JP2024038890A - エクソソームの機能亢進剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】エクソソームの機能亢進作用を有する新たな物質を見出し、基底膜安定化のための化粧品や医薬品として提供すること。【解決手段】ユキツバキの抽出物を有効成分として含有する、エクソソームの機能亢進剤、細胞外マトリックスの産生促進剤、及び基底膜形成促進剤、ならびにユキツバキの抽出物を含有する基底膜安定化用組成物。

Description

本発明は、エクソソームの機能亢進剤、エクソソームを介した細胞外マトリックス産生促進剤、及び基底膜形成促進剤に関する。
皮膚の基底膜は、厚さ約0.1μmの薄い膜状の細胞外マトリックスである(非特許文献1)。基底膜は、IV型コラーゲンや、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、エンタクチンを主成分としており、表皮組織を支持する足場となる他に、組織の恒常性を維持するシグナルを伝達し、表皮と真皮間の物質交換を制御する役割を果たしている。皮膚基底膜の形成には、基底膜成分を産生する表皮角化細胞と、真皮由来細胞との相互作用が重要であることが知られている(非特許文献2)。しかしながら、基底膜は加齢に伴いその構造が破綻することが報告されている(非特許文献3)。
一方、直接接していない離れた細胞間のコミュニケーション手段として、細胞外小胞の一種であるエクソソームが有用であることが知られている。エクソソームは細胞が分泌する直径50~100nm程度の脂質二重膜で囲まれた膜小胞である。エクソソームは内部にタンパク質やmRNA、miRNAを含み、他の細胞に受け渡されることで細胞間の情報伝達を担っている。エクソソームは、それを分泌する細胞によって機能が異なっており、様々な機能を有する。特に、間葉系幹細胞由来のエクソソームは優れた安定性やホーミング効果を有することから組織損傷への治療応用が期待されている(非特許文献4、5、6)。例えば、脂肪幹細胞由来のエクソソームに真皮線維芽細胞の遊走や増殖、コラーゲン産生を制御して創傷治癒を促進する効果があること(非特許文献7)や臍帯由来の間葉系幹細胞由来のエクソソームが腎障害を回復することが報告されている(非特許文献8)。しかしながら、治療に必要な量のエクソソームを得るためには、大量の細胞が必要とされ、培養期間の長さやコストが課題となっている。そのため、多量のエクソソームを簡便に得ることができれば、各種疾患の予防又は治療に繋げることができると期待される。
また、皮膚の恒常性維持に関しては、表皮角化細胞由来のエクソソームがメラノサイトのメラニン合成を制御することで皮膚の色素沈着に関与している可能性があること(非特許文献9)、真皮線維芽細胞由来のエクソソームが毛乳頭細胞の増殖を促進することが報告されている(非特許文献10)。また、真皮幹細胞由来のエクソソームの機能低下によって、基底膜の形成が脆弱になることがシミの原因の一つであるとの報告もある(非特許文献11)。よって、生体内のエクソソームの機能(質と量)を高めることができれば、基底膜の崩壊を食い止めるのみならず、皮膚の恒常性維持にも貢献できると考えられる。
これまでに、アディポネクチン、アディポネクチン発現促進剤、T-カドヘリン発現促進剤、ADAM12発現抑制剤、及びADAM12活性抑制剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、細胞からのエクソソーム産生促進剤(特許文献1)、セラミドを有効成分とするエクソソーム産生促進剤(特許文献2)について報告されているが、これらは生体内での制御が煩雑であるため日常的に継続して使用することが困難である。よって、これらに代わる天然物由来で安全性の高い新たな因子の解明が望まれる。
特開2017-131172号公報 特開2018-150290号公報
C M DiPersio et al., J Cell Sci. 2000, 113, 3051-62 H Smola et al., Exp Cell Res. 1998, 15; 239(2), 399-410 Lavker, J. Invest. Dermal. 1979, 73, 59-66 Kurt Januszyk and Christopher D Lima, Current opinion in structural biology 2014, 24, 132. Serena Rubina Baglio et al., Front Physiol. 2012, 3, 359. Willem Stoorvogel et al., Traffic 2002, 3, 321. Li Hu et al., Scientific Reports 2016, 6, 32993. Ying Zhou et al., Stem Cell Res Ther. 2013, 4, 34. Alessandra Lo Cicero et al., Nat Commun. 2015, 6, 7506. Alizee le Riche et al., Stem Cells 2019, 7, 1166. Miyachi M et al., Exp Dermatol 2022, https://doi.org/10.1111/exd.14667
本発明は、上述した実情に鑑み、エクソソームの機能亢進作用を有する新たな物質を見出し、基底膜安定化のための化粧品や医薬品として提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ユキツバキの抽出物が、真皮幹細胞からのエクソソームの分泌促進作用に加え、エクソソーム内の細胞外マトリックスの発現制御因子の発現促進作用、エクソソームを介した細胞外マトリックスの産生促進作用及び基底膜形成促進作用といったエクソソームの機能亢進作用を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)ユキツバキの抽出物を有効成分として含有する、エクソソームの機能亢進剤。
