JP2024053656A - 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】衝撃強度、難燃性および耐久性に優れる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供する。【解決手段】(A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)ケイ酸塩鉱物(B成分)1.0~80.0重量部、(C)芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体(C成分)0.1~9.0重量部、(D)酸変性ポリオレフィン樹脂(D成分)0.1~1.9重量部、(E)リン系難燃剤(E成分)1.0~20.0重量部および(F)含フッ素滴下防止剤(F成分)0.1~2.0重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は衝撃強度、難燃性および耐久性に優れる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、寸法安定性および難燃性といったその優れた特性から機械部品、自動車部品、電気・電子部品、事務機器部品などの多くの用途に用いられている。近年は上記の分野において、発熱する部品を備えている機器において該機器の高性能化に伴い部品からの発熱量が増大する傾向にある。そのため、発生する熱を効率的に外部へ放熱するために熱伝導性が高く、耐衝撃性および難燃性に優れたポリカーボネート樹脂組成物の要求が高まっている。
ポリカーボネート樹脂の熱伝導性を向上させる方法として、種々の熱伝導性フィラーを配合する方法が知られている。例えば、樹脂材料に黒鉛化炭素繊維を添加する方法(特許文献1~3参照)や、酸化アルミニウムや窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素、石英、水酸化アルミニウムなどの金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物などの充填剤を添加する方法(特許文献4~7参照)が開示されている。さらには、タルクのようなケイ酸塩鉱物をポリカーボネート樹脂に配合することによっても樹脂材料の熱伝導率が向上することが開示されている(特許文献8参照)。しかしながら、ポリカーボネート樹脂にケイ酸塩鉱物を添加した樹脂組成物は、ケイ酸塩鉱物の添加によりポリカーボネート樹脂が劣化し、結果的にポリカーボネート樹脂成形品の機械特性および難燃性が劣化するという問題点がある。かかる問題点を解決するために、ケイ酸塩化合物を含有するポリカーボネート樹脂に酸変性したオレフィン系ワックスを添加する方法や、酸変性したオレフィン系ワックスおよびブロック共重合体を添加する方法が開示されている(特許文献9、10参照)。
近年、情報通信ボックス等の屋外電気・電子機器筐体といった屋外使用されるエンクロージャーには、難燃性および耐衝撃性、更にはUL746C f1定格認証に代表される紫外線や風雨に晒されても劣化しにくい耐久性が求められている。しかしながら、上述した従来のポリカーボネート樹脂にケイ酸塩鉱物を添加した樹脂組成物ではUL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度および難燃性の低下の抑制が不十分であった。
特開平11-286597号公報 特開平7-238213号公報 特開昭61-200151号公報 特開2011-105801号公報 特開2001-019756号公報 特開平8-208973号公報 特開2000-143872号公報 特開2016-53188号公報 特表2019-524970号公報 特許第6133645号公報
上記に鑑み、本発明の目的は、衝撃強度、難燃性および耐久性に優れる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することである。
本発明者らは、かかる課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂にケイ酸塩鉱物、芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体、酸変性ポリオレフィン樹脂、リン系難燃剤および含フッ素滴下防止剤を適切な量配合することで、衝撃強度、難燃性および耐久性に優れるポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねて本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.(A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)ケイ酸塩鉱物(B成分)1.0~80.0重量部、(C)芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体(C成分)0.1~9.0重量部、(D)酸変性ポリオレフィン樹脂(D成分)0.1~1.9重量部、(E)リン系難燃剤(E成分)1.0~20.0重量部および(F)含フッ素滴下防止剤(F成分)0.1~2.0重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
2.B成分がタルク、マイカおよびワラストナイトからなる群から選ばれる少なくとも1種のケイ酸塩鉱物であることを特徴とする前項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3.C成分が、SEBS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)、SEPS(ポリスチレ-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)、SEP(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体)およびSEEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)からなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体であることを特徴とする前項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4.E成分が、下記式(1)で表される難燃剤であることを特徴とする前項1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[式中、Xは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4-ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトンおよびビス(4-ヒドロキシフェニル)サルファイドからなる群より選ばれる化合物から誘導される二価の基である。nは0~5の整数であり、n数の異なるリン酸エステルの混合物の場合は0~5の平均値である。R、R、R、およびRはそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、およびp-クミルフェノールからなる群より選ばれる化合物より誘導される一価の基である。]
5.前項1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
以下、更に本発明の詳細について説明する。
(A成分:芳香族ポリカーボネート樹脂)
本発明でA成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ビフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましく、汎用されている。
本発明では、汎用のポリカーボネート樹脂であるビスフェノールA系のポリカーボネート樹脂以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ-ト樹脂をA成分として使用することが可能である。
例えば、2価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis-TMC”と略称することがある)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ-ト樹脂(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の2価フェノールは、該ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)~(3)の共重合ポリカーボネート樹脂であるのが特に好適である。(1)該ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBCFが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート。(2)該ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10~95モル%(より好適には50~90モル%、さらに好適には60~85モル%)であり、かつBCFが5~90モル%(より好適には10~50モル%、さらに好適には15~40モル%)である共重合ポリカーボネート樹脂。(3)該ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBis-TMCが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート樹脂。
また、より高い耐衝撃性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(4)の共重合ポリカーボネート樹脂であるのが特に好適である。
(4)該ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノール成分100モル%中、ヒドロキシアリールで末端処理されたポリジオルガノシロキサンが0.1~20モル%(より好適には1~15モル%、さらに好適には2~10モル%)であり、かつBCFが5~90モル%(より好適には10~50モル%、さらに好適には15~40モル%)である共重合ポリカーボネート。
