JP2024045788A - ヒートポンプ式熱源装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】過熱度の目標値を運転状態に応じて適切に設定し、膨張弁の開度の制御精度の向上を図ることが可能なヒートポンプ式熱源装置を提供する。【解決手段】一実施形態に係るヒートポンプ式熱源装置は、圧縮機、水熱交換器、空気熱交換器、四方弁、膨張弁、第1および第2温度センサ、制御部を備える。第1温度センサは、四方弁で導かれて圧縮機に吸い込まれる冷媒の第1温度を検出する。第2温度センサは、膨張弁で減圧されて空気熱交換器に流入する冷媒の第2温度を検出する。制御部は、第1温度から第2温度を減じて冷媒の過熱度を算出し、算出した過熱度が目標値となるように膨張弁の開度を変更する際、圧縮機から吐出される冷媒と圧縮機に吸い込まれる冷媒とが四方弁を通過する際の熱交換に応じて変動する第1の補正値を用いて目標値を補正する。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、ヒートポンプ式冷凍サイクルの運転により暖房や給湯に使用する温水を生成するヒートポンプ式熱源装置に関する。
ヒートポンプ式冷凍サイクルの運転により外気から熱を汲み上げ、その汲み上げ熱で温めた温水を暖房用放熱器や給湯用タンクなどに送るヒートポンプ式熱源装置が知られている。ヒートポンプ式熱源装置は、主たる構成要素として圧縮機、四方弁、水熱交換器、減圧器(膨張弁)、蒸発器(空気熱交換器)、および制御ユニットを備え、水熱交換器を流れる水を圧縮機の吐出冷媒で加熱する。
特許第3495486号公報
このような構成のヒートポンプ式冷凍サイクルでは、加熱運転時、例えば圧縮機に吸い込まれる冷媒の温度と空気熱交換器に流入する冷媒の温度との差を空気熱交換器における冷媒の過熱度(スーパーヒート)として求め、過熱度が目標値となるように膨張弁の開度を制御する。これにより、空気熱交換器に流入する冷媒量が最適量に設定され、空気熱交換器において冷媒を効率よく蒸発させることができる。
かかる過熱度の目標値を設定するにあたり、目標値が高く設定され過ぎると、運転状態によっては過熱度の調整精度が低下するおそれがある。また、目標値が低く設定され過ぎると、膨張弁の開度のハンチングが発生するおそれがある。したがって、過熱度の目標値を適切に設定して膨張弁の開度を制御する必要がある。
本発明の実施形態の目的は、過熱度の目標値を運転状態に応じて適切に設定し、膨張弁の開度の制御精度の向上を図ることが可能なヒートポンプ式熱源装置を提供することである。
一実施形態に係るヒートポンプ式熱源装置は、圧縮機と、水熱交換器と、空気熱交換器と、四方弁と、膨張弁と、第1および第2温度センサと、制御部とを備える。前記圧縮機は、圧縮した冷媒を吐出する。前記水熱交換器は、内部に有する流路を流れる水を前記冷媒で加熱する。前記空気熱交換器は、前記水熱交換器で熱交換された前記冷媒を外気から吸熱して蒸発させる。前記四方弁は、前記圧縮機から吐出された前記冷媒を前記水熱交換器に導くとともに、前記空気熱交換器で熱交換された前記冷媒を前記圧縮機に導く。前記膨張弁は、前記水熱交換器で熱交換された前記冷媒を減圧して前記空気熱交換器に導き、開度が変更できる。前記第1温度センサは、前記四方弁で導かれて前記圧縮機に吸い込まれる前記冷媒の第1温度を検出する。前記第2温度センサは、前記膨張弁で減圧されて前記空気熱交換器に流入する前記冷媒の第2温度を検出する。前記制御部は、前記第1温度から前記第2温度を減じて前記冷媒の過熱度を算出し、算出した前記過熱度が目標値となるように前記膨張弁の開度を変更する。その際、前記制御部は、前記圧縮機から吐出される前記冷媒と前記圧縮機に吸い込まれる前記冷媒とが前記四方弁を通過する際の熱交換に応じて変動する第1の補正値を用いて前記目標値を補正する。
実施形態に係るヒートポンプ式熱源装置およびヒートポンプ式給湯装置の構成を概略的に示すブロック図である。 第1の実施形態に係るヒートポンプ式熱源装置およびヒートポンプ式給湯装置の加熱運転時におけるコントローラの制御フロー図である。 第1の実施形態に係るヒートポンプ式熱源装置およびヒートポンプ式給湯装置の加熱運転時において、過熱度の目標値を設定する際の参照テーブルを示す図である。 第2の実施形態に係るヒートポンプ式熱源装置およびヒートポンプ式給湯装置の加熱運転時におけるコントローラの制御フロー図である。 第2の実施形態に係るヒートポンプ式熱源装置およびヒートポンプ式給湯装置の加熱運転時において、過熱度の目標値を設定する際の参照テーブルを示す図である。
以下、実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るヒートポンプ式熱源装置を含むヒートポンプ式給湯装置HPの構成を概略的に示すブロック図である。ヒートポンプ式給湯装置HPは、ヒートポンプ式冷凍サイクルの運転により温水を生成し、それを暖房等に利用する装置である。図1に示すように、ヒートポンプ式給湯装置HPは、一般的に屋外に設置される室外ユニットA、屋内に設置される水熱交換ユニットB、空調を行う部屋や屋内の空きスペースに設置される負荷ユニットC、制御ユニットDを備える。ヒートポンプ式熱源装置は、後述するヒートポンプ式給湯装置HPの構成要素のうち、給湯タンク13、放熱コイル(水放熱器)14、ヒータ15、放熱器21,22,23、およびタンク水温センサ36を除く構成を備えた装置である。要するにヒートポンプ熱源装置は、室外ユニットAと水熱交換ユニットBで構成される。
ヒートポンプ式給湯装置HPにおいては、室外ユニットAと水熱交換ユニットBとの間が配管接続されて冷媒が循環し、水熱交換ユニットBと負荷ユニットCとの間が配管接続されて水(温水)が循環する。これら冷媒および水(温水)の流れは、制御ユニットDにより制御される。
室外ユニットAは、主たる構成要素として圧縮機1、四方弁2、膨張弁4、空気熱交換器5、アキュームレータ6を備える。水熱交換ユニットBは、主たる構成要素として水熱交換器3、循環ポンプ11を備える。圧縮機1は、図示しないインバータによりその回転数が可変速制御される。四方弁2は、圧縮機1から吐出された冷媒を水熱交換器3に導くとともに、空気熱交換器5で熱交換された冷媒を圧縮機1に導く。
圧縮機1の吐出口には、四方弁2を介して水熱交換器3の冷媒流路の一端が配管接続され、その冷媒流路の他端は減圧器である膨張弁4を介して空気熱交換器5の一端に配管接続される。そして、空気熱交換器5の他端は、四方弁2およびアキュームレータ6を介して圧縮機1の吸込口に配管接続される。これらの配管接続により、ヒートポンプ式冷凍サイクルが構成される。本実施形態において、膨張弁4は、一例として入力される駆動パルスの数に応じて開度が連続的に変化するパルスモータバルブ(PMV)であり、後述する制御ユニットDのコントローラ40によって最小開度と最大開度との間で開度が制御される。開度制御された膨張弁4は、水熱交換器3で熱交換された冷媒を減圧して空気熱交換器5に導く。
空気熱交換器5の近傍には、室外ファン7が配置される。室外ファン7は、外気を吸い込み、その吸込空気を空気熱交換器5に通す。室外ファン7により形成される吸込風路の上流側には、外気温度センサ30が配置される。外気温度センサ30は、室外ファン7により吸い込まれる外気の温度を検出する。
暖房時および後述する給湯タンク13内の湯の加熱時、矢印で示すように、圧縮機1に吸い込まれたガス冷媒は、圧縮機1で圧縮されて吐出される。四方弁2およびアキュームレータ6を介して圧縮機1の吸込口に至る配管には、温度センサ(第1温度センサ。以下、吸込冷媒温度センサという)31が取り付けられている。吸込冷媒温度センサ31は、四方弁2で導かれて圧縮機1に吸い込まれるガス冷媒の温度(第1温度)、つまり圧縮機1に吸い込まれる直前のガス冷媒の温度(以下、吸込冷媒温度TSという)を検出する。
