JP2024016983A - 細身のシルエットを維持可能な空調衣服 - Google Patents
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Abstract
Description
ファンの駆動によって外気が衣服本体内に取り込まれると、身体周囲に亘って全体的に膨満なシルエットを呈し、これは作業(特に狭所での作業)の妨げになってしまう。また、膨満なシルエットは着用した際の外観を気にする需要者からの評価は低く、敬遠され易い。
また、ファンは、通常、空調衣服背面の下部の左右に取り付けられているため、ファンから勢いよく取り込まれた外気は胴体(特に腹部)全周を集中的に冷却してしまい、空調衣服着用者の腹冷えを起こすこともあった。
また、従来の空調衣服では、前屈みなど着用者が取る姿勢によっては服地内に入った空気の通り道が塞がれてしまい、姿勢を直す迄、所望の冷却性能を発揮できない事が多い。
また、通常の空調衣服では服地内の空気を適切に流通させるため、左右の前身頃間を開閉するファスナーを上げ切った(前身頃間の開口を完全に閉じた)ままでの使用が絶対条件であった。言い換えれば、着用者は上記ファスナーを少し下げた(開いた)ままで空調衣服を使用(冷却)することが取扱上、許されていなかった。
さらに、本発明者らの試行錯誤と経験によれば、空調衣服において体温を下げるには襟元に極めて強い風を当てて首の血管付近を冷やすことが最も有効であることに想到したが、従来の空調衣服では衣服内全体に空気を循環させる設計となっているため、襟元付近を通過・排出される空気の風圧(風速)が弱く、首元を集中的に冷却できるものではない。
(態様1)
前身頃と、後身頃と、襟部と、送風機とを備えた空調衣服であって、
前記後身頃の下部には前記送風機を取り付け可能な貫通孔が設けられ、
前記後身頃の内面側には裏地が取り付けられており、かつ、
前記裏地は、左右の側縁部及び下縁部に沿って前記後身頃に接続する一方で前記襟部に近い上縁部にて前記後身頃から分離しておくことで、前記後身頃と前記裏地との間に前記送風機から送り込まれた外気を前記襟部に直接案内する流出口を備えた冷却流路を形成する、
ことを特徴とする空調衣服。
(態様2)
前記後身頃及び前記裏地より内側に突出したスペーサが前記側縁部に沿って縫い付けられている、
ことを特徴とする態様1に記載の空調衣服。
(態様3)
前記裏地と相補して前記冷却流路を形成する前記後身頃の裏地対応部分は、前記裏地の幅と同じ幅を有し、かつ、同一素材からなる、
ことを特徴とする態様1又は請求項2に記載の空調衣服。
(態様4)
前記裏地の前記幅は、前記下縁部にて幅広であり、かつ、前記上縁部にて幅狭である、
ことを特徴とする態様3に記載の空調衣服。
(態様5)
前記裏地の前記幅は、
着用者の腹部に相当する第1領域にて前記後身頃の全幅と同じであり、
前記着用者の背中部に相当する第2領域にて前記後身頃の前記全幅の20%~50%の長さであり
第1領域と第2領域との間の第3領域では第1・第2領域を滑らかに接続するように徐々に狭まっている、
ことを特徴とする態様4に記載の空調衣服。
(態様6)
前記裏地の第1領域及び/又は第2領域に、前記冷却流路から前記着用者の背面側胴体に前記外気を案内可能な通風孔が設けられており、かつ、
第1領域に設けられた通風孔の開口面積或いは第2領域に設けられた通風孔の開口面積又は第1・第2領域に設けられた通風孔の開口面積の総和が前記流出口の開口面積以下である、
ことを特徴とする態様5に記載の空調衣服。
