JP2024033953A - 全固体二次電池用バインダー、全固体二次電池用バインダー組成物、全固体二次電池用スラリー、全固体二次電池用固体電解質シートおよびその製造方法、ならびに全固体二次電池およびその製造方法 - Google Patents

全固体二次電池用バインダー、全固体二次電池用バインダー組成物、全固体二次電池用スラリー、全固体二次電池用固体電解質シートおよびその製造方法、ならびに全固体二次電池およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】密着性およびイオン伝導性に優れた全固体二次電池を作製でき、かつ、全固体二次電池のサイクル寿命特性を向上させることができる全固体二次電池用バインダーを提供する。【解決手段】本発明に係る全固体二次電池用バインダーは、芳香族ビニル化合物に基づく芳香族ビニル単位と、共役ジエン化合物に基づく共役ジエン単位とを有し、下記一般式(1)で表される化合物と有機金属化合物との反応生成物である変性開始剤由来の官能基を含む、共役ジエン系共重合体(A)を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、全固体二次電池用バインダー、全固体二次電池用バインダー組成物、全固体二次電池用スラリー、全固体二次電池用固体電解質シートおよびその製造方法、ならびに全固体二次電池およびその製造方法に関する。
近年、電子機器の駆動用電源として、高電圧かつ高エネルギー密度を有する蓄電デバイスが要求されている。このような蓄電デバイスとしては、リチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタなどが期待されている。
このような蓄電デバイスに使用される電極は、活物質と、バインダーとして機能する重合体とを含有する組成物(蓄電デバイス電極用スラリー)を集電体の表面に塗布および乾燥させることにより製造される。バインダーとして使用される重合体に要求される特性としては、活物質同士の結合能力および活物質と集電体との密着能力が挙げられる。また、塗布・乾燥された組成物塗膜(以下、「活物質層」ともいう。)を裁断する際、活物質層から活物質の微粉などが脱落しない粉落ち耐性などを挙げることができる。このようなバインダー材料が良好な密着性を発現させて、該バインダー材料に起因する電池の内部抵抗を低減させることで、蓄電デバイスに良好な充放電特性を付与することができる。
なお、上記の活物質同士の結合能力および活物質と集電体との密着能力、並びに粉落ち耐性については、性能の良否がほぼ比例関係にあることが経験上明らかになっている。したがって、本明細書では、以下これらを包括して「密着性」という用語を用いて表す場合がある。
現在、自動車などの駆動電源や家庭用蓄電池などに用いるため、大型リチウムイオン電池の研究が盛んに行われている。現在汎用されているリチウムイオン二次電池には、電解液が用いられているものが多いが、この電解液を固体電解質に置き換えることによって、構成材料の全てを固体とする全固体二次電池の開発が進められている。
全固体二次電池は、高いイオン伝導性を示す固体電解質を用いるため、液漏れや発火の危険性がなく、安全性や信頼性に優れている。また、全固体二次電池は、電極のスタックによる高エネルギー密度化にも適している。具体的には、活物質層と固体電解質層とを並べて直列化した構造を持つ電池とすることができ、電池セルを封止する金属パッケージ、電池セルをつなぐ銅線やバスバーを省略することもできるので、電池のエネルギー密度を大幅に高めることができる。また、高電位化が可能な正極材料との相性の良さなども利点として挙げられる。このように、全固体二次電池は、安全性と高エネルギー密度、長寿命を兼ね備えた究極の電池として期待されている。
その一方で、全固体二次電池を製造する際の課題も顕在化している。具体的には、電解質としての固体電解質と活物質との接触面積を増大させるために、それらを混合した混合物の加圧成型体とした場合には、該加圧成型体は硬くて脆い加工性に乏しいものとなる。また、活物質はリチウムイオンの吸蔵・放出により体積変化を伴うため、前記加圧成型体では、充放電サイクルに伴って活物質が剥離するなどし、顕著な容量低下が発生するなどの問題を有していた。そこで、成型性を高めるために、前記混合物にバインダー成分をさらに加えて成型性を向上させる技術が検討されている(例えば、特許文献1~3参照)。
特開平11-86899号公報 特公平7-87045号公報 国際公開第2009/107784号
上記特許文献1~3に開示された高分子化合物からなるバインダー成分を加えることで成型性は向上すると考えられる。しかしながら、固体電解質の表面が高分子化合物に覆われることで、固体電解質間のイオン伝導が阻害されやすいことに加え、昨今の全固体二次電池に要求される高レベルのサイクル寿命特性を満足することができず、さらなる改善が要求されていた。
本発明に係る幾つかの態様は、密着性およびイオン伝導性に優れた全固体二次電池を作製でき、かつ、全固体二次電池のサイクル寿命特性を向上させることができる全固体二次電池用バインダーを提供する。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下のいずれかの態様として実現することができる。
本発明に係る全固体二次電池用バインダーの一態様は、
芳香族ビニル化合物に基づく芳香族ビニル単位と、共役ジエン化合物に基づく共役ジエン単位とを有し、
下記一般式(1)で表される化合物と有機金属化合物との反応生成物である変性開始剤由来の官能基を含む、
共役ジエン系共重合体(A)を含有する。
Figure 2024033953000001
(上記式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基、炭素数2~30のヘテロアルキニル基、炭素数5~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、または炭素数3~30のヘテロ環基である。Rは、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数5~20のアリレン基である。ここで、置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。Rは、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基、炭素数2~30のヘテロアルキニル基、炭素数5~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~30のヘテロ環基、または下記一般式(1a)または下記一般式(1b)で表される官能基である。nは、1~5の整数であり、Rのうち少なくとも一つは、下記一般式(1a)または下記一般式(1b)で表さ
れる官能基であり、nが2~5の整数の場合、複数のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
Figure 2024033953000002
(上記一般式(1a)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリレン基である。ここで、置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基で置換されるかまたは非置換の炭素数1~20のアルキレン基である。Rは、水素、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基、炭素数2~30のヘテロアルキニル基、炭素数5~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、または炭素数3~30のヘテロ環基である。Xは、N、OまたはS原子であり、XがOまたはSの場合、Rは存在しない。)
Figure 2024033953000003
(上記一般式(1b)中、R10は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリレン基である。ここで、置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。R11およびR12は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基、炭素数2~30のヘテロアルキニル基、炭素数5~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~30のヘテロ環基である。)
前記全固体二次電池用バインダーの一態様において、
前記共役ジエン系共重合体(A)が、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される変性剤由来官能基を更に含むことができる。
Figure 2024033953000004
(上記式(2)中、R20は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基である。R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である。R23は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基である。R24は、水素、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のアルキル基で置換された2価、3価もしくは4価のアルキルシリル基である。aは2または3の整数である。cは1~3の整数であり、bは0~2の整数で、かつ、b+c=3である。)
Figure 2024033953000005
(上記式(3)中、AおよびAは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基である。R25~R28は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基である。L~Lは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基で置換された2価、3価もしくは4価のアルキルシリル基、または炭素数1~20のアルキル基である。)
前記全固体二次電池用バインダーの一態様において、
前記共役ジエン系共重合体(A)の結合スチレン含量が5~50%であることができる。
前記全固体二次電池用バインダーの一態様において、
前記共役ジエン系共重合体(A)中の官能基の含有量が、0.0005モル/kg以上0.2モル/kg以下であることができる。
前記全固体二次電池用バインダーの一態様において、
前記共役ジエン系共重合体(A)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が3以下であることができる。
本発明に係る全固体二次電池用バインダー組成物の一態様は、
前記いずれかの態様の全固体二次電池用バインダーと、液状媒体(B)とを含有し、
前記液状媒体(B)が、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン類、エステル類およびエーテル類よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
前記全固体二次電池用バインダー組成物の一態様において、
前記共役ジエン系共重合体(A)が前記液状媒体(B)に溶解してなるものであることができる。
本発明に係る全固体二次電池用スラリーの一態様は、
前記態様の全固体二次電池用バインダー組成物と、固体電解質とを含有する。
前記全固体二次電池用スラリーの一態様において、
前記固体電解質として、硫化物系固体電解質または酸化物系固体電解質を含有することができる。
本発明に係る全固体二次電池の一態様は、
正極活物質層と、固体電解質層と、負極活物質層とを少なくとも備え、
前記正極活物質層、前記固体電解質層、および前記負極活物質層の少なくともいずれか1層が、前記態様の全固体二次電池用スラリーを塗布および乾燥させて形成された層である。
本発明に係る全固体二次電池用固体電解質シートの一態様は、
基材上に、前記態様の全固体二次電池用スラリーを塗布および乾燥させて形成された層
を有する。
本発明に係る全固体二次電池の一態様は、
正極活物質層と、固体電解質層と、負極活物質層とを少なくとも備え、
前記正極活物質層、前記固体電解質層、および前記負極活物質層の少なくともいずれか1層が、前記態様の全固体二次電池用固体電解質シートで形成された層である。
本発明に係る全固体二次電池用固体電解質シートの製造方法の一態様は、
前記態様の全固体二次電池用スラリーを基材上に塗布および乾燥させる工程を含む。
本発明に係る全固体二次電池の製造方法の一態様は、
前記態様の全固体二次電池用固体電解質シートの製造方法を介して全固体二次電池を製造する。
本発明に係る全固体二次電池用バインダーによれば、密着性およびイオン伝導性に優れた全固体二次電池を作製でき、かつ、サイクル寿命特性に優れた全固体二次電池が提供される。
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸~」とは、「アクリル酸~」または「メタクリル酸~」を表す。
本明細書において、「X~Y」のように記載された数値範囲は、数値Xを下限値として含み、かつ、数値Yを上限値として含むものとして解釈される。
1.全固体二次電池用バインダー
本発明の一実施形態に係る全固体二次電池用バインダーは、芳香族ビニル化合物に基づく芳香族ビニル単位と、共役ジエン化合物に基づく共役ジエン単位とを有し、下記一般式(1)で表される化合物と有機金属化合物との反応生成物である変性開始剤由来の官能基を含む、共役ジエン系共重合体(A)を含有する。
以下、共役ジエン系共重合体(A)の構造、製造方法、物性の順に説明する。
1.1.共役ジエン系共重合体(A)の構造
共役ジエン系共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物に基づく芳香族ビニル単位と、共役ジエン化合物に基づく共役ジエン単位とを有し、片末端に下記一般式(1)で表される化合物と有機金属化合物との反応生成物である変性開始剤由来の官能基を含む。
Figure 2024033953000006
上記式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基、炭素数2~30のヘテロアルキニル基、炭素数5~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、または炭素数3~30のヘテロ環基である。Rは、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数5~20のアリレン基である。ここで、置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。Rは、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基、炭素数2~30のヘテロアルキニル基、炭素数5~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~30のヘテロ環基、または下記一般式(1a)または下記一般式(1b)で表される官能基である。nは、1~5の整数であり、Rのうち少なくとも一つは、下記一般式(1a)または下記一般式(1b)で表される官能基であり、nが2~5の整数の場合、複数のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
Figure 2024033953000007
上記一般式(1a)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリレン基である。ここで、置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基で置換されるかまたは非置換の炭素数1~20のアルキレン基である。Rは、水素、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基、炭素数2~30のヘテロアルキニル基、炭素数5~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、または炭素数3~30のヘテロ環基である。Xは、N、OまたはS原子であり、XがOまたはSの場合、Rは存在しない。
Figure 2024033953000008
上記一般式(1b)中、R10は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリレン基である。ここで、置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。R11およびR12は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基、炭素数2~30のヘテロアルキニル基、炭素数
5~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~30のヘテロ環基である。
