JP2024022186A - 噴射制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】マルチ噴射における補正の精度を向上させることができる噴射制御装置を提供する。【解決手段】噴射制御装置1は、バッテリ電圧を昇圧した充電電圧によって駆動される燃料噴射弁3を、各気筒における1サイクル中に燃料の噴射を複数回に分けて行うマルチ噴射により制御する噴射制御部20を備えている。そして、噴射制御部20は、マルチ噴射時の2回目以降に行われる微小噴射について学習して噴射量を補正する。【選択図】図1
Description
本開示は、燃料噴射弁を制御する噴射制御装置に関する。
内燃機関から排出される窒素酸化物や微粒子状物質を削減するための技術として、各気筒の1サイクル中に燃料噴射を複数回に分けて行うマルチ噴射が知られている。以下、各気筒における吸気、圧縮、燃焼および排気の一連の行程を1サイクルと称する。
1サイクル中に必要とされる要求噴射総量は、運転条件などに基づいて定まっている。そのため、マルチ噴射では、1回の噴射量が要求噴射総量よりも少ない微小噴射が行われている。そして、微小噴射は、燃料噴射弁の機械的特性によって噴射量にばらつきが生じることが想定される。そのため、例えば特許文献1では、燃料噴射弁の閉弁タイミングの検出精度を向上させることによって噴射量を補正することが提案されている。
しかしながら、マルチ噴射のように比較的短い間隔で微小噴射が行われると、前段の噴射の起電力などによって2回目以降の噴射における燃料噴射弁の挙動が変化するおそれがある。その場合、1回目の噴射の学習結果を2回目以降の噴射の補正に適用しても、噴射の精度が向上しないおそれがある。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マルチ噴射における補正の精度を向上させることができる噴射制御装置を提供することにある。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マルチ噴射における補正の精度を向上させることができる噴射制御装置を提供することにある。
本開示による噴射制御装置(1)は、バッテリ電圧を昇圧した充電電圧によって駆動される燃料噴射弁(3)を、各気筒における1サイクル中に燃料の噴射を複数回に分けて行うマルチ噴射により制御する噴射制御部(20)を備えている。そして、噴射制御部(20)は、マルチ噴射時の2回目以降に行われる微小噴射について学習して噴射量を補正する。これにより、前段の噴射の起電力などの影響を受けることによって2回目以降の噴射における燃料噴射弁(3)の挙動が1回目の噴射時の挙動と異なったとしても、学習によって挙動の違い補正することが可能となり、マルチ噴射における補正の精度を向上させることができる。
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態の噴射制御装置1は、内燃機関2に設けられている燃料噴射弁3を制御する。この内燃機関2は、例えば車両用の4気筒の内燃機関であれば、#1として示す第1気筒、#2として示す第2気筒、#3として示す第3気筒、および#4として示す第4気筒にそれぞれ燃料噴射弁3が設けられている。ただし、図1に示す内燃機関2の構成は一例であり、例えば気筒数が異なる構成であってもよい。
燃料噴射弁3は、図2に示すように、ボディ301の内部にソレノイドコイル302、弁体303、固定コア304および可動コア305を収容している。弁体303は、全体として円筒形状であって、図示下方側となる先端が円錐形状に形成されていて、軸方向への移動が可能になっている。ボディ301は、図示下端側の先端に、燃料を噴射するための噴射孔306が設けられている。
固定コア304は、磁性材料によって円筒形状に形成されており、内周側が弁体303が移動するとともに燃料が流れる空間となっている。固定コア304の噴射孔306側には、金属製の磁性材料を用いて中心に貫通孔を有する円盤形状に形成された可動コア305が配置されている。可動コア305は、内周側を弁体303が貫通した状態で、ソレノイドコイル302の内周側を軸方向に移動可能に設けられている。可動コア305は、ソレノイドコイル302に通電されていない状態では、固定コア304との間で所定の隙間を介して対向する初期位置に位置している。また、可動コア305の上面には、弁体303に固定されている係止部307が接触している。
