JP2024015572A - 成形体および硬化性組成物 - Google Patents

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正郎 鈴木
Masaro Suzuki
和香 長谷川
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伊知朗 菅野
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薫 吉田
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隼人 井田
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Abstract

【課題】 低い摩擦係数と高い耐摩耗性を有するとともに、長期間の摺動においても摺動特性が変化しない成形体およびその原料に適した硬化性組成物を提供する。【解決手段】 樹脂と前記樹脂に分散したケイ素重合体粒子とを含む成形体であって、該ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下、かつ、該ケイ素重合体粒子の含有量が前記樹脂100質量部に対して3質量部以上50質量部以下であり、ATR法によって得られる該ケイ素重合体粒子のFT-IRスペクトルにおいて、1030cm-1~1070cm-1の範囲に最大ピークを有し、かつ1015cm-1~1025cm-1の範囲における平均強度をA、1085cm-1~1095cm-1の範囲における平均強度をBとしたとき、0.55≦A/B≦1.50を満たす。【選択図】 なし

Description

本発明は、摺動部材に適した成形体およびその原料に適した硬化性組成物に関する。
樹脂材料は、一般に自己潤滑性が優れており、軽量であるうえに摺動時の騒音が少ないため、軸受、歯車、カム、ローラー等の摺動部材に使用されている。さらなるエネルギーロスや騒音の低減、部材劣化の抑制のためには、より低い摩擦係数とより高い耐摩耗性の摺動特性を示す樹脂材料が求められる。
特許文献1では、ポリアセタール樹脂に潤滑剤に加え、シリカなどの無機粒子を配合することにより摺動特性を改善することが提案されている。また、特許文献2ではPBN樹脂に対して、球状のシリカやシリコーン粒子を配合することにより、摩擦特性の改善が可能であることが記載されている。
特開平3-111446号公報 特開平7-90164号公報
これらの文献に開示された樹脂材料は、摺動面に存在するシリカやシリコーンの粒子が摺動面の接触面積を低減するとともに固体潤滑剤として作用することで、摺動特性が改善されていると推測される。しかし、シリカやシリコーンの粒子の場合、長期間の摺動や、高負荷の摺動によって、粒子が樹脂中に埋没したり、粒子が押しつぶされて変形したりすることにより、初期の摺動特性を維持できないという課題がある。
上述の課題を解決するため、本発明では、長期にわたって低い摩擦係数と高い耐摩耗性を維持することが可能な成形体および樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明の成形体は、樹脂と前記樹脂に分散したケイ素重合体粒子とを含む成形体であって、該ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下、かつ、該ケイ素重合体粒子の含有量が前記樹脂100質量部に対して3質量部以上50質量部以下であり、ATR法によって得られる該ケイ素重合体粒子のFT-IRスペクトルにおいて、1030cm-1~1070cm-1の範囲に最大ピークを有し、かつ1015cm-1~1025cm-1の範囲における平均強度をA、1085cm-1~1095cm-1の範囲における平均強度をBとしたとき、0.55≦A/B≦1.50を満たすことを特徴とする。
本発明の硬化性組成物は、ケイ素重合体粒子と、ラジカル重合性化合物と、硬化剤と、を含む硬化性組成物であって、前記ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下、かつ、前記ケイ素重合体粒子の含有量が前記ラジカル重合性化合物100質量部に対して3質量部以上50質量部以下であり、ATR法によって得られる、前記ケイ素重合体粒子のFT-IRスペクトルにおいて、1030cm-1~1070cm-1の範囲に最大ピークを有し、1015cm-1~1025cm-1の範囲における平均強度をA、1085cm-1~1095cm-1の範囲における平均強度をBとしたとき0.55≦A/B≦1.50を満たすことを特徴とする。
本発明によれば、長期にわたって低い摩擦係数と高い耐摩耗性とを維持することのできる成形体および樹脂組成物を提供することができる。
成形体の製造に適した光造形装置の構成例を示す図である。 ケイ素重合体粒子1のFT-IRスペクトルを示す図である。 ケイ素重合体粒子10のFT-IRスペクトルを示す図である。 ケイ素重合体粒子11のFT-IRスペクトルを示す図である。
まず、本発明の成形体について説明した後、かかる成形体の製造に適した樹脂組成物について説明する。
(成形体)
本発明の成形体は、樹脂と、ケイ素重合体粒子とを含んでおり、ケイ素重合体粒子は樹脂中に分散している。ケイ素重合体粒子に含まれるSi-O-Si結合(シロキサン結合)とSi-O-C結合の比率が所定の条件を満たすように調整されているため、摺動部材として好適に用いることができる。すなわち、本発明の成形体は、長期にわたって摺動させても、ケイ素重合体粒子が樹脂中に埋没したり、粒子自体が変形したりすることがなく、優れた摺動特性を維持することが可能である。また、ケイ素重合体粒子が樹脂中に分散して存在することにより、成形体の機械的強度を均一にすることができる。
以下、本発明の成形体に含まれるケイ素重合体粒子、樹脂それぞれについて説明する。
<ケイ素重合体粒子>
シリカは、Si-O-Si結合(シロキサン結合)からなり、架橋密度が非常に高く硬い性質を有している。従って、シリカ粒子は樹脂より硬く、樹脂中にシリカ粒子が分散した成形体の場合、摺動させている間にシリカ粒子が樹脂に埋没して摺動性が低下してしまう。
また、Si-O-C結合を多く含むケイ素重合体、例えばポリアルキルシルセスキオキサンやポリジアルキルシロキサンなどは、架橋密度が低く柔らかい性質を有している。従って、これらの粒子が樹脂中に分散した成形体の場合は、摺動させている間に粒子自体が変形したり、潰れて破壊されたりして、摺動性が変化するおそれがある。
本発明者らが鋭意検討した結果、樹脂に分散させるケイ素重合体粒子に含まれるシロキサン結合とSi-O-C結合との比率を調整することにより、長期にわたって優れた摺動性を維持することが可能であることを見出した。
長期にわたって優れた摺動性を維持するためには、次の条件を満たすケイ素重合体粒子を樹脂に添加すると良い。すなわち、ケイ素重合体粒子のATR法により得られるFT-IRスペクトルにおいて、1030cm-1~1070cm-1の範囲に最大ピークを有する。そしてさらに、1015cm-1~1025cm-1の範囲における平均強度をA、1085cm-1~1095cm-1の範囲における平均強度をBとしたとき、下記式(1)を満たす。
0.55≦A/B≦1.50 式(1)
FT-IRスペクトルにおいて、Si-O-C結合の伸縮振動は、1015cm-1~1025cm-1の範囲におけるピークとして現れ、シロキサン結合の伸縮振動は、1085cm-1~1095cm-1の範囲におけるピークとして表れる。
1030cm-1~1070cm-1の範囲に最大ピークを有するということは、Si-O-C結合とSi-O-Si結合との架橋密度が高く、強固な3次元ネットワークが形成されていることを意味する。また式(1)は、ケイ素重合体粒子に含まれる、Si-O-C結合とシロキサン結合との比を表している。
ケイ素重合体粒子内の架橋密度は粒子の硬さと相関があり、架橋密度が高いほど粒子は硬くなる。A/Bが1.50を超える場合、Si-O-C結合がシロキサン結合(Si-O-Si)に対して多すぎるためケイ素重合体粒子の架橋密度が低くなり、粒子自体の潰れや破壊が起こりやすくなる。A/Bが0.55未満の場合、Si-O-C結合がシロキサン結合に対して少なすぎるためにケイ素重合体粒子の架橋密度が高くなり、ケイ素重合体粒子の樹脂への埋没が起こりやすくなる。
しかし、最大ピークの存在位置およびA/Bが上記範囲にあれば、成形体の摺動性を長期にわたって維持することが可能なケイ素重合体粒子を実現することできる。最大ピークの存在位置およびA/Bが上記範囲にあれば、粒子が適度な弾力を持ち外部からの応力を緩和するため、長期間の摺動でも、上記粒子が樹脂中に埋没したり、粒子自体が変形したりするのを抑制することができる。
本発明の成形体に含まれるケイ素重合体粒子は、最大ピークが1040cm-1~1055cm-1の範囲に存在することがより好ましく、0.80≦A/B≦1.20を満たすのがより好ましい。
ケイ素重合体粒子の形状は特に限定されないが、樹脂やラジカル重合性化合物への分散性や製造容易性の観点から、球状が好ましく、真球状がより好ましい。球状とは、粒子の任意の位置における断面形状が略円形をしているものをいう。
本発明の成形体におけるケイ素重合体粒子の含有量は、樹脂100質量部に対して3質量部以上50質量部以下が好ましく、5質量部以上50質量部以下がより好ましく、5質量部以上40質量部以下がさらに好ましい。ケイ素重合体粒子の含有量がこの範囲にあれば、摺動特性の改善に十分な量のケイ素重合体粒子を摺動面に存在させることができる。さらに、成形体のヤング率が低下したり、加工性が低下したりするおそれもない。
ケイ素重合体粒子の粒子径は、一次粒子の個数平均粒子径が0.1μm以上5.0μm以下である。好ましくは0.3μm以上5.0μm以下である。ケイ素重合体粒子の平均粒子径がこの範囲にあれば、粒子が部材の摺動面間のスペーサーとして作用してより摺動特性を改善することができる上に、成形体の表面にケイ素重合体粒子による大きな凹凸が形成され、摩擦係数が上昇するのを抑制することができる。ケイ素重合体粒子の平均粒子径が0.1μm未満の場合は、スペーサーとしての作用が低下して摺動特性の改善が難しくなる傾向にあり、5.0μmを超える場合は、ケイ素重合体粒子による大きな凹凸が摺動面に形成され、摩擦係数が上昇する傾向がある。
