JP2024048433A - ビスフェノールaの製造方法、エポキシ樹脂の製造方法、及びエポキシ樹脂硬化物の製造方法 - Google Patents

ビスフェノールaの製造方法、エポキシ樹脂の製造方法、及びエポキシ樹脂硬化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱硬化性樹脂硬化物由来の着色成分を効率的に除去でき、色調の良好なビスフェノールAを製造することができる、ビスフェノールAの製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】熱硬化性樹脂硬化物のケミカルリサイクルで得られたビスフェノールAを、ビスフェノールAの製造プロセスで得られる母液と混合し、当該混合液を特定の工程に循環させることで、課題を解決する。【選択図】図1

Description

本発明は、ビスフェノールAの製造方法、エポキシ樹脂の製造方法、及びエポキシ樹脂硬化物の製造方法に関するものである。詳しくは、熱硬化性樹脂硬化物の分解を利用したビスフェノールAの製造方法に関するものである。更に、前記ビスフェノールAの製造方法で得られるビスフェノールAを用いたエポキシ樹脂の製造方法に関するものである。また、前記エポキシ樹脂の製造方法で得られるエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂硬化物の製造方法に関するものである。
エポキシ樹脂は、優れた接着性、電気特性、耐熱性より、接着剤、絶縁材、塗料、注型材料、複合材料などの様々な用途に使用されている重要な材料である。このエポキシ樹脂を硬化させて得られるエポキシ樹脂硬化物は容易には溶融せず、汎用な溶媒に溶解させることが困難である。これは、エポキシ樹脂硬化物が三次元的に架橋された、複雑な構造を有する所以である。
昨今のカーボンニュートラルに鑑み、エポキシ樹脂硬化物もモノマー原料に戻すケミカルリサイクルが求められている。しかしながら、前述のエポキシ樹脂硬化物の特性により困難であった。
このような状況下、エポキシ樹脂硬化物を分解及び溶解させ、再びエポキシ樹脂硬化物を得る方法が知られている。たとえば、エポキシ樹脂硬化物を分解し、その分解物を回収し、得られたエポキシ樹脂分解物を硬化剤として使用して、エポキシ樹脂硬化物を得る方法が知られている(特許文献1)。また、エポキシ樹脂硬化物を酸化して、分解しやすい物質に変換した後に、ビスフェノ-ルAを得る方法がある(非特許文献1)。
また、樹脂からビスフェールAを得る方法としては、ポリカーボネート樹脂を分解し得られたビスフェノールAを、下記一般的なビスフェノールAの製造工程に組み込み、共に精製して高純度のビスフェノールAを得ることが知られている。
[一般的なビスフェノールAの製造工程]
工程1:アセトンとフェノールとを酸性触媒の存在下で反応させてビスフェノールAを含む反応液を得る工程
工程2:工程1で得られた反応液を蒸留分離して濃縮液を得る工程
工程3:工程2で得られた濃縮液を晶析・回収して付加物結晶と母液とを得る工程
工程4:付加物結晶からビスフェノールAを製造する工程
例えば、廃プラスチックを熱分解または化学的に分解して得られた分解生成物から回収された低純度のビスフェノールAを含む粗溶液を、上記一般的なビスフェノールAの製造工程で得られる濃縮液又は母液に供給する方法が知られている(特許文献2)。
また、廃ポリカーボネートをイソプロペニルフェノール等まで分解し、上記一般的なビスフェノールAの製造工程の工程1(反応工程)に供給する方法が知られている(特許文献3)。
特開2017-19959号公報 特開2005-112781号公報 特開2006-36668号公報
Green Chem.,2021,23,6356-6360.
ビスフェノールAは、エポキシ樹脂の原料のみならず、ポリカーボネート樹脂の原料として使用される。エポキシ樹脂もポリカーボネート樹脂も、優れた色調が求められ、その原料となるビスフェノールAも優れた色調であることが求められている。
しかしながら、エポキシ樹脂硬化物を分解した後に晶析する方法で得られたビスフェノールAは、純度が高いビスフェノールAであっても、優れた色調のビスフェノールAとしては不十分である場合があった。また、エポキシ樹脂硬化物の分解からビスフェノールAの精製までを独立して行う方法では、ビスフェノールAの純度を上げるために、工程数が多くなったり、設備が複雑化したり、大型化したりするため、コスト面やエネルギー面の観点から好ましくなかった。
また、上記の通り、樹脂を分解し得られたビスフェノールAを一般的なビスフェノールAの製造工程に供給し、共に精製して高純度のビスフェノールAを得ることも可能である。例えば、特許文献2の実施例1によれば、まず、ポリカーボネート樹脂からなるコンパクトディスクをシクロヘキサノールでアルコリシスし、減圧留去後に得られた留出しない重質分を得る。その後、通常のビスフェノールAの製造プロセスの晶析で得られた母液に、前記留出しない重質分を混合し、更に通常のビスフェノールAの製造プロセスの縮合反応で得られたビスフェノールAを含む反応生成物と混合して、濃縮する。得られた濃縮液を晶析後、固液分離し、ビスフェノールA-フェノール付加物結晶を得て、得られた付加物結晶からフェノールを留去することで、高純度のビスフェノールAが得られることが記載されている。しかしながら、得られるビスフェノールAは高純度ではあるが、その色調は、留出しない重質分に含まれる着色成分の影響により悪化してしまう問題があった。
また、ポリカーボネート樹脂をアルカリ分解して、イソプロペニルフェノールまで分解させる方法も可能である。例えば、特許文献2の実施例1によれば、公知の方法により、イソプロペニルフェノールまで分解し、得られた分解液を、ビスフェノールAを合成させるBPA合成工程に供給する。BPA合成工程によって得られるビスフェノールAを含む合成液を、ビスフェノールAの製造工程の濃縮工程へ供給し、常法により、高純度のビスフェノールAが得られることが記載されている。しかしながら、前記イソプロペニルフェノールは非常に不安定な化学種であり、前記分解液をビスフェノールの製造工程のビスフェノールAを合成させるビスフェノールA合成工程に供給する前に、イソプロペニルフェノールが様々な成分と縮合してしまう問題があった。また、縮合した成分により、得られるビスフェノールAの色調も悪化する問題もあった。
このように、従来の熱硬化性樹脂のケミカルリサイクルで得られるビスフェノールAは、色調の改善が必要であり、更なる改良が求められていた。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、熱硬化性樹脂硬化物由来の着色成分を効率的に除去でき、色調の良好なビスフェノールAを製造することができる、ビスフェノールAの製造方法を提供することを目的とする。更に、得られた前記ビスフェノールAを用いたエポキシ樹脂の製造方法を提供することを目的とする。また、得られた前記エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂硬化物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、エポキシ樹脂硬化物を分解し、粗ビスフェノールAを得て、この粗ビスフェノールAとビスフェノールAの製造工
程で得られる母液と混合した後に、ビスフェノールAを分解する条件で処理等を行い、得られた反応液をビスフェノールAの製造工程に循環してビスフェノールAを製造する方法を見出した。また、得られた前記ビスフェノールを用いたエポキシ樹脂の製造方法を見出した。また、得られた前記エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂硬化物の製造方法を見出した。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
[1]以下の工程A~工程Iを含む、ビスフェノールAの製造方法。
工程A:熱硬化性樹脂硬化物を溶媒中で分解してビスフェノールAを含む反応液a1を得て、前記反応液a1に水を供給してビスフェノールAのナトリウム塩を水相に抽出して水相a2を得て、前記水相a2にフェノールを供給してビスフェノールAを有する粗溶液Aを得る工程
工程B:アセトンとフェノールとを、酸触媒の存在下で脱水縮合させ、ビスフェノールAを含む反応液Bを得る工程
工程C:工程Bで得られた反応液Bから、未反応のアセトンと水を留去して、濃縮液Cを得る工程
工程D:工程Cで得られた濃縮液Cを晶析させてスラリー液を得て、前記スラリー液を固液分離して、母液D及びケーキdを得る工程
工程E:工程Dで得られたケーキdを精製してビスフェノールAを得る工程
工程F:工程Dで得られた母液Dの一部を循環させて、工程Bに供給する工程
工程G:前記粗溶液Aと前記母液Dの一部とを混合して、ビスフェノールAを含む混合液Gを得る工程
工程H:前記混合液Gから、溶液H1又は溶液H2を得る工程
ここで、前記溶液H1は、ビスフェノールAを分解する条件で、前記混合液G中のビスフェノールAを、フェノールとイソプロペニルフェノールに分解した後、フェノールとイソプロペニルフェノールを再結合して得られるビスフェノールAを含む溶液であり、
前記溶液H2は、ビスフェノールAを分解する条件で、前記混合液G中のビスフェノールAを、フェノールとアセトンに分解して得られるフェノールを含む溶液である。
工程I:工程Hで得られた溶液H1又は溶液H2を、工程B及び/又は工程Cに供給する工程
[2]前記工程Hにおいて、前記ビスフェノールAを分解する条件が、アルカリ性条件、酸性条件、及び超臨界水条件からなる群から選択されるいずれかである、[1]に記載のビスフェノールAの製造方法。
[3]前記工程Hにおいて、前記混合液G中のビスフェノールAを分解した後、又は、分解しながら蒸留を行い、分解生成物を含む留分hを回収し、残渣を除去する、[1]又は[2]に記載のビスフェノールAの製造方法。
[4]前記工程Hは、前記溶液H1を得る工程であり、且つ
アルカリ性条件下で前記混合液G中のビスフェノールAを分解しながら蒸留を行い、分解生成物であるフェノールとイソプロペニルフェノールとを含む留分h1を回収し、残渣を除去する分解・蒸留工程と、
前記留分h1に含まれるフェノールとイソプロペニルフェノールを再結合させてビスフェノールAを生成させる再結合工程と、を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のビスフェノールAの製造方法。
[5]前記留分h1が、イソプロペニルフェノールを1.0質量%以上含む、[4]に記載のビスフェノールAの製造方法。
[6]前記溶液H1が、ビスフェノールAを1.0質量%以上含む、[4]又は[5]に記載のビスフェノールAの製造方法。
[7]前記分解・蒸留工程は、前記残渣を酸触媒存在下で処理した後に蒸留を行い、フェノールの留分h1bを回収する、[4]~[6]のいずれかに記載のビスフェノールAの製造方法。
[8]前記工程Hは、前記溶液H2を得る工程であり、且つ
アルカリ性条件下で前記混合液G中のビスフェノールAを加水分解し、アセトンとフェノールを含む反応液h2を得るアルカリ加水分解工程と、
前記アルカリ加水分解工程で得られた反応液h2からアセトンの留分及び/又はフェノールの留分を回収し、残渣を除去するアセトン・フェノール回収工程と、を有する、請求項[1]~[3]のいずれかに記載のビスフェノールAの製造方法。
[9]前記溶液H2がアセトンを0.1質量%以上含む、[8]に記載のビスフェノールAの製造方法。
[10]前記工程Aで用いる溶媒がベンジルアルコールである、[1]~[9]のいずれかに記載のビスフェノールAの製造方法。
[11]前記工程Aが、金属アルコキシドの存在下で、前記エポキシ樹脂硬化物を分解して、前記粗溶液Aを得る工程である、[1]~[10]のいずれかに記載のビスフェノールAの製造方法。
[12]前記粗溶液AのビスフェノールAの含有量が1質量%以上である、[1]~[11]のいずれかに記載のビスフェノールAの製造方法。
[13][1]~[12]のいずれかに記載のビスフェノールAの製造方法で得られたビスフェノールAと、エピクロロヒドリンとを反応させる工程、を含むエポキシ樹脂の製造方法。
[14]前記エポキシ樹脂と、多価ヒドロキシ化合物原料とを反応させる工程、を含む、[13]に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
[15][13]に記載のエポキシ樹脂の製造方法で得られたエポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を硬化する工程、を含むエポキシ樹脂硬化物の製造方法。
[16][14]に記載のエポキシ樹脂の製造方法で得られたエポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を硬化する工程、を含むエポキシ樹脂硬化物の製造方法。
[17][1]~[12]のいずれかに記載のビスフェノールAの製造方法で得られたビスフェノールAを重合する工程、を含む、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明により、熱硬化性樹脂のケミカルリサイクルで得られるビスフェノールAであって、色調が改善されたビスフェノールAの製造方法を提供できる。また、得られたビスフェノールとエピハロヒドリンとを反応させることで、再度エポキシ樹脂を製造することができ、ケミカルリサイクル方法を提供できる。さらに、ビスフェノールAの製造工程で得られた反応液をビスフェノールAの製造工程に循環して、ビスフェノールAを効率よく製造する方法を提供できる。
ビスフェノールAの製造方法の一形態を示すフロー図である。 ビスフェノールAの製造方法の工程Hの一形態を示すフロー図である。 ビスフェノールAの製造方法の工程Hの一形態を示すフロー図である。 ビスフェノールAの製造方法の工程Hの一形態を示すフロー図である。 ビスフェノールAの製造方法の工程Hの一形態を示すフロー図である。 ビスフェノールAの製造方法の工程Hの一形態を示すフロー図である。
本発明の一形態は、以下の工程A~工程Iを含む、ビスフェノールAの製造方法である。
工程A:熱硬化性樹脂硬化物を溶媒中で分解してビスフェノールAを含む反応液a1を得て、前記反応液a1に水を供給してビスフェノールAのナトリウム塩を水相に抽出して水相a2を得て、前記水相a2にフェノールを供給してビスフェノールAを有する粗溶液Aを得る工程
工程B:アセトンとフェノールとを、酸触媒の存在下で脱水縮合させ、ビスフェノールAを含む反応液Bを得る工程
工程C:工程Bで得られた反応液Bから、未反応のアセトンと水を留去して、濃縮液Cを得る工程
工程D:工程Cで得られた濃縮液Cを晶析させてスラリー液を得て、前記スラリー液を固液分離して、母液D及びケーキdを得る工程
工程E:工程Dで得られたケーキdを精製してビスフェノールAを得る工程
工程F:工程Dで得られた母液Dの一部を循環させて、工程Bに供給する工程
工程G:前記粗溶液Aと前記母液Dの一部とを混合して、ビスフェノールAを含む混合液Gを得る工程
工程H:前記混合液Gから、溶液H1又は溶液H2を得る工程
ここで、前記溶液H1は、ビスフェノールAを分解する条件で、前記混合液G中のビスフェノールAを、フェノールとイソプロペニルフェノールに分解した後、フェノールとイソプロペニルフェノールを再結合して得られるビスフェノールAを含む溶液であり、
前記溶液H2は、ビスフェノールAを分解する条件で、前記混合液G中のビスフェノールAを、フェノールとアセトンに分解して得られるフェノールを含む溶液である。
工程I:工程Hで得られた溶液H1又は溶液H2を、工程B及び/又は工程Cに供給する工程
本発明の具体的実施形態について、図を用いて説明する。
図1中、破線に囲まれたプロセスは、ビスフェノールAの製造プロセスであり、原料であるアセトンとフェノールとを反応させ、反応物を精製することで、プロダクツであるビスフェノールAを得るプロセスを示す。
一方で、図1中の破線に囲まれていないプロセスは、熱硬化性樹脂硬化物を分解し、ビスフェノールAを含む粗溶液を得るケミカルリサイクルプロセスである。そして、ケミカルリサイクルで得られたビスフェノールAを含む粗溶液をビスフェノールA製造プロセスの特定の工程に加えることで、熱硬化性樹脂硬化物由来の着色成分を効率的に除去できる、ビスフェノールAの製造プロセスとなる。
