JP2024034052A - 重金属イオン吸着材及び重金属イオン吸着材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭を用いた吸着材であるにもかかわらず水中の重金属イオンを高い効率で除去することが可能な重金属イオン吸着材を提供する。また、このような重金属イオン吸着材の製造方法を提供する。【解決手段】麻炭及び麻炭を保持するナノ繊維を有する複合ナノ繊維を備えることを特徴とする重金属イオン吸着材。ナノ繊維の主成分は、ポリアクリロニトリル(PAN)であることが好ましい。また、麻炭は、平均粒径がナノスケールの粒状体であることが好ましい。【選択図】図4

Description

本発明は、重金属イオン吸着材及び重金属イオン吸着材の製造方法に関する。
現在、様々な物質を吸着するために活性炭が広く使用されている。活性炭を用いた吸着材としては、粒状の活性炭を繊維等に担持させたものが知られている(特許文献1~3参照。)。また、繊維状の活性炭を用いたものも知られている(特許文献4,5参照。)。このような吸着材によれば、流体中の微量物質を活性炭で吸着することにより除去することが可能となる。
特開平3-228814号公報 特開平9-173429号公報 特開2007-107117号公報 特開昭63-137721号公報 特開平3-202108号公報
ところで、近年の急激な産業の成長や世界人口の増加に伴い、水質汚染に関する懸念が深刻になってきている。特に重金属は生物に対して有害なものが多く生体濃縮性も高いため、水中への重金属の放出は重大な環境汚染や健康被害を引き起こすおそれがある。また、重金属の多くはイオン化して水中に溶け込むため、除去が困難である。このため、水中の重金属イオンを高い効率で除去するための吸着材が求められている。
しかしながら、活性炭を用いた吸着材は、重金属イオンの吸着には不向きであった。これは、非極性物質である活性炭と電荷を帯びている重金属イオンとの相性が悪いことに起因する。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、炭を用いた吸着材であるにもかかわらず水中の重金属イオンを高い効率で除去することが可能な重金属イオン吸着材を提供することを目的とする。また、このような重金属イオン吸着材の製造方法を提供することも目的とする。
本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、植物である麻から製造した炭、つまり麻炭(hemp charcoal)をナノ繊維(ナノファイバー)と組み合わせることにより、水中の重金属イオンを高い効率で除去することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の重金属イオン吸着材は、麻炭及び前記麻炭を保持するナノ繊維を有する複合ナノ繊維を備えることを特徴とする。
本発明の重金属イオン吸着材の製造方法は、麻炭を準備する麻炭準備工程と、前記麻炭とナノ繊維の原料となる樹脂とを含む紡糸溶液を作製する紡糸溶液作製工程と、電気紡糸溶液を電界紡糸して、粒状の前記麻炭及び前記麻炭を保持する前記ナノ繊維を形成する電界紡糸工程と含むことを特徴とする。
本発明の重金属イオン吸着材は、麻炭及び麻炭を保持するナノ繊維を有する複合ナノ繊維を備えるため、後述する実施例に示すように、水中の重金属イオンを高い効率で除去することが可能な重金属イオン吸着材となる。
本発明の重金属イオン吸着材の製造方法は、麻炭準備工程と、紡糸溶液作製工程と、電界紡糸工程とを含むため、水中の重金属イオンを高い効率で除去することが可能な重金属イオン吸着材を製造可能な方法となる。