(2)前記エクソソームが、間葉系幹細胞に由来するエクソソームである、(1)に記載のエクソソームの機能亢進剤。
(3)前記間葉系幹細胞が、真皮幹細胞である、(2)に記載のエクソソームの機能亢進剤。
(4)前記エクソソームの機能亢進が、エクソソームの分泌促進である、(1)に記載のエクソソームの機能亢進剤。
(5)前記エクソソームの機能亢進が、エクソソーム内の細胞外マトリックスの発現制御因子の発現促進である、(1)に記載のエクソソームの機能亢進剤。
(6)前記細胞外マトリックスの発現制御因子が、GOLPH3、ANP32B、DPYSL3、及びSRSF1から選ばれる少なくとも1種である、(5)に記載のエクソソームの機能亢進剤。
(7)ユキツバキの抽出物を有効成分として含有する、細胞外マトリックスの産生促進剤。
(8)前記細胞外マトリックスが、IV型コラーゲンである、(7)に記載の細胞外マトリックスの産生促進剤。
(9)ユキツバキの抽出物を有効成分として含有する、基底膜形成促進剤。
(10)ユキツバキの抽出物を有効成分として含有する、基底膜安定化用組成物。
(11)前記組成物が、化粧品、医薬部外品、医薬品、又は飲食品である、(10)に記
載の基底膜安定化用組成物。
(12)幹細胞を、ユキツバキの抽出物を含有する培地で培養する工程を含む、エクソソームの製造方法。
本発明の有効成分であるユキツバキの抽出物は、幹細胞のエクソソームの機能亢進作用を有するとともに、エクソソームを介して基底膜を形成する細胞外マトリックスの主成分の産生を促進することができる。よって、本発明のユキツバキの抽出物を有効成分とする剤は、基底膜の変化に伴うシワやタルミ、シミなどの改善及び予防に有効である。また、ユキツバキの抽出物は、天然物由来であるため、安全性が高く、化粧品や医薬品に安心して使用できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.エクソソームの機能亢進剤、細胞外マトリックス産生促進剤、及び基底膜形成促進剤
本発明のエクソソームの機能亢進剤、細胞外マトリックス産生促進剤、及び基底膜形成促進剤(以下、「本発明の剤」という)は、ユキツバキの抽出物を有効成分として含有する。
本発明に用いるツバキの品種としては、多雪地帯に適応したツバキ科ツバキ属の常緑低木であるユキツバキ(学名:カメリア ジャポニカ ヴァル デクンベンス(Camellia japonica var decumbens))が挙げられ、ユキツバキは、別名オクツバキ、ハイツバキ、サルイワツバキとも称する。Camellia japonica var decumbens系の園芸品種としては、オトメツバキ、阿賀の里、朝桜、荒磯、一楽、祝の盃、桂姫、北の洋、五知の娘、島千鳥、島の錦、寂光、雪宝山、田代、東洋の光、錦麒麟、日本髪、起の香、牡丹雪、松波、雪景色、雪小町、雪衣、陽春、小倉の里、白妙、太刀山、富樫白、初時雨、宝珠、本法寺、桃雀、雪明り、雪燈籠、加賀の鶴、八千代等が挙げられる。
本発明において、ユキツバキの抽出物は、植物体全体、あるいは、葉、茎、花、芽、果実、種子、樹皮、根等の植物体の一部又はそれらの混合物の抽出物をいうが、種子、葉の抽出物が好ましい。また、抽出には、これらの植物体をそのまま使用してもよく、乾燥、粉砕、細切等の処理を行ってもよい。
ユキツバキの抽出物の抽出方法は特に限定されず、例えば、連続抽出、浸漬抽出などが挙げられ、また、加熱抽出方法であってもよいし、常温や冷温抽出方法であってもよい。抽出に使用する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。これらの溶媒のなかでも、水、低級アルコール及び液状多価アルコールが好ましく、水、エタノールがより好ましい。これらの溶媒は1種でも2種以上を混合して用いても良く、例えば30~70v/v%のエタノール水溶液を使用することもできる。また、上記抽出溶媒に酸やアルカリを添加して、pH調整した溶媒を使用することもできる。
溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えば上記ユキツバキ(乾燥重量)に対し、10倍以上、好ましくは20倍以上であればよいが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類によるが、例えば、10~100℃、好ましくは30~90℃で、30分~24時間、好ましくは1~10時間を例示することができる。
抽出物は、抽出した溶液のまま用いてもよいが、必要に応じて、その効果に影響のない範囲で、濃縮(有機溶媒、減圧濃縮、膜濃縮などによる濃縮)、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理を行ってから用いてもよい。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いてもよい。
本発明において、エクソソームの由来となる細胞は、エクソソームを分泌することのできる細胞であれば限定はされないが、間葉系幹細胞が好ましい。間葉系幹細胞は脂肪組織由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞のいずれでもよいが、脂肪組織由来間葉系幹細胞が好ましく、真皮幹細胞がより好ましい。真皮幹細胞は、線維芽細胞、筋線維芽細胞に分化し、皮膚の再生・修復に寄与する。細胞の由来は、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ、サル等の哺乳類由来の細胞が好ましい。細胞は、生体内の細胞であっても、単離された細胞であってもよい。単離された細胞は、公知の手法によって維持及び培養をすることができる。
