとき、L値が基準L値以上になる領域を第1領域、基準L値未満となる領域を第2領域とする。
[決定方法2]
決定方法2では、Zn系めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、各領域の重心点を中心とする直径0.5mmの円内を測定領域Aとし、各測定領域AにおけるL値を測定し、L値が45以上になる領域を第1領域、L値が45未満となる領域を第2領域とする。
[決定方法3]
決定方法3では、Zn系めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、算術平均高さSa2を測定する。得られた算術平均高さSa2が1μm以上になる領域を第1領域、1μm未満となる領域を第2領域とする。算術平均高さSa2の測定は、3Dレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製)を用いて行う。本実施形態では、20倍の標準レンズを用いて、仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、測定間隔50μmで領域内の高さZを測定する。格子上に測定した場合は領域内には100点の測定点が得られる。得られた高さZ100点を高さZ1~高さZ100を用いて、下記の式3により算術平均高さSa2を算出する。Zaveは高さZ100点の平均とする。
Sa2=1/100×Σ[x=1→100](|高さZx-Zave|) … 式3
[決定方法4]
決定方法4では、Zn系めっき層の表面に1mm間隔または10mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域にそれぞれX線を入射させるX線回折法により、前記領域毎に、Zn相の(0002)面の回折ピーク強度I0002と、Zn相の(10-11)面の回折ピーク強度I10-11とを測定し、これらの強度比(I0002/I10-11)を配向率とする。配向率が3.5以上の領域を第1領域とし、配向率が3.5未満の領域を第2領域とする。
[決定方法5]
決定方法5では、Zn系めっき層の表面に1mm間隔で仮想格子線を描き、次いで、仮想格子線によって区画される複数の領域毎に、各領域の重心点Gを中心とする円Sを描く。円Sは、円Sの内部に含まれるZn系めっき層の表面境界線の合計長さが10mmとなるように直径Rを設定する。複数の領域の円Sの直径Rのうち最大の直径Rmaxと最小の直径Rminとの平均値を基準直径Raveとし、直径Rが基準直径Rave未満の円Sを有する領域を第1領域とし、直径Rが基準直径Rave以上の円Sを有する領域を第2領域とする。
決定方法1または2によって第1領域と第2領域が特定されるパターン部及び非パターン部の形成は、Zn系めっき層の形成後に行う。パターン部及び非パターン部の形成は、60~200℃のZn系めっき層の表面に酸性溶液を付着させることによって行う。より具体的には、酸性溶液を用意し、これを印刷手段によってZn系めっき層の表面に付着させるとよい。印刷手段としては、各種の版を用いた印刷法(グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、シルク印刷等)、インクジェット法など、一般的な印刷法を適用できる。
酸性溶液が付着した箇所では、Zn系めっき層のごく表面が溶解して、Zn系めっき層の表面が、めっきままの状態から変化する。これにより、酸性溶液が付着しなかった箇所との比較で、酸性溶液が付着した箇所の外観が変化する。このようにして、パターン部における第一領域の面積率と、非パターン部における第一領域の面積率との差が大きくなり、パターン部と非パターン部とを識別できるようになると推測される。
酸性溶液の付着範囲は、パターン部に対応する領域としてもよく、非パターン部に対応する領域としてもよい。
酸性溶液としては、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸を用いることが好ましい。また、酸性溶液における酸の濃度は、0.1~10質量%であることが望ましい。酸性溶液の付着時の鋼板温度は60~200℃、望ましくは50~80℃がよい。酸性溶液の種類や濃度を調整することで、酸性溶液を付着させた箇所おいて、Zn系めっき層表面における第1領域、第2領域の面積分率を調整することができるようになる。