実施形態に係る重金属イオン吸着材1を説明するために示す図である。 実施形態に係る重金属イオン吸着材の製造方法のフローチャートである。 実施形態における電界紡糸装置100の模式図である。 実施例に係る重金属イオン吸着材AのSEM画像である。 実施例に係る重金属イオン吸着材BのSEM画像である。 実施例に係る重金属イオン吸着材CのSEM画像である。 実施例に係る重金属イオン吸着材のエネルギー分散型X線分析(EDX分析)の結果を示すグラフである。 実施例に係る重金属イオン吸着材のX線回折分析(XRD分析)の結果を示すグラフである。 実施例に係る重金属イオン吸着材のフーリエ変換赤外分光分析(FTIR分光分析)の結果を示すグラフである。 実施例に係る重金属イオン吸着材の引っ張り試験の結果(応力-ひずみ曲線)を示すグラフである。 実施例に係る重金属イオン吸着材の熱質量分析(TGA)の結果を示すグラフである。 実施例に係る重金属イオン吸着材の重金属イオン(Ni2+)吸着能力を示すグラフである。 実施例に係る重金属イオン吸着材の重金属イオン(Co2+)吸着能力を示すグラフである。 実施例に係る重金属イオン吸着材の重金属イオン(Cu2+)吸着能力を示すグラフである。
以下、本発明の重金属イオン吸着材及び重金属イオン吸着材の製造方法について、図に示す実施形態に基づいて説明する。重金属イオン吸着材を説明するために示す図面は模式図であり、必ずしも実際の構造や構成を厳密に反映したものではない。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明に必須であるとは限らない。
[実施形態]
1.重金属イオン吸着材1
まず、実施形態に係る重金属イオン吸着材1について説明する。
図1は、実施形態に係る重金属イオン吸着材1を説明するために示す図である。図1(a)は重金属イオン吸着材1の全体図(斜視図)であり、図1(b)は重金属イオン吸着材1の細部を拡大して示す図である。
実施形態に係る重金属イオン吸着材1は、図1に示すように、麻炭12及び麻炭12を保持するナノ繊維14を有する複合ナノ繊維10を備える。重金属イオン吸着材1は、複合ナノ繊維10からなる不織布とも表現でき、シート状の形状からなる。重金属イオン吸着材1は、吸着の対象となる重金属イオンが、銅イオン、ニッケルイオン及びコバルトイオンのうち少なくとも1つである。
麻炭12は、植物である麻から製造した炭である。本明細書における「麻炭」は、植物である麻を炭化させたものであって、炭化後に多孔質化のためのいわゆる賦活処理(活性化)を実施していないもののことをいう。麻炭12の原料としては、特に麻の茎を用いることが好ましい。
麻炭12は、炭化した麻を粉砕して粒状体としたものである。麻炭12は、平均粒径がナノスケール(おおよそ1000nm以下)の粒状体であることが一層好ましい。また、複合ナノ繊維10における麻炭12の重量は、ナノ繊維14の重量の3%~10%の範囲内にあることが好ましい。
なお、図1(b)においては、麻炭12の形状や大きさが全て同じであるように図示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。麻炭12は植物である麻を炭化させた後に粉砕したものであるため、実際には麻炭12の形状や大きさは一つ一つ異なっている。
ナノ繊維14としては種々の材料からなるものを用いることができる。ナノ繊維14は、主成分がポリアクリロニトリルであることが好ましく、ポリアクリロニトリルからなることが一層好ましい。本明細書における「ナノ繊維」とは、ナノスケール(おおよそ1000nm以下)の平均繊維径を有する繊維のことを言う。
2.重金属イオン吸着材の製造方法
次に、実施形態に係る重金属イオン吸着材の製造方法について説明する。
図2は、実施形態に係る重金属イオン吸着材の製造方法のフローチャートである。
図3は、実施形態における電界紡糸装置100の模式図である。
実施形態に係る重金属イオン吸着材の製造方法は、図2に示すように、麻炭準備工程S10と、紡糸溶液作製工程S20と、電界紡糸工程S30とを含む。以下、各工程について説明する。
