JP2024060833A - 回転陽極x線管 - Google Patents

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Abstract

【課題】 軸受け隙間から液体潤滑材が枯渇するのを防止できる回転陽極X線管を提供する。【解決手段】 真空外囲器と、真空外囲器内に収納された陰極及び回転陽極構体と、を備え、回転陽極構体は、固定軸と、固定軸の外周側に設けた回転軸と、回転軸と一体に回転すると共に陰極から照射された電子ビームを受けてX線を発生するターゲットと、を有し、固定軸と回転軸との間には、液体潤滑材を充填した軸受け隙間が設けてあり、液体潤滑材には磁性を有する磁性微粒子が分散されていると共に軸受け隙間に磁界が付与されている。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、回転陽極X線管に関する。
回転陽極X線管は、真空外囲器内の真空中に固定軸と回転軸を有し、回転軸に陽極が固定され、ステータコイルにより回転軸が固定軸に対して回転することで、陽極で発生する熱を分散している。回転軸と固定軸の隙間(軸受け隙間)には、液体潤滑材(液体金属)が充填されており、この液体潤滑材は回転陽極の回転時に動圧すべり軸受の潤滑材となる。そして、この動圧すべり軸受に発生する動圧効果により回転陽極は支持される。
特開平8-212949号公報
液体潤滑材を潤滑材として用いる回転陽極X線管は、回転軸と固定軸の間に封入されている液体潤滑材が受ける動圧により回転軸が浮上することで回転を保持している。回転軸と固定軸の間に生じる圧力は、その隙間(軸受け隙間)に依存しており、隙間が小さければ圧力は大きくなる。一方、回転陽極X線管の回転部分に対しては陽極の重量や、回転陽極X線管が用いられているCT(Computed Tomography)装置のガントリー回転による遠心力のため、大きな荷重がかかっており、回転軸と固定軸の間の隙間(軸受け隙間)は数μm程度まで小さくなる。この隙間に存在する液体潤滑材が振動や衝撃など何らかの原因で枯渇した場合、回転軸と固定軸の間に働いていた圧力が消失し、接触するため回転を維持できなくなる問題があった。
また、回転軸の停止中は動圧による圧力が生じないため、軸受け隙間から液体潤滑材が枯渇し、回転軸と固定軸は接触した状態になり、回転停止の瞬間や、回転開始の瞬間に軸受面の傷や変形が生じる問題があった。
本発明の実施形態は、軸受け隙間から液体潤滑材が枯渇するのを防止できる回転陽極X線管を提供する。
第1実施形態は、真空外囲器と、前記真空外囲器内に収納された陰極及び回転陽極構体と、を備え、前記回転陽極構体は、固定軸と、前記固定軸の外周側に設けた回転軸と、前記回転軸と一体に回転すると共に前記陰極から照射された電子ビームを受けてX線を発生するターゲットと、を有し、前記固定軸と前記回転軸との間には、液体潤滑材を充填した軸受け隙間が設けてあり、前記液体潤滑材には磁性を有する磁性微粒子が分散されていると共に前記軸受け隙間に磁界が付与されている、回転陽極X線管である。
図1は、第1実施形態に係る回転陽極X線管の断面図である。 図2は、図1に示す磁石の平面図である。 図3は、図1に示す回転陽極X線管の変形例に係る磁石の配置を示す断面図である。 図4は、第2実施形態に係る回転陽極X線管の断面図である。 図5は、第3実施形態に係る回転陽極X線管の断面図である。 図6は、第4実施形態に係る回転陽極X線管の断面図である。 図7は、第5実施形態に係る回転陽極X線管の断面図である。 図8は、第6実施形態に係る回転陽極X線管の断面図である。 図9は、第7実施形態に係る回転陽極X線管の断面図である。
以下に、図面を参照しながら、一実施形態に係る回転陽極X線管について詳細に説明する。なお、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を参照して、第1実施形態について説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係る回転陽極X線管1は、真空外囲器3と、真空外囲器3内に収納された回転陽極構体5及び陰極7とを備えている。真空外囲器3の外側にはステータコイル9が設けられている。
回転陽極構体5は、ターゲット13と、固定軸15と、回転軸17と、固定軸15と回転軸17との間に形成したすべり軸受19とを備えている。
