JP2024017064A - 無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン - Google Patents
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Abstract
【課題】熱風を使用しない無風熱伝導式プラスチック用溶接ガンの提供を課題とする。【解決手段】内周面を熱伝導可能に接触させる筒状部を形成した、高熱伝導率の母材加熱用アタッチメントを脱着可能に固定した第一ヒーターと、溶接棒の外周面の所定の範囲を接触させる面を形成し、母材加熱用アタッチメントの先端部の近傍に配設された溶接棒加熱用アタッチメントを備えた第二ヒーターと、第一ヒーターの温度を測定する第一温度計、及び、第二ヒーターの温度を測定する第二温度計からの温度情報により第一ヒーター又は第二ヒーターをオンオフ制御する制御部と、を備え、材加熱用アタッチメントの底面形状は母材同士の接合される面に面あわせ可能な面を形成し、溶接棒加熱用アタッチメントの溶接棒を接触させる面を溶接棒が母材に接地する近傍の高さに設けた無風熱伝導式プラスチック用溶接ガンにより課題解決できた。【選択図】 図1
Description
本発明は、塩化ビニルなどの熱可塑性汎用プラスチックの溶接にも、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維及びセルロースナノファイバー等の繊維が含有された繊維強化プラスチックの溶接にも使用可能な無風熱伝導式プラスチック用溶接ガンに関する。
特許文献1には、プラスチック製溶接材の溶接に使用するこてであって、下端部には周方向にガイド溝を付設した押えロールを具え、該押えロールを把手部に連結する支持アームには、溶接材を押えロールの前面側に案内するガイド部を一体に形成してなるプラスチック溶接こてが開示されている。溶接用ヒータから熱風を吹きかけてプラスチック製溶接材と母材を加熱する溶接方法である。
特許文献2には、ノズル部に設けられた溶接素材供給管から第1の溶接素材を供給するとともに、気体供給部からセラミックヒーターが内蔵された熱風供給管に気体を供給して前記セラミックヒーターにより前記気体を加熱し熱風とし、前記熱風を前記熱風供給管に接続された熱風放出管に送り出し、前記ノズル部に設けられ前記熱風放出管に接続された熱風導入管に導入し、前記ノズル部に設けられたローラにより前記第1の溶接素材を先端部から後端部まで長さ方向に前記熱風を噴射することにより加熱、押圧して軟化、焼成し、次いで前記ローラを前記第1の溶接素材の先端部に戻した後前記第1の溶接素材の上に幅方向が一部重なり合うように第2の溶接素材を供給し、前記第1の溶接素材と前記第2の溶接素材の重なり合う部分を前記熱風を噴射することにより溶融しながら前記ノズル部に設けられたローラにより前記第1の溶接素材と前記第2の溶接素材の重なり合う部分の先端部から後端部まで長さ方向に圧力を付加して前記第1の溶接素材と前記第2の溶接素材の重なり合う部分を圧着して一体化させ、前記ノズル部に設けられた冷却管から冷却風を供給して前記第1の溶接素材と前記第2の溶接素材の重なり合う部分を冷却する、樹脂、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、又は炭素素材の溶接方法が開示されている。
特許文献3には、溶接棒を被溶接部材の披溶接郎に当て、この被溶接部を溶接装置から吹出される熱風によって加熱溶融して溶接するブラスチックの溶接方法において、第1の加熱手段により前記被溶接部材の被溶接部を実質的に溶融状態とした後、さらに第2の加熱手段により溶融した被溶接部を披溶接部材の融点以下に下がらない温度に保持すると同時に前紀溶接棒を加熱溶融し、かかる状態の該被溶接部材の波溶接部を前紀溶接棒で溶接することを特徴とするプラスチックの溶接方法が開示されている。
特許文献1~3のいずれかの発明は、母材と溶接棒を熱風で溶融させるため、熱風の母材や溶接棒への当て方によって溶接強度にバラツキが出やすく、母材と溶接棒への熱風の当て方に熟練技能を必要とするのでプラスチック溶接作業者が一人前に育つのにかなりの訓練期間を要するという問題があった。
また、特許文献1の段落0035に炭素繊維プラスチックの場合はこれらの繊維を溶接するためには800~2000℃程度に温度を上げなければ溶接できないと記載されている。作業者が2000℃の高温に加熱した熱風で溶接作業をするのは火傷の危険があるという問題があった。また、樹脂の融点は、例えばポリエチレン130℃、ポリプロピレン170℃であるので、炭素繊維自体は溶解しないが接合の機能を有する樹脂が溶融又は蒸発したり、劣化したり、樹脂成分がなくなって繊維のみになったりして、溶接にとって不可欠な接合機能の樹脂を接合に必要な量より量的不足にさせて溶接ができないという問題もあった。
