JP2024032103A - 強化繊維基材、およびこれを用いた積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂注入成形法に用いる場合であっても、FRPの板厚方向の導電性を均等に高めつつ、好ましい機械特性を発現可能な強化繊維基材、およびこれを用いた樹脂注入成形用に好ましい積層体を提供する。【解決手段】平行に引き揃えられた強化繊維からなる少なくとも1層以上の強化繊維層20を導電性繊維30で固定した強化繊維基材1であって、導電性繊維30が強化繊維基材1を厚み方向に貫通する貫通部を有し、無負荷状態における強化繊維の見かけ体積含有率が25%以上50%以下である、強化繊維基材とする。【選択図】図1

Description

本発明は、強化繊維基材、およびこれを用いた積層体に関する。具体的には、板厚方向の導電性に優れる強化繊維基材、および、板厚方向の導電性に優れつつ機械強度にも優れる樹脂注入成形用に好ましい積層体に関する。
強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させたFRP(Fiber Reinforced Plastics)は、軽量かつ高強度という特性から、航空、宇宙、自動車用途などに広く用いられている。FRPの生産性と高強度を両立する成形法として、例えばレジン・トランスファー・モールディング法(Resin Transfer Molding:RTM)やVaRTM法(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)等の注入成形法が挙げられる。RTM法は、マトリックス樹脂を予備含浸していないドライな強化繊維基材からなる強化繊維積層体を、成形型に配置して、液状で低粘度のマトリックス樹脂を注入することにより、後からマトリックス樹脂を含浸・固化させてFRPを製造する成形法である。
注入成形法は、FRPの生産性には優れるが、マトリックス樹脂が低粘度である必要があるため、プリプレグに用いられる高粘度のマトリックス樹脂から成形されたFRPに比べて、力学特性を十分に発揮できない場合がある。そこで、上記に対する解決手段として、規定の目付を有する強化繊維の一方向層と規定の厚みを有する熱可塑性繊維ウェブ(不織布)が合わされた中間材料が提案されている(例えば特許文献1)。不織布を層間に配することで、構造体の耐衝撃性を特徴付けるのに一般的に用いられている衝撃後圧縮(CAI)試験における機械特性を改善することができる。
一方で、熱可塑性繊維の不織布は導電性を有しないことから、強化繊維が導電性を有する場合(例えば炭素繊維を強化繊維とした場合)であっても、不織布によって強化繊維層同士の接触が阻害され、積層体の板厚方向の導電性が低下する場合がある。また、強化繊維が導電性を有しない場合は、積層体の板厚方向の導電性は著しく低いものとなる。板厚方向の導電性は、航空機の耐雷性に影響を及ぼすことが知られており、銀をコーティングした不織布を導電ステッチ糸と組み合わせて使用することで、繊維強化樹脂の板厚方向の導電性を向上させる技術が開示されている(例えば非特許文献1)。非特許文献1では、±45度に引き揃えた2軸の強化繊維層をステッチ糸で0度方向に変則トリコット編(トリコット編とチェーン編の組み合わせ編)し、一体化した強化繊維基材が開示されている。また、同様の技術として、例えば特許文献2に開示されるように、ポリマーと導電性材料との混合物からなる複合粒子を不織布に分散させたハイブリッドベール(複合不織布)が提案されている。加えて同文献において、金属をコーティングした不織布を複合不織布に用いることが提案されている。
特表2012-506499号公報 特表2019-504128号公報
Composites Part A,2017,Vol.100,352-360 ところが、特許文献2のように不織布に複合粒子を分散させた構成では、強化繊維が導電性を有しない場合には積層体全体の板厚方向の導電性を向上できない問題があった。また、強化繊維が導電性を有する場合も、注入成形法における樹脂注入によって複合粒子が流される問題があった。複合粒子が流されると、複合粒子がFRP外部へ流出して板厚方向の導電性が低下する場合や、例え複合粒子がFRP内部に残存しても、位置によって複合粒子の残存密度に差が生じ、局所的に板厚方向の導電性が低下する場合や、板厚方向の導電性にムラを生じる場合があった。さらに、板厚方向の導電性を発現するためには、複合粒子に含まれる導電性粒子が厚み方向に連続的に接続する必要があるが、製品形状や繊維体積含有率(Vf)によって接触状態が変化するため、導電パスが不均一になる場合があった。この導電パスの不均一性は、耐雷性を低下させる恐れがある。
また、銀などの金属を不織布にコーティングして層間の導電性を高める方法も、強化繊維が導電性を有しない場合には積層体全体の板厚方向の導電性を向上できない問題があった。また、強化繊維が導電性を有する場合であっても、不織布の繊維配向や疎密が影響し、均等な導電パスが形成されない問題がある。非特許文献1でも、不織布の製造時に繊維が配向し、不織布に疎密が生じることが指摘されている。さらに、熱可塑性樹脂の不織布が金属でコーティングされることで、従来の目的である機械特性の改善が不十分になる恐れもある。
一方、導電性のステッチ糸を単に用いる従来の方法も、ある強化繊維基材の導電性のステッチ糸と厚み方向に隣接する別の強化繊維基材の導電性のステッチ糸が十分に接触しなければ、強化繊維積層体の厚み方向に導電パスを形成できない問題がある。特に、製品形状に賦形するために強化繊維基材を変形させると、導電性のステッチ糸の接触が不十分になりやすく、板厚方向の導電性の部分的な低下や不均一性を招く恐れがある。これは、賦形時の変形によって強化繊維基材の厚みが薄くなることや、導電性のステッチ糸が強化繊維に埋没することによる。また、製品形状によっては所定の成形圧力よりも低い圧力で成形される領域が生じる場合があり、特にこのような場合は導電性のステッチ糸同士の接触が不十分となる場合がある。
また、導電性のステッチ糸を単に用いた従来の強化繊維基材と金属を不織布にコーティングした従来の導電性不織布を組み合わせて使用する従来の方法は、積層する基材や不織布の枚数が増えて手間が増えるばかりか、シート状基材と不織布の賦形性の差異によって製品形状への賦形時に皺を生じる恐れや、熱可塑性繊維による機械特性向上効果を損なう恐れがある。さらに、前述の通り、ステッチ糸の接触が不十分となり、板厚方向の導電性の部分的な低下や不均一性を招く恐れがある。
他方、不織布を層間に配置しない従来のFRPは、強化繊維が導電性を有する場合に層間で強化繊維同士が接触して板厚方向の導電性が保たれるものの、前述の通り力学特性の発現が不十分な場合がある。
このように、上記のような従来技術では、樹脂注入成形において炭素繊維層間の電気導電率を均等に高めつつ好ましい機械特性を発現するという、板厚方向の導電性と機械特性を両立するFRPを得ることが極めて困難であった。
そこで、本発明の課題は、上記のような問題点に着目し、樹脂注入成形法に用いる場合であっても、FRPの板厚方向の導電性を均等に高めつつ、好ましい機械特性を発現可能な強化繊維基材、およびこれを用いた樹脂注入成形用に好ましい積層体を提供することにある。
そこで、上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を採用する。