酸性溶液を付着させる際のZn系めっき層の表面温度が60℃未満では、パターン部または非パターン部の形成に時間を要するため好ましくなく、Zn系めっき層の表面温度が200℃を超えると、酸性溶液がすぐに揮発してしまい、パターン部または非パターン部を形成できなくなるため好ましくない。
酸性溶液の付着後は、1~10秒以内に水洗を行う必要がある。
次に、決定方法3によって第1領域と第2領域が特定されるパターン部及び非パターン部の形成は、Zn系めっき層の形成後に行う。パターン部及び非パターン部の形成は、部分的に表面粗度を大きくしたロールを、Zn系めっき層の表面に押し付け、ロールの表面形状をZn系めっき層に転写することによって行う。例えば、Zn系めっき層の表面にパターン部を形成するために、ロール表面のうち、パターン部に対応する箇所の粗度を、他の箇所に対して大きくすることで、表面粗さが大きな第1領域を多く含むパターン部を形成可能となる。また、逆に、パターン部に対応する箇所の粗度を、他の箇所に対して小さくしたロールを用いてもよい。ロール表面の粗度(算術平均高さSa2(μm))は、粗度を高くする箇所における粗度の範囲を0.6~3.0μmとし、好ましくは1.2~3.0μmとする。粗度を低くする箇所における粗度の範囲は、0.05~1.0μm、好ましくは0.05~0.8μmとするとよい。Zn系めっき層の表面温度が100~300℃の範囲で転写を行うとよい。また、粗度を高くする箇所における粗度と、粗度を低くする箇所における粗度の差は、算術平均高さSa2で0.2μm超、好ましくは0.3μm以上とする。粗度の差が小さくなると、パターン部及び非パターン部が判別しにくくなる。
決定方法4によって特定されるパターン部及び非パターン部の形成は、溶融めっき浴から引き上げた直後の鋼板に対して、非酸化性ガスを溶融状態の金属にガスノズルによって局所的に吹き付けることにより行う。非酸化性ガスとしては、窒素やアルゴンを用いるとよい。組成によって最適な温度域は異なるが、溶融金属の温度が(最終凝固温度-5)℃~(最終凝固温度+5)℃の範囲にあるときに、非酸化性ガスの吹き付けを行うとよい。更に、非酸化性ガスの温度は、最終凝固温度未満とする。
Zn系めっき層が上記の温度範囲にあるときに非酸化性ガスが吹き付けられた箇所では、溶融金属の冷却速度が増加し、これにより、凝固後のZn系めっき層の配向率が高くなる。一方、非酸化性ガスが吹き付けられなかった箇所では、溶融金属の冷却速度が低下し、これにより、凝固後のZn系めっき層の配向率が低くなる。従って、非酸化性ガスの吹き付け範囲を調整することによって、配向率が高い領域、配向率の低い領域のそれぞれの出現箇所を意図的あるいは任意に調整できるようになる。
これにより、パターン部及び非パターン部の形状を任意に調整でき、かつ、パターン部及び非パターン部を識別できるようになる。吹き付けるガスの温度が低いほど配向率が高まるため、吹き付けるガスの温度によって配向率を調整可能である。ガス温度は、最終凝固温度未満とすることが好ましく、例えば、ガス温度を25~250℃に調整してもよい。
決定方法5によって特定されるパターン部及び非パターン部の形成は、溶融めっき浴から引き上げた直後の鋼板に対して、めっきの最終凝固温度以上の非酸化性ガスを溶融状態の金属にガスノズルによって局所的に吹き付けることにより行う。非酸化性ガスとしては、窒素やアルゴンを用いるとよい。組成によって最適な温度域は異なるが、溶融金属の温度が(最終凝固温度-5)℃~(最終凝固温度+5)℃の範囲にあるときに、非酸化性ガスの吹き付けを行うとよい。更に、非酸化性ガスの温度は、最終凝固温度以上とすることが好ましい。例えば、Al:11%、Mg:3%のめっき組成においては、溶融金属の温度が330~340℃のときにガス温度が最終凝固温度以上である非酸化性ガスの吹き付けを行うとよい。
非酸化性ガスが吹き付けられた周辺では、溶融金属の冷却速度が低下し、これにより、表面に現れる境界または結晶粒界が粗大になる。従って、非酸化性ガスの吹き付け量と範囲を調整することによって、表面に現れる境界または結晶粒界の大きさを任意に調整できるようになる。
パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差の絶対値を30%以上とすることで、パターン部と非パターン部とを識別できるようになる。形成されたパターン部及び非パターン部は、印刷や塗装によって形成されたものではないため、耐久性が高くなっている。また、パターン部及び非パターン部が印刷や塗装によって形成されたものではないため、Zn系めっき層の耐食性への影響もない。よって、本実施形態の表面処理鋼板は、耐食性に優れたものとなる。
