JP2024028047A - フェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造負荷が小さく、時効硬化能が高いフェライト系ステンレス鋼板を提供する。【解決手段】化学組成が、質量%で、C:0.002~0.03%、Si:0.1~1.0%、Mn:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.030%以下、Cr:17.0~19.5%、Mo:0.10~0.30%、Nb:0.05~0.2%、Ti:0.6%以下、Cu:0.80~1.5%、N:0.002~0.03%、任意元素、残部:Feおよび不純物であり、[8×(C+N)≦Ti+Nb]および[1.6≦(8×Mo+10×Nb)/Cu≦5.0]を満足し、600℃で1h時効し、空冷した場合のビッカース硬さの増加量ΔHVが、50以上である、フェライト系ステンレス鋼板。【選択図】 なし

Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼板に関する。
フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べ、希少元素に分類され、高価なNiの含有量が少なく、省合金での低コスト化が図れる。このため、厨房、家電機器などとともに、従来、主にオーステナイト系ステンレス鋼が使用されてきた自動車排気部材など、幅広く適用されつつある。
一方、フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて、加工硬化が小さいため、調質圧延での高強度化がしにくい。また、高温での拡散が速く、高温強度が低いことから、常温から高温までの強度が必要な用途においては、オーステナイト系ステンレス鋼からの代替が困難な場合がある。
このような点を踏まえ、特許文献1および2には、Cuを含有させたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。特許文献1および2に開示されたフェライト系ステンレス鋼は、Cuの析出強化を利用して特性を向上させたものである。
特開2006-117985号公報 特開2010-248620号公報
ところで、フェライト系ステンレス鋼には、熱処理等に影響を与える再結晶温度を低下させ、焼鈍、酸洗時における製造時の負荷を低減することも求められている。再結晶温度が高いと、再結晶を完了させるために高い温度で焼鈍しなければならない。これにより、酸化が促進され、酸化スケールが厚く生成する結果、酸化スケールを除去するための、酸洗工程での製造負荷が大きくなるからである。
ここで、特許文献1に開示されたフェライト系ステンレス鋼は、エンジンから排出される高温の排気ガスに曝される排気系部品上流側での使用を想定している。このため、高温特性を重視し、高価なNbが多量に含有されている。また、再結晶温度も高く、900℃超と推定される。加えて、冷延板焼鈍以前に実施される、熱延板焼鈍等においても、高強度である場合、その後、圧延などの加工での製造負荷も大きくなる。従って、特許文献1に開示されたフェライト系ステンレス鋼は、再結晶温度に起因する製造負荷の観点から、改善の余地がある。
特許文献2に開示されたフェライト系ステンレス鋼は、Nbを低減し、微細なCu析出物で析出強化をしているが、例えば、使用環境によっては、Cu析出物の析出が生じにくくなる場合がある。
Cuを含有したフェライト系ステンレス鋼において、析出強化機構が十分機能した状態である場合、時効処理と呼ばれる熱処理の前と比較し、熱処理の後の方が、硬さが硬くなる。すなわち、時効硬化能が高くなる。しかしながら、特許文献2に開示されたフェライト系ステンレス鋼は、時効硬化能の観点から、さらに改善の余地がある。
以上を踏まえ、本発明は、製造負荷が小さく、時効硬化能が高いフェライト系ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記のフェライト系ステンレス鋼板を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.002~0.03%、
Si:0.1~1.0%、
Mn:1.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.030%以下、
Cr:17.0~19.5%、
Mo:0.10~0.30%、
Nb:0.05~0.2%、
Ti:0.6%以下、
Cu:0.80~1.5%、
N:0.002~0.03%、
Ni:0~0.6%、
V:0~0.5%、
W:0~0.5%、
Co:0~0.5%、
Zr:0~0.5%、
Al:0~1.0%、
Sn:0~0.5%、
B:0~0.005%、
Ca:0~0.01%、
Mg:0~0.01%、
REM:0~0.01%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)および(ii)式を満足し、