以下、順に説明する。
<工程A>
工程Aは、熱硬化性樹脂硬化物を溶媒中で分解してビスフェノールAを含む反応液a1を得て、前記反応液a1に水を供給してビスフェノールAのナトリウム塩を水相に抽出して水相a2を得て、前記水相a2にフェノールを供給してビスフェノールAを有する粗溶液Aを得る工程である。
(熱硬化性樹脂硬化物)
工程Aにおいて分解される熱硬化性樹脂硬化物は、硬化剤を使用せず又は硬化剤を使用して熱硬化性樹脂を硬化したものである。
熱硬化性樹脂硬化物の熱硬化性樹脂としては、ビスフェノールAを含むエポキシ樹脂が好ましく、フェノール化合物と他の単量体との共重合体、フェノール化合物のエポキシ化物の単独重合体、フェノール化合物のエポキシ化物と他の単量体との共重合体;等が含まれていてもよい。このような熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、及びフェノール樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂のうち、エポキシ樹脂はエポキシ基を構成要素に持つ樹脂であり、フェノール樹脂は芳香族化合物であるフェノールを構成要素に持つ樹脂である。熱硬化性樹脂硬化物は、1種の熱硬化性樹脂の硬化物であってもよく、2種以上の熱硬化性樹脂の硬化物であってもよい。
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビ
スフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール化合物のジグリシジルエーテル化物、アルコール化合物のジグリシジルエーテル化物、これらのアルキル置換体、これらのハロゲン化物、及びこれらの水素添加物等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂の硬化剤としては、酸無水物、アミン化合物、フェノール化合物、及びイソシアネート化合物等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、熱硬化性樹脂を硬化する際に用いられる硬化促進剤としては、特に限定されず、アルカリ金属化合物、イミダゾール化合物、第三級アミン化合物、第四級アンモニウム塩、有機リン化合物等が挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂硬化物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、その他成分と混合されて複合材料を形成していてもよい。その他成分としては、例えば炭素、ガラス、金属、金属化合物等の無機物;ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂;等が挙げられる。無機物の形状としては、繊維、粒子、箔等が挙げられる。繊維は、不織布状であっても織布状であってもよく、織布状の場合、繊維束を織って作製したクロス材であってもよく、繊維束を一方向に配列したUD(Uni-Direction)材であってもよい。無機物は、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
(分解方法)
熱硬化性樹脂硬化物の分解方法としては、熱硬化性樹脂硬化物の公知の分解方法又は公知の分解方法に準じた分解方法であって、ビスフェノールAを生成し得る方法を適宜採用することができる。公知の方法としては、例えば分解触媒及び有機溶媒を含む処理液と熱硬化性樹脂硬化物とを接触させる方法が好ましく挙げられる。
処理液に含まれる分解触媒は、熱硬化性樹脂硬化物を分解してビスフェノールを生成し得る限り、特に限定されない。分解触媒としては、例えば、金属の水素化物、水酸化物、ホウ水素化物、アミド化合物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、及びアルコキシド等が挙げられる。分解触媒に含まれる金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム;及びアルミニウム;等であり、アルカリ金属であることが好ましく、ナトリウムであることがより好ましい。なお、分解触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
分解触媒は、上記化合物の中でも、反応容器の腐食、反応容器の減肉、及び反応容器の腐食に起因する生成物の汚染を抑制する観点から、金属アルコキシドであることが好ましい。金属アルコキシドは、アルコール類のヒドロキシ基の水素原子を、金属で置換した化合物であり、アルコールに金属を添加することで得ることができる。
金属アルコキシドを得るために使用されるアルコールとしては、特に限定されず、メタノール、エタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、1-ヘ
キサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、ドデカノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、4-メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200~400)、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、グリセリン、及びジプロピレングリコール等が挙げられる。これらのアルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
金属アルコキシドは、固体の状態でも、溶液の状態でもよい。金属アルコキシドとしては、熱硬化性樹脂硬化物の分解効率の観点から、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムノルマルブトキシド、ナトリウムセカンダーリーブトキシド、ナトリウムターシャリーブトキシドナトリウムベンジルアルコキシド(ナトリウムベンジルオキシド)、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、イソプロポキシド、カリウムノルマルブトキシド、カリウムセカンダーリーブトキシド、カリウムターシャリーブトキシド及びカリウムベンジルアルコキシド(カリウムベンジルオキシド)から選択されることが好ましい。
これらのアルカリ金属アルコキシドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒は、特に限定されず、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及び芳香族系溶媒等が挙げられる。
アルコール系溶媒は、特に限定されず、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、ドデカノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、4-メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、及びフェノキシエタノール等が挙げられる。アルコール系溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エーテル系溶媒は、特に限定されず、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ヘキシルメチルエーテル、オクチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン(モノグリム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ト
リエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)及びジシクロペンチルエーテル等が挙げられる。エーテル系溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
芳香族系溶媒は、特に限定されず、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン等のアルキルベンゼン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、及びジメチルナフタレン等のアルキルナフタレン等が挙げられる。芳香族系溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、アルコール系溶媒の1種又は2種以上とエーテル系溶媒の1種又は2種以上を併用してもよく、アルコール系溶媒の1種又は2種以上と芳香族系溶媒の1種又は2種以上とを併用してもよく、エーテル系溶媒の1種又は2種以上と芳香族系溶媒の1種又は2種以上とを併用してもよく、アルコール系溶媒の1種又は2種以上とエーテル系溶媒の1種又は2種以上と芳香族系溶媒の1種又は2種以上とを併用してもよい。
これらのうち、熱硬化性樹脂硬化物の分解物の溶解性に優れることから、アルコール系溶媒が好ましい。また、分解触媒として金属アルコキシドを用いる場合は、有機溶媒中の少なくとも一部として、該金属アルコキシドの原料アルコールと同じアルコール系溶媒を含むことが好ましい。
また、有機溶媒は、熱硬化性樹脂硬化物の分解において加熱を必要とする観点から、大気圧下での沸点が100℃以上の有機溶媒であることが好ましく、この沸点は120℃以上がより好ましく、150℃以上が特に好ましい。
このような観点からも、ベンジルアルコール(沸点205℃)は好ましい有機溶媒である。
処理液は、必要に応じて分解触媒及び有機溶媒以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、界面活性剤、及び低粘度溶媒等が挙げられる。
処理液における分解触媒の濃度は、熱硬化性樹脂硬化物の分解効率を向上させる観点から、0.001mol/L以上100mol/L以下であることが好ましく、0.005mol/L以上50mol/L以下であることがより好ましく、0.01mol/L以上20mol/L以下であることがさらに好ましい。分解触媒の濃度が高くなるほど、熱硬化性樹脂硬化物を効率的に分解することができる。分解触媒の濃度が低くなるほど、処理液の粘度を上昇させることなく熱硬化性樹脂硬化物を分解することができる。
処理液の調製に際して、分解触媒は、固体の状態で有機溶媒と混合してもよく、溶液の状態で有機溶媒と混合してもよい。処理液の調製に当たり、加熱を行う必要はなく、5~35℃程度の常温で、有機溶媒と分解触媒を混合することで、処理液を調製することができる。
処理液と熱硬化性樹脂硬化物とを接触させる際に用いる反応容器は、腐食防止の観点から、ステンレス鋼を含む容器であることが好ましい。ステンレス鋼としては、特に限定されないが、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼、及び析出硬化系ステンレス鋼等が挙げられ、好ましくはオーステナイト系ステンレス鋼、特に好ましくはSUS304、SUS316、又はSUS316Lである。
反応容器は、処理液と熱硬化性樹脂硬化物とを接触させることが可能であれば特に限定されない。分解槽として用いることができる容器であれば、箱型であってもよく、筒形で
あってもよく、網目状のかご型であってもよく、多孔質材料からなる容器であってもよい。
容器の体積に対する、容器内に配置する熱硬化性樹脂硬化物の体積の割合(充填率)は、溶解効率の観点から5%~70%の範囲内であることが好ましい。
処理液と熱硬化性樹脂硬化物とを接触させる際の処理液の加熱温度は、熱硬化性樹脂硬化物の分解効率を向上させる観点から、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上が特に好ましい。一方、この温度は溶媒及び分解生成物の変性を抑制する観点から300℃以下、特に280℃以下であることが好ましい。
処理液と熱硬化性樹脂硬化物との接触時間は、熱硬化性樹脂硬化物が十分に分解されて溶解する時間であればよく、熱硬化性樹脂の種類、用いた分解触媒及び有機溶媒の種類や濃度、処理温度によっても異なるが、通常2~50時間程度で熱硬化性樹脂硬化物の50重量%以上を分解して溶解させることができる。
熱硬化性樹脂硬化物と処理液とを接触させ、得られた反応液a1に水を供給して、ビスフェノールAのナトリウム塩を水相に抽出して、水相a2が得られる。ビスフェノールA以外の熱硬化性樹脂硬化物の分解生成物は、水に不溶又は難溶であるため、そのほとんどが油相(すなわち、有機相)中に残留する。そのため、本実施形態に係る製造方法によれば、熱硬化性樹脂硬化物の分解生成物からビスフェノールAを選択的に回収することが可能となる。
反応液a1に加える水は、特に限定されず、例えば水道水、蒸留水、イオン交換水、超純水等であってよい。
また、反応液a1には、酸を溶解した酸水溶液の態様で水を加えてもよい。
反応液a1に加える水の量としては、熱硬化性樹脂硬化物を分解して生成したビスフェノールAを十分に抽出できる量であれば、特に限定されない。具体的には、反応液a1に対する水の重量比は、0.001以上1000以下であることが好ましく、0.010以上100以下であることがより好ましく、0.050以上10以下であることがさらに好ましい。水量が上記下限以上であれば、ビスフェノールAを十分に抽出することができる。また、有機溶媒の量が上記上限以下であれば、ビスフェノールAの抽出にサイズの大きい容器を要することなく、高い製造効率を確保できる。
反応液a1は、固液分離して不溶解物を除去した反応液a1’を得て、該反応液a1’に水を加えることで水相a2を得てもよい。不溶解物とは、例えば、熱硬化性樹脂硬化物とともに分解されることなく反応液a1に残存し、水相及び有機相のいずれにも溶解しないものである。不溶解物としては、熱硬化性樹脂硬化物に含まれる無機物及び熱可塑性樹脂等;その他の不純物;等が挙げられる。反応液a1中に不溶解物が含まれる場合は、上記のように反応液a1’を経由することにより、不溶解物が除去され、ビスフェノールAの純度を高めることができる。
水相a2の抽出の方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。抽出した水相のpHは、アルカリ性であることが好ましく、pHが9以上であることがより好ましい。
得られた水相a2は、フェノールが供給され、粗溶液Aが得られる。
粗溶液A中のフェノールの含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。フェノールの含有量が少なすぎると、粗溶液中のビスフェノールAが析出してスラリー液となって送液が困難になった
りする場合がある。
粗溶液中の水分量は、ビスフェノールをフェノールとイソプロペニルフェノールに効率的に分解するため、通常10質量%以下に調整される。
また、粗溶液Aは、熱硬化性樹脂硬化物の不完全分解物(ビスフェノールの二量体や三量体といった多量体など)等の重質成分を含んでもよいが、重質成分が多すぎると、次工程で圧力変動を起こしてしまい、反応制御が複雑になるおそれがある。そのため、粗溶液A中に含まれる重質成分の含有量は、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
<工程B>
工程Bは、アセトンとフェノールとを、酸触媒の存在下で脱水縮合させ、ビスフェノールAを含む反応液Bを得る工程である。
原料のアセトンは、工業的に入手可能なものであれば特に制限されずに使用することができる。例えば、アセトンは、系外から新たに供給してもよいし、後述する工程Cで留去された未反応アセトンを循環させて工程Bのアセトンとしてもよいし、これらを混合して使用してもよい。
原料のフェノールは、工業的に入手可能なものであれば特に制限されずに使用することができる。例えば、フェノールは、系外から新たに供給してもよいし、後述する工程Cで留去される未反応フェノールや工程G後の溶液に含まれるフェノールを循環させて工程Bのフェノールとしてもよいし、これらを混合して使用してもよい。