パターン部が形成されたZn系めっき層においては、パターン部の耐久性が高く、耐食性等の好適なめっき特性を有する表面処理鋼板を提供できる。パターン部は、意図的若しくは人工的な形状にすることができるので、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるようにパターン部を配置できる。これにより、Zn系めっき層の表面に、印刷や塗装を行うことなく、様々な意匠、商標、その他の識別マークを表すことができ、鋼板の出所の識別性やデザイン性等を高めることができる。また、パターン部によって、工程管理や在庫管理などに必要な情報や需要者が求める任意の情報を、溶融めっき鋼板に付与することもできる。これにより、表面処理鋼板の生産性の向上にも寄与することができる。
Zn系めっき層にパターン部及び非パターン部を設ける場合、第1化成処理層および第2化成処理層の付着量は次の通りとすることが好ましい。
すなわち、第1化成処理層の片面当たりの付着量を0.01~5g/mの範囲、好ましくは0.01~1g/mの範囲とし、第2化成処理層の片面当たりの付着量を0.10~15g/mの範囲、好ましくは0.10~5g/mの範囲とする。
パターン部および非パターン部を設けたZn系めっき層においては、パターン部における表面状態と、非パターン部における表面状態とが異なっている。このような表面状態に由来する視覚上の違いは、比較的薄い着色層がZn系めっき層の表面に形成された場合に、より際立つものとなる。従って、第1化成処理層の付着量は、5g/m以下とする。一方、第1化成処理層の付着量が少なすぎると、青色の外観を呈することができずにパターン部の視認性が低下する場合があり、また、Zn系めっき層の耐食性が低下する場合があるので、付着量を0.01g/m以上とする。第1化成処理層の片面当たりの付着量は0.01~1g/mの範囲としてもよく、0.1~1g/mの範囲としてもよい。
第2化成処理層の付着量が0.10g/m以上であれば、付着量が十分となり、第2化成処理層表面に疵が発生したとしても、着色された第1化成処理層に欠損を生じさせることがなく、疵を目立たなくさせることができ、更にZn系めっき層の耐食性を向上できる。なお、付着量が15g/m以下を超えても更なる特性の向上の効果は見込めないため、上限は15g/m以下とする。第2化成処理層の片面当たりの付着量は0.10~5g/mの範囲としてもよく、0.20~2g/mの範囲としてもよい。
このように、本実施形態の表面処理鋼板によれば、パターン部を形成したZn系めっき層の上に、顔料を含有する第1化成処理層を形成し、第1化成処理層の上に第2化成処理層を形成するので、パターン部の視認性をより向上させるとともに、疵を目立ちにくくさせることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
まず、厚さ1mmの冷延鋼板を準備し、これを各組成のめっき浴に浸漬し、Nワイピングでめっき付着量を片面80g/mに調整した。得られた表面処理鋼板のめっき組成を表1に示す。
また、Zn系めっき層にパターン部を形成する場合は、さらに下記の方法でパターンを施した。パターン部及び非パターン部は、それぞれ、決定方法1~5のいずれか方法によって定めた第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差の絶対値が、40%であった。
<パターン1>
一辺が50mmの正方形パターンの凸部または凹部を有するゴム版に、塩酸溶液を付着させ、このゴム版をZn系めっき層の表面に押し付けることで、酸性溶液を鋼板に付着させ、正方形状のパターン部を形成した。酸性溶液付着時の溶融めっき鋼板のZn系めっき層の表面温度は60~200℃の範囲とした。また、正方形状のパターン部以外の箇所を非パターン部とした。そして、決定方法2に基づき、Zn系めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、各領域の重心点を中心とする直径0.5mmの円内を測定領域Aとし、各測定領域AにおけるL値を測定し、L値が45以上になる領域を第1領域、L値が45未満となる領域を第2領域とした。この表面処理鋼板を実施例70とした。
