JP2024005116A - 車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】始動ショックの抑制やドライバビリティの向上が図られる車両の制御装置を提供する。【解決手段】車両の電子制御装置は、BEV走行中であってエンジンの始動が要求される前に、(a)第2クラッチである発進クラッチのトルク容量の指令値を電動機から発進クラッチに入力される入力トルクに応じたものとするトルク容量制御を開始し、(b)発進クラッチにおける差回転が所定の判定差回転値以上である場合及び発進クラッチのトルク容量の実値と入力トルクとの差が所定のトルク範囲内であって入力トルクが増加し且つ今後も増加すると推定される場合の少なくとも一方の場合には、発進クラッチにおける差回転が所定の目標差回転値となるように電動機の回転速度を制御する回転速度制御を開始する。【選択図】図3
Description
本発明は、動力源としてのエンジン及び電動機と、駆動輪と、の間の動力伝達経路を機械的に断接するクラッチを備える車両の、制御装置に関する。
動力源としてのエンジン及び電動機と、駆動輪と、の間の動力伝達経路を機械的に断接するトルクコンバータのロックアップクラッチを備える車両の、制御装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された車両の制御装置がそれである。
ところで、エンジン始動の際のトルク変動が駆動輪に伝達されることに伴う始動ショックの発生を抑制するために、ロックアップクラッチをスリップ係合乃至解放とした後にエンジン始動制御を開始することが知られている。特許文献1に記載された車両では、電動機のみを動力源に用いて走行するBEV走行中においてエンジンの始動が要求される前に、エンジンを少なくとも動力源に用いる走行時に比較してロックアップクラッチのトルク容量が低くされる。これにより、エンジンの始動の要求後に、ロックアップクラッチが完全係合からスリップ係合乃至解放へ速やかに切り替えられてエンジン始動制御が開始されることで、始動ショックの抑制とドライバビリティの両立が図られているが、更なる始動ショックの抑制やドライバビリティの向上が望まれていた。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、始動ショックの抑制やドライバビリティの向上が図られる車両の制御装置を提供することにある。
本発明の要旨とするところは、動力源としてのエンジン及び電動機と、前記エンジンと前記電動機との間の動力伝達を断接する第1クラッチと、前記動力源と駆動輪との間の動力伝達経路を機械的に断接する第2クラッチと、を備える車両の、制御装置であって、(a)前記第1クラッチを解放とし且つ前記第2クラッチを完全係合として前記電動機のみから動力を出力させて走行するBEV走行中において前記エンジンの始動が要求される前に、前記第2クラッチのトルク容量の指令値を前記電動機から前記第2クラッチに入力される入力トルクに応じたものとするトルク容量制御を開始し、(b)前記トルク容量制御の開始後、前記第2クラッチにおける前記電動機側の回転速度から前記駆動輪側の回転速度を減じた差回転が所定の判定差回転値以上である場合及び前記第2クラッチのトルク容量の実値と前記入力トルクとの差が所定のトルク範囲内であって前記入力トルクが増加し且つ今後も増加すると推定される場合の少なくとも一方の場合には、前記第2クラッチにおける前記差回転が所定の目標差回転値となるように前記電動機の回転速度を制御する回転速度制御を開始し、(c)前記エンジンの始動が要求された場合、前記第1クラッチを解放から完全係合に切り替えるとともに前記電動機の出力トルクを増加させて前記エンジンを始動することにある。
本発明の車両の制御装置によれば、BEV走行中であってエンジンの始動が要求される前にトルク容量制御が開始され、(a)第2クラッチにおける差回転が所定の判定差回転値以上である場合、及び(b)第2クラッチのトルク容量の実値と入力トルクとのトルク差が所定のトルク範囲内であって入力トルクが増加し且つ今後も入力トルクが増加すると推定される場合、の少なくとも一方の場合に、回転速度制御が開始される。(a)は、第2クラッチがスリップ係合となっている場合であるため、回転速度制御が開始されても電動機から駆動輪へ伝達される駆動トルクが急激に増加することはない。(b)は、入力トルクが現在及び今後も増加する場合すなわち入力トルクの増加によりすぐに第2クラッチがスリップ係合となる場合であるため、回転速度制御が開始されても電動機から駆動輪へ伝達される駆動トルクが急激に増加することはない。回転速度制御の開始された後に、エンジンの始動が要求されてエンジン始動制御が実行される場合、第2クラッチが予めスリップ係合となっている。そのため、そうでない場合に比較してエンジン始動制御が速やかに開始されることで、始動ショックの抑制とドライバビリティとの両立が図られる。また、回転速度制御の開始される前に、エンジンの始動が要求されてエンジン始動制御が実行される場合であっても、第2クラッチのトルク容量の指令値が予め入力トルクに応じたものとされている。そのため、そうでない場合に比較して第2クラッチを速やかにスリップ係合させてエンジン始動制御を開始できるため、始動ショックの抑制とドライバビリティとの両立が図られる。
