JP2024013503A - 潤滑油組成物 - Google Patents

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Shingo Matsuki
麻里 飯野
Mari Iino
亜喜良 多田
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Toshiki Nakamura
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Abstract

【課題】絶縁性、酸化安定性および極圧性を高水準でバランスよく有するとともに、高度な銅腐食防止性を有することを可能とする潤滑油組成物を提供すること。【解決手段】(A)潤滑油基油、(B)極圧剤、(C)窒素含有無灰分散剤、および、(D)金属系清浄剤を含む潤滑油組成物であって;前記(B)成分は、特定の(B1)リン系極圧剤を含有するものであるとともに、(B2)硫黄含有極圧剤を含有しないか、あるいは、前記(B2)成分に由来する硫黄の含有量が特定量以下となるように前記(B2)成分を含有するものであり;前記(B1)成分に由来するリンの含有量が特定量以下であり;前記(D)成分がカルシウムスルホネート清浄剤であり;前記(B1)成分に由来するリンと、前記(C)成分に由来する窒素との質量比([リン]/[窒素])が特定の範囲にあり;前記(D)成分に由来するカルシウムの含有量が特定量以下であることを特徴とする潤滑油組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、潤滑油組成物に関する。
近年、温室効果ガスである二酸化炭素を排出しない電気自動車が注目されている。このような電気自動車は、通常、電動モーターを走行の動力源とし、かつ、変速機等の歯車(ギヤ)機構を備えている。このような電動モーターの冷却及び潤滑と、歯車機構の潤滑のために、従来は異なる潤滑油組成物を用いてきたが、潤滑油組成物の循環機構の簡略化のために、近年では同一の潤滑油組成物を利用することが提案されるようになってきた。特に、電気自動車が電動モーターと変速機とを一体とした構造を有するものである場合には、電動モーターと変速機の潤滑のために、同一の潤滑油組成物の使用が要求される。このような状況の下、電気自動車用の様々な潤滑油組成物の研究が進められてきた。
例えば、特開2019-137829号公報(特許文献1)には、(A)潤滑油基油、(B1)炭素数4~10のアルキル基を少なくとも1つ有する亜リン酸エステル又はそのアミン塩、(C)ホウ酸エステル、(D)硫黄系極圧剤、及び、(E)有機摩擦調整剤を含む潤滑油組成物であって、前記潤滑油組成物は100℃における動粘度が1.5~5mm/sであり、前記潤滑油組成物の質量に対する、リン含有量が310~1000ppmであり、ホウ素含有量が50~400ppmであり、及び、硫黄含有量が250~1000ppmである潤滑油組成物が開示されている。
また、特開2020-066673号公報(特許文献2)には、基油(A)、中性リン系化合物(B)、酸性リン系化合物(C)、硫黄系化合物(D)、並びに、金属スルホネート、金属サリシレート、及び金属フェネートから選ばれる金属塩(E)を含有する潤滑油組成物であって、酸性リン系化合物(C)のリン原子換算での含有量が前記潤滑油組成物の全量基準で10~180質量ppmであり、硫黄系化合物(D)の硫黄原子換算での含有量が前記潤滑油組成物の全量基準で10~1000質量ppmであり、金属塩(E)の金属原子換算での含有量が前記潤滑油組成物の全量基準で5~180質量ppmである潤滑油組成物が開示されている。
さらに、特開2021-066809号公報(特許文献3)においては、(A)潤滑油基油、(B)金属清浄剤、特定の(C)リン系極圧剤、(D)硫黄系極圧剤、特定の(E)無灰分散剤、及び、(F)重量平均分子量(Mw)10,000~100,000を有する粘度指数向上剤を含み、潤滑油組成物の40℃における動粘度が10mm/s超~20mm/sの範囲にあり、かつ、潤滑油組成物中のホウ素含有量が25~150質量ppmである潤滑油組成物が開示されている。
特開2019-137829号公報 特開2020-066673号公報 特開2021-066809号公報
しかしながら、電気自動車の電動モーターと変速機の潤滑には、高い絶縁性、高い酸化安定性、並びに、高度な極圧性(耐焼き付き性(耐荷重性)と摩耗防止性(耐摩耗性)を基準とする極圧性)を並立させることが必要であるが、上記特許文献1~3に記載されているような従来の潤滑油組成物では、絶縁性、酸化安定性および極圧性といった特性をいずれも高度なのものとするといった点で必ずしも十分なものではなかった。なお、近年では、より高いモーター出力を得るために、電動モーターはより高い電圧での使用が求められるとともに、ギヤやベアリングもより過酷な条件での使用が求められており、絶縁性、酸化安定性および極圧性を高い水準でバランスよく有する潤滑油組成物の出現が望まれている。また、電動モーターには材料として銅が使用されていることから、その潤滑や冷却に利用される潤滑油組成物には、銅に対する腐食防止性(銅腐食防止性)が高いことも求められる。
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、絶縁性、酸化安定性および極圧性を高水準でバランスよく有するとともに、高度な銅腐食防止性を有することを可能とする潤滑油組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、(A)潤滑油基油、(B)極圧剤、(C)窒素含有無灰分散剤、および、(D)金属系清浄剤を含む潤滑油組成物において;前記(B)成分を、(B1)リン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステルおよびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であるリン系極圧剤を含有するという条件、および、(B2)硫黄含有極圧剤を含有しないか、あるいは、前記(B2)成分に由来する硫黄の含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01質量%以下となるように前記(B2)成分を含有するという条件を満たすものとし;前記(B1)成分に由来するリンの含有量を前記潤滑油組成物の全量を基準として0.050質量%以下とし;前記(D)成分をカルシウムスルホネート清浄剤とし;前記(B1)成分に由来するリンと、前記(C)成分に由来する窒素との質量比([リン]/[窒素])を0.60以上2.30以下とし;前記(D)成分に由来するカルシウムの含有量を前記潤滑油組成物の全量を基準として200質量ppm以下とすることにより、得られる潤滑油組成物を、絶縁性、酸化安定性および極圧性を高水準でバランスよく有するものとすることが可能となるとともに高度な銅腐食防止性を有するものとすることが可能なものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を提供する。
[1](A)潤滑油基油、
(B)極圧剤、
(C)窒素含有無灰分散剤、および、
(D)金属系清浄剤
を含む潤滑油組成物であって、
前記(B)成分は、
(B1)リン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステルおよびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であるリン系極圧剤を含有し、かつ、
(B2)硫黄含有極圧剤を含有しないか、あるいは、前記(B2)成分に由来する硫黄の含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01質量%以下となるように前記(B2)成分を含有するものであり、
前記(B1)成分に由来するリンの含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として0.050質量%以下であり、
前記(D)成分がカルシウムスルホネート清浄剤であり、
前記(B1)成分に由来するリンと、前記(C)成分に由来する窒素との質量比([リン]/[窒素])が0.60以上2.30以下であり、
前記(D)成分に由来するカルシウムの含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として200質量ppm以下である、潤滑油組成物。
