JP2024042986A - 合金部材、機器、及び合金部材の製造方法 - Google Patents

合金部材、機器、及び合金部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐食性に優れた合金部材を提供する。【解決手段】 マグネシウム-リチウム系合金からなる基材を有する合金部材であって、前記基材の内表面部のマグネシウム濃度は、前記基材の中心部のマグネシウム濃度より高いことを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、合金部材、機器及び合金部材の製造方法に関する。
マグネシウム系合金は、軽量であり、かつ、機械強度に優れることから様々な物品に使用されている。近年、物品には更なる軽量化が求められており、マグネシウム-リチウム系合金((Mg-Li系合金)が提案されている。しかし、リチウムは、非常に活性であり、イオン化しやすく、かつ溶解しやすい金属元素であるため、例えば、湿潤状態において腐食しやすい性質を有する。このため、マグネシウム-リチウム系合金の耐食性を改善することが求められている。
マグネシウム-リチウム系合金の耐食性を改善する目的として、マグネシウム-リチウム系合金の表面を陽極酸化処理して、その表面にリン酸系被膜を形成させることが知られている。例えば、特許文献1にはマグネシウム合金の表面を、リン酸イオンとアンモニウムイオンを含有する電解液に浸漬して、交流電圧又はパルス電圧を印加して基材の表面を陽極酸化処理する方法が開示されている。この方法により、該表面に厚さ2μm以上30μm以下のリン酸マグネシウムの陽極酸化皮膜を形成しようとするものである。
特開2016-102236
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、部材の耐食性は不十分であった。
上記課題を解決するための合金部材は、マグネシウム-リチウム系合金からなる基材を有する合金部材であって、前記基材の内表面部のマグネシウム濃度は、前記基材の中心部のマグネシウム濃度より高いことを特徴とする。
上記課題を解決するための合金部材の製造方法は、マグネシウムの含有量とリチウムの含有量との和が90質量%以上で、含有リチウムが7重量%以上であるマグネシウム-リチウム系合金からなる基材と、前記基材上に設けられたリン酸マグネシウムを主成分とする皮膜を備える合金部材の製造方法であって、前記皮膜がリン酸三アンモニウム水溶液中の直流電圧下で陽極酸化法を用いて形成されたことを特徴とする。
上記解決手段によれば、従来よりも耐食性に優れた合金部材及びその製造方法を提供するものである。
本発明の合金部材の部分断面図である。 本発明の合金部材の製造工程を示したフロー図である。 本発明の合金部材を製造する陽極酸化装置の概略図である。 被膜を形成する時の電流電圧曲線の一実施態様を示す図である。 本発明の撮像装置を示した概略図である。 本発明の電子機器を示した概略図である。 本発明のドローンを示した概略図である。
(第1実施形態)
<合金部材>
図1は第1実施形態に係る合金部材の概略図であり、積層方向から切断した際の断面の部分拡大図である。
合金部材100は、基材101と、基材101上に設けられた被膜102を備える。なお、被膜102の上には必要に応じて、プライマや上塗り層などの塗装膜を設けても良い。塗装膜としては、例えば、遮熱機能を備える遮熱膜が挙げられる。
本実施形態の合金部材の用途は特に限定されず、例えば、機器の外装部材、内装部材及び摺動部材として使用することが可能である。なお、本開示では、被膜102がない態様も合金部材と呼ぶ。
(基材)
基材101はマグネシウム-リチウム系合金(以下、Mg-Li系合金)からなる。
