JP2024041588A - パン類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】栄養豊富な小麦ふすまを含有しつつ、小麦ふすまに起因する品質の低下が抑制された高品質のパン類を製造し得る技術を提供すること。【解決手段】本発明のパン類の製造方法は、穀粉類を用いて生地を調製する工程と、該生地を加熱調理してパン類を得る工程とを有する。前記パン類の製造に用いる穀粉類の20~60質量%が小麦ふすまであり、前記生地は、該小麦ふすまの発酵物を含有する。前記小麦ふすまの発酵物は、前記小麦ふすまと、該小麦ふすまの70~150質量%の水と、イーストとを含む混合物を、雰囲気温度4~20℃の環境に8~24時間置くことによって得られたたものである。【選択図】なし

Description

本発明は、小麦ふすまの発酵物を含有するパン類に関する。
近年、健康意識の高まりから、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素に富む小麦ふすまの需要が増してきている。しかし小麦ふすまは、組織が硬く粉砕され難いため、粒子が比較的大きなものとなりやすく、また特有の穀物臭を有するため、これを含む食品は、ざらついた食感を呈する、エグミがある、不快臭が強い等の問題がある。特に小麦ふすまを比較的多く含有するパン類は、このような問題に加えて更に、生地の伸展性に乏しく二次加工性に劣る、経時変化耐性に乏しく品質が経時的に変化しやすい等の、小麦ふすまに起因する問題がある。
特許文献1には、小麦ふすま等の穀物の糠を含有しながらも、ベーカリー食品に用いた場合に品質低下を生じ難いベーカリー食品用原料として、粒度が特定範囲に調整され且つ焙煎処理された穀物の糠を乳酸発酵させたものが記載されている。
特許文献2には、パン類の製造に用いるサワー種の製造方法として、小麦粉及びそれ以外の穀粉からなる混合粉と、パン用酵母と、水との混合物を自然発酵させて自然発酵物を得る第1の工程と、該自然発酵物に対し、小麦粉及び水を更に加えて混合し、発酵させる第2の工程とを有するものが記載されており、該混合粉を構成する小麦粉以外の穀粉として、小麦ふすまが例示されている。前記の第1の工程及び第2の工程ともに、発酵は雰囲気温度が20℃以上の環境で行われる。
特開2016-54649号公報 特開2011-229497号公報
本発明の課題は、栄養豊富な小麦ふすまを含有しつつ、小麦ふすまに起因する品質の低下が抑制された高品質のパン類を製造し得る技術を提供することである。
本発明は、穀粉類を用いて生地を調製する工程と、該生地を加熱調理してパン類を得る工程とを有する、パン類の製造方法であって、
前記パン類の製造に用いる穀粉類の20~60質量%が小麦ふすまであり、前記生地は、該小麦ふすまの発酵物を含有し、
前記小麦ふすまの発酵物は、前記小麦ふすまと、該小麦ふすまの70~150質量%の水と、イーストとを含む混合物を、雰囲気温度4~20℃の環境に8~24時間置くことによって得られたたものである、パン類の製造方法である。
本発明によれば、栄養豊富な小麦ふすまを含有しつつ、小麦ふすまに起因する品質の低下が抑制された高品質のパン類を製造することができる。本発明によって製造されるパン類は、小麦ふすまを比較的多く含有するため、近年の健康志向に十分に対応できるものであり、しかも、小麦ふすまの含有で懸念される外観、食味、食感等の品質の低下が抑えられた高品質なものであり、具体的には、二次加工性が良好で、エグミが少なく、ボリューム、経時耐性に優れる。
本発明のパン類の製造方法は、穀粉類を用いて生地を調製する工程(生地調製工程)と、調製した生地を加熱調理してパン類を得る工程(加熱調理工程)とを有する。
前記生地調製工程では、穀粉類を含む生地原料を用いて生地を調製する。生地原料は、典型的には、穀粉類を主体とする。生地原料における穀粉類の含有量は、該生地原料の全質量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは50~80質量%であり、100質量%すなわち生地原料の全部が穀粉類でもよい。