麻炭準備工程S10は、麻炭12を準備する工程である。実施形態1における麻炭準備工程においては、麻炭12として、麻の茎の部分を500℃~1000℃で8時間~10時間焼成し、その後自然鎮火による鎮火処理を行ったものを準備する。麻炭準備工程S10は、麻の茎の部分を500℃~1000℃で8時間~10時間焼成する工程と、自然鎮火による鎮火処理を行う工程とを含んでいてもよい。なお、麻炭12は、粉砕して粒状体にして用いる。麻炭準備工程S10においては、麻炭12に対して賦活処理(活性化)は実施しない。
紡糸溶液作製工程S20は、麻炭12とナノ繊維14の原料となる樹脂とを含む紡糸溶液を作製する工程である。均一な溶液を作製するという観点からは、紡糸溶液作製工程S20においては、麻炭12をナノ繊維14の原料となる樹脂を含む溶液に分散させて紡糸溶液を作製することが好ましい。
電界紡糸工程S30は、紡糸溶液を電界紡糸して、麻炭12及び麻炭12を保持するナノ繊維14を有する複合ナノ繊維10を形成する工程である。電界紡糸工程S30は、例えば、図3に示すような電界紡糸装置100を用いて実施することができる。
電界紡糸装置100は、キャピラリーチップ112(ノズル)を取り付けたシリンジ110と、回転式のコレクター120と、電源装置130とを備える。電界紡糸装置100を用いた場合、複合ナノ繊維10の集合体である重金属イオン吸着材1は、コレクター120上に堆積された不織布として得ることができる。
3.実施形態に係る重金属イオン吸着材1及び重金属イオン吸着材の製造方法の効果
実施形態1に係る重金属イオン吸着材1は、麻炭12及び麻炭12を保持するナノ繊維14を有する複合ナノ繊維10を備えるため、後述する実施例に示すように、水中の重金属イオンを高い効率で除去することが可能な重金属イオン吸着材となる。
また、実施形態に係る重金属イオン吸着材1によれば、ナノ繊維14の主成分がポリアクリロニトリルである場合には、機械的特性及び熱安定性に優れ、かつ、水中の重金属イオンを除去するのに適する重金属イオン吸着材となる。
また、実施形態に係る重金属イオン吸着材1によれば、麻炭12は、平均粒径がナノスケールの粒状体である場合には、麻炭12の比表面積を大きくして吸着能力を高くすることが可能となる。
また、実施形態に係る重金属イオン吸着材1によれば、複合ナノ繊維10における麻炭12の重量がナノ繊維14の重量の3%以上である場合には、重金属イオンの吸着を担う麻炭12の量を十分に多くして十分な吸着能力を確保することが可能となる。また、複合ナノ繊維10における麻炭12の重量がナノ繊維14の重量の10%以下である場合には、麻炭12の量が多すぎることに起因して複合ナノ繊維10の構造が過剰に不均一となることを抑制することが可能となる。
また、実施形態に係る重金属イオン吸着材1によれば、吸着の対象となる重金属イオンが、銅イオン、ニッケルイオン及びコバルトイオンのうち少なくとも1つであるため、重金属イオンの中でも生体への影響が大きいものを吸着により除去することが可能となる。
実施形態に係る重金属イオン吸着材の製造方法は、麻炭準備工程S10と、紡糸溶液作製工程S20と、電界紡糸工程S30とを含むため、水中の重金属イオンを高い効率で除去することが可能な重金属イオン吸着材1を製造可能な方法となる。
また、実施形態に係る重金属イオン吸着材の製造方法によれば、麻炭準備工程S10においては、麻炭12として、麻の茎の部分を、500℃~1000℃で8時間~10時間焼成したものを準備するため、水中の重金属イオンを一層高い効率で除去することが可能な重金属イオン吸着材1を製造可能となる。
[実施例]
実施例においては、本発明の重金属イオン吸着材を実際に製造し、その物性や効果を確認した。
(1)実施例で用いた原料、試薬及び装置
まず、実施例で用いた原料、試薬及び装置について説明する。なお、汎用の実験器具及び実験装置については、特段の記載を行わない。
ポリアクリロニトリル(粉末状、平均分子量150,000。実施例においては「PAN」と記載する。)は、シグマアルドリッチ社(米国)を通じて購入したものを用いた。N,N-ジメチルホルムアミド(実施例においては「DMF」と記載する。)は、和光純薬工業株式会社を通じて購入したものを用いた。