本明細書において、Mg-Li系合金とは、合金中におけるMgとLiの含有量の和が90質量%以上の合金を指す。Mgの含有量及びLiの含有量の和が90質量%以上であると、軽量にすることが容易となる。Mg-Li系合金は、Mgを主成分とする軽量金属材料であり、Liを含有しないMg合金と比べて、軽量、制振性、比強度に優れる。制振性に優れるとは、振動エネルギーを素早く熱エネルギーに変換することにより、振動を早く収束させることをいう。また、比強度は密度あたりの引っ張り強さであり、比強度が高いほど部材の軽量化が可能となる。なお、Mg-Li系合金には10質量%未満であれば、その特性を調整するために他の金属元素を含有してもよい。具体的には、Al,Zn,Mn,Si,Ca,GeおよびBeからなる第1群より選ばれる1以上の元素を含有してもよい。
例えば、アルミニウム(Al)であれば10質量%以下含有することが好ましい。また、基材101の強度を高めるという観点においては、1質量%以上10質量%以下含有することが好ましい。
Zn、Mn,SiおよびCaは基材101の強度を高めることができる。Znであれば3質量%以下含有することが好ましい。より好ましくは0.2質量%以上3質量%以下である。Mnであれば0.3質量%以下含有することが好ましい。より好ましくは0.1質量%以上0.3質量%以下である。Siであれば0.2質量%以下含有することが好ましい。より好ましくは0.1質量%以上0.2質量%以下である。Caであれば1.0質量%以下含有することが好ましい。より好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下である。
GeおよびBeはMg-Li系合金の結晶を微細化し、基材101の耐食性を高める。Geであれば1質量以下含有することが好ましい。より好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。Beであれば3質量%以下含有することが好ましい。より好ましくは0.04質量%以上3質量%以下である。
基材101は、その形状は特に限定されない。直方体や立方体といった六面体に限らず、円柱、球体、角柱、錐体、筒状であっても構わない。
Mg-Li系合金中に含有されるLiの含有量は、Mgの含有量とLiの含有量の和に対して0.5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。0.5質量%以上であるとMg合金に対して軽量にすることができ、15質量%以下であると制振性が向上する。また、Liが7質量%以上含有されていることが望ましい。Liが多く含有されていると、軽量化が促進される。一方で、多く含有されている場合、腐食性が上がって防食が困難になるため、Liは14重量%以下が望ましい。より好ましくは7質量%以上14質量%以下である。
従来のMg-Li系合金は、腐食しやすい場合がある。具体的には、温度60℃湿度85%といった高温高湿環境に長期間に亘って晒されると腐食を抑制することができない場合がある。
本発明は、基材の内表面部のマグネシウム濃度を、前記基材の中心部のマグネシウム濃度より高くすることで温度60℃湿度85%といった高温高湿環境であっても長期間に亘って腐食を抑制できることを見出したものである。図1は、本発明の合金部材の部分断面図である。本明細書における基材の内表面部とは、図1に示した103の領域は基材の表面から内部に向かって60μmのポイントを中心に□100μm領域のことである。また、本明細書における基材の中心部とは、基材の表面から内部に向かって260μmのポイントを中心に□100μm領域のことである。本明細書において基材の中心部とは、260μmのポイントとしたが、260μm以上であればこれに限るものではない。内表面部に対しEDS分析を行ない、そこで得られたマグネシウム濃度をA原子%とする。また中心部に対しEDS分析を行ない、そこで得られたマグネシウム濃度をB原子%とする。この時、A>Bの関係を有する。
さらに、AとBの差が4原子%以上でより良好な耐久性が得られることが確認された。
これは、基材の内表面部のマグネシウム濃度を、前記基材の中心部のマグネシウム濃度より高くすることで、表面のLiの割合を抑えることができ、Liと水の反応を抑制できるためだと考えられる。Liと水が反応すると水酸化リチウムを生成し、さらに水素ガスが発生する。すると、Mg-Li系合金表面の塗装膜が膨れたり、剥がれたりしてしまう。Mg-Li系合金の表面が水と接触しても水素ガスの発生を抑制できる被膜をさらに設けてもよい。
(皮膜)
