JP2024044577A - 焼入れ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被焼入れ体の段差部分と段差以外の部位と、に形成される焼入れの厚さの差の低減。【解決手段】光を放射することにより、被焼入れ体に輻射熱を発生させ、被焼入れ体を加熱する1つ以上の熱放射光源と、熱放射光源と被焼入れ体との間に配され、光を屈折させる1つ以上の屈折材と、を備え、屈折材は、屈折させた光が、被焼入れ体が表面に有する段差である段差部に入射するように、構成されかつ配置されている、焼入れ装置。【選択図】図1
Description
本開示は、焼入れ装置に関する。
従来、コイルに高周波の電流を流すことで被焼入れ体を焼入れる、高周波焼入れ装置が知られている。特許文献1において、高周波焼き入れ装置は、コイル内に挿入された被焼入れ体に誘導電流を生じさせることで被焼入れ体を加熱し、冷却器によって被焼入れ体を急冷することで被焼入れ体の表層を硬化させる。
ところで、被焼入れ体として、表面の一部に段差を有する形状のものが選択されることがある。段差を有する形状の被焼入れ体に誘導電流を流して焼入れを行う場合、段差部分と、それ以外の部位とで、被焼入れ体に流れる渦電流が一定とならず、被焼入れ体の段差部分の温度が段差以外の部位の温度よりも低くなる可能性がある。この場合、被焼入れ体の段差部分に形成される焼入れの厚さと、段差以外の部位に形成される焼入れの厚さが異なるという課題があった。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、焼入れ装置が提供される。この焼入れ装置は、光を放射することにより、被焼入れ体に輻射熱を発生させ、前記被焼入れ体を加熱する1つ以上の熱放射光源と、前記熱放射光源と前記被焼入れ体との間に配され、光を屈折させる1つ以上の屈折材と、を備え、前記屈折材は、屈折させた光が、前記被焼入れ体が表面に有する段差である段差部に入射するように、構成されかつ配置されている。この形態の焼入れ装置によれば、屈折した光が段差部に入射することで、段差部の温度を高くすることができる。これにより、被焼入れ体の段差部と、それ以外の部位との温度差を小さくすることができる。その結果、誘導電流を用いて被焼入れ体を加熱する態様と比較して、被焼入れ体の部位による焼入れの厚さの差を低減することができる。
(2)上記形態の焼入れ装置によれば、前記1つ以上の熱放射光源として、環状を有する複数の前記熱放射光源を有し、前記1つ以上の屈折材として、外径が前記熱放射光源の内径よりも小さい円筒形状を有する1つの前記屈折材を有し、前記複数の熱放射光源は、前記屈折材の外周側に、前記屈折材の中心軸の方向に沿ってそれぞれ配され、前記屈折材は、前記屈折材の中心軸の方向に沿って、異なる屈折率を有する複数の屈折部位を有し、前記複数の熱放射光源から放射される光が、前記複数の屈折部位のいずれかにおいて屈折する位置に、前記複数の熱放射光源が配されていてもよい。この形態の焼入れ装置によれば、異なる屈折率を有する複数の屈折部位によって、異なる入射角度で被焼入れ体に光を入射させることができる。そのため、屈折材がない態様と比較して、被焼入れ体の所望の箇所に対する入熱を管理しやすくなる。
(3)上記形態の焼入れ装置によれば、前記1つ以上の屈折材として、環状を有する複数の前記屈折材を有し、前記1つ以上の熱放射光源として、内径が前記屈折材の外径よりも大きい円筒形状を有する1つの前記熱放射光源を有し、複数の前記屈折材は、それぞれ前記熱放射光源の内周側に、前記熱放射光源の中心軸の方向に沿って配されていてもよい。
(4)上記形態の焼入れ装置によれば、さらに、前記熱放射光源または前記屈折材の中心軸を中心として、前記被焼入れ体を回転させる軸部を備えていてもよい。この形態の焼入れ装置によれば、被焼入れ体を回転させることにより、焼入れ装置が回転する態様と比較して、被焼入れ体の所望の箇所に対する入熱を管理しやすくなる。
(5)上記形態の焼入れ装置によれば、前記熱放射光源によって、前記被焼入れ体の、表面から予め定められた厚さまでの温度を、910℃以上かつ1000℃以下の温度に加熱してもよい。