圧縮機1から吐出される圧縮されたガス冷媒は、四方弁2を通って水熱交換器3の冷媒流路を流れる。水熱交換器3の冷媒流路を流れる際、ガス冷媒は水熱交換器3の水流路を流れる水に熱を奪われて凝縮する。すなわち、水熱交換器3は、内部に有する冷媒流路を流れる水をガス冷媒で加熱する。水熱交換器3の冷媒流路から流出する液冷媒は、膨張弁4で減圧されて空気熱交換器5を流れる。膨張弁4から空気熱交換器5に至る配管には、温度センサ(第2温度センサ。以下、入口冷媒温度センサという)32が取り付けられている。入口冷媒温度センサ32は、膨張弁4で減圧されて空気熱交換器5に流入する液冷媒の温度(第2温度。以下、入口冷媒温度TEという)を検出する。
空気熱交換器5を流れる液冷媒は、外気から熱を汲み上げて蒸発する。すなわち、空気熱交換器5は、水熱交換器3で熱交換された液冷媒を外気から吸熱して蒸発させる。空気熱交換器5から流出するガス冷媒は、四方弁2およびアキュームレータ6を通って圧縮機1に吸い込まれる。空気熱交換器5から四方弁2に至る配管には、温度センサ(第3温度センサ。以下、出口冷媒温度センサという)33が取り付けられている。出口冷媒温度センサ33は、空気熱交換器5から流出して四方弁2に至るガス冷媒の温度(第3温度。以下、出口冷媒温度TXという)を検出する。
このように暖房時において、水熱交換器3は凝縮器として機能し、空気熱交換器5は蒸発器として機能する。
暖房および給湯タンク13内の湯の加熱中に空気熱交換器5の除霜が必要となる場合、四方弁2で流路が切り換えられ、圧縮機1から吐出される圧縮された高温のガス冷媒は四方弁2から空気熱交換器5の冷媒流路を流れる。この高温のガス冷媒が流れることで空気熱交換器5が高温となり、除霜される。除霜時において、空気熱交換器5は凝縮器として機能し、水熱交換器3は蒸発器として機能する。
水熱交換器3の水流路の出口は、循環ポンプ11の吸込口に配管接続され、循環ポンプ11の吐出口は、三方弁12の水入口12aに配管接続される。そして、三方弁12の水出口12bは、給湯タンク13に収容された放熱コイル(水放熱器)14の水流入口に配管接続され、放熱コイル14の水流出口は、水熱交換器3の水流路の入口と配管接続される。さらに、三方弁12の水出口12cは、複数の暖房用の放熱器21,22,23、いわゆるファンコイルユニットの水入口にそれぞれ接続され、各放熱器21,22,23の水出口は、水熱交換器3の水流路の入口に配管接続される。放熱器21,22,23は、暖房を行うための各部屋に設置される。放熱器21,22,23は、床暖房機でもよい。
循環ポンプ11は、水熱交換器3から流出する温水を給湯タンク13または放熱器21,22,23に送り、給湯タンク13または放熱器21,22,23から戻ってきた水を水熱交換器3に流入させる。
三方弁12は、水入口12aおよび2つの水出口12b,12cを有し、水入口12aから水出口12bに至る第1流路および水入口12aから水出口12cに至る第2流路のいずれか一方に内部流路を切り換える電磁弁である。
これら水熱交換器3と給湯タンク13および放熱器21,22,23との間の配管接続により、温水循環サイクルが形成される。
暖房時には、三方弁12は、後述する制御ユニットDによって水入口12aが水出口12cに接続され、循環ポンプ11から送り出された温水は、放熱器21,22,23に供給される。一方、給湯タンク13内の湯を加熱する加熱運転時には、三方弁12は、制御ユニットDによって水入口12aが水出口12bに接続され、循環ポンプ11から送り出された温水は給湯タンク13内の放熱コイル14に供給される。
給湯タンク13および放熱器21,22,23から水熱交換器3に至る配管は途中で合流し、その合流部よりも下流側の配管に、入口水温センサ34が取り付けられる。図1に示す例では、入口水温センサ34は水熱交換ユニットBに配置される。入口水温センサ34は、給湯タンク13および放熱器21,22,23から流出して水熱交換器3の水流路に流入する水の温度を検出する。
水熱交換器3から給湯タンク13または放熱器21,22,23に至る配管には、出口水温センサ35が取り付けられる。図1に示す例では、出口水温センサ35は水熱交換器3と循環ポンプ11の間の配管に配置される。出口水温センサ35は、水熱交換器3から流出して給湯タンク13または放熱器21,22,23に送られる温水の温度を検出する。
給湯タンク13は、放熱コイル14およびヒータ(電気ヒータ)15を内蔵し、入水管16から流入する水を放熱コイル14の放熱およびヒータ15の発熱により加熱して給湯用の温水として貯留し、貯留した温水を出水管17に導く。放熱コイル14は、水熱交換器3から流出した温水を水流入口から水流出口まで流し、その間に給湯タンク13に貯留された水(温水)に放熱する。出水管17の先端の蛇口17aが開くと、給湯タンク13内の温水が出水管17を介して流出する。給湯タンク13内には、タンク水温センサ36が配置される。タンク水温センサ36は、給湯タンク13に貯留された水の温度を検出する。
圧縮機1、四方弁2、膨張弁4、空気熱交換器5、アキュームレータ6、室外ファン7、外気温度センサ30、吸込冷媒温度センサ31、入口冷媒温度センサ32、および出口冷媒温度センサ33は、室外ユニットAの構成要素に含まれる。水熱交換器3、循環ポンプ11、入口水温センサ34、および出口水温センサ35は、水熱交換ユニットBの構成要素に含まれる。給湯タンク13、放熱コイル14、ヒータ15、放熱器21,22,23、および三方弁12は、負荷ユニットCの構成要素に含まれる。ただし、これら各構成要素をいずれのユニットA,B,Cが含むかは上記に限定されない。
制御ユニットDは、室外ユニットA、水熱交換ユニットB、負荷ユニットCの動作を制御し、室外ユニットAと水熱交換ユニットBとの間で冷媒を循環させ、水熱交換ユニットBと負荷ユニットCとの間で温水を循環させる。制御ユニットDは、コントローラ40、操作表示器41を備える。制御ユニットDは、負荷ユニットCと同様に屋内に据え付けられる。
コントローラ40は、室外ユニットA、水熱交換ユニットB、負荷ユニットC、および操作表示器41にそれぞれ電気的に接続される。コントローラ40は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマなどを含み、所定の演算処理を実行する。例えば、コントローラ40は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて室外ユニットA、水熱交換ユニットB、負荷ユニットCの動作制御を行う。ヒートポンプ式給湯装置HPにおいて、コントローラ40は、圧縮機1の回転数や膨張弁4の開度を制御する制御部に相当する。すなわち、コントローラ40は、圧縮機1との間で回転数の制御データを、膨張弁4との間で開度の制御データをそれぞれ遂次送受信する。
操作表示器41は、ヒートポンプ式給湯装置HPに対してユーザが運転条件の設定を行うリモートコントロール式のインターフェース部である。操作表示器41は、例えばヒートポンプ式給湯装置HPの運転の開始と停止を指定する運転釦、給湯の設定温度(給湯温度)や暖房時の室内設定温度の操作釦、循環ポンプ11の運転モードを指定する操作釦、ヒートポンプ式給湯装置HPの運転状態を報知する表示部などを有する。操作表示器41は温水の各供給先や被空調空間である部屋などの利用側に設置されるが、設置場所はこれらに限定されない。
操作表示器41とコントローラ40は、一体の筐体に収納されてもよいし、それぞれが別の筐体に収納され、各々が異なる位置に設置されてもよい。操作表示器41とコントローラ40は、給湯タンク13の近くに設置されることが一般的である。ただし、これらの配置は、これに限定されず任意である。例えば、制御ユニットとして、室外ユニットA、水熱交換ユニットB、および負荷ユニットCの各動作をそれぞれ個別に制御する制御部が各ユニットA,B,Cにそれぞれ設置されていてもよい。これらの制御部は、相互に電気的に接続され、必要に応じて制御データを送受信する。