皮膜102は、リン酸マグネシウム系の皮膜であってもよい。本明細書において、リン酸マグネシウム系の皮膜とは、リン酸マグネシウムを主成分とする皮膜であってマグネシウム元素を10~60重量%、酸素元素を25~60重量%及びリン元素を5~35重量%含有する。皮膜102の厚みは30μmより厚いことが好ましい。皮膜の厚みを30μmより厚く製造することで、水が拡散して皮膜と基板の界面まで到達することを長時間に亘って防止することが可能となる。そのため、皮膜表面から水が浸み込んだとしても、基材101まで水が到達する可能性を低くすることができる。
<合金部材の製造方法>
図2は、本発明の合金部材の製造工程を示したフロー図である。図3は本発明の合金部材を製造する陽極酸化装置の概略図である。図2および図3を用いて、本発明の合金部材の製造方法について説明する。
まず、Mg-Li系合金からなる基材7を用意する。
Mg-Li系合金の原料は特に限定されない。製法も特に限定されない。圧延法やチクソ成形法、ダイカスト成形法など公知の技術が挙げられる。商業的に入手可能なものとしては、例えば、安立材料科技股▲ふん▼有限公司製のLZ91やAres材があげられる。
次に、基材307に、基材307と同一材料で構成されたワーク導通保持治具308を接続する。接続は、保持治具を曲げてワークである基材7を挟み込むように接続する。また、保持治具の材質はマグネシウム合金など、陽極酸化反応をワークで促進できる材質も使用することができる。
次に、基材307とワーク導通保持治具308を硝酸(濃度3~5質量%)に浸漬して酸洗浄を行う。基材307とワーク導通保持治具308の表面にある酸化層を除去するためである。酸洗浄後は、純水シャワーにて基材307とワーク導通保持治具308を水洗する。その後、ドライエアーブロー乾燥する。
こうして得られた基材307の表面に対し、陽極酸化装置を用いて陽極酸化プロセスによりリン酸系皮膜を形成する。
続いて、陽極酸化プロセスについて説明する。
基材307にリン酸系皮膜を形成する処理槽301に、電解液302としてリン酸三アンモニウム水溶液を配置する。リン酸三アンモニウムは、市販の材料で三水和物として販売されている。リン酸三アンモニウム三水和物水溶液の濃度は150g/Lから飽和状態となる濃度であることが好ましく、Mg-Li系合金基材の表面を完全にリン酸化するためには高濃度に設定することが好ましい。なお電解液302としては、pHが7から10で、リン酸イオンとアンモニウムイオンを有する溶液が好ましい。
電解液302は、配管を通じて処理槽301の下部からポンプ303およびフィルター304を経由して、処理槽301の上部に循環撹拌される。なお、電解液302は、ポンプにより昇温が発生するため、チラー等によって温度制御することが好ましい。好ましい電解液の温度は0℃から60℃である。この温度範囲であれば、生成される皮膜に特段の差は発生しない。
電源305の陰極は、処理槽301内に浸漬された陰極電極306に接続されている。陰極306の材料は、電解液との反応性が低ければよく、例えば、カーボン、白金、チタン、SUS等も使用可能である。また、電源305の陽極は基材307と接続されたワーク導通保持治具308に接続されているため、基材307およびワーク導通保持治具308は陽極電極として機能する。
電源との接続が完了したら、電圧を印加する。図4にリン酸系皮膜を形成する時の電流電圧曲線の一実施態様を示す。最大電圧160V、最大電流4A設定の例である。基板面積80cmのMg-Li系合金を前述の方法で陽極酸化処理した例である。横軸は時間[単位:秒]、縦軸は、電流[単位:A]と電圧[単位:V]であり、実線が電流、破線が電圧を表わしている。電圧印加開始時点を0秒とし、電圧印加当初は、定電流制御で一定値の電流を流す。電流が流れることで、基材7の表面にリン酸マグネシウム系皮膜が成長する。ある程度の膜厚にまでリン酸マグネシウム系皮膜が成長すると、表面抵抗の上昇に伴って電圧が上昇する。電圧が、設定電圧にまで上昇した時点で、定電圧制御に変更し、電圧を一定に制御する。この時点で、急速に電流が低下する。そして、電流が実質的に流れなくなった時(0.1A以下)、通電を停止する。
