JP2024038535A - 光共振器及びレーザ加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の波長を有する光ビームを共振させる効率を良くする。【解決手段】互いに異なる波長を有する複数の光ビームを共振させる光共振器(2)は、光源(13)と、回折格子(20)と、出力カプラ(14)と、光学系(25)とを備える。光源は、複数の光ビームをそれぞれ発光する複数の光源素子を含む。回折格子は、各光源素子からの光ビームの波長に応じた角度において各光ビームを回折する。出力カプラは、回折格子において回折された光ビームの一部を反射して光源に戻し、当該光ビームの残部を出力する。光学系は、光源と回折格子との間に配置され、光源から入射する各光ビームをそれぞれコリメートして回折格子に出射する。光学系は、複数の光ビームの波長にわたる色収差を調整するように、各光ビームを回折する回折面を有する。【選択図】図1
Description
本開示は、複数の光ビームを共振させる光共振器、及び光共振器を備えたレーザ加工装置に関する。
特許文献1は、個々の光ビームを重ね合わせて結合ビームを形成する波長合成型のレーザシステムを開示している。特許文献1では、光出力を増大する観点より、複数のダイオードバーからの光ビームを光ファイバに集光することが開示されている。また、レーザシステムを小型化する目的から、波長合成における結合レンズの配置を焦点距離から外すための光学系を別途含めたり、ビーム回転子を回転させたりしている。
本開示は、複数の波長を有する光ビームを共振させる効率を良くすることができる光共振器及びレーザ加工装置を提供する。
本開示における光共振器は、互いに異なる波長を有する複数の光ビームを共振させる。光共振器は、光源と、回折格子と、出力カプラと、光学系とを備える。光源は、複数の光ビームをそれぞれ発光する複数の光源素子を含む。回折格子は、各光源素子からの光ビームの波長に応じた角度において各光ビームを回折する。出力カプラは、回折格子において回折された光ビームの一部を反射して光源に戻し、当該光ビームの残部を出力する。光学系は、光源と回折格子との間に配置された1つ以上のレンズを含み、光源から入射する各光ビームをそれぞれコリメートして回折格子に出射する。光学系は、複数の光ビームの波長にわたる色収差を調整するように、各光ビームを回折する回折面を有する。
本開示におけるレーザ加工装置は、上記の光共振器と、光共振器の出力カプラから出力される光ビームを加工対象物に照射する加工ヘッドとを備える。
本開示における光共振器及びレーザ加工装置によると、複数の波長を有する光ビームを共振させる効率を良くすることができる。
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、出願人は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
(実施形態1)
実施形態1では、波長合成型の光共振器及びそれを備えたレーザ加工装置について説明する。
実施形態1では、波長合成型の光共振器及びそれを備えたレーザ加工装置について説明する。
1.構成
実施形態1に係るレーザ加工装置及び光共振器の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るレーザ加工装置1の構成を示す図である。
実施形態1に係るレーザ加工装置及び光共振器の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るレーザ加工装置1の構成を示す図である。
レーザ加工装置1は、例えば図1に示すように、光共振器2と、伝送光学系10と、加工ヘッド11と、コントローラ12とを備える。レーザ加工装置1は、レーザ光を種々の加工対象物15に照射して、各種レーザ加工を行う装置である。各種レーザ加工は、例えばレーザ溶接、レーザ切断、及びレーザ穿孔などを含む。
光共振器2は、例えばレーザ加工装置1において出力されるレーザ光を生成する。本実施形態において、光共振器2は、複数の光ビームを各々の波長で共振させて合成する波長合成型の外部共振器である。波長合成型の光共振器2によると、良好なビーム品質を得やすく、ビーム径を絞り易い。
本実施形態に係る光共振器2は、図1に示すように、複数のレーザ素子31~33を含んだレーザ光源13と、出力光L1を出射する出力カプラ14と、レーザ光源13及び出力カプラ14の間に配置された光学系とを備える。当該光学系は、例えば回折格子20、及び回折格子20に入射する各光ビームをコリメートするコリメータ光学系25等を含む。本実施形態の光共振器2は、こうした光学系を介してレーザ光源13と出力カプラ14との間を往復する光路において、特定の波長帯の各光ビームを共振させる。
波長合成型の光共振器2においては、光ビームが共振する波長帯すなわち共振波長帯を広く確保することにより、例えば多数のレーザ素子31~33を利用でき、光出力を大きくすることができる。図1では、レーザ光源13における3個のレーザ素子31,32,33を例示している。レーザ光源13に含まれるレーザ素子31~33の個数は、例えば数十個から数百個である。本実施形態の光共振器2は、コリメータ光学系25の構成により、幅広い共振波長帯を用いた際に生じ得る発振効率の問題を解消できる(詳細は後述)。
レーザ加工装置1において、伝送光学系10は、光共振器2からのレーザ光を加工ヘッド11に伝送する光学系であり、例えば光ファイバを含む。加工ヘッド11は、例えば加工対象物15に対向して配置され、光共振器2から伝送されたレーザ光を加工対象物15に照射する装置である。
コントローラ12は、レーザ加工装置1の全体動作を制御する制御装置である。コントローラ12は、例えばソフトウェアと協働して所定の機能を実現するCPU又はMPUを備える。コントローラ12は、各種プログラム及びデータを記憶する内部メモリ、及び使用者の操作により発振条件等を入力可能な各種インタフェースを備えてもよい。コントローラ12は、各種機能を実現するASIC,FPGA等のハードウェア回路を備えてもよい。また、コントローラ12は、光源の駆動回路と一体的に構成されてもよい。
1-1.光共振器の構成
本実施形態に係る光共振器2の構成の一例を、図2~図4を用いて説明する。
本実施形態に係る光共振器2の構成の一例を、図2~図4を用いて説明する。
図2は、本実施形態における光共振器2の構成を例示する平面図である。図3は、図2の光共振器2の側面図を示す。以下では、光共振器2の出力カプラ14から出力される光ビームの光軸方向をZ方向とし、Z方向に直交して且つ互いに直交する2方向をX,Y方向とする。図2は+Y側から見た光共振器2を例示し、図3は-X側から見た光共振器2を例示する。