前記生地調製工程で用いる穀粉類は、穀物由来の粉体であり、典型的には、穀粉及び澱粉である。ここでいう「澱粉」は特に断らない限り、小麦等の植物から単離された「純粋な澱粉」を指し、穀粉中に本来的に内在する澱粉とは区別される。穀粉類としては、パン類の製造に使用可能なものを特に制限なく用いることができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
穀粉としては、例えば、小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉等の、胚乳部を主体とする穀粉が挙げられる。小麦粉には、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉(デュラムセモリナ、デュラム小麦粉を含む)が含まれる。穀粉の他の具体例として、少なくとも外皮部及び/又は胚部を含む穀粉、例えば、外皮部を主体とする「ふすま」(穀物の糠)、胚乳部、外皮部及び胚部の主要3成分を含む「全粒粉」が挙げられる。ふすま、全粒粉の具体例として、小麦由来である小麦ふすま、小麦全粒粉が挙げられる。
澱粉としては、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の未加工澱粉;該未加工澱粉にα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理、酸化処理等の加工処理の1種以上を施した加工澱粉が挙げられる。
本発明の主たる特徴の1つとして、パン類の製造に用いる穀粉類、典型的には、前記生地調製工程で用いる穀粉類の20~60質量%、好ましくは20~50質量%、より好ましくは20~40質量%が小麦ふすまであり、且つ該生地調製工程で調製された生地が、該小麦ふすまの発酵物を含有する点が挙げられる。この小麦ふすまの発酵物は穀粉類、より具体的には穀粉の一種である。このように、生地原料として特定量の小麦ふすまをそのまま使用するのではなく、該小麦ふすまの発酵物を使用することで、栄養豊富な小麦ふすまを含有しつつ、小麦ふすまに起因する品質の低下が抑制された高品質のパン類の製造が可能となる。小麦ふすまの発酵物については後述する。
本発明で用いる小麦ふすま、すなわち小麦ふすまの発酵物の原料となる小麦ふすまには、1)小麦の頴果を粉砕し、胚乳部及び胚芽を除去して得られた外皮部由来の画分と、2)該画分に対して粉砕、分級、熱処理等の処理の1つ以上を施した小麦ふすま加工品とが包含される。
小麦ふすまの原料となる小麦の種類は特に制限されないが、本発明の所定の効果(小麦ふすまに起因するパン類の品質低下の抑制効果等)を一層確実に奏させるようにする観点から、白小麦が特に好ましい。すなわち本発明で用いる小麦ふすまの少なくとも一部、好ましくは全部が、白小麦由来の小麦ふすまであることが好ましい。
一般的に、小麦は、小麦穀粒を視認したときに観察される色に応じて、赤小麦と白小麦との二つの種類に大別される。赤小麦は、外皮部に赤色色素を含有する小麦であり、小麦穀粒を視認したときに、赤色、赤褐色又は褐色として観察される。一方、白小麦は、外皮部に赤色色素を含有しない小麦であり、小麦穀粒を視認したときに、白色又は淡黄色として観察される。
白小麦には、例えば、オーストラリア・スタンダード・ホワイト(ASW、オーストラリア産)、プライムハード(PH、オーストラリア産)、ソフトホワイト(SW、アメリカ合衆国産)、ウエスタン・ホワイト(WW、アメリカ合衆国産)があり、これらは普通小麦である。普通小麦ではない白小麦として、デュラム小麦(世界各国で生産)がある。これらの白小麦は、例えば遺伝学的特徴で適宜選別することができる。本発明で用いる白小麦由来の小麦ふすまは、普通小麦由来でもよく、デュラム小麦由来でもよい。また普通小麦は、小麦穀粒の硬さに応じて、硬質小麦と、軟質小麦と、硬質と軟質との中間の硬さを有する中間質小麦との三つの種類に大別されるが、本発明で用いる白小麦由来の小麦ふすまは、何れの普通小麦由来であってもよい。例えば、PHは白小麦且つ硬質小麦、ASWは白小麦且つ中間質小麦、WWは白小麦且つ軟質小麦である。