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、プラスチックの溶接において、熱風による溶接作業を不要とすることができ、溶接強度のバラツキが小の溶接品質が得られ、一人前になるまでの訓練期間を短縮できる無風熱伝導式プラスチック用溶接ガンの提供を課題とする。
請求項1に記載の無風熱伝導式プラスチック用溶接ガンは、プラスチック母材同士を溶接する無風熱伝導式プラスチック用溶接ガンであって、前記母材を溶融する温度に昇温可能で、接合される母材のそれぞれの接合面に接触可能な底面形状を有する外周面を形成した筒状体で高熱伝導率の母材加熱用アタッチメント内に外周面を面接触させて挿入され、前記母材加熱用アタッチメントを脱着可能に固定した第一ヒーターと、溶接棒を溶融する温度に昇温可能で、前記溶接棒の外周面の円周方向で所定の範囲を接触させる面を形成し、前記母材加熱用アタッチメントの先端部の近傍に配設された溶接棒加熱用アタッチメントを備えた第二ヒーターと、前記第一ヒーターの温度を測定する第一温度計と、前記第二ヒーターの温度を測定する第二温度計と、前記第一温度計及び前記第二温度計からの温度情報により前記第一ヒーター又は第二ヒーターをそれぞれオンオフ制御する制御部と、を備え、前記第一ヒーターは、前記第一ヒーターの先端が前記母材加熱用アタッチメントの筒状部の先端近傍まで前記母材加熱用アタッチメントに挿入されており、前記溶接棒加熱用アタッチメントの前記溶接棒を接触させる部位の下端を、前記母材加熱用アタッチメントの高さ方向及び左右方向の範囲内であって前記母材に接しない範囲内に設けることを特徴とする。
請求項2に記載の無風熱伝導式プラスチック用溶接ガンは、請求項1において、前記溶接棒の外周面の円周方向の所定の範囲が、前記溶接棒の外周面の円周方向の約1/4~約3/4の範囲のいずれかで設定されていることを特徴とする。
請求項3に記載の無風熱伝導式プラスチック用溶接ガンは、請求項1又は2において、前記第一ヒーターの加熱温度を前記母材の融点以上で前記融点近傍の温度とし、前記第二ヒーターの加熱温度を前記溶接棒の融点以上で前記融点近傍の温度とすることを特徴とする。
請求項4に記載の無風熱伝導式プラスチック用溶接ガンは、請求項1又は3において、溶接時の進行方向で前記第二ヒーターの後側に、前記母材のそれぞれの接合面の間に充填された前記溶接棒の溶融部及び前記母材の溶融部を押圧する押圧体を備えたことを特徴とする。
請求項1に記載の発明は、熱風噴出口と母材との間隔の調整技能や熱風を当てる範囲を正確に行う技能などを要する熱風を使用する溶接ではなく、加熱体を母材や溶接棒に当てて熱伝導で母材や溶接棒を加熱させ溶融させて溶接することができるので、溶接強度のバラツキが小の溶接品質を得ることができ、母材や溶接棒に加熱体を当てればいいので一人前に早期に育成できるという効果も奏する。
接合させる2つの母材の接合面が形成する角度や形状が異なっても、脱着可能の母材加熱用アタッチメントを形成される母材の接合面に面当たり可能なものに取り替えるようにしているので、接合させる2つの母材の接合面が形成する角度がいかなる傾斜角度であっても前記母材加熱用アタッチメントを取り替えることにより容易に適応させることができるという効果を奏する。
請求項2に記載の発明は、溶接棒の下端部の外周面を円周方向に全周にわたって加熱すれば溶接棒の下端部が円周方向で全周にわたって溶融してしまい、母材の溶融部に溶接棒の下端部の溶融部を押し付けることが困難であるが、第二ヒーターを溶接棒の円周方向で全周の約半周分しか接触させないようにすることにより、溶接棒が加熱体に接触して溶融する円周方向の約半周分と、溶接棒が加熱体に非接触で溶融しない非溶融部の円周方向の約半周分とにすることにより、溶接棒に残った非溶融部を下方に押し付けて腰のように曲げることもできるので、溶接棒の溶融部を母材の溶融部に押し付けることができ、空隙やピンホール等の溶接欠陥を発生させずかつ溶接強度の確保ができるという効果を奏する。
請求項3に記載の発明は、母材の接合面を溶融するのに必要な加熱温度と、溶接棒を溶融するのに必要な加熱温度とは材質などの相違から異なることに適応させて、母材の溶融と溶接棒の溶融にそれぞれ別々に最適な加熱温度を設定をすることができる。例えば、繊維強化プラスチックの場合は母材を溶融させる加熱温度が溶接棒を溶融させる加熱温度より高い傾向にあるので、母材に適する加熱温度で溶接棒を加熱させると溶接棒が必要以上に溶融してしまい、溶接棒を母材の溶融部に押し付けることが困難になるという問題が生ずるが、母材と溶接棒とをそれぞれ別個に加熱温度を制御できるので溶接棒の下端部の円周方向で約半周分の溶融部を母材の接合面である表面層の溶融部に押し付けることができ、空隙やピンホール等の溶接欠陥を発生させずかつ溶接強度の確保ができるという効果を奏する。
