JP2024004092A - 耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物、硬化皮膜及び耐擦傷性コーティング皮膜 - Google Patents

耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物、硬化皮膜及び耐擦傷性コーティング皮膜 Download PDF

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Abstract

【課題】クラックが発生しにくく高硬度な膜を形成できる耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物と、前記組成物の硬化物からなり、膜表面の滑り性が向上し傷が付きにくく、優れた耐擦傷性を備えた硬化皮膜を提供する。【解決手段】(A)ポリシラザンを100質量部、(B)有機溶剤(フッ素を含み、かつ沸点が61℃以上となる有機溶媒を除く)を100~100,000質量部、及び(C)分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテルを10~100質量部で含有する耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物であって、前記(A)成分が下記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリシラザンであることを特徴とする耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。【化1】TIFF2024004092000012.tif29153【選択図】なし

Description

本発明は、耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物、該組成物の硬化物からなる硬化皮膜、及び耐擦傷性コーティング皮膜に関する。
ポリシラザンは、有機EL表示装置などの半導体表示装置や電子ディスプレイの防湿膜、また半導体やLEDなど装置における層間絶縁膜、パッシベーション膜、保護膜、平坦化膜等の形成材料として様々な用途に用いられている。さらに、ポリシラザン硬化膜の透明性や硬さを活かし、耐擦傷性付与のためエンジニアリングプラスチックや車体、建物外壁などのコーティング剤としての利用が検討されている。
ポリシラザン含有コーティング剤として、特許文献1には無機ポリシラザンを含んだ組成物を開示している。しかし、無機ポリシラザンは緻密な高硬度なコーティング皮膜を形成できるが、クラックが発生しやすいとう問題がある。
そこで、耐クラック性を向上させるため側鎖に有機基を導入した有機ポリシラザンの検討が進んでいる(特許文献2)。しかし、有機基の割合が増えるほど硬化性が乏しく、また硬化後のコーティング皮膜の強度も低下してしまう。
特許文献3ではポリシラザンの側鎖をパーフルオロポリエーテルで変性しており、また特許文献4ではポリシラザンとパーフルオロポリエーテルを重ね塗りする手法が開示されているが、これらは硬化膜の撥水性・防汚性に言及しているに過ぎない。
さらに、特許文献5ではコーティング皮膜表面の滑り性を改善するため、ポリシラザンとフッ素ポリマーをフッ素溶剤に溶解させた塗工液の製造方法が開示されているが、コーティング皮膜強度は十分とは言えず、また環境保護の観点からフッ素溶剤の使用は好ましくない。
特開2011-142207号公報 国際公開2015/163360号 特開2013-185038号公報 特開2018-111072号公報 特開2014-213317号公報
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ポリシラザンと有機溶剤を含有した耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物において、クラックが発生しにくく高硬度な膜を形成でき、前記組成物の硬化物からなる膜は、膜表面の滑り性が向上し傷が付きにくく、優れた耐擦傷性を備えた硬化皮膜を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)ポリシラザン:100質量部、
(B)有機溶剤(フッ素を含み、かつ沸点が61℃以上となる有機溶媒を除く):100~100,000質量部、及び
(C)分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテル:10~100質量部
を含有する耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物であって、
前記(A)成分が下記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリシラザンであることを特徴とする耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物を提供する。
Figure 2024004092000001
このような耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、クラックが発生しにくく高硬度な膜を形成でき、前記組成物の硬化物からなる膜は、膜表面の滑り性が向上し傷が付きにくく、優れた耐擦傷性能を備えた硬化皮膜となる。
また、前記(A)成分が下記式(1)で示される繰り返し単位及び下記式(2)で示される繰り返し単位を有し、前記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する前記式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5であるポリシラザンであることが好ましい。
Figure 2024004092000002
(式中、Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン1分子中のRは同一であっても異なっていてもよい。)
このようなポリシラザンを含む耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物であれば、高硬度な硬化皮膜を与える。
また、前記耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、フルオラス溶媒含有量が、500ppm以下であることが好ましい。
このような耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物であれば、環境保護の観点で優れた耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物となる。
