JP2024017862A - 光ファイバセンサ及び光ファイバセンシング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光ファイバ上の入射端からの距離ごとに、探索範囲の広さを決定することにより、過剰に空間分解能を損なうことなくフェーディングの影響を回避する。【解決手段】光情報取得手段は、光パルスごとに、信号光の光ファイバの入射端からの距離xに対する、信号光の強度I(x)及び位相P(x)の分布を、ビート信号から取得する。各位置探索範囲取得手段は、光情報取得手段が取得した信号光の強度I(x)の分布から、光ファイバの位置ごとに、ゲージ長xGLに対する探索範囲LS(x)を取得する。精度劣化回避手段は、ゲージ長xGL及び探索範囲LS(x)に基いて、信号光の光ファイバの入射端からの距離xにおける、位相差ΔP(x)を算出する2点を決定する。振動情報復調手段は、決定された2点間の位相差ΔP(x)を取得し、位相差ΔP(x)から、振動情報を復調する。【選択図】図2
Description
この発明は、光ファイバセンサ及び光ファイバセンシング方法に関する。
光ファイバ通信の発展とともに、光ファイバ自体をセンシング媒体とした技術が盛んに研究されている。特に散乱光を利用する光ファイバセンシングは、ポイントで計測する電気センサーとは異なり、長距離の分布センシングを可能とする。
レイリー散乱光を利用する分布型光ファイバセンサとして知られる位相感応時間領域反射測定(φ-OTDR:Phase-senstive Optical Time Domain Reflectrometry)は、その測定範囲の広さ、測定感度の高さから幅広い分野で注目されている(例えば、非特許文献1又は2参照)。
しかし、φ-OTDRでは、レイリー散乱光強度が光ファイバ上の位置によってランダムに振る舞うことから、位相測定精度も位置によってランダムに振る舞う(例えば、非特許文献3参照)。特に、散乱光強度が微弱になっている位置ではフェーディングが生じ、それによって測定波形の歪が発生してしまう(例えば、非特許文献4参照)。
この課題を解決する方法として、プローブ光を周波数多重する方法(例えば、非特許文献5参照)やプローブ光の光位相を変調する方法(例えば、非特許文献6参照)が知られている。また、近年ではフェーディングの周波数領域での解析による方法(例えば、非特許文献7参照)、最近傍解析(Nearest Neighbor Analysis)を用いた方法(例えば、非特許文献8参照)、教師データを用いた学習による方法(例えば、非特許文献9参照)など、信号処理のみによってフェーディングの影響を抑制する方法も提案されている。
さらに、この出願の発明者らが提案している、ある位置の光位相をその近傍で最も強度の高い位置の光位相で代用する適応ゲージ長方式もある(例えば、特許文献1又は2、若しくは、非特許文献10参照)。
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ここで、上述の適応ゲージ長方式は、ある位置の光位相をその近傍で最も強度の高い位置の光位相で代用する方式である。そのため、探索範囲の広さに応じて空間分解能の劣化を伴う。これまでの適応ゲージ長方式では、光ファイバ全体に亘って単一の探索範囲を決定していた。
しかし、光ファイバの一方の端部である光パルスの入射端近くと、他方の端部である終端近くとでは、散乱光強度の平均値が異なる。このため、フェーディングを回避するために必要な探索範囲の広さも異なる。それにも関わらず、従来の適応ゲージ長方式では、終端近くにおいてフェーディングを回避できるように探索範囲の広さが設定される。
この結果、従来の適応ゲージ長方式ではフェーディングを回避できるものの、入射端近くにとっては過剰な探索範囲を設定することとなり、その分、空間分解能を劣化させる恐れがある。
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、この発明の目的は、光ファイバ上の入射端からの距離ごとに、探索範囲の広さを決定することにより、過剰に空間分解能を損なうことなくフェーディングの影響を回避する、光ファイバセンサ及び光ファイバセンシング方法を提供することにある。