固定コア304の内周側には、弁体303を噴射孔306側へ弾性的に押し付ける第1ばね308が、弁体303に巻回された状態で設けられている。一方、可動コア305の噴射孔306の側には、可動コア305を初期位置に弾性的に引き付ける第2ばね309が、ボディ301に固定された状態で設けられている。
燃料噴射弁3は、ソレノイドコイル302に通電されると、可動コア305が第2ばね309の弾性力に逆らって固定コア304に移動する。また、可動コア305の移動に伴って係止部307が押し上げられることにより、弁体303も軸方向に移動する。なお、可動コア305が移動して固定コア304に当接したとしても、弁体303および係止部307は、固定コア304の内部を軸方向に移動可能である。つまり、燃料噴射弁3では、燃料の噴射時に第1ばね308および第2ばね309の弾性力という機械的特性が影響する構造となっている。
各燃料噴射弁3には、図示しない燃料供給系から燃料がそれぞれ供給されている。この燃料供給系には、燃料の圧力を検出する圧力センサ4、燃料の温度を検出する温度センサ5が設けられている。圧力センサ4で検出された燃料の圧力、および、温度センサ5で検出された燃料の温度は、演算用のパラメータとして噴射制御装置1に入力される。
噴射制御装置1は、図1に示すように制御回路10、記憶部11、駆動回路12、昇圧回路13を備えている。制御回路10は、マイクロコンピュータで構成されており、記憶部11に記憶されているプログラムを実行することによって噴射制御装置1全体を制御する。記憶部11は、例えばフラッシュメモリなどにより不揮発性の記憶媒体として構成されており、噴射制御装置1で利用する各種のデータや、後述する学習結果などのデータを記憶する。
駆動回路12は、制御回路10から出力される指令値に基づいて、燃料噴射弁3を駆動するための駆動信号を生成および出力するとともに、燃料噴射弁3側から取得した各種のパラメータを制御回路10に出力する。駆動信号は、バッテリ14から供給されるバッテリ電圧を昇圧回路13によって昇圧した充電電圧によってパルス状に生成される。例えば図3に示すように、4気筒の内燃機関の場合、噴射順序は#1→#3→#4→#2となり、噴射順序に応じて各気筒の燃料噴射弁3に対して通電パルス#1~#4の駆動信号が出力される。
燃料噴射弁3は、通電パルスがオンになるとソレノイドコイル302に通電され、弁体303が移動して燃料を噴射する。一方、燃料噴射弁3は、通電パルスがオフになるとソレノイドコイル302への通電が停止され、燃料の噴射を停止する。各通電パルスは、一部を拡大して示すように、1つの気筒における1回の吸気行程、圧縮行程、燃焼行程および排気行程を1サイクルとすると、オン/オフの状態が1サイクル中に複数回切り替えられている。なお、図3に示す噴射順序は一例である。
このように、燃料噴射弁3は、各気筒における1サイクル中に燃料噴射を複数回に分けて行うマルチ噴射で制御される。以下、1サイクル中における1回目の噴射をN=1、2回目の噴射をN=2、3回目の噴射をN=3、4回目の噴射をN=4、5回目の噴射をN=5として説明する。また、マルチ噴射時における1回目の噴射つまりはN=1の噴射を初段の噴射とも称し、2回目以降の噴射つまりはN≧2の噴射を後段の噴射と称して説明する。
制御回路10は、噴射制御部20と、図1にPFとして示すプラットフォーム21とを備えている。これら噴射制御部20およびプラットフォーム21は、制御回路10でプログラムを実行することによってソフトウェアで構成されている。このプラットフォーム21は、噴射制御部20と外部の回路との間で信号やデータの受け渡しを行うドライバソフトウェアなどで構成されたソフトウェア群である。
噴射制御部20は、図4に示すように初段学習ブロック22、後段学習ブロック23、およびTi算出ブロック24を備えており、駆動回路12に与える指令値を生成する。詳細は後述するが、初段学習ブロック22は、マルチ噴射時における初段の噴射について従来のように学習し、初段の噴射に必要となる演算や補正を行う機能ブロックである。後段学習ブロック23は、マルチ噴射時における後段の噴射を学習し、後段の噴射に必要となる演算や補正を行う機能ブロックである。Ti算出ブロック24は、初段学習ブロック22または後段学習ブロック23からの出力に基づいて、駆動回路12に与える指令値である通電時間(Ti)を算出する機能ブロックである。
