JP2024013930A - ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法 Download PDF

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啓一郎 深澤
Keiichiro Fukazawa
俊男 檜森
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Abstract

【課題】溶融安定性に優れたポリアリーレンスルフィド(PAS)及びその製造方法を提供すること。【解決手段】有機極性溶媒中で、ポリハロ芳香族化合物と、スルフィド化剤とを反応させて、少なくとも、PAS樹脂、アルカリ金属ハロゲン化物、カルボキシアルキルアミノ基含有化合物及び有機極性溶媒を含む粗反応混合物を得る工程、粗反応混合物から、固液分離により液相成分を除去して、少なくともPAS樹脂とアルカリ金属ハロゲン化物とカルボキシアルキルアミノ基含有化合物を含む混合物(A)を得る工程、前記混合物(A)に金属元素を含む化合物を添加して100~280℃の範囲で水洗する工程を有し、かつ、前記金属元素を含む化合物が、硫黄原子と溶解度積(Ksp)1.0×10-10以下の硫化物塩を形成する金属原子を含む塩である、PAS樹脂の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、PPS樹脂と略記する。)に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PAS樹脂と略記する。)は、成形品表面の結晶性に由来して、耐薬品性等に優れ、電気電子部品、自動車部品、給湯機部品、繊維、フィルム用途等に幅広く利用されている。しかしながら、PAS樹脂は、一般的に溶融安定性に乏しく、融点(約280℃)を超える高温環境において溶融成形される際に、特に滞留時の粘度変化が大きいという課題があった。そのため、特に滞留時間が長い傾向にある押出成形や繊維、フィルムの製造においては、成形加工性や得られる最終製品の品質向上の観点から、溶融安定性の向上が望まれている。
例えば、特許文献1においては、PAS単位1~99重量%とポリオルガノシロキサン単位99~1重量%を含むPASブロック共重合体、及びポリシロキサンを配合することによって溶融滞留安定性に優れたPAS樹脂組成物が開示されている。また、例えば、特許文献2においては、有機ニッケル化合物を溶融混合したPAS樹脂組成物が開示されている。しかしながら、これらは溶融安定性を向上させる必須成分によって、他に配合できる成分や、得られる樹脂組成物の性状が制限される可能性があった。よって、PAS樹脂そのものが有する溶融安定性を改善する方法が求められていた。
特開2018-53118号公報 特開2018-188610号公報
そこで本発明が解決しようとする課題は、溶融加工時におけるPAS樹脂の粘度変化を抑制し、溶融安定性に優れたPAS樹脂の製造方法を提供することにある。
本願発明者らは種々の検討を行った結果、PAS樹脂の洗浄工程において、金属元素を含有する化合物を添加して水洗することで、溶融安定性に優れたPAS樹脂を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、有機極性溶媒中で、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、又は、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを反応させて、少なくとも、PAS樹脂、アルカリ金属ハロゲン化物、下記構造式(1)で表される化合物(1)(以下、カルボキシアルキルアミノ基含有化合物と略記することがある)及び有機極性溶媒を含む粗反応混合物を得る工程(1)と、
前記粗反応混合物から、固液分離により液相成分を除去して、少なくともPAS樹脂とアルカリ金属ハロゲン化物とカルボキシアルキルアミノ基含有化合物を含む混合物(A)を得る工程(2)と、
前記混合物(A)に金属元素を含む化合物を添加して100~280℃の範囲で水洗する工程(3)とを有し、かつ、
前記金属塩が、硫黄原子と溶解度積(Ksp)1.0×10-10以下の硫化物塩を形成する金属原子を含む塩である、PAS樹脂の製造方法に関する。
Figure 2024013930000001
(式中、Arはハロゲン原子を有するアリール基であり、Rは水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基又はシクロヘキシル基を表し、Rは炭素原子数3~5のアルキレン基を、Xは水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)
本発明によれば、溶融安定性に優れたPAS樹脂の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。また、特定のパラメータについて、複数の上限値及び下限値が記載されている場合、これらの上限値及び下限値の内、任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。
本実施形態に係るPAS樹脂の製造方法は、
有機極性溶媒中で、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、又は、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを反応させて、少なくとも、PAS樹脂、アルカリ金属ハロゲン化物、カルボキシアルキルアミノ基含有化合物及び有機極性溶媒を含む粗反応混合物を得る工程(1)と、
前記粗反応混合物から、固液分離により液相成分を除去して、少なくともPAS樹脂とアルカリ金属ハロゲン化物とカルボキシアルキルアミノ基含有化合物を含む混合物(A)を得る工程(2)と、
前記混合物(A)に金属元素を含む化合物を添加して100~280℃の範囲で水洗する工程(3)とを有する。以下詳述する。
