JP2024039388A - 中空糸状多孔膜の製造方法 - Google Patents

中空糸状多孔膜の製造方法 Download PDF

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昇 久保田
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Abstract

【課題】緻密な細孔と高い透水性能を持つ中空糸状多孔膜の製造方法を提供する。【解決手段】少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、少なくとも1種の有機液体である第1の流体とを高温にて混合・溶融して溶融物を得る工程と、上記溶融物と中空部形成用の第2の流体とを、中空糸成型用紡口から液浴中に押し出して冷却固化する工程と、上記有機液体を含む上記第1の流体を抽出除去して中空糸状多孔膜を得る工程とを含む、中空糸状多孔膜の製造方法。【選択図】図2

Description

本開示は、中空糸状多孔膜の製造方法に関する。本開示は、特に、除濁等のろ過用途に好適な、緻密な細孔と高い透水性能を持つ中空糸状多孔膜の製造方法に関する。
精密濾過膜や限外濾過膜等の多孔膜による濾過操作は、自動車産業(電着塗料回収再利用システム)、半導体産業(超純水製造)、医薬食品産業(除菌、酵素精製)などの多方面にわたって実用化されている。特に近年は河川水等を除濁して飲料水や工業用水を製造するための手法としても多用されつつある。中でも中空糸状の多孔膜は、単位体積当たりに充填できる膜面積が大きくでき、単位空間占有体積当たりの濾過処理能力を高くできるため、特に多く利用されている。
多孔膜の製法としては、相分離(相転換)を利用した方法が多用されている(滝澤章、膜、p367-418、(株)アイピーシー、1992年、あるいは吉川正和ら監修、膜技術第2版、p77-107、(株)アイピーシー、1997年、など)。中でも高分子を高温で溶剤と溶融した後に冷却して相分離させる熱誘起型相分離法(熱転相法、本明細書では溶融法と呼ぶ)は、基本的には熱可塑性高分子でさえあれば、常温付近での適当な溶剤がなくて他の相分離法がとれない高分子化合物にも広く適用が可能であり、緻密な細孔と高い透水性能を両立させることができる優れた製膜方法である(滝澤章、膜、p404、(株)アイピーシー、1992年)。
溶融法により製膜する場合のプロセスは、1)熱可塑性樹脂と有機液体とを押出機等で高温にて均一に融し、2)この溶融物を紡口より液浴中に押し出して冷却することにより相分離(高分子濃厚相と高分子希薄相の2相)を生起させた後に固化(凝固)させ、3)固化物中の有機液体を除去する(このとき相分離時の高分子濃厚相部分が多孔膜骨格となり、相分離時の高分子希薄相部分が孔となる)方法が知られている(特許文献1および特許文献2)。
特開昭55-60537号公報 特開昭55-22398号公報
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献1および2に記載の方法によって得られる多孔膜には、緻密な細孔と高い透水性能とを両立させるという面において、改善の余地があった。
本開示は、緻密な細孔と高い透水性能を持つ、中空糸状多孔膜の製造方法を提供することを目的とする。
本開示は、上記目的を達成するべくなされたものである。すなわち、本開示を実施する形態の一例は、以下のとおりである。
[1]
少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、少なくとも1種の有機液体である第1の流体とを高温にて混合・溶融して溶融物を得る工程と、
上記溶融物と中空部形成用の第2の流体とを、中空糸成型用紡口から液浴中に押し出して冷却固化する工程と、
上記有機液体を含む上記第1の流体を抽出除去して中空糸状多孔膜を得る工程と、
を含む、中空糸状多孔膜の製造方法。
[2]
上記溶融物が上記中空糸成型用紡口から押し出されて上記液浴に達するまでに走行する時間が0秒超1秒以下である、項目1に記載の方法。
[3]
上記液浴の温度が30℃以下である、項目1又は2に記載の方法。
[4]
上記紡口の温度よりも上記第1の流体の有機液体の沸点の方が30℃以上高い、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
[5]
上記液浴内の流体のうち少なくとも一つの成分のSP値と上記可塑性樹脂のSP値から計算されるRaが30MPa1/2以下である、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
[6]
上記第2の流体のうち少なくとも一つの成分のSP値と、上記可塑性樹脂のSP値から計算されるRaが30MPa1/2以下である、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