(1)平行に引き揃えられた強化繊維からなる少なくとも1層以上の強化繊維層を導電性繊維で固定した強化繊維基材であって、導電性繊維が強化繊維基材を厚み方向に貫通する貫通部を有し、無負荷状態における強化繊維の見かけ体積含有率が25%以上50%以下であることを特徴とする、強化繊維基材。
(2)強化繊維の剛軟度が10mN・cm以上200mN・cm以下であることを特徴とする、(1)に記載の強化繊維基材。
(3)貫通部を40,000か所/m以上有することを特徴とする、(1)または(2)に記載の強化繊維基材。
(4)強化繊維基材の両表面において、導電性繊維の配向方向と強化繊維の配向方向との成す角度が30度以上90度以下であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の強化繊維基材。
(5)導電性繊維がマルチフィラメントであることを特徴とする、(1)または(2)に記載の強化繊維基材。
(6)導電性繊維の直交断面形状の円形度が0.8未満であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の強化繊維基材。
(7)導電性繊維の直交断面形状が直線部を有する、(1)または(2)に記載の強化繊維基材。
(8)導電性繊維が金属被覆合成繊維、樹脂被覆金属繊維、および導電性合成繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つの導電性繊維であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の強化繊維基材。
(9)導電性繊維の少なくとも一部分の軟化点が80℃以上180℃以下であることを特徴とする、(8)に記載の強化繊維基材。
(10)(1)から(9)のいずれかに記載の強化繊維基材を2枚以上積層した積層体であって、全ての隣接する2枚の強化繊維基材の層間において、一方の強化繊維基材における導電性繊維の配向方向と他方の強化繊維基材における導電性繊維の配向方向との成す角度が30度以上90度以下であることを特徴とする、積層体。
本発明によれば、FRPの板厚方向の導電性を均等に高めつつ、好ましい機械特性を発現可能な強化繊維基材、およびこれを用いた樹脂注入成形用に好ましい積層体を得ることができる。
本発明の強化繊維基材の一例の上面側概略図と下面側概略図である。 本発明に係る規則的なパターンの例を示す概略図である。 本発明に係るマルチフィラメントの断面形状の一例を示す概略図である。 本発明の積層体の一例を示す斜視図と断面図である。
以下に、本発明について、実施の形態と共に、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の強化繊維基材は、平行に引き揃えられた強化繊維からなる少なくとも1層以上の強化繊維層を導電性繊維で固定した強化繊維基材であって、前記導電性繊維が前記強化繊維基材を厚み方向に貫通する貫通部を有し、無負荷状態における強化繊維の見かけ体積含有率が25%以上50%以下であることを特徴とする。
図1は、本発明の強化繊維基材の一実施態様を示している。図1(a)において、1は強化繊維基材の上面図を示している。45度に引き揃えられた強化繊維からなる強化繊維層と-45度に引き揃えられた強化繊維からなる強化繊維層が、導電性繊維により固定されている。強化繊維基材の表面において、導電性繊維は0度方向に配向している。この強化繊維基材1のB-B’断面が図1(b)に、C-C’断面が図1(c)に、D-D’断面が図1(d)に示される。この強化繊維基材は、強化繊維層と導電性繊維を含む。ここで、導電性繊維は強化繊維基材を厚み方向に貫通し、貫通部を形成している。さらに、導電性繊維は強化繊維基材の両側の表面に露出している。
[強化繊維基材]
本発明の強化繊維基材は、平行に引き揃えられた強化繊維からなる少なくとも1層以上の強化繊維を導電性繊維で固定した強化繊維基材である。
本発明の強化繊維基材の形態としては、強化繊維を一方向に引き揃えた一方向形態、一方向に引き揃えた繊維を一軸または多軸に積層したノンクリンプ形態が例示される。中でも、ノンクリンプ形態の強化繊維層は、強化繊維がほとんど屈曲しないため樹脂注入後の成形品の力学特性に優れ、かつ複数の層を同時に配置できるため配置効率が良いため好ましい。このような形態は、特に輸送機器(特に航空機)の大型の構造(特に一次構造)部材に好適に用いることができる。
本発明の強化繊維基材は、強化繊維層の表面や強化繊維層の層間に不織布を有することができる。その際、導電性繊維は強化繊維層と不織布とを貫通し、強化繊維基材の表面に露出する必要がある。
ここで、不織布とは繊維がランダムに配向しており、交流、および/または融着、および/または接着によって繊維間が結合されたものをいう。不織布は板厚方向と面内方向に通気性を有することが好ましい。また、不織布の繊維径は1μm以上100μm未満であることが好ましく、5μm以上80μm未満がより好ましく、10μm以上60μm未満がさらに好ましい。繊維径が上記好ましい範囲であると流動抵抗が小さく、後述する樹脂含浸工程において樹脂の流動が妨げられること発生しにくい一方、FRPとしたときの層間の厚みが小さくなり、FRPのVfが低下しにくい。
また、不織布の目付は1gsm(grams per square meter)以上であることが好ましく、50gsm以下であることが好ましい。内層不織布の目付が1gsm以上であることにより、FRPの層間靱性を向上でき、機械特性が改善される。一方、50gsm以下であることにより、FRPにおける強化繊維以外の繊維の割合が少なくなり、強度や弾性率といった機械的特性の低下を抑制できる。不織布の目付は5gsm以上20gsm以下であることがさらに好ましい。目付を5gsm以上20gsm以下とすることで、層間靭性、および強度や弾性率をバランス良く向上できる。また、5gsm以上とすることで、導電性繊維による固定が容易となり、強化繊維基材を製品形状に賦形させた際に不織布が強化繊維基材からはがれにくい。また、20gsm以下とすることで不織布の厚みが薄くなるため、強化繊維層と組み合わせて積層した際にFRPのVfが低下しにくい。
本発明の強化繊維基材において、導電性繊維による固定方法としては、トリコット編やチェーン編、これらを組み合わせたパターンによる経編、ミシンなどを用いた横編、ニードルパンチによる導電性繊維の押し込みなどが例示できる。
本発明の強化繊維基材は、導電性繊維以外の繊維で部分的に固定されてもよい。ここで、導電性繊維以外の繊維には、後述の金属被覆合成繊維や導電性合成繊維に用いる合成繊維を好適に用いることができる。導電性繊維以外の繊維による固定方法としては、トリコット編やチェーン編、これらを組み合わせたパターンによる経編、ミシンなどを用いた横編、ニードルパンチによる導電性繊維以外の繊維の押し込みなどが例示できる。
導電性繊維や導電性繊維以外の繊維による固定においては、強化繊維基材の裁断時や、裁断された強化繊維基材を運搬するときなどは、取り扱い性が良好であるにも関わらず、所望の形状に賦形する際には高い変形性を示し、皺が形成されにくい強化繊維基材となることから経編が好ましい。中でも、優れた賦形性を示すことかとからトリコット編が特に好ましい。
[強化繊維層]
