JP2024002708A - 組成推定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】原料液の濃縮を非加熱及び非加圧の条件下で行うときに濃縮中の原料液中の溶媒組成を知ることができる、組成推定方法の提供。【解決手段】溶質、水、及び有機溶媒を含有する原料液の濃縮中に原料液の組成を推定するための方法であって、濃縮が正浸透法及び膜蒸留法を組み合わせた方法によって行われ、正浸透法に用いる誘導液及び膜蒸留に用いる冷却液の質量が追跡されており、以下の演算(A)~(D)を含む、組成成推定方法:(A)冷却水の質量の増加分から冷却水中の有機溶媒の濃度を算出すること;(B)冷却水の質量の増加速度から原料液と冷却水との蒸気圧差を推定すること; (C)演算(A)で得られた冷却水中の有機溶媒濃度及び演算(B)で得られた原料液と冷却水との蒸気圧差から原料液中の有機溶媒の蒸気圧を算出すること;並びに(D)演算(C)で得られた原料液中の有機溶媒の蒸気圧から原料液中の有機溶媒の濃度を算出すること。【選択図】図1

Description

本発明は、溶質及び溶媒を含有する原料液の濃縮中に原料液の組成を推定するための、組成推定方法に関する。
濃縮を必要とする原料液において、溶媒として水及び有機溶媒を含む原料液は、工業的には数多く存在する。ペプチド、酵素、タンパク質等の、アミノ酸配列を有する物質(以下「ペプチド等」という。)の合成プロセスにおいても、濃縮対象の原料液における溶媒は、水及び有機溶媒の双方を含む場合がある。
ペプチド等は、診断・検査薬、医薬品として広く利用されており、その原料は非常に高価である。そのため、ペプチド等を含む原料液を濃縮する際には、ペプチド等を変性させないために、非加熱、非加圧で濃縮を行い、収率高く回収することが重要である。
安定的にかつ効率よく、ペプチド等を含む原料液を濃縮するための一つの方法として、限外濾過膜を用いた膜ろ過法が用いられている。限外濾過膜を用いた膜ろ過法は、原料液を篩分けにより分離する技術であり、温度変化を伴わないため、エネルギー負荷を下げることが可能である。限外ろ過膜を用いた膜濾過法では、膜の分画分子量以上の大きさの成分は保持されるが、水は膜を通り抜けるため、ペプチド等の濃縮には有効である(特許文献1)。
また、溶媒を分子レベルで透過させる膜を用いた逆浸透(RO:Reverse Osmosis)法が知られている。RO法は、原料液を、当該原料液の浸透圧より高い所定の圧力に昇圧したうえで、RO膜モジュールに供給し、原料液中の溶媒だけがRO膜を透過するように構成して、原料液中の溶媒(典型的には水)を除去することにより、原料液を濃縮する方法である(特許文献2)。
別の原料液の濃縮方法として、正浸透(FO:Forward Osmosis)法が知られている。FO法は、原料液と、この原料液よりも浸透圧の高い誘導液とを、正浸透(FO)膜を介して接触させることにより、原料液から誘導液へと溶媒を拡散させることにより、原料液を濃縮する方法である。FO法は、加圧を必要としないため、原料液に含まれる溶質が固着することなく、効率よく濃縮できると期待されている(特許文献3)。
これらとは更に別の原料液の濃縮方法として、膜蒸留(MD:Membrane distillation)法が知られている。膜蒸留法の1つの方法として、原料液と、この原料液よりも温度の低い冷却水とを膜を介して接触させ、原料液から冷却水へ原料液中の溶媒蒸気が移動することにより、原料液が濃縮されるDCMD法(Direct contact MD)がよく知られている(特許文献4)。
特許文献5には、正浸透法による濃縮方法が記載されている。正浸透膜に必要な誘導液が高い浸透圧を保持するため膜蒸留法で誘導液中の水分を除くことが示されている。つまり特許文献5の技術では、膜蒸留法は原料液の濃縮には用いず正浸透法で用いる誘導液の再生に用いられている。
特許文献1に記載の限外濾過膜を用いた膜ろ過法では、原料液の加圧を要するため、原料液に含まれる溶質の膜表面への固着が起こり、回収率が低下する課題があった。また、昨今開発が進められている中分子医薬品の場合、分子量が限外濾過膜の分画分子量よりも小さいものがあり、限外濾過膜を一部透過するため回収率が低下する。
特許文献2に記載のRO法では、原料液の加圧が必要なため、原料液に含まれる溶質のRO膜表面への固着が起こり、回収率が低下する課題があった。また、RO法は、濃縮された原料液中の溶媒(ろ過された溶媒)の浸透圧が、加圧に用いる高圧ポンプの圧力を超えることはないため、RO法による原料液の濃縮率には、ポンプの能力に応じた限界がある。
特許文献3に記載の正浸透プロセスでは、濃縮する際、正浸透膜の活性層が選択的に水分子を通すため、溶媒として水及び有機溶媒の双方を含む原料液を濃縮した場合、濃縮液に有機溶媒が多く残る課題があった。
一方、特許文献4の膜蒸留法では、蒸気圧の低い成分が優先的に膜を通して系外に除去されるため、溶媒として水及び有機溶媒の双方を含む原料液を濃縮した場合、濃縮液には水が多く残る課題があった。これに加えて、濃縮物に水が多く残ると、原料液中の有効成分が析出してしまう課題もあった。
特許文献5の技術では、膜蒸留法は正浸透に用いられる誘導液の再生に使用されており、原料液の濃縮には適用されていない。
この点、特許文献6には水及び有機溶媒を含む原料液を、正浸透膜法及び膜蒸留を組み合わせて濃縮する方法が開示されている。この濃縮方法によれば、原料液を非加圧及び非加熱の条件下で濃縮することができ、濃縮後の原料液中の、水及び有機溶媒の比率(溶媒組成)を任意の割合に制御できるとの特徴がある。
国際公開第2013/170977号 特開平11-75759号公報 米国特許出願公開第2016/0016116号明細書 国際公開第2016/006670号 特開2017-127842号公報 国際公開第2021/054406号
特許文献6には、濃縮中に、原料液中の溶媒組成を知る方法として、原料液をオンラインで分析することが記載されている。
濃縮中の原料液中の溶媒組成を、オンラインで分析するためには、高価な分析機器が必要になる。そのため、この方法を採用すると、濃縮装置の価格を引き上げることとなる。
また原料液中の溶媒組成の分析結果からは、正浸透膜法及び膜蒸留法が、水及び有機溶媒の除去について、それぞれどの程度寄与しているかを特定できない。したがって、濃縮後の原料液中の所望の溶媒組成にシュートした濃縮を行いたい場合に、正浸透膜法及び膜蒸留法それぞれについての最適の運転条件を決定することが困難である。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶質、水、及び有機溶媒を含む原料液を、非加熱及び非加圧の条件下で実施するときに、高価なオンライン分析装置を用いることなく、原料液中の溶媒組成を容易に知ることができる、濃縮中の原料液の組成推定方法を提供することである。
上記課題を解決する本発明は、以下のとおりである。
《態様1》溶質及び溶媒を含有する原料液の濃縮中に、前記原料液の組成を推定するための、組成推定方法であって、
前記溶媒が水及び有機溶媒を含有し、
前記原料液の濃縮が、第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法を組み合わせた方法によって行われ、
前記第1の濃縮方法は、正浸透膜を介して前記原料液と誘導液とを接触させて、前記原料液と前記誘導液との浸透圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記誘導液中に移動させて前記原料液を濃縮して第1の濃縮原料液を得る、正浸透法によって行われ、
前記第2の濃縮方法は、膜蒸留用膜を介して前記原料液と冷却水とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記冷却水中に移動させて前記原料液を濃縮して第2の濃縮原料液を得る、膜蒸留法によって行われ、
前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法は、それぞれ、前記第1の濃縮原料液及び第2の濃縮原料液を前記原料液と混合して、再び前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法に供される、循環運転の方式で運転され、