上記ユキツバキの抽出物は、エクソソームの機能亢進作用を有する。ここで、エクソソームの機能亢進作用とは、エクソソームの質的及び量的な機能亢進作用を意味し、具体的には、エクソソームの分泌促進作用、エクソソーム内の細胞外マトリックスの発現制御因子の発現促進作用、エクソソームを介した細胞外マトリックス産生促進作用、及び基底膜形成促進作用等が包含される。
本発明において「細胞外マトリックス発現制御因子」とは、エクソソームに存在し、基底膜を形成する細胞外マトリックスの発現を制御するシグナル分子をいい、例えば、GOLPH3(Golgi Phosphoprotein 3)、ANP32B(Acidic Nuclear Phosphoprotein 32 Family Member B)、DPYSL3(Dihydropyrimidinase Like 3)、及びSRSF1(Serine And Arginine Rich Splicing Factor 1)等が挙げられる。本発明において「細胞外マトリックス発現制御因子の発現促進」とは、上記細胞外マトリックス発現制御因子のmRNA及び/又は細胞外マトリックス発現制御因子タンパク質の発現が促進することをいう。
また、「細胞外マトリックス」は、皮膚の基底膜の構成成分をいい、例えば、コラーゲン、ラミニン、カドヘリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、エラスチンなどが挙げられるが、コラーゲンが好ましく、IV型コラーゲン又はVII型コラーゲンがより好ましい。本発明において「細胞外マトリックスの産生促進」とは、細胞外マトリックス遺伝子の発現を促進すること、及び/又は、細胞外マトリックス遺伝子の発現を促進することにより、細胞外マトリックスタンパク質の発現を促進することをいう。より具体的には、真皮幹細胞より分泌されたエクソソームを介して表皮角化細胞における細胞外マトリックスタンパク質の産生、好ましくはコラーゲンの産生を促進し、これにより、基底膜の構成成分である細胞外マトリックスの量を増加させることをいう。
よって、本発明の剤は、例えば、基底膜の変化に伴う皮膚の疾患又は症状を治療、改善、及び予防するのに有効である。ここで、基底膜の変化は、加齢、紫外線、摩擦、刺激物、微生物(細菌やウイルス)等のいずれの原因であるかは問わず、多重化・断裂などの構造変化や脆弱化などが含まれる。基底膜の変化に伴う皮膚の疾患又は症状としては、例えば、シワ、タルミ、シミ、ほうれい線(鼻唇溝)、マリオネットライン、ハリや弾力の低下、潤いやツヤの不足、肌荒れ、ごわつき、くすみ、キメの乱れ、慢性創傷、線状皮膚萎縮症(皮膚線条)、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、光弾性線維症などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明の剤は、エクソソームの機能の亢進作用によって、創傷治癒の促進や腎障害などの疾患への治療効果も期待できる。
本発明の剤は、生体外では、幹細胞におけるエクソソームの分泌を促進し、エクソソームを製造するための幹細胞培養用添加剤、研究用試薬、医療用試薬としても使用することができる。
本発明の剤は、そのまま使用することも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適当な添加物を混合して、基底膜安定化用組成物に配合することができる。ここで、「基底膜安定化」とは、基底膜の構造の崩壊抑制、修復及び再生化をいう。組成物の形態としては、化粧品、医薬品、医薬部外品、飲食品が挙げられる。本発明の剤を、例えば、基底膜の変化に伴うシワやタルミ等の改善や予防を目的とする場合は、化粧品等の皮膚外用組成物の形態とすることができる。また、本発明の剤を、創傷や肌荒れ等の治療を目的として使用する場合は、医薬品の形態で使用することが好ましい。
本発明の剤を化粧品や医薬部外品に配合する場合は、その剤形は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、粉末分散系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油二層系、又は水-油-粉末三層系等のいずれでもよい。また、当該化粧品や医薬部外品は、上記ユキツバキの抽出物とともに、皮膚外用組成物において通常使用されている各種成分、添加剤、基剤等をその種類に応じて選択し、適宜配合し、当分野で公知の手法に従って製造することができる。その形態は、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、スプレー状等のいずれであってもよい。配合成分としては、例えば、油脂類(オリーブ油、ヤシ油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等)、ロウ類(ラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ等)、炭化水素類(流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、ワセリン等)、脂肪酸類(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等)、高級アルコール類(ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル等)、有機酸類(クエン酸、乳酸、α-ヒドロキシ酢酸、ピロリドンカルボン酸等)、糖類(マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、N-アセチル-D-グルコサミン等)、蛋白質及び蛋白質の加水分解物、アミノ酸類及びその塩、ビタミン類、植物・動物抽出成分、種々の界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、安定化剤、防腐剤、殺菌剤、香料等が挙げられる。