共役ジエン系共重合体(A)は、他の末端に、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される変性剤由来官能基を更に含むことが好ましい。
Figure 2024033953000009
上記式(2)中、R20は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基である。R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である。R23は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基である。R24は、水素、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のアルキル基で置換された2価、3価もしくは4価のアルキルシリル基である。aは2または3の整数である。cは1~3の整数であり、bは0~2の整数で、かつ、b+c=3である。
Figure 2024033953000010
上記式(3)中、AおよびAは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基である。R25~R28は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基である。L~Lは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基で置換された2価、3価もしくは4価のアルキルシリル基、または炭素数1~20のアルキル基である。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタリン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレン、3-(2-ピロリジノエチル)スチレン、4-(2-ピロリジノエチルエチル)スチレン、および3-(2-ピロリジノ-1-エチルメチルエチル)-α-メチルスチレン等が挙げられ、これらの中から選択される1種以上を使用することができる。
共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、2,3-ジ-メチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-ハロ-1,3-ブタジエン等が挙げられ、これらの中から選択される1種以上を使用することができる。
また、共役ジエン系共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物に基づく芳香族ビニル単位と、共役ジエン化合物に基づく共役ジエン単位とともに、炭素数1~10のジエン系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってもよい。前記ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、前記共役ジエン化合物とは異なるジエン系単量体から由来された繰り返
し単位であってもよい。前記共役ジエン化合物とは異なるジエン系単量体としては、例えば1,2-ブタジエンが挙げられる。共役ジエン系共重合体(A)がジエン系単量体をさらに含む共重合体である場合、ジエン系単量体由来の繰り返し単位の含有割合は、好ましくは0超~1質量%、より好ましくは0超~0.1質量%、さらにより好ましくは0超~0.01質量%、特に好ましくは0超~0.001質量%である。ジエン系単量体由来の繰り返し単位の含有割合が前記範囲内にあると、ゲル生成を防止できる場合がある。
共役ジエン系共重合体(A)は、ランダム共重合体であることが好ましい。共役ジエン系共重合体(A)がランダム共重合体である場合、各物性間のバランスに優れるという効果がある。ここで、ランダム共重合体とは、共重合体を構成する繰り返し単位が無秩序に配列されるものを意味する。
共役ジエン系共重合体(A)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布曲線がユニモーダル形態を有していてもよい。これは、連続式重合によって重合された重合体で示される分子量分布であって、共役ジエン系共重合体(A)が均一な特性を有することを意味する。
一般に、共役ジエン系共重合体(A)を回分式重合方法で製造して変性反応させる場合に製造された変性共役ジエン系共重合体の分子量分布曲線は、バイモーダル(bimodal)以上の多峰の分子量分布曲線を有する。具体的には、回分式重合である場合、原料が全て投入された後に重合反応が開始され、多数の開始剤によって発生する開始点から鎖の成長が同時に起こり得る。したがって、各鎖の成長が概して均一となり、これによって製造された重合体鎖の分子量が一定して分子量分布が相当狭いユニモーダル形態となる。しかしながら、変性剤を投入して変性反応させる場合には「変性がなされない場合」と「変性およびカップリングされる場合」との2種類の場合の数が発生し得る。これにより、重合体鎖の間で分子量の差が大きい2つのグループが形成されるので、分子量分布曲線のピークが2つ以上の多峰の分子量分布曲線を形成するようになる。一方、連続式重合方法の場合、回分式重合とは異なり、反応の開始と原料の投入が連続的に行われるので、反応が開始される開始点と生成される時点とが異なる。これにより、重合開始が反応初期から開始されたもの、反応中間に開始されたもの、反応末期に開始されたものなどで多様となるので、重合反応を完了した際には多様な分子量を有する重合体鎖が製造される。したがって、分子量の分布を示す曲線で特定ピークが優勢に表れないので、単一なピークとして分子量分布曲線が広く表れ、反応末期に重合の開始された鎖がカップリングされても、反応初期に重合が開始された鎖の分子量と類似し得るので、分子量分布の多様性は同一に維持される。
ただし、回分式重合方法で共役ジエン系共重合体(A)を製造して変性する場合にも、ユニモーダル形態を有するように変性条件を調節することはできる。しかしながら、この場合には、重合体全体がカップリングされないものであるか、重合体全体がカップリングされたものでなければならず、それ以外の場合には、ユニモーダルの分子量分布曲線を示すことができない。
また、前述のとおり、回分式重合方法で製造されたにもかかわらず、共役ジエン系共重合体(A)の分子量分布曲線がユニモーダルの分布を示す場合で、重合体全部がカップリングされた場合は、全て同等水準の分子量を有する重合体のみ存在することで加工性が劣ることがあり、相互作用することができる官能基がカップリングによって減少することにより配合物性が劣ることがある。一方、重合体全部がカップリングされない場合には、加工時に重合体末端官能基同士の相互作用が優勢となるので、加工性が非常に劣ることがある。したがって、回分式重合方法で重合体を製造しながらユニモーダルの分子量分布曲線を有するように調節する場合、製造された共役ジエン系共重合体(A)の加工性および配
合物性が低下する問題があり、特に加工性が顕著に低下し得る。
共役ジエン系共重合体(A)のカップリング可否は、カップリング数(CouplingNumber、C.N.)で確認することができる。ここで、カップリング数は、重合体の変性後、変性剤に存在する重合体が結合することができる官能基の数に依存的な数値である。すなわち、重合体鎖間のカップリングがなく、末端変性のみなされた重合体と、一つの変性剤に多数の重合体鎖がカップリングされた重合体との割合を示すものであって、1≦C.N.≦Fの範囲を有することができる。ここで、Fは、変性剤において、活性重合体末端と反応することができる官能基の数を意味するものである。言い換えれば、カップリング数が1である共役ジエン系共重合体(A)は、重合体鎖の全てがカップリングされていないことを意味し、カップリング数がFである共役ジエン系共重合体(A)は、重合体鎖の全てがカップリングされていることを意味する。
したがって、共役ジエン系共重合体(A)は、分子量分布曲線がユニモーダル形態でありながらも、カップリング数が1よりは大きく、用いられた変性剤の官能基の数よりは小さいものであってよい(1<C.N.<F)。
共役ジエン系共重合体(A)のSi含量は、重量基準で、好ましくは50ppm以上であり、より好ましくは100ppm以上であり、さらに好ましくは100ppm~10,000ppmであり、特に好ましくは100ppm~5,000ppmである。Si含量が前記範囲内にある共役ジエン系共重合体(A)は、引張特性および粘弾性特性などの機械的物性に優れる場合がある。前記Si含量は、共役ジエン系共重合体(A)内に存在するSi原子の含量を意味する。前記Si原子は、変性剤由来官能基から由来されたものであってよい。
また、共役ジエン系共重合体(A)のN含量は、重量基準で、好ましくは50ppm以上であり、より好ましくは100ppm以上であり、さらに好ましくは100ppm~10,000ppmであり、特に好ましくは100ppm~5,000ppmである。N含量が前記範囲内にある共役ジエン系共重合体(A)は、引張特性および粘弾性特性などの機械的物性に優れる場合がある。前記N含量は、共役ジエン系共重合体(A)内に存在するN原子の含量を意味する。前記N原子は、変性剤由来官能基から由来されたものであってよい。
Si含量は、ICP分析方法を介して測定されたものである。前記ICP分析方法では、誘導結合プラズマ発光分析器(ICP-OES;Optima7300DV)を用いて測定することができる。測定方法は以下の通りである。
まず、試料約0.7gを白金るつぼに入れ、濃硫酸(98重量%)約1mLを入れ、300℃で3時間加熱して、試料を電気炉で、下記ステップ1~3のプログラムで灰化を進めた。
1)ステップ1:初期温度0℃、昇温速度180℃/時間、保持時間180℃で1時間。2)ステップ2:初期温度180℃、昇温速度85℃/時間、保持時間370℃で2時間。3)ステップ3:初期温度370℃、昇温速度47℃/時間、保持時間510℃で3時間。
次いで、残留物に濃硝酸(48重量%)1mL、濃フッ酸(50重量%)20μLを加え、白金るつぼを密封して30分以上振ってから、試料にホウ酸1mLを入れて0℃で2時間以上保管した後、超純水30mLに希釈し、灰化を進めたものを測定した。
N含量は、NSX分析方法を介して測定されたものである。前記NSX分析方法では、極微量窒素定量分析器(NSX-2100H)を用いて測定することができる。測定方法は以下の通りである。
極微量窒素定量分析器(Horizontalfurnace、PMT&Nitrogendetector)をつけてArを250mL/min、Oを350mL/min、オゾナイザー300mL/minでキャリアガス流量を設定し、ヒーターを800℃に設定した後、約3時間待機して分析器を安定化させた。分析器が安定化された後、Nitrogenstandard(AccuStandardS-22750-01-5ml)を用いて検量線の範囲5ppm、10ppm、50ppm、100ppmおよび500ppmの検量線を作成して各濃度に該当するAreaを得た後、濃度対Areaの割合を用いて直線を作成した。その後、試料20mg入りのセラミックボートを前記分析器のAutosamplerに置いて測定してAreaを得た。得られた試料のAreaと前記検量線を用いてN含量を計算した。
NSX分析方法に用いられる試料は、スチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した共役ジエン系共重合体(A)の試料であって、残留モノマーおよび残留変性剤を除去した試料であってもよい。また、前記試料にオイルが添加されていれば、オイルが抽出(除去)された後の試料であってもよい。
また、100℃で測定された、共役ジエン系共重合体(A)のムーニー緩和率は、好ましくは0.7以上であり、より好ましくは0.7以上3.0以下であり、さらに好ましくは0.7以上2.5以下であり、特に好ましくは0.7以上2.0以下である。
ここで、ムーニー緩和率は、同一量の変性に対する反応で表されるストレスの変化を示すもので、ムーニー粘度計を用いて測定したものである。具体的には、ムーニー緩和率は、Monsanto社のMV2000EのLargeRotorを用いて100℃およびRotorSpeed2±0.02rpmの条件で、重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテンを作動させてトルクを印加しつつムーニー粘度を測定し、以後トルクが緩みながら現れるムーニー粘度の変化の傾き値を測定して絶対値として得た。
ムーニー緩和率は、共役ジエン系共重合体(A)の分岐構造の指標として用いることができる。例えば、ムーニー粘度が同等である重合体を比べる場合、分岐が多いほどムーニー緩和率が小さくなるので、分岐度の指標として用いることができる。
共役ジエン系共重合体(A)のムーニー粘度は、100℃で、好ましくは30以上であり、より好ましくは40~150であり、特に好ましくは40~140である。共役ジエン系共重合体(A)のムーニー粘度が前記範囲内にあると、加工性および生産性に優れることがある。
また、粘度検出器を備えたゲル透過クロマトグラフィー光散乱法測定によって求められる、共役ジエン系共重合体(A)の収縮因子(g’)は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.0以上3.0以下であり、特に好ましくは1.0以上1.3以下である。
ゲル透過クロマトグラフィー光散乱法測定によって求められる収縮因子(g’)は、同一の絶対分子量を有する線形の重合体の固有粘度に対する分岐を有する重合体の固有粘度の割合であって、分岐を有する重合体の分岐構造の指標、すなわち分岐が占める割合の指標として用いることができる。例えば、収縮因子の減少に伴って当該重合体の分岐数は増加する傾向がある。よって、絶対分子量が同等な重合体を比べる場合、分岐が多いほど収縮因子が小さくなるので、分岐度の指標として用いることができる。
収縮因子は、粘度検出器を備えたゲルクロマトグラフィー光散乱測定装置を用いてクロ
マトグラムを測定し、溶液粘度および光散乱法に基づいて算出したものである。具体的には、ポリスチレン系ゲルを充填剤にした、カラム2本が連結された光散乱検出器および粘度検出器が備えられたGPC光散乱測定装置を用いて、絶対分子量と、各絶対分子量に該当する固有粘度とを得て、前記絶対分子量に該当する線形重合体の固有粘度を算出した後、各絶対分子量に対応する固有粘度の比として収縮因子を求めた。収縮因子は、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラム2本が連結された光散乱検出器および粘度検出器が備えられたGPC光散乱測定装置(ViscotekTDAmax、Malvern社製)に試料を注入し、光散乱検出器から絶対分子量を得て、光散乱検出器と粘度検出器から絶対分子量に対する固有粘度[η]を得た後、下記式(4)から前記絶対分子量に対する線形重合体の固有粘度[η]を算出し、各絶対分子量に対応する固有粘度の比([η]/[η])の平均値を収縮因子として示した。このとき、溶離液は、テトラヒドロフランとN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンの混合溶液(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン20mLをテトラヒドロフラン1Lに混合させて調整する)を用いて、カラムはPLOlexix(Agilent社製)を用い、オーブンの温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で測定し、試料は10mLのTHFに重合体15mgを溶解させて準備した。
[η]=10-3.8830.771 ・・・・・(4)
(上記式(4)中、Mは絶対分子量である。)
共役ジエン系共重合体(A)の1,2-ビニル結合含有量は、好ましくは5質量%~60質量%であり、より好ましくは10質量%~55質量%であり、特に好ましくは15質量%~50質量%である。ここで、1,2-ビニル結合含有量は、芳香族ビニル化合物に基づく芳香族ビニル単位と共役ジエン化合物に基づく共役ジエン単位とを有する共役ジエン系共重合体(A)100質量%に対して、1,4-添加ではなく1,2-添加された共役ジエン系単量体の含有量を意味する。
一方、変性開始剤は、上記一般式(1)で表される化合物と有機金属化合物とを反応させて生成されたものであって、重合を開始しながら、同時に重合されて形成された重合体鎖の一末端に官能基を導入させることができるものであることが好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物は、式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数2~10のアルキニル基であることが好ましい。Rは、単結合、または非置換の炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましい。Rは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、または上記一般式(1a)または(1b)で表される官能基であることが好ましい。