本実施形態の光共振器2は、例えば図2に示すように、レーザ光源13を構成する複数のLD(レーザダイオード)アレイ3-1~3-3と、各LDアレイ3-1~3-3に対応して設けられる複数の光学ユニット4-1~4-3とを備える。さらに、光共振器2は、複数のミラー21~23と、コリメータ光学系25と、1/2波長板24と、回折格子20と、テレスコープ光学系26と、出力カプラ14とを備える。
本構成例の光共振器2は、例えば図3に示すように、各LDアレイ3及び各光学ユニット4が同一のXZ平面上に配置された-Y側の段と、出力カプラ14等が同一平面上に配置された+Y側の段との2段構成を有する。こうした2段構成によると、光共振器2を小型化できる。
図2,3では、3個のレーザ素子31,32,33に対応する3個のLDアレイ3-1,3-2,3-3を例示している。レーザ光源13に含まれるLDアレイ3-1~3-3の個数は、例えば11個である。以下、LDアレイ3-1~3-3の総称を「LDアレイ3」といい、光学ユニット4-1~4-3の総称を「光学ユニット4」という場合がある。又、レーザ素子31~33の総称を「レーザ素子30」という場合がある(図4参照)。
図4は、光共振器2におけるLDアレイ3の構成を例示する。LDアレイ3は、例えば一次元的に複数のレーザ素子30が配列されたアレイである。以下では、LDアレイ3においてレーザ素子30が配列された方向を「Xi方向」とし、LDアレイ3が出射する光ビームの光軸の方向を「Zi方向」とする。各LDアレイ3は、例えばY方向に対してXi,Zi方向が直交するように配置される。
LDアレイ3は、例えばダイレクトダイオードレーザで構成される。LDアレイ3の後側(即ち-Zi側)端面には、例えば反射率99.9%以上の高反射率コーティングが施される。LDアレイ3の前側(即ち+Zi側)端面には、例えば、透過率99.9%以上の反射防止コーティングが施される。
図4では、LDアレイ3において5個のレーザ素子30が光ビームを出射する開口部(「LD開口」ともいう)を例示している。1つのLDアレイ3に含まれるレーザ素子30の個数は、例えば数十個から数百個である。LDアレイ3における複数のレーザ素子30は、例えばLD発光層の材質に応じた共通の自然放出スペクトルを有する。当該スペクトルは、例えば共振波長帯に対応し、たとえば波長405nm~445nmを含む。
本実施形態において、LDアレイ3は、各レーザ素子30から、発散角が比較的大きいファスト軸及び比較的小さいスロー軸を有する光ビームを発光する(図5参照)。光ビームのファスト軸は、スロー軸よりも急速にビーム径を拡げ、且つ良好なビーム品質を得やすい。各レーザ素子30は、LDアレイ3のエミッタを構成する光源素子の一例であり、それぞれ+Zi側に光ビームを出射する。
光学ユニット4は、LDアレイ3の各レーザ素子30からの複数の光ビームをそれぞれ調整して導光する光学系である。光学ユニット4は、+Zi側へ向けて順番に、BTU(ビームツイスタユニット)40と、SAC(スロー軸コリメータ)45と、ミラー46とを備える。光学ユニット4は、LDアレイ3の+Zi側に配置される。光学ユニット4では、LDアレイ3からの各光ビームが、ファスト軸及びスロー軸についてコリメートされ、且つスロー軸がY方向に向けられる。こうした光学ユニット4の詳細は後述する。
各光学ユニット4のミラー46は、それぞれ対応するLDアレイ3からの光ビームを-Z側に反射し、ミラー21に向けて出射する。光学ユニット4のミラー46は、Y方向に平行で且つ、Xi方向に対して所定の角度に配置される。ミラー46の角度は、各々のLDアレイ3からの光ビームが、ファスト軸をX方向に向けた状態で回折格子20において集光されるように、光学ユニット4毎に設定され、例えば44度以上72度以下である。
ミラー21とミラー22とは、例えばそれぞれ-Z側と+Z側とに対向配置され、互いに平行な向きを有する。各ミラー21,22の向きは、例えばX方向に平行で、且つY方向に対して所定の傾斜角度を有する。ミラー21,22の傾斜角度は、光共振器2の2段構成における光路を考慮して設定され、例えば4度である。
ミラー21は、各光学ユニット4のミラー46と、ミラー22との間で光を反射する。例えば、ミラー21は、各光学ユニット4のミラー46から入射した各光ビームを、傾斜角度の分だけ+Y側に反射し、ミラー22に向けて出射する(図3)。
ミラー22は、ミラー21から入射する各光ビームを-Z側に反射して、XZ平面上で集光するように出射する。ミラー22は、例えばミラー21よりも小型のサイズを有する。ミラー22の-Z側には、コリメータ光学系25、1/2波長板24及び回折格子20が、Z方向に沿って順番に配置される。例えば図2に示すように、複数の光ビームは、X方向において互いに配列された状態で、コリメータ光学系25に入射する。
コリメータ光学系25は、1つ以上のレンズを含み、ミラー22等を介して各LDアレイ3から入射した各光ビームを、ファスト軸すなわちX方向について再びコリメートして、回折格子20に向けて出射する。コリメータ光学系25と各光学ユニット4のBTU40との間の各々の光路長は、例えばコリメータ光学系25の焦点距離(「f」とする)と実質的に一致するように、それぞれ設定される。コリメータ光学系25と回折格子20との間の光路長は、コリメータ光学系25の焦点距離f以下に設定可能である。
本実施形態の光共振器2において、コリメータ光学系25は、光ビームが共振する波長帯すなわち共振波長帯における色収差を抑制するように構成される。コリメータ光学系25の詳細は後述する。
1/2波長板24は、入射する光ビームの偏光を90度回転させる。例えば、光ビームがX方向に平行な直線偏光である場合は、Y方向に平行な直線偏光に変換する。1/2波長板24によると、回折格子20における回折効率の観点から、光ビームの偏光を適切に制御できる。1/2波長板24は、特にコリメータ光学系25と回折格子20との間に限らず、例えばコリメータ光学系25よりも+Z側に配置されてもよい。
回折格子20は、例えば透過側の分散性素子で構成され、入射する光を、その波長に応じた回折角で回折させる。回折格子20は、例えばXZ断面において所定のピッチを有する周期構造を備える。回折格子20の周期構造は、例えば断面形状が矩形波形状、三角波形状、又は鋸歯形状などであってもよい。回折格子20は、透過型に限らず、反射型で構成されてもよい。
ミラー23は、回折格子20とテレスコープ光学系26との間で光を反射する。例えば、ミラー23は、回折格子20において結合された光ビームの反射光が、Z方向に進んでテレスコープ光学系26に入射するように配置される。