[2]前記潤滑油基油は水素化精製基油及びワックス異性化基油からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、かつ、前記潤滑油基油の40℃における動粘度が20mm/s以下である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[3]前記(B2)成分に由来する硫黄と、前記(B1)成分に由来するリンの質量比([硫黄]/[リン])が3.0以下である、[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物。
[4]前記(B1)成分が、(B1-1)リン酸エステルのアルキルアミン塩を含むものである、[1]~[3]のうちのいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
[5]変速機の潤滑用、並びに、電動モーターの冷却及び潤滑用の組成物である、[1]~[4]のうちのいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
本発明によれば、絶縁性、酸化安定性および極圧性を高水準でバランスよく有するとともに、高度な銅腐食防止性を有することを可能とする潤滑油組成物を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断らない限り、数値X及びYについて「X~Y」という表記は「X以上Y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Xにも適用されるものとする。
本発明の潤滑油組成物は、
(A)潤滑油基油、
(B)極圧剤、
(C)窒素含有無灰分散剤、および、
(D)金属系清浄剤
を含む潤滑油組成物であって、
前記(B)成分は、
(B1)リン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステルおよびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であるリン系極圧剤を含有し、かつ、
(B2)硫黄含有極圧剤を含有しないか、あるいは、前記(B2)成分に由来する硫黄の含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01質量%以下となるように前記(B2)成分を含有するものであり、
前記(B1)成分に由来するリンの含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として0.050質量%以下であり、
前記(D)成分がカルシウムスルホネート清浄剤であり、
前記(B1)成分に由来するリンと、前記(C)成分に由来する窒素との質量比([リン]/[窒素])が0.60以上2.30以下であり、
前記(D)成分に由来するカルシウムの含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として200質量ppm以下であること、
を特徴とするものである。
〔(A)成分:潤滑油基油〕
本発明の潤滑油組成物は、(A)成分として潤滑油基油を含有する。このような(A)成分として利用する潤滑油基油としては、特に制限されず、公知の潤滑油基油(鉱油系基油、合成系基油、または、それらの混合基油等)を利用でき、例えば、国際公開第2020/095968号に記載されている潤滑油基油等を適宜利用できる。なお、(A)成分として利用する潤滑油基油は、1種の基油からなるものであってもよく、あるいは、2種以上の基油を含む混合基油であってもよい。
また、(A)成分として利用する潤滑油基油としては、API(アメリカ石油協会:American Petroleum Institute)による基油の分類において、グループII基油、グループIII基油、グループIV基油及びグループV基油から選択される少なくとも1種を好適に利用でき、中でも、酸化安定性、耐腐食性および絶縁性(体積抵抗率)の点でより高い効果を得ることが可能となるといった観点、並びに、電気自動車の低電費性の向上を図ることが可能となる観点から、グループII基油またはグループIII基油がより好ましい(なお、以下、APIによる基油分類のグループを単に「APIグループ」と称する)。
また、(A)成分として利用する潤滑油基油としては、鉱油系基油が好ましい。このような鉱油系基油としては、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られる、パラフィン系またはナフテン系などの鉱油系基油を好適なものとして挙げることができる。また、このような鉱油系基油の中でも、酸化安定性、耐腐食性、絶縁性(体積抵抗率)および低電費性の点でより高い効果を得ることが可能となるといった観点から、(A)成分としては、水素化精製基油、ワックス異性化基油が特に好ましい。なお、これらの鉱油系基油は1種を単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
さらに、(A)成分として使用される潤滑油基油(2種以上の基油を含む混合基油である場合には、その混合基油)の40℃における動粘度は、20mm/s以下であることが好ましく、5~18mm/sであることがより好ましく、8~12mm/sであることがさらに好ましい。潤滑油基油の40℃における動粘度を前記上限値以下とすることにより、前記上限値を超えた場合と比較して、低温粘度特性と省燃費性能の点でより高い性能(効果)を得ることが可能になる。また、潤滑油基油の40℃における動粘度を前記下限値以上とすることにより、下限値未満の場合と比較して、潤滑箇所での油膜形成性能がより高くなり、耐焼き付き性および摩耗防止性を基準とした極圧性をさらに向上させることが可能となるとともに、新油の電気絶縁性をより高めることも可能になる。なお、本明細書において、基油や組成物の40℃又は100℃における動粘度は、JIS K 2283-2000に規定される各温度(40℃又100℃)での動粘度を意味する。
また、(A)成分として使用される潤滑油基油(2種以上の基油を含む混合基油である場合には、その混合基油)の100℃における動粘度は、2.0~4.0mm/sであることが好ましく、2.0~2.7mm/sであることがより好ましい。潤滑油基油の100℃における動粘度を前記上限値以下とすることにより、前記上限値を超えた場合と比較して、低温粘度特性と省燃費性能の点でより高い性能(効果)を得ることが可能になる。また、潤滑油基油の100℃における動粘度を前記下限値以上とすることにより、下限値未満の場合と比較して、潤滑箇所での油膜形成性能がより高くなり、耐焼き付き性および摩耗防止性を基準とした極圧性をより向上させることが可能となり、更には新油の電気絶縁性をより高めることも可能になる。
また、(A)成分として使用される潤滑油基油(2種以上の基油を含む混合基油である場合には、その混合基油)の粘度指数は、95以上であることが好ましく、120以上であることがより好ましい。潤滑油基油の粘度指数を前記下限値以上とすることにより、潤滑油組成物の粘度-温度特性および熱・酸化安定性を向上させて、摩擦係数をさらに低減させることが可能となるとともに、耐摩耗性をより向上させることが可能となる。また、(A)成分の粘度指数は、中でも、省燃費性能の観点でより高い効果が得られることから、120~160であることがより好ましい。なお、本明細書において、基油や組成物の「粘度指数」は、JIS K 2283-2000に準拠して測定された粘度指数を意味する。
また、(A)成分として使用される潤滑油基油(2種以上の基油を含む混合基油である場合には、その混合基油)の硫黄の含有量は10質量ppm以下(より好ましくは8質量ppm以下、更に好ましくは5質量ppm以下、特に好ましくは4質量ppm以下)であることが好ましい。このような硫黄の含有量が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して酸化安定性をさらに向上させることが可能となる。
さらに、(A)成分として使用される潤滑油基油(2種以上の基油を含む混合基油である場合には、その混合基油)の流動点は、特に制限されるものではないが、-12℃以下であることが好ましい。このような流動点が前記上限以下である場合には前記上限を超えた場合と比較して、最終的に得られる潤滑油組成物の低温流動性をより向上させることが可能となる。また、このような流動点は、粘度指数をより高いものとすることが可能となるといった観点からは、-22℃以下であることがより好ましい。なお、本明細書において「流動点」とは、JIS K 2269-1987に準拠して測定された流動点を意味する。