酸触媒としては、酸性物質が使用され、塩酸、硫酸などの鉱酸、強酸性陽イオン交換樹脂、ポリシロキサン等の固体酸等を使用することができる。装置の腐食、反応後の触媒の分離、触媒活性などの点から、通常、スルホン酸型などの強酸性陽イオン交換樹脂が使用され、ベンゼン環総数の2~16%程度にスルホン酸基を導入したスチレン-ジビニルベンゼン共重合型の酸性陽イオン交換樹脂等を用いることができる。その平均粒径は、通常、0.2~2mm、好ましくは0.4~1.5mmである。また、選択率や転化率の向上を目的として、助触媒として含イオウアミン化合物を反応時に添加する、又は、酸触媒に担持させることが好ましく、工程Bにおける好適な酸触媒として、含イオウアミン化合物で部分的に変性した強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。
(アセトンとフェノールのモル比)
原料のフェノールとアセトンのモル比については特に制限はないが、フェノールを化学量論的量よりも過剰に用いるのがよく、アセトン1モル当たり、3~30モル、好ましくは5~20モルのフェノールが用いられる。アセトン1モルあたりのフェノールの使用量が3モルよりも小さいとビスフェノールAの選択率が低下し、30モルより大きい場合は反応速度の低下、装置の巨大化等の問題が発生する。
アセトンとフェノールの縮合反応は、公知の方法を用いることができる。フェノールとアセトンとの縮合反応は、反応方式に特に制限はないが、通常、固定床流通方式または懸濁床回分方式で行われる。固定床流通方式の場合、反応器に供給する原料混合物の液空間速度は、通常0.2~50/時間である。懸濁床回分方式の場合、反応温度、反応圧力によって異なるが、酸触媒の使用量は、原料混合物に対して通常20~100重量%、反応時間は通常0.5~5時間である。中でも、助触媒を固定化した酸性陽イオン交換樹脂を充填した縮合反応装置に、フェノールとアセトンを連続的に供給して反応させる固定床連続反応方式を用いるのが好ましい。
反応温度は、通常40~130℃、好ましくは40~90℃である。反応温度が40℃
未満では反応液が固化するおそれがあるので好ましくない。また、130℃を超える高温では反応触媒である酸性陽イオン交換樹脂の酸性基が触媒から脱離してビスフェノールAに混入してビスフェノールAが分解する原因となったり、高温により触媒が分解して触媒寿命が低下したりする。反応圧力は、通常、常圧~600kPa(絶対圧力)である。
[工程C]
工程Cは、工程Bで得られた反応液Bから、未反応のアセトンと水を留去して、濃縮液Cを得る工程である。工程Bで得られる反応液Bには、生成したビスフェノールA、未反応のアセトン、フェノール、副生した水やビスフェノールAの異性体等が含まれる。工程Cでは、反応液Bを減圧蒸留等の方法により、反応液Bから、未反応のアセトンと水を含む軽質成分を系外に除去することで、ビスフェノールAとフェノールを含む濃縮液Cが得られる。
また、工程Cでは、工程Bで得られた反応液Bから、アセントと、水と、フェノールの一部を留去し、濃縮液Cを得ることが好ましい。フェノールの一部を留去することで、アセトンと水がしっかりと除去された濃縮液Cが得られる。
例えば、工程Bで得られた反応液Bを蒸留塔に移送し、水、未反応のアセトン及びフェノールの一部を塔頂より除去した後、塔底より反応生成物を抜き出すことにより、工程Dで使用する濃縮液Cを得ることができる。得られた濃縮液Cは、工程Dに供される。また、留去されたアセトンは工程Bへ循環させてもよい。留去されたフェノールは、工程Bへ循環させたり、工程EにおいてビスフェノールAの洗浄用溶媒として利用してもよい。
蒸留は、好ましくは、反応温度50~150℃、圧力0.0065~0.040MPaで実施される。濃縮液C中のアセトン及び水は、それぞれ、通常0.1重量%以下まで除去されることが好ましい。これにより、晶析操作中のアダクト結晶の溶解度を低下させ、結晶収率が向上する。また、濃縮液CにおけるビスフェノールAの濃度は好ましくは20~50重量%である。ビスフェノールAの濃度が20重量%よりも小さい場合には収率が低くなり、また、50重量%より大きくなると濃縮液Cの粘度が高くなって輸送が困難になる。
[工程D]
工程Dは、工程Cで得られた濃縮液Cを晶析させてスラリー液を得て、前記スラリー液を固液分離して、母液D及びケーキdを得る工程である。
工程Dでは、まず、濃縮液Cを晶析させることで、ビスフェノールAとフェノールとの付加物結晶(アダクト結晶)を析出させる。例えば、濃縮液Cは、通常60~100℃、好ましくは70~90℃に調節して晶析装置に移送される。移送された濃縮液Cは、晶析装置において、60~100℃(好ましくは70~90℃)から40~70℃まで冷却されることで、アダクト結晶が析出しスラリー液となる。次いで、アダクト結晶が分散したスラリー液を固液分離して、母液Dとケーキdとをそれぞれ得る。得られた母液Dには、未析出のビスフェノールAおよびフェノールが含まれる。また、ケーキdはアダクト結晶が主成分である。
固液分離は、ろ過や遠心分離等の公知の手段により行うことができる。例えば、水平ベルトフィルター、ロータリーバキュームフィルター、ロータリープレッシャーフィルター、回分式ろ過機、遠心濾過分離器、遠心沈降分離器、それらのハイブリッド型の遠心分離器(スクリーンボールデカンタ)等を用いて固液分離することができる。
[工程E]
工程Eは、工程Dで得られたケーキdを精製してビスフェノールAを得る工程である。ケーキdの精製方法は、特に制限はなく、ケーキdを加熱溶融させた溶融液からフェノールを除去する方法や、トルエン等の炭化水素系溶媒を用いて晶析する方法等で、工程Dで得られたケーキdからフェノールを分離してビスフェノールAを回収する。
ケーキdからフェノールを除去する方法としては、通常、100~160℃にケーキdを加熱溶融し、得られた溶融液から、例えば、蒸留装置、薄膜蒸発器、フラッシュ蒸発器などを使用することにより、大部分のフェノールを除去する方法が採用される。また、溶融液中に残存している微量のフェノールを除去するために、上記の操作を行った後、更に、スチームストリッピング等により残存フェノールを除去し、ビスフェノールAを精製する方法も採用される。この方法は、例えば、特開昭63-132850号公報、特開平2-28126号公報などに記載されている。
上記のようにして得られた高純度で溶融状態のビスフェノールAは、造粒塔やフレーカーに送られ、固体のプリルやフレークとなって製品ビスフェノールAとなる。また、得られたビスフェノールAを、溶融法によるポリカーポネート樹脂の製造に供する場合のように、固体にせずに溶融状態のまま次工程に移送することも出来る。
[工程F]
工程Fは、工程Dで得られた母液Dの一部を循環させて、工程Bの脱水縮合に供給する工程である。
固液分離により得られた母液Dの一部は、工程Bが行われる縮合反応装置に接続された配管を介して縮合反応装置に供給され、工程Bに供される。また、固液分離により得られた母液Dの残りの全部または一部は、工程G又は工程Hが行われる装置に接続された配管を介して供給され、工程G又は工程Hに供される。
[工程G]
工程Gは、工程Aで得られた粗溶液Aと工程Dで得られた母液Dの一部を混合して混合液Gを得る工程である。
混合液Gは、工程Hを行う反応塔に移送する前に粗溶液Aと母液Dを混合して調製してもよいし、粗溶液Aと母液Dを、それぞれ工程Hを行う反応塔(装置)に移送して、反応塔内で調製することもできる。
工程Gは、工程Hにて粗溶液Aと母液Dとを含む混合液Gを処理する場合に行われる工程である。粗溶液Aと母液Dとは、工程HにおいてビスフェノールAの分解を行う装置とは別の装置にて混合した後、得られた混合液Gを工程HのビスフェノールAの分解を行う装置に供給することができる。また、粗溶液Aと、工程Dで得られた母液Dの一部とを、工程HにおいてビスフェノールAの分解を行う装置にそれぞれ供給して、該反応塔内で粗溶液Aと母液の一部の混合を行いながら、工程Hの分解を行ってもよい。
粗溶液Aと母液Dの混合比は、粗溶液Aが多すぎると工程Hで分解できない成分が増えてしまい、固化しやすくなったり、工程Hを行う反応槽から移送する配管が閉塞しやすくなる場合がある。そのため、母液Dに対する粗溶液Aの質量比(粗溶液Aの質量/母液Dの質量)は、10以下が好ましく、粗溶液A中のビスフェノールAの含有量等に応じて、5以下や、2以下、1以下など適宜決定することができる。母液Dに対する粗溶液Aの質量比の下限は特に制限はないが、粗溶液A中のビスフェノールAの含有量等に応じて、例えば、0.0001以上や、0.0001以上、0.001以上、0.01以上、0.1以上など適宜決定することができる。
混合液G中のビスフェノールAの含有量は、0.1質量%以上が好ましい。ビスフェノールAの含有量が多すぎると、ビスフェノールAが析出して、配管が閉塞してしまうため好ましくない。また、ビスフェノールAの含有量が少なすぎると、分解して得られるイソプロペニルフェノール又はアセトンの量が少なくなってしまうため好ましくない。
また、工程Gは、工程Aで得られた粗溶液Aと工程Dで得られた母液Dの一部を混合して蒸留を行い、混合液Gを得る工程としてもよい。例えば、粗溶液Aと母液Dを蒸留塔に移送することで、粗溶液Aと母液Dを混合して、さらにフェノールの一部を留去し、混合液Gを調製することができる。
蒸留は、温度100~250℃、圧力1kPa~100kPaで行うことができる。
母液Dの一部は、異性化、濃縮、及び晶析・固液分離等の処理を行ってから、工程Hに用いてもよい。例えば、工程Dで得られた母液D中の反応副生物を異性化処理する工程f1や、工程f1で異性化処理した後の溶液S3aを含む溶液S3を、晶析及び固液分離する工程f2を行ってもよい。
[工程f1]
工程f1は、工程Dで得られた母液D中の反応副生物を異性化処理する工程である。工程Dで得られた母液Dの組成は、通常、フェノールが65~85質量%、ビスフェノールAが1~20質量%、2,4’-異性体等の副生物が1~15質量%であり、ビスフェノールAの異性体(2,4-ビスフェノールA)等の不純物を多く含んでいる。異性化処理することで、ビスフェノールAの異性体は、ビスフェノールA(2,2-ビスフェノールA)に変換される。異性化処理後の溶液S3aには、ビスフェノールAが15~20質量%程度、2,4’-異性体等の副生物が5~10質量%程度含まれている。異性化処理後の溶液S3aの一部は、不純物の蓄積を防ぐために抜き出され、工程f2に送られる。また、異性化処理後の溶液S3aの一部は、工程B、工程C及び工程Dの少なくとも1つに再循環させてよい。
異性化処理は、触媒として、通常、スルホン酸型陽イオン交換樹脂が用いられ、反応温度50~100℃程度で、連続式でしかも押し流れ方式である固定床流通方式の場合、液空間速度(LHSV)は0.2~50/h程度で行われる。
[工程f2]
工程f2は、工程f1で異性化処理した後の溶液S3aを含む溶液S3を、晶析及び固液分離する工程である。溶液S3は、溶液S3a、又は、溶液S3aと粗溶液Aとを含む溶液S3bである。溶液S3aは、工程f1で異性化処理した後の液をそのまま用いてもよいし、工程f1で異性化処理した後の液からフェノールの一部を除去した濃縮液でもよい。溶液S3bは、溶液S3aと粗溶液Aとを含む液をそのまま用いてもよいし、溶液S3aと粗溶液Aとを含む液からフェノールの一部を除去した濃縮液でもよい。濃縮後の液のビスフェノールAの濃度は、20~50質量%程度であり、濃縮操作は、蒸留塔等により行うことができ、圧力5.3~40kPa程度、温度70~140℃程度の範囲で実施される。また、蒸発されたフェノールは、固液分離されたアダクト結晶のケーキを洗浄する洗浄液等として再利用してもよい。
溶液S3aを冷却することで、ビスフェノールAとフェノールとの付加結晶(アダクト結晶)を晶析させ、スラリー液を得る。溶液S3aは、晶析装置に供給する前に温水を冷媒とした熱交換器によって凝固点近くまで予冷後、晶析装置に供給してもよい。溶液S3aからアダクト結晶を晶析させる晶析は、冷却水が外部ジャケットに流れ、晶析装置の内壁に析出したアダクト結晶を、かきとり羽根によりかきとる機能を有する晶析装置(例えば、月島機械(株)製掻取型晶析機)等を用いて行うことができる。このような晶析装置
は、常時、晶析装置の内壁冷却面に析出してきたアダクト結晶をかきとり羽根でかきとることで内壁面を更新し、アダクト結晶を含むフェノールのスラリー液を緩やかに内部循環させることによりアダクト結晶を成長させ、結晶の破砕を極力防止する能力がある。
次いで、アダクト結晶が晶析したスラリー液を固液分離することで、アダクト結晶のケーキと母液S2aとがそれぞれ得られる。固液分離は、工程Dと同様に公知の方法によって行うことができる。
溶液S3bの場合も同様に、溶液S3bを冷却しスラリー液を得た後、スラリー液を固液分離することで、アダクト結晶のケーキと母液S2Bとがそれぞれ得られる。
得られた母液S2A及び母液S2Bは、工程Hに供される。アダクト結晶のケーキは溶融後、工程C及び/又は工程Dに再循環される。
工程f1及び工程f2は、工程Hにて、母液S2aと粗溶液Aとを含む溶液S2Aを処理する場合、又は、母液S2bを含む溶液2SBを処理する場合に行われる工程である。母液Dに工程f1及び工程f2を行って得られた母液S2aと、粗溶液Aとは、工程HにおいてビスフェノールAの分解を行う装置とは別の装置にて混合した後、工程HのビスフェノールAの分解を行う装置に供給することができる。また、母液Dに工程f1及び工程f2を行って得られた母液S2aと、粗溶液Aとを、工程HにおいてビスフェノールAの分解を行う装置にそれぞれ供給して、該反応塔内で粗溶液Aと母液S2aの混合を行いながら、工程Hの分解を行ってもよい。また、母液Dを工程f1にて異性化処理した後のS3aと粗溶液Aとを混合し、工程f2を行った後、工程HのビスフェノールAの分解を行う装置に供給することができる。
[工程H]
工程Hは、溶液H1又は溶液H2を得る工程である。溶液H1は、ビスフェノールAを含む溶液S中のビスフェノールAをフェノールとイソプロペニルフェノールに分解した後、フェノールとイソプロペニルフェノールを再結合して得られるビスフェノールAを含む溶液である。溶液H2は、ビスフェノールAを含む溶液S中のビスフェノールAを、フェノールとアセトン又はフェノールと2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロパノールに分解して得られる溶液である。
溶液Sは、下記(I)~(III)のいずれかである。
(I)粗溶液Aと母液Dの一部とを含む混合液G
(II)母液Dの一部を異性化処理及び晶析・固液分離処理し、得られた母液S2aと、粗溶液Aとを含む溶液S2A、又は、
(III)母液Dを異性化処理した後の溶液S3aと粗溶液Aとを含む溶液S3bを、晶析・固液分離処理し、得られた母液S2bを含む溶液S2B
以下、溶液Sが混合液Gである場合を例として、工程Hについて、より詳しく説明するが、溶液Sが溶液S2又は母液D2の場合も同様である。
工程Hは、ビスフェノールAを分解する条件で混合液Gを処理した後に再結合させることで得られるビスフェノールAを含む溶液H1、又は、ビスフェノールAを分解する条件で混合液Gを処理して得られる分解生成物を含む溶液H2を得る工程である。
また、工程Hでは、通常、ビスフェノールAを分解する条件下で前記混合液Gを処理した後、又は、処理しながら、蒸留を行い、分解生成物を含む留分hを回収し、残渣を除去する。除去する残渣の量は、工程Hに供される混合液Gの量に応じて適宜調整される。
工程Hにおいて、ビスフェノールAを分解する条件で混合液Gを処理したときの混合液G中のビスフェノールAの分解率は、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましい。上記の通り、工程Hでは、蒸留により分解生成物を蒸発させる。このとき、分解されなかった成分は、蒸発せずに、残渣中に残存する。分解率が低すぎると、蒸発せずに残渣中に残る成分が増加する。この成分は、廃棄物となるため好ましくない。なお、混合液G中のビスフェノールAの分解率は、混合液G中のビスフェノールAの量に対する留分hに含まれる分解生成物の量(分解生成物のモル数/混合液G中のビスフェノールAのモル数×100(%))として求めることができる。例えば、後述する工程H1では、混合液G中のビスフェノールAの量に対する留分h1に含まれるイソプロペニルフェノール量として求めることができる。