テレスコープ光学系26は、例えばX方向に正の光学パワーを有するシリンドリカルレンズ26a,26bと、X方向に負の光学パワーを有するシリンドリカルレンズ26cとを含む。テレスコープ光学系26は、例えばミラー23からの光ビームのX方向におけるビーム径を縮小して、出力カプラ14に出射する。テレスコープ光学系26によると、光ビームのファスト軸についての出力カプラ14の角度誤差感度を低減することができる。
出力カプラ14は、例えば、所定の透過率及び反射率を有する部分反射ミラーで構成され、XY平面に平行に配置される。例えば、出力カプラ14の反射率は例えば2%から6%程度に設定されるである。テレスコープ光学系26から出力カプラ14に入射する光ビームのうち、透過率に応じた透過成分は、光共振器2の出力のレーザ光として、例えば伝送光学系10(図1)に出射する。一方、反射率に応じた反射成分は、光共振のために、テレスコープ光学系26等を逆行するように戻される。出力カプラ14には、こうした反射率及び透過率が調整可能な機構が設けられてもよい。
以上のような構成例の光共振器2によると、多数のLDアレイ3の各レーザ素子30からの光ビームを共に共振させ、光出力を高くすることができる。又、各種ミラー46,21~23を用いて各光ビームの光路を折り返すことにより、光共振器2を小型に構成できる。
本実施形態において、光共振器2は上記構成例に限らない。例えば、光共振器2はプリズムなどの光学素子をさらに備えてもよいし、ミラー46,21~23などの各種光学素子が適宜、省略されてもよい。
1-1-1.光学ユニットについて
本実施形態の光共振器2における光学ユニット4の構成について、図5~7を用いて説明する。
本実施形態の光共振器2における光学ユニット4の構成について、図5~7を用いて説明する。
図5は、光学ユニット4を-Xi側から見た側面図を示す。図5では、ミラー46等の図示を省略して、1つのレーザ素子30からの光ビームの光路を例示している。
光学ユニット4におけるBTU40は、FAC(ファスト軸コリメータ)41と、BT(ビームツイスタ)42とを含む。光学ユニット4では、例えばレーザ素子30近傍から+Zi側へ順番に、FAC41、BT42及びSAC45が配置される。図5に示すように、本実施形態においてレーザ素子30の光ビームが光学ユニット4に入射する前に、光ビームのファスト軸AfはY方向に向いており、スロー軸AsはXi方向に向いている。
FAC41は、ファスト軸Afにおいて光ビームをコリメートするために設けられ、例えば正の光学パワーを有するシリンドリカルレンズで構成される。FAC41は、例えば図5に示すように、長手方向をXi方向に向けて、LDアレイ3の+Zi側から焦点距離の位置に配置される。本例では、レーザ素子30からの光ビームは、FAC41によりY方向(即ちファスト軸Af)においてコリメートされて、BT42に入射する。
図6に、BT42の構成例を示す。BT42は、例えば複数の光ビームをそれぞれ回転させる光学素子であり、複数の斜行したレンズ部43を含む。斜行レンズ部43は、BT42において、レーザ素子30毎のレンズを構成する部分であり、例えばシリンドリカルレンズを構成する。なお、BT42とFAC41とは別体で提供されてもよい。
BT42は、例えばXi方向に所定のピッチで複数の斜行レンズ部43を配列するように形成される。本構成例において、斜行レンズ部43は、配列方向(即ちXi方向)およびBT42の厚み方向(即ちY方向)の双方に対して45度だけ傾斜した状態から、LDアレイ3の中央のレーザ素子30の光軸の周りに所定の微少角度だけ回転している。微少角度は、例えば0.01度以下である。なお、BT42はこうした微少角度を有していなくてもよい。
図5の例において、BT42は、レーザ素子30からFAC41を介して入射する光ビームを、XiY平面において回転角度90度だけ回転させる。これにより、BT42から出射する光ビームのスロー軸AsがY方向に向き、ファスト軸AfはXi方向に向くこととなる。又、BT42の出射時の光ビームは、Y方向では発散光となり、Xi方向においては平行光となる。
図7は、BTU40を+Y側から見た平面図を示す。図7では、LDアレイ3における中央のレーザ素子30と-Xi側のレーザ素子30とからの各光ビームの光路を例示する。上述したBT42の微少角度によると、図7に示すように、LDアレイ3におけるレーザ素子30の位置が外側であるほど、その光ビームを内向させることができる(特許文献1参照)。
SAC45は、スロー軸Asにおいて光ビームをコリメートするために設けられ、例えば正の光学パワーを有するシリンドリカルレンズで構成される。SAC45は、例えば図5に示すように、長手方向をXi方向に向けて、BTU40の+Zi側から焦点距離の位置に配置される。本例では、BT42からの光ビームは、SAC45によりY方向(即ちスロー軸As)においてコリメートされて、光学ユニット4を出射する。
以上の光学ユニット4によると、LDアレイ3の各レーザ素子30から発光した光ビームは、基本的にはファスト軸Af及びスロー軸Asにおいてコリメートされる。但し、光の波動的な作用により、特にファスト軸AfにおいてはBT42の+Zi側の面等からの波の影響としてビーム径が広がり得る。これに対して、本実施形態の光共振器2においては、コリメータ光学系25による各光ビームのコリメートによって、上記の影響を抑制することが可能となる。
1-1-2.コリメータ光学系について
本実施形態の光共振器2におけるコリメータ光学系25の構成例を、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態の光共振器2におけるコリメータ光学系25の構成を例示する図である。
本実施形態の光共振器2におけるコリメータ光学系25の構成例を、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態の光共振器2におけるコリメータ光学系25の構成を例示する図である。
本実施形態のコリメータ光学系25は、例えば図8に示すように、回折レンズ50と、屈折レンズ55とを備える。コリメータ光学系25は、例えば光共振器2におけるX方向において正の光学パワーを有し、Y方向においては特に光学パワーを有しない。回折レンズ50及び屈折レンズ55は、例えば所定間隔d(例えば1mm)を置いて+Z側から-Z側へ順番に配置される。
回折レンズ50は、例えば光共振器2の共振波長帯において透光性を有するレンズ材料に、回折面51を設けて構成される。回折面51は、入射する光の回折により光学パワーを与えるように構成される。回折レンズ50において、回折面51は、例えば屈折レンズ55とは反対側に設けられる。又、回折レンズ50において、回折面51とは反対側で屈折レンズ55に対向する面は、例えば平坦面である。