さらに、(A)成分として使用される潤滑油基油(2種以上の基油を含む混合基油である場合には、その混合基油)の引火点は、160℃以上(更に好ましくは190℃以上)であることが好ましい。また、このような引火点を前記下限以上とすることで前記下限未満の場合と比較して、高温使用時の安全性がより向上する傾向にある。なお、本明細書において「引火点」とは、JIS K 2265-4-2007(クリーブランド開放法)に準拠して測定される引火点を意味する。
〔(B)成分:極圧剤〕
本発明の潤滑油組成物は、(B)成分として極圧剤を含有する。このような(B)成分として使用される極圧剤は、
(B1)リン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステルおよびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であるリン系極圧剤を含有し、かつ、
(B2)硫黄含有極圧剤を含有しないか、あるいは、前記(B2)成分に由来する硫黄の含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01質量%以下となるように前記(B2)成分を含有するものである。すなわち、(B)成分としての極圧剤は、
前記(B1)成分を含有するという条件;および、
前記(B2)成分を含有しないか、あるいは、前記(B2)成分に由来する硫黄の含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01質量%以下となるように前記(B2)成分を含有するという条件;
の双方を満たすものである。
このように、前記(B)成分は前記(B1)成分を必須成分として含有するが、前記(B1)成分を利用することによって、硫黄含有極圧剤((B2)成分)を利用しないかあるいは硫黄含有極圧剤((B2)成分)の使用量を微小量(硫黄の量が潤滑油組成物の全量を基準として0.01質量%以下となるような量)としても、高度な耐荷重性能および耐摩耗性能を発揮することが可能となり、更に、より効率よく絶縁性を高度なものとすることも可能となる。
このような(B1)成分として使用されるリン系極圧剤は、リン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステルおよびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。なお、ここにいう「リン系極圧剤」は硫黄原子を含有するリン系極圧剤(いわゆる「硫黄‐リン系極圧剤」)を除いたものである(本明細書において、硫黄原子を含有するリン系極圧剤は、後述の硫黄含有極圧剤に相当する)。
このような(B1)成分に利用可能なリン酸エステルとしては、特に制限されず、極圧剤として利用可能な公知のものを適宜利用できる。なお、ここにいう「リン酸エステル」は、酸性リン酸エステルを含む概念である。すなわち、このようなリン酸エステルとしては、例えば、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の他、いわゆる酸性リン酸エステル(例えばモノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート等のモノアルキルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等のジアルキルアシッドホスフェート)を挙げることができる。
また、(B1)成分に利用可能な亜リン酸エステルとしては、特に制限されず、極圧剤として利用可能な公知のものを適宜利用でき、例えば、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、モノラウリルハイドロゲンホスファイト、モノオレイルハイドゲンホスファイト、モノステアリルハイドロゲンホスファイト、モノフェニルハイドロゲンホスファイト、ジブチルハイドロゲンホスファイト、ジヘキシルハイドロジェンホスファイト、ジヘプチルハイドロジェンホスファイト、ジn-オクチルハイドロジェンホスファイト、ジエチルヘキシルハイドロジェンホスファイトなどを挙げることができる。このような亜リン酸エステルとしては、耐焼き付き性および耐摩耗性の更なる向上の観点から、中でも、アルキル基を2つ有するジアルキルハイドロゲンホスファイトが好ましく、炭素数4~12のアルキル基を2つ有するジアルキルハイドロゲンホスファイトがより好ましい。
また、(B1)成分に利用可能なリン酸の塩、リン酸エステルの塩及び亜リン酸エステルの塩としては、極圧剤として利用可能な公知のものを適宜利用でき、特に制限されないが、例えば、リン酸、リン酸エステル、又は、亜リン酸エステルに;金属塩基、又は、アンモニア、炭素数1~8の炭化水素基、もしくは、ヒドロキシ基含有炭化水素基のみを分子中に含有するアミン化合物等の含窒素化合物;を作用させることにより、残存する酸性水素の一部または全部を中和した塩を挙げることができる。
また、前記リン系極圧剤((B1)成分)は、(B1-1)リン酸エステルのアルキルアミン塩を含有するものであることが好ましい。このような(B1-1)成分としては、特に制限されず、極圧剤として利用可能な公知のリン酸エステルのアルキルアミン塩を適宜利用できる。このようなリン酸エステルのアルキルアミン塩としては、リン酸エステルに、アルキル基を分子中に有するアミン化合物を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩(リン酸エステルと前記アミン化合物との塩(反応物))を好適に利用できる。
また、このような(B1-1)成分を形成するために使用するリン酸エステルとしては、前述のリン酸エステルを適宜利用でき、特に制限されるものではないが、中でも、酸性リン酸エステルが好ましく、モノアルキルアシッドホスフェートおよび/またはジアルキルアシッドホスフェートがより好ましい。
このようなモノアルキルアシッドホスフェートおよびジアルキルアシッドホスフェートとしては、下記式(1):
[式(1)中、Rは炭素数2~22(より好ましくは8~18)の炭化水素基(より好ましくはアルキル基)であり、nは1又は2の整数である。]
で表される化合物であることが好ましい。すなわち、前記(B1-1)成分を形成するために使用するリン酸エステルとしては、前記式(1)で表される化合物を利用することが好ましい。
また、リン酸エステルのアルキルアミン塩を形成するために使用するアミン化合物としては、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミンを好適に利用できる。このようなアミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、テトラコシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオレイルアミン、ジテトラコシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリヘプタデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリオレイルアミン、トリテトラコシルアミンが挙げられる。このようなアミン化合物は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなアミン化合物としては、下記式(2):
[式(2)中、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は1価のアルキル基である(ただし、R、R及びRのうちの少なくとも1つは1価のアルキル基である)。]
で表される化合物であることが好ましい。なお、前記式(2)中のR、R及びRとして選択され得る1価のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、このような1価のアルキル基の炭素数は特に制限されないが、1以上、3以上、5以上、7以上、9以上、又は11以上であってよく、20以下、18以下、16以下、又は14以下であってよい。なお、このような式(2)中で表される化合物は、モノアルキルアミン(式(2)中のR、R及びRのうちの1つが1価のアルキル基(特に好ましくは炭素数が8以上18以下のアルキル基)であり、それ以外のものが水素原子である化合物)、及び/又は、ジアルキルアミン(式(2)中のR、R及びRのうちの2つが1価のアルキル基(特に好ましくは炭素数が8以上18以下のアルキル基)であり、それ以外のものが水素原子である化合物)であることが好ましい。
また、前記(B1-1)成分としては、耐摩耗性、耐焼き付き性、絶縁性(体積抵抗率)、及び、酸化安定性の点でより高い効果が得られるといった観点から、前記式(1)で表される化合物と、前記式(2)で表される化合物との塩であることが好ましい。また、前記(B1-1)成分は1種を単独で、あるいは、2種以上を混合して利用することができる。