電流密度は5A/cmである。電流密度が低いと所定の膜厚を得るための処理時間が長くなる。逆に電流密度が高いと、電圧が上昇して皮膜が絶縁破壊を起こして耐久性が得られない。そこで、電流密度は1A/cmから10A/cmが望ましい。
ここで、リン酸マグネシウム系皮膜の膜厚は電気量によって決定することができる。ここで設定した最大電圧160Vの場合、最大膜厚は70μm成長させることが可能で、基板の表面積が37cmの場合、その時の電気量は960Cである。膜厚を半分の35μmとする場合は、総電気量も半分の480Cを投入すればよい。この場合、設定の最大電圧に達する前に電圧を切って電流を停止する。
さらに、設定最大電圧を160Vより上げた場合、リン酸マグネシウム系皮膜が絶縁破壊を起こしてクラックが発生するため耐久性の低い膜質となる。そのため印加電圧は160V以下が望ましい。
リン酸三アンモニウム水溶液中の直流電圧下によって陽極酸化法を用いて皮膜を形成することによって、陽極側にセットされた基材表面側のLi元素は、電解液中に多量に放出されることになる。そのため、基材表面下のLi濃度が低下することになる。
その後、水洗乾燥してワーク導通保持治具を基材から取り外して、Mg-Li合金基材上にリン酸マグネシウム系皮膜が形成された本発明の合金部材を得ることができる。
(第2実施形態)
<撮像装置>
図5は、本開示の第2実施形態である機器の一例の撮像装置である、一眼レフデジタルカメラ500の構成を示している。図5において、カメラ本体502と光学機器であるレンズ鏡筒501とが結合されているが、レンズ鏡筒501はカメラ本体502対して着脱可能ないわゆる交換レンズである。
被写体からの光は、レンズ鏡筒501の筐体内の撮影光学系の光軸上に配置された複数のレンズ503、505などからなる光学系を通過して撮像素子が受光することにより撮影される。ここで、レンズ505は内筒504によって支持されて、フォーカシングやズーミングのためにレンズ鏡筒501の外筒に対して可動支持されている。
撮影前の観察期間では、被写体からの光は、カメラ本体の筐体521内の主ミラー507により反射され、プリズム511を透過後、ファインダレンズ512を通して撮影者に撮影画像が映し出される。主ミラー507は例えばハーフミラーとなっており、主ミラーを透過した光はサブミラー508によりAF(オートフォーカス)ユニット513の方向に反射され、例えばこの反射光は測距に使用される。また、主ミラー507は主ミラーホルダ540に接着などによって装着、支持されている。不図示の駆動機構を介して、撮影時には主ミラー507とサブミラー508を光路外に移動させ、シャッタ509を開き、撮像素子510にレンズ鏡筒501から入射した撮影光像を結像させる。また、絞り506は、開口面積を変更することにより撮影時の明るさや焦点深度を変更できるよう構成される。
合金部材100は筐体520、521の少なくとも一部に用いることができる。なお筐体520、521は、本発明の合金部材のみで構成されても良いし、本発明の合金部材100に塗装膜を設けても良い。本開示の合金部材は軽量かつ耐食性に優れるため、従来の撮像装置より軽量かつ耐食性に優れた撮像装置を提供することができる。
なお、一眼レフデジタルカメラを一例として本発明の撮像装置を説明したが、本発明はこれに限定されず、スマートフォンやコンパクトデジタルカメラであっても構わない。
(第3実施形態)
<電子機器>
図6は、本発明の電子機器の好適な実施形態の一例である、パーソナルコンピュータの構成を示している。図6において、パーソナルコンピュータ600は表示部601と本体部602を備える。本体部602の内部には不図示の電子部品が備えられている。本発明の合金部材は本体部602の筐体に用いることができる。筐体は本発明の合金部材のみで構成されても良いし、本発明の合金部材に塗装膜を設けても良い。本発明の合金部材は軽量かつ耐食性に優れるため、従来のパーソナルコンピュータより軽量かつ耐食性に優れたパソコンを提供することができる。
なお、パソコンを一例として本発明の電子機器を説明したが、本発明はこれに限定されず、スマートフォンやタブレットであっても構わない。
(第4実施形態)
<ドローン>