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であるとともに、車両10における各種制御のための制御機能の要部を説明する図である。車両10は、動力源として機能する、エンジン12及び電動機MGを備えたハイブリッド車両である。車両10は、動力源と駆動輪14との間の動力伝達経路PTにおいて、動力源側から順に、電動機連結軸32、発進クラッチWSC、変速機入力軸38、自動変速機20、減速ギヤ機構22、ディファレンシャルギヤ24、及び一対の駆動軸28が連結され、これらはいずれも周知の構成である。また、車両10は、インバータ52、バッテリ54、油圧制御回路56、及び電子制御装置90を備える。
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の周知の内燃機関である。エンジン12は、スロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等を含むエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTe[Nm]が制御される。電動機MGは、発動機としての機能及び発電機としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。電動機MGは、バッテリ54から供給される電力を用いてインバータ52が制御されることにより、電動機MGの出力トルクであるMGトルクTmg[Nm]が動力として出力される。また、電動機MGは、エンジン12の動力や駆動輪14から入力される被駆動力により発電を行い、発電電力がバッテリ54に充電される。前記動力は、特に区別しない場合には駆動力、トルク、及び力も同意である。
断接クラッチK0は、エンジン12と電動機MGとの間の動力伝達を断接するクラッチである。発進クラッチWSCは、動力伝達経路PT特に電動機MGと自動変速機20との間を機械的に断接するクラッチである。なお、断接クラッチK0及び発進クラッチWSCは、本発明における「第1クラッチ」及び「第2クラッチ」にそれぞれ相当する。エンジン連結軸30は、エンジン12と断接クラッチK0との間に設けられ、電動機MGは、断接クラッチK0と発進クラッチWSCとの間に設けられた電動機連結軸32に動力伝達可能に接続されている。断接クラッチK0及び発進クラッチWSCのそれぞれは、例えばアクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチにより構成される油圧式の摩擦係合装置である。断接クラッチK0及び発進クラッチWSCのそれぞれは、油圧制御回路56から供給される調圧された油圧によりトルク容量が変化させられることで、完全係合、スリップ係合、解放などの制御状態が切り替えられる。以下、完全係合とスリップ係合とを特に区別する必要がない場合には、単に「係合」と記す。トルク容量とは、クラッチが伝達可能なトルクの大きさであって、クラッチの係合力と同意である。
自動変速機20は、例えば不図示の1組又は複数組の遊星歯車装置と、係合装置CBと、を備える、周知の遊星歯車式の自動変速機である。係合装置CBは、例えば複数の周知の油圧式の摩擦係合装置を含む。自動変速機20は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置が係合されることによって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni[rpm]/AT出力回転速度No[rpm])が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。AT入力回転速度Niは、自動変速機20の入力部材である変速機入力軸38の回転速度であり、AT出力回転速度Noは、自動変速機20の出力部材である変速機出力歯車26の回転速度である。自動変速機20は、例えば係合装置CBを全て解放させることで、ニュートラル状態とすることも可能である。
油圧制御回路56は、車両10に備えられた不図示であって周知の機械式オイルポンプや電動オイルポンプの少なくとも一方が吐出した作動油を元圧にして、断接クラッチK0、発進クラッチWSC、及び係合装置CBの制御状態を制御するアクチュエータに、各々調圧した油圧を供給する。
