JP2024037185A - 家畜の育成方法および家畜用飼料 - Google Patents

家畜の育成方法および家畜用飼料 Download PDF

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Abstract

【課題】効率よく家畜を成長させることができ、畜舎内で畜養中の家畜が感染症に罹患することを防止できる家畜の育成方法および家畜用飼料を提供する。【解決手段】家畜および/または家畜が飼育される施設内に、二酸化塩素を含有する二酸化塩素含有液体および/または二酸化塩素含有気体を供給する。家畜および/または家畜の飼育環境を改善できる。また、二酸化塩素含有液体として家畜の飲料水となる二酸化塩素含有飲料水を調製し、二酸化塩素含有飲料水を家畜に与えれば、効率よく家畜を成長させることができる。【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用申請有り The Journal of Veterinary Medical Science Advance online publication、日本獣医学会、2023年7月21日 〔刊行物等〕The Journal of Veterinary Medical Science,Vol 85,No.8、日本獣医学会、2023年8月 〔刊行物等〕The Journal of Veterinary Medical Science Advance online publication、日本獣医学会、2023年8月29日
本発明は、家畜の育成方法および家畜用飼料に関する。さらに詳しくは、二酸化塩素を使用して家畜の飼育環境を改善する家畜の育成方法およびかかる家畜の育成に使用される家畜用飼料に関する。
家禽や豚、牛などの肉用の家畜の育成においては、効率よく家畜を成長させること、つまり、与える飼料に対して家畜の体重増加が重要である。また、家畜が飼育途中で死亡した場合には、それまでに費やした飼料などが無駄になってしまうため、家畜を出荷するまで健全な状況で出荷できる飼育環境を維持することが必要である。
一方、近年、養鶏場では、高病原性鳥インフルエンザや鶏伝染性気管支炎(IB)などの家畜感染症の発生が報告されている。かかる家畜感染症が発生した場合、発症した鶏が鶏舎で飼育する鶏の一部であっても、同一鶏舎などで飼育する鶏を全て殺処分することが必要になるため、多大な損害が発生する。
また、豚や牛でも、豚熱や口蹄疫などの家畜感染症が報告されており、この場合も、一部の個体の発症であっても、同一畜舎などで飼育する豚や牛を全て殺処分することが必要になるため、多大な損害が発生する。
ところで、従来、空気中に存在するウイルスなどを不活化して空気を浄化するため、また、建屋などの内部を除菌するために、オールアウト時にホルマリンを使用した燻蒸が実施されている。しかし、ホルマリンの燻蒸は薬剤毒性が指摘されており、ホルマリンに代えて高濃度二酸化塩素含有気体燻蒸を使用することも検討されている(例えば、特許文献1)。
特開2017-61395号公報
しかし、特許文献1の技術は、家畜が存在しないオールアウト時に畜舎内の空間を殺菌消毒するものであり、家畜の出荷が終了したのち次に家畜を飼育するまでの限られた期間でしか実施できない。このため、畜養中に近隣で家畜感染症が発生した場合に、特許文献1の技術では、畜舎内で畜養中の家畜が家畜感染症に罹患することを防止できない。
畜舎内の家畜を一旦畜舎から移動させて畜舎内の空間を殺菌消毒すれば、畜養中の家畜が家畜感染症に罹患することを防止できる可能性はあるが、畜舎内の家畜を一旦畜舎から移動させることは現実的には不可能である。
本考案は上記事情に鑑み、効率よく家畜を成長させることができ、畜舎内で畜養中の家畜が家畜感染症に罹患することを防止できる家畜の育成方法および家畜用飼料を提供することを目的とする。
<家畜の育成方法>
第1発明の家畜の育成方法は、家畜および/または家畜が飼育される施設内に、二酸化塩素を含有する二酸化塩素含有液体および/または二酸化塩素ガスを含有する二酸化塩素含有気体を供給することを特徴とする。
第2発明の家畜の育成方法は、第1発明において、前記二酸化塩素含有液体として家畜の飲料水となる二酸化塩素含有飲料水を調製し、該二酸化塩素含有飲料水を家畜に与えることを特徴とする。
第3発明の家畜の育成方法は、第2発明において、家畜用飲水供給設備を通して前記二酸化塩素含有飲料水を家畜に供給することを特徴とする。
第4発明の家畜の育成方法は、第2または第3発明において、前記二酸化塩素含有飲料水の二酸化塩素濃度が、0.2~0.3ppmであることを特徴とする。
第5発明の家畜の育成方法は、第1発明において、前記二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含有気体を畜舎内に噴霧することを特徴とする。
第6発明の家畜の育成方法は、第5発明において、畜舎内に前記二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含有気体を、畜舎内の二酸化塩素濃度が10~100ppmとなるように噴霧することを特徴とする。
第7発明の家畜の育成方法は、第1発明において、前記二酸化塩素含有水を調製し、該二酸化塩素含有水を畜舎内の洗浄終了後に、該畜舎の床および/または壁に流す、および/または、前記二酸化塩素含有気体によって施設内を燻蒸することを特徴とする。
第8発明の家畜の育成方法は、第1発明において、前記二酸化塩素含有水が貯留された消毒槽および/または前記二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含有気体を噴き出す噴霧装置を施設入り口に設置し、施設入り口から入退出する人および物体を前記二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含有気体に接触させることを特徴とする。
<家畜用飼料>
第9発明の家畜用飼料は、二酸化塩素を含有する二酸化塩素含有液体であることを特徴とする。