本実施例においては、着用者を基準として「上下方向」及び「左右方向」(「身幅方向」とも呼ぶ。)と規定する。本実施例に係る空調衣服1(以下、「衣服」とも呼ぶ。)は、図1の各図に示すように、正面側から視認できる前身頃10と、背面側から視認できる後身頃20と、から主に構成される。前身頃10と後身頃20の上縁には襟部30が接続される。一方、これら部材の下縁には裾部40が接続される。この他の構成部材として後述の送風機24(「ファン」とも呼ぶ。)や裏地50も衣服1に取り付けられる。なお、本実施例の衣服1には図示しない袖部が設けられていてもよい。
次に前身頃10の構成について詳細に説明する。前身頃10は正面視で左右中央を基準に第1・第2前身頃11a,11bに分割されており、第1・第2前身頃11a,11bが接続する中央にはファスナー12が上下方向に亘って取り付けられている。このため、前身頃10はファスナー12を上げ下げすることで開閉自在となり、着用者は衣服1を着たり脱いだりすることができる。なお、ファスナー12は、図示の線ファスナーに限定されず、面ファスナーを使用してもよい。
ここで、第1・第2前身頃11a,11bの外方向には、上から下方向に順に、左右のヨーク部13a,13b、脇下部14a,14b及び裾端部15a,15bが設けられ、前身頃10と後述の後身頃20とを接続して衣服1として一体化する。また、図示の例では、ヨーク部13a,13b、脇下部14a,14b及び後述の後ヨーク部22a,22bによって外周が区画された袖ぐり16a,16bが形成される。なお、第1・第2前身頃11a,11bの下半部にはポケット17a,17bが取り付けられていてもよい。
次に後身頃20の構成について詳細に説明する。後身頃20は背面視で左右中央に後身頃本体21が設けられる。後身頃本体21の外方向上側には左右の後ヨーク部22a,22bが設けられる。
後身頃本体21は、衣服1の上下方向に延びており、その下縁は裾部40に接続し、その上縁は襟部30に接続する。後身頃本体21は下から上に向かって身幅(左右方向の幅Wa,Wb,Wc)が狭まることが特徴的である。図2の例に係る後身頃本体21は、裾部40の裾幅に対応する第1幅Waを有した幅広部21aと、第1幅Waより小さくかつ襟部30の襟幅に対応する第2幅Wbを有した幅狭直進部21bと、この幅広部21aと幅狭直進部21bとを連結するようにこれらの間に配置され、下から上に向かって第1幅Waから第2幅Wbへと徐々に狭まる第3幅Wcを有した幅縮小部21cとの3つの領域から構成されている。幅広部21aには送風機24を取り付け可能な貫通孔23(ファン取付口)が左右に配置されている。
図2はファスナー12を下げて左右の第1・第2前身頃11a,11bを分離して前身頃10を完全に開いた状態の衣服1の正面図である。図2に示すように、後身頃20の内面側には裏地50が取り付けられる。図2に示す例では裏地50は上述の後身頃本体21に対応する寸法・形状(ほぼ同形状)を成す。この裏地50は左右の側縁部51a,51b及び下縁部52に沿って後身頃20(後身頃本体21)に接続(縫製)される。これにより、後身頃本体21と裏地50との間では三方向の縁部が閉ざされた空間、すなわち、空気が内在・流通する空気層60(後述の冷却流路)が形成される。
なお、ファスナー12を上げきって衣服1内の胴体周囲に冷却空気を流通させることを前提にした従来の衣服では、裏地50に空気Aiが流通しやすいメッシュ生地を採用することが多く、後身頃20の生地と通常異なっていた。しかしながら、襟部30(つまり、首元)にピンポイントに空気を送り出すことを主眼とする本発明では、基本的に、裏地50から胴体へ又は後身頃20から外部のいずれかへ空気Aiが漏れ出すことは望ましくない。
図3は衣服1の背面図であるが、その内部にある裏地50の構造を破線で描き、衣服1内の空気の流れを追記した概略図である。図4の各図(a)、(b)及び(c)は、図3中の背面図上の各破断線A-A線、B-B線、及びC-C線の位置に対応した冷却流路60の断面状態を示した図である。