化粧品や医薬部外品の種類としては、例えば、化粧水、乳液、ジェル、美容液、一般クリーム、日焼け止めクリーム、パック、マスク、洗顔料、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、ボディローション等が挙げられる。
上記ユキツバキの抽出物を医薬品に配合する場合は、薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物と混合し、患部に適用するのに適した製剤形態の各種製剤に製剤化することができる。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、その剤形、用途に応じて、適宜選択した製剤用基材や担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤、湿潤化剤、緩衝剤、溶解剤又は溶解補助剤、等張化剤、pH調整剤、噴射剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、香料等を適宜添加し、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。本発明の医薬品を上記の各形態で提供する場合、通常当業者に用いられる製法、たとえば日本薬局方の製剤総則[2]製剤各条に示された製法等により製造することができる。
経口投与用製剤には、例えば、デンプン、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖、ソルビトール、マンニトール、結晶セルロース、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、又はデキストリン等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、又はヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール、又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤などを用いることができるが、これらに限定はされない。
非経口投与用製剤には、蒸留水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール、ミョウバン水、植物油等の溶剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D-マンニトール等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調整剤などを用いることができるが、これらに限定はされない。
本発明の医薬品の形態としては、特に制限されるものではないが、例えば錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、液剤、丸剤、乳剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤などの経口剤、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、座剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤などの非経口剤などが挙げられる。また、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよく、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
本発明の医薬品を、創傷や肌荒れを治療するために用いる場合に適した形態は外用製剤であり、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、液剤、貼付剤、フォーム剤、スプレー剤、噴霧剤などが挙げられる。軟膏剤は、均質な半固形状の外用製剤をいい、油脂性軟膏、乳剤性軟膏、水溶性軟膏を含む。ゲル剤は、水不溶性成分の抱水化合物を水性液に懸濁した外用製剤をいう。液剤は、液状の外用製剤をいい、ローション剤、懸濁剤、乳剤、リニメント剤等を含む。
本発明の化粧品、医薬部外品、医薬品の使用量又は投与量は、その種類や形態、使用又は投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度などに応じて適宜決定することができる。例えば、成人に経口投与する場合には、ユキツバキの抽出物として0.1~1000mg/日、好ましくは1~500mg/日、より好ましくは5~300mg/日の範囲で、それぞれ1日1回から数回行う。上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要がある場合もある。