上述した目的を達成するために、この発明の光ファイバセンサは、プローブ光として光パルスを生成する光源部と、プローブ光によって測定対象物で発生する後方散乱光を含む信号光をコヒーレント検波してビート信号を生成する受光部と、ビート信号が入力される演算部とを備えて構成される。演算部は、光情報取得手段、各位置探索範囲取得手段、精
度劣化回避手段、及び、振動情報復調手段を備える。
度劣化回避手段、及び、振動情報復調手段を備える。
光情報取得手段は、光パルスごとに、信号光の光ファイバの入射端からの距離xに対する、信号光の強度I(x)及び位相P(x)の分布を、ビート信号から取得する。各位置探索範囲取得手段は、光情報取得手段が取得した信号光の強度I(x)の分布から、光ファイバの位置ごとに、ゲージ長xGLに対する探索範囲LS(x)を取得する。精度劣化回避手段は、ゲージ長xGL及び探索範囲LS(x)に基いて、信号光の光ファイバの入射端からの距離xにおける、位相差ΔP(x)を算出する2点を決定する。振動情報復調手段は、決定された2点間の位相差ΔP(x)を取得し、位相差ΔP(x)から、振動情報を復調する。
上述した光ファイバセンサの好適実施形態によれば、各位置探索範囲取得手段は、光ファイバの位置ごとに、後方散乱光の、信号成分及び雑音成分から与えられる位相誤差が、予め定められる最大位相誤差以上になる区間の数の期待値が1未満となる、最小の探索範囲を採用する。
また、各位置探索範囲取得手段が、光ファイバの入力端側の方が短く、終端側の方が長い探索範囲を取得する構成にしてもよい。
また、この発明の光ファイバセンサのさらなる好適実施形態によれば、精度劣化回避手段は、光ファイバの各位置xに対して、入射端側に、sをx-xGLから、x-xGL-LS(x)まで変化させたときに、複数の光パルスでの散乱光強度の最小値が、最大となる入射端側位置と、光ファイバの各位置xに対して、終端側に、sをx+xGLから、x+xGL+LS(x)まで変化させたときに、複数の光パルスでの散乱光強度の最小値が、最大となる終端側位置を、位相差ΔP(x)を算出するのに用いる2点として決定する。
また、この発明の光ファイバセンシング方法は、以下の過程を備えて構成される。先ず、プローブ光として光パルスを生成する。次に、プローブ光によって光ファイバで発生する後方散乱光を含む信号光をコヒーレント検波してビート信号を生成する。次に、光パルスごとに、信号光の光ファイバの入射端からの距離xに対する、信号光の強度I(x)及び位相P(x)の分布を、ビート信号から取得する。次に、信号光の強度I(x)の分布から、光ファイバの位置ごとに、ゲージ長xGLに対する探索範囲LS(x)を取得する。次に、ゲージ長xGL及び探索範囲LS(x)に基いて、信号光の光ファイバの入射端からの距離xにおける、位相差ΔP(x)を算出する2点を決定する。次に、決定された2点間の位相差ΔP(x)を取得し、位相差ΔP(x)から、振動情報を復調する。
上述した光ファイバセンシング方法の好適実施形態によれば、探索範囲LS(x)を取得する過程では、後方散乱光の信号成分及び雑音成分から与えられる位相誤差が予め定められる最大位相誤差以上になる区間の数の期待値が1未満となる最小の探索範囲を、光ファイバの位置ごとに取得する。
また、探索範囲LS(x)を取得する過程において、光ファイバの入力端側の方が短く、終端側の方が長い探索範囲を取得する構成にしてもよい。
また、この発明の光ファイバセンシング方法のさらなる好適実施形態によれば、位相差ΔP(x)を算出する2点を決定するにあたり、光ファイバの各位置xに対して、入射端側に、sをx-xGLから、x-xGL-LS(x)まで変化させたときに、複数の光パルスでの散乱光強度の最小値が、最大となる入射端側位置と、光ファイバの各位置xに対して、終端側に、sをx+xGLから、x+xGL+LS(x)まで変化させたときに、