SEM画像の取得には、日本電子株式会社(JEOL)のJSM-6010LAを用いた。加速電圧は20kVとした。
X線回折分析(XRD分析)には、株式会社リガクのMiniFlex300を用いた。電圧は30kVに設定し、電流は10mAに設定した。回折は2θ=5°~80°の範囲で、0.05°刻みで測定した。
フーリエ変換赤外分光分析(FTIR分光分析)には、株式会社島津製作所のIR Prestige-21を用いた。
機械的特性(引っ張り強さ)の測定には、株式会社エー・アンド・デイのテンシロン万能材料試験機RTC-1250Aを用いた。
熱質量分析(TGA)には、株式会社リガクのThermo-plus TG 8120を用いた。熱質量分析は、大気雰囲気、静的モードで25℃~500℃(温度上昇速度:10℃/分)の範囲で実施した。
誘導結合プラズマ(ICP)質量分析には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社のICP発光分光分析装置SPS3100を用いた。
(2)実施例に係る重金属イオン吸着材の製造方法
次に、実施例に係る重金属イオン吸着材の製造方法について説明する。
実施例に係る重金属イオン吸着材の製造方法は、実施形態に係る重金属イオン吸着材の製造方法と基本的に同様であり、麻炭準備工程と、紡糸溶液作製工程と、電界紡糸工程とを含む。
実施例における麻炭準備工程では、株式会社ジャパン・ヘンプ・クリエーションで製造された麻炭(麻の茎を原料とするもの)を、株式会社GUE TRADINGを通じて入手した。当該麻炭(平均粒径300nm~340nm)は実験にそのまま用いることができる状態であったため、入手後に特別な処理等は行わなかった。
紡糸溶液作製工程では、麻炭を、PANを含むDMF溶液に分散させて紡糸溶液を作製した。まず、PANを、濃度が8wt%となるようにDMFに投入し、60℃で8時間攪拌した。次に、攪拌しながら粉末状の麻炭を投入し、その後4時間、超音波処理をおこなった。紡糸溶液は、PANに対し3%の麻炭を添加したもの、PANに対し5%の麻炭を添加したもの及びPANに対し10%の麻炭を添加したものの3種類を作製した。
電界紡糸工程では、前述した3種類の紡糸溶液から、複合ナノ繊維からなる不織布状の重金属イオン吸着材を製造した。電界紡糸は、実施形態における電界紡糸装置100と同様の構成を有する装置により実施した。シリンジは容量20mlのものを用い、キャピラリーチップは内径0.5mmのものを用いた。印加電圧は15kVとし、キャピラリーチップとコレクターとの間の距離は14cmとした。紡糸溶液の流量は0.5ml/hとした。
以上の方法により、PANに対し3%の麻炭を添加して製造した重金属イオン吸着材(以下、重金属イオン吸着材Aという。)、PANに対し5%の麻炭を添加して製造した重金属イオン吸着材(以下、重金属イオン吸着材Bという。)及びPANに対し10%の麻炭を添加して製造した重金属イオン吸着材(以下、重金属イオン吸着材Cという。)をそれぞれ製造した。実施例に係る重金属イオン吸着材A、重金属イオン吸着材B及び重金属イオン吸着材Cは、厚さ約0.4mmのシート状の形状を有する不織布であった。
(3)観察及び実験の結果及び考察
1.SEMによる観察
図4は、実施例に係る重金属イオン吸着材AのSEM画像である。図4(a)~図4(c)はそれぞれ倍率が異なるSEM画像である。
図5は、実施例に係る重金属イオン吸着材BのSEM画像である。図5(a)~図5(c)はそれぞれ倍率が異なるSEM画像である。
図6は、実施例に係る重金属イオン吸着材CのSEM画像である。図6(a)~図6(c)はそれぞれ倍率が異なるSEM画像である。