本発明の強化繊維基材にかかる強化繊維層は、平行に引き揃えられた強化繊維からなる。本発明にかかる強化繊維層は、優れた力学特性を得ることができるため、連続繊維の強化繊維から構成される形態であることが好ましい。
強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維などが挙げられる。中でも機械強度と軽量性の観点から、比弾性率が高い炭素繊維を使用することが好ましい。
強化繊維として炭素繊維を選択する場合、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維を用いることが可能であるが、耐衝撃性、引張強度および圧縮強度との両立の点から、炭素繊維の引張弾性率は、少なくとも200GPa以上が好ましく、より好ましくは200~600GPaの範囲であり、さらに好ましくは250~450GPaの範囲である。また、炭素繊維の強度の観点からは、高い剛性、高い引張強度および高い圧縮強度等の力学特性を有する複合材料が得られることから、引張強度が4.0GPa以上の炭素繊維が好ましく用いられ、より好ましくは4.0~7.5GPaの範囲であり、さらに好ましくは5.0~7.0GPaの範囲である。また、引張伸度も重要な要素であり、引張伸度が1.5%以上の高伸度である炭素繊維であることが好ましい。従って、引張弾性率が少なくとも200GPa以上であり、引張強度が少なくとも4.0GPa以上であり、引張伸度が少なくとも1.5%以上であるという特性を兼ね備えた炭素繊維が最も適している。
炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800G-24K、“トレカ(登録商標)”T800S-24K、“トレカ(登録商標)”T810G-24K、“トレカ(登録商標)”T700G-24K、“トレカ(登録商標)”T300-3K、および“トレカ(登録商標)”T700S-12K(以上東レ(株)製)などが挙げられる。
[導電性繊維]
本発明において、導電性繊維とは室温での電気導電率が10S/m以上の繊維を指す。電気導電率(S/m)は体積抵抗率(Ω・m)の逆数である。体積抵抗率は、JIS R7609(2007)に定められた方法、または簡易法で測定することができる。なお、JIS R7609(2007)に定められた方法を用いる場合、導電性繊維が炭素繊維でない場合も本方法に準拠して測定した値を採用できる。簡易法による測定方法は次のとおりである。まず、係る導電性繊維を1000mm長に切断する。次に、小数点以下1桁までΩを測定できる回路計を用いて、一旦から多端までの抵抗値を測定する。5本のサンプルについてこの操作を繰り返し、平均値を抵抗値R(Ω)とする。次に、導電性繊維の断面積をs(mm)とすると、電気導電率(S/m)=1000(mm)÷s(mm)÷R(Ω)÷1000・・・(式1)により算出できる。
なお、断面積sは長手方向に一定と仮定し、繊度と密度から換算した断面積を採用する。マルチフィラメントの場合も、マルチフィラメントを構成するフィラメントの本数と断面積が長手方向に一定と仮定し、繊度と密度から換算した断面積を採用する。
本発明の強化繊維基材に係る導電性繊維の電気導電率1×10S/m以上であることが好ましい。このような構成とすることで、導電性繊維が少量であってもFRPの板厚方向の電気導電率を向上させる効果が高く、好ましい。
本発明の強化繊維基材に係る導電性繊維として、金属繊維、金属で合成繊維の表面を被覆した金属被覆合成繊維、樹脂中に導電性フィラーを分散させた、炭素繊維などの導電性繊維を用いることができる。さらには、これらを任意に組み合わせて導電性繊維として使用できる。
金属繊維として用いる金属の限定はないが、白金、金、銀、銅、パラジウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、鉛、スズ、アルミニウム、チタン、これらの合金および混合物などの任意の適した金属が挙げられる。中でも、銅は加工性に優れることから好適に使用できる。
金属被覆合成繊維に用いる被覆金属の限定はないが、白金、金、銀、銅、パラジウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、鉛、スズ、アルミニウム、チタン、これらの合金および混合物などの任意の適した金属からなってもよい。中でも、銀は高い導電性を発揮しつつ酸化しにくいことから好適に使用できる。
被覆金属は、導電性繊維が高い導電性を発現できることから表面全体を均一に被覆することが好ましい。一方で、軽量化の観点からは繊維長手方向に離散的な被覆や、繊維周方向に離散的な被覆が好ましい。
金属繊維や金属被覆合成繊維に用いる金属の酸化を防ぐ観点から、導電性繊維の表面を樹脂材料でさらにコーティングすることができる。ここで特に、金属繊維を樹脂材料でさらにコーティングしたものを樹脂被覆金属繊維と呼ぶ。樹脂材料としては、後述の合成繊維に用いる樹脂材料として記載の樹脂材料を用いることができる。
また、導電性繊維の表面を樹脂材料でさらにコーティングする場合、酸化防止の観点からは表面全体を均一にコーティングすることが好ましい。一方で、導電パス形成の観点からは繊維長手方向に離散的なコーティングや、繊維周方向に離散的なコーティングが好ましい。
金属被覆合成繊維や導電性合成繊維に用いる合成繊維、樹脂被覆金属繊維に用いる被覆樹脂としては、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、芳香族ポリカーボネート、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料を用いた合成繊維とすることが可能である。また、用途によっては、一部熱硬化性樹脂と混合して用いることもできる。なかでも、高耐熱性、高強度、シート加工性の点からポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルイミドが特に好ましく用いられる。
また、FRPの層間に靭性の高い層を形成し、力学特性(特にCAI)を高めることができる点から、合成繊維に用いる樹脂材料は、ポリアミド6、ポリアミド6-6、ポリアミド6-10、ポリアミド12、ポリアミド6-Iから選ばれる少なくとも2つのポリアミド成分を含む共重合ポリアミドであることが好ましい。
ここで、前述した合成繊維を構成するポリアミド成分のうち、ポリアミド6-Iは非晶性ポリマーであることから、ポリアミド6-Iを含まないか、配合比率が低い場合には、共重合ポリアミドは結晶性ポリマーとなりやすく、逆にポリアミド6-Iが主成分となる場合は非晶性ポリマーとなりやすい。
また合成繊維としては、FRPの湿熱条件下での力学特性低下を抑える観点から、吸水率の低いポリアミド12を含有していることが好ましい。したがって合成繊維中のポリアミド12の割合は、5モル%以上、好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。ポリアミド12と共重合することのできる樹脂材料としては、ポリアミド6、ポリアミド6-6、ポリアミド4-6、ポリアミド6-10、ポリアミド6-12、ポリアミド6-T、ポリアミド6-I、ポリアミド6-6/6-T、ポリアミド6-6/6-I、ポリアミド6-6/6-T/6-Iなどが挙げられる。とりわけ好ましいものとしては、ポリアミド6、ポリアミド6-6、ポリアミド6-10、ポリアミド12、ポリアミド6-Iを挙げることができ、さらにこれらの合成繊維を加工性、耐熱性、靭性などの必要特性に応じて混合物として用いることも好適である。