本発明では小麦ふすまとして、加熱処理された小麦ふすま(以下、「熱処理小麦ふすま」とも言う。)を用いることができる。熱処理小麦ふすまは、熱処理されていない小麦ふすまに比べて、小麦ふすまに特有の不快な穀物臭やエグミが低減されており、これを小麦ふすまの発酵物の原料として用いることで、発酵による作用効果と相俟って、小麦ふすまに起因する品質の低下が一層抑制された高品質のパン類の製造が可能となる。
なお、小麦ふすまが熱処理されたものであるか否かは、例えば、判定対象の小麦ふすまの酵素活性又はグルテンバイタリティを測定することによって判定できる。具体的には、酵素活性を例にとると、熱処理された小麦ふすまの酵素活性は、未加熱の小麦ふすまのそれに比べて、酵素活性が少ないか又は検出限界未満であるので、酵素活性の多少によって両者の区別が可能である。
熱処理小麦ふすまが施された熱処理は、未処理の小麦ふすまの品温を常温以上にし得る処理であればよく特に制限されない。小麦ふすまに施される熱処理の具体例として、湿熱処理及び乾熱処理が挙げられる。
湿熱処理は、処理対象の小麦ふすま中の水分を維持するか、又は水分を外部から供給して、処理対象を加熱する処理である。湿熱処理においては、水、飽和水蒸気、過熱水蒸気等の水分を供給して用いることができる。湿熱処理における加熱方法は特に制限されず、例えば、密閉環境下で処理対象に水分を添加した後、熱風などの熱媒体を処理対象に直接接触させる方法、高温蒸気を処理対象に接触させて凝結潜熱により加熱する方法、処理対象を高湿度雰囲気下にて加熱する方法が挙げられる。
乾熱処理は、処理対象の小麦ふすまを水分無添加の条件で加熱する処理であり、処理対象中の水分を積極的に蒸発させながら行う熱処理である。乾熱処理は、例えば、オーブンでの加熱、焙焼窯での加熱、恒温槽を用いる加熱、熱風を吹き付ける加熱、高温低湿度環境での放置などによって実施することができる。なお、加水等を行った小麦ふすまに温風を当てて乾燥させる処理は、水分の蒸発潜熱のため、処理対象への熱の付与が十分に行われないので、当該処理は乾熱処理には含まれない。
本発明で用いる小麦ふすまは、小麦ふすまに湿熱処理及び乾熱処理の何れか一方又は両方を施したものであり得る。
小麦ふすまに熱処理として乾熱処理を行う場合、小麦ふすまの品温が好ましくは80~200℃、より好ましくは90~150℃となる状態が、好ましくは1~120分間、より好ましくは3~50分間維持される条件で乾熱処理を行うと良い。
前記乾熱処理は、例えば、特開2004-9022号公報に記載されている熱処理撹拌装置と同様の構成を有する装置に小麦ふすまを導入して、該小麦ふすまの品温及びその維持時間が前記の好ましい範囲になるように行うことができる。この熱処理撹拌装置は、小麦ふすま等の被処理物を収容する円筒状容器と、該容器の内部に備えられた中空構造の回転シャフトと、該シャフトに連通して形成された中空のパイプスクリューと、該回転シャフト及び該パイプスクリュー内に蒸気を供給する蒸気供給源とを備え、該回転シャフト及び該パイプスクリュー内に蒸気を供給して生じた伝熱を、該回転シャフト及び該パイプスクリューを介して被処理物に伝播させて、乾熱処理できるように構成されている。
小麦ふすまの好ましい一例として、白小麦且つ中間質小麦であるASW由来の小麦ふすまを湿熱処理して得られる湿熱処理小麦ふすまが挙げられる。前記湿熱処理の条件の好ましい一例として、処理対象の小麦ふすまの品温が好ましくは80~110℃、より好ましくは85~95℃の状態が、好ましくは1~60秒間、より好ましくは3~30秒間維持される条件が挙げられる。前記湿熱処理は、例えば、特許第2784505号明細書に記載の粉粒体の減菌装置を用い、該装置における処理対象(小麦ふすま)の収容容器に飽和水蒸気を導入して行うことができる。
小麦ふすまの平均粒径は特に制限されないが、本発明の所定の効果を一層確実に奏させるようにする観点から、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~150μm、更に好ましくは30~120μm、一層好ましくは50~100μmである。なお通常、小麦ふすまの発酵物の平均粒径は、その原料である小麦ふすまの平均粒径と実質的に同じである。