<工程(1)>
工程(1)は少なくとも、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを原料として、有機極性溶媒中で重合反応させて、PAS樹脂、アルカリ金属ハロゲン化物、カルボキシアルキルアミノ基含有化合物及び有機極性溶媒を含む粗反応混合物を得る工程である。
ここで、本発明においてポリハロ芳香族化合物としては、例えば、芳香族環に直接結合した2個以上のハロゲン原子を有するハロゲン化芳香族化合物であり、具体的には、p-ジクロルベンゼン、o-ジクロルベンゼン、m-ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、テトラクロルベンゼン、ジブロムベンゼン、ジヨードベンゼン、トリブロムベンゼン、ジブロムナフタレン、トリヨードベンゼン、ジクロルジフェニルベンゼン、ジブロムジフェニルベンゼン、ジクロルベンゾフェノン、ジブロムベンゾフェノン、ジクロルジフェニルエーテル、ジブロムジフェニルエーテル、ジクロルジフェニルスルフィド、ジブロムジフェニルスルフィド、ジクロルビフェニル、ジブロムビフェニル等のジハロ芳香族化合物及びこれらの混合物が挙げられ、これらの化合物をブロック共重合してもよい。これらの中でも好ましいのはジハロゲン化ベンゼン類であり、特に好ましいのはp-ジクロルベンゼンを80モル%以上含むものである。また、枝分かれ構造とすることによってPAS樹脂の粘度増大を図る目的で、1分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を分岐剤として所望に応じて用いてもよい。このようなポリハロ芳香族化合物としては、例えば、1,2,4-トリクロルベンゼン、1,3,5-トリクロルベンゼン、1,4,6-トリクロルナフタレン等が挙げられる。更に、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基等の活性水素を持つ官能基を有するポリハロ芳香族化合物を挙げることが出来、具体的には、2,6-ジクロルアニリン、2,5-ジクロルアニリン、2,4-ジクロルアニリン、2,3-ジクロルアニリン等のジハロアニリン類;2,3,4-トリクロルアニリン、2,3,5-トリクロルアニリン、2,4,6-トリクロルアニリン、3,4,5-トリクロルアニリン等のトリハロアニリン類;2,2’-ジアミノ-4,4’-ジクロルジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノ-2’,4-ジクロルジフェニルエーテル等のジハロアミノジフェニルエーテル類及びこれらの混合物においてアミノ基がチオール基やヒドロキシル基に置き換えられた化合物などが例示される。また、これらの活性水素含有ポリハロ芳香族化合物中の芳香族環を形成する炭素原子に結合した水素原子が他の不活性基、例えばアルキル基などの炭化水素基に置換している活性水素含有ポリハロ芳香族化合物も使用できる。
これらの各種活性水素含有ポリハロ芳香族化合物の中でも、好ましいのは活性水素含有ジハロ芳香族化合物であり、特に好ましいのはジクロルアニリンである。
ニトロ基を有するポリハロ芳香族化合物としては、例えば、2,4-ジニトロクロルベンゼン、2,5-ジクロルニトロベンゼン等のモノまたはジハロニトロベンゼン類;2-ニトロ-4,4’-ジクロルジフェニルエーテル等のジハロニトロジフェニルエーテル類;3,3’-ジニトロ-4,4’-ジクロルジフェニルスルホン等のジハロニトロジフェニルスルホン類;2,5-ジクロル-3-ニトロピリジン、2-クロル-3,5-ジニトロピリジン等のモノまたはジハロニトロピリジン類;あるいは各種ジハロニトロナフタレン類などが挙げられる。
また、本発明においては、アルカリ金属硫化物またはアルカリ水硫化物及びアルカリ金属水酸化物(以下、スルフィド化剤ということがある)を原料として用いる。
本発明において、前記アルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びこれらの混合物が含まれる。かかるアルカリ金属硫化物は、水和物あるいは水性混合物あるいは無水物として使用することができる。また、アルカリ金属硫化物はアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物との反応によっても導くことができる。尚、通常、アルカリ金属硫化物中に微量存在するアルカリ金属水硫化物、チオ硫酸アルカリ金属と反応させるために、少量のアルカリ金属水酸化物を加えても差し支えない。
また、前記アルカリ金属水硫化物としては、硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素ルビジウム、硫化水素セシウム及びこれらの混合物が含まれる。かかるアルカリ金属水硫化物は、水和物あるいは水性混合物あるいは無水物として使用することができる。
また、前記アルカリ金属水硫化物はアルカリ金属水酸化物と伴に用いる。当該アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられるが、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。これらの中でも、入手が容易なことから水酸化リチウムと水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。
本発明のPAS樹脂の製造方法は、原料として含水スルフィド化剤を用いることもでき、その場合、少なくとも非プロトン性極性溶媒の存在下で、含水スルフィド化剤を脱水する工程を経て、PAS樹脂の重合反応に供することが好ましい。また、非プロトン性極性溶媒の仕込み量が少ない場合、例えば、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、1モル未満の場合、ポリハロ芳香族化合物の存在下で、含水スルフィド化剤と、非プロトン性極性溶媒とを、脱水させることが好ましい。