導電性合成繊維に用いる導電性フィラーとしては、白金、金、銀、銅、パラジウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、鉛、スズ、アルミニウム、チタン、これらの合金および混合物などの任意の適した金属のほか、炭素や黒鉛を用いることができる。
本発明に係る導電性繊維の繊維径は1μm以上500μm未満であることが好ましく、5μm以上80μm未満がより好ましく、10μm以上60μm未満がさらに好ましい。繊維径が上記好ましい範囲であると流動抵抗が小さく、後述する樹脂含浸工程において樹脂の流動が妨げられにくい一方、FRPとしたときの層間の厚みが小さくなり、繊維体積含有率(Vf)が低下しにくい。
本発明の強化繊維基材に係る導電性繊維の繊度は、10dtex以上500dtex以下であることが好ましく、30dtex以上300dtex以下であることがより好ましい。繊度が大きすぎると強化繊維層を積層した時に強化繊維が蛇行し、機械特性が低下する場合がある。逆に、繊度が小さすぎると、強化繊維層に埋もれて導電パスが十分形成されず、効果を発揮できない場合がある。
ここで本発明における繊度は、次のようにJIS L1013(2010)に準じて測定して得られた値である。まず、係る導電性繊維を90cm長に切断する。次に、小数点以下5桁までのグラム数を測定できる電子天秤を用いて、5本のサンプルについて質量を測定し、10,000m当たりの質量に換算した値を平均化したものを繊度(単位:dtex)とする。
また、本発明の強化繊維基材に係る導電性繊維は、捲縮糸であることが好ましい。捲縮糸は長手方向に伸縮が可能であるため、強化繊維基材の柔軟性を損ないにくく、強化繊維基材としての賦形性を好適に発現できる好ましい態様である。
[貫通部]
本発明の強化繊維基材は貫通部を有する。
貫通部において、導電性繊維が強化繊維基材を厚み方向に貫通する。導電性繊維を厚み方向に貫通させる方法としては、導電性繊維を縫い糸としたミシンや経編機などによる強化繊維基材の縫製や、タフティングなどによる導電性繊維の強化繊維基材への押し込み、導電性繊維を強化繊維基材の表面に散布したのちにニードルパンチを用いて厚み方向に貫通させる方法が挙げられる。
本発明の強化繊維基材に係る貫通部は、面内に規則的に形成される。ここで、「面内に規則的に配置」とは幾何学的な繰り返し形状(パターン)に形成することを言う。図2は、本発明の貫通部が形成される規則的なパターンの例を示している。なお、貫通部50を示す円は貫通部の形成される領域を示しており、このような形状の部材や材料が強化繊維基材に形成されるわけではない。図2(a)は、貫通部を規則的に配置したパターンの一例を示す概略図である。図2(b)は、貫通部を規則的に形成したパターンの別の一例を示す概略図である。図2(c)は、貫通部を規則的に形成したパターンのさらに別の一例を示す概略図である。図2(d)は、貫通部を規則的に形成し、格子状のパターンとした場合の一例を示す概略図である。以上のように貫通部を規則的に形成することにより、板厚方向の導電性のムラが抑制され、好ましい耐雷性が発揮される。
[無負荷状態における強化繊維の見かけ体積含有率]
本発明の強化繊維基材は、無負荷状態における強化繊維の見かけ体積含有率が25%以上50%以下である。見かけ体積含有率は、空隙を含む強化繊維基材の見かけ体積中に強化繊維がどの程度含まれるかを示す値である。なお、本発明において無負荷状態とは0.01MPaを指す。
このような構成をとることで、注入成形時に強化繊維基材が板厚方向に圧縮されることで反力を生じ、この反力によって強化繊維基材を貫通する導電性繊維同士が接触し、導電パスが形成される。
成形前の強化繊維基材の有する強化繊維の見かけ体積含有率は、成形後のFRPのVfよりも小さいことが重要である。一般的に、構造用材料として用いられるFRPのVfは高強度・高弾性率を発現するために50%以上あるいは55%以上が要求される場合がある。したがって、強化繊維の見かけ体積含有率が50%を上回る場合は、強化繊維基材が板厚方向に十分圧縮されず、上述のような不具合を生じて導電パスの形成が不十分になる場合がある。一方、強化繊維の見かけ体積含有率が25%を下回ると、注入成形後のFRPのVfが要求値を下回って所望の機械特性を発現できない場合や、強化繊維の蛇行や表面の凹凸といった成形欠陥を生じ、機械特性が低下する場合がある。対して、本発明の強化繊維基材は強化繊維の見かけ体積含有率を25%以上50%以下の範囲に保つことで、導電繊維同士の接触によって好ましい耐雷性を発揮しつつ、注入成形後のFRPを高Vfに保つことで好ましい機械特性を発現できる。
本発明の強化繊維基材は、さらに好ましくは無負荷状態における強化繊維の見かけ体積含有率が40%以上50%以下である。強化繊維の見かけ体積含有率が小さい場合、注入成形時に強化繊維基材を板厚方向に圧縮すると、積層体の板厚変化によって導電性繊維に余剰が生じることで導電性繊維の配向が変化し、強化繊維内に埋没する場合がある。対して、強化繊維の見かけ体積含有率を40%以上とすることで、積層体の板厚変化を減少させることで導電性繊維の余剰を抑制し、導電性繊維の強化繊維への埋没を防ぐことができる。これにより、板厚方向に導電パスを良好に形成することができる。
本発明の強化繊維基材の強化繊維の見かけ体積含有率(%)は、強化繊維基材が含む強化繊維の目付をFAW(g/m)、強化繊維の密度をρ(g/cm)、強化繊維基材を0.01MPaで押圧した時の厚みをT0.01(mm)とすると、見かけ体積含有率(%)=FAW(g/m)÷ρ(g/cm)÷T0.01(mm)÷10・・・(式2)により算出できる。
また、T0.01(mm)の測定方法は次のとおりである。まず、強化繊維基材から一辺50mmの正方形基材を1枚切り出す。次に、正方形基材1枚をねじ式万能試験機の下側プラテン上の中央に配置し、0.15mm/minの試験速度で板厚方向に250Nまで室温で加圧する。このとき、0.01MPa相当となる25Nが正方形基材に負荷された際の厚みT(mm)を記録する。切り出しから記録までの同様の操作を5回繰り返し、平均値をT0.01(mm)とする。
[強化繊維にかかる好ましい態様]
本発明の強化繊維は、剛軟度が10mN・cm以上200mN・cm以下であることが好ましい。剛軟度は強化繊維の束としての剛直さを示す指標であり、大きければ強化繊維束の収束性が高く剛直であり、小さければ強化繊維束の収束性が低く柔らかいことを意味する。
強化繊維の剛軟度は強化繊維基材を板厚方向に圧縮する際に生じる強化繊維基材の反発力に影響する。強化繊維の剛軟度が10mN・cmより小さいと強化繊維基材の反発力が大きくなり、注入成形後のFRPのVfが要求値を下回って所望の機械特性を発現できない場合や、強化繊維の蛇行や表面の凹凸といった成形欠陥を生じ、機械特性が低下する場合がある。一方、強化繊維の剛軟度が200mN・cmよりも大きいと、強化繊維基材の反発力が小さくなり、成形時に強化繊維基材が板厚方向に圧縮されず、隙間が空いて導電パスの形成が不十分になる場合がある。
