JP2024009490A - レーザ加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ビード幅の狭いレーザ加工を実現するためのレーザ加工装置を提供する。【解決手段】レーザ加工ヘッド10は、第1レーザ光L1と、第2レーザ光L2と、を略同軸上に重ね合わせてワークWに対して出射する。第2レーザ光L2の波長は、第1レーザ光L1の波長よりも短い。レーザ加工ヘッド10からワークWに出射される第2レーザ光L2の集光径は、第1レーザ光L1の集光径よりも小さい。【選択図】図3
Description
本発明は、レーザ加工装置に関するものである。
特許文献1には、主ビームと、主ビームよりもパワー密度が低い副ビームと、を合成して加工対象に向かって照射することで、照射された部分の加工対象を溶融して溶接を行う溶接装置が開示されている。
ここで、特許文献1には、副パワー領域を形成するレーザ光の波長は、加工対象の赤外領域の反射率よりも低い反射率を持つ波長であることが記載されている。また、副ビームのビーム径は、主ビームのビーム径と略等しい、又は大きくてもよいことが記載されている。
ところで、特許文献1には、副ビームのパワー密度は、主ビームの存在下、又は単独にて、加工対象を溶融し得る密度であり、主ビームが照射される位置の側方の、副ビームが照射される位置までに広がった溶融池が溶融領域として形成されることになる、と記載されている。
そのため、特許文献1の発明では、ビード幅が広くなって溶接痕が目立ち、溶接箇所の外観が悪くなるという問題がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ビード幅の狭いレーザ加工を実現するためのレーザ加工装置を提供することにある。
第1の発明は、レーザ光を出射してワークを加工するレーザ加工装置であって、第1レーザ光を発振する第1レーザ発振器と、前記第1レーザ光よりも波長の短い第2レーザ光を発振する第2レーザ発振器と、前記第1レーザ発振器から出射された前記第1レーザ光を伝送する第1伝送ファイバと、前記第2レーザ発振器から出射された前記第2レーザ光を伝送する第2伝送ファイバと、前記第1伝送ファイバで伝送された前記第1レーザ光と、前記第2伝送ファイバで伝送された前記第2レーザ光と、を略同軸上に重ね合わせて前記ワークに対して出射するレーザ加工ヘッドと、を備え、前記レーザ加工ヘッドから前記ワークに出射される前記第2レーザ光の集光径は、前記第1レーザ光の集光径よりも小さい。
第1の発明では、長波長の第1レーザ光(例えば、800nm以上の近赤外レーザ光)と、短波長の第2レーザ光(例えば、600nm以下の青色レーザ光)とを略同軸上に重ね合わせてワークに対して出射する。このとき、第2レーザ光の集光径を、第1レーザ光の集光径よりも小さくしている。これにより、ビード幅の狭いレーザ加工を実現することができる。
具体的に、長波長の第1レーザ光は、例えば、銅などの高反射率材料のワークに対するレーザ吸収率は低いが、レーザ光の最大出力が高い。一方、短波長の第2レーザ光は、高反射率材料のワークに対するレーザ吸収率が高いが、レーザ光の最大出力が低い。
そこで、第2レーザ光の集光径を小さくしてキーホールを形成しつつ、第2レーザ光よりもレーザ吸収率の低い第1レーザ光をキーホールに出射するようにしている。
これにより、第1レーザ光をキーホール内で多重反射させながらキーホールの奥深くまで出射してワークを溶融することで、ビード幅を狭くしつつ、キーホールの溶込み深さを確保した溶接を行うことができる。
第2の発明は、第1の発明のレーザ加工装置において、前記第1伝送ファイバ及び前記第2伝送ファイバのうち少なくとも一方のコア径は、φ200μm以下である。
第2の発明では、第1伝送ファイバ及び第2伝送ファイバのうち少なくとも一方のコア径をφ200μm以下とすることで、ビーム品質を高めることができる。なお、コア径は、φ50~100μm程度に設定することが好ましい。
第3の発明は、第1又は2の発明のレーザ加工装置において、前記レーザ光のビームパワーの86%が含まれる86%NAは、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光のうち少なくとも一方が0.12以下である。
第3の発明では、第1レーザ光及び第2レーザ光のうち少なくとも一方の86%NAを、0.12以下とすることで、ビーム品質を高めることができる。なお、86%NAは、0.1以下に設定するのが好ましい。
また、NAを小さくすることで、レーザ加工ヘッドの鏡筒サイズを小さくして、装置が大型化するのを抑えることができる。
第4の発明は、第1又は2の発明のレーザ加工装置において、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光のうち少なくとも一方は、複数の波長のレーザ光を合成した波長合成レーザ光である。