600℃で1h時効し、空冷した場合のビッカース硬さの増加量ΔHVが、50以上である、フェライト系ステンレス鋼板。
8×(C+N)≦Ti+Nb ・・・(i)
1.6≦(8×Mo+10×Nb)/Cu≦5.0 ・・・(ii)
但し、上記式中の各元素記号はフェライト系ステンレス鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Ni:0.01~0.6%、
V:0.01~0.5%、
W:0.05~0.5%、
Co:0.01~0.5%、
Zr:0.01~0.5%、
Al:0.01~1.0%、および
Sn:0.01~0.5%、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
(3)前記化学組成が、質量%で、
B:0.0002~0.005%、
Ca:0.0002~0.01%、
Mg:0.0002~0.01%、および
REM:0.0002~0.01%、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)または(2)に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
本発明によれば、製造負荷が小さく、時効硬化能が高いフェライト系ステンレス鋼板を得られる。
本発明者らは、フェライト系ステンレス鋼板について検討を行い、以下の(a)~(c)の知見を得た。
(a)製造負荷、原料コストを低減するためには、NbおよびMo等の元素を極力低減する必要がある。NbおよびMoは、高価な元素であるとともに、再結晶温度を上昇させるからである。その一方、NbおよびMoは、フェライト系ステンレス鋼を固溶強化し、強度を向上させる元素である。また、Nbは、Cr炭窒化物の析出を抑制し、Cr炭窒化物起因の鋭敏化を抑制し、Moは耐食性を向上させる効果がある。そこで、Nbを低減する一方、Tiを含有させることで耐鋭敏化特性を確保する。これと同時に、上述したCu、およびMoを適正な範囲に調整することで、時効硬化能を向上させ、高強度化を達成する。
(b)上述したCuによる高強度化は、Cu析出物を微細析出させる析出強化である。このようなCu析出物による析出強化は、Cuが母相に固溶した状態から適切な時効処理等を行い、Cu析出物を形成させることで生じる。一方、時効処理等の前に析出してしまったCu析出物は、その後の工程で粗大化するだけで高強度化にはそれほど寄与しない。従って、さらなる高強度化を達成するためには、時効処理の前後で硬さが硬くなるよう、時効硬化能を高める必要がある。時効硬化能が低下する一因として、時効処理の前、例えば、製造時にCu析出物が形成してしまうことが考えられる。
そこで、本発明者らは、製造時におけるCu析出物の形成を抑制できないかを検討した。そして、再結晶温度を上昇させない範囲の微量にNb、Moを含有させることが有効であることを見出した。このメカニズムは定かではないが、Cu析出物の形成時に、固溶したNbおよびMoが、Cuの母相中での拡散を遅延させ、Cu析出物が析出可能な温度域を狭くしているためと考えられる。
(c)この結果、Cuを含有させ、NbおよびMo含有量を低減したフェライト系ステンレス鋼において、NbおよびMoの固溶強化以上の強度向上を、Cu析出物の析出強化により発現させることができる。
本発明の一実施形態は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の各要件について詳しく説明する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.002~0.03%
C(炭素)は、加工性と耐食性とを低下させるため、低減するのが好ましい。このため、C含有量は、0.03%以下とする。C含有量は、0.02%以下とするのが好ましく、0.015%以下とするのがより好ましい。しかしながら、Cの過剰な低減は、精錬コストを増加させる。このため、C含有量は、0.002%以上とする。C含有量は、0.003%以上とするのが好ましい。
Si:0.1~1.0%
Si(ケイ素)は、脱酸剤としても有用な元素であるとともに、耐酸化性を向上させる元素である。このため、Si含有量は、0.1%以上とする。Si含有量は、0.2%以上とするのが好ましい。しかしながら、Siを過剰に含有させると、常温の延性が低下し、加工性が低下する。このため、Si含有量は、1.0%以下とする。Si含有量は、0.6%以下とするのが好ましい。
Mn:1.0%以下
Mn(マンガン)は、過剰に含有させると、高温でオーステナイト相が生成しやすくなるに加え、加工性を低下させる。このため、Mn含有量は、1.0%以下とする。一方、Mnの過剰な低減は、原料コストを増加させる。このため、Mn含有量は、0.1%以上とするのが好ましい。Mn含有量は、0.2~0.8%の範囲とするのが好ましい。
P:0.04%以下