本発明において「平均粒径」とは、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、「マイクロトラック粒径分布測定装置9200FRA」)を用いて乾式で測定したときの累積体積50容量%における体積累積粒径D50を指す。
以下、前記生地調製工程で用いる小麦ふすまの発酵物について説明する。小麦ふすまの発酵物は前述したとおり、前記生地調製工程で用いる穀粉類の全質量の20~60質量%を占める小麦ふすまを原料とし、原料の小麦ふすまを所定の条件で発酵させることで得られる。小麦ふすまについては前述したとおりである。
小麦ふすまの発酵物は、小麦ふすまと、該小麦ふすまの70~150質量%の水と、イーストとを含む混合物(以下、「ふすま含有混合物」とも言う。)を、雰囲気温度4~20℃の環境に8~24時間置くことによって得られる。
ふすま含有混合物における水の含有量は、該混合物中の小麦ふすまの全質量に対して、好ましくは75~140質量%、より好ましくは80~120質量%である。
ふすま含有混合物におけるイーストの含有量は、該混合物中の小麦ふすまの全質量に対して、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.1~0.8質量%である。
ふすま含有混合物に含有されるイーストとしては、パン類の製造に使用可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイーストが挙げられる。
ふすま含有混合物の発酵温度、すなわちふすま含有混合物が置かれる環境の雰囲気温度は、前記のとおり4~20℃であり、比較的低温である。前記発酵温度が低すぎると、小麦ふすまの発酵が進まず、前記生地調製工程で調製された生地は、発酵、水和しにくく、伸展性、機械耐性に劣るものとなるおそれがある。また、前記発酵温度が高すぎると、小麦ふすまの発酵が進みすぎる結果、パン類の品質低下の要因となり得る物質が発生するおそれがあり、また、前記生地調製工程で調製された生地は、粘性が強く、機械耐性に劣るものとなるおそれがある。前記発酵温度は、好ましくは10~20℃、より好ましくは15~18℃である。
ふすま含有混合物の発酵時間、すなわち雰囲気温度が前記特定範囲にある環境にふすま含有混合物が置かれる時間は、前記のとおり8~24時間であり、好ましくは8~18時間、より好ましくは12~15時間である。前記発酵時間が短すぎると、小麦ふすまの発酵が進まず、前記生地調製工程で調製された生地は、発酵、水和しにくく、伸展性、機械耐性に劣るものとなるおそれがある。また、前記発酵時間が長すぎると、小麦ふすまの発酵が進みすぎる結果、パン類の品質低下の要因となり得る物質が発生するおそれがあり、また、前記生地調製工程で調製された生地は、粘性が強く、機械耐性に劣るものとなるおそれがある。
前記生地調製工程で用いる穀粉類は、典型的には、小麦ふすまの発酵物以外の他の穀粉類として、前述した穀粉及び澱粉から選択される1種以上を含有する。前記他の穀粉類は、製造するパン類の種類等に応じて適宜調整すればよいが、典型的には、小麦粉である。前記生地調製工程で用いる穀粉類における、小麦ふすまの発酵物以外の他の穀粉類の含有量は、好ましくは40~80質量%、より好ましくは60~80質量%である。
前記生地調製工程で用いる生地原料は、小麦ふすまの発酵物をはじめとする穀粉類以外の他の原料を含有してもよい。前記他の原料としては、パン類の製造に使用可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、イーストフード、糖類、食塩、油脂、鶏卵、乳製品、増粘剤、膨張剤、グルテンが挙げられ、製造するパン類の種類等に応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記生地調製工程において、生地の調製方法は、前述した小麦ふすまの発酵物を用いることを条件として特に制限されず、従来公知の生地調製法を利用して実施することができる。本発明で利用可能な生地調製法として、中種法、ストレート法、速成法、液種法が挙げられる。特に好ましい生地調製法は、中種法である。