第4の発明では、第1レーザ光及び第2レーザ光のうち少なくとも一方を、波長合成レーザ光としている。ここで、波長合成レーザ光は、特有の色収差の影響により、第1レーザ光と第2レーザ光との境界部がぼやけることとなる。これにより、第1レーザ光と第2レーザ光との境界部が急峻になることはなく、スパッタの発生や溶融プールのばたつきを抑えることができる。
本発明によれば、ビード幅の狭いレーザ加工を実現するためのレーザ加工装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
〈レーザ加工装置〉
図1に示すように、レーザ加工装置1は、互いに波長の異なる2種類のレーザ光を用いたハイブリットレーザ加工装置である。レーザ加工装置1は、ワークWの切断、溶接、穴開け等のレーザ加工を行う。
図1に示すように、レーザ加工装置1は、互いに波長の異なる2種類のレーザ光を用いたハイブリットレーザ加工装置である。レーザ加工装置1は、ワークWの切断、溶接、穴開け等のレーザ加工を行う。
レーザ加工装置1は、第1レーザ発振器2と、第2レーザ発振器3と、第1伝送ファイバ4と、第2伝送ファイバ5と、マニピュレータ6と、制御装置7と、レーザ加工ヘッド10と、を備える。
第1レーザ発振器2は、第1レーザ光L1を発振する。第1レーザ光L1は、例えば、近赤外レーザ光であり、その波長が900nm~1200nm程度である。
第2レーザ発振器3は、第2レーザ光L2を発振する。第2レーザ光L2の波長は、第1レーザ光L1の波長よりも短い。第2レーザ光L2は、例えば、青色レーザ光であり、その波長が400nm~450nm程度である。一般に、レーザ加工には、近赤外レーザ光が適用されるが、銅への吸収率が良い等との理由から、近年、青色レーザ光もレーザ加工に適用されつつある。
ここで、本実施形態では、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2のうち少なくとも一方を、複数の波長のレーザ光を合成した波長合成レーザ光としている。以下、第1レーザ光L1を波長合成レーザ光とする場合について説明する。
図2に示すように、第1レーザ発振器2は、半導体レーザデバイス21と、集光レンズ22と、透過型の回折格子23と、部分透過ミラー24とを有する。半導体レーザデバイス21の動作は、制御装置7によって制御される。
半導体レーザデバイス21は、複数のレーザダイオード30を有する。レーザダイオード30は、複数のエミッタを有する。レーザダイオード30は、複数のエミッタの出力を波長合成することで、波長合成されたレーザ光を出射する。
複数のレーザダイオード30は、互いに波長の異なるレーザ光を出射する。図2に示す例では、第1レーザダイオード31、第2レーザダイオード32、及び第3レーザダイオード33を配置した構成としたが、この構成に限定するものではない。
第1レーザダイオード31は、波長合成された多波長レーザ光の中心波長よりも長い波長(例えば、1000nm)のレーザ光を出射する長波長レーザダイオードである。
第2レーザダイオード32は、多波長レーザ光の中心波長と略同じ波長のレーザ光を出射する。
第3レーザダイオード33は、多波長レーザ光の中心波長よりも短い波長(例えば、950nm)のレーザ光を出射する短波長レーザダイオードである。
半導体レーザデバイス21における回折格子23側の端部は、レーザ出射端である。半導体レーザデバイス21におけるレーザ出射端と反対側の端部は、レーザ光を全反射する全反射端である。
半導体レーザデバイス21のレーザ出射端から出射されたレーザ光は、集光レンズ22で集光された後、回折格子23を通過し、部分透過ミラー24で一部が反射される。
部分透過ミラー24で反射されたレーザ光は、回折格子23及び集光レンズ22を通過し、出射された半導体レーザデバイス21に戻る。半導体レーザデバイス21に戻ったレーザ光は、半導体レーザデバイス21の全反射端で反射される。
このように、部分透過ミラー24と、半導体レーザデバイス21の全反射端との間で共振が起こり、半導体レーザデバイス21からのレーザ光が発振される。これにより、第1伝送ファイバ4には、第1レーザ発振器2より、波長合成された第1レーザ光L1としての複数の波長成分を有する多波長レーザ光が入射される。
なお、第2レーザ光L2についても同様に、波長合成レーザ光としてもよい。この場合、第2レーザ光L2を発振する第2レーザ発振器3は、第1レーザ発振器2と同様に、半導体レーザデバイス、集光レンズ、回折格子、及び部分透過ミラーを有する構成とすればよい。
第1伝送ファイバ4は、第1レーザ発振器2から出射された第1レーザ光L1をレーザ加工ヘッド10へ伝送する。第2伝送ファイバ5は、第2レーザ発振器3から出射された第2レーザ光L2をレーザ加工ヘッド10へ伝送する。