次に上記した構成の作用および効果について説明する。
まず、初段学習ブロック22での学習について説明する。初段学習ブロック22は、PL補正係数学習部221と、初段要求Q補正部222とを備えている。PL補正係数学習部221は、パーシャルリフト噴射の補正係数を学習する機能ブロックである。パーシャルリフト噴射は、弁体303が最大開弁位置まで上昇する前に通電を停止して閉弁動作を開始させることで開弁時間を短くして微小量の燃料を噴射する微小噴射のことである。
まず、初段学習ブロック22での学習について説明する。初段学習ブロック22は、PL補正係数学習部221と、初段要求Q補正部222とを備えている。PL補正係数学習部221は、パーシャルリフト噴射の補正係数を学習する機能ブロックである。パーシャルリフト噴射は、弁体303が最大開弁位置まで上昇する前に通電を停止して閉弁動作を開始させることで開弁時間を短くして微小量の燃料を噴射する微小噴射のことである。
パーシャルリフト噴射では、通電時間(Ti)と実際の噴射量との直線性が低くなる傾向がある。これは、燃料噴射弁3の機械的特性によって弁体303の上昇量のばらつきが大きくなるためである。なお、弁体303が最大開弁位置まで上昇した状態で燃料が噴射されるフルリフト噴射では、通電時間(Ti)と実際の噴射量との直線性が高く、通電時間に概ね比例する形で単位ストローク当たりの噴射量が増加していく。
PL補正係数学習部221は、1回目の噴射時の燃料噴射弁3の閉弁時間(Tc)とパラメータ類とに基づいて、パーシャルリフト噴射時の噴射量を補正するためのPL補正係数を学習する。ここで、パラメータ類としては、例えば燃料の圧力、燃料の温度、通電時間(Ti)、通電パルスのインターバルなどのパラメータである。ただし、ここに例示したものに限らず必要に応じて他のパラメータを用いることができる。以下、1回の噴射に必要とされる燃料の噴射量を要求Qと称する。
PL補正係数は、学習値として初段要求Q補正部222に与えられる。そして、初段要求Q補正部222は、マルチ噴射時における初段の噴射且つパーシャルリフト噴射である場合には、要求QをPL補正係数に基づいて補正し、補正した要求Qを仮要求QとしてTi算出ブロック24に出力する。なお、初段要求Q補正部222は、初段の噴射であってもパーシャルリフト噴射でない場合には、要求Qを補正せずに仮要求Qとして出力する。
Ti算出ブロック24は、図4に示すように、入力された仮要求Qに基づいて仮要求Qの燃料を噴射するための通電時間(Ti)を算出する。このとき、通電時間(Ti)と燃料の噴射量(Q)との関係は、グラフG1にて模式的に示すTi-Qマップ31として予め記憶部11に記憶されている。以下、要求Qと仮要求Qとの差分を噴射補正量(ΔQ)とし、噴射補正量(ΔQ)の絶対値を差分値(q)とする。
例えば仮要求Qが要求Qよりも大きい場合には、通電時間(Ti)と実際の噴射量との関係は、破線のグラフG2にて示すように、グラフG1を差分値(q)だけ噴射量が大きくなる方向にオフセットされる。その場合、グラフG1から求まる要求Qに対応する通電時間であるTi1で燃料噴射弁を制御すると、実際の関係はグラフG2のようになっていることから、要求Qよりも過大な燃料が噴射されてしまう。そのため、Ti算出ブロック24は、要求Qと噴射補正量(ΔQ)とに基づいて、実際に出力すべき通電時間を、要求QとグラフG2との交点に対応するTi2として求める。
なお、Ti2は、グラフG1にオフセットが無い場合における要求Q-qと交点に対応した通電時間に相当する。そのため、実質的な演算としては、要求Q+ΔQを求め、要求Q+ΔQとグラフG1との交点に対応する通電時間を求めればよい。また、仮要求Qが要求Qよりも大きい場合も同様に、グラフG1が差分値(q)だけ噴射量が小さくなる方向にオフセットされた状態になるが、要求Q+ΔQを求めることにより、出力すべき通電時間をグラフG1から求めることができる。
さて、マルチ噴射では、1サイクル中に必要とされる要求噴射総量の燃料を複数回に分けて噴射する微小噴射が行われる。この微小噴射は燃料噴射弁3の機械的特性によって噴射量にばらつきが生じることが想定されることから、上記したように初段の噴射を学習し、その学習値を用いて噴射量を補正していた。