<パターン2>
Zn系めっき層の表面温度を100~300℃にした状態で、一辺が50mmの正方形パターンを有するロールを、Zn系めっき層の表面に押し付けることでパターン部を形成した。正方形パターンの箇所をパターン部とし、正方形パターン以外の箇所を非パターン部とした。決定方法3に基づき、Zn系めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、算術平均高さSa2を測定した。得られた算術平均高さSa2が1μm以上になる領域を第1領域、1μm未満となる領域を第2領域とした。この表面処理鋼板を実施例71とした。
<パターン3>
めっき浴から鋼板を引き上げた際に、溶融金属の温度が(最終凝固温度-5)℃~(最終凝固温度+5)℃の範囲にあるときに、鋼板表面の溶融金属に、非酸化性ガスの一種である窒素ガスをガスノズルによって吹き付けた。ガス温度は、最終凝固温度未満であった。その後、冷却して溶融金属を完全に凝固させた。窒素ガスの吹き付け範囲は、一辺が50mmの正方形パターンとなるように制御した。正方形パターンの箇所をパターン部とし、正方形パターン以外の箇所を非パターン部とした。決定方法4に基づき、Zn系めっき層の表面に1mm間隔または10mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域にそれぞれX線を入射させるX線回折法により、前記領域毎に、Zn相の(0002)面の回折ピーク強度I0002と、Zn相の(10-11)面の回折ピーク強度I10-11とを測定し、これらの強度比(I0002/I10-11)を配向率とする。配向率が3.5以上の領域を第1領域とし、配向率が3.5未満の領域を第2領域とした。この表面処理鋼板を実施例72とした。
<パターン4>
めっき浴から鋼板を引き上げた際に、溶融金属の温度が(最終凝固温度-5)℃~(最終凝固温度+5)℃の範囲にあるときに、鋼板表面の溶融金属に、非酸化性ガスの一種である窒素ガスを加熱した状態でガスノズルから吹き付けた。非酸化性科巣の温度は最終凝固温度以上であった。その後、冷却して溶融金属を完全に凝固させた。窒素ガスの吹き付け範囲は、一辺が50mmの正方形パターンとなるように制御した。正方形パターンの箇所をパターン部とし、正方形パターン以外の箇所を非パターン部とした。そして、決定方法5に基づき、Zn系めっき層の表面に1mm間隔で仮想格子線を描き、次いで、仮想格子線によって区画される複数の領域毎に、各領域の重心点Gを中心とする円Sを描いた。円Sは、円Sの内部に含まれるZn系めっき層の表面境界線の合計長さが10mmとなるように直径Rを設定した。複数の領域の円Sの直径Rのうち最大の直径Rmaxと最小の直径Rminとの平均値を基準直径Raveとし、直径Rが基準直径Rave未満の円Sを有する領域を第1領域とし、直径Rが基準直径Rave以上の円Sを有する領域を第2領域とした。この表面処理鋼板を実施例73および74とした。
Zn系めっき層の算術平均粗さRaの測定は、3Dレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製)を用いて行った。本実施例では、20倍の標準レンズを用いて、仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、測定間隔50μmで領域内の高さZを測定した。格子上に測定し、領域内には100点の測定点を得た。得られた高さZ100点を高さZ1~高さZ100として、上述した式2を用いて算術平均粗さRaを算出した。Zaveは高さZ100点の平均とした。
次に、製造した表面処理鋼板のZn系めっき層の表面に、各種水性樹脂(ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂)、シリカ粒子、酸化ニオブ、リン酸ナトリウム、各種顔料(硫酸銅、硫酸コバルト、硫酸鉄、Cuフタロシアニン(銅(II)フタロシアニン)、Coフタロシアニン(コバルト(II)フタロシアニン)、酸化鉄、カーボンブラック、キナクリドンレッド、ビスマスバナジウム、酸化チタン)を含有した水性組成物をバーコーターで乾燥付着量0.01~6g/mになるように塗布し、熱風乾燥炉で到達板温150℃で乾燥させた後、水冷することにより、クロメートフリーの第1化成処理層を形成した。酸化ニオブおよびリン酸ナトリウムの含有量はそれぞれ5%とした。表2Aに、顔料の詳細を示す。また、表2Bに、シリカ粒子の詳細を示す。