第10発明の家畜用飼料は、第9発明において、前記二酸化塩素含有液体は、二酸化塩素濃度が、0.2~0.3ppmであることを特徴とする。
<家畜の育成方法>
第1発明によれば、家畜および/または家畜の飼育環境を改善できる。
第2~第4発明によれば、効率よく家畜を成長させることができる。
第5~第7発明によれば、畜舎内の環境を改善できるので、家畜が感染症などに罹患することを防止できる。
第8発明によれば、外部から畜舎内に感染症などが持ち込まれることを防止できる。
<家畜用飼料>
第9、第10発明によれば、効率よく家畜を成長させることができる。
実施例1の結果を示す表である。 実施例2の感染予防効果の結果を示す表である。 実施例2の生産性の改善効果の結果を示す表である。
本実施形態の家畜の育成方法は、鶏などの家禽や豚、牛などの家畜を飼育する方法であり、家畜を効率よく成長させることができる方法である。
本実施形態の家畜の育成方法によって飼育される家畜は、鶏などの家禽や豚、牛などであるが、これらに限定されない。
本実施形態の家畜の育成方法は、家畜を収容しておく空間を有する畜舎内において家畜を飼育することを想定しているが、家畜を飼育する環境はとくに限定されない。例えば、通常は放牧地や屋外に家畜を放しておき夜間などだけ家畜を畜舎に入れる場合や、ウインドウレス鶏舎のように常時畜舎内に家畜を収容しておく場合、畜舎は設けるがとくに家畜の移動を制限しないで飼育する場合など、さまざまな飼育環境において本実施形態の家畜の育成方法を採用することができる。
本実施形態の家畜の育成方法において、家畜を飼育する施設には様々な設備が含まれる。例えば、家畜を収容しておく空間を有する畜舎や畜舎内の各種設備や、畜舎で使用する用具を収容する倉庫や倉庫内の各種設備、家畜の世話をする作業員が着替えをしたり休憩をしたりする建屋や建屋内の各種設備、家畜を放牧したり屋外で運動させたりする屋外放牧地、屋外で家畜に餌や飲料水を給餌するための給餌施設など、が本実施形態の家畜の育成方法において家畜を飼育する施設に含まれる。また、外部とこれらの施設を隔離するフェンスや塀、外部から車や人が入る際にその入退所を行うゲート施設も本実施形態の家畜の育成方法において家畜を飼育する施設に含まれる。
<二酸化塩素含有飲料水の供給>
本実施形態の家畜の育成方法では、飼育する家畜に対して二酸化塩素を含有する飲料水(二酸化塩素含有飲料水)を与えて飼育する。例えば、家畜(とくに鶏・豚)が飲む水を所定の濃度の二酸化塩素を含有する二酸化塩素含有飲料水として家畜を飼育する。このように二酸化塩素含有飲料水を与えて家畜を飼育すれば、家畜が家畜感染症などに感染することを予防することができ、家畜の死亡率を低減させることができる。また、二酸化塩素含有飲料水を与えることにより、飼料要求率を低減させることが可能となる。飼料要求率とは、家畜を1kgの増体させるために必要な飼料の量を示す数値である。つまり、二酸化塩素含有飲料水を与えることにより、少ない飼料で家畜を効率よく増体することができる。また、家畜が産卵鶏であれば、鶏の産卵量も増加させることができる。
家畜に与える二酸化塩素含有飲料水に含まれる二酸化塩素の量、つまり、二酸化塩素の濃度はとくに限定されない。飲料水を殺菌できしかも二酸化塩素含有飲料水を飲んだ家畜が二酸化塩素によって健康などに影響を受けない濃度であればよい。とくに、二酸化塩素含有飲料水における二酸化塩素の濃度を0.1~0.5ppm、好ましくは0.2~0.3ppmに調製すれば、上記効果を適切に得ることができる。
<家畜用飲水供給設備による供給>
二酸化塩素含有飲料水を家畜に与える方法はとくに限定されない。例えば、家畜が水を飲む水桶などに所定の濃度に調製した二酸化塩素含有飲料水を入れておき、その二酸化塩素含有飲料水を家畜が飲むようにしてもよい。
また、家畜に水を与える設備を設けた場合には、家畜が水を飲む容器や器具(以下給水器という場合がある)に所定の濃度に調製された二酸化塩素含有飲料水を供給するようにしてもよい。この場合には、水桶などに水を溜めておく場合に比べて、家畜が飲む二酸化塩素含有飲料水の二酸化塩素の濃度を一定の濃度に維持することができるので、上記効果を適切に得ることができる。
例えば、配管を通して原水タンクから給水器に飲料水を供給する家畜用飲水供給設備を設けた場合には、原水タンクに所定の二酸化塩素濃度に調製された二酸化塩素含有飲料水を常時供給することが可能になる。この場合、原水タンクの二酸化塩素含有飲料水の濃度を、給水器の位置における二酸化塩素含有飲料水の二酸化塩素の濃度よりも高くしておけば、配管を通して流れる間に二酸化塩素が蒸発や分解などして二酸化塩素の濃度が低下しても、家畜に供給する二酸化塩素含有飲料水の濃度を所定の濃度とすることができる。例えば、原水タンク内における二酸化塩素の濃度を0.5~1.0ppmに調製しておけば、給水器から家畜に供給する二酸化塩素含有飲料水における二酸化塩素の濃度を0.2~0.3ppmに調製することも可能になる。
上述した二酸化塩素含有飲料水を調製する方法はとくに限定されない。例えば、濃度の濃い二酸化塩素含有液体を飲料水に混ぜて、原水タンク内の二酸化塩素含有飲料水を所定の二酸化塩素の濃度となるように調製することができる。また、原水タンク内の二酸化塩素含有飲料水が所定の二酸化塩素の濃度となる量だけ、水と反応すると二酸化塩素が発生する薬剤を原水タンク内の飲料水に投入してもよい。また、原水タンクを設けず、飲料水を水道配管などから直接給水器に供給する設備の場合であれば、配管の途中に二酸化塩素含有液体を飲料水に混ぜる混合部を設け、この混合部において、配管内の飲料水の流量に合わせて適切な量の二酸化塩素含有液体を供給してもよい。