図7は、本発明のドローンの一実施形態を示す図である。ドローン700は、複数の駆動部701と、駆動部701と接続される本体部702を備える。駆動部は、例えば、プロペラを有する。図7のように、本体部702には脚部703を接続しても良いし、カメラ704を接続する構成にしても良い。本発明の合金部材は、本体部702および脚部703の筐体に用いることが可能である。筐体は本発明の合金部材のみで構成されても良いし、本発明の合金部材に塗装膜を設けても良い。本発明の合金部材は、制振性かつ耐食性に優れるため、従来のドローンより制振性かつ耐食性に優れたドローンを提供することができる。
なお、ドローン700を一例として移動体を説明したが、本開示はこれに限定されず、自動車や航空機であっても構わない。
以下、実施例をあげて本発明を説明する。
<合金部材の製造>
(実施例1)
まず、基材として、Ares材(組成:Mg-9%Li-4%Al-1%Zn、安立材料科技股▲ふん▼有限公司製)の圧延部材を用意した。サイズは40mm×40mm×3mmとした。
次に、基材と、Aresよりなるワーク導通保持治具を濃度1質量%の硝酸に30秒浸漬して酸洗浄を行った。その後、基材7とワーク導通保持治具を純粋で水洗した。さらに、基材7ワーク導通保持治具ドライエアーブローで乾燥させた。そして、陰極をカーボンとし、陽極を基材およびワーク導通保持治具として、図3に示した陽極酸化装置を構成した。
なお、電解液として、濃度が180g/Lのリン酸三アンモニウム三水和物水溶液(pH=9.6)を用意した。電解液の温度は25℃±1℃になるように制御した。
また、陽極酸化条件は図4に示したような電流電圧曲線とし、設定電圧値を155V、設定電流値を1.84Aとした。
電圧を印加して510秒後に電圧は155Vとなったため、電流が1.84Aから降下した。そして電圧印加から540秒後に電流値が0.1A以下となったため、印加電圧を止めて、電流を停止した。この時の電気量は960Cであった。
その後、基材と治具を水洗後、ドライエアーブロー乾燥して基材と治具を分離して実施例1の合金部材を得た。
(実施例2)
実施例1において、電気量が679Cに達した時印加電圧を止めて、電流を停止した以外、実施例1と同様にして実施例2の合金部材を得た。この時の最大電圧は140Vであった。
(実施例3)
実施例1において、電気量が407Cに達した時印加電圧を止めて、電流を停止した以外、実施例1と同様にして実施例3の合金部材を得た。この時の最大電圧は120Vであった。
(実施例4)
基材は、11.2%Li-2.3%Al-Ge0.2%、残部はMgで構成されるMg-Li合金をチクソ成形で円筒成形材を準備した。サイズはΦ110mm×L40mm×T2mmである。
次に、基材と、AZ31で構成されたワーク導通保持治具を濃度1質量%の硝酸に30秒浸漬して酸洗浄を行った。その後、基材とワーク導通保持治具を純粋で水洗した。さらに、基材とワーク導通保持治具はドライエアーブローで乾燥させた。
ワーク導通保持治具は、あらかじめ印加電圧160Vで電流が実質流れなくなるまで陽極酸化を施して、表面にリン酸系皮膜を設けておく。
上記治具に基材を挟み込んで、陽極で処理する部材を準備するが、その際、ワーク導通保持治具の基材と接触する部分は皮膜を取り除き、導通を確保する。
陰極をカーボンとし、陽極を基材およびワーク導通保持治具として、図3に示した陽極酸化装置を構成した。
なお、電解液として、濃度が150g/Lのリン酸三アンモニウム三水和物水溶液(pH=9.4)を用意した。電解液の温度は20℃±1℃になるように制御した。
また、陽極酸化条件は図4に示したような電流電圧曲線とし、設定電圧値を155V、設定電流値を14.25Aとした。
電圧を印加して432秒後に電気量が5259Cに達した時印加電圧を止めて、電流を停止した。この時の電圧は142Vであった。
その後、基材と治具を水洗後、ドライエアーブロー乾燥して基材と治具を分離して実施例4の合金部材を得た。
(実施例5)
実施例1において、電気量が380Cに達した時、印加電圧を止めて電流を停止した以外、実施例1と同様にして実施例5の合金部材を得た。この時の最大電圧は119Vであった。
(比較例1)