ビスフェノールAを分解する条件は、塩基性触媒の存在下でビスフェノールAをアルカリ分解するアルカリ性条件下、酸触媒の存在下でビスフェノールAを酸分解する酸条件、及びビスフェノールAを超臨界水中で分解する超臨界水条件からなる群から選択されるいずれかである。
ビスフェノールAをアルカリ性条件下でアルカリ分解する場合に用いることのできる塩基性触媒としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、各種フェノール塩、カルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、各種フェノール塩等が挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
ビスフェノールAを酸性条件で酸分解する場合に用いることのできる酸触媒としては、メタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸等の芳香族スルホン酸、硫酸、塩化水素、リン酸、硝酸、ホスフィン酸などの無機酸、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸性アルミナが挙げられる。中でも、スルホン酸が好ましく、芳香族スルホン酸がより好ましく、トルエンスルホン酸が更に好ましい。
ビスフェノールAの超臨界水分解に用いる「超臨界水」とは、水の臨界点(374℃、218atm)以上の状態の水のことである。
以下、アルカリ性条件、酸性条件および超臨界水条件で、混合液Gを処理した場合について、図2~図5に基づいて具体的に説明する。
(i)アルカリ分解
図2に示す工程H1、図3に示す工程H1aおよび図4に示す工程H2は、混合液中のビスフェノールAを塩基性触媒の存在下でアルカリ分解させる工程を有するものである。
[工程H1]
図2に示す工程H1は、ビスフェノールAを分解する条件で混合液Gを処理した後に再結合させることで得られるビスフェノールAを含む溶液H1を得る工程の一例である。工程H1は、ビスフェノールAを分解するアルカリ性条件下で混合液Gを処理しながら蒸留を行い、分解生成物であるフェノールとイソプロペニルフェノールとを含む留分h1を得るアルカリ分解・蒸留工程と、留分h1に含まれるフェノールとイソプロペニルフェノールを再結合させてビスフェノールAを生成させる再結合工程とを有する。ビスフェノールAを分解して生成するイソプロペニルフェノールの反応活性が高いため、速やかに再結合させないとビスフェノールA以外の縮合物と化してしまう。工程H1のように、ビスフェノールAを分解するアルカリ性条件下で混合液Gを処理しビスフェノールAを分解させな
がら蒸留を行うことで、生成したイソプロペニルフェノールが速やかに蒸発し、再結合工程に供給されるため、イソプロペニルフェノールの副反応を抑制することができる。
(アルカリ分解・蒸留工程)
アルカリ分解・蒸留工程は、例えば、底部に反応槽を上部に蒸留塔を有する反応蒸留装置によって行うことができる。混合液Gと塩基性触媒を底部の反応槽に移送し、加熱することで、混合液Gに含まれるビスフェノールAをフェノールとイソプロペニルフェノールに分解する。このときに、熱硬化性樹脂の不完全分解物(ビスフェノールAの二量体や三量体などの多量体)やビスフェノールAの異性体(2,4-ビスフェノール)等もフェノールとイソプロペニルフェノールに分解される。また、クロマン化合物などの不純物は重質化反応が起こり、高沸点物(ビスフェノールAよりも高い沸点をもつ化合物)に変換される。なお、ビスフェノールA等をフェノールとイソプロペニルフェノールに効率的に分解するため、混合液Gの水分量は通常0.01質量%以下に調製される。
アルカリ分解・蒸留の温度(すなわち、反応槽の温度)は、100℃以上で行うことが好ましく、150℃以上で行うことがより好ましい。また、350℃以下で行うことが好ましく、300℃以下で行うことが好ましい。
また、アルカリ分解・蒸留は、塔内の圧力が通常0.6kPa~常圧で行われ、好ましくは13~20kPaの条件で行うことができる。
分解により生じたフェノールとイソプロペニルフェノールは蒸発し、反応塔の塔頂部から抜き出され、留分h1として回収され、再結合工程を行う反応槽に移送される。このとき、再結合工程を行う反応槽に、留分h1と共にフェノールを供給しフェノールとイソプロペニルフェノールが所定の割合となるようにしてもよい。また、蒸発せずに反応槽内に残る反応液には、高沸点物やビスフェノールAの着色の原因となる物質が濃縮される。この反応液を、反応塔の塔底部から抜き出すことで、残渣は除去される。
留分h1は、イソプロペニルフェノールを1.0質量%以上含むことが好ましい。留分h1中のイソプロペニルフェノールの含有量が1.0質量%よりも少ないと再結合させた後のビスフェノールAの回収量が少なくなる。また、留分h1は、イソプロペニルフェノールを50質量%以下含むことが好ましく、30質量%以下含むことがより好ましい。イソプロペニルフェノールの含有量が多すぎるとビスフェノールA以外の縮合物と化してしまうためである。
また、留分h1は、イソプロペニルフェノールとフェノールとからなることが好ましく、留分h1におけるフェノールの含有量は、99質量%以下が好ましい。また、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が好ましい。
(再結合工程)
再結合工程では、フェノールとイソプロペニルフェノールとを酸触媒と接触させることにより再結合させてビスフェノールAを生成させる。これにより、フェノールとイソプロペニルフェノールが縮合し、ビスフェノールAが生成し、ビスフェノールAを含む溶液H1が得られる。再結合のための酸触媒としては、スルホン酸型の強酸性陽イオン交換樹脂が好ましく、再結合は、例えば、スルホン酸型の強酸性陽イオン交換樹脂が充填された反応装置で行うことができる。
反応温度は、通常45~130℃、好ましくは50~100℃である。また、酸触媒との接触時間は、通常5~200分、好ましくは15~120分である。
得られる溶液H1は、1.0質量%以上のビスフェノールAを含むことが好ましい。溶
液H1中のビスフェノールAの含有量が1.0質量%よりも少ないとビスフェノールA以外の成分が多く生成して、ビスフェノールAに含まれる不純物が増加してしまい、工程Eで得られるビスフェノールAの品質が悪化する傾向にある。また、溶液H1は、ビスフェノールAを50質量%以下含むことが好ましく、40質量%以下が含むことがより好ましい。ビスフェノールAの含有量が多すぎると生成したビスフェノールAが析出して、再結合を行った反応槽から工程B及び/又は工程Cを行う反応装置に溶液H1を移送する配管が閉塞しやすくなるためである。
また、工程H1は、残渣(蒸発せずに反応槽内に残る反応液)を酸触媒により分解する工程を有してもよい。これにより、アルカリ分解・蒸留工程において分解されなかったものが分解され、フェノールが生成する。例えば、図3に示す工程H1aのように、残渣を酸触媒の存在下で150~300℃で分解した後、得られたフェノールを含む反応液h1bを蒸留(温度150~300℃、圧力0.1kPa~10kPa)することで、フェノールを回収することができ、このフェノールも工程B及び/又は工程Cに戻すことができる。このときの酸触媒としては、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸が挙げられる。また、残渣は塩基性であるため、酸性条件で残渣を分解できるように混合する酸触媒の量が制御される。
[工程H2]
図4に示す工程H2は、ビスフェノールAを分解する条件で混合液Gを処理して得られる分解生成物を含む溶液H2を得る工程の一例である。工程H2は、ビスフェノールAを加水分解するアルカリ性条件下で混合液Gを処理し、アセトンとフェノールを含む反応液h2を得るアルカリ加水分解工程と、アルカリ加水分解工程で得られた反応液h2中のアセトン及び/又はフェノールを回収し、残渣を除去するアセトン・フェノール回収工程とを有する。このような工程H2は、反応液h2に含まれる水、塩基性触媒、アセトン、フェノール、及び残渣を効率良く分離させることができるため、好ましい。
(アルカリ加水分解工程)
アルカリ加水分解工程では、例えば、混合液Gと塩基性触媒と水を反応装置に移送し、加熱することで、混合液Gに含まれるビスフェノールAをアセトンとフェノールに分解する。このときに、熱硬化性樹脂の不完全分解物(ビスフェノールAの二量体や三量体などの多量体)やビスフェノールAの異性体(2,4-ビスフェノール)等もフェノールとアセトンに分解される。また、クロマン化合物などの不純物は重質化反応が起こり、高沸点物(ビスフェノールAよりも高い沸点をもつ化合物)に変換される。これにより、アセトンやフェノール、不純物などを含む反応液h2が得られる。
混合液Gと共に反応装置に供給される水の量は、多すぎると、分解効率が低下してしまい、少なすぎると分解出来ない成分が増加してアルカリ加水分解率が著しく低下してしまう傾向にある。混合液Gに対する水の質量比(水の質量/混合液Gの質量)は、1以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。また、300以下が好ましく、100以下がより好ましい。
加水分解の温度は、140℃以上で行うことが好ましく、160℃以上で行うことがより好ましい。また、350℃以下で行うことが好ましく、300℃以下で行うことが好ましい。また、加水分解の圧力は、通常、その温度の蒸気圧となる。
反応液h2は、アセトンを0.1質量%以上含むことが好ましい。反応液h2中のアセトンの含有量が1.0質量%よりも少ないとアセトンを適切に回収することが困難となる。また、反応液h2は、アセトン30質量%以下含むことが好ましく、20質量%以下が含むことがより好ましい。アセトンの含有量が多すぎるとアセトンが自己縮合してアセト
ンの回収率が低下するためである。
(アセトン・フェノール回収工程)
アセトン・フェノール回収工程では、まず、アルカリ加水分解工程で得られた反応液h2を中和し、蒸留することでアセトンを回収する。蒸発せずに残った反応液h2aには、フェノールや不純物等が濃縮される。次いで、反応液h2a中のフェノールを溶媒抽出し、フェノールを含む有機相h2bを得た後、有機相h2bを蒸留することでフェノールを回収する。また、フェノールの蒸留後に残った残渣を除去することで、不純物を除去できる。回収されたアセトンやフェノールはそれぞれ溶液H2として工程Bに供される。
具体的には、反応液h2を中和して、アセトン回収蒸留塔に移送し、温度30~200℃、圧力0.1~100kPaの条件でアセトンを蒸留し、塔頂部からアセトンを抜き出す。また、蒸留塔内の反応液h2a(塔底液)は溶媒抽出装置に移送される。
反応液h2aは、溶媒抽出装置内で、水不混和性有機溶媒で処理することで、フェノールを含む有機相h2bと、水相とを得て、これらを別々に抜き出す。水不混和性有機溶媒としては、tert-ブチルメチルエーテル、tert-アミルエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシルの酢酸エステル等が挙げられる。
抜き出されたフェノールを含む有機相h2bはフェノール回収蒸留塔に移送され、温度100~300℃、圧力0.1~10kPaの条件でフェノールを蒸留し、塔頂部からフェノールが抜き出される。また、フェノール回収蒸留塔に残った残渣(塔底液)は、塔底部から抜き出される。
また、アセトン・フェノール回収工程は、反応液h2からアセトンを蒸留し、抜き出した後に残った反応液を中和して、フェノールを蒸留して、アセトンとフェノールとをそれぞれ回収してもよい。
(ii)酸分解
図5に示す工程H3は、ビスフェノールAを分解する酸性条件で混合液Gを処理するものである。工程H3では、ビスフェノールAを分解する条件で混合液Gを処理して得られる分解生成物を含む溶液H2を得る。
[工程H3]
図5に示す工程H3は、ビスフェノールAを分解する酸性条件で混合液Gを処理し、フェノールを含む反応液h3を得る酸分解工程と、酸分解工程で得られた反応液h3を蒸留し、フェノールを含む留分を回収し、残渣を除去するフェノール回収工程とを有する。このような工程H3は、フェノールの回収率を改善できるため、好ましい。
酸分解の温度は、100℃以上で行うことが好ましく、150℃以上で行うことがより好ましい。また、300℃以下で行うことが好ましく、250℃以下で行うことが好ましい。また、酸分解の圧力は0.1~10kPaに設定することができる。酸分解工程で得られた反応液h3の蒸留は、温度150~300℃、圧力0.1~10kPaで行うことができる。
(iii)超臨界水分解
図6に示す工程H4は、ビスフェノールAを分解する超臨界水条件で混合液Gを処理するものである。
超臨界水を用いることで、ビスフェノールAを、フェノールと2-(4-ヒドロキシフ
ェニル)-2-プロパノールに分解できる。
[工程H4]
図6に示す工程H4は、ビスフェノールAを分解する超臨界水条件で混合液Gを処理し、フェノールを含む反応液h4を得る超臨界水分解工程と、超臨界水分解工程で得られた反応液h4を蒸留し、フェノールを含む留分を回収し、残渣を除去するフェノール回収工程とを有する。このような工程H4は、触媒を使用せずに分解できるため、好ましい。
超臨界水分解工程では、反応装置内に混合液Gと水と加え、水の臨界点以上の温度及び圧力とし水を超臨界状態とすることで、超臨界水中でビスフェノールAを分解させることができる。具体的には、温度300~700℃、好ましくは350~500℃に設定できる。
超臨界水分解工程で得られた反応液h4の蒸留は、温度150~300℃、圧力0.1~10kPaで行うことができる。
[工程I]
工程Iは、工程Hで得られた溶液H1又は溶液H2を、工程B及び/又は工程Cに供給する工程である。
例えば、再結合反応が行われる反応装置や、アセトン回収蒸留塔、フェノール回収蒸留塔と、工程Bが行われる縮合反応装置とを接続する配管を設け、再結合反応が行われる反応装置から抜き出された溶液H1や、アセトン回収蒸留塔から抜き出されたアセトン、フェノール回収蒸留塔から抜き出されたフェノールをこの配管を介して、工程Bに供することができる。
また、再結合反応が行われる反応装置や、アセトン回収蒸留塔、フェノール回収蒸留塔と、工程Cが行われる蒸留塔とを接続する配管を設け、再結合反応が行われる反応装置から抜き出された溶液H1や、アセトン回収蒸留塔から抜き出されたアセトン、フェノール回収蒸留塔から抜き出されたフェノールをこの配管を介して、工程Cに供することができる。
<ビスフェノールの用途>
上記ビスフェノールAの製造方法で得られるビスフェノールAは、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できるため、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマ-)として用いることが好ましく、中でもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
<エポキシ樹脂の製造方法>
上記ビスフェノールAの製造方法で得られるビスフェノールAは、再度エポキシ樹脂の製造に使用することができる。すなわち、本発明の別の形態は、上記方法で得られたビスフェノールAと、エピハロヒドリンとを反応させる工程、を含む、エポキシ樹脂の製造方法である。以下、本形態に係る製造方法により製造されるエポキシ樹脂を「再生エポキシ樹脂」と称することがある。
本実施形態に係る製造方法では、公知の一段法による再生エポキシ樹脂の製造方法に準じて再生エポキシ樹脂を製造することができる。一段法による再生エポキシ樹脂の製造方法は、上記方法で得られたビスフェノールAとエピハロヒドリンと反応させて再生エポキシ樹脂を得る方法である。ヒドロキシ化合物原料は、上記方法で得られたビスフェノールA以外にも、多価ヒドロキシ化合物(以下、「他の多価ヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)を含んでいてもよい。