ここで、ヒートポンプ式給湯装置HPの加熱運転時の動作と作用について、室外ユニットA、水熱交換ユニットB、負荷ユニットCに対するコントローラ40の制御フローに従って説明する。図2には、加熱運転時におけるコントローラ40の制御フローを示す。なお、暖房時のヒートポンプ式給湯装置HPの暖房運転制御もコントローラ40によって実行されるが、本実施形態の主題ではないため、その説明を省略する。
ヒートポンプ式給湯装置HPにおいて、給湯タンク13に貯留された水(温水)を沸き上げるための加熱運転は、例えばユーザが操作表示器41の運転釦を操作することにより開始される。通常、ユーザは、設置時に運転釦を操作して運転を開始させ、その後は長期の留守となる場合以外、運転を停止させることはない。
操作表示器41から加熱運転の開始指示がなされると、コントローラ40は、サーモON条件を判定する(S101)。サーモON条件は、加熱運転の開始指示がなされた際、給湯タンク13に貯留された水(温水)を沸き上げる必要があるか否かの判定条件である。サーモON条件の成否に応じて、循環ポンプ11および圧縮機1を起動させるか否かが決定される。具体的には、給湯タンク13のタンク水温がサーモON水温以下であるか否かがサーモON条件として判定される。サーモON水温は、給湯タンク13に貯留された温水の沸き上げが必要な温度であり、例えばユーザが操作表示器41の操作釦を操作して設定したタンク水温である給湯温度(後述するサーモOFF温度)から所定値(一例として、20℃)を差し引いた値である。サーモON水温の値は、例えばコントローラ40の記憶装置に保持され、サーモON条件の判定時にメモリに読み出されてパラメータとして使用される。
サーモON条件の判定にあたって、コントローラ40は、タンク水温センサ36からタンク水温を取得し、サーモON水温と比較する。本実施形態では一例として、タンク水温がサーモON水温以下である場合、コントローラ40は、給湯タンク13に貯留された温水を沸き上げる必要があるものとして、サーモON条件が成立すると判定する。一方、タンク水温がサーモON水温を超えている場合、コントローラ40は、給湯タンク13に貯留された温水を沸き上げる必要がないものとして、サーモON条件が成立しないと判定する。
コントローラ40は、サーモON条件が成立するまでサーモON条件の判定を繰り返す。その際、コントローラ40は、所定の不成立処理を実行してもよい。不成立処理は、例えばサーモON条件の判定を所定時間待機する待機処理、所定時間もしくは所定回数に亘って判定を繰り返してもサーモON条件が成立しない場合に加熱運転を終了させるタイムアウト処理やリトライ処理、これらを組み合わせた処理などである。
一方、S101においてサーモON条件が成立する場合、コントローラ40は、循環ポンプ11を起動させる(S102)。これにより、水熱交換ユニットBと給湯タンク13(具体的には放熱コイル14)との間で温水が循環を開始する。以下、このように水熱交換ユニットBと給湯タンク13との間を循環する温水を循環水という。その際、コントローラ40は、水入口12aから水出口12bに至る第1流路となるように三方弁12の内部流路を切り換える。
続いて、コントローラ40は、圧縮機1を起動させる(S103)。その際、コントローラ40は、四方弁2を制御し、圧縮機1から吐出される冷媒を水熱交換器3、膨張弁4、空気熱交換器5、四方弁2、アキュームレータ6を順に経由して気液相変化させつつ、圧縮機1に戻るように循環させる。これにより、水熱交換ユニットBと給湯タンク13との間を循環する温水(循環水)は、水熱交換器3を流れる間に圧縮機1から吐出されたガス冷媒で加熱され、水温が上昇する。そして、かかる温水は、放熱コイル14を流れる間に給湯タンク13内で放熱する。これにより、給湯タンク13のタンク水温が上昇する。
次いで、コントローラ40は、室外ユニットAの所定箇所における冷媒の温度を取得する。本実施形態において、コントローラ40は、吸込冷媒温度TS、入口冷媒温度TE、および出口冷媒温度TXの値をそれぞれ取得する(S104)。その際、コントローラ40は、吸込冷媒温度センサ31から吸込冷媒温度TS、入口冷媒温度センサ32から入口冷媒温度TE、出口冷媒温度センサ33から出口冷媒温度TXの各検出値をそれぞれ取得する。
取得したこれらの検出値に基づいて、コントローラ40は、冷媒の過熱度SHを制御する際の目標値(目標過熱度)SH0を設定する(S105)。過熱度SHの値は、吸込冷媒温度TSと入口冷媒温度TEとの温度差(TS-TE)で算出される値である。目標値SH0の設定にあたって、コントローラ40は、図3に示すテーブルT3を参照する。テーブルT3は、例えばコントローラ40の記憶装置に格納されている。目標値SH0の設定時、コントローラ40は、テーブルT3に記録された所望の値をメモリに読み出し、その値に応じて目標値SH0を設定する。設定された目標値SH0は、例えばコントローラ40のメモリに保持され、後述する開度変更条件の判定時(S111,S113)にパラメータとして読み出される。
図3に示すように、目標値SH0は、圧縮機1の回転数Hzに応じて、過熱度SHの基準値SHVに所定の補正値SHXを加味して算出される。具体的には、基準値SHVに補正値SHXを加算して目標値SH0が算出される(SH0=SHV+SHX)。なお、圧縮機1の回転数Hzは、例えば生成する温水温度(出口水温センサ35で検出される温度)と給湯設定温度との差、水熱交換器3の入口と出口の水温差(出口水温センサ35と入口水温センサ34との検出温度差)、温水を流す放熱器21,22,23が設置されている部屋の室温と設定室温との差、給湯タンク13の水温(タンク水温センサ36で検出される温度)と給湯タンク給湯設定温度との差、あるいはこれらの組み合わせ、またはそれぞれのPID(Proportional Integral Differential)制御の組み込みなどによってインバータの出力を変化させることで制御される。
基準値SHVは、空気熱交換器5での冷媒の熱交換量(温度変化)であり、一定値である。図3に示す例では、基準値SHVを2としているが、これに限定されず任意に設定可能である。補正値SHXは、第1の補正値X1と第2の補正値X2を含み、第1の補正値X1から第2の補正値X2を減じて算出される(SHX=X1-X2)。換言すれば、目標値SH0は、補正値SHX(第1の補正値X1と第2の補正値X2)を用いて補正される。第1の補正値X1は、四方弁2での過熱度SHの増加量を考慮した補正値であり、圧縮機1から吐出される冷媒と、圧縮機1に吸い込まれる冷媒とが四方弁2を通過する際の熱交換に応じて変動する。本実施形態において、第1の補正値X1は、吸込冷媒温度TSと出口冷媒温度TXとの温度差(TS-TX)、つまり、吸込冷媒温度TSから出口冷媒温度TXを減じて算出された値である。第2の補正値X2は、空気熱交換器5での冷媒の圧力損失を考慮した補正値であり、圧縮機1の回転数Hzに応じて予め設定された変動値である。
図3に示す例では、圧縮機1の回転数Hzは、四つの閾値によって分類されている。Z1は第1の閾値、Z2は第2の閾値、Z3は第3の閾値、Z4は第4の閾値である。各閾値は、Z1が最小値でありZ2,Z3の順に大きくなり、Z4が最大値である。これらの値は任意に設定可能であるが、例えば、第4の閾値Z4は圧縮機1の許容運転範囲の最大回転数の値である。コントローラ40は、第1から第4の閾値Z1~Z4によって区切られた四つの範囲のいずれに圧縮機1の回転数Hzが該当するかに応じて目標値SH0を算出する。なお、閾値の数は、三つ以下、あるいは五つ以上であってもよい。