含水スルフィド化剤の脱水工程は、少なくとも非プロトン性極性溶媒と、含水スルフィド化剤として含水アルカリ金属硫化物または含水アルカリ水硫化物及びアルカリ金属水酸化物を、蒸留装置が設けられた反応容器に仕込み、水が共沸により除去される温度、具体的には、300℃以下の範囲、好ましくは80~220℃の範囲、より好ましくは100~200℃の範囲にまで加熱して、蒸留により水を系外に排出することにより行う。脱水工程では、重合反応を行う系内の水分量が、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、5モル以下、より好ましくは、0.01~2.0モルの範囲となるまで脱水することが好ましい。
また、本発明において有機極性溶媒としては、ホルムアミド、アセトアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、ε-カプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、N-ジメチルプロピレン尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン酸などのアミド、尿素及びラクタム類;スルホラン、ジメチルスルホラン等のスルホラン類;ベンゾニトリル等のニトリル類;メチルフェニルケトン等のケトン類及びこれらの混合物を挙げることができ、これらの中でもN-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、ε-カプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、N-ジメチルプロピレン尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン酸の脂肪族系環状構造を有するアミドが好ましく、N-メチル-2-ピロリドンがさらに好ましい。
PAS重合工程におけるPAS樹脂の重合反応は、これらの有機極性溶媒の存在下、スルフィド化剤として上記アルカリ金属硫化物と、ポリハロ芳香族化合物とを反応させる。または、PAS樹脂の重合反応は、これらの有機極性溶媒の存在下、スルフィド化剤として上記アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物と、ポリハロ芳香族化合物とを反応させる。重合条件は一般に、温度200~330℃の範囲であり、圧力は重合溶媒及び重合モノマーであるポリハロ芳香族化合物を実質的に液相に保持するような範囲であるべきであり、一般には0.1~20MPaの範囲、好ましくは0.1~2MPaの範囲より選択される。ポリハロ芳香族化合物の仕込量は、前記スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、0.2モル~5.0モルの範囲、好ましくは0.8~1.3モルの範囲、さらに好ましくは0.9~1.1モルの範囲となるよう調製する。また、非プロトン性極性溶媒の仕込量は、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、1.0~6.0モルの範囲、好ましくは2.5~4.5モルの範囲となるよう調整する。なお、重合反応は少量の水の存在下に行うことが好ましく、その割合は、重合方法や得られるポリマーの分子量や生産性との兼ね合いで適宜調整することが好ましい。具体的には、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して2.0モル以下、好ましくは1.6モル以下の範囲となるよう脱水操作を行うが、さらにポリハロ芳香族化合物の存在下で脱水操作を行う場合(例えば、下記具体的態様における「5)」の方法)においては0.9モル以下、好ましくは0.05~0.3モル、より好ましくは0.01~0.02モル以下の範囲となるよう脱水操作を行えばよい。
上記した非プロトン性極性溶媒の存在下、スルフィド化剤とポリハロ芳香族化合物とを重合させる具体的態様としては、例えば、
1)アルカリ金属カルボン酸塩またはハロゲン化リチウム等の重合助剤を使用する方法、
2)芳香族ポリハロゲン化合物等の分岐剤を使用する方法、
3)少量の水の存在下に重合反応を行い次いで水を追加してさらに重合する方法、
4)アルカリ金属硫化物と芳香族ジハロゲン化合物との反応中に、反応釜の気相部分を冷却して反応釜内の気相の一部を凝縮させ液相に還流させる方法、
5)ポリハロ芳香族化合物の存在下、アルカリ金属硫化物、又は、含水アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物と、脂肪族環状構造を有するアミド、尿素またはラクタムとを、脱水させながら反応させて固形のアルカリ金属硫化物を含むスラリーを製造する工程、該スラリーを製造した後、更にNMPなどの極性有機溶媒を加え、水を留去して脱水を行う工程、次いで、脱水工程を経て得られたスラリー中で、ポリハロ芳香族化合物と、アルカリ金属水硫化物と、前記脂肪族環状構造を有するアミド、尿素またはラクタムの加水分解物のアルカリ金属塩とを、NMPなどの極性有機溶媒1モルに対して反応系内に現存する水分量が0.02モル以下で反応させて重合を行う工程を必須の製造工程として有するPAS樹脂の製造方法、が挙げられる。
このように、有機極性溶媒中で、ジハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを重合反応させることにより、生成物として、PAS樹脂が得られるが、それ以外に、PASオリゴマーも副生される。反応後に含まれる物質としては、その他に、例えば、アルカリ金属含有無機塩、カルボキシアルキルアミノ基含有化合物、末端SH基含有化合物などの副生成物や未反応原料、水が含まれていても良い。