複数の光パルスでの散乱光強度の最小値が、最大となる終端側位置を、位相差ΔP(x)を算出するのに用いる2点として決定する。
複数の光パルスでの散乱光強度の最小値が、最大となる終端側位置を、位相差ΔP(x)を算出するのに用いる2点として決定する。
この発明の光ファイバセンサ及び光ファイバセンシング方法によれば、光ファイバ上の入射端からの距離ごとに、探索範囲の広さを決定することにより、過剰に空間分解能を損なうことなくフェーディングの影響を回避できる。
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
(フェーディング抑制の基本原理)
図1を参照して、フェーディング抑制の基本原理を説明する。図1は、フェーディング抑制の基本原理を説明するための模式図である。
図1を参照して、フェーディング抑制の基本原理を説明する。図1は、フェーディング抑制の基本原理を説明するための模式図である。
光ファイバセンサは、光源部10、光サーキュレータ20、光ファイバ30及び計測部40を備えて構成される。また、計測部40は、受光部50及び演算部60を備えて構成される。この振動検知光ファイバセンサは、例えば、OTDRに用いられる。
光源部10は、例えば、レーザ光源11、光ファイバカプラ12、強度変調器13、光増幅器14、光フィルタ15、及び、周波数シフタ16を備えて構成される。
レーザ光源11は、通信波長帯の連続光として、レーザ光を生成する。レーザ光源11として、周波数安定かつ線幅が10kHz以下のいわゆる狭線幅レーザを用いるのが良い。レーザ光の波長は、任意で良いが、標準単一モード光ファイバで低損失の1550nmにするのが良い。レーザ光源11で生成されたレーザ光は、光ファイバカプラ12に送られる。
光ファイバカプラ12は、レーザ光をプローブ光とローカル光に2分岐する。2分岐された一方のプローブ光は、強度変調器13に送られる。また、2分岐された他方のローカル光は、周波数シフタ16に送られる。
強度変調器13は、プローブ光を、強度変調器13の外部から入力される電気パルスで光パルス化して、光パルスを生成する。この光パルスは、光増幅器14に送られる。強度変調器13で生成される光パルスは、例えば、パルス幅が100nsで、繰り返し周波数が5kHzである。光パルスは、測定対象物である光ファイバ30を1m伝搬するのに5nsの時間を要する。信号光として、光ファイバ30で発生する後方散乱光を観測する場合は,順方向の伝搬と,逆方向の伝搬の往復の時間を要するので、1mあたり10nsの遅延が発生する。例えば、パルス幅を100ns、繰り返し周波数を5kHzとしたとき
、空間分解能は10mとなり、最大の測定距離は20kmとなる。
、空間分解能は10mとなり、最大の測定距離は20kmとなる。
強度変調器13として、例えば、音響光学変調器(AOM:Acoustic Optic Modulator)が用いられる。
強度変調器13で生成されたプローブ光は、光増幅器14で所定の増幅を受ける。これは、プローブ光の強度が強いほど、光ファイバ30での後方散乱光の強度が強くなるためである。光増幅器14で増幅されたプローブ光は、光フィルタ15に送られる。
光フィルタ15は、光増幅器14で発生する自然放出光(ASE:Amprified
Spontaneous Emission)のノイズを取り除く。光フィルタ15でノイズが取り除かれたプローブ光は、光サーキュレータ20を経て光ファイバ30に送られる。
Spontaneous Emission)のノイズを取り除く。光フィルタ15でノイズが取り除かれたプローブ光は、光サーキュレータ20を経て光ファイバ30に送られる。
光ファイバ30に送られたプローブ光は、光ファイバ30を伝播する。プローブ光の伝播に伴って後方散乱光が発生する。この後方散乱光を含む信号光は、光サーキュレータ20を経て受光部50に送られる。なお、ここでは図示及び説明を省略するが、後方散乱光を増幅するために、受光部50の前段に光増幅器と光バンドパスフィルタ(BPF)が設けられることが多い。