家畜用飲水供給設備において、二酸化塩素含有飲料水が配管を流れるようになっていれば、配管内にバイオフィルムが形成されることを防止することができる。配管内にバイオフィルムが形成された場合には、次亜塩素酸ナトリウム等の殺菌剤を投入した場合でもバイオフィルム内で細菌などが繁殖する。つまり、次亜塩素酸ナトリウム等の殺菌剤ではバイオフィルム内の細菌は十分に殺菌できず、バイオフィルム内で細菌などが繁殖する。もし、細菌によってバイオフィルムが破壊されたり他の要因でバイオフィルムが破壊されたりすると、バイオフィルム内で繁殖した細菌が飲料水に混入する状況が生じる。すると、細菌が混入した飲料水を家畜が摂取すると、細菌によって家畜が健康を害して適切に増体できなかったり、悪くすると死んでしまったりする可能性もある。また、細菌が家畜感染症を引き起こす種類のものであれば、細菌が混入した飲料水を摂取した家畜だけでなく、畜舎内の家畜全体に影響がでる可能性もある。しかし、配管を通して二酸化塩素含有飲料水を家畜に供給すれば、二酸化塩素含有飲料水によって配管内に形成されたバイオフィルムを除去できるし、配管内に新たなバイオフィルムが形成されること抑止できるので、細菌が引き起こす上述したような問題が生じることを効果的に抑制することができる。
なお、家畜に対する二酸化塩素含有飲料水の供給は、常に二酸化塩素含有飲料水のみを家畜に与えてもよいし、二酸化塩素含有飲料水を与える期間と、通常の飲料水を与える期間と、を適切に切り替えてもよい。一日のうちで所定の時間だけ二酸化塩素含有飲料水を与えたり、家畜の成長に合わせて二酸化塩素含有飲料水を与える期間を設定したりしてもよい。
<畜舎内の浄化>
上記例では、家畜に飲料として二酸化塩素含有液体、つまり、二酸化塩素含有飲料水を与える場合を説明した。かかる方法は家畜自体の健康状態などを良好にする効果が得られる。一方、以下の方法を採用すれば、家畜が飼育される環境を改善することによって家畜の飼育状態を良好にすることができる。
<噴霧>
家畜が飼育される環境を改善する方法として、家畜が飼育されている環境を浄化する方法がある。二酸化塩素含有液体や二酸化塩素含有気体を畜舎内に噴霧すれば、畜舎内の気体に浮遊している細菌などを二酸化塩素含有液体の微粒や二酸化塩素含有気体によって不活化させることができる。すると、畜舎内の環境を浄化できるので、家畜を安全かつ好ましい環境で飼育することができる。
また、二酸化塩素含有液体や二酸化塩素含有気体を畜舎内に噴霧すれば、細菌だけでなく、畜舎内の臭いも低減できる。すると、畜舎内の家畜の飼育環境を改善するとともに畜舎内で作業を行う作業者の作業環境も改善することができる。
噴霧する二酸化塩素含有液体における二酸化塩素の濃度や噴霧量、また、二酸化塩素含有気体を噴霧する場合にはその噴霧量はとくに限定されない。畜舎内で家畜を飼育した状態で噴霧するのであれば、家畜が噴霧された二酸化塩素含有液体の微粒子に触れたり飲んだり、また、噴霧された二酸化塩素含有気体を吸い込んだりしても、家畜に害が生じないように噴霧すればよい。とくに、二酸化塩素含有液体や二酸化塩素含有気体を噴霧した畜舎内の空間の二酸化塩素の濃度が、10~100ppmとなるように調製すれば、上記効果を適切に得ることができる。しかも、二酸化塩素は比較的短い時間で分解されるので、残留した二酸化塩素による家畜の健康被害なども生じない。
<洗浄について>
また、二酸化塩素含有液体は畜舎や施設の清掃に使用してもよい。つまり、二酸化塩素含有液体を畜舎や施設の壁や床などに吹き付けて拭き取り掃除をしたり、二酸化塩素含有液体を含侵させた布などによって畜舎や施設の壁や床などを拭くなどしたりしてもよい。すると、畜舎や施設の壁や床などに細菌などが付着していても、畜舎や施設の壁や床などを浄化できる。また、畜舎や施設の臭いを低減できるので、作業者の環境を改善することができる。
<燻蒸>
畜舎内の家畜を全て畜舎から退避させ、かつ、一定期間は畜舎に家畜を入れないように飼育する場合がある。例えば、鶏(レイヤー・ブロイラー)などを鶏舎で飼育する場合には、一定期間鶏を飼育したのち、全ての鶏を移動(オールアウト)し畜舎内を洗浄して新たに飼育する雛を入れて飼育する。このような場合には、畜舎からすべての家畜を退避させたのち、二酸化塩素ガスを含有する二酸化塩素含有気体によって畜舎内を燻蒸して畜舎を浄化してもよい。かかる燻蒸を実施すれば、畜舎内の二酸化塩素ガス濃度を燻蒸に適した濃度(例えば10~100ppm)に調製できるので、拭き取りや噴霧では除菌できない部分(例えば畜舎内の設備などの隙間)に存在する細菌なども不活化することができる。
二酸化塩素含気体によって燻蒸する方法はとくに限定されない。畜舎内の設備などを適切に除菌などができるように、二酸化塩素含気体を畜舎内に供給できればよい。例えば、水を貯留した容器と、この水に空気などの気体を気泡の状態で供給できる気体供給器と、を有する燻蒸ガス発生装置を設け、燻蒸ガス発生装置の容器内の水に水と接触すると二酸化塩素含気体が発生する薬剤を投与する。すると、燻蒸ガス発生装置から発生した二酸化塩素含気体を効果的に畜舎内に供給することができる。とくに、燻蒸ガス発生装置に発生した二酸化塩素含気体を畜舎内に送風する送風機を設けておけば、より効果的に畜舎内を燻蒸することができる。また、畜舎内の適切な場所に同様の燻蒸ガス発生装置を複数設ければ、より効果的に畜舎内を燻蒸することができる。
なお、燻蒸後や燻蒸後の清掃の後には、適切な濃度(例えば10~100ppm)に調製した二酸化塩素含有液体を壁や床に流して放置してもよい。すると、燻蒸後や燻蒸後に清掃した壁や床などに細菌などが付着することを防止することができるので、次に畜舎などに入れる家畜を、飼育開始時から細菌などのない環境で飼育することが可能になる。もちろん、二酸化塩素含有液体を壁や床に流したのち二酸化塩素含有液体を拭き取ってもよい。
<侵入対策>
上記のような燻蒸などを実施して、畜舎などの家畜を飼育する施設を殺菌しても、外部から細菌などが持ち込まれれば、家畜が細菌などに感染することが生じる。そこで、できる限り、施設内への細菌などの持ち込みを防止する上では、施設内に入る際に、人や物体を除菌することが望ましい。