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で得られた粗反応混合物から、固液分離により液相成分を除去して、少なくともPAS樹脂とアルカリ金属ハロゲン化物とカルボキシアルキルアミノ基含有化合物とを含む混合物(A)を得る工程する工程である。固液分離法は大きく分けて、後述するフラッシュ法とクウェンチ法の2種類があり、本発明で用いる固液分離法は特に限定されない。
フラッシュ法は、粗反応混合物中の溶媒を蒸発させて溶媒回収し、同時に固形物を回収する方法であり、一般的に、粗反応混合物を高温高圧の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ溶媒を留去及び回収すると同時にPAS樹脂を含む固形物を粉粒状にして回収する方法である。フラッシュ法の好ましい態様としては、重合工程で得られた高温高圧(通常250℃以上、0.8MPa以上)の重合反応物を常圧中の窒素または水蒸気などの雰囲気にノズルから噴出させる方法が挙げられる。フラッシュ法では、高温高圧状態から常圧状態に重合反応物をフラッシュしたときの溶媒の気化熱を利用して効率よく溶媒回収することができるが、フラッシュさせるときの内温が高いほど溶媒回収の効率が向上し生産性も良好となる。そのためフラッシュさせるときの重合系内の温度及び圧力を通常250℃以上、好ましくは255~280℃の温度範囲かつ0.8MPa以上、好ましくは1.0~5.0MPaの圧力範囲とする。この状態から、減圧下ないし常圧中にフラッシュさせるときの雰囲気温度は通常150~250℃の範囲であり、粗反応混合物からの溶媒回収が不足する場合は、フラッシュ後に150~250℃の雰囲気下で加熱を継続しても良い。
一方、クウェンチ法は、粗反応混合物を除冷して粒子状のPAS樹脂を回収する方法であり、一般的に、粗反応混合物を高温高圧の状態から徐々に冷却して反応系内のPAS樹脂を晶析させた後に、濾別等により固液分離することでPAS樹脂を含む固形分を顆粒として回収する方法である。冷却時間には特に制限は無いが、通常0.1℃/分~3℃/分が好ましい範囲である。また、徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要もなく、PAS樹脂の顆粒状物が晶析するまでは0.1℃/分~1℃/分の範囲とし、その後は1℃/分以上の速度で冷却する方法なども好ましい。最終的には70℃以上、好ましくは100℃以上かつ、200℃以下まで冷却し、その後、固液分離することでポリアリーレンスルフィ樹脂を含む固形分を回収することが好ましい。クウェンチ法における固液分離は、濾過やスクリューデカンター等の遠心分離機を用いて分離した後、得られた濾過残渣に直接水を加えスラリー化したのち、固液分離を繰り返し行う方法や、得られた濾過残渣を非酸化性雰囲気下で加熱して、残存する溶媒を除去する方法などが挙げられる。
<工程(3)>
工程(3)は前記混合物(A)に金属元素を含む化合物を添加して100~280℃の範囲で水洗する工程である。
本工程に用いる金属原子を含む化合物は、金属原子を含み、かつ、硫黄原子と溶解度積(Ksp)1.0×10-10以下の硫化物塩を形成する化合物であり、化合物の形態としては塩や錯体等が挙げられる。硫黄原子と溶解度積(Ksp)1.0×10-10以下の硫化物塩を形成するものであれば、化合物に含まれる金属種は特に限定されないが、例えば、銀、亜鉛、銅、マンガン、錫、カドミウム、水銀、鉄、ニッケル等が挙げられ、特に銀、亜鉛、銅が好ましい。これらの金属原子を含む化合物は単体で用いることも、1つ以上を組み合わせて用いることもできる。なお、硫化物塩の溶解度積(Ksp)は、水溶液中25℃における値である。
また、本工程に用いる金属原子を含む化合物は、水に溶解するものが好ましい。金属原子を含む化合物が水への溶解性を有する場合、前記混合物(A)を水洗する際に、PAS樹脂との十分な親和性が得られるため、得られるPAS樹脂が溶融安定性に優れる。
本工程における前記金属原子を含む化合物の添加量は、前記混合物(A))に含まれるPAS樹脂(理論収量)に対して、0.1μmol/g以上が好ましく、1μmol/g以上がより好ましく、10μmol/g以上がさらに好ましい。かかる範囲において、得られるPAS樹脂が溶融安定性に優れる。
また、本工程では、前記金属原子を含む化合物によって水酸化物塩や酸化物塩、錯塩等が形成されることを抑制する観点から、前記混合物(A)に予め酸や塩基を添加してpHを調整する工程を、工程(3-1)として有することもできる。この際に用いる酸や塩基については、本発明の効果を損ねなければ特に限定されず、公知のものを用いることができる。
本工程における前記混合物(A)のpHの調整範囲については、例えば、混合物(A)に含まれる水酸化物イオンと添加する金属イオンの濃度、あるいは、前記混合物(A)に金属原子を含む化合物を添加する温度における該金属イオンが形成する水酸化物塩の溶解度積(Ksp)を考慮して調節することが好ましい。例えば、25℃で前記混合物(A)に銀を含む化合物を添加する場合、水酸化銀(AgOH)の25℃におけるKspは1.9×10-8であるため、水酸化物イオン濃度と銀イオン濃度の積が1.9×10-8未満となるように、銀を含む化合物の添加量に基づいて、予め前記混合物(A)のpHを調節することが好ましい。具体的には、例えばpH11未満が好ましい。同様に、亜鉛を含む化合物を用いる場合には、水酸化亜鉛(Zn(OH))の25℃におけるKspが2.0×10-17であることから、水酸化物イオンの2乗と亜鉛イオン濃度の積が2.0×10-17未満となるように、亜鉛を含む化合物の添加量に基づいて、予め前記混合物(A)のpHを調節することが好ましい。具体的には、例えばpH8未満が好ましい。なお、本工程におけるpHは、25℃で測定した値である。また、水酸化物塩の溶解度積(Ksp)は、水溶液中25℃における値である。イオン濃度の単位はmol/Lである。
