JP2024010320A - 金型の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】十分な強度をもつ高アスペクト構造を有する金型を、簡便な方法で製造できる金型の製造方法を提供する。【解決手段】本発明のニッケルリンめっきで形成された構造体を有する金型の製造方法は、硝酸水により溶解しない被覆で表面が離散的に覆われたニッケルリンめっき膜の上記被覆で覆われていない部分を、硝酸水によって選択的に溶解除去することで、上記硝酸水によって溶解除去されずに残る上記構造体を形成する工程を有し、上記溶解除去する処理を、溶解除去されずに残る凸部のそれぞれが、上記ニッケルリンめっき膜の面から観察した面積に対して当該凸部の側面の面積が4倍以上になるまで行う。【選択図】図1
Description
本発明は、高いアスペクト比を有する微細構造の形成方法および、その方法により形成された微細構造を有する金型の製造方法に関する。
近年、光学、半導体、医療などの各種分野で、微細構造を形成する技術の重要性が高まっている。光学分野では高精度な微細構造形成技術が、また半導体分野においては高精度な微細構造形成技術に加えて、半導体集積回路の集積度向上のために加工寸法の微細化が要求されている。医療分野においては、血液等のさまざまな液体から、細胞など特定サイズの対象物を分離するために、ナノサイズからミクロンサイズなどのさまざまな孔径を有する微細フィルタなどの製造が求められている。ここで、樹脂に対する微細構造形成技術として、樹脂をガラス転移温度以上の温度に加熱して軟化させ、表面に、同じく加熱した金型をプレスすることで金型の形状を樹脂表面に転写する熱インプリント技術が提案され、これらの製品開発に応用されている。
熱インプリント技術により、これらの成形を行う際は、成形品の微細構造に対応し、その凹凸が反転した形状の金型が必要となる。例えば、微細フィルタの成形においては、成形品の厚み以上の高さを有するピラー形状の金型が必要である。
これら、金型の製造方法としては、切削性のよい材料を被削材として切削により加工する方法や、各種金属やシリコンなどにマスクをもうけ、エッチング加工を施す方法、厚膜レジストをフォト加工したのちに、電気鋳造により反転して金型とする方法などがある。
しかし、切削による加工では、被削材および加工工具の剛性により、特に1桁μm以下の微細な構造において、アスペクト2程度以上の高アスペクト構造を加工することは困難である。
また、各種金属のエッチング加工では、エッチングが深さ方向だけでなく、平面方向にも進行する等方エッチングとなるため、アスペクト0.5以上の構造を加工することは困難である。
また、レジストを用いたフォト加工と電気鋳造の組み合わせでは、MEMS対応の厚膜レジスト材料などを用いることにより、高アスペクト構造を形成することはできるが、レジスト材料の解像度により、1桁μm台以下の微細かつ高アスペクト構造の形成は困難である。シリコンを深堀する方法としては、シリコンの結晶異方性によって高アスペクト形状を形成することはできるが、任意形状の形成は困難であり、簡便な製法とはいえない。また、シリコンを用いて、ドライエッチングにより深堀加工を行う技術はあるが、狭い範囲のみを加工することはできるが、大きな金型を加工するのに適した簡便な方法とはいえない。
このほか、微細な高アスペクト構造の金型を成形する方法として、陽極酸化ポーラスアルミナを用いる方法がある(例えば、特許文献1)。この方法によれば、陽極酸化ポーラスアルミナの表面にレジストパターンを形成した後、湿式エッチングにより陽極酸化ポーラスアルミナを選択的に溶解除去することで、高アスペクト構造を持つインプリントモールドを製造できる、とある。