レーザ加工ヘッド10は、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を、略同一光軸上に重ね合わせてワークWの表面に出射する。レーザ加工ヘッド10は、マニピュレータ6の先端に取り付けられる。レーザ加工ヘッド10の詳細については、後述する。
マニピュレータ6は、レーザ加工ヘッド10を移動させる。制御装置7は、マニピュレータ6の動作、第1レーザ発振器2による第1レーザ光L1の発振、第2レーザ発振器3による第2レーザ光L2の発振などを制御する。
〈レーザ加工ヘッド〉
図3に示すように、レーザ加工ヘッド10は、筐体15と、集光光学系16と、を有する。筐体15には、第1伝送ファイバ4と、第2伝送ファイバ5と、が接続される。筐体15には、第1伝送ファイバ4からの第1レーザ光L1と、第2伝送ファイバ5からの第2レーザ光L2とが、互いに並行するように入射する。筐体15の内部には、集光光学系16が設けられる。レーザ加工ヘッド10は、集光光学系16によって、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を集光して、ワークWに出射する。
図3に示すように、レーザ加工ヘッド10は、筐体15と、集光光学系16と、を有する。筐体15には、第1伝送ファイバ4と、第2伝送ファイバ5と、が接続される。筐体15には、第1伝送ファイバ4からの第1レーザ光L1と、第2伝送ファイバ5からの第2レーザ光L2とが、互いに並行するように入射する。筐体15の内部には、集光光学系16が設けられる。レーザ加工ヘッド10は、集光光学系16によって、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を集光して、ワークWに出射する。
集光光学系16は、第1コリメートレンズ11と、第2コリメートレンズ12と、ベンドミラー13と、ダイクロイックミラー40と、ワーク側集光レンズ50と、イメージセンサ60と、検出側集光レンズ70と、アパーチャー71と、ミラー側アクチュエータ80と、第1レンズ側アクチュエータ81と、第2レンズ側アクチュエータ82と、を有する。
第1コリメートレンズ11は、第1レーザ光L1をコリメート(平行光化)する。第1レーザ光L1は、第1コリメートレンズ11によって略平行光となる。
第2コリメートレンズ12は、第2レーザ光L2をコリメート(平行光化)する。第2レーザ光L2は、第2コリメートレンズ12によって略平行光となる。
ベンドミラー13は、第1レーザ光L1の光軸に並行して筐体15内に入射した第2レーザ光L2の光軸を、第1レーザ光L1の光軸に交差する方向(具体的には、直交する方向)に曲げる。
ダイクロイックミラー40は、特定の波長領域の光の大部分を透過し、それ以外の波長領域の光の大部分を反射するミラーである。本実施形態では、ダイクロイックミラー40は、第1レーザ光L1の大部分をワーク側集光レンズ50に向けて略真直ぐに透過する一方、第1レーザ光L1の残部をアパーチャー71に向けて略直角に反射する。
ダイクロイックミラー40は、ベンドミラー13で反射された第2レーザ光L2の大部分をワーク側集光レンズ50に向けて略直角に反射する一方、第2レーザ光L2の残部をアパーチャー71に向けて略真直ぐに透過する。
ダイクロイックミラー40を透過した第1レーザ光L1と、ダイクロイックミラー40により反射した第2レーザ光L2との光軸方向の進行側には、ワークWが配置される。すなわち、ダイクロイックミラー40は、第1レーザ光L1の大部分をワークW側に透過するとともに、第2レーザ光L2の大部分をワークW側に反射する。
第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の大部分とは、例えば、エネルギー換算で、ダイクロイックミラー40に入射する前の第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の95%~99.9%程度である。第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の残部とは、例えば、エネルギー換算で、ダイクロイックミラー40に入射する前の第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の0.1%~5%程度である。