次に、第1化成処理層の表面に、各種水性樹脂(ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂)、シリカ粒子、酸化ニオブ、リン酸ナトリウムを含有した水性組成物をバーコーターで乾燥付着量0.05~20g/mになるように塗布し、熱風乾燥炉で到達板温150℃で乾燥させた後、水冷することにより、クロメートフリーの第2化成処理層を形成した。酸化ニオブおよびリン酸ナトリウムの含有量はそれぞれ5%とした。表2Bに、シリカ粒子の詳細を示す。
表4A~表5Fに、第1化成処理層および第2化成処理層の組成等を示す。表4A~表4C及び表5A~5Cの「20%以上」の欄において、化成処理層中の樹脂量が20%以上の場合は「○(good)」とし、20%未満の場合は「×(bad)」とした。また、表4D~表4F及び表5A~表5Cの「酸化Nb」の欄において、酸化ニオブを含有させた場合を「○(good)」とし、含有させなかった場合を「×(bad)」とした。また、「リン酸Na」の欄において、リン酸ナトリウムを含有させた場合を「○(good)」とし、含有させなかった場合を「×(bad)」とした。
(60度鏡面光沢Gs(60°))
光沢計(スガ試験機社製UGV-6P)を用い、JIS Z 8741に規定される方法に基づいて表面処理鋼板の表面の60°光沢度(%)を測定した。光沢度が50~200%の場合を「A」とし、50%未満の場合を「B」とした。結果を表5D~表5Fに示す。
(b値)
分光色差計(日本電色工業株式会社製 SE6000)を用い、表面処理鋼板の表面を測定し、bが-15以上-5以下の場合を「AAA」とし、bが-22以上かつ-3.5以下(-15以上-5以下を除く)の場合を「AA」とし、bが-30以上かつ-2以下(-22以上-3.5以下を除く)の場合を「A」とし、-2超もしくは-30未満の場合を「B」とした。結果を表5Aに示す。また、パターン部を設けた場合は、パターン部のb値と非パターン部のb値との差を測定した。差が3以上の場合、「A」と評価した。結果を表5D~表5Fに示す。
(L値)
分光色差計(日本電色工業株式会社製 SE6000)を用いて、Lを測定した。Lが75以下の場合を「AAA」とし、Lが75超80以下の場合を「AA」とし、Lが80超85以下の場合を「A」とし、Lが85超の場合を「B」とした。結果を表5D~表5Fに示す。
(金属光沢感)
多角度分光測色計(X-rite社製MA T12)を用いて、金属光沢感を評価した。化成処理層の表面と直交する平面において、化成処理層の表面から60°の角度から化成処理層の表面へ向けて光を入射し、化成処理層の表面で反射する光を化成処理層の表面から135°の角度で受光した際に得られるLをL とし、上記平面において、化成処理層の表面から120°の角度から化成処理層の表面へ向けて光を入射し、化成処理層の表面で反射する光を化成処理層の表面から135°の角度で受光した際に得られるLをL としたとき、L /L が3以上を「AA」とし、L /L が2以上3未満を「A」とし、L /L が2未満を「B」とした。結果を表5D~表5Fに示す。
(耐食性)
表面処理鋼板に対して、塩水噴霧試験(JIS Z 2371:2015)試験を行った。エリクセン加工を施した部分の試験時間120時間後の白錆発生状況を観察し、以下に示す評点づけで判定した。評点は2以上を合格とした。結果を表5D~表5Fに示す。
3:白錆発生5%未満
2:白錆発生5%以上10%未満
1:白錆発生10%以上
(金属外観)
表面処理鋼板のZnめっき層の表面を5人のパネラーに見せたとき、めっきの金属外観の見え方で判定した。評価は以下に示す評点づけで判定し、評点3または2を合格とした。結果を表5D~表5Fに示す。
3:5人中3人以上がめっきの金属外観を視認できた。
2:5人中2人がめっきの金属外観を視認できた。
1:5人中1人以下がめっきの金属外観を視認できた。
(疵の視認性)
表面処理鋼板を取り扱った際に、第2化成処理層に生じた疵の視認性を、下記の判定基準に基づいて目視評価した。評価は以下に示す評点づけで判定し、3および2を合格とした。結果を表5D~表5Fに示す。
3:0.5m先からでも疵が観察されない。
2:0.5m先からは疵が観察されるが、2m先からは疵が観察されない。