上記一般式(1a)中、Rは、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましい。RおよびRは、それぞれ独立して、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましい。Rは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、または炭素数3~20のヘテロ環基であることが好ましい。
上記一般式(1b)中、R10は、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましい。R11およびR12は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、または炭素数3~20のヘテロ環基であることが好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物は、下記式(1-1)~(1-3)で表される化合
物であることがより好ましい。
Figure 2024033953000011
Figure 2024033953000012
Figure 2024033953000013
有機金属化合物は、有機アルカリ金属化合物であることが好ましい。有機アルカリ金属化合物としては、例えば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物、有機ルビジウム化合物、および有機セシウム化合物等が挙げられ、これらの中から選択される1種以上を使用することができる。
有機金属化合物の具体例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-デシルリチウム、tert-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、および4-シクロペンチルリチウム等が挙げられ、これらの中から選択される1種以上を使用することができる。
また、変性剤は、共役ジエン系共重合体(A)の残りの一末端を変性させるための変性剤である。変性剤の具体例としては、シリカ親和性変性剤が挙げられる。シリカ親和性変性剤は、変性剤に用いられる化合物内にシリカ親和性官能基を含有するものであってもよい。シリカ親和性官能基は、充填剤、特にシリカ系充填剤との親和性に優れるため、シリカ系充填剤と変性剤由来官能基との間の相互作用が可能な官能基であってもよい。
変性剤は、上記一般式(2)で表される化合物であってもよい。上記式(2)中、R20は、単結合、または炭素数1~5のアルキレン基であることが好ましい。R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。R23は、単結合、または炭素数1~5のアルキレン基であることが好ましい。R24は、水素、炭素数1~5のアルキル基、または炭素数1~5のアルキル基で置換された4価のアルキルシリル基であることが好ましい。aは、2または3の整数であることが好ましい。cは1~3の整数であることが好ましく、bは0~2の整数であることが好ましく、このときb+c=3であることが好ましい。
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、N,N-ビス(3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン、N,N-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン、N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン、N,N-ジエチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン、N,N-ジエチル-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン、トリ(トリメトキシシリル)アミン、トリ(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-1,1,1-トリメチルシランアミン、および3-(ジメトキシ(メチル)シリル)-N,N-ジエチルプロパン-1-アミン等が挙げられ、これらの中から選択される1種以上を使用することができる。
また、変性剤は、上記一般式(3)で表される化合物であってもよい。上記式(3)中、AおよびAは、それぞれ独立して、1~10のアルキレン基であることが好ましい。R25~R28は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。L~Lは、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基で置換された4価のアルキルシリル基、または炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジ-メチルプロパン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジ-メチルプロパン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジ-メチルプロパン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルプロパン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルプロパン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルプロパン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルメタン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルメタン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルメタン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルメタン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルメタン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルメタン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルメタン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルメタン-1-アミン)、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルメタン-1-アミン)、N,N’-((1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミン)、N,N’-((1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミン)、N,N’-((1
,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミン)、N,N’-((1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-フェニルシランアミン)、N,N’-((1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-フェニルシランアミン)、およびN,N’-((1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-フェニルシランアミン等が挙げられ、これらの中から選択される1種以上を使用することができる。
前述の通り、共役ジエン系共重合体(A)は、特定構造を有し、特有の分子量分布図および形態を有してもよい。このような共役ジエン系共重合体(A)の構造は、収縮因子、ムーニー緩和率、カップリング数のような物性で表されてもよい。前記分子量分布図とその形態は、分子量分布値と分子量分布曲線の形態、そしてカップリング数で発現されてもよい。変性剤と変性開始剤による両末端変性は、構造および分子量分布図とその形態に影響を与えることができる。このような重合体の構造を表現するパラメーターと分子量分布に関する特徴は、後述の製造方法によって満たされ得る。
1.2.共役ジエン系共重合体(A)の製造方法
以下、共役ジエン系共重合体(A)の製造方法について説明する。
共役ジエン系共重合体(A)の製造方法は、炭化水素溶媒中で、変性開始剤の存在下で共役ジエン化合物および芳香族ビニル化合物を重合し、前記変性開始剤由来官能基が導入された活性重合体を製造するステップ(S1)と、前記ステップ(S1)で製造された活性重合体と上記一般式(2)または(3)で表される変性剤を反応またはカップリングさせるステップ(S2)とを含む。前記ステップ(S1)は、2器以上の重合反応器で連続的に実施され、前記重合反応器のうち第1反応器における重合転化率は50%以下である。前記変性開始剤は、上記一般式(1)で表される化合物と有機金属化合物とを反応させて製造された反応生成物である。
炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、およびキシレン等が挙げられ、これらの中から選択される1種以上を使用することができる。また、共役ジエン化合物および芳香族ビニル化合物については、上記の通りである。
変性開始剤は、単量体の合計100gに対し、好ましくは0.01mmol~10mmol、より好ましくは0.05mmol~5mmol、さらに好ましくは0.1mmol~2mmol、さらにより好ましくは0.1mmol~1mmol、特に好ましくは0.15mmol~0.8mmolの割合で用いることができる。
前記ステップ(S1)の重合は、アニオン重合であることが好ましい。例えば、アニオンによる成長重合反応によって重合末端にアニオン活性部位を有するリビングアニオン重合が挙げられる。また、前記ステップ(S1)の重合は、昇温重合、等温重合または定温重合(断熱重合)であってもよい。定温重合とは、変性開始剤を投入した後、任意に熱を加えずにそれ自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法である。昇温重合とは、変性開始剤を投入した後、任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法である。等温重合とは、変性開始剤を投入した後、熱を加えて熱を増加させるか、熱を奪って重合物の温度を一定に維持する重合方法である。
また、前記ステップ(S1)において、前記共役ジエン化合物以外に炭素数1~10のジエン系化合物をさらに添加して重合してもよい。かかる場合、長時間の運転時、反応器の壁面にゲルが形成されることを防止できることがある。前記ジエン系化合物としては、1,2-ブタジエンが好ましい。
前記ステップ(S1)の重合は、好ましくは80℃以下、より好ましくは-20℃~80℃、さらに好ましくは0℃~80℃、さらにより好ましくは0℃~70℃、特に好ましくは10℃~70℃の温度範囲で実施される。この温度範囲内で重合体の分子量分布を狭く調節すると、物性の改善に優れることがある。
前記ステップ(S1)によって製造された活性重合体は、重合体アニオンと有機金属カチオンとが結合された重合体である。
この製造方法では、2器以上の重合反応器および変性反応器を含む複数の反応器で、連続式重合方法によって実施される。具体例としては、前記ステップ(S1)は、第1反応器を含めて2器以上の重合反応器で連続的に実施されてもよく、重合反応器の数は、反応条件および環境に応じて適宜決定されてもよい。連続式重合方法とは、反応器に反応物を連続的に供給し、生成された反応生成物を連続的に排出する反応工程を意味する。連続式重合方法による場合、生産性および加工性に優れ、製造される重合体の均一性に優れることがある。
重合反応器で連続的に活性重合体を製造する場合、第1反応器での重合転化率は、好ましくは50%以下であり、より好ましくは10%~50%であり、特に好ましくは20%~50%である。第1反応器での重合転化率が前記範囲内であると、重合体が形成されながら発生される副反応を抑制し、重合時に線形構造の重合体を誘導することができる。これにより、重合体の分子量分布を狭く調節することが可能なので、物性改善に優れることがある。ここで、重合転化率は、反応温度、反応器の滞留時間などによって調節することができる。
重合転化率は、重合体の重合時、重合体を含む重合体溶液相の固体濃度を測定して決定することができる。具体的には、重合体溶液を確保するために各重合反応器の出口にシリンダー型容器を取り付け、一定量の重合体溶液をシリンダー型容器に満たす。その後、前記シリンダー型容器を反応器から分離して重合体溶液が充填されているシリンダーの重量(A)を測定し、シリンダー型容器に充填されている重合体溶液をアルミニウム容器に移して重合体溶液が除去されたシリンダー型容器の重量(B)を測定する。そして、重合体溶液入りのアルミニウム容器を140℃のオーブンで30分間乾燥させ、乾燥した重合体の重量(C)を測定した後、下記式(5)によって重合転化率を計算することができる。
重合転化率(%)=重量(C)/[(重量(A)-重量(B))×各反応器の総固形分含量(重量%、TSC)] ・・・・・(5)
第1反応器で重合された重合物は、変性反応器の前の重合反応器まで順次移送され、最終的に重合転化率が95%以上となるまで重合が進められてもよい。また、第1反応器で重合された後、第2反応器、または第2反応器から変性反応器の前の重合反応器までの各反応器別の重合転化率は、分子量分布の調節のために各反応器別に適切に調節して実施されてもよい。
前記ステップ(S1)において、活性重合体の製造時、第1反応器での重合物滞留時間は、好ましくは1分~40分であり、より好ましくは1分~30分であり、特に好ましくは5分~30分である。第1反応器での重合物滞留時間が前記範囲内にあると、重合転化
率の調節が容易となる。これにより、重合体の分子量分布を狭く調節することができ、物性の改善に優れることがある。
本明細書において、「重合物」とは、ステップ(S1)またはステップ(S2)が完了し、活性重合体、または共役ジエン系共重合体(A)を収得するのに先立ち、ステップ(S1)の実施中、各反応器内で重合が実施されている重合体形態の中間体を意味し、反応器内で重合が実施されている重合転化率95%未満の重合体を意味する。
前記ステップ(S1)で製造された活性重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5未満であり、より好ましくは1.0以上1.5未満であり、特に好ましくは1.1以上1.5未満である。活性重合体の分子量分布が前記範囲内にあると、変性剤との変性反応またはカップリングを介して製造される共役ジエン系共重合体(A)の分子量分布が狭くなり、物性の改善に優れることがある。
前記ステップ(S1)の重合は、極性添加剤を含んで実施されてもよい。極性添加剤は、単量体の合計100gに対し、好ましくは0.001g~50g、より好ましくは0.001g~10g、特に好ましくは0.005g~0.1gの割合で添加することができる。また、極性添加剤は、変性開始剤総1mmolに対し、好ましくは0.001g~10g、より好ましくは0.005g~5g、特に好ましくは0.005g~4gの割合で添加することができる。
極性添加剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、2,2-ジ-(2-テトラヒドロフリル)プロパン、ジエチルエーテル、シクロアマルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンメチルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、tert-ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ソジウムメントレート、および2-エチルテトラヒドロフルフリルエーテル等が挙げられ、これらの中から選択される1種以上を使用することができる。これらの中でも、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ソジウムメントレート、または2-エチルテトラヒドロフルフリルエーテルが好ましい。極性添加剤を含む場合、共役ジエン化合物および芳香族ビニル化合物を共重合させる際に、これらの反応速度の差を補うことにより、ランダム共重合体を容易に形成するように誘導できることがある。
前記ステップ(S2)の反応またはカップリングは変性反応器で実施されてもよい。このとき、変性剤は、単量体の合計100gに対し、0.01mmol~10mmolの量で用いることができる。また、変性剤は、前記ステップ(S1)の変性開始剤1モルに対し、好ましくは1:0.1~10、より好ましくは1:0.1~5、特に好ましくは1:0.1~3のモル比で用いることができる。
また、変性剤は、変性反応器に投入されてもよい。前記ステップ(S2)は、変性反応器で実施されてもよい。また、変性剤は、前記ステップ(S1)で製造された活性重合体をステップ(S2)を実施するための変性反応器に移送するための移送部に投入されてもよい。また、移送部内で活性重合体と変性剤の混合によって反応またはカップリングが進められてもよい。
