本発明の一実施形態に係る昇降機システム1について図1乃至図6を参照して説明する。
図1に示すように、昇降機システム1は、建築物の上階、中階、下階の間で乗客や荷物(以下説明においてまとめて乗客等として説明する。)を運搬するシステムである。具体的に、昇降機システム1は、上階に設けられる上階乗場2と、中階に設けられる中階乗場3と、下階に設けられる下階乗場4と、複数のかごK1~K4と、複数のかごK1~K4が内部を移動する昇降路A,Bと、複数のかごK1~K4を移動させる駆動手段6と、かごK1~K4の運行についての制御をする制御部と、を備える。本実施形態で、上階、中階、及び下階は、それぞれ建築物の1階床ずつ離間している。
図1及び図2に示すように、昇降路A,Bは、複数設けられ、各昇降路A,Bが隣接して配置されており、本実施形態では2本が隣接して配置されている。また、本実施形態の昇降路A,B内には、内部を複数のかごK1~K4が移動可能である。各昇降路A,Bには、昇降方向(上下方向)に延びるガイドレール(図示しない)がそれぞれ設けられ、昇降路A,B内を移動するかごK1~K4は、ガイドレールに沿って昇降方向に移動可能である。
図3に示すように、かごK1~K4は、箱型で、内部に乗客等を積載可能な箱形のかご本体71と、各乗場(上階乗場2、中階乗場3、及び下階乗場4)でかご本体71に乗客等を昇降させるための扉72と、扉72を開閉させる開閉手段(図示しない)と、かごK1~K4内に対して報知可能なかご報知部(図示しない)と、を備える。扉72は開閉可能であり、開いた状態で各乗場2~4からかご本体71に乗客等が乗降可能となる。また、かご報知部は、かごK1~K4内に対してかごK1~K4の運行に関する情報を報知可能に構成されており、本実施形態ではかご本体71に設けられるかご内スピーカとして構成されている。
本実施形態の扉72は、センターオープン方式であり、2枚の板状体が開閉方向で反対向きに移動して開閉するように構成されている。また、扉72は各かごK1~K4に複数設けられ、具体的に、各かごK1~K4には乗車用扉721と、降車用扉722と、が設けられる。乗車用扉721及び降車用扉722は、かご本体71基準で対向するように配置されている。開閉手段は、乗車用扉721及び降車用扉722のそれぞれに対応して設けられ、制御部の制御に基づいて乗車用扉721及び降車用扉722を開閉させる。また、開閉手段は、乗車用扉721及び降車用扉722を開閉させる際に、乗車用扉721及び降車用扉722に対向する乗場ドア52と係合して、該乗場ドア52を開閉するように構成されている。
また、図1に示すように、かごK1~K4は、駆動手段6と連結される連結部73を備える。連結部73は、駆動手段6のワイヤ61を連結可能な部位であり、本実施形態では、かごK1~K4の下端部に設けられる。連結部73は、ワイヤ61と連結しつつも、ワイヤ61が延伸方向に移動することを許容するように構成されている。本実施形態の連結部73は、ワイヤ61と係合可能な滑車である。本実施形態でかごK1~K4は、ワイヤ61によって下方から支持されて、ガイドレールに沿って移動する。
本実施形態で、かごK1~K4は4台設けられ、一対(2本)の昇降路A,Bに上下方向に離間して2台ずつ配置される。また、各昇降路A,Bに配置されるかごK1~K4のうち、上側に配置される一対の上側かご7Uは、上階乗場2と中階乗場3の間を移動可能であり、下側に配置される一対の下側かご7Dは、中階乗場3と下階乗場4の間を移動可能である。一対の上側かご7Uの一方のかごK1と一対の下側かご7Dの他方のかごK2が一方の昇降路Aに配置され、一対の上側かご7Uの他方のかごK3と一対の下側かご7Dの一方のかごK4が他方の昇降路Bに配置される。また、一対の上側かご7Uは、上階乗場2と中階乗場3を往復するように構成され、一対の下側かご7Dは下階乗場4と中階乗場3を往復するように構成されている。さらに、一対の上側かご7Uと一対の下側かご7Dでは、乗車用扉721及び降車用扉722の位置関係が逆になるように構成されている(図2及び図5参照)。