まず、3%HC/PANの重金属イオン吸着材Aにおいては、複合ナノ繊維の繊維径が全体的に均一であり、長く滑らかであることが確認できた(図4(a)~図4(c)参照。)。重金属イオン吸着材Aにおける複合ナノ繊維の平均繊維径は、約205nmであった。次に、5%HC/PANの重金属イオン吸着材Bにおいては、複合ナノ繊維の直径が増加し、繊維径の均一性が減少して各所にビーズ状の構造が見られた(図5(a)~図5(c)参照。)。このような構造はナノ繊維の表面積を大きくするため、重金属イオンの吸着に有利になると考えられる。重金属イオン吸着材Bにおける複合ナノ繊維の平均繊維径は、約214nmであった。次に、10%HC/PANの重金属イオン吸着材Cにおいては、麻炭の増加により複合ナノ繊維の表面がさらに粗くなったことが確認できた(図6(a)~図6(c)参照。)。これらの結果から、麻炭を添加する量が多くなるにしたがって、複合ナノ繊維の表面の滑らかさが低下する傾向にあることが確認できた。重金属イオン吸着材Cにおける複合ナノ繊維の平均繊維径は、約232nmであった。
2.エネルギー分散型X線分析(EDX分析)
図7は、実施例に係る重金属イオン吸着材のエネルギー分散型X線分析(EDX分析)の結果を示すグラフである。図7(a)は重金属イオン吸着材Aについてのグラフであり、図7(b)は重金属イオン吸着材Bについてのグラフであり、図7(c)は重金属イオン吸着材Cについてのグラフである。
重金属イオン吸着材を構成する元素とその濃度を調べるため、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)を実施した(図7参照。)。重金属イオン吸着材A~CについてEDX分析を実施したところ、全てのサンプルから炭素(C)及びカリウム(K)のピークが検出された。
3.X線回折分析(XRD分析)
図8は、実施例に係る重金属イオン吸着材のX線回折分析(XRD分析)の結果を示すグラフである。図8において(A)で示すのは重金属イオン吸着材Aのグラフであり、(B)で示すのは重金属イオン吸着材Bのグラフであり、(C)で示すのは重金属イオン吸着材Cのグラフである。
重金属イオン吸着材の結晶構造を調べるため、X線回折分析(XRD分析)を実施した(図8参照。)。重金属イオン吸着材A~CについてXRD分析を実施したところ、3%HC/PANの重金属イオン吸着材A及び5%HC/PANの重金属イオン吸着材Bにおいては、麻炭(HC)に起因するピークは明確には観測できなかった。これは、麻炭の量が少ないことに起因すると考えられる。一方、3%HC/PANの重金属イオン吸着材A及び5%HC/PANの重金属イオン吸着材BにおいてPANに特徴的なピーク(17°付近及び28°付近のピーク)が検出されたが、これは、麻炭の添加がPANの機械的強度や柔軟性のもととなっている特有の結晶構造を変化させていないことを表している。10%HC/PANの重金属イオン吸着材Cにおいては、44°付近にグラファイト層の存在を示すピークが見られた。これは、PANに麻炭を担持することに成功したことを表している。
4.フーリエ変換赤外分光分析(FTIR分光分析)
図9は、実施例に係る重金属イオン吸着材のフーリエ変換赤外分光分析(FTIR分光分析)の結果を示すグラフである。図9において(A)で示すのは重金属イオン吸着材Aのグラフであり、(B)で示すのは重金属イオン吸着材Bのグラフであり、(C)で示すのは重金属イオン吸着材Cのグラフである。
図9に示すように、2243.7cm-1付近のピークはCN三重結合の伸縮振動に関連するものであり、1451.1cm-1付近のピークはCH結合の変角振動に関連するものである。2933.1cm-1付近及び1617.9cm-1付近の吸収帯は、それぞれCH結合及びCO二重結合の伸縮振動に関連するものである。これらはPANの存在を示すものである。一方、880cm-1付近及び2800~3000cm-1にいくつかの強度が低いピークが見られる。前者は芳香族の振動モードに関連するものであり、後者はCH、CH及びCHといった構造に関連するものであるため、これらのピークの存在はPANからなるナノ繊維の表面に麻炭が固定されていることを表している。