前記誘導液及び冷却液の、質量又は容量が追跡されており、
前記組成推定方法が、以下の演算(A)~(D)を含む、
組成推定方法:
(A)前記冷却水の質量又は容量の増加分から、前記冷却水中の前記有機溶媒の濃度を算出すること;
(B)前記冷却水の質量又は容量の増加速度から、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を推定すること;
(C)前記演算(A)で得られた前記冷却水中の有機溶媒濃度、及び前記演算(B)で得られた前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差から、前記原料液中の前記有機溶媒の蒸気圧を算出すること;並びに
(D)前記演算(C)で得られた前記原料液中の前記有機溶媒の蒸気圧から、前記原料液中の前記有機溶媒の濃度を算出すること。
《態様2》以下の演算(E)及び(F)のうちの少なくとも1つを更に含む、態様1に記載の組成推定方法:
(E)前記誘導液の質量又は容量の増加分、前記冷却水の質量又は容量の増加分、及び前記原料液の初期の質量又は容量から、濃縮中の前記原料液の濃縮倍率を算出すること;並びに
(F)前記原料液の初期の有機溶媒濃度、前記冷却水の質量又は容量の増加分、前記誘導液の質量又は容量の増加分、及び前記演算(D)で得られた前記原料液中の有機溶媒濃度から、前記誘導液中の有機溶媒の濃度を算出すること。
《態様3》前記第2の濃縮方法において、前記原料液の温度と前記冷却水の温度との差が10℃以下である、態様1に記載の組成推定方法。
《態様4》前記第2の濃縮方法において、前記原料液の温度が0℃以上50℃以下である、態様1に記載の組成推定方法。
《態様5》前記第2の濃縮方法において、前記原料液の温度が0℃以上50℃以下である、態様3に記載の組成推定方法。
《態様6》前記原料液の前記溶媒が、
水と、
アセトニトリル、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選ばれる1種以上と
を含む、混合物である、
態様1に記載の組成推定方法。
《態様7》前記原料液の前記溶質が、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖、ワクチン、核酸、抗生物質、抗体薬物複合体(ADC)、及びビタミン類からなる群から選ばれる1種以上である、態様1に記載の組成推定方法。
《態様8》前記原料液の前記溶質の数平均分子量が100~50,000である、態様1に記載の組成推定方法。
《態様9》前記第1の濃縮方法における前記誘導液が、誘導物質として、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選ばれる1種以上を含む、態様1に記載の組成推定方法。
《態様10》溶質及び溶媒を含有する原料液を濃縮するための、原料液濃縮方法であって、
前記溶媒が水及び有機溶媒を含有し、
前記原料液濃縮方法は、第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法を組み合わせた方法によって行われ、
前記第1の濃縮方法は、正浸透膜を介して前記原料液と誘導液とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との浸透圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記誘導液中に移動させて前記原料液を濃縮して第1の濃縮原料液を得る、正浸透法によって行われ、
前記第2の濃縮方法は、膜蒸留用膜を介して前記原料液と冷却水とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記冷却水中に移動させて前記原料液を濃縮して第2の濃縮原料液を得る、膜蒸留法によって行われ、
前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法は、それぞれ、前記第1の濃縮原料液及び第2の濃縮原料液を前記原料液と混合して、再び前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法に供される、循環運転の方式で運転され、
前記原料液濃縮方法によって得られる原料液濃縮物における所望の有機溶媒濃度と、態様1~9のいずれか一項に記載の組成推定方法によって得られる、前記原料液中の有機溶媒濃度との大小関係及び差に応じて、前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法の実施、濃縮速度の変更、又は停止を決定する、
原料液濃縮方法。
《態様11》態様10に記載の原料液濃縮方法を実施するための、原料液濃縮システムであって、
前記原料液濃縮システムは、第1の濃縮装置、第2の濃縮装置、及び演算装置を含み、
前記第1の濃縮装置は、正浸透膜を介して原料液と誘導液とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との浸透圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記誘導液中に移動させて前記原料液を濃縮して第1の濃縮原料液を得る、正浸透法を行うことができ、
前記第2の濃縮装置は、膜蒸留用膜を介して原料液と冷却水とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記冷却水中に移動させて前記原料液を濃縮して第2の濃縮原料液を得る、膜蒸留法を行うことができ、
前記第1の濃縮装置及び第2の濃縮装置は、それぞれ、前記第1の濃縮原料液及び第2の濃縮原料液を前記原料液と混合して、再び前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法に供される、循環運転の方式で運転されることができ、
前記システムは、更に、前記誘導液及び冷却液の質量又は容量を追跡し得る測定器を含み、
前記演算装置は、以下の演算(A)~(D)を含む演算を行う、
原料液濃縮システム:
(A)前記冷却水の質量又は容量の増加分から、前記冷却水中の前記有機溶媒の濃度を算出すること;
(B)前記冷却水の質量又は容量の増加速度から、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を推定すること;
(C)前記演算(A)で得られた前記冷却水中の有機溶媒濃度、及び前記演算(B)で得られた前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差から、前記原料液中の前記有機溶媒の蒸気圧を算出すること;並びに
(D)前記演算(C)で得られた前記原料液中の前記有機溶媒の蒸気圧から、前記原料液中の前記有機溶媒の濃度を算出すること。
《態様12》前記原料液濃縮方法によって得られる原料液濃縮物における所望の有機溶媒濃度と、前記演算(D)で得られた、前記原料液中の有機溶媒濃度との大小関係及び差に応じて、前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法の実施、濃縮速度の変更、又は停止を決定することができる、
態様11に記載の原料液濃縮システム。
本発明によると、溶質、水、及び有機溶媒を含む原料液を、非加熱及び非加圧の条件下で実施するときに、高価なオンライン分析装置を用いることなく、原料液中の溶媒組成を容易に知ることができる、濃縮中の原料液の組成推定方法が提供される。
本発明の組成推定方法を用いると、溶媒組成が所望の割合にシュートされた原料液の濃縮物が容易に得られる。
実施例1の濃縮運転に用いた、濃縮装置1の構成を示す概略図である。 実施例1の濃縮運転における、第1の濃縮方法(正浸透)及び第2の濃縮方法(膜蒸留)それぞれのフラックスの経時変化を示すグラフである。 実施例2の濃縮運転に用いた、濃縮装置2の構成を示す概略図である。 実施例2の運転を実施しているときの、原料液の濃縮倍率と有機溶媒濃度との関係を示すグラフ(上段)、正浸透膜モジュール(100)の運転本数を示すグラフ(中段)、及び膜蒸留用膜モジュール(500)の運転本数を示すグラフ(下段)である。
《組成推定方法》
本発明の素子推定方法は、