図1に示すように、駆動手段6は、かごK1~K4を昇降させるための駆動力を供給する。具体的に、駆動手段6は、かごK1~K4に連結される索状のワイヤ61と、ワイヤ61を巻き上げ又は巻き下げる巻上機62と、を備える。ワイヤ61は、延伸方向の一端が一方の昇降路Aに固定され、他端が他方の昇降路Bに固定され、延伸方向の中途部分が巻上機62に係合している。巻上機62は、回動することで、係合するワイヤ61の延伸方向一方側を巻き上げつつ他方側を巻き下げる、又は他方側を巻き上げつつ一方側を巻き下げる。具体的に、巻上機62は、回動して、ワイヤ61の延伸方向で巻上機62よりも一方側に位置しているワイヤ61を他方側に移動させることで、一方側を巻き上げつつ他方側を巻き下げ、また、巻上機62よりも他方側のワイヤ61を一方側に移動させることで、他方側を巻き上げつつ一方側を巻き下げる。
駆動手段6は、隣接する一対の昇降路A,Bに亘って設けられている。具体的に、駆動手段6は、駆動手段6が一対の昇降路A,Bの間に位置するように設けられている。このような駆動手段6においては、巻上機62の動作によって上下方向に移動可能となるようにかごK1~K4が連結され、具体的には、ワイヤ61とかごK1~K4の連結部73とが連結されている。また、ワイヤ61には、ワイヤ61の延伸方向で巻上機62よりも一方側及び他方側にそれぞれかごK1~K4が連結されている。このような構成によれば、ワイヤ61の延伸方向における一方側と他方側のつり合いがワイヤ61に連結される一対のかご(かごK1とかごK3、かごK2とかごK4)によって実現されつつ、ワイヤ61に連結される一対のかごK1~K4を同時に移動させることができるので、運転効率が良い。また、ワイヤ61は巻上機62によって、巻上機62の一方側が巻き上げられつつ他方側が巻き下げられる、又は他方側が巻き上げられつつ一方側が巻き下げられるので、駆動手段6に連結された一方側のかご(かごK1又はかごK3)と他方側のかご(かごK2又はかごK4)が同期して上下方向において反対向きに移動する。
また、本実施形態で駆動手段6は、上下方向に離間して複数設けられ、上方に配置される駆動手段6には一対の上側かご7Uが連結され、下方に配置される駆動手段6には一対の下側かご7Dが連結される。具体的に、上側に設けられる駆動手段6には、一対の上側かご7Uのうち一方のかごK1がワイヤ61の延伸方向で巻上機62よりも一方側に、一対の上側かご7Uのうち他方のかごK3がワイヤ61の延伸方向で巻上機62よりも他方側に位置するように連結されるので、一対の上側かご7Uは、駆動手段6によって互いに反対向きに同期して移動させられる。また、下側に設けられる駆動手段6には、一対の下側かご7Dのうち一方のかごK2がワイヤ61の延伸方向で巻上機62よりも一方側に、一対の下側かご7Dのうち他方のかごK4がワイヤ61の延伸方向で巻上機62よりも他方側に位置するように連結されるので、一対の下側かご7Dは、駆動手段6によって互いに反対向きに同期して移動させられる。また、上方に設けられる駆動手段6は、一対の上側かご7Uのそれぞれが少なくとも上階乗場2と中階乗場3の間を移動させることができ、下側に設けられる移動手段は、一対の下側かご7Dのそれぞれが少なくとも中階乗場3と下階乗場4の間を移動させることができるように構成されている。
図3及び図4に示すように、各乗場2~4には、乗客等がかごK1~K4に乗降する位置である乗降部51と、乗降部51と昇降路A,Bを仕切る乗場ドア52と、かごK1~K4の運行に関する情報を報知する乗場報知部53と、が設けられる。乗場ドア52は、後述する上行乗降部511及び昇降路A,Bを仕切る上行乗場ドア521と、後述する下行乗降部512及び昇降路A,Bを仕切る下行乗場ドア522と、を備える。また、乗場ドア52は、乗車用扉721及び降車用扉722の開閉動作に従動して開閉する。なお、図3、図4及び図5には、図2(a)における中階乗場3の状態を図示している。