(2)上記形態の焼入れ装置によれば、前記1つ以上の熱放射光源として、環状を有する複数の前記熱放射光源を有し、前記1つ以上の屈折材として、外径が前記熱放射光源の内径よりも小さい円筒形状を有する1つの前記屈折材を有し、前記複数の熱放射光源は、前記屈折材の外周側に、前記屈折材の中心軸の方向に沿ってそれぞれ配され、前記屈折材は、前記屈折材の中心軸の方向に沿って、異なる屈折率を有する複数の屈折部位を有し、前記複数の熱放射光源から放射される光が、前記複数の屈折部位のいずれかにおいて屈折する位置に、前記複数の熱放射光源が配されていてもよい。この形態の焼入れ装置によれば、異なる屈折率を有する複数の屈折部位によって、異なる入射角度で被焼入れ体に光を入射させることができる。そのため、屈折材がない態様と比較して、被焼入れ体の所望の箇所に対する入熱を管理しやすくなる。
(3)上記形態の焼入れ装置によれば、前記1つ以上の屈折材として、環状を有する複数の前記屈折材を有し、前記1つ以上の熱放射光源として、内径が前記屈折材の外径よりも大きい円筒形状を有する1つの前記熱放射光源を有し、複数の前記屈折材は、それぞれ前記熱放射光源の内周側に、前記熱放射光源の中心軸の方向に沿って配されていてもよい。
(4)上記形態の焼入れ装置によれば、さらに、前記熱放射光源または前記屈折材の中心軸を中心として、前記被焼入れ体を回転させる軸部を備えていてもよい。この形態の焼入れ装置によれば、被焼入れ体を回転させることにより、焼入れ装置が回転する態様と比較して、被焼入れ体の所望の箇所に対する入熱を管理しやすくなる。
(5)上記形態の焼入れ装置によれば、前記熱放射光源によって、前記被焼入れ体の、表面から予め定められた厚さまでの温度を、910℃以上かつ1000℃以下の温度に加熱してもよい。
A.第1実施形態:
A1.第1実施形態の構成:
図1は、本実施形態の焼入れ装置1の断面図である。本実施形態における焼入れ装置は、被焼入れ体WKに輻射熱を発生させることで被焼入れ体を焼入れする。本実施形態における焼入れ装置は、3つの熱放射光源10と、屈折材20と、軸部30と、図示しない冷却部40と、制御部50と、を備える。なお、制御部50のハッチングは省略している。
A1.第1実施形態の構成:
図1は、本実施形態の焼入れ装置1の断面図である。本実施形態における焼入れ装置は、被焼入れ体WKに輻射熱を発生させることで被焼入れ体を焼入れする。本実施形態における焼入れ装置は、3つの熱放射光源10と、屈折材20と、軸部30と、図示しない冷却部40と、制御部50と、を備える。なお、制御部50のハッチングは省略している。
熱放射光源10は、被焼入れ体WKに光を放射して、輻射熱を発生させることで加熱する。本実施形態において、熱放射光源10として、赤外線ランプを使用する。本実施形態において、焼入れ装置1は、3つの熱放射光源10として、第1光源10aと、第2光源10bと、第3光源10cを備える。第1光源10aないし第3光源10cは、同じ直径の環状の形状を有している。第1光源10aと、第2光源10bと、第3光源10cは、屈折材20を囲うように、配されている。より詳細には、第1光源10aないし第3光源10cは、屈折材20の外周側に、屈折材20の中心軸CP1の方向に沿って、この順に配されている。屈折材20の形状については以下に述べる。第1光源10aないし第3光源10cは、放射する光が、後述する3つの屈折部位200のいずれかにおいて屈折する位置に、配されている。
屈折材20は、熱放射光源10から放射された光を屈折させる。屈折材20は、外径が、熱放射光源10の内径よりも小さい円筒形状を有している。屈折材20は、第1光源10aないし第3光源10cの内周側に、配されている。屈折材20の中心軸CP1は、第1光源10aないし第3光源10cの中心軸と一致している。屈折材20は、図示しない接続部によって、熱放射光源10と接続している。
また、屈折材20は、被焼入れ体WKが焼入れ装置1内に挿入された状態において、熱放射光源10と、被焼入れ体WKの間に配される。屈折材20は、被焼入れ体WKの段差部STに、屈折させた光が入射するように、構成され、かつ配置されている。段差部STについては後述する。本実施形態において、屈折材20の素材はガラスである。屈折材20は、3つの屈折部位200として、第1屈折部位200aと、第2屈折部位200bと、第3屈折部位200cを有する。