成形体に含まれるケイ素重合体粒子の平均粒子径は、成形体を形成する樹脂の良溶媒を用いて樹脂を溶解後、ケイ素重合体粒子を単離し、粒度分布測定装置により測定することができる。用いられる溶媒は樹脂を溶解し、ケイ素重合体粒子を溶解しないものであれば特に限定されないが、例えば、ポリアセタール樹脂の場合はヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)により、樹脂のみを溶解することができる。粒度分布測定装置は特に限定されないが、遠心沈降粒度分布測定装置を用いるのが好ましい。粒度分布の測定法は後述のケイ素重合体粒子の平均粒子径の測定法と同様に行うことができる。
本発明の成形体に含まれるケイ素重合体粒子の製造方法は、特に限定されないが、ゾルゲル法によるケイ素化合物(シランモノマー)の加水分解、縮重合反応を経て粒子を形成することが好ましい。
例えば、シロキサン結合を2つ有する2官能性シランと、シロキサン結合を4つ有する4官能性シランの混合体を加水分解及び、縮重合反応によりポリマー化させることによって粒子を形成する方法が好ましい。すなわち、ケイ素重合体は、2官能性シランからなる群から選択される少なくとも一のケイ素化合物と4官能性シランからなる群から選択される少なくとも一のケイ素化合物との縮重合物であることが好ましい。
2官能性シランの割合は、好ましくは50モル%以上70モル%以下であり、より好ましくは61モル%以上65モル%以下である。4官能性シランの割合は、好ましくは30モル%以上50モル%以下であり、より好ましくは35モル%以上39モル%以下である。
本発明者らは、ケイ素重合体粒子の製造時に、上記モノマーの混合比率、加水分解、及び縮合反応時の溶媒温度、触媒の種類、撹拌時間、及び溶液のpHなどを調整することにより、所望の条件を満たすケイ素重合体粒子が得られることを見出した。
例えば、A/Bを大きくするには、2官能シランの混合比率を多くする、縮合反応時の温度を低くする、撹拌時間を短くする、溶液のpHを低くする、加水分解時の温度を低くする、などの方法が挙げられる。A/Bを小さくするには、4官能シランの混合比率を多くする、縮合反応時の温度を高くする、撹拌時間を長くする、溶液のpHを高くする、加水分解時の温度を高くする、などの方法が挙げられる。
前述した通り、本ケイ素重合体粒子は、ATR法によって取得されるFT-IRスペクトルの1030cm-1~1070cm-1の範囲に最大ピークを有していることが必要である。該最大ピークの位置は、上記モノマーの混合比率により調整することができる。
ケイ素重合体粒子の製造方法は特に限定されず、例えば水にシラン化合物を滴下し、触媒により加水分解、縮合反応させた後、得られた懸濁液を濾過、乾燥し得ることができる。触媒の種類、配合比、反応開始温度、滴下時間などにより粒径をコントロールすることができる。触媒には、公知の酸性および塩基性の触媒の中から適宜選択して使用することができる。
以下、ケイ素重合体粒子の好ましい製造方法について説明する。
本発明のケイ素重合体粒子の好ましい製造方法は、以下の第1~第3の工程を含む。
(第1の工程)ケイ素化合物の加水分解物を得る、加水分解工程
(第2の工程)該加水分解物と、アルカリ性水系媒体と、を混合して、該加水分解物を重縮合反応させて重縮合反応物を得る重縮合工程、
(第3の工程)重縮合反応物と水性溶液とを混合し粒子化する粒子化工程
さらに、次の第4の工程を含んでいてもよい。
(第4の工程)ケイ素重合体粒子分散液に表面処理剤を配合して、ケイ素重合体粒子の表面を処理する表面処理工程
第1の工程は、水に触媒となる酸性またはアルカリ性の物質を溶解させた水溶液中において、ケイ素化合物と触媒とを、撹拌、混合等の方法で接触させる。酸性の触媒としては、酢酸、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、アルカリ性の触媒としてはアンモニア水、水酸ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。
ケイ素化合物には、下記の構造を有するものを好適に用いることができる。
Figure 2024015572000001
(式(2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6(好ましくは1~3、より好ましくは1または2)のアルキル基、フェニル基、または反応基(例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、または、(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~3の)アルコキシ基)を表す。)
ケイ素重合体粒子を得るには、
式(2)の一分子中に4つの反応基を有するケイ素化合物(4官能性シラン)、
式(2)中のRがアルキル基、またはフェニル基であり、3つの反応基(R、R、R)を有する有機ケイ素化合物(3官能性シラン)、
式(2)中のR、Rがアルキル基、またはフェニル基であり、2つの反応基(R、R)を有する有機ケイ素化合物(2官能性シラン)、
式(2)中のR、R、Rがアルキル基、またはフェニル基であり、1つの反応基(R)を有する有機ケイ素化合物(1官能性シラン)を用いることができる。
後述する第2の工程において、これらの反応基が加水分解、付加重合及び重縮合して架橋構造を形成し、ケイ素重合体粒子を生成する。反応基の加水分解、付加重合及び重縮合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
4官能性シランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソシアネートシランなどが挙げられる。
3官能性シランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランなどが挙げられる。
2官能性シランとしては、ジ-tert-ブチルジクロロシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジエトキシシラン、ジブチルジクロロシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジクロロデシルメチルシラン、ジメトキシデシルメチルシラン、ジエトキシデシルメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエチルジメトキシシランなどが挙げられる。
1官能性シランとしては、t-ブチルジメチルクロロシラン、t-ブチルジメチルメトキシシラン、t-ブチルジメチルエトキシシラン、t-ブチルジフェニルクロロシラン、t-ブチルジフェニルメトキシシラン、t-ブチルジフェニルエトキシシラン、クロロジメチルフェニルシラン、メトキシジメチルフェニルシラン、エトキシジメチルフェニルシラン、クロロトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、トリペンチルメトキシシラン、トリフェニルクロロシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
使用するモノマーは、溶媒及び触媒との相性、あるいは加水分解性などによって適宜選択できるが、4官能性シランであるテトラエトキシシラン、2官能性シランであるジメチルジメトキシシランを用いるのが好ましく、これらの混合物を用いるのがより好ましい。
触媒の使用量は、ケイ素化合物及び触媒の種類によって適宜調整すればよい。好ましくは、ケイ素化合物を加水分解する場合に用いる水の量100質量部に対して1×10-3質量部以上1質量部以下の範囲で選ばれる。
触媒の使用量が1×10-3質量部以上であれば、反応が十分に進行する。また、触媒の使用量が1質量部以下であると、微粒子中に不純物として残存する濃度が低くなり、加水分解させやすくなる。
水の使用量は、ケイ素化合物1モルに対して2モル以上15モル以下が好ましい。水の量が2モル以上であると加水分解反応が十分に進行し、15モル以下であると生産性が向上する。
反応温度はとくに制限されず、常温または加熱状態で行なってもよいが、短時間で加水分解物が得られ、かつ生成した加水分解物の部分縮合反応を抑制できることから、10℃以上60℃以下に保持した状態で反応させるのが好ましい。
反応時間はとくに制限されず、用いるケイ素化合物の反応性や、ケイ素化合物と酸と水とを調合した反応液の組成、生産性を考慮して適宜選択すればよい。
第2の工程では、上記第1の工程で得られた加水分解物とアルカリ性水系媒体とを混合して、粒子前駆体を重縮合反応させ、重縮合反応物を得る。ここで、アルカリ性水系媒体は、アルカリ成分と、水と、必要に応じて有機溶媒などとを混合して得られる液である。
アルカリ性水系媒体に使用されるアルカリ成分は、その水溶液がアルカリ性を示すものであり、第1の工程で用いられた触媒の中和剤として、また第2の工程の重縮合反応の触媒として作用するものである。かかるアルカリ成分としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、アンモニア、及びモノメチルアミン、ジメチルアミンのような有機アミン類を例示することができる。
アルカリ成分の添加量は、酸を中和し、重縮合反応の触媒として有効に作用する量とする。例えばアルカリ成分としてアンモニアを用いた場合には、水と有機溶媒との混合物100質量部に対して、0.01質量%以上12.50質量%以下の範囲で調整するとよい。
第2の工程においては、アルカリ性水系媒体を調製するために、アルカリ成分及び水に加えて、有機溶媒を添加してもよい。有機溶媒は、水に対して相溶性を有するものであれば特に制限されないが、常温、常圧下で100g当たり10g以上の水を溶解する有機溶媒が好適である。
具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール;エチレングリコールモノエチルエーテル、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジアセトンアルコール等のエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド化合物等が挙げられる。
以上に挙げた有機溶媒の中でも、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒が好ましい。さらには、加水分解、脱水縮合反応の観点から、脱離生成するアルコールと同一のアルコールを有機溶媒として選択するのがより好ましい。