また、さらに(D)硬化触媒を含むものであることが好ましい。
このような耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物であれば、硬化性に優れた耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物となる。
また、本発明では、上記耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物の硬化物からなる硬化皮膜を提供する。
このような硬化皮膜は、クラックが発生することなく高硬度であり、また膜表面の滑り性が向上して傷が付きにくく、優れた耐擦傷性能を備えたコーティング皮膜となる。
また、本発明は、上記硬化皮膜からなる耐擦傷性コーティング皮膜であって、ガラス基板上における該皮膜のJIS K 5600-5-4:1999に記載の方法で測定した鉛筆硬度が5H以上である耐擦傷性コーティング皮膜を提供する。
このような耐擦傷性コーティング皮膜(硬化皮膜)は、エンジニアリングプラスチックや車体、建物外壁などのコーティング剤として好適に用いることができるものである。
本発明によれば、ポリシラザンと有機溶剤と分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテルを含有した耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物を用いるため、クラックが発生することなく高硬度な膜を形成できる。また前記組成物は、膜表面の滑り性が向上し傷が付きにくく、優れた耐擦傷性能を備えたコーティング皮膜を提供し、エンジニアリングプラスチックや車体、建物外壁などのコーティング剤として好適に用いることができる。
上述のように、クラックが発生することなく高硬度な膜を形成できる耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物、また膜表面の滑り性が向上し傷が付きにくく、優れた耐擦傷性能を備えたコーティング皮膜の開発が求められていた。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、特定のポリシラザンと有機溶剤と分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテルを含有した耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物が、クラックが発生することなく高硬度な膜を形成でき、また膜表面の滑り性が向上し傷が付きにくく、優れた耐擦傷性能を備えた硬化皮膜となることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、(A)ポリシラザン:100質量部、
(B)有機溶剤(フッ素を含み、かつ沸点が61℃以上となる有機溶媒を除く):100~100,000質量部、及び
(C)分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテル:10~100質量部
を含有する耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物であって、
前記(A)成分が下記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリシラザンであることを特徴とする耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物である。
Figure 2024004092000003
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これは例示的に示されるもので、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
<耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物>
本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、(A)ポリシラザン、(B)有機溶剤及び(C)分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテルを含有することを特徴とする。
以下、本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物について説明する。
<(A)ポリシラザン>
本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物を構成するポリシラザンは、硬化して皮膜(硬化皮膜)を形成する成分である。
上記ポリシラザンは、下記式(1)で示される繰り返し単位を有することが必要であり、下記式(2)で示される繰り返し単位を更に有してもよい。
Figure 2024004092000004
前記式(2)中、Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基である。好ましくは、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基、炭素数6~8の芳香族炭化水素基、炭素数1~3のアルコキシ基から選ばれる基であり、例えばメチル基、エチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。中でも、取り扱いが容易であり、また硬化皮膜の硬度も低下しにくいメチル基が特に好ましい。Rはポリシラザン1分子中で繰り返し単位毎に適宜選択することができ、同一であっても異なっていてもよい。
また、前記ポリシラザンは、上記式(1)で示される繰り返し単位および上記式(2)で示される繰り返し単位を有し、前記式(1)および式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する前記式(2)で示される繰り返し単位の数の比(以下、「繰り返し単位(2)の比率」ともいう)が、0~0.6であることが好ましく、0~0.5であるポリシラザンであることがより好ましい。このようなポリシラザンであれば、高硬度なコーティング皮膜となるため好ましい。
(A)成分が上記式(1)で示される繰り返し単位を有さないポリシラザンを含有する耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物の硬化皮膜は、ポリシラザン中に多くの有機基を含有するため、硬化皮膜自体の硬度が低くなり、後述する耐擦傷性評価におけるヘーズ値の変化が大きく、傷が付きやすい。このような硬化したコーティング皮膜の強度低下は、有機基の割合が増えるほどコーティング皮膜の緻密性が低下するためと考えられる。