1.3.共役ジエン系共重合体(A)の物性
<結合スチレン含量>
共役ジエン系共重合体(A)の結合スチレン含量の下限値は、好ましくは5%であり、より好ましくは8%であり、特に好ましくは10%である。共役ジエン系共重合体(A)
の結合スチレン含量の上限値は、好ましくは50%であり、より好ましくは45%であり、特に好ましくは40%である。共役ジエン系共重合体(A)の結合スチレン含量が上記範囲内であると、電極の良好な密着性と柔軟性の両立を図ることができる。なお、結合スチレン含量は、H-NMR測定によって測定することができる。
<官能基>
共役ジエン系共重合体(A)は、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびスズ原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子(以下、「特定原子」ともいう。)を含む官能基を有していてもよい。共役ジエン系共重合体(A)が、官能基を有していることで、得られる全固体二次電池用バインダーが、集電体および固体電解質材料等に対して優れた密着性を発揮できる場合がある。
特定原子を含む官能基は、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子及びスズ原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基である限り、特に限定されない。官能基の具体例を以下に示す。窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびスズ原子のうち複数種の原子を有する官能基は、そのうちの1種の原子を含む官能基の例にのみ例示する。
窒素原子を含む官能基の具体例としては、無置換アミノ基、モノアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、環状アミノ基、ビス(トリアルキルシリル)アミノ基等のアミノ基、シアノ基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、イミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基等が挙げられる。これらの中でも、得られるバインダーの密着性の観点から、アミノ基が好ましく、無置換アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、環状アミノ基およびビス(トリアルキルシリル)アミノ基がより好ましく、無置換アミノ基、ジアルキルアミノ基および環状アミノ基がさらに好ましく、無置換アミノ基、ジメチルアミノ基及びN-ピペリジニル基が特に好ましい。
酸素原子を含む官能基の具体例としては、水酸基、エポキシ基、カルボキシ基、エーテル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、酸無水物基、ラクトン基が挙げられる。これらの中でも、得られるバインダーの密着性の観点から、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、および酸無水物基が好ましく、水酸基およびカルボキシル基がより好ましい。
ケイ素原子を含む官能基の具体例としては、例えば、無置換シリル基、アルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基等のアルコキシシリル基、アリールオキシシリル基、ジアリールオキシシリル基、トリアリールオキシシリル基等のアリールオキシシリル基等が挙げられる。これらの中でも、得られるバインダーの密着性の観点から、アルコキシシリル基が好ましく、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、およびトリアルコキシシリル基がより好ましく、モノメトキシシリル基、モノエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、ジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基、およびトリエトキシシリル基が特に好ましい。
ゲルマニウム原子を含む官能基の具体例としては、例えば、無置換ゲルミル基、アルコキシゲルミル基、ジアルコキシゲルミル基、トリアルコキシゲルミル基等のアルコキシゲルミル基、アリールオキシゲルミル基、ジアリールオキシゲルミル基、トリアリールオキシゲルミル基等のアリールオキシゲルミル基等が挙げられる。これらの中でも、得られるバインダーの密着性の観点から、アルコキシゲルミル基が好ましく、モノアルコキシゲルミル基、ジアルコキシゲルミル基、およびトリアルコキシゲルミル基がより好ましく、モノメトキシゲルミル基、モノエトキシゲルミル基、ジメトキシゲルミル基、ジエトキシゲ
ルミル基、トリメトキシゲルミル基、およびトリエトキシゲルミル基が特に好ましい。
スズ原子を含む官能基の具体例としては、例えば、無置換スタニル基、アルコキシスタニル基、ジアルコキシスタニル基、トリアルコキシスタニル基等のアルコキシスタニル基、アリールオキシスタニル基、ジアリールオキシスタニル基、トリアリールオキシスタニル基等のアリールオキシスタニル基等が挙げられる。これらの中でも、得られるバインダーの密着性の観点から、アルコキシスタニル基が好ましく、モノアルコキシスタニル基、ジアルコキシスタニル基、およびトリアルコキシスタニル基がより好ましく、モノメトキシスタニル基、モノエトキシスタニル基、ジメトキシスタニル基、ジエトキシスタニル基、トリメトキシスタニル基、およびトリエトキシスタニル基が特に好ましい。
共役ジエン系共重合体(A)中に上記特定原子を含む官能基を導入する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、(i)特定原子を含む変性剤を、重合反応後の重合体の活性末端に反応させて結合生成する方法、(ii)特定原子を含む重合開始剤を用いて、重合反応を行う方法、(iii)特定原子を含む単量体を共重合させる方法、(iv)特定原子を含む化合物を、重合体の一部と反応させる方法等が挙げられる。これらの特定原子を含む変性剤、重合開始剤、単量体、および化合物は、官能基を有するか、または官能基に変換され得る基を有する。
共役ジエン系共重合体(A)中の官能基の含有量は、好ましくは0.0005モル/kg以上0.2モル/kg以下であり、より好ましくは0.001モル/kg以上0.15モル/kg以下であり、特に好ましくは0.005モル/kg以上0.1モル/kg以下である。共役ジエン系共重合体(A)中の官能基の含有量が前記範囲にあると、引張特性および粘弾性特性などの機械的物性のバランスに優れる場合がある。
<重量平均分子量(Mw)>
共役ジエン系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1.0×10~2.0×10であり、より好ましくは1.0×10~1.5×10であり、特に好ましくは1.5×10~1.0×10である。重量平均分子量(Mw)が上記下限値以上であると、電極の密着性が向上しやすい傾向にある。重量平均分子量(Mw)が上記上限値以下であると、電極の柔軟性が保たれる傾向にある。なお、本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量のことをいう。
<数平均分子量(Mn)>
共役ジエン系共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、1.0×10~1.5×10であり、より好ましくは1.0×10~1.0×10であり、特に好ましくは1.5×10~5.0×10である。数平均分子量(Mn)が上記下限値以上であると、電極の密着性が向上しやすい傾向にある。数平均分子量(Mn)が上記上限値以下であると、電極の柔軟性が保たれる傾向にある。なお、本明細書において、「数平均分子量(Mn)」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量のことをいう。
<Mw/Mn>
共役ジエン系共重合体(A)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは1.0以上2.0以下であり、特に好ましくは1.1以上1.7以下である。Mw/Mnの値が前記範囲にあると、引張特性および粘弾性特性に優れ、各物性のバランスに優れる場合がある。
2.全固体二次電池用バインダー組成物
本発明の一実施形態に係る全固体二次電池用バインダー組成物は、上述の全固体二次電池用バインダーと、液状媒体(B)とを含有する。以下、本実施形態に係る全固体二次電池用バインダー組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。なお、全固体二次電池用バインダーについては、上述したので詳細な説明を省略する。
2.1.液状媒体(B)
液状媒体(B)としては、特に限定されないが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン等の脂環式炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、テトラリン等の芳香族炭化水素;3-ペンタノン、4-ヘプタノン、メチルヘキシルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酪酸ブチル、ブタン酸メチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸ブチル、酪酸ペンチル、ペンタン酸ペンチル、ヘキサン酸ペンチル、酪酸ヘキシル、ペンタン酸ヘキシル、ヘキサン酸ヘキシル等のエステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル類などを用いることができる。これらの溶媒は、1種単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
液状媒体(B)の含有割合は、共役ジエン系共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは100~10,000質量部であり、より好ましくは150~5,000質量部であり、さらに好ましくは200~4,000質量部であり、特に好ましくは300~3,000質量部である。液状媒体(B)の含有割合を前記範囲内とすることで、全固体二次電池用バインダー組成物およびこれから得られる全固体二次電池用スラリーを用いる際の作業性を向上させることができる。
本実施形態に係る全固体二次電池用バインダー組成物において、共役ジエン系共重合体(A)は、液状媒体(B)に溶解した状態であることが好ましい。「共役ジエン系共重合体(A)が液状媒体(B)に溶解する」とは、共役ジエン系共重合体(A)の液状媒体(B)に対する溶解度が、液状媒体(B)100gに対し1g以上であることを意味する。共役ジエン系共重合体(A)が液状媒体(B)に溶解した状態であることにより、柔軟性や密着性に優れる共役ジエン系共重合体(A)によって活物質の表面がコーティングされやすくなるので、充放電時における活物質の伸縮による脱落を効果的に抑制でき、良好な充放電耐久特性を示す全固体二次電池が得られやすい。また、スラリーの安定性が良好となり、スラリーの集電体への塗布性も良好となるため好ましい。
2.2.その他の添加剤
本実施形態に係る全固体二次電池用バインダー組成物は、必要に応じて、老化防止剤、増粘剤等の添加剤を含有してもよい。
<老化防止剤>
老化防止剤としては、例えば、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、キノン系老化防止剤、リン系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、フェノチアジン系老化防止剤などが挙げられる。これらの中でも、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤が好ましい。これらの老化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール系老化防止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、フェノール、ヒドロキノン、p-クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、クロロゲン酸、カテキン、カフェ酸、ゲンクワニン、ルテオリン、トコフェロール、カテコール、レゾルシノール、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、ピロガロール、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチ
ル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-エチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、スチレン化フェノール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2-メチル-4,6-ビス[(n-オクチルチオ)メチル]フェノール、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニル=アクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル=アクリレートが挙げられる。
アミン系老化防止剤としては、例えば、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、N-イソプロピル-N’-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。また、アミン系老化防止剤としては、光安定化剤(HALS)、ヒンダードアミン化合物、ニトロキシルラジカル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO))等も好適に用いることができる。
リン系老化防止剤としては、ホスファイト化合物が挙げられる。硫黄系老化防止剤としては、チオール化合物やペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)などのスルフィド化合物を用いることができる。
本実施形態に係る全固体二次電池用バインダー組成物が老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有割合は、全固体二次電池用バインダー組成物の全固形分量100質量部に対して、0.05~2質量部であることが好ましく、0.1~1質量部であることがより好ましく、0.2~0.8質量部であることが特に好ましい。
<増粘剤>
本実施形態に係る全固体二次電池用バインダー組成物が増粘剤を含有することにより、その塗布性や得られる全固体二次電池の充放電特性を更に向上できる場合がある。
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸;前記セルロース化合物または前記ポリ(メタ)アクリル酸のアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩;変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、キチン、キトサン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、セルロース系ポリマーが好ましい。
本実施形態に係る全固体二次電池用バインダー組成物が増粘剤を含有する場合、増粘剤の含有割合は、全固体二次電池用バインダー組成物の全固形分量100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、0.1~3質量部であることがより好ましい。
2.3.全固体二次電池用バインダー組成物の調製方法
本実施形態に係る全固体二次電池用バインダー組成物は、共役ジエン系共重合体(A)に液状媒体(B)を加え、必要に応じてその他の添加剤を更に加え、適宜撹拌を行って共役ジエン系共重合体(A)を液状媒体(B)中に溶解または分散させる方法により調製することができる。
本実施形態に係る全固体二次電池用バインダー組成物は、電極の集電体に対してだけでなく、固体電解質材料に対しても高い密着性を有するバインダーを形成することができる。また、本実施形態に係る全固体二次電池用バインダー組成物は、使用量を低減して固体電解質層の導電性を向上させることができるので、全固体型電池用として好適に用いることができる。
本実施形態に係る全固体二次電池用バインダー組成物の調製方法においては、当該バインダー組成物中の粒子状の金属成分を除去する工程(以下、「粒子状金属除去工程」ともいう。)を含んでいてもよい。粒子状金属除去工程において、「粒子状の金属成分」とは、当該バインダー組成物中に粒子状で存在しているものを指し、溶解して金属イオン状態で存在しているものは含まれない。