溶質及び溶媒を含有する原料液の濃縮中に、前記原料液の組成を推定するための、組成推定方法であって、
前記溶媒が水及び有機溶媒を含有し、
前記原料液の濃縮が、第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法を組み合わせた方法によって行われ、
前記第1の濃縮方法は、正浸透膜を介して前記原料液と誘導液とを接触させて、前記原料液と前記誘導液との浸透圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記誘導液中に移動させて前記原料液を濃縮して第1の濃縮原料液を得る、正浸透法によって行われ、
前記第2の濃縮方法は、膜蒸留用膜を介して前記原料液と冷却水とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記冷却水中に移動させて前記原料液を濃縮して第2の濃縮原料液を得る、膜蒸留法によって行われ、
前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法は、それぞれ、前記第1の濃縮原料液及び第2の濃縮原料液を前記原料液と混合して、再び前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法に供される、循環運転の方式で運転され、
前記誘導液及び冷却液の、質量又は容量が追跡されており、
前記組成推定方法が、以下の演算(A)~(D)を含む、
組成推定方法である:
(A)前記冷却水の質量又は容量の増加分から、前記冷却水中の前記有機溶媒の濃度を算出すること;
(B)前記冷却水の質量又は容量の増加速度から、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を推定すること;
(C)前記演算(A)で得られた前記冷却水中の有機溶媒濃度、及び前記演算(B)で得られた前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差から、前記原料液中の前記有機溶媒の蒸気圧を算出すること;並びに
(D)前記演算(C)で得られた前記原料液中の前記有機溶媒の蒸気圧から、前記原料液中の前記有機溶媒の濃度を算出すること。
〈原料液〉
本発明の組成推定方法が適用される原料液は、溶質及び溶媒を含有する溶液又は分散液である限り、特に限定されるものではなく、いかなるものを用いてもよい。しかしながら、正浸透膜法及び膜蒸留法を用いる本発明の方法によると、例えば50℃以上の高温に加熱することを要さずに濃縮可能であることから、加熱せずに濃縮することが望ましい原料液への適用が有効である。
本発明に適用される原料液としては、例えば、食品;医薬品;海水;ガス田、油田等から排出される随伴水等を挙げることができる。
(溶質)
原料液の加熱を要さずに濃縮可能であるとの本発明の利点を考慮すると、本発明は、溶質として、加熱により分解が懸念される有価物、特に、医薬品原料、医薬品原体、及び医薬品中間体(以下、これらを総称して「医薬品原料等」という。)を含む溶液又は分散液に適用することが有効である。
医薬品原料等としては、例えば、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖、ワクチン、核酸、抗生物質、及びビタミン類からなる群から選ばれる有用物質を溶質とし、この溶質が適当な溶媒中に溶解又は分散されたものであることが好ましい。
アミノ酸は、カルボキシル基及びアミノ基、並びにこれらを連結している部分から成るアミノ酸骨格を1個有する化合物である。本明細書におけるアミノ酸は、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、及び非天然アミノ酸を包含する概念である。
必須アミノ酸としては、例えば、トリプトファン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン等があげられる。非必須アミノ酸としては、例えば、アルギニン、グリシン、アラニン、セリン、チロシン、システイン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
非天然アミノ酸とは、分子内にアミノ酸骨格を1個有する、天然に存在しない人工のあらゆる化合物を指す。しかしながら、医薬品原料等の溶質としての非天然アミノ酸としては、アミノ酸骨格に所望の標識化合物を結合させて得られるものが挙げられる。標識化合物としては、例えば、色素、蛍光物質、発光物質、酵素基質、補酵素、抗原性物質、タンパク質結合性物質等が挙げられる。
医薬品原料等の溶質として好ましい非天然アミノ酸として、例えば、標識アミノ酸、機能化アミノ酸等が挙げられる。
標識アミノ酸は、アミノ酸骨格と標識化合物とが結合した非天然アミノ酸であり、その具体例としては、例えば、側鎖に芳香環を含むアミノ酸骨格に、標識化合物が結合したアミノ酸等が挙げられる。
機能化アミノ酸としては、例えば、光応答性アミノ酸、光スイッチアミノ酸、蛍光プローブアミノ酸、蛍光標識アミノ酸等が挙げられる。
ペプチドは、2残基以上70残基未満のアミノ酸残基が結合した化合物を指し、鎖状であっても、環状であってもよい。縮されるペプチドとしては、例えば、L-アラニル-L-グルタミン、β-アラニル-L-ヒスチジンシクロスポリン、グルタチオン等が挙げられる。
タンパク質は、一般的には、アミノ酸残基が結合した化合物のうちのペプチドよりも長鎖のものを指す。本明細書におけるタンパク質としては、例えば、タンパク製剤として適用されるものが好ましい。
タンパク製剤としては、例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターロイキン1~12、成長ホルモン、エリスロポエチン、インスリン、顆粒状コロニー刺激因子(G-CSF)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ナトリウム利尿ペプチド、血液凝固第VIII因子、ソマトメジン、グルカゴン、成長ホルモン放出因子、血清アルブミン、カルシトニン等が挙げられる。
糖としては、例えば、単糖類、二糖類、糖鎖(二糖類を除く)、糖鎖誘導体等が挙げられる。
単糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース、デオキシリボース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、マルトース、スクロース、ラクトース等が挙げられる。
本明細書における糖鎖とは、二糖類を除く概念であり、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、グルクロン酸、イズロン酸等が挙げられる。糖鎖誘導体としては、例えば、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルノイラミン酸等の、糖類誘導体等が挙げられる。
ワクチンとしては、例えば、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、C型肝炎ワクチン等が;
核酸としては、例えば、オリゴヌクレオチド、RNA、アプタマー、デコイ等が;
抗生物質としては、例えば、ストレプトマイシン、バンコマイシン等が;
それぞれ挙げられる。
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC類が挙げられ、これらの誘導体、塩等も含む概念である。ビタミンB類には、例えば、ビタミンB6、ビタミンB12等が包含される。
原料液に含まれる溶質の数平均分子量は、100~50,000程度であってよく、好ましくは100~30,000程度、より好ましくは100~10,000程度であり、100~6,000であることが特に好ましい。
溶質の分子量が過度に小さいと、正浸透膜、及び膜蒸留時の半透膜を透過する場合があり、分子量が過度に大きいと、膜表面への溶質の付着が起こる場合があり、好ましくない。
本発明における原料液の溶質は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖、ワクチン、核酸、抗生物質、抗体薬物複合体(ADC)、及びビタミン類からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