ここで本発明における剛軟度Gは、次のように測定して得られた値である。まず、250mm長に裁断した強化繊維束を5本準備し、JIS L1096(2010)に記載の45度カンチレバー試験機の水平台上に1本の強化繊維束を静置する。次に、強化繊維束の幅(mm)(長手直交方向の長さ)を最低目盛が1mmの定規で小数点以下第1位まで読み取る。続いて、強化繊維束を45度カンチレバー試験機の斜面方向に緩やかに滑らせ、強化繊維束が斜面と接したときの移動長さ(cm)を小数点以下第1位まで測定する。さらに、試験後の強化繊維束の質量を小数点以下5桁までのグラム数を測定できる電子天秤を用いて測定する。
この移動長さの5本の平均値L(cm)を2で割った値を曲げ長さC(cm)とし、さらに強化繊維束の目付m(g/m)を用いると、剛軟度G(mN・cm)はG=m×C×10-3・・・(式3)により算出できる。
なお、強化繊維束の目付m(g/m)は、試験後の強化繊維束の質量の5本の平均値mcf(g)と強化繊維束の幅の5本の平均値dcf(mm)を用いると、m=mcf÷dcf÷250×10-6・・・(式4)により算出できる。
強化繊維の剛軟度は、強化繊維束に塗布するサイジング剤や付着させるバインダの種類や量により調整できる。サイジング剤やバインダの種類にもよるが、塗布・付着量を増やして強化繊維束の収束性を高めることで強化繊維の剛軟度を大きくすることができる。一方、塗布・付着量を減らして強化繊維束の収束性を下げることで強化繊維の剛軟度を小さくすることができる。また、強化繊維束を開繊処理することで、強化繊維束の収束性が下がるため、強化繊維の剛軟度を小さくすることができる。
[導電性繊維の配向方向と強化繊維の配向方向にかかる好ましい態様]
本発明の強化繊維基材は、両表面において導電性繊維の配向方向と前記強化繊維の配向方向との成す角度が30度以上90度以下であることが好ましく、45度以上90度以下であることがさらに好ましい。
30度以上90度以下とすることで、導電性繊維が強化繊維層に埋没しにくく、貫通部を除いて導電性繊維が強化繊維層の表面に露出するため、隣接する強化繊維基材の導電性繊維同士が接触しやすい。特に、両表面に露出する全ての導電性繊維の配向方向と前記強化繊維の配向方向との成す角度が30度以上90度以下とすることで、面内全域に亘って全ての導電性繊維が強化繊維層に埋没しにくく、面内全域に亘る均一な導電パスを形成しやすい。
また、45度以上90度以下とすることで強化繊維基材のせん断変形が容易となり、強化繊維基材を製品形状に賦形させた際に導電性繊維が破断しにくく、強固に導電パスを維持することができる。
導電性繊維の配向方向と強化繊維の配向方向との成す角度の測定方法は次のとおりである。まず、強化繊維基材から一辺100mmの正方形基材を1枚切り出す。この正方形基材の端部から25mmの範囲を除く、一辺50mmの領域を検査領域とする。次に、一方の面を上にして正方形基材を平らな机上に配置し、強化繊維基材の上に分度器を当て、一方の面の検査領域内における導電性繊維の配向方向と強化繊維の配向方向との成す角度の最大値と最小値を読み取る。続いて、他方の面を上にして正方形基材を平らな机上に配置し、同様にして他方の面の導電性繊維の配向方向と強化繊維の配向方向との成す角度の最大値と最小値を読み取る。最後に、一方の面と他方の面の最小値のいずれか小さい値以上、一方の面と他方の面の最大値のいずれか大きい値以下を導電性繊維の配向方向と強化繊維の配向方向との成す角度の範囲とする。
また、貫通部を除く全ての領域の表面において、導電性繊維の配向方向と前記強化繊維の配向方向との成す角度が上述の範囲にあることが好ましい。このような構成とすることで、同量の導電性繊維を使用した場合であっても強化繊維基材表面に露出して接触可能な導電性繊維の割合が大きくなるため、板厚方向の導電性を効率よく向上させることができる。
なお、導電性繊維の配向方向とは、強化繊維基材面内における導電性繊維の配向方向を指し、強化繊維基材の両表面に露出した導電性繊維の長手方向を意味する。なお、貫通部は考慮しない。
また、強化繊維の配向方向は強化繊維が引き揃えられた方向を指す。
[貫通部に係る好ましい態様]
本発明の強化繊維基材は、導電性繊維が強化繊維基材を厚み方向に貫通する貫通部を40,000か所/m以上有することが好ましい。40,000か所/m未満であると、FRPの寸法が小さい場合に十分な数の貫通部がFRP中に含まれず、板厚方向の導電性を良好に発現できない場合がある。
本発明の強化繊維基材において、選択した導電性繊維の種類にもよるが、貫通部において貫通する導電性繊維の合計断面積が平米あたり16mm以上、10,000mm以下であることが好ましい。導電性繊維の合計断面積Sは、導電性繊維の断面積sに、貫通部1か所を貫通する導電性繊維の本数nと1平米中の貫通部の数Nを掛け合わせたものである。つまり、S=s×n×N・・・(式2)となる。単糸の場合、断面積sは長手方向に一定と仮定し、繊度と密度から換算した断面積を採用する。マルチフィラメントの場合も、マルチフィラメントを構成するフィラメントの本数と断面積が長手方向に一定と仮定し、繊度と密度から換算した断面積を採用する。貫通部の数Nは、シート状基材から切り出した100mm四方に含まれる貫通部の数を数えることで求められる。
貫通部の面積は、平米あたり16mm以上とすることで、板厚方向の導電性を良好に発現できる。一方、平米あたり10,000mm以下とすることで、強化繊維の蛇行を抑制すると共にVfの低下が抑制され、機械特性を良好に保つことができる。
[導電性繊維に係る好ましい態様]
本発明の強化繊維基材に係る導電性繊維は、複数のフィラメントから構成されるマルチフィラメントであることが好ましい。マルチフィラメントは複数のフィラメントから構成されるため、製品形状への賦形時にいくつかのフィラメントが破断したとしても、残りのフィラメントにより導電性が維持される。さらに、単糸に比べて表面積が大きいこと、また、周囲の強化繊維や別の強化繊維基材の導電性繊維との接触時に、フィラメントのずれによってマルチフィラメントの断面形状が変形することで接触面積が大きくなり、大きな導電パスを形成することができる。マルチフィラメントを構成するフィラメントの本数は、単糸の断面積にもよるが、5~1,000本であることが好ましい。5本以上とすることで、強化繊維基材を積層した際、マルチフィラメントを構成するフィラメントがずれて広がることで導電性繊維の厚みが薄くなり、大きな導電パスを形成できるため好ましい。一方、1,000本以下とすることで、層間の厚み変化による炭素繊維の蛇行を抑制し、機械特性に優れるCFRPを得ることができるため好ましい。
さらに、マルチフィラメントはフィラメントが捲縮したマルチフィラメント捲縮糸であることが好ましい。捲縮糸は長手方向に伸縮が可能であるため、強化繊維基材の柔軟性を損なわず、良好な賦形性を好適に発現できる好ましい態様である。捲縮加工の方法は制限されず、仮撚加工、機械的押込み加工、流体押込み加工、ニット・デニット、空気噴射法、収縮差混繊などから選択することができる。また、仮撚加工の場合はフリクション式、ピン式、などが適用でき、原糸のポリマーや、所望の生産速度に応じて選択すればよい。
また、導電性繊維としてマルチフィラメントを用いる場合、マルチフィラメントを構成するフィラメントの直径は5~30μmの範囲であることが望ましい。5μmより小さくなると、フィラメント間の隙間が小さくなり、注入成形時の含浸性が低下する場合がある。また30μmを超えるとかかるフィラメントで構成されるマルチフィラメントの径が過剰に大きくなり、強化繊維基材を積層した際に強化繊維層の真直性が損なわれ、力学特性が低下する場合がある。