エンジン12から出力される動力は、断接クラッチK0及び発進クラッチWSCが共に係合とされた場合に、動力伝達経路PTを経由して駆動輪14へ伝達される。電動機MGから出力される動力は、断接クラッチK0の制御状態に拘わらず、発進クラッチWSCが係合とされた場合に、動力伝達経路PTを経由して駆動輪14へ伝達される。
車両10は、車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置90を備える。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、MG回転速度センサ72、入力回転速度センサ74、出力回転速度センサ76、アクセル開度センサ78など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne[rpm]、電動機MGの回転速度であって発進クラッチWSCの入力側部材の回転速度でもあるMG回転速度Nmg[rpm]、AT入力回転速度Ni、車速V[km/h]に対応するAT出力回転速度No、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc[%]など)が、それぞれ入力される。なお、電子制御装置90は、本発明における「制御装置」に相当する。
電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置等(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56など)に各種信号等(例えばエンジン12を制御するためのエンジン制御信号Se、電動機MGを駆動制御するためのMG制御信号Smg、係合装置CBを断接制御するためのCB油圧制御信号Scb、断接クラッチK0を断接制御するためのK0油圧制御信号Sk0、発進クラッチWSCを断接制御するためのWSC油圧制御信号Swscなど)が、それぞれ出力される。
電子制御装置90は、車両10における各種制御を実現するために、動力源制御部92、断接クラッチ制御部94、変速機制御部96、及び回転速度制御部98を機能的に備える。
動力源制御部92は、エンジン12の作動を制御する機能と、電動機MGの作動を制御する機能と、を含んでおり、それらの制御機能によりエンジン12及び電動機MGによるハイブリッド駆動制御等を実行する。
動力源制御部92は、電動機MGのみを動力源に用いて走行するBEV(Battery Electric Vehicle)走行を実現するBEV駆動モードと、少なくともエンジン12を動力源に用いて走行するHEV(Hybrid Electric Vehicle)走行を実現するHEV駆動モードと、を選択的に切り替える。BEV走行中では、断接クラッチK0が解放とされ且つ発進クラッチWSCが係合とされている。HEV走行中では、断接クラッチK0及び発進クラッチWSCがそれぞれ係合とされている。BEV走行中において、エンジン12の出力を用いないと運転者による車両10に対する駆動要求量を賄えない場合、バッテリ54の充電が必要な場合、エンジン12等の暖機が必要な場合などでは、エンジン12の始動が要求される。エンジン12の始動が要求されると、エンジン12を始動させるエンジン始動制御が実行されてHEV駆動モードが選択される。
動力源制御部92は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する駆動要求量を算出する。駆動要求量マップは、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された、前記駆動要求量を求めるための関係である。前記駆動要求量は、車両10に要求される駆動量である。駆動要求量としては、例えば、駆動輪14における要求駆動トルクTrdem[Nm]、自動変速機20の変速機出力歯車26から出力されるAT出力トルクTo[Nm]の要求量、駆動輪14における要求駆動力Frdem[N]、そのときの車速Vにおける要求駆動パワーPrdem[W]等を用いることができる。動力源制御部92は、伝達損失、補機負荷、自動変速機20の変速比γat等を考慮して、例えば要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン12を制御するエンジン制御信号Seと、電動機MGを制御するMG制御信号Smgと、を出力する。
断接クラッチ制御部94は、エンジン始動制御において断接クラッチK0の断接状態を制御する。例えば、断接クラッチ制御部94は、エンジン12の始動が要求された場合には、エンジン回転速度Neを引き上げるトルクであるエンジン12のクランキングに必要なクランキングトルクTcr[Nm]をエンジン12側へ伝達するために、断接クラッチK0を解放からスリップ係合を経て完全係合になるように制御する。