中種法は、一般的に、生地を調製する前段階で、生地原料の一部を用いて中種と呼ばれる発酵種を調製し、該発酵種と該生地原料の残りとを混捏して生地を調製する方法である。前記生地調製工程において中種法によって生地を調製することで、小麦ふすまを比較的高含有する生地でありながら、外観及び食感の良好なパン類を安定的に製造することが可能となる。また一般に、ストレート法では、生地原料として穀粉類に加えて更にグルテンが必要となるが、グルテンを使用したパン類は、グルテン由来のゴムのようなヒキのある好ましくない食感を有する場合がある。これに対し、中種法では、基本的にグルテンを使用せずとも口溶けの良い良好な品質のパン類が得られるため、グルテン使用に起因する食感低下のおそれがない。
中種法を利用した前記生地調製工程の一例として、穀粉類の一部である小麦粉を用いて中種を調製し、該中種と、別途調製した小麦ふすまの発酵物とを混合して生地を調製する方法が挙げられる。前記中種は常法に従って製造することができる。
生地原料として、小麦粉及び小麦ふすまの発酵物以外の他の原料を用いる場合、該他の原料は、中種の調製工程で使用してもよく、小麦粉ふすまの発酵物の調製工程で使用してもよく、適当に配分して両工程で使用してもよく、中種と小麦ふすまの発酵物とを混合して生地を調製する工程(以下、「本捏工程」とも言う。)で使用してもよいが、典型的には、小麦ふすまの発酵物の調製工程では使用せず、中種の調製工程又は本捏工程で使用する。
前記加熱調理工程では、前記生地調製工程で調製した生地を加熱調理する。これにより、目的のパン類が得られる。生地の加熱調理方法は特に制限されないが、典型的には、オーブンを用いて生地を焼成する方法が採用される。
前記加熱調理工程で加熱調理される生地は冷蔵又は冷凍保存されたものでもよい。すなわち本発明のパン類の製造方法は、前記生地調製工程で調製した生地を冷蔵又は冷凍する工程と、その冷蔵又は冷凍された生地を加熱調理してパン類を得る工程(加熱調理工程)とを有していてもよい。
本発明は種々のパン類に適用可能であり、具体的には例えば、食パン、菓子パン、デニッシュペストリー、フランスパン、クロワッサン、ハードロール、セミハードロール、バターロール、ブリオッシュ、ベーグル等が挙げられる。本発明が特に好適なパン類として、食パン、セミハードロール、クロワッサン、デニッシュペストリー、ベーグルが挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(小麦ふすまAの製造)
原料小麦として、赤小麦且つ硬質小麦のNo.1カナダ・ウエスタン・レッド・スプリング(1CW、カナダ産)を用い、これを精選してロール式粉砕機にて粉砕し、その粉砕物を目開き200μmの篩で分級して、篩上残存物として小麦ふすまを採取した。
次いで、採取した小麦ふすまを、ターボミル(東京製粉機製作所製)を用いて衝撃的粉砕を行った後、この粉砕物に対して、特開2004-9022号公報に記載の熱処理撹拌装置と同様の構成の装置を用いて、品温が120℃となるように25分間加熱して、乾熱処理を行った。続いて、乾熱処理後の粉砕物を、衝撃式微粉砕機(ACMパルベライザー、ホソカワミクロン社製)を用いて微粉砕し、その後、目開き150μmの篩を用いて分級し、篩を通過する粒径150μm未満の画分を分取して、目的とする小麦ふすまA(平均粒径90μmの乾熱処理赤小麦ふすま)を製造した。
(小麦ふすまBの製造)
前記(小麦ふすまAの製造)において、原料小麦として白小麦且つ中間質小麦であるASWを用い、且つ乾熱処理に代えて湿熱処理を行った以外は、前記(小麦ふすまAの製造)と同様にして、目的とする小麦ふすまB(平均粒径90μmの湿熱処理白小麦ふすま)を製造した。前記湿熱処理は、特許第2784505号明細書に記載の粉粒体の減菌装置を用い、該装置における処理対象の収容容器に飽和水蒸気を導入しながら、処理対象の小麦ふすまの品温90℃が5秒間維持される条件で行った。
〔実施例1~11、比較例1~2:中種法によるパン類の製造〕