また、導電性繊維としてマルチフィラメントを用いる場合、マルチフィラメントは捲縮加工されて複数のフィラメントに撚りがかかっていること(有撚)が好ましい。撚りがかけられることで、強化繊維基材の賦形性が向上する。そのような捲縮加工として、マルチフィラメントの長さ1mあたりの撚り数は200回以上が好ましい。撚り数を200回以上とすることで、マルチフィラメントに十分な伸縮性を付与でき、賦形した際に導電性糸が切れることなく形状に沿うため、賦形性と導電性を好適に両立できる。また、撚りの周辺に空隙が生じるため、注入成形時に樹脂が侵入しやすくなり、樹脂含浸性が向上する。一方、撚り数が200回を下回ると、注入成形時にフィラメント間の空隙が潰れやすくなり、含浸性がばらつくことがある。撚り数の上限は特に制限はなく、フィラメントの繊維径、材質等によって定めることができる。撚り数は、検ねん器を用い、つかみ間隔を50cmとしてJIS L1013(2010)に定められた荷重で試料を取り付け、撚り数を測定し、2倍して1m当たりの撚り数を求めることができる。
捲縮加工方法は制限されず、仮撚加工、機械的押込み加工、流体押込み加工、ニット・デニット、空気噴射法、収縮差混繊などから選択することができる。また、仮撚加工の場合はフリクション式、ピン式、などが適用でき、原糸のポリマーや、所望の生産速度に応じて選択すればよい。
[導電性繊維に係る別の好ましい態様]
本発明の強化繊維基材において、導電性繊維の直交断面形状の円形度Cが0.8未満であることが好ましい。ここで言う直交断面形状とは、繊維の長手方向に直交する面で導電性繊維を切断した時の断面形状である。また、円形度Cとは、単糸やマルチフィラメントを構成するフィラメントの断面積をS、周長をLとしたときに、C=4π×S÷L・・・(式5)であらわされるパラメータである。円形度は、「導電性繊維の長手方向に直交する面とのなす角度が3度以内の面」で導電性繊維を切断した時の断面形状を用いて測定する。なお、測定する導電性繊維は、樹脂で包埋した上で鏡面研磨したものであってよい。この断面形状を1,000倍の倍率で顕微鏡撮影したデジタル画像に基づき判定する。断面積Sはデジタル画像の導電性繊維の部分のピクセル数を、周長Lはデジタル画像の導電性繊維部分最外周のピクセル数を採用する。顕微鏡が断面積測定機能や外周測定機能を有する場合は、顕微鏡による測定値を採用できる。
この様な構成とすることで、導電性繊維における表面積の増大と断面積の減少を一挙に実施できるため、強化繊維基材を積層した際に大きな導電パスを形成しつつ、層間の厚み変化による炭素繊維の蛇行を抑制して機械特性に優れるFRPを得ることができる。
さらに、このような構成とすることで、マルチフィラメントを圧縮した際にフィラメント周囲の空間が減少しやすく、フィラメント近傍の樹脂リッチを防ぎやすい。樹脂リッチは破壊起点となることから、以上の構成は機械特性の観点からも好ましい態様である。
[導電性繊維に係るさらに別の好ましい態様]
本発明の強化繊維基材において、導電性繊維の直交断面形状が直線部を有することが好ましい。ここで言う直線部とは、導電性繊維の直交断面形状の輪郭が直線である部分を言う。
そのような形状の例として、多角形を挙げることができる。図3(a)にフィラメントの断面形状が四角形のマルチフィラメントの例を、図3(b)にフィラメントの断面形状が三角形のマルチフィラメントの例を示す。この様な構成とすることで、フィラメント同士が面で接触することが可能となり、強固な導電パスが形成されやすくなる。
さらに、このような構成とすることで、フィラメントの直線部同士の接触部には空間が存在しなくなるため、フィラメント周囲の空間が減少しやすく、強固な導電パスを形成するとともにフィラメント近傍の樹脂リッチを防ぎやすい。樹脂リッチは破壊起点となることから、以上の構成は機械特性の観点からも好ましい態様である。
[導電性繊維に係るさらに別の好ましい態様]
本発明にかかる導電性繊維として、金属被覆合成繊維、樹脂被覆金属繊維、および導電性合成繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つの導電性繊維であることが好ましい。
これらの導電性繊維は特に金属繊維と比較してしなやかで柔らかく、また、特に炭素繊維と比較して擦過による糸切れが生じにくい。したがって、これらの導電性繊維を用いた強化繊維基材は大変形させた場合であっても面内全体にわたって均一に変形しやすく、製品形状への賦形時に形状によく追従する。これにより、強化繊維基材の歪な変形が防止され、強化繊維基材の局所的な厚み低下を抑制されるため、隣接する強化繊維基材の導電性繊維同士が接触しやすく、良好な導電パスを得やすい。
中でも、金属被覆合成繊維と樹脂被覆金属繊維は、特に高い導電性を有することから、板厚方向の導電性を特に向上できる。
また、導電性合成繊維の表面を金属で被覆した金属被覆合成繊維は特に好ましい態様である。強化繊維基材の賦形時や注入成形時に表面を被覆する金属が部分的に剥がれた場合であっても、内部の導電性合成繊維が導電パスとなり、導電性の低下を抑制することができる。
[金属被覆合成繊維、樹脂被覆金属繊維、および導電性合成繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つの導電性繊維に係るさらに別の好ましい態様]
本発明において、金属被覆合成繊維、樹脂被覆金属繊維、および導電性合成繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つの導電性繊維を用いる場合、導電性繊維の少なくとも一部分の軟化点が80℃以上180℃以下であることが好ましい。さらに、より好ましくは100℃以上160℃以下である。
ここで言う少なくとも一部分とは、導電性繊維の体積の5%を意味する。なお、導電性繊維がマルチフィラメントであり、導電性を有するフィラメントと導電性を有しないフィラメントから構成される場合は、導電性を有するフィラメントの合計体積の5%を意味する。
ここで本発明において軟化点とは、合成繊維が結晶性ポリマーの場合は融点、非晶性ポリマーの場合はガラス転移温度を指し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、JIS K7121(1987)にしたがい10℃/分の昇温速度で測定した値を指す。軟化点が80℃未満であると、FRPの耐熱性が低下するため好ましくない。また軟化点が180℃を超えると成形中に導電性繊維の少なくとも一部分が軟化できない場合がある。すなわち、合成繊維の軟化点の上限は、FRP成形時の成形温度より低いことが望ましい。
導電性繊維の軟化する部分は、樹脂被覆金属繊維に用いる被覆樹脂、金属被覆合成繊維に用いる合成繊維、導電性合成繊維の導電性フィラーを除く合成繊維の部分、金属被覆合成繊維をさらに樹脂材料でコーティングする樹脂材料、のいずれかである。
導電性繊維の少なくとも一部分が軟化することで、導電性繊維の断面形状が変形しやすくなる。したがって、強化繊維基材への加熱・加圧によって、導電性繊維同士の接触部分の接触面積が大きくなるように導電性繊維の断面形状が変形し、強固な導電パスが形成されやすくなる。
