JP2024031105A - 線維症治療又は予防薬 - Google Patents

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JP2024031105A
JP2024031105A JP2022134436A JP2022134436A JP2024031105A JP 2024031105 A JP2024031105 A JP 2024031105A JP 2022134436 A JP2022134436 A JP 2022134436A JP 2022134436 A JP2022134436 A JP 2022134436A JP 2024031105 A JP2024031105 A JP 2024031105A
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篤 宮島
丈友 木戸
泰博 中野
みつる 宮戸
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Abstract

【課題】線維症の治療又は予防に用いることが可能な化合物を提供すること。【解決手段】式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、線維症の治療薬又は予防薬。JPEG2024031105000020.jpg41170【選択図】なし

Description

本発明は、新規な線維症治療薬又は線維症予防薬に関する。具体的には、本発明は、複素環アルキニルベンゼン化合物(アルキニルベンゼン化合物)を含む、線維症の治療薬又は予防薬に関する。
線維症は、コラーゲン等の細胞外基質が過剰沈着し、臓器等の機能不全を引き起こす病態である。線維症は、がん、並びに、糖尿病・高血圧症・脂質異常症等に起因する循環器疾患、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、アルコール性及び非アルコール性の脂肪肝疾患(NASHやNAFLDを含む)等の様々な疾患に共通して認められる。さらに、肝臓や膵臓、肺等の臓器における線維症は、癌の発生母地にもなる。
線維症を引き起こす線維化は、創傷治癒プロセスの一つであり、心臓、脳、消化器、皮膚、肺、腎臓、造血器官、後腹膜、縦隔、及び関節といった多様な臓器で起こる。過剰な線維化は臓器の機能障害を引き起こし、病態形成を進行させるため、線維症の治療及び予防は重要な課題である。
しかしながら、線維症の有効な治療方法や治療薬は確立されていない。
特許文献1には、複素環アルキニルベンゼン化合物、その薬学的に許容される塩等を含む、腫瘍を予防又は治療するための薬剤が開示されている。
特表2013-529652号公報
上述したように、線維症の治療方法は確立されておらず、線維症を治療又は予防可能な新たな医薬品の開発が望まれている。
本発明が解決しようとする課題は、線維症の治療又は予防に用いることが可能な化合物を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、所定の化合物が、線維症の治療又は予防に有効であることを見出し、本発明を完成した。特に、本発明は、所定の化合物が、活性化肝星細胞における脱活性化作用を有することを見出したことに基づく。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
下記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、線維症の治療薬又は予防薬。
式(I):
(式(I)中、
1)L1は、NHであり、R1は、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、又は置換されていてもよい芳香族基であるか、
2)L1は、窒素原子であり、L1とR1が一緒になって、置換されていてもよい炭化水素基で二置換された3級アミノ基、又は5~7員の、置換されていてもよい、さらに1個の窒素原子又は酸素原子を含んでいてもよいヘテロ環を形成するか、
3)L1とR1は、環AのZと一緒になって、以下の縮合環を形成し、
該縮合環は、以下の構造のいずれか1つから選択され、
2は、水素原子、又は置換されていてもよい炭化水素基であり、
2は、NH-CO又はCO-NHであり、
3~R5を含む環Cは、以下の構造のいずれか1つから選択される。
(上記構造中、
Het1は、置換されていてもよい、1~3個の窒素原子を含むヘテロ環基であり、
Het2は、置換されていてもよい、1~3個の窒素原子、酸素原子、及び/又は硫黄原子を含む5員環であるヘテロアリールであり、
6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよい炭化水素基であるか、
6及びR7は結合する窒素原子と一緒になって、さらに酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含んでいてもよい、ヘテロ環を形成する。)
なお、Het1及びHet2における置換基は、置換されていてもよい炭化水素基であるか、NR67(R6及びR7は、上記と同義である。)であることが好ましい。
[2]
オルベレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む、線維症の治療薬又は予防薬。
本発明における式(I)で表される化合物については、特許文献1に開示されるように、
式(I)中、
Zは、CH又は窒素原子(N)として選択され、
1は、NH、-N=、及びCHから独立に選択され、
2は、-CONH-又は-NHCO-として選択され、
1は、
1)水素原子(H);
2)C1~C6アルキル;
3)C3~C6シクロアルキル;
4)1つ又は2つのヒドロキシル基(OH)で置換されたC1~C6アルキル(1つ又は2つのヒドロキシル基(OH)で置換されたC1~C5アルキルであってよい);
5)フェニル;
6)Z原子部位のL1を介してA環を縮合して、
のような1~3個の窒素原子(N)を含む縮合ペンタ複素環(式中、X、Y、Zは窒素原子(N)、CHから独立に選択され;環Dは1~3個の窒素原子(N)を含む芳香族複素環である)を形成することができる基;
から独立に選択され、
2は、
1)水素原子(H);
2)ハロゲン原子(ハロゲン);
3)C1~C6アルキル(C1~C5アルキルであってよい);
4)C3~C6シクロアルキル;
5)Fを含むC1~C6アルキル(Fを含むC1~C5アルキルであってよい);
から独立に選択され、
3は、
1)水素原子(H);
2)ハロゲン原子(ハロゲン);
3)C1~C6アルキル(C1~C4アルキルであってよい);
4)C3~C6シクロアルキル;
5)Fを含むC1~C6アルキル(Fを含むC1~C4アルキルであってよい);
から独立に選択され、
5が水素原子(H)である場合、R4は、
1)水素原子(H);
2)(CH2nNR67
3)(CH2n-Het1
から独立に選択されるか、
4が水素原子(H)である場合、R5は、
1)水素原子(H);
2)Het2
として選択され
(式中、
nは0又は1として選択され、
Het1は、1~3個の窒素原子(N)を含む非芳香族複素環と定義され、
Het2は窒素原子(N)、酸素原子(O)、又は硫黄原子(S)のような1~3個のヘテロ原子を含む芳香族5員複素環と定義され、
アルキル、シクロアルキル、又はNR67が、Het1及びHet2の置換されていてもよい任意の炭素原子(C)又は窒素原子(N)の位置に組み込まれる)、
6又はR7は、
1)水素原子(H);
2)C1~C6アルキル(C1~C3アルキルであってよい);
3)Fを含むC1~C6アルキル(Fを含むC1~C3アルキルであってよい);
4)C3~C6シクロアルキル;
から独立に選択され、
あるいは、R6及びR7はさらに炭素原子(C)、酸素原子(O)、窒素原子(N)、又は硫黄原子(S)を介して5原子、6原子、7原子、又は8原子の環を形成していてもよい)
であってよい。
また、特許文献1において、式(I)として定義される、Z、L1、L2、R1~R7、X、Y、Z、環A、環D、Het1、Het2、及びnのそれぞれは、特許文献1において、好ましい態様として記載される態様であってよく、また、任意の組み合わせを選択可能である。
本発明における式(I)で表される化合物は、下記式(II)~(V)で表されるいずれかの構造を有する化合物であってよい。
式(II)~(V)におけるZ、L1、L2、R1~R7、X、Y、Z、環A、環D、Het1、Het2、及びnのそれぞれは、式(I)における定義と同義であり、特許文献1において、好ましい態様として記載される態様であってよく、また、任意の組み合わせを選択可能である。
式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を、以下、アルキニルベンゼン化合物と記載する場合がある。
アルキニルベンゼン化合物としては、特に限定されないが、例えば、以下のアルキニルベンゼン化合物が挙げられる。
3-(2-(2-(シクロプロピルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(2-(シクロプロピルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)-4-メチルベンズアミド;
4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(2-(メチルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)ベンズアミド;
3-(2-(2-(エチルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(2-(ピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-イル)エチニル)ベンズアミド;
3-(2-(6-アミノピリジン-3-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-(2-(シクロプロピルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-(3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-6-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
4-メチル-N-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
3-(2-(2-(シクロヘキシルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(2-(フェニルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)ベンズアミド;