第3の工程では、第2の工程で得られた重縮合反応物を、水性溶液と混合して粒子化する。水性溶液としては、水(水道水、純水等)が好適に利用できるが、水に塩、酸、塩基、有機溶媒、界面活性剤、水溶性高分子等の水と相溶性を示す成分を添加して用いてもよい。混合させる際の重縮合反応液及び水性溶液の温度は特に制限されないが、これらの組成、生産性等を考慮して5以上70℃以下の範囲が好適に選択される。
第3の工程で得られたケイ素重合体粒子を回収する方法は、公知の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、浮遊する粉体をすくい取る方法や濾過法が挙げられるが、操作が簡便であることから濾過法が好ましい。濾過の方法は特に制限されず、減圧濾過や遠心濾過、加圧濾過等、公知の装置を選択すればよい。濾過で使用する濾紙やフィルター、濾布等は、工業的に入手可能なものであれば特に制限されることはなく、使用する装置に応じて適宜選択すればよい。
さらに第4の工程として、ケイ素重合体粒子に表面処理を行い、樹脂やラジカル重合性化合物への分散性の調整を行ってもよい。表面処理には、ジシラザン化合物やシランカップリング剤など公知の手段を用いることができる。
得られたケイ素重合体粒子の平均粒子径は、遠心沈降法による測定から求めることができる。具体的には、乾燥したケイ素重合体粒子をバイアル等に投入し、そこに界面活性剤と水を添加した溶液を作製する。次に、超音波分散機による分散処理によって二次粒子を除去して一次粒子の分散液を得る。続いて、この分散液について、遠心沈降粒度分布測定装置により一次粒子の個数平均粒径を測定し、これをケイ素重合体粒子の平均粒子径とする。
<樹脂>
本発明の樹脂は特に限定されるものではないが、ヤング率が1GPa以上5GPa以下の範囲にあるものが好ましい。ヤング率がこの範囲にあれば、添加したケイ素重合体粒子が樹脂中に埋没したり変形したりするのを抑制しやすくなり、長期間の摺動においても摺動特性が変化しない、摺動部材に適した成形体を得ることができる。
ヤング率が1GPa未満の樹脂では、ケイ素重合体粒子が樹脂中に埋没し、長期間の摺動において摩擦係数が上昇する可能がある。ヤング率が5GPaを超える樹脂では、ケイ素重合体粒子の変形が起こり、長期間の摺動において摩擦係数が上昇してしまう可能性がある。
なお、本発明におけるヤング率とは、JIS K 7161-1または、ISO 527-1に準拠した引張試験法により求められる引張弾性率のことを指す。
本発明の樹脂は上記、ヤング率の範囲にあるものが好ましいが、その中でもポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群より選択されるいずれかの樹脂であることがより好ましい。
ポリビニル樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂やその共重合体及び、それらをブレンドしたポリマーアロイを使用することができる。
ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレン-2,6-ナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂やその共重合体及び、それらをブレンドしたポリマーアロイを使用することができる。
ポリアミド樹脂としては、例えばナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612やその共重合体及び、それらをブレンドしたポリマーアロイを使用することができる。
ポリアセタール樹脂としては、ポリアセタールホモポリマー及び、ポリアセタールコポリマーのいずれも使用することができる。
<成形体の製造方法>
本発明の成形体は、上述のケイ素重合体粒子を含む液状の樹脂組成物を硬化させる、あるいはいったん硬化させた樹脂組成物を溶解して固化させることで得ることができ、摺動部材として好適に用いることができる。
成形体の形状は特に限定されない。摺動部材としての形状を有していてもよいし、例えば、線状やペレット状であってもよい。線状やペレット状の成形体は、これらを原料として、圧縮成形法、トランスファ成形法、積層成形法、射出成形法、押出成形法、吹込成形法等を用いて、任意の形状に加工することができる。
ケイ素重合体粒子を樹脂中に均一に分散させることが好ましい。
摺動部材としての形状を有する成形体を製造する場合は、後述の液状の樹脂組成物においてケイ素重合体粒子を均一に分散させ、光造形法にて製造するとよい。
線状やペレット状の成形体を製造する場合は、例えば、樹脂およびケイ素重合体粒子の全部もしくは一部を同時にあるいは別々に、ブレンダー、ニーダー、ロール、押出機等の混合機で混合し均質化させる方法や、混合部分の一部を同時にあるいは別々にブレンダー、ニーダー、ロール、押出機等で混合し、更に残りの成分をこれらの混合機あるいは押出機で混合し均質化させる方法を採用することができる。更に予めドライブレンドされた組成物を加熱した押出機で溶融混練して均質化したあと針金状に押出し、次いで所望の長さに切断して粒状化する方法も適応することができる。
<硬化性樹脂組成物>
シロキサン結合とSi-O-C結合の比率が調整されたケイ素重合体粒子を含む硬化性組成物は、優れた摺動特性を有する膜を形成するための塗料や、光造形法を用いて摺動部材を造形するための原料として好適に用いることができる。本発明の硬化性組成物は、前述したケイ素重合体粒子と、ラジカル重合性化合物と、硬化剤とを含む。
<ラジカル重合性化合物>
ラジカル重合性化合物は特に限定されないが、多官能ラジカル重合性化合物(A)と、単官能ラジカル重合性化合物(B)とを含んでいると、靭性の高い硬化物を得ることができる。
多官能ラジカル重合性化合物(A)とは、分子内に2個以上のラジカル重合性官能基を有する化合物である。ラジカル重合性官能基としては、例えば、エチレン性不飽和基が挙げられる。エチレン性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、などが挙げられる。多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート系化合物、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物、(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート系化合物、(メタ)アクリルアミド系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、マレイミド系化合物、ビニルエーテル系化合物、芳香族ビニル系化合物などが挙げられる。中でも、入手容易性と硬化性の観点から、(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
本発明の多官能ラジカル重合性化合物(A)には種々の化合物を用いることができるが、合成が容易であり入手し易く、得られる造形物のヤング率が高いという点で、ウレタン構造を有する多官能ラジカル重合性化合物が特に好ましい。また、本発明の硬化性組成物を光造形法の原料に用いる場合、ポリエーテル構造を有する多官能ラジカル重合性化合物は、粘度が低く、造形時における液切れが良く、精度の高い造形物が得られるという点で好ましい。また、ポリエステル構造、あるいは、ポリカーボネート構造を有する多官能ラジカル重合性化合物は、ヤング率の高い造形物が得られるという点で好ましい。多官能ラジカル重合性化合物(A)は、これらの化合物から選択される一種類の化合物であっても良いし、2種類以上を含有するものであっても良い。本発明における多官能ラジカル重合性化合物(A)とは、硬化性組成物に含まれる1種あるいは複数種の多官能ラジカル重合性化合物を、まとめて指す呼称である。
ウレタン構造を有する多官能ラジカル重合性化合物(A)には、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物と、多価イソシアネート系化合物との反応によって得られるものが挙げられる。他に、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物と、多価イソシアネート系化合物と、ポリオール系化合物との反応によって得られるものが挙げられる。高いヤング率を実現できる点で、水酸基含有(メタアクリレート系化合物と、多価イソシアネート系化合物と、ポリオール系化合物とを反応させて得られるものが特に好ましい。
前記水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイル-オキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。
前記多価イソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ポリイソシアネート、或いはこれらポリイソシアネートの3量体化合物または多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート等が挙げられる。これら多価イソシアネート系化合物は単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。
前記ポリオール系化合物としては、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等が挙げられる。これらのポリオール系化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオールや、これらポリアルキレングリコールのランダム或いはブロック共重合体等が挙げられる。
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との重縮合反応物、環状エステル(ラクトン)の開環重合物、多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などが挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4-シクロヘキサンジオールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが挙げられる。