ターゲット13は、円盤状に形成され且つ回転軸17の外周面に固定されている。ターゲット13は、固定軸15及び回転軸17と同軸的に設けられている。
ターゲット13は、ターゲット本体13aと、ターゲット本体13aの外面の一部に設けられたターゲット層13bとを有している。ターゲット13は、回転軸17と共に回転可能であり、ターゲット層13bに電子が入射されることによりX線を放出する。
固定軸15は、円柱状に形成され、管軸線aの一端側に位置する一端側部15aと、管軸方向の他端側に位置する他端側部15bとを具備し、固定軸15の一端側部15aと他端側部15bとは、それぞれ固定部材(図示せず)を介して真空外囲器3に固定されている。
固定軸15は、内部に冷媒通路16が設けてあり、冷媒通路16に導入された冷却媒体を介して放熱されている。
固定軸15は、その外周に設けた回転軸17を回転可能に支持している。
固定軸15は、Fe(鉄)合金やMo(モリブデン)合金等の金属で形成されている。
回転軸17は、固定軸15の外周に固定軸15と同軸的に配置してある。回転軸17は、円筒状の本体17aと、本体17aの一端側に設けた円板状の一端側蓋部17bと、他端側に設けた円板状の他端側蓋部17cとを備えている。回転軸17は、Fe合金やMo合金等の金属で形成されている。
本体17aの外周面において、ステータコイル9に対向した位置には、駆動ローター31が設けてある。駆動ローター31は筒状であり、本体17aの外周面に固定されている。駆動ローター31は、例えばCu(銅)で形成されている。
すべり軸受19は、軸受け隙間21と、軸受け隙間21に充填された液体潤滑材LMとで構成されている。
軸受け隙間21の隙間寸法は、固定軸15の長手方向における一端部21aと、他端部21bとが、中間部21cよりも狭小に形成されている。
液体潤滑材LMには、磁性を有する磁性微粒子が分散されている。磁性微粒子は、例えば、酸化鉄の粒子にアルミニウム又はシリカを被覆して形成されている。
液体潤滑材LMは、GaIn(ガリウム・インジウム)合金又はGaInSn(ガリウム・インジウム・錫)合金等の材料を利用することができる。
本実施形態では、軸受け隙間21には、一端部21aと他端部21bを除く、中間部21cに、磁界が付与されている。
磁界は、中間部21cにおける長手方向に沿って配置された複数の永久磁石23により付与されている。
図2に示すように、各永久磁石23は、リング状を成しており、内周側をS極又はN極に磁化されており、外周側は内周側と反対の磁極に磁化されている。即ち、図2では、内周側をN極に、外周側をS極としているが、これと反対に内周側をS極に、外周側をN極としている2種類のものを用いている。
図1に示すように、各永久磁石23は、その並び方向において、隣り合う磁石は、N極とS極とが交互に配置されている。各永久磁石23は、固定軸15に埋め込まれている。
図1に示すように、陰極7は、ターゲット13のターゲット層13bに間隔を置いて対向配置されている。陰極7は、真空外囲器3の内壁に取付けられている。陰極7は、ターゲット層13bに照射する電子を放出する電子放出源としてのフィラメント7aを有している。
真空外囲器3は、円筒状に形成されている。真空外囲器3は、ガラス及び金属で形成されている。
次に、第1実施形態に係る回転陽極X線管の作用効果について、説明する。
図1に示すように、回転陽極X線管1の動作状態では、ステータコイル9は回転軸17(特に駆動ローター31)に与える磁界を発生し、固定軸15の回りを回転軸17が回転する。これにより、ターゲット13は回転する。また、陰極7に相対的に負の電圧が印加され、ターゲット13に相対的に正の電圧が印加される。
これにより、陰極7及びターゲット13間に電位差が生じる。このため、フィラメント7aは、電子を放出すると、この電子は、加速され、ターゲット層13bに衝突する。これにより、ターゲット層13bは、電子と衝突するときにX線を放出し、放出されたX線は真空外囲器3を透過して放出される。
X線放射時に、電子衝撃によりターゲット13では高熱を発生する。
電子衝撃によりターゲット13に発生する熱は、すべり軸受19の液体潤滑材LMを介して、固定軸15に伝導し、固定軸15からその冷媒通路16の冷却冷媒に熱を逃がして冷却する。
一方、すべり軸受け19の軸受け隙間21では、磁力線Kで示すように、永久磁石23により常時磁界が印加されている。
このように、軸受け隙間21に磁界が印加されることで、軸受け隙間21に充填されている液体潤滑材LMでは、分散されている磁性微粒子(図示せず)が磁界(磁力線K)の作用を受けて引き付けられて、軸受け隙間21の中間部21cに留まることから、液体潤滑材LMが隙間内に保持される。