第1屈折部位200aないし第3屈折部位200cは、それぞれ異なる屈折率を有し、入射した光をそれぞれ異なる角度で屈折させる。第1屈折部位200aと、第2屈折部位200bと、第3屈折部位200cは、屈折材20の中心軸CP1に沿ってこの順に形成されている。
第1屈折部位200aないし第3屈折部位200cは、屈折材20の、熱放射光源10の光が入射する位置に、形成されている。具体的には、第1屈折部位200aは、第1光源10aから放射される光が入射する位置に形成されている。第2屈折部位200bは、第2光源10bから放射される光が入射する位置に形成されている。第3屈折部位200cは、第3光源10cから放射される光が入射する位置に形成されている。なお、本実施形態において、第1屈折部位200aないし第3屈折部位200cのいずれかにおいて、各熱放射光源10から放射された光が屈折されるように、第1屈折部位200aないし第3屈折部位200cが形成されている。
第2屈折部位200bは、第1屈折部位200aと第3屈折部位200cよりも屈折率が大きい。第3屈折部位200cは、第1屈折部位200aよりも屈折率が大きい。
以下において、熱放射光源10と屈折材20をあわせて、「加熱部HU」とよぶ。
軸部30は、焼入れ装置1内への被焼入れ体WKの挿入、および取り出しを行う。軸部30は、被焼入れ体WKの図示しない穴に嵌ることで被焼入れ体WKと接続し、被焼入れ体WKを支持している。軸部30は、屈折材20の中心軸CP1の方向に移動することで、被焼入れ体WKを焼入れ装置1から出し入れする。本実施形態において、軸部30は、屈折材20の中心軸CP1を中心として回転することで、被焼入れ体WKを回転させる。
冷却部40は、熱放射光源10によって加熱された被焼入れ体WKを冷却する。本実施形態において、冷却部40は、冷却剤を被焼入れ体WKに噴射することで、被焼入れ体WKを冷却する。冷却剤として、水や、油や、ボリマー水溶液等が選択される。図示は省略しているが、冷却部40は、略円筒の形状を有する。冷却部40は、一方の端部が加熱部HUの端部と近接しており、加熱された被焼入れ体WKが軸部30によって挿入方向に移動されると、そのまま冷却部40内に挿入される位置に配置されている。なお、被焼入れ体WKの挿入方向とは、屈折材20の中心軸CP1方向のことをいい、図1において白抜き矢印Aで表している。
制御部50は、熱放射光源10と軸部30と冷却部40を制御する。制御部50は、熱放射光源10と軸部30と冷却部40と電気的に接続している。本実施形態において、制御部50は、各熱放射光源10が放射を行うタイミングと、各熱放射光源10の放射時間を制御する。また、制御部50は、軸部30が被焼入れ体WKを挿入方向に移動させるタイミングを制御する。
A2.焼入れ方法:
被焼入れ体WKへの焼入れについて説明する。本実施形態において、被焼入れ体WKは、表面の一部に段差である段差部STを有する。本明細書における段差とは、被焼入れ体WKを挿入方向に沿って見たときに、挿入方向と垂直な断面の形状が異なる部分のことをいう。図1に示すように、本実施形態の被焼入れ体WKは、第1段差部ST1と、第2段差部ST2と、第3段差部ST3と、を有している。被焼入れ体WKの素材は鉄鋼である。
被焼入れ体WKへの焼入れについて説明する。本実施形態において、被焼入れ体WKは、表面の一部に段差である段差部STを有する。本明細書における段差とは、被焼入れ体WKを挿入方向に沿って見たときに、挿入方向と垂直な断面の形状が異なる部分のことをいう。図1に示すように、本実施形態の被焼入れ体WKは、第1段差部ST1と、第2段差部ST2と、第3段差部ST3と、を有している。被焼入れ体WKの素材は鉄鋼である。
図2は、焼入れ方法の一例を説明する工程図である。図3は、第1段差部ST1への入熱を説明する図である。図4は、図1のIV-IV断面図である。なお、図4において、被焼入れ体WKを簡略化している。また、図4における各部の寸法は、正確ではない。焼入れ装置1による被焼入れ体WKへの焼入れは、制御部50の制御によって実行される。
図2のステップS10において、制御部50は、ユーザによって制御部50に予め入力された条件に従って、軸部30を移動させることで、被焼入れ体WKを加熱部HUに挿入する。ここでいう条件とは、被焼入れ体WKの挿入距離のことをいう。ステップS10の処理について、図3を用いて説明する。制御部50は、まず、軸部30によって被焼入れ体WKを図3の位置まで移動させる。具体的には、制御部50は、第2屈折部位200bにおいて屈折した光L2が、第1段差部ST1に入射し、第1屈折部位200aにおいて屈折した光L1が、第3段差部ST3に入射する位置に、被焼入れ体WKを移動させる。この際に、図4に示すように、軸部30によって白抜き矢印B方向に回転されながら、被焼入れ体WKが焼入れ装置1に挿入される。