回折レンズ50は、回折面51に基づいて、X方向において正の光学パワーを有し、Y方向においては特に光学パワーを有しない。X方向における回折レンズ50の光学パワーは、コリメータ光学系25の光学パワーよりも小さい。回折レンズ50は、こうした光学パワーに対応する焦点距離faと、回折面51による分散vaとを有する。
屈折レンズ55は、例えばX方向において正の光学パワーを有し、Y方向においては光学パワーを有しないシリンドリカルレンズで構成され、対応する焦点距離fbを有する。各レンズ50,55の焦点距離fa,fbによると、コリメータ光学系25の焦点距離fは次式(1)のように表される。
1/fa+1/fb=1/f …(1)
1/fa+1/fb=1/f …(1)
屈折レンズ55においては、例えば、回折レンズ50とは反対側の面が凸状の屈折面であり、回折レンズ50に対向する側の面が平坦面である。屈折レンズ55は、共振波長帯において透光性を有するレンズ材料で構成される。屈折レンズ55は、レンズ材料による屈折率n、及び屈折率nの波長依存性に応じた分散vbを有する。回折レンズ50のレンズ材料と屈折レンズ55のレンズ材料とは同一であってもよい。
回折面51による分散vaの波長依存性は、一般に、屈折レンズ55の分散vbとは逆の傾向を有する。本実施形態の光共振器2は、コリメータ光学系25に回折面51を設けることにより、屈折レンズ55の色収差の少なくとも一部を相殺すなわち補正して、共振波長における色収差を抑制することができる。又、上記のような回折レンズ50及び屈折レンズ55の2枚構成によると、コリメータ光学系25の製造を容易化できる。
回折レンズ50における回折面51は、例えば階段形状の凹凸がX方向において繰り返される周期構造で構成される。回折面51の周期構造は、例えば一周期分の凹凸を構成する単位構造52を複数含む。図8では、回折面51の中心を原点として、Z方向の変位すなわちサグ量およびX方向における位置xを示している。
単位構造52は、例えば所定の段数(例えば4~16段)の段差xnを有する。回折面51の周期構造は、例えば単位構造52の各段差xnのサグ量で規定され、回折レンズ50の中心の光軸から±X側において対称に構成される。X方向における単位構造52の幅(即ち周期)は、回折レンズ50における外側にある単位構造52ほど短くなる。正の光学パワーの回折面51においては、例えば図8に示すように、単位構造52毎にサグ量が外側において内側よりも低くなるように設定される。
こうした回折面51の周期構造は、階段形状に限らず、例えば鋸歯形状又は各種波形状などであってもよい。以上のようなコリメータ光学系25についての光共振器2の数値実施例については後述する。
2.動作
以上のように構成されるレーザ加工装置1及び光共振器2の動作について、以下説明する。
以上のように構成されるレーザ加工装置1及び光共振器2の動作について、以下説明する。
本実施形態のレーザ加工装置1(図1)は、例えばコントローラ12において設定される発振条件に基づいて、光共振器2のレーザ光源13を駆動させ、光共振器2にレーザ光を生成させる。レーザ加工装置1は、例えばコントローラ12の制御により加工ヘッド11から加工対象物15に、光共振器2で生成されたレーザ光を照射して、各種のレーザ加工を行う。
例えば以上のようなレーザ加工装置1において、光共振器2のレーザ光源13は、図2に例示するように各LDアレイ3-1~3-3における各レーザ素子31~33から光ビームを光学ユニット4-1~4-3に出射する。各LDアレイ3からの複数の光ビームは、それぞれ光学ユニット4及び各種ミラー21,22を経由する光路を進んで、コリメータ光学系25に入射する。
こうした光路の進行中に、各光ビームにおけるファスト軸Afのビーム径は、例えば光学ユニット4の途中から次第に拡がり得る。そこで、コリメータ光学系25は、レーザ光源13の各LDアレイ3からの各光ビームをそれぞれX方向においてコリメートして、回折格子20に向けて出射する。又、上記光路は、例えば複数の光ビームが進むほどX方向において互いに近づき、回折格子20において集光されるように、光ビーム毎に設定される(図2参照)。
回折格子20は、例えば次式(2)のような回折条件にしたがって、波長λを有する光が入射角αで入射すると回折角βで出射するように、光を回折させることにより、各LDアレイ3からの複数の光ビームを結合する。
sinα+sinβ=mλ/d …(2)
ここで、dは回折格子20のピッチであり、mは回折次数を示す。図9は、光共振器2の回折格子20における光ビームの結合方法を説明した図である。
sinα+sinβ=mλ/d …(2)
ここで、dは回折格子20のピッチであり、mは回折次数を示す。図9は、光共振器2の回折格子20における光ビームの結合方法を説明した図である。
回折格子20においては、例えば図9に示すように、各レーザ素子31,32,33からの各光ビームの入射角α=α1,α2,α3が互いに異なる。本実施形態の光共振器2では、例えば上式(1)に基づいて、各光ビームの回折角βを同一にするように、各レーザ素子31,32,33に異なる共振波長λ=λ1,λ2,λ3が設定される。これにより、複数のLDアレイ3からの光ビームは、図9に例示するような光路において、回折後に回折格子20から同じ方向に出射する。こうして結合された光ビームは、例えばテレスコープ光学系26を介して出力カプラ14に入射する。
出力カプラ14は、回折格子20において結合された光ビームの一部を反射して、テレスコープ光学系26等を逆行させることにより各レーザ素子30に戻す。例えば、図9に例示した光路の逆行により、複数の波長λ=λ1~λ3を有する光ビームは、回折格子20において波長λ1,λ2,λ3別に異なる角度α1,α2,α3に分離される。分離された各光ビームは、さらにコリメータ光学系25等を逆行して、それぞれ入射元のレーザ素子31,32,33に戻される。
こうして、光共振器2において、各種の共振波長λ=λ1~λ3にわたりレーザ発振用の戻り光が供給され、LDアレイ3の後側端面と出力カプラ14との間で光共振を生じさせることが可能になる。又、出力カプラ14を通過した光ビームは、例えばレーザ加工装置1の出力として利用される。
以上のように、本実施形態の光共振器2は、幅広い共振波長帯λ1~λ3において多数のレーザ素子31~33の光ビームを共に共振させて高い光出力を得ることができる。共振波長λは、例えば各LDアレイ3のレーザ素子30毎に別々に設定される。例えば、波長400nm~450nm程度の青色領域において、複数のLDアレイ3-1~3-3間では、λ1=405nm、λ2=425nm及びλ3=445nmといった幅40nmを含む共振波長帯λ1~λ3が設定できる。この際、1つのLDアレイ3におけるレーザ素子30間の共振波長λの差異は、例えば数nm程度である。