例えば、畜舎の入り口に二酸化塩素含有水が貯留された消毒槽を設けておき、畜舎内に出入りする作業者が消毒槽で靴などを消毒するようにすれば、靴などに付着した細菌などが施設内に持ち込まれることを防止できる。また、畜舎内の入り口に、二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含気体を噴き出す噴霧装置を設けて、この噴霧装置から二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含気体を作業者に噴き付ければ、作業者の服などに付着した細菌などが施設内に持ち込まれることを防止できる。この場合は、作業者に付着しても作業者の健康などに影響がない程度に二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含気体中の二酸化塩素の濃度(例えば10~100ppm)を調製しておくことが望ましい。
また、施設の入り口や車などが通る通路などに、二酸化塩素含有水が貯留された消毒槽を設けておき、畜舎内に出入りする車などのタイヤを消毒するようにすれば、タイヤなどに付着した細菌などが施設内に持ち込まれることを防止できる。また、施設の入り口などに、二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含気体を噴き出す噴霧装置を設けて、この噴霧装置から二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含気体を車などの上部や側面、底面に噴き付けるようにすれば、車などに付着した細菌などが施設内に持ち込まれることを防止できる。この場合は、作業者に噴き付ける場合よりも二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含気体中の二酸化塩素の濃度は高くしてもよい。また、配送用車内の運転席等も畜舎への菌の持ち込みの可能性がある。この場合は10~100ppm程度の二酸化塩素含有気体で運転席等の車内の燻蒸を行うことで畜舎内への細菌などの持ち込みを防ぐことができる。
<不活化試験>
二酸化塩素含有液体によるウイルスなどの殺菌効果を確認した。実験では、ウイルスを含むウイルス液と二酸化塩素含有液体とを混合した試験(液相混和試験)と、ウイルスを物体(キャリア)に付着させてこのキャリアに二酸化塩素含有液を滴下した試験(キャリア試験・滴下法)と、ウイルスを物体(キャリア)に付着させてこのキャリアを二酸化塩素含有液を含むシートで拭き取る試験(キャリア試験・拭き取り法)と、を実施した。
(Evaluation of chlorine dioxide in liquid state and in gaseous state as virucidal agent against avian influenza virus and infectious bronchitis virus Chisaki Kadota, Yu Miyaoka, Md. Humayun Kabir, Hakimullah Hakim, Md. Amirul Hasan, Dany Shoham, Harumi Murakami and Kazuaki Takehara 参照)
使用した二酸化塩素含有液体は、二酪化塩素ガスの濃度が10ppmの試験液と、100ppmの試験液である。これらの試験液は、二酸化塩素タブレット(二酸化塩素発生タブレット:CREINS(登録商標))を500mlの超純水に1錠投与して調製した二酸化塩素含有液体を希釈して調製した。比較には、二酪化塩素ガスを含まない超純水を用いた。
実験では、鶏コロナウイルス(伝染性気管支炎ウイルスInfectious broncliitis virus : IBV-M4I株、以下IBVという場合がある。)および低病原性鳥インフルニンザウイルス(Avian influenza virus : AIV-H7N1、以下AIVという場合がある。)を含むウイルス液を使用した。なお、ウイルスは鶏の呼気から排出されることを想定して、ウイルス液には有機物として、牛胎児血清(Fetal bovine serum : FBS)を0.5%混合したウイルス液、さらに農場の汚染環境下を想定してFBSを5%添加したウイルス液を準備した。
なお、反応停止液には、HEPES(1M) と FBS の 7:3 混合液(HEPES(0.7M)、 30% FBS)を使用した。
また、キャリア試験のキャリアには、プラスチック板(5cm × 5cm 、ポリブロビレン製)を使用した。
<液相混和試験>
液相混和試験は以下の手順で実施した。
まず、ウイルス液(0.5%FBS含む)と 試験液 (10ppm)を1:9の割合で混合した液(ウイルス液50μl、試験液450μl)と、ウイルス液(0.5%FBS含む)と 超純水を1:9の割合で混合した液(ウイルス液50μl、超純水450μl)とを調製する。
ついで、反応開始後、0秒、15秒、30秒、60秒後に反応停止液を500μl加えて混合して、残存ウイルスをそれぞれの感受性細胞で測定した。
結果を図1(A)に示す。
図1(A)に示すように、液相混和試験では、有機物の混入にかかわらず、試験液中のIBVおよびAIVを、15秒以内に検出限界未満にまで不活化した。
なお、試験液 (100ppm)と反応停止液を混合してからIBV(5%FBS) またはAIV (5%FBS)を添加した場合には、ウイルスカ価の低下はなく、二酸化塩素濃度が100ppmの場合であっても、反応停止液が有効であることが確認された。
<キャリア試験・滴下法>
キャリア試験・滴下法は以下の手順で実施した。
まず、0.5%FBS含有ウイルス液をプラスチック板(キャリア)に100μlを乗せ、このウイルス液をガラス棒で10円大に広げ、安全キャビネット内にて1時間ウイルス液を乾燥させた。
その後、試験液 (100ppm)および超純水をマイクロピペットで乾燥したウイルス液に500μl滴下し、1分間、3分間、5分間静置した。比較として、対照として超純水を乾燥したウイルス液に500μl滴下し5分間静置した。
それぞれの時間経過後に、キャリアごとに、反応停止液2mlを含むビニール製の袋(ストマッカーバッグ)に入れて、キャリア表面を良くこすり、ウイルスを反応停止液に回収し、反応停止液中の残存ウイルスをそれぞれの感受性細胞で測定した。