原料液の溶媒における溶質の濃度は任意である。しかしながら、溶質の溶解性と、濃縮運転の安定性と、所望の濃縮倍率とを考慮して、原料液の全質量に対する溶質の割合として、例えば、0.005質量%以上6質量%以下、好ましくは0.01質量%以上4質量%以下の範囲が例示できる。
(溶媒)
原料液に含有される溶媒は、水及び有機溶媒を含む。
原料液の溶媒中に含まれる有機溶媒は、水と相溶することが可能な水溶性有機溶媒が好ましい。このような水溶性有機溶媒は、例えば、アルコール、ケトン、非プロトン性極性溶媒等であってよく、アセトニトリル、イソプロパノール、アセトン、メタノール、及びエタノールから選ばれる1種以上であることが好ましい。
したがって、本発明における原料液の溶媒は、
水と、
アセトニトリル、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選ばれる1種以上と
を含む、混合物であることが好ましい。
原料液の溶媒において、水と有機溶媒との組成比は任意である。しかしながら、溶質の溶解性と、濃縮運転の安定性とを考慮して、水及び有機溶媒の合計質量に対する有機溶媒質量の割合として、例えば、1質量%以上70質量%以下の範囲が例示できる。
〈濃縮方法〉
本発明における原料液の濃縮は、第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法を組み合わせた方法によって行われる。
第1の濃縮方法は、正浸透法によって行われる。
第2の濃縮方法は、膜蒸留法によって行われる。
(第1の濃縮方法)
本発明における第1の濃縮方法は、正浸透法によって行われる。
正浸透法では、正浸透膜を介して原料液と誘導液とを接触させて、原料液と誘導液との浸透圧差を駆動力として、原料液中の溶媒を誘導液中に移動させて原料液を濃縮する。
正浸透膜は、溶媒は透過できるが、溶質は実質的に透過できない膜であってよい。
本発明における正浸透膜は、基材層と、この基材層の片面に形成された活性層とを有する複合膜であってよい。活性層)は、溶媒(水及び有機溶媒)が透過でき、溶質が透過できない、非常に緻密な構造を有していてよい。このような活性層は、基材層のうちの原料液に接する側の面上に形成されていることが好ましい。
正浸透法による濃縮運転を行う際、正浸透膜のうちの基材層の部分には誘導液が浸透しており、活性層を介して、原料液と誘導液とが接している。このとき、原料液中の溶媒は、浸透圧がより高い誘導液の側に移動することにより、原料液の濃縮が行われる。
基材層の材質としては、一般に限外濾過膜として知られているものを適用してよい。ただし、原料液の溶媒に含まれる有機溶剤に、溶解又は膨潤して、膜の細孔形状が維持できないような材質のものは除かれる。
本発明に適用できる基材層の材質としては、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリイミン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、スルフォン化テトラフルオロエチレン、及びポリアミドから成る群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする層であることが好ましい。
活性層の材質としては、ポリアミドが好ましい。ポリアミドから構成される活性層は、例えば、基材層上で、多官能性酸ハライドと多官能性芳香族アミンとの界面重合を行うことにより、形成されることができる。
多官能性芳香族酸ハライドとは、一分子中に2個以上の酸ハライド基を有する芳香族酸ハライド化合物である。具体的には、例えば、トリメシン酸ハライド、トリメリット酸ハライド、イソフタル酸ハライド、テレフタル酸ハライド、ピロメリット酸ハライド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ハライド、ビフェニルジカルボン酸ハライド、ナフタレンジカルボン酸ハライド、ピリジンジカルボン酸ハライド、ベンゼンジスルホン酸ハライド等を挙げることができ、これらを単独で、又はこれらの混合物を用いることができる。これらの芳香族酸ハライド化合物におけるハロゲン化物イオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等を挙げることができる。本発明においては、特にトリメシン酸クロリド単独、又はトリメシン酸クロリドとイソフタル酸クロリドとの混合物、若しくはトリメシン酸クロリドとテレフタル酸クロリドとの混合物が好ましく用いられる。
多官能性芳香族アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミノ化合物である。具体的には、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン等を挙げることができ、これらを単独で、又はこれらの混合物を用いることができる。本発明においては、特に、m-フェニレンジアミン及びp-フェニレンジアミンから選ばれる1種以上が好適に用いられる。
多官能性酸ハライド及び多官能性芳香族アミンの界面重合は、定法に従って実施することができる。
正浸透膜の形態は、例えば、中空糸膜状、チューブラー状、及び平膜状の、いずれの構造でも構わない。中空糸膜状の正浸透膜は、原料液及び誘導液が通る流路を、スペーサー等を用いずに形成することができ、均一な濃縮を行えることから、適している。
中空糸状の正浸透膜を用いる場合、中空糸膜の外径は、例えば、300μm以上5,000μm以下、好ましくは350μm以上4,000μm以下であり、中空糸膜の内径は、例えば、200μm以上4,000μm以下、好ましくは250μm以上1,500μm以下である。理由は定かではないが、この中空糸の内径が200μm未満であると、循環運転時の中空糸における圧力が大きくなり、かつ原料成分の接触面積が大きくなる。そのため、原料液に含まれる溶質の膜表面への固着が起こり易くなる。中空糸の内径が4,000μmを超えると、原料成分の接触面積が過度に小さくなり、溶媒と溶質との分離効率が損なわれる場合がある。
本発明において、正浸透膜は、複数の正浸透膜が適当なハウジング内に収納されて成る、正浸透膜モジュールの形態で使用されることが好ましい。
正浸透法に用いられる誘導液は、原料液よりも浸透圧が高い溶液であり、誘導物質及び溶媒を含む。
誘導物質は、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム等の無機塩;クエン酸ナトリウム、クエン酸マグネシウム等のクエン酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウム等の酢酸塩;グルコン酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸等のヒドロキシカルボン酸等;これらのヒドロキシカルボン酸の金属塩等;有機物質等;から選択される。
有機物質として、例えば、アルコールが挙げられる。アルコールとしては、例えば、一価アルコールの他、二価アルコール、三価アルコール、四価アルコール、五価アルコール、六価アルコール等の多価アルコールが挙げられる。このアルコールには、例えば、グリセリン、t-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ペルセイトール、ボレミトール、D-エリトロ-D-ガラクト-オクチトール等が包含される。
本発明において、誘導物質としては、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
誘導液の溶媒は、典型的には水である。
正浸透法は、原料液及び誘導液間の浸透圧差を駆動力として、原料液中の溶媒が正浸透膜を介して誘導液に移動することにより、濃縮が行われる。原料液中の溶媒が誘導液に移動すると、正浸透膜近傍の原料液及び誘導液間の浸透圧差が緩和されて、溶媒移動の駆動力が損なわれる。そこで、正浸透膜近傍の原料液及び誘導液は、液更新されることを要する。この液更新は、正浸透膜に対して、原料液及び誘導液を移動させる(流通させる)ことにより行われてよい。このとき、原料液及び誘導液の相対的な移動方向は、正浸透膜に対して両者が同じ方向に移動する「並流」であってもよいし、逆の方向に移動する「対向流」であってもよい。