従って、コーティング皮膜の用途にもよるが、繰り返し単位(2)の比率は上記の範囲とすることが好ましい。
なお、繰り返し単位(2)の比率は、例えば、H-NMR、29Si-NMRを測定して得られたスペクトルから特定ピークの積分値を求めることで得ることができるが、ポリシラザンを合成する際に仕込んだ原料のモル比から理論値として導くこともできる。
また、前記ポリシラザンは、後述する(B)有機溶剤への溶解性や塗布時の作業性の観点から重量平均分子量100~100,000,000がよく、好ましくは1,000~1,000,000、より好ましくは2,000~500,000の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量が100以上だと揮発性が低く、有機溶剤の揮発および硬化工程時にポリシラザンそのものが揮発することで塗膜の膜質が劣化する恐れがないため好ましく、100,000,000以下だと、有機溶剤に対する溶解性が高いため好ましい。
なお、本明細書中で言及する重量平均分子量は、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質として得られた値を指す。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.35mL/min
検出器:示差屈折率検出器
カラム:TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-M
TSKgel SuperMultipore HZ-M
(4.6mmI.D.×15cm,4μm×4)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
また、前記式(1)及び前記式(2)で示される繰り返し単位を有するポリシラザンは、これらの繰り返し単位以外に分岐構造や環状構造を含有してもよいが、分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテル構造を含有する繰り返し単位は持たないものである。
<(B)有機溶剤>
本発明で用いる耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、塗布時の作業性や保存安定性を改善することを目的として、有機溶剤を含有する。前記有機溶剤は、フッ素を含み、かつ沸点が61℃以上となる有機溶媒(フッ素溶剤)を除く。フッ素溶剤は高価であり、環境保護の観点からもその使用は好ましくない。ここで、沸点は1気圧(1013hPa)における値である。
前記有機溶剤としては、前記フッ素溶剤以外のものであって、前記(A)ポリシラザンおよび後述する(C)分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテル、必要に応じて配合される(D)硬化触媒を溶解する有機溶剤であればよく、特に限定されない。例えば、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、イソノナン、n-デカン、イソデカンなどの飽和脂肪族炭化水素、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、β-ミルセンなどの不飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの飽和脂環式炭化水素、シクロヘキセンなどの不飽和脂環式炭化水素、p-メンタン、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテンなどのテルペン化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、テトラヒドロナフタレンなどの芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコールなどのケトン化合物、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、アセト酢酸エチル、カプロン酸エチルなどのエステル化合物、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-n-ペンチルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル、tert-ブチルメチルエーテルなどのアルキルエーテル化合物、アニソール、ジフェニルエーテルなどのアリールエーテル化合物、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、ビス(2-エトキシエチル)エーテル、ビス(2-ブトキシエチル)エーテルなどのグリコールエーテル化合物などが挙げられ、ポリシラザンの保存安定性やコーティング時の揮発性の観点から、ジブチルエーテルやメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンや不飽和脂肪族炭化水素溶剤などが好ましい。
また、本発明で用いる耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物100質量部において、フルオラス溶媒含有量が、500ppm以下(質量換算)であることが好ましい。このような耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物であれば、環境保護の観点で優れた耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物となるため好ましい。
なお、ここでフルオラス溶媒とは、炭化水素(酸素、窒素などのヘテロ原子を有していてもよい)の水素原子の全てまたは大部分がフッ素原子に置換された溶媒をいう。前記フルオラス溶媒は、例えば、前記炭化水素の水素原子数の50%以上がフッ素原子に置換されている。
フルオラス溶媒としては、テトラデカフルオロヘキサン、ヘキサデカフルオロヘプタン、オクタデカフルオロオクタン、エイコサフルオロノナン、オクタフルオロシクロペンテン、テトラデカフルオロメチルシクロヘキサン、オクタデカフルオロデカヒドロナフタレン、ヘキサフルオロベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、オクタフルオロトルエン、ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルなどが挙げられる。
なお、本発明において、上記フルオラス溶媒の含有量は、以下に記載したガスクロマトグラフィ測定の積分比から算出した値を指す。
[試料調製]
試料1gをn-テトラデカン含有アセトン(20μg/mL)10mLと混合し、室温/24hr抽出した。
[測定条件]
カラム:J&W DURABOND. DB-5MS