また、前記リン系極圧剤((B1)成分)としては、
前記(B1-1)成分と、
リン酸、前記リン酸エステル、前記亜リン酸エステルおよびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる、前記(B1-1)成分以外の成分(以下、便宜上、「(B1-2)成分」と称する)と、
の混合物がより好ましい。このような混合物中に含有させる前記(B1-2)成分としては、耐摩耗性、耐焼き付き性、絶縁性(体積抵抗率)、酸化安定性の点でより高い効果が得られるといった観点から、中でも、亜リン酸エステルであることがより好ましい。すなわち、前記(B1)成分としては、(B1-1)リン酸エステルのアルキルアミン塩と、亜リン酸エステルとの混合物を用いることが好ましい。
また、前記(B1)成分が前記(B1-1)成分と、前記(B1-2)成分との混合物である場合、前記(B1-1)成分に由来するリンと、前記(B1-2)成分に由来するリンとの質量比([(B1-1)成分由来のP]/[(B1-2)成分由来のP])は0.4~2.5(より好ましくは0.4~2.0)であることが好ましい。このようなリンの質量比が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して耐焼き付き性の点でより高い効果を得ることが可能となり、他方、前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して電気絶縁性の点で更に高い効果を得ることが可能となる。
また、前記(B)成分は、(B2)硫黄含有極圧剤を含有しないか、あるいは前記(B2)成分に由来する硫黄の含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01質量%(100質量ppm)以下となるように前記(B2)成分を含有するものである。
ここで、前記(B)成分が前記硫黄含有極圧剤((B2)成分)を含有する場合、その硫黄含有極圧剤としては、特に制限されず、硫黄を含有する公知の極圧剤を適宜利用できる。このような硫黄含有極圧剤としては、例えば、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、ジサルファイド、ポリサルファイド、硫化オレフィン、硫化油脂等の硫黄系極圧剤;チオ亜リン酸エステル類(チオホスファイト)、ジチオ亜リン酸エステル類(ジチオホスファイト)、トリチオ亜リン酸エステル類(トリチオホスファイト)、チオリン酸エステル類(チオホスフェート)、ジチオリン酸エステル類(ジチオホスフェート)、トリチオリン酸エステル類(トリチオホスフェート)、これらのアミン塩、これらの誘導体等の硫黄-リン系極圧剤;等を挙げることができる。
前記(B)成分が前記硫黄含有極圧剤((B2)成分)を含有する場合、前記(B2)成分に由来する硫黄の含有量は、前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01質量%(100質量ppm)以下(より好ましくは80質量ppm以下、更に好ましくは60質量ppm以下、特に好ましくは50質量ppm以下、最も好ましくは20質量ppm以下)である必要がある。このような(B2)成分の含有量が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して高度な酸化安定性と、高度な銅腐食防止性とを得ることが可能となる。なお、銅腐食防止性と絶縁性(体積抵抗率の値)の更なる向上の観点からは、前記(B)成分は(B2)硫黄含有極圧剤を含有しないものであることが好ましい。
また、このような(B)成分を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜利用できる。また、このような(B)成分としては市販品を利用してもよい。
〔(C)成分:窒素含有無灰分散剤〕
本発明の潤滑油組成物は、(C)成分として窒素含有無灰分散剤(窒素を含有する無灰分散剤)を含有する。
このような(C)成分としては、特に制限されず、窒素を含有する無灰分散剤として公知のものを適宜利用できる。また、このような(C)成分は、耐腐食性能および酸化安定性能の更なる向上の観点から、窒素を含む官能基を分散基とする無灰分散剤であることがより好ましい。
このような窒素を含む官能基を分散基とする無灰分散剤としては、例えば、炭素数40~400の炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基)を有する、コハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン、これらの誘導体等を好適なものとして例示できる。
また、前記(C)成分としては、特に制限されないが、耐腐食性能および酸化安定性能の更なる向上の観点から、炭素数40~400の炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基)を有するコハク酸イミド、及び、前記コハク酸イミドの誘導体(コハク酸イミドの変性化合物)よりなる群から選択される少なくとも1種のコハク酸イミド系無灰分散剤であることがより好ましい。
また、このような炭素数40~400の炭化水素基を有するコハク酸イミドとしては、特に制限されるものではないが、下記式(3)及び(4):
[式(3)および(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数40~400(より好ましくは60~350)のアルキル基又は炭素数40~400(より好ましくは60~350)のアルケニル基を示し、nは0~5の整数を示す。]
で表される化合物であることが好ましい。なお、このような式(3)および(4)において、Rとして選択され得るアルキル基又はアルケニル基、および、Rとして選択され得るアルキル基又はアルケニル基としては、いずれも、ポリイソブチレンと呼ばれるイソブテンのオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基またはアルケニル基(ポリイソブテニル基)や、ポリブテニル基であることがより好ましい。また、このようなRおよびRとして選択され得るアルキル基又はアルケニル基は、いずれも重量平均分子量が800~1500(より好ましくは950~1400)であることが好ましい。また、式(3)中のnは1~5(より好ましくは2~4)の整数であることが好ましい。他方、式(4)中のnは0~4(より好ましくは1~4、更に好ましくは1~3)の整数であることが好ましい。また、このような式(3)~(4)で表される化合物の中でも、耐腐食性能および酸化安定性能の更なる向上の観点からは、式(4)で表される化合物(ビス体)がより好ましい。なお、このようなコハク酸イミドを製造するための方法は、特に制限されるものではなく、例えば、炭素数40~400のアルキル若しくはアルケニル基を有するアルキルコハク酸、アルケニルコハク酸およびそれらの無水物からなる群から選択される少なくとも1種と、ポリアミンとの反応により上記コハク酸イミドを縮合反応生成物として製造する方法を採用してもよい。
また、前記コハク酸イミドの誘導体(コハク酸イミドの変性化合物)としては、特に制限されず、無灰分散剤として利用可能な公知のコハク酸イミドの変性化合物を適宜利用でき、例えば、(i)含酸素有機化合物による変性化合物(脂肪酸等の炭素数1~30のモノカルボン酸、炭素数2~30のポリカルボン酸(例えばシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)、これらの酸の無水物、これらの酸のエステル化合物、炭素数2~6のアルキレンオキサイド、及び、ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネートからなる少なくとも1種を、前記コハク酸イミドと作用させて、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部を中和またはアミド化した化合物);(ii)ホウ素変性化合物(前記コハク酸イミドにホウ酸を作用させることにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化された化合物(いわゆるホウ素化コハク酸イミド));(iii)リン酸変性化合物(前記コハク酸イミドにリン酸を作用させることにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化された化合物)等を挙げることができる。