一方、周波数シフタ16に送られたローカル光は、周波数シフタ16において、光周波数がシフトされる。この周波数シフタ16は、検波方式に応じて、ローカル光の光周波数を調整する。例えば、検波方式としてヘテロダイン検波方式を用いる場合は、ローカル光と散乱光の間に周波数差を与えるために用いられる。また、検波方式としてホモダイン検波方式を用いる場合は、ローカル光と散乱光の周波数を一致させるために用いられる。ローカル光と散乱光の周波数差によっては、周波数シフタ16を備えない構成にしてもよい。
例えば、強度変調器13にAOMを用いる場合、光ドップラー効果により、強度変調器13で生成される光パルスの周波数は、強度変調器13に入力されるレーザ光の周波数から変化する。このため、ホモダイン検波方式を用いる場合に、周波数シフタ16が設けられることがある。一方、ヘテロダイン検波方式を用いる場合に、周波数シフタ16を設けないこともある。
受光部50は、プローブ光によって、光ファイバ30で発生する後方散乱光をコヒーレント検波して電気信号を生成する。
受光部50は、コヒーレントレシーバ52、バランス型フォトダイオード(PD)54、アナログ・ディジタル(A/D)変換器56を備えて構成される。
コヒーレントレシーバ52は、参照光を用いて、後方散乱光のコヒーレント検波を行う。コヒーレントレシーバ52として、例えば、光90°ハイブリッドカプラを用いることができる。コヒーレントレシーバ52からの出力は、バランス型PD54に送られる。
バランス型PD54は、コヒーレントレシーバ52からの出力をバランス検波する。これにより、後方散乱光の強度と位相の情報を持つ、I相(cos波)とQ相(sin波)のビート信号が生成される。このI相及びQ相のビート信号は、A/D変換器56に送られる。
A/D変換器56は、I相及びQ相のビート信号をディジタル信号に変換する。ディジ
タル信号に変換された、I相及びQ相のビート信号は、演算部60に入力される。
タル信号に変換された、I相及びQ相のビート信号は、演算部60に入力される。
演算部60としては、例えば、市販のパーソナルコンピュータ(PC)を利用できる。ここでは、一例として、演算部60が、CPU(Central Processing
Unit)70、RAM(Random Access Memory)62、ROM(Read Only Memory)64及び記憶手段66を備えて構成されるものとして説明する。CPU70は、ROM64に格納されているプログラムを実行することにより、後述する各機能手段を実現する。各機能手段での処理結果は、一時的にRAM62に格納される。
Unit)70、RAM(Random Access Memory)62、ROM(Read Only Memory)64及び記憶手段66を備えて構成されるものとして説明する。CPU70は、ROM64に格納されているプログラムを実行することにより、後述する各機能手段を実現する。各機能手段での処理結果は、一時的にRAM62に格納される。
演算部60が備える機能手段として、光情報取得手段72、探索範囲取得手段74、精度劣化回避手段76及び振動情報復調手段78がある。これら各機能手段の動作は、受光部50の構成に依存する。ここでは、コヒーレントレシーバ52として、例えば、光90°ハイブリッドカプラを用いたヘテロダイン検波の例を説明する。
光情報取得手段72は、A/D変換器56で得られるビート信号のcos波及びsin波から、信号光の強度(散乱光強度とも称する。)I(x、k)及び信号光の位相(散乱光位相とも称する。)P(x、k)を算出する。ここで、xは光ファイバ30の入射端からの距離であり、kはプローブ光として繰り返し入射される光パルスの番号である。
散乱光強度I(x、k)及び散乱光位相P(x、k)を算出するにあたり、光情報取得手段72は、先ず、cos波及びsin波から、後方散乱光の光複素電界を生成する。
後方散乱光の光複素電界もビート信号であるので、ダウンコンバートする必要がある。そこで、後方散乱光の複素振幅をダウンコンバートする。このダウンコンバートする方法として、例えば、ビート周波数を持つ逆回転の複素正弦波を、後方散乱光の光複素電界に乗算し、ローパスフィルター(LPF)を作用させる方法が用いられる。