これらの特殊なポリカーボネート樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂と混合して使用することもできる。
これらの特殊なポリカーボネート樹脂の製法及び特性については、例えば、特開平6-172508号公報、特開平8-27370号公報、特開2001-55435号公報及び特開2002-117580号公報等に詳しく記載されている。
なお、上述した各種のポリカーボネート樹脂の中でも、共重合組成等を調整して、吸水率及びTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される分野では特に好適である。(i)吸水率が0.05~0.15%、好ましくは0.06~0.13%であり、かつTgが120~180℃であるポリカーボネート樹脂、あるいは(ii)Tgが160~250℃、好ましくは170~230℃であり、かつ吸水率が0.10~0.30%、好ましくは0.13~0.30%、より好ましくは0.14~0.27%であるポリカーボネート樹脂。
ここで、ポリカーボネート樹脂の吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62-1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
前記二価フェノールとカーボネート前駆体の界面重合によって芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環式を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
分岐ポリカーボネート樹脂は、本発明の樹脂組成物に、ドリップ防止性能などを付与できる。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
分岐ポリカーボネート樹脂における多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、2価フェノールから誘導される構成単位とかかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.01~2モル%、より好ましくは0.05~1.2モル%、特に好ましくは0.05~1.0モル%である。
また、特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造単位が生ずる場合があるが、かかる分岐構造単位量についても、2価フェノールから誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.001~2モル%、より好ましくは0.005~1.2モル%、特に好ましくは0.01~1.0モル%であるものが好ましい。なお、かかる分岐構造の割合についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法である界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマー固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などの反応形式は、各種の文献及び特許公報などで良く知られている方法である。
本発明の樹脂組成物を製造するにあたり、A成分である芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10~5×10であり、より好ましくは1.1×10~3×10であり、さらに好ましくは1.2×10~2.4×10である。
粘度平均分子量が1×10未満の芳香族ポリカーボネート樹脂では、良好な機械的特性が得られない場合がある。一方、粘度平均分子量が5×10を超える芳香族ポリカーボネート樹脂から得られる樹脂組成物は、射出成形時の流動性に劣る点で汎用性に劣る場合がある。
なお、前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が前記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。殊に、前記範囲(5×10)を超える粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、樹脂のエントロピー弾性が向上する。その結果、構造部材に成形する際に使用されることのあるガスアシスト成形、および発泡成形において、良好な成形加工性を発現する。かかる成形加工性の改善は前記分岐ポリカーボネート樹脂よりもさらに良好である。より好適な態様としては、A成分が粘度平均分子量7×10~3×10の芳香族ポリカーボネート樹脂(A-1成分)、および粘度平均分子量1×10~3×10の芳香族ポリカーボネート樹脂(A-2成分)からなり、その粘度平均分子量が1.6×10~3.5×10である芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)(以下、“高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂”と称することがある)も使用できる。
かかる高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)において、A-1成分の分子量は7×10~2×10が好ましく、より好ましくは8×10~2×10、さらに好ましくは1×10~2×10、特に好ましくは1×10~1.6×10である。またA-2成分の分子量は1.0×10~2.5×10が好ましく、より好ましくは1.1×10~2.4×10、さらに好ましくは1.2×10~2.4×10、特に好ましくは1.2×10~2.3×10である。
高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂(A-1成分)は前記A-1成分とA-2成分を種々の割合で混合し、所定の分子量範囲を満足するよう調整して得ることができる。好ましくは、A成分100重量%中、A-1成分が2~40重量%の場合であり、より好ましくはA-1成分が3~30重量%であり、さらに好ましくはA-1成分が4~20重量%であり、特に好ましくはA-1成分が5~20重量%である。
また、A-1成分の調製方法としては、(1)A-1成分とA-2成分とを、それぞれ独立に重合しこれらを混合する方法、(2)特開平5-306336号公報に示される方法に代表される、GPC法による分子量分布チャートにおいて複数のポリマーピークを示す芳香族ポリカーボネート樹脂を同一系内において製造する方法を用い、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂を本発明のA成分の条件を満足するよう製造する方法、および(3)かかる製造方法((2)の製造法)により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂と、別途製造されたA-1成分および/またはA-2成分とを混合する方法などを挙げることができる。
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c (但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4 Mv0.83
c=0.7
尚、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の算出は次の要領で行なわれる。すなわち、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、その20~30倍重量の塩化メチレンと混合し、組成物中の可溶分を溶解させる。かかる可溶分をセライト濾過により採取する。その後得られた溶液中の溶媒を除去する。溶媒除去後の固体を十分に乾燥し、塩化メチレンに溶解する成分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上記と同様にして20℃における比粘度を求め、該比粘度から上記と同様にして粘度平均分子量Mvを算出する。
さらに芳香族ポリカーボネート樹脂として、使用済みの製品から再生された芳香族ポリカーボネート樹脂、すなわち再生ポリカーボネート樹脂の使用も可能である。使用済みの製品としては防音壁、自動車窓、透光屋根材、および自動車サンルーフなどに代表される各種グレージング材、風防や自動車ヘッドランプレンズなどの透明部材、水ボトルなどの容器、導光板、メガネレンズ、並びに光記録媒体などが好ましく挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
(B成分:ケイ酸塩鉱物)
本発明のB成分として使用されるケイ酸塩鉱物は、少なくとも金属酸化物成分とSiO成分とからなる鉱物であり、オルトシリケート、ジシリケート、環状シリケート、および鎖状シリケートなどが好適である。B成分のケイ酸塩鉱物は結晶状態を取るものであり、また結晶の形状も繊維状や板状などの各種の形状を取ることができる。
B成分のケイ酸塩鉱物は複合酸化物、酸素酸塩(イオン格子からなる)、固溶体のいずれの化合物でもよく、更に複合酸化物は単一酸化物の2種以上の組み合わせ、および単一酸化物と酸素酸塩との2種以上の組み合わせのいずれであってもよく、更に固溶体においても2種以上の金属酸化物の固溶体、および2種以上の酸素酸塩の固溶体のいずれであってもよい。
B成分のケイ酸塩鉱物は、水和物であってもよい。水和物における結晶水の形態はSi-OHとして水素珪酸イオンとして入るもの、金属陽イオンに対して水酸イオン(OH)としてイオン的に入るもの、および構造の隙間にHO分子として入るもののいずれの形態であってもよい。
B成分のケイ酸塩鉱物は、天然物に対応する人工合成物を使用することもできる。人工合成物としては、従来公知の各種の方法、例えば固体反応、水熱反応、および超高圧反応などを利用した各種の合成法から得られたケイ酸塩鉱物が利用できる。
各金属酸化物成分(MO)におけるケイ酸塩鉱物の具体例としては以下のものが挙げられる。ここでカッコ内の表記はかかるケイ酸塩鉱物を主成分とする鉱物等の名称であり、例示された金属塩としてカッコ内の化合物が使用できることを意味する。
Oをその成分に含むものとしては、KO・SiO、KO・4SiO・HO、KO・Al・2SiO(カルシライト)、KO・Al・4SiO(白リュウ石)、およびKO・Al・6SiO(正長石)、などが挙げられる。