請求項4に記載の発明は、溶接棒の溶融した部分を母材の接合面の表面層の溶融部分にさらに押し付けるので溶接強度の品質の安定化をさらに図ることができるという効果を奏する。
プラスチック溶接は、一般的に作業者が熱風噴射機器を一方の片手で溶接棒を他方の片手で持ち、熱風で母材20と溶接棒30を溶融させて母材20のプラスチックを溶接している。しかし、融点が85℃のポリ塩化ビニルや225℃のナイロン6などの融点が200℃前後までのプラスチックの溶接の場合は作業者による溶接作業が可能であるが、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維及びセルロースナノファイバー等の繊維が含有された繊維強化プラスチックの場合には融点が、繊維含有量が増加するほど高くなり、例えば400℃になるので、熱風が熱すぎて作業者による溶接作業には火傷などの災害発生の危険が予知される。
そこで、発明者は、作業者が溶接強度のバラツキの小さい溶接品質を得ることができ、安全にプラスチックの溶接ができる環境をつくるため、火傷の原因となる熱風を使用しないプラスチック溶接ガンの開発に取り組み、無風で熱伝導によりプラスチックを溶接できる無風熱伝導式プラスチック溶接ガンを想到した。
本発明の無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン1は、図1、図2、図4又は図10に示すように、
プラスチック母材20a、20b同士を溶接する無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン1であって、前記母材20a、20bを溶融する温度に昇温可能で、接合される母材20a、20bのそれぞれの接合面21a、21bに接触可能な底面形状5aを有する外周面を形成した筒状体で高熱伝導率の母材加熱用アタッチメント5内に外周面を面接触させて挿入され、前記母材加熱用アタッチメント5を脱着可能に固定した第一ヒーター2と、溶接棒30を溶融する温度に昇温可能で、前記溶接棒30の外周面の円周方向で所定の範囲を接触させる面を形成し、前記母材加熱用アタッチメント5の先端部の近傍に配設された溶接棒加熱用アタッチメント6を備えた第二ヒーター3と、前記第一ヒーター2の温度を測定する第一温度計7と、前記第二ヒーター3の温度を測定する第二温度計8と、前記第一温度計7及び前記第二温度計8からの温度情報により前記第一ヒーター2又は第二ヒーター3をそれぞれオンオフ制御する制御部9と、を備え、前記第一ヒーター2は、前記第一ヒーター2の先端が前記母材加熱用アタッチメント5の筒状部の先端近傍まで前記母材加熱用アタッチメント5に挿入されており、前記溶接棒加熱用アタッチメント6の前記溶接棒30を接触させる部位の下端を、前記母材加熱用アタッチメント5の高さ方向及び左右方向の範囲内であって前記母材20に接しない範囲内に設けている。
プラスチック母材20a、20b同士を溶接する無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン1であって、前記母材20a、20bを溶融する温度に昇温可能で、接合される母材20a、20bのそれぞれの接合面21a、21bに接触可能な底面形状5aを有する外周面を形成した筒状体で高熱伝導率の母材加熱用アタッチメント5内に外周面を面接触させて挿入され、前記母材加熱用アタッチメント5を脱着可能に固定した第一ヒーター2と、溶接棒30を溶融する温度に昇温可能で、前記溶接棒30の外周面の円周方向で所定の範囲を接触させる面を形成し、前記母材加熱用アタッチメント5の先端部の近傍に配設された溶接棒加熱用アタッチメント6を備えた第二ヒーター3と、前記第一ヒーター2の温度を測定する第一温度計7と、前記第二ヒーター3の温度を測定する第二温度計8と、前記第一温度計7及び前記第二温度計8からの温度情報により前記第一ヒーター2又は第二ヒーター3をそれぞれオンオフ制御する制御部9と、を備え、前記第一ヒーター2は、前記第一ヒーター2の先端が前記母材加熱用アタッチメント5の筒状部の先端近傍まで前記母材加熱用アタッチメント5に挿入されており、前記溶接棒加熱用アタッチメント6の前記溶接棒30を接触させる部位の下端を、前記母材加熱用アタッチメント5の高さ方向及び左右方向の範囲内であって前記母材20に接しない範囲内に設けている。