粒子状金属除去工程における、全固体二次電池用バインダー組成物から粒子状の金属成分を除去する方法は特に限定されず、例えば、フィルターを用いた濾過により除去する方法、振動ふるいにより除去する方法、遠心分離により除去する方法、磁力により除去する方法等が挙げられる。これらの中でも、除去対象が金属成分であるため磁力により除去する方法が好ましい。
磁力により除去する方法としては、金属成分が除去できる方法であれば特に限定されないが、生産性および除去効率を考慮すると、全固体二次電池用バインダー組成物の製造ライン中に、磁気フィルターを配置して、重合体溶液を通過させることにより除去する方法が好ましい。
磁気フィルターによって重合体溶液中から粒子状金属成分を除去する工程は、100ガウス以上の磁束密度の磁場を形成する磁気フィルターを通過させることにより行われることが好ましい。磁束密度が低いと金属成分の除去効率が低下するため、好ましくは1000ガウス以上、磁性の弱いステンレスを除去することを考慮するとさらに好ましくは2000ガウス以上、最も好ましくは5000ガウス以上である。
製造ライン中に磁気フィルターを配置する際には、磁気フィルターの上流側に、カートリッジフィルターなどのフィルターにより粗大な異物、あるいは金属粒子を除く工程を含ませることが好ましい。粗大な金属粒子は、濾過する流速によっては、磁気フィルターを通過してしまう恐れがあるためである。
また、磁気フィルターは、一回ろ過するのみでも効果はあるが、循環式であることがより好ましい。循環式とすることで、金属粒子の除去効率が向上するためである。
全固体二次電池用バインダー組成物の製造ライン中に、磁気フィルターを配置する場合は、磁気フィルターの配置場所は特に制限されないが、好ましくは全固体二次電池用バインダー組成物を容器に充填する直前、容器への充填前に濾過フィルターによる濾過工程が存在する場合には、濾過フィルターの前に配置することが好ましい。これは、磁気フィルターから金属成分が脱離した場合に、製品への混入を防止するためである。
粒子状金属成分の具体例としては、Fe、Ni、Cr等の金属またはこれらの金属化合物が挙げられる。本実施形態に係る全固体二次電池用バインダー組成物には、上記の粒子状金属成分が残留することがあるが、粒子状金属除去工程により粒径20μm以上の粒子状金属成分の含有量が10ppm以下となるように粒子状金属成分を除去することが好ましい。粒径20μm以上の粒子状金属成分の含有量は、得られた全固体二次電池用バインダー組成物を、さらに目開きが20μmに相当するメッシュでろ過し、メッシュオンした
金属粒子の元素を、X線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて元素分析し、その金属を溶解できる酸で溶解させたものをICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて測定することができる。
3.全固体二次電池用スラリー
本発明の一実施形態に係る全固体二次電池用スラリーは、上述の全固体二次電池用バインダー組成物と、固体電解質とを含有する。本実施形態に係る全固体二次電池用スラリーは、正極活物質層および負極活物質層のいずれの活物質層を形成するための材料として使用することもできるし、また固体電解質層を形成するための材料として使用することもできる。
正極活物質層を形成するための全固体二次電池用スラリーは、上述の全固体二次電池用バインダー組成物と、固体電解質と、正極用の活物質(以下、「正極活物質」ともいう。)とを含有する。また、負極活物質層を形成するための全固体二次電池用スラリーは、上述の全固体二次電池用バインダー組成物と、固体電解質と、負極用の活物質(以下、「負極活物質」ともいう。)とを含有する。さらに、固体電解質層を形成するための全固体二次電池用スラリーは、上述の全固体二次電池用バインダー組成物と、固体電解質とを含有する。以下、本実施形態に係る全固体二次電池用スラリーに含まれ得る成分について説明する。
3.1.活物質
<正極活物質>
正極活物質としては、例えば、MnO、MoO、V、V13、Fe、Fe、Li(1-x)CoO、Li(1-x)NiO、LiCoSn、Li(1-x)Co(1-y)Ni、Li(1+x)Ni1/3Co1/3Mn1/3、TiS、TiS、MoS、FeS、CuF、NiF等の無機化合物;フッ化カーボン、グラファイト、気相成長炭素繊維および/またはその粉砕物、PAN系炭素繊維および/またはその粉砕物、ピッチ系炭素繊維および/またはその粉砕物等の炭素材料;ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン等の導電性高分子などを用いることができる。これらの正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
正極活物質の平均粒径は、特に限定されないが、固固界面の接触面積を増加できるため、0.1μm~50μmであることが好ましい。正極活物質を所定の平均粒径とするためには、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、旋回気流型ジェットミル等の粉砕機や、篩、風力分級機等の分級機を用いればよい。粉砕時には、必要に応じて、水またはメタノール等の溶媒を共存させた湿式粉砕を行ってもよい。分級は、乾式、湿式ともに用いることができる。また、焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、または有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。
なお、活物質の平均粒径とは、レーザー回折法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて測定された体積平均粒子径のことをいう。このようなレーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えばHORIBALA-300シリーズ、HORIBALA-920シリーズ(以上、株式会社堀場製作所製)等が挙げられる。
正極活物質層を形成するための全固体二次電池用スラリーにおいて、正極活物質の含有割合は、固形成分の合計を100質量部としたときに、20~90質量部であることが好ましく、40~80質量部であることがより好ましい。
<負極活物質>
負極活物質としては、可逆的にリチウムイオン等を吸蔵・放出できるものであれば特に限定されないが、例えば、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、Sn、SiもしくはIn等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。これらの中でも、信頼性の点から炭素質材料が、電池容量を大きくできる点からケイ素含有材料が、好ましく用いられる。
炭素質材料としては、実質的に炭素からなる材料であれば特に限定されないが、例えば、石油ピッチ、天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛、およびPAN系の樹脂やフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料が挙げられる。さらには、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維、活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー、平板状の黒鉛等が挙げられる。
ケイ素含有材料は、一般的に用いられる黒鉛やアセチレンブラックに比べて、より多くのリチウムイオンを吸蔵できる。すなわち、単位重量当たりのリチウムイオン吸蔵量が増加するため、電池容量を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点があり、車載用バッテリー等への使用が今後期待されている。その一方で、ケイ素含有材料は、リチウムイオンの吸蔵、放出に伴う体積変化が大きいことが知られており、黒鉛やアセチレンブラックではリチウムイオンの吸蔵による体積膨張が1.2~1.5倍程度であるところ、ケイ素を含有する負極活物質では約3倍にもなる場合がある。この膨張・収縮(充放電)を繰り返すことによって、負極活物質層の耐久性が不足し、例えば接触不足を起こしやすくなったり、サイクル寿命(電池寿命)が短くなったりすることがある。本実施形態に係る全固体二次電池用スラリーを用いて形成された負極活物質層は、このような膨張・収縮が繰り返されてもバインダー成分が追従することによって高い耐久性(強度)が発揮されるので、良好なサイクル寿命特性を実現できるという優れた効果を奏する。
負極活物質の平均粒径は、特に限定されないが、固固界面の接触面積を増加できるため、0.1μm~60μmであることが好ましい。負極活物質を所定の平均粒径とするためには、上記例示した粉砕機や分級機を用いることができる。
負極活物質層を形成するための全固体二次電池用スラリーにおいて、負極活物質の含有割合は、固形成分の合計を100質量部としたときに、20~90質量部であることが好ましく、40~80質量部であることがより好ましい。
3.2.固体電解質
本実施形態に係る全固体二次電池用スラリーは、固体電解質を含有する。固体電解質としては、一般に全固体二次電池に使用される固体電解質を適宜選択して用いることができるが、硫化物系固体電解質または酸化物系固体電解質であることが好ましい。
固体電解質の平均粒径の下限としては、0.01μmであることが好ましく、0.1μmであることがより好ましい。固体電解質の平均粒径の上限としては、100μmであることが好ましく、50μmであることがより好ましい。
本実施形態に係る全固体二次電池用スラリーにおいて、固体電解質の含有割合の下限は、電池性能と界面抵抗の低減・維持効果を両立できるため、固形成分の合計を100質量部としたときに、50質量部であることが好ましく、70質量部であることがより好ましく、90質量部であることが特に好ましい。固体電解質の含有割合の上限は、同様の効果により、固形成分の合計を100質量部としたときに、99.9質量部であることが好ましく、99.5質量部であることがより好ましく、99.0質量部であることが特に好ま
しい。ただし、前記正極活物質または前記負極活物質とともに用いるときには、その総和が上記の濃度範囲となることが好ましい。
<硫化物系固体電解質>
硫化物系固体電解質は、硫黄原子(S)および周期表第1族または第2族の金属元素を含み、イオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。このような硫化物系固体電解質としては、例えば、下記一般式(6)で表される組成式の硫化物系固体電解質が挙げられる。
Li ・・・・・(6)
(式(6)中、Mは、B、Zn、Si、Cu、GaおよびGeから選択される元素を表す。a~dは各元素の組成比を表し、a:b:c:d=1~12:0~1:1:2~9を満たす。)
上記一般式(6)中、Li、M、PおよびSの組成比は、好ましくはb=0である。より好ましくはb=0、かつ、a:c:d=1~9:1:3~7である。さらに好ましくはb=0、かつ、a:c:d=1.5~4:1:3.25~4.5である。各元素の組成比は、硫化物系固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
硫化物系固体電解質は、非結晶(ガラス)であってもよく、結晶(ガラスセラミックス)であってもよく、一部のみが結晶化していてもよい。
Li-P-S系ガラスおよびLi-P-S系ガラスセラミックスにおける、LiSとPとの比率は、LiS:Pのモル比で、好ましくは65:35~85:15であり、より好ましくは68:32~80:20である。LiSとPとの比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度を高くすることができる。硫化物系固体電解質のリチウムイオン伝導度は、1×10-4S/cm以上が好ましく、1×10-3S/cm以上がより好ましい。
このような化合物としては、例えば、LiSと、第13族~第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなるものが挙げられる。具体例としては、LiS-P、LiS-GeS、LiS-GeS-ZnS、LiS-Ga、LiS-GeS-Ga、LiS-GeS-P、LiS-GeS-Sb、LiS-GeS-Al、LiS-SiS、LiS-Al、LiS-SiS-Al、LiS-SiS-P、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiSiO、LiS-SiS-LiPO、Li10GeP12などが挙げられる。中でも、LiS-P、LiS-GeS-Ga、LiS-GeS-P、LiS-SiS-P、LiS-SiS-LiSiO、LiS-SiS-LiPOからなる結晶および/または非結晶の原料組成物が、高いリチウムイオン伝導性を有するため好ましい。
このような原料組成物を用いて硫化物系固体電解質を合成する方法としては、例えば非晶質化法が挙げられる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法および溶融急冷法が挙げられる。これらの中でも、常温での処理が可能になり、製造工程を簡略化できるため、メカニカルミリング法が好ましい。
硫化物系固体電解質は、例えば、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.Hama,K.Kawamoto,JournalofPowerSources,233,(2013),pp231-235
又はA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872-873等の文献を参考にして合成することができる。
<酸化物系固体電解質>
酸化物系固体電解質は、酸素原子(O)および周期表第1族または第2族の金属元素を含み、イオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。このような酸化物系固体電解質としては、例えば、LixaLayaTiO〔xa=0.3~0.7、ya=0.3~0.7〕(LLT)、LiLaZr12(LLZ)、LISICON(Lithium Super Ionic Conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、NASICON(Natrium Super Ionic Conductor)型結晶構造を有するLiTi12、Li(1+xb+yb)(Al,Ga)xb(Ti,Ge)(2-xb)Siyb(3-yb)12(ただし、0≦xb≦1、0≦yb≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12が挙げられる。
また、酸化物系固体電解質としては、Li、P、およびOを含むリン化合物も好ましい。例えば、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素原子の一部を窒素原子で置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、およびAuから選ばれる少なくとも1種を示す。)が挙げられる。また、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C、およびGaから選ばれる少なくとも1種を示す。)等も好ましく用いることができる。
これらの中でも、Li(1+xb+yb)(Al,Ga)xb(Ti,Ge)(2-xb)Siyb(3-yb)12(ただし、0≦xb≦1、0≦yb≦1である)は、高いリチウムイオン伝導性を有し、化学的に安定で取り扱いが容易なため好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸化物系固体電解質のリチウムイオン伝導度は、1×10-6S/cm以上が好ましく、1×10-5S/cm以上がより好ましく、5×10-5S/cm以上が特に好ましい。
3.3.その他の添加剤
本実施形態に係る全固体二次電池用スラリーは、上述した成分以外に、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、導電助剤、増粘剤、液状媒体(ただし、全固体二次電池用バインダー組成物からの持ち込み分を除く。)等が挙げられる。
<導電助剤>
導電助剤は、電子の導電性を補助する効果を有するために、正極活物質層または負極活物質層を形成するための全固体二次電池用スラリーに添加される。導電助剤の具体例としては、活性炭、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維、フラーレン等のカーボンが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラック、ファーネスブラックが好ましい。本実施形態に係る全固体二次電池用スラリーが導電助剤を含有する場合、導電助剤の含有割合は、活物質100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、1~15質量部であることがより好ましく、2~10質量部であることが特に好ましい。