その後、ダウンコンバートして得られた複素振幅の絶対値の2乗を計算することで、散乱光強度I(x、k)が得られる。また、複素振幅の位相を計算することで、散乱光位相P(x、k)が得られる。
探索範囲取得手段74は、フェーディングが発生しないように適応ゲージ長方式における探索範囲LSを決定する。探索範囲Lsが広すぎれば、フェーディングの影響は回避できるが、空間分解能が劣化してしまう。一方、探索範囲LSが狭すぎれば、空間分解能の劣化は抑えられるが、フェーディングの影響は回避できなくなってしまう。そのため、適切な探索範囲LSを設定する必要がある。適切な探索範囲LSの設定方法としては、単純に測定結果を確認しながら設定する方法でも良いが、特許文献2に開示されている定量的な設定方法でも良い。
一般に、位相を測定するφ-OTDRでは、あるゲージ長xGLに対して、光ファイバ上の位置xでの振動波形をP(x+xGL/2,k)-P(x-xGL/2,k)の式を用いて算出する。このとき、I(x+xGL/2,k)やI(x-xGL/2,k)が微弱であると、フェーディングの影響を受けてしまう。
そこで、各位置xに対して、入射端側に、sをx-xGLから、x-xGL-LSまで変化させたときに、複数の光パルスでの散乱光強度I(s、k)の最小値が、最大となる入射端側位置y1を導出する。また、各位置xに対して、終端側に、sをx+xGLから、x+xGL+LSまで変化させたときに、複数の光パルスでの散乱光強度I(s、k)の最小値が、最大となる終端側位置y2を導出する。そして、振動情報復調手段が、光パ
ルスk、光ファイバ位置xに対して、P(y2,k)-P(y1,k)を計算し、この計算結果を光パルスkの方向にアンラップして、光ファイバに印加された振動情報を復調する。このように、適応ゲージ長方式では、ある位置の位相をその周辺で最も強度の高い位置の位相で代用することで、フェーディングの影響を回避する。
ルスk、光ファイバ位置xに対して、P(y2,k)-P(y1,k)を計算し、この計算結果を光パルスkの方向にアンラップして、光ファイバに印加された振動情報を復調する。このように、適応ゲージ長方式では、ある位置の位相をその周辺で最も強度の高い位置の位相で代用することで、フェーディングの影響を回避する。
(実施形態)
図2~図5を参照して、この発明の光ファイバセンサの実施形態を説明する。図2は、この発明の光ファイバセンサを説明するための模式図である。図3~5は、この発明の光ファイバセンサの動作を説明するための図である。
図2~図5を参照して、この発明の光ファイバセンサの実施形態を説明する。図2は、この発明の光ファイバセンサを説明するための模式図である。図3~5は、この発明の光ファイバセンサの動作を説明するための図である。
この発明の光ファイバセンサは、フェーディング抑制の基本原理の説明に用いた図1に示す探索範囲取得手段74に換えて、各位置探索範囲取得手段75を備える点が異なっている。他の構成については、図1を参照して説明した構成と同様なので、重複する説明を省略することもある。
図3は、適応ゲージ長方式を用いていない場合のφ-OTDRの例を示す図である。図3(A)は、光ファイバの位置に対する散乱光強度を示す。図3(A)では、横軸に、光ファイバの入射端からの位置[単位:km]を取って示し、縦軸に、散乱光強度を任意単位(a.u.)で取って示している。また、図3(B)は、φ-OTDRの測定結果を示す。図3(B)では横軸に、光ファイバの入射端からの位置[単位:km]を取って示し、縦軸に、時間[単位:ms]を取って示している。また、図3(B)では、濃淡が位相を示している。
ここでは、光ファイバの長さを25kmとし、終端付近に100Hzの正弦波を印加した結果を示している。
適応ゲージ長方式を用いていない場合のφ-OTDRでは、図3(B)に示されるように、様々な位置で、ノイズによる縦線が見られる。