接合される母材20a、20bのそれぞれの接合面21a、21bが構成する形状は、母材20a、20bを接合させる継手の形態によって異なり、例えば、2つの母材の端部同士を突き合せる突き合せ継手の形状、2つの母材をT字型に接合させるT型継手の形状、2つの母材をL字型に接合させるL型継手の形状、2つの母材を面同士で重ねる重ね継手の形状などがある。前記突き合せ継手の場合の接合面21a、21bの形状は、図8(a)、(b)に示すように、開先面が形成される。
本発明の無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン1は、図1、図2又は図4に示すように、持ち手11と、母材加熱用アタッチメント5を脱着可能に固定し、前記持ち手11に母材加熱用ヒーター支持部4を介して固定された第一ヒーター2と、前記第一ヒーター2の温度を測定する第一温度計7と、溶接棒加熱用アタッチメント6を備えた第二ヒーター3と、前記第二ヒーター3の温度を測定する第二温度計8と、商用電源(図示なし)、前記第一温度計7、前記第二温度計8、前記第一ヒーター2及び前記第二ヒーター3と接続され、前記第一ヒーター2及び前記第二ヒーター3のオンオフ制御をする制御部9と、を備える。そして、前記第二ヒーター3は前記持ち手11に支持アーム10を介して固定されている。
作業者は、前記第一ヒーター2と前記第二ヒーター3とが固定された持ち手11を一方の片手で持ち、溶接棒30を他方の片手で持ち、前記母材加熱用アタッチメント5を、例えば、図8(a)に示すような母材20a、20bの接合部21a、21bに、図9又は図10に示すように、押し当てながら移動させることによりプラスチック溶接をすることができる。
まず、前記第一ヒーター2は、例えばカートリッジヒーターであり、持ち手11から下方に延設された、筒状体の母材加熱用ヒーター支持部4に固定され、かつ、熱伝導可能に接触するように筒状部を形成した、高熱伝導率を有する母材加熱用アタッチメント5の筒状部内に挿入されて、前記母材加熱用アタッチメント5の内周面に前記第一ヒーター2の外周面を密着又は接触させて脱着可能に、ボルトなどの固定手段15により固定している。
前記第一ヒーター2の加熱用配線12aは、前記第一ヒーター2から前記母材加熱用ヒーター支持部4及び前記持ち手11の内部の空洞部を貫通して制御部9に接続されている。
外観が円柱状体の前記第一ヒーター2の外周面は、図3(a)又は(b)、図4に示すように、筒状体の前記母材加熱用アタッチメント5の内周面と全面当たりに接触可能な形状をし、前記第一ヒーター2の先端は、筒状体の前記母材加熱用アタッチメント5の空洞部の先端まで挿入されており、母材20に接触する前記母材加熱用アタッチメント5の底面5aの全域が前記母材20a、20bを溶融させる温度に加温可能にしている。先端まで挿入することにより、前記母材加熱用アタッチメント5の全長に亘って加熱させることができ、溶接棒30の溶融部が押し付けられる位置まで母材20a、20bの接合面21a、21bの表面層を溶融状態にすることができる。
前記母材加熱用アタッチメント5の母材20a、20bの接合面21a、21bに接触させる底面5aの形状は、例えば突き合せ継手の場合、図3(a)、(b)に示すように、前記母材20a、20bの接合面21a、21bの傾斜面に全面当たりで接触させる。そのため、開先角度が30°の場合には前記底面の傾斜角度が30°のものを、開先角度が45°の場合には前記底面5aの傾斜角度が45°のものを準備しており、前記母材加熱用アタッチメント5を前記接合面21a、21bの開先角度に対応させて取替えることができる。取替時には、例えばボルトなどの固定手段15により脱着可能に固定しているので容易に取替ることができる。
第一ヒーター2は、ナイロン6等の溶接に最適な温度が200℃前後のプラスチックの溶接の場合にも、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維及びセルロースナノファイバー等の繊維が含有された繊維強化プラスチックなどの溶接に最適な温度が150℃~700℃の繊維強化プラスチックの溶接の場合にも対応できるように加熱温度を設定し昇温させることができる。
母材20であるプラスチックが繊維強化プラスチックの場合は、繊維強化プラスチックは炭素繊維又はガラス繊維などの繊維とポリ塩化ビニルやナイロン6などの熱可塑性汎用プラスチックとの混合物であるので、溶融しない前記繊維の含有量が増加するほど溶接に最適な溶融温度が高くなる。一方、溶接棒30は、母材20の繊維含有量と同じ混合割合のものを使用するとは限らず、例えば母材20の繊維含有量が40重量%の繊維強化プラスチックの場合に、繊維が含有されないプラスチック溶接棒30を使用する場合や繊維含有量が10重量%のプラスチック溶接棒30を使用する場合もあるので、溶接棒30の溶接で必要とされる溶融温度は前記母材20の溶接に最適な溶融温度とは異なり低い場合がある。