しかし、1サイクル中の微小噴射においては、初段の噴射時と後段の噴射時における燃料噴射弁3の挙動が異なることが判明した。これは、後段の噴射時には、前段の噴射時の起電力などの影響を受けるためであると考えられる。そして、マルチ噴射では、短い期間で微小噴射が繰り返されることから影響が顕著になると考えられる。さらに、燃料噴射弁3の機械的特性が変化すると開弁動作や閉弁動作に影響があると考えられることから、燃料噴射弁3の経年変化の影響も受けることが想定される。
そこで、噴射制御装置1は、以下に説明するように、後段の噴射について学習することによってマルチ噴射における補正の精度を向上させている。また、噴射制御装置1は、以下に説明するように、学習に関わる処理負荷の低減を図っている。
まず、処理負荷の低減について説明する。後段学習ブロック23は、図4に示すように、Tcマップ学習部231と後段要求Q補正部232とを備えている。そして、噴射制御装置1では、学習時における処理の負荷低減を図るために、Tcマップ学習部231において図6に示す処理を実行する。Tcマップ学習部231は、N≧2つまりは2回目以降の噴射であり、且つ、微小噴射であり、且つ、学習完了フラグがオフであるか否かを判定する(S1)。つまり、Tcマップ学習部231は、ステップS1において、学習が必要になる条件が満たされているか否かを判定している。
学習フラグは、学習が完了したか否かを示すフラグであり、学習が完了していればオンされ、学習が完了していなければオフされる。また、本実施形態では、学習フラグは噴射制御装置1の起動時にオフされている。そのため、イグニッションオン後に1度は学習が行われる。これにより、燃料噴射弁3が経年変化したとしても、経年変化に対応した適切な補正を行うことが可能になる。
Tcマップ学習部231は、ステップS1においていずれかの条件が満たされていないと判定した場合には(S1:NO)、処理を終了する。一方、Tcマップ学習部231は、ステップS1において全て条件が満たされていると判定した場合には(S1:YES)、噴射時のパラメータを取得する(S2)。このとき、Tcマップ学習部231は、閉弁時間(Tc)、燃料の圧力、燃料の温度、噴射のインターバルなどを噴射時のパラメータとして取得する。なお、Tcマップ学習部231は、例えば通電時間などの他のパラメータが必要であればそれらのパラメータも取得する。
続いて、Tcマップ学習部231は、取得したパラメータを用いて、学習Tcマップ30を更新する(S3)。学習Tcマップ30は、閉弁時間(Tc)と各パラメータとの対応関係が格納されているデータ群である。具体的には、学習Tcマップ30は、図7に示すように例えば燃料の圧力と温度に対応する閉弁時間が、例えば噴射のインターバルや通電時間ごとに対応付けられて学習Tcマップ30A~Cとして格納している。ただし、図7に示す学習Tcマップ30は一例である。
例えば、インターバルが短いほど前段の噴射が後段の噴射に与える影響が大きくなると想定される。そのため、学習Tcマップ30にインターバルに応じた閉弁時間を格納することにより、適切な補正が行えるようになる。また、インターバルが同じであっても燃料の圧力によって噴射量が変わると想定される。そのため、学習Tcマップ30に燃料の圧力に応じた閉弁時間を格納することにより、適切な補正が行えるようになる。つまり、Tcマップ学習部231は、複数のパラメータごとに学習を行うことにより、次回以降の噴射時に適切な補正を行うことが可能としている。
Tcマップ学習部231は、初回の学習である場合には、閉弁時間と各パラメータとの対応関係が格納されていないことから、今回取得した閉弁時間を各パラメータに対応付け、初回学習点として対応する領域(P0)に記録する。そして、Tcマップ学習部231は、初回学習点の値を重みづけすることにより、破線の矢印にて一部を示すように他領域の閉弁時間を推定して格納することにより、学習Tcマップ30を更新する。
一方、Tcマップ学習部231は、2回目の以降の学習である場合には、取得したパラメータに対応する閉弁時間について、ノイズ成分を除去するなましをかけて格納する。すなわち、Tcマップ学習部231は、閉弁時間を学習して学習Tcマップ30を更新する。これにより、前段の噴射の起電力などの影響を受けることによって2回目以降の噴射における燃料噴射弁3の挙動が異なる場合であっても、その挙動の違いが吸収された状態の学習Tcマップ30を得ることができる。