3-(2-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-(2-(2-ヒドロキシエチルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-メチル-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
4-メチル-N-(3-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
3-(2-(イミダゾ[1,2-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチルベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-([1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-(2-((S)-2,3-ジヒドロキシプロピルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-(2-(ジエチルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-(2-(tert-ブチルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-(2-(イソプロピルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-(2-アミノピリミジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
4-メチル-N-(4-(モルホリノメチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
N-(4-((4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-メチル-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
(S)-N-(4-((3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-メチル-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
N-(3-tert-ブチル-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)フェニル)-4-メチル-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-N-(3-tert-ブチル-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)フェニル)-4-メチルベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-N-(3-フルオロ-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)フェニル)-4-メチルベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-N-(3-クロロ-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)フェニル)-4-メチルベンズアミド;
(R)-N-(4-((3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-メチル-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
(S)-3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-N-(4-((3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-メチルベンズアミド;
(R)-3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-N-(4-((3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-メチルベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-N-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミドビメシレート;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミドジヒドロクロリド;
メチル-N-(3-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミドメシレート;
N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-メチル-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミドメシレート;
3-(2-(2-(シクロプロピルアミノ)ピリミジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミドトリメシラート;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミドメシレート;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-N-(3-tert-ブチル-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)フェニル)-4-メチルベンズアミドメシレート;
4-メチル-N-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミドジメシレート
また、本発明におけるアルキニルベンゼン化合物としては、特に限定されないが、特許文献1の実施例において、開示される化合物であってよい。また、本発明におけるアルキニルベンゼン化合物としては、特に限定されないが、特許文献1の実施例において、薬理試験結果と共に開示される化合物であってよい。
本発明における式(I)で表される化合物については、特許第5756518号公報に開示されるように、上記式(I)中、
1はZ原子部位のL1を介してA環を縮合して、
2-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イルであるか、
1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イルであり、
2は、-CONH-又は-NHCO-として選択され、
2は、C1~C6アルキル(メチルであってよい)であり、
3は、Fを含むC1~C6アルキル(CF3であってよい)であり、
5が、水素原子(H)である場合、R4は、(CH2n-Het1であり、あるいは、R4が水素原子(H)である場合、R5は、Het2である。
(式中、
nは0又は1として選択され、
Het1は1~3個の窒素原子(N)を含む非芳香族複素環と定義され、
Het2は、イミダゾリル基又はトリアゾリル基である)
上記化合物に該当するものとして、特に限定されないが、具体的には、以下のアルキニルベンゼン化合物が挙げられる。
4は、-メチル-N-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-メチル-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
4-メチル-N-(3-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチルベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
4-メチル-N-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド;
N-(4-((4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-メチル-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
(S)-N-(4-((3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-メチル-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミド;
(R)-N-(4-((3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-メチル-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]6-イル)エチニル)ベンズアミドメシレート;
N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-メチル-3-(2-(ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-イル)エチニル)ベンズアミドメシレート;
3-(2-(1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-5-イル)エチニル)-4-メチル-N-(3-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミドメシレート
本発明におけるアルキニルベンゼン化合物としては、特に限定されないが、オルベレンバチニブとして知られる化合物であってよく、以下の構造を有する化合物であってよい。また、オルベレレンバチニブは、GZD824としても知られる化合物であり、その二メシル酸塩は、HQP1351としても知られている。
本発明におけるアルキニルベンゼン化合物としては、特に限定されないが、上記構造における
に相当する基が、オルベレンバチニブにおける構造を含め、以下の構造から選択される基であってもよく、及び/又は
本発明におけるアルキニルベンゼン化合物としては、特に限定されないが、上記構造における
に相当する基が、オルベレンバチニブにおける構造を含め、以下の構造から選択される基であってもよい。
なお、上記構造中、R3、R6、R7、Het1、及びHet2のそれぞれは、式(I)における定義と同義であり、特許文献1において、好ましい態様として記載される態様であってよく、また、任意の組み合わせを選択可能である。