前記ユキツバキの抽出物を上記の化粧品、医薬部外品、医薬品に配合する場合、その含有量は特に限定されないが、製剤(組成物)全重量に対して、ユキツバキの抽出物の乾燥固形分に換算して、0.001~30重量%(w/w)が好ましく、0.01~10重量%(w/w)がより好ましい。0.001重量%(w/w)未満では効果が低く、また30重量%(w/w)を超えても効果に大きな増強はみられにくい。又、製剤化における有効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加してもよく、作業性を考えて適宜選択すればよい。
また、上記ユキツバキの抽出物は、飲食品にも配合できる。本発明において、飲食品とは、一般的な飲食品のほか、医薬品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる食品、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品、又は特別用途食品を含む意味で用いられる。健康食品には、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称で提供される食品を含む。保健機能食品は食品衛生法又は食品増進法により定義され、特定の保健の効果や栄養成分の機能、疾病リスクの低減などを表示できる、特定保健用食品及び栄養機能食品が含まれる。飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。
飲食品の種類としては、パン類、麺類、菓子類、乳製品、水産・畜産加工食品、油脂及び油脂加工食品、調味料、各種飲料(清涼飲料、炭酸飲料、美容ドリンク、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など)及び該飲料の濃縮原液及び調整用粉末等が挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。添加物としては、食品衛生上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、異性化液糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、デンプン等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。
本発明の飲食品における上記ユキツバキの抽出物の配合量は、エクソソームの機能亢進作用、エクソソームを介した細胞外マトリックス産生促進作用、基底膜形成促進作用を発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性及びコストなどを考慮して適宜設定すればよい。
2.エクソソームの製造方法
本発明はまた、幹細胞を、ユキツバキの抽出物を含有する培地で培養する工程を含む、エクソソームの製造方法に関する。「幹細胞」には、体性幹細胞及び多能性幹細胞が含まれる。「体性幹細胞」とは、骨髄、血液、皮膚(表皮、真皮、皮下組織)、脂肪、毛包、脳、神経、肝臓、膵臓、腎臓、筋肉やその他の組織に存在する体性の幹細胞をいい、例えば、間葉系幹細胞、造血幹細胞、血管内皮幹細胞、肝幹細胞、神経幹細胞、膵幹細胞、腸幹細胞、生殖幹細胞等が挙げられるが、間葉系幹細胞が好ましい。
本発明に係るエクソソームの製造方法において、幹細胞を培養する培地、また同時に用いる添加剤としては、特に限定はされず、幹細胞の増殖のために一般的に使用されている培地及び添加剤を用いればよい。また、培養方法の条件及び操作は、当該技術分野で常套的な条件及び操作に従って行うことができる。
具体的には、幹細胞を培養する培地としては、幹細胞の生存及び増殖に必要な成分(無機塩、炭水化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン等)を含む基本培地、例えば、Dulbecco' s Modified Eagle Medium(D-MEM)、Minimum Essential Medium(MEM)、RPMI 1640、Basal Medium Eagle(BME)、Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12(D-MEM/F-12)、Glasgow Minimum Essential Medium(Glasgow MEM)、ハンクス液(Hank's balanced salt solution)等が挙げられる。また、培地に、増殖因子として塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)及び/又は白血球遊走阻止因子(LIF)を添加してもよい。さらに、必要に応じて、培地は、上皮細胞増殖因子(EGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、ビタミン類、インターロイキン類、インスリン、トランスフェリン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コラーゲン、フィブロネクチン、プロゲステロン、セレナイト、B27-サプリメント、N2-サプリメント、ITS-サプリメント、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン等)等を含有してもよい。
また、上記以外には、1~20%の含有率で血清(例えば、10%FBS)が培地に含まれることが好ましい。しかしながら、血清はロットの違いにより成分が異なり、その効果にバラツキがあるため、ロットチェックを行った後に使用することが好ましい。
幹細胞を培養する培地は、市販品を用いることもできる。市販品の培地としては、インビトロジェン製の間葉系幹細胞基礎培地や、三光純薬製の間葉系幹細胞基礎培地、TOYOBO社製のMF培地、Sigma社製のハンクス液(Hank’s balanced salt solution)等を用いることができる。