カラム温度:50℃~280℃
昇温速度:10℃/min
注入口温度:270℃
キャリアガス:ヘリウム
流速:5mL/min
検出器:FID(300℃)
試料注入量:2μL
塗布時の作業性やポリシラザンの保存安定性の観点から、希釈比率は(A)ポリシラザン100質量部に対して(B)有機溶剤が100~100,000質量部の範囲内であり、200~50,000質量部であることが好ましく、400~10,000質量部であることがさらに好ましい。
(B)有機溶剤はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物に含まれる水分量(質量換算)は500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。水分量が500ppm以下であれば、ポリシラザンと含有水分とが反応しないため、発熱したり、水素ガスやアンモニアガスが発生したりする恐れがなく、また、増粘、ゲル化などを引き起こす恐れもないので好ましい。従って、(B)有機溶剤中の水分量は、本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物に含まれる水分量が上記範囲となるように制御されていることが好ましい。
<(C)アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテル>
(C)分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテル(アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテル)は、本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物に含まれることで、本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物から得られる硬化皮膜のクラックの抑制と滑り性を付与する役割を果たす。具体的には、本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物の硬化過程において、このアルコキシシリル基が縮合反応することで(C)アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテルが(A)ポリシラザンに結合し、本発明における効果を発揮する硬化皮膜が得られる。
(C)アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテルは、分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテルであればよく特に限定されないが、下記式(c-1)で示される2価の直鎖フルオロポリエーテル基を分子中に有することができる。
-(CFO)(CFCFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)- (c-1)
上記p、q、r、sの値は19F NMRの積分比から得られる値であり、pは1以上、好ましくは1~80、より好ましくは3~30の整数、qは1以上、好ましくは1~80、より好ましくは3~30の整数、rは0以上、好ましくは0~20、より好ましくは0~5の整数、sは0以上、好ましくは0~20、より好ましくは0~5の整数で、各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。上述のような撥水撥油性や防汚性は、フッ素原子の存在に起因するため、pおよびqが1以上で、p、q、r、sが上記の範囲内であれば、ポリシラザン組成物への相溶性が良好になる。
上記フルオロポリエーテルにおけるアルコキシシリル基は、例えば下記式(c-2)で示されることができる。
-Si(ORc1c2 (c-2)
式中、mは1≦m≦3、nは0≦n≦2、m+n=3を満たす整数であり、mは3、nは0が好ましい。
ORc1はケイ素原子に直接結合するアルコキシ基を表しており、ORc1の酸素原子がケイ素原子に直接結合することでアルコキシシリル基をなす。
c1として例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、フェニル基などの炭化水素基、メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、メトキシエトキシメチル基などのエーテル結合含有炭化水素基、メチルチオメチル基などのチオエーテル結合含有炭化水素基などが挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
c2はアルコキシ基以外の基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、フェニル基などの炭化水素基、メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、メトキシエトキシメチル基などのエーテル結合含有炭化水素基、メチルチオメチル基などのチオエーテル結合含有炭化水素基などが挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
上記(c-1)で示される2価の直鎖フルオロポリエーテル基と、上記(c-2)で示されるアルコキシシリル基は連結基を介して連結できる。上記連結基は、(C)アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテルの(B)有機溶剤への溶解性を向上させることで、本発明のポリシラザン組成物への相溶性を高める役割を果たす。
上記(c-1)で示される2価の直鎖フルオロポリエーテル基と、上記(c-2)で示されるアルコキシシリル基は、2価以上の連結基からなる分子鎖を介して共有結合によって連結されていれば、上記2価以上の連結基の分子鎖の構造は特に限定されない。
例えば、3価以上の連結基を用いてアルコキシシリル基の含有数を増加させることで本発明の効果を向上させることができる。
アルコキシシリル基の分子内縮合に起因するフルオロポリエーテルの高分子量化によって、フルオロポリエーテルの本発明のポリシラザン組成物への相溶性が低下することを回避する目的で、連結基の価数は2~10価が好ましく、2~5価がより好ましい。
上記連結基はエーテル結合、アミド結合、エステル結合、及びシロキサン結合より選ばれる1種類または2種類以上の構造を介在させたものであってもよい。
連結基は、これを介して(c-1)と(c-2)を連結するが、分岐構造や環状構造を含んでいても良く、連結基由来の原子数が2~50であることが好ましく、4~30であることがより好ましい。上記原子数が50以下であれば、添加(C)成分に含まれる質量当たりのフッ素原子の量が低下しないため、防汚性能が低下しない。