本明細書において、式(I)で表される化合物におけるHet2は、特に限定されないが、例えば、イミダゾリル、トリアゾリル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリルであってよい。これらHet2は、置換基により置換されていてもよい。
また、本明細書において、式(I)で表される化合物におけるR3、R6、R7、Het1、及びHet2のそれぞれは、上記具体的に開示される化合物において相当する基であってもよい。
本明細書において、式(I)で表される化合物についての説明は、式(I)で表される化合物の薬学的に許容される塩についても適用される。すなわち、式(I)で表される化合物として好ましい態様は、その薬学的に許容される塩において好ましい態様であってよい。
本発明によれば、線維症の治療又は予防用として新規な化合物を提供することができる。
細胞培養実験の概念図を示す。 Olverembatinib(オルベレンバチニブ)による活性化肝星細胞の脱活性化誘導における各種マーカー遺伝子における発現量の結果を示す。活性化マーカー遺伝子としてACTA2とCOL1A1、脱活性化マーカー遺伝子としてTCF21、LRAT、LHX2、MDKを用いた。オルベレンバチニブの濃度依存的に、ACTA2とCOL1A1の発現が減少し、また、TCF21、LRAT、LHX2、MDKの発現が増加した。オルベレンバチニブ 5nM添加群のサンプル数は2で、他の濃度でのオルベレンバチニブ添加群のサンプル数は4である。 肝線維症モデルマウスを用いた動物実験の概念図を示す。 オルベレンバチニブの投与による肝肥大の改善効果における結果を示す。TAA 8w群 6匹、DMSO投与群 5匹、オルベレンバチニブ投与群 6匹の結果を示す。ここで、TAA 8w群は、通常の飲水(TAA不含)に切り替えた群である。以下の図において同様である。オルベレンバチニブの投与によって、体重には変化は認められなかった。一方、肝重量及び肝重量比がTAA 8w群やDMSO投与群と比べて有意に減少したことから、オルベレンバチニブ投与群において肝肥大の改善が認められた。***, P < 0.001。 オルベレンバチニブの投与による肝機能の改善効果における結果を示す。血清中のALT値とLDH値がTAA 8w群やDMSO投与群と比べてオルベレンバチニブ投与群で有意に減少した。AST値は減少傾向が確認された。*, P < 0.05; ***, P < 0.001。 オルベレンバチニブの投与による肝線維化の改善効果における結果を示す。TAA 8w群やDMSO投与群で認められたアズキ色で染色されたコラーゲン線維が、オルベレンバチニブの投与によって顕著に減少した。定量解析の結果においても、TAA 8w群やDMSO投与群と比べてオルベレンバチニブ投与群で有意に減少していることが確認された。*, P < 0.05; ***, P < 0.001。スケールバーは100μm。 オルベレンバチニブの投与による肝線維症モデルマウス肝臓内の活性化肝星細胞の脱活性化誘導における結果を示す。TAA 8w群やDMSO投与群で認められたDesmin陽性Collagen I陽性活性化肝星細胞が、オルベレンバチニブの投与によって顕著に減少し、Desmin単独陽性肝星細胞(脱活性化肝星細胞)へと変化していた。定量解析の結果においても、TAA 8w群やDMSO投与群と比べてオルベレンバチニブ投与群でDesmin陽性Collagen I陽性活性化肝星細胞は有意に減少していることが確認された。***, P < 0.001。スケールバーは100μm。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明は、下記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、線維症の治療薬又は予防薬に関する。
式(I):
(式(I)中、
1)L1は、NHであり、R1は、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、又は置換されていてもよい芳香族基であるか、
2)L1は、窒素原子であり、L1とR1が一緒になって、置換されていてもよい炭化水素基で二置換された3級アミノ基、又は5~7員の、置換されていてもよい、さらに1個の窒素原子又は酸素原子を含んでいてもよいヘテロ環を形成するか、
3)L1とR1は、環AのZと一緒になって、以下の縮合環を形成し、
該縮合環は、以下の構造のいずれか1つから選択され、
2は、水素原子、又は置換されていてもよい炭化水素基であり、
2は、NH-CO又はCO-NHであり、
3~R5を含む環Cは、以下の構造のいずれか1つから選択される。
(上記構造中、
Het1は、置換されていてもよい、1~3個の窒素原子を含むヘテロ環基であり、
Het2は、置換されていてもよい、1~3個の窒素原子、酸素原子、及び/又は硫黄原子を含む5員環であるヘテロアリールであり、
6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよい炭化水素基であるか、
6及びR7は結合する窒素原子と一緒になって、さらに酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含んでいてもよい、ヘテロ環を形成する。)
本発明においては、これまで、稲垣豊、“臓器線維症の病態解明と新たな診断・予防・治療法開発のための拠点形成、平成27年度~令和元年度 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業研究成果報告書”、[online]、令和2年5月、[令和4年8月22日検索]、インターネット<URL:https://www.u-tokai.ac.jp/uploads/2021/03/200520.pdf>にも開示されるように、線維症の有効な治療方法や治療薬が確立されていないことに基づいて、線維症の有効な治療方法や治療薬あるいは線維症の有効な予防方法や予防薬を提供することを目的している。
上記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩が、活性化肝星細胞に対して脱活性化作用を有することを見出したことにより、本発明は、線維症の有効な治療方法や予防方法への道を切り開くものである。
この点、活性化肝星細胞に対して脱活性化作用を有することを見出したことのみならず、実施例において具体的に示すように、肝臓以外の他の臓器由来の線維芽細胞に対しても脱活性化作用を有することを見出しており、本発明は、線維症の有効な治療方法や予防方法への道を切り開くものである。
本発明は、本明細書全体で開示される式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、新規な線維症の治療薬又は予防薬に関する。
なお、特許文献1(特表2013-529652号公報)、特許第5756518号公報、及び国際公開第2012/000304号に記載される内容の全体が参照により本明細書に取り込まれる。すなわち、本明細書は、特許文献1(特表2013-529652号公報)、特許第5756518号公報、及び国際公開第2012/000304号に記載される内容の全てを参照により包含する。
式(I)で表される化合物は、特許文献1に記載の方法に従って、製造可能である。また、場合により、市販品を用いることも可能である。
式(I)で表される化合物の薬学的に許容される塩は、特許文献1に記載の方法に従って、製造可能である。また、場合により、市販品を用いてもよく、公知の手法に従って、式(I)で表される化合物より製造可能である。
本発明は、以下の態様であってもよい。
[A]
線維症を治療又は予防する方法であって、それを必要とする対象(患者であってもよい)に治療学的に有効量の上記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
線維症を治療又は予防する方法であって、それを必要とする対象(患者であってもよい)に治療学的に有効量のオルベレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
[B]
線維症の治療又は予防するための、上記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
線維症の治療又は予防するための、オルベレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩。
[C]
線維症を治療又は予防するための、上記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
線維症を治療又は予防するための、オルベレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩の使用。
[D]
上記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、線維症の治療剤又は予防剤。
オルベレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む、線維症の治療剤又は予防剤。
[E]
上記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、線維症を治療又は予防する方法に使用するための医薬組成物(線維症の治療又は予防用の医薬組成物)。
オルベレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む、線維症を治療又は予防する方法に使用するための医薬組成物(線維症の治療又は予防用の医薬組成物)。
[F]
線維症の治療又は予防のための医薬組成物の製造における、上記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
線維症の治療又は予防のための医薬組成物の製造における、オルベレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩の使用。
ここで、線維症の治療薬又は予防薬の態様であるか、[A]~[F]のいずれかの態様において、
線維症が、心臓、脳、消化器、皮膚、肺、腎臓、造血器官、後腹膜、縦隔、又は関節における線維化であってよく、
線維症が、心臓線維症、消化器線維症、腸線維症、クローン病、肝線維症、肝硬変、慢性肝疾患、強皮症、特発性間質性肺炎、肺線維症、腎臓線維症、腎性全身性線維症、慢性腎臓病、慢性膵炎、嚢胞性線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、縦隔線維症、又は関節線維症であってよい。
また、線維症の治療薬又は予防薬の態様であるか、[A]~[F]のいずれかの態様において、本明細書において記載するいずれかの好ましい態様であってよい。また、線維症の治療薬又は予防薬の態様であるか、[A]~[F]のいずれかの態様において、本明細書において記載する任意の好ましい態様の組み合わせを選択してもよい。上記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩についても同様に、本明細書において記載するいずれかの好ましい態様であってよい。