NaOをその成分に含むものとしては、NaO・SiO、およびその水化物、NaO・2SiO、2NaO・SiO、NaO・4SiO、NaO・3SiO・3HO、NaO・Al・2SiO、NaO・Al・4SiO(ヒスイ輝石)、2NaO・3CaO・5SiO、3NaO・2CaO・5SiO、およびNaO・Al・6SiO(曹長石)などが挙げられる。
LiOをその成分に含むものとしては、LiO・SiO、2LiO・SiO、LiO・SiO・HO、3LiO・2SiO、LiO・Al・4SiO(ペタライト)、LiO・Al・2SiO(ユークリプタイト)、およびLiO・Al・4SiO(スポジュメン)などが挙げられる。
BaOをその成分に含むものとしては、BaO・SiO、2BaO・SiO、BaO・Al・2SiO(セルシアン)、およびBaO・TiO・3SiO(ベントアイト)などが挙げられる。
CaOをその成分に含むものとしては、3CaO・SiO(セメントクリンカー鉱物のエーライト)、2CaO・SiO(セメントクリンカー鉱物のビーライト)、2CaO・MgO・2SiO(オーケルマナイト)、2CaO・Al・SiO(ゲーレナイト)、オーケルマナイトとゲーレナイトとの固溶体(メリライト)、CaO・SiO(ウォラストナイト(α-型、β-型のいずれも含む))、CaO・MgO・2SiO(ジオプサイド)、CaO・MgO・SiO(灰苦土カンラン石)、3CaO・MgO・2SiO(メルウイナイト)、CaO・Al・2SiO(アノーサイト)、5CaO・6SiO・5HO(トバモライト、その他5CaO・6SiO・9HOなど)などのトバモライトグループ水和物、2CaO・SiO・HO(ヒレブランダイト)などのウォラストナイトグループ水和物、6CaO・6SiO・HO(ゾノトライト)などのゾノトライトグループ水和物、2CaO・SiO・2HO(ジャイロライト)などのジャイロライトグループ水和物、CaO・Al・2SiO・HO(ローソナイト)、CaO・FeO・2SiO(ヘデンキ石)、3CaO・2SiO(チルコアナイト)、3CaO・Al・3SiO(グロシュラ)、3CaO・Fe・3SiO(アンドラダイト)、6CaO・4Al・FeO・SiO(プレオクロアイト)、並びにクリノゾイサイト、紅レン石、褐レン石、ベスブ石、オノ石、スコウタイト、およびオージャイトなどが挙げられる。
更にCaOをその成分に含むケイ酸塩鉱物としてポルトランドセメントを挙げることができる。ポルトランドセメントの種類は特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、中よう熱、耐硫酸塩、白色などのいずれの種類も使用できる。更に各種の混合セメント、例えば高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどもB成分として使用できる。
またその他のCaOをその成分に含むケイ酸塩鉱物として高炉スラグやフェライトなどを挙げることができる。
ZnOをその成分に含むものとしては、ZnO・SiO、2ZnO・SiO(トロースタイト)、および4ZnO・2SiO・HO(異極鉱)などが挙げられる。MnOをその成分に含むものとしては、MnO・SiO、2MnO・SiO、CaO・4MnO・5SiO(ロードナイト)およびコーズライトなどが挙げられる。
FeOをその成分に含むものとしては、FeO・SiO(フェロシライト)、2FeO・SiO(鉄カンラン石)、3FeO・Al・3SiO(アルマンジン)、および2CaO・5FeO・8SiO・HO(テツアクチノセン石)などが挙げられる。
CoOをその成分に含むものとしては、CoO・SiOおよび2CoO・SiOなどが挙げられる。
MgOをその成分に含むものとしては、MgO・SiO(ステアタイト、エンスタタイト)、2MgO・SiO(フォルステライト)、3MgO・Al・3SiO(バイロープ)、2MgO・2Al・5SiO(コーディエライト)、2MgO・3SiO・5HO、3MgO・4SiO・HO(タルク)、5MgO・8SiO・9HO(アタパルジャイト)、4MgO・6SiO・7HO(セピオライト)、3MgO・2SiO・2HO(クリソライト)、5MgO・2CaO・8SiO・HO(透セン石)、5MgO・Al・3SiO・4HO(緑泥石)、KO・6MgO・Al・6SiO・2HO(フロゴバイト)、NaO・3MgO・3Al・8SiO・HO(ランセン石)、並びにマグネシウム電気石、直セン石、カミントンセン石、バーミキュライト、スメクタイトなどが挙げられる。
Feをその成分に含むものとしては、Fe・SiOなどが挙げられる。
ZrOをその成分に含むものとしては、ZrO・SiO(ジルコン)およびAZS耐火物などが挙げられる。
Alをその成分に含むものとしては、Al・SiO(シリマナイト、アンダリューサイト、カイアナイト)、2Al・SiO、Al・3SiO、3Al・2SiO(ムライト)、Al・2SiO・2HO(カオリナイト)、Al・4SiO・HO(パイロフィライト)、Al・4SiO・HO(ベントナイト)、KO・3NaO・4Al・8SiO(カスミ石)、KO・3Al・6SiO・2HO(マスコバイト、セリサイト)、KO・6MgO・Al・6SiO・2HO(フロゴバイト)、並びに各種のゼオライト、フッ素金雲母、および黒雲母などを挙げることができる。
上記ケイ酸塩鉱物の中でも特に好適であるのは、マイカ、タルクおよびワラストナイトである。
(タルク)
本発明におけるタルクとは、化学組成的には含水珪酸マグネシウムであり、一般的には化学式4SiO・3MgO・2HOで表され、通常層状構造を持った鱗片状の粒子であり、また組成的にはSiO56~65重量%、MgO28~35重量%、HO約5重量%程度から構成されている。その他の少量成分としてFeが0.03~1.2重量%、Alが0.05~1.5重量%、CaOが0.05~1.2重量%、KOが0.2重量%以下、NaOが0.2重量%以下などを含有している。タルクの粒子径は、沈降法により測定される平均粒径が0.1~15μm(より好ましくは0.2~12μm、更に好ましくは0.3~10μm、特に好ましくは0.5~5μm)の範囲であることが好ましい。更にかさ密度を0.5(g/cm)以上としたタルクを原料として使用することが特に好適である。タルクの平均粒径は、液相沈降法の1つであるX線透過法で測定されたD50(粒子径分布のメジアン径)をいう。かかる測定を行う装置の具体例としてはマイクロメリティックス社製Sedigraph5100などを挙げることができる。
またタルクを原石から粉砕する際の製法に関しては特に制限はなく、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、および容器回転式圧縮剪断型ミル法等を利用することができる。さらに粉砕後のタルクは、各種の分級機によって分級処理され、粒子径の分布が揃ったものが好適である。分級機としては特に制限はなく、インパクタ型慣性力分級機(バリアブルインパクターなど)、コアンダ効果利用型慣性力分級機(エルボージェットなど)、遠心場分級機(多段サイクロン、ミクロプレックス、ディスパージョンセパレーター、アキュカット、ターボクラシファイア、ターボプレックス、ミクロンセパレーター、およびスーパーセパレーターなど)などを挙げることができる。
さらにタルクは、その取り扱い性等の点で凝集状態であるものが好ましく、かかる製法としては脱気圧縮による方法、集束剤を使用し圧縮する方法等がある。特に脱気圧縮による方法が簡便かつ不要の集束剤樹脂成分を本発明の樹脂組成物中に混入させない点で好ましい。
(マイカ)
マイカは、マイクロトラックレーザー回折法により測定した平均粒径が10~100μmのものを好ましく使用できる。より好ましくは平均粒径が20~50μmのものである。マイカの平均粒径が10μm未満では剛性に対する改良効果が十分でなく、100μmを越えても剛性の剛性の向上が十分でなく、衝撃特性等の機械的強度の低下も著しく好ましくない。マイカは、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01~1μmのものを好ましく使用できる。より好ましくは厚みが0.03~0.3μmである。アスペクト比としては好ましくは5~200、より好ましくは10~100のものを使用できる。また使用するマイカはマスコバイトマイカが好ましく、そのモース硬度は約3である。マスコバイトマイカはフロゴバイトなど他のマイカに比較してより高剛性および高強度を達成でき、本発明の課題をより良好なレベルにおいて解決する。また、マイカの粉砕法としては乾式粉砕法および湿式粉砕法のいずれで製造されたものであってもよい。乾式粉砕法の方が低コストで一般的であるが、一方湿式粉砕法は、マイカをより薄く細かく粉砕するのに有効であり、その結果樹脂組成物の剛性向上効果はより高くなる。
(ワラストナイト)
ワラストナイトの繊維径は0.1~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましく、0.1~3μmが更に好ましい。またそのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は3以上が好ましい。アスペクト比の上限としては30以下が挙げられる。ここで繊維径は電子顕微鏡で強化フィラーを観察し、個々の繊維径を求め、その測定値から数平均繊維径を算出する。電子顕微鏡を使用するのは、対象とするレベルの大きさを正確に測定することが光学顕微鏡では困難なためである。繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のフィラーをランダムに抽出し、中央部の近いところで繊維径を測定し、得られた測定値より数平均繊維径を算出する。観察の倍率は約1000倍とし、測定本数は500本以上(600本以下が作業上好適である)で行う。一方平均繊維長の測定は、フィラーを光学顕微鏡で観察し、個々の長さを求め、その測定値から数平均繊維長を算出する。光学顕微鏡の観察は、フィラー同士があまり重なり合わないように分散されたサンプルを準備することから始まる。観察は対物レンズ20倍の条件で行い、その観察像を画素数が約25万であるCCDカメラに画像データとして取り込む。得られた画像データを画像解析装置を使用して、画像データの2点間の最大距離を求めるプログラムを使用して、繊維長を算出する。かかる条件の下では1画素当りの大きさが1.25μmの長さに相当し、測定本数は500本以上(600本以下が作業上好適である)で行う。