図1及び図2に示すように、乗場2~4には、上階乗場2、中階乗場3、及び、下階乗場4が含まれる。上階乗場2、中階乗場3、及び、下階乗場4は、昇降路A,Bの延伸方向(上下方向)に離間して配置されており、本実施形態で上階乗場2と中階乗場3の昇降路A,Bの延伸方向における距離及び中階乗場3と下階乗場4の昇降路A,Bの延伸方向における距離は略等しい。
図3に示すように、乗降部51は、上行乗降部511と、下行乗降部512と、を備える。上行乗降部511と下行乗降部512は、上下方向及び複数の昇降路A,Bの隣接方向と直交する方向において、昇降路A,Bの一方側又は他方側に設けられ、上行乗降部511と下行乗降部512で昇降路A,Bを挟むように配置されている。また、上行乗降部511は、上方に向かう乗客等が乗車及び降車の少なくとも一方をする位置であり、具体的には、下方から上方に移動したかごK1~K4に乗った乗客等が降車し、また、上方に移動するかごK1~K4に乗客等が乗車する位置である。下行乗降部512は、下方に向かう乗客等が乗車及び降車の少なくとも一方をする位置であり、具体的には、上方から下方に移動したかごK1~K4に乗った乗客等が降車し、また、下方に移動するかごK1~K4に乗客等が乗車する位置である。なお、上下方向の端階における上行乗降部511及び下行乗降部512では、乗車及び降車の一方のみが行われる。具体的に、上側の端階の上行乗降部511では、降車のみが行われ、下行乗降部512では乗車のみが行われる。また、下側の端階の上行乗降部511では乗車のみが行われ、下行乗降部512では降車のみが行われる。
図6に示すように、上行乗降部511と下行乗降部512は、上下方向に並ぶ乗場2~4において昇降路A,Bを基準とした位置が互い違いとなるように設けられている。即ち、中階乗場3において、昇降路A,Bの一方側に上行乗降部511が、他方側に下行乗降部512が設けられ、上階乗場2及び下階乗場4において、昇降路A,Bの一方側に下行乗降部512が、他方側に上行乗降部511が設けられている。具体的には、中階乗場3の上行乗降部511は、上側かご7Uの乗車用扉721及び下側かご7Dの降車用扉722が面するように設けられ、下行乗降部512には上側かご7Uの降車用扉722及び下側かご7Dの乗車用扉721が面するように設けられ、上階乗場2及び下階乗場4の上行乗降部511及び下行乗降部512は、中階乗場3における上行乗降部511及び下行乗降部512の配置と反対になるように設けられる。このように、かごK1~K4は、2つの乗場を往復するように構成され、かつ、かごK1~K4には、かご本体71基準で対向する位置に乗車用扉721及び降車用扉722が設けられ、かごK1~K4が往復する両乗場2~4には上行乗降部511と下行乗降部512が互い違いに設けられるので、かごK1~K4内における乗客等の移動方向を上りの場合及び下りの場合の両方で一方向に定めることができる。よって、乗客等のかごK1~K4への乗降を円滑にすることができる。
図3及び図4に示すように、乗場報知部53は、乗降部51における上行乗降部511又は下行乗降部512を区別するための情報を表示する方向表示部531と、複数の昇降路A,Bのうちどの昇降路A,Bに乗車すべきかごK1~K4が到着するかに関する情報を表示する乗車位置表示部532と、乗継先のかごK1~K4の位置を示す乗継案内部533と、乗場2~4に対してかごK1~K4の運行に関する情報を報知する乗場スピーカ(図示しない)と、を備える。