結果を図1(B)に示す。
図1(B)に示すように、キャリア試験・滴下法では、キャリア上のウイルスに超純水を滴下した場合には、5分後でもウイルスカ価は元のウイルスとほぼ変わらなかった。
一方、試験液 (100ppm)を滴下した場合には、有機物の量に関わらず、IBVを1分間以内に1000分の1以下に、3分以内に検出限界未満にまで不活化することができた。AIVについては、1分以内に検出限界未満にまで不活化することができた。
<キヤリア試験・拭き取り法>
キヤリア試験・拭き取り法は以下の手順で実施した。
まず、0.5%FBS含有ウイルス液をプラスチック板(キャリア)に100μlを乗せ、ウイルス液をガラス棒で10円大に広げ、安全キャビネット内にて1時間でウイルス液を乾燥させた。
ついで、試験液 (100ppm)および超純水を500μl含ませたレーヨンシート(5.0cm×5.0cmを四つ折り)によってキャリア表面を30秒間こすった。
その後、キャリアとレーヨンシートをそれぞれ分けて反応停止液2mlを含むビニール製の袋(ストマッカーバッグ)に入れ、キャリアについては表面を良くこすり、レーヨンシートに付いては良く揉み、ウイルスを反応停止液に回収し、反応停止液中の残存ウイルスをそれぞれの感受性細胞で測定した。
結果を図1(C)に示す。
図1(C)に示すように、キャリア上のウイルスは,超純水を含んだレーヨンシートにより拭き取ることで、1000分の1以下にまで減少することができた。ただし、拭き取ったレーヨンシートにはウイルスが残っていた。
一方、試験液 (100ppm)を含んだレーヨンシートで拭き取った場合、キャリア上のウイルスのIBVは検出限界未満まで減少し、レーヨンシートでもウイルスは検出限界未満にまで不活化されていた。AIVについては、キヤリア上のウイルスは1000分の1以下に減少し、レーヨンシートでは検出限界未満にまで不活化されていた。
以上のように、二酸化塩素含有液体は、液体中に存在するウイルスだけでなく、物質表面上に付着したAIVやIBVの不活化に有効であることが確認された。つまり、二酸化塩素含有液体を物体に流したり噴き付けたり、また、二酸化塩素含有液体を含むシートなどで物体表面を拭いたりすることで、物体の表面を殺菌することができることが確認された。
<不活化試験>
二酸化塩素含有ガスによるウイルスなどの殺菌効果を確認した。実験では、ウイルスを混合した液体を噴霧したのち、この液体に二酸化塩素ガスを接触させる試験を実施した。
(Evaluation of chlorine dioxide in liquid state and in gaseous state as virucidal agent against avian influenza virus and infectious bronchitis virus Chisaki Kadota, Yu Miyaoka, Md. Humayun Kabir, Hakimullah Hakim, Md. Amirul Hasan, Dany Shoham, Harumi Murakami and Kazuaki Takehara 参照)
二酸化塩素ガスは、二酸化塩素タブレット(二酸化塩素発生タブレット:CREINS(登録商標))を500mlの超純水に1錠投与して調製した二酸化塩素含有液体を希釈して50ppmの二酪化塩素溶液を調製し、この50ppmの二酪化塩素溶液をウイルオフ二酸化塩素燻蒸装置により気化させて発生した。なお、二酸化塩素ガスの濃度は、Interscanポータブルガス濃度測定器(IS4000:株式会社ジェイエムエス)を用いて測定した。実験中に発生する二酸化塩素ガスは、1500ppb程度であった。
実験では、IBVを含むウイルス液にFBSを0.5%を混合した混合液を調製し、この混合液を噴霧器(エアリアルミスト、株式会社エルフ製)を用いて二酸化塩素ガスが存在する容器内の空間に噴霧した。容器には吸引ポンプ(SP40 MERKOS MEFAR社製)が接続されたアスピレータが設けられており、吸引ポンプによりアスピレータを通して容器内の空気を吸引することによって、容器内に空気の流れを形成している。このアスピレータの吸引口にレーヨンシートで形成されたトラップが設けられており、容器内の空間に混合液が噴霧されると、二酸化塩素ガスが存在する容器内の空間を混合液のミストが通過し、通過した混合液をトラップに回収しできる。なお、噴霧器によって混合液が噴霧される位置からトラップまでの距離は30cm(飛行時間約2~3秒間)であった。
試験は以下の手順で実施した。
まず、二酸化塩素ガスと噴霧される混合液を接触させる容器内のアスピレータの吸引口にトラップのレーヨンシートを配置する。その後、容器内の空気を吸引しながら二酸化塩素ガスの供給および混合液の噴霧を行った(噴霧期間約3分半)。噴霧終了後、容器からトラップのレーヨンシートを回収した。回収したのレーヨンシートを維持培地(MM)を含んだビニール製の袋(ストマッカーバッグ)に入れて、シート表面を良くこすり、ウイルスを維持培地(MM)に回収し、感受性細胞(初代鶏腎培養細胞)を用いてウイルス力価を測定した。
なお、実験は3回実施し、その平均で評価した。
なお、比較例として、二酸化塩素ガスに代えてウイルオフ二酸化塩素燻蒸装置によって超純水を気化して容器に供給した場合も同様の方法で実施した。
結果を表1に示す。
なお、表中のウイルス力価は、1mlあたりのプラークを形成できるウイルス粒子の数を表す単位(PFU/ml)の指数(10)で示している。

Figure 2024037185000002
表1に示すように、二酸化塩素ガス(1500ppb)は、噴霧されたIBVがトラップまで飛翔する間に、95%以上不活化できることが確認された。
以上のように、二酸化塩素ガスは空気中に浮遊するウイルスを不活化できることが確認された。
<不活化試験>
二酸化塩素ガスによる空気中のウイルスに対する殺菌効果を確認した。実験では、ウイルスを物体(キャリア)に付着させてこのキャリアに二酸化塩素ガス接触させる試験(キャリア試験)を実施した。