本発明のワラストナイトは、その元来有する白色度を十分に樹脂組成物に反映させるため、原料鉱石中に混入する鉄分並びに原料鉱石を粉砕する際に機器の摩耗により混入する鉄分を磁選機によって極力取り除くことが好ましい。かかる磁選機処理によりワラストナイト中の鉄の含有量はFeに換算して、0.5重量%以下であることが好ましい。
珪酸塩鉱物(より好適には、マイカ、タルク、ワラストナイト)は、表面処理されていないことが好ましいが、シランカップリング剤、高級脂肪酸エステル、およびワックスなどの各種表面処理剤で表面処理されていてもよい。さらに各種樹脂、高級脂肪酸エステル、およびワックスなどの集束剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し、1.0~80.0重量部、好ましくは10.0~75.0重量部、より好ましくは25.0~70.0重量部である。B成分の含有量が1.0重量部未満の場合、UL746C f1定格認証における水暴露試験後の難燃性が低下する。一方、含有量が80.0重量部を超えると、耐衝撃性が著しく悪化しさらにはシャルピー衝撃強度保持率も低下する。また難燃性が著しく低下しさらにはUL746C f1定格認証における水暴露試験後の難燃性も著しく低下する。
(C成分:芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体)
C成分として使用される芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体とは、一般的に樹脂組成物の耐衝撃性の向上を目的に使用されるものであり、例えば、A-B-A型トリブロック共重合体及びA-B型ジブロック共重合体である。C成分として、芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体以外の衝撃改質材を使用した場合、難燃性が低下しさらにはUL746C f1定格認証における水暴露試験後の難燃性も著しく低下する。
A-B型及びA-B-A型ブロック共重合体ゴム添加剤には、1又は2つの芳香族ビニルブロック(通例スチレンブロックである)とゴムブロック(例えばブタジエンブロックを部分的に水添したもの)とを含む熱可塑性ゴムがある。これらのトリブロック共重合体とジブロック共重合体の混合物が本発明において特に有用である。
上記、芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニルが挙げられる。また、芳香族ビニル系単量体以外にも、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル;エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体等を用いることができる。
更に、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート等の多価アルコール;トリメタクリル酸エステル、トリアクリル酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等のカルボン酸アリルエステル、ジアリルフタレート、ジアリルセバケート、トリアリルトリアジン等のジ及びトリアリル化合物等の架橋性単量体を併用することもできる。
なお、これらのビニル系単量体および架橋性単量体は、1種または2種以上で使用することができる。
好適な芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体の製造方法は、例えば特開平8-301929に開示されている。芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体の典型的な例には、特に制限はないが、SBRと称されるスチレン-ブタジエンブロック共重合体、SBSと称されるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、SISと称されるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の、ブタジエン重合体ブロック及びイソプレン重合体ブロックを夫々水素添加して得られ、一般にSEBS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)、SEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)、SEP(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体)及びSEEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)と称されるものが挙げられる。
また、上述のブロック共重合体は水酸基、アミド基、アミノ基、カルボン酸基、酸無水物基、グリシジル基、メルカプト基およびそれらの誘導体から選ばれる一種以上の官能基を有する変性化合物で変性されているものを使用してもよい。
好適な芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体としては、芳香族ビニル化合物と(水添)共役ジエンとの重量比が5/95~95/5、好ましくは10/90~90/10の範囲にあり、さらに、ブロック共重合体の共役ジエンに基づく不飽和結合の50%以上が水素添加された水添ブロック共重合体から構成されている。ここで、ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物と共役ジエンとの重量比が5/95~95/5の範囲からはずれると、本発明の耐衝撃性の向上効果を得ることができない場合がある。一方、水添率が上記の範囲を下回ると樹脂組成物の耐熱性や剛性が著しく低下する場合がある。
かかるA-B及びA-B-Aブロック共重合体は数々の供給元から市販されており、Kraton Polymers社からKRATONという商品名で、またクラレ(株)からセプトン(SEPTON)という商品名で市販されている。
C成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.1~9.0重量部、好ましくは1.0~8.0重量部、より好ましくは1.5~6.0重量部である。C成分の含有量が0.1重量部未満では、耐衝撃性が著しく悪化し、9.0重量部を超えると、難燃性が低下しさらにはUL746C f1定格認証における水暴露試験後の難燃性も著しく低下する。
(D成分:酸変性ポリオレフィン樹脂)
本発明のD成分として使用される酸変性ポリオレフィン樹脂としては、カルボキシ基および/またはその誘導体基を有するオレフィン系ワックスが好ましく使用される。カルボキシ基誘導体としては、カルボン酸無水物基、カルボン酸の金属塩、カルボン酸のアルキルエステルまたはアリールエステル等が挙げられる。このカルボキシ基および/またはその誘導体基は、このオレフィン系ワックスのどの部分に結合してもよく、またその濃度は特に限定されないが、該オレフィン系ワックス1g当り0.1~6meq/gの範囲が好ましい。0.1meq/gより少なくなると剛性および耐衝撃性の改良が不十分となる場合があり、6meq/gより多くなると該オレフィン系ワックス自身の熱安定性が悪化する場合があり好ましくない。
かかるオレフィン系ワックスの市販品としては、例えばダイヤカルナ-DC30M(三菱化成(株)製)、Licolub CE 2 TP(クラリアント(株)製)、ハイワックス酸処理タイプの2203A、1105A(三井石油化学工業(株)製)、ダウケミカル(株)製EXL3808および酸化パラフィン(日本精蝋(株)製)等が挙げられる。本発明において、オレフィン系ワックスは単独あるいは2種以上の混合物として使用できる。
D成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.1~1.9重量部であり、好ましくは0.4~1.7重量部、より好ましくは1.0~1.5重量部である。D成分の含有量が0.1重量部未満では、耐衝撃性が著しく悪化しさらにはシャルピー衝撃強度保持率も低下し、1.9重量部を超えるとUL746C f1定格認証における水暴露試験後の難燃性が著しく低下する。
(E成分:リン系難燃剤)
本発明のリン系難燃剤としては、ホスフェート化合物またはホスファゼン化合物が好適であり、特にホスフェート化合物が好適である。かかるホスフェート化合物は概して色相に優れるためである。またホスフェート化合物は可塑化効果があるため本発明の樹脂組成物の成形加工性を高められる点で有利である。かかるホスフェート化合物は、従来難燃剤として公知の各種ホスフェート化合物が使用できるが、より好適には特に下記一般式(1)で表される1種または2種以上のホスフェート化合物を挙げることができる。
[式中、Xは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4-ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、およびビス(4-ヒドロキシフェニル)サルファイドからなる群より選ばれる化合物から誘導される二価の基である。nは0~5の整数であり、n数の異なるリン酸エステルの混合物の場合は0~5の平均値である。R、R、R、およびRはそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、およびp-クミルフェノールからなる群より選ばれる化合物より誘導される一価の基である。]
更に好ましいものとしては、上記式中のXが、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、およびジヒドロキシジフェニルからなる群より選ばれる化合物から誘導される二価の基であり、R、R、R、およびRはそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換したもしくはより好適には置換していないフェノール、クレゾール、およびキシレノールからなる群より選ばれる化合物から誘導される一価の基であり、nが1~3の整数である成分を主成分として含む化合物が挙げられる。
また、好適なリン系難燃剤としてホスファゼン化合物も挙げられる。ホスファゼン化合物としては下記式(2)で表される環状フェノキシホスファゼンであることが好ましい。
〔式中mは3~25の整数を示す。Phはフェニル基を示す。〕
商業的に入手可能な環状フェノキシホスファゼンの代表的なものとしては、伏見製薬所製の「FP-110」等が挙げられる。