5.機械的特性(引っ張り強さ)
図10は、実施例に係る重金属イオン吸着材の引っ張り試験の結果(応力-ひずみ曲線)を示すグラフである。図10において(A)で示すのは重金属イオン吸着材Aのグラフであり、(B)で示すのは重金属イオン吸着材Bのグラフであり、(C)で示すのは重金属イオン吸着材Cのグラフである。
図10に示すように、引っ張り試験の結果、10%HC/PANの重金属イオン吸着材Cが最も強度が高く、3%HC/PANの重金属イオン吸着材Aが最も強度が低いという結果になった。この結果は、麻炭の添加が重金属イオン吸着材の強度を高くしていることを表している。
6.熱質量分析(TGA)
図11は、実施例に係る重金属イオン吸着材の熱質量分析(TGA)の結果を示すグラフである。図11において(A)で示すのは重金属イオン吸着材Aのグラフであり、(B)で示すのは重金属イオン吸着材Bのグラフであり、(C)で示すのは重金属イオン吸着材Cのグラフである。
図11に示すように、熱質量分析の結果、麻炭の添加量が増加するにしたがって、重金属イオン吸着材の熱安定性が向上することが確認できた。
7.重金属イオンの吸着能力
図12は、実施例に係る重金属イオン吸着材の重金属イオン(Ni2+)吸着能力を示すグラフである。図12(a)は重金属イオン吸着材A~Cの吸着能力の差異を示すグラフであり、図12(b)は重金属イオン吸着材A~Cの吸着能力と比較例に係る重金属イオン吸着材D(後述。)の吸着能力との差異を示すグラフである。
図13は、実施例に係る重金属イオン吸着材の重金属イオン(Co2+)吸着能力を示すグラフである。図13(a)は重金属イオン吸着材A~Cの吸着能力の差異を示すグラフであり、図13(b)は重金属イオン吸着材A~Cの吸着能力と比較例に係る重金属イオン吸着材Dの吸着能力との差異を示すグラフである。
図14は、実施例に係る重金属イオン吸着材の重金属イオン(Cu2+)吸着能力を示すグラフである。図14(a)は重金属イオン吸着材A~Cの吸着能力の差異を示すグラフであり、図14(b)は重金属イオン吸着材A~Cの吸着能力と比較例に係る重金属イオン吸着材Dの吸着能力との差異を示すグラフである。
図12~図14において(A)で示すのは重金属イオン吸着材Aのグラフであり、(B)で示すのは重金属イオン吸着材Bのグラフであり、(C)で示すのは重金属イオン吸着材Cのグラフであり、(D)で示すのは重金属イオン吸着材Dのグラフである。
重金属イオンの吸着能力については、誘導結合プラズマ(ICP)質量分析により実施した。製造した重金属イオン吸着材A~Cについて、ニッケル(II)イオン(Ni2+。以下、単に「ニッケルイオン」という。)、コバルト(II)イオン(Co2+。以下、単に「コバルトイオン」という。)及び銅(II)イオン(Cu2+。以下、単に「銅イオン」という。)に対する吸着能力を測定した。まず、事前にそれぞれの重金属イオンについて、10ppm、20ppm、50ppm及び100ppmの標準溶液を調製し、検量線を作製した。実際の実験に用いる重金属イオン溶液の濃度は10ppmとした。重金属イオン溶液は、実験に用いる重金属イオン吸着材の種類と浸漬時間ごとに50ml準備した。重金属イオン吸着材A~Cは、1つの重金属イオン溶液ごとに6mgを実験に用いた。重金属イオン吸着材A~Cを重金属イオン溶液に浸漬する時間は、30分、1時間、3時間、8時間、16時間とした。吸着能力についてはmg/g単位で測定した。決定係数Rは、ニッケルイオンについて0.9968、コバルトイオンについて0.9976、銅イオンについて0.9971であった。
また、本発明の範囲内にある重金属イオン吸着材A~Cと比較するため、比較例に係る重金属イオン吸着材Dとして麻炭を有しないナノ繊維からなるものを準備し、重金属イオン吸着材A~Cと同様の実験をおこなった。重金属イオン吸着材Dは、麻炭を用いない点以外は、上記した「(2)実施例に係る重金属イオン吸着材の製造方法」と同様の方法により製造した。