P(リン)は、鋼中に含有される不純物元素であり、靭性および加工性を低下させる。このため、P含有量は、0.04%以下とする。P含有量は、0.03%以下とするのが好ましい。Pは、可能な限り低減することが好ましいが、Pの過剰な低減は、精錬コストを増加させる。そのため、P含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
S:0.030%以下
S(硫黄)は、伸びを低下させて、加工性に悪影響を及ぼす。また、Sは、耐食性を低下させる。このため、S含有量は、0.030%以下とする。S含有量は、0.010%以下とするのが好ましく、0.005%以下とするのがより好ましい。Sは、可能な限り低減することが好ましいが、Sの過剰な低減は、精錬コストを増加させる。そのため、S含有量は、0.0003%以上とするのが好ましい。
Cr:17.0~19.5%
Cr(クロム)は、ステンレス鋼の特徴である耐食性、および耐酸化性を向上させるのに有効な元素である。そして、Cr含有量が、17.0%未満であると、不働態皮膜中のCr分率が不足し、耐食性が得られない。このため、Cr含有量は、17.0%以上とする。しかしながら、Crを、過剰に含有させると、室温において鋼を固溶強化することで、硬質化および低延性化が生じる。この結果、加工性が低下する。特に、Crを、19.5%を超えて含有すると、上記弊害が顕著となるので、Cr含有量は、19.5%以下とする。Cr含有量は、17.5~19.0%の範囲とするのが好ましい。
Mo:0.10~0.30%
Mo(モリブデン)は、高温強度、耐酸化性、および耐食性を向上させる効果を有する。また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板において、Moは、再結晶後の冷却時に、粒内でのCu析出物の形成を抑制し、Cuを固溶状態にする効果も有する。このため、Mo含有量は、0.10%以上とする。しかしながら、Moは、高価な元素であり、過剰に含有させると、合金コストが増加する。また、Moは、再結晶温度を上昇させることで、製造時の負荷を増加させる。このため、Mo含有量は、0.30%以下とする。
Nb:0.05~0.2%
Nb(ニオブ)は、Cr炭化物を抑制し耐食性を向上させる効果を有する。特に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板においては、Tiとの複合添加により、Cr炭窒化物の形成を抑制し、耐食性を向上させる。この際、Tiは、主に窒化物となり、Tiだけでは、Cを十分に固着できないことから、Nbを一定量含有させる必要がある。
加えて、Mo同様、Nbは再結晶後の冷却時において、粒界でのCu析出物の形成を抑制し、Cuを固溶状態にする効果も有する。このため、Nb含有量は、0.05%以上とする。しかしながら、Nbは高価な元素であり、過剰に含有させると、合金コストが増加する。また、再結晶温度を上昇させることで、製造時の負荷を増加させる。さらに、Nbを含むLaves相が形成し、靭性および加工性を低下させる。このため、Nb含有量は、0.2%以下とする。Nb含有量は、0.06~0.18%の範囲とするのが好ましい。
Ti:0.6%以下
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板では、Nb含有量を低減する。従って、CおよびNを固定する上で、Ti(チタン)は重要な元素となる。このため、Ti含有量は、下記(i)式を満足する必要がある。(i)式を満足することで、C、およびNを固定して、鋭敏化の発生を抑制し、耐食性、特に、溶接部の粒界腐食性を向上させる効果を有する。
8×(C+N)≦Ti+Nb ・・・(i)
但し、上記式中の各元素記号はフェライト系ステンレス鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
しかしながら、Tiを過剰に含有させると、靭性の低下および表面疵の発生を誘発する。このため、Ti含有量は、0.6%以下とする。CおよびN含有量にもよるが、Ti含有量は、0.15~0.4%の範囲とするのが好ましく、0.2~0.3%の範囲とするのがより好ましい。
Cu:0.80~1.5%
Cu(銅)は、Cu析出物が微細析出することで、高温強度を向上させる効果を有する。本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板では、再結晶後冷却した際に、固溶状態とし、その後の時効熱処理により、Cu析出物が微細析出させることが重要である。この点を踏まえ、Cu含有量は、0.80%以上とする。Cu含有量は、1.0%以上とするのが好ましく、1.1%以上とするのがより好ましい。しかしながら、Cuを過剰に含有させると、焼鈍時に固溶することなく、冷却時に粗大なCu析出物が形成する。このため、Cu含有量は、1.5%以下とする。Cu含有量は、1.4%以下とするのが好ましい。
ここで、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板では、Cu析出物を微細に析出させるために、Cu析出物の形成に寄与する、Mo、NbおよびCuの含有量を制御する。具体的には、Mo、NbおよびCuの含有量が、下記(ii)式を満足する必要がある。