<増粘剤>
増粘剤の具体例としては、上述の「2.2.その他の添加剤」の<増粘剤>の項で例示
した増粘剤が挙げられる。本実施形態に係る全固体二次電池用スラリーが増粘剤を含有する場合、増粘剤の含有割合は、全固体二次電池用スラリーの全固形分量100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、0.1~3質量部であることがより好ましい。
<液状媒体>
液状媒体の具体例としては、上述の「2.1.液状媒体(B)」の項で例示した液状媒体が挙げられる。本実施形態に係る全固体二次電池用スラリーに液状媒体を添加する場合、全固体二次電池用バインダー組成物に含まれる液状媒体(B)と同一の液状媒体を添加してもよく、異なる液状媒体を添加してもよいが、同一の液状媒体を添加することが好ましい。本実施形態に係る全固体二次電池用スラリー中の液状媒体の含有割合は、その塗布性を良好なものとし、塗布後の乾燥処理における共役ジエン系共重合体(A)や活物質の濃度勾配を抑制するために、任意の割合に調整することができる。
3.4.全固体二次電池用スラリーの調製方法
本実施形態に係る全固体二次電池用スラリーは、上述の全固体二次電池用バインダー組成物と固体電解質とを含有するものである限り、どのような方法によって製造されたものであってもよい。
より良好な分散性および安定性を有するスラリーを、より効率的かつ安価に製造するためには、上述の全固体二次電池用バインダー組成物に、固体電解質および必要に応じて用いられる任意的添加成分を加え、これらを混合することにより製造することが好ましい。全固体二次電池用バインダー組成物とそれ以外の成分とを混合するためには、公知の手法による攪拌によって行うことができる。
全固体二次電池用スラリーを製造するための混合撹拌手段としては、スラリー中に固体電解質粒子の凝集体が残らない程度に撹拌し得る混合機と、必要にして十分な分散条件とを選択する必要がある。分散の程度は粒ゲージにより測定可能であるが、少なくとも100μmより大きい凝集物がなくなるように混合分散することが好ましい。このような条件に適合する混合機としては、例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、脱泡機、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサーなどを例示することができる。
全固体二次電池用スラリーの調製(各成分の混合操作)は、少なくともその工程の一部を減圧下で行うことが好ましい。これにより、得られる正極活物質層、負極活物質層または固体電解質層内に気泡が生じることを防止することができる。減圧の程度としては、絶対圧として、5.0×10~5.0×10Pa程度とすることが好ましい。
4.固体電解質シート
本発明の一実施形態に係る固体電解質シートは、基材上に上述の全固体二次電池用スラリーを塗布および乾燥させて形成された層を有するものである。
本実施形態に係る固体電解質シートは、例えば、基材となるフィルム上に上述の全固体二次電池用スラリーを、ブレード法(例えばドクターブレード法)、カレンダー法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、オフセット法、ダイコート法、またはスプレー法等により塗布し、乾燥させて層を形成した後、該フィルムを剥離することにより製造することができる。このようなフィルムとしては、例えば離型処理したPETフィルム等の一般的なものを用いることができる。
または、固体電解質シートを積層する相手のグリーンシート、もしくは、その他の全固
体二次電池の構成部材の表面に、固体電解質を含有する全固体二次電池用スラリーを直接塗布、乾燥させて、固体電解質シートを成型することもできる。
本実施形態に係る固体電解質シートは、層の厚さが好ましくは1~500μm、より好ましくは1~100μmの範囲となるように、上述の全固体二次電池用スラリーを塗布することが好ましい。層の厚さが前記範囲内であると、リチウムイオン等の伝導イオンが移動しやすくなるので、電池の出力が高くなる。また、層の厚さが前記範囲内にあると、電池全体を薄厚化することができるので、単位体積当たりの容量を大きくすることができる。
全固体二次電池用スラリーの乾燥は、特に限定されず、加熱乾燥、減圧乾燥、加熱減圧乾燥等のいずれの手段も用いることができる。乾燥雰囲気は、特に限定されず、例えば大気雰囲気下で行うことができる。
本実施形態に係る固体電解質シートにおいては、固体電解質層の重合体分布係数が、0.60~1.00であることが好ましく、0.70~0.95であることがより好ましく、0.75~0.90であることがより好ましい。本実施形態における「重合体分布係数」とは、以下の測定方法から定義される係数である。
(1)上述した方法により、基材の一方の面に固体電解質層を形成させる。これを二つに分割して、同じ固体電解質層を有する固体電解質シートを二つ作成する。
(2)あらかじめ準備しておいたアルミ板上に両面テープ(ニチバン株式会社製、品番「NW-25」)を貼り付け、さらに同両面テープの上にカプトンテープ(株式会社テラオカ製、品番「650S」)を粘着面が上になるようにして貼り付ける。
(3)(2)で用意したカプトンテープの粘着面上に、(1)で作成した固体電解質シートの一つの固体電解質層側と貼り合わせ、ローラーで圧着させる。
(4)基材を上に向けて(3)で作成されたアルミ板を水平面に固定した後、基材を上方向にアルミ板との角度が90°となるように一定速度で引き上げ、基材と固体電解質層との接着面から基材を剥離する。
(5)剥離した界面の両側、すなわち基材に残存した固体電解質層の表面から深さ1.5μm(1.5μm以下の厚さしか残存しなかった場合はその残存した全て)までの固体電解質層および、粘着テープに残存した固体電解質層表面から深さ1.5μmまでの固体電解質層を掻き取り、それを「測定試料A」とする。
(6)(1)で作成したもう一方の固体電解質シートから固体電解質層を全て掻き取り、それを「測定試料B」とする。
(7)測定試料Aおよび測定試料Bのそれぞれについて、高周波誘導加熱方式パイロライザーを有する熱分解ガスクロマトグラフィを用いて分析し、各試料の単位重量当たりの重合体成分の含有量(質量%)を算出する。得られた値を下記式(7)に代入することにより、重合体分布係数を算出する。
重合体分布係数=(測定試料Aの重合体含有量:質量%)/(測定試料Bの重合体含有量:質量%) ・・・・・(7)
なお、上記式(7)によると、重合体分布係数が1であれば、固体電解質層中の重合体成分が均一に分布していることを表す。また、重合体分布係数が1を超える値であれば、基材と固体電解質層との剥離界面近傍に重合体成分が偏在しており、1未満の値であれば、基材と固体電解質層との剥離界面近傍の重合体成分が疎になっていると解釈できる。
したがって、固体電解質層の重合体分布係数が0.60~1.00であると、重合体成分が基材と固体電解質層との界面近傍に十分に存在するため、基材と固体電解質層間の結着性が良好となり、かつ電気的特性にも優れた全固体二次電池用の固体電解質シートが得られる。固体電解質層の重合体分布係数が前記範囲未満であると、基材と固体電解質層と
の界面にバインダーとして機能する重合体成分が少なくなるため、基材と固体電解質層の密着性が低下する傾向がある。また、このようなブリード(移行)が起こることにより、固体電解質層表面の平滑性が損なわれる傾向がある。一方、重合体分布係数が前記範囲を超えると、基材と固体電解質層の界面に絶縁体であるバインダー成分が局在化することにより、固体電解質シートの内部抵抗が上昇して電気的特性が損なわれる傾向がある。
固体電解質シートに正極活物質および固体電解質が含まれる場合には、固体電解質シートは正極活物質層としての機能を有する。固体電解質シートに負極活物質および固体電解質が含まれる場合には、固体電解質シートは負極活物質層としての機能を有する。また、固体電解質シートに正極活物質および負極活物質が含まれず、固体電解質が含まれる場合には、固体電解質シートは固体電解質層としての機能を有する。
5.全固体二次電池用電極および全固体二次電池
本発明の一実施形態に係る全固体二次電池用電極は、集電体と、前記集電体の表面上に上述の全固体二次電池用スラリーが塗布および乾燥されて形成された活物質層と、を備えるものである。かかる全固体二次電池用電極は、金属箔などの集電体の表面に、上述の全固体二次電池用スラリーを塗布して塗膜を形成し、次いで該塗膜を乾燥して活物質層を形成することにより製造することができる。このようにして製造された全固体二次電池用電極は、集電体上に、上述の共役ジエン系共重合体(A)、固体電解質、および活物質、さらに必要に応じて添加した任意成分を含有する活物質層が結着されてなるものであるから、柔軟性、耐擦性および粉落ち耐性に優れるとともに、良好な充放電耐久特性を示す。
正極・負極の集電体としては、化学変化を起こさない電子伝導体が用いられることが好ましい。正極の集電体としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、およびこれらの合金等や、アルミニウム、ステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、これらの中でも、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましい。負極の集電体としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、およびこれらの合金が好ましく、アルミニウム、銅、銅合金がより好ましい。
集電体の形状としては、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。集電体の厚みとしては、特に限定されないが、1μm~500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
全固体二次電池用スラリーを集電体上に塗布する手段としては、ドクターブレード法、リバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、またはエアーナイフ法等を利用することができる。全固体二次電池用スラリーの塗布膜の乾燥処理の条件としては、処理温度は20~250℃であることが好ましく、50~150℃であることがより好ましく、処理時間は1~120分間であることが好ましく、5~60分間であることがより好ましい。
また、集電体上に形成された活物質層をプレス加工して圧縮してもよい。プレス加工する手段としては、高圧スーパープレス、ソフトカレンダー、1トンプレス機等を利用することができる。プレス加工の条件は、用いる加工機に応じて適宜設定することができる。
このようにして集電体上に形成された活物質層は、例えば、厚みが40~100μmであり、密度が1.3~2.0g/cmである。
このようにして製造された全固体二次電池用電極は、一対の電極間に固体電解質層が挟持されて構成される全固体二次電池における電極、具体的には全固体二次電池用の正極お
よび/または負極として好適に用いられる。また、上述の全固体二次電池用スラリーを用いて形成された固体電解質層は、全固体二次電池用の固体電解質層として好適に用いられる。
本実施形態に係る全固体二次電池は、公知の方法を用いて製造することができる。具体的には、以下のような製造方法を用いることができる。
まず、固体電解質および正極活物質を含有する全固体二次電池正極用スラリーを集電体上に塗布および乾燥させて正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極を作製する。次いで、該全固体二次電池用正極の正極活物質層の表面に固体電解質を含有する全固体二次電池固体電解質用スラリーを塗布および乾燥させて固体電解質層を形成する。さらに、同様にして固体電解質および負極活物質を含有する全固体二次電池負極用スラリーを固体電解質層の表面に塗布および乾燥させて負極活物質層を形成する。最後に、該負極活物質層の表面に負極側の集電体(金属箔)を載置することで、所望の全固体二次電池の構造を得ることができる。
また、固体電解質シートを離型PETフィルム上に作製し、予め作製しておいた全固体二次電池用正極または全固体二次電池用負極の上に貼り合わせる。その後、離型PETを剥離することで、所望の全固体二次電池の構造を得ることもできる。なお、上記の各組成物の塗布方法は常法によればよい。このとき、全固体二次電池正極用スラリー、全固体二次電池固体電解質層用スラリー、および全固体二次電池負極用スラリーのそれぞれの塗布の後に、それぞれ加熱処理を施すことが好ましい。加熱温度は、共役ジエン系共重合体(A)のガラス転移温度以上であることが好ましい。具体的には、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、100℃以上であることが最も好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。このような温度範囲で加熱することで、共役ジエン系共重合体(A)を軟化させるとともに、その形状を維持することができる。これにより、全固体二次電池において、良好な密着性とリチウムイオン伝導性を得ることができる。
また、加熱しながら加圧することも好ましい。加圧圧力としては5kN/cm以上が好ましく、10kN/cm以上であることがより好ましく、20kN/cm以上であることが特に好ましい。なお、本明細書中において、放電容量とは、電極の活物質重量あたりの値を示し、ハーフセルにおいては負極の活物質重量あたりの値を示す。
6.実施例
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
6.1.各物性値の測定法
以下の実施例および比較例において、各物性値の測定法は以下の通りである。
(1)1,2-ビニル結合含有量の測定
重合体中の1,2-ビニル結合含有量(単位:モル%)は、重水素化クロロホルムを溶媒として用い、500MHzのH-NMRにより求めた。
(2)結合スチレン含量
重合体中の結合スチレン含量(単位:%)は、重水素化クロロホルムを溶媒として用い、500MHzのH-NMRにより求めた。
(3)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、およびMw/Mn
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(商品名「HLC-8120GPC」、東ソー株式会社製)を使用して得られたGPC曲線の最大ピークの頂点に相当する保持時間からポリスチレン換算で、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をそれぞれ求め、Mw/Mnを算出した。
(GPCの条件)
・カラム:商品名「GMHXL」(東ソー社製)2本
・カラム温度:40℃
・移動相:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/分
・サンプル濃度:10mg/20mL
6.2.変性開始剤の製造例
[製造例1]
真空乾燥させた4Lステンレススチール圧力容器2個を準備した。一番目の圧力容器にシクロヘキサン985g、下記式(1-3)で表される化合物120gおよびテトラメチルエチレンジアミン86gを投入し、第1反応溶液を製造した。これと同時に、二番目の圧力容器に液状の20重量%のn-ブチルリチウム318gおよびシクロヘキサン874gを投入し、第2反応溶液を製造した。このとき、下記式(1-3)で表される化合物、n-ブチルリチウムおよびテトラメチルエチレンジアミンのモル比は1:1:1であった。各圧力容器の圧力は、7barに維持させた状態で、質量流量計を用いて連続式反応器内に、第1連続式チャンネルに第1反応溶液を1.0g/minの注入速度で、第2連続式チャンネルに第2反応溶液を1.0g/minの注入速度でそれぞれ注入した。このとき、連続式反応器の温度は-10℃を維持し、内部圧力は、バックプレッシャーレギュレーターを用いて3barを維持し、反応器内の滞留時間は10分以内になるように調節した。反応を終了して変性開始剤を得た。
Figure 2024033953000014
[製造例2]
真空乾燥させた4Lステンレススチール圧力容器2個を準備した。一番目の圧力容器にシクロヘキサン944g、下記式(1-1)で表される化合物161gおよびテトラメチルエチレンジアミン86gを投入し、第1反応溶液を製造した。これと同時に、二番目の圧力容器に液状の20重量%のn-ブチルリチウム318gおよびシクロヘキサン874gを投入し、第2反応溶液を製造した。このとき、下記式(1-1)で表される化合物、n-ブチルリチウムおよびテトラメチルエチレンジアミンのモル比は1:1:1であった。各圧力容器の圧力は7barに維持させた状態で、質量流量計を用いて連続式反応器内に、第1連続式チャンネルに第1反応溶液を1.0g/minの注入速度で、第2連続式チャンネルに第2反応溶液を1.0g/minの注入速度でそれぞれ注入した。このとき、連続式反応器の温度は-10℃を維持し、内部圧力は、バックプレッシャーレギュレーターを用いて3barを維持し、反応器内の滞留時間は10分以内になるように調節した。反応を終了して変性開始剤を得た。