連結基としては、例えば、-CFCHO(CH-などが挙げられる。
(C)アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテルはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
(C)成分(アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテル)の配合量は、(A)成分(ポリシラザン)100質量部に対して、10~100質量部であり、20~80質量部が好ましく、40~60質量部がより好ましい。この範囲内であれば、本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物から得られる硬化皮膜のクラックを抑制し、硬化皮膜の硬度を低下させることなく滑り性を付与することができるため好ましい。
(C)アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテルとしては、市販品を用いてもよく、上記有機溶剤により希釈されていてもよい。例えば、いずれも信越化学工業社製のKY-1281(アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテル20質量%含有メチルエチルケトン溶液)、KY-1203(アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテル20質量%含有メチルイソブチルケトン溶液)、KY-1211(アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテル20質量%含有メチルエチルケトン溶液)、KY-1207(アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテル20質量%含有メチルエチルケトン溶液)や、下記式CBで表わせられるものなどが挙げられ、特に透明性や優れた滑り性を示すKY-1281やKY-1203が好ましい。
Figure 2024004092000005
一般に、上記のようなパーフルオロポリエーテル鎖を主鎖とし、末端に反応性シリル基を有する含フッ素エーテル化合物は、高価なペルフルオロヘキサンなどのフルオラス溶媒にのみ可溶であるという問題があった(特開2017-145199号公報[0004]段落参照)。しかしながら、本発明では、特定の組成とすることで、フルオラス溶媒を含まないか極微量であっても(C)成分の組成物に対する相溶性は良好になっている。
<(D)硬化触媒>
本発明で用いる耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、前記(A)~(C)成分に加え、(D)硬化触媒を添加することができる。硬化触媒を添加することにより、屋外環境や耐熱性のない有機基板への塗工など、熱をかけることができない条件でも塗膜を形成できるようになるため好ましい。
硬化触媒は、例えば1分子中に1個以上のアルコキシシリル基及び1個以上のアミノ基を有する有機ケイ素化合物や、金属元素含有化合物であることが好ましい。
前記有機ケイ素化合物の例としては、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシランなどのアミノシラン類、及びこれらアミノシラン類の部分加水分解物が挙げられ、3-アミノプロピルトリメトキシシランや3-アミノプロピルトリエトキシシランは硬化速度が速く、作業性に優れるため好ましい。
前記金属元素含有化合物の例としては、チタン、アルミニウム、スズ、亜鉛およびパラジウムなどの金属元素を含む化合物が挙げられ、着色する恐れが少ないチタンやアルミニウムの金属化合物が好ましい。
硬化触媒は、単独で、あるいは2種又は3種以上を任意の割合で添加してもよい。硬化触媒の添加量は、(A)成分のポリシラザン100質量部に対して0.1~100質量部が好ましく、0.5~50質量部がより好ましい。
<その他の成分>
本発明で用いる耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、更に上記硬化触媒以外のアルコキシ基含有有機ケイ素化合物、シリコーン化合物および低分子のシラザン構造含有化合物などのレベリング剤、無機充填材、難燃剤および光吸収剤などの成分を目的に応じて添加することができる。
その他の成分の合計の添加量は、(A)成分のポリシラザン100質量部に対して0.1~200質量部が好ましく、1~100質量部がより好ましい。
<製膜方法>
本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、そのまま基材のコーティングに使用できる。前記耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物を製膜(塗布)する方法としては、特に限定されないが、例えば、チャンバードクターコーター、一本ロールキスコーター、リバースキスコーター、バーコーター、リバースロールコーター、正回転ロールコーター、ブレードコーター、ナイフコーターなどを用いるロールコート法や、スピンコート法、ディスペンス法、ディップ法、スプレー法、転写法、スリットコート法などが挙げられる。また、上記の塗布方法を用いることができない場合には、任意の布や紙などに前記高硬度皮膜形成用コーティング剤組成物を染み込ませたものを使って基材に塗布する、拭き上げ塗装方法を用いることもできる。
塗布対象となる基材としては、シリコン基板、ガラス基板、金属基板、樹脂塗装金属基板、樹脂基板、樹脂フィルムなどが挙げられ、必要であれば半導体素子を形成する過程での半導体膜や回路などの設けられた基板などに塗布してもよい。塗膜の厚さは、膜の使用目的などにより異なるが、一般的には、硬化膜厚で、10~100,000nm、好ましくは100~1,000nmとされる。
<硬化方法>
本発明の高硬度皮膜形成用コーティング剤組成物を上記製膜方法により塗布し、ポリシラザン樹脂塗膜を形成した後、これを硬化する方法は特に限定されないが、乾燥・硬化処理することが好ましい。この処理は、塗膜中に含まれる溶媒の完全除去と、シラザン結合からシロキサン結合への変換反応を促進するための硬化反応を目的とするものである。
乾燥・硬化処理の温度は、使用する基材によって適宜選択されるが、0℃~300℃が好ましく、25℃~150℃がより好ましい。乾燥・硬化処理の時間は、処理温度によって異なるが、1時間~2週間程度を挙げることができる。
また、乾燥・硬化処理は、加熱以外にも水蒸気加熱処理や大気圧プラズマ処理、低温プラズマ処理、UV処理、エキシマ光処理などを必要に応じて用いることができる。それぞれ対応する基材との組み合わせにより選択される。
<硬化皮膜>