1.6≦(8×Mo+10×Nb)/Cu≦5.0 ・・・(ii)
但し、上記式中の各元素記号はフェライト系ステンレス鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(ii)式中辺値が、1.6未満であると、Cuの量に対し、MoおよびNbの量が不足してしまい、Cu析出物を微細化しにくくなる。この結果、時効硬化能が向上しにくくなる。つまり、後述する600℃で1h時効し、空冷した場合のビッカース硬さの増加量ΔHVが、50未満になりやすくなる。このため、(ii)式中辺値は、1.6以上とする。(ii)式中辺値は、1.7以上とするのが好ましく、1.8以上とするのがより好ましい。
一方、(ii)式中辺値が、5.0を超えると、再結晶温度が過剰に高くなり、製造性が低下する。また、再結晶組織が得られにくくなり、未再結晶組織が残存することで、熱処理を行っても、時効硬化しにくくなる。これにより、時効硬化能が低下する。このため、(ii)式中辺値は、5.0以下とする。(ii)式中辺値は、4.5以下とするのが好ましい。
N:0.002~0.03%
N(窒素)は、鋼に含有される不純物であり、加工性と耐食性とを劣化させる。このため、N含有量は、0.03%以下とする。Nは、可能な限り低減するのが好ましいが、過剰な低減は、精錬コストを増加させる。このため、N含有量は、0.002%以上とする。N含有量は、0.003~0.02%の範囲とするのが好ましく、0.003~0.015%の範囲とするのがより好ましい。
上記の元素に加えて、さらに、Ni、V、W、Co、Zr、Al、およびSnから選択される一種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。以下、各元素の限定理由について説明する。
Ni:0~0.6%
Ni(ニッケル)は、フェライト系ステンレス鋼の靭性および加工性を向上させる元素である。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Niは、強力なオーステナイト相生成元素であることから、過剰に含有させると、高温でオーステナイト相を生成しやすくさせ、高温強度を低下させる。また、高価な元素であるため、合金コストも増加する。このため、Ni含有量は、0.6%以下とする。Ni含有量は、0.5%以下とするのが好ましく、0.3%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ni含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
V:0~0.5%
V(バナジウム)は、NbおよびTi同様、炭窒化物生成元素であり、これらの炭窒化物を微細析出させることで、高温強度を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてよい。しかしながら、Vを過剰に含有させると、製造性を低下させる。そのため、V含有量は、0.5%以下とする。V含有量は、0.4%以下とするのが好ましく、0.3%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、V含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
W:0~0.5%
W(タングステン)は、高温強度を高める効果を有する。このため、必要に応じて含有させてよい。しかしながら、Wを過剰に含有させると、金属間化合物の生成を促進し、鋼の靭性および加工性を低下させる。そのため、W含有量は、0.5%以下とする。W含有量は、0.4%以下とするのが好ましく、0.3%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、W含有量は、0.05%以上とするのが好ましく、0.1%以上とするのがより好ましい。
Co:0~0.5%
Co(コバルト)は、高温強度を向上させるとともに、熱膨張係数も低下させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてよい。しかしながら、Coを過剰に含有させると、固溶強化により鋼を硬質化するため、加工性を低下させてしまう。また、Coは、高価な元素であるため、合金コストが増加する。そのため、Co含有量は、0.5%以下とする。Co含有量は、0.4%以下とするのが好ましく、0.3%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Co含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
Zr:0~0.5%