ワーク側集光レンズ50は、光軸方向において、ダイクロイックミラー40とワークWとの間に配置される。ワーク側集光レンズ50は、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を集光する。ワーク側集光レンズ50は、集光した第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を、ワークWの表面に出射する。ワーク側集光レンズ50は、色収差補正機能を有してもよい。ワーク側集光レンズ50によって出射される第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の光軸方向は、互いに略一致する。
イメージセンサ60は、受光面に結像させた光の明暗を電荷の量に光電変換し、それを読み出して電気信号に変換する撮像素子である。例えば、イメージセンサ60は、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子で構成される。イメージセンサ60は、ダイクロイックミラー40により反射した第1レーザ光L1の残部及びダイクロイックミラー40を透過した第2レーザ光L2の残部を、受光面で受光する。
検出側集光レンズ70及びアパーチャー71は、光軸方向において、ダイクロイックミラー40とイメージセンサ60との間に配置される。
検出側集光レンズ70は、光軸方向において、アパーチャー71よりもイメージセンサ60側に位置する。検出側集光レンズ70は、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を集光する。検出側集光レンズ70は、集光した第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を、イメージセンサ60の受光面に照射する。検出側集光レンズ70は、色収差補正機能を有してもよい。
アパーチャー71は、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2における余分な光束を遮断して、瞳径を小さくする。検出側集光レンズ70から出射される第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の光軸方向は、互いに略一致する。
ミラー側アクチュエータ80は、ベンドミラー13の傾きを変化させる。ミラー側アクチュエータ80は、例えば、モータやピエゾ素子等で構成される。ミラー側アクチュエータ80によるベンドミラー13の傾き変化によって、ベンドミラー13により曲げられる第2レーザ光L2の光軸の向きが変化する。これにより、第2レーザ光L2の集光位置が変化する。
第1レンズ側アクチュエータ81は、第1コリメートレンズ11を、光軸方向に移動させる。第1レンズ側アクチュエータ81は、例えば、モータやピエゾ素子等で構成される。第2レンズ側アクチュエータ82は、第2コリメートレンズ12を、光軸方向に移動させる。第2レンズ側アクチュエータ82は、例えば、モータやピエゾ素子等で構成される。第1レンズ側アクチュエータ81及び第2レンズ側アクチュエータ82による第1コリメートレンズ11及び第2コリメートレンズ12の光軸方向における移動によって、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2のスポット径が変化する。
なお、第1レンズ側アクチュエータ81及び第2レンズ側アクチュエータ82によって、第1コリメートレンズ11及び第2コリメートレンズ12を光軸方向に移動させる際、第1コリメートレンズ11及び第2コリメートレンズ12は、必ずしも光軸方向に真直ぐに移動するのではなく、光軸方向に直交する水平方向に多少動いたり、多少傾いたりすることがある。
〈レーザ光の集光径について〉
ところで、レーザ加工後のビード幅が広くなると、溶接痕が目立ち、溶接箇所の外観が悪くなるという問題がある。そこで、本実施形態では、第1レーザ光L1の集光径と、第2レーザ光L2の集光径とを調整することで、ビード幅の狭いレーザ加工を実現できるようにした。
ところで、レーザ加工後のビード幅が広くなると、溶接痕が目立ち、溶接箇所の外観が悪くなるという問題がある。そこで、本実施形態では、第1レーザ光L1の集光径と、第2レーザ光L2の集光径とを調整することで、ビード幅の狭いレーザ加工を実現できるようにした。
本実施形態では、長波長の第1レーザ光L1(例えば、800nm以上の近赤外レーザ光)と、短波長の第2レーザ光L2(例えば、600nm以下の青色レーザ光)とを略同軸上に重ね合わせてワークWに対して出射する。このとき、第2レーザ光L2の集光径を、第1レーザ光L1の集光径よりも小さくする。これにより、ビード幅の狭いレーザ加工を実現することができる。
具体的に、長波長の第1レーザ光L1は、例えば、銅などの高反射率材料のワークWに対するレーザ吸収率は低いが、レーザ光の最大出力が高い。一方、短波長の第2レーザ光L2は、高反射率材料のワークWに対するレーザ吸収率が高いが、レーザ光の最大出力が低い。