さらに、このような構成とすることで、導電性繊維同士の接触部周囲の空間が減少しやすく、強固な導電パスを形成するとともに導電性繊維同士の接触部近傍の樹脂リッチを防ぎやすい。樹脂リッチは破壊起点となることから、以上の構成は機械特性の観点からも好ましい態様である。
加えて、表面が樹脂材料である導電性繊維を用いる場合は、軟化点を80℃以上180℃以下とすることで、注入成形時の加熱によって樹脂材料が溶融して金属や導電性フィラーが露出し、周囲の導電性繊維と接触して導電性を発揮することができる。
[強化繊維基材に係る好ましい態様]
本発明の積層体は、本発明の強化繊維基材を2枚以上積層した積層体であって、全ての隣接する2枚の強化繊維基材の層間において、一方の強化繊維基材における導電性繊維FC1の配向方向と他方の強化繊維基材における導電性繊維FC2の配向方向との成す角度が30度以上90度以下である。
図4は、本発明の積層体の一実施態様を示している。図4(a)において、10は積層体の上面図を示している。積層体は11で示す強化繊維基材(45度に引き揃えられた強化繊維からなる強化繊維層と-45度に引き揃えられた強化繊維からなる強化繊維層が、導電性繊維により固定された強化繊維基材)と12で示す強化繊維基材(0度に引き揃えられた強化繊維からなる強化繊維層と90度に引き揃えられた強化繊維からなる強化繊維層が、導電性繊維により固定された強化繊維基材)とから構成される擬似等方積層[45/-45/0/90]3S(24層:ここで「3S」とは、[ ]内に示す配向角度順に積層したものと対称〔Symmetry〕配置となるように積層したものとを合わせて1組(4層×2=8層)とし、これを3組積層(8層×3=24層)した態様を示す。以下同じ。)である。強化繊維基材の表面において、導電性繊維は0度方向または90度方向に配向している。また、強化繊維基材の表面において、導電性繊維は45度方向または-45度方向に配向している。この積層体10のB-B’断面が図4(b)および図4(c)に示される。なお、図4(b)には積層体の表面から2枚のみを抽出して表示している。また、図4(c)には積層体の板厚中央の2枚のみを抽出して表示している。図4(b)、(c)に示すように、全ての隣接する2枚の強化繊維基材の層間において、一方の強化繊維基材における導電性繊維FC1の配向方向と他方の強化繊維基材における導電性繊維FC2の配向方向との成す角度が45度の角度で接触している。
このような構成とすることで、一方の強化繊維基材における導電性繊維と他方の強化繊維基材の導電性繊維が接触しやすく、注入成形後のFRPの厚み方向に導電パスを形成することができる。
本発明の積層体は、1つ以上の隣接する2枚の強化繊維基材の層間において、無負荷状態において導電繊維同士が結合した部分的結合部を有することが好ましい。部分的結合部において、一方の強化繊維基材に配された導電性繊維FC1と他方の強化繊維基材に配されたFC2とが結合し、板厚方向の導電経路を形成する。これらの導電性繊維を結合させる方法としては、加熱・加圧による融着、接着剤やバインダによる接着、化学反応による結合、溶射などの機械的結合、はんだ付けが挙げられる。
強固に結合できるという点で、バインダや接着剤を用いた接着を好ましく用いることができる。バインダや接着剤としては、前述の合成繊維に用いる樹脂材料として記載した樹脂材料を用いることができる。
また、積層体が表面を樹脂材料でコーティングした導電性繊維を用いた強化繊維基材を積層したものである場合は、導電性繊維の表面をコーティングしている樹脂材料をバインダや接着剤として用いることもできる。このような構成は、接着剤やバインダの塗布工程を省略でき、さら導電性繊維近傍に付着した樹脂材料を利用することで強化繊維基材の質量増加を最小限に抑えつつ導電性繊維同士を強固に結合できるため、生産上の観点と機械特性上の観点から好ましい態様である。
本発明の積層体は、1つ以上の隣接する2枚の強化繊維基材の層間において、一方の強化繊維基材の導電性繊維FC1の配向方向と他方の強化繊維基材の強化繊維FR2の配向方向が等しいことが好ましく、これに加えて一方の強化繊維基材の強化繊維FR1の配向方向と他方の強化繊維基材の導電性繊維FC2の配向方向が等しいことがさらに好ましい。
このような構成とすることで、一方の強化繊維基材の導電性繊維を他方の強化繊維基材の強化繊維層内に埋没させることができるため、層間における強化繊維の蛇行を抑制でき、導電性繊維同士を接触させて導電パスを良好に形成しつつも、優れた機械特性を発現するFRPを得ることができる。
なお、導電性繊維の配向方向と強化繊維の配向方向が等しい状態とは、それぞれの配向角の差が±5度以内である場合を指す。この範囲内であれば、前述の繊維蛇行抑制の効果を好ましく発現できる。また、それぞれの配向角の差が±3度以内であれば、導電性向上の効果を好ましく発現できる。
以下、実施例を用いて本発明を更に説明する。実施例および比較例に用いた原材料および成形方法は、次の通りである。実施例の結果を表1に、比較例の結果を表2にまとめた。なお、本発明はこれら実施例および比較例に限定されるものではない。
<導電性繊維>
・導電性繊維A:ミツフジ製銀被覆合成繊維(AGposs、フィラメント数:34本、繊度:155dtex、電気導電率:1.57×10S/m、マルチフィラメント捲縮糸)
・導電性繊維B:東レ製ポリエステル繊維(フィラメント数:72本、繊度:220dtex、電気導電率:10-7~10-9S/m、マルチフィラメント無捲縮糸)を無電解銅メッキした繊維(フィラメント数:72本、繊度:610dtex、電気導電率:1.3×10S/m、マルチフィラメント無捲縮糸)
・導電性繊維C:EMS-CHEMIE社製 ポリアミド繊維 Grilon(登録商標) K-140(フィラメント数:4本、繊度:23dTex、軟化点:140℃)を無電解銅メッキした繊維(フィラメント数:4本、繊度:54dTex)。
<代替繊維(比較例で導電性繊維の代わりに用いた繊維)>
・代替繊維:東レ製 ポリエステル繊維(フィラメント数:36本、繊度:110dTex、マルチフィラメント捲縮糸)。
<強化繊維>
・強化繊維A:PAN系炭素繊維、24,000フィラメント、剛軟度:145mN・cm
・強化繊維B:PAN系炭素繊維、12,000フィラメント、剛軟度:96mN・cm
・強化繊維C:PAN系炭素繊維、12,000フィラメント、剛軟度:54mN・cm
・強化繊維X:PAN系炭素繊維、12,000フィラメント、剛軟度:267mN・cm
・強化繊維Y:PAN系炭素繊維、12,000フィラメント、剛軟度:9mN・cm。
<強化繊維基材>
作業台の上で、ボビンから繰り出した強化繊維を所定の長さに切り出し、束がねじれないように注意しながら、およそ500mm×500mmの範囲に並行に0度方向に引き揃えた。引き揃えた強化繊維束群の端部をマスキングテープにより固定し、1層の強化繊維層を製作した。
続いて、1層の強化繊維層の上に不織布を配置した。この不織布は、ポリアミド6が20モル%、ポリアミド12が80モル%となるように調製し重合した樹脂(融点:150℃)をメルトブロー装置により不織布化したもので、目付は10gsmであった。
次に、ボビンから繰り出した強化繊維を所定の長さに切り出し、束がねじれないように注意しながら、不織布の上に、およそ500mm×500mmの範囲に並行に90度方向に引き揃えた。引き揃えた強化繊維束群の端部をマスキングテープにより固定し、合計2層の強化繊維層とした。