2-1.戻り光のカップリング効率と色収差補正
ここで、従来の波長合成型の光共振器では、共振波長帯を広げたとしても、戻り光の結合効率すなわちレーザ発振可能に戻される効率の低下から、発振効率を高めることが困難という問題が、本願発明者の鋭意研究により見出された。これに対して、本実施形態の光共振器2は、コリメータ光学系25において色収差を補正することにより、上記問題を解消できる。この点について、図10~図11を用いて説明する。
ここで、従来の波長合成型の光共振器では、共振波長帯を広げたとしても、戻り光の結合効率すなわちレーザ発振可能に戻される効率の低下から、発振効率を高めることが困難という問題が、本願発明者の鋭意研究により見出された。これに対して、本実施形態の光共振器2は、コリメータ光学系25において色収差を補正することにより、上記問題を解消できる。この点について、図10~図11を用いて説明する。
図10は、光共振器における戻り光のカップリング効率の問題を説明するための図である。図10において、グラフG1は、本実施形態の光共振器2と同様の共振波長帯において、従来のコリメータ光学系を備えた典型的な光共振器における戻り光のカップリング効率を示す。従来のコリメータ光学系は、典型的には屈折レンズのみで構成される。
図10では、グラフG1中の波長λ1,λ2に対応する戻り光のスポットS1,S2と、LD開口30aとの関係を例示している。本例では、共振波長帯λ1~λ3における中央等の基準の波長λ2(例えば425nm)において、戻り光のスポットS2がLD開口30aにて収束するように光共振器が設定された場合を示す。この場合、基準の波長λ2における戻り光のカップリング効率は、比較的高い。しかしながら、グラフG1において基準の波長λ2から離れるほど、戻り光のカップリング効率が低下している。例えば、端部の波長λ1における戻り光のスポットS1は、ファスト軸の方向においてLD開口30aから大幅にはみ出している。
以上のように、従来の光共振器においては、戻り光のカップリング効率が共振波長に依存して低下し、このため共振波長帯λ1~λ3全体として発振効率を高めることが困難という問題がある。この問題に対して、本願発明者は鋭意研究を重ね、その要因がコリメータ光学系の色収差にあることを見出して、本実施形態の光共振器2を考案するに到った。
図11は、本実施形態の光共振器2における色収差の補正を説明するための図である。図11(A)は、コリメータ光学系における色収差のグラフG11,G12を例示する。図11(B)は、本実施形態の光共振器2における戻り光のカップリング効率のグラフG2を示す。
図11(A)では、従来のコリメータ光学系の色収差グラフG11と、本実施形態のコリメータ光学系25の色収差グラフG12とを示している。図11(A)では、波長425nm(=λ2)を基準として軸上色収差が0mmとしている。横軸は波長をnm単位で示し、縦軸は軸上色収差をmm単位で示す。
従来のコリメータ光学系では、図11(A)の色収差グラフG11に示すように、基準よりも短い波長405nm(=λ1)では、-4mm程度の軸上色収差が生じている。又、基準よりも長い波長445nm(=λ3)では、+4mm程度の軸上色収差が生じている。こうしたコリメータ光学系の色収差によると、基準の波長λ2から離れるほど戻り光のスポットS1が広がり(図10参照)、戻り光のカップリング効率ひいては発振効率の低下を招いてしまう。
これに対して、本実施形態の光共振器2におけるコリメータ光学系25は、色収差グラフG12に示すように、共振波長帯λ1~λ3における軸上色収差を従来よりも抑制し、精度良く補正できている。こうしたコリメータ光学系25は、光共振器2において、共振波長帯λ1~λ3にわたる各種波長の戻り光を、互いに同じ焦点距離fで集光し、各々のスポットを各LD開口にて収束できる。これにより、図11(B)のグラフG2に示すように、共振波長帯λ1~λ3における種々の共振波長λにわたり戻り光のカップリング効率を充分に高く確保でき、こうした共振波長帯λ1~λ3における光共振器2の発振効率を高めることができる。
2-2.色消し条件について
本実施形態の光共振器2は、例えば、基準の波長λ2を含む共振波長帯λ1~λ3においてコリメータ光学系25が色消し条件を満たすように設定される。色消し条件は、例えば回折レンズ50の焦点距離fa及び分散vaと屈折レンズ55の焦点距離fb及び分散vbとを用いて次式(10)のように表される。
1/(fa×va)+1/(fb×vb)=0 …(10)
本実施形態の光共振器2は、例えば、基準の波長λ2を含む共振波長帯λ1~λ3においてコリメータ光学系25が色消し条件を満たすように設定される。色消し条件は、例えば回折レンズ50の焦点距離fa及び分散vaと屈折レンズ55の焦点距離fb及び分散vbとを用いて次式(10)のように表される。
1/(fa×va)+1/(fb×vb)=0 …(10)
上式(10)において、回折レンズ50の分散vaは、例えばλ1<λ2<λ3の波長λ2に関して、次式(11)のように表される。
va=λ2/(λ1-λ3) …(11)
va=λ2/(λ1-λ3) …(11)
また、屈折レンズ55の分散vbは、例えば各波長λ1,λ2,λ3における屈折レンズ55の屈折率n1,n2,n3を用いて、次式(12)のように表される。
vb=n2/(n1-n3) …(12)
vb=n2/(n1-n3) …(12)
上式(10)を満たすコリメータ光学系25によると、回折レンズ50と屈折レンズ55との間で軸上色収差の打ち消し合いにより、色収差の補正を高精度に実現することができる。例えば、上述した焦点距離fの式(1)において共振波長帯λ1~λ3にわたって回折レンズ50の焦点距離faの変動と、屈折レンズ55の焦点距離fbの変動とが互いに打ち消し合い、コリメータ光学系25全体の焦点距離fの変動を抑制することができる。本実施形態のコリメータ光学系25は、適宜許容誤差の範囲内で上式(10)を満たしてもよい。
2-3.数値実施例
以上のような色消し条件に基づいた本実施形態の光共振器2の数値的な実施例について、以下説明する。
以上のような色消し条件に基づいた本実施形態の光共振器2の数値的な実施例について、以下説明する。
光共振器2において、コリメータ光学系25の焦点距離fは、上述した式(1)のように屈折レンズ55の焦点距離fbと回折レンズ50の焦点距離faを合成して、f=1000.28mmであった。BT42の出射面からコリメータ光学系25の回折面51までの光学的な作動距離は997.2mmであり、各BT42とコリメータ光学系25間の光路長は1000.5mmであった。