変速機制御部96は、例えば変速マップを用いて自動変速機20の変速判断を行い、必要に応じて変速制御の実行のためにCB油圧制御信号Scbを油圧制御回路56へ出力する。変速マップは、例えば車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、自動変速機20の変速が判断されるための変速線を有する予め定められた所定の関係である。変速マップでは、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良いし、又、要求駆動トルクTrdemに替えてAT出力トルクTo[Nm]の要求量やアクセル開度θaccや電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth[%]などを用いても良い。
回転速度制御部98は、トルク判定部98a、発進クラッチ制御部98b、開始判定部98c、及び差回転制御部98dを機能的に備える。
トルク判定部98aは、BEV走行中において電動機MGから発進クラッチWSCへ入力されるトルクであるWSC入力トルクTwsc[Nm]がトルク値Twsc_jdgx(>0)未満であるか否かを判定する。トルク値Twsc_jdgxは、回生ブレーキによる電動機MGの発電効率の低下を抑制するために、実験的に或いは設計的に予め定められた判定値である。なお、WSC入力トルクTwscは、本発明における「入力トルク」に相当する。トルク値Twsc_jdgxは、本発明における「所定の第2トルク値」に相当する。
トルク判定部98aは、WSC入力トルクTwscがトルク値Twsc_jdgyを超過しているか否かを判定する。トルク値Twsc_jdgyは、実験的に或いは設計的に予め定めされたトルク値Twsc_jdgx以上に設定された判定値である。好適には、後述の回転速度制御の開始と終了とが頻繁に繰り返されないように、トルク値Twsc_jdgyは、トルク値Twsc_jdgxよりも高く設定される。なお、トルク値Twsc_jdgyは、本発明における「所定の第1トルク値」に相当する。
トルク判定部98aによってBEV走行中においてWSC入力トルクTwscがトルク値Twsc_jdgyを超過していると判定された場合には、発進クラッチ制御部98bは、発進クラッチWSCのトルク容量Tc[Nm]の指令値であるトルク容量指令値Tc_tgt[Nm]をWSC入力トルクTwscと同じにするトルク容量制御を開始する。なお、トルク容量指令値Tc_tgtは、本発明における「指令値」に相当する。また、トルク容量指令値Tc_tgtが同じにさせられる「WSC入力トルクTwsc」は、本発明における「入力トルクに応じたもの」に相当する。「入力トルクに応じたもの」とは、入力されたWSC入力トルクTwscを略そのままの大きさで駆動輪14側に伝達可能であるトルク容量指令値Tc_tgt、すなわち発進クラッチWSCが完全係合からスリップ係合に切り替わるトルク容量指令値Tc_tgtの近傍値である。
発進クラッチ制御部98bによるトルク容量制御の開始後、開始判定部98cは、回転速度制御の開始条件が成立しているか否かを判定する。回転速度制御の開始条件は、(a)発進クラッチWSCにおける電動機MG側の回転速度であるMG回転速度Nmgから発進クラッチWSCにおける駆動輪14側の回転速度であるAT入力回転速度Niを減じた差回転ΔN(=Nmg-Ni)が所定の判定差回転値ΔN_jdg(>0)以上であること、(b)発進クラッチWSCのトルク容量Tcの実値であるトルク容量実値Tc_realとWSC入力トルクTwscとのトルク差ΔT(=Tc_real-Twsc)が所定のトルク範囲ΔT_jdg内であってAT出力トルクTo[Nm]の指令値To_tgt(動的)の変化量(変化率)α[Nm/sec]が正値であり且つ今後も指令値To_tgt(動的)が増加すると推定されること、のいずれかが成立することである。所定の判定差回転値ΔN_jdgは、発進クラッチWSCが実際にスリップ係合であることを判定するために、実験的に或いは設計的に予め定められた値であって、例えば零近傍の正の値である。トルク容量実値Tc_realは、例えば発進クラッチWSCの断接を制御するアクチュエータに供給される油圧が不図示のセンサで検出され、検出された油圧に基づいて推定することが可能である。所定のトルク範囲ΔT_jdgは、回転速度制御が開始されても電動機MGから駆動輪14へ伝達される駆動トルクの増加によるショックが許容範囲内となる、実験的に或いは設計的に予め定められた判定値である。指令値To_tgt(動的)については後述する。