ここで、「他の多価ヒドロキシ化合物」とは、2価以上のフェノール化合物及び2価以上のアルコール化合物の総称である。一段法による再生エポキシ樹脂の製造方法においては、「ヒドロキシ化合物原料」は、ビスフェノールと、必要に応じて用いられる他の多価ヒドロキシ化合物をあわせた全ヒドロキシ化合物である。
他の多価ヒドロキシ化合物としては、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールAD、ビスフェノールAF、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、チオジフェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂等の種々の多価フェノール類;種々のフェノール類とベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類;キシレン樹脂とフェノール類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類;重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール樹脂類;エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の鎖状脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロデカンジオール等の環状脂肪族ジオール類;ポリエチレンエーテルグリコール、ポリオキシトリメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類;等が例示される。
反応に際しては、ビスフェノールA及び他の多価ヒドロキシ化合物を、エピハロヒドリンに溶解させて均一な溶液とする。
エピハロヒドリンの使用量は、ヒドロキシ化合物原料(全ヒドロキシ化合物)の総水酸基1当量あたり、通常1.0~14.0当量、特に2.0~10.0当量に相当する量であることが好ましい。エピハロヒドリンの量が上記下限以上であると、高分子量化反応を制御しやすく、得られる再生エポキシ樹脂を適切なエポキシ当量とすることができるために好ましい。一方、エピハロヒドリンの量が上記上限以下であると、生産効率が向上する傾向にあるために好ましい。
次いで、上記溶液を撹拌しながら、ヒドロキシ化合物原料の総水酸基1当量あたり通常0.1~3.0当量、好ましくは0.8~2.0当量に相当する量のアルカリ金属水酸化物を固体又は水溶液で加えて反応させる。アルカリ金属水酸化物の添加量が上記下限以上であると、未反応の水酸基と生成したエポキシ樹脂が反応しにくく、高分子量化反応を制御しやすいために好ましい。また、アルカリ金属水酸化物の添加量が上記上限以下であると、副反応による不純物が生成しにくいために好ましい。ここで用いられるアルカリ金属水酸化物としては通常、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが挙げられる。
この反応は、常圧下又は減圧下で行うことができ、反応温度は好ましくは20~200℃、より好ましくは40~150℃である。反応温度が上記下限以上であると、反応を進行させやすく、且つ反応を制御しやすいために好ましい。また、反応温度が上記上限以下であると、副反応が進行しにくく、特にポリマー量を低減しやすいために好ましい。
また、この反応は、必要に応じて所定の温度を保持しながら反応液を共沸させ、揮発する蒸気を冷却して得られた凝縮液を油/水分離し、水分を除いた油分を反応系へ戻す方法により脱水しながら行われる。アルカリ金属水酸化物は、急激な反応を抑えるために、好ましくは0.1~24時間、より好ましくは0.5~10時間かけて少量ずつを断続的又は連続的に添加する。アルカリ金属水酸化物の添加時間が上記下限以上であると、急激に反応が進行するのを防ぐことができ、反応温度の制御がしやすくなるために好ましい。添加時間が上記上限以下であると、ポリマー量を低減しやすいため好ましい。
反応終了後、不溶性の副生塩を濾別して除くか、水洗により除去した後、未反応のエピハロヒドリンを加温及び/又は減圧留去によって留去し、除くことができる。
また、この反応においては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩;ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第三級アミン;2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド等のホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;等の触媒を用いてもよい。
さらに、この反応においては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;メトキシプロパノール等のグリコールエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;等の不活性な有機溶媒を用いてもよい。
上記のようにして得られた再生エポキシ樹脂の全塩素含有量を低減する必要がある場合には、アルカリとの反応によって全塩素含有量が低下した再生エポキシ樹脂を製造することができる。
アルカリとの反応には、再生エポキシ樹脂を溶解させるための有機溶媒を用いてもよい。反応に用いる有機溶媒は、特に制限されるものではないが、製造効率、取り扱い性、作業性等の面から、ケトン系の有機溶媒を用いることが好ましい。また、より加水分解性塩素量を下げる観点から、非プロトン性極性溶媒を用いてもよい。
ケトン系の有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒が挙げられる。効果や後処理の容易さなどから、特にメチルイソブチルケトンが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの非プロトン性極性溶媒の中では、入手し易く、効果が優れていることから、ジメチルスルホキシドが好ましい。
上記の溶媒の使用量は、アルカリによる処理に供する液中の再生エポキシ樹脂の濃度が通常1~95質量%となる量であり、好ましくは5~80質量%となる量である。
アルカリとしては、アルカリ金属水酸化物の固体又は溶液を使用することができる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムである。また、アルカリ金属水酸化物は、有機溶媒や水に溶解したものを使用してもよい。好ましくは、アルカリ金属水酸化物を水溶媒、又は有機溶媒に溶解した溶液として用いる。
使用するアルカリ金属水酸化物の量としては、アルカリ金属水酸化物の固形分換算で再生エポキシ樹脂100質量部に対して0.01~20.0質量部以下が好ましい。より好ましくは0.10~10.0質量部である。アルカリ金属水酸化物の使用量が上記下限以下の場合、全塩素含有量の低減効果が低く、また上記上限以上の場合は、ポリマーが多く生成するため収率が低下する。
反応温度は好ましくは20~200℃、より好ましくは40~150℃であり、反応時間は好ましくは0.1~24時間、より好ましくは0.5~10時間である。
反応後、水洗等の方法で過剰のアルカリ金属水酸化物や副性塩を除去し、さらに有機溶媒を加温及び/又は減圧留去及び/又は水蒸気蒸留で除去することができる。
<別のエポキシ樹脂の製造方法>
上記エポキシ樹脂の製造方法で得られたエポキシ樹脂は、多価ヒドロキシ化合物と更に反応させてもよい(別のエポキシ樹脂の製造方法とも称する)。
別のエポキシ樹脂の製造方法では、公知の二段法による再生エポキシ樹脂の製造方法に準じて再生エポキシ樹脂を製造することができる。二段法による再生エポキシ樹脂の製造方法は、エポキシ樹脂原料と多価ヒドロキシ化合物原料とを反応させる工程を有する。
エポキシ樹脂原料における再生エポキシ樹脂の含有量は特に限定されないが、再生エポキシ樹脂の含有量が高いと環境に優しいため、1~100質量%が好ましく、10~100質量%がより好ましい。
二段法による反応において、エポキシ樹脂原料と多価ヒドロキシ化合物原料の使用量は、その配合当量比で、(エポキシ基当量):(水酸基当量)=1:0.1~2.0となるようにするのが好ましい。より好ましくは、1:0.2~1.2である。この当量比が上記範囲内であると高分子量化を進行させやすく、また、エポキシ基末端をより多く残すことができるため好ましい。
また、二段法による反応においては触媒を用いてもよく、その触媒としては、エポキシ基とフェノール性水酸基、アルコール性水酸基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよい。例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。これらの中でも第4級アンモニウム塩が好ましい。また、触媒は1種のみを使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。触媒の使用量は、エポキシ樹脂原料に対して、通常0.001~10質量%である。
また、二段法による反応において、溶媒を用いてもよく、その溶媒としては、エポキシ樹脂原料を溶解するものであれどのようなものでもよい。例えば、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。溶媒は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また溶媒中の樹脂濃度は10
~95質量%が好ましい。より好ましくは20~80質量%である。また、反応途中で高粘性生成物が生じたときは溶媒を追加添加して反応を続けることもできる。反応終了後、溶媒は必要に応じて、除去することもできるし、さらに追加することもできる。
二段法による反応において、反応温度は好ましくは20~250℃、より好ましくは50~200℃である。反応温度が上記上限以上の場合、生成するエポキシ樹脂が劣化するおそれがある。また上記下限以下の場合、十分に反応が進まないことがある。また、反応時間は通常0.1~24時間、好ましくは0.5~12時間である。
<エポキシ樹脂硬化物の製造方法>
上記エポキシ樹脂の製造方法、又は上記別のエポキシ樹脂の製造方法で得られた再生エポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を硬化する工程を含むエポキシ樹脂硬化物の製造方法、も別の実施形態である。エポキシ樹脂組成物にさらに無機物を配合し、このエポキシ樹脂組成物を硬化することで、再度複合材料を得ることも可能である。本実施形態によれば、このように、新たなケミカルリサイクルを確立することもできる。
本実施形態において、エポキシ樹脂組成物には必要に応じて、上記製造方法によって得られる再生エポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、及びカップリング剤等を適宜配合することができる。
エポキシ樹脂組成物における再生エポキシ樹脂の含有量は特に限定されない。再生エポキシ樹脂の含有量が高いと環境に優しいため、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分100質量部に対して、再生エポキシ樹脂は40質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましい。他のエポキシ樹脂を含む場合、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分100質量部に対して、再生エポキシ樹脂は40~99質量部、60~99質量部などとすることができる。なお、「全エポキシ樹脂成分」とは、エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の量に相当し、再生エポキシ樹脂と必要に応じて用いられる他のエポキシ樹脂との合計である。
(硬化剤)
エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質を示す。なお、本実施形態においては、通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
エポキシ樹脂組成物において、硬化剤の含有量は、全エポキシ樹脂成分100質量部に対して好ましくは0.1~1000質量部である。また、より好ましくは500質量部以下である。
硬化剤としては、特に制限はなく一般的にエポキシ樹脂硬化剤として知られているものはすべて使用できる。例えば、フェノール系硬化剤、脂肪族アミン、ポリエーテルアミン、脂環式アミン、及び芳香族アミン等のアミン系硬化剤;酸無水物系硬化剤;アミド系硬化剤;第3級アミン;イミダゾール類;等が挙げられる。硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤を2種以上併用する場合、これらをあらかじめ混合して混合硬化剤を調製してから使用してもよいし、上記エポキシ樹脂の製造方法により得られる再生エポキシ樹脂、及び他のエポキシ樹脂等の各成分を混合する際に硬化剤の各成分をそれぞれ別々に添加して同時に混合してもよい。
フェノール系硬化剤の具体例としては、ビスフェノール化合物、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールF、ビス
フェノールC、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、ビスフェノールAF、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、チオジフェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、トリスフェノールメタン型樹脂、ナフトールノボラック樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂等の種々の多価フェノール、種々のフェノール類とベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、キシレン樹脂とフェノール類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジメトキサイド重縮合物、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジハライド重縮合物、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’-ジメトキサイドビフェニル重縮合物、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’-ジハライドビフェニル重縮合物等の各種のフェノール樹脂類等が挙げられる。
これらのフェノール系硬化剤は、1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
フェノール系硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分100質量部に対して好ましくは0.1~1000質量部であり、より好ましくは500質量部以下である。
アミン系硬化剤(ただし、第3級アミンを除く。)の例としては、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、及び芳香族アミン類等が挙げられる。
脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、及びテトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等が例示される。
ポリエーテルアミン類としては、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジエチレングリコールビス(プロピルアミン)、ポリオキシプロピレンジアミン、及びポリオキシプロピレントリアミン類等が例示される。