本明細書において、「好ましい態様」には、より好ましい態様、さらに好ましい態様、及びよりさらに好ましい態様等が含まれる。
本明細書においては、上記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む線維芽様細胞(筋線維芽細胞)の脱活性化剤、好ましくは、活性化星細胞の脱活性化剤、より好ましくは、活性化肝星細胞の脱活性化剤であってもよい。また、各臓器における線維芽細胞の脱活性化剤であってもよい。
また、本明細書においては、オルベレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む線維芽様細胞(筋線維芽細胞)の脱活性化剤、好ましくは、活性化星細胞の脱活性化剤、より好ましくは、活性化肝星細胞の脱活性化剤であってもよい。また、各臓器における線維芽細胞の脱活性化剤であってもよい。
ここで、上記式(I)で表される化合物(好ましくは、オルベレンバチニブ)又はその薬学的に許容される塩の線維芽様細胞(筋線維芽細胞)の脱活性化作用による、線維症の治療薬又は予防薬の態様であるか、[A]~[F]のいずれかの態様であってよい。
また、本明細書においては、線維症の治療又は予防には、腫瘍の治療又は予防は含まれない。実質的に、線維症の治療又や予防により、腫瘍の治療又は予防につながる場合が考えられるが、本発明における線維症の治療又は予防における効能・効果は線維症であって、腫瘍ではない。上記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を、腫瘍の治療又は予防に用いたとしても、本発明における線維症の治療又は予防になるものではない。したがって、腫瘍における線維化の治療又は予防は、本発明から除かれてもよい。
本明細書において、「炭化水素基」には、「アルキル」、「アルケニル」、及び「アルキニル」が含まれる。また、炭化水素基には、炭素環から1つのHを減じた1価の基である炭素環基も含まれる。炭化水素基には、シクロアルキルが含まれる。
本明細書において、「アルキル」は、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなる炭化水素基である。アルキルの炭素数は、特に限定されないが、例えば、炭素数1~10個(C1~C10)であり、好ましくは炭素数1~6個(C1~C6)である。アルキルは、特に限定されないが、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、1,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、n-ノニル、n-デシル等が挙げられる。
アルキルは、置換基を1個以上有していてもよい。
本明細書において、「置換基」は、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルキニル基、ヒドロキシ基(OH)、アルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれであってもよい)、シアノ基、アミノ基、モノ若しくはジ置換アミノ基、置換シリル基、ニトロ基、アジド基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素環基、ヘテロ環基、及びアシル基等が挙げられる。これらの中で、ヒドロキシ基(OH)、アルコキシ基、ハロゲン原子(ハロゲン)、シアノ基、アミノ基、モノ若しくはジ置換アミノ基、置換シリル基、ニトロ基、アジド基、及びアシル基が好ましい。
2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
置換基の数は、1個以上、2個、3個、4個、5個と、置換基が結合する基や構造に応じて適宜決定されるが、1~3個であってよく、1又は2個であってよく、1個であってよい。
なお、本明細書において、「Fを含むアルキル」とは「Fで置換されたアルキル」と理解されるものであり、「Fを含むアルキル」との記載を「ハロゲン原子(ハロゲン)で置換されたアルキル」と読み替えることも可能である。
また、F又はハロゲン原子(ハロゲン)での置換の数は、1以上であり、1~5個であってよく、1~3個であってよく、3個であってもよい。
本明細書において、「アルケニル」は、アルキルに少なくとも1つの二重結合を有している炭化水素基であり、特に限定されないが、例えば、ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタンジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1,3-ペンタンジエニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、及び1,4-ヘキサンジエニル等が挙げられる。これらの中で、C2~C10アルケニルが好ましく、C2~C6アルケニルがより好ましく、C3~C6アルケニルがより好ましい。
アルケニルは、置換基を1個以上有していてもよい。
本明細書において、「アルキニル」は、アルキルに少なくとも1つの三重結合を有している炭化水素基であり、特に限定されないが、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、ブチニル、ブタジイニル、ペンチニル、ペンタジイニル、ヘキシニル、及びヘキサジイニル基等が挙げられる。
アルキニルは、置換基を1個以上有していてもよい。
本明細書において、「芳香族基」には、「アリール」と「ヘテロアリール」が含まれる。
本明細書において、「アリール」は、単環性アリール又は縮合多環性アリールのいずれであってもよく、特に限定されないが、例えば、フェニル、ナフチル、フェナントレニル、及びアントラセニル等が挙げられる。
アリールは、その環上に置換基を1個以上有していてもよい。
本明細書において、「ヘテロアリール」は、単環性ヘテロアリール又は縮合多環性ヘテロアリールのいずれであってもよく、芳香族環に環構成原子としてヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等)を1個以上含む。ヘテロアリールは、特に限定されないが、例えば、ピロリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、フリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニルキノリル、イソキノリル、ナフチリジニル、キノキサリニル、シンノリニル、キナゾリニル、フタラジニル、イミダゾピリジル、イミダゾチアゾリル、イミダゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ピロロピリジル、チエノピリジル、フロピリジル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ピリドピリミジニル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、チエノフリル、クロメニル、クロマニル、クマリニル、及びキノロニル等が挙げられる。
ヘテロアリールは、その環上に置換基を1個以上有していてもよい。
本明細書において、「炭素環」は、3~10員の単環又は二環式の炭素原子を構成原子とする環であり、特に限定されないが、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロノナン、シクロノネン、シクロノナジエン、シクロデカン、シクロデセン、ペンタレン、パーヒドロペンタレン、アズレン、パーヒドロアズレン、インデン、パーヒドロインデン、インダン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、及びパーヒドロナフタレン環等が挙げられる。
炭素環は、その環上に置換基を1個以上有していてもよい。
本明細書において、「ヘテロ環」は、炭素原子及び1~5個のヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子等)を含む、3~10員の単環又は二環式の環である。
ヘテロ環としては、特に限定されないが、例えば、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、イミダゾリジン、トリアゾリジン、テトラゾリジン、ピラゾリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、テトラヒドロフラザン、テトラヒドロオキサジアゾール(オキサジアゾリジン)、テトラヒドロチアジアゾール(チアジアゾリジン)、ジオキソラン、ジチオラ
ン、ピペリジン、ピペラジン、パーヒドロピリミジン、パーヒドロピリダジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、テトラヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジアジン、テトラヒドロチアジン、テトラヒドロチアジアジン、モルホリン、チオモルホリン、オキサチアン、ジオキサン、及びジチアン等が挙げられる。
ヘテロ環は、その環上に置換基を1個以上有していてもよい。
炭素環基又はヘテロ環基という場合、式(I)の構造式中においては、それぞれ、炭素環又はヘテロ環から1つのHを減じた基として存在する。
また、「ヘテロ環を形成」する場合、形成された基は、ヘテロ環基であってもよい。他の環においても同様である。
また、本明細書において、「複素環」、「芳香族複素環」、及び「非芳香族複素環」は、特許文献1に記載の意味で使用される用語であってもよいが、「複素環」は、本明細書におけるヘテロアリール又はヘテロ環基として理解されてもよく、「芳香族複素環」は、本明細書におけるヘテロアリールとして理解されてもよく、「非芳香族複素環」は、本明細書におけるヘテロ環基として理解されてもよい。中でも、「芳香族5員複素環」は、5員環であるヘテロアリールであってよい。
本明細書において、「薬学的に許容される塩」は、特に限定されないが、例えば、塩基付加塩、酸付加塩、及びアミノ酸付加塩等が挙げられる。
塩基付加塩として、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩等の金属塩、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩、ピペリジン塩、及びモルホリン塩等の有機アミン塩が挙げられ、酸付加塩としては、特に限定されないが、例えば、塩酸塩、硫酸塩、及び硝酸塩等の鉱酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、パラトルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、クエン酸塩、及びシュウ酸塩等の有機酸塩が挙げられる。アミノ酸付加塩としては、特に限定されないが、例えば、グリシン塩等が挙げられる。