開始判定部98cによって回転速度制御の開始条件が成立していると判定された場合には、差回転制御部98dは、差回転ΔNが所定の目標差回転値ΔN_tgtとなるようにMG回転速度Nmgをフィードバック制御する回転速度制御を開始する。目標差回転値ΔN_tgtは、差回転ΔNの目標値であって、実験的に或いは設計的に予め定められた所定値である。図2は、回転速度制御におけるWSC入力トルクTwscと目標差回転値ΔN_tgtとの関係の例を説明する図である。回転速度制御においては、例えば図2に示すように、WSC入力トルクTwscがトルク値Twsc_jdgxを超過すると、WSC入力トルクTwscの増加に応じて目標差回転値ΔN_tgtが増加させられ、次第に一定値で飽和させられる。また、WSC入力トルクTwscがトルク値Twsc_jdgx以下である場合には、目標差回転値ΔN_tgtは零値とされる。したがって、回転速度制御の実行中におけるMG回転速度Nmgの目標値である目標MG回転速度Nmg_tgt[rpm]は、AT入力回転速度Niと目標差回転値ΔN_tgtとの和となる。
図1に戻り、トルク判定部98aによってBEV走行中においてWSC入力トルクTwscがトルク値Twsc_jdgx未満であると判定された場合には、差回転制御部98dは、回転速度制御を終了し、その後、発進クラッチ制御部98bは、発進クラッチWSCが完全係合となるようにトルク容量指令値Tc_tgtをWSC入力トルクTwscよりも高くなるように制御する。
差回転制御部98dによって回転速度制御が開始されると、BEV走行中においてWSC入力トルクTwscがトルク値Twsc_jdgx未満であるとトルク判定部98aにより判定されるまで、回転速度制御の実行が継続される。
なお、BEV走行中において、エンジン12の始動が要求されると、動力源制御部92及び断接クラッチ制御部94は、電動機MG及び断接クラッチK0を用いてエンジン12をクランキングする。このクランキングにおいて、断接クラッチ制御部94による断接クラッチK0の解放から完全係合への制御状態の切り替えに合わせて、動力源制御部92はクランキングが終了するまで電動機MGがクランキングトルクTcrを出力するように制御する。すなわち、要求駆動トルクTrdemを生じさせるWSC入力トルクTwscに、クランキングトルクTcr分を加えたMGトルクTmgを、電動機MGから出力させる。
図3は、図1に示す電子制御装置90の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。図3のフローチャートは、BEV走行中において繰り返し実行される。
まず、トルク判定部98aの機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、WSC入力トルクTwscがトルク値Twsc_jdgx未満であるか否かが判定される。S10の判定が肯定された場合、差回転制御部98dの機能に対応するS20において回転速度制御が終了させられ、発進クラッチ制御部98bの機能に対応するS30においてトルク容量制御が終了させられ、そしてリターンとなる。
S10の判定が否定された場合、トルク判定部98aの機能に対応するS40においてWSC入力トルクTwscがトルク値Twsc_jdgyを超過しているか否かが判定される。S40の判定が肯定された場合には、発進クラッチ制御部98bの機能に対応するS50においてトルク容量制御が開始され、開始判定部98cの機能に対応するS60において差回転ΔNが所定の判定差回転値ΔN_jdg以上であるが否かが判定される。S60の判定が否定された場合、開始判定部98cの機能に対応するS70においてトルク差ΔTが所定のトルク範囲ΔT_jdg内であって指令値To_tgt(動的)の変化量αが正値であり且つ今後も指令値To_tgt(動的)が増加すると推定されるか否かが判定される。S60及びS70のいずれかの判定が肯定された場合、差回転制御部98dの機能に対応するS80において回転速度制御が開始され、そしてリターンとなる。S40及びS70のいずれかの判定が否定された場合には、リターンとなる。
図4は、図3のフローチャートにおいて回転速度制御が実行された場合のタイムチャートの一例である。図4は、図3のS60又はS70の判定が肯定された場合にS80が実行される例である。図4では、便宜上、S60及びS70の判定が両方とも肯定される場合が示されている。
ところで、AT出力トルクToが変化させられる場合、車両10の駆動力が急激に変化することで動力伝達経路PTにねじり振動が発生するおそれがあるため、緩変化処理(或いは、なまし処理ともいう)が行われる。図4に示す、AT出力トルクToの指令値To_tgt(静的)は、現時点での車速Vやアクセル開度θaccに基づいて算出されるAT出力トルクToの目標値であり、AT出力トルクToの指令値To_tgt(動的)は、指令値To_tgt(静的)に緩変化処理が施されたものである。