前記多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
前記環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどが挙げられる。
ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)の開環重合物などが挙げられる。
前記多価アルコールとしては、前記ポリエステル系ポリオールの説明中で例示した多価アルコール等が挙げられる。前記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。
なお、ポリカーボネート系ポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
ポリエーテル構造、ポリエステル構造、及び、ポリカーボネート構造のいずれか1つを有する多官能ラジカル重合性化合物(A)は、例えば前記のポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、及びポリカーボネート系ポリオールのいずれか1つと、(メタ)アクリル酸塩化物あるいは(メタ)アクリル酸化合物と反応させてなるもの等が挙げられる。
本発明の多官能ラジカル重合性化合物(A)のエチレン性不飽和基当量は700g/eq以上7000g/eq以下の範囲であることが好ましい。硬化性組成物に含まれる多官能ラジカル重合性化合物(A)が単一の化合物である場合は、エチレン性不飽和基当量が700g/eq以上7000g/eq以下の多官能ラジカル重合性化合物を用いるのが好ましい。ここで言うエチレン性不飽和基等量とは、多官能ラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)を一分子中のエチレン性不飽和基の数で除した値である。硬化性組成物が複数種類の多官能ラジカル重合性化合物を含む場合、多官能ラジカル重合性化合物(A)のエチレン性不飽和基当量は、それぞれの多官能ラジカル重合性化合物のエチレン性不飽和基当量を硬化性組成物に含有される重量比で加重平均して算出できる。そして、その値が700g/eq以上7000g/eq以下となる比率で、複数種類の多官能ラジカル重合性化合物を混合して用いるとよい。硬化性組成物が複数種類の多官能ラジカル重合性化合物を含む場合、エチレン性不飽和基当量が700g/eq以上7000g/eq以下の多官能ラジカル重合性化合物と、700g/eq未満の多官能ラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。
エチレン性不飽和基当量が大きいほど、硬化後の硬化物の架橋密度が小さくなり、得られる硬化物のヤング率は低下する。エチレン性不飽和基当量が7000g/eqよりも大きいと、硬化後の硬化物の架橋密度が小さくなり、硬化物のヤング率が低くなるため、ケイ素重合体粒子が樹脂中に埋没しやすくなり、長期間の摺動において摩擦係数が上昇する傾向がある。一方、エチレン性不飽和基当量が700g/eqよりも大きいと、光硬化後の硬化物の架橋密度が高くなり、硬化物のヤング率が大きくなるため、ケイ素重合体粒子の変形が起こりやすくなり、長期間の摺動において摩擦係数が上昇する傾向がある。
なお、本発明の多官能ラジカル重合性化合物(A)の重量平均分子量(Mw)は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量である。重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。例えば、東ソー社製、高速GPC装置「HLC-8220GPC」に、カラム:ShodexGPCLF-804(排除限界分子量:2×10、分離範囲:300から2×10)2本を直列に接続して、測定することができる。
単官能ラジカル重合性化合物(B)とは、分子内に1つのラジカル重合性官能基を有する化合物である。硬化性組成物が単官能ラジカル重合性化合物(B)を添加すると、粘度範囲の調整が容易になる。また、単官能ラジカル重合性化合物(B)の含有量を調整したり種類を適切に選択したりすることで、硬化性組成物を硬化して得られる成形体の機械特性を、所望の範囲に調整することもできる。
単官能ラジカル重合性化合物(B)としては、アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリレート系化合物、マレイミド系化合物、スチレン系化合物、アクリロニトリル系化合物、ビニルエステル系化合物、N-ビニル系化合物、共役ジエン系化合物、ビニルケトン系化合物、ハロゲン化ビニル・ハロゲン化ビニリデン系化合物などが挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。中でもアクリルアミド系化合物、(メタ)アクリレート系化合物、マレイミド系モノマー、N-ビニル系化合物は、組成物の硬化性と得られる造形物の機械特性とが優れる点で、特に好ましい。
アクリルアミド系化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルフォリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N-tert-オクチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-アタマンチル(メタ)アクリレート、3,5-ジヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-イソプロピル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニル-メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H,オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートエピクロロヒドリン変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸(メタ)アクリレート、アリルオキシアクリル酸メチル(製品名:AO-MA、日本触媒社製)、イミド基を有する(メタ)アクリレート類(製品名:M-140、東亞合成社製)、シロキサン構造を有する単官能(メタ)アクリレート類、などが挙げられる。
マレイミド系モノマーとしては、例えば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。
N-ビニル化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルモルフォリン、N-ビニルアセトアミドなどが挙げられる。
その他の単官能ラジカル重合性化合物(B)として、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩、などのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物などが挙げられる。
これらの単官能ラジカル重合性化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。
本発明にかかる硬化性組成物を光造形法の原料とする場合は、特に多官能ラジカル重合性化合物(A)と単官能ラジカル重合性化合物(B)とを含むのが好ましい。その場合、硬化性組成物に含まれる多官能ラジカル重合性化合物(A)の量は、多官能ラジカル重合性化合物(A)と単官能ラジカル重合性化合物(B)との合計100質量部に対して、20質量部以上75質量部以下が好ましい。多官能ラジカル重合性化合物(A)の含有量が20質量部以上であれば、硬化性組成物の硬化性と良好な弾性率を有する造形物を得ることができる。多官能ラジカル重合性化合物(A)の含有量が75質量部以下であれば、光造形法に適した粘度の硬化性組成物を得ることができる。より好ましくは30質量部以上75質量部以下である。さらに好ましくは40質量部以上65質量部以下である。
<硬化剤>
本発明の硬化剤としては、光ラジカル重合開始剤を用いることがより好ましい。硬化性組成物は、光ラジカル重合開始剤に加えて熱ラジカル重合開始剤を含有してもよい。硬化性樹成物が熱ラジカル重合開始剤を含有することで、光照射による造形後に熱処理を施すことで重合反応を進め、造形物の機械特性をより高めることができる。
光ラジカル重合開始剤は、主に分子内開裂型と水素引抜き型に分類される。分子内開裂型では、特定波長の光を吸収することで、特定の部位の結合が切断され、その切断された部位にラジカルが発生し、それが重合開始剤となり多官能ラジカル重合性化合物(A)と単官能ラジカル重合性化合物(B)の重合が始まる。水素引き抜き型では、特定波長の光を吸収し励起状態になり、その励起種が周囲にある水素供与体から水素引き抜き反応を起こし、ラジカルが発生する。そして、発生したラジカルが重合開始剤となって、多官能ラジカル重合性化合物(A)と単官能ラジカル重合性化合物(B)の重合が始まる。本発明では、光ラジカル重合開始剤を2種類以上併用してもよいが、単独で用いてもよい。
分子内開裂型光ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤が知られている。これらはカルボニル基に隣接した結合がα開裂して、ラジカル種を生成するタイプのものである。
アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、ベンジルメチルケタール系光ラジカル重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤等がある。具体的な化合物としては、例えば、ベンジルメチルケタール系光ラジカル重合開始剤としては、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(イルガキュア(R)651、BASF社製)等があり、α-ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(ダロキュア(R)1173、BASF社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア(R)184、BASF社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア(R)2959、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(イルガキュア(R)127、BASF社製)等があり、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(イルガキュア(R)907、BASF社製)、2-ベンジルメチル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(イルガキュア(R)369、BASF社製)等があるが、これに限定されることはない。
アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ルシリン(R)TPO、BASF社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(Omnirad(R)819、IGMResins社製)等があるが、これに限定されることはない。
オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤としては、(2E)-2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1-オン(イルガキュア(R)OXE-01、BASF社製)等が挙げられるが、これに限定されることはない。
水素引き抜き型光ラジカル重合開始剤としては、2-エチル-9,10-アントラキノン、2-t-ブチル-9,10-アントラキノン等のアントラキノン誘導体、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体が挙げられるが、これに限定されることはない。
硬化性組成物に含まれる光ラジカル重合開始剤の添加量としては、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下である。より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。光ラジカル重合開始剤量が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。一方、光ラジカル重合開始剤量が多いと、光の透過性が低下し、重合が不均一になる傾向がある。
熱ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを発生するものであれば特に制限されず従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、アゾ系化合物、過酸化物及び過硫酸塩等を好ましいものとして例示することができる。
アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレ-ト)、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)等が挙げられる。
過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート及びジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。
熱ラジカル重合開始剤の添加量としては、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。熱ラジカル重合開始剤を過剰に添加すると分子量が伸びず、物性の低下するおそれがある。
<その他の添加剤>
本発明の硬化性組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤が含有されていてもよい。添加剤の例としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエステル、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、ポリシロキサン、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂などの樹脂、あるいはポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのエンジニアリングプラスチック、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー、フッ素含有モノマー、シロキサン構造含有モノマーなど反応性モノマー、金、銀、鉛などの軟質金属、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、窒化ケイ素、セレン化モリブデンなどの層状結晶構造物質、フェノチアジン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等の重合禁止剤、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、及びキサントン化合物などの光増感剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、無機充填剤、顔料、染料、酸化防止剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤等を挙げることができる。
<硬化性組成物の製造方法>
本発明の硬化性組成物は、ケイ素重合体粒子及び、ラジカル重合性化合物及び、硬化剤に、必要に応じてその他の任意成分を適量添加して製造される。具体的には、これらの成分を撹拌容器に仕込み、通常、30℃以上120℃以下、好ましくは50℃以上100℃以下で撹拌することにより製造することができる。その際の撹拌時間は、通常1分以上6時間以下、好ましくは10分以上2時間以下である。ケイ素重合体粒子とラジカル重合性化合物の合計量は、硬化剤を除いた硬化性組樹脂成物100質量部に対して、25質量部以上100質量部以下が好ましい。さらに好ましくは75質量部以上100質量部以下である。なお、硬化性組成物100質量部のうち、ケイ素重合体粒子とラジカル重合性化合物を除いた残りの質量部は、硬化剤やその他の成分によって占められる。
本発明の硬化性組成物の25℃における粘度は、好ましくは50mPa・s以上30,000mPa・s以下であり、より好ましくは50mPa・s以上10,000mPa・s以下である。
<硬化性組成物を用いた摺動部材の製造方法>
本発明の硬化性組成物は、光を照射することによって硬化させることができる。照射する光としては、紫外線や赤外線などを挙げることができる。なかでも、汎用性があるために入手が容易で、光ラジカル重合開始剤にエネルギーが吸収されやすいことから、300nm以上450nm以下の波長を有する光を好ましく用いることができる。光を発する光源として、レーザー光源(例えばArレーザー、He-Cdレーザーなど)、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯などを使用することができる。なかでも、レーザー光源は、エネルギーレベルを高めることで造形時間を短縮することができ、照射径を小さくして高い造形精度を得ることができるため、好ましく採用される。照射する光は、硬化性組成物が含有するラジカル重合開始剤の種類に合わせて適宜選択することができ、複数組み合わせて用いることもできる。
本発明の硬化性組成物は、光造形法を用いて摺動部材を製造する際の原料として好適である。すなわち、本発明の硬化性組成物に、造形する摺動部材の三次元形状データから生成されたスライスデータに応じて光エネルギー線を照射し、硬化に必要なエネルギーを供給することにより、所望の形状の摺動部材を製造することができる。
図1に、摺動部材の製造に適した光造形装置100の構成例を示す。光造形装置100は、液状の硬化性組成物10を満たした槽11を有している。槽11の底面は光透過部材で構成されており、槽11の内側には造形ステージ12が、駆動軸13によって鉛直方向に駆動可能に配置されている。光源14から射出された光線15は、スライスデータに従って制御部18により制御されるガルバノミラー16の傾きに応じて、照射位置を変更し、走査することが可能である。図1では、光線15の走査範囲の一例を破線で示している。
造形ステージ12と、槽11の底面との間の硬化性組成物10は、槽11の底面を介して光線15はが照射されることにより硬化される。硬化される硬化性組成物10の厚さdは、スライスデータの生成時の設定に基づいて決まる値で、得られる造形物17の精度(造形する物品の三次元形状データの再現性)に影響を与える。厚さdは、制御部18が駆動軸13の駆動量を制御することによって達成される。
まず、制御部18が設定に基づいて駆動軸13を制御して、造形ステージ12と槽11の底面との距離がdとなるように調整する。造形ステージ12と槽11の底面との間は、未硬化の硬化性組成物で満たされる。造形ステージ12と槽11の底面との間の液状の硬化性組成物に、スライスデータに基づいて光線15を照射し、硬化層を形成する。次に、硬化層を槽11の底面から引きはがすように造形ステージ12を移動させた後に、硬化層の表面と槽11の底面との間がdとなるように調整し、未硬化の硬化性組成物を供給する。そして、再びスライスデータに基づいて光線15を照射し、先に形成した硬化層と一体化した硬化層を形成する。このよう厚さdで硬化された硬化層を積層する工程を繰り返すことによって成形体17を得ることができる。
このようにして得られる成形体17を槽11から取り出し、その表面に残存する未反応の硬化性組成物を除去した後、必要に応じて洗浄や後加工が施される。洗浄に用いられる洗浄剤には、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類に代表されるアルコール系有機溶剤を用いることができる。他に、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等に代表されるケトン系有機溶剤や、テルペン類に代表される脂肪族系有機溶剤を用いても良い。洗浄剤で洗浄した後に、必要に応じて後加工がおこなわれる。例えば、光照射および/又は熱照射によるポストキュアーを行っても良い。ポストキュアーは、造形物の表面及び内部に残存する未反応の硬化性組成物を硬化させることができ、造形物の表面のべたつきを抑えることができる他、造形物の初期強度を向上させることができる。後加工として、サポート体の除去、表面の研磨、ねじ穴を設けるなどの形状加工などを行っても良い。