幹細胞の培養に用いる培養器は、幹細胞の培養が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、フラスコ、シャーレ、ディッシュ、プレート、チャンバースライド、チューブ、トレイ、培養バッグ、ローラーボトルなどが挙げられる。培養器は、細胞非接着性であっても接着性であってもよく、目的に応じて適宜選択される。細胞接着性の培養器は、細胞との接着性を向上させる目的で、細胞外マトリックス等による細胞支持用基質などで処理したものを用いてもよい。細胞支持用基質としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ラミニン、フィブロネクチンなどが挙げられる。
幹細胞培養に使用される培地に対するユキツバキの抽出物の添加濃度は、上述の本発明の剤におけるユキツバキの抽出物の含有量に準じて適宜決定することができるが、例えば1~1000μg/mL、好ましくは10~400μg/mLの濃度が挙げられる。また、幹細胞の培養期間中、ユキツバキの抽出物を、定期的に培地に添加してもよい。
幹細胞の培養条件は、幹細胞の培養に用いられる通常の条件に従えばよく、特別な制御は必要ではない。例えば、培養温度は、特に限定されるものではないが約30~40℃、好ましくは約36~37℃である。COガス濃度は、例えば約1~10%、好ましくは約2~5%である。なお、培地の交換は2~3日に1回行うことが好ましく、毎日行うことがより好ましい。前記培養条件は、幹細胞が生存及び増殖可能な範囲で適宜変動させて設定することもできる。
また、上記のエクソソームの製造方法に準じて、ユキツバキの抽出物を、単独で、あるいは培地と別々に又は培地と混合し、エクソソームの製造のための試薬キットとして提供することもできる。当該キットは、必要に応じて取扱い説明書等を含むことができる。あるいは、ユキツバキの抽出物を培地と混合し、エクソソームの製造用培地として提供することもできる。
上記の本発明に係る方法により製造されたエクソソームは、例えば、組織損傷や腎障害等の治療剤として用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]ツバキの抽出物の製造
(製造例1)ヤブツバキ種子の熱水抽出物の調製
ヤブツバキ(Camellia japonica var japonica)の種子の搾油残渣の乾燥物30gに精製水300mLを加え、95~100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してヤブツバキ種子の熱水抽出物3.5g得た。
(製造例2)ユキツバキ種子の熱水抽出物の調製
ユキツバキ(Camellia japonica var decumbens)の種子の搾油残渣の乾燥物30gに精製水300mLを加え、95~100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してユキツバキ種子の熱水抽出物3.2g得た。
(製造例3)ユキツバキ葉の熱水抽出物の調製
ユキツバキ(Camellia japonica var decumbens)の葉の乾燥物30gに精製水300mLを加え、95~100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してユキツバキ葉の熱水抽出物4.4gを得た。
(製造例4)ユキツバキ種子の50%エタノール抽出物の調製
ユキツバキ(Camellia japonica var decumbens)の種子の搾油残渣の乾燥物20gに50%(w/w)エタノール100mLを加え、室温で3日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してユキツバキ種子の50%エタノール抽出物2.6gを得た。
(製造例5)ユキツバキ葉の50%エタノール抽出物の調製
ユキツバキ(Camellia japonica var decumbens)の葉の乾燥物20gに50%(w/w)エタノール100mLを加え、室温で3日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してユキツバキ葉の50%エタノール抽出物2.4gを得た。
(製造例6)ユキツバキ種子のエタノール抽出物の調製
ユキツバキ(Camellia japonica var decumbens)の種子の搾油残渣の乾燥物20gにエタノール100mLを加え、室温で3日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してユキツバキ種子のエタノール抽出物1.4gを得た。
(製造例7)ユキツバキ葉のエタノール抽出物の調製
ユキツバキ(Camellia japonica var decumbens)の葉の乾燥物20gにエタノール100mLを加え、室温で3日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してユキツバキ葉のエタノール抽出物1.0gを得た。
[実施例2]
(実験例1)幹細胞からのエクソソームの回収