また、本明細書において、「薬学的に許容される塩」としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸、および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、レモン酸、アスコルビン酸、bashing酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ-安息香酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、ヒドロキシエチルスルホン酸、トリフルオロ酢酸等との塩であってよい。
本明細書において、「治療又は予防」という用語は、治療的及び/又は予防的処置を含む。「予防的又は治療的」処置という用語は、当技術分野において承認されており、有効成分(Active Pharmaceutical Ingredient:API)の対象への投与を含む。有効成分は、医薬組成物として投与されてもよい。望ましくない状態(例えば、対象の疾患又は他の望ましくない状態)の臨床所見以前に有効成分が投与される場合、処置は予防的(すなわち、望ましくない状態の発症から対象を保護する)であるのに対して、望ましくない状態の所見後に有効成分が投与される場合、処置は治療的(すなわち、現存する望ましくない状態又はその副作用を減退、抑制、回復、又は安定化させることを意図する)である。
本明細書において、「医薬組成物」という用語は、有効成分と、添加剤(薬的に許容される成分等)とを含み、当業界において、汎用される、医薬製剤(pharmaceutical formulationやpharmaceutical preparation)であってよい。
本発明において、医薬組成物は、アルキニルベンゼン化合物を有効成分として少なくとも含む。
アルキニルベンゼン化合物を、治療薬又は予防薬等として投与する場合、投与される対象は、哺乳動物である。哺乳動物として、特に限定されないが、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、飼育動物、実験動物、及び家畜等が挙げられ、好ましくはヒトである。
本明細書において、治療薬又は予防薬等には、医薬組成物、治療剤又は予防剤、脱活性化剤等を包含する。
また、本明細書においては、対象は、線維症を罹患している対象であってよく、対象における線維症を治療又は予防するものである。
ここで、対象は、線維症を罹患している対象である場合に、癌又は腫瘍の治療を必要とする対象は除かれてもよい。さらに、癌又は腫瘍の予防を必要とする対象も除かれてもよい場合がある。
アルキニルベンゼン化合物を、治療薬又は予防薬等として投与する場合、特に限定されないが、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等として経口投与してよく、注射剤、点滴剤等として非経口的に投与してもよい。
製剤の調製においては、通常の添加剤を用い、常法により所望の剤形の医薬組成物を製造することができる。
経口用固形製剤を調製する場合は、有効成分に加え、賦形剤、更に必要に応じて、結合剤、崩壊剤、安定化剤、滑沢剤等の添加剤を加えた後、常法により錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等としてよい。
注射剤を調製する場合は、有効成分に加え、溶剤、必要に応じてpH調整剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤等を添加し、常法により皮下、静脈内用注射剤等としてよい。
注射剤である場合、一般には液剤となるが、製剤において溶剤と混合した液剤であってもよく、所定の時点で有効成分を含む部分と、溶剤を含む部分とを混合する用事調整型の製剤であってもよい。
有効成分であるアルキニルベンゼン化合物の投与量及び投与間隔は、投与される対象、投与経路、疾患、対象の年齢、体重及び症状によって適宜選択することができる。
例えば、経口投与の場合、特に限定されないが、例えば、成人に対して、有効成分の投与量は、1日当たり、0.01mg~10gであり、0.1mg~500mgであってよく、1~10mgであってもよい。なお、投与量は、フリー体での換算値であってもよい。
アルキニルベンゼン化合物の投与間隔は、1日の投与量を1日1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。
アルキニルベンゼン化合物は、式(I)で表される化合物のプロドラッグとして投与されてもよい。プロドラッグである場合に、アルキニルベンゼン化合物の投与量は、フリー体での換算値であってもよい。
(線維症)
本実施形態において、アルキニルベンゼン化合物は、線維症の治療又は予防に用いられる。
線維症は、様々な臓器・組織において起こる疾患であり、肝硬変、腎不全、心不全、膵臓ガン等へ移行する基礎疾患であることが知られており、臓器・組織における線維化を含む。
線維化は創傷治癒プロセスの一つであるが、過剰な線維化は臓器・組織本来の機能を障害して病態形成へと進行させる。特に肝硬変、強皮症、特発性肺炎等の線維化は、患者の予後を著しく悪化させ生命を脅かすため、本実施形態におけるアルキニルベンゼン化合物は、線維化に寄与する活性化状態の細胞に対する脱活性化作用により、これら線維化に対する有効な新規治療法又は新規予防法を提供する。
臓器・組織として、特に限定されないが、例えば、心臓、脳、消化器、皮膚、肺、腎臓、造血器官、後腹膜、縦隔、関節等が挙げられる。このような臓器における線維症として、特に限定されないが、例えば、心臓線維症、消化器線維症、腸線維症、クローン病、肝線維症、肝硬変、慢性肝疾患、強皮症、特発性間質性肺炎、肺線維症、腎臓線維症、腎性全身性線維症、慢性腎臓病、慢性膵炎、嚢胞性線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、縦隔線維症、関節線維症等が挙げられる。強皮症としては、全身性強皮症と限局性強皮症とが挙げられる。
線維症として、好ましくは、消化器、皮膚、肺、腎臓における線維症が挙げられ、より好ましくは、肝線維症、肝硬変、慢性肝疾患、強皮症、特発性間質性肺炎、肺線維症、腎臓線維症、腎性全身性線維症、慢性腎臓病、慢性膵炎等が挙げられる。
中でも、肝炎ウイルスや生活習慣により激増しているNASHやNAFLD等に起因する肝線維化は、移植以外に有効な治療法のない肝硬変へと進行する。肝線維化の改善は肝機能も改善することから、本実施形態におけるアルキニルベンゼン化合物は、肝線維症に対する治療又は予防に用いることができる。
本実施形態におけるアルキニルベンゼン化合物は、NASH、HBV感染、アルコールの過剰摂取等に伴う肝線維化の治療又は予防にも用いることができる。
また、難病指定の全身性強皮症に対して、本実施形態におけるアルキニルベンゼン化合物は、有効な治療又は予防法を提供し得る。加えて、難病指定の間質性肺線維症についても、本実施形態におけるアルキニルベンゼン化合物は、新規の線維症治療薬又は予防薬としてこうした難病の克服にも資する。さらに、本実施形態におけるアルキニルベンゼン化合物は、心臓、腎臓、膵臓、腸等の線維症においても有効な治療薬又は予防薬となり得る。
線維芽細胞又は肝星細胞等の線維芽様細胞(筋線維芽細胞)における活性化抑制及び脱活性化が、線維症の治療に有効であることが報告されている。
本発明においては、アルキニルベンゼン化合物が、線維芽様細胞(筋線維芽細胞)の活性化状態の細胞に対して作用して脱活性化を促進することによって、線維症の治療又は予防に用いることができる。
線維症が退縮した臓器では、線維芽様細胞(筋線維芽細胞)がアポトーシスを起こしたり、静止期状態のような脱活性化した細胞の状態になったりすることが知られている。脱活性化した線維芽様細胞(筋線維芽細胞)は、線維の産生と増殖を止め、プレイオトロフィンやミッドカイン等の細胞の環境因子を発現し、線維化の改善だけでなく、臓器組織の正常化にも寄与する。マウスの肝線維化モデルにおいて、線維芽様細胞である活性化肝星細胞に転写因子TCF21を導入すると、肝星細胞の脱活性化が促進されて、線維化が改善されるとともに、肝機能が改善したことが示されている。
本発明における脱活性化作用に基づく、線維症の治療又は予防については、例えば、以下の文献を参照することができる。なお、本実施形態におけるアルキニルベンゼン化合物は、線維症のモデル動物において治療又は予防効果を示すものでもある。
(1) Kisseleva, T. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology, 2021,18,151-166.
(2) Jun J.-II, J Clin Invest. 2018,128,97-107.
(3) Zisser, A. Biomedicines, 2021,9,365.
(4) Ueha, S. Front. Immunol., 2012,3,71.
(5) Yazdani, S. Advanced Drug Delivery Reviews, 2017,121,101-116.
(6) Junien, J.L. Hepatology Communications 2017,1,524-537.
(7) Bellusci, S. Cell Stem Cell 2017,21,166-177.
(8) Lafyatis, R. Nature Reviews Rheumatology, 2019,15,705-730.
(9) Wynn, T.A. Nature, 2022, 587, 555-566.
(10) Radstake, T. Nature Reviews Rheumatology, 2018,14,657-673.
(11) Varga, J. Nature Reviews Rheumatology, 2019,15,208-224.
(12) Reilly, O. Nature Reviews Rheumatology, 2021,17,596-697.
(13) Horton, M.R. J. Clin. Invest. 2021:131,e143226.
(14) Selman, M. Nature Reviews Drug Discovery, 2017,16,755-772.
(15) Wells, A.U. Nature Reviews Disease Primers, 2017,3,1-19.
(16) Nakano, Y. Hepatology, 2020,71,1437-1452.