そこで、図4に示すように、第2レーザ光L2の集光径を小さくして、ワークWを狭い範囲で溶融させながらキーホールKを形成しつつ、第2レーザ光L2よりもレーザ吸収率の低い第1レーザ光L1をキーホールKの内部に出射する。
ここで、第1レーザ光L1は、ワークWが液相状態にあるときに、優先的に吸収されることとなる。そのため、ワークWに対するレーザ吸収率の高い第2レーザ光L2によってワークWを深さ方向に溶融させ、キーホールKを形成しておくことで、第1レーザ光L1は、キーホールKに沿ってワークWの深さ方向に優先的に進むように方向付けられることとなる。
これにより、第1レーザ光L1をキーホールKの内部で多重反射させながらキーホールKの奥深くまで出射してワークWを溶融することで、ビード幅を狭くしつつ、キーホールKの溶込み深さを確保した溶接を行うことができる。
〈ビーム品質について〉
ところで、レーザ光のビーム品質は、伝送ファイバのコア径と、NA(Numerical Aperture、開口数)とによって決定される。NAは、伝送ファイバ(光ファイバ)に伝搬可能な光(伝搬モード)を入射させる(あるいは、光ファイバから出射する)ことができる最大の入出射角を表し、または、レンズの分解能や光像の明るさを表す数値である。
ところで、レーザ光のビーム品質は、伝送ファイバのコア径と、NA(Numerical Aperture、開口数)とによって決定される。NAは、伝送ファイバ(光ファイバ)に伝搬可能な光(伝搬モード)を入射させる(あるいは、光ファイバから出射する)ことができる最大の入出射角を表し、または、レンズの分解能や光像の明るさを表す数値である。
具体的に、ヘッド光学系の倍率は、(集光レンズの焦点距離)/(コリメートレンズの焦点距離)によって決定される。また、レーザ光の集光径は、(伝送ファイバのコア径)×(ヘッド倍率)によって決定される。
ここで、ワークWの溶込み深さは、レーザ光のエネルギー密度に依存するため、伝送ファイバのコア径が大きい場合には、たとえ、レーザ光の出力が高くても、倍率を低く抑える必要がある。そのため、コア径は極力小さい方が望ましい。
そこで、本実施形態では、第1伝送ファイバ4及び第2伝送ファイバ5のうち少なくとも一方のコア径を、φ200μm以下とするようにしている。なお、コア径は、φ50~100μm程度に設定することが好ましい。
次に、NAについて検討すると、伝送ファイバから出射されたレーザ光は、コリメータレンズで平行光にされる。そして、この平行光の光束径によって、レーザ加工ヘッド10の鏡筒サイズが決定される。そのため、NAが大きいと、鏡筒サイズが大型化してしまい、レーザ加工ヘッド10のコストが増大するというデメリットがある。
そこで、本実施形態では、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2のうち少なくとも一方の86%NAを、0.12以下とするようにしている。ここで、86%NAとは、レーザ光のビームパワーの86%が含まれるNAである。なお、86%NAは、0.1以下に設定するのが好ましい。
ここで、第1レーザ光L1を伝送する第1伝送ファイバ4のコア径をφ100μm、NAを0.1とすると、第1レーザ光L1のビーム品質は、100×(0.1/2)×0.86=4.3[mm・mrad]となる。
一方、第2レーザ光L2を伝送する第2伝送ファイバ5のコア径をφ50μm、NAを0.1とすると、第2レーザ光L2のビーム品質は、50×(0.1/2)×0.86=2.15[mm・mrad]となる。
このように、コア径を小さくするとともに、NAを小さくすることで、ビーム品質を高めることができる。また、NAを小さくすることで、レーザ加工ヘッド10の鏡筒サイズを小さくして、装置が大型化するのを抑えることができる。
〈波長合成レーザ光について〉
上述したように、NAは小さい方が好ましい。一般的に、NAは、伝送ファイバの入射端の集光角度に依存する。ここで、レーザ出力を高めるためには、複数の光源を空間的に配置する方法が一般的である。しかしながら、空間的に配置すると、全体的な集光角度が大きくなり、結果的に、伝送ファイバの出射NAは大きくならざるを得ない。
上述したように、NAは小さい方が好ましい。一般的に、NAは、伝送ファイバの入射端の集光角度に依存する。ここで、レーザ出力を高めるためには、複数の光源を空間的に配置する方法が一般的である。しかしながら、空間的に配置すると、全体的な集光角度が大きくなり、結果的に、伝送ファイバの出射NAは大きくならざるを得ない。
そこで、本実施形態では、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2のうち少なくとも一方を、複数の波長のレーザ光を合成した波長合成レーザ光とするようにしている。なお、本実施形態では、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の両方を波長合成レーザ光としている。