図2のステップS20において、制御部50は、ユーザによって制御部50に予め入力された条件に従って、加熱部HUの熱放射光源10に光を放射させる。これにより、被焼入れ体WKの表面が加熱される。ここでいう条件とは、第1光源10aないし第3光源10cのそれぞれの、光の放射タイミングおよび放射時間である。予め入力された条件に従って熱放射光源10から光が放射されることで、被焼入れ体WKの、表面から所望の厚さまでを焼入れすることができる。
ステップS20の処理について、図3を用いて説明する。制御部50は、第1光源10aおよび第2光源10bに対し、予め定められた放射時間、放射を行うように指示する。上述したように、屈折材20は、被焼入れ体WKの段差部STに、屈折した光が入射するように、構成され、かつ配置されている。
本実施形態において、第2屈折部位200bにおいて屈折した光L2が、第1段差部ST1に入射するように、屈折材20が構成され、かつ配置されている。また、第1屈折部位200aにおいて屈折した光L1が、第3段差部ST3に入射するように、屈折材20が構成され、かつ配置されている。図3に示すように、第2光源10bによって放射され、第2屈折部位200bで屈折した光L2が、第1段差部ST1に入射し、第1段差部ST1が加熱される。また、第1光源10aによって放射され、第1屈折部位200aで屈折した光L1が、第3段差部ST3に入射し、第3段差部ST3が加熱される。
この際に、第1屈折部位200aで屈折した光L1が、被焼入れ体WKの部位WKb、WKcに入射する。第1屈折部位200aで屈折した光L1の屈折角は、第2屈折部位200bまたは第3屈折部位200cで屈折した光の屈折角よりも大きい。そのため、第1屈折部位200aで屈折した光L1は、第2屈折部位200bまたは第3屈折部位200cで屈折した光と比較して、被焼入れ体WKに対して、広い範囲で入射する。そのため、図3の段階において、段差部ST以外への過剰な入熱を防止することができる。予め定められた放射時間の経過後、制御部50は、第1光源10aと第2光源10bに対し、放射を停止するよう指示を出す。
次に、図1に示すように、制御部50は、第2屈折部位200bにおいて屈折した光L2が、第2段差部ST2に入射する位置に、被焼入れ体WKを移動させる。本実施形態において、第2屈折部位200bにおいて屈折した光L2が、第2段差部ST2に入射するように、屈折材20が構成され、かつ配置されている。
制御部50は、第1光源10aと第2光源10bと第3光源10cに、光を放射させる。被焼入れ体WKの部位WKaと部位WKbに、第3光源10cから放射され、第3屈折部位200cにおいて屈折した光L3が入射する。第2光源10bから放射され、第2屈折部位200bにおいて屈折した光L2が、第2段差部ST2に入射する。第1光源10aから放射され、第1屈折部位200aにおいて屈折した光L1が、被焼入れ体WKの部位WKdに入射する。このように、第2段差部ST2と、被焼入れ体WKの段差部ST以外の部位WKa、WKb、WKdが加熱される。
この際に、部位WKbの温度が所望の温度以上とならないように、第3光源10cの放射時間が制御部50によって制御される。予め定められた放射時間の経過後、制御部50は、第1光源10aないし第3光源10cに対し、放射を停止するよう指示を出す。
次に、制御部50は、第2屈折部位200bにおいて屈折した光L2が、第3段差部ST3に入射する位置に、被焼入れ体WKを移動させる。本実施形態において、第2屈折部位200bにおいて屈折した光L2が、第3段差部ST3に入射するように、屈折材20が構成され、かつ配置されている。
制御部50は、第1光源10aと第2光源10bと第3光源10cに、光を放射させる。この際に、第1屈折部位200aにおいて屈折した光L1が、被焼入れ体WKの部位WKdに入射する。また、第2屈折部位200bにおいて屈折した光L2が、第3段差部ST3に入射する。第3屈折部位200cにおいて屈折した光L3が、被焼入れ体WKの部位WKbに入射する。