Figure 2024033953000015
[製造例3]
真空乾燥させた4Lステンレススチール圧力容器2個を準備した。一番目の圧力容器にシクロヘキサン898g、下記式(1-2)で表される化合物207gおよびテトラメチルエチレンジアミン86gを投入し、第1反応溶液を製造した。これと同時に、二番目の圧力容器に液状の20重量%のn-ブチルリチウム318gおよびシクロヘキサン874gを投入し、第2反応溶液を製造した。このとき、下記式(1-2)で表される化合物、n-ブチルリチウムおよびテトラメチルエチレンジアミンのモル比は1:1:1であった。各圧力容器の圧力は7barに維持させた状態で、質量流量計を用いて連続式反応器内に、第1連続式チャンネルに第1反応溶液を1.0g/minの注入速度で、第2連続式チャンネルに第2反応溶液を1.0g/minの注入速度でそれぞれ注入した。このとき、連続式反応器の温度は-10℃を維持し、内部圧力は、バックプレッシャーレギュレーターを用いて3barを維持し、反応器内の滞留時間は10分以内になるように調節した。反応を終了して変性開始剤を得た。
Figure 2024033953000016
6.3.共役ジエン系共重合体(A)の合成例
<合成例1>
3器の反応器が直列で連結された連続反応器のうち第1反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されているスチレン溶液を3.08kg/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解されている1,3-ブタジエン溶液を12.90kg/h、n-ヘキサン47.66kg/h、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが2.0重量%で溶解されている1,2-ブタジエン溶液を10g/h、極性添加剤として、n-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解されている溶液を10.0g/h、製造例1で製造された変性開始剤を292.50g/hの速度で注入した。このとき、第1反応器の温度は50℃となるように維持し、重合転化率が43%となったとき、移送配管を介して、第1反応器から第2反応器へ重合物を移送した。
次いで、第2反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解されている1,3-ブタジエン溶液を0.68kg/hの速度で注入した。このとき、第2反応器の温度は65℃となるように維持し、重合転化率が95%以上となったとき、移送配管を介して、第2反応器から第3反応器へ重合物を移送した。
前記第2反応器から第3反応器へ重合物を移送し、変性剤として、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミンが溶解されている溶液を第3反応器に投入した[変性剤:act.Li=1:1mol]。第3反応器の温度は、65℃となるように維持した。
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として30重量%で溶解されているIR1520(BASF社製)溶液を170g/hの速度で注入して撹拌した。その結果、得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去し、共役ジエン系共重合体(A-1)を製造した。
<合成例2>
変性剤として、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミンの代りに3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)が溶解されている溶液を第3反応器に連続的に供給したこと以外は、前記合成例1と同様に実施し、共役ジエン系共重合体(A-2)を製造した[変性剤:aca.Li=1:1mol]。
<合成例3>
合成例1において、変性開始剤として、製造例1で製造された変性開始剤の代わりに、製造例2で製造された変性開始剤を292.5g/hの速度で第1反応器に連続的に供給したこと以外は、前記実施例1と同様に実施し、共役ジエン系共重合体(A-3)を製造した。
<合成例4>
合成例1において、変性開始剤として、製造例1で製造された変性開始剤の代わりに、製造例3で製造された変性開始剤を292.5g/hの速度で第1反応器に連続的に供給したこと以外は、前記合成例1と同様に実施し、共役ジエン系共重合体(A-4)を製造した。
<合成例5>
合成例1において、変性剤として、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミンの代わりに、3-(ジメトキシ(メチル)シリル)-N,N-ジエチルプロパン-1-アミンが溶解されている溶液を第3反応器に連続的に供給したこと以外は、前記合成例1と同様に実施し、共役ジエン系共重合体(A-5)を製造した[変性剤:aca.Li=1:1mol]。
<合成例6>
3器の反応器が直列で連結された連続反応器のうち第1反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されているスチレン溶液を6.58kg/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解されている1,3-ブタジエン溶液を9.58kg/h、n-ヘキサン47.66kg/h、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが2.0重量%で溶解されている1,2-ブタジエン溶液を10g/h、極性添加剤として、n-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解されている溶液を10.0g/h、製造例1で製造された変性開始剤を292.5g/hの速度で注入した。このとき、第1反応器の温度は50℃となるように維持し、重合転化率が43%となったとき、移送配管を介して、第1反応器から第2反応器へ重合物を移送した。
次いで、第2反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解されている1,3-ブタジエン溶液を0.50kg/hの速度で注入した。このとき、第2反応器の温度は65℃となるように維持し、重合転化率が95%以上となったとき、移送配管を介して、第2反応器から第3反応器へ重合物を移送した。
前記第2反応器から第3反応器へ重合物を移送し、変性剤として、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミンが溶解されている溶液
を第3反応器に投入した[変性剤:act.Li=1:1mol]。第3反応器の温度は、65℃となるように維持した。
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として30重量%で溶解されているIR1520(BASF社製)溶液を167g/hの速度で注入して撹拌した。その結果、得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去し、共役ジエン系共重合体(A-6)を製造した。
<合成例7>
合成例6において、重合転化率が41%となったとき、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送し、変性剤として3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)が溶解されている溶液を第3反応器に投入[変性剤:act.Li=1:1mol]したこと以外は、合成例6と同様に実施し、共役ジエン系共重合体(A-7)を製造した。
<合成例8>
合成例1において、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミンが溶解されている溶液を第3反応器に投入しないこと以外は、合成例1と同様に実施し、共役ジエン系共重合体(A-8)を製造した。
<合成例9>
3器の反応器が直列で連結された連続反応器のうち第1反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されているスチレン溶液を3.08kg/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解されている1,3-ブタジエン溶液を12.90kg/h、n-ヘキサン47.66kg/h、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが2.0重量%で溶解されている1,2-ブタジエン溶液を10g/h、極性添加剤として、n-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解されている溶液を10.0g/h、重合開始剤として、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが15重量%で溶解されているn-ブチルリチウム溶液を39.0g/hの速度で注入した。このとき、第1反応器の温度は55℃となるように維持し、重合転化率が48%となったとき、移送配管を介して、第1反応器から第2反応器へ重合物を移送した。
次いで、第2反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解されている1,3-ブタジエン溶液を0.68kg/hの速度で注入した。このとき、第2反応器の温度は65℃となるように維持し、重合転化率が95%以上となったとき、移送配管を介して、第2反応器から第3反応器へ重合物を移送した。
前記第2反応器から第3反応器へ重合物を移送し、カップリング剤として、ジクロロジメチルシランが溶解されている溶液を第3反応器に投入した[カップリング剤:act.Li=1:1mol]。第3反応器の温度は、65℃となるように維持した。
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として、30重量%で溶解されているIR1520(BASF社製)溶液を170g/hの速度で注入して撹拌した。その結果、得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去し、共役ジエン系共重合体(A-9)を製造した。
<合成例10>
3器の反応器が直列で連結された連続反応器のうち第1反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されているスチレン溶液を6.58kg/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解されている1,3-ブタジエン溶液を9.58kg
/h、n-ヘキサン47.66kg/h、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが2.0重量%で溶解されている1,2-ブタジエン溶液を10g/h、極性添加剤として、n-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解されている溶液を10.0g/h、重合開始剤として、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが15重量%で溶解されているn-ブチルリチウム溶液を39.0g/hの速度で注入した。このとき、第1反応器の温度は55℃となるように維持し、重合転化率が48%となったとき、移送配管を介して、第1反応器から第2反応器へ重合物を移送した。
次いで、第2反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解されている1,3-ブタジエン溶液を0.50kg/hの速度で注入した。このとき、第2反応器の温度は65℃となるように維持し、重合転化率が95%以上となったとき、移送配管を介して、第2反応器から第3反応器へ重合物を移送した。
前記第2反応器から第3反応器へ重合物を移送し、カップリング剤として、ジクロロジメチルシランが溶解されている溶液を第3反応器に投入した[カップリング剤:act.Li=1:1mol]。第3反応器の温度は、65℃となるように維持した。
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として、30重量%で溶解されているIR1520(BASF社製)溶液を167g/hの速度で注入して撹拌した。その結果、得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去し、共役ジエン系共重合体(A-10)を製造した。
<合成例11>
合成例1において、製造例1で製造された変性開始剤の代わりに、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが15重量%で溶解されているn-ブチルリチウム溶液を39.0g/hの速度で第1反応器に連続的に投入したこと以外は、合成例1と同様に実施し、共役ジエン系共重合体(A-11)を製造した。
6.4.実施例1
6.4.1.全固体二次電池用バインダー組成物の調製
上記合成例1で得た共役ジエン系共重合体(A-1)と、老化防止剤としてスミライザーGM500ppmと、を液状媒体(B)であるジイソブチルケトン中に添加し、90℃で3時間撹拌することにより、共役ジエン系共重合体(A-1)と老化防止剤をジイソブチルケトンに溶解させた。その後、この溶液を3つ口フラスコに移し、100Torrの減圧を維持しながら、水蒸気含有量が25.0mg/L以下の乾燥窒素ガスのバブリングを90℃で4時間行い、残留水分量を55ppmまで減らした全固体二次電池用バインダー組成物を調製した。次いで、このバインダー組成物を、平均孔径が3.00μmであるフィルター膜を有するカートリッジフィルター(アドバンテック社製、オールフッ素樹脂カートリッジフィルター、製品名「TCF-300-H5MF」)を透過させ、アイセロ化学株式会社より市販されている1Lのクリーンバリア(登録商標)ボトル(超高純度溶剤用バリア性容器)に充填した。このバインダー組成物全体を100質量%としたときの、全固形分は10.1%である。なお、この調製作業は、清浄度クラスがISO14644-1のクラス7、室内露点が-40℃DP以下のドライルーム内で実施した。
6.4.2.全固体二次電池用スラリーの調製および評価
<全固体二次電池正極用スラリーの調製>
正極活物質としてLiCoO(平均粒子径:10μm)70質量部と、固体電解質としてLiSとPからなる硫化物ガラス(LiS/P=75mol%/25mol%、平均粒子径5μm)30質量部と、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部と、上記で調製したバインダー組成物を固形分相当で2質量部とを混合し、さらにジ
イソブチルケトンを加えて、固形分濃度を75%に調整した後に自転公転ミキサー(THINKY社製、あわとり練太郎ARV-310)で10分間混合して全固体二次電池正極用スラリーを調製した。
<全固体二次電池固体電解質層用スラリーの調製>
固体電解質としてLiSとPからなる硫化物ガラス(LiS/P=75mol%/25mol%、平均粒子径5μm)100質量部と、上記で調製したバインダー組成物を固形分相当で2質量部とを混合し、さらにジイソブチルケトンを加えて、固形分濃度を55%に調整した後に自転公転ミキサー(THINKY社製、あわとり練太郎ARV-310)で10分間混合して全固体二次電池固体電解質層用スラリーを調製した。
<全固体二次電池負極用スラリーの調製>
負極活物質としての人造黒鉛(平均粒子径:20μm)65質量部、固体電解質としてLiSとPからなる硫化物ガラス(LiS/P=75mol%/25mol%、平均粒子径5μm)35質量部と、上記で調製したバインダー組成物を固形分相当で2質量部とを混合し、さらにジイソブチルケトンを加えて、固形分濃度を65%に調整した後に自転公転ミキサー(THINKY社製、あわとり練太郎ARV-310)で10分間混合して全固体二次電池負極用スラリーを調製した。
<スラリーの分散安定性評価>
上記で得られた全固体二次電池固体電解質層用スラリーについて、調製後5分以内に50rpmのB型粘度計(東機産業株式会社製)により25℃にて粘度測定を行い、その粘度をηとした。この全固体二次電池固体電解質層用スラリーを25℃に調温した恒温槽で48時間保管し、保管後のスラリーを50rpmのB型粘度計(東機産業株式会社製)により25℃にて粘度測定を行い、その粘度をηとした。このときの粘度変化率Δη(%)=(η/η)×100を算出し、下記基準により評価した。結果を下表1に示す。粘度変化率Δηが小さいものほどスラリーの分散安定性に優れている。
(評価基準)
AA:Δηが80%以上120%未満。
A:Δηが70%以上80%未満または120%以上130%未満。
B:Δηが60%以上70%未満または130%以上140%未満。
C:Δηが60%未満または140%以上。
6.4.3.全固体二次電池正負極・固体電解質層の作製および評価
<全固体二次電池正極の作製>
上記で調製した全固体二次電池正極用スラリーをドクターブレード法によりアルミニウム箔上に塗布し、120℃の減圧下でジイソブチルケトンを蒸発させて3時間かけて乾燥させることにより、厚み0.1mmの正極活物質層が形成された全固体二次電池正極を作製した。