[7]
上記中空糸成型用紡口から押し出される温度における、上記溶融物の粘度が30poise以上である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
[8]
上記可塑性樹脂のうち少なくとも一つの成分のSP値と、上記第1の流体のうち少なくとも一つの成分のSP値から計算されるRaが30MPa1/2以下である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
本開示の一態様によれば、緻密な細孔と高い透水性能を持つ中空糸状多孔膜の製造方法が提供され得る。
熱可塑性高分子と有機物との相図の概念図である。 本開示の一態様に係る製造方法を説明するための模式図である。 本開示の一態様に係る紡口ノズルの断面構造を説明するための模式図である。
本開示の中空糸状多孔膜の製造方法は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、少なくとも1種の有機液体である第1の流体とを高温にて混合・溶融して溶融物を得る工程と、上記溶融物と中空部形成用の第2の流体とを、中空糸成型用紡口から液浴中に押し出して冷却固化する工程と、上記有機液体を含む上記第1の流体を抽出除去して中空糸状多孔膜を得る工程とを含む、方法である。
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂(熱可塑性高分子)は、常温では変形しにくく弾性を有し塑性を示さないが、適当な加熱により塑性を現し、成形が可能になり、冷却して温度が下がると再びもとの弾性体に戻る可逆的変化を行い、その間に分子構造など化学的変化を生じない性質を持つ樹脂である(化学大辞典編修委員会編集、化学大辞典6縮刷版、共立出版、860および867頁、1963年)。例として、12695の化学商品、化学工業日報社、1995年の熱可塑性プラスチックの項(829-882頁)記載の樹脂や、日本化学会編、化学便覧応用編改訂3版、丸善、1980年の809-810頁記載の樹脂等、あるいはその混合物を挙げることができる。熱可塑性樹脂としては、具体例名を挙げれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンビニルアルコールコポリマー、ポリアミド、ポリケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリビニルアルコール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、あるいはこれらの混合物などである。
<混合・溶融工程>
本開示の方法は、まず、少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、少なくとも1種の有機液体である第1の流体とを高温にて混合・溶融して溶融物を得ることを含む。第1の流体としての有機液体は、熱可塑性高分子と混合した際に一定の温度範囲および熱可塑性高分子濃度範囲において液液相分離状態をとることができる有機液体であることが好ましい。液液相分離状態とは、熱可塑性高分子濃厚相液滴と、熱可塑性高分子希薄相、即ち有機液体濃厚相液滴との2相共存状態をいう。また、第1の流体としての有機液体は、沸点が液液相分離温度域の上限温度以上である液体であることが好ましい。単一の液体でなく2種類以上の液体の混合液体であってもよい。このような有機液体と熱可塑性高分子とを液液相分離の起こる濃度範囲にて混合した場合、温度をその混合組成において液液相分離状態をとる上限温度以上に高温にすると、熱可塑性高分子と有機液体とが均一に溶解した溶融物(相溶物)を得ることができる。
第1の流体としての有機液体は、その成分のうち少なくとも一つの成分の溶解度パラメータ(SP値)と、熱可塑性樹脂のSP値から計算されるRaが30MPa1/2以下であると、連通孔構造を持った高透水性の多孔膜が得られやすい。理論に拘束されるものではないが、このメカニズムについて以下のように考察している。すなわち、溶融物は相分離の初期に高分子濃厚相と高分子希薄相の共連続構造を呈した後、時間と共に高分子希薄相の合一が進むと考えられる。このとき、上記のような有機液体を用いると、表面積の大きい共連続構造が不安定になることを和らげ、高分子希薄相液滴の合一が進む前に急冷によって構造が固化されるため、独立孔構造ではなく連通孔構造の多孔膜が得られる。連通孔構造の多孔膜の方が、独立孔構造の多孔膜よりも、一般的には高透水性の多孔膜となりやすい。