図4は、例えば、図1に示される、従来の適応ゲージ長方式を用いた光ファイバセンサにおける、φ-OTDRの測定結果を示す図である。図4(A)及び(B)では横軸に、光ファイバの入射端からの位置[単位:km]を取って示し、縦軸に、時間[単位:ms]を取って示している。また、図4(A)及び(B)では、濃淡が位相を示している。なお図4(A)及び(B)では、位置が22kmから25kmまでの範囲を拡大して示している。
ここでは、図4(A)及び(B)の探索範囲LSはそれぞれ一定である。図4(A)は、探索範囲LSが24mの場合を示し、図4(B)は、探索範囲LSが27mの場合を示している。図4(A)では22.5km付近及び24.3km付近にフェーディングが発生している。一方、図4(B)ではそれらのフェーディングの影響が排除できていることが分かる。
このことから、従来の適応ゲージ長方式を用いた場合のφ-OTDRでは、探索範囲LSが27m程度必要である。
しかし、この必要とされる探索範囲LSの27mは20km以降においてフェーディングの影響を回避するのに必要な探索範囲であって、光ファイバの入射端付近にとっては過剰であると考えられる。そこで、この発明の光ファイバセンサでは、各位置探索範囲取得手段75が、位置ごとに探索範囲LSを決定する。
散乱光の信号成分がIS、雑音成分がINであるとき、位相誤差φは、以下の式(1)で与えられる。
雑音成分がINであるとき、最大位相誤差φmを与える信号成分IS0は、以下の式(2)で与えられる。
したがって、雑音成分INが与えられたときに、位相誤差φを最大位相誤差φm以下にするためには、以下の式(3)を満たす必要がある。
また、一般的に、光ファイバにおけるレイリー散乱光の強度分布P(I)は、以下の式(4)で示される指数分布に従う。
したがって、ある一つの区間における位相誤差は、以下の式(5)で与えられる確率pm(=Pr(IS<ISO))で、φm以上になる。
このとき、光ファイバ長をL、分布が独立とみなせる距離をLd、探索範囲をLSとすると、適応ゲージ長の理論から、以下の式(6)が、光ファイバ全体において、適応ゲージ長方式を用いた結果として位相誤差がφm以上になる区間の数と見積もれる。
従って、探索範囲LSが、以下の式(7)を満たすとき、期待値としては、位相誤差がφm以上になる区間の数が1未満であり、光ファイバ全体にわたって、位相誤差がφm以上にはならず、フェーディングの影響を抑制できる。
上記式(7)を変形すると、以下の式(8)が得られる。
上記式(8)を満たす最小の探索範囲Lsを採用すれば、位相誤差がφm以上にならずに、空間分解能の劣化を最大限抑えられる。
そこで、各位置探索範囲取得手段75は、上記式(5)を用いて、<I>を光ファイバ各位置でのその周辺の散乱光強度として、各位置の探索範囲LSを算出する。各位置探索範囲取得手段75が探索範囲LSを決定した後の処理は、従来と同様に行うことができるので、重複する説明を省略する。
図5を参照して、この発明の光ファイバセンサを用いた測定結果を説明する。図5は、この発明の光ファイバセンサでの結果を示す図である。図5(A)は、φ-OTDRの測定結果を示す。図5(A)では横軸に、光ファイバの入射端からの位置[単位:km]を取って示し、縦軸に、時間[単位:ms]を取って示している。また、図5(A)では、濃淡が位相を示している。
図5(B)は、光ファイバ各位置での探索範囲LSを示す。図5(B)では、横軸に光ファイバの入射端からの位置[単位:km]を取って示し、縦軸に、探索範囲LS[単位:m]を取って示している。また、図5(B)では、この発明の光ファイバセンサにおける探索範囲LSを曲線Iで示し、従来の適応ゲージ長方式を用いた光ファイバセンサにおける探索範囲LSを直線IIで示している。
ここでは、最大位相誤差φmをπ/4とし、各位置での平均散乱光強度として、各位置の周辺100mの散乱光強度の平均値を用いた。また、雑音成分INは、光パルスが存在しないときに観測される散乱光強度とすることができる。
図5(A)に示されるように、この発明の光ファイバセンサによれば、図3(B)や図4(A)に見られるノイズによる縦線が見られず、フェーディングの影響を回避できている。また、図5(B)に示されるように、光ファイバの全長25kmに対し、入射端近辺、入射端から10km付近まで探索範囲Lsが10m程度となっているなど、従来技術の27mと比較して、短くなっており、過剰な空間分解能の劣化を抑制できていることがわかる。