他方、ニッケルリンめっき被膜を硝酸水溶液に浸漬することで、被膜表面に無数の密集した微細孔が形成されることが知られている(例えば、特許文献2)。ただし、この微細孔はその密集により黒色被膜を形成するためのものである。
しかしながら、特許文献1に開示されている陽極酸化ポーラスアルミナを用いた高アスペクト構造の場合、除去部以外もポーラス構造となっており、このポーラス構造をそのまま用いるという限定的な用途以外においては、表面にレジストを残したままで使用する必要がある。しかし、レジストを残したままとした場合でも、内部にはポーラス構造が残ったままであるため、モールドの強度に問題が生じる場合がある。また、そもそもポーラス構造にレジストを設けることになるため、液体レジストでは陽極酸化ポーラスアルミナ表面に均一な膜が形成され難いことがあったり、ドライフィルムレジストでは陽極酸化ポーラスアルミナへの密着が不十分となりやすいなど、十分な強度をもつ高アスペクトモールドを、簡便に製造することは困難である。
特許文献2に開示されているニッケルリンめっきの表面に微細孔を形成する方法については、その目的が黒色被膜を形成するための物であるため、所望の形状の高アスペクト構造を有するモールドとして使用することはできない。
そこで本発明は、十分な強度をもつ高アスペクト構造を有する金型を、簡便な方法で製造できる金型の製造方法を提供する。
[1] 上記課題を解決する本発明は、ニッケルリンめっきで形成された構造体を有する金型の製造方法であって、
硝酸水により溶解しない被覆で表面が離散的に覆われたニッケルリンめっき膜の上記被覆で覆われていない部分を、硝酸水によって選択的に溶解除去することで、上記硝酸水によって溶解除去されずに残る上記構造体を形成する工程を有し、
上記溶解除去する処理を、溶解除去されずに残る凸部のそれぞれが、上記ニッケルリンめっき膜の面から観察した面積に対して当該凸部の側面の面積が4倍以上になるまで行う。
硝酸水により溶解しない被覆で表面が離散的に覆われたニッケルリンめっき膜の上記被覆で覆われていない部分を、硝酸水によって選択的に溶解除去することで、上記硝酸水によって溶解除去されずに残る上記構造体を形成する工程を有し、
上記溶解除去する処理を、溶解除去されずに残る凸部のそれぞれが、上記ニッケルリンめっき膜の面から観察した面積に対して当該凸部の側面の面積が4倍以上になるまで行う。
[2] 上記課題を解決する別態様の本発明は、ニッケルリンめっきで形成された構造体を有する金型の製造方法であって、
硝酸水により溶解しない被覆で、当該被覆で覆われていない部分が離散的に残るように、表面が覆われたニッケルリンめっき膜の上記被覆で覆われていない部分を、硝酸水によって選択的に溶解除去することで、上記硝酸水によって溶解除去されずに残る上記構造体を形成する工程を有し、
上記溶解除去する処理を、溶解除去される凹部のそれぞれが、上記ニッケルリンめっき膜の面から観察した面積に対して当該凹部の側面の面積が4倍以上になるまで行う。
硝酸水により溶解しない被覆で、当該被覆で覆われていない部分が離散的に残るように、表面が覆われたニッケルリンめっき膜の上記被覆で覆われていない部分を、硝酸水によって選択的に溶解除去することで、上記硝酸水によって溶解除去されずに残る上記構造体を形成する工程を有し、
上記溶解除去する処理を、溶解除去される凹部のそれぞれが、上記ニッケルリンめっき膜の面から観察した面積に対して当該凹部の側面の面積が4倍以上になるまで行う。
また、本発明の金型の製造方法は、下記[3]~[6]のいずれかの方法であってもよい。
[3] 上記硝酸水により溶解除去する工程を、濃硝酸水により溶解除去した後に希硝酸水により溶解除去することで行う、上記[1]または[2]の金型の製造方法。
[4] 上記ニッケルリンめっき膜に含まれるリンの濃度を8~15質量%にする、上記[1]~[3]のいずれかの金型の製造方法。