(Evaluation of antimicrobial efficacies of chlorine dioxide gas released into the air towards pathogens present on the surfaces of inanimate objects Hakimullah Hakim1, Chisaki Kadota, Md. Amirul Hasan, Yu Miyaoka, Md. Humayun Kabir, Dany Shoham, Harumi Murakami and Kazuaki Takehara1, 参照)
二酸化塩素ガスは、二酪化塩素発生パウダー(CLOX社提供)をシャーレ―に一定量を加えて表面積が広くなるように広げたものから発生させた。
実験では、ニューカッスル病ウイルス(NVD:Avian orthoavulavirus 1 (AOaV-1) )、IBV、細菌として大腸菌およびサルモネラ菌(サルモネラ・エンテリティディス)を使用した。キャリアに塗布するウイルスや細菌を含む液体は、ウイルスに、有機物である牛胎児血清(Fetal bovine serum : FBS)を0.5%混合した混合液、または、細菌を含む液体にFBSを0.5%混合した混合液を使用した。
なお、反応停止液には、HEPES(1M) と FBS の 7:3 混合液(HEPES(0.7M)、 30% FBS)を使用した。
また、キャリア試験のキャリアには、プラスチック板(5cm × 5cm 、ポリブロビレン製)、ガラス板(5cm × 5cm)、レーヨンシート(Alphase(登録商標)5 (イワツキ株式会社製)を5cm × 5cmを四つ折りにしたもの)、を使用した。
試験は以下の手順で実施した。
まず、前述した混合液をプラスチック板およびガラス板ではキャリアに100μlを乗せて混合液を10円大に広げた。また、レーヨンシートではその表面に混合液を滴下した。その後、プラスチック板およびガラス板は安全キャビネット内にて45分間混合液を乾燥させて、レーヨンシートは30分間乾燥させて、混合試験用キャリアを形成した。
また、二酪化塩素発生パウダーを入れたシャーレ―を密閉容器内に入れて、二酪化塩素ガスを発生させて、密閉容器内が所望の濃度になるように調整した。密閉容器内が所望の濃度になった後、試験用キャリアを密閉容器内に入れて、1~3時間静置した。なお、比較として、対照として、二酪化塩素塩素ガスを含まない気体が収容されている密閉容器内に試験用キャリアを入れて同じ時間静置した。なお、密閉容器内の二酸化塩素ガスの濃度は、Interscanポータブルガス濃度測定器(IS4000:株式会社ジェイエムエス)を用いて、試験期間中測定した。
それぞれの時間経過後に、残存ウイルスおよび残存細菌を回収し、残存ウイルスおよび残存細菌を測定した。ニューカッスル病ウイルス(NVD)を含む混合液を付着させた試験用キャリアでは、細胞培地用液体培地1mlを含むビニール製の袋(ストマッカーバッグ)に入れて、試験用キャリア表面を良くこすり、ウイルスを細胞培地用液体培地に回収して、感受性細胞(Vero細胞)を用いた方法によりウイルス力価を測定した。IBVを含む混合液を付着させた試験用キャリアでは、細胞培地用液体培地1mlを含むビニール製の袋(ストマッカーバッグ)に入れて、試験用キャリア表面を良くこすり、ウイルスを細胞培地用液体培地に回収し、CK細胞を用いた方法によりウイルス力価を測定した。また、細菌を含む混合液を付着させた試験用キャリアでは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)1mlを含むビニール製の袋(ストマッカーバッグ)に入れて、試験用キャリア表面を良くこすり、ウイルスをPBSに回収し、残存ウイルスをDHL寒天平板で測定した。
なお、実験は3回実施し、その平均で評価した。
結果を表2~5に示す。
表2は、ニューカッスル病ウイルス(NVD)の結果であり、表3は、IBVの結果であり、表4は、大腸菌の結果であり、表5は、サルモネラ菌(サルモネラ・エンテリティディス)の結果である。
なお、表中の数値(対象、二酸化塩素ガス処置群)は、ウイルス力価または細菌力価であり、ニューカッスル病ウイルス(NVD)のウイルス力価は1mlあたりの50%組織培養感染量(TCID50/ml)の指数(10)で示しており、IBVのウイルス力価は1mlあたりのプラーク形成単位(PFU/ml)の指数(10)で示しており、細菌力価は1mlあたりのコロニー形成単位(CFU/ml)の指数(10)で示している。

Figure 2024037185000003

Figure 2024037185000004

Figure 2024037185000005

Figure 2024037185000006
表2に示すように、二酸化塩素ガス(860ppb)と接触させれば、プラスチック板やガラス板上のNDVを1時間で不活性化できることが確認された。また、レーヨンシート上のNVDであっても3時間二酸化塩素ガス(810ppb)と反応させれば不活性化できることが確認された。
表3に示すように、二酸化塩素ガス(860ppb)と接触させれば、プラスチック板やガラス板、レーヨンシート上のIBVを1時間で不活性化できることが確認された。
表4に示すように、二酸化塩素ガス(1400ppb)と接触させれば、プラスチック板やガラス板上の大腸菌を1時間で検出限界未満にまで不活性化できることが確認された。また、レーヨンシート上の大腸菌であっても、2時間二酸化塩素ガス(1730ppb)と反応させれば検出限界未満にまで不活性化できることが確認された。
表5に示すように、二酸化塩素ガス(1455ppb)と接触させれば、レーヨンシート上のサルモネラ菌を1時間で検出限界未満にまで不活性化できることが確認された。また、プラスチック板やガラス板上のサルモネラ菌は2時間二酸化塩素ガス(1730ppb)と反応させても減少指数3以上(1000分の1以下の低下)には不活性化ができなかったが、ある程度不活性化できることをっ確認した。