また、前記(C)成分として好適な「コハク酸イミド系無灰分散剤」としては、中でも、耐腐食性能および酸化安定性能の更なる向上の観点から、前記コハク酸イミドのホウ素変性化合物(ホウ素化コハク酸イミド)がより好ましい。
前記(C)成分として好適な「コハク酸イミド系無灰分散剤」としては、そのコハク酸イミド系無灰分散剤中の窒素の含有量が1.0~4.8質量%(より好ましくは1.2~2.4質量%)のものであることが好ましい。このような窒素の含有量を前記範囲内とすることで、より効率よく耐腐食性能および酸化安定性能を高い水準のものとすることが可能となる。また、前記コハク酸イミド系無灰分散剤として「ホウ素化コハク酸イミド」を利用する場合、そのホウ素化コハク酸イミド中のホウ素の含有量は0.01~5.0質量%(より好ましくは0.2~2.2質量%)であることが好ましい。
また、前記(C)成分として好適な「コハク酸イミド系無灰分散剤」としては、重量平均分子量が1000~9000(より好ましく1000~5000)のものがより好ましい。コハク酸イミド系無灰分散剤の重量平均分子量が上記下限値以上であることにより、新油の電気絶縁性、および、酸化劣化後の組成物の電気絶縁性をさらに高めることが可能になる。またコハク酸イミド系無灰分散剤の重量平均分子量が上記上限値以下であることにより、酸化劣化後の組成物の電気絶縁性をさらに高めることが可能になる。
さらに、前記(C)成分として好適な「コハク酸イミド系無灰分散剤」としては、全塩基価(TBN)が20~80mgKOH/g(より好ましく30~60mgKOH/g)のものが好ましい。全塩基価の値が前記範囲内にある場合には、耐腐食性および酸化安定性の点で更に高い効果が得られる傾向にある。
また、このような(C)成分を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜利用できる。また、このような(C)成分としては市販品を利用してもよい。
〔(D)成分:金属系清浄剤〕
本発明の潤滑油組成物は、(D)成分として金属系清浄剤を含有する。また、本発明においては、前記(D)成分として利用する金属系清浄剤は、カルシウムスルホネート清浄剤である。
このようなカルシウムスルホネート清浄剤((D)成分)としては、例えば、アルキル芳香族スルホン酸のカルシウム塩であるカルシウムスルホネート、前記カルシウムスルホネートの塩基性塩、前記カルシウムスルホネートの過塩基性塩を挙げることができる。このようなアルキル芳香族スルホン酸としては、例えば、いわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸が挙げられる。ここでいう石油スルホン酸としては、鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものや、ホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が挙げられる。また、合成スルホン酸の一例としては、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントにおける副生成物を回収すること、もしくは、ベンゼンをポリオレフィンでアルキル化することにより得られる、直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したものを挙げることができる。合成スルホン酸の他の一例としては、ジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したものを挙げることができる。また、これらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては、特に制限はなく、例えば発煙硫酸や無水硫酸を用いることができる。また、このようなアルキル芳香族スルホン酸の重量平均分子量は好ましくは300~1500であり、より好ましくは400~1300である。また、前記カルシウムスルホネートの塩基性塩や過塩基性塩としては、特に制限されず、公知のものを適宜利用でき、例えば、炭酸カルシウムやホウ酸カルシウム等で(過)塩基化されたカルシウムスルホネートを挙げることができる。なお、塩基性塩や過塩基性塩の調製方法は特に制限されず、公知の方法を適宜利用できる(過塩基性塩が炭酸カルシウムで過塩基化されたカルシウムスルホネートである場合、例えば、炭酸ガスの存在下でカルシウムスルホネートを水酸化カルシウム等の塩基と反応させることにより、炭酸カルシウムで過塩基化されたカルシウムスルホネートを得る方法を採用してもよい)。
また、このような(D)成分としては、全塩基価(TBN)が20~450mgKOH/g(より好ましく300~450mgKOH/g)のものが好ましい。全塩基価の値が前記範囲内にある場合には、酸化安定性の点で更に高い効果が得られる傾向にある。
また、このような(D)成分を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜利用できる。また、このような(D)成分としては市販品を利用してもよい。
〔潤滑油組成物の組成について〕
本発明の潤滑油組成物は、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、および、前記(D)成分を含有するものである。なお、前記(B)成分は、前述のように、(B1)成分(リン系極圧剤)を必須成分として含有する。
また、本発明の潤滑油組成物においては、前記(B1)成分に由来するリン(P)の含有量(前記(B1)成分に由来するリン(P)の総量)は、前記潤滑油組成物の全量を基準として0.050質量%以下(より好ましくは0.045質量%以下、更に好ましくは190~410質量ppm、特に好ましくは190~380質量ppm)である必要がある。このような(B1)成分に由来するリンの含有量が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して体積抵抗率の高い組成物を得ることが可能となる。なお、前記(B1)成分に由来するリンの含有量が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して耐焼付き性、耐摩耗性をより向上させることが可能となる。
また、本発明の潤滑油組成物が硫黄含有極圧剤((B2)成分)を含み、かつ、その(B2)成分がリンを含む場合、(B2)成分に由来するリンの量が前記潤滑油組成物の全量を基準として100質量ppm以下(より好ましくは80質量ppm以下)であることが好ましい。このような(B2)成分に由来するリンの量を前記上限以下とすることで、酸化安定性と耐腐食性をより高くすることが可能となる。
さらに、本発明の潤滑油組成物においては、前記(B1)成分に由来するリンと、前記(C)成分に由来する窒素との質量比([リン]/[窒素])が0.60以上2.30以下である必要がある。このようなリンと窒素との質量比が前記下限以上である場合には、前記下限未満の場合と比較して極圧性を高度なものとしつつ絶縁性を高度なものとして、高い水準で極圧性と絶縁性を両立させることが可能なり、他方、前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して耐焼き付き性および酸化安定性を高度なものとすることが可能となる。また、前記(B1)成分に由来するリンと、前記(C)成分に由来する窒素との質量比([リン]/[窒素])は、耐焼き付き性、耐摩耗性、絶縁性(体積抵抗率)、酸化安定性を高度な水準でバランスよく並立させるといった観点で更に高い効果が得られることから、0.60以上1.70以下(更に好ましくは0.60以上1.50以下、特に好ましくは0.60以上0.75以下)であることがより好ましい。
また、本発明の潤滑油組成物においては、前記(D)成分に由来するカルシウムの含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として200質量ppm以下(より好ましくは180質量ppm以下、更に好ましくは160質量ppm以下)である必要がある。このようなカルシウムの含有量が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して絶縁性の点で高い効果を得ることが可能となる。
また、本発明の潤滑油組成物において、前記(A)成分の含有量は特に制限されないが、前記潤滑油組成物の全量を基準として80~98質量%(より好ましくは85~95質量%)であることが好ましい。このような(A)成分の含有量が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して酸化安定性をさらに優れたものとすることが可能となり、他方、前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して潤滑箇所での添加剤効果をより向上させて潤滑性をさらに優れたものとすることが可能となる。