例えば、比較例として、図6又は図7に示すように、加熱体が第一ヒーター2しか備えていない場合は、母材加熱用アタッチメント5bを母材20の接合面21a、21bに押し付けながら移動させ、かつ、溶接棒30を、溶接棒加熱用アタッチメント6aに当てながら下方に押し付ける溶接作業を行う。この場合には、温度測定は前記第一ヒーター2の温度を測定する。このようなプラスチック溶接ガンの場合は、母材20への加熱温度と、熱可塑性汎用プラスチック溶接棒への加熱温度が同一となる。
前記比較例のように、繊維含有量が40重量%の繊維強化プラスチックの母材20への加熱温度と、繊維が含有されない熱可塑性汎用プラスチック溶接棒への加熱温度が同一の場合、前記母材20が溶融する温度まで加熱させると、前記母材20は接合面21の表面層が適切な深さまで溶融するのに対して前記溶接棒30の下端部が、円周方向で約半周分しか溶接棒加熱用アタッチメント6aに接触していなかっても高い温度の熱伝導により前記溶接棒30は円周方向で全周にわたって溶融してしまい、溶接棒を母材20の接合面21の表面層の溶融部に押し付けることができなくなるため、空隙やピンホール等の溶接欠陥が発生しやすく溶接強度が得られにくい。
これに対して、本発明である無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン1の場合は、前記母材20を加熱する第一ヒーター2と前記溶接棒30を加熱する第二ヒーター3との2系列での加熱温度を別々に設定するようにしているので、図10に示すように、溶接棒30の円周方向の約半周分を溶接棒加熱用アタッチメント6に接触させても必要以上の高い温度ではないので円周方向で約半周分しか溶融せずに残りの約半周分は溶融しない部分が残る。これにより、溶接棒30を母材20の接合面21の表面層の溶融部に押し付けることができ、空隙やピンホール等の溶接欠陥を発生させず安定した溶接強度が得られる。
すなわち、前記第一ヒーター2の加熱温度を前記母材20の溶接に最適な溶融温度以上で前記溶融温度近傍の温度とし、前記第二ヒーター3の加熱温度を前記溶接棒30の溶接に最適な溶融温度以上で前記溶融温度近傍の温度と別々に設定し、かつ前記温度を維持させることができる。
また、前記第一ヒーター2は例えば約700℃まで加熱可能な電気ヒーターであり、前記第二ヒーター3は例えば約700℃まで加熱可能な電気ヒーターであり、前記第一ヒーター2又は第二ヒーター3としては、例えば発熱体であるニクロム線をSUS製、チタン製、銅製等の熱伝導率の高い材質からなる金属パイプで覆ったカートリッジヒーター等がある。
次に、前記第二ヒーター3は、例えばカートリッジヒーターがあり、前記持ち手11から延設された支持手段10に固定されており、溶接棒30を溶接に最適な溶融温度に昇温可能で、前記溶接棒30の外周面の所定の範囲に接触させる面を形成し、前記母材加熱用アタッチメント5の先端部の近傍に配設された溶接棒加熱用アタッチメント6を脱着可能に固定状態で備えている。前記近傍とすることにより、例えば突き合せ継手の場合、母材20a、20bの接合面21a、21bの表面層の溶融部に、溶接棒30の下端部の溶融部を押し付けて接合させることができる。
前記第二ヒーター3の加熱用配線12bは、前記第二ヒーター3から前記支持アーム10の空洞部内、及び、前記持ち手11の空洞部内を貫通して制御部9に接続されている。
前記溶接棒30の外周面の円周方向の所定の範囲が、図5(a)、図5(b)、図10又は図11に示すように、前記溶接棒30の外周面の円周方向の約1/4~約3/4の範囲のいずれかにしている。前記範囲は溶接棒30の加熱範囲となり溶接棒30が溶融する範囲となる。これは、例えば、前記溶接棒30の外周面の円周方向の全周を囲繞するように前記第二ヒーター3から伝熱される前記溶接棒加熱用アタッチメント6を設けると、前記溶接棒30の円周方向の全周が溶融してしまい前記溶接棒30の前記溶接棒加熱用アタッチメント6に接触した下端部がすべて溶融するので、前記溶接棒30の下端部を母材20の接合面21に押し込むことができなくなり、空隙やピンホール等の溶接欠陥が発生して溶接強度を確保困難になることがわかったため、前記溶接棒30の外周面の円周方向の約半周分を加熱し他の約半周分を加熱しない非溶融部31を残すことにより、前記溶接棒30の下端部の溶融部を母材20の接合面21の溶融部に向けて押し込むことができ必要な溶接強度を得ることができる。