図1には、光線を点描方式または線描方式で樹脂組成物に照射して硬化させる例を示したが、他の方法で光を照射しても良い。例えば、液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターなどのような微小光シャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを通して、光を面状に照射して樹脂を硬化させてもよい。
また、図1には規制液面法を用いる光造形装置を示しているが、本発明の硬化性組成物は、特定の造形法に限定されることはなく自由液面法にも用いることができる。
以下に本発明を詳しく説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<ケイ素重合体粒子の製造例>
(ケイ素重合体粒子1の製造)
第1の工程.加水分解工程
200mlビーカーに、RO水43.2g、触媒として酢酸0.008gを仕込み、40℃で撹拌した。ここにテトラエトキシシラン27.2g、及びジメチルジメトキシシラン27.2gを加えて1.5時間撹拌し、原料溶液(加水分解物)を得た。
第2の工程.縮重合工程
1000mlビーカーに、RO水58.8g、メタノール350.0g、25%アンモニア水2.5gを投入して30℃で撹拌し、アルカリ性水系媒体を調製した。このアルカリ性水系媒体に、1.加水分解工程で得た原料溶液を1分間かけて滴下した。この原料溶液を滴下後の混合液をそのまま30℃に保ったまま1.5時間撹拌して、重縮合反応を進行させ重縮合反応物を得た。
第3の工程.粒子化工程
2000mlビーカーにRO水1000gを投入し、これを25℃で撹拌しながら縮重合工程で得た重縮合反応物を10分間かけて滴下した。重縮合反応物が水に混ざるとすぐに白濁し、重合体粒子の分散液が得られた。
第4の工程.表面処理工程(疎水化工程)
粒子化工程で得た重合体粒子の分散液に、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン27.1gを添加して、60℃で2.5時間撹拌した。5分静置して溶液下部に沈殿した粉体を吸引濾過で回収し、120℃で24時間減圧乾燥してケイ素重合体粒子1を得た。
(ケイ素重合体粒子2の製造)
加水分解工程において、テトラエトキシシランを23.5g、及びジメチルジメトキシシランを30.9gに変更した以外は、ケイ素重合体粒子1の製造例と同様にしてケイ素重合体粒子2を得た。
(ケイ素重合体粒子3の製造)
加水分解工程において、テトラエトキシシランを22.1g、及びジメチルジメトキシシランを21.6gに変更し、さらにトリメチルシラノールを10.7g添加したこと以外は、ケイ素重合体粒子1の製造例と同様にしてケイ素重合体粒子3を得た。
(ケイ素重合体粒子4の製造)
加水分解工程において、テトラエトキシシランを30.1g、及びジメチルジメトキシシランを24.3gに変更した以外は、ケイ素重合体粒子1の製造例と同様にしてケイ素重合体粒子4を得た。
(ケイ素重合体粒子5の製造)
加水分解工程において、テトラエトキシシランを15.4g、及びジメチルジメトキシシランを8.2gに変更した。さらにトリメトキシメチルシランを30.8g添加し、撹拌温度を30℃、撹拌時間を0.5時間に変更した。それ以外は、ケイ素重合体粒子1の製造例と同様にしてケイ素重合体粒子5を得た。
(ケイ素重合体粒子6の製造)
ケイ素重合体粒子の製造例1と同様に粒子化工程までを行い、平均粒子径0.35μmのシード粒子分散液を得た。
上記とは別の反応容器に、RO水43.2質量部、触媒として酢酸0.008質量部を仕込み、40℃で撹拌した。ここにテトラエトキシシラン27.2質量部、及びジメチルジメトキシシラン27.2質量部を加えて1.5時間撹拌した。メタノール350質量部、RO水58.8質量部を添加し、原料溶液を調製した。
上記シード粒子分散液に25℃で撹拌しながら原料溶液を15mL/hrで滴下した。分散液の粒子径を経時変化を測定し、粒子径が3.2μmに達したところで、原料溶液の滴下を終了した。
得られた分散液に表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン27.1gを添加して、60℃で2.5時間撹拌した。5分静置して溶液下部に沈殿した粉体を吸引濾過で回収し、120℃で24時間減圧乾燥してケイ素重合体粒子6を得た。
(ケイ素重合体粒子7の製造)
粒子径が4.7μmに達するまで原料溶液の滴下を行うこと以外、ケイ素重合体粒子の製造例6と同様にしてケイ素重合体粒子7を得た。
(ケイ素重合体粒子8の製造)
加水分解工程において、撹拌温度を50℃に変更し、2.縮重合工程で使用する25%アンモニア水を1.5gに変更した以外は、ケイ素重合体粒子1の製造例と同様にしてケイ素重合体粒子8を得た。
(ケイ素重合体粒子9の製造)
粒子径が7.5μmに達するまで原料溶液の滴下を行うこと以外、ケイ素重合体粒子の製造例6と同様にしてケイ素重合体粒子9を得た。
(ケイ素重合体粒子10の製造)
2000mlビーカーにアモルファスシリカ粒子(シーホスターKE-S30、日本触媒社製)50g、メタノール350g、RO水1100g、25%アンモニア水2.5gを投入し、撹拌することによりアモルファスシリカ粒子分散液を得た。ここに表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン27.1gを添加して、60℃で2.5時間撹拌した。5分静置して溶液下部に沈殿した粉体を吸引濾過で回収し、120℃で24時間減圧乾燥してケイ素重合体粒子10を得た。
(ケイ素重合体粒子11の製造)
加水分解工程において、テトラエトキシシラン、及びジメチルジメトキシシランを添加せず、代わりにトリメトキシメチルシランを54.4g添加し、撹拌温度を30℃、撹拌時間を0.5時間に変更した。それ以外は、ケイ素重合体粒子1の製造例と同様にしてケイ素重合体粒子11を得た。
<ケイ素重合体粒子の分析>
上記で得られたケイ素重合体粒子について、下記の方法により、FT-IRスペクトル、及び粒径の評価を行った。測定結果を表1に示す。
(FT-IRスペクトルの測定)
FT-IRスペクトルは、ユニバーサルATR測定アクセサリー(UniversalATR Sampling Accessory)を装着したフーリエ変換赤外分光分析装置(Spectrum One:PerkinElmer社製)を用い、ATR法で測定する。具体的な測定手順は以下の通りである。赤外光(λ=5μm)の入射角は45°に設定する。ATR結晶としては、GeのATR結晶(屈折率=4.0)を用いる。その他の条件は以下の通りである。
Range
Start:4000cm-1
End:600cm-1
Duration
Scan number:16
Resolution:4.00cm-1
Advanced:CO2/H2O補正あり
(1)GeのATR結晶(屈折率=4.0)を装置に装着する。
(2)Scan typeをBackground、UnitsをEGYに設定し、バックグラウンドを測定する。
(3)Scan typeをSample、UnitsをAに設定する。
(4)試料をATR結晶の上に、0.01g精秤する。
(5)圧力アームでサンプルを加圧する(Force Gaugeは90)。
(6)サンプルを測定する。
(7)得られたFT-IRスペクトルを、Automatic Correctionでベースライン補正をする。
(8)600cm-1以上4000cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値と波数を算出し、最大ピークの位置を確認する。
(9)1015cm-1以上1025cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の平均値(A)を算出する。
(10)1085cm-1以上1095cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の平均値(B)を算出する。
上記のようにして求めたAとBを用い、A/Bを算出する。
また、図2~4にケイ素重合体粒子1、10、11のFT-IRスペクトルを示しておく。
(粒径の測定)
ケイ素重合体粒子の平均粒子径として、遠心沈降法を用いて個数平均粒子径を求めた。具体的には、乾燥したケイ素重合体粒子0.01gを25mlのガラス製バイアルに投入し、そこに5%トリトン溶液0.2gとRO水19.8gを添加した溶液を作製した。
次に、超音波分散機のプローブの先端を上記溶液に浸し、出力20Wで15分間超音波分散することで分散液を得た。続いて、この分散液を用いて、CPS Instruments社の遠心沈降粒度分布測定装置DC24000により一次粒子の個数平均粒子径を測定した。ディスクの回転数は18000rpmに設定し、真密度は1.3g/cmに設定した。測定前に、平均粒子径0.476μmのポリ塩化ビニル粒子を使用して装置の校正を行った。
Figure 2024015572000002
<成形体の作製>
(実施例1)
ポリオキシメチレン(POM)樹脂(ジュラコンM90-44、ポリプラスチック社製、ヤング率 2.7GPa)100質量部に、10質量部のケイ素重合体粒子1を加えてタンブラー撹拌機で均一に混合した。その後、二軸スクリューエクストルーダー(Process11、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、混錬温度200℃、200rpmで混錬することにより実施例1の樹脂組成物を得た。得られた組成物をカッターミルで粉砕後、射出成型機(HAAKE MiniJetPro、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて大きさ30mm×30mm、厚さ4mmの試験片(成形体)を作製した。作製条件は、シリンダ温度200℃、金型温度80℃、射出圧力100MPaとした。
(実施例2)
ケイ素重合体粒子1をケイ素重合体粒子2に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例3)
ケイ素重合体粒子1をケイ素重合体粒子3に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例4)