方向表示部531は、乗降部51における床面(図3参照)や壁面(図4参照)に設けられる、上行乗降部511又は下行乗降部512を区別するための表示であり、本実施形態では、上行乗降部511を示す表示として「上行き」が、下行乗降部512を示す表示として「下行き」の表示が設けられる。また、上下方向における端階においては、上行乗降部511及び下行乗降部512の一方に「降車専用」の表示がされる。具体的には、下側の端階(本実施形態では下階)における上行乗降部511とは反対側の乗降部51(下行乗降部512)及び上側の端階(本実施形態では上階)における下行乗降部512とは反対側の乗降部51(上行乗降部511)に「降車専用」の表示がされる。なお、方向表示部531の具体的な構成は、上記した構成に限らない。
乗車位置表示部532は、乗車すべきかごK1~K4が到着する位置を示す情報を表示する。即ち、乗車位置表示部532は、どの乗場ドア52からかごに乗車すべきかを表示する。本実施形態の乗車位置表示部532は、乗場ドア52の周囲に設けられる乗車可否を示す表示である。具体的に、乗車位置表示部532は、乗場ドア52の周囲に設けられるモニタであり、乗車すべき乗場ドア52に対応したモニタにはマルの表示がされ、乗車すべき乗場ドア52以外に対応したモニタにはバツの表示がされる。このような乗車位置表示部532は、制御部の制御に基づいて表示する内容を変更可能である。なお、このような構成に限らず、例えば、乗車位置表示部532として、各乗場ドア52に対応した位置に発光体を設け、発光体の発光で乗車すべき乗場ドア52を示すように構成することもできる。
乗継案内部533は、降車した乗客等に対して乗継すべきかごK1~K4の位置を示すための表示をする。具体的に、乗継案内部533は、降車した乗客等が視認可能な位置に設けられ、降車した乗客等が乗継をするための移動方向を表示する。本実施形態の乗継案内部533は、各乗場ドア52の近傍の床面にそれぞれ設けられる表示であり、乗継先のかごK1~K4が位置する方向(乗継先のかごK1~K4に乗車できる乗場ドア52の方向)を示す矢印を表示する。このような構成によれば、乗継案内部533によって、降車する乗客等が、降車時に乗継ぎのための移動方向を把握することが容易になる。、したがって、降車した直後の乗客等が乗継すべきかごを探して滞留することを抑制できるため、降車を円滑に行うことができる。このような乗継案内部533は、制御部の制御に基づいて表示する内容を変更可能である。なお、本実施形態では、乗客等が降車するかごK1~K4に対応した乗継案内部533以外の乗継案内部533も乗継のための移動方向を表示し、具体的には、各乗継案内部533が乗継先のかごK1~K4に向かう矢印を表示する。また、本実施形態で端階における降車専用の乗降部51には、乗継案内部533が設けられないが、このような構成に限らず、例えば、乗継案内部533の代わりに降車後の移動方向を示す表示をする案内を設けることもできる。
制御部は、複数のかごK1~K4の運行についての制御を行う。具体的に、制御部は、昇降路A,B内におけるかごK1~K4の移動についての移動制御、扉72の開閉に関する開閉制御、及び、乗場報知部53及びかご内スピーカでの乗客等に対する案内に関する案内制御を行う。
移動制御は、昇降路A,B内におけるかごK1~K4の移動に関する制御である。具体的に、移動制御では、駆動手段6を制御して、かごK1~K4を昇降路A,B内において上下に移動させる。本実施形態の移動制御では、乗継同期制御と到着同期制御とを行う。本実施形態の移動制御では、後述する開閉制御において、すべてかごK1~K4の扉72が閉じたことを確認してからかごK1~K4を移動させる。