BEV走行中におけるWSC入力トルクTwscと同値であるMGトルクTmgは、指令値To_tgt(動的)に基づいて制御される。BEV走行中における車両10の駆動要求量という観点では、WSC入力トルクTwscの要求値(目標値)である要求WSC入力トルクTwscrqと指令値To_tgt(動的)とは同意である。指令値To_tgt(動的)は、指令値To_tgt(静的)に遅れて変化するため、現時点での指令値To_tgt(動的)の変化量αとともに、今後の指令値To_tgt(動的)の変化量αも推定することが可能である。したがって、BEV走行中におけるMGトルクTmgすなわちWSC入力トルクTwscについて現時点で増加中であり且つ今後も増加することを推定することが可能である。なお、電気的に制御される電動機MGの制御は応答性が良いため、WSC入力トルクTwscと要求WSC入力トルクTwscrqとは差がほとんどない。
時点t1において、S40の判定が肯定され、S50の実行が開始される。すなわち、要求WSC入力トルクTwscrqがトルク値Twsc_jdgyを超過したため、トルク容量指令値Tc_tgtが発進クラッチWSCを完全係合とする容量値Tc1からWSC入力トルクTwscと同値の容量値Tc2に低下させられる。なお、容量値Tc2は、本発明における「入力トルクに応じたもの」に相当する。図4では、トルク容量指令値Tc_tgtが発進クラッチWSCのトルク容量Tcの制御ばらつきの範囲の高い側となっている場合が示されている。この発進クラッチWSCのトルク容量Tcの制御ばらつきは、発進クラッチWSCにおける摩擦板などの部材のばらつきや発進クラッチWSCの断接を制御するアクチュエータの制御性のばらつきのために生じるものである。発進クラッチWSCの断接制御は油圧制御であるため、トルク容量実値Tc_realは、トルク容量指令値Tc_tgtの変化に遅れて追従して変化する。一方、要求WSC入力トルクTwscrqは電動機MGのMGトルクTmgで制御されるため、油圧制御に比較して応答性が高い。すなわち、応答性が比較的低いことによりトルク容量実値Tc_realとトルク容量指令値Tc_tgtとの間には差が発生しやすいのに対して、応答性が比較的高いことによりMGトルクTmgではその実値と指令値との間には差が発生しにくい。なお、時点t1以降且つ後述の時点t2までの期間では、トルク容量制御が開始されても前述の制御ばらつきのため、発進クラッチWSCがスリップ係合となるか否かは分からない。例えば、図4に示すように、トルク容量指令値Tc_tgtが制御ばらつきの範囲の高い側となっている場合、発進クラッチWSCはスリップ係合とはならない場合がある。
時点t2(>t1)において、(a)例えば差回転ΔNが所定の判定差回転値ΔN_jdg以上となった場合、回転速度制御が開始される。或いは、時点t2において、(b)例えばトルク差ΔTが所定のトルク範囲ΔT_jdg内であって変化量αが正値であり且つ今後も指令値To_tgt(動的)が増加すると推定される場合、回転速度制御が開始される。なお、(b)は、時点t2における変化量αにより今後の指令値To_tgt(動的)の増分量に対応したWSC入力トルクTwscの増加量が、発進クラッチWSCの制御ばらつきの範囲を超えて発進クラッチWSCがスリップ係合となると推定できる場合である。例えば、アクセル開度θaccの増加により要求WSC入力トルクTwscrqが増加する場合、前述した応答性の差により、要求WSC入力トルクTwscrqの方がトルク容量実値Tc_realよりも早く増加する。これにより、発進クラッチWSCがスリップ係合とされる。
なお、トルク容量指令値Tc_tgtが制御ばらつきの範囲の高い側となっていて発進クラッチWSCがスリップ係合となっていない場合に、回転速度制御が実行されると、発進クラッチWSCがスリップ係合とされるためにMGトルクTmgが増大させられて、前記制御ばらつきの分だけ駆動力が急激に増加する。これにより、ショックが発生して運転者が違和感を覚えるおそれがある。また、回転速度制御のフィードバックゲインによっては、MGトルクTmgが急激に増加することでショックが発生し運転者が違和感を覚えるおそれがある。
図5は、エンジン12の始動ショックの発生について、(a)トルク容量制御の開始がエンジン12の始動要求後である場合(図5中の「トルク容量制御無し」)と、(b)トルク容量制御の開始が始動要求前である場合(図5中の「トルク容量制御有り」)と、を比較しつつ説明するタイムチャートである。図5において、上記(a)の場合は比較例であり、上記(b)の場合は本実施例である。なお、図5に示すMGトルクTmgは、要求駆動トルクTrdemを生じさせるWSC入力トルクTwsc及び回転速度制御に必要なトルクを示しており、クランキングトルクTcr分については不図示である。
時点t11において、BEV走行中においてエンジン12の始動が要求されている。
比較例の場合、時点t11では、発進クラッチWSCが完全係合となっている。そのため、始動ショックを抑制するため、エンジン12の始動要求後にトルク容量指令値Tc_tgtをWSC入力トルクTwscまで低下させるとともに、トルク容量実値Tc_realがWSC入力トルクTwscまで低下したと推定される時点(時点t12参照)からMGトルクTmgを増加させて回転速度制御が開始される。そして、発進クラッチWSCがスリップ係合となった後エンジン始動制御が開始される。