脂環式アミン類としては、イソホロンジアミン、メタセンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、及びノルボルネンジアミン等が例示される。
芳香族アミン類としては、テトラクロロ-p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノアニソール、2,4-トルエンジアミン、2,4-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルエタン、2,4-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、m-アミノフェノール、m-アミノベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、メチ
ルベンジルアミン、α-(m-アミノフェニル)エチルアミン、α-(p-アミノフェニル)エチルアミン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、及びα,α’-ビス(4-アミノフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン等が例示される。
以上で挙げたアミン系硬化剤は1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
上記のアミン系硬化剤は、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂成分中のエポキシ基に対する硬化剤中の官能基の当量比で0.1~2.0の範囲となるように用いることが好ましい。より好ましくは当量比で0.8~1.2の範囲である。この範囲内であると未反応のエポキシ基や硬化剤の官能基が残留しにくくなるために好ましい。
第3級アミンとしては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が例示される。
以上で挙げた第3級アミンは1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
上記の第3級アミンは、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂成分中のエポキシ基に対する硬化剤中の官能基の当量比で0.1~2.0の範囲となるように用いることが好ましい。より好ましくは当量比で0.8~1.2の範囲である。この範囲内であると未反応のエポキシ基や硬化剤の官能基が残留しにくくなるために好ましい。
酸無水物系硬化剤としては、酸無水物、及び酸無水物の変性物等が挙げられる。
酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、ヘット酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、及び1-メチル-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物等が挙げられる。
酸無水物の変性物としては、例えば、上述した酸無水物をグリコールで変性したもの等が挙げられる。ここで、変性に用いることのできるグリコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール類;並びにポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルグリコール類;等が挙げられる。さらには、これらのうちの2種以上のグリコール及び/又はポリエーテルグリコールの共重合ポリエーテルグリコールを用いることもできる。
以上で挙げた酸無水物系硬化剤は1種のみでも2種以上を任意の組み合わせ及び配合量で組み合わせて用いてもよい。
酸無水物系硬化剤を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分中のエポキシ基に対する硬化剤中の官能基の当量比で0.1~2.0の範囲となるように用いることが好ましい。より好ましくは当量比で0.8~1.2の範囲である。この範囲内であると未反応のエポキシ基や硬化剤の官能基が残留しにくくなるために好ましい。
アミド系硬化剤としてはジシアンジアミド及びその誘導体、及びポリアミド樹脂等が挙げられる。
アミド系硬化剤は1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
アミド系硬化剤を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分とアミド系硬化剤との合計に対してアミド系硬化剤が0.1~20質量%となるように用いることが好ましい。
イミダゾール類としては、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4(5)-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及びエポキシ樹脂と上記イミダゾール類との付加体等が例示される。なお、イミダゾール類は触媒能を有するため、一般的には硬化促進剤にも分類されうるが、本発明においては硬化剤として分類するものとする。
以上に挙げたイミダゾール類は1種のみでも、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
イミダゾール類を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分とイミダゾール類との合計に対してイミダゾール類が0.1~20質量%となるように用いることが好ましい。
エポキシ樹脂組成物においては前記硬化剤以外にその他の硬化剤を用いることができる。エポキシ樹脂組成物に使用することのできるその他の硬化剤は特に制限はなく、一般的にエポキシ樹脂の硬化剤として知られているものはすべて使用できる。
これらの他の硬化剤は1種のみで用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(他のエポキシ樹脂)
エポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂の製造方法又は別のエポキシ樹脂の製造方法によって得られる再生エポキシ樹脂以外に、さらに他のエポキシ樹脂(他のエポキシ樹脂)を含むことができる。他のエポキシ樹脂を含むことにより、様々な物性を向上させることができる。
エポキシ樹脂組成物に用いることのできる他のエポキシ樹脂は、上記再生エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂すべてが該当する。具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、ビスフェノールシクロドデシル型エポキシ樹脂、ビスフェノールジイソプロピリデンレゾルシン型エポキシ
樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、メチルハイドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルハイドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、チオジフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシスチルベン類から誘導されるエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、テルペンフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、フェノール・ヒドロキシベンズアルデヒドの縮合物から誘導されるエポキシ樹脂、フェノール・クロトンアルデヒドの縮合物から誘導されるエポキシ樹脂、フェノール・グリオキザールの縮合物から誘導されるエポキシ樹脂、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂から誘導されるエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されるエポキシ樹脂、アミノフェノールから誘導されるエポキシ樹脂、キシレンジアミンから誘導されるエポキシ樹脂、メチルヘキサヒドロフタル酸から誘導されるエポキシ樹脂、及びダイマー酸から誘導されるエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で用いてもよい。
エポキシ樹脂組成物が、上記の他のエポキシ樹脂を含む場合、その含有量は組成物中の、全エポキシ樹脂成分100質量部に対して好ましくは1~60質量部であり、より好ましくは40質量部以下である。
(硬化促進剤)
エポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤を含むことが好ましい。硬化促進剤を含むことにより、硬化時間の短縮、硬化温度の低温化が可能となり、所望の硬化物を得やすくすることができる。
硬化促進剤は特に制限されないが、具体例としては、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩等のリン系化合物、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、及びハロゲン化ホウ素アミン錯体等が挙げられる。
硬化促進剤として使用可能なリン系化合物としては、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、及びアルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類;これら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体;これら有機ホスフィン類と無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等の化合物を付加してなる化合物;等が例示される。
以上に挙げた硬化促進剤の中でも有機ホスフィン類、ホスホニウム塩が好ましく、有機
ホスフィン類が最も好ましい。また、硬化促進剤は、上記に挙げたもののうち、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
硬化促進剤は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の範囲で用いることが好ましい。硬化促進剤の含有量が上記下限以上であると、良好な硬化促進効果を得ることができ、一方、上記上限以下であると、所望の硬化物性が得られやすいために好ましい。
(無機充填材)
エポキシ樹脂組成物には無機充填材を配合することができる。無機充填材としては例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス粉、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、及びチッ化ホウ素等が挙げられる。これらは、1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。無機充填材の配合量はエポキシ樹脂組成物全体の10~95質量%が好ましい。
(離型剤)
エポキシ樹脂組成物には離型剤を配合することができる。離型剤としては例えば、カルナバワックス等の天然ワックスや、ポリエチレンワックス等の合成ワックス;ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸類及びその金属塩類;パラフィン等の炭化水素系離型剤;等を用いることができる。これらは、1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
離型剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.001~10.0質量部である。離型剤の配合量が上記範囲内であると、硬化特性を維持しつつ、良好な離型性を発現することができるために好ましい。
(カップリング剤)
エポキシ樹脂組成物には、カップリング剤を配合することができる。カップリング剤は無機充填材と併用することが好ましく、カップリング剤を配合することにより、マトリックスであるエポキシ樹脂と無機充填材との接着性を向上させることができる。カップリング剤としてはシランカップリング剤、及びチタネートカップリング剤等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン、さらに、エポキシ系、アミノ系、ビニル系の高分子タイプのシラン等が挙げられる。
チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート
、及びビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
これらのカップリング剤は、いずれも1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
エポキシ樹脂組成物にカップリング剤を用いる場合、その配合量は、全エポキシ樹脂成分100質量部に対し、好ましくは0.001~10.0質量部である。カップリング剤の配合量が上記下限以上であると、カップリング剤を配合したことによるマトリックスであるエポキシ樹脂と無機充填材との密着性の向上効果が向上する傾向にあり、一方、カップリング剤の配合量が上記上限以下であると、得られる硬化物からカップリング剤がブリードアウトしにくくなるために好ましい。
(その他の配合成分)
エポキシ樹脂組成物には、前記した以外の成分を配合することができる。その他の配合成分としては例えば、難燃剤、可塑剤、反応性希釈剤、及び顔料等が挙げられ、必要に応じて適宜に配合することができる。ただし、上記で挙げた成分以外のものを配合することを何ら妨げるものではない。
難燃剤としては、臭素化エポキシ樹脂、及び臭素化フェノール樹脂等のハロゲン系難燃剤;三酸化アンチモン等のアンチモン化合物;赤燐、リン酸エステル類、ホスフィン類等のリン系難燃剤;メラミン誘導体等の窒素系難燃剤;及び水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤;等が挙げられる。
(硬化方法)
エポキシ樹脂組成物を硬化させることによりエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。硬化方法について、特に限定はされないが、通常、加熱による熱硬化反応により硬化物を得ることができる。熱硬化反応時には、用いた硬化剤の種類によって硬化温度を適宜選択することが好ましい。例えば、フェノール系硬化剤を用いた場合、硬化温度は通常80~250℃である。また、これらの硬化剤に硬化促進剤を添加することで、その硬化温度を下げることも可能である。反応時間は、0.01~20時間が好ましい。反応時間が上記下限以上であると硬化反応が十分に進行しやすくなる傾向にあるために好ましい。一方、反応時間が上記上限以下であると加熱による劣化、加熱時のエネルギーロスを低減しやすいために好ましい。
(用途)
エポキシ樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物は、線膨張係数が低く、耐熱クラック性に優れている。
したがって、エポキシ樹脂硬化物はこれらの物性が求められる用途であれば、いかなる用途にも有効に用いることができる。例えば、自動車用電着塗料、船舶・橋梁用重防食塗料、飲料用缶の内面塗装用塗料等の塗料分野;積層板、半導体封止材、絶縁粉体塗料、コイル含浸用等の電気電子分野;橋梁の耐震補強、コンクリート補強、建築物の床材、水道施設のライニング、排水・透水舗装、車両・航空機用接着剤の土木・建築・接着剤分野;等の用途にいずれにも好適に用いることができる。
エポキシ樹脂組成物は、前記用途に対し硬化後に使用してもよく、前記用途の製造工程にて硬化させてもよい。
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[原料及び試薬]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量950及び183)及びは、三菱ケミカル株式会社の製品を使用した。