乗継同期制御は、中階乗場3に上側かご7Uと下側かご7Dが到着するタイミングを同期する制御である。具体的に乗継同期制御は、上方に設けられる駆動手段6と下方に設けられる駆動手段6を制御して、一対の上側かご7Uの一方(かごK1)と下側かご7Dの一方(かごK4)が中階乗場3に到着するタイミングを同期し、かつ、一対の上側かご7Uの他方(かごK3)と下側かご7Dの他方(かごK2)が中階乗場3に到着するタイミングを同期する制御である。即ち、乗継同期制御では、上方に設けられる駆動手段6と下方に設けられる駆動手段6が各かごK1~K4を移動させる時期及び移動させる速度を制御して、上階乗場2から中階乗場3に移動するかご(上側かご7U)と下階乗場4から中階乗場3に移動するかご(下側かご7D)が中階乗場3に到着するタイミングを同期させる。ここで、乗継同期制御における到着するタイミングが同期するとは、到着するタイミングが完全に一致する場合に限らず、乗継に影響のない程度だけずれて到着する場合を含み、具体的には、一方のかご(例えばかごK1)から降車した乗客等が、中階乗場3で待つことなく速やかに他方のかご(例えばかごK4)に乗車できるような関係を指し、本実施形態では一方のかご(例えばかごK1)が中階乗場3に到着して扉72が開く動作が完了するまでの間に他方のかご(例えばかごK4)が中階乗場3に到着する。本実施形態の乗継同期制御では、上階乗場2から中階乗場3までの距離と下階乗場4から中階乗場3までの距離が略同じなので、上階乗場2のかご(例えばかごK3)が中階乗場3に移動し始めるタイミングと下階乗場4のかご(例えばかごK2)が中階乗場3に移動し始めるタイミングを同期させ、かつ、両かご(例えばかごK2とかごK3)を略同じ速度で移動させることで、両かごの中階への到着するタイミングを同期させる。なお、上階乗場2から中階乗場3までの距離と下階乗場4から中階乗場3までの距離が異なる場合には、両かごが移動し始めるタイミングや速度を調整することで中階乗場3に到着するタイミングを同期させることができる。
到着同期制御は、一対の上側かご7Uの一方(かごK1)が中階乗場3及び上階乗場2の一方に到着するタイミングと一対の上側かご7Uの他方(かごK3)が中階乗場3及び上階乗場2の他方に到着するタイミングを同期し、かつ、一対の下側かご7Dの一方(かごK4)が中階乗場3及び下階乗場4の一方に到着するタイミングと一対の下側かご7Dの他方(かごK2)が中階乗場3及び下階乗場4の他方に到着するタイミングを同期する制御である。即ち、到着同期制御では、各駆動手段6を制御して、一対の上側かご7Uが各乗場2~4に到着するタイミング及び一対の下側かご7Dが各乗場2~4に到着するタイミングを同期させる。ここで、到着同期制御における到着するタイミングの同期とは、一方のかご(例えばかごK2)が一方の乗場(例えば下階乗場4)に到着して停止している間に、他方のかご(例えばかごK4)が他方の乗場(例えば中階乗場3)に到着する関係を指し、本実施形態では、到着するタイミングが略一致する。本実施形態で、一対の上側かご7Uは一方が上昇する際に他方が同期して下降するように駆動手段6に連結され、一対の下側かご7Dは、一方が上昇する際に他方が同期して下降するように構成されているので、1つの駆動手段6を制御して駆動させることで一対の上側かご7U又は下側かご7Dの移動を同期させることができ、到着タイミングが同期させることができる。
また、本実施形態における移動制御では、同じ昇降路A,B内を移動するかごK1~K4が、同時に同じ方向に移動するように制御される。具体的には、一方の昇降路A内を移動する一対の上側かご7Uの一方のかごK1と一対の下側かご7Dの他方のかごK2が同じ方向に移動し、他方の昇降路B内を移動する一対の上側かご7Uの他方のかごK3と一対の下側かご7Dの一方のかごK4が同じ方向に移動するように駆動手段6が制御される。このように、同じ昇降路A,B内のかごK1~K4が同じ方向に移動するように制御されるので、複数のかごK1~K4が同じ昇降路A,B内を移動したとしてもかごK1~K4同士の衝突を抑制できる。