本実施例の場合、時点t11では、(b1)発進クラッチWSCがスリップ係合であり且つ回転速度制御が実行されている場合と、(b2)発進クラッチWSCが完全係合ではあるがスリップ係合となりやすいほどトルク容量実値Tc_realが低い状態となっている場合と、がある。
本実施例の上記(b1)の場合、図5には不図示であるが、時点t11から直ちにエンジン始動制御が開始されても発進クラッチWSCが予めスリップ係合となっているため、そうでない場合に比較して始動ショックの抑制とドライバビリティとの両立が図られる。
本実施例の上記(b2)の場合、図5に示すように、時点t11から直ちにMGトルクTmgを増加させて回転速度制御が開始される。そして、発進クラッチWSCがスリップ係合となってからエンジン始動制御が開始される。本実施例の(b2)の場合には、時点t11では予めトルク容量制御が実行されている。そのため、エンジン12の始動が要求された時点からエンジン始動制御の完了までの期間を同じにする場合に、比較例に比較して回転速度制御によって発進クラッチWSCをスリップ係合にする期間の設定を長くすることが可能である。したがって、比較例に比較して、回転速度制御におけるMG回転速度Nmgを緩やかに増加させることができるため、回転速度制御におけるフィードバック制御、例えばPID制御のP項によるトルク増加量も緩やかに増加させられる。そのため、車両10が進行する前後方向の加速度である車両加速度Acc[m/sec2]の変化も緩やかにでき、始動ショックが抑制される。
本実施例によれば、BEV走行中であってエンジン12の始動が要求される前にトルク容量制御が開始され、(a)差回転ΔNが所定の判定差回転値ΔN_jdg以上である場合、及び、(b)トルク差ΔTが所定のトルク範囲ΔT_jdg内であって指令値To_tgt(動的)の変化量αが正値であり且つ今後もWSC入力トルクTwscが増加すると推定される場合、の少なくとも一方の場合に、回転速度制御が開始される。(a)は、発進クラッチWSCがスリップ係合となっている場合であるため、回転速度制御が開始されても電動機MGから駆動輪14へ伝達される駆動トルクが急激に増加することはない。(b)は、発進クラッチWSCが現在及び今後も増加する場合すなわちWSC入力トルクTwscの増加によりすぐに発進クラッチWSCがスリップ係合となる場合であるため、回転速度制御が開始されても電動機MGから駆動輪14へ伝達される駆動トルクが急激に増加することはない。回転速度制御の開始された後に、エンジン12の始動が要求されてエンジン始動制御が実行される場合、発進クラッチWSCが予めスリップ係合となっている。そのため、そうでない場合に比較してエンジン始動制御が速やかに開始されることで、始動ショックの抑制とドライバビリティとの両立が図られる。また、回転速度制御の開始される前に、エンジン12の始動が要求されてエンジン始動制御が実行される場合であっても、トルク容量指令値Tc_tgtが予めWSC入力トルクTwscに応じたものとされている。そのため、そうでない場合に比較して発進クラッチWSCを速やかにスリップ係合させてエンジン始動制御を開始できるため、始動ショックの抑制とドライバビリティとの両立が図られる。
本実施例によれば、BEV走行中においてエンジン12の始動が要求される前に、WSC入力トルクTwscがトルク値Twsc_jdgyを超過する場合は、トルク容量制御が開始され、WSC入力トルクTwscがトルク値Twsc_jdgx未満の場合は、トルク容量制御が終了されて発進クラッチWSCが完全係合となるようにトルク容量指令値Tc_tgtが制御される。これにより、回生ブレーキによる電動機MGの発電効率の低下が抑制されるとともに、エンジン12が始動された場合の始動ショックの発生が抑制される。また、トルク値Twsc_jdgyとトルク値Twsc_jdgxとの間に差があることで、回転速度制御の開始と終了とが頻繁に繰り返されることが回避される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
前述の実施例では、WSC入力トルクTwscがトルク値Twsc_jdgyを超過している場合にトルク容量制御が開始され、WSC入力トルクTwscがトルク値Twsc_jdgx未満である場合にトルク容量制御が終了されたが、例えばトルク値Twsc_jdgyとトルク値Twsc_jdgxとが同じ値である態様であっても良い。この態様でも回転速度制御の開始と終了とが頻繁に繰り返されるおそれはあるが、それ以外は前述の実施例と同様の効果を奏する。また、例えばWSC入力トルクTwscのどのような値であるか否かにかかわらず、トルク容量制御が開始される態様であっても良い。この態様でも回生ブレーキによる電動機MGの発電効率の低下が抑制されないおそれはあるが、それ以外は前述の実施例と同様の効果を奏する。