なお、本発明の潤滑油組成物においては、前述のように、硫黄含有極圧剤((B2)成分)を含まないか、あるいは、硫黄含有極圧剤((B2)成分)を含む場合においても、(B2)成分に由来する硫黄の量が前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01質量%(100質量ppm)以下(より好ましくは80質量ppm以下、更に好ましくは60質量ppm以下、特に好ましくは50質量ppm以下、最も好ましくは20質量ppm以下))であるという条件を満たす必要がある。このように硫黄含有極圧剤に由来する硫黄の量を前記上限以下とすることで、酸化安定性と銅腐食防止性とを共に優れたものとすることが可能となる。
また、本発明の潤滑油組成物においては、前記(B2)成分に由来する硫黄と、前記(B1)成分に由来するリンの質量比([硫黄]/[リン])が3.0以下(より好ましくは2.93以下、更に好ましくは2.2以下)であることが好ましい。このような硫黄とリンとの質量比が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、酸化安定性と銅腐食防止性とをより優れたものとすることが可能となる。
また、本発明の潤滑油組成物において、前記(B)成分が前記(B1-1)成分を含む場合、前記(B1-1)成分に由来するリン(P)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量を基準として50~500質量ppm(より好ましくは70~350質量ppm)であることが好ましい。このようなリンの含有量が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、より容易に耐荷重性(耐焼き付き性)および耐摩耗を高度なものとすることが可能となり、他方、前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較してより容易に絶縁性を高度なもの(体積抵抗率の値を0.0020×1012Ωcm以上)とすることが可能となる。
さらに、本発明の潤滑油組成物において、前記(B)成分中に、前記(B1-2)成分を含有する場合、その(B1-2)成分に由来するリン(P)の含有量は前記潤滑油組成物の全量を基準として50~500質量ppm(より好ましくは100~200質量ppm)であることが好ましい。このようなリンの含有量が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して耐焼き付き性、耐摩耗性をより向上させることが可能となり、他方、前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して体積抵抗率が高い組成物をより効率よく得ることが可能となる。
また、本発明の潤滑油組成物において、前記(C)成分の含有量は特に制限されないが、前記(C)成分に由来する窒素の含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として100~800質量ppm(より好ましくは180~600質量ppm)となるような量とすることが好ましい(なお、かかる(C)成分に由来する窒素の含有量の上限値は更に好ましくは400質量ppmであり、特に好ましくは200質量ppmである。)。このような窒素の量が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して酸化安定性をより高めることが可能となり、他方、前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較してより容易に体積抵抗率の値を0.0020×1012Ωcm以上とすることが可能となる。なお、本発明において、組成物中や各種成分中の硫黄、リン、窒素、ホウ素、及び、カルシウムの含有量は、ASTM D4951に準拠して測定した値を採用する。
また、本発明の潤滑油組成物は、前記(A)~(D)成分以外に、添加剤を更に含んでいてもよい。このような添加剤としては、潤滑油組成物の分野において利用されている公知の添加剤を適宜利用でき、特に制限されないが、例えば、(E)酸化防止剤を好適なものとして挙げることができる。
このような(E)成分としては、潤滑油組成物の分野で公知のもの(例えばアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、等の公知の無灰酸化防止剤)を適宜利用することができ、特に制限されないが、中でも、(E1)フェノール系酸化防止剤、および、(E2)アミン系酸化防止剤を組み合わせて利用することが好ましい。
前記(E1)成分としては、例えば、フェノール系酸化防止剤として公知の化合物(例えば、国際公開第2020/095970号に例示されている化合物等)を適宜利用できる。このようなフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物およびビスフェノール化合物を挙げることができる。
また、前記(E2)成分としては、例えば、芳香族アミン系酸化防止剤、及び、ヒンダードアミン系酸化防止剤等のアミン系酸化防止剤として公知の化合物(例えば、国際公開第2020/095970号に例示されている化合物等)を適宜利用できる。前記芳香族アミン系酸化防止剤としては、中でも、アルキル化ジフェニルアミン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミンを好適に利用できる。また、前記ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格を有する化合物(2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体)等を好適に利用できる。前記アミン系酸化防止剤としては、中でも、芳香族アミン系酸化防止剤がより好ましく、アルキル化ジフェニルアミンが特に好ましい。
また、本発明の潤滑油組成物に前記(E)成分を含有させる場合、前記(E)成分の含有量(総量)は、0.01~4.0質量%(より好ましくは0.01~2.0質量%)とすることが好ましい。また、前記(E1)成分を含有させる場合、前記(E1)成分の含有量は、0.005~2.0質量%(より好ましくは0.005~1.0質量%)とすることが好ましい。さらに、前記(E2)成分を含有させる場合、前記(E2)成分の含有量は、0.005~2.0質量%(より好ましくは0.01~2.0質量%)とすることが好ましい。これらの含有量を前記範囲内とすることで酸化防止性を更に高めながら耐腐食性を向上させることが可能となる。
なお、本発明の潤滑油組成物に好適に利用可能な添加剤として前記(E)成分を好適なものとして例示して説明したが、本発明の潤滑油組成物に利用可能な添加剤は、前記(E)成分に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲において、例えば、流動点降下剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、前記窒素含有無灰分散剤以外の他の分散剤、粘度指数向上剤、ゴム膨潤剤、消泡剤、希釈油、防錆剤、抗乳化剤、着色剤、腐食防止剤、摩耗防止剤、酸捕捉剤等のような公知の他の添加成分(例えば、特開2016-3258号公報、国際公開2015/056783号、特開2016-160312号公報、特開2003-155492号公報、国際公開2017/073748号、特開2020-76004号公報等に記載されているようなもの等)も適宜利用できる。
また、前記(E)成分以外の他の添加成分を利用する場合、他の添加成分の総量(合計量)は、前記潤滑油組成物の全量を基準として0.5~2.0質量%であることがより好ましい。このような他の添加成分の総量が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して耐摩耗性、耐腐食性、酸化安定性の点でより高い効果を得ることが可能となり、他方、前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して絶縁性(体積抵抗率)を高水準のものとすることを可能としつつ、低電費性の点でより高い効果を得ることが可能となる。
なお、このような潤滑油組成物に利用し得る各種の添加剤は、それぞれ各成分ごとに別々に準備して添加してもよいし、あるいは、他の成分の混合物として準備して添加してもよい。このような他の成分の混合物としては、市販のパッケージ品(例えば、ゴム膨潤剤、消泡剤、流動点降下剤を含む添加剤パッケージ等)を適宜利用してもよい。