その結果、ニッケルイオン及びコバルトイオンについては、重金属イオン吸着材が含有する麻炭の量に応じて吸着能力が高くなる傾向が観察できた(図12(a)及び図13(a)参照。)。銅イオンについては、重金属イオン吸着材A~Cの全てが吸着開始からすぐに約95mg/g以上の吸着能力を発揮し、時間経過に伴い銅イオンをさらに吸着可能であるという優秀な吸着能力を発揮した(図14(a)参照。)。なお、銅イオンについては、重金属イオン吸着材が含有する麻炭の量と吸着能力との間に明確な関連性は見られなかったが、重金属イオン吸着材A~Cの吸着能力の差異は全体的に小さかった。
また、実施例に係る重金属イオン吸着材A~Cは、比較例に係る重金属イオン吸着材Dと比較して、実験に用いた全ての重金属イオンについて顕著に高い吸着能力を有することが確認できた(図12(b)、図13(b)及び図14(b)参照。)。
以上の実験結果から、本発明の重金属イオン吸着材は、水中の重金属イオンを高い効率で除去することが可能であることが確認できた。
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
(1)上記実施形態において記載した構成要素の形状等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
(2)上記実施形態においては、重金属イオン吸着材は複合ナノ繊維からなる不織布のみから構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、強度を担保するための基材等をさらに備えていてもよい。
(3)本発明の重金属イオン吸着材は、麻炭以外の物質(他の吸着材等)をさらに含んでいてもよい。
(4)上記実施形態においては、重金属イオン吸着材1は、吸着の対象となる重金属イオンが、銅イオン、ニッケルイオン及びコバルトイオンのうち少なくとも1つであるとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の重金属イオン吸着材は、銅イオン、ニッケルイオン及びコバルトイオン以外の重金属イオンも吸着することが可能である。
1…重金属イオン吸着材、10…複合ナノ繊維、12…麻炭、14…ナノ繊維、100…電界紡糸装置

Claims (7)

  1. 麻炭及び前記麻炭を保持するナノ繊維を有する複合ナノ繊維を備えることを特徴とする重金属イオン吸着材。
  2. 前記ナノ繊維は、主成分がポリアクリロニトリル(PAN)であることを特徴とする請求項1に記載の重金属イオン吸着材。
  3. 前記麻炭は、平均粒径がナノスケールの粒状体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の重金属イオン吸着材。
  4. 前記複合ナノ繊維における前記麻炭の重量は、前記ナノ繊維の重量の3%~10%の範囲内にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の重金属イオン吸着材。
  5. 吸着の対象となる重金属イオンが、銅イオン、ニッケルイオン及びコバルトイオンのうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の重金属イオン吸着材。
  6. 麻炭を準備する麻炭準備工程と、
    前記麻炭とナノ繊維の原料となる樹脂とを含む紡糸溶液を作製する紡糸溶液作製工程と、
    電気紡糸溶液を電界紡糸して、前記麻炭及び前記麻炭を保持する前記ナノ繊維を有する複合ナノ繊維を形成する電界紡糸工程と含むことを特徴とする重金属イオン吸着材の製造方法。
  7. 前記麻炭準備工程においては、前記麻炭として、麻の茎の部分を500℃~1000℃で8時間~10時間焼成し、その後自然鎮火による鎮火処理を行ったものを準備することを特徴とする請求項6に記載の重金属イオン吸着材の製造方法。
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