穀粉類として小麦粉並びに前記小麦ふすまA及びBを用い、中種法によりパン類の一種である食パンを製造した。
具体的には、市販のミキサーに、下記方法により製造した中種及び小麦ふすまの発酵物と、下記の本捏用原料Aとを投入し、低速で15分ミキシングして、捏ね上げ温度28℃の本捏生地を得た(本捏工程)。小麦ふすまの発酵物を使用しない場合(比較例1)は、本捏用原料Aに代えて、下記の本捏用原料Bを使用した。次に、前記本捏生地を雰囲気温度27℃、相対湿度75%の環境に30分間静置して発酵させ(一次発酵)、その発酵済み生地を800gずつに分割し、雰囲気温度25℃の環境で20分間のベンチタイムを取った後、所定の形状に成形し、型詰め作業を行った(型容積1840cc、比容積2.3)。雰囲気温度28℃、相対湿度80%の環境に40分間静置して発酵させ(ホイロ)、そのホイロ済み生地を、オーブンを用いて220℃で30分間焼成し、食パンを製造した。
パン類の製造に用いた穀粉類の20質量%を本捏用原料として使用し、残る80質量%を中種の製造及び小麦ふすまの発酵物の製造で使用した。また、該穀粉類80質量%のうち、20~60質量%を中種の製造、残りの60~20質量%を小麦ふすまの発酵物の製造で使用した。下記表1~2の「穀粉類(質量%)」の欄に、各実施例及び比較例においてパン類の製造に用いた穀粉類の内訳を示す。前記「穀粉類(質量%)」の欄中の「小麦粉」の欄の数値は、「中種製造用の小麦粉の量」と「本捏用原料用の小麦粉の量」との合計であるところ、後者は、前記のとおり20質量%であるので、前者は、該「小麦粉」の欄の数値から20を差し引くことで算出される。例えば、下記表1の「穀粉類(質量%)」の欄を参照して、実施例1では、パン類の製造に用いた穀粉類のうち、50(=70-20)質量%を中種の製造に、30質量%を小麦ふすまの発酵物の製造に、20質量%を本捏用原料に使用している。また、小麦ふすまの発酵物を用いない、本捏用原料Bを用いた比較例1では、パン類の製造に用いた穀粉類のうち、50(=70-20)質量%を中種の製造に使用している。
(中種の製造方法)
市販のミキサーに下記の中種用原料の全部を投入し、低速で3~5分ミキシングして、捏ね上げ温度24℃の中種生地を得、該中種生地を雰囲気温度27℃、相対湿度75%の環境に30分間静置して発酵させ、中種を製造した。製造した中種は、庫内温度4℃の冷蔵庫で使用するまで保存した。
<中種用原料>
・小麦粉(強力粉、日清製粉株式会社製「ミリオン」):100質量部
・生地改良剤(オリエンタル酵母工業株式会社製「CアンティーS」):0.2質量部
・生イースト:2質量部
・食塩:0.4質量部
・水:60質量部
(小麦ふすまの発酵物の製造方法)
下記の発酵原料の全部を混合し、手で攪拌して混合物を得、該混合物を雰囲気温度が所定温度に設定された環境に所定時間静置することで、該混合物中の小麦ふすまを発酵させて、小麦ふすまの発酵物を製造した。この小麦ふすまの発酵物の製造時の発酵温度(前記混合物が静置された環境の雰囲気温度)、発酵時間(前記混合物の前記環境での静置時間)を下記表1~2に示す。製造した小麦ふすまの発酵物は、庫内温度15℃の冷蔵庫で使用するまで保存した。
<発酵原料>
・小麦ふすまA又はB:100質量部
・生イースト:0.15質量部
・水:100~120質量部
<本捏用原料A>
・小麦粉(強力粉、日清製粉株式会社製「ミリオン」):20質量部
・イースト:2質量部
・食塩:1.8質量部
・上白糖:15質量部
・脱脂粉乳:3質量部
・マーガリン:10質量部
・水:1~10質量部
<本捏用原料B>
・小麦粉(強力粉、日清製粉株式会社製「ミリオン」):20質量部
・小麦ふすまA:30質量部
・イースト:2質量部
・食塩:1.8質量部
・上白糖:15質量部
・脱脂粉乳:3質量部
・マーガリン:10質量部
・水:40~49質量部
〔評価試験〕
各実施例、比較例のパン類の製造時における二次加工性を下記評価基準に従って評価した。具体的には、訓練されたパネラー10名がそれぞれ個別に前記方法によりパン類を製造し、その際の本捏工程における生地の伸展性を下記評価基準に従って5点満点で採点した。