〔潤滑油組成物の特性、製法、用途等について〕
本発明の潤滑油組成物は、80℃における体積抵抗率が0.0020×1012Ωcm以上(より好ましくは0.0022×1012Ωcm以上、更に好ましくは0.0024×1012Ωcm以上)であることが好ましい。このような体積抵抗率を前記下限値以上とすることで、電気自動車に利用する際に要求される水準以上の高度な絶縁性を担保することが可能となる。なお、潤滑油組成物の80℃における体積抵抗率の上限値は特に制限されるものではないが、耐放電性の観点から、0.10×1012Ωcmであることが好ましい。このような体積抵抗率としては、JIS C2101に規定されている体積抵抗率試験に準拠し、油温80℃で行うことにより測定される値を採用する。
本発明の潤滑油組成物としては、40℃における動粘度が8.0~18.0mm/s(より好ましくは8.0~14.0mm/s)のものが好ましい。前記潤滑油組成物の40℃における動粘度が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、40℃近傍の比較的低温の温度域(好ましくは20~60℃程度)において、撹拌抵抗をより小さくすることが可能となり、使用開始直後などの低温状態においても動力伝達効率をより向上させることが可能となるため、省燃費性能をさらに向上させることが可能となる。また、前記潤滑油組成物の40℃における動粘度が前記下限値以上である場合には、40℃近傍の比較的低温の温度域(好ましくは20~60℃程度)において潤滑箇所での潤滑油組成物の油膜形成性及び油膜保持性がより向上して、より良好な潤滑状態を保持することが可能となり、かかる観点から、耐摩耗性、ギヤ伝達効率及び省電費性能をさらに向上させることが可能となる。
本発明の潤滑油組成物としては、100℃における動粘度が1.8~4.0mm/s(より好ましくは2.2~3.5mm/s)のものが好ましい。前記潤滑油組成物の100℃における動粘度が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、100℃近傍の比較的高温の温度域において、より低粘度のものとすることができ、撹拌抵抗をより小さくすることが可能となるため、動力伝達効率をより向上させることが可能となり、省燃費性能を向上させることが可能となる。また、前記潤滑油組成物の100℃における動粘度が前記下限以上である場合には、100℃近傍の比較的高温の温度域(好ましくは80~120℃程度)において、潤滑箇所での潤滑油組成物の油膜形成性及び油膜保持性がより向上して、油膜をより均一に保持できるため、使用時の耐焼き付き性能をより高度なものとすることが可能となる。
また、本発明の潤滑油組成物としては、前記潤滑油組成物の粘度指数が105以上(より好ましくは120以上)のものが好ましい。このような粘度指数が前記下限以上(より好ましくは120以上)である場合、前記下限未満(より好ましくは120未満)の場合)と比較して、潤滑油組成物の粘度-温度特性、および、摩耗防止性をより向上させることが可能となるとともに、省燃費・省電費性能をさらに向上させることが可能となる。
本発明の潤滑油組成物を製造するための方法としては特に制限されず、前記本発明の潤滑油組成物を得ることが可能となるように(前記条件を満たすように)、含有させる各成分を適宜選択して混合することにより調製すればよい。
本発明の潤滑油組成物は、絶縁性、酸化安定性および極圧性を高水準でバランスよく有し、かつ、高度な銅腐食防止性を有するものとなることから、その用途は特に制限されるものではないが、変速機の潤滑用、並びに、電動モーターの冷却及び潤滑用の組成物として好適に利用できる。すなわち、本発明の潤滑油組成物は、電動モーター及び変速機を備える電気自動車用の潤滑油組成物として好適に利用できる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(各実施例等で利用した成分について)
先ず、各実施例等において利用した基油および添加剤を以下に示す。
〔(A)潤滑油基油〕
(A1)ワックス異性化基油[鉱油:APIグループIII、40℃における動粘度:9.422mm/s、100℃における動粘度:2.676mm/s、粘度指数:125、基油中の硫黄の含有量(基油中の硫黄分):0質量ppm、流動点:-37℃、引火点:190℃]
(A2)水素化分解基油[鉱油:APIグループII、40℃における動粘度:8.546mm/s、100℃における動粘度:2.431mm/s、粘度指数:105、基油中の硫黄の含有量(基油中の硫黄分):0質量ppm、流動点:-30℃、引火点:170℃]。
〔(B)極圧剤〕
<(B1)リン系極圧剤>
(B1-1)リン酸エステルのアルキルアミン塩[リン酸エステル(モノエステルとジエステルの混合物:前記式(1)で表される化合物でありかつ式中のRがオレイル基(式:C1835で表される基)である化合物)と、アルキルアミン(前記式(2)で表される化合物であり、式中のR、R及びRのうちの1つがドデシル基(式:C1225で表される基)でありかつR、R及びRのうちのそれ以外のものが水素原子である化合物)との塩]
(B1-2)亜リン酸エステル[ジブチルハイドロゲンホスファイト]
<(B2)硫黄含有極圧剤>
(B2-1)チオリン酸エステル[リンの含有量:100000質量ppm、硫黄の含有量:190000質量ppm]。
〔(C)窒素含有無灰分散剤〕
(C1)コハク酸イミド系無灰分散剤[ホウ素化コハク酸イミド、窒素の含有量;2.0質量%,ホウ素の含有量:0.5質量%,全塩基価(TBN):50、コハク酸イミドのタイプ:ビス体(前記式(4)で表されるビスタイプのコハク酸イミド(ここにおいて、式(4)中のR及びRが重量平均分子量(Mw)1000のポリイソブテニル基でありかつnが3である)のホウ素変性化合物)]。
〔(D)カルシウムスルホネート清浄剤〕
(D1)カルシウムスルホネート清浄剤[塩基価(TBN):400mgKOH/g、カルシウム原子の含有量:15.0質量%]。
〔(E)酸化防止剤〕
(E1)フェノール系酸化防止剤[3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル]
(E2)アミン系酸化防止剤[アルキル化ジフェニルアミン]。
〔(F)その他の添加剤(性能添加剤)〕
(F1)添加剤パッケージ[ゴム膨潤剤、消泡剤及び流動点降下剤の混合物]。
〔(G)カルシウムサリシレート清浄剤(比較用の金属系清浄剤)〕
(G1)カルシウムサリシレート清浄剤[塩基価(TBN):320mgKOH/g、カルシウム原子の含有量:11.4質量%]。
(実施例1~7および比較例1~7)
表1~2に示す組成となるように、前述の各成分を利用して、実施例1~7および比較例1~7の潤滑油組成物をそれぞれ調製した。なお、表1~2中の「組成」の項目に関して「-」はその成分を利用していないことを示す。また、表1~2中の「組成」の項目において、「inmass%」は潤滑油基油の全量に対する質量基準の含有量(質量%)を表し、「mass%」は潤滑油組成物の全量に対する質量基準の含有量(質量%)を表し、「ppm(N換算)」は潤滑油組成物の全量に対する窒素原子換算の質量基準の含有量(質量ppm:その成分に由来する潤滑油組成物の全量に対する窒素の含有量)を表し、「ppm(P換算)」は潤滑油組成物の全量に対するリン原子換算の質量基準の含有量(質量ppm:その成分に由来する潤滑油組成物の全量に対するリンの含有量)を表し、「ppm(S換算)」は潤滑油組成物の全量に対する硫黄原子換算の質量基準の含有量(質量ppm:その成分に由来する潤滑油組成物の全量に対する硫黄の含有量)を表し、「ppm(Ca換算)」は潤滑油組成物の全量に対するカルシウム原子換算の質量基準の含有量(質量ppm:その成分に由来する潤滑油組成物の全量に対するカルシウムの含有量)を表す。また、組成物中のリン、窒素、硫黄およびカルシウムの含有量は、ASTM D4951に準拠して測定した値である。また、表1~2中、「(B1)成分由来のリンの含有量」という表記は、潤滑油組成物中に含有される(B1)成分に由来するリンの質量基準の含有量の割合(質量%:mass%)を示し、「(B2)成分由来の硫黄の含有量」という表記は、潤滑油組成物中に含有される(B2)成分に由来する硫黄の質量基準の含有量の割合(質量%:mass%)を示し、「(C)成分由来の窒素の含有量」という表記は、潤滑油組成物中に含有される(C)成分に由来する窒素の質量基準の含有量の割合(質量%:mass%)を示す。また、表1~2中、「(B1)成分由来のリン/(C)成分由来の窒素」という表記は、前記「(B1)成分由来のリンの含有量」と前記「(C)成分由来の窒素の含有量」との比(質量比:[リン」/[窒素])を示し、「(B2)成分由来の硫黄/(B1)成分由来のリン」という表記は、前記「(B2)成分由来の硫黄の含有量」と前記「(B1)成分由来のリンの含有量」との比(質量比:[硫黄」/[リン])を示す。