水洗の方法は、例えば、前記混合物(A)を圧力容器中において所定の圧力条件及び温度条件下に水で攪拌下に洗浄する方法が挙げられる。水洗における水の温度は、例えば、100~280℃の範囲であることが好ましい。100℃を超える温度で水洗工程を行うと前記カルボキシアルキルアミノ基含有化合物が除去されやすく、PAS樹脂に対し所定割合未満に除去される傾向にあり、一方、100℃未満では、カルボキシアルキルアミノ基含有化合物の除去効率が低くなり、また、アルカリ金属水硫化物やその酸化物、例えば硫黄原子(S)、その同素体、チオ硫酸アルカリ金属などの未反応物質やその誘導体の除去効率も低くなるため好ましくない。前記圧力条件としては、反応器内の気相圧力を0.2~4.6MPaの範囲とすることが好ましい。
水洗時の水量はPAS樹脂の質量に対して1.5倍~10倍であることが、前記アルカリ金属ハロゲン化物やカルボキシアルキルアミノ基含有化合物の抽出効率が良好となる点から好ましく、この量の熱水を2回以上に分けて熱水洗を行ってもよい。例えば、熱水洗を2回繰り返す場合、1回目の熱水洗と2回目の熱水洗の間にはろ過を行い、1回目の熱水洗で抽出したアルカリ金属ハロゲン化物及びカルボキシアルキルアミノ基含有化合物とPAS樹脂とを濾別することが好ましい。また、熱水洗を一回実施した後に濾過を行い、前記した水洗を実施しても良い。この操作によってもアルカリ金属ハロゲン化物及びカルボキシアルキルアミノ基含有化合物と、PAS樹脂との分離、除去がより促進されうる。また1回目の熱水洗工程と2回目の熱水洗工程の条件は前記の条件より任意に選ぶことができるものの、1回目の熱水洗工程の温度は例えば120℃~200℃の範囲にある温度に設定して、まず高アルカリ性の濾液を濾別して除去した後に、2回目の熱水洗工程の温度を1回目の熱水洗工程の温度より高い温度、例えば150℃~275℃の範囲にある温度に設定して実施することが前記熱水洗で用いられる装置の耐薬品性の観点から好ましい。
本工程においては、撹拌機を有する水洗槽及び固液分離するための遠心分離機を用いることも可能であるが、容器内部に撹拌翼を有し、且つ、底部に濾過用フィルターが配設された混合機能を有す容器内で行うこともできる。また、100℃を超える熱水洗でも、熱水洗を行う撹拌機を有する水洗槽、及び、その後の20~100℃でろ過するため、遠心分離機を用いることも可能であるが、容器内部に撹拌翼を有し、且つ、底部に濾過用フィルターが配設された密閉型あるいは密閉可能な混合機能を有す容器内で行うことも可能である。本発明において、熱水洗は連続的に行っても良いし、バッチ式に行ってもいずれでも良い。
本工程においては、圧力容器中においてPAS樹脂、カルボキシアルキルアミノ基含有化合物及び熱水を含むスラリーを攪拌することによって、PAS樹脂の粒子中に包含されているカルボキシアルキルアミノ基含有化合物を所定の濃度範囲になるまで除去ないし残留させるよう調整することが好ましい。
また、本工程では、前記混合物(A)に金属元素を含む化合物を添加する前に、予め上記記載の方法と同様の方法で前記混合物(A)を水洗することもできる。予め水洗することにより、前記混合物(A)にカルボキシアルキルアミノ基含有化合物の含有量が低減した状態で金属原子を含む化合物を添加することができる。これより、添加後の水洗時に混合物(A)のpHが酸性側である場合であっても、難水溶性のH型カルボキシアルキルアミノ基含有化合物の生成を低減でき、添加後の水洗において効率的にカルボキシアルキルアミノ基含有化合物の除去することができる。
本工程で前記混合物(A)を水洗浄することにより、前記カルボキシアルキルアミノ基含有化合物の少なくとも一部を、前記混合物(A)から除去する。本工程を経た前記混合物(A))は、カルボキシアルキルアミノ基含有化合物の含有量の割合が、前記混合物(A)に含まれるPAS樹脂に対して2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下の範囲である。
上記の工程を経て得られたPAS樹脂(A)を含む混合物は、その後、そのまま固液分離及び乾燥してPAS樹脂粉末として用いても良いし、更に洗浄処理した後、固液分離し、乾燥を行って粉末状ないし顆粒状のPAS樹脂として調製することもできる。さらに、得られた粉末状ないし顆粒状のPAS樹脂に熱処理を行い、架橋PAS樹脂とすることもできる。
上述した本発明の製造方法を経て得られたPAS樹脂は以下の特徴を有する。
(溶融安定性)
本発明の製造方法で得られたPAS樹脂は、溶融安定性に優れる。例えば、下記数式で表される粘度変化率αが25%以下の範囲である。かかる範囲において、樹脂は溶融時に増減粘が抑制されているといえ、溶融安定性に優れる。また、溶融安定性に優れる樹脂は、溶融成形中に粘度変化を抑えることができ、加工性に優れる。
α=|{(V30-V6)/V6}|×100
(ただし、式中、V6及びV30はそれぞれ、フローテスターを用いて、温度300℃、荷重1.96MPa、オリフィス長とオリフィス径との、前者/後者の比が10/1であるオリフィスを使用して6分間及び30分間保持した後の溶融粘度を表す。)
(ウエイトロス)
また、本発明の製造方法で得られたPAS樹脂は、溶融時に発生するガス量が抑制されたものである。例えば、下記数式で表されるウエイトロスが2.0wt%以下が好ましく、1.0wt%以下がより好ましい範囲である。かかる範囲において、樹脂を溶融した際の発生ガスに起因する成形性の悪化や成形品表面の汚染が抑制されるため好ましい。
ウエイトロス={(150℃加熱後の秤量値)-(370℃加熱後の秤量値)}÷(150℃加熱後の秤量値)×100