イオン交換樹脂は、三菱ケミカル株式会社のダイヤイオン(登録商標)「SK104」を使用した。
リカシッド(酸無水物)M-700は、新日本理化株式会社の製品を使用した。
キュアゾール2E4MZ(硬化触媒)は、四国化成工業株式会社の製品を使用した。
48質量%の水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム、ジシレンジアミド(DICY)、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(DCMU)、フェノール、アセトン、富士フィルム和光純薬株式会社の製品を使用した。
ベンジルアルコールは、三協化学株式会社の製品を使用した。
[分析]
ビスフェノールAの生成確認、純度、定量は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:JASCO社製RHPLC、JASCO社製03150-3M Unifinepak C18 3μm 150mm×3.0mmID
・方式:グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 アセトニトリル
B液 水
分析時間0分では、A液:B液=30:70(体積比、以下同様。)、分析時間0~25分で徐々にA液:B液=100:0にした。
・流速:0.40mL/分
・検出波長:280nm
<ビスフェノールAの溶解色>
ビスフェノールAの溶解色は、ビスフェノール0.4gとアセトン15gを混合して溶解色溶液を調製し、日本電色工業社製「ZE6000」を用い、そのハーゼン色数を測定した。
[陽イオン交換樹脂の調製]
陽イオン交換樹脂A:特許文献特開2012-201619号公報に記載の参考例1に従って、フェノールで完全に置換した、ダイヤイオン(登録商標)SK104を取得した。
陽イオン交換樹脂B:特許文献WO2012-108385号公報に記載の実施例1に従って、2-(2-メルカプトエチル)ピリジン変性強酸型陽イオン交換樹脂を取得した。
参考例1:単独樹脂硬化物とその分解液Aの調製
アルミ製のカップに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量950)500gと5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液10gを入れ、よく混合させることで混合物1を得た。得られた混合物1を、200℃で100時間硬化させることで、単独樹脂硬化物を得た。
攪拌翼、冷却管、及び温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でベンジルアルコール630g及び48質量%の水酸化ナトリウム水溶液50gを入れた。セパラブルフラスコ内をフル真空とした後に、内温を徐々に上げ、水及びベンジルアルコールの一部を抜き出すことで、セパラブルフラスコ内の水を完全に留去した。セパラブルフラスコ
内を窒素で復圧することで、処理液640gを得た。
得られた処理液640gに前記単独樹脂硬化物60gを加えた後、常圧で1時間かけて200℃まで昇温した。セパラブルフラスコの内液を200℃で3時間維持することで、単独樹脂硬化物は完全に溶解し、分解液A700gを得た。得られた分解液Aの一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールAが4.1質量%(4.1質量%×700g=28.7g)含まれていることを確認した。
参考例2:酸無水物硬化物とその分解液Bの調製
アルミ製のカップに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量183)300
g、リカシッド270g及びキュアゾール2E4MZ3gを入れてよく混合させることで混合物2を得た。得られた混合物2を、100℃で3時間加熱し、その後140℃で3時
間加熱することで、酸無水物硬化物を得た。
攪拌翼、冷却管、及び温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でベンジルアルコール630g及び48質量%の水酸化ナトリウム水溶液50gを入れた。セパラブルフラスコ内をフル真空とした後に、内温を徐々に上げ、水及びベンジルアルコールの一部を抜き出すことで、セパラブルフラスコ内の水を完全に留去した。セパラブルフラスコ内を窒素で復圧することで、処理液640gを得た。
得られた処理液640gに前記酸無水物硬化物60gを加えた後、常圧で1時間かけて200℃まで昇温した。セパラブルフラスコの内液を200℃で2時間維持することで、酸無水物硬化物は完全に溶解し、分解液B700gを得た。得られた分解液Bの一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールAが3.5質量%(3.5質量%×700g=24.5g)含まれていることを確認した。
参考例3:アミン硬化物とその分解液Cの調製
アルミ製のカップに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量183)280g、DICY2g及びDCMU3gを入れてよく混合させることで混合物3を得た。得られた混合物3を、150℃で3時間加熱することで、アミン硬化物を得た。
攪拌翼、冷却管、及び温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でベンジルアルコール630g及び48質量%の水酸化ナトリウム水溶液50gを入れた。セパラブルフラスコ内をフル真空とした後に、内温を徐々に上げ、水及びベンジルアルコールの一部を抜き出すことで、セパラブルフラスコ内の水を完全に留去した。セパラブルフラスコ内を窒素で復圧することで、処理液640gを得た。
攪拌翼、冷却管、及び温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でベンジルアルコール630g及び28質量%のメトキシナトリウムのメタノール溶液115gを入れた。その後、内温を徐々に上げ、メタノールを留去して、処理液650gを得た。
得られた処理液650gに前記アミン硬化物65gを加えた後、常圧で1時間かけて195℃(分解温度)まで昇温した。セパラブルフラスコの内液を195℃(分解温度)で3時間(分解)時間維持することで、アミン硬化物は完全に溶解し、分解液C715gを得
た。得られた分解液Aの一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールAが3.1質量%(3.1質量%×715g=22g)含まれていることを確認した。
<実施例1>
ジムロート冷却管、攪拌翼、温度計を備えたジャケット式セパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、参考例1で得られた分解液A500g及び水500gを入れて1時間混合した。その後、静置して有機相1と水相1を油水分離させ、水相1を抜き出した(水抽出)。得られた有機相1に再び水500gを加え、1時間混合した。その後、静置して有機相2と水相2を油水分離させ、水相2を抜き出した(水抽出)。
ジムロート冷却管、攪拌翼、温度計を備えたジャケット式セパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、前記水相1と前記水相2を入れた後、トルエン150gを入れて混合し、内温
を80℃まで昇温させた。内温を80℃に維持したまま、塩酸で水相を中和した。その後、静置して油水分離させ、水相3を抜き出して、有機相3を得た。得られた有機相3に水150gを加え、内温を80℃に維持したまま混合した。その後、静置して油水分離させ、水相4を抜き出して、有機相4を得た。得られた有機相4を、10℃まで降温させ、スラリー液を得た。得られたスラリー液を減圧濾過で濾別して、ケーキ(粗ビスフェノールA)18gを得た。得られたケーキを高速液体クロマトグラフィーで確認したところ、ビスフェノールAが79%含まれていた。
特許文献特開2005-220071号公報に記載の実施例1に従って、母液Dを取得した。得られた母液Dの組成は、83質量%のフェノール、10質量%のビスフェノールA、及びその他の成分7質量%であった。
前記母液D100gと前記ケーキ18gを、温度計、攪拌翼、留出管、オイルバス及び圧力調整機を備えた蒸留装置に入れた。次いで、徐々に180℃まで昇温し、留出量を見ながら、内圧を常圧から徐々に10kPaまで下げて、フェノール(17g)を留去し、混合液Gを得た。その後、窒素で復圧した。
混合液Gに含まれるビスフェノールAは、24g(100g×10質量%+18g×79質量%=24g)であった。
(アルカリ分解・蒸留工程)
混合液Gに、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.4gを添加し、フル真空とした。その後、オイルバスの温度を230℃まで上昇して、留分h1(82g)を得た。得られた留分h1の一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、フェノールが92質量%、イソプロペニルフェノールが8質量%含まれていることが分かった。アルカリ分解・蒸留工程でのビスフェノールAの分解率は、45%(82g×8質量%÷134g/モル÷25g×228g/モル×100%=45%)であった。なお、得られた釜残は、廃棄した。
(再結合工程)
陽イオン交換樹脂A1gを、攪拌翼、留出管、水バスを備えた丸底フラスコに入れた。この丸底フラスコに、得られた留分h1(82g)を速やかに入れ、70℃で2時間反応させた。その後、陽イオン交換樹脂Aを除くためデカンテーションして、溶液H1を得た。得られた溶液H1の一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールAが12質量%含まれていた。
前記溶液H1(20g)、前記母液D(170g)、試薬のフェノール(2g)、試薬のアセトン(8g)、陽イオン交換樹脂B(2g)を、攪拌翼、留出管、水バスを備えた丸底フラスコに入れ、70℃で5時間反応させた。その後、陽イオン交換樹脂Bを除くためデカンテーションして、反応液Bを得た。
得られた反応液B全量を、温度計、攪拌翼、留出管、オイルバス及び圧力調整機を備えた蒸留装置に移し、留出量を見ながら、内温を徐々に180℃まで昇温し、内圧を常圧から徐々に10kPaまで下げて、未反応のアセトン、水、フェノールの一部を留去して、濃縮液Cを得た。
得られた濃縮液Cを窒素で復圧して、内温をゆっくり降温させて30℃とし、スラリー液を得た。得られたスラリー液を濾過して、ケーキd(12g)を得た。
得られたケーキd(12g)とトルエン(60g)を、攪拌翼、留出管及び攪拌翼を備えたセパラブルフラスコに入れ、80℃で溶解させて有機相e1を得た。得られた有機相e1を脱塩水50gで洗浄し、有機相e2を得た。
得られた有機相e2を10℃まで降温し、スラリーe3を得た。得られたスラリーe3を濾過して、ケーキe4を得た。
得られたケーキe4を、ロータリーエバポレータで乾燥させて、ビスフェノールA(4
.5g)を得た。得られたビスフェノールAの溶解色はAPHA0であった。また、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールA純度は99.8質量%であった。
<実施例2>
実施例1において、参考例1で得られた分解液A500gの代わりに、参考例2で得られた分解液Bを用いた以外は実施例1と同様に実施した。
得られたケーキe4を、ロータリーエバポレータで乾燥させて、ビスフェノールA(4.3g)を得た。得られたビスフェノールAの溶解色はAPHA0であった。また、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールA純度は99.8質量%であった。
<実施例3>
実施例1において、参考例1で得られた分解液A500gの代わりに、参考例3で得られた分解液Cを用いた以外は実施例1と同様に実施した。
得られたケーキe4を、ロータリーエバポレータで乾燥させて、ビスフェノールA(4.3g)を得た。得られたビスフェノールAの溶解色はAPHA0であった。また、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールA純度は99.8質量%であった。
<比較例1>
ジムロート冷却管、攪拌翼、温度計を備えたジャケット式セパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、参考例1で得られた分解液A500g及び水500gを入れて1時間混合した。その後、静置して有機相1と水相1を油水分離させ、水相1を抜き出した(水抽出)。得られた有機相1に再び水500gを加え、1時間混合した。その後、静置して有機相2と水相2を油水分離させ、水相2を抜き出した(水抽出)。
ジムロート冷却管、攪拌翼、温度計を備えたジャケット式セパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、前記水相1と前記水相2を入れた後、トルエン150gを入れて混合し、内温を80℃まで昇温させた。内温を80℃に維持したまま、塩酸で水相を中和した。その後、静置して油水分離させ、水相3を抜き出して、有機相3を得た。得られた有機相3に水150gを加え、内温を80℃に維持したまま混合した。その後、静置して油水分離させ、水相4を抜き出して、有機相4を得た。得られた有機相4を、10℃まで降温させ、スラリー液を得た。得られたスラリー液を減圧濾過で濾別して、ケーキを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、ケーキ全量をオイルバス温度85℃、15Torr、3時間で乾燥させ、固体15gを得た。得られたビスフェノールAの溶解色はAPHA112であった。また、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールA純度は99質量%であった。
<比較例2>
前記母液D(170g)、試薬のフェノール(2g)、試薬のアセトン(8g)、陽イオン交換樹脂B(2g)を、攪拌翼、留出管、水バスを備えた丸底フラスコに入れ、70℃で5時間反応させた。その後、陽イオン交換樹脂Bを除くためデカンテーションして、反応液Bを得た。
得られた反応液B全量を、温度計、攪拌翼、留出管、オイルバス及び圧力調整機を備えた蒸留装置に移し、留出量を見ながら、内温を徐々に180℃まで昇温し、内圧を常圧から徐々に10kPaまで下げて、未反応のアセトン、水、フェノールの一部を留去し、窒素で復圧して、濃縮液C(170g)を得た。
得られた濃縮液C(170g)と実施例1で得られた粗ビスフェノールA(18g)を、攪拌翼、留出管、水バスを備えた丸底フラスコに入れて、80℃に加温して混合液を得た。内温をゆっくり降温させて30℃とし、スラリーを得た(晶析工程)。得られたスラ
リーを濾過して、ケーキd(15g)を得た。
得られたケーキd(15g)とトルエン(60g)を、攪拌翼、留出管及び攪拌翼を備えたセパラブルフラスコに入れ、80℃で溶解させて有機相e1を得た。得られた有機相e1を脱塩水50gで洗浄し、有機相e2を得た。
得られた有機相e2を10℃まで降温し、スラリーe3を得た。得られたスラリーe3を濾過して、ケーキe4を得た。
得られたケーキe4を、ロータリーエバポレータで乾燥させて、ビスフェノールA(5g)を得た。得られたビスフェノールAのハーゼン色数はAPHA44であった。また、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールA純度は99.4質量%であった。
実施例1~3、及び比較例1~2において、粗ビスフェノールAを混合する液、粗ビスフェノールAと混合させた後の処理方法、得られたビスフェノールA(BPA)のハーゼン色数、ビスフェノールA(BPA)の純度、を表1に纏めた。表1により、リサイクルビスフェノールAを母液Dと混合させ、工程Hを行い、工程Bに戻すことで、工程Eで得られたビスフェノールAのハーゼン色数が改善されることが分かる。