ケイ素重合体粒子1をケイ素重合体粒子4に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例5)
ケイ素重合体粒子1をケイ素重合体粒子5に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例6)
ケイ素重合体粒子1を3質量部に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例7)
ケイ素重合体粒子1を5質量部に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例8)
ケイ素重合体粒子1を40質量部に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例9)
ケイ素重合体粒子1を50質量部に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例10)
ケイ素重合体粒子1をケイ素重合体粒子6に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例11)
ケイ素重合体粒子1をケイ素重合体粒子7に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例12)
ポリオキシメチレン(POM)樹脂をポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(ノバデュラン5010R5、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ヤング率 2.4GPa)に変更し、混錬温度及び射出成型時のシリンダ温度を240℃とした。それ以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例13)
ポリオキシメチレン(POM)樹脂をポリプロピレン(PP)樹脂(ノバテックPP EG7FTB、日本ポリプロ社製、ヤング率 1.15GPa)に変更し、混錬温度及び射出成型時のシリンダ温度を共に220℃、金型温度を50℃とした。それ以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例14)
ポリオキシメチレン(POM)樹脂をポリアミド(PA)樹脂(ウルトラミッド A3K、BASF社製、ヤング率 3.1GPa)に変更し、混錬温度及び射出成型時のシリンダ温度を共に280℃、金型温度を60℃とした点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例15)
ポリオキシメチレン(POM)樹脂をポリエチレン(PE)樹脂(サンテックHD J340、旭化成社製、ヤング率 0.8GPa)に変更し、混錬温度及び射出成型時のシリンダ温度を共に200℃、金型温度を40℃とした。それ以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(比較例1)
ケイ素重合体粒子1を加えない点を除いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(比較例2)
ケイ素重合体粒子1をケイ素重合体粒子8に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(比較例3)
ケイ素重合体粒子1をケイ素重合体粒子9に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(比較例4)
ケイ素重合体粒子1をケイ素重合体粒子10に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(比較例5)
ケイ素重合体粒子1をケイ素重合体粒子11に変更した点を除き、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(比較例6)
ケイ素重合体粒子1の添加量を60質量部に変更した点を除き、実施例1と同様にしての樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は加工性が悪く、試験片を作製することができなかった。
<成形体の評価>
製造した実施例1~15および比較例1~6にかかる試験片を、下記の方法により評価した。結果を表2に示す。
(摩擦係数と比摩耗量)
摩擦係数と比摩耗量の測定は、JIS K 7218A法に準拠し、下記に示す条件で行った。
測定装置:エー・アンド・デイ製摩擦摩耗試験機MODELEMF-III-F
試験環境:23℃±2℃、湿度50%RH±5%RH
試験片:試験片Y(大きさ30mm×30mm、厚さ4mm)
相手材:S45C製、リング形状、表面粗さ約0.8μmRa、接触面積2cm
荷重:50N
摺動速度:50cm/s
試験時間:100分
摺動距離:3Km
(評価基準)
(1)摩擦係数
摩擦係数は、摺動開始後5分及び60分の前後10秒間の摩擦力の平均値を、荷重で除した値を摩擦係数とした。得られた摩擦係数から、摺動開始後5分後の摩擦係数に対する摺動開始後60分後の摩擦係数の上昇率を算出した。摩擦係数の評価基準を以下に示す。評価基準Bを満たしていれば、長期にわたり摩擦係数が変化せず、良好な摺動特性が得られており、評価基準Aを満たしていれば、優れた摺動特性が得られていると判断する。
A:摩擦係数の上昇率が20%未満。
B:摩擦係数の上昇率が20%以上、50%未満。
C:摩擦係数の上昇率が50%以上。
(2)比摩耗量
試験片Yの30mm×30mmの面に相手材を上記の荷重で押し付け、上記の速度で摺動させた。100分後に摺動を止め、摺動前後の試験片の重量から摩耗重量を測定した。測定した摩耗重量と、試験片の比重から摩耗体積を算出した。算出した摩耗体積を、摺動距離と荷重で除した値を比摩耗量(単位:mm・N-1・Km-1)とし、これを耐摩耗性の指標とした。耐摩耗性の評価基準を以下に示す。なお、摺動開始後100分以内に摩耗深さが1.5mmを超えた場合、測定限界として評価をCとした。評価基準Bを満たしていれば良好な耐摩耗性が得られており、評価基準Aを満たしていれば優れた耐摩耗性が得られていると判断する。
A:0.3mm・N-1・Km-1
B:0.3mm・N-1・Km-1以上0.5mm・N-1・Km-1未満。
C:0.5mm・N-1・Km-1以上。
Figure 2024015572000003
実施例16~18、比較例7~9では、下記の成分を用いて硬化性組成物を調製し、光造形法を用いて成形体を作製した。
[ラジカル重合性化合物]
(多官能ラジカル重合性化合物(A))
A-1:ウレタンアクリレート
紫光UV-6630B、三菱ケミカル社製、エチレン性不飽和基当量1500g/eq
A-2:脂環式ジアクリレート
紫光UV-6630B、三菱ケミカル社製、エチレン性不飽和基当量1500g/eq
A-3:エトキシ化ビスフェノールジアクリレート
NKエステルABE-300、新中村化学社製、エチレン性不飽和基当量466g/eq
A-4:ウレタンアクリレート化合物
紫光UV-3550AC、三菱ケミカル社製、エチレン性不飽和基当量7000g/eq
A-5:ウレタンアクリレート
EBECRYL8210、ダイセル・オルネクス社製、エチレン性不飽和基当量150g/eq
(単官能ラジカル重合性化合物(B))
B-1:N,N‘-ジメチルアクリルアミド(DMAA、KJケミカル社)
B-2:アクリル酸イソボルニル(東京化成工業社製)
B-3:N-アクリロイルモルフォリン(ACMO、KJケミカル社製)
(実施例16)
以下の成分を配合し、75℃で2時間撹拌し、実施例11の硬化性組成物を調製した。
A-1 40質量部
A-2 15質量部
A-3 20質量部
B-1 25質量部
ケイ素重合体粒子1 25質量部
A-1~3の混合物である多官能ラジカル重合性化合物(A)としてのエチレン性不飽和基当量は893g/eqである。
調製した硬化性組成物を用いて、3Dプリンター(DWS社製DWS-020X、規制液面法の光造形装置)を用い、30mm×30mm×4mmの大きさの直方体の三次元形状に基づくスライスデータに従って造形した。造形物は、30mm×4mm×厚さ50μmの硬化層を30mmの高さになるまで積層して作成した。得られた造形物を、UVCuringUnitM(DWS社製)を用いて30分間紫外光を照射し、その後50℃の加熱オーブン内に入れて1時間、さらに100℃の加熱オーブン内に入れて2時間熱処理を行うことで、試験片としての成形物を作製した。
(実施例17)
各成分の配合を下記に変更した点を除いて、実施例16と同様にして硬化性組成物を調整し、試験片を作製した。
A-4 40質量部
B-2 30質量部
B-3 30質量部
ケイ素重合体粒子1 25質量部
(実施例18)
各成分の配合を下記に変更した点を除いて、実施例16と同様にして硬化性組成物を調整し、試験片を作製した。
A-5 55質量部
B-4 45質量部
ケイ素重合体粒子1 25質量部
(比較例7)
ケイ素重合体粒子1を添加しなかった点を除いて、実施例16と同様にして硬化性組成物を調整し、試験片を作製した。
(比較例8)
ケイ素重合体粒子1をケイ素重合体粒子7に変更した点を除いて、実施例16と同様にして硬化性組成物を調整し、試験片を作製した。
(比較例9)
ケイ素重合体粒子1をケイ素重合体粒子8に変更した点を除いて、すること以外、実施例16と同様にして硬化性組成物を調整し、試験片を作製した。
<硬化性組成物の評価>
上記のように製造した試験片を前記樹脂組成物の評価と同様の方法により、評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 2024015572000004
表1および2の結果から、実施例にかかる成形体は、摩擦係数の変化が小さく、比摩耗量が0.4mm・N-1・Km-1以下と小さく、摺動特性に優れていた。すなわち、ATR法によるFT-IRスペクトルが、1030cm-1~1070cm-1の範囲に最大ピークを有し、式(1)を満たすケイ素重合体粒子を含む硬化性組成物で作製した成形体は、良好な摺動特性と耐摩耗性と有することが確認された。
本実施形態の開示は、以下の構成および製法を含む。
(構成1)
樹脂と前記樹脂に分散したケイ素重合体粒子とを含む成形体であって、
該ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下、かつ該ケイ素重合体粒子の含有量が前記樹脂100質量部に対して3質量部以上50質量部以下であり、