(第2の濃縮方法)
本発明における第2の濃縮方法は、膜蒸留法によって行われる。
膜蒸留法では、膜蒸留用膜を介して原料液と冷却水とを接触させて、原料液と冷却水との蒸気圧差を駆動力として、原料液中の溶媒を冷却水中に移動させて、原料液を濃縮する。
膜蒸留用膜は、原料液に含まれる溶媒の蒸気のみを通し、液体(典型的には原料液)を通さないことが必要である。溶媒中の有機溶媒の比率が高い原料液の場合、原料液の表面張力が低いため、膜蒸留用膜の細孔内に原料液が入り込み、原料液がそのまま冷却水側に流れる、いわゆる「ウェッティング」が生じる場合がある。ウェッティングが生じると、膜蒸留用膜は濃縮の機能を失う。これを避けるため、膜蒸留用膜は、疎水性の高い膜であることが好ましい。
膜の疎水性を表す指標として、水接触角が用いられる。すなわち、膜の表面に置いた水滴と膜との接触角により、膜の疎水性を評価する。本発明の第2の濃縮方法として用いられる膜蒸留用膜の水接触角は、90°以上が好ましく、より好ましくは110°であり、更に好ましくは120°以上である。水接触角の上限はないが、現実的な上限は、150°程度である。
また、膜蒸留法は、好ましくは室温付近で行われる。どのため、通常の蒸留の場合に比べて、低い蒸気圧で蒸留を行うことになる。したがって、本発明における膜蒸留用膜は、蒸気の透過抵抗の低いことが好ましい。
この観点から、膜蒸留用膜の細孔は、ウェッティングしない範囲でなるべく大きい方が好ましく、平均孔径として、0.02μm以上0.5μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.05μm以上0.3μm以下である。膜蒸留用膜の平均孔径が0.02μm未満では、蒸気の透過抵抗が高くなり過ぎ、濃縮時間を長く要することにある。一方、この値が0.5μmよりも大きいと、ウェッティングの可能性が高くなり、安定した濃縮を行うことができなくなる場合がある。
膜蒸留用膜の空隙率は、高い蒸気透過性を得る観点から、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であり、膜自体の強度が良好に維持され、長期使用の際に破断等の問題が発生し難くする点で、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下である。
膜蒸留用膜の材質は、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、及びポリクロロトリフルオロエチレンから成る群から選ばれる少なくとも1つの樹脂を含むことが好ましい。疎水性、製膜性、並びに機械的及び熱的耐久性の観点からは、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、及びポリクロロトリフルオロエチレンから選択して使用することが好ましい。
膜蒸留用膜の疎水性をより向上するために、膜蒸留用膜の少なくとも一部に、疎水性ポリマーを付着させたものも使用してもよい。疎水性ポリマーは、疎水性構造を有するポリマーであってよい。疎水性構造としては、非極性基、低極性基、非極性骨格、低極性骨格等が挙げられる。非極性基又は低極性基としては、例えば、炭化水素基、含フッ素基等が挙げられ、非極性骨格又は低極性骨格としては、例えば、炭化水素主鎖、シロキサン主鎖等が挙げられる。
このような疎水性ポリマーとしては、例えば、シロキサン結合を有するポリマー、フッ素原子含有ポリマー等が挙げられる。より具体的には、例えば、以下のものが挙げられる:
(ア)シロキサン結合を有するポリマーとして、例えば、ジメチルシリコーンゲル、メチルフェニルシリコーンゲル、有機官能基(アミノ基、フルオロアルキル基等)を有する反応性変性シリコーンゲル、シランカップリング剤と反応して架橋構造を形成するシリコーン系ポリマー等、およびこれらの架橋体であるポリマーゲル
(イ)フッ素原子含有ポリマーとして、側鎖にフッ素原子含有基を持つポリマー、ここで、フッ素原子含有基は、(パー)フルオロアルキル基、(パー)フルオロポリエーテル基、アルキルシリル基、フルオロシリル基等である。
特に、疎水性ポリマーが、炭素数1~12の(パー)フルオロアルキル基及び(パー)フルオロポリエーテル基から選択される1種以上を有する、(メタ)アクリレート系モノマー及びビニル系モノマーから選択される1種以上の重合体であることが好ましい。
膜蒸留用膜の形態は、例えば、中空糸膜状、チューブラー状、及び平膜状の、いずれの構造でも構わない。中空糸膜状の膜蒸留用膜は、原料液及び冷却水が通る流路を、スペーサー等を用いずに形成することができ、均一な濃縮を行えることから、適している。
中空糸膜状の膜蒸留用膜を用いる場合には、蒸気の透過性と膜の機械的強度との両立の観点から、膜厚が、10μm以上1,000μm以下であることが好ましく、20μm以上500μm以下であることがより好ましい。膜厚が1,000μm以下であれば、高い蒸気透過性を得ることができ、他方、膜厚が10μm以上であれば、膜が変形することなく使用することができる。
中空糸膜状の膜蒸留用膜の外径は、300μm以上5,000μm以下が好ましく、より好ましくは350μm以上4,000μm以下であり、内径は、200μm以上4,000μm以下が好ましく、より好ましくは250μm以上3,000μm以下である。この範囲のサイズの中空糸膜とすると、膜強度と膜の有効面積とのバランスが良好となる。
本発明において、膜蒸留用膜は、複数の膜蒸留用膜が適当なハウジング内に収納されて成る、膜蒸留用膜モジュールの形態で使用されることが好ましい。
冷却水は、典型的には水である。
しかしながら、冷却水に、適当な濃度で有機溶媒を含有させて、冷却水中の有機溶媒の蒸気圧を調節することにより、膜蒸留法における有機溶媒の除去速度を調節することも、本発明の好ましい実施態様である。
膜蒸留法において、原料液の温度を冷却水よりも有意に高くすると、原料液中の水及び有機溶媒双方の蒸気圧が冷却水に比べて高い状態になるので、水及び有機溶媒双方の蒸気が冷却水中にとして移動して、原料液の濃縮が起こる。
しかしながら、本発明者らは、原料液と冷却水との温度差を小さくすると、水の移動は実質的に起こらず、有機溶媒の移動のみが起こることを見出した。
本発明の溶媒組成の推定方法は、上記の現象に根ざしたものであり、第1の濃縮方法である正浸透法では、原料液から水及び有機溶媒の双方が除去され、第2の濃縮方法である膜蒸留法では、有機溶媒のみが除去されるとの仮定に基づく。後述の実施例から理解されるように、第2の濃縮方法において、原料液及び冷却水の温度を適切に制御することにより、上記の仮定は高い精度で妥当することが検証されている。
この観点から、本発明における第2の濃縮方法では、原料液の温度と冷却水の温度との差を、10℃以下とすることが好ましく、8℃以下とすることがより好ましく、5℃以下とすることが更に好ましく、3℃以下又は1℃以下とすることが特に好ましく、もっとも好ましくは、原料液の温度と冷却水の温度とを同じにすることである。
また、加熱を要さずに低温で濃縮が行える膜蒸留法の利点を活かすため、第2の濃縮方法における原料液の温度は、0℃以上50℃以下であることが好ましく、より好ましくは5℃以上40℃以下であり、更に10℃以上30℃以下であってもよい。
(第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法の運転態様)
本発明において、第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法は、それぞれ、第1の濃縮原料液及び第2の濃縮原料液を原料液と混合して、再び第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法に供される、循環運転の方式で運転される。第1の濃縮原料液及び第2の濃縮原料液を原料液と混合するには、例えば、原料液タンクに収納した原料液を、第1の濃縮方法(正浸透法)を行う正浸透膜モジュールに送り、第1の濃縮方法によって濃縮された後の第1の濃縮原料液を原料液タンクに戻すこと、及び原料液タンクに収納した原料液を、第2の濃縮方法(膜蒸留法)を行う膜蒸留用膜モジュールに送り、第2の濃縮方法によって濃縮された後の第2の濃縮原料液を原料液タンクに戻す方法によって、実現することができる。