Zr(ジルコニウム)は、耐酸化性を改善する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてよい。しかしながら、Zrを過剰に含有させると、金属間化合物を生成し、鋼の靭性および加工性を低下させる。そのため、Zr含有量は、0.5%以下とする。Zr含有量は、0.4%以下とするのが好ましく、0.3%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Zr含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
Al:0~1.0%
Al(アルミニウム)は、脱酸剤として使用される他、耐酸化性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてよい。しかしながら、Alを過剰に含有させると、固溶強化により鋼を硬質化し、鋼の靭性および加工性を低下させる。そのため、Al含有量は、1.0%以下とする。Al含有量は、0.6%以下とするのが好ましく、0.2%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Al含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
Sn:0~0.5%
Sn(スズ)は、常温の機械的特性を大きく低下させずに、耐食性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてよい。しかしながら、Snを過剰に含有させると、製造性を著しく低下させる。そのため、Sn含有量は、0.5%以下とする。Sn含有量は、0.3%以下とするのが好ましく、0.2%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Sn含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
上記の元素に加えて、さらに、B、Ca、Mg、およびREMから選択される一種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。以下、各元素の限定理由について説明する。
B:0~0.005%
B(ホウ素)は、加工性、特に二次加工性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてよい。しかしながら、Bを過剰に含有させると、溶接性と靭性とを低下させる。そのため、B含有量は、0.005%以下とする。B含有量は、0.003%以下とするのが好ましく、0.0015%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、B含有量は、0.0002%以上とするのが好ましい。
Ca:0~0.01%
Ca(カルシウム)は、連続鋳造時に発生しやすいノズル閉塞を防止する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてよい。しかしながら、Caを過剰に含有させると、表面欠陥を発生させやすくする。そのため、Ca含有量は、0.01%以下とする。Ca含有量は、0.005%以下とするのが好ましく、0.003%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ca含有量は、0.0002%以上とするのが好ましい。
Mg:0~0.01%
Mg(マグネシウム)は、スラブの等軸晶率を向上させ、靭性および加工性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてよい。しかしながら、Mgを過剰に含有させると、鋼の靭性を低下させるとともに、表面性状を低下させる。そのため、Mg含有量は、0.01%以下とする。Mg含有量は、0.005%以下とするのが好ましく、0.003%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Mg含有量は、0.0002%以上とするのが好ましい。
REM:0~0.01%
REM(希土類元素)は、耐酸化性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてよい。しかしながら、REMを過剰に含有させると、溶接性と靭性とを低下させる。そのため、REM含有量は、0.01%以下とする。REM含有量は、0.008%以下とするのが好ましく、0.005%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、REM含有量は、0.0002%以上とするのが好ましい。
REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、上記REM含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。REMは、工業的には、ミッシュメタルの形で添加されることが多い。
本実施形態の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。ここで「不純物」とは、フェライト系ステンレス鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本実施形態に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