このように、波長合成技術を採用したレーザ光であれば、同一空間に複数波長のレーザ光を配置することが可能となり、結果的に、伝送ファイバの入射角度を抑えることができる。これにより、伝送ファイバの出射NAも小さく抑えることができる。
また、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2のうち少なくとも一方を、波長合成レーザ光とすることで、スパッタの発生や溶融プールのばたつきを抑えることができる。
具体的に、図5に示すように、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を、単一波長の一般的なレーザ光とした比較例では、第1レーザ光L1と第2レーザ光L2との境界部が急峻になり過ぎるため、境界部で生じる突沸由来のスパッタの発生や溶融プールのばたつきが生じるおそれがある。
これに対し、波長合成レーザ光は、特有の色収差の影響により、第1レーザ光L1と第2レーザ光L2との境界部がぼやけることとなる。これにより、第1レーザ光と第2レーザ光との境界部が急峻になることはなく、スパッタの発生や溶融プールのばたつきを抑えることができる。
このように、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を波長合成レーザ光とすれば、複数波長による色収差の影響が、レーザ溶接を行う上で良好な方向に働くことで、ビード幅を狭くしつつ、キーホールの溶込み深さを確保した溶接を行うことができる。
〈レーザ溶接結果について〉
以下、本実施形態に係るレーザ加工装置1を用いたレーザ溶接結果について説明する。
以下、本実施形態に係るレーザ加工装置1を用いたレーザ溶接結果について説明する。
図6に示す例では、第1伝送ファイバ4のコア径をφ100μm、第2伝送ファイバ5のコア径をφ50μm、第1伝送ファイバ4及び第2伝送ファイバ5からそれぞれ出射される第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の86%NAを0.1、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を両方とも波長合成レーザ光としている。
また、近赤外レーザ光である第1レーザ光L1の出力を4000W、青色レーザ光である第2レーザ光L2の出力を400Wとし、加工速度を100mm/secとした。また、ワークWは、1mmの銅板と1mmの銅板とを重ね合わせて溶接するものとした。なお、ワークWは、2枚の銅板をL字状に配置してその隅部を溶接するものであってもよい。また、2枚の銅板を互いに突き合わせた状態で、突き合わせ箇所を溶接するものであってもよい。
また、第1レーザ光L1の集光径をφ220μm、第2レーザ光L2の集光径をφ200μmとしている。つまり、第2レーザ光L2の集光径を、第1レーザ光L1の集光径よりも小さくしている。なお、第1レーザ光L1の集光位置と、第2レーザ光L2の集光位置とを、光軸方向及び光軸方向に直交する方向について一致させている。
図6に示すように、第2レーザ光L2の集光径(φ200μm)を、第1レーザ光L1の集光径(φ220μm)よりも小さくした場合、ビード幅が1mm(1000μm)となった。このビード幅は、ワークWへの加工の主力パワーとなり、加工に主に寄与する近赤外レーザ光の第1レーザ光L1の集光径(φ220μm)の4.55倍に相当する。また、ワークWの裏面側からも視認できるような深い溶融ビードが形成された。
これは、200μm以上のビード幅領域については、青色レーザ光である第2レーザ光L2の寄与が少ないと考えられるが、近赤外レーザ光である第1レーザ光L1自身の熱伝導及び波長合成レーザ特有の色収差の影響により、ビード幅が狭く、溶込みの深い溶接が得られたものと考えられる。
一方、図7に示す比較例では、近赤外レーザ光である第1レーザ光L1の集光径をφ400μm、青色レーザ光である第2レーザ光L2の集光径をφ600としている。つまり、第2レーザ光L2の集光径を、第1レーザ光L1の集光径よりも大きくしている。
なお、図7に示す比較例では、図6に示す例と同様に、第1レーザ光L1の出力を4000W、第2レーザ光L2の出力を400Wとし、加工速度を100mm/secとした。また、ワークWは、1mmの銅板と1mmの銅板とを重ね合わせて溶接するものとした。
図7に示す比較例では、第2レーザ光L2のビーム品質が悪いため、第2レーザ光L2の集光径を大きくしている。そのため、ワークWにおける第2レーザ光L2の出射範囲が広くなり、ビード幅が2.3mm(2300μm)となった。このビード幅は、ワークWへの加工の主力パワーとなり、加工に主に寄与する近赤外レーザ光の第1レーザ光L1の集光径(φ400μm)の5.75倍に相当する。このように、図7に示す比較例では、本実施形態の場合に比べて、ビード幅が広くなる傾向にあった。