即ち、磁性を有する微粒子が分散された液体潤滑材LMがすべり軸受19の圧力発生部に保持され、液体潤滑材LMの枯渇による回転軸17と固定軸15の接触を防止する。また、回転軸17が停止中であっても、液体潤滑材LMをすべり軸受19の軸受け面に保持することで回転軸17と固定軸15の接触を防ぐことができる。
永久磁石23は、円環状の磁石で内周側と外周側とに磁極を形成しているから、簡易な構成にできる。
図1に示すように、本実施の形態では、隣り合う永久磁石23は、互いに対向する磁極を異ならせているので、対向する磁極を同じにする場合に比較して、すべり軸受19に強い磁界を印加することができる。
図3に第1実施形態の変形例を示す。図3では、軸受け隙間21の中間部21cの断面を示している。この変形例では、永久磁石23はリング状ではなく、棒磁石であり、棒磁石を固定軸15の外周面に沿って間隔をあけて配置している。隣り合う磁石23は、内周側と外周側とで互いに反対の磁極を対向して配置している。
磁力線Kは隣り合う磁石23において、軸受け隙間21を横断するように作用する。
この変形例においても、上述して第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
以下に他の実施形態について説明するが、以下の説明において、上述した第1実施形態と同一の作用効果を奏する部分には、同一の符号を付して、その部分の詳細な説明を省略する。
(第2実施形態)
図4に、第2実施形態を示す。この第2実施形態では、すべり軸受け19には、軸受け隙間21において、その隙間の間隔を狭くしたグルーヴ25が形成されており、磁石23はこのグルーヴ25に対応した位置にのみ設けてある。
図4では、グルーヴ25は一か所のみを示しているが、管軸線a方向に沿って間隔を空けて複数形成されている。
第2実施の形態では、グルーヴ25は、固定軸15の軸受け面に段差を形成して回転軸17の軸受け面との間に形成しているが、これに限らず、回転軸17の軸受け面に段差を形成しても良い。
このすべり軸受19では、グルーヴ25を形成することで、回転時に生じる圧力差により液体潤滑材LMを軸受面で保持している。その保持部であるグルーヴ25に磁力線Kを配するように磁石23を設置することで回転軸17と固定軸15の接触を防いでいる。
磁石23は、第1実施形態と同様に、リング状の磁石であり、管軸線a方向に複数並べて配置していると共に隣り合う磁石23は互いに対向する磁極を異にしている。
この第2実施形態によれば、磁力線Kがグルーヴ25を通ることにより第1実施形態と同様に液体潤滑材LMをグルーヴ25に保持することができ、回転軸17と固定軸15の接触を防ぐことができる。
(第3実施形態)
図5を参照して、第3実施の形態について説明する。
この第3実施形態では、図4に示す第2実施形態に対して、永久磁石23の形態が異なっている。即ち、永久磁石23は、管軸線a方向で磁極が互いに異なる磁極を対向するように、配置している。
図4では一つのグルーヴ25に対して2つの永久磁石を配置しているが、管軸方向に並べて3つ又は4つ等、いくつ配置しても良い。尚、各永久磁石23はリング状の磁石である。
この第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、磁力線Kがグルーヴ25を通ることにより液体潤滑材LMをグルーヴ25に保持することができ、回転軸17と固定軸15の接触を防ぐことができる。
(第4実施形態)
図6を参照して、第4実施形態について説明する。
この第4実施形態では、第1実施形態に係る回転陽極X線管1に対して、回転軸17に磁性体27を設けたことが第1実施形態と異なっている。
磁性体27は例えば、鉄材であり、固定軸15に設けた永久磁石23に対向して設けている。磁性体27は、永久磁石23と同様にリング状である。
この第4実施の形態によれば、図6に抜き出して示すように、軸受け隙間21を横断する磁力線Kを付与することができ、軸受け隙間21に封入された液体潤滑材LMに磁界を印加できる。これにより、液体潤滑材LMを軸受け隙間21に保持することができ、回転軸17と固定軸15の接触を防ぐことができる。
(第5実施形態)
図7を参照して第5実施形態について説明する。
この第5実施形態では、第2実施形態と同様にすべり軸受け19にグルーヴ25を形成してあり、固定軸15にはグルーヴ25に対応する位置に永久磁石23が配置してあると共に、磁性体27を回転軸17の外周面に外付けにより設けている。