[各実施例等で得られた潤滑油組成物の特性の評価方法について]
<体積抵抗率の測定>
各潤滑油組成物について、新油の体積抵抗率を測定した。ここにおいて、体積抵抗率の測定は、JIS C2101に規定の体積抵抗率試験に準拠し、油温80℃で行った。得られた結果を表1~2に示す。なお、80℃における体積抵抗率が0.0020×1012Ω・cm以上である場合、高度な絶縁性を有するものと評価できる。
<ファレックス焼付き試験:耐焼き付き性の確認試験>
各潤滑油組成物について、ASTM D3233 A法に準拠したファレックス焼き付き試験を行い、焼付きが生じた荷重(単位:lbf)を測定した。得られた結果を表1~2に示す。なお、焼き付きが生じた荷重が700lbf以上であれば、耐焼き付き性が良好であると判断できる。
<ファレックス摩耗試験:耐摩耗性の確認試験>
各潤滑油組成物について、ASTM D2670に準拠して、油温80℃、荷重390lb、回転数290rpm、および、1時間の条件でファレックス試験(ファレックス耐摩耗試験)を行い、摩耗量(mg)を測定した。得られた結果を表1~2に示す。なお、摩耗量が55.0mg以下であれば、耐摩耗性が良好であると判断できる。
<耐銅板腐食性の確認試験>
各潤滑油組成物から約30mLの試料をそれぞれ準備し、JIS K 2513に準拠した銅板腐食試験を行って、耐銅板腐食性を評価した。すなわち、JIS K2513に準拠し、銅板を約30mLの試料に完全に浸した後、油温150℃に192時間保持した後,これを取り出し,洗浄して銅板腐食標準と比較して,試料の銅に対する腐食性を判定して、銅腐食防止性を評価した。得られた結果を表1~2に示す。なお、銅板腐食標準の判定値(変色番号)が2以下である場合には、銅腐食防止性が高度なものであると判断できる。
<酸化安定性の評価:酸化処理後の強酸価の発生有無の確認試験>
各潤滑油組成物について、JIS K2514-1に準拠したISOT(Indiana Stirring Oxidation Test)法により、油温165℃で192時間の条件で酸化処理を行った後、酸化処理後の潤滑油組成物を用いて、強酸価の発生の有無を確認した。そして、強酸価が発生しなかった潤滑油組成物を酸化安定性が高いものとして「合格」と評価し、強酸価が発生した潤滑油組成物を酸化安定性が十分ではないものとして「不合格」と評価した。得られた結果を表1~2に示す。
表1に示した結果から明らかなように、実施例1~7で得られた潤滑油組成物(本発明の潤滑油組成物に相当)は、体積抵抗率が0.0020×1012Ωcm以上であり、高度な水準の絶縁性が要求される電動モータの潤滑及び冷却に好適なものであることが分かった。また、実施例1~7で得られた潤滑油組成物(本発明の潤滑油組成物に相当)は、耐焼き付き性および耐摩耗性がいずれも良好なものとなっており、耐焼き付き性および耐摩耗性を基準とした極圧性も高度なものであることが確認された。さらに、実施例1~7で得られた潤滑油組成物(本発明の潤滑油組成物に相当)は、強酸価が発生しておらず、酸化安定性も高度なものであることが分かった。また、表1に示すように、実施例1~7で得られた潤滑油組成物(本発明の潤滑油組成物に相当)は、銅腐食防止性が高度なものであることも確認された。このような結果から、実施例1~7で得られた潤滑油組成物は、絶縁性、酸化安定性および極圧性がいずれも高水準なものとなっており、これらの特性をバランスよく有するものであるとともに、高い銅腐食防止性を有するものであることが分かった。
これに対して、表2に示した結果から明らかなように、(B1)成分由来のリンの含有量が0.053質量%となっている比較例1で得られた潤滑油組成物においては、体積抵抗率が0.0020×1012Ωcm未満となっており、絶縁性を高度なものとすることができなかった。また、(B1)成分由来のリンの含有量と(C)成分由来の窒素の含有量の質量比(P/N)が2.30を超えた値(2.68)となっている比較例2で得られた潤滑油組成物は、耐焼き付き性が十分なものとならず、極圧性を高度な水準のものとすることができなかった。また、比較例2で得られた潤滑油組成物は、強酸価が発生しており、酸化安定性も高度な水準のものとすることができなかった。さらに、(B1)成分由来のリンの含有量と(C)成分由来の窒素の含有量の質量比(P/N)が0.60未満となっている比較例3及び4で得られた潤滑油組成物は、極圧性又は絶縁性の点で必ずしも十分なものとはならなかった。また、硫黄含有極圧剤を硫黄量が200ppmとなるような量で含有する比較例5で得られた潤滑油組成物は、強酸価が発生しており、酸化安定性を高度な水準のものとすることができなかった。さらに、カルシウムスルホネート清浄剤をカルシウムの量が250質量ppmとなるような量で含有する比較例6で得られた潤滑油組成物は、体積抵抗率が0.0020×1012Ωcm未満となり、絶縁性を高度なものとすることができなかった。また、カルシウムスルホネート清浄剤の代わりにカルシウムサリシレート清浄剤をカルシウムの量が100質量ppmとなるような量で含有する比較例7で得られた潤滑油組成物は、耐焼き付き性が十分なものとならないばかりか、ファレックス摩耗試験において焼き付きが発生して摩耗量を測定することができなかった。このように、カルシウムサリシレート清浄剤を用いた比較例7で得られた潤滑油組成物は極圧性を高度なものとすることができなかった。
以上説明したように、本発明によれば、絶縁性、酸化安定性および極圧性を高水準でバランスよく有するとともに、高度な銅腐食防止性を有することを可能とする潤滑油組成物を提供することが可能となる。したがって、本発明の潤滑油組成物は、特に電気自動車用の潤滑油組成物等として有用である。

Claims (5)

  1. (A)潤滑油基油、
    (B)極圧剤、
    (C)窒素含有無灰分散剤、および、
    (D)金属系清浄剤
    を含む潤滑油組成物であって、
    前記(B)成分は、
    (B1)リン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステルおよびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であるリン系極圧剤を含有し、かつ、
    (B2)硫黄含有極圧剤を含有しないか、あるいは、前記(B2)成分に由来する硫黄の含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01質量%以下となるように前記(B2)成分を含有するものであり、
    前記(B1)成分に由来するリンの含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として0.050質量%以下であり、
    前記(D)成分がカルシウムスルホネート清浄剤であり、
    前記(B1)成分に由来するリンと、前記(C)成分に由来する窒素との質量比([リン]/[窒素])が0.60以上2.30以下であり、
    前記(D)成分に由来するカルシウムの含有量が前記潤滑油組成物の全量を基準として200質量ppm以下であること、
    を特徴とする潤滑油組成物。
  2. 前記潤滑油基油は水素化精製基油及びワックス異性化基油からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、かつ、前記潤滑油基油の40℃における動粘度が20mm/s以下であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
  3. 前記(B2)成分に由来する硫黄と、前記(B1)成分に由来するリンの質量比([硫黄]/[リン])が3.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
  4. 前記(B1)成分が、(B1-1)リン酸エステルのアルキルアミン塩を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
  5. 変速機の潤滑用、並びに、電動モーターの冷却及び潤滑用の組成物であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
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