ATR法によって得られる該ケイ素重合体粒子のFT-IRスペクトルにおいて、
1030cm-1~1070cm-1の範囲に最大ピークを有し、1015cm-1~1025cm-1の範囲における平均強度をA、1085cm-1~1095cm-1の範囲における平均強度をBとしたとき、0.55≦A/B≦1.50を満たすことを特徴とする成形体。
(構成2)
前記FT-IRスペクトルが、1040cm-1~1055cm-1の範囲に最大ピークを有することを特徴とする構成1に記載の成形体。
(構成3)
前記AとBが、0.80≦A/B≦1.20を満たすことを特徴とする構成1に記載の成形体。
(構成4)
前記ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒子径が0.3μm以上5.0μm以下であることを特徴とする構成1または2に記載の成形体。
(構成5)
前記ケイ素重合体粒子の含有量が、樹脂100質量部に対して3質量部以上50質量部以下であることを特徴とする構成1乃至3のいずれか1項に記載の成形体。
(構成6)
前記樹脂のヤング率が、1GPa以上5GPa以下の範囲であることを特徴とする構成1乃至5のいずれか1項に記載の成形体。
(構成7)
前記樹脂が、ポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群より選択されるいずれかを含むことを特徴とする構成1乃至6のいずれか1項に記載の成形体。
(構成8)
前記ケイ素重合体粒子が球状であることを特徴とする構成1乃至7のいずれか1項に記載の成形体。
(構成9)
比摩耗量が0.4mm・N-1・Km-1以下であることを特徴とする構成1乃至8のいずれか1項に記載の成形体。
(構成10)
ケイ素重合体粒子と、ラジカル重合性化合物と、硬化剤と、を含む硬化性組成物であって、
前記ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下、かつ前記ケイ素重合体粒子の含有量が前記ラジカル重合性化合物100質量部に対して3質量部以上50質量部以下であり、
ATR法によって得られる、前記ケイ素重合体粒子のFT-IRスペクトルにおいて、
1030cm-1~1070cm-1の範囲に最大ピークを有し、1015cm-1~1025cm-1の範囲における平均強度をA、1085cm-1~1095cm-1の範囲における平均強度をBとしたとき0.55≦A/B≦1.50を満たすことを特徴とする硬化性組成物。
(構成11)
前記FT-IRスペクトルが、1040cm-1~1055cm-1の範囲に最大ピークを有することを特徴とする構成10に記載の硬化性組成物。
(構成12)
前記AとBが、0.80≦A/B≦1.20を満たすことを特徴とする構成10または11に記載の硬化性組成物。
(構成13)
前記ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒子径が0.3μm以上5.0μm以下であることを特徴とする構成10乃至12のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
(構成14)
前記ケイ素重合体粒子の含有量が、樹脂100質量部に対して3質量部以上50質量部以下であることを特徴とする構成10乃至13のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
(構成15)
前記ケイ素重合体粒子が球状であることを特徴とする構成10乃至14のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
(構成16)
前記ラジカル重合性化合物が、多官能ラジカル重合性化合物(A)と、単官能ラジカル重合性化合物(B)とを含み、
前記多官能ラジカル重合性化合物(A)のエチレン性不飽和基当量が700g/eq以上7000g/eq以下であることを特徴とす構成10乃至15のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
(構成17)
前記多官能ラジカル重合性化合物(A)が、ポリエーテル構造、ポリエステル構造、ポリカーボネート構造のいずれかを有する、(メタ)アクリレート系化合物またはウレタン(メタ)アクリレート系化合物であることを特徴とする構成16に記載の硬化性組成物。
(構成18)
前記硬化剤が、光ラジカル重合開始剤を含むことを特徴とする、構成10乃至17のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
(製法1)
構成18に記載の硬化性組成物を所定の厚さに配置する工程と、
前記硬化性組成物に三次元モデルの形状データに応じて光を照射して硬化する工程と、を含むことを特徴とする成形体の製造方法。
(製法2)
さらにポストキュアーする工程を含むことを特徴とする製法1に記載の成形体の製造方法。

Claims (20)

  1. 樹脂と前記樹脂に分散したケイ素重合体粒子とを含む成形体であって、
    該ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下、かつ該ケイ素重合体粒子の含有量が前記樹脂100質量部に対して3質量部以上50質量部以下であり、
    ATR法によって得られる該ケイ素重合体粒子のFT-IRスペクトルにおいて、
    1030cm-1~1070cm-1の範囲に最大ピークを有し、1015cm-1~1025cm-1の範囲における平均強度をA、1085cm-1~1095cm-1の範囲における平均強度をBとしたとき、0.55≦A/B≦1.50を満たすことを特徴とする成形体。
  2. 前記FT-IRスペクトルが、1040cm-1~1055cm-1の範囲に最大ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の成形体。
  3. 前記AとBが、0.80≦A/B≦1.20を満たすことを特徴とする請求項1に記載の成形体。
  4. 前記ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒子径が0.3μm以上5.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
  5. 前記ケイ素重合体粒子の含有量が、樹脂100質量部に対して3質量部以上50質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
  6. 前記樹脂のヤング率が、1GPa以上5GPa以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成形体。
  7. 前記樹脂が、ポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群より選択されるいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成形体。
  8. 前記ケイ素重合体粒子が球状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成形体。
  9. 比摩耗量が0.4mm・N-1・Km-1以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成形体。
  10. ケイ素重合体粒子と、ラジカル重合性化合物と、硬化剤と、を含む硬化性組成物であって、
    前記ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径が0.1μm以上5.0μm以下、かつ前記ケイ素重合体粒子の含有量が前記ラジカル重合性化合物100質量部に対して3質量部以上50質量部以下であり、
    ATR法によって得られる、前記ケイ素重合体粒子のFT-IRスペクトルにおいて、
    1030cm-1~1070cm-1の範囲に最大ピークを有し、1015cm-1~1025cm-1の範囲における平均強度をA、1085cm-1~1095cm-1の範囲における平均強度をBとしたとき0.55≦A/B≦1.50を満たすことを特徴とする硬化性組成物。
  11. 前記FT-IRスペクトルが、1040cm-1~1055cm-1の範囲に最大ピークを有することを特徴とする請求項10に記載の硬化性組成物。
  12. 前記AとBが、0.80≦A/B≦1.20を満たすことを特徴とする請求項10に記載の硬化性組成物。
  13. 前記ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒子径が0.3μm以上5.0μm以下であることを特徴とする請求項10に記載の硬化性組成物。
  14. 前記ケイ素重合体粒子の含有量が、樹脂100質量部に対して5質量部以上40質量部以下であることを特徴とする請求項10に記載の硬化性組成物。
  15. 前記ケイ素重合体粒子が球状であることを特徴とする請求項10に記載の硬化性組成物。
  16. 前記ラジカル重合性化合物が、多官能ラジカル重合性化合物(A)と、単官能ラジカル重合性化合物(B)とを含み、
    前記多官能ラジカル重合性化合物(A)のエチレン性不飽和基当量が700g/eq以上7000g/eq以下であることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  17. 前記多官能ラジカル重合性化合物(A)が、ポリエーテル構造、ポリエステル構造、ポリカーボネート構造のいずれかを有する、(メタ)アクリレート系化合物またはウレタン(メタ)アクリレート系化合物であることを特徴とする請求項16に記載の硬化性組成物。
  18. 前記硬化剤が、光ラジカル重合開始剤を含むことを特徴とする、請求項10乃至15のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  19. 請求項18に記載の硬化性組成物を所定の厚さに配置する工程と、
    前記硬化性組成物に三次元モデルの形状データに応じて光を照射して硬化する工程と、を含むことを特徴とする成形体の製造方法。
  20. さらにポストキュアーする工程を含むことを特徴とする請求項19に記載の成形体の製造方法。
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