以上のような移動制御により、図2(a)に示す状態から図2(b)に示す状態になるように各かごK1~K4が移動する。具体的に、一方の昇降路Aの中階乗場3に位置する一対の上側かご7Uの一方のかごK1及び一方の昇降路Aの下階乗場4に位置する一対の下側かご7Dの他方のかごK2が同時に上方に移動し、他方の昇降路Bの上階乗場2に位置する一対の上側かご7Uの他方のかごK3及び他方の昇降路Bの中階乗場3に位置する一対の下側かご7Dの一方のかごK4が下方に移動する。そして、図2(b)に示すように、一方の昇降路Aを移動する下側かご7Dの他方のかごK2及び他方の昇降路Bを移動する一対の上側かご7Uの他方のかごK3が中階乗場3に到着し、一方の昇降路Aを移動する一対の上側かご7Uの一方のかごK1が上階乗場2に到着し、他方の昇降路Bを移動する一対の下側かご7Dの一方のかごK4が下階乗場4に到着する。ここで、乗継同期制御及び到着同期制御によってかごK1~K4が各乗場2~4に到着するタイミングが同期するため、乗客等がかごK1~K4の到着を待つ時間が長くなることを抑制できる。また、図2(b)に示す状態から図2(a)に示す状態になるように各かごK1~K4が移動する。この移動では、上述の移動とは上下方向で反対向きに各かごK1~K4が移動し、具体的には、一方の昇降路Aの上階乗場2に位置する一対の上側かご7Uの一方のかごK1及び一方の昇降路Aの中階乗場3に位置する一対の下側かご7Dの他方のかごK2が同時に下方に移動し、他方の昇降路Bの中階乗場3に位置する一対の上側かご7Uの他方のかごK3及び他方の昇降路Bの下階乗場4に位置する一対の下側かご7Dの一方のかごK4が上方に移動する。このような移動では、一方の昇降路Aを移動する上側かご7Uの一方のかごK1及び他方の昇降路Bを移動する一対の下側かご7Dの一方のかごK4が中階乗場3に到着し、他方の昇降路Bを移動する一対の上側かご7Uの他方のかごK3が上階乗場2に到着し、一方の昇降路Aを移動する一対の下側かご7Dの他方のかごK2が下階乗場4に到着する。ここでも同様に、乗継同期制御及び到着同期制御によってかごK1~K4が各乗場2~4に到着するタイミングが同期するため、乗客等がかごK1~K4の到着を待つ時間が長くなることを抑制できる。
図5に示すように、開閉制御は、各乗場2~4に到着したかごK1~K4の扉72を開閉する制御であり、本実施形態の開閉制御では、かごK1~K4の扉72(乗車用扉721及び降車用扉722)の開閉動作に従動して乗場ドア52が開閉するので、かごK1~K4の扉72及び乗場ドア52を開閉する。開閉制御では、図5(a)に示すように、降車用扉722及び降車用扉722と対向する乗場ドア52を開いてから、図5(b)に示すように、乗車用扉721及び乗車用扉721と対向する乗場ドア52を開く。このような構成によれば、乗客等の乗り降りに際して、乗車する乗客等と降車する乗客等が交錯することを抑制できる。また、開閉制御では、乗車用扉721が開いた後に乗車用扉721及び降車用扉722の両方が開いた状態を維持する。このような構成によれば、かごK1~K4を介して上行乗降部511と下行乗降部512が連通するので、上行乗降部511と下行乗降部512の間を乗客等が往来しやすい。
また、開閉制御では、乗車用扉721の開放から所定時間後にすべての扉72を閉めるように構成されている。即ち、本実施形態の開閉制御では、降車用扉722と乗車用扉721を同時に閉めるように制御し、かつ、全てのかごK1~K4の扉72を同時に閉めるように制御する。なお、全てのかごK1~K4の扉72のうち、一部の扉72を閉じることができない場合(例えば、乗客等の挟み込みを検知した場合)には、閉じることができない扉72以外を先に閉めるように制御する。
案内制御は、乗場報知部53及びかご内スピーカでの乗客等に対する案内をする制御である。具体的に、案内制御では、乗車又は乗継に関する案内及び扉72の開閉に関する案内をするように制御する。