このような効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のメカニズムによるものと推測される。すなわち、PAS樹脂は溶融した際に、PAS樹脂の末端チオフェノーラートアニオン(Sアニオン)由来の求核攻撃により高分子鎖が切断され減粘を招くと考えられており、硫黄原子と親和性の高い金属原子を添加することによってこの求核攻撃が抑制されると推測する。具体的には、高分子鎖末端のSアニオンと金属原子との強固な相互作用が優先的に形成されることで、Sアニオンの求核性が低下すると考える。なお、上記メカニズムはあくまで推測のものであり、他の理由により本発明の効果が奏される場合であっても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明により得られたPAS樹脂は、従来と同様、充填剤や他の樹脂と配合して溶融混練後、直接または一旦ペレットに成形した後、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形のごとき各種溶融加工法により、耐熱性、成形加工性、寸法安定性等に優れた成形物にすることができる。しかしながら強度、耐熱性、寸法安定性等の性能をさらに改善するために、本発明の目的を損なわない範囲で各種充填材と組み合わせて使用することも可能である。充填材としては、繊維状充填材、無機充填材等が挙げられる。また、成形加工の際に添加剤として本発明の目的を逸脱しない範囲で少量の、離型剤、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃剤、滑剤、カップリング剤を含有せしめることができる。更に、同様に下記のごとき合成樹脂及びエラストマーを混合して使用できる。これら合成樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化エチレン、ポリ二弗化エチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等が挙げられ、エラストマーとしては、ポリオレフィン系ゴム、弗素ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
本発明のPAS樹脂またはそれを含む樹脂組成物を溶融成形してなる成形品は、従来の方法で得られるPAS樹脂同様耐熱性、寸法安定性等が優れるので、例えば、コネクタ・プリント基板・封止成形品などの電気・電子部品、ランプリフレクター・各種電装部品などの自動車部品、各種建築物や航空機・自動車などの内装用材料、あるいはOA機器部品・カメラ部品・時計部品などの精密部品等の射出成形・圧縮成形品、あるいは繊維・フィルム・シート・パイプなどの押出成形・引抜成形品等として幅広く利用可能である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
<評価>
(1)溶融粘度及び溶融安定性の評価
島津製作所製フローテスター「CFT-500D」を用い、300℃、荷重:20kgf/cm、L/D=10(mm)/1(mm)で6分間又は30分間保持後の溶融粘度を測定した。溶融安定性は、粘度変化率αにより比較した。粘度変化率α(%)は次式のように定義した。αがより小さい値の時、樹脂の粘度変化率が小さく、溶融安定性に優れることを示す。また、V6粘度は6分保持した際の溶融粘度、V30粘度は30分保持した際の溶融粘度を意味する。
α=|{(V30-V6)/V6}|×100
(2)ウエイトロスの定量
PPSの粉体試料を精密天秤にて4.0000gアルミ製シャーレに秤量した。150℃に設定された乾燥機内に試料を1時間静置した後、シャーレを取出して、室温まで放冷してから秤量した。次いで、同シャーレを、370℃に設定された乾燥機内に1時間静置した後、シャーレを取出して、室温まで放冷してから秤量した。次式より各試料のウエイトロス(wt%)を算出した。
ウエイトロス={(150℃加熱後の秤量値)-(370℃加熱後の秤量値)}÷(150℃加熱後の秤量値)×100
<実施例1~14、比較例1~7>
実施例(1-1) PPS製造
圧力計、温度計、コンデンサー、デカンター、精留塔を連結した撹拌翼付き2Lオートクレーブにp-ジクロロベンゼン(以下、p-DCBと略す)580.12g(3.95モル)、NMP39.65g(0.400モル)、47.23質量%NaSH水溶液474.78g(NaSHとして4.00モル)、及び49.21質量%NaOH水溶液322.31g(NaOHとして3.97モル)を仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で173℃まで5時間掛けて昇温して、水474.78gを留出させた後、釜を密閉した。脱水時に共沸により留出したDCBはデカンターで分離して、随時釜内に戻した。脱水終了後の釜内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がp-DCB中に分散した状態であった。上記脱水工程終了後に、内温を160℃に冷却し、NMP825.95kg(8.33モル)を仕込み、185℃まで昇温した。圧力が0.00MPaに到達した時点で、精留塔を連結したバルブを開放し、内温200℃まで1時間掛けて昇温した。この際、精留塔出口温度が110℃以下になる様に冷却とバルブ開度で制御した。留出したp-DCBと水の混合蒸気はコンデンサーで凝縮し、デカンターで分離して、p-DCBは釜へ戻した。留出水量は3.11gであった。内温200℃から230℃まで3時間掛けて昇温し、230℃で3時間撹拌した後、250℃まで昇温し、1時間撹拌した。最終圧力は0.30MPaであった。
実施例(1-2) 固液分離
冷却後に得られたスラリー1.76kgのうち、260gを分取した。スラリー中に含まれるNMPを、真空乾燥機で150℃、2時間減圧留去した。
実施例(1-3) 重金属添加
乾燥後の混合物に70℃のイオン交換水360gを加えて10分間攪拌した後にろ過し、ろ過後のケーキに70℃のイオン交換水480gを加えケーキ洗浄を行った。得られた含水ケーキとイオン交換水180gを0.5Lオートクレーブに仕込んだ。スラリーのpHは8.5であった。更に、PPS樹脂1gに対して10μmolの硝酸銀を添加して、オートクレーブを密閉し、スラリーを220℃で30分間攪拌した。オートクレーブを室温まで冷却、スラリーをろ過し、ろ過後のケーキに70℃のイオン交換水480gを加えケーキ洗浄を行った。その後、120℃で4時間乾燥し、PPS樹脂(1)を得た。結果を表1に示す。
実施例(2)