さらに、図2及び図3に示すように、後身頃本体21及び裏地50より内側(胴体側)に突出したスペーサ54a,54bが、裏地50の側縁部51a,51bの両側に沿って縫い付けられていることが好ましい。図示の例では、スペーサ54a,54bは、例えば、2cm×2cmの正方形断面かつ約35cmの長さを有した柔軟なウレタン製スポンジ55と、このウレタン製スポンジ55を包み込んだ包装布56とで作られている。このウレタン製スポンジ55を収容した包装布56が、衣服1の上下方向に沿って裏地50の側縁部51a,51b及び後身頃本体21の側縁部に縫い付けられている。
このスペーサ54a,54bの設置により着用者の胴体(背中)と後身頃本体21との間にはスペーサ分の厚みが常に確保されるため、衣服1の着用者が腰を屈めて背中を曲げ、通常であれば背中と衣服1との間が密着してしまうような場合でも、空気Aiが流通する冷却流路60を閉塞することは無い。
裏地50と相補して冷却流路60を形成する後身頃20の裏地対応部分は、図4(a)に示すように裏地50の幅Wbfと同じ幅Woを有することが好ましい。これにより、本発明の冷却流路60を区画するための作業は、同一幅(かつ、同一素材)の裏地50と後身頃20とを縫製するだけの非常に簡素なものとなり、縫製時間も短縮できる。
また、裏地50の第1領域50a及び/又は第2領域50bに、冷却流路60から着用者の胴体に外気を案内可能な第1・第2通風孔57a,57b(図2参照)が設けられていることが好ましく、特に、第1通風孔57aの開口面積或いは第2通風孔57bの開口面積又は第1・第2通風孔57a,57bの開口面積の総和が流出口61の開口面積未満であることがさらに好ましい。
これにより、冷却流路60では襟部30に向かって流れる空気の流れ(主流)の他に胴体に排出される第2の流れも生じるため、首元を冷やしながら同時に背中や腰を冷やすことも可能となる。特に上述の開口面積の条件を満たすことで、第1・第2通風孔57a,57bから胴体側へ排出される第2の流れが、流出口61を通過して首元を冷やす主流以上の流量になることを抑えられる。また、第1・第2通風孔57a,57bは、着用者の背部(背中又は腰)に向けて外気Aoを送るが、前面側の腹部に直接当たらないため、着用者が腹冷えを起こす虞もない。
次に、本発明の衣服1の使用方法や作用についても触れておく。着用者は、従来の衣服の着用と同じ要領で、ファスナー12を下げきって第1・第2前身頃11a,11bを左右に分離して、衣服1を上半身に纏う。この際、従来の衣服の着用法と異なり、ファスナー12を前身頃10の上縁まで引き上げる必要はなく、襟部30(首元)周辺にゆとりを持たせてもよい。
10 前身頃
11a,11b,12 第1・第2前身頃,ファスナー
13a,13b ヨーク部
14a,14b 脇下部
15a,15b 裾端部
16a,16b 袖ぐり
17a,17b ポケット
20 後身頃
21,21a,21b,21c 後身頃本体,幅広部,幅狭直進部,幅縮小部
22a,22b 後ヨーク部
23,24 貫通孔(ファン取付口),送風機(ファン)
30 襟部
40 裾部
50,50a,50b,50c 裏地,第1・第2・第3領域
51a,51b,52,53 裏地の左右の側縁部,下縁部,上縁部
54a,54b,55,56 スペーサ,ウレタン製スポンジ,包装布
57a,57b 第1・第2通風孔
60,61 空気層(冷却流路),流出口
Ao,Ai 送風機から送り込まれる外気,冷却流路内の空気(内部流)
Wa,Wb,Wc 後身頃本体の第1・第2・第3幅
Wbf,Wo 裏地の幅,裏地に対応する後身頃の裏地対応部分の幅