コリメータ光学系25における屈折レンズ55について、レンズ材料は石英を用いた。屈折レンズ55の屈折率nは、波長405nmにおいてn=1.469587であり、波長425nmにおいてn=1.467639であり、波長445nmにおいてn=1.465957であった。屈折レンズ55の外形は30×30mmであり、中心厚は2mmであった。屈折レンズ55の凸面の曲率半径は、506.33497mmであった。
回折レンズ50について、レンズ材料は、上記の屈折レンズ55と同様に石英を用いた。この場合の回折レンズ50は、上記の屈折レンズ55の屈折率nと同様の屈折率を有する。回折レンズ50の外形は30×30mmであり、中心厚は1mmであった。
回折レンズ50における回折面51の数値実施例を図12~図14に例示する。本実施例では、回折面51に階段状の周期構造を採用して、単位構造段数は16段とした。また、回折面51における段差の総数は324段とした。図12~図14では、各段差x1~x324のX方向における位置およびサグ量を示している。こうした回折面51等によると、図11(A)に示すように軸上色収差が抑制されたコリメータ光学系25が得られた。
また、上記のようなコリメータ光学系25の回折面51について、単位構造52の段数を変えて、回折効率を測定した。図15は、回折面51における回折効率の測定結果を示すグラフである。
図15の横軸は波長であり、縦軸は回折効率である。グラフE16は、単位構造52が16段である場合の回折面51の回折効率を示す。同様に、グラフE8,E4,E2は、それぞれ単位構造52が8段、4段、又は2段の場合の回折効率を示す。なお、回折次数は1次とした。
図15に示すように、単位構造52の段数を増やすほど高い回折効率が得られ、16段の場合にはグラフE16に示すように充分に回折効率が100%に近い結果が得られた。また、2段の場合にはグラフE2のように回折効率が40%程度であったものの、4段の場合にはグラフE4のように80%以上の回折効率が得られ、8段の場合には95%程度もの回折効率が得られた。
3.まとめ
以上のように、本実施形態における光共振器2は、互いに異なる波長を有する複数の光ビームを共振させる。光共振器2は、光源の一例であるレーザ光源13と、回折格子20と、出力カプラ14と、第1の光学系の一例であるコリメータ光学系25とを備える。レーザ光源13は、複数の光ビームをそれぞれ発光する複数の光源素子の一例である複数のレーザ素子30を含む。回折格子20は、各レーザ素子31~33からの光ビームの波長に応じた入射角α1~α3といった角度において各光ビームを回折する。出力カプラ14は、回折格子20において回折された光ビームの一部を反射してレーザ光源13に戻し、当該光ビームの残部を出力する。コリメータ光学系25は、レーザ光源13と回折格子20との間に配置され、レーザ光源13から入射する各光ビームをそれぞれコリメートして回折格子20に出射する。コリメータ光学系25は、複数の光ビームの波長λ1~λ3にわたる色収差を調整するように、各光ビームを回折する回折面51を有する。
以上のように、本実施形態における光共振器2は、互いに異なる波長を有する複数の光ビームを共振させる。光共振器2は、光源の一例であるレーザ光源13と、回折格子20と、出力カプラ14と、第1の光学系の一例であるコリメータ光学系25とを備える。レーザ光源13は、複数の光ビームをそれぞれ発光する複数の光源素子の一例である複数のレーザ素子30を含む。回折格子20は、各レーザ素子31~33からの光ビームの波長に応じた入射角α1~α3といった角度において各光ビームを回折する。出力カプラ14は、回折格子20において回折された光ビームの一部を反射してレーザ光源13に戻し、当該光ビームの残部を出力する。コリメータ光学系25は、レーザ光源13と回折格子20との間に配置され、レーザ光源13から入射する各光ビームをそれぞれコリメートして回折格子20に出射する。コリメータ光学系25は、複数の光ビームの波長λ1~λ3にわたる色収差を調整するように、各光ビームを回折する回折面51を有する。
以上の光共振器2によると、コリメータ光学系25に回折面51を設けて色収差を補正することにより、波長合成型の光共振器2における発振効率といった、複数の波長を有する光ビームを共振させる効率を良くすることができる。
なお、色収差の補正において回折レンズを用いる他の手法としては、異なる分散特性を有するレンズ材料の屈折レンズを複数用いる手法がある。しかしながら、本実施形態のように比較的高い出力を有するレーザ加工装置1に用いることが可能なレンズ材料は限られ、上記の手法ではレーザ加工装置1における問題を解決困難である。これに対して、本実施形態の光共振器2のように回折レンズを用いた色収差の補正によると、例えば高出力のレーザ加工装置1において好適に色収差の問題を解決できる。
本実施形態において、コリメータ光学系25は、1つ以上のレンズを含む。回折面51は、上記の1つ以上のレンズにおける色収差を補正するように、各光ビームを回折する。このように、複数の光ビームの波長λ1~λ3にわたる色収差を調整して、複数の光ビームを共振させる効率を良くすることができる。
本実施形態において、コリメータ光学系25は、所定方向の一例としてのX方向において正の光学パワーを有する。所定方向は、複数の光ビームがコリメータ光学系25に入射する際に配列される方向である(図2参照)。回折面51は、X方向において、コリメータ光学系25の光学パワー以下で正の光学パワーに対応する。こうした回折面51によると、光ビームをファスト軸Axにコリメートする際のコリメータ光学系25におけるレンズの色収差の少なくとも一部を相殺して、色収差を補正できる。
本実施形態において、コリメータ光学系25は、X方向において各光ビームを屈折する屈折レンズ55と、回折面51が設けられ、屈折レンズにおける色収差を補正する回折レンズ50とを含む。こうした構成により、コリメータ光学系25を簡単に構成できる。
本実施形態において、回折面51は、X方向において複数の凹凸を繰り返す周期構造を有する(図8参照)。こうした回折面51の周期構造を用いて、コリメータ光学系25の色収差を補正し、光共振器2における発振効率を向上できる。
本実施形態において、光共振器2は、第2の光学系の一例であるBTU40をさらに備える。BTU40は、レーザ光源13とコリメータ光学系25との間に配置され、X方向に対応するファスト軸Afの方向において、複数のレーザ素子30から入射する各光ビームをコリメートして出射する。コリメータ光学系25は、X方向において、BTU40から出射した各光ビームをコリメートして、回折面51により色収差を補正する。これにより、BTU40で一度コリメータした光ビームが波動的に拡がる影響を低減する際の色収差を補正して、光共振器2における発振効率を向上できる。