E成分の含有量は、A成分100重量部に対し、1.0~20.0重量部であり、好ましくは6.0~18.0重量部であり、7.0~15.0重量部がより好ましい。E成分の含有量が1.0重量部未満であると難燃性が悪化し、20.0重量部を超えると耐衝撃性が低下し、シャルピー衝撃強度保持率も低下する。
(F成分:含フッ素滴下防止剤)
本発明の樹脂組成物は、F成分として含フッ素滴下防止剤を含有する。かかる含フッ素滴下防止剤を上記難燃剤と併用することにより、より良好な難燃性を得ることができる。かかる含フッ素滴下防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることかできるが、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(フィブリル化PTFE)は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その数平均分子量は、150万~数千万の範囲である。かかる下限はより好ましくは300万である。かかる数平均分子量は、特開平6-145520号公報に開示されているとおり、380℃でのポリテトラフルオロエチレンの溶融粘度に基づき算出される。即ち、フィブリル化PTFEは、かかる公報に記載された方法で測定される380℃における溶融粘度が10~1013poiseの範囲であり、好ましくは10~1012poiseの範囲である。
かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、更に良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。また、特開平6-145520号公報に開示されているとおり、かかるフィブリル化PTFEを芯とし、低分子量のポリテトラフルオロエチレンを殻とした構造を有するものも好ましく利用される。
フィブリル化PTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(登録商標)6J、ダイキン化学工業(株)のポリフロンMPA FA500、F-201Lなどを挙げることができる。フィブリル化PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD-1、AD-936、ダイキン工業(株)製のフルオンD-1、D-2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30Jなどを代表として挙げることができる。
混合形態のフィブリル化PTFEとしては、(1)フィブリル化PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60-258263号公報、特開昭63-154744号公報などに記載された方法)、(2)フィブリル化PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4-272957号公報に記載された方法)、(3)フィブリル化PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06-220210号公報、特開平08-188653号公報などに記載された方法)、(4)フィブリル化PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9-95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11-29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これらの混合形態のフィブリル化PTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3800」(商品名)、GEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)およびPacific Interchem Corporation社製「POLY TS AD001」(商品名)などが例示される。
本発明の樹脂組成物からなる成形品が有する良好な機械的強度をより有効に活用するためには、上記フィブリル化PTFEはできる限り微分散されることが好ましい。かかる微分散を達成する手段として、上記混合形態のフィブリル化PTFEは有利である。また水性分散液形態のものを溶融混練機に直接供給する方法も微分散には有利である。但し水性分散液形態のものはやや色相が悪化する点に配慮を要する。混合形態におけるフィブリル化PTFEの割合としては、かかる混合物100重量%中、フィブリル化PTFEが、10~80重量%が好ましく、より好ましくは15~75重量%である。フィブリル化PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、フィブリル化PTFEの良好な分散性を達成することができる。
F成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.1~2.0重量部であり、好ましくは0.2~1.5重量部、より好ましくは0.3~1.0重量部である。F成分の含有量が2.0重量部を超えると耐衝撃性が悪化し、0.1重量部未満であると有効なドリップ防止効果が得られない。
(その他の添加剤について)
本発明の樹脂組成物には、成形加工時の分子量低下や色相を安定化させるための各種安定剤、離型剤、色材等を使用することができる。
(i)安定剤
本発明の樹脂組成物には公知の各種安定剤を配合することができる。安定剤としては、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤および光安定剤などが挙げられる。
(i-1)リン系安定剤
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。これらの中でも特に、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、およびホスホン酸、トリオルガノホスフェート化合物、およびアシッドホスフェート化合物が好ましい。尚、アシッドホスフェート化合物における有機基は、一置換、二置換、およびこれらの混合物のいずれも含む。該化合物に対応する下記の例示化合物においても同様にいずれをも含むものとする。
トリオルガノホスフェート化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、およびトリブトキシエチルホスフェートなどが例示される。これらの中でもトリアルキルホスフェートが好ましい。かかるトリアルキルホスフェートの炭素数は、好ましくは1~22、より好ましくは1~4である。特に好ましいトリアルキルホスフェートはトリメチルホスフェートである。
アシッドホスフェート化合物としては、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、およびビスフェノールAアシッドホスフェートなどが例示される。これらの中でも炭素数10以上の長鎖ジアルキルアシッドホスフェートが熱安定性の向上に有効であり、該アシッドホスフェート自体の安定性が高いことから好ましい。
ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、および2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが例示される。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
好適なリン系安定剤は、トリオルガノホスフェート化合物、アシッドホスフェート化合物、および下記式(3)で表されるホスファイト化合物である。殊にトリオルガノホスフェート化合物を配合することが好ましい。
(式(3)中、RおよびR’は炭素数6~30のアルキル基または炭素数6~30のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
上記の如く、ホスホナイト化合物としてはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、該ホスホナイトを主成分とする安定剤は、Sandostab P-EPQ(商標、Clariant社製)およびIrgafos P-EPQ(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販されておりいずれも利用できる。
また上記式(3)の中でもより好適なホスファイト化合物は、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトである。
(i-2)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
ヒンダードフェノール酸化防止剤としては、通常樹脂に配合される各種の化合物が使用できる。かかるヒンダードフェノール化合物としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセテート、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセチルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)ベンゼン、およびトリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)イソシアヌレートなどが例示される。
上記化合物の中でも、本発明においてはテトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、および3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましく利用される。特に3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましい。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
リン系安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤はいずれかが配合されることが好ましい。殊にリン系安定剤が配合されることが好ましく、トリオルガノホスフェート化合物が配合されることがより好ましい。リン系安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合量は、それぞれA成分100重量部に対し、好ましくは0.005~1重量部、より好ましくは0.01~0.3重量部である。