<固体電解質層の作製>
上記で調製した全固体二次電池固体電解質用スラリーをドクターブレード法により離型PETフィルム上に塗布し、120℃の減圧下でジイソブチルケトンを蒸発させて3時間かけて乾燥させることにより、厚み0.1mmの固体電解質層を作製した。
<全固体二次電池負極の作製>
上記で調製した全固体二次電池負極用スラリーをドクターブレード法によりステンレス箔上に塗布し、120℃の減圧下でジイソブチルケトンを蒸発させて3時間かけて乾燥させることにより、厚み0.1mmの負極活物質層が形成された全固体二次電池負極を作製
した。
<全固体二次電池正極の剥離強度試験>
上記で得られた全固体二次電池正極のアルミニウム箔上に形成された正極活物質層について、正極活物質層上に幅20mmのテープを貼り、これを剥離角度90°、剥離速度50mm/minの条件で剥離するときの剥離強度を測定した。評価基準は下記の通りである。結果を下表1に示す。
(評価基準)
AA:剥離強度が20N/m以上。
A:剥離強度が10N/m以上20N/m未満。
B:剥離強度が5N/m以上10N/m未満。
C:剥離強度が5N/m未満。
<全固体二次電池正極の重合体分布係数>
上記で得られた全固体二次電池正極のアルミニウム箔上に形成された正極活物質層について、正極活物質層の厚さ方向における重合体分布係数を以下のようにして算出した。
まず、得られた全固体二次電池正極を二つに分割した。次いで、あらかじめ準備しておいた70mm×150mmのアルミ板に、両面テープ(株式会社ニチバン製、品番「NW-25」)を120mm、さらに同両面テープの上にカプトンテープ(株式会社テラオカ製、品番「650S」)を粘着面が上になるようにして貼り付けた固定用ステージを作成した。この固定用ステージの上に、得られた全固体二次電池正極を20mm×100mmの大きさに切り出した試験片の活物質層側を貼り付け、ローラーで圧着させた。この試験片が固定された固定ステージを水平面に載置し、試験片を上方向に固定ステージとの角度が90°となるように一定速度で引き上げ、接着面から集電体を剥離させた。その後、集電体側に残存した活物質層の表面から深さ1.5μmおよび粘着テープ側に残存した活物質表面から深さ1.5μmまでの活物質層を掻き取り、これを測定試料Aとした。一方、分割しておいたもう一つの電極から活物質層を全て掻き取り、これを測定試料Bとした。測定試料Aおよび測定試料Bのそれぞれについて、高周波誘導加熱方式パイロライザーを有する熱分解ガスクロマトグラフィにて分析し、各試料の単位重量当たりの重合体成分の含有量(質量%)を算出した。得られた値を下記式(7)に代入することにより、重合体分布係数を算出し、下記基準により評価した。結果を下表1に示す。
重合体分布係数=(測定試料Aの重合体含有量:質量%)/(測定試料Bの重合体含有量:質量%) ・・・・・(7)
(評価基準)
AA:重合体分布係数が0.85以上1.0未満。
A:重合体分布係数が0.7以上0.85未満。
B:重合体分布係数が0.55以上0.7未満。
C:重合体分布係数が0.55未満。
<全固体二次電池正極の柔軟性試験>
正極試験片のアルミニウム箔側を直径1.0mmの金属棒に沿わせ、この金属棒に巻き付けて正極活物質層が割れるか否か、巻き付け端部に損傷があるか否かを評価した。評価基準は下記の通りである。結果を下表1に示す。正極活物質層の損傷が見られないものは、試験片の柔軟性が高く、全固体二次電池組み立てのプロセス適性が良好であることを示す。
(評価基準)
A:正極活物質層の割れなし、巻き付け端部の損傷なし。
B:正極活物質層の割れなし、巻き付け端部の損傷あり。
C:正極活物質層の割れあり。
<固体電解質層のリチウムイオン伝導度測定>
PETフィルムから剥がした固体電解質層を2枚のステンレス鋼製の平板からなるセルで挟み、インピーダンスアナライザーを使用して測定し、ナイキストプロットからリチウムイオン伝導度を算出した。評価基準は下記の通りである。結果を下表1に示す。リチウムイオン伝導度が大きい程、電池性能が良好な全固体二次電池が得られることを示す。
(評価基準)
AA:リチウムイオン伝導度が0.8×10-4S/cm以上1.0×10-4S/cm以下。
A:リチウムイオン伝導度が0.5×10-4S/cm以上0.8×10-4S/cm未満。
B:リチウムイオン伝導度が0.2×10-4S/cm以上0.5×10-4S/cm未満。
C:リチウムイオン伝導度が0.2×10-4S/cm未満。
6.4.4.全固体二次電池の作製および評価
<全固体二次電池の作製>
上記で作製した全固体二次電池正極を直径13mmの円板状に切り出し、全固体二次電池負極とPETフィルムから剥がした固体電解質層を直径15mmの円板状に切り出した。次に、全固体二次電池正極の正極活物質層の面が固体電解質層と接するように、全固体二次電池正極を固体電解質層の一方の面に貼り合わせた。全固体二次電池負極の負極活物質層の面が固体電解質層と接するように、全固体二次電池負極を固体電解質層のもう一方の面に貼り合わせ、ヒートプレス機を用いて、加熱(120℃)しながら加圧し(600MPa、1分)、アルミニウム箔/正極活物質層/固体電解質層/負極活物質層/ステンレス箔の積層構造を有する全固体二次電池用積層体を作製した。次いで、このようにして作製した全固体二次電池用積層体をスペーサーとワッシャーを組み込んだステンレス製の2032型コインケースに入れ、2032型コインケースをかしめることで、全固体二次電池を作製した。
<サイクル寿命特性(容量維持率)>
上記で作製した全固体二次電池を用い、30℃の環境下、充放電試験を実施した。充放電は、4.2V~3.0Vの電位範囲で、0.1Cレートで測定を行った。この0.1Cレートの充放電を繰り返し行い、1サイクル目の放電容量をA(mAh/g)、20サイクル目の放電容量をB(mAh/g)としたとき、20サイクル後の容量維持率を下記式(8)によって算出した。評価基準は以下の通りである。結果を下表1に示す。
20サイクル後の容量維持率(%)=(B/A)×100 ・・・・・(8)
なお、CレートのCとは時間率であり、(1/X)C=定格容量(Ah)/X(h)と定義される。Xは定格容量分の電気を充電又は放電する際の時間を表す。例えば、0.1Cとは、電流値が定格容量(Ah)/10(h)であることを意味する。
(評価基準)
AA:容量維持率が95%以上100%以下。
A:容量維持率が90%以上95%未満。
B:容量維持率が85%以上90%未満。
C:容量維持率が85%未満。
6.5.実施例2~8、比較例1~3
使用する成分の種類および量を下表1に記載した通りとした以外は、上記実施例1と同様にして、全固体二次電池用バインダー組成物、全固体二次電池用スラリー、全固体二次電池正負極・固体電解質層および全固体二次電池を作製し、評価を行った。
下表1に、実施例1~8および比較例1~3で使用した開始剤および変性剤の種類、各
物性、ならびに各評価結果をまとめた。
Figure 2024033953000017
上表1における略称は、それぞれ以下の化合物を表す。
<開始剤>
・開始剤a:製造例1で合成した変性開始剤
・開始剤b:製造例2で合成した変性開始剤
・開始剤c:製造例3で合成した変性開始剤
・開始剤d:n-ブチルリチウム
<変性剤>
・変性剤A:N,N―ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン
・変性剤B:3,3’―(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)
・変性剤C:3(ジメトキシ(メチル)シリル)-N,N-ジエチルプロパン-1-アミン
・カップリング剤D:ジクロロジメチルシラン
上表1の結果から、実施例1~8の全固体二次電池用バインダーおよび該バインダーを含有するバインダー組成物を使用した場合、リチウムイオン伝導性に優れ、かつ、良好なサイクル寿命特性を実現できる全固体二次電池を作製できることが確認された。
また、実施例1~8においては、全固体二次電池用スラリーとして、本発明に係る全固体二次電池用バインダー組成物に活物質と固体電解質とが含有されてなるものが用いられている。当該スラリーは、比較例1~3の場合と比較して、良好な分散安定性を有していることが確認された。そして、当該スラリーによって形成された活物質層において、剥離強度の測定の際に活物質層自体が脆くなって活物質や固体電解質の脱落、あるいはクラックなどが生じることがなく、活物質および固体電解質のいずれの間においても重合体に十分な結着性が得られていることが確認された。さらに良好な柔軟性を併せ持つことも併せて確認された。この理由としては、上表1に示す実施例1~8の全固体二次電池用バインダー組成物に含有される共役ジエン系共重合体(A)は、高い結着力を維持することができ、形成される固体電解質には活物質層に対する十分な密着性が得られたためと推測される。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を包含する。また本発明は、上記の実施形態で説明した構成の本質的でない部分を他の構成に置き換えた構成を包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成をも包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成をも包含する。

Claims (14)

  1. 芳香族ビニル化合物に基づく芳香族ビニル単位と、共役ジエン化合物に基づく共役ジエン単位とを有し、
    下記一般式(1)で表される化合物と有機金属化合物との反応生成物である変性開始剤由来の官能基を含む、
    共役ジエン系共重合体(A)を含有する、全固体二次電池用バインダー。
    Figure 2024033953000018
    (上記式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基、炭素数2~30のヘテロアルキニル基、炭素数5~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、または炭素数3~30のヘテロ環基である。Rは、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数5~20のアリレン基である。ここで、置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。Rは、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基、炭素数2~30のヘテロアルキニル基、炭素数5~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~30のヘテロ環基、または下記一般式(1a)または下記一般式(1b)で表される官能基である。nは、1~5の整数であり、Rのうち少なくとも一つは、下記一般式(1a)または下記一般式(1b)で表される官能基であり、nが2~5の整数の場合、複数のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
    Figure 2024033953000019
    (上記一般式(1a)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリレン基である。ここで、置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基で置換されるかまたは非置換の炭素数1~20のアルキレン基である。Rは、水素、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基、炭素数2~30のヘテロアルキニル基、炭素数5~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、または炭素数3~30のヘテロ環基である。Xは、N、OまたはS原子であり、XがOまたはSの場合、Rは存在しない。)
    Figure 2024033953000020
    (上記一般式(1b)中、R10は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリレン基である。ここで、置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基である。R11およびR12は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基、炭素数2~30のヘテロアルキニル基、炭素数5~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~30のヘテロ環基である。)
  2. 前記共役ジエン系共重合体(A)が、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される変性剤由来官能基を更に含む、請求項1に記載の全固体二次電池用バインダー。
    Figure 2024033953000021
    (上記式(2)中、R20は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基である。R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である。R23は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基である。R24は、水素、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のアルキル基で置換された2価、3価もしくは4価のアルキルシリル基である。aは2または3の整数である。cは1~3の整数であり、bは0~2の整数で、かつ、b+c=3である。)
    Figure 2024033953000022
    (上記式(3)中、AおよびAは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基である。R25~R28は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基である。L~Lは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基で置換された2価、3価もしくは4価のアルキルシリル基、または炭素数1~20のアルキル基である。)
  3. 前記共役ジエン系共重合体(A)の結合スチレン含量が5~50%である、請求項1に記載の全固体二次電池用バインダー。
  4. 前記共役ジエン系共重合体(A)中の官能基の含有量が、0.0005モル/kg以上0.2モル/kg以下である、請求項1に記載の全固体二次電池用バインダー。
  5. 前記共役ジエン系共重合体(A)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が3以下である、請求項1に記載の全固体二次電池用バインダー
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の全固体二次電池用バインダーと、液状媒体(B)とを含有し、
    前記液状媒体(B)が、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン類、エステル類およびエーテル類よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、全固体二次電池用バインダー組成物。
  7. 前記共役ジエン系共重合体(A)が前記液状媒体(B)に溶解してなる、請求項6に記載の全固体二次電池用バインダー組成物。
  8. 請求項6に記載の全固体二次電池用バインダー組成物と、固体電解質とを含有する、全固体二次電池用スラリー。
  9. 前記固体電解質として、硫化物系固体電解質または酸化物系固体電解質を含有する、請求項8に記載の全固体二次電池用スラリー。
  10. 正極活物質層と、固体電解質層と、負極活物質層とを少なくとも備える全固体二次電池において、
    前記正極活物質層、前記固体電解質層、および前記負極活物質層の少なくともいずれか1層が、請求項8に記載の全固体二次電池用スラリーを塗布および乾燥させて形成された層である、全固体二次電池。
  11. 基材上に、請求項8に記載の全固体二次電池用スラリーを塗布および乾燥させて形成された層を有する、全固体二次電池用固体電解質シート。
  12. 正極活物質層と、固体電解質層と、負極活物質層とを少なくとも備える全固体二次電池において、
    前記正極活物質層、前記固体電解質層、および前記負極活物質層の少なくともいずれか1層が、請求項11に記載の全固体二次電池用固体電解質シートで形成された層である、全固体二次電池。
  13. 請求項8に記載の全固体二次電池用スラリーを基材上に塗布および乾燥させる工程を含む、全固体二次電池用固体電解質シートの製造方法。
  14. 請求項13に記載の全固体二次電池用固体電解質シートの製造方法を介して全固体二次電池を製造する、全固体二次電池の製造方法。
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