前記溶接棒30の外周面の円周方向の約1/4~約3/4の範囲のいずれにするかは、溶接棒30の直径や材質などの種類によって変わるので、前記溶接棒30の円周方向の約半周分を溶融し他の約半周分を非溶融部31として残して、前記溶接棒30の下端部に残した非溶融部31が母材20の接合面21に前記溶接棒30の下端部の溶融部を押し込むことができるように前記範囲を設定するとともに、図11(a)に示すように、前記非溶融部31が前記接合面21の幅より小さくなるようにすることが必要であるので、この要件を満たすように前記溶接棒30の外周面の円周方向の約1/4~約3/4の範囲のいずれにするかを設定する。
また、前記溶接棒加熱用アタッチメント6の形態は、図5(a)に示すように、前記第二ヒーター3から横方向であって、かつ前記第一ヒーター2の後側Rに溶接棒30を位置させる形態、又は、図5(b)に示すように、前記第二ヒーター3の後側Rであって、かつ前記第一ヒーター2の後側Rに溶接棒30を位置させる形態がある。
前記溶接棒加熱用アタッチメント6の前記溶接棒30を接触させる部位の下端部を、前記母材加熱用アタッチメント5の高さ方向及び左右方向の範囲内であって前記母材20に接しない範囲内に設ける。前記母材加熱用アタッチメント5の高さ方向及び左右方向の範囲内は、言い換えれば2つの前記母材20a、20bの接合面21a、21b間の真上であって、前記母材20a、20bに接地する近傍の高さに該当する。溶接棒加熱用アタッチメント6の前記溶接棒30を接触させる部位の下端部を、前記母材20a、20bに接地する近傍の高さに設けるのは、加熱した母材20に加熱した溶接棒30の下端部が接地するまでの距離が長くなると母材20の溶融部の温度が空冷により低下し溶接棒30の溶融部の温度が空冷により低下して溶融による接合ができなくなるのを防ぐためである。
次に、前記第一温度計7は前記母材加熱用アタッチメント5の外周面に取り付けられて前記第一ヒーター2の温度を測定し、第二温度計8は前記第二ヒーター3の外周面に取り付けられて前記第二ヒーター3の温度を測定する。前記第一温度計7又は前記第二温度計8は、取得した温度情報を電気信号として取り出せるものがよく、例えば熱電対などがある。
前記第一温度計7と制御部9は配線13aで接続され、前記第一温度計7からの温度情報の電気信号は配線13aを介して制御部9に伝わり、前記第二温度計8と制御部9は配線13bで接続され、前記第二温度計8からの温度情報の電気信号は配線13bを介して制御部9に伝わる。
次に、前記制御部9は、図1又は図2に示すように、前記第一ヒーター2と配線12aで接続され、第二ヒーター3と配線12bで接続され、前記第一温度計7と配線13aで接続され、前記第一温度計7と配線13bで接続され、商用電源と接続されている。前記制御部9は、第一ヒーター2と第二ヒーター3とそれぞれに溶接に最適な温度を設定し、その後、前記第一ヒーター2又は第二ヒーター3が設定された温度を維持させるために、前記第一温度計7及び前記第二温度計8からの温度情報により電源のオンオフ制御をする。
次に、押圧体18について説明する。前記押圧体18は、溶接時の進行方向で前記第二ヒーター3の後側Rに、前記母材20のそれぞれの接合面21の間に充填された前記溶接棒30の溶融部及び前記母材20の溶融部を押圧する。前記押圧体18は、図12に示すように、ローラ形態18a、又は、図13に示すように、ヘラ形態18bなどがあり、2つの前記母材20の前記接合面21間に充填された溶接棒30の溶融部を押し付けできる形態であればいずれの形態でもよい。前記押圧体18がローラ形態18aの場合は支持アーム10から突設された支持アーム19に回転自在に固定され、前記ヘラ形態18bの場合は前記支持アーム10から突設された支持アーム19に固定されている。
図9、図10又は図11(a)に示すように、前記ローラ形態18aは、前記第二ヒーター3の後側Rに、2つの前記母材20の前記接合面21間に充填され前記母材20の表面より盛り上がった、溶融した溶接棒30の表面にある非溶融部31を下方に押し付ける。これにより、図11(a)に示すような状態から図11(b)に示すような状態になるように押し付けて、溶接棒30の溶融部と母材20の溶融部とを圧縮してさらに強固に接合させる。
次に、無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン1の使用例について説明する。まず、図8(a)、(b)に示すように、母材20が突き合せ継手の場合で説明する。母材20aと母材20bとの突き合せ溶接する場合で、それぞれに接合面21a、21bが、すなわち開先面が形成されている。前記無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン1の母材加熱用アタッチメント5は前記接合面21の傾斜面に全面当たり可能な形状のものを取り付けておく。