磁性体27はリング形状の鉄材である。
この第5実施形態によれば、第2実施と同様の作用効果を奏することができる。
更に、永久磁石23に対向して回転軸17に磁性体27を配置することで、磁界の強度を高めることができる。これにより液体潤滑材LMを軸受け隙間21に保持する保持力を高めることができる。
しかも、磁性体27は回転軸17の外周面に外付けにより取り付けており、埋め込んでいないので、設置が容易にできると共に構成が簡易である。
(第6実施形態)
図8を参照して第6実施形態について説明する。
この第6実施形態では、第3実施形態と同様にすべり軸受け19にグルーヴ25を形成してあり、グルーヴ25に対応する位置に永久磁石23が配置してある。永久磁石23は、第3実施形態では固定軸15に設けていたが、この第6実施形態では、回転軸17に埋め込んで設けている。
この第6実施形態によれば、第3実施と同様の作用効果を奏することができる。
尚、永久磁石23は回転軸17に埋め込まないで、回転軸17の外周面に外付けにより固定しても良い。
(第7実施形態)
図9を参照して第7実施形態について説明する。
この第7実施形態では、第4実施形態と同様に、固定軸15にはリング形状の永久磁石23を管軸線a方向に間隔をあけて設けると共に、回転軸17には磁性体27を設けているが、管軸線a方向で隣り合う永久磁石23は、対向する磁極を同じにしている。即ち、各永久磁石23は、外周側を全て同じ磁極としている。本実施形態では、外周側をN極とし、内周側をS極としてある。
この第7実施形態によれば、第4実施と同様の作用効果を奏することができる。
上述した一実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、各永久磁石23は固定軸15に設けることに限らず、各永久磁石23を回転軸17に埋め込んで配置したり、回転軸17の外周面に外付けにより固定しても良いし。更に、第1実施形態及び第2実施形態において、固定軸15及び回転軸17の両方に永久磁石23を配置しても良い。
第2~第7実施形態において、第1実施形態の変形例(図3参照)と同様に、環状の永久磁石23でなく、棒状の永久磁石23を周方向に間隔を開けて配置しても良い。
第4実施形態、第5実施形態及び第7実施形態において、各磁性体27に代えて永久磁石23を用いても良い。
第6実施形態において、回転軸17に設けた各永久磁石23に対応する位置において、固定軸15に磁性体27や永久磁石23を設けても良い。
1…回転陽極X線管、3…真空外囲器、5…回転陽極構体、7…陰極、15…固定軸、17…回転軸、13…ターゲット、19…すべり軸受、21…軸受け隙間、23…永久磁、25…グルーヴ、27…磁性体、a…管軸線、LM…液体潤滑材(液体金属)。

Claims (6)

  1. 真空外囲器と、前記真空外囲器内に収納された陰極及び回転陽極構体と、を備え、
    前記回転陽極構体は、固定軸と、前記固定軸の外周側に設けた回転軸と、前記回転軸と一体に回転すると共に前記陰極から照射された電子ビームを受けてX線を発生するターゲットと、を有し、
    前記固定軸と前記回転軸との間には、液体潤滑材を充填した軸受け隙間が設けてあり、
    前記液体潤滑材には磁性を有する磁性微粒子が分散されていると共に前記軸受け隙間に磁界が付与されている、回転陽極X線管。
  2. 前記軸受け隙間は、隙間の間隔を部分的に狭くしたグルーヴを有し、前記磁界はグルーヴの領域に付与されている請求項1に記載の回転陽極X線管。
  3. 前記磁界は、固定軸側及び回転軸側の少なくとも一方に設けた磁石により前記軸受け隙間を横断する磁束により形成されている請求項1又は2に記載の回転陽極X線管。
  4. 前記磁界は、固定軸側及び回転軸側の少なくとも一方に設けた磁石と、他方に設けた磁性体により形成されている請求項1又は2に記載の回転陽極X線管。
  5. 前記磁界は、前記軸受け隙間を挟んで設けた一対の永久磁石により形成されており、前記磁石は互いに反対の磁極を対向して設けている請求項1又は2に記載の回転陽極X線管。
  6. 前記磁界は、固定軸又は回転軸に管軸方向で並んで設けた永久磁石により形成されており、前記永久磁石は互いに反対の磁極を対向して配置している請求項1又は2に記載の回転陽極X線管。
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