実施例1において電源を、交流の定電流電源(周波数:60Hz)に変更して陽極酸化プロセスを実施した。
電圧を印加して522秒後に電気量が960Cに達した時、印加電圧を止めて電流を停止した。
その後、基材と治具を水洗後、ドライエアーブロー乾燥して基材と治具を分離して比較例1の合金部材を得た。
(比較例2)
比較例1において、電気量が1920Cとした以外同様にして比較例2の基板を得た。
(EDS元素分析結果)
各合金部材および基材について、EDS(エネルギー分散型X線分光器)による元素分析を行った。
EDS元素分析は、カールツァイス株式会社製のFE-SEM装置を用いた。EDSによる元素分析対象元素は、Mg、Al、O、Cである。OおよびCは合金の不可避な不純物で、特にLiが空気中の二酸化炭素と反応して炭酸塩化合物に変化したものだと考えられる。分析条件としては、加速電圧13kV、ワークディスタンス9.5~10mmの条件で測定を実施した。
測定位置は、基材の内表面部(皮膜と基材の界面(基材の表面)から内側に向かって60μmのポイントを中心に□100μmの範囲を分析した結果を内表面の値とした。また、基材の中心部(皮膜と基材の界面(基材の表面)から内側に向かって260μmのポイントを中心に□100μmの範囲を分析した結果を基材中心部の値とした。
各実施例と比較例における基材の内表面部と基材の中心部のMg濃度を表1に記載した。また、基材の内表面部と基材の中心部のMgの濃度差も記載した。
(膜厚)
膜厚は、株式会社サンコウ電子研究所社製の膜厚計STW-9000および、膜厚計用プローブNFe-1.0を用いて渦電流式により膜厚測定を行った。
その結果を表1の膜厚[μm]列に記載した。
(恒温恒湿耐久試験)
恒温恒湿耐久試験は、合金部材若しくは基材を温度60℃湿度85%の環境下に1000時間放置して、外観変化の有無を確認した。外観は、目視、50倍および200倍の顕微鏡観察にて評価した。その結果を表1の恒温恒湿耐久試験列に示した。Aは目視または顕微鏡観察において耐久前後で変化が無かったこと示す。Bは顕微鏡観察において耐久前後で変化が有ったが目視では変化は確認できなかったことを示す。また、Cは目視において耐久前後で変化が有ったことを示す。塗装前皮膜の欠損有無を皮膜外観欠損列に記載した。
(塗装膜耐久試験)
合金部材若しくは基材に対し塗装膜を設けて、恒温恒湿耐久試験と同様の温度・湿度所件で評価試験を実施した。
塗装膜は、一般的なマグネシウム用塗料(川上塗料株式会社社製)を用いて、プライマを150℃20分間、上塗り層を150℃20分間焼き付け処理にて設けた。プライマ層は15±5μm、上塗り層は20±5μmの膜厚とした。
表1の結果から、EDS元素分析においてMg濃度差が4原子%以上大きい合金部材において、塗装膜耐久試験後でも塗装膜に膨れや剥離が発生しない外観が良好な合金部材が得られることが分かった。
また、上記合金部材の皮膜の厚さは30μm以上であった。
EDS元素分析においてMg濃度差が3原子%以上4原子%未満である合金部材において、Mg濃度差が4原子%よりも大きい合金部材に比べると少し塗装膜耐久試験後に塗装膜に膨れが生じたが、外観性能には問題ない合金部材が得られることが分かった。
また、上記合金部材の皮膜の厚さは28μm以上であった。
一方、比較例1~2はいずれも、塗装膜耐久試験後に塗装膜に膨れや剥離が発生してしまった。ここれらはいずれもMg濃度差が3原子%未満であった。
実施例1から5のMg濃度はいずれも、基材の内表面部が基材の中心部よりも高い値を示している。これは、もう一つの主要構成元素であるLiが基材表面から抜けることによって、相対的にMg濃度が上昇していると考えるのが合理的である。
このように、本発明の合金基材は、過酷な恒温恒湿耐久にも耐えて、長期的に安定性を有する構造である。
本発明の開示内容は以下の構成一乃至十二を含んでいる。
[構成一]
マグネシウム-リチウム系合金からなる基材を有する合金部材であって、
前記基材の内表面部のマグネシウム濃度は、前記基材の中心部のマグネシウム濃度より高いことを特徴とする合金部材。
[構成二]
前記マグネシウムの濃度差が4原子%以上であることを特徴とする構成一記載の合金部材。