例えば熱可塑性高分子がポリエチレンの場合、第1の流体としての有機液体の例として、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル等のフタル酸エステル類、セバシン酸ジブチル等のセバシン酸エステル類、アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸エステル類、マレイン酸ジオクチル等のマレイン酸エステル類、トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル類、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル等のリン酸エステル類、プロピレングリコールジカプレート、プロピレングリコールジオレエート等のグリコールエステル類、グリセリントリオレエート等のグリセリンエステル類などの単独あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。さらに、単独ではポリエチレンと高温でも相溶しない液体や、流動パラフィンのように単独では高温でポリエチレンと相溶するものの相溶性が高すぎて液液2相の相分離状態をとらない液体を、上記有機液体の例(フタル酸エステル類等)と混合した混合液体も有機液体の例として挙げることができる。ただし、混合した後の有機液体は、ポリエチレンと混合した際に一定の温度およびポリエチレン濃度範囲において液液相分離状態をとることができ、かつ沸点が液液相分離温度域の上限温度以上であることが好ましい。また、例えば熱可塑性高分子がポリケトンの場合、このような有機液体の例として、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジメチルスルホンなどの単独あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
溶融物は、熱可塑性樹脂、少なくとも1種の有機液体の他に、無機微粉体を含む3成分を含む混合物とし、中空糸膜を製造することが望ましい。無機微粉体は、有機液状体を保持する担体としての機能を持ち、さらにミクロ相分離の核としての機能を持つ。すなわち、無機微粉体は、混合物の溶融混練及び成形時において有機液状体の遊離を防止し、成形を容易にするものであり、ミクロ相分離の核として有機液状体を高度にミクロ分散させ、有機液状体の凝集を防止する働きを有する。無機微粉体としては疎水性シリカを使用することが望ましい。疎水性シリカは凝集を起こしにくいため、溶融混練及び成形時において細かくミクロに分散し、結果として均質な三次元網目状構造を与える。ここで、疎水性シリカとは、シリカの表面のシラノール基をジメチルシランやジメチルジクロロシラン等の有機ケイ素系化合物と化学的に反応させることによって、シリカの表面をメチル基等で置換し疎水化させたシリカのことである。また、三次元網目状構造とは、膜断面にマクロボイド(粗大孔)が実質的に存在せず、三次元のどの方向にも連通孔が存在する構造を指す。マクロボイドが膜断面に存在すると、膜強度が低下して好ましくない他、連続して存在するとリークの原因となる。マクロボイドは球形近似直径で8μm以上の空孔を指す。
無機微粉としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニア、炭酸カルシウム等が挙げられる。無機微粉としては、特に平均一次粒子径が3nm以上500nm以下の微粉シリカが好ましい。より好ましくは5nm以上100nm以下である。凝集しにくく分散性の良い疎水性シリカ微粉がより好ましく、MW(メタノールウェッタビリティ)値が30容量%以上である疎水性シリカがさらに好ましい。ここでいうMW値とは、粉体が完全に濡れるメタノールの容量%の値である。具体的には、MW値とは、純水中にシリカを入れ、攪拌した状態で液面下にメタノールを添加していった時に、シリカの50質量%が沈降した時の水溶液中におけるメタノールの容量%である。
熱可塑性高分子と上記有機液体とは、例えば2軸混錬押出機を用いて所定の混合比にてその混合比における液液相分離温度域の上限温度以上の温度にて混合、相溶させることができる。2軸混錬押出機(5)を用いた場合の一例を図2に示した。熱可塑性高分子と有機液体との混合比は、熱可塑性高分子の比が小さすぎると得られる膜の強度が低くなりすぎて不利であり、逆に熱可塑性高分子の比が大きすぎると得られる膜の透水性能が低くなりすぎて不利である。熱可塑性高分子と有機液体との好ましい混合比は、熱可塑性高分子/有機液体の重量比で10/90から50/50である。
<冷却固化工程>
本開示の方法は、続いて、溶融物(相溶物)と中空部形成用の第2の流体(以下、「中空部形成流体」ともいう。)とを、中空糸成型用紡口から液浴中に押し出して冷却固化することを含む。相溶物を冷却すると、液液2相(熱可塑性高分子濃厚相液滴と有機液体濃厚相液滴)の共存状態(液液相分離状態)が現れて孔構造が発生する。さらに熱可塑性高分子が固化する温度まで冷却することで孔構造が固定される。