[5] 上記硝酸水により溶解除去する工程の後に、上記被覆を除去して上記ニッケルリンめっき膜を露出させ、当該露出したニッケルリンめっき膜の表面を切削加工する工程を有する、上記[1]~[4]のいずれかの金型の製造方法。
[6] 上記硝酸水により溶解除去する工程の前に、上記ニッケルリンめっき膜の表面に凹凸が形成された金属部材を加熱しながら押圧し、上記ニッケルリンめっき膜の上記金属部材の凸部分と接触している部分を熱変性させることによって、当該熱変性した部分を上記被覆とする工程を有する、上記[1]~[5]のいずれかの金型の製造方法。
[3] 上記硝酸水により溶解除去する工程を、濃硝酸水により溶解除去した後に希硝酸水により溶解除去することで行う、上記[1]または[2]の金型の製造方法。
[4] 上記ニッケルリンめっき膜に含まれるリンの濃度を8~15質量%にする、上記[1]~[3]のいずれかの金型の製造方法。
[5] 上記硝酸水により溶解除去する工程の後に、上記被覆を除去して上記ニッケルリンめっき膜を露出させ、当該露出したニッケルリンめっき膜の表面を切削加工する工程を有する、上記[1]~[4]のいずれかの金型の製造方法。
[6] 上記硝酸水により溶解除去する工程の前に、上記ニッケルリンめっき膜の表面に凹凸が形成された金属部材を加熱しながら押圧し、上記ニッケルリンめっき膜の上記金属部材の凸部分と接触している部分を熱変性させることによって、当該熱変性した部分を上記被覆とする工程を有する、上記[1]~[5]のいずれかの金型の製造方法。
本発明によれば、十分な強度をもつ高アスペクト構造を有する金型を、簡便な方法で製造することができる。
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の金型の製造方法にかかる実施態様の一例を示したフロー図である。
最初に、図1(a)に示すように、母材1に施したニッケルリンめっき膜2表面に硝酸水により溶解しない被覆として、所望形状のレジスト膜3を設ける。ここで、母材1としてはニッケルリンめっき膜との密着性がよい、ステンレス鋼材やアルミなどの各種金属材料や、ガラス、セラミックなど任意の材料を使用することができる。ニッケルリンめっき膜2は、無電解めっきや電気めっきで形成できるが、無電解めっきによって形成される一般的なめっき膜を厚付けしたものが好ましく、ニッケルリンめっきに使われる一般的な添加剤が含まれていてもよい。ニッケルリンめっき膜2の厚みは、所望の高アスペクト形状の高さに応じて任意に選ぶことができるが、好ましくは、10~200μm程度である。レジスト膜3としては、市販の液体レジストやドライフィルムレジスト(DFR)のうち耐硝酸性のあるものを使用できる。これらのレジスト膜は、一般的な露光装置により露光、現像してパターンを形成することにより、ニッケルリンめっき膜の表面を断続的に覆うことができる。図1(a)では、レジスト膜3の開口部が離散的になるようニッケルリンめっき膜の表面を覆った状態を図示している。また、後述するように、ニッケルリンめっき膜の表面に部分的に熱処理を施す等により、部分的に耐硝酸性を高めることで、この耐硝酸性を高めた部分のめっき膜を、レジスト膜にかえて、硝酸水により溶解しない被覆として使用することもできる。
図1は本発明の金型の製造方法にかかる実施態様の一例を示したフロー図である。