精度劣化回避手段76は、各位置xに対して、入射端側に、sをx-xGLから、x-xGL-LS(x)まで変化させたときに、複数の光パルスでの散乱光強度I(s、k)の最小値が、最大となる入射端側位置y1を導出する。また、各位置xに対して、終端側に、sをx+xGLから、x+xGL+LS(x)まで変化させたときに、複数の光パルスでの散乱光強度I(s、k)の最小値が、最大となる終端側位置y2を導出する。
そして、振動情報復調手段が、光パルスk、光ファイバ位置xに対して、P(y2,k)-P(y1,k)を計算し、この計算結果を光パルスkの方向にアンラップして、光ファイバに印加された振動情報を復調する。このように、適応ゲージ長方式では、ある位置の位相をその周辺で最も強度の高い位置の位相で代用することで、フェーディングの影響を回避する。
振動情報復調手段78は、各位置xにおける位相差を取得する。さらに、この計算で得られた位相差ΔPを、k方向にアンラップする。振動情報復調手段78は、位相差ΔPの分布から、受信時刻tにおける振動情報を、任意好適な従来公知の方法で取得する。この受信時刻tは、光ファイバに長手方向における位置xに対応する。従って、振動情報取得手段78は、光ファイバの長手方向の位置xにおける振動情報を取得できる。
この発明の光ファイバセンサ及び光センシング方法では、平均散乱光強度が相対的に大きい入射端側の探索範囲を短く、相対的に小さい終端側の探索範囲を長くするなど、探索範囲LSを、散乱光強度の信号成分の大きさに従って定める。この結果、この発明の光ファイバセンサ及び光センシング方法によれば、過剰に空間分解能を損なうことなくフェーディングの影響を回避できる。
10 光源部
11 レーザ光源
12 光ファイバカプラ
13 強度変調器
14 光増幅器
15 光フィルタ
16 光周波数シフタ
18 光増幅器
20 光サーキュレータ
30 光ファイバ
40 計測部
50 受光部
52 コヒーレントレシーバ
54 バランス型フォトダイオード(PD)
56 アナログ・ディジタル(A/D)変換器
60 演算部
62 RAM
64 ROM
66 記憶手段
70 CPU
72 光情報取得手段
74 探索範囲取得手段
75 各位置探索範囲取得手段
76 精度劣化回避手段
78 振動情報復調手段
11 レーザ光源
12 光ファイバカプラ
13 強度変調器
14 光増幅器
15 光フィルタ
16 光周波数シフタ
18 光増幅器
20 光サーキュレータ
30 光ファイバ
40 計測部
50 受光部
52 コヒーレントレシーバ
54 バランス型フォトダイオード(PD)
56 アナログ・ディジタル(A/D)変換器
60 演算部
62 RAM
64 ROM
66 記憶手段
70 CPU
72 光情報取得手段
74 探索範囲取得手段
75 各位置探索範囲取得手段
76 精度劣化回避手段
78 振動情報復調手段
Claims (8)
- プローブ光として光パルスを生成する光源部と、
前記プローブ光によって光ファイバで発生する後方散乱光を含む信号光をコヒーレント検波してビート信号を生成する受光部と、
前記ビート信号が入力される演算部と
を備え、
前記演算部は、
前記光パルスごとに、前記信号光の光ファイバの入射端からの距離xに対する、前記信号光の強度I(x)及び位相P(x)の分布を、前記ビート信号から取得する光情報取得手段と、
前記信号光の強度I(x)の分布から、前記光ファイバの位置ごとに、ゲージ長xGLに対する探索範囲LS(x)を取得する各位置探索範囲取得手段と、
ゲージ長xGL及び前記探索範囲LS(x)に基いて、前記信号光の光ファイバの入射端からの距離xにおける、位相差ΔP(x)を算出するのに用いる2点を決定する精度劣化回避手段と、
決定された2点間の位相差ΔP(x)を取得し、前記位相差ΔP(x)から、振動情報を復調する振動情報復調手段と
を備える