2.時効硬化能
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、上記組成とすることで、時効硬化能を高めている。特に、時効硬化能を高めるCuについては、含有されているCuが固溶状態を維持し、Cu析出物の形成が極力抑制されている状態であるのが好ましい。これにより、時効処理等をされた場合に、Cu析出物が微細に析出し、強度が向上する。なお、ここで、Cu析出物とは、Cuを含む析出物のことであり、bcc-Cu、9R、ε―CuといったCu粒子のことである。
ここで、Cuが固溶状態であるというのは、再結晶させる焼鈍後の冷却時に析出したCu析出物が存在しないことを意味する。その一方、Cu析出物は、析出初期には母相と同じbcc構造で析出するため、現実的には、微細なCu析出物の固溶状態および析出状態を組織観察等で、判断することは困難である。
従って、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、600℃で1h時効し、空冷した場合のビッカース硬さの増加量ΔHVで、Cuの固溶状態を評価する。具体的には、上記の時効および冷却条件でのビッカース硬さの増加量ΔHVは、50以上とする。上記の時効および冷却条件でのビッカース硬さの増加量ΔHVが50未満であると、製造段階、具体的には焼鈍時の冷却において、Cu析出物が形成している。これにより、その後の時効処理で、析出物の形成が進行し、かつ析出物が粗大化することで、時効硬化による高強度化が困難になる。このため、上記の時効および冷却条件でのビッカース硬さの増加量ΔHVは、50以上とし、55以上とするのが好ましい。なお、ΔHVの上限は、特に、限定されないが、通常、80程度となる。
なお、上記ΔHVは、以下の手順で測定する。具体的には、冷延焼鈍板から、20mmL×30mmW×2mmtのサンプルを各鋼2枚づつ切り出し、サンプルA、サンプルBとする。サンプルAは、600℃で1時間の時効を行ったのち空冷する。時効したサンプルAと、冷延焼鈍板であるサンプルBのL断面を試験力1.0kgfとし、1mmピッチで7点、ビッカース硬さ試験機で測定し、最大値および最小値の2点を除く5点の平均値を算出する。サンプルAの硬さの平均値からサンプルBの硬さの平均値を引き、ΔHVを算出する。
3.製造方法
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、例えば、以下のような製造方法により、安定して製造することができる。
上述した化学組成を有する、ステンレス鋼を溶製し、鋼片(スラブ)を製造する。得られたスラブを熱間圧延し、熱延板とする。熱間圧延の際のスラブの加熱温度は、特に、限定されないが、通常、1150~1250℃の範囲となる。また、熱間圧延の際の総圧下率についても、特に、限定されない。得られた熱延板については、必要に応じて、熱延板焼鈍および酸洗をしてもよい。なお、この際の焼鈍条件および酸洗条件は、特に、限定されない。適宜、常法に従って、行えばよい。
続いて、上記熱延板に冷間圧延を行い、冷延板とする。冷間圧延の際の条件は、特に、限定されないが、例えば、冷間圧延の際の圧下率は、40~80%の範囲とするのが好ましい。得られた冷延板に焼鈍を行い、冷延焼鈍板とする。焼鈍の際の焼鈍温度は、850~920℃の範囲とするのがよい。
焼鈍温度が850℃未満であると、十分な再結晶組織を得ることができない。また、Cuを十分母相に固溶させることができない。このため、焼鈍温度は、850℃以上とし、860℃以上とするのがより好ましい。一方、焼鈍温度が920℃を超えると、製造性の観点から望ましくない。特に、スケールが厚く生成し、その後の酸洗処理の負荷が大きくなる。このため、焼鈍温度は、920℃以下とし、900℃以下とするのがより好ましい。なお、焼鈍時間は、特に、限定されないが、製造性の観点から通常、0.5~3分の範囲内とする。
なお、焼鈍において、Cu析出物が形成しやすい800~400℃の温度域における平均冷却速度は、5℃/s以上とするのがよい。
焼鈍後、冷却した後、酸洗し、フェライト系ステンレス鋼の冷延焼鈍板とする。なお、酸洗の際の条件は、特に、限定されない。常法に従えばよい。
以下、実施例によって本発明に係るフェライト系ステンレス鋼板をより具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する鋼を、真空溶解で溶製し、厚さ200mmの鋳型に鋳造した後、1230℃で2時間加熱し、熱間圧延を施し、厚さ5mmの熱延板を得た。続いて得られた熱延板を酸洗した後、厚さ2.0mmに冷間圧延して冷延板を得た。さらに、冷延板を900℃で2分均熱の焼鈍した後、酸洗を行うことによって冷延焼鈍板を得た。なお、上記例において、800~400℃の温度域における平均冷却速度は、全て5℃/sとなるように調整した。