最初に、図1(a)に示すように、母材1に施したニッケルリンめっき膜2表面に硝酸水により溶解しない被覆として、所望形状のレジスト膜3を設ける。ここで、母材1としてはニッケルリンめっき膜との密着性がよい、ステンレス鋼材やアルミなどの各種金属材料や、ガラス、セラミックなど任意の材料を使用することができる。ニッケルリンめっき膜2は、無電解めっきや電気めっきで形成できるが、無電解めっきによって形成される一般的なめっき膜を厚付けしたものが好ましく、ニッケルリンめっきに使われる一般的な添加剤が含まれていてもよい。ニッケルリンめっき膜2の厚みは、所望の高アスペクト形状の高さに応じて任意に選ぶことができるが、好ましくは、10~200μm程度である。レジスト膜3としては、市販の液体レジストやドライフィルムレジスト(DFR)のうち耐硝酸性のあるものを使用できる。これらのレジスト膜は、一般的な露光装置により露光、現像してパターンを形成することにより、ニッケルリンめっき膜の表面を断続的に覆うことができる。図1(a)では、レジスト膜3の開口部が離散的になるようニッケルリンめっき膜の表面を覆った状態を図示している。また、後述するように、ニッケルリンめっき膜の表面に部分的に熱処理を施す等により、部分的に耐硝酸性を高めることで、この耐硝酸性を高めた部分のめっき膜を、レジスト膜にかえて、硝酸水により溶解しない被覆として使用することもできる。
こうして表面にレジスト膜3を設けた、ニッケルリンめっき膜2付きの母材1を、図示しない硝酸水に浸漬させ、エッチング加工を行う。ここで、硝酸濃度が40質量%以上、好ましくは50質量%以上の濃硝酸を使用すると、レジスト膜3が被覆されていない部分のニッケルリンめっき膜2に細くて深い孔を形成することができる。これは、濃硝酸下において、ニッケルリンめっき膜2の表面にはニッケル酸化膜がほぼ瞬時に形成されるためとみられる。ニッケル酸化膜が形成される前にエッチングが始まった限定的な部分でのみエッチングが深さ方向に進行していくため、狭く深い孔が形成されることになる。なお、硝酸濃度は、濃縮法による限界以上の濃度とする必要はない。
ここで、ニッケルリンめっき膜に含まれるリンの濃度は、発明者らの検討によれば、ニッケル酸化膜が形成される前にエッチングが始まる点の大きさや密度に影響をおよぼす。レジスト膜が被覆されていない部分において、深い孔を高密度に、かつ、エッチングをコントロールしやすい速度で進展させるために、リン濃度は8~15質量%が好ましい。リン濃度が15質量%以下であると、エッチングが始まる点が多くなり、レジスト膜が被覆されていない部分において、深い孔が形成し易くなる。リン濃度が8質量%以上であると、レジスト膜が被覆されていない部分においてエッチングの進行が速くなり過ぎず、エッチングのコントロールがし易くなる。リンの濃度は、さらに好ましくは10~13質量%である。
ここで、エッチングの終了は、ニッケルリンめっき膜2の外観、色味などをみて適正に選ぶことができるが、エッチング時間は30秒から600秒程度が好ましい。エッチング終了の際には、水洗を行うことでエッチングを停止することが好ましい。また、水洗を行ってから乾燥し、再びエッチングを追加して行っても問題ない。このように濃硝酸でエッチングを行った後の中間製品の形状は図1(b)に示すように、レジスト膜3が被覆されていない部分において、無数の狭く深い孔が形成された状態となる。
この状態のニッケルリンめっき膜2を、次いで図示しない濃度5質量%~20質量%程度の硝酸水(希硝酸)に浸漬する。このような希硝酸中において、ニッケルリンめっき膜2の表面にニッケル酸化膜は形成され難いため、ニッケルリンめっき膜2全体が等方向にエッチングされることとなる。この等方的なエッチングは、ニッケルリンめっき膜の最表面からだけでなく無数の狭く深い孔が形成された部分からも進行する。これにより、無数の狭く深い孔の周囲に残るニッケルリンめっき膜2の薄い残存部分が溶解、除去され、図1(c)に示すように、レジスト膜3が被覆されていない部分において、レジスト膜3の開口とほぼ一致した開口を持つ、高アスペクトな凹み形状がニッケルリンめっき膜2上に形成される。