(i-3)紫外線吸収剤
本発明の樹脂組成物は紫外線吸収剤を含有することができる。本発明の樹脂組成物は良好な色相をも有することから、紫外線吸収剤の配合により屋外の使用においてもかかる色相を長期間維持することができる。
本発明の紫外線吸収剤としては、具体的にはベンゾフェノン系では、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、および2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
紫外線吸収剤としては、具体的に、ベンゾトリアゾール系では、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル、並びに2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2-(2’―ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2-ヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
紫外線吸収剤としては、具体的に、ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、および2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4-ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
紫外線吸収剤としては、具体的に環状イミノエステル系では、例えば2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2,2’-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが例示される。
また紫外線吸収剤としては、具体的にシアノアクリレート系では、例えば1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/またはヒンダードアミン構造を有する光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。上記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
上記の中でも紫外線吸収能の点においてはベンゾトリアゾール系およびヒドロキシフェニルトリアジン系が好ましく、耐熱性や色相の点では、環状イミノエステル系およびシアノアクリレート系が好ましい。上記紫外線吸収剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.01~2重量部、より好ましくは0.02~2重量部、さらに好ましくは0.03~1重量部、特に好ましくは0.05~0.5重量部である。
(i-4)その他の熱安定剤
本発明の樹脂組成物には、上記のリン系安定剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の熱安定剤を配合することもできる。かかるその他の熱安定剤は、これらの安定剤および酸化防止剤のいずれかと併用されることが好ましく、特に両者と併用されることが好ましい。かかる他の熱安定剤としては、例えば3-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物に代表されるラクトン系安定剤(かかる安定剤の詳細は特開平7-233160号公報に記載されている)が好適に例示される。かかる化合物はIrganox HP-136(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販され、該化合物を利用できる。更に該化合物と各種のホスファイト化合物およびヒンダードフェノール化合物を混合した安定剤が市販されている。例えば上記社製のIrganox HP-2921が好適に例示される。本発明においてもかかる予め混合された安定剤を利用することもできる。ラクトン系安定剤の配合量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.0005~0.05重量部、より好ましくは0.001~0.03重量部である。
またその他の安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール-3-ステアリルチオプロピオネートなどのイオウ含有安定剤が例示される。かかる安定剤は、樹脂組成物が回転成形に適用される場合に特に有効である。かかるイオウ含有安定剤の配合量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.001~0.1重量部、より好ましくは0.01~0.08重量部である。
(ii)離型剤
本発明の樹脂組成物は、その成形時の生産性向上や成形品の寸法精度の向上を目的として、更に、脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などの公知の離型剤を配合することもできる。本発明の樹脂組成物は、良好な流動性を有することから圧力伝播が良好で、歪の均一化された成形品が得られる。一方でその成形収縮率が低いことから離型抵抗が大きくなりやすく、その結果離型時における成形品の変形を招きやすい。上記特定の成分の配合は、かかる問題を樹脂組成物の特性を損なうことなく解決するものである。
かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数は、好ましくは3~32、より好ましくは5~30である。一方、脂肪族カルボン酸は好ましくは炭素数3~32、より好ましくは炭素数10~30の脂肪族カルボン酸である。その中でも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。本発明の脂肪酸エステルは、全エステル(フルエステル)が高温時の熱安定性に優れる点で好ましい。本発明の脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましい。また脂肪酸エステルの水酸基価は、0.1~30の範囲がより好ましい。更に脂肪酸エステルのヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
ポリオレフィン系ワックスとしては、分子量が1,000~10,000である、エチレン単独重合体、炭素原子数3~60のα-オレフィンの単独重合体または共重合体、もしくはエチレンと炭素原子数3~60のα-オレフィンとの共重合体が例示される。かかる分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により標準ポリスチレン換算で測定される数平均分子量である。かかる数平均分子量の上限は、より好ましくは6,000、更に好ましくは3,000である。ポリオレフィン系ワックスにおけるα-オレフィン成分の炭素数は好ましくは60以下、より好ましくは40以下である。より好適な具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、および1-オクテンなどが例示される。好適なポリオレフィン系ワックスはエチレン単独重合体、もしくはエチレンと炭素原子数3~60のα-オレフィンとの共重合体である。炭素原子数3~60のα-オレフィンの割合は、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。いわゆるポリエチレンワックスとして市販されているものが好適に利用される。
上記の離型剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.005~5重量部、より好ましくは0.01~4重量部、更に好ましくは0.02~3重量部である。
(iii)染顔料
本発明の樹脂組成物は更に各種の染顔料を含有し多様な意匠性を発現する成形品を提供できる。本発明で使用する染顔料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。更に本発明の樹脂組成物はメタリック顔料を配合してより良好なメタリック色彩を得ることもできる。メタリック顔料としては、アルミ粉が好適である。また、蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を配合することにより、発光色を生かした更に良好な意匠効果を付与することができる。
本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。
上記の染顔料の含有量は、A成分100重量部に対し、0.00001~1重量部が好ましく、0.00005~0.5重量部がより好ましい。
(iv)熱線吸収能を有する化合物
本発明の樹脂組成物は熱線吸収能を有する化合物を含有することができる。かかる化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR-362が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含む)およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.0005~0.2重量部が好ましく、0.0008~0.1重量部がより好ましく、0.001~0.07重量部がさらに好ましい。金属酸化物系近赤外線吸収剤、金属ホウ化物系近赤外線吸収剤および炭素フィラーの含有量は、本発明の樹脂組成物中、0.1~200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5~100ppmの範囲がより好ましい。
(v)光高反射用白色顔料
本発明の樹脂組成物には、光高反射用白色顔料を配合して光反射効果を付与することができる。かかる白色顔料としては二酸化チタン(特にシリコーンなど有機表面処理剤により処理された二酸化チタン)顔料が特に好ましい。かかる光高反射用白色顔料の含有量は、A成分100重量部に対し、3~30重量部が好ましく、8~25重量部がより好ましい。尚、光高反射用白色顔料は2種以上を併用することができる。
(vi)帯電防止剤