真皮由来細胞として市販のヒト皮膚線維芽細胞(東洋紡株式会社製)を用い、特開2017-093383号公報に記載の方法に準じて、NGFR(nerve growth factor receptor:Genebank number:Nucleotide NM_002507.3;Protein NP_002498.1)を指標として真皮幹細胞を分離した。この真皮幹細胞を5×105個で10cmデッィシュ(アズワン社製)に播種し、80%コンフルエントになるまで培養した。その後、PBSで2回洗浄し、実施例1で調製した各抽出物(製造例1~7)を10μg/mLとなるように添加した血清を含まない培地に交換し、さらに2日間培養した。培養終了後、培養上清を回収し2000gにて10分遠心した後、上清を回収し0.2μmフィルター(ザルトリウス社製)にてフィルターろ過した。ろ液をVivaspin turbo(ザルトリウス社製)を用いて2300gにて遠心し、1/100量まで濃縮した。濃縮液を10000gにて70分遠心し、得られたペレットをPBSで懸濁し、エクソソーム溶液とした。エクソソームの量はBCA Assay kit(Thermo社製)を用いてタンパク質濃度を測定することで定量した。
エクソソームの分泌促進作用は、被験試料(各抽出物、以下同じ。)を添加せずに培養した真皮幹細胞の培養上清におけるエクソソーム産生量を100とし、被験試料を添加して培養した真皮幹細胞の培養上清における相対エクソソーム産生量を算出し、評価した。これらの試験結果を以下の表1に示す。
Figure 2024038890000001
表1に示すように、ユキツバキの抽出物(製造例2~7)には、ヤブツバキの抽出物(製造例1)と比較して優れた真皮幹細胞からのエクソソーム分泌促進作用が認められた。
(実験例2)エクソソーム内の細胞外マトリックスの発現制御因子の発現解析
エクソソーム内の細胞外マトリックスの発現制御因子の測定はウエスタンブロット法により以下の通り行った。実験例1で回収したエクソソームをタンパク質濃度0.1mg/mLに統一し、4倍量のサンプルバッファーを加えて100℃で5分間処理した。そのうちの5μLをSDS電気泳動に供し、電気泳動後のゲルをトランスファー用メンブレン(Millipore社製、IPVH09120)にブロッティングした。次に、5%スキムミルク溶液(ブロッキング溶液)でメンブレンを1時間ブロッキングした後、ブロッキング溶液で1000倍希釈したanti-GOLPH3抗体(Novus biologicals社製、NBP2-58286)、anti-ANP32B抗体(OriGene社製、GTX115437)、anti-DPYSL3抗体(Santa Cruz社製、SC-100323)、又はanti-SRSF1抗体(Santa Cruz社製、SC-33652)で室温にて1時間反応させた。さらに、ブロッキング溶液で10,000倍希釈したPeroxidase-conjugated anti-mouse IgG(Jackson Immunoresearch社製、115-036-003)又はPeroxidase-conjugated anti-rabbit IgG(Jackson Immunoresearch社製、111-036-003)で室温にて1時間反応させた後、ウエスタンブロッティング検出試薬(Amarsham社製、RPN2209)と1分間反応させ、ライトキャプチャー(ATTO社製)にて発光パターンを撮影した。撮影後、各タンパク質の分子量付近に現れたバンドを解析ソフト(ATTO社製)にて定量化した。
GOLPH3、ANP32B、DPYSL3、及びSRSF1の各タンパク質の発現は、被験試料を添加せずに培養した真皮幹細胞から回収したエクソソームにおける各タンパク質の発現量を100とし、被験試料を添加して培養した真皮幹細胞から回収したエクソソームにおける各タンパク質の相対発現量を算出し、評価した。これらの試験結果を以下の表2に示す。
Figure 2024038890000002
表2に示すように、ユキツバキの抽出物(製造例2~7)には、ヤブツバキの抽出物(製造例1)と比較してエクソソーム内のGOLPH3、ANP32B、DPYSL3、及びSRSF1の各タンパク質の発現促進作用が認められた。
(実験例3)基底膜を形成する細胞外マトリックスの遺伝子発現解析
表皮角化細胞を1×10個で24ウェルプレート(Falcon社製)に播種し、1日培養した。実験例1で回収したエクソソームを10μg/mLで添加し、さらに1日培養した。培養終了後、RNAisoPlus(タカラバイオ社製)を用いてmRNAを単離抽出した。このmRNAに対して、High Capacity RNA to cDNA Kit(Thermo社製)を用いて逆転写反応によるcDNA合成を行った後に、SYBR Select Master Mix(Thermo社製)を用いてPCR反応を実施し、COL4A1の遺伝子発現量を解析した。PCR反応は、95℃、2分の初期変性を行った後、下記のプライマーセットを用いて、95℃、15秒、60℃、60秒を1サイクルとして40サイクル行った。その他の操作は、定められた方法に従った。
COL4A1プライマーセット:
5'-GCAATTACTACGCAAACGCTTACA-3' (配列番号1)
5'-GACGGCGTAGGCTTCTTGAA-3' (配列番号2)
GAPDH(内部標準)用プライマーセット:
5'-TGCACCACCAACTGCTTAGC-3' (配列番号3)
5'-TCTTCTGGGTGGCAGTGATG-3'(配列番号4)
COL4A1の発現は、エクソソーム未添加の表皮角化細胞におけるCOL4A1の発現量を内部標準であるGAPDHの発現量に対する割合として算出したCOL4A1遺伝子発現量/GAPDH遺伝子発現量の値を100とし、これに対し、被験試料未添加又は試料添加で培養した真皮幹細胞の培養液より回収したエクソソームを添加した表皮角化細胞のCOL4A1の遺伝子相対発現量の値を算出し、評価した。これらの試験結果を以下の表3に示す。
Figure 2024038890000003