線維芽細胞又は肝星細胞等の線維芽様細胞(筋線維芽細胞)の脱活性化の指標として、公知の線維化関連遺伝子マーカーを指標とすることができる。線維化関連遺伝子マーカーとして、特に限定されないが、例えば、ACTA2(αSMA)、COL1A1、COL3A1、TGFB1等(本明細書において、「線維化マーカー」と称することがある。)が知られている。「ACTA2(αSMA)」は、α-平滑筋アクチン2であり、「COL1A1」は、Collagen,Type I,Alpha 1(I型コラーゲンα1)の略であり、「COL3A1」はCollagen,Type III,Alpha 1(III型コラーゲンα1)の略であり、「TGFB1」は、Transforming growth factor-b1(形質転換増殖因子ベータ1)の略である。
ここで、線維化マーカー遺伝子の発現が低減することは、線維芽様細胞(筋線維芽細胞)において活性化された細胞が脱活性化されたことを意味する。
また、脱活性化の指標として、線維化関連遺伝子マーカーに加え、脱活性化マーカー、静止期マーカーを指標とすることができる。脱活性化マーカー、静止期マーカーとして、特に限定されないが、例えば、LHX2、LRAT、MDK、PTN、NGFR等が知られている。ここで、脱活性化マーカー遺伝子、静止期マーカー遺伝子の発現が増加することは、線維芽様細胞(筋線維芽細胞)において活性化された細胞が脱活性化されたことを意味する。「LHX2」は、LIM Homeobox2であり、「MDK」はMidkine(ミッドカイン)であり、「PTN」は、Pleiotrophin(プレイオトロフィン)であり、「NGFR」は、Nerve Growth Factor Receptor(低親和性神経成長因子受容体)の略である。
(併用投与)
本発明の一実施形態として、アルキニルベンゼン化合物を他の有効成分と併用投与してもよい。
アルキニルベンゼン化合物と併用投与する他の有効成分としては、特に限定されないが、線維症の治療又は予防に関与し得ることが知られている成分や、上記線維症として説明する各種疾患の治療又は予防に関与し得ることが知られている成分であってよい。
併用投与においては、アルキニルベンゼン化合物と、他の有効成分と別時に投与してもよい。
同時に投与する場合、2種の有効成分は、同一の製剤中にあってもよく、それぞれ別々の製剤として投与されてもよい。
別時に投与する場合、2種の有効成分の所望の投与レジメンに沿って投与すればよい。他の有効成分の投与量や投与間隔は、所定の投与レジメンに沿えばよい。
(コンビネーションプロダクト)
本発明の一実施形態は、本実施形態におけるアルキニルベンゼン化合物、及び他の有効成分を含む、線維症の治療又は予防のためのコンビネーションプロダクトであってもよい。コンビネーションプロダクトとは、一般に、薬剤(有効成分)、デバイス及び/又は生物学的製品を組み合わせた治療及び診断製品を指し、より詳細には、アメリカ食品医薬局(FDA)において定義されている。例えば、FDAホームページ<URL:https://www.fda.gov/combination-products>等を参照することができる。
コンビネーションプロダクトとしては、少なくとも、本実施形態におけるアルキニルベンゼン化合物、及び他の有効成分を含むキットであってもよい。キットには、説明書が添付されていてもよい。説明書としては、服薬指導に関する情報が記載されていてよい。
(脱活性化剤)
本発明の一実施形態は、上記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、線維芽様細胞(筋線維芽細胞)の脱活性化剤であってもよい。線維芽様細胞(筋線維芽細胞)の脱活性化剤としては、活性化星細胞の脱活性化剤であってよく、活性化肝星細胞の脱活性化剤であってもよい。また、各臓器における線維芽細胞の脱活性化剤であってもよい。
式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩が、脱活性化作用を有することにより、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を線維症の治療又は予防に用いてもよい。
線維芽様細胞(筋線維芽細胞)の脱活性化剤により、線維芽様細胞(筋線維芽細胞)が脱活性化されることにより、脱活性化された細胞は、活性化される前の静止期の細胞と類似の性質を保有するようになる。
本発明においては、上記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩が、活性化状態の線維芽様細胞(筋線維芽細胞)の脱活性化作用により、線維症の治療又は予防に用いられてもよい。
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、動物実験は、東京大学定量生命科学研究所、動物実験委員会の承認を得て実施した(承認番号:0420)。
オルベレンバチニブ(MedChemExpress 製品番号: HY-15666)を用いて、アルキニルベンゼン化合物が、線維症治療薬又は予防薬として有効であることを確認するために以下の実験を行った。なお、陰性対照として、溶媒であるDMSO (Sigma)を用いた。
1.ヒトiPS細胞由来活性化肝星細胞に対する脱活性化誘導
Koui Y, et al. Stem Cell Reports 2021に記載の方法に従って、ヒトiPS細胞から静止期肝星細胞を分化誘導した(図1)。12 well plate(VTC-P12:VIOLAMO)にコラーゲン(Cellmatrix type I-C:新田ゼラチン)をコートして作成したコラーゲンコート12 well plateに、得られた静止期肝星細胞を5×104 cells/wellにて播種し、7日間培養することで活性化を誘導した。活性化を行う培養液として、StemPro34 SFM(Gibco)を基本培地として、培養3日目までは、Y27632 (Wako)を10 μMとなるように添加した培地で培養し、培養4~7日は基本培地のみで培養した。7日間の培養後、基本培地にオルベレンバチニブを5~500 nMとなるように添加し、3日間培養した。
培養後の細胞からNucleoSpin RNA Plus (Takara bio)を用いてRNAを精製した。このRNAをPrime Script RT Kit (Takara Bio)を用いてcDNA化し、TB Green Premix EX TaqII (Takara Bio)と種々の遺伝子に対するプライマーを用いてreal-time quantitative PCRを行った。それらの遺伝子の発現量を指標として、脱活性化を評価した(図2)。
2.肝線維症モデルマウスに対する治療効果
8週齢のC57Bl6/Jマウス・メス(日本クレア)17匹を用いた。チオアセトアミド(TAA)を600 mg/Lとなるように飲水に加え、8週間投与することで慢性肝障害による肝線維症を誘導した。6匹のマウスは、通常の飲水(TAA不含)に切り替えて48時間後に犠牲死させ、血清や肝臓をサンプリングした。残りの11匹のマウスについては、TAAの飲水投与は継続しつつ、オルベレンバチニブもしくは陰性対照のDMSOを毎日1週間、腹腔投与した。なお、オルベレンバチニブは10 mg/ kg(体重)となるように調整し、例えば、体重25 gのマウスの場合、オルベレンバチニブ 0.25 mgを投与した。この場合、12.5 mg/mLのオルベレンバチニブのDMSO溶液を用いているので、DMSOの投与量は20 μLとなる。オルベレンバチニブのDMSO溶液をPBSにて希釈し、注射シリンジにて全量200 μLで投与した。オルベレンバチニブの最終投与後、通常の飲水(TAA不含)に切り替えて48時間後に犠牲死させた(図3)。このマウスから血清を採取するとともに、肝臓を摘出し、適宜実験に用いた。
2-1)オルベレンバチニブの投与による肝肥大の評価
慢性肝障害では肝臓が肥大することが知られている(J Biol Chem. 2011 11;286(6):4485-92等)。そこで、オルベレンバチニブの投与による体重や肝重量の変化を検証した。得られた測定値について、統計学的な有意差検定をOne-Way ANOVAによって検証した(図4)。
2-2)オルベレンバチニブの投与による肝機能の評価
肝機能の指標である血清中のAlanine transaminase (ALT)値、Aspartate transaminase (AST)値、Lactate dehydrogenase (LDH)値をスポットケムEZ(アークレイ)及びその専用試験紙(スポットケムII 肝機能1)を用いて計測した。得られた測定値について、統計学的な有意差検定をOne-Way ANOVAによって検証した(図5)。
2-3)オルベレンバチニブの投与による肝線維化の評価
肝線維化の指標として、コラーゲン線維を染色する試薬であるシリウスレッドを用いて、肝組織を染色することが一般的に行われている。そこで、オルベレンバチニブの投与による肝線維化の改善効果を検証した。