この際に、被焼入れ体WKの部位WKbの温度が所望の温度以上とならないように、第3光源10cの放射時間が制御部50によって制御される。予め定められた放射時間の経過後、制御部50は、第1光源10aないし第3光源10cに対し、放射を停止するよう指示を出す。
その後、制御部50は、軸部30に被焼入れ体WKを移動させ、第3光源10cから放射された光L3によって、被焼入れ体WKの部位WKdを加熱する。
上述したように、第2屈折部位200bは、第1屈折部位200aと第3屈折部位200cよりも屈折率が大きいため、第2屈折部位200bに入射した光の屈折角は、第1屈折部位200aまたは第3屈折部位200cに入射した光の屈折角よりも小さい。第1屈折部位200aまたは第3屈折部位200cにおいて屈折した光と比較して、第2屈折部位200bで屈折した光L2は、被焼入れ体WKに集中して入射する。一方、第1屈折部位は、第2屈折部位200bと第3屈折部位200cよりも屈折率が小さいため、第1屈折部位200aに入射した光の屈折角は、第2屈折部位200bまたは第3屈折部位200cに入射した光の屈折角よりも大きい。第2屈折部位200bまたは第3屈折部位200cにおいて屈折した光と比較して、第1屈折部位200aで屈折した光L1は、被焼入れ体WKに集中して入射しにくい。
被焼入れ体WKの、焼入れ装置1内における挿入位置と、第1光源10aないし第3光源10cの放射のタイミングが制御されることで、異なる屈折率を有する屈折部位200において、被焼入れ体WKの所望の部位に、所望の入射角度で光を照射することができる。これにより、段差部STに対し、光を集中して照射することができる。また、段差部ST以外の部位への過剰な入熱を抑制することができる。このように、制御部50によって、所望の時間、被焼入れ体WKの所望の部位に入射が行われるように、軸部30および熱放射光源10が制御され、被焼入れ体WKの移動と加熱が繰り返される。
本実施形態においては、ステップS20において、被焼入れ体WKの、表面から予め定められた厚さまでの温度が、910℃以上かつ1000℃以下の温度となるように、被焼入れ体WKが加熱される。本実施形態においては、この範囲の温度において、焼入れされた被焼入れ体WKの焼き割れを防ぐことができる。予め定められた厚さは、選択される被焼入れ体WKの組成により異なる。被焼入れ体WKの焼入れの厚さが予め定められた厚さとなるような温度や、放射時間や、移動のタイミング等の条件が、ユーザによって予め決定され、制御部50に入力される。
ステップS30において、制御部50の指示によって、軸部30が、被焼入れ体WKを冷却部40に挿入する。これにより、被焼入れ体WKの表層が硬化され、焼入れが完了する。
図5は、本実施形態における焼入れ装置1によって形成された焼入れの厚さを説明する図である。図6は、誘導電流を用いた焼入れ装置1によって形成された焼入れの厚さを説明する図である。図5および図6において、焼入れの一部をハッチングで表している。誘導電流を用いて被焼入れ体WKに焼入れを行う場合、段差部STと、それ以外の部分とで、被焼入れ体WKに流れる渦電流が一定とならない可能性がある。渦電流が一定とならない場合、被焼入れ体WKの、表面から所望の厚さにおける温度が、一定とならない。その結果、図6に示すように、第1段差部ST1に形成された焼入れを表すCMB1の厚さT1と、段差部ST以外に形成された焼入れを表すCMB2の厚さT2を比較すると、厚さが異なる。
一方、本実施形態においては、屈折材20によって屈折された光を、段差部STに入射させることができる。そのため、誘導電流を利用する態様と比較して、被焼入れ体WKの部位における温度の管理がしやすい。図5に示すように、本実施形態においては、第1段差部ST1に形成された焼入れ部分を表すCM1の厚さT12と、段差部ST以外の部分に形成された焼入れを表すCM2の厚さT22との差が、厚さT1とT2との差よりも、小さい。
以上のように、本実施形態において、屈折した光が段差部STに入射することで、誘導電流を用いて被焼入れ体WKを加熱する態様と比較して、段差部STの温度を高くすることができる。これにより、被焼入れ体WKの段差部STと、それ以外の部位との温度差を小さくすることができる。その結果、誘導電流を用いて被焼入れ体WKを加熱する態様と比較して、被焼入れ体WKの部位による焼入れの厚さの差を低減することができる。