続いて、Tcマップ学習部231は、格納されていた値と更新後の値との差分である学習更新差分を求め(S4)、学習更新差分が所定以下であるかを判定する(S5)。この場合、Tcマップ学習部231は、例えば学習更新差分の絶対値や前回の値に対する割合などに基づいて学習更新差分が所定以下であるかを判定する。
そして、Tcマップ学習部231は、学習更新差分が所定以下でないと判定した場合には(S4:NO)、学習完了フラグを変更することなく処理を終了する。このため、初回の学習時や学習値が安定していない場合には、学習が繰り返されることになる。
これに対して、Tcマップ学習部231は、学習更新差分が所定以下であると判定した場合には(S4:YES)、学習完了フラグをオンにした後(S5)、処理を終了する。本実施形態では噴射を終了してから次の噴射が開始されるまでの間に学習を完了させていることから、処理の負荷が大きくなっている。そのため、Tcマップ学習部231は、学習が安定している場合には、学習フラグをオンすることにより次回の学習を行わない。つまり、噴射制御装置1は、学習値が安定した場合には学習を停止する構成となっている。
学習Tcマップ30は、図4に示すように後段要求Q補正部232によって参照され、要求Qの補正に用いられる。具体的には、後段要求Q補正部232は、図8に示す処理を実行し、図9に示す手順にて要求Qを補正して仮要求Qを求めている。
後段要求Q補正部232は、N≧2つまりは2回目以降の噴射であり、且つ、微小噴射であるか否かを判定する(S11)。後段要求Q補正部232は、N≧2ではない場合、または、微小噴射でないと判定した場合には(S11:NO)、今回の噴射では要求Qを補正することなく仮要求QとしてTi算出ブロック24に出力し(S17)、処理を終了する。
これに対して、後段要求Q補正部232は、N≧2且つ微小噴射であると判定した場合には(S11:YES)、補正に必要なパラメータを取得する(S12)。このステップS2では、例えば通電時間やインターバル、燃料の圧力、燃料の温度などのパラメータが取得あるいは算出される。なお、他のパラメータが必要であればそれらも取得あるいは算出される。
パラメータを取得すると、後段要求Q補正部232は、学習Tcマップ30から推定Tcを求める(S13)。この推定Tcは、要求Qに対応する閉弁時間であり、図9に示すように、要求Qから求まる通電時間に対応する学習Tcマップ30Aにおいて、燃料の温度および圧力に対応する領域(P1)に格納された学習値である。このように、後段要求Q補正部232は、例えば燃料の圧力や温度が同じであっても、例えば通電時間やインターバルに応じた適切な推定Tcを求めている。また、後段要求Q補正部232は、例えばインターバルが同じであっても、燃料の圧力や温度に応じた適切な推定Tcを求めている。
続いて、後段要求Q補正部232は、図8に示すようにTc-Qマップ32から推定Qを求める(S14)。このTc-Qマップ32には、図9にグラフG11として模式的に示すように、閉弁時間(Tc)と噴射量(Q)との関係が予め対応付けて記憶されている。そのため、後段要求Q補正部232は、Tc-Qマップ32を参照して推定Tcに対応する噴射量を推定Qとして求める。
また、後段要求Q補正部232は、図8に示すようにqずれ補正値を求める(S15)。このqずれ補正値は、図9に示すように、燃料噴射弁3の開弁のずれと補正値との関係が予め記憶されている補正マップ33に基づいて求められる。そして、後段要求Q補正部232は、図8に示すように推定Qとqずれ補正値とを加算して、後段の噴射における仮要求Qを求め(S16)、求めた仮要求QをTi算出ブロック24に出力して(S17)、処理を終了する。そして、Ti算出ブロック24において、図5に示したように仮要求Qに基づいて通電時間(Ti)が算出される。
このように、噴射制御装置1は、マルチ噴射の2回目以降の噴射を学習し、2回目以降の燃料噴射弁3の挙動に応じた適切な補正を可能とすることにより、マルチ噴射における補正の精度を向上させている。
以上説明した噴射制御装置1によれば、次のような効果を得ることができる。