テーブルT3によれば、圧縮機1の回転数HzがZ1以下である(以下、第1の範囲内という)場合、第2の補正値X2は0である。圧縮機1の回転数HzがZ1より大きく、Z2以下である(以下、第2の範囲内という)場合、第2の補正値X2は1である。圧縮機1の回転数HzがZ2より大きく、Z3以下である(以下、第3の範囲内という)場合、第2の補正値X2は2である。圧縮機1の回転数HzがZ3より大きく、Z4以下である(以下、第4の範囲内という)場合、第2の補正値X2は3である。例えば、Z1は30Hz、Z2は45Hz、Z3は60Hz、Z4は90Hz(最大値)である。
コントローラ40は、テーブルT3に基づいて、基準値SHVに補正値SHXを加算して目標値SH0を算出する(SH0=SHV+SHX)。すなわち、目標値SH0は、基準値SHVと第1の補正値X1を加算し、加算値から第2の補正値X2を減じた値である(SH0=SHV+X1-X2)。また、第1の補正値X1は、吸込冷媒温度TSと出口冷媒温度TXとの温度差(TS-TX)である。したがって、目標値SH0は、四方弁2での過熱度SHの増加量を示す第1の補正値X1と、空気熱交換器5での冷媒の圧力損失を示す第2の補正値X2とをそれぞれ考慮して、空気熱交換器5での冷媒の熱交換量である基準値SHVを補正することで設定される。
具体的には、圧縮機1の回転数Hzが第1の範囲内である場合、コントローラ40は、目標値SH0を第1の補正値X1に2を加えた値(2+X1)に設定する。圧縮機1の回転数Hzが第2の範囲内である場合、コントローラ40は、目標値SH0を第1の補正値X1に1を加えた値(1+X1)に設定する。圧縮機1の回転数Hzが第3の範囲内である場合、コントローラ40は、目標値SH0を第1の補正値X1の値に設定する。圧縮機1の回転数Hzが第4の範囲内である場合、コントローラ40は、目標値SH0を第1の補正値X1から1を減じた値(-1+X1)に設定する。
目標値SH0を設定すると、コントローラ40は、過熱度SHが設定した目標値SH0となるように、膨張弁4の開度の制御を開始する(S106)。別の捉え方をすれば、コントローラ40は、出口冷媒温度TXと入口冷媒温度TEとの温度差が基準値SHVとなるように、膨張弁4の開度を変更する。これにより、ヒートポンプ式給湯装置HPにおいて、冷媒の過熱度SHの値、つまり吸込冷媒温度TSと入口冷媒温度TEとの温度差(TS-TE)を目標値SH0とするべく、膨張弁4の開度制御が開始される。
膨張弁4の開度制御を開始すると、コントローラ40は、サーモOFF条件を判定する(S107)。サーモOFF条件の成否により、コントローラ40は、膨張弁4の開度制御を継続するか否かを決定する。サーモOFF条件は、給湯タンク13に貯留された温水を沸き上げる必要がなくなったか否かの判定条件である。サーモOFF条件の成否に応じて、循環ポンプ11および圧縮機1を停止させるか否かが決定される。本実施形態では、第1のサーモOFF条件と第2のサーモOFF条件のいずれか一方が成立する場合、サーモOFF条件が成立して圧縮機1が停止され、第1のサーモOFF条件と第2のサーモOFF条件がいずれも成立しない場合、サーモOFF条件は成立せず、循環ポンプ11および圧縮機1の運転が継続される。
具体的には、給湯タンク13のタンク水温がサーモOFF水温以上であるか否かが第1のサーモOFF条件として判定される。サーモOFF水温は、給湯タンク13に貯留された温水をこれ以上加熱する(沸き上げる)ことを要しない温度であり、例えばユーザが操作表示器41の操作釦を操作して設定した給湯温度である。サーモOFF水温の値は、例えばコントローラ40のメモリに保持され、第1のサーモOFF条件の判定時にパラメータとして使用される。
第1のサーモOFF条件の判定にあたって、コントローラ40は、タンク水温センサ36からタンク水温を取得し、サーモOFF水温と比較する。本実施形態では一例として、タンク水温が設定温度であるサーモOFF水温以上である場合、コントローラ40は、給湯タンク13に貯留された温水を沸き上げる必要がなくなったものとして、第1のサーモOFF条件が成立すると判定する。一方、タンク水温がサーモOFF水温未満である場合、コントローラ40は、給湯タンク13に貯留された温水をさらに沸き上げる必要があるものとして、第1のサーモOFF条件が成立しないと判定する。
また、入口水温が保護温度以上であるか否かが第2のサーモOFF条件として判定される。保護温度は、吸込冷媒温度TSが過度に高温となることを回避して圧縮機1を保護するために設定されており、水熱交換器3への流入が許容される温水(循環水)の上限温度である。換言すれば、保護温度は、高温のガス冷媒と熱交換する循環水の上限温度であり、例えば圧縮機1の性能などに応じて予め設定されている。保護温度の値は、例えばコントローラ40の記憶装置に保持され、第2のサーモOFF条件の判定時にメモリに読み出されてパラメータとして使用される。
第2のサーモOFF条件の判定にあたって、コントローラ40は、入口水温センサ34から入口水温を取得し、保護温度(例えば、54℃)と比較する。本実施形態では一例として、入口水温が保護温度以上である場合、コントローラ40は、第2のサーモOFF条件が成立すると判定する。この場合、圧縮機1の許容運転範囲を超えないよう、停止を要する状況であるとして、第2のサーモOFF条件が成立するとされている。これにより、圧縮機1の保護が図られる。一方、入口水温が保護温度未満である場合、コントローラ40は、第2のサーモOFF条件が成立しないと判定する。この場合、給湯タンク13に貯留された温水をさらに沸き上げても圧縮機1の許容運転範囲内であり、圧縮機1の運転継続が可能な状況であるとして、第2のサーモOFF条件が成立しないとされている。
これら第1のサーモOFF条件および第2のサーモOFF条件により、サーモOFF条件が成立する場合、コントローラ40は、圧縮機1を停止させる(S108)。
続いて、コントローラ40は、目標値SH0の補正値SHXを初期値にリセットする(S109)。補正値SHXの初期値は、例えば0(ゼロ)であり、この場合、コントローラ40は、補正値SHXをゼロクリアする。すなわち、第1の補正値X1および第2の補正値X2の値がいずれもゼロクリアされる。これにより、ヒートポンプ式給湯装置HPにおける膨張弁4の開度制御が終了する。
次いで、コントローラ40は、循環ポンプ11を停止させる(S110)。これにより、ヒートポンプ式給湯装置HPの加熱運転が終了する。
一方、S107においてサーモOFF条件が成立しない場合、コントローラ40は、引き続き、膨張弁4の開度を適宜変更する。このため、コントローラ40は開度変更条件を判定する。開度変更条件は、膨張弁4の開度を上昇、低下、維持のいずれに遷移させるかの判定条件である。開度変更条件の成否に応じて、膨張弁4の開度を上昇、低下、維持のいずれに遷移させるかが決定される。本実施形態では、開度変更条件として、第1の開度変更条件と第2の開度変更条件がそれぞれ判定される。第1の開度変更条件が成立する場合には膨張弁4の開度が上げられ、第2の開度変更条件が成立する場合には膨張弁4の開度が下げられる。第1および第2の開度変更条件がいずれも成立しない場合、膨張弁4の開度が維持される。
開度変更条件の判定にあたって、コントローラ40は、一例としてまず第1の開度変更条件を判定する(S111)。第1の開度変更条件は、過熱度SHが目標値SH0を超えているか否かの判定条件である。第1の開度変更条件の成否に応じて、膨張弁4の開度を上げるか否かが決定される。第1の開度変更条件の判定にあたって、コントローラ40は、吸込冷媒温度センサ31から吸込冷媒温度TSを取得するとともに、入口冷媒温度センサ32から入口冷媒温度TEを取得し、これらの温度差(TS-TE)として過熱度SHを算出する。そして、コントローラ40は、S105においてメモリに保持した目標値SH0を読み出し、算出した過熱度SHの値と比較する。過熱度SHが目標値SH0を超えている場合、コントローラ40は、第1の開度変更条件が成立すると判定する。一方、過熱度SHが目標値SH0を超えていない(SH0以下である)場合、コントローラ40は、第1の開度変更条件が成立しないと判定する。