このように、レジスト膜3の開口部が離散的になるようニッケルリンめっき膜2の表面を覆った場合には、ニッケルリンめっき膜2の表面に離散的な凹部形状を形成できる。凹部形状のそれぞれにおいて、ニッケルリンめっき膜2の面から観察した面積(開口面積)に対して、凹部の側面の面積が4倍以上になるまでエッチングを行うことで、高アスペクトな凹形状を形成することができる。一方、レジスト膜3でニッケルリンめっき膜2の表面を離散的に覆った場合には、ニッケルリンめっき膜2の表面に離散的な凸部形状を形成することができる。凸部形状のそれぞれにおいて、ニッケルリンめっき膜2の面から観察した面積(突起上部の表面積)に対して、凸部の側面の面積が4倍以上になるまでエッチングを行うことで、高アスペクトな凸形状を形成することができる。
なお、凸部形状や、凹部形状が、それぞれ一義的な表面形状(ニッケルリンめっき膜表面からみて、同一サイズの丸や四角などが配列されている場合)は、その形状をもって、ニッケルリンめっき膜の面から観察した面積に対して、凸部(あるいは凹部)の側面の面積が4倍以上になるまでエッチングすればよい。形状が一義でない場合、最も数が多い形状において、ニッケルリンめっき膜の面から観察した面積に対して、凸部(あるいは凹部)の側面の面積が4倍以上になるまでエッチングすればよく、凸部や凹部の周囲を囲む枠や連続溝などに対してまで、ニッケルリンめっき膜の面から観察した面積に対して、凸部(あるいは凹部)の側面の面積が4倍以上になるまでエッチングを行う必要はない。
さらに、レジスト膜3を剥離することで、図1(d)に示すように、高アスペクト構造を有する金型を簡単に製作することができる。こうして製作した金型においては、凹部の周囲となる部分はエッチングされていないため、ニッケルリンめっき膜がそのまま残っており、高い強度が保たれており、金型として使用するのに好適である。
一方、レジスト膜3でニッケルリンめっき膜2の表面を離散的に覆った場合でも、エッチング後にレジスト膜3を剥離することで、ニッケルリンめっき膜2の表面に高アスペクトの凸部形状が離散的に形成された金型を簡単に製作することができる。こうして製作した金型においても、凸部はエッチングされていないため、高い強度が保たれており、金型として使用するのに好適である。
また、ニッケルリンめっき膜2を切削加工することにより、切削形状と、エッチング形状とを組み合わせた形状の高アスペクト構造を有する金型を製造することもできる。例えば、図2に示すように、あらかじめ切削により離散的に尖鋭な突起形状である頂部21をつくり、こののち、突起形状を離散的にレジスト膜で覆ってエッチングを行えば、頂部21に切削により形成される尖鋭な形状を有し、かつ、高アスペクトの柱部22を有する構造からなる金型を製造することができる。
また、レジスト膜を設ける代わりに、ニッケルリンめっき膜の表面状態を局所的に変性することにより、耐硝酸性を高めることもできる。ニッケルリンめっき膜の表面状態を局所的に変性する方法の一つとして局所的な加熱による方法があげられる。
これは、最終的に製造したい高アスペクト構造体に対してアスペクトの低い、例えば、アスペクトが1以下となる凹凸が形成された金属部材を用いて、金属部材の凸部分をニッケルリンめっき膜の表面に押し当てる方法や、レーザーなどのビームによってニッケルリンめっき膜の表面をスキャンすることで加熱する方法などがあげられる。例えば200℃以上の高温では、ニッケルリンめっき膜は熱変性しやすく、熱変性した部分が局所的に非晶質状態から結晶化して耐硝酸性が高まると考えられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