噴射制御装置1は、バッテリ電圧を昇圧した充電電圧によって駆動される燃料噴射弁3を、各気筒における1サイクル中に燃料の噴射を複数回に分けて行うマルチ噴射により制御する噴射制御部20を備えている。そして、噴射制御部20は、マルチ噴射時の2回目以降に行われる微小噴射について学習して噴射量を補正する。これにより、前段の噴射の起電力などの影響を受けることによって2回目以降の噴射における燃料噴射弁3の挙動が1回目の噴射時の挙動と異なったとしても、学習によって挙動の違い補正することが可能となり、マルチ噴射における補正の精度を向上させることができる。また、実施形態のように全ての噴射について学習を行うことにより、3回目以降の噴射の挙動がそれ以前の噴射時の挙動と異なる場合であっても、マルチ噴射における補正の精度を向上させることができる。
噴射制御装置1は、バッテリ電圧を昇圧した充電電圧によって駆動される燃料噴射弁3を、各気筒における1サイクル中に燃料の噴射を複数回に分けて行うマルチ噴射により制御する噴射制御部20を備えている。そして、噴射制御部20は、マルチ噴射時の2回目以降に行われる微小噴射について学習して噴射量を補正する。これにより、前段の噴射の起電力などの影響を受けることによって2回目以降の噴射における燃料噴射弁3の挙動が1回目の噴射時の挙動と異なったとしても、学習によって挙動の違い補正することが可能となり、マルチ噴射における補正の精度を向上させることができる。また、実施形態のように全ての噴射について学習を行うことにより、3回目以降の噴射の挙動がそれ以前の噴射時の挙動と異なる場合であっても、マルチ噴射における補正の精度を向上させることができる。
燃料噴射弁3は、微小噴射時に比較的短い周期で燃料の噴射を繰り返すため、前段の噴射の起電力などの影響を受けやすくなると考えられる。また、経年変化によって燃料噴射弁3の挙動そのものが変化することも考えられる。そこで、噴射制御装置1は、燃料噴射弁3として、ばね部材によって噴射孔306に押し付けられる弁体303を有し、噴射制御部20から出力される指令値に基づいた駆動信号が与えられることによって弁体303が駆動されて噴射孔306から燃料を噴射するものを対象として学習および補正を行う。これにより、2回目以降の微小噴射時の挙動の違いを吸収した状態で、また、経年変化による挙動の変化も吸収した状態で噴射量を補正することができ、マルチ噴射における補正の精度を向上させることができる。
噴射制御装置1は、噴射量の算出に用いるパラメータごとに学習して噴射量を補正する。これにより、例えば燃料が同じ圧力や同じ温度であっても、例えば通電時間が異なっていればその通電時間に応じた適切な閉弁時間(Tc)を求めることが可能となるなど、マルチ噴射における補正の精度を向上させることができる。
噴射制御装置1は、学習値が安定した場合には学習を停止する。噴射制御装置1は、噴射が終了してから次の噴射が開始されるまでの間に学習を完了させる必要があることから、処理負荷が高くなる傾向にある。その一方で、燃料噴射弁3のばね部材などの機械的特性は1サイクルごとに劣化するほど顕著なものではないと考えられるため、学習値が安定している状態では学習を停止することにより負荷を低減することができる。
また、実施形態では学習値が安定している状態では学習を停止する構成を例示したが、燃料噴射弁3の閉弁時間(Tc)を検出する閉弁検出回数を制限することにより、負荷を低減する構成とすることができる。例えば、図3に示す1サイクル中の2回目の噴射では閉弁検出を行い、3回目以降の噴射では閉弁検出を行わない構成とすることができる。また、例えば図6の処理に前回の噴射時に学習したか否かを示すフラグを判定する処理を加え、閉弁検出を行ったサイクルの次のサイクルでは閉弁検出を行わない構成とすることができる。また、例えば図6の処理に学習対象となる噴射をカウントする処理を加え、所定数のサイクルごとに閉弁検出を行う構成とすることができる。また、閉弁検出回数の制限と、学習値が安定した状態における学習の停止とを組み合わせた構成とすることができる。
これにより、微小噴射時の燃料噴射弁3の挙動の違いを吸収した状態で、また、経年変化による挙動の変化も吸収した状態で噴射量を補正することができ、マルチ噴射における補正の精度を向上させることができる。また、負荷を低減できることから、幅広いスペックの制御回路10や駆動回路12用のICを用いることができる。