第1の開度変更条件が成立する場合、コントローラ40は、膨張弁4の開度を上昇させる(S112)。膨張弁4の開度が上昇すると、空気熱交換器5に流入する冷媒量が増大する。これに対し、外気からの汲み上げ熱量は変わらないため、吸込冷媒温度TSが低下し、入口冷媒温度TEとの温度差、つまり過熱度SHの値が小さくなる。開度の上げ幅は、特に限定されず任意に設定可能である。
一方、S111において第1の開度変更条件が成立しない場合、コントローラ40は、第2の開度変更条件を判定する(S113)。第2の開度変更条件は、過熱度SHが目標値SH0に達しているか否かの判定条件である。第2の開度変更条件の成否に応じて、膨張弁4の開度を下げるか否かが決定される。第2の開度変更条件の判定にあたって、コントローラ40は、第1の開度変更条件の判定時と同様に、吸込冷媒温度TSと入口冷媒温度TEの温度差(TS-TE)として過熱度SHの値を算出し、メモリから読み出した目標値SH0と比較する。過熱度SHが目標値SH0に達していない(SH0未満である)場合、コントローラ40は、第2の開度変更条件が成立すると判定する。一方、過熱度SHが目標値SH0以上である場合、コントローラ40は、第2の開度変更条件が成立しないと判定する。
第2の開度変更条件が成立する場合、コントローラ40は、膨張弁4の開度を低下させる(S114)。膨張弁4の開度が低下すると、空気熱交換器5に流入する冷媒量が減少する。これに対し、外気からの汲み上げ熱量は変わらないため、吸込冷媒温度TSが上昇し、入口冷媒温度TEとの温度差、つまり過熱度SHの値が大きくなる。開度の下げ幅は、特に限定されず任意に設定可能である。例えば、開度の上げ幅と下げ幅は一致していてもよいし、異なっていてもよい。また、これらは、例えば過熱度SHと目標値SH0との差異に関わらず固定幅(固定値)であってもよいし、かかる差異に応じた変動幅(変動値)であってもよい。
一方、S113において第2の開度変更条件が成立しない場合、コントローラ40は、膨張弁4の開度を維持させる(S115)。この場合には、過熱度SHと目標値SH0が一致している、つまり冷媒の過熱度が目標値となっており、膨張弁4の開度は変更されることなく、その開度のまま維持される。したがって、空気熱交換器5に流入する冷媒量もそのまま維持される。これにより、吸込冷媒温度TSが保たれ、入口冷媒温度TEとの温度差、つまり過熱度SHの値が維持される。
S112、S114、S115において、膨張弁4の開度を上昇、低下、維持のいずれかに遷移させると、コントローラ40は、所定時間内においてこのような開度の変更を繰り返すべく、開度変更用のタイマを始動させる(S116)。所定時間は、例えばヒートポンプ式給湯装置HPの運転条件などに応じて、膨張弁4の開度を変更させる間隔として最適な値に設定されればよい。
所定時間が経過した場合(S117においてYes)、膨張弁4の開度の変更を繰り返すべく、コントローラ40は開度変更条件を再び判定する。具体的には、コントローラ40は、第1の開度変更条件を判定し(S111)、その成否に応じて、S112からS116の制御を適宜実行する。その際、コントローラ40は、カウントアップしたタイマをリセットする。
所定時間が経過していない場合(S117においてNo)、コントローラ40は、再びサーモOFF条件を判定する(S118)。サーモOFF条件が成立しない場合(S118においてNo)、コントローラ40は、再び所定時間が経過したか否かを判定する(S117)。すなわち、コントローラ40は、所定時間内においてサーモOFF条件が成立するまで、開度変更条件の判定を適宜繰り返す。したがって、これら条件の成否に応じて、膨張弁4の開度の上昇、低下、維持が適宜繰り返される。
そして、例えばタンク水温がサーモOFF水温以上となれば、サーモOFF条件(第1のサーモOFF条件)が成立し(S118においてYes)、圧縮機1が停止され(S108)、目標値SH0の補正値SHXが初期値にリセットされ(S109)、循環ポンプ11が停止される(S110)。これにより、ヒートポンプ式給湯装置HPにおける膨張弁4の開度制御が終了するとともに、ヒートポンプ式給湯装置HPの加熱運転が終了する。
このように、本実施形態のヒートポンプ式給湯装置HPおよびヒートポンプ式熱源装置によれば、冷媒の過熱度SHが目標値SH0となるように、膨張弁4の開度を制御している。その際、目標値SH0は、圧縮機1の回転数Hzに応じて基準値SHVに所定の補正値SHXを加味して算出されている。補正値SHXは、第1の補正値X1から第2の補正値X2を減じて算出されている(SHX=X1-X2)。第1の補正値X1は、吸込冷媒温度TSと出口冷媒温度TXとの温度差(TS-TX)であり、四方弁2での過熱度SHの増加量を考慮して変動する補正値である。また、第2の補正値X2は、空気熱交換器5での冷媒の圧力損失を考慮した補正値であり、圧縮機1の回転数Hzに応じた変動値である。
したがって、目標値SH0を第1の補正値X1によって、換言すれば四方弁2での過熱度SHの増加量を考慮して補正できる。また、目標値SH0を第2の補正値X2によって、換言すれば空気熱交換器5での冷媒の圧力損失を考慮して補正できる。これにより、四方弁2での過熱度SHの増加量および空気熱交換器5での圧力損失を考慮して、膨張弁4の開度を変更することができるとともに、過熱度SHを目標値SH0とする(実質的には、目標値SH0に近づける)ことが可能となる。
加熱負荷が小さく、圧縮機1の回転数Hzが低下した際、冷媒循環量が低下すると、四方弁2を通過するときの熱交換による冷媒温度の変化が大きくなる。すなわち、四方弁2で過熱度SHが増加することになる。本実施形態では、四方弁2での過熱度SHの増加量を考慮した第1の補正値X1で目標値SH0を補正しているため、四方弁2での過熱度SHの増加を見込んで予め目標値SH0を高く設定する必要がない。
例えば、四方弁2での吸熱により3[K]分程度の過熱度を取ることが可能であるため、従来においては、過熱度の目標値を3とし、空気熱交換器5での過熱度を0、四方弁2での過熱度を3に近づけるように膨張弁4の開度が制御される。その際、空気熱交換器5での過熱度を0とすると、冷媒は液のまま四方弁2を通過する。液冷媒は、ガス冷媒よりも密度が高く、熱交換に多くのエネルギーを要するため、四方弁2で3[K]分の吸熱がされ難くなる。その結果、全体として過熱度が0となってしまい、膨張弁4を絞るような制御に転じる。したがって、膨張弁4の制御を安定させるためには、過熱度の目標値は、4以上に設定する必要がある。
仮に、目標値SH0の設定が高すぎると、膨張弁4の開度を過度に下げることになる。その結果、空気熱交換器5での熱交換効率が低下し、ヒートポンプ式給湯装置HPの運転性能の悪化につながってしまうおそれがある。本実施形態では、四方弁2での過熱度SHの増加量を考慮して変動する第1の補正値X1で目標値SH0を補正しているため、このような事態を回避できる。四方弁2での過熱度SHの上昇量は、冷凍サイクルの状態によって変化するため、本実施形態のように目標値SH0を固定値ではなく変動値とし、ヒートポンプ式給湯装置HPの運転状態に合わせた値とすることで、膨張弁4の絞り過ぎを抑制できる。これに対し、目標値SH0の設定が低すぎると、膨張弁4の開度がハンチングしてしまうおそれがある。このような膨張弁4の開度のハンチングも、四方弁2での過熱度SHの増加量を考慮して変動する第1の補正値X1で目標値SH0を補正することで回避できる。