このとき、正浸透膜モジュールと膜蒸留用膜モジュールとは、原料液タンクに対して、並列に接続されていてもよいし、直接に接続されていてもよい。正浸透膜モジュールと膜蒸留用膜モジュールとが、原料液タンクと直接に接続されている場合、正浸透膜モジュールと膜蒸留用膜モジュールとの後先は任意である。
また、第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法を実施するに際して、誘導液及び冷却液の、質量又は容量が追跡されており、これらの値は、後述の推定方法における演算に使用される。
《推定方法》
本発明の組成推定方法では、以下の演算が行われる。
(A)冷却水の質量又は容量の増加分から、冷却水中の有機溶媒の濃度を算出すること、
(B)冷却水の質量又は容量の増加速度から、原料液と冷却水との蒸気圧差を推定すること、
(C)演算(A)で得られた冷却水中の有機溶媒濃度、及び演算(B)で得られた原料液と冷却水との蒸気圧差から、原料液中の有機溶媒の蒸気圧を算出すること、並びに
(D)演算(C)で得られた原料液中の有機溶媒の蒸気圧から、原料液中の有機溶媒の濃度を算出すること。
本発明の組成推定方法では、更に以下の演算のうちの少なくとも1つを、更に行ってもよい。
(E)誘導液の質量又は容量の増加分、冷却水の質量又は容量の増加分、及び原料液の初期の質量又は容量から、濃縮中の原料液の濃縮倍率を算出すること、並びに
(F)原料液の初期の有機溶媒濃度、冷却水の質量又は容量の増加分、誘導液の質量又は容量の増加分、及び演算(D)で得られた原料液中の有機溶媒濃度から、誘導液中の有機溶媒の濃度を算出すること。
以下、冷却水及び誘導液の質量を追跡する場合を例にとり、本発明の組成推定方法の各演算について説明する。
冷却水及び誘導液の質量を追跡する場合、質量の増加分を、そのまま、冷却水及び誘導液の増加分として、以降の計算に参入してよい。冷却水及び誘導液の容量を追跡する場合には、各液の容量の増加分を質量の増加分に換算したうえで、質量についての以降の説明を援用できる。容量の増加分を質量の増加分に換算するには、例えば、両変数の対応を示す検量線を予め作成しておき、これを参照する方法等によってよい。
本発明者らは、本発明における第2の濃縮方法では、原料液から冷却水に、実質的に有機溶媒のみが移動することと見出した。一方、第1の濃縮方法では、原料液から誘導液に、水及び誘導液が移動する。
本発明の組成推定方法は、これらの知見に基づく。
以下、本発明の組成推定方法の各演算について、順に説明する。
なお、以下の計算において、温度はすべて膜蒸留の実施温度が適用される。
〈(A)冷却水の質量の増加分から、冷却水中の有機溶媒の濃度を算出すること〉
本発明の組成推定方法では、演算(A)において、濃縮運転中の冷却水の質量の増加分から、冷却水中の有機溶媒の濃度を算出する。
ここで、上記のとおり、第2の濃縮方法では、原料液から冷却水に、実質的に有機溶媒のみが移動する。したがって、濃縮運転中の冷却水の質量の増加分は、原料液から冷却水への有機溶媒の移動分に等しい。この場合、冷却水の有機溶媒濃度が希薄な場合には、時刻tにおける冷却水中の有機溶媒濃度Ccnは、下記数式(1)によって求められる。
cn={(Ccn-1×Wcn-1)+ΔWcn}/Wcn (1)
数式(1)中、Ccnは時刻nにおける冷却水中の有機溶媒濃度であり、Ccn-1は時刻tn-1)における冷却水中の有機溶媒濃度であり、Wcn-1は時刻tn-1)における冷却水の質量であり、Wcnは時刻tにおける冷却水の質量である。また、ΔWcnは、時刻tn-1から時刻tまでの冷却水の質量増加分である。
〈(B)冷却水の質量の増加速度から、原料液と冷却水との蒸気圧差を推定すること〉
演算(B)では、冷却水の質量の増加速度から、原料液と冷却水との有機溶媒の蒸気圧差を算出する。
ここでは、先ず、膜蒸留用膜の有機溶媒についての透過係数αと、有機溶媒の透過速度とを用いて、原料液と冷却水との有機溶媒の蒸気圧差を算出する。
時刻tにおける、原料液と冷却水との有機溶媒の蒸気圧差ΔPは、下記数式(2)により求められる。
ΔP=J/α (2)
数式2中、Jは、時刻tにおける有機溶媒の透過速度であり、時刻tn-1から時刻tまでの間の冷却水の質量増加分ΔWcn、及び時刻tn-1から時刻tまでの時間(t-tn-1)を用いて、下記数式(3)により求められる。
=ΔWcn/(t-tn-1) (3)
透過速度αは、膜蒸留用膜に固有の値であるから、当該膜蒸留用膜の仕様書に記載の値を採用してもよいし、組成が既知の原料液及び冷却液を用いて行った予備実験から、後述の数式(4)、(5)及び(10)を用いて算出した値を採用してもよい。組成が既知の原料液及び冷却液として、本発明所定の方法による運転開始時の原料液及び冷却液を採用し、運転所期の測定値を用いて透過速度αを算出することも、本発明の好ましい実施態様に含まれる。
〈(C)演算(A)で得られた冷却水中の有機溶媒濃度、及び演算(B)で得られた原料液と冷却水との蒸気圧差から、原料液中の有機溶媒の蒸気圧を算出すること〉
演算(C)では、演算(A)で得られた時刻tにおける冷却水中の有機溶媒濃度Ccn、及び演算(B)で得られた時刻tにおける原料液と冷却水との有機溶媒の蒸気圧差ΔPを用いて、時刻tにおける冷却水中の有機溶媒濃度と原料液中の有機溶媒濃度との差を算出する。
先ず、下記数式(4)により、時刻tにおける冷却水の、有機溶媒の蒸気圧Pcnを求め、次いで、下記数式(5)により、時刻tにおける原料液中の有機溶媒の蒸気圧Pfnを求める。
cn=γcn×POS×χcn (4)
fn=Pcn+ΔP (5)
数式(4)中、γcnは時刻tにおける冷却水中の有機溶媒の活量係数であり、POSは温度Tにおける有機溶媒の蒸気圧であり、χcnは冷却水中の有機溶媒のモル分率である。数式(5)中の変数は、既出である。
冷却水中の有機溶媒の活量係数γcnは、冷却水を有機溶媒(成分i)及び水(成分j)が共沸する混合溶媒と仮定して、下記数式(6)から数値γとして求められる。
数式(6)中、Λij及びΛjiは、有機溶媒(成分i)及び水(成分j)が共沸する混合溶媒におけるウィルソン(Wilson)係数であり、それぞれ、下記式(7)及び(8)から求められる。
数式(7)及び(8)中のaij、aji、bij、及びbjiは、それぞれ、実験によって求められる係数であり、Aspen Technology Inc.社から、エタノール水溶液及びアセトニトリル水溶液について、以下の値が公表されている。
数式(7)及び(8)中のTは絶対温度であり、膜蒸留温度が適用される。
数式(4)中の、温度Tにおける有機溶媒の蒸気圧POSは、有機溶媒に固有の係数であり、下記数式(9)で表されるアントワン(Antoine)の式からP として求められる。
数式(9)中のA、B、及びCは、それぞれ、溶媒(成分i)に固有の係数であり、National Institute of Standards and Technology社から、エタノール、アセトニトリル、及び水について、以下の値が公表されている。
また、数式(9)中のTは絶対温度である。
〈(D)演算(C)で得られた原料液中の有機溶媒の蒸気圧から、原料液中の有機溶媒の濃度を算出すること〉
そして、演算(D)において、演算(C)で得られた時刻tにおける原料液中の有機溶媒の蒸気圧Pfnから、原料液中の有機溶媒の濃度を算出する。この計算は、下記数式(10)によって行うことができる。
χfn=Pfn/(γfn×POS) (10)
数式(9)中、χfnは時刻tにおける原料液中の有機溶媒のモル分率である。γinは、時刻tにおける原料液中の有機溶媒の活量係数であり、冷却水中の有機溶媒の活量係数γcnの算出と同様にして、上記数式(6)から数値γとして求められる。
そして、上記で得られた時刻tにおける原料液中の有機溶媒の蒸気圧Pfnから、原料液中の有機溶媒のモル分率χfnからの単位変換により、時刻tにおける原料液中の有機溶媒の濃度CFn(質量%)が得られる。
〈(E)誘導液の質量の増加分、冷却水の質量の増加分、及び原料液の初期の質量から、濃縮中の原料液の濃縮倍率を算出すること〉