実施例(1-3)にて、硝酸銀の添加量を、PPS樹脂1gに対して20μmolに変更したこと以外は、実施例(1)と同様に行い、PPS樹脂(2)を得た。結果を表1に示す。
実施例(3)
実施例(1-3)にて、硝酸銀の添加量を、PPS樹脂1gに対して50μmolに変更したこと以外は、実施例(1)と同様に行い、PPS樹脂(3)を得た。結果を表1に示す。
実施例(4-1) PPS製造
実施例(1)と同様に行った。
実施例(4-2) 固液分離
実施例(1)と同様に行った。
実施例(4-3) 固液分離
乾燥後の混合物に70℃のイオン交換水360gを加えて10分間攪拌した後にろ過し、ろ過後のケーキに70℃のイオン交換水480gを加えケーキ洗浄を行った。得られた含水ケーキとイオン交換水180gを0.5Lオートクレーブに仕込んだ。オートクレーブを密閉し、スラリーを220℃で30分間攪拌した。室温まで冷却した後、ろ過し、ろ過後のケーキに70℃のイオン交換水480gを加えケーキ洗浄を行った。得られた含水ケーキ、イオン交換水180gを0.5Lオートクレーブに仕込んだ。スラリーのpHは8.5であった。更に、PPS樹脂1gに対して50μmolの硝酸銀を添加して、オートクレーブを密閉し、スラリーを220℃で30分間攪拌した。オートクレーブを室温まで冷却、スラリーをろ過し、ろ過後のケーキに70℃のイオン交換水480gを加えケーキ洗浄を行った。その後、120℃で4時間乾燥し、PPS樹脂(4)を得た。結果を表1に示す。
実施例(5)
実施例(4-3)にて、硝酸銀の添加量を、PPS樹脂1gに対して100μmolに変更したこと以外は、実施例(4)と同様に行い、PPS樹脂(5)を得た。結果を表1に示す。
実施例(6)
実施例(4-3)にて、硝酸銀の代わりに、PPS樹脂1gに対して50μmolの硝酸亜鉛を添加したこと以外は、実施例(4)と同様に行い、PPS樹脂(6)を得た。結果を表1に示す。
実施例(7)
実施例(4-3)にて、硝酸銀の代わりに、PPS樹脂1gに対して50μmolの塩化亜鉛を添加したこと以外は、実施例(4)と同様に行い、PPS樹脂(7)を得た。結果を表1に示す。
実施例(8)
実施例(4-3)にて、硝酸銀を添加する前のスラリーに硝酸を加えてpHを7.0に調整したこと以外は、実施例(4)と同様に行い、PPS樹脂(8)を得た。結果を表1に示す。
実施例(9)
実施例(6-3)にて、硝酸亜鉛を添加する前のスラリーに硝酸を加えてpHを7.0に調整したこと以外は、実施例(6)と同様に行い、PPS樹脂(9)を得た。結果を表1に示す。
実施例(10)
実施例(8-3)にて、硝酸銀の代わりに、PPS樹脂1gに対して50μmolの硝酸銅(II)を添加したこと以外は、実施例(8)と同様に行い、PPS樹脂(10)を得た。結果を表1に示す。
実施例(11-1) PPS製造
圧力計、温度計、コンデンサー、デカンター、精留塔を連結した撹拌翼付き2Lオートクレーブにp-DCB580.12g(3.95モル)、NMP39.65g(0.400モル)、47.23質量%NaSH水溶液474.78g(NaSHとして4.00モル)、及び49.21質量%NaOH水溶液322.31g(NaOHとして3.97モル)を仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で173℃まで5時間掛けて昇温して、水474.78gを留出させた後、釜を密閉した。脱水時に共沸により留出したDCBはデカンターで分離して、随時釜内に戻した。脱水終了後の釜内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がp-DCB中に分散した状態であった。上記脱水工程終了後に、内温を160℃に冷却し、NMP825.95kg(8.33モル)を仕込み、185℃まで昇温した。圧力が0.00MPaに到達した時点で、精留塔を連結したバルブを開放し、内温200℃まで1時間掛けて昇温した。この際、精留塔出口温度が110℃以下になる様に冷却とバルブ開度で制御した。留出したp-DCBと水の混合蒸気はコンデンサーで凝縮し、デカンターで分離して、p-DCBは釜へ戻した。留出水量は3.11gであった。内温200℃から230℃まで3時間掛けて昇温し、230℃で3時間撹拌した後、250℃まで昇温し、1時間撹拌した。最終圧力は0.30MPaであった。その後、3時間かけて120℃まで冷却してスラリーを得た。
実施例(11-2) 固液分離
得られたスラリー1.76kgのうち、260gを分取した。分取したスラリーを120℃に加温、ろ過し、スラリー中に含まれるNMPを留去した。
実施例(11-3) 重金属塩の添加
乾燥後の混合物に70℃のイオン交換水360gを加えて10分間攪拌した後にろ過し、ろ過後のケーキに70℃のイオン交換水480gを加えケーキ洗浄を行った。得られた含水ケーキとイオン交換水180gを0.5Lオートクレーブに仕込んだ。スラリーのpHは8.4であった。更に、PPS樹脂1gに対して10μmolの硝酸銀を添加して、オートクレーブを密閉し、スラリーを195℃で30分間攪拌した。オートクレーブを室温まで冷却、スラリーをろ過し、ろ過後のケーキに70℃のイオン交換水480gを加えケーキ洗浄を行った。その後、120℃で4時間乾燥し、PPS樹脂(11)を得た。結果を表2に示す。
実施例(12)
実施例(11-3)にて、硝酸銀の添加量を、PPS樹脂1gに対して50μmolに変更したこと以外は、実施例(11)と同様に行い、PPS樹脂(12)を得た。結果を表2に示す。
実施例(13-1) PPS製造
実施例(11)と同様に行った。
実施例(13-2) 固液分離
実施例(11)と同様に行った。
実施例(13-3) 固液分離