この相図の例を図1に示した。図1において、熱可塑性高分子濃度は、熱可塑性高分子重量と有機液体重量の和に対する熱可塑性高分子の重量の割合である。また、液1相領域は熱可塑性高分子と有機液体との相溶領域を、液液2相領域は熱可塑性高分子濃厚相(液状)と熱可塑性高分子希薄相(液体)との共存領域を、固化領域は熱可塑性高分子が固化する領域(固体熱可塑性高分子と有機液体との共存領域)をそれぞれ示す。
より詳細に、相溶物(溶融物)は、押出機先端のヘッド(7)と呼ばれる部分に導かれ、押し出される。このヘッド内の押し出し口に、相溶物を所定の形状に押し出すための口金(中空糸成型用紡口(10))を装着することで所定の形状に相溶物を成形して押し出すことができる。本開示の場合は、中空糸状に成形するための口金をヘッドの押し出し口に装着する。中空糸成形用紡口は、相溶物を中空状(円環状)に押し出すための円環状の穴と、押し出された中空状物の中空部が閉じて円柱状になってしまわないために押し出された中空状物の中空部に注入しておく中空部形成流体を吐出するための穴(上記円環状穴の内側に存在する;形状は円形穴)とを押し出し側の面に持つ紡口ノズルである。この紡口ノズルの一例を図3に示した。熱可塑性高分子と有機液体との相溶物は、上記中空糸成形用紡口の円環穴より、円環穴の内側の穴から中空部形成流体の注入を中空部内に受けつつ空気中(窒素等の不活性ガス中でもよい)に押し出される。
この際、紡口温度よりも第1の流体の有機液体の沸点の方が30℃以上高いことが好ましく、60℃以上高いことがより好ましく、90℃以上高いことがさらに好ましい。このような有機液体を第1の流体として採用することによって、溶融物が液浴に達するまでの間における有機液体の蒸発を抑制することが出来る。蒸発の抑制によって、中空状溶融物の外側による局所的な高分子濃度の増加を抑制することができ、外表面の開口率を増加させ、高透水性の多孔膜を得ることができる。
相溶物(溶融物)の粘度は、紡口温度において30poise以上であることが好ましく、50poise以上であることがより好ましく、100poise以上であることがさらに好ましい。このような粘度を有する状態で押し出すことによって、連通孔構造を持った高透水性の多孔膜が得られやすい。理論に拘束されるものではないが、このメカニズムについて以下のように考察している。すなわち、溶融物は相分離の初期に高分子濃厚相と高分子希薄相の共連続構造を呈した後、時間と共に高分子希薄相の合一が進むと考えている。ここで、急冷によって高分子希薄相液滴の合一が進む前に構造が固化されるため、独立孔構造ではなく連通孔構造の多孔膜が得られる。連通孔構造の多孔膜の方が、独立孔構造の多孔膜よりも、一般的には高透水性の多孔膜となりやすい。相溶物(溶融物)の粘度を増加させる方法としては、例えば、高分子量の高分子を用いたり、無機フィラーを添加したり、紡口温度を下げる、といった手段が挙げられる。
中空部形成流体(第2の流体)は、押し出し物(熱可塑性高分子および有機液体)とは非反応性であり、加えて、紡口から吐出される際に液体であることが好ましい。これにより、押し出される中空状物の断面形状の真円性を維持することができる。中空部形成流体は、気体(例えば窒素ガスや空気)であってもよいが、紡口から押し出された後の中空状物の断面形状の真円性を保つことは難しくなる。中空部形成流体は紡口内から吐出されるため、吐出時にも液体であることを確保するためには、沸点が紡口温度以上である液体を中空部形成流体として用いることが好ましい。
中空部形成流体の特性として、沸点が紡口温度以上であることに加えて、高温で熱可塑性高分子と液液相分離する能力を持つ液体、即ち熱可塑性高分子と混合した際に一定の温度および熱可塑性高分子濃度範囲において液液相分離状態をとることができる液体を用いることが好ましい。これにより、得られる多孔膜の透水性能を飛躍的に向上させることができる。この場合、中空糸成形用紡口から吐出されるときの中空部形成流体の温度は必ずしも熱可塑性高分子と液液相分離状態となる温度である必要はなく、液液相分離状態をとる温度域より高くてもよいし、低くてもよい。このような中空部形成流体の例としては、上記の有機液体(第1の流体)の例と同じ例を挙げることができる。なお、中空部形成流体の沸点は、紡口温度以上であれば、上記の有機液体とは異なり、液液相分離温度域の上限温度以下であってもよい。
中空部形成流体は単一成分でも混合物でも良いが、少なくとも一つの成分のSP値と、可塑性樹脂のSP値から計算されるRaが30MPa1/2以下であると、高透水性の多孔膜を得ることができるため、好ましい。理論に拘束されるものではないが、このような成分を含む液浴とすることによって、相分離途中において高分子濃厚相液滴の合一を遅らせることができ、合一する前に構造を固化しやすいため、内表面の開口率を増加させることができる。その結果、高透水性の多孔膜を得ることができる。