案内制御における乗車又は乗継に関する案内では、乗場報知部53を制御して、乗車位置表示部532に乗車すべきかごK1~K4が到着する位置を表示させる。また、乗車又は乗継に関する案内では、乗継案内部533を制御して、降車した乗客等に対して乗継すべきかごK1~K4の位置を示すための表示をさせる。
案内制御における扉72の開閉に関する案内では、扉72が閉じることを予告する案内、扉72の開閉直前の案内、及び、他のかごK1~K4の扉72を閉じられない旨の案内を行う。本実施形態の扉72の開閉に関する案内は、乗場スピーカ及びかご内スピーカから音声でおこなわれる。扉72の開閉直前の案内は、直後に扉72が閉じる旨の案内であり、扉72から離れるように注意喚起をする案内である。
扉72の開閉を予告する案内は、扉72が閉じることを予告する案内であり、本実施形態では扉72が閉じるまでの時間を音声で報知する。このように、扉72が閉じることを予告することで、乗降を促すことができるので、扉72が閉じる際に挟み込みなどが生じることを抑制できる。特に、本実施形態のように、開閉制御において、扉72が開いてから所定時間経過後に扉72が閉じる構成においては、所定時間で乗降を完了するように促すことができるので、かごK1~K4を円滑に運行することができるようになる。
他のかごK1~K4の扉72を閉じられない旨の案内は、他のかごK1~K4で挟み込みなどが生じ、他のかごK1~K4の扉72が閉じられない旨の案内である。本実施形態では、全てのかごK1~K4が同期するので、扉72が閉じたにもかかわらずかごK1~K4が移動を開始しない場合に、その原因を乗客等に知らせることができるので、乗客等に不安を与えることを抑制できる。
以上のような構成の昇降機システム1における乗客等の乗降について図6を参照して説明する。図6に実線の矢印で示すように、下階乗場4から上階乗場2に移動しようとする乗客等は、下階乗場4の上行乗降部511からかごに乗り込み、中階乗場3の上行乗降部511で乗り継いで、上階乗場2の上行乗降部511(降車専用の乗降部51)に到着する。ここで、乗客等は、下階乗場4においては、乗車位置表示部532の案内に従って、一方の昇降路Aの下側かご7Dに乗車し、中階乗場3では、一方の昇降路Aの下側かご7Dから降車して、乗継案内部533の案内に従って他方の昇降路Bの上側かご7Uに乗り継ぐことで、上階乗場2に到着する。
図6に破線の矢印で示すように、上階乗場2から下階乗場4に移動しようとする乗客等は、上述の動きとは逆向きに移動する。即ち、乗客等は、上階乗場2の下行乗降部512からかごK1~K4に乗り込み、中階乗場3の下行乗降部512で乗り継いで、下階乗場4の下行乗降部512(降車専用の乗降部51)に到着する。ここで、乗客等は、上階乗場2においては、乗車位置表示部532の案内に従って、一方の昇降路Aの上側かご7Uに乗車し、中階乗場3では、一方の昇降路Aの上側かご7Uから降車して、乗継案内部533の案内に従って他方の昇降路Bの下側かご7Dに乗り継ぐことで、上階乗場2に到着する。
ここで、一対の上側かご7Uと一対の下側かご7Dの乗車用扉721及び降車用扉722は互い違いに配置されている。そのため中階乗場3の上行乗降部511に対して、乗車用扉721及び降車用扉722が面した状態になるので、下側かご7Dから降車して上側かご7Uに乗り継ぐ際に、同じ上行乗降部511で乗車及び降車をすることができる。同様に、中階乗場3の下行乗降部512に対して、乗車用扉721及び降車用扉722が面した状態になるので、上側かご7Uから降車して下側かご7Dに乗り継ぐ際に、同じ下行乗降部512で乗車及び降車をすることができる。また、各乗場2~4において上行乗降部511と下行乗降部512は互い違いに配置され、かつ、各かごK1~K4には乗車用扉721と降車用扉722が対向するように配置されているので、かごK1~K4における乗降の方向を一方向にしつつ、乗継を円滑にすることができる。