演算(E)では誘導液の質量の増加分、冷却水の質量の増加分、及び原料液の初期の質量から、濃縮中の原料液の濃縮倍率を算出する。
時刻nにおける原料液の濃縮倍率CFfnは、下記数式(11)から求められる。
CFfn=Wf0/{Wf0-(ΔW+ΔW)} (11)
数式(11)中、Wf0は原料液の初期質量(時刻0における質量)であり、ΔWは初期(時刻0)から時刻tまでの冷却液の質量増加分であり、ΔWは初期(時刻0)から時刻tまでの誘導液の質量増加分である。
〈(F)原料液の初期の有機溶媒濃度、冷却水の質量の増加分、誘導液の質量、及び演算(D)で得られた原料液中の有機溶媒濃度から、誘導液中の有機溶媒の濃度を算出すること〉
演算(F)では、原料液の初期の有機溶媒濃度CF0、初期(時刻0)から時刻tまでの冷却水の質量の増加分ΔW、時刻tにおける誘導液の質量W、及び演算(D)で得られた原料液中の有機溶媒濃度から、誘導液中の有機溶媒の濃度を算出する。
先ず、原料液の初期の有機溶媒濃度CF0に原料液の初期質量WF0を乗ずれば、初期(時刻0)において原料液中に含まれていた有機溶媒の質量WSO0が得られる。また、演算(D)で得られた、時刻tにおける原料液中の有機溶媒濃度CFnに、時刻tにおける原料液の質量WFnを乗ずれば、時刻tにおいて原料液中に含まれている有機溶媒の質量WSOnが得られる。
したがって、初期(時刻0)から時刻tまでに原料液から除去された有機溶媒量WSOnは、数式(12)によって表される。
SOn=CF0×WF0-CFn×WFn (12)
この原料液から除去された有機溶媒量WSOnのうちの一部は冷却水に移動し、残部は誘導液に移動する。また、原料液から冷却水に移動した有機溶媒量は、冷却水の質量増加分に等しいから、初期(時刻0)から時刻nまでに原料液から誘導液に移動した有機溶媒量WDSOnは、下記数式(13)によって表される。
DSOn=WSOn-ΔW (13)
したがって、時刻tにおける誘導液中の有機溶媒の濃度CDnは、下記数式(14)によって得られる。
Dn=WDSOn/W (14)
上記において、時刻tn-1から時刻tまでの間隔は、使用するシステムのスケール、運転状況等に応じて任意に設定されてよく、例えば、10秒~15分とすることができ、15秒~10分、20秒~8分、又は30秒~5分としてもよい。
《原料液濃縮方法》
本発明の別の観点によると、原料液濃縮方法が提供される。
本発明の原料液濃縮方法は、
溶質及び溶媒を含有する原料液を濃縮するための、原料液濃縮方法であって、
前記溶媒が水及び有機溶媒を含有し、
前記原料液濃縮方法は、第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法を組み合わせた方法によって行われ、
前記第1の濃縮方法は、正浸透膜を介して前記原料液と誘導液とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との浸透圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記誘導液中に移動させて前記原料液を濃縮して第1の濃縮原料液を得る、正浸透法によって行われ、
前記第2の濃縮方法は、膜蒸留用膜を介して前記原料液と冷却水とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記冷却水中に移動させて前記原料液を濃縮して第2の濃縮原料液を得る、膜蒸留法によって行われ、
前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法は、それぞれ、前記第1の濃縮原料液及び第2の濃縮原料液を前記原料液と混合して、再び前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法に供される、循環運転の方式で運転され、
前記原料液濃縮方法によって得られる原料液濃縮物における所望の有機溶媒濃度と、上記に説明した本発明の組成推定方法によって得られる、前記原料液中の有機溶媒濃度との大小関係及び差に応じて、前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法の実施、濃縮速度の変更、又は停止を決定する、
原料液濃縮方法である。
すなわち、目標の濃縮倍率及び溶媒組成と、本発明の組成推定方法による推定値とが、どの程度ずれているかを算出し、そのずれの程度に応じて、第1の濃縮方法および第2の濃縮方法それぞれについて、運転するか、濃縮速度を変更するか、又は停止するかを決定して、目標の濃縮倍率及び溶媒組成に近づくように調整することが挙げられる。
濃縮速度の変更方法としては、例えば、濃縮温度の変更、各モジュールへの原料液の供給速度の変更等が挙げられる他、第1の濃縮方法に用いる正浸透膜モジュール、及び第2の濃縮方法に用いる膜蒸留用膜モジュールを、それぞれ複数本並列に設置して、目標値と推定値とのずれの程度に応じて、各モジュールの運転本数を変更することが挙げられる。
本発明の原料液濃縮方法のその余の態様については、上記の本発明の組成推定方法における説明を援用できる。
《原料液濃縮システム》
本発明の更に別の観点によると、原料液濃縮システムが提供される。
本発明の原料液濃縮システムは、
本発明の原料液濃縮方法を実施するための、原料液濃縮システムであって、
前記原料液濃縮システムは、第1の濃縮装置、第2の濃縮装置、及び演算装置を含み、
前記第1の濃縮装置は、正浸透膜を介して原料液と誘導液とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との浸透圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記誘導液中に移動させて前記原料液を濃縮して第1の濃縮原料液を得る、正浸透法を行うことができ、
前記第2の濃縮装置は、膜蒸留用膜を介して原料液と冷却水とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記冷却水中に移動させて前記原料液を濃縮して第2の濃縮原料液を得る、膜蒸留法を行うことができ、
前記第1の濃縮装置及び第2の濃縮装置は、それぞれ、前記第1の濃縮原料液及び第2の濃縮原料液を前記原料液と混合して、再び前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法に供される、循環運転の方式で運転されることができ、
前記システムは、更に、前記誘導液及び冷却液の質量又は容量を追跡し得る測定器を含み、
前記演算装置は、以下の演算(A)~(D)を含む演算を行う、
原料液濃縮システム:
(A)前記冷却水の質量又は容量の増加分から、前記冷却水中の前記有機溶媒の濃度を算出すること;
(B)前記冷却水の質量又は容量の増加速度から、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を推定すること;
(C)前記演算(A)で得られた前記冷却水中の有機溶媒濃度、及び前記演算(B)で得られた前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差から、前記原料液中の前記有機溶媒の蒸気圧を算出すること;並びに
(D)前記演算(C)で得られた前記原料液中の前記有機溶媒の蒸気圧から、前記原料液中の前記有機溶媒の濃度を算出すること。
上記の演算(A)~(D)は、適当な演算装置、例えば、パーソナルコンピュータによって行われてよい。
本発明のシステムは、原料液濃縮物における所望の有機溶媒濃度と、演算(D)で得られた、原料液中の有機溶媒濃度との大小関係及び差に応じて、第1の濃縮方法及びの濃縮方法の実施、濃縮速度の変更、又は停止を決定し、これを実行することができる装置を、更に有していてもよい。
本発明の原料液濃縮システムのその余の態様については、上記の本発明の組成推定方法及び原料液濃縮方法における説明を援用できる。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について更に説明するが、本発明は以下の実施例等により何ら限定されるものではない。
<正浸透膜モジュール>