本実施形態において、異なる屈折率を有する複数の屈折部位200によって、異なる入射角度で被焼入れ体WKに光を入射させることができる。そのため、屈折材20がない態様と比較して、被焼入れ体WKの所望の箇所に対する入熱を管理しやすくなる。
本実施形態において、被焼入れ体WKを回転させることにより、回転させない態様と比較して、熱放射光源10の光を被焼入れ体WKに均一に入射させることができる。また、被焼入れ体WKを回転させることにより、焼入れ装置1が回転する態様と比較して、被焼入れ体WKの所望の箇所に対する入熱を管理しやすくなる。
また、発明者は、被焼入れ体WKの段差が大きいほど、段差部STとそれ以外の部位との温度差が大きくなることを見出した。段差が大きいとは、被焼入れ体WKを挿入方向に沿って見たときに、挿入方向と垂直な断面の形状が異なる部分の、面積の差が大きいことをいう。本実施形態において、段差部STとそれ以外の部位との温度差を小さくすることができるので、被焼入れ体WKの段差を大きくすることが可能となる。例えば、被焼入れ体WKの部位WKaの直径と、部位WKbの直径の差を、図1に表したものよりも小さくすることができる。これにより、被焼入れ体WKの形状の選択の幅が広がる。また、被焼入れ体WKの材料費を削減することができる。
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態の焼入れ装置1Dの断面図である。第2実施形態では、第1実施形態と比較して、熱放射光源10Dと屈折材20Dの形状が異なる。それ以外の構成は同じであるので、同一の符号を付し、詳細を省略する。
図7は、第2実施形態の焼入れ装置1Dの断面図である。第2実施形態では、第1実施形態と比較して、熱放射光源10Dと屈折材20Dの形状が異なる。それ以外の構成は同じであるので、同一の符号を付し、詳細を省略する。
第2実施形態において、熱放射光源10Dは、円筒形状を有する。熱放射光源10Dは、屈折材20を囲うように、配されている。熱放射光源10Dは、屈折材20Dの外周側に配されている。
第2実施形態において、焼入れ装置1Dは、3つの屈折材20Dを備える。具体的には、焼入れ装置1Dは、第1屈折材20Daと、第2屈折材20Dbと、第3屈折材20Dcと、を備える。第1屈折材20Daないし第3屈折材20Dcは、環形状を有する。第1屈折材20Daないし第3屈折材20Dcの外径は、熱放射光源10Dの内径よりも小さい。第1屈折材20Daないし第3屈折材20Dcは、熱放射光源10Dの内周側に、熱放射光源10Dの中心軸CP2に沿って、配されている。第1屈折材20Daないし第3屈折材20Dcの中心軸は、熱放射光源10の中心軸CP2と一致している。第2実施形態において、第1屈折材20Daないし第3屈折材20Dcは、同じ屈折率を有する。
図7に示すように、被焼入れ体WKの第1段差部ST1に、第3屈折材20Dcにおいて屈折した光LD3が入射するように、第3屈折材20Dcが構成され、かつ配置されている。被焼入れ体WKの第2段差部ST2に、第2屈折材20Dbにおいて屈折した光LD2が入射するように、第2屈折材20Dbが構成され、かつ配置されている。被焼入れ体WKの第3段差部ST3に、第1屈折材20Daにおいて屈折した光LD1が入射するように、第1屈折材20Daが構成され、かつ配置されている。
第2実施形態における焼入れについて説明する。まず、制御部50による制御によって、軸部30が被焼入れ体WKを、図7の位置まで挿入する。そして、制御部50によって、熱放射光源10Dによる放射が開始される。この際に、第3屈折材20Dcにおいて屈折した光LD3によって第1段差部ST1が集中的に加熱される。第2屈折材20Dbにおいて屈折した光LD2によって、第2段差部ST2が集中的に加熱される。第1屈折材20Daにおいて屈折した光LD1によって、第3段差部ST3が集中的に加熱される。第1屈折材20Daないし第3屈折材20Dcにおいて屈折しない光LD4は、熱放射光源10からそのまま被焼入れ体WKに入射する。
第2実施形態において、第1実施形態と同様に、被焼入れ体WKの段差部STと、それ以外の部位との温度差を小さくすることができる。その結果、誘導電流を用いて被焼入れ体WKを加熱する態様と比較して、被焼入れ体WKの部位による焼入れの厚さの差を低減することができる。