採取した肝組織を細切し、ザンボーニ固定液(武藤化学)中で4℃, 16時間固定した。固定した細切りにした肝組織をPBSで洗浄後、10%スクロース含有PBSに浸し3時間ゆるやかに振盪し、続いて、20%スクロース含有PBSに浸し16時間ゆるやかに振盪した。その後、肝組織をクリオモルト(サクラファインテックジャパン)に移し、OCTコンパウンド(サクラファインテックジャパン)で容器内を満たし、-80℃にて凍結することで組織ブロックを作製した。次に、作製した組織ブロックをクリオスタットHM525(Thermofisher)により8 μmの厚みに薄切し、薄切りにした組織ブロックをMASコートスライドグラス(松浪硝子)に貼り付け、室温で20分間風乾させ、組織切片を作製した。
Direct Red 80(Sigma)を0.5%、Fast green(Sigma)を0.1%になるように飽和ピクリン酸(富士フイルム和光純薬)を用いて溶解し、シリウスレッド染色液を作製した。
シリウスレッド染色液を組織切片上に乗せて、室温で5分間静置し、コラーゲン線維をアズキ色に、組織全体を緑色に染色した。染色した組織切片を30秒間水洗した後、100%エタノールに1分間浸すことを3回繰り返し、次いで、キシレンに1分間浸すことを4回繰り返した上で、マリノールを用いてカバーグラスで封入した。
染色・封入した組織切片を、顕微鏡BZ-X810(Keyence)を用いて撮影した。各サンプルについて、10倍の対物レンズを用いて4視野以上撮影した撮影画像を、ImageJ(米国国立衛生研究所)を用いてシリウスレッド染色陽性でありアズキ色の部分の面積を算出した。統計学的な有意差検定をOne-Way ANOVAによって検証した(図6)。
2-4)オルベレンバチニブの投与による活性化肝星細胞の脱活性化誘導
肝線維症モデルマウス肝臓内の活性化肝星細胞に対して、I型コラーゲンの免疫染色によりオルベレンバチニブが脱活性化を誘導できるかを検証した。
上記2-3)にて作製した組織切片をPBSで洗浄後、Target retrieval solution(Dako)を用いて110℃で10分間のオートクレーブ処理を行い、抗原を賦活化した。抗原を賦活化した組織切片に0.3%BSA含有PBSを滴下し、室温で10分間反応させブロッキングした後、一次抗体としてRabbit polyclonal anti-Collagen I抗体(BioRad)及びmouse monoclonal anti-Desmin抗体(Dako)を4℃で16時間反応させた。その後、PBSにて洗浄し、二次抗体としてGoat anti-Rabbit IgG (H+L) Cross-Adsorbed Secondary Antibody, Alexa Fluor 488(invitrogen)及びGoat anti-Mouse IgG (H+L) Highly Cross-Adsorbed Secondary Antibody, Alexa Fluor Plus 647(invitrogen)を室温下で20分間反応させた。反応後に、組織切片をPBSにて洗浄し、Fluoromount (Diagnostic BioSystems)を用いてカバーグラスで封入した。
染色・封入した組織切片を、顕微鏡BZ-X810(Keyence)を用いて撮影した。各サンプルについて、10倍の対物レンズを用いて4視野以上撮影した撮影画像を、ImageJ(米国国立衛生研究所)を用いてCollagen I陽性かつDesmin陽性領域及びCollagen I陰性かつDesmin陽性領域の面積を算出した。統計学的な有意差検定をOne-Way ANOVAによって検証した(図7)。
以下の実験を通じて、アルキニルベンゼン化合物が、線維症治療薬又は予防薬として有用であることを確認できる。また、以下に示す実験例は一例であり、常法に従って、適宜改変可能である。
1. 肝臓における脱活性化誘導に対する効果確認
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)3型のモデルマウスにおける脱活性化誘導
Abcb4KOマウス(メス)(Jackson Laboratory)を8週間飼育し、肝線維化を誘導する。8週齢から2週間、所定の用量で所定の回数、アルキニルベンゼン化合物(例えば、5mg/kg、週3回)を腹腔内投与し、10週齢でサンプルを回収する。肝組織中のコラーゲン線維をSirius Red染色で可視化する。マウス血清中のAST、ALTをスポットケムEZ(arkray)を用いて測定する。肝組織からRNAを抽出(NucleoSpin RNA Plus (Takara))した後、cDNAを作製し(PrimeScriptII 1st strand cDNA Synthesis Kit (Takara))、リアルタイムPCRによってマーカー遺伝子(例えば、ACTA2、COL1A1、COL3A1、TGFB1、TCF21、MDK)の発現を解析する。解析にはddCt法を用いる。
なお、Abcb4KOマウスは、以下の特徴を有するマウスである。
・ ヒト MDR3相同遺伝子の欠損
・ 進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)3型のモデルマウス
・ 胆汁うっ滞に伴う肝障害・肝線維化を自然発症する
アルキニルベンゼン化合物の添加により、コラーゲン産生が抑制されることを確認する。
また、アルキニルベンゼン化合物の添加により、(濃度依存的に)活性化マーカー遺伝子の発現が減少し、脱活性化マーカー遺伝子の発現が増加することを確認する。
これらの結果により、アルキニルベンゼン化合物が、肝臓における線維症を治療又は予防するのに十分な活性を有することを確認できる。
2. 皮膚における脱活性化誘導に対する効果確認
(1)皮膚線維芽細胞における脱活性化誘導
健常人又は皮膚における線維症を発症している患者由来の皮膚線維芽細胞(例えば、健常人由来のヒト皮膚線維芽細胞は、東北大学から入手可能である)を12ウェルプレートに播種し培養する。培養液には、Sigma M4655 minimum essential medium eagleを用い、Fetal bovine serumを10%添加し、Sigma A5955 Antibiotic Antimycotic Solutionを添加する。培養開始から2日目に、所定の濃度のアルキニルベンゼン化合物(例えば、1μM、2μM、3μM)を添加する。培養4日目、6日目にサンプルを回収する。RNAを抽出した後、cDNAを作製し、リアルタイムPCRによってマーカー遺伝子(例えば、ACTA2、COL1A1、COL3A1、TGFB1、TCF21、MDK)を解析する。
アルキニルベンゼン化合物の添加により、(濃度依存的に)活性化マーカー遺伝子の発現が減少し、脱活性化マーカー遺伝子の発現が増加することを確認する。
これらの結果により、アルキニルベンゼン化合物が、皮膚における線維症を治療又は予防するのに十分な活性を有することを確認できる。
(2)強皮症患者由来の皮膚線維芽細胞における脱活性化誘導
強皮症患者由来の皮膚線維芽細胞を12ウェルプレートに播種し、培養する。培養液には、Sigma M4655 minimum essential medium eagleを用い、Fetal bovine serumを10%添加し、Sigma A5955 Antibiotic Antimycotic Solutionを添加する。培養開始から2日目に、所定の濃度のアルキニルベンゼン化合物(例えば、1μM、2μM、3μM)を添加する。培養4日目、6日目にサンプルを回収する。RNAを抽出した後、cDNAを作製し、リアルタイムPCRによってマーカー遺伝子(例えば、ACTA2、COL1A1、COL3A1、TGFB1、TCF21、MDK)を解析する。
アルキニルベンゼン化合物の添加により、(濃度依存的に)活性化マーカー遺伝子の発現が減少し、脱活性化マーカー遺伝子の発現が増加することを確認する。
これらの結果により、アルキニルベンゼン化合物が、強皮症を治療又は予防するのに十分な活性を有することを確認できる。
(3)強皮症患者由来の皮膚線維芽細胞におけるコラーゲンの産生抑制
強皮症患者由来の皮膚線維芽細胞を12ウェルプレートに播種し、培養開始から2日目に、所定の濃度のアルキニルベンゼン化合物(例えば、1μM)を添加する。培養5日目に、抗CollagenI抗体(abcam)を用いて免疫染色を行い、線維化マーカー遺伝子(COL1A1:緑、核:青)を蛍光顕微鏡(BZ-X810(KEYENCE))で観察、解析する。
コントロール群では広範囲が緑で染色され、COL1A1が発現していることを確認する。一方、アルキニルベンゼン化合物を添加した群では、コントロール群と比較して、緑で染色された領域は少なく、COL1A1の発現が抑制されていることを確認する。
これらの結果により、アルキニルベンゼン化合物が、強皮症を治療又は予防するのに十分な、コラーゲン産生を抑制する活性を有することを確認できる。