(態様1)
前身頃と、後身頃と、襟部と、送風機とを備えた空調衣服であって、
前記後身頃の下部には前記送風機を取り付け可能な貫通孔が設けられ、
前記後身頃の内面側には裏地が取り付けられており、かつ、
前記裏地は、左右の側縁部及び下縁部に沿って前記後身頃に接続する一方で前記襟部に近い上縁部にて前記後身頃から分離しておくことで、前記後身頃と前記裏地との間に前記送風機から送り込まれた外気を前記襟部に直接案内する流出口を備えた冷却流路を形成し、
前記裏地と相補して前記冷却流路を形成する前記後身頃の裏地対応部分は、前記裏地の幅と同じ幅を有し、かつ、同一素材からなる、
ことを特徴とする空調衣服。
(態様2)
前記裏地の前記幅は、前記下縁部にて幅広であり、かつ、前記上縁部にて幅狭である、
ことを特徴とする態様1に記載の空調衣服。
(態様3)
前記裏地の前記幅は、
着用者の腹部に相当する第1領域にて前記後身頃の全幅と同じであり、
前記着用者の背中部に相当する第2領域にて前記後身頃の前記全幅の20%~50%の長さであり
第1領域と第2領域との間の第3領域では第1・第2領域を滑らかに接続するように徐々に狭まっている、
ことを特徴とする態様2に記載の空調衣服。
(態様4)
前記裏地の第1領域及び/又は第2領域に、前記冷却流路から前記着用者の背面側胴体に前記外気を案内可能な通風孔が設けられており、かつ、
第1領域に設けられた通風孔の開口面積或いは第2領域に設けられた通風孔の開口面積又は第1・第2領域に設けられた通風孔の開口面積の総和が前記流出口の開口面積以下である、
ことを特徴とする態様3に記載の空調衣服。
Claims (6)
- 前身頃と、後身頃と、襟部と、送風機とを備えた空調衣服であって、
前記後身頃の下部には前記送風機を取り付け可能な貫通孔が設けられ、
前記後身頃の内面側には裏地が取り付けられており、かつ、
前記裏地は、左右の側縁部及び下縁部に沿って前記後身頃に接続する一方で前記襟部に近い上縁部にて前記後身頃から分離しておくことで、前記後身頃と前記裏地との間に前記送風機から送り込まれた外気を前記襟部に直接案内する流出口を備えた冷却流路を形成する、
ことを特徴とする空調衣服。 - 前記後身頃及び前記裏地より内側に突出したスペーサが前記側縁部に沿って縫い付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の空調衣服。 - 前記裏地と相補して前記冷却流路を形成する前記後身頃の裏地対応部分は、前記裏地の幅と同じ幅を有し、かつ、同一素材からなる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調衣服。 - 前記裏地の前記幅は、前記下縁部にて幅広であり、かつ、前記上縁部にて幅狭である、
ことを特徴とする請求項3に記載の空調衣服。 - 前記裏地の前記幅は、
着用者の腹部に相当する第1領域にて前記後身頃の全幅と同じであり、
前記着用者の背中部に相当する第2領域にて前記後身頃の前記全幅の20%~50%の長さであり
第1領域と第2領域との間の第3領域では第1・第2領域を滑らかに接続するように徐々に狭まっている、
ことを特徴とする請求項4に記載の空調衣服。 - 前記裏地の第1領域及び/又は第2領域に、前記冷却流路から前記着用者の背面側胴体に前記外気を案内可能な通風孔が設けられており、かつ、
第1領域に設けられた通風孔の開口面積或いは第2領域に設けられた通風孔の開口面積又は第1・第2領域に設けられた通風孔の開口面積の総和が前記流出口の開口面積以下である、
ことを特徴とする請求項5に記載の空調衣服。
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