1:2m先から疵が観察される。
表3A~表5Fに示すように、実施例1~94の表面処理鋼板はいずれも、金属光沢感があり、耐食性、金属外観性に優れており、また、疵も目立ちにくくなった。また、パターン部を設けた実施例91~94は、パターン部の視認性に優れていた。
一方、比較例1は、第1化成処理層のシリカ粒子の粒径が過大であり、金属外観性が低下した。
比較例2は、第1化成処理層のシリカ粒子の含有量が低く、耐食性が低下した。
比較例3は、第1化成処理層のシリカ粒子の含有量が過剰であり、化成処理層自体が脆くなり、評価ができなかった
比較例4~7は、第1化成処理層の顔料の種類が本発明の範囲から外れ、耐食性、金属外観性、疵の視認性のいずれかが低下もしくは悪化した。
比較例8は、第1化成処理層の顔料が添加されておらず、疵の視認性が悪化した。
比較例9は、第1化成処理層の樹脂の含有量が20%未満であり、化成処理層自体が脆くなり、評価ができなかった。
比較例10は、第1化成処理層の付着量が過大であり、金属外観性が低下した。
比較例11は、第2化成処理層のシリカ粒子の粒径が過大であり、金属外観性が低下した。
比較例12は、第2化成処理層のシリカ粒子の含有量が低く、耐食性が低下した。
比較例13は、第2化成処理層のシリカ粒子の含有量が過剰であり、化成処理層自体が脆くなり、評価ができなかった。
比較例14は、第2化成処理層の樹脂の含有量が20%未満であり、化成処理層自体が脆くなり、評価ができなかった。
比較例15は、第2化成処理層の付着量が少なく、耐食性が低下し、疵の視認性が悪化した。
比較例16は、第2化成処理層の付着量が過大であり、金属外観性が低下した。
比較例17は、第2化成処理層を形成しなかったため、耐食性が低下し、疵の視認性が悪化した。
比較例18、19は、めっき層の化学成分が本発明の範囲から外れ、耐食性が低下した。
Figure 2024061203000001
Figure 2024061203000002
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Figure 2024061203000004
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Claims (9)

  1. 鋼板と、
    前記鋼板の少なくとも片面に配された、0.05~60質量%のAl、及びZnを含有するZn系めっき層と、
    前記Zn系めっき層上に配された、片面当たりの付着量0.01~5g/mのクロメートフリーの第1化成処理層と、
    前記第1化成処理層上に配された、片面当たりの付着量0.10~15g/mのクロメートフリーの第2化成処理層と、が備えられ、
    前記第1化成処理層には、20質量%以上の樹脂と、1.0~20質量%の平均粒径5~200nmのシリカ粒子と、Cu、CoまたはFeの1種または2種以上を含有する顔料と、が含有されており、
    前記第2化成処理層には、20質量%以上の樹脂と、1.0~20質量%の平均粒径5~200nmのシリカ粒子と、が含有されており、
    前記Zn系めっき層、前記第1化成処理層および前記第2化成処理層の外観をCIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合のbが-30以上-2以下であり、JIS Z 8741:1997で規定される60度鏡面光沢G(60°)が50~200であり、金属外観を示す、表面処理鋼板。
  2. 前記Zn系めっき層に、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成され、
    前記パターン部及び前記非パターン部は、それぞれ、下記の決定方法1~5のうちのいずれかによって決定される第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、
    前記パターン部における前記第1領域の面積率と、前記非パターン部における前記第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上である、請求項1に記載の表面処理鋼板。
    [決定方法1]