このように本実施形態によれば、過熱度SHの目標値SH0をヒートポンプ式給湯装置HPの運転状態に応じて適切に設定でき、膨張弁4の開度の制御精度の向上を図ることが可能となる。これにより、空気熱交換器5に流入する冷媒量が最適量に設定され、空気熱交換器5において冷媒を効率よく蒸発させることができる。このため、ヒートポンプ式給湯装置HPの加熱性能の向上を図ることが可能となる。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、冷媒の過熱度SHの目標値SH0を圧縮機1の回転数Hzに応じて基準値SHVに補正値Xを加味して算出している。補正値SHXのうち、第1の補正値X1は、四方弁2での過熱度SHの増加量を考慮した補正値であり、吸込冷媒温度TSと出口冷媒温度TXとの温度差(TS-TX)である。ただし、出口冷媒温度TXを考慮することなく、補正値SHXとは異なる補正値に基づいて目標値SH0を算出することも可能である。このように出口冷媒温度TXを考慮しない補正値に基づいて目標値SH0を算出する他の実施形態を第2の実施形態として以下に説明する。第2の実施形態のヒートポンプ式熱源装置の構成自体は、図1に示す第1の実施形態のヒートポンプ式給湯装置HPの構成と同等である。ただし、第2の実施形態のヒートポンプ式給湯装置HPにおいて、出口冷媒温度センサ33は省略可能であり、必須の構成要素ではない。
図4には、本実施形態における加熱運転時におけるコントローラ40の制御フローを示す。以下、図4に示す制御フローに従って、本実施形態における加熱運転時におけるコントローラ40の制御について説明する。なお、本実施形態の加熱運転の制御フローは、第1の実施形態の制御フロー(図2)の一部を第2の実施形態に特有の制御に付加、変更するものである。したがって、上述した第1の実施形態と同等の制御については同一のステップ番号を付して説明を省略し、第2の実施形態に特有の制御について詳述する。
図4に示すように、加熱運転時において、コントローラ40は、サーモON条件を判定し(S101)、サーモON条件が成立する場合、循環ポンプ11を起動させる(S102)とともに、圧縮機1を起動させる(S103)。その際、コントローラ40は、サーモON条件が成立するまでサーモON条件の判定を繰り返す。また、コントローラ40は、圧縮機1の連続運転時間を計測するタイマを始動させる。
圧縮機1を起動させると、コントローラ40は、吸込冷媒温度TSおよび入口冷媒温度TEの値をそれぞれ取得する(S201)。その際、コントローラ40は、吸込冷媒温度センサ31から吸込冷媒温度TS、入口冷媒温度センサ32から入口冷媒温度TEの各検出値をそれぞれ取得する。
取得したこれらの検出値に基づいて、コントローラ40は、過熱度SHを制御する際の目標値SH0を設定する(S202)。目標値SH0の設定にあたって、コントローラ40は、第1の実施形態のテーブルT3(図3)とは異なり、図5に示すテーブルT5を参照する。テーブルT5は、例えばコントローラ40の記憶装置に格納されている。目標値SH0の設定時、コントローラ40は、テーブルT5に記録された所望の値をメモリに読み出し、その値に応じて目標値SH0を設定する。設定された目標値SH0は、例えばコントローラ40のメモリに保持され、後述する開度変更条件の判定時(S111,S113)にパラメータとして読み出される。
図5に示すように、目標値SH0は、圧縮機1の回転数Hzに応じて、過熱度SHの基準値SHVに所定の補正値SHYを加味して算出される。具体的には、基準値SHVに補正値SHYを加算して目標値SH0が算出される(SH0=SHV+SHY)。なお、圧縮機1の回転数Hzは、第1の実施形態と同様に制御されればよい。
図5に示す例では、基準値SHVを2としており、この点は第1の実施形態と同様である。なお、基準値SHVの値がこれに限定されず任意に設定可能である点についても、第1の実施形態と同様である。補正値SHYは、第1の補正値Y1と第2の補正値Y22を含み、第1の補正値Y1から第2の補正値Y2を減じて算出される(SHY=Y1-Y2)。
第1の補正値Y1は、四方弁2での過熱度SHの増加量を考慮した補正値であり、圧縮機1から吐出される冷媒と、圧縮機1に吸い込まれる冷媒とが四方弁2を通過する際の熱交換に応じて変動し、その初期値は0(ゼロ)である。第1の補正値Y1は、ヒートポンプ式給湯装置HPの加熱運転時(もしくは暖房運転時)における空気熱交換器5から四方弁2への冷媒の液戻りを判定するごとに所定値(一例として、1)ずつ加算される。かかる液戻りの判定による第1の補正値Y1の加算は、例えば後述する開度変更条件の判定時に過熱度SHの変化を監視し、圧縮機1の回転数Hzに大きな変化がないにも関わらず過熱度SHが低下に転じた場合などに行われる。ただし、着霜時の過熱度SHの低下時や圧縮機1の起動後、運転状態が安定する前の過渡期などには、かかる第1の補正値Y1の加算は行われない。第2の補正値Y2は、第1の実施形態における第2の補正値X2と同様に、空気熱交換器5での冷媒の圧力損失を考慮した補正値であり、圧縮機1の回転数Hzに応じて予め設定された変動値である。
図5に示す例では、第1の実施形態と同様に、圧縮機1の回転数Hzが第1から第4の閾値Z1~Z4によって分類されている。コントローラ40は、第1から第4の閾値Z1~Z4によって区切られた四つの範囲のいずれに圧縮機1の回転数Hzが該当するかに応じて目標値SH0を算出する。ただし、第1の実施形態と同様に、閾値の数は、三つ以下、あるいは五つ以上であってもよい。
テーブルT5によれば、圧縮機1の回転数Hzが第1の範囲内である場合、第2の補正値Y2は0である。圧縮機1の回転数Hzが第2の範囲内である場合、第2の補正値Y2は1である。圧縮機1の回転数Hzが第3の範囲内である場合、第2の補正値Y2は2である。圧縮機1の回転数Hzが第4の範囲内である場合、第2の補正値Y2は3である。
コントローラ40は、テーブルT5に基づいて、基準値SHVに補正値SHYを加算して目標値SH0を算出する(SH0=SHV+SHY)。すなわち、目標値SH0は、基準値SHVと第1の補正値X1を加算し、加算値から第2の補正値X2を減じた値である(SH0=SHV+Y1-Y2)。また、第1の補正値Y1は、空気熱交換器5から四方弁2への冷媒の液戻りの有無に応じた変動値である。したがって、第1の実施形態と同様に、目標値SH0は、四方弁2での過熱度SHの増加量を示す第1の補正値Y1と、空気熱交換器5での冷媒の圧力損失を示す第2の補正値Y2とをそれぞれ考慮して、空気熱交換器5での冷媒の熱交換量である基準値SHVを補正することで設定される。
具体的には、圧縮機1の回転数Hzが第1の範囲内である場合、コントローラ40は、目標値SH0を第1の補正値Y1に2を加えた値(2+Y1)に設定する。圧縮機1の回転数Hzが第2の範囲内である場合、コントローラ40は、目標値SH0を第1の補正値Y1に1を加えた値(1+Y1)に設定する。圧縮機1の回転数Hzが第3の範囲内である場合、コントローラ40は、目標値SH0を第1の補正値Y1の値に設定する。圧縮機1の回転数Hzが第4の範囲内である場合、コントローラ40は、目標値SH0を第1の補正値Y1から1を減じた値(-1+Y1)に設定する。
また、コントローラ40は、過熱度SH、入口冷媒温度TE、圧縮機1の回転数Hzの現在値をメモリに記録し、保持する(S203)。保持されたこれらの値は、後述する第1の補正値Y1の補正値変更条件の判定時(S204,S205,S206)にパラメータとして読み出される。過熱度SHの値は、第1の実施形態と同様に、吸込冷媒温度TSと入口冷媒温度TEとの温度差(TS-TE)で算出される値である。