Figure 2024048433000002
<実施例4>
実施例1で得られた母液D18gと実施例1で得られた粗ビスフェノールA18gを、圧力計、熱電対、攪拌翼を備えたオートクレーブに入れ、混合液Gを得た。
(アルカリ加水分解工程)
オートクレーブに、更に、水(64g)、水酸化ナトリウム(2g)を入れ、窒素を流通させて置換し、オートクレーブを気密した。電気炉を250℃にして、オートクレーブをセットし、内温を250℃になるまで加熱した。250℃到達後、内圧が3.7MPaとなったことを確認し、2時間反応させた。その後、オートクレーブを電気炉から外し、氷水を入れた洗面器に1時間浸漬させた。その後、オートクレーブを開放し、三角フラスコに移し、反応液h2を得た。
反応液h2の一部を抜き出し、ガスクロマトグラフで組成を確認したところ、アセトンが1.2質量%確認された。
(アセトン・フェノール回収工程)
反応液h2に硫酸2.0gを加えて中和後、温度計、攪拌翼、精留塔、ウォーターバスを備えた蒸留装置に供給した。常圧下、加熱初留分としてリサイクルアセトン(0.8g
)と釜残(反応液h2a)を得た。
得られた釜残を、温度計、攪拌翼、冷却管を備えたフルジャケットセパラブルフラスコに全量移し、ジイソプロピルエーテルを加え、50℃で油水分離させ、水相を除去して、有機相h2bを得た。得られた有機相h2bを、温度計、攪拌翼を備えた単蒸留装置に供給した。常圧下、温度を上げてジイソプロピルエーテルを留出及び回収した後に、減圧にしてリサイクルフェノール(20g)を得た。
実施例1で得られた母液D(170g)、前記リサイクルフェノール(2g)、前記リサイクルアセトン(0.8g)、試薬アセトン(8.1g)、陽イオン交換樹脂B(2g)を、攪拌翼、留出管、水バスを備えた丸底フラスコに入れ、70℃で5時間反応させた。その後、陽イオン交換樹脂Bを除くためデカンテーションして、反応液Bを得た。
得られた反応液B全量を、温度計、攪拌翼、留出管、オイルバス及び圧力調整機を備えた蒸留装置に移し、留出量を見ながら、内温を徐々に180℃まで昇温し、内圧を常圧から徐々に10kPaまで下げて、未反応のアセトン、水、フェノールの一部を留去して、濃縮液Cを得た。
得られた濃縮液Cを窒素で復圧して、内温をゆっくり降温させて30℃とし、スラリーを得た。得られたスラリーを濾過して、ケーキd(9g)を得た。
得られたケーキd(9g)とトルエン(60g)を、攪拌翼、留出管及び攪拌翼を備えたセパラブルフラスコに入れ、80℃で溶解させて有機相e1を得た。得られた有機相e1を脱塩水50gで5回洗浄し、有機相e2を得た。
得られた有機相e2を10℃まで降温し、スラリーe3を得た。得られたスラリーe3を濾過して、ケーキe4を得た。
得られたケーキe4を、ロータリーエバポレータで乾燥させて、ビスフェノールA(2.6g)を得た。得られたビスフェノールAの溶解色はAPHA0であった。また、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールA純度は99.8質量%であった。
<実施例5>
SUS316製の反応管に、実施例1で得られた粗ビスフェノールA(1.2g)、実施例1の工程D-1aで得られた母液D(1.3g)、蒸留水(3g)を入れた。その後、気密した後、前記反応管を電気炉で400℃に加熱し、1時間分解させた。その後、前記反応管を電気炉から取り外し、室温で放冷させた。十分に冷却された後、前記反応管を開放し、反応液h4を得た。
この操作を、10回繰り返し、反応液h4(52g)を得た。
得られた反応液h4を攪拌子、温度計を備えた単蒸留装置に供給し、留出量を見ながら、内温を徐々に180℃まで昇温し、内圧を常圧から徐々に10kPaまで下げて、軽沸成分、水を留去した後、フェノールを留出させて、リサイクルフェノール(17g)を得た。
前記母液D(170g)、前記リサイクルフェノール(2g)、試薬アセトン(9g)を、陽イオン交換樹脂B(2g)を、攪拌翼、留出管、水バスを備えた丸底フラスコに入れ、70℃で5時間反応させた。その後、陽イオン交換樹脂Bを除くためデカンテーションして、反応液Bを得た。
得られた反応液B全量を、温度計、攪拌翼、留出管、オイルバス及び圧力調整機を備えた蒸留装置に移し、留出量を見ながら、内温を徐々に180℃まで昇温し、内圧を常圧から徐々に10kPaまで下げて、未反応のアセトン、水、フェノールの一部を留去して、濃縮液Cを得た。
得られた濃縮液Cを窒素で復圧して、内温をゆっくり降温させて30℃とし、スラリーを得た。得られたスラリーを濾過して、ケーキd(10g)を得た。
得られたケーキd(10g)とトルエン(60g)を、攪拌翼、留出管及び攪拌翼を備
えたセパラブルフラスコに入れ、80℃で溶解させて有機相e1を得た。得られた有機相e1を脱塩水50gで洗浄し、有機相e2を得た。
得られた有機相e2を10℃まで降温し、スラリーe3を得た。得られたスラリーe3を濾過して、ケーキe4を得た。
得られたケーキe4を、ロータリーエバポレータで乾燥させて、ビスフェノールA(2.5g)を得た。
得られたビスフェノールAの溶解色はAPHA0であった。また、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールA純度は99.8質量%であった。
<実施例6>
攪拌翼、ジムロート冷却管、温度計を備えた丸底フラスコに、実施例1で得られた粗ビスフェノールA(18g)、実施例1で得られた母液D(30g)、p-トルエンスルホン酸(0.1g)を入れた。前記丸底フラスコを200℃のオイルバスに浸漬させ、3時間分解させた。その後、徐々に減圧させ、リサイクルフェノール(25g)を得た。
前記母液D(170g)、前記リサイクルフェノール(2g)、試薬アセトン(9g)を、陽イオン交換樹脂B(2g)を、攪拌翼、留出管、水バスを備えた丸底フラスコに入れ、70℃で5時間反応させた。その後、陽イオン交換樹脂Bを除くためデカンテーションして、反応液Bを得た。
得られた反応液B全量を、温度計、攪拌翼、留出管、オイルバス及び圧力調整機を備えた蒸留装置に移し、留出量を見ながら、内温を徐々に180℃まで昇温し、内圧を常圧から徐々に10kPaまで下げて、未反応のアセトン、水、フェノールの一部を留去して、濃縮液Cを得た。
得られた濃縮液Cを窒素で復圧して、内温をゆっくり降温させて30℃とし、スラリー液を得た。得られたスラリー液を濾過して、ケーキd(12g)を得た。
得られたケーキd(12g)とトルエン(60g)を、攪拌翼、留出管及び攪拌翼を備えたセパラブルフラスコに入れ、80℃で溶解させて有機相e1を得た。得られた有機相e1を脱塩水50gで洗浄し、有機相e2を得た。
得られた有機相e2を10℃まで降温し、スラリーe3を得た。得られたスラリーe3を濾過して、ケーキe4を得た。
得られたケーキe4を、ロータリーエバポレータで乾燥させて、ビスフェノールA(3.2g)を得た。得られたビスフェノールAの溶解色はAPHA0であった。また、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールA純度は99.8質量%であった。
<実施例7>
実施例1で廃棄した釜残が入った蒸留装置に、p-トルエンスルホン酸1gを添加し、190℃で2時間分解させた後に、フル真空でリサイクルフェノール(2g)を留出させた。
前記母液D(170g)、前記リサイクルフェノール(2g)、試薬アセトン(9g)を、陽イオン交換樹脂B(2g)を、攪拌翼、留出管、水バスを備えた丸底フラスコに入れ、70℃で5時間反応させた。その後、陽イオン交換樹脂Bを除くためデカンテーションして、反応液Bを得た。
得られた反応液B全量を、温度計、攪拌翼、留出管、オイルバス及び圧力調整機を備えた蒸留装置に移し、留出量を見ながら、内温を徐々に180℃まで昇温し、内圧を常圧から徐々に10kPaまで下げて、未反応のアセトン、水、フェノールの一部を留去して、濃縮液Cを得た。
得られた濃縮液Cを窒素で復圧して、内温をゆっくり降温させて30℃とし、スラリーを得た。得られたスラリーを濾過して、ケーキd(11g)を得た。
得られたケーキd(11g)とトルエン(60g)を、攪拌翼、留出管及び攪拌翼を備
えたセパラブルフラスコに入れ、80℃で溶解させて有機相e1を得た。得られた有機相e1を脱塩水50gで洗浄し、有機相e2を得た。
得られた有機相e2を10℃まで降温し、スラリーe3を得た。得られたスラリーe3を濾過して、ケーキe4を得た。
得られたケーキe4を、ロータリーエバポレータで乾燥させて、ビスフェノールA(2.7g)を得た。得られたビスフェノールAの溶解色はAPHA0であった。また、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールA純度は99.8質量%であった。
実施例1、4~6において、工程HにおけるビスフェノールAの分解方法、得られたビスフェノールAのハーゼン色数、ビスフェノールA純度について、表2に纏めた。表2により、工程HにおけるビスフェノールAの分解方法が、アルカリ分解、アルカリ加水分解、超臨界水分解、酸分解のいずれであっても、得られたビスフェノールAのハーゼン色数が改善されることが分かる。
Figure 2024048433000003
<実施例8>
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量0.5Lの四口フラスコに、実施例1で得られたビスフェノールA4g、エピクロルヒドリン25g、イソプロパノール10g、水4gを仕込み、40℃に昇温して均一に溶解させた後、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液4gを90分かけて滴下した。滴下と同時に、40℃から65℃まで90分かけて昇温した。その後、65℃で30分保持し反応を完了させ、分液ロートに反応液を移し、65℃の水7gを加えて65℃の状態で1時間静置した。静置後、分離した油相と水相から水相を抜き出し、副生塩及び過剰の水酸化ナトリウムを除去した。その後、150℃の減圧下でエピクロルヒドリンを完全に除去した。
その後、メチルイソブチルケトン10gを仕込み、65℃に昇温して均一に溶解させた後、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.2gを仕込み、60分反応させた後、メチルイソブチルケトン6gを仕込み、水30gを用いて水洗を4回行った。
その後、150℃の減圧下でメチルイソブチルケトンを完全に除去してのエポキシ樹脂を得た。
JISK7236(2009)に従い、得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量を測定した結果、185g/当量であった。得られたエポキシ樹脂の溶解色は、ハーゼン色数19であった。


Claims (17)

  1. 以下の工程A~工程Iを含む、ビスフェノールAの製造方法。
    工程A:熱硬化性樹脂硬化物を溶媒中で分解してビスフェノールAを含む反応液a1を得て、前記反応液a1に水を供給してビスフェノールAのナトリウム塩を水相に抽出して水相a2を得て、前記水相a2にフェノールを供給してビスフェノールAを有する粗溶液Aを得る工程
    工程B:アセトンとフェノールとを、酸触媒の存在下で脱水縮合させ、ビスフェノールAを含む反応液Bを得る工程
    工程C:工程Bで得られた反応液Bから、未反応のアセトンと水を留去して、濃縮液Cを得る工程
    工程D:工程Cで得られた濃縮液Cを晶析させてスラリー液を得て、前記スラリー液を固液分離して、母液D及びケーキdを得る工程
    工程E:工程Dで得られたケーキdを精製してビスフェノールAを得る工程
    工程F:工程Dで得られた母液Dの一部を循環させて、工程Bに供給する工程
    工程G:前記粗溶液Aと前記母液Dの一部とを混合して、ビスフェノールAを含む混合液Gを得る工程
    工程H:前記混合液Gから、溶液H1又は溶液H2を得る工程
    ここで、前記溶液H1は、ビスフェノールAを分解する条件で、前記混合液G中のビスフェノールAを、フェノールとイソプロペニルフェノールに分解した後、フェノールとイソプロペニルフェノールを再結合して得られるビスフェノールAを含む溶液であり、
    前記溶液H2は、ビスフェノールAを分解する条件で、前記混合液G中のビスフェノールAを、フェノールとアセトンに分解して得られるフェノールを含む溶液である。
    工程I:工程Hで得られた溶液H1又は溶液H2を、工程B及び/又は工程Cに供給する工程
  2. 前記工程Hにおいて、前記ビスフェノールAを分解する条件が、アルカリ性条件、酸性条件、及び超臨界水条件からなる群から選択されるいずれかである、請求項1に記載のビスフェノールAの製造方法。
  3. 前記工程Hにおいて、前記混合液G中のビスフェノールAを分解した後、又は、分解しながら蒸留を行い、分解生成物を含む留分hを回収し、残渣を除去する、請求項1に記載のビスフェノールAの製造方法。
  4. 前記工程Hは、前記溶液H1を得る工程であり、且つ
    アルカリ性条件下で前記混合液G中のビスフェノールAを分解しながら蒸留を行い、分解生成物であるフェノールとイソプロペニルフェノールとを含む留分h1を回収し、残渣を除去する分解・蒸留工程と、
    前記留分h1に含まれるフェノールとイソプロペニルフェノールを再結合させてビスフェノールAを生成させる再結合工程と、を含む、請求項1に記載のビスフェノールAの製造方法。
  5. 前記留分h1が、イソプロペニルフェノールを1.0質量%以上含む、請求項4に記載のビスフェノールAの製造方法。
  6. 前記溶液H1が、ビスフェノールAを1.0質量%以上含む、請求項4に記載のビスフェノールAの製造方法。
  7. 前記分解・蒸留工程は、前記残渣を酸触媒存在下で処理した後に蒸留を行い、フェノールの留分h1bを回収する、請求項4に記載のビスフェノールAの製造方法。
  8. 前記工程Hは、前記溶液H2を得る工程であり、且つ
    アルカリ性条件下で前記混合液G中のビスフェノールAを加水分解し、アセトンとフェノールを含む反応液h2を得るアルカリ加水分解工程と、
    前記アルカリ加水分解工程で得られた反応液h2からアセトンの留分及び/又はフェノールの留分を回収し、残渣を除去するアセトン・フェノール回収工程と、を有する、請求項1に記載のビスフェノールAの製造方法。
  9. 前記溶液H2がアセトンを0.1質量%以上含む、請求項8に記載のビスフェノールAの製造方法。
  10. 前記工程Aで用いる溶媒がベンジルアルコールである、請求項1に記載のビスフェノールAの製造方法。
  11. 前記工程Aが、金属アルコキシドの存在下で、前記エポキシ樹脂硬化物を分解して、前記粗溶液Aを得る工程である、請求項1に記載のビスフェノールAの製造方法。
  12. 前記粗溶液AのビスフェノールAの含有量が1質量%以上である、請求項1に記載のビスフェノールAの製造方法。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載のビスフェノールAの製造方法で得られたビスフェノールAと、エピクロロヒドリンとを反応させる工程、を含むエポキシ樹脂の製造方法。
  14. 前記エポキシ樹脂と、多価ヒドロキシ化合物原料とを反応させる工程、を含む、請求項13に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
  15. 請求項13に記載のエポキシ樹脂の製造方法で得られたエポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を硬化する工程、を含むエポキシ樹脂硬化物の製造方法。
  16. 請求項14に記載のエポキシ樹脂の製造方法で得られたエポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を硬化する工程、を含むエポキシ樹脂硬化物の製造方法。
  17. 請求項1~12のいずれか1項に記載のビスフェノールAの製造方法で得られたビスフェノールAを重合する工程、を含む、ポリカーボネート樹脂の製造方法。



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