本発明の樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(1)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、並びにテトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩の如きホウ酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩の含有量はA成分とB成分との合計100重量部に対し、5重量部以下が適切であり、好ましくは0.05~5重量部、より好ましくは1~3.5重量部、更に好ましくは1.5~3重量部の範囲である。
帯電防止剤としては例えば、(2)有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸ナトリウム、有機スルホン酸カリウム、有機スルホン酸セシウム、有機スルホン酸ルビジウム、有機スルホン酸カルシウム、有機スルホン酸マグネシウム、および有機スルホン酸バリウムなどの有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が挙げられる。かかる金属塩は前述のとおり、難燃剤としても使用される。かかる金属塩は、より具体的には例えばドデシルベンゼンスルホン酸の金属塩やパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩などが例示される。有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の含有量はA成分とB成分との合計100重量部に対し、0.5重量部以下が適切であり、好ましくは0.001~0.3重量部、より好ましくは0.005~0.2重量部である。特にカリウム、セシウム、およびルビジウムなどのアルカリ金属塩が好適である。
帯電防止剤としては、例えば(3)アルキルスルホン酸アンモニウム塩、およびアリールスルホン酸アンモニウム塩などの有機スルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。該アンモニウム塩はA成分とB成分との合計100重量部に対し、0.05重量部以下が適切である。帯電防止剤としては、例えば(4)ポリエーテルエステルアミドの如きポリ(オキシアルキレン)グリコール成分をその構成成分として含有するポリマーが挙げられる。該ポリマーはA成分100重量部を基準として5重量部以下が適切である。
(vii)その他の添加剤、充填材
本発明の樹脂組成物には、発明の効果を損なわない範囲において、A成分、C成分、D成分以外の熱可塑性樹脂、ゴム質重合体、その他の流動改質剤、抗菌剤、流動パラフィンの如き分散剤、光触媒系防汚剤およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
A成分、C成分、D成分以外の熱可塑性樹脂としては、水添されていないスチレン系樹脂(ポリスチレン樹脂、HIPS樹脂、MS樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、MAS樹脂、およびSMA樹脂などのスチレン系樹脂)、芳香族ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(いわゆるPET-G樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂、およびポリブチレンナフタレート樹脂など)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)、環状ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、熱可塑性フッ素樹脂(例えばポリフッ化ビニリデン樹脂に代表される)、並びにポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、エチレン-(α-オレフィン)共重合体樹脂、ポリプロピレン樹脂、およびプロピレン-(α-オレフィン)共重合体樹脂など)が例示される。ゴム質重合体としては、各種のコア-シェル型グラフト共重合体および熱可塑性エラストマーが例示される。上記他の熱可塑性樹脂およびゴム質重合体は、A成分100重量部に対し、好ましくは2.0~9.0重量部、より好ましくは2.2~7.0重量部、さらに好ましくは2.5~5.0重量部である。
本発明の樹脂組成物には、発明の効果を損なわない範囲において、B成分以外の無機充填材を配合することができる。
本発明の樹脂組成物には、発明の効果を損なわない範囲において、強化フィラーとしてB成分以外の各種充填材を配合することができる。無機充填材としては、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、グラファイト、膨張黒鉛、気相成長法極細炭素繊維(繊維径が0.1μm未満)、カーボンナノチューブ(繊維径が0.1μm未満であり、中空状)、フラーレン、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、金属酸化物粒子、金属酸化物繊維、金属酸化物バルーン、各種ウイスカー(チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、および塩基性硫酸マグネシウムなど)、ホウ素化合物(窒化ホウ素など)、並びにレーザーダイレクトストラクチャリング剤などが例示される。これらの無機充填材は1種もしくは2種以上を併用して含むものであってもよい。無機充填材の含有量は、A成分100重量部に対し、40重量部以下であることが好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下が更に好ましい。
[樹脂組成物の製造]
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA成分、B成分、C成分、D成分、E成分、F成分および任意に他の添加剤を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーンなどによりかかる予備混合物の造粒を行い、その後ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練し、その後ペレタイザーによりペレット化する方法が挙げられる。
他に、各成分をそれぞれ独立にベント式二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法や、各成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法なども挙げられる。各成分の一部を予備混合する方法としては例えば、A成分以外の成分を予め予備混合した後、A成分に混合または押出機に直接供給する方法が挙げられる。
予備混合する方法としては例えば、A成分としてパウダーの形態を有するものを含む場合、かかるパウダーの一部と配合する添加剤とをブレンドしてパウダーで希釈した添加剤のマスターバッチを製造し、かかるマスターバッチを利用する方法が挙げられる。更にB成分、E成分及び任意の成分を独立に溶融押出機の途中から供給する方法なども挙げられる。尚、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融押出機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機などを挙げることができる。
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にかかるペレットの製造においては、光学ディスク用ポリカーボネート樹脂において既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の低減、運送または輸送時に発生する微小粉の低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を適宜行うことができる。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を行うことができる。またペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1~5mm、より好ましくは1.5~4mm、さらに好ましくは2~3.3mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1~30mm、より好ましくは2~5mm、さらに好ましくは2.5~3.5mmである。
[成形品]
本発明の樹脂組成物は、通常上述の方法で得られたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
(衝撃強度)
本発明の樹脂組成物は、ISO179に準拠して23℃における試験片のノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した値が、10kJ/m以上であることが好ましく、より好ましくは15kJ/m以上であり、さらに好ましくは20kJ/m以上である。ノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した値が、10kJ/m未満であると、各種用途において適用が難しい。なお、上限は特に限定されないが100kJ/m以下で十分性能を発揮する。
(難燃性)
本発明の樹脂組成物は、UL94に準拠した垂直燃焼試験において、試験片のUL94難燃ランクがV-0であることが好ましい。難燃ランクがV-0を下回った場合、高度な難燃性が要求される部材においては、適用が難しい。
(耐久性)
本発明の樹脂組成物は、UL746Cに準拠した水暴露試験実施前後において、23℃における試験片のノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した値から求められる下記式で表される保持率が好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上、もっとも好ましくは75%以上である。保持率が上記下限未満であると、屋外用途向けの構造部材や各種筐体部材、自動車関連部品においては、適用が難しい。
保持率(%)=(水暴露試験後のシャルピー衝撃強度/水暴露試験前のシャルピー衝撃強度)×100