前述の実施例では、発進クラッチWSCが「第2クラッチ」であったが、例えば発進クラッチWSCの替わりに自動変速機20内において動力伝達経路PTを機械的に断接する係合装置CBであっても良い。また、発進クラッチWSCの替わりにトルクコンバータやフルードカップリングなどの流体式伝動装置が設けられ、それら流体式伝動装置内において動力伝達経路PTを機械的に断接する係合装置(例えば、ロックアップクラッチ)であっても良い。
なお、上述したのはあくまでも本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両、12:エンジン、14:駆動輪、90:電子制御装置(制御装置)、K0:断接クラッチ(第1クラッチ)、MG:電動機、Ni:AT入力回転速度(駆動輪側の回転速度)、Nmg:MG回転速度(電動機側の回転速度)、PT:動力伝達経路、Tc:トルク容量(第2クラッチのトルク容量)、Tc_tgt:トルク容量指令値(指令値)、Tc_real:トルク容量実値(実値)、Tmg:MGトルク(電動機の出力トルク)、Twsc:WSC入力トルク(入力トルク)、Twsc_jdgx:トルク値(所定の第2トルク値)、Twsc_jdgy:トルク値(所定の第1トルク値)、WSC:発進クラッチ(第2クラッチ)、ΔN:差回転、ΔN_jdg:判定差回転値、ΔN_tgt:目標差回転値、ΔT:トルク差、ΔT_jdg:所定のトルク範囲
Claims (2)
- 動力源としてのエンジン及び電動機と、前記エンジンと前記電動機との間の動力伝達を断接する第1クラッチと、前記動力源と駆動輪との間の動力伝達経路を機械的に断接する第2クラッチと、を備える車両の、制御装置であって、
前記第1クラッチを解放とし且つ前記第2クラッチを完全係合として前記電動機のみから動力を出力させて走行するBEV走行中において前記エンジンの始動が要求される前に、前記第2クラッチのトルク容量の指令値を前記電動機から前記第2クラッチに入力される入力トルクに応じたものとするトルク容量制御を開始し、
前記トルク容量制御の開始後、前記第2クラッチにおける前記電動機側の回転速度から前記駆動輪側の回転速度を減じた差回転が所定の判定差回転値以上である場合及び前記第2クラッチのトルク容量の実値と前記入力トルクとのトルク差が所定のトルク範囲内であって前記入力トルクが増加し且つ今後も増加すると推定される場合の少なくとも一方の場合には、前記第2クラッチにおける前記差回転が所定の目標差回転値となるように前記電動機の回転速度を制御する回転速度制御を開始し、
前記エンジンの始動が要求された場合、前記第1クラッチを解放から完全係合に切り替えるとともに前記電動機の出力トルクを増加させて前記エンジンを始動する
ことを特徴とする車両の制御装置。 - 前記BEV走行中において前記エンジンの始動の要求がされる前に、前記入力トルクが所定の第1トルク値を超過する場合は、前記トルク容量制御を開始し、前記入力トルクが前記第1トルク値よりも低い所定の第2トルク値未満の場合は、前記トルク容量制御を終了して前記第2クラッチが完全係合となるように前記第2クラッチのトルク容量の指令値を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022105156A JP2024005116A (ja) | 2022-06-29 | 2022-06-29 | 車両の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022105156A JP2024005116A (ja) | 2022-06-29 | 2022-06-29 | 車両の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2024005116A true JP2024005116A (ja) | 2024-01-17 |
Family
ID=89540242
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022105156A Pending JP2024005116A (ja) | 2022-06-29 | 2022-06-29 | 車両の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2024005116A (ja) |
-
2022
- 2022-06-29 JP JP2022105156A patent/JP2024005116A/ja active Pending
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