Figure 2024028047000001
得られた冷延焼鈍板について、さらに、600℃で1h時効し、空冷したサンプルも用意し、ΔHVを算出した。具体的には、冷延焼鈍板から、20mmL×30mmW×2mmtのサンプルを各鋼2枚づつ切り出し、サンプルA、サンプルBとした。サンプルAは、600℃で1時間の時効を行ったのち空冷した。時効したサンプルAと、冷延焼鈍板であるサンプルBのL断面を試験力1.0kgfとし、1mmピッチで7点、ビッカース硬さ試験機で硬さを測定し、最大値および最小値の2点を除く5点の平均値を算出した。サンプルAの硬さの平均値からサンプルBの硬さの平均値を引き、ΔHVを算出した。
なお、上記サンプルBについて、900℃、2分の条件で、再結晶しているかどうか、評価した。具体的には、サンプルBのL断面を電解研磨後、EBSDによって周囲の測定点との局所的な方位の粒内平均値(Grain Average Misorientation、GAM)が1゜以下の領域の面積率を算出し、その面積率が95%以上あれば再結晶したと判定し、表2に「再」と記載した。一方、上記面積率が95%未満である場合、再結晶が完了していないと判定し、表2に「未」と記載した。以下、結果を纏めて、表2に示す。
Figure 2024028047000002
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の要件を満足する、No.1~12は、900℃、2分の条件の焼鈍条件において、再結晶が完了し、焼鈍、酸洗等の製造負荷が小さかった。また、ΔHVの値も大きく、時効硬化能も高かった。その一方、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の要件を満足しない、No.13~19は、900℃、2分の条件の焼鈍条件において、再結晶が完了しなかった、時効硬化能が低いという点の少なくとも一つに当てはまった。
No.13または19は、Mo含有量またはNb含有量が本実施形態の要件の範囲外で、さらに、(ii)式を満足しなかったため、焼鈍冷却時のCu析出抑制ができず、ΔHVが低下した。また、No.14~17、18はNb含有量、Mo含有量、Cu含有量のうち、少なくとも一つが本実施形態の要件を満足せず、さらに、(ii)式を満足しなかったため、再結晶が完了せず、ΔHVも低下した。また、No.17は、Cu含有量が低く、(ii)式を満足しなかったため、ΔHVが低下した。

Claims (3)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.002~0.03%、
    Si:0.1~1.0%、
    Mn:1.0%以下、
    P:0.04%以下、
    S:0.030%以下、
    Cr:17.0~19.5%、
    Mo:0.10~0.30%、
    Nb:0.05~0.2%、
    Ti:0.6%以下、
    Cu:0.80~1.5%、
    N:0.002~0.03%、
    Ni:0~0.6%、
    V:0~0.5%、
    W:0~0.5%、
    Co:0~0.5%、
    Zr:0~0.5%、
    Al:0~1.0%、
    Sn:0~0.5%、
    B:0~0.005%、
    Ca:0~0.01%、
    Mg:0~0.01%、
    REM:0~0.01%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記(i)および(ii)式を満足し、
    600℃で1h時効し、空冷した場合のビッカース硬さの増加量ΔHVが、50以上である、フェライト系ステンレス鋼板。
    8×(C+N)≦Ti+Nb ・・・(i)
    1.6≦(8×Mo+10×Nb)/Cu≦5.0 ・・・(ii)
    但し、上記式中の各元素記号はフェライト系ステンレス鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Ni:0.01~0.6%、
    V:0.01~0.5%、
    W:0.05~0.5%、
    Co:0.01~0.5%、
    Zr:0.01~0.5%、
    Al:0.01~1.0%、および
    Sn:0.01~0.5%、
    から選択される一種以上を含有する、請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    B:0.0002~0.005%、
    Ca:0.0002~0.01%、
    Mg:0.0002~0.01%、および
    REM:0.0002~0.01%、
    から選択される一種以上を含有する、請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼板。

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