本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物を、例えば上記硬化方法により硬化して硬化皮膜(硬化膜)とする。この硬化皮膜は上記コーティング剤組成物の硬化物からなるため、高硬度で滑り性があり耐擦傷性に優れている。
上記硬化皮膜は、ガラス基板上においてJIS K 5600-5-4:1999に記載の方法で測定した鉛筆硬度が5H以上であることが好ましく、6H以上がより好ましく、7H以上が更に好ましく、8H以上が特に好ましい。即ち、上記硬化皮膜からなる耐擦傷性コーティング皮膜であって、ガラス基板上における該皮膜のJIS K 5600-5-4:1999に記載の方法で測定した鉛筆硬度が5H以上である耐擦傷性コーティング皮膜であれば、引っかき傷に対して強く、傷の目立ちにくい意匠性の高いコーティング皮膜となるため、エンジニアリングプラスチック製品や輸送車両用のコーティング皮膜や、シンクやサニタリーなどの住居設備の傷防止皮膜を形成するのに好適である。
本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、上記(A)から(C)成分を含有する組成物であって、組成物中のポリシラザンとアルコキシシリル基含有ポリエーテルとは別れて存在している。この点で、例えば特開2010-43251号公報に記載のパーフルオロポリエーテル変性ポリシラザンを含むコーティング剤組成物とは異なる。
特に、本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、上記(A)から(C)成分を独立して含有するため、(C)成分に由来するフルオロポリエーテル構造が、組成物が硬化するときに初めてポリシラザン骨格に、分子内のアルコキシシリル基の縮合反応を伴って組み込まれる。また、表面張力の差により膜の表面のみにフルオロポリエーテル構造が配向しながら硬化が進むため、滑り性や撥水撥油性を膜表面に付与する。一方、(A)成分のポリシラザンは、基材表面と親和性が有り、例えば基材表面に存在するOH基などと反応して硬化が進む。このようにして基材側では主に(A)成分の硬化が進み、皮膜表面側では主に(C)成分がポリシラザン骨格に取り込まれながら硬化が進んで硬化皮膜を形成する。
その結果、本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物の硬化物からなる硬化皮膜は、硬化皮膜の表面側ではフルオロポリエーテル構造が露出して滑り性が向上し傷が付きにくくなり、皮膜内の有機基は主に(A)成分のポリシラザン由来し、その割合が限定されるため、硬化性に優れ、硬化後のコーティング皮膜の強度も十分になる。また、基材側では(A)成分のポリシラザンが基材と強く結合して高硬度になる。これらの相乗効果で、優れた耐擦傷性能を備えたコーティング皮膜を形成するものと考えられる。
これに対して、パーフルオロポリエーテル変性ポリシラザンを含むコーティング剤組成物は、フルオロポリエーテル構造がポリシラザン全体に取り込まれるため、膜中の有機基の割合が高くなって硬度が低下してしまうだけでなく、本来表面に露出して滑り性向上に寄与するはずのフルオロポリエーテル構造が膜内部に取り込まれてしまい、十分な耐擦傷性能を発揮できなくなると考えられる。更に、膜表面がポリシラザン由来のシロキサン単位を多く含むため、撥水撥油性や滑り性などの表面特性が劣る。そのうえ、パーフルオロポリエーテル鎖を主鎖とし、末端に反応性基を有する含フッ素エーテル化合物は、滑り特性改善に寄与するものの、高価なパーフルオロヘキサンなどのフルオラス溶媒にのみ可溶であるという問題も抱えている。
このように、本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、その特徴的な構成により、従来品にはなかった優れた耐擦傷性能を備え、かつ環境保護などの面でも優れたコーティング皮膜を形成することができる。
以上のように、本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、クラックが発生しにくく高硬度であり、また膜表面の滑り性が向上し傷が付きにくく、優れた耐擦傷性能を備えたコーティング皮膜を形成するものとなる。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において重量平均分子量は上記測定条件で求めた。
<(A)ポリシラザンの調製例>
以下のとおり、(A)成分のポリシラザンとしてPSZ-1~PSZ-4を準備した。なお、繰り返し単位(2)の比率は、ポリシラザンを合成する際に仕込んだ原料のモル比から求めた理論値である。
[ポリシラザン調製-1(PSZ-1)]
純度99質量%以上のジクロロシラン0.20モルを、窒素ガスとともに-10℃の脱水ピリジン300ml中に撹拌しながら吹き込んだ。その後、純度99質量%以上のアンモニアを0.60モル吹き込み、生成した塩を加圧濾過により取り除くことで、ポリシラザン溶液を得た。得られたポリシラザンの重量平均分子量は3,500であった。
このポリシラザン溶液を150℃に加熱しピリジンを150ml溜去した。次にジブチルエーテルを300ml加え、共沸蒸留によりピリジンを取り除き、溶液全体に対してポリシラザンが20質量%となるようにジブチルエーテルを添加した(PSZ-1)。繰り返し単位(2)の比率は0である。
[ポリシラザン調製-2(PSZ-2)]
メチルジクロロシラン0.06モルを、窒素雰囲気下において-10℃の脱水ピリジン300mlに撹拌しながら滴下後、純度99質量%以上のジクロロシラン0.14モルを、窒素ガスとともに前記ピリジン中に撹拌しながら吹き込んだ。その後、純度99質量%以上のアンモニアを0.60モル吹き込み、生成した塩を加圧濾過により取り除くことで、ポリシラザン溶液を得た。得られたポリシラザンの重量平均分子量は2,000であった。
このポリシラザン溶液を150℃に加熱しピリジンを150ml溜去した。次にジブチルエーテルを300ml加え、共沸蒸留によりピリジンを取り除き、溶液全体に対してポリシラザンが20質量%となるようにジブチルエーテルを添加した(PSZ-2)。繰り返し単位(2)の比率は0.3である。
[ポリシラザン調製-3(PSZ-3)]
メチルジクロロシラン0.10モルを、窒素雰囲気下において-10℃の脱水ピリジン300mlに撹拌しながら滴下後、純度99質量%以上のジクロロシラン0.10モルを、窒素ガスとともに前記ピリジン中に撹拌しながら吹き込んだ。その後、純度99%以上のアンモニアを0.60モル吹き込み、生成した塩を加圧濾過により取り除くことで、ポリシラザン溶液を得た。得られたポリシラザンの重量平均分子量は1,500であった。
このポリシラザン溶液を150℃に加熱しピリジンを150ml溜去した。次にジブチルエーテルを300ml加え、共沸蒸留によりピリジンを取り除き、溶液全体に対してポリシラザンが20質量%となるようにジブチルエーテルを添加した(PSZ-3)。繰り返し単位(2)の比率は0.5である。