C.他の実施形態:
(C1)上記実施形態において、焼入れ装置1は、冷却部40と、制御部50を備える。なお、例えば加熱された被焼入れ体を焼入れ装置から取り出し、別場所に設けられている冷却部で冷やす態様において、焼入れ装置は冷却部を備えていなくてもよい。また、例えばユーザが熱放射光源の電源のオンまたはオフと、被焼入れ体の挿入を行う態様において、制御部を備えていなくてもよい。
(C1)上記実施形態において、焼入れ装置1は、冷却部40と、制御部50を備える。なお、例えば加熱された被焼入れ体を焼入れ装置から取り出し、別場所に設けられている冷却部で冷やす態様において、焼入れ装置は冷却部を備えていなくてもよい。また、例えばユーザが熱放射光源の電源のオンまたはオフと、被焼入れ体の挿入を行う態様において、制御部を備えていなくてもよい。
(C2)上記実施形態において、熱放射光源10として、赤外線ランプを用いる。なお、遠赤外線ランプを用いるなど、赤外線ランプ以外の光源を、熱放射光源として用いることができる。
(C3)上記第1実施形態において、3つの熱放射光源10を備えている。なお、熱放射光源は、1つや4つや6つなど、3つとは異なる数であってもよい。また、熱放射光源は、環状以外の、例えば直方形状や三角形状等の形状を有していてもよい。
(C4)上記第1実施形態において、屈折材20に、第1屈折部位200aと、第2屈折部位200bと、第3屈折部位200cと、の3つの屈折部位200が形成されている。なお、屈折材には、1つや4つや6つなど、3つとは異なる数の屈折部位が形成されていてもよい。また、例えば第1屈折部位と、第2屈折部位と、第3屈折部位と、が、屈折材に繰り返し形成されていてもよい。複数の屈折部位は、屈折材の中心軸に沿って、それぞれ異なる間隔で形成されていてもよい。
(C5)上記第1実施形態において、第1屈折部位200aないし第3屈折部位200cのいずれかにおいて、各熱放射光源10から放射された光が屈折されるように、第1屈折部位200aないし第3屈折部位200cが形成されている。なお、例えば焼入れ装置が第1光源ないし第3光源以外の熱放射光源を備え、その熱放射光源から放射された光が、屈折部位以外を透過して、被焼入れ体に入射してもよい。
(C6)上記第1実施形態において、第1屈折部位200aと、第2屈折部位200bと、第3屈折部位200cは、それぞれ異なる屈折率を有している。なお、各屈折部位が同じ屈折率を有していてもよい。
(C7)複数の屈折部位のうち、1つの屈折部位で屈折した光が、複数の段差部のうち1つの段差部にのみ入射するように、屈折材が構成および配置されていてもよい。1つの屈折部位で屈折した光が、複数の段差部のいずれに対しても入射するように、屈折材が構成および配置されてもよい。
(C8)上記実施形態において、屈折材20の素材はガラスである。なお、ガラス以外に、水晶や、サファイヤや、ダイアモンド等を使用してもよい。
(C9)上記実施形態において、制御部50が軸部30を移動させる際に、熱放射光源10に対し放射を停止するように指示を出している。なお、制御部は、熱放射光源に放射を停止するように指示を出すことなく、軸部を移動させてもよい。
(C10)上記実施形態において、焼入れ装置1は、軸部30を備え、被焼入れ体WKを回転させる。なお、例えば手動によって焼入れ装置内に被焼入れ装置を挿入する態様において、軸部を備えていなくてもよい。また、軸部ではなく、加熱部が回転してもよい。
(C11)上記実施形態において、被焼入れ体WKの、表面から予め定められた厚さまでの温度が、910℃以上かつ1000℃以下の温度に加熱される。被焼入れ体の、表面から予め定められた厚さの温度が、910℃以上かつ1400℃未満となるように、加熱されることが好ましい。なお、被焼入れ体の、表面から予め定められた厚さの温度が、910℃未満、または1400℃より高い温度に加熱されてもよい。
(C12)上記第2実施形態において、複数の屈折材20Dは、環形状を有し、それぞれ熱放射光源10Dの内周側に、熱放射光源10Dの中心軸CP2に沿って配されている。なお、屈折材は1つや4つや6つなど、3つ以外の数であってもよく、また、略直方や略三角の形状を有するなど、環形状以外の形状を有していてもよい。熱放射光源の内周側であって、任意の箇所に配置されていてもよい。