そして、コントローラ40は、過熱度SHの値が設定した目標値SH0となるように、膨張弁4の開度の制御を開始する(S106)。別の捉え方をすれば、コントローラ40は、出口冷媒温度TXと入口冷媒温度TEとの温度差が基準値SHVとなるように、膨張弁4の開度を変更する。これにより、ヒートポンプ式給湯装置HPにおいて、冷媒の過熱度SHの値、つまり吸込冷媒温度TSと入口冷媒温度TEとの温度差(TS-TE)を目標値SH0とするべく、膨張弁4の開度制御が開始される。
膨張弁4の開度制御を開始すると、コントローラ40は、サーモOFF条件を判定する(S107)。サーモOFF条件の成否により、コントローラ40は、膨張弁4の開度制御を継続するか否かを決定する。
サーモOFF条件が成立する場合、コントローラ40は、圧縮機1を停止させる(S108)。続いて、コントローラ40は、目標値SH0の補正値SHYを初期値にリセットする(S109)。この場合、コントローラ40は、第1の補正値Y1および第2の補正値Y2の値をいずれもゼロクリアする。これにより、ヒートポンプ式給湯装置HPにおける膨張弁4の開度制御が終了する。次いで、コントローラ40は、循環ポンプ11を停止させる(S110)。これにより、ヒートポンプ式給湯装置HPの加熱運転が終了する。
一方、S107においてサーモOFF条件が成立しない場合、コントローラ40は、引き続き、膨張弁4の開度を適宜変更する。このため、コントローラ40は開度変更条件を判定する。開度変更条件は、第1の実施形態と同様であり、開度変更条件として第1の開度変更条件と第2の開度変更条件がそれぞれ判定されることも第1の実施形態と同様である。したがって、第1の開度変更条件が成立する場合には膨張弁4の開度が上げられ、第2の開度変更条件が成立する場合には膨張弁4の開度が下げられる(S111~S114)。第1および第2の開度変更条件がいずれも成立しない場合、膨張弁4の開度が維持される(S115)。
S112、S114、S115において、膨張弁4の開度を上昇、低下、維持のいずれかに遷移させると、コントローラ40は、所定時間内においてこのような開度の変更を繰り返すべく、さらに本実施形態では第1の補正値Y1の変更要否を判定するべく、開度変更用のタイマを始動させる(S116)。
所定時間が経過していない場合(S117においてNo)、コントローラ40は、再びサーモOFF条件を判定し(S118)、所定時間内においてサーモOFF条件が成立するまで、開度変更条件の判定および第1の補正値Y1の変更要否の判定を適宜繰り返す。したがって、第1の実施形態と同様に、これら条件の成否に応じて、膨張弁4の開度の上昇、低下、維持、および第1の補正値Y1の変更が適宜繰り返される。
そして、例えばタンク水温がサーモOFF水温以上となれば、サーモOFF条件(第1のサーモOFF条件)が成立し(S118においてYes)、圧縮機1が停止され(S108)、目標値SH0の補正値SHYが初期値にリセットされ(S109)、循環ポンプ11が停止される(S110)。これにより、ヒートポンプ式給湯装置HPにおける膨張弁4の開度制御が終了するとともに、ヒートポンプ式給湯装置HPの加熱運転が終了する。
一方、所定時間が経過した場合(S117においてYes)、コントローラ40は、第1の補正値Y1の変更要否を判定するべく、補正値変更条件を判定する。補正値変更条件は、第1の補正値Y1を変更させるか否かの判定条件である。ここでの補正値変更条件は、空気熱交換器5で熱交換されて圧縮機1に至る冷媒の液戻りの発生有無を判定するための条件である。補正値変更条件の成否に応じて、第1の補正値Y1を所定値(一例として、1)ずつ加算するかが決定される。本実施形態では、補正値変更条件、換言すれば冷媒の液戻りの発生条件として、第1から第4の補正値変更条件がそれぞれ判定される。第1から第4の補正値変更条件のすべてが成立する場合には第1の補正値Y1が加算され、いずれかの補正値変更条件が成立しない場合には第1の補正値Y1が加算されずにその値が維持される。
補正値変更条件の判定にあたって、コントローラ40は、一例としてまず第1の補正値変更条件を判定する(S204)。第1の補正値変更条件は、過熱度SHが前回の条件判定時の過熱度SHよりも所定値だけ低下しているか否かの判定条件である。所定値は、任意の値に設定可能であるが、本実施形態では一例として3としている。第1の補正値変更条件の判定にあたって、コントローラ40は、吸込冷媒温度センサ31から吸込冷媒温度TSを取得するとともに、入口冷媒温度センサ32から入口冷媒温度TEを取得し、これらの温度差(TS-TE)として過熱度SH(以下、現過熱度SHという)を算出する。そして、コントローラ40は、メモリに保持した過熱度SH(以下、前過熱度SHという)を読み出して所定値だけ減じた値と、現過熱度SHの値とを比較する。前過熱度SHの値は、第1の補正値変更条件の初回判定時は、S203においてメモリに保持された値であり、それ以降の判定時は、後述するS209においてメモリに保持された値である。現過熱度SHの前過熱度SHからの低下が所定値以上である(現SH≦前SH-3)場合、コントローラ40は、第1の補正値変更条件が成立すると判定する。一方、現過熱度SHの前過熱度SHからの低下が所定値未満である(現SH>前SH-3)場合、コントローラ40は、第1の補正値変更条件が成立しないと判定する。
第1の補正値変更条件が成立する場合、コントローラ40は、第2の補正値変更条件を判定する(S205)。第2の補正値変更条件は、入口冷媒温度TEが前回の条件判定時の入口冷媒温度TEよりも所定値だけ低下しているか否かの判定条件である。所定値は、任意の値に設定可能であるが、本実施形態では一例として2としている。第2の補正値変更条件の判定にあたって、コントローラ40は、入口冷媒温度センサ32から取得した入口冷媒温度TE(以下、現入口冷媒温度TEという)の値と、メモリから読み出した入口冷媒温度TE(以下、前入口冷媒温度TEという)の値から所定値だけ減じた値とを比較する。前入口冷媒温度TEの値は、第2の補正値変更条件の初回判定時は、S203においてメモリに保持された値であり、それ以降の判定時は、後述するS209においてメモリに保持された値である。現入口冷媒温度TEの前入口冷媒温度TEからの低下が所定値以下である(現TE≧前TE-2)場合、コントローラ40は、第2の補正値変更条件が成立すると判定する。一方、現入口冷媒温度TEの前入口冷媒温度TEからの低下が所定値を超えている(現TE<前TE-2)場合、コントローラ40は、第2の補正値変更条件が成立しないと判定する。
第2の補正値変更条件が成立する場合、コントローラ40は、第3の補正値変更条件を判定する(S206)。第3の補正値変更条件は、圧縮機1の回転数Hzと前回の条件判定時の回転数Hzとの差が所定範囲内である否かの判定条件である。所定範囲は、任意の範囲に設定可能であるが、本実施形態では一例として-5以上、5以下の範囲内としている。第3の補正値変更条件の判定にあたって、コントローラ40は、圧縮機1から取得した回転数Hz(以下、現回転数Hzという)の値と、メモリから読み出した回転数Hz(以下、前回転数Hzという)の値との差が所定範囲内であるか判定する。前回転数Hzの値は、第3の補正値変更条件の初回判定時は、S203においてメモリに保持された値であり、それ以降の判定時は、後述するS209においてメモリに保持された値である。現回転数Hzと前回転数Hzとの差が所定範囲内である(-5≦現Hz-前Hz≦5)場合、コントローラ40は、第3の補正値変更条件が成立すると判定する。一方、現回転数Hzと前回転数Hzとの差が所定範囲内でない(現Hz-前Hz<-5、もしくは現Hz-前Hz>5)場合、コントローラ40は、第3の補正値変更条件が成立しないと判定する。