    前記Zn系めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、各領域の重心点を中心とする直径0.5mmの円内を測定領域Aとし、各測定領域AにおけるL値を測定する。得られたL値の中から任意の50点を選定し、得られたL値の50点平均を基準L値としたとき、L値が基準L値以上になる領域を第1領域、基準L値未満となる領域を第2領域とする。
    [決定方法2]
    前記Zn系めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、各領域の重心点を中心とする直径0.5mmの円内を測定領域Aとし、各測定領域AにおけるL値を測定し、L値が45以上になる領域を第1領域、L値が45未満となる領域を第2領域とする。
    [決定方法3]
    前記Zn系めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、算術平均高さSa2を測定する。得られた算術平均高さSa2が1μm以上になる領域を第1領域、1μm未満となる領域を第2領域とする。
    [決定方法4]
    前記Zn系めっき層の表面に1mm間隔または10mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域にそれぞれX線を入射させるX線回折法により、前記領域毎に、Zn相の(0002)面の回折ピーク強度I0002と、Zn相の(10-11)面の回折ピーク強度I10-11とを測定し、これらの強度比(I0002/I10-11)を配向率とする。前記配向率が3.5以上の領域を第1領域とし、前記配向率が3.5未満の領域を第2領域とする。
    [決定方法5]
    前記Zn系めっき層の表面に1mm間隔で仮想格子線を描き、次いで、前記仮想格子線によって区画される複数の領域毎に、各領域の重心点Gを中心とする円Sを描く。前記円Sは、前記円Sの内部に含まれる前記Zn系めっき層の表面境界線の合計長さが10mmとなるように直径Rを設定する。複数の領域の円Sの直径Rのうち最大の直径Rmaxと最小の直径Rminとの平均値を基準直径Raveとし、直径Rが基準直径Rave未満の円Sを有する領域を第1領域とし、直径Rが基準直径Rave以上の円Sを有する領域を第2領域とする。
  3. 前記第1化成処理層の片面当たりの付着量が0.01~1g/mであり、
    前記第2化成処理層の片面当たりの付着量が0.10~5g/mである、請求項2に記載の表面処理鋼板。
  4. 前記第2化成処理層の上から前記Zn系めっき層の外観をCIE1976(L,a,b)色空間で評価した場合の、前記第1領域のbと、前記第2領域のbとの差Δbが、3以上である、請求項2に記載の表面処理鋼板。
  5. 前記顔料が、銅(II)フタロシアニン、コバルト(II)フタロシアニン、硫酸銅、硫酸コバルト、硫酸鉄または酸化鉄のいずれか1種または2種以上である、請求項1に記載の表面処理鋼板。
  6. 前記第1化成処理層中における、前記シリカ粒子と前記顔料の混合比を、前記シリカ粒子のSi換算量[Si]と、前記顔料のCu換算量[Cu]、Co換算量[Co]またはFe換算量[Fe]とで表した場合に、[Si]/([Cu]+[Co]+[Fe])が1~200の範囲である、請求項1に記載の表面処理鋼板。
  7. 前記Zn系めっき層が、平均組成で、Al:4質量%以上22質量%以下、Mg:1質量%以上10質量%以下を含有し、残部がZnおよび不純物からなる、請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
  8. 前記Zn系めっき層が、更に、平均組成で、下記A群、B群からなる群から選択される1種または2種を含有する、請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
    [A群]Si:0.0001~2質量%
    [B群]Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%
  9. 前記Zn系めっき層が、更に、平均組成で、下記A群、B群からなる群から選択される1種または2種を含有する、請求項7に記載の表面処理鋼板。
    [A群]Si:0.0001~2質量%
    [B群]Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%
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