厚さ1mmのステンレス鋼板(SUS304)に、無電解めっきによりリン濃度12質量%のニッケルリンめっき膜(めっき厚み30μm)を形成したものに厚さ5μmのDFRを貼り合わせ、露光・現像により、直径3μm(ピッチ6μm)の部分だけDFRが残存する状態とした。この板を濃度60質量%の濃硝酸水に5分間浸漬した後水洗したところ、DFRが残存しない部分は目視で黒色に変色し、走査型電子顕微鏡で表面から観察したところ、黒色変色部分には直径0.1~0.8μm程度の穴が板厚方向に向かって無数にあいていることが確認された。
厚さ1mmのステンレス鋼板(SUS304)に、無電解めっきによりリン濃度12質量%のニッケルリンめっき膜(めっき厚み30μm)を形成したものに厚さ5μmのDFRを貼り合わせ、露光・現像により、直径3μm(ピッチ6μm)の部分だけDFRが残存する状態とした。この板を濃度60質量%の濃硝酸水に5分間浸漬した後水洗したところ、DFRが残存しない部分は目視で黒色に変色し、走査型電子顕微鏡で表面から観察したところ、黒色変色部分には直径0.1~0.8μm程度の穴が板厚方向に向かって無数にあいていることが確認された。
次いで、この板を濃度10質量%の希硝酸水に1分浸漬した後水洗した。DFRが残存しない部分は黒色が減色しており、走査型電子顕微鏡で表面から観察したところ、減色部分は、微細孔同士が繋がり、ニッケルリンめっき膜全体がえぐれた状態となっていた。
次いで、残存していた円状のDFRを除去したところ、ニッケルリンめっき膜に直径2.8μm、高さ30μmの略円柱がピッチ6μmで並ぶ形状が形成されていた。各円柱の上面の面積(約6.2μm2)に対して側面の面積(約264μm2)は約43倍であった。
1:母材
2:ニッケルリンめっき膜
3:レジスト膜(硝酸水により溶解しない被覆)
21:頂部
22:柱部
2:ニッケルリンめっき膜
3:レジスト膜(硝酸水により溶解しない被覆)
21:頂部
22:柱部
Claims (6)
- ニッケルリンめっきで形成された構造体を有する金型の製造方法であって、
硝酸水により溶解しない被覆で表面が離散的に覆われたニッケルリンめっき膜の前記被覆で覆われていない部分を、硝酸水によって選択的に溶解除去することで、前記硝酸水によって溶解除去されずに残る前記構造体を形成する工程を有し、
前記溶解除去する処理を、溶解除去されずに残る凸部のそれぞれが、前記ニッケルリンめっき膜の面から観察した面積に対して当該凸部の側面の面積が4倍以上になるまで行う、
金型の製造方法。 - ニッケルリンめっきで形成された構造体を有する金型の製造方法であって、
硝酸水により溶解しない被覆で、当該被覆で覆われていない部分が離散的に残るように、表面が覆われたニッケルリンめっき膜の前記被覆で覆われていない部分を、硝酸水によって選択的に溶解除去することで、前記硝酸水によって溶解除去されずに残る前記構造体を形成する工程を有し、
前記溶解除去する処理を、溶解除去される凹部のそれぞれが、前記ニッケルリンめっき膜の面から観察した面積に対して当該凹部の側面の面積が4倍以上になるまで行う、
金型の製造方法。 - 前記硝酸水により溶解除去する工程を、濃硝酸水により溶解除去した後に希硝酸水により溶解除去することで行う、請求項1または2の金型の製造方法。
- 前記ニッケルリンめっき膜に含まれるリンの濃度が8~15質量%である、請求項1または2の金型の製造方法。
- 前記硝酸水により溶解除去する工程の後に、前記被覆を除去して前記ニッケルリンめっき膜を露出させ、当該露出したニッケルリンめっき膜の表面を切削加工する工程を有する、請求項1または2の金型の製造方法。
- 前記硝酸水により溶解除去する工程の前に、前記ニッケルリンめっき膜の表面に凹凸が形成された金属部材を加熱しながら押圧し、前記ニッケルリンめっき膜の前記金属部材の凸部分と接触している部分を熱変性させることによって、当該熱変性した部分を前記被覆とする工程を有する、請求項1または2の金型の製造方法。
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