以上のように、二酸化塩素ガスを接触させるだけでも、物質表面上に付着したニューカッスル病ウイルス(NVD)、IBV、大腸菌、サルモネラ菌(サルモネラ・エンテリティディス)を不活化できることが確認された。
<飲料水試験>
二酸化塩素を含むに飲料水(二酸化塩素含有飲料水)を鶏に供給することによって、鶏の飼育を効率よく実施できることを確認した。
実験では、養鶏農場の飼育鶏群に二酸化塩素含有飲料水を一定期間飲用させ、鶏が気道を介してまたは経口的に感染する各種の病原菌の感染予防に効果がみられるか否か(感染予防効果)、また、生産性の改善効果が得られるか(生産性の改善効果)、について確認した。
二酸化塩素含有飲料水は、二酸化塩素製剤( CREINS(登録商標))を貯水タンクに投与して調製した。本実験では、貯水タンク投下時において、貯留タンク内の二酸化塩素含有飲料水中の二酸化塩素濃度が1.0~0.5ppmとなるように二酸化塩素製剤を貯水タンクに投与した。
なお、給水ラインの末端、つまり、鶏が飲む二酸化塩素含有飲料水の二酸化塩素濃度を、二酸化塩素測定器を用いて検査したところ、貯留タンク内の二酸化塩素含有飲料水中の二酸化塩素濃度が1.0ppmとした場合には、概ね0.5ppm以上の二酸化塩素濃度が検出された。一方、一部の給水ラインでは、二酸化塩素含有飲料水の供給開始当初、つまり、二酸化塩素製剤の貯水タンクへの投与を開始した初期には、貯留タンク内の二酸化塩素含有飲料水中の二酸化塩素濃度が1.0ppmであっても、鶏が飲む二酸化塩素含有飲料水の二酸化塩素濃度が0.1ppm~0.2ppmと低い濃度となっていた。しかし、この給水ラインでも、二酸化塩素製剤を貯水タンクに投与を開始してから時間が経過するにつれ、鶏が飲む二酸化塩素含有飲料水の二酸化塩素の検出濃度が高くなった。これは、給水ライン内に存在していたバイオフィルムなどの有機物がなくなって、飲水ラインが清浄になった結果と考えられる。つまり、給水ラインの壁に付着したバイオフィルムなどの有機物の除去に二酸化塩素含有飲料水に含まれる二酸化塩素が寄与していたため、二酸化塩素の検出濃度が低くなっていたが、バイオフィルムなどの有機物が除去されたことによって、二酸化塩素の検出濃度が高くなったと考えられる。つまり、二酸化塩素含有飲料水を鶏に供給することによって、給水ラインの洗浄とバイオフィルムの形成抑止効果が得られることも確認された。
二酸化塩素含有飲料水供給による、1)感染予防効果、および、2)生産性の改善効果は以下のように評価した。
1)感染予防効果
感染予防効果は、二酸化塩素含有飲料水を供給した期間中における、Mycoplasma galisepticum(Mg)の感染抗体の変化によって確認した。
飼養鶏では、Mg感染による呼吸器病などの発生による生産性低下を防止するため、全農場に導入する大鄒には、Mgの生ワクチンおよび不活化ワクチンを、L-K方式により接種しており、大雛移動時には、Mgの高い抗体価を保有している。成鶏農場に導入後の成鶏期にはワクチンは接種しないため、成鶏期のMgのワクチン抗体は低下傾向となる。
一方、農場ではMgの汚染が少なからずあることから、農場に導入後の成鶏群ではMgによる自然感染が持続していると想定される。この現象から、一般に、導入後の成鶏群はMgの自然感染が続いていることになり、Mg抗体価は、通常上昇することとなる。
もし、鶏が二酸化塩素含有飲料水を連続飲用することにより、鶏に侵入するMg菌が殺滅されると、Mgの感染が抑制され、感染による抗体が上昇しない。つまり、二酸化塩素含有飲料水の連続飲用により、Mgの感染が抑制された状態が生じたと考えることができる。
そこで、二酸化塩素含有飲料水を供給した期間中の感染抗体価の変化の有無を判定して、二酸化塩素含有飲料水の効果を判断した。つまり、抗体価の上昇があった場合には自然感染が発生しており二酸化塩素含有飲料水の効果が低いと判断し、抗体価が低下した場合には感染を防止しており二酸化塩素含有飲料水の効果が得られたと判断した。
なお、Mg抗体価として、今回は「MgのHI抗体」を選択した。その理由は、定期的な衛生検査(ウイルス、細菌、原虫などの病原菌の汚染や感染状況を把握する方法)で、直接病原菌の感染状況をみることができた病原菌は、成鶏ではワクチンの接種がないMg・HI抗体の変化が最も適していたこと、一方、他の検査項目はワクチン抗体の獲得状況と自然感染で生じる各病原菌の感染の有無の判別が難しかったためである。
2)生産性の改善効果
生産性の改善効果は、第一試験では、二酸化塩素含有飲料水を供給した期間中におけるHH(ヘンハウス)産卵量、飼料要求率、死亡率により確認した。
第二試験では、二酸化塩素含有飲料水を供給した期間(5か月)と二酸化塩素含有飲料水を供給していない期間(5か月)について、対象期間中の平均減耗率および平均生存率、対象期間前後の減耗率、対象期間中の平均HD(ヘンディ)産卵率、平均飼料要求率により、生産性の改善効果を確認した。
1)感染予防効果
結果を図2に示す。図2(A)、(B)に示すように、二酸化塩素含有飲料水を供給する前後のMg・HI抗体の状態を比較すると、Mg抗体価の低下群が多いことから、二酸化塩素含有飲料水を引用させることによってMgの感染を抑制できる可能性があることが確認された、
2)生産性の改善効果
<第一試験>
結果を図3に示す。図3に示すように、二酸化塩素含有飲料水を供給した群(2021年)と、二酸化塩素含有飲料水を供給していない群(2020年)では、HH産卵量と、飼料要求率、および死亡率のいずれの生産成績においても、二酸化塩素含有飲料水を供給した群(2021年)に良好な結果が得られた。
<第二試験>
結果を表6に示す。表6に示すように、二酸化塩素含有飲料水を供給した群(投与群)の対象期間中における減耗率が0.09%であり、二酸化塩素含有飲料水を供給していない群(非投与群)の対象期間中の減耗率の0.12%と比べて低いことが確認できる。
また、投与群の対象期間中における減耗率は、対象期間前後の減耗率と比較しても低く、二酸化塩素含有飲料水を供給することによる効果が確認できる。また、投与群の対象期間後の減耗率は、対象期間前の減耗率よりわずかに高くなっているが、非投与群における対象期間前の減耗率に対する対象期間後の減耗率の増加(0.19%→0.27%)と比較して非常に少ない。このことから、二酸化塩素含有飲料水を供給することによって、投与後においても減耗率を抑制する効果が得られることが確認できる。