以上のような構成の昇降機システム1によれば、乗継同期制御によって中階乗場3における乗継ぎでの待ち時間が長くなることを抑制しつつ、到着同期制御によって、一方のかごが中階乗場3に到着した際に他方のかごが上階乗場2又は下階乗場4に到着するので、上階乗場2及び下階乗場4での待ち時間が長くなることを抑制できる。よって、乗客等がかごK1~K4の到着を待つ時間が長くなることを抑制できる。
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
例えば、上階、中階、下階はそれぞれ1階床分離れている場合に限定されず、例えば上階乗場2、中階乗場3及び下階乗場4が2階床分離れていてもよい。上階乗場2から中階乗場3までの距離が下階乗場4から中階乗場3までの距離より長かったり短かったりしてもよい。このような構成の場合には、上階乗場2から中階乗場3までの移動速度と下階乗場4から中階乗場3までの移動速度を別になるように構成できる。
また、1台の巻上機62に一対の上側かご7U又は下側かご7Dの2台のかごが連結される場合について説明したが、このような構成に限らず、1台の巻上機62に1台のかごと釣合い重りが設けられる構成とし、2台の巻上機62と2台のかごの組み合わせで一対の上側かご7U又は下側かご7Dを構成することもできる。また、図7に示すように、1台の巻上機62に3台以上(例えば4台)のかごが連結される構成とすることもできる。また、駆動手段6が巻上機62を備える構成に限らず、例えば、各かごに設けられる構成とすることもでき、例えば各かご及び昇降路に設けられるリニアモータを駆動手段6として構成することもできる。
さらに、各かごK1~K4には扉72が複数(乗車用扉721及び降車用扉722)設けられる場合について説明したが、このような構成に限らず、各かごK1~K4に扉72が1つのみ設けられる構成とすることもできる。このような構成の場合には、各乗場2~4に設けられる乗降部51も1つにすることができる。
また、本実施形態の昇降機システム1を上下方向に複数設けることで、上階からさらに上の階床又は下階からさらに下の階床に移動可能な構成とすることもできる。例えば、図8に示すように、2つの昇降路A,Bを備え、各昇降路A,B内をそれぞれ3台(つまり、合計6台)のかごK1~K6が移動するように構成し、上下方向における中央のかご(K2及びK5)が上方の昇降機システム1における下側かご7Dと下方の昇降機システム1における上側かご7Uとを兼ね、最も上の階及び最も下の階以外の階が上階又は下階と中階を兼ねるように構成することもできる。
さらに、1つの昇降路A,B内を複数のかごK1~K4が移動する場合について説明したが、このような構成に限らず、1つの昇降路内を1台のかごのみが移動するように構成することもできる。例えば、図9に示すように、昇降路を4本設け、昇降路のうち2本を上側かご7Uが移動し、他の2本を下側かご7Dが移動するように構成し、且つ、各かごK1~K4の移動について制御部が到着同期制御及び乗継同期制御を実行するように構成することもできる。このような構成であっても、乗継同期制御によって中階乗場3における乗継ぎでの待ち時間が長くなることを抑制しつつ、到着同期制御によって、一方のかごが中階乗場3に到着した際に他方のかごが上階乗場2又は下階乗場4に到着するので、上階乗場2及び下階乗場4での待ち時間が長くなることを抑制できる。
また、乗継案内部533は、乗場に設けられる場合について説明したが、このような構成に限らず、かごK1~K4内に設けるように構成することもできる。このような構成によれば、降車前に乗継すべきかごについての情報を報知できるので、乗客等がスムーズに乗継できるようになる。