噴射制御部20は、学習値が安定した場合、処理の負荷に応じて学習を行うか否かを選択する構成とすることができる。例えば内燃機関2の回転数が高い場合、図3に示す1サイクルが短くなり、微小噴射のインターバルも短くなる。その場合、噴射ごとに学習を行うと負荷が高くなるものの、例えば図6のステップS1に負荷の判定も組み込むことにより、負荷が高い場合には学習を行わない構成とすることができる。これにより、制御回路10を過度に高性能なものにすることなく学習および補正を行うことができる。この場合、噴射制御部20は、処理を完了させるまでの猶予が長い低負荷の処理が実行されているときに学習を行う構成とすることができる。これにより、学習にかかる負荷を低減することができる。
噴射制御部20は、学習そのものを、猶予が長い低負荷のタスクとして実行する構成とすることができる。すなわち、学習の負荷そのものを低減し、例えば図6のステップS1の前後に負荷の高低を判定する処理を組み込み、負荷が低い状態で学習を行う構成とすることができる。これは、上記したように燃料噴射弁3のばね部材などの機械的特性は1サイクルごとに劣化するほど顕著なものではないと考えられるためである。
実施形態で説明した機能ブロックの分類や担当する演算内容は一例であり、機能ブロックや演算内容をどのように割り振るかは適宜選択することができる。すなわち、噴射制御装置1は、全体としてマルチ噴射時の2回目以降に行われる微小噴射について学習して噴射量を補正する構成となっていればよい。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
本件は、特許請求の範囲に記載の発明に加え、以下のような発明を含む。
[1]
バッテリ電圧を昇圧した充電電圧によって駆動される燃料噴射弁を、各気筒における1サイクル中に燃料の噴射を複数回に分けて行うマルチ噴射により制御する噴射制御部を備え、
前記噴射制御部は、マルチ噴射時の2回目以降に行われる微小噴射について学習して噴射量を補正する噴射制御装置。
[2]
前記噴射制御部は、噴射量の算出に用いるパラメータごとに学習して噴射量を補正する[1]記載の噴射制御装置。
[3]
前記噴射制御部は、前記学習値が安定した場合、学習を停止する[1]または[2]記載の噴射制御装置。
[4]
前記噴射制御部は、前記学習値が安定した場合、前記燃料噴射弁の閉弁検出回数を制限する[1]から[3]のいずれか1つ記載の噴射制御装置。
[5]
前記噴射制御部は、前記学習値が安定した場合、処理の負荷に応じて学習を行うか否かを選択する[1]から[4]のいずれか1つ記載の噴射制御装置。
[1]
バッテリ電圧を昇圧した充電電圧によって駆動される燃料噴射弁を、各気筒における1サイクル中に燃料の噴射を複数回に分けて行うマルチ噴射により制御する噴射制御部を備え、
前記噴射制御部は、マルチ噴射時の2回目以降に行われる微小噴射について学習して噴射量を補正する噴射制御装置。
[2]
前記噴射制御部は、噴射量の算出に用いるパラメータごとに学習して噴射量を補正する[1]記載の噴射制御装置。
[3]
前記噴射制御部は、前記学習値が安定した場合、学習を停止する[1]または[2]記載の噴射制御装置。
[4]
前記噴射制御部は、前記学習値が安定した場合、前記燃料噴射弁の閉弁検出回数を制限する[1]から[3]のいずれか1つ記載の噴射制御装置。
[5]
前記噴射制御部は、前記学習値が安定した場合、処理の負荷に応じて学習を行うか否かを選択する[1]から[4]のいずれか1つ記載の噴射制御装置。
図面中、1は噴射制御装置、3は燃料噴射弁、20は噴射制御部を示す。
Claims (5)
- バッテリ電圧を昇圧した充電電圧によって駆動される燃料噴射弁(3)を、各気筒における1サイクル中に燃料の噴射を複数回に分けて行うマルチ噴射により制御する噴射制御部(20)を備え、
前記噴射制御部は、マルチ噴射時の2回目以降に行われる微小噴射について学習して噴射量を補正する噴射制御装置。 - 前記噴射制御部は、噴射量の算出に用いるパラメータごとに学習して噴射量を補正する請求項1記載の噴射制御装置。
- 前記噴射制御部は、前記学習値が安定した場合、学習を停止する請求項1記載の噴射制御装置。
- 前記噴射制御部は、前記学習値が安定した場合、前記燃料噴射弁の閉弁検出回数を制限する請求項1記載の噴射制御装置。
- 前記噴射制御部は、前記学習値が安定した場合、処理の負荷に応じて学習を行うか否かを選択する請求項1記載の噴射制御装置。
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