次に、制御部9の温度設定手段により第一ヒーター2及び第二ヒーター3の温度設定を母材20の材質及び溶接棒30の材質を考慮して行う。そして、一方の片手で持ち手11を把持し、前記制御部9の電源をオンし、第一ヒーター2及び第二ヒーター3に通電させて加熱を開始し、前記第一ヒーター2及び前記第二ヒーター3の加熱温度が設定された温度まで到達した後に、図3(a)及び(b)に示すように、第一ヒーター2の母材加熱用アタッチメント5の底面5aが母材20a、20bの開先面である接合面21a、21bに面接触するように押し当て、図9又は図10に示すように、溶接棒30をもう一方の片手で掴み下端部を第二ヒーター3の溶接棒加熱用アタッチメント6に接触させる。
次に、図10に示すように、前記母材加熱用アタッチメント5を前記開先面である接合面21に押し付けながら方向Xに進ませながら、溶接棒30を前記溶接棒加熱用アタッチメント6に接触させながら下方にすなわち方向Zに前記溶接棒30の溶融部が前記開先面である接合面21間に充填される速度に合わせて徐々に押し付けていく。
これにより、図10又は図11(a)に示すように、前記母材加熱用アタッチメント5が接触し熱伝導により加熱された接合面21の範囲L2は表面層が加熱され溶融される。なお、範囲L1は溶接される部分との比較のため接合面21はそのままの状態を記載している。
また、溶接棒加熱用アタッチメント6との接触により円周方向の約半周分が溶融され、残りの円周方向の約半周分の非溶融部31が残った溶接棒30を、図10に示すように、前記非溶融部31の部分を曲げながら溶融された部分を母材の開先面である接合面21a、21bの溶融された表面層に押し付けることができる。押し付けた後の溶融部Tの形状は、図11(a)に示すように、加熱された接合面21の範囲L3において溶融部Tが母材20の表面より盛り上がる形状ができる。この盛り上がりの状態となる範囲L3において溶接棒30の溶融部分を母材20の溶融された表面層に押し付けることにより、母材20の溶融された表面層と、溶接棒30の溶融された部分とがしっかりと接合されて溶接される。
そして、範囲L4において、押圧体18の例えばローラ形態18aにより押圧をかけて、図11(b)に示すように、溶接棒30の溶融部を母材20の溶融部にさらに押し付けることにより、より一層溶接強度のバラツキの小の溶接品質のプラスチック溶接ができる。
次に、同一作業者により従来の熱風によるプラスチック溶接機による溶接と、本発明の無風熱伝導式プラスチック溶接ガン1によるプラスチック溶接との引張強度の比較を行った。いずれの場合も押圧体18は使用しないで実施した。その結果を表1に示す。なお、溶接棒30は、炭素繊維を3重量%又は10重量%含有させた熱可塑性炭素繊維強化プラスチック用溶接棒30(棒径3mm)を使用し、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック部材の炭素繊維の含有量が、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック部材を100重量%として40重量%の幅20mm、長さ30mm、板厚2mmの試験片を2枚突き合わせ溶接したときの引張速度50mm/分での引張試験結果を表1に示す。溶接強度として引張強度を試験した。
表1から、炭素繊維含有量が3重量%の場合では、従来の熱風式溶接ガンを使用した場合の標準偏差は9.4で、本発明の無風熱伝導式プラスチック溶接ガン1を使用した場合の標準偏差は3.2でバラツキを約66%も縮小させることができ、炭素繊維含有量が10重量%の場合では、従来の熱風式溶接ガンを使用した場合の標準偏差は7.7で、本発明の無風熱伝導式プラスチック溶接ガン1を使用した場合の標準偏差は4.0でバラツキを約48%も縮小させることができた。このバラツキを縮小させることができることは、溶接作業者の溶接技能による溶接品質のバラツキを小さくさせることができることを示しているので、溶接作業を新たに教える作業者を早期に一人前に育成させることができるようになるという効果を奏する。なお、引張強度は20MPa以上あればいいのでいずれも溶接品質は問題ない。
1 無風熱伝導式プラスチック溶接ガン
2 第一ヒーター
3 第二ヒーター
4 母材加熱用ヒーター支持部
5 母材加熱用アタッチメント
5a 底面
5b 母材加熱用アタッチメント