空気中に押し出された相溶物は、液浴に導かれ、押し出し物中の熱可塑性高分子が固化する温度まで冷却される。こうして紡口から押し出された相溶物は、紡口出口から液浴中通過の間に冷却されることで液液相分離が生起されて孔構造が発生し、次いで固化し、孔構造が固定される。液浴の組成は、押し出し物(熱可塑性高分子および有機液体)と反応性を有さない液体であれば特に限定はされず、単一成分でも混合物でも良い。また、押し出し物中の有機液体と同じであっても良い。液浴の重要な機能は押し出し物の冷却機能であるので、冷却能力が高い、即ち熱容量が大きい液体である水が、液浴の組成物としては好ましい。
液浴のうち少なくとも一つの成分のSP値と、可塑性樹脂のSP値とのから計算されるRaが30MPa1/2以下であると、高透水性の多孔膜を得ることができるため、好ましい。理論に拘束されるものではないが、このような成分を含む液浴とすることによって、相分離途中において高分子濃厚相液滴の合一を遅らせることができ、合一する前に構造を固化しやすいため、外表面の開口率を増加させることができる。その結果、高透水性の多孔膜を得ることができる。
<溶解度パラメータ(SP値)とRa>
本開示における、溶解度パラメータ(SP値)とは、ハンセン溶解度パラメーターのことであり、以下の3つのパラメーターで構成される。
δd:分子間の分散力によるエネルギー
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー
δh:分子間の水素結合によるエネルギー
物質1と物質2において下記の式で定義されるRaは、物質1と物質2との親和性と関係があるとされ、Raが小さいほど、物質1と物質2は相溶しやすいといわれている。
Ra=4×(δd―δd+(δp―δp+(δh―δh
SP値はCharles M. Hansen著のHANSEN SOLUBILITY PARAMETERS A User’s Handbook Second Edition(CRC Press)に記載の値が利用できるほか、市販のソフトウェアWinmostar9.4.11のアドオンであるHansen SP & QSPRモデルを使用して得られる値も利用できる。
液浴の温度は、その押し出し物組成での熱可塑性高分子の固化温度以下であることが好ましく、30℃以下であることが好ましく、20℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがさらに好ましい。このような液浴温度とすることによって、溶融物を急冷することができる。理論に拘束されるものではないが、このメカニズムについて以下のように考察している。すなわち、急冷することによって、相分離途中の高分子濃厚相液滴が合一する前に構造が固化されるため、内表面及び外表面の開口率を増加させることができ、高透水性の多孔膜を得ることができる。また、溶融物は相分離の初期に高分子濃厚相と高分子希薄相の共連続構造を呈した後、時間と共に高分子希薄相の合一が進むと考えている。このとき、急冷によって高分子希薄相液滴の合一が進む前に構造が固化されるため、独立孔構造ではなく連通孔構造の多孔膜が得られる。連通孔構造の多孔膜の方が、独立孔構造の多孔膜よりも、一般的には高透水性の多孔膜となりやすい。
紡口から空気中に押し出された相溶物が液浴に入るまでの時間、即ち空中走行時間は、0秒を超えて1秒以下(すなわち、0秒は含まない。)が好ましく、0秒超0.5秒以下がより好ましく、0秒超0.25秒以下がさらに好ましい。理論に拘束されるものではないが、このメカニズムについて以下のように考察している。すなわち、このような空中走行時間とすることによって、溶融物を急冷することができる。急冷することによって、相分離途中の高分子濃厚相液滴が合一する前に構造が固化されるため、内表面及び外表面が緻密で開口率の高い状態になり、高透水性の多孔膜を得ることができる。また、溶融物は相分離の初期に高分子濃厚相と高分子希薄相の共連続構造を呈した後、時間と共に上記液相間の界面が小さくなる方向へ進み、十分な時間が経過した後は独立した高分子希薄相を形成すると考えている。ここで、急冷によって高分子希薄相液滴の合一が進む前に構造が固化されるため、独立孔構造ではなく連通孔構造の多孔膜が得られる。連通孔構造の多孔膜の方が、独立孔構造の多孔膜よりも、一般的には高透水性の多孔膜となりやすい。その他、このような空中走行時間とすることによって、空中走行中における有機液体の蒸発を低下させることが出来る。これにより、中空状溶融物の外側による局所的な高分子濃度の増加を抑制することができ、外表面の開口率を増加させ、高透水性の多孔膜を得ることができる。
空中走行時間が0秒の場合は、紡口の押し出し面が液浴の液面と接している状態になる。紡口温度は熱可塑性高分子と有機液体の相溶温度、即ちその混合組成における液液相分離温度域以上の温度に設定するため、熱可塑性高分子の固化温度以下に設定されている液浴より必然的に高い温度になる。したがって、空中走行時間が0秒の場合は、紡口が液浴の液で常時冷却されて紡口の温度調節が不安定になるため、適さない。