本実施形態において、レーザ光源13は、それぞれ複数のレーザ素子30が設けられた複数の光源アレイの一例のLDアレイ3を含む。光共振器2は、例えば図3に示すように、複数のLDアレイ3が配置された-Y側の段(第1の段)と、コリメータ光学系25と回折格子20と出力カプラ14とが配置された+Y側の段(第2の段)とを積み重ねるように設けられる。複数のLDアレイ3は、互いに同一平面上に配置される(図3)。コリメータ光学系25と回折格子20と出力カプラ14とは、互いに同一平面上であって、且つ複数のLDアレイ3とは異なる平面上に配置される。こうした2段構成により、光共振器2を小型に構成できる。
本実施形態において、光共振器2は、反射光学系の一例としてミラー46,21,22をさらに備える。ミラー46,21,22は、レーザ光源13とコリメータ光学系25との間に配置され、レーザ光源13からの各光ビームを反射して、コリメータ光学系25に導光する。こうしたミラー46,21,22により、例えば色収差の発生を抑制しながら、光共振器2を小型に構成できる。
本実施形態において、レーザ光源13は、波長405nm以上445nm以下を含む波長帯において複数のレーザ素子30から各光ビームを発光する。回折面51は、コリメータ光学系25において波長帯における色収差を補正する。例えばこうした青色領域の共振波長帯において、光共振器2の発振効率を向上できる。
本実施形態において、レーザ加工装置1は、光共振器2と、加工ヘッド11とを備える。加工ヘッド11光共振器2の出力カプラ14から出力される光ビームを加工対象物15に照射する。レーザ加工装置1は、本実施形態の光共振器2により、幅広い共振波長帯において発振効率を良くすることができる。
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置換、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記各実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施形態を例示する。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置換、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記各実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施形態を例示する。
上記の実施形態1では、回折レンズ50を、軸上色収差を抑制するように設計したが、本実施形態の光共振器2はこれに限定されない。本実施形態において、光発振器2が、コリメータ光学系25と各光学ユニット4のBTU40との間の各々の光路長が異なるよう設計された場合、コリメータ光学系25の回折レンズ50により、各々の光路長に合わせて焦点距離が変化するように軸上色収差を発生させることも出来る。こうした場合の数値実施例を以下に示す。
光学ユニット4-1のBTU40とコリメータ光学系25間の光路長:1008.0mm
光学ユニット4-2のBTU40とコリメータ光学系25間の光路長:998.1mm
光学ユニット4-3のBTU40とコリメータ光学系25間の光路長:988.0mm
上記のような各光学ユニット4-1,4-2,4-3の光路長のずれは、各々のレーザ素子31,32,33の光路長のずれに対応する(図2参照)。このような光路長のずれに対して、コリメータ光学系25において発生させる軸上色収差を図16に示す。こうした軸上色収差のコリメータ光学系25によると、光共振器2において、各レーザ素子31~33の共振波長帯λ1~λ3にわたる各種波長の戻り光を各々の焦点距離で集光し、実施形態1と同様に各々のスポットを各LD開口にて収束できる。よって、本実施形態の光共振器2においても、実施形態1と同様の効果が得られる。
光学ユニット4-2のBTU40とコリメータ光学系25間の光路長:998.1mm
光学ユニット4-3のBTU40とコリメータ光学系25間の光路長:988.0mm
上記のような各光学ユニット4-1,4-2,4-3の光路長のずれは、各々のレーザ素子31,32,33の光路長のずれに対応する(図2参照)。このような光路長のずれに対して、コリメータ光学系25において発生させる軸上色収差を図16に示す。こうした軸上色収差のコリメータ光学系25によると、光共振器2において、各レーザ素子31~33の共振波長帯λ1~λ3にわたる各種波長の戻り光を各々の焦点距離で集光し、実施形態1と同様に各々のスポットを各LD開口にて収束できる。よって、本実施形態の光共振器2においても、実施形態1と同様の効果が得られる。
以上のように、本実施形態において、複数のレーザ素子31~33は、各レーザ素子30からコリメータ光学系25までの光路長を互いにずらして配置されてもよい。この場合、回折レンズ50の回折面51は、上記の光路長のずれに応じてコリメータ光学系25において色収差を生じさせるように、各光ビームを回折する。このような複数の光ビームの波長λ1~λ3にわたる色収差の調整によっても、実施形態1と同様に複数の光ビームを共振させる効率を良くすることができる。
上記の各実施形態では、レーザ光源13が複数のLDアレイ3を含む光共振器2の構成例を説明したが、光共振器2の構成はこれに限定されない。本実施形態の光共振器2では、レーザ光源13が1つのLDアレイ3で構成されてもよい。この場合であっても、LDアレイ3に含まれる複数のレーザ素子30による共振波長帯において色収差を補正して、複数の波長を有する光ビームを共振させる効率を良くすることができる。
また、上記の各実施形態では、光共振器2の光源にLDアレイ3を用いる構成例を説明したが、コレに限定されない。本実施形態において、光共振器2の光源は、LDアレイ3以外の光源アレイを用いてもよいし、アレイ状でない各種の半導体レーザなどのレーザ光源あるいは光源素子を用いて構成されてもよい。
また、上記の各実施形態では、光共振器2のコリメータ光学系25が、回折レンズ50と屈折レンズ55の2枚で構成される例を説明したが、コリメータ光学系25はこれに限定されない。本実施形態において、コリメータ光学系25は、3枚以上のレンズで構成されてもよいし、1枚のレンズで構成されてもよい。例えば、コリメータ光学系25は、一方の面が回折面51であり、他方の面が凸面などの屈折面である1枚のレンズで構成されてもよい。これによっても、コリメータ光学系25は回折面51を用いて色収差を補正して、実施形態1と同様の効果を得られる。