以上のように、本実施形態に係るレーザ加工装置1では、長波長の第1レーザ光L1と、短波長の第2レーザ光L2とを略同軸上に重ね合わせてワークWに対して出射する。このとき、第2レーザ光L2の集光径を、第1レーザ光L1の集光径よりも小さくしている。これにより、ビード幅の狭いレーザ加工を実現することができる。
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
本実施形態では、第1レーザ光L1を近赤外光、第2レーザ光L2を青色光としたが、これに限定されない。第2レーザ光L2は、銅への吸収率という観点から、青色光の代わりに、緑色光(波長:450nm~550nm程度)としてもよい。
以上説明したように、本発明は、ビード幅の狭いレーザ加工を実現するためのレーザ加工装置を提供することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
1 レーザ加工装置
2 第1レーザ発振器
3 第2レーザ発振器
4 第1伝送ファイバ
5 第2伝送ファイバ
10 レーザ加工ヘッド
L1 第1レーザ光
L2 第2レーザ光
W ワーク
2 第1レーザ発振器
3 第2レーザ発振器
4 第1伝送ファイバ
5 第2伝送ファイバ
10 レーザ加工ヘッド
L1 第1レーザ光
L2 第2レーザ光
W ワーク
Claims (4)
- レーザ光を出射してワークを加工するレーザ加工装置であって、
第1レーザ光を発振する第1レーザ発振器と、
前記第1レーザ光よりも波長の短い第2レーザ光を発振する第2レーザ発振器と、
前記第1レーザ発振器から出射された前記第1レーザ光を伝送する第1伝送ファイバと、
前記第2レーザ発振器から出射された前記第2レーザ光を伝送する第2伝送ファイバと、
前記第1伝送ファイバで伝送された前記第1レーザ光と、前記第2伝送ファイバで伝送された前記第2レーザ光と、を略同軸上に重ね合わせて前記ワークに対して出射するレーザ加工ヘッドと、を備え、
前記レーザ加工ヘッドから前記ワークに出射される前記第2レーザ光の集光径は、前記第1レーザ光の集光径よりも小さい
レーザ加工装置。 - 請求項1のレーザ加工装置において、
前記第1伝送ファイバ及び前記第2伝送ファイバのうち少なくとも一方のコア径は、φ200μm以下である
レーザ加工装置。 - 請求項1又は2のレーザ加工装置において、
前記レーザ光のビームパワーの86%が含まれる86%NAは、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光のうち少なくとも一方が0.12以下である
レーザ加工装置。 - 請求項1又は2のレーザ加工装置において、
前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光のうち少なくとも一方は、複数の波長のレーザ光を合成した波長合成レーザ光である
レーザ加工装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022111050A JP2024009490A (ja) | 2022-07-11 | 2022-07-11 | レーザ加工装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2022111050A JP2024009490A (ja) | 2022-07-11 | 2022-07-11 | レーザ加工装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2024009490A true JP2024009490A (ja) | 2024-01-23 |
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ID=89620382
Family Applications (1)
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JP2022111050A Pending JP2024009490A (ja) | 2022-07-11 | 2022-07-11 | レーザ加工装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2024009490A (ja) |
-
2022
- 2022-07-11 JP JP2022111050A patent/JP2024009490A/ja active Pending
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