第3の補正値変更条件が成立する場合、コントローラ40は、第4の補正値変更条件を判定する(S207)。第4の補正値変更条件は、圧縮機1の起動開始から一定時間経過したか否かの判定条件である。一定時間は、圧縮機1が起動開始してから安定稼働するまでに必要な連続運転時間の値として予め設定されており、例えばコントローラ40の記憶装置に保持され、第4の補正値変更条件の判定時にメモリに読み出されてパラメータとして使用される。第4の補正値変更条件の判定にあたって、コントローラ40は、例えば圧縮機1の連続運転時間を計測するタイマの計測値が一定時間を超えているか判定する。一定時間を超えている場合、コントローラ40は、第4の補正値変更条件が成立すると判定する。一方、一定時間以下である場合、コントローラ40は、第4の補正値変更条件が成立しないと判定する。
第4の補正値変更条件が成立する場合、コントローラ40は、第1の補正値Y1を所定値(一例として、1)だけ加算する(S208)。この場合、第1から第4の補正値変更条件のすべてが成立、つまり補正値変更条件が成立しており、第1の補正値Y1が変更される。すなわちこの場合、空気熱交換器5で熱交換されて圧縮機1に至る冷媒の液戻りが発生している、つまり冷媒の液戻りの発生条件が成立している場合に相当する。これにより、補正値SHYが1だけ増加し、結果として目標値SH0も1だけ増加される。
このように第1の補正値Y1が変更されると、コントローラ40は、過熱度SH、入口冷媒温度TE、圧縮機1の回転数Hzの現在値をメモリに記録し、保持する(S209)。かかる現在値は、S204、S205、S206で使用された現過熱度SH、現入口冷媒温度TE、現回転数Hzの各値である。保持されたこれらの値は、次回の補正値変更条件の判定時に前回判定時の値としてメモリから読み出され、パラメータとして使用される。
これらの値が保持されると、膨張弁4の開度の変更を繰り返すべく、コントローラ40は開度変更条件を再び判定する。具体的には、コントローラ40は、第1の開度変更条件を判定し(S111)、その成否に応じて、S112からS116の制御を適宜実行する。その際、コントローラ40は、カウントアップした開度変更用のタイマをリセットする。また、S204において第1の補正値変更条件が成立しない場合、S205において第2の補正値変更条件が成立しない場合、S206において第3の補正値変更条件が成立しない場合、S206において第4の補正値変更条件が成立しない場合も同様に、コントローラ40は開度変更条件を再び判定する。
なお、本実施形態では、S206において第3の補正値変更条件が成立しない場合、コントローラ40は、開度変更条件を再び判定する前に、目標値SH0の第1の補正値Y1を初期値にリセットする。この場合、コントローラ40は、第1の補正値Y1の値を一旦ゼロクリアする。
このように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、目標値SH0を第1の補正値Y1によって、換言すれば四方弁2での過熱度SHの増加量を考慮して補正できる。これにより、四方弁2での過熱度SHの増加量を考慮して、膨張弁4の開度を変更することができるとともに、過熱度SHを目標値SH0とする(実質的には、目標値SH0に近づける)ことが可能となる。したがって、過熱度SHの目標値SH0をヒートポンプ式給湯装置HPの運転状態に応じて適切に設定でき、膨張弁4の開度の制御精度の向上を図ることが可能となる。これにより、空気熱交換器5に流入する冷媒量が最適量に設定され、空気熱交換器5において冷媒を効率よく蒸発させることができる。このため、ヒートポンプ式給湯装置HPの加熱性能の向上を図ることが可能となる。
また、本実施形態によれば、出口冷媒温度センサ33は、必須の構成要素ではなく、省略可能である。したがって、出口冷媒温度センサ33の分だけ構成部材の調達コストを削減できる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…圧縮機、3…水熱交換器、4…膨張弁、5…空気熱交換器、7…室外ファン、12a…水入口、12b…水出口、12c…水出口、13…給湯タンク、14…放熱コイル(水放熱器)、16…入水管、17…出水管、21,22,23…放熱器、30…外気温度センサ、31…吸込冷媒温度センサ(第1温度センサ)、32…入口冷媒温度センサ(第2温度センサ)、33…出口冷媒温度センサ(第3温度センサ)、34…入口水温センサ、35…出口水温センサ、36…タンク水温センサ、40…コントローラ、41…操作表示器、A…室外ユニット、B…水熱交換ユニット、C…負荷ユニット、D…制御ユニット、HP…ヒートポンプ式給湯装置。

Claims (7)

  1. 圧縮した冷媒を吐出する圧縮機と、
    内部に有する流路を流れる水を前記冷媒で加熱する水熱交換器と、
    前記水熱交換器で熱交換された前記冷媒を外気から吸熱して蒸発させる空気熱交換器と、
    前記圧縮機から吐出された前記冷媒を前記水熱交換器に導くとともに、前記空気熱交換器で熱交換された前記冷媒を前記圧縮機に導く四方弁と、
    前記水熱交換器で熱交換された前記冷媒を減圧して前記空気熱交換器に導く、開度が変更できる膨張弁と、
    前記四方弁で導かれて前記圧縮機に吸い込まれる前記冷媒の第1温度を検出する第1温度センサと、
    前記膨張弁で減圧されて前記空気熱交換器に流入する前記冷媒の第2温度を検出する第2温度センサと、
    前記第1温度から前記第2温度を減じて前記冷媒の過熱度を算出し、算出した前記過熱度が目標値となるように前記膨張弁の開度を変更する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記圧縮機から吐出される前記冷媒と前記圧縮機に吸い込まれる前記冷媒とが前記四方弁を通過する際の熱交換に応じて変動する第1の補正値を用いて前記目標値を補正する
    ことを特徴とするヒートポンプ式熱源装置。
  2. 前記空気熱交換器から流出して前記四方弁に至る前記冷媒の第3温度を検出する第3温度センサをさらに備え、
    前記制御部は、前記第1温度から前記第3温度を減じて前記第1の補正値を算出する
    ことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式熱源装置。
  3. 前記制御部は、前記空気熱交換器で熱交換されて前記圧縮機に至る前記冷媒の液戻りの発生有無を判定し、前記液戻りが発生している場合、前記第1の補正値を所定値だけ増加させ、前記液戻りが発生していない場合、前記第1の補正値を維持する
    ことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式熱源装置。
  4. 前記制御部は、前記膨張弁の開度を変更してから所定時間経過後に前記液戻りの発生有無を判定し、判定結果に応じて前記第1の補正値の値を変更する
    ことを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ式熱源装置。
  5. 前記制御部は、前記過熱度、前記第2温度、および前記圧縮機の回転数の各現在値と、前記第1の補正値の変更要否の前回判定時の前記過熱度、前記第2温度、および前記圧縮機の回転数の各値とを比較し、前記液戻りの発生有無を判定する
    ことを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ式熱源装置。
  6. 前記制御部は、前記圧縮機の回転数の変動に応じて変動する第2の補正値を前記第1の補正値から減じて算出した値を、前記圧縮機の回転数によらない一定値である基準値に加えて前記目標値を補正する
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のヒートポンプ式熱源装置。
  7. 前記第2の補正値は、前記空気熱交換器での前記冷媒の圧力損失に応じて予め設定される
    ことを特徴とする請求項6に記載のヒートポンプ式熱源装置。
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