空中走行時間の測定は、液浴出口で中空糸に張力をかけない状態で巻き取った場合には、巻き取り速度と空中走行距離(紡口面と液浴面との距離)から、下記の式(1)で求めることができる。
空中走行時間[秒]=空中走行距離[cm]/巻き取り速度[cm/秒]・・・式(1)
このように、中空部形成流体として沸点が紡口温度以上の液体、特にその中でも熱可塑性高分子と液液相分離状態をとることができる液体を用いた上で紡口から出た相溶物を、ある特定の空走時間の後に液浴に導くことで、緻密な細孔と高い透水性能を持つ膜をつくることが可能になる。液浴から出てきた中空糸状物は、冷却途中で生起した液液相分離時の熱可塑性高分子濃厚相部分が冷却固化されて多孔構造(多孔体骨格)を形成し、液液相分離時の熱可塑性高分子希薄相(有機液体濃厚相)部分が有機液体の詰まった孔部分となっている。この孔部分に詰まっている有機液体を除去すれば、本開示開示の多孔膜が得られる。
<抽出除去工程>
本開示の方法は、熱可塑性高分子が固化した後、上記有機液体(第1の流体)を抽出除去することを含む。孔構造が固定されたのち、膜より有機液体を除去することで中空糸状多孔体が得られる。このとき、液液相分離時の熱可塑性高分子濃厚相部分が冷却固化されて多孔構造(多孔体骨格)を形成し、熱可塑性高分子希薄相(有機液体濃厚相)部分が抽出除去されて孔部分となる。従って、有機液体(第1の流体)は、高温では熱可塑性高分子の溶剤であるが、低温(例えば常温付近)では非溶剤である液体であることがより好ましい。
膜中の有機液体の除去は、熱可塑性高分子を溶解または劣化させず、かつ除去したい有機液体を溶解する揮発性液体で抽出除去し、その後乾燥して膜中に残存する上記揮発性液体を揮発除去することで実施できる。このような有機液体抽出用の揮発性液体の例としては、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。
本開示の中空糸状多孔膜の製造方法によれば、緻密な細孔と高い透水性能を持つ中空糸状多孔膜の製造方法を提供することができる。本開示の中空糸状多孔膜は、除濁等のろ過用途に好適に利用できる。
a 紡口吐出辞典の相溶物
b 空中走行部および液浴中での冷却仮定
c 液浴出の固化物
1 熱可塑性高分子ホッパー
2 熱可塑性高分子供給口
3 有機物供給流路
4 有機物供給口
5 2軸混錬押出機
6 導管
7 ヘッド
8 定量ギアポンプ駆動部
9 定量ギアポンプ
10 中空糸成型用紡口
11 中空部形成流体供給流路
12 熱可塑性高分子と有機物の混合押出物
13 中空部形成流体
14 液浴に入るまでの空中走行部分
15 液浴
16 ロール
17 巻き取りロール

Claims (8)

  1. 少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、少なくとも1種の有機液体である第1の流体とを高温にて混合・溶融して溶融物を得る工程と、
    前記溶融物と中空部形成用の第2の流体とを、中空糸成型用紡口から液浴中に押し出して冷却固化する工程と、
    前記有機液体を含む前記第1の流体を抽出除去して中空糸状多孔膜を得る工程と、
    を含む、中空糸状多孔膜の製造方法。
  2. 前記溶融物が前記中空糸成型用紡口から押し出されて前記液浴に達するまでに走行する時間が0秒超1秒以下である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記液浴の温度が30℃以下である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記紡口の温度よりも前記第1の流体の有機液体の沸点の方が30℃以上高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記液浴内の流体のうち少なくとも一つの成分のSP値と前記可塑性樹脂のSP値から計算されるRaが30MPa1/2以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記第2の流体のうち少なくとも一つの成分のSP値と、前記可塑性樹脂のSP値から計算されるRaが30MPa1/2以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記中空糸成型用紡口から押し出される温度における、前記溶融物の粘度が30poise以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記可塑性樹脂のうち少なくとも一つの成分のSP値と、前記第1の流体のうち少なくとも一つの成分のSP値から計算されるRaが30MPa1/2以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
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