また、上記の各実施形態では、光共振器2の共振波長帯が青色領域である例を説明した。本実施形態において、光共振器2の共振波長帯は上記に限定されず、例えば赤色領域であってもよく、例えば波長900nm以上950nm以下であってもよい。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において、種々の変更、置換、付加、省略などを行うことができる。
本開示は、複数の光ビームを共振させて用いる各種の用途に適用可能であり、例えば各種のレーザ加工技術に適用可能である。
1 レーザ加工装置
11 加工ヘッド
13 レーザ光源
14 出力カプラ
2 光共振器
20 回折格子
25 コリメータ光学系
3 LDアレイ
30~33 レーザ素子
40 BTU
50 回折レンズ
51 回折面
55 屈折レンズ
11 加工ヘッド
13 レーザ光源
14 出力カプラ
2 光共振器
20 回折格子
25 コリメータ光学系
3 LDアレイ
30~33 レーザ素子
40 BTU
50 回折レンズ
51 回折面
55 屈折レンズ
Claims (11)
- 互いに異なる波長を有する複数の光ビームを共振させる光共振器であって、
前記複数の光ビームをそれぞれ発光する複数の光源素子を含む光源と、
前記各光源素子からの光ビームの波長に応じた角度において各光ビームを回折する回折格子と、
前記回折格子において回折された光ビームの一部を反射して前記光源に戻し、当該光ビームの残部を出力する出力カプラと、
前記光源と前記回折格子との間に配置され、前記光源から入射する各光ビームをそれぞれコリメートして前記回折格子に出射する第1の光学系と
を備え、
前記第1の光学系は、前記複数の光ビームの波長にわたる色収差を調整するように、前記各光ビームを回折する回折面を有する
光共振器。 - 前記第1の光学系は、1つ以上のレンズを含み、
前記回折面は、前記1つ以上のレンズにおける色収差を補正するように、前記各光ビームを回折する
請求項1に記載の光共振器。 - 前記第1の光学系は、
前記各光ビームを屈折する屈折レンズと、
前記回折面が設けられ、前記屈折レンズにおける色収差を補正する回折レンズとを含む
請求項2に記載の光共振器。 - 前記複数の光源素子は、各光源素子から前記第1の光学系までの光路長を互いにずらして配置され、
前記回折面は、前記光路長のずれに応じて前記第1の光学系において色収差を生じさせるように、前記各光ビームを回折する
請求項1に記載の光共振器。 - 前記第1の光学系は、前記複数の光ビームが入射する際に配列される所定方向において正の光学パワーを有し、
前記回折面は、前記所定方向において、前記第1の光学系の光学パワー以下で正の光学パワーに対応する
請求項1~4のいずれか1項に記載の光共振器。 - 前記回折面は、前記所定方向において複数の凹凸を繰り返す周期構造を有する
請求項5に記載の光共振器。 - 前記光源と前記第1の光学系との間に配置され、前記所定方向に対応する方向において、前記複数の光源素子から入射する各光ビームをコリメートして出射する第2の光学系をさらに備え、
前記第1の光学系は、前記所定方向において、前記第2の光学系から出射した各光ビームをコリメートして、前記回折面により色収差を補正する
請求項5又は6に記載の光共振器。 - 前記光源は、それぞれ複数の光源素子が設けられた複数の光源アレイを含み、
前記複数の光源アレイが配置された第1の段と、前記第1の光学系と前記回折格子と前記出力カプラとが配置された第2の段とが、互いに積み重ねるように設けられた
請求項1~7のいずれか1項に記載の光共振器。 - 前記光源と前記第1の光学系との間に配置され、前記光源からの各光ビームを反射して、前記第1の光学系に導光する反射光学系をさらに備える
請求項1~8のいずれか1項に記載の光共振器。 - 前記光源は、波長405nm以上445nm以下を含む波長帯において前記複数の光源素子から各光ビームを発光し、
前記回折面は、前記第1の光学系において前記波長帯における色収差を補正する
請求項1~9のいずれか1項に記載の光共振器。 - 請求項1~10のいずれか1項に記載の光共振器と、
前記光共振器の出力カプラから出力される光ビームを加工対象物に照射する加工ヘッドとを備える
レーザ加工装置。
Priority Applications (2)
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JP2021014494A JP2024038535A (ja) | 2021-02-01 | 2021-02-01 | 光共振器及びレーザ加工装置 |
PCT/JP2021/047969 WO2022163245A1 (ja) | 2021-02-01 | 2021-12-23 | 光共振器及びレーザ加工装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2021014494A JP2024038535A (ja) | 2021-02-01 | 2021-02-01 | 光共振器及びレーザ加工装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2024038535A true JP2024038535A (ja) | 2024-03-21 |
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ID=82654399
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2021014494A Pending JP2024038535A (ja) | 2021-02-01 | 2021-02-01 | 光共振器及びレーザ加工装置 |
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WO (1) | WO2022163245A1 (ja) |
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GB201107948D0 (en) * | 2011-05-12 | 2011-06-22 | Powerphotonic Ltd | Multi-wavelength diode laser array |
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-
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- 2021-12-23 WO PCT/JP2021/047969 patent/WO2022163245A1/ja active Application Filing
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