[構成三]
基材上に皮膜を有することを特徴とする構成一または二に記載の合金部材。
[構成四]
前記皮膜はリン酸マグネシウムを主成分とすることを特徴とする構成三に記載の合金部材。
[構成五]
前記皮膜の厚みが30μm以上である構成三または四に記載の合金部材。
[構成六]
筐体と、該筐体内に複数のレンズからなる光学系を備える光学機器であって、
前記筐体が構成一乃至五いずれかに記載の合金部材を有することを特徴とする光学機器。
[構成七]
筐体と、該筐体内に複数のレンズからなる光学系と、該光学系を通過した光を受光する撮像素子と、を備える撮像装置であって、
前記筐体が構成一乃至五いずれかに記載の合金部材を有することを特徴とする撮像装置。
[構成八]
前記撮像装置がカメラであることを特徴とする構成七に記載の撮像装置。
[構成九]
筐体と該筐体内に電子部品を備える電子機器であって、
前記筐体が構成一乃至五いずれかに記載の合金部材を有することを特徴とする電子機器。
[構成十]
本体部と該本体部に接続された複数の駆動部よりなるドローンであって、
前記本体部の筐体が構成一乃至五いずれかに記載の合金部材を有することを特徴とするドローン。
[構成十一]
マグネシウム-リチウム系合金からなる基材と、前記基材上に設けられたリン酸マグネシウムを主成分とする皮膜を備える合金部材の製造方法であって、
前記皮膜がリン酸三アンモニウム水溶液中の直流電圧下で陽極酸化法を用いて形成されたことを特徴とする合金部材の製造方法。
[構成十二]
前記直流電圧は、160V以下であることを特徴とする構成十一に記載の合金部材の製造方法。
100 合金部材
101 基材
102 皮膜
103 基材の内表面部のMg濃度分析エリア
104 基材の中心部のMg濃度分析エリア
301 処理槽
302 電解液
303 ポンプ
304 フィルター
305 電源
306 陰極
307 陽極
308 ワーク導通保持治具
500 レンズ鏡筒
600 パーソナルコンピュータ
700 ドローン

Claims (12)

  1. マグネシウム-リチウム系合金からなる基材を有する合金部材であって、
    前記基材の内表面部のマグネシウム濃度は、前記基材の中心部のマグネシウム濃度より高いことを特徴とする合金部材。
  2. 前記マグネシウムの濃度差が4原子%以上であることを特徴とする請求項1記載の合金部材。
  3. 基材上に皮膜を有することを特徴とする請求項1または2に記載の合金部材。
  4. 前記皮膜はリン酸マグネシウムを主成分とすることを特徴とする請求項3に記載の合金部材。
  5. 前記皮膜の厚みが30μm以上である請求項3または4に記載の合金部材。
  6. 筐体と、該筐体内に複数のレンズからなる光学系を備える光学機器であって、
    前記筐体が請求項1に記載の合金部材を有することを特徴とする光学機器。
  7. 筐体と、該筐体内に複数のレンズからなる光学系と、該光学系を通過した光を受光する撮像素子と、を備える撮像装置であって、
    前記筐体が請求項1に記載の合金部材を有することを特徴とする撮像装置。
  8. 前記撮像装置がカメラであることを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
  9. 筐体と該筐体内に電子部品を備える電子機器であって、
    前記筐体が請求項1に記載の合金部材を有することを特徴とする電子機器。
  10. 本体部と該本体部に接続された複数の駆動部よりなるドローンであって、
    前記本体部の筐体が請求項1に記載の合金部材を有することを特徴とするドローン。
  11. マグネシウム-リチウム系合金からなる基材と、前記基材上に設けられたリン酸マグネシウムを主成分とする皮膜を備える合金部材の製造方法であって、
    前記皮膜がリン酸三アンモニウム水溶液中の直流電圧下で陽極酸化法を用いて形成されたことを特徴とする合金部材の製造方法。
  12. 前記直流電圧は、160V以下であることを特徴とする請求項11に記載の合金部材の製造方法。
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