[ポリシラザン調製-4(PSZ-4)]
メチルジクロロシラン0.20モルを、窒素雰囲気下において-10℃の脱水ピリジン300mlに撹拌しながら滴下後、純度99質量%以上のアンモニアを0.60モル吹き込み、生成した塩を加圧濾過により取り除くことで、ポリシラザン溶液を得た。得られたポリシラザンの重量平均分子量は1,200であった。
このポリシラザン溶液を150℃に加熱しピリジンを150ml溜去した。次にジブチルエーテルを300ml加え、共沸蒸留によりピリジンを取り除き、溶液全体に対してポリシラザンが20質量%となるようにジブチルエーテルを添加した(PSZ-4)。繰り返し単位(2)の比率は1である。
(B)~(D)成分としては、以下のものを用いた。
(B)有機溶剤
ジブチルエーテル:関東化学社製
(C)分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテル
KY-1281(アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテル20質量%含有メチルエチルケトン溶液):信越化学工業製
KY-1203(アルコキシシリル基含有フルオロポリエーテル20質量%含有メチルイソブチルケトン溶液):信越化学工業製
(D)硬化触媒
KBE-903:3-アミノプロピルトリエトキシシラン:信越化学工業社製
[実施例1~8、比較例1~7]
表1に示す配合量(質量部)で、(A)成分のポリシラザン、(B)成分の有機溶剤、(C)成分の分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテルおよび(D)成分の硬化触媒を配合し、耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物を調製した。
調製した耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物を、ガラス基板にスピンコート(回転速度500rpm、回転時間30秒)により塗布し、150℃/2hrの条件下で硬化皮膜(硬化膜)を得た。
<フルオラス溶媒含有量測定>
上述したフルオラス溶媒含有量の測定方法により、耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物中のフルオラス溶媒含有量を測定した。結果を表1および表2に示す。
<動摩擦係数測定>
ベンコット(旭化成社製セルロース製不織布)に対するガラス基板上の硬化膜の動摩擦係数を、表面性試験機14FW(新東科学社製)を用いて下記条件で測定した。結果を表1および表2に示す。
(条件)
接触面積:10mm×35mm
荷重:100g
<鉛筆硬度評価>
ガラス基板上の硬化膜の鉛筆硬度を、鉛筆硬度試験器(ペパレス製作所製)を用いて、JIS K 5600-5-4:1999に記載の方法に準拠して測定した。結果を表1および表2に示す。
<耐擦傷性評価>
ガラス基板上の硬化膜を、往復摩耗試験機(新東科学社製)を用いて下記条件で擦った。擦り前後のヘーズ値を、ヘーズメーター(日本電色工業社製)を用いて、JIS K 7136に記載の方法に準拠して測定した。擦り前後のヘーズ値を用いて、下記式によりヘーズ値の変化率を算出した。結果を表1および表2に示す。
(条件)
擦り材:4枚重ねたベンコット(旭化成社製)
接触面積:30mm×30mm
荷重:500g
擦り距離(片道):60mm
擦り速度:12000mm/min
回数:5000往復
(式)
変化率(%)=(擦り後のヘーズ値)―(擦り前のヘーズ値)
Figure 2024004092000006
(C)成分( )内:実質の分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテルの配合量
Figure 2024004092000007
(C)成分( )内:実質の分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテルの配合量
実施例1~実施例8の(C)成分の配合量が本発明の範囲内の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物の硬化皮膜は、クラックが発生することなく、低い動摩擦係数を示すため膜表面の滑り性が高く、また硬化皮膜自体の鉛筆硬度も高いため、耐擦傷性評価におけるヘーズ値の変化が小さく、耐擦傷性に優れた透明性の高い硬化皮膜であることがわかる。
一方、比較例1~比較例5の(C)成分の配合量が本発明の範囲外の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物の硬化皮膜において、比較例1~比較例3は(C)成分の配合量が本発明の範囲より少ないため、硬化皮膜自体の鉛筆硬度は高いが動摩擦係数が高く、膜表面の滑り性が低いため、耐擦傷性評価におけるヘーズ値の変化が大きく、傷が付きやすい硬化膜であることがわかる。また、比較例4~比較例5の(C)成分の配合量が本発明の範囲より多い硬化皮膜は、動摩擦係数は低く膜表面の滑り性は高いが、(C)成分の配合量が多過ぎて、ポリシラザンの硬化性を阻害し、硬化皮膜自体の鉛筆硬度が低くなるため、耐擦傷性評価におけるヘーズ値の変化が大きく、傷が付きやすい硬化膜であることがわかる。
また、実施例1、実施例3および実施例4の(A)成分に本発明の特定構造のポリシラザンを含有する耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物の硬化皮膜は、低い動摩擦係数を示すため膜表面の滑り性が高く、また硬化皮膜自体の鉛筆硬度も高いため、耐擦傷性評価におけるヘーズ値の変化が小さく、耐擦傷性に優れた透明性の高い硬化皮膜であることがわかる。
一方、比較例6および比較例7の(A)成分に上記式(1)で示される繰り返し単位を有さない構造のポリシラザンを含有する耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物の硬化皮膜は、動摩擦係数は低く膜表面の滑り性は高いが、ポリシラザン中に多くの有機基を含有し硬化皮膜自体の鉛筆硬度が低いため、耐擦傷性評価におけるヘーズ値の変化が大きく、傷が付きやすい硬化膜であることがわかる。
このことから、本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、高硬度な膜を形成でき、また膜表面の滑り性が向上し傷が付きにくく、優れた耐擦傷性能を備えたコーティング皮膜を与えるものであることがわかる。
[産業上の利用可能性]