また、同じくUL746Cに準拠した水暴露試験実施後において、試験片のUL94難燃ランクが維持されることが望ましい。難燃ランクが維持されない場合、屋外用途向けの構造部材や各種筐体部材、自動車関連部品においては、適用が難しい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性および難燃性に優れ、さらにはUL746C f1定格認証における水暴露試験後の衝撃強度および難燃性の低下が抑制されることから、情報通信ボックス等の屋外電気・電子機器筐体といった屋外使用されるエンクロージャー用途に好適に用いることができ、産業上の効果は極めて大である。
本発明者が現在最良と考える発明の形態は、上記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例をあげて本発明を更に説明する。また、特に説明が無い限り実施例中の部は重量部、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によって実施した。
(I)樹脂組成物の評価
(i)シャルピー衝撃強度
下記方法で得られた厚み4mmのISO曲げ試験片を用いて、ISO179に従い、23℃の雰囲気下でノッチ付きのシャルピー衝撃強度の測定を実施した。
(ii)難燃性
米国アンダーライターラボラトリー社が定めるUL94垂直燃焼試験に従い、下記方法で得られた厚み2.0mmのUL試験片を用いて燃焼試験を実施した。結果はV-0、V-1、V-2およびnotVに分類して評価した。
(iii)耐久性
(a)UL746C f1定格認証における水暴露試験後のシャルピー衝撃強度保持率
下記方法で得られた厚み4mmのISO曲げ試験片を米国アンダーライターラボラトリー社が定めるUL746C f1定格認証における水暴露試験に準拠し、70℃の温水中へ7日間浸漬した後、ISO179に従い23℃の雰囲気下でノッチ付きのシャルピー衝撃強度の測定を実施した。この結果および(1)シャルピー衝撃強度の結果より、下記式によりノッチ付きのシャルピー衝撃強度の保持率を算出した。
シャルピー衝撃強度保持率(%)=(水暴露試験後のシャルピー衝撃強度/水暴露試験前のシャルピー衝撃強度)×100
(b)UL746C f1定格認証における水暴露試験後の難燃性
下記方法で得られた厚み2.0mmのUL試験片を米国アンダーライターラボラトリー社が定めるUL746C f1定格認証における水暴露試験に準拠し、70℃の温水中へ7日間浸漬した後、米国アンダーライターラボラトリー社が定めるUL94垂直燃焼試験に従い燃焼試験を実施した。結果はV-0、V-1、V-2およびnotVに分類して評価した。
[実施例1~19、比較例1~12]
(樹脂組成物の製造)
表1及び表2に示す組成でA成分~F成分および各種添加剤を計量して、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練してペレットを得た。A成分およびE成分を除く添加剤は、それぞれ配合量の10倍の濃度を目安に予めポリカーボネート樹脂との予備混合物を作成した後、ブレンダーによる全体の混合を行った。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX-30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。押出条件は吐出量25kg/h、スクリュー回転数200rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第一供給口からダイス部分まで260℃とした。なお、A成分~D成分、F成分および各種添加剤は第一供給口から、E成分は80℃に加熱した状態で液注装置(富士テクノ工業(株)製HYM-JS-08)を用いてシリンダー途中の第3供給口(第1供給口とベント排気口との間に位置)から、各々所定の割合になるよう押出機に供給した。押出して得られたストランドを水浴において冷却した後ペレタイザーでストランドカットを行い、ペレット化した。得られたペレットを80℃で6時間熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業(株)製、SE130EV-A)を用いて、シリンダー温度270℃、金型温度70℃にてISO曲げ試験片(ISO179)およびUL試験片を成形した。各種評価結果を表1及び表2に示す。
表1及び表2中の記号表記の各成分は下記の通りである。
(A成分)
A-1:ポリカーボネート樹脂[ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量2.2×10のポリカーボネート樹脂粉末]
(B成分)
B-1:タルク[(株)勝光山鉱業所製、ビクトリライトTK-RC(商品名)]
B-2:マイカ[キンセイマテック(株)製、KDM200(商品名)]
B-3:ワラストナイト[キンセイマテック(株)製、SH-1250(商品名)]
(C成分)
C-1:ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体(SEBS)[(株)クラレ製、セプトン8006(商品名)(スチレン含有量34重量%)]
C-2:ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体(SEEPS)[(株)クラレ製、セプトン4033(商品名)(スチレン含有量30重量%)]
C-3:ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体(SEPS)[(株)クラレ製、セプトン2005(商品名)(スチレン含有量20重量%)]
C-4:ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体(SEBS)[Kraton Polymers製、G1651EU(商品名)]
C-5:ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体(SEP)[(株)クラレ製、セプトン1020(商品名)(スチレン含有量36重量%)]
C-6(比較例):MBS[ローム・アンド・ハース・ジャパン製、パラロイド EXL-2620(商品名)]
C-7(比較例):ポリメチルメタクリレート-ポリブチルアクリレートブロック-ポリメチルメタクリレート共重合体[(株)クラレ製、クラリティーLA2140e(商品名)]
(D成分)
D-1:α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合によるオレフィン系ワックス[三菱ケミカル(株)製、ダイヤカルナ30M(商品名)]
(E成分)
E-1:ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)[大八化学工業(株)製、CR-741(商品名)]
(F成分)
PTFE:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン[ダイキン工業(株)製、ポリフロンMPA FA500(商品名)]
(その他の成分)
STB-1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤[BASF(株)製、Irganox1076(商品名)]
STB-2:ホスファイト系酸化防止剤[BASF(株)製、Irgafos168(商品名)]
UVA-1:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤[(株)ADEKA製、LA-31(商品名)]

Claims (5)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)ケイ酸塩鉱物(B成分)1.0~80.0重量部、(C)芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体(C成分)0.1~9.0重量部、(D)酸変性ポリオレフィン樹脂(D成分)0.1~1.9重量部、(E)リン系難燃剤(E成分)1.0~20.0重量部および(F)含フッ素滴下防止剤(F成分)0.1~2.0重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. B成分がタルク、マイカおよびワラストナイトからなる群から選ばれる少なくとも1種のケイ酸塩鉱物であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. C成分が、SEBS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)、SEPS(ポリスチレ-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)、SEP(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体)およびSEEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体)からなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族ビニル-(水添)共役ジエン型ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. E成分が、下記式(1)で表される難燃剤であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    [式中、Xは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4-ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトンおよびビス(4-ヒドロキシフェニル)サルファイドからなる群より選ばれる化合物から誘導される二価の基である。nは0~5の整数であり、n数の異なるリン酸エステルの混合物の場合は0~5の平均値である。R、R、R、およびRはそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、およびp-クミルフェノールからなる群より選ばれる化合物より誘導される一価の基である。]
  5. 請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
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