また、各実施例及び比較例で製造したパン類を、焼成後に雰囲気温度20℃の環境に2時間放置した後、その放置後のパン類を、訓練されたパネラー10名が目視観察するとともに喫食し、外観及びエグミを下記評価基準に従って5点満点で採点した。
また、各実施例及び比較例で製造したパン類を、焼成後に雰囲気温度20℃の環境に2日間放置した後、その放置後のパン類を、訓練されたパネラー10名が手指で触って観察し、経時耐性を下記評価基準に従って5点満点で採点した。
二次加工性及び外観については、10名のパネラーによって採点された10個の評価点のうち、当該評価点をつけたパネラーの数が最多の評価点を、当該パン類の評価点とした。斯かる最多の評価点が複数存在した場合は、その複数の評価点のうちの最高評価点を当該パン類の評価点とした。
エグミ及び経時耐性については、10名のパネラーによって採点された10個の評価点の平均値を当該パン類の評価点とした。
以上の結果を下記表1~2に示す。
<二次加工性の評価基準>
5点:生地の伸展性が非常に良好。
4点:生地の伸展性が良好。
3点:生地の伸展性がやや良好であり、問題無いレベル。
2点:生地の伸展性がやや不良。
1点:生地の伸展性が不良。
<外観の評価基準>
5点:ボリュームが大きく、形状も良好で、非常に良好。
4点:ボリュームがやや大きく、形状もやや良好で、良好。
3点:ボリュームがあり、形状はやや悪いものの許容範囲であり、問題無いレベル。
2点:ボリュームがやや小さく、形状もやや悪く、不良。
1点:ボリュームが小さく、形状も悪く、非常に不良。
<エグミの評価基準>
5点:エグミがほとんどなく、非常に良好。
4点:エグミが弱く、良好。
3点:エグミがやや弱いものの許容範囲であり、問題無いレベル。
2点:エグミが強く、不良。
1点:エグミが非常に強く、非常に不良。
<経時耐性の評価基準>
5点:しっとりしており、非常に柔らかく、非常に良好。
4点:ややしっとりしており、柔らかく、良好。
3点:しっとりさを若干感じ、やや柔らかく、問題無いレベル。
2点:しっとりさに欠け、やや硬く、不良。
1点:しっとりさが無く、硬く、非常に不良。
Figure 2024041588000001
表1に示すとおり、各実施例は、パン類の製造に用いる穀粉類の20~60質量%を占める小麦ふすまを発酵させた、小麦ふすまの発酵物を用いてパン類を製造したことに起因して、該小麦ふすまの発酵物を用いずに未発酵の小麦ふすまを用いた比較例に比べて高評価であった。
Figure 2024041588000002
表2に示すとおり、各実施例は、パン類の製造に用いた小麦ふすまの発酵物の製造時の発酵温度が20℃以下であることに起因して、該発酵温度が20℃を超える比較例に比べて高評価であった。
なお、表1、2の「パン類の経時耐性」の評価対象は、前述のとおり、焼成後に雰囲気温度20℃の環境に2時間放置したパン類であるが、これとは別に、焼成後に同環境に8時間放置したパン類を評価対象としたところ、2時間放置したパン類と同じ結果となった。

Claims (4)

  1. 穀粉類を用いて生地を調製する工程と、該生地を加熱調理してパン類を得る工程とを有する、パン類の製造方法であって、
    前記パン類の製造に用いる穀粉類の20~60質量%が小麦ふすまであり、前記生地は、該小麦ふすまの発酵物を含有し、
    前記小麦ふすまの発酵物は、前記小麦ふすまと、該小麦ふすまの70~150質量%の水と、イーストとを含む混合物を、雰囲気温度4~20℃の環境に8~24時間置くことによって得られたたものである、パン類の製造方法。
  2. 前記小麦ふすまは、加熱処理された小麦ふすまである、請求項1に記載のパン類の製造方法。
  3. 前記小麦ふすまの平均粒径が10~200μmである、請求項1又は2に記載のパン類の製造方法。
  4. 前記生地を調製する工程では、前記穀粉類の一部である小麦粉を用いて中種を調製し、該中種と、別途調製した前記小麦ふすまの発酵物とを混合して前記生地を調製する、請求項1~3の何れか1項に記載のパン類の製造方法。
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