本発明の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、クラックが発生することなく高硬度な膜を形成でき、また膜表面の滑り性が向上し傷が付きにくく、優れた耐擦傷性能を備えたコーティング皮膜であることから、エンジニアリングプラスチックや車体、建物外壁などのコーティング剤として好適に用いることができるものである。
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:(A)ポリシラザン:100質量部、
(B)有機溶剤(フッ素を含み、かつ沸点が61℃以上となる有機溶媒を除く):100~100,000質量部、及び
(C)分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテル:10~100質量部
を含有する耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物であって、
前記(A)成分が下記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリシラザンであることを特徴とする耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。
Figure 2024004092000008
[2]:前記(A)成分が下記式(1)で示される繰り返し単位及び下記式(2)で示される繰り返し単位を有し、前記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する前記式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5であるポリシラザンであることを特徴とする[1]に記載の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。
Figure 2024004092000009
(式中、Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン1分子中のRは同一であっても異なっていてもよい。)
[3]:前記耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、フルオラス溶媒含有量が、500ppm以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。
[4]:さらに(D)硬化触媒を含むものであることを特徴とする[1]から[3]のいずれか1つに記載の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。
[5]:[1]から[4]のいずれか1つに記載の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物の硬化物からなる硬化皮膜。
[6]:[5]に記載の硬化皮膜からなる耐擦傷性コーティング皮膜であって、ガラス基板上における該皮膜のJIS K 5600-5-4:1999に記載の方法で測定した鉛筆硬度が5H以上のものであることを特徴とする耐擦傷性コーティング皮膜。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

Claims (10)

  1. (A)ポリシラザン:100質量部、
    (B)有機溶剤(フッ素を含み、かつ沸点が61℃以上となる有機溶媒を除く):100~100,000質量部、及び
    (C)分子内に1つ以上のアルコキシシリル基を有するフルオロポリエーテル:10~100質量部
    を含有する耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物であって、
    前記(A)成分が下記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリシラザンであることを特徴とする耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。
    Figure 2024004092000010
  2. 前記(A)成分が下記式(1)で示される繰り返し単位及び下記式(2)で示される繰り返し単位を有し、前記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する前記式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5であるポリシラザンであることを特徴とする請求項1に記載の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。
    Figure 2024004092000011
    (式中、Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン1分子中のRは同一であっても異なっていてもよい。)
  3. 前記耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、フルオラス溶媒含有量が、500ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。
  4. 前記耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物は、フルオラス溶媒含有量が、500ppm以下であることを特徴とする請求項2に記載の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。
  5. さらに(D)硬化触媒を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。
  6. さらに(D)硬化触媒を含むものであることを特徴とする請求項2に記載の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。
  7. さらに(D)硬化触媒を含むものであることを特徴とする請求項3に記載の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。
  8. さらに(D)硬化触媒を含むものであることを特徴とする請求項4に記載の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の耐擦傷性皮膜形成用コーティング剤組成物の硬化物からなる硬化皮膜。
  10. 請求項9に記載の硬化皮膜からなる耐擦傷性コーティング皮膜であって、ガラス基板上における該皮膜のJIS K 5600-5-4:1999に記載の方法で測定した鉛筆硬度が5H以上のものであることを特徴とする耐擦傷性コーティング皮膜。
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