6 溶接棒加熱用アタッチメント
6a 溶接棒加熱用アタッチメント
7 第一温度計
8 第二温度計
9 制御部
10 支持アーム
11 持ち手
12 配線
13 配線
15 固定手段
18 押圧体
18a ローラ形態
18b ヘラ形態
19 支持アーム
20 母材
21 接合面
30 溶接棒
31 非溶融部
L 範囲
T 溶融部
R 後側
X 方向
Z 方向
2 第一ヒーター
3 第二ヒーター
4 母材加熱用ヒーター支持部
5 母材加熱用アタッチメント
5a 底面
5b 母材加熱用アタッチメント
6 溶接棒加熱用アタッチメント
6a 溶接棒加熱用アタッチメント
7 第一温度計
8 第二温度計
9 制御部
10 支持アーム
11 持ち手
12 配線
13 配線
15 固定手段
18 押圧体
18a ローラ形態
18b ヘラ形態
19 支持アーム
20 母材
21 接合面
30 溶接棒
31 非溶融部
L 範囲
T 溶融部
R 後側
X 方向
Z 方向
Claims (4)
- プラスチック母材同士を溶接する無風熱伝導式プラスチック用溶接ガンであって、
前記母材を溶融する温度に昇温可能で、接合される母材のそれぞれの接合面に接触可能な底面形状を有する外周面を形成した筒状体で高熱伝導率の母材加熱用アタッチメント内に外周面を面接触させて挿入され、前記母材加熱用アタッチメントを脱着可能に固定した第一ヒーターと、
溶接棒を溶融する温度に昇温可能で、前記溶接棒の外周面の円周方向で所定の範囲を接触させる面を形成し、前記母材加熱用アタッチメントの先端部の近傍に配設された溶接棒加熱用アタッチメントを備えた第二ヒーターと、
前記第一ヒーターの温度を測定する第一温度計と、
前記第二ヒーターの温度を測定する第二温度計と、
前記第一温度計及び前記第二温度計からの温度情報により前記第一ヒーター又は第二ヒーターをそれぞれオンオフ制御する制御部と、を備え、
前記第一ヒーターは、前記第一ヒーターの先端が前記母材加熱用アタッチメントの筒状部の先端近傍まで前記母材加熱用アタッチメントに挿入されており、
前記溶接棒加熱用アタッチメントの前記溶接棒を接触させる部位の下端を、前記母材加熱用アタッチメントの高さ方向及び左右方向の範囲内であって前記母材に接しない範囲内に設けることを特徴とする無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン。 - 前記溶接棒の外周面の円周方向の所定の範囲が、前記溶接棒の外周面の円周方向の約1/4~約3/4の範囲のいずれかで設定されていることを特徴とする請求項1に記載の無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン。
- 前記第一ヒーターの加熱温度を前記母材の融点以上で前記融点近傍の温度とし、前記第二ヒーターの加熱温度を前記溶接棒の融点以上で前記融点近傍の温度とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン。
- 溶接時の進行方向で前記第二ヒーターの後側に、前記母材のそれぞれの接合面の間に充填された前記溶接棒の溶融部及び前記母材の溶融部を押圧する押圧体を備えたことを特徴とする請求項1又は3に記載の無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022119453A JP2024017064A (ja) | 2022-07-27 | 2022-07-27 | 無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン |
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Publications (1)
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Family Applications (1)
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JP2022119453A Pending JP2024017064A (ja) | 2022-07-27 | 2022-07-27 | 無風熱伝導式プラスチック用溶接ガン |
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2022
- 2022-07-27 JP JP2022119453A patent/JP2024017064A/ja active Pending
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