(C13)上記第2実施形態において、第1屈折材20Daないし第3屈折材20Dcは、同じ屈折率を有する。なお、屈折材はそれぞれ異なる屈折率を有していてもよい。
(C14)上記第2実施形態において、熱放射光源10Dは円筒形状を有している。なお、熱放射光源は、中空の直方体形状を有するなど、異なる形状であってもよい。
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
1、1D…焼入れ装置、10、10D…熱放射光源、10a…第1光源、10b…第2光源、10c…第3光源、20、20D…屈折材、20Da…第1屈折材、20Db…第2屈折材、20Dc…第3屈折材、30…軸部、40…冷却部、50…制御部、200a…第1屈折部位、200b…第2屈折部位、200c…第3屈折部位、HU…加熱部、L1…屈折光、ST…段差部、ST1…第1段差部、ST2…第2段差部、ST3…第3段差部、WK…被焼入れ体
Claims (5)
- 焼入れ装置であって、
光を放射することにより、被焼入れ体に輻射熱を発生させ、前記被焼入れ体を加熱する1つ以上の熱放射光源と、
前記熱放射光源と前記被焼入れ体との間に配され、光を屈折させる1つ以上の屈折材と、
を備え、
前記屈折材は、屈折させた光が、前記被焼入れ体が表面に有する段差である段差部に入射するように、構成されかつ配置されている、焼入れ装置。 - 請求項1に記載の焼入れ装置であって、
前記1つ以上の熱放射光源として、環状を有する複数の前記熱放射光源を有し、
前記1つ以上の屈折材として、外径が前記熱放射光源の内径よりも小さい円筒形状を有する1つの前記屈折材を有し、
前記複数の熱放射光源は、前記屈折材の外周側に、前記屈折材の中心軸の方向に沿ってそれぞれ配され、
前記屈折材は、前記屈折材の中心軸の方向に沿って、異なる屈折率を有する複数の屈折部位を有し、
前記複数の熱放射光源から放射される光が、前記複数の屈折部位のいずれかにおいて屈折する位置に、前記複数の熱放射光源が配されている、焼入れ装置。 - 請求項1に記載の焼入れ装置であって、
前記1つ以上の屈折材として、環状を有する複数の前記屈折材を有し、
前記1つ以上の熱放射光源として、内径が前記屈折材の外径よりも大きい円筒形状を有する1つの前記熱放射光源を有し、
複数の前記屈折材は、それぞれ前記熱放射光源の内周側に、前記熱放射光源の中心軸の方向に沿って配されている、焼入れ装置。 - 請求項2または請求項3に記載の焼入れ装置であって、
さらに、
前記熱放射光源または前記屈折材の中心軸を中心として、前記被焼入れ体を回転させる軸部を備える、焼入れ装置。 - 請求項1に記載の焼入れ装置であって、
前記熱放射光源によって、前記被焼入れ体の、表面から予め定められた厚さまでの温度を、910℃以上かつ1000℃以下の温度に加熱する、焼入れ装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022150189A JP2024044577A (ja) | 2022-09-21 | 2022-09-21 | 焼入れ装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2024044577A true JP2024044577A (ja) | 2024-04-02 |
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ID=90479770
Family Applications (1)
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JP2022150189A Pending JP2024044577A (ja) | 2022-09-21 | 2022-09-21 | 焼入れ装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2024044577A (ja) |
-
2022
- 2022-09-21 JP JP2022150189A patent/JP2024044577A/ja active Pending
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