表3に示すように、ユキツバキの抽出物(製造例2~7)を添加して培養した真皮幹細胞から回収したエクソソームを添加して培養した表皮角化細胞では、ヤブツバキの抽出物(製造例1)を添加して培養した真皮幹細胞から回収したエクソソームを添加して培養した表皮角化細胞と比較して、基底膜の構成成分であるCOL4A1遺伝子相対発現量が増加し、細胞外マトリックスの産生が促進されることが確認できた。特にユキツバキ種子の熱水抽出物において効果が高かった。
(実験例4)培養皮膚モデルの解析
(1)真皮付き三次元培養皮膚モデルの作製方法
真皮付き三次元培養皮膚モデルの作製は、以下のとおり行った。
(増殖培養工程)
液透過性膜を底面に有する培養インサートの上に、真皮幹細胞をコラーゲンゲル(新田ゼラチン社製)中に1×10個/mLで播種することで真皮モデルAを作製した。また、真皮幹細胞を播種しないコラーゲンゲルを真皮モデルBとした。
次に、表皮角化細胞を細胞増殖用培地(CELLn TEC社製)に分散し、この細胞分散液を、真皮モデルA又は真皮モデルBの上に1×10個/mLで播種し、培養インサートの外部も同じ細胞増殖用培地で満たして、液透過性膜上の細胞が細胞増殖用培地中に浸漬した状態で2~4日間培養した。培養インサートにおいて増殖した表皮角化細胞がコンフルエントの状態にあるかどうかは、CnT-ST-100 stain kit(CELLn TEC社製)等の細胞染色試薬により確認した。
(分化誘導工程)
次に、分化誘導工程では、培養インサートの内部及び外部の培地を細胞増殖用培地から細胞分化用培地(CELLn TEC社製)に変更し、当該培地にて6~48時間程度浸漬培養した後、培養インサートの内部及び外部のすべての培地をアスピレーターで除去し、インサート外部に細胞分化用培地を添加し、培養インサート内部の表皮角化細胞を空気(大気)に曝露し、2~7日間培養して、重層化した表皮組織に分化誘導した。
(2)基底膜形成促進の評価
真皮モデルAを用い、増殖培養工程の開始から分化誘導工程の終了まで培地に実施例1で調製した各抽出物(製造例1~7)の最終濃度が10μg/mLとなるように添加して培養することによって作製した培養皮膚モデルA、及び真皮モデルBを用い、培地に上記抽出物を添加しないで培養することによって作製した培養皮膚モデルB(コントロール)について、ユキツバキの抽出物による基底膜形成促進効果を評価した。具体的には、分化誘導培養終了後、培養インサートから、形成された培養皮膚モデルを切り出し、RNAisoPlus(タカラバイオ社製)を用いてmRNAを単離抽出した。このmRNAに対して、High Capacity RNA to cDNA Kit(Thermo社製)を用いて逆転写反応によるcDNA合成を行った後に、SYBR Select Master Mix(Thermo社製)を用いてPCR反応を実施し、COL4A1の遺伝子発現量を解析した。PCR反応は、95℃、2分の初期変性を行った後、前記のプライマーセットを用いて、95℃、15秒、60℃、60秒を1サイクルとして40サイクル行った。その他の操作は、定められた方法に従った。
COL4A1の発現は、培養皮膚モデルB(コントロール:真皮幹細胞なし/被験試料未添加)におけるCOL4A1の発現量を内部標準であるGAPDHの発現量に対する割合として算出したCOL4A1遺伝子発現量/GAPDH遺伝子発現量の値を100とし、これに対し、培養皮膚モデルA(真皮幹細胞あり/被験試料未添加又は添加)におけるCOL4A1の遺伝子相対発現量の値を算出し、評価した。これらの試験結果を以下の表4に示す。
Figure 2024038890000004
表4に示すように、培地にユキツバキの抽出物(製造例2~7)を添加して作製した培養皮膚モデルA(真皮幹細胞あり)では、ヤブツバキの抽出物(製造例1)を添加して作製した培養皮膚モデルA(真皮幹細胞あり)と比較して、基底膜の構成成分であるCOL4A1遺伝子の相対発現量が増加し、細胞外マトリックスの産生が促進されることが確認できた。
本発明は、基底膜の変化に伴うシワやタルミ、シミなどの改善及び予防を目的とした医薬品、医薬部外品や化粧品、機能性食品やサプリメントなどの飲食品の製造分野において利用できる。

Claims (12)

  1. ユキツバキの抽出物を有効成分として含有する、エクソソームの機能亢進剤。
  2. 前記エクソソームが、間葉系幹細胞に由来するエクソソームである、請求項1に記載のエクソソームの機能亢進剤。
  3. 前記間葉系幹細胞が、真皮幹細胞である、請求項2に記載のエクソソームの機能亢進剤。
  4. 前記エクソソームの機能亢進が、エクソソームの分泌促進である、請求項1に記載のエクソソームの機能亢進剤。
  5. 前記エクソソームの機能亢進が、エクソソーム内の細胞外マトリックスの発現制御因子の発現促進である、請求項1に記載のエクソソームの機能亢進剤。
  6. 前記細胞外マトリックスの発現制御因子が、GOLPH3、ANP32B、DPYSL3、及びSRSF1から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載のエクソソームの機能亢進剤。
  7. ユキツバキの抽出物を有効成分として含有する、細胞外マトリックスの産生促進剤。
  8. 前記細胞外マトリックスが、IV型コラーゲンである、請求項7に記載の細胞外マトリックスの産生促進剤。
  9. ユキツバキの抽出物を有効成分として含有する、基底膜形成促進剤。
  10. ユキツバキの抽出物を有効成分として含有する、基底膜安定化用組成物。
  11. 前記組成物が、化粧品、医薬部外品、医薬品、又は飲食品である、請求項10に記載の基底膜安定化用組成物。
  12. 幹細胞を、ユキツバキの抽出物を含有する培地で培養する工程を含む、エクソソームの製造方法。
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