(4)強皮症モデルマウスにおける脱活性化誘導
BLM誘発強皮症モデルマウス、Tsk1マウス、Klf5+/-;Fli1+/-マウスに抗線維化薬を投与し、臓器線維化に対する効果を検討する。BLM誘発強皮症モデルマウスについては、8週齢の野生型マウスにBLMを4週間皮下注してモデルを作製するが、BLM投与前日からアルキニルベンゼン化合物(例えば、5mg/kg、週3回)を投与する群と、BLM投与2週間後からアルキニルベンゼン化合物(例えば、5mg/kg、週3回)を投与する群を作製し、線維化に対する抑制作用と治療効果の両者について検討する。Tsk1マウスとKlf5+/-;Fli1+/-マウスについては8-12週齢のマウスにアルキニルベンゼン化合物(例えば、5mg/kg、週3回)を4週間投与する。Tsk1マウスでは皮膚の線維化、Klf5+/-;Fli1+/-マウスでは皮膚・肺・心臓の線維化に対する効果を検討する。いずれのモデルも評価は病理組織学的に行う。
3.肺線維芽細胞における脱活性化誘導
健常人又は肺における線維症を発症している患者由来の肺線維芽細胞(例えば、正常ヒト肺線維芽細胞はPromoCellから入手可能である)を、線維芽細胞増殖培地 2キット(PromoCell)を用いて培養する。線維芽細胞を12ウェルプレートに播種し、培養開始から2日目に、所定の濃度のアルキニルベンゼン化合物(例えば、500nM、1μM、3μM)を添加する。4日目に培地交換を行う。培養6日目にサンプルを回収する。培養後の細胞の様子をデジタルカメラ(DS-Fi2-L3(Nikon))で撮像する。RNAを抽出した後、cDNAを作製し、リアルタイムPCRによってマーカー遺伝子(例えば、ACTA2、COL1A1、COL3A1、TGFB1、TCF21、MDK)を解析する。
白色で示されるのは細胞の輪郭であり、アルキニルベンゼン化合物を添加した群では、コントロール群と比較して、白色で示される範囲が減少していることを確認する。アルキニルベンゼン化合物の添加により、活性化した線維芽細胞の増殖が抑制され、線維化が抑制されていることを示す。
化合物の添加により、(濃度依存的に)活性化マーカー遺伝子の発現が減少し、脱活性化マーカー遺伝子の発現が増加することを確認する。
アルキニルベンゼン化合物が、肺における線維症を治療又は予防するのに十分な活性を有することを確認できる。
4. 膵臓線維芽細胞における脱活性化誘導
健常人又は膵臓における線維症を発症している患者由来の膵臓線維芽細胞(例えば、正常ヒト膵臓線維芽細胞は、ScienCell ResearchLaboratoriesから入手可能である)を、Stellate Cell Medium(ScienCell ResearchLaboratories)を用いて培養する。線維芽細胞を12ウェルプレートに播種し、培養開始から2日目に、所定の濃度のアルキニルベンゼン化合物(例えば、500nM、1μM、3μM)を添加する。4日目に培地交換を行う。培養6日目にサンプルを回収する。培養後の細胞の様子をデジタルカメラ(DS-Fi2-L3(Nikon))で撮像する。RNAを抽出した後、cDNAを作製し、リアルタイムPCRによって線維化マーカー遺伝子(例えば、ACTA2、COL1A1、COL3A1)を解析する。
培養6日目の細胞の様子を観察することにより、アルキニルベンゼン化合物を添加した群では、細胞の輪郭を示す白色で示される範囲が減少する。
アルキニルベンゼン化合物の投与により、活性化した線維芽細胞の増殖が抑制され、線維化が抑制されている子をと確認できる。
アルキニルベンゼン化合物は、線維化マーカー遺伝子(例えば、ACTA2、COL1A1、COL3A1)の発現を抑制する。
これらの結果により、アルキニルベンゼン化合物が、膵臓における線維症を治療又は予防するのに十分な活性を有することを示した。
5. 腎臓線維芽細胞における脱活性化誘導
健常人又は腎臓における線維症を発症している患者由来の腎臓線維芽細胞(例えば、正常ヒト腎臓線維芽細胞は、Innoprotから入手可能である)を、線維芽細胞用培地PLUS(血清不含)(Innoprot)を用いて培養する。線維芽細胞を12ウェルプレートに播種し、培養開始から2日目に、所定の濃度のアルキニルベンゼン化合物(例えば、500nM、1μM、3μM)を添加する。4日目に培地交換を行う。培養6日目にサンプルを回収する。培養後の細胞の様子をデジタルカメラ(DS-Fi2-L3(Nikon))で撮像する。RNAを抽出した後、cDNAを作製し、リアルタイムPCRによって線維化マーカー遺伝子(例えば、ACTA2、COL1A1、COL3A1)を解析する。
培養6日目の細胞の様子を観察することにより、アルキニルベンゼン化合物を添加する群では、他の群と比較して、細胞の輪郭を示す白色で示される範囲が減少する。当該結果により、活性化した線維芽細胞の増殖が抑制され、線維化が抑制されることを確認できる。
また、アルキニルベンゼン化合物は、線維化マーカー遺伝子(例えば、ACTA2、COL1A1、COL3A1)の発現を抑制することを確認できる。
これらの結果により、アルキニルベンゼン化合物が、腎臓における線維化を治療するのに十分な活性を有することを示す。
6.NASHモデルマウスにおける脱活性化誘導
ヒトNASHと同様な病態進行を示すモデルであるSTAMモデル(SMC Laboratories, Inc:https://www.smccro-lab.com/jp/service/service_disease_area/stam.html)を用いて、NASHあるいはそれに伴う線維化やがん化等の病態形成に対する治療効果を評価する。アルキルベンゼン化合物(例えば、5mg/kg、週3回)を1ー3週腹腔内投与し、サンプルを回収する。
肝組織中のコラーゲン線維をSirius Red染色で可視化する。マウス血清中のAST、ALTをスポットケムEZ(arkray)を用いて測定する。肝組織からRNAを抽出(NucleoSpin RNA Plus (Takara))した後、cDNAを作製し(PrimeScriptII 1st strand cDNA Synthesis Kit (Takara))、リアルタイムPCRによってマーカー遺伝子(例えば、ACTA2、COL1A1、COL3A1、TGFB1、TCF21、MDK)の発現を解析する。解析にはddCt法を用いる。
その他、MC4R欠損マウス(https://www.tmd.ac.jp/mri/press/press15/index.html)、MCDモデル(https://www.smccro-lab.com/jp/service/service_disease_area/mcd.html)を用いても実施可能である。
また、MC4R欠損マウスについては、以下の文献を参照することができる。
Itoh M., Am. J Pathol. 2011,179,2454-63.

Claims (2)

  1. 下記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、線維症の治療薬又は予防薬。
    式(I):
    (式(I)中、
    1)L1は、NHであり、R1は、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、又は置換されていてもよい芳香族基であるか、
    2)L1は、窒素原子であり、L1とR1が一緒になって、置換されていてもよい炭化水素基で二置換された3級アミノ基、又は5~7員の、置換されていてもよい、さらに1個の窒素原子又は酸素原子を含んでいてもよいヘテロ環を形成するか、
    3)L1とR1は、環AのZと一緒になって、以下の縮合環を形成し、
    該縮合環は、以下の構造のいずれか1つから選択され、
    2は、水素原子、又は置換されていてもよい炭化水素基であり、
    2は、NH-CO又はCO-NHであり、
    3~R5を含む環Cは、以下の構造のいずれか1つから選択される。
    (上記構造中、
    Het1は、置換されていてもよい、1~3個の窒素原子を含むヘテロ環基であり、
    Het2は、置換されていてもよい、1~3個の窒素原子、酸素原子、及び/又は硫黄原子を含む5員環であるヘテロアリールであり、
    6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよい炭化水素基であるか、
    6及びR7は結合する窒素原子と一緒になって、さらに酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含んでいてもよい、ヘテロ環を形成する。)
  2. オルベレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む、線維症の治療薬又は予防薬。
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