乾燥後の混合物に70℃のイオン交換水360gを加えて10分間攪拌した後にろ過し、ろ過後のケーキに70℃のイオン交換水480gを加えケーキ洗浄を行った。得られた含水ケーキとイオン交換水180gを0.5Lオートクレーブに仕込んだ。オートクレーブを密閉し、スラリーを220℃で30分間攪拌した。室温まで冷却した後、ろ過し、ろ過後のケーキに70℃のイオン交換水480gを加えケーキ洗浄を行った。得られた含水ケーキとイオン交換水180gを0.5Lオートクレーブに仕込んだ。スラリーのpHは8.5であった。更に、PPS樹脂1gに対して50μmolの硝酸銀を添加して、オートクレーブを密閉し、スラリーを220℃で30分間攪拌した。オートクレーブを室温まで冷却、スラリーをろ過し、ろ過後のケーキに70℃のイオン交換水480gを加えケーキ洗浄を行った。その後、120℃で4時間乾燥し、PPS樹脂(13)を得た。結果を表2に示す。
実施例(14)
実施例(13-3)にて、硝酸銀を添加する前のスラリーに硝酸を加えてpHを7.0に調整したこと以外は、実施例(13)と同様に行い、PPS樹脂(14)を得た。結果を表2に示す。
比較例(1)
実施例(1-3)にて、硝酸銀の代わりに、PPS樹脂1gに対して50μmolの硝酸ナトリウムを添加したこと以外は、実施例(1)と同様に行い、PPS樹脂(C1)を得た。結果を表3に示す。
比較例(2)
実施例(1-3)にて、硝酸銀の代わりに、PPS樹脂1gに対して50μmolの硝酸カルシウムを添加したこと以外は、実施例(1)と同様に行い、PPS樹脂(C2)を得た。結果を表3に示す。
比較例(3)
実施例(4-3)にて、硝酸銀の代わりに、PPS樹脂1gに対して50μmolの硝酸ナトリウムを添加したこと以外は、実施例(4)と同様に行い、PPS樹脂(C3)を得た。結果を表3に示す。
比較例(4)
実施例(1-3)にて、含水ケーキとイオン交換水のみ添加したこと以外は、実施例(1)と同様に行い、PPS樹脂(C4)を得た。結果を表3に示す。
比較例(5)
実施例(11-3)にて、硝酸銀の代わりに、PPS樹脂1gに対して50μmolの硝酸ナトリウムを添加したこと以外は、実施例(11)と同様に行い、PPS樹脂(C5)を得た。結果を表3に示す。
比較例(6)
実施例(13-3)にて、硝酸銀の代わりに、PPS樹脂1gに対して50μmolの硝酸ナトリウムを添加したこと以外は、実施例(13)と同様に行い、PPS樹脂(C6)を得た。結果を表3に示す。
比較例(7)
実施例(11-3)にて、含水ケーキとイオン交換水のみ添加したこと以外は、実施例(8)と同様に行い、PPS樹脂(C7)を得た。結果を表3に示す。
Figure 2024013930000002
Figure 2024013930000003
Figure 2024013930000004
以上の結果から、実施例の製造方法で得られたPAS樹脂は、比較例のPAS樹脂と対比して、粘度変化率及びウエイトロスが小さいことが認められ、溶融安定性に優れるPAS樹脂であることが示された。

Claims (5)

  1. 有機極性溶媒中で、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、又は、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを反応させて、少なくとも、ポリアリーレンスルフィド樹脂、アルカリ金属ハロゲン化物、下記構造式(1)で表される化合物(1)及び有機極性溶媒を含む粗反応混合物を得る工程(1)と、
    前記粗反応混合物から、固液分離により液相成分を除去して、少なくともポリアリーレンスルフィド樹脂とアルカリ金属ハロゲン化物と下記構造式(1)で表される化合物(1)を含む混合物(A)を得る工程(2)と、
    前記混合物(A)に金属元素を含む化合物を添加して100~280℃の範囲で水洗する工程(3)とを有し、かつ、
    前記金属塩が、硫黄原子と溶解度積(Ksp)1.0×10-10以下の硫化物塩を形成する金属原子を含む塩である、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
    Figure 2024013930000005
    (式中、Arはハロゲン原子を有するアリール基であり、Rは水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基又はシクロヘキシル基を表し、Rは炭素原子数3~5のアルキレン基を、Xは水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)
  2. 前記工程(3)で用いる金属元素を含む化合物の量が、前記混合物(A)中のポリアリーレンスルフィド樹脂に対して0.1μmol/g以上の範囲である、請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  3. 前記工程(3)で前記混合物(A)に金属元素を含む化合物を添加する前のスラリーのpHが11以下である、請求項1又は2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  4. 前記金属元素を含む化合物が、銀、亜鉛、及び、銅からなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を含むものである、請求項1又は2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  5. 前記混合物(A)に含まれる下記構造式(1)で表される化合物(1)の割合が2000ppm以下である、請求項1又は2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
    Figure 2024013930000006
    (式中、Arはハロゲン原子を有するアリール基であり、Rは水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基又はシクロヘキシル基を表し、Rは炭素原子数3~5のアルキレン基を、Xは水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)
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