ことを特徴とする光ファイバセンサ。 - 前記各位置探索範囲取得手段は、
後方散乱光の信号成分及び雑音成分から与えられる位相誤差が予め定められる最大位相誤差以上になる区間の数の期待値が1未満となる最小の探索範囲を、前記光ファイバの位置ごとに取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバセンサ。 - 前記各位置探索範囲取得手段は、
前記光ファイバの入力端側の方が短く、終端側の方が長い探索範囲を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバセンサ。 - 前記精度劣化回避手段は、光ファイバの各位置xに対して、入射端側に、sをx-xGLから、x-xGL-LS(x)まで変化させたときに、複数の光パルスでの散乱光強度の最小値が、最大となる入射端側位置と、光ファイバの各位置xに対して、終端側に、sをx+xGLから、x+xGL+LS(x)まで変化させたときに、複数の光パルスでの散乱光強度の最小値が、最大となる終端側位置を、位相差ΔP(x)を算出するのに用いる2点として決定する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光ファイバセンサ。 - プローブ光として光パルスを生成する過程と、
前記プローブ光によって光ファイバで発生する後方散乱光を含む信号光をコヒーレント検波してビート信号を生成する過程と、
前記光パルスごとに、前記信号光の光ファイバの入射端からの距離xに対する、前記信号光の強度I(x)及び位相P(x)の分布を、前記ビート信号から取得する過程と、
前記信号光の強度I(x)の分布から、前記光ファイバの位置ごとに、ゲージ長xGLに対する探索範囲LS(x)を取得する過程と、
前記ゲージ長xGL及び前記探索範囲LS(x)に基いて、前記信号光の光ファイバの入射端からの距離xにおける、位相差ΔP(x)を算出する2点を決定する過程と、
決定された2点間の位相差ΔP(x)を取得し、前記位相差ΔP(x)から、振動情報を復調する過程と
を備える
ことを特徴とする光ファイバセンシング方法。 - 前記探索範囲LS(x)を取得する過程では、
後方散乱光の信号成分及び雑音成分から与えられる位相誤差が予め定められる最大位相誤差以上になる区間の数の期待値が1未満となる最小の探索範囲を、前記光ファイバの位置ごとに取得する
ことを特徴とする請求項5に記載の光ファイバセンシング方法。 - 前記探索範囲LS(x)を取得する過程では、
前記光ファイバの入力端側の方が短く、終端側の方が長い探索範囲を取得する
ことを特徴とする請求項5に記載の光ファイバセンシング方法。 - 位相差ΔP(x)を算出する2点を決定するにあたり、
光ファイバの各位置xに対して、入射端側に、sをx-xGLから、x-xGL-LS(x)まで変化させたときに、複数の光パルスでの散乱光強度の最小値が、最大となる入射端側位置と、光ファイバの各位置xに対して、終端側に、sをx+xGLから、x+xGL+LS(x)まで変化させたときに、複数の光パルスでの散乱光強度の最小値が、最大となる終端側位置を、位相差ΔP(x)を算出するのに用いる2点として決定する
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の光ファイバセンシング方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022120783A JP2024017862A (ja) | 2022-07-28 | 2022-07-28 | 光ファイバセンサ及び光ファイバセンシング方法 |
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JP2022120783A Pending JP2024017862A (ja) | 2022-07-28 | 2022-07-28 | 光ファイバセンサ及び光ファイバセンシング方法 |
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