さらに、平均HD産卵率や平均飼料要求率も、投与群が被投与群に比べて良好であることが確認できる。

Figure 2024037185000007
以上のように、二酸化塩素含有飲料水を供給することによって、感染予防効果と生産性の改善効果を得ることができ、しかも、給水ラインの洗浄効果も得られることが確認された。
<燻蒸試験>
二酸化塩素ガスを利用した畜舎の燻蒸効果を確認した。
使用した畜舎は家禽飼育用の畜舎(ウインドウレス鶏舎)であり、内容積が6547mのものである。この畜舎で、肉用鶏を飼育したのち、全数を畜舎から排出し、燻蒸を実施した。
この畜舎に供給する燻蒸ガス、つまり、二酸化塩素ガスは、ポリバケツと、気泡発生器、エアーコンプレッサー、工事用の扇風機からなる燻蒸ガス発生装置(主装置と副装置)によって発生させた。なお、主装置と副装置は、使用するポリバケツの大きさ、つまり、発生させる二酸化塩素ガスの量が異なるものであり、実験では、主装置2基と副装置2基を畜舎内に設置した。
上記燻蒸ガス発生装置によって以下のようにして、畜舎内を燻蒸した。
まず、ポリバケツ(主装置では90L、副装置では40L)内に水を貯留し(主装置では70L、副装置では30L)、この貯留した水に二酸化塩素製剤を投入(主装置では72個、副装置では30個)して二酸化塩素が溶解した溶解液を形成する。
その後、エアーコンプレッサーのホースの先端に接続された気泡発生器を溶解液に浸漬し、エアーコンプレッサーから気泡発生器に気体を供給し、溶解液から二酸化塩素ガスを発生させた。なお、コンブレッサーの出力空気圧は0.2MPaとした。
また、ポリバケツの近くには工事用の扇風機を設置し、首振り状態で作動させて発生した二酸化塩素ガスを周囲に放散させた。
上記方法で燻蒸したのち、畜舎内の各部の拭き取り検査を行い、燻蒸前と燻蒸後の一般細菌および大腸菌の状況を確認した。
比較として、従来のホルマリンによる燻蒸を実施した場合について、燻蒸前と燻蒸後の一般細菌および大腸菌の状況も確認した。
なお、燻蒸の前には、従来のホルマリンによる燻蒸を実施する場合と同様の方法で畜舎内を洗浄した。ただし、通常のホルマリン燻蒸前の洗浄で使用するヘルミンによる洗浄は、二酸化塩素ガスによる燻蒸およびホルマリンによる燻蒸のいずれでも実施していない。
結果を表7に示す。
なお、残存菌数は、燻蒸前の各菌の数に対する燻蒸後(燻蒸開始から4時間後)に残っている各菌の割合であり、減少菌数は、燻蒸前の各菌の数に対する燻蒸による減少した各菌の割合である。

Figure 2024037185000008
表7に示すように、一般細菌では、二酸化塩素ガスによる燻蒸によりホルマリン燻蒸と同等程度の除菌効果を得られることが確認された。また、大腸菌では、二酸化塩素ガスによる燻蒸がホルマリン燻蒸よりも有効であることが確認された。
なお、燻蒸開始後の鶏含内の二酸化塩素ガス濃度を検知管で測定したところ、畜舎内のどの位置でも二酸化塩素ガス濃度が25ppm以上となっており、十分な殺菌効果を発揮できる濃度となっていることが確認された。
また、燻蒸開始から3時間を経過すると、畜舎内のどの位置でも二酸化塩素ガス濃度が10ppm以上となっており、作業者が畜舎内で作業ができる状況となっていることが確認された。
本実施形態の家畜の育成方法は、鶏や豚、牛などを飼育する方法として適している。

Claims (10)

  1. 家畜および/または家畜が飼育される施設内に、二酸化塩素を含有する二酸化塩素含有液体および/または二酸化塩素ガスを含有する二酸化塩素含有気体を供給する
    ことを特徴とする家畜の育成方法。
  2. 前記二酸化塩素含有液体として家畜の飲料水となる二酸化塩素含有飲料水を調製し、
    該二酸化塩素含有飲料水を家畜に与える
    ことを特徴とする請求項1記載の家畜の育成方法。
  3. 家畜用飲水供給設備を通して前記二酸化塩素含有飲料水を家畜に供給する
    ことを特徴とする請求項2記載の家畜の育成方法。
  4. 前記二酸化塩素含有飲料水の二酸化塩素濃度が、0.2~0.3ppmである
    ことを特徴とする請求項2または3記載の家畜の育成方法。
  5. 前記二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含有気体を畜舎内に噴霧する
    ことを特徴とする請求項1記載の家畜の育成方法。
  6. 畜舎内に前記二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含有気体を、畜舎内の二酸化塩素濃度が10~100ppmとなるように噴霧する
    ことを特徴とする請求項5記載の家畜の育成方法。
  7. 前記二酸化塩素含有液体を添加した二酸化塩素含有水を調製し、該二酸化塩素含有水を畜舎内の洗浄終了後に、該畜舎の床および/または壁に流す
    および/または
    前記二酸化塩素含有気体によって施設内を燻蒸する
    ことを特徴とする請求項1記載の家畜の育成方法。
  8. 前記二酸化塩素含有水が貯留された消毒槽および/または前記二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含有気体を噴き出す噴霧装置を施設入り口に設置し、施設入り口から入退出する人および物体を前記二酸化塩素含有水および/または二酸化塩素含有気体に接触させる
    ことを特徴とする請求項1記載の家畜の育成方法。
  9. 二酸化塩素を含有する二酸化塩素含有液体である
    ことを特徴とする家畜用飼料。
  10. 前記二酸化塩素含有液体は、
    二酸化塩素濃度が、0.2~0.3ppmである
    ことを特徴とする請求項9記載の家畜用飼料。
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