さらに、2層の強化繊維層の上に先ほどと同じ不織布を配置した。
続いて、45度方向に沿って、導電性繊維または代替繊維により縫いとめて固定し、強化繊維基材とした。縫いとめる作業は手縫いで実施し、並縫いした後、同間隔で返し縫いをした。強化繊維基材を厚み方向に貫通する貫通部の位置は並縫い時と返し縫い時で一致しており、貫通部1か所あたり2本の導電性繊維または代替繊維が貫通していた。なお、強化繊維の目付は550gsmとした。
なお、実施例6では縫い目の間隔を5mm、列間隔を5mmとし、その他の実施例と比較例では縫い目の間隔を10mm、列間隔を10mmとした。
<マトリックス樹脂>
強化繊維基材を注入成形するにあたり、マトリックス樹脂として次の主液100質量部に、次の硬化液を39質量部加え、80℃にて均一に様に撹拌したエポキシ樹脂組成物を用いた。
主液:エポキシとして、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ(“アラルダイト”(登録商標)MY-721、ハンツマン・ジャパン(株)製)40質量部、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“EPON”(登録商標)825、三菱ケミカル(株)製)35質量部、ジグリシジルアニリン(GAN、日本化薬(株)製)15質量部、および、トリグリシジルアミノフェノール型エポキシ樹脂(“jER”(登録商標)630、三菱ケミカル(株)製)10質量部をそれぞれ計り取り、70℃で1時間攪拌して均一溶解させた。
硬化液:変性芳香族ポリアミン(“jERキュア”(登録商標)W、三菱ケミカル(株)製)70質量部、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(三井化学ファイン(株)製)20質量部、および、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(“セイカキュア”S、セイカ(株)製)10質量部、それぞれ計り取り、100℃で1時間攪拌して均一にした後に70℃に降温して、硬化促進剤として、t-ブチルカテコール(DIC-TBC、DIC(株)製)2質量部を計り取り、更に70℃で30分間攪拌して均一溶解させた。
<強化繊維基材を用いた積層体(以下、強化繊維積層体>
強化繊維基材を擬似等方積層[(45/-45)/(0/90)]3S(24層:ここで「3S」とは、[ ]内に示す配向角度順に積層したものと対称〔Symmetry〕配置となるように積層したものとを合わせて1組(4層×2=8層)とし、これを3組積層(8層×3=24層)した態様を示す。以下同じ。( )は2層の強化繊維層を含む1枚の強化繊維基材の範囲を示す。)の構成で積層した。このとき、下面側の12層は不織布が上面側を向くように、残りの上面側の12層は不織布が下面側を向くように積層し、強化繊維積層体を得た。
なお、強化繊維積層体は12枚の強化繊維基材から構成されるが、参考実施例では6枚目の強化繊維基材における導電性繊維の配向方向と7枚目の強化繊維基材における導電性繊維の配向方向との成す角度を0度とし、導電性繊維が6枚目と7枚目の層間で接触しないように配置した。一方、その他の比較例と実施例では6枚目の強化繊維基材における導電性繊維(または代替繊維)の配向方向と7枚目の強化繊維基材における導電性繊維(または代替繊維)の配向方向との成す角度を90度とした。また、全ての実施例と比較例について、6枚目と7枚目の層間以外の層間における一方の強化繊維基材における導電性繊維(または代替繊維)の配向方向と他方の強化繊維基材における導電性繊維(または代替繊維)の配向方向との成す角度は45度とした。
<FRP>
強化繊維積層体上に樹脂拡散媒体(アルミ金網)を積層し、平面状の成形金型とバッグ材とでシーラントを用いて密閉することによりキャビティを形成し、100℃のオーブン中に入れた。強化繊維積層体の温度が100℃に達した後に密閉したキャビティを真空に減圧して、マトリックス樹脂を100℃に保ちながら大気圧との差圧のみで注入した。樹脂が含浸した後、減圧を続けながら180℃に昇温し、2時間放置して硬化させて脱型し、平板を得た。
<板厚方向の導電性>
板厚方向の導電性は、DIN EN2004-1およびASTM E1004に従って4端子法または渦電流方法により測定できる。本発明では4端子法で平板の板厚方向の導電性を測定した。
<FRPのVf>
FRPのVfはJISK7075(1991)に記載の燃焼法に基づいて求めることができる。本発明では燃焼法で平板のVfを測定した。
Figure 2024032103000002
Figure 2024032103000003
本発明の複合不織布、ならびに炭素繊維基材は、航空機や自動車、船舶等向けの大型部材や、風車ブレードのような一般産業用途の部材にも好適に使用できる。
1 強化繊維基材
10 積層体
11 強化繊維基材
12 強化繊維基材
20 強化繊維層
30 導電性繊維

Claims (10)

  1. 平行に引き揃えられた強化繊維からなる少なくとも1層以上の強化繊維層を導電性繊維で固定した強化繊維基材であって、前記導電性繊維が前記強化繊維基材を厚み方向に貫通する貫通部を有し、無負荷状態における強化繊維の見かけ体積含有率が25%以上50%以下であることを特徴とする、強化繊維基材。
  2. 前記強化繊維の剛軟度が10mN・cm以上200mN・cm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の強化繊維基材。
  3. 前記貫通部を40,000か所/m以上有することを特徴とする、請求項1または2に記載の強化繊維基材。
  4. 前記強化繊維基材の両表面において、前記導電性繊維の配向方向と前記強化繊維の配向方向との成す角度が30度以上90度以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の強化繊維基材。
  5. 前記導電性繊維がマルチフィラメントであることを特徴とする、請求項1または2に記載の強化繊維基材。
  6. 前記導電性繊維の直交断面形状の円形度が0.8未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の強化繊維基材。
  7. 前記導電性繊維の直交断面形状が直線部を有する、請求項1または2に記載の強化繊維基材。
  8. 前記導電性繊維が金属被覆合成繊維、樹脂被覆金属繊維、および導電性合成繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つの導電性繊維であることを特徴とする、請求項1または2に記載の強化繊維基材。
  9. 前記導電性繊維の少なくとも一部分の軟化点が80℃以上180℃以下であることを特徴とする、請求項8に記載の強化繊維基材。
  10. 請求項1または2に記載の強化繊維基材を2枚以上積層した積層体であって、全ての隣接する2枚の前記強化繊維基材の層間において、一方の前記強化繊維基材における前記導電性繊維の配向方向と他方の前記強化繊維基材における導電性繊維の配向方向との成す角度が30度以上90度以下であることを特徴とする、積層体。
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