内径0.7mm、外径1.0mmのポリエーテルスルホン製の中空糸膜限外濾過膜を基材層として、その130本を、2cm径、10cm長の円筒状プラスチックハウジングに充填し、両端部を接着剤で固定することにより、有効膜内表面積0.02mの中空糸基材層モジュールを作製した。
ここで使用したハウジングは、長さ方向の両端部に開口し、それぞれ、中空糸の内側に連通する原料液入口及び原料液出口を有し、長さ方向の両端部近傍の側面に開口し、それぞれ、中空糸の外側に連通する誘導液入口及び誘導液出口を有している。
0.5L容器に、m-フェニレンジアミン10g及びラウリル硫酸ナトリウム0.8gを入れ、更に純水489.2を加えて溶解し、界面重合に用いる第1溶液を0.5kg調製した。
別の0.5L容器に、トリメシン酸クロリド0.8gを入れ、n-ヘキサン399.2gを加えて溶解し、界面重合に用いる第2溶液0.4kgを調製した。
これらの溶液を、第1溶液、第2溶液の順に、それぞれ、中空糸膜の内側を通過するように、上記の中空糸基材層モジュールに通液して、中空糸の内側面上で界面重合を行い、中空糸基材層上に活性層を形成した。その後、中空糸内側を純水で洗浄を行うことにより、正浸透膜モジュールを作製した。
<膜蒸留用膜モジュール>
内径0.7mm、外径1.3mm、ASTM-F316-86に準拠して求めた平均孔径0.21μm、最大孔径0.29μm、空隙率72%のPVDF製の多孔質中空糸膜を長さ15cmに切出した。
接着樹脂として熱硬化性のエポキシ樹脂を使用し、遠心接着により、上記の多孔質中空糸膜130本をハウジング内に接着固定することにより、非接着固定部位の長さが約10cmであり、中空糸膜の内表面の合計膜面積が0.012mである膜モジュールを、3本作製した。
ここで使用したハウジングは、長さ方向の両端部に開口し、それぞれ、中空糸の内側に連通する原料液入口及び原料液出口を有し、長さ方向の両端部近傍の側面に開口し、それぞれ、中空糸の外側に連通する冷却液入口及び冷却液出口を有している。
これらの膜モジュール内(中空糸膜の内側及び外側の双方)に(株)フロロテクノロジー製の撥水剤、「FS-1610F」を充填し、次いで抜液した後に、モジュール内に乾燥空気を流して撥水剤を乾燥させることにより、膜蒸留用膜モジュールを得た。
上記の方法で得られた膜蒸留用膜モジュールのうち、1モジュールを解体して、撥水剤を塗布した多孔質中空糸膜の性状を測定した。この多孔質中空糸膜の水接触角を、23℃の温度及び50%の相対湿度の条件下で、2μLの純水を滴下し、液滴と中空糸膜外側表面とが形成する角度を画像解析により算出した。この測定は5回行い、数平均値を算出した。中空糸膜の外側表面の接触角は、132°であり、とても強い疎水性を示した。
《実施例1》
実施例1では、図1に示す構成の濃縮装置1を用いて濃縮運転を実施した。
濃縮装置1は、ステンレス製の原料液タンク(200)と、誘導液タンク(300)と、冷却水タンク(700)と、第1の濃縮装置としての正浸透膜モジュール(100)と、第2の濃縮装置としての膜蒸留用膜モジュール(500)とを有する。
原料液タンク(200)に収納された原料液(a)は、原料液タンク(200)の底部から、正浸透膜モジュール(100)及び膜蒸留用膜モジュール(500)に、それぞれ、供給され、かつ、それぞれのモジュールによって濃縮された原料液(a)は、原料液タンク(200)の底部に戻されるように、配管が組んだ。原料液タンク(200)は、密閉状態であるが、原料液(a)が減少しても、タンク内部の圧力が常圧に維持される構造とした。
原料液タンク(200)から正浸透膜モジュール(100)までの配管には、ポンプ(P)、流量計(図示せず)、及び流量を調整するバルブ(図示せず)があり、流量を適宜コントロールできる。
正浸透膜モジュール(100)の側管には、誘導液(d)が連続して供給できるように、入側配管及び出側配管が連結されている。誘導液タンク(300)内に収納された誘導液(d)は、ポンプ(P)、流量計(図示せず)、及び流量を調整するバルブ(図示せず)を介して、正浸透膜モジュール(100)に供給される。
誘導液タンク(300)は、ロードセル(LC)上に載置され、誘導液(d)の質量をオンラインにて随時追跡できるように構成されている。
誘導液(d)は、誘導液(d)を一定温度に調整するための恒温装置(図示せず)及び熱交換器(図示せず)を介して、正浸透膜モジュール(100)に供給される。
原料液タンク(200)から膜蒸留用膜モジュール(500)までの配管には、ポンプ(P)、流量計(図示せず)、及び流量を調整するバルブ(図示せず)が配置されており、流量を適宜コントロールできる。原料液タンク(200)に収納された原料液(a)は、原料液(a)を一定温度に調整するための恒温装置(図示せず)及び熱交換器(図示せず)を介して、膜蒸留用膜モジュール(500)に供給される。
膜蒸留用膜モジュール(500)の側管には、冷却水(CW)が連続して供給できるように、入側配管及び出側配管が連結されている。冷却水タンク(700)内に収納された冷却水(CW)は、ポンプ(P)、流量計(図示せず)、及び流量を調整するバルブ(図示せず)を介して、膜蒸留用膜モジュール(500)に供給される。
冷却水タンク(700)は、ロードセル(LC)上に載置され、冷却水(CW)の質量をオンラインで随時追跡できるように構成されている。
冷却水(CW)は、冷却水(CW)を一定温度に調整するための恒温装置(図示せず)及び熱交換器(図示せず)を介して、膜蒸留用膜モジュール(500)に供給される。
冷却水タンク及び誘導液タンクを載置しているロードセル(LC)の信号は、演算装置に1秒間隔で送られ、各タンクの質量を用いて所定の演算を行うことができるように構成されている。
また、本発明の方法による濃縮中の原料液の組成推定方法の効果を検証するために、原料液タンク(200)中に近赤外線分光分析装置(NIR)(Bruker社製、「Matrix-F」)のプローブ(Pr)を挿入し、原料液(a)のオンライン組成分析を可能とした。
実施例1では、原料液(a)、誘導液(d)、及び冷却水(CW)として、それぞれ、以下を用いた。
原料液:
溶質:GSSG(グルタチオン、γ-L-glutamyl-L-cysteinylglycine)、0.1質量%
溶媒:水850g及びアセトニトリル150gから成る混合溶媒
誘導液(d):50質量%イソプロピルアルコール水溶液1L
冷却水(CW):純水1L
膜蒸留膜の透過係数としては、予め計測しておいた数値、「2.45mol/(m×mmHg×hr)」を用いた。
原料液(a)、誘導液(d)、及び冷却水(CW)は、いずれも、20℃に調温し、
第1の濃縮方法(正浸透)及び第2の濃縮方法(膜蒸留)とも、20℃にて実施した。
なお、各モジュールへの各液の供給量は、それぞれ、以下のとおりとした。
正浸透膜モジュール(100)への供給量
原料液(a):120mL/分
誘導液(d):240mL/分
膜蒸留用膜モジュール(500)への供給量
原料液(a):300mL/分
冷却水(CW):300mL/分
上記の条件下で濃縮運転を実施し、原料液の濃縮率は、6.8時間後に9倍となった。
図2に、この濃縮運転の際の、第1の濃縮方法(正浸透)及び第2の濃縮方法(膜蒸留)それぞれのフラックスの経時変化を示す。図2に示すフラックスは、正浸透膜及び膜蒸留用膜をそれぞれ透過した水及び有機溶媒の合計容量を、単位時間、単位膜面積当たりに割り付けた量である。
また、濃縮運転中に測定された、冷却水(CW)の質量増加量及び質量増加速度、並びにこれらの量から算出された、原料液(a)中の水及び有機溶媒(アセトニトリル)の組成比を、計算途中に使用したパラメータとともに、表1に示す。表1には、近赤外線分光分析装置(NIR)による測定値も、合わせて示した。
表1から本発明の方法によって求めた組成比と、近赤外線分光分析による測定値とがよい一致を示すことから、本発明の方法におり、濃縮運転中の原料液(a)の溶媒組成を知ることが可能であることが検証された。
《実施例2》
実施例2では、図3に示す構成の濃縮装置2を用いて濃縮運転を実施した。
濃縮装置2は、実施例1で用いたのと同じ仕様の正浸透膜モジュール(100)及び膜蒸留用膜モジュール(500)が、それぞれ、3個並列に配置されており、各モジュールが個別に濃縮運転に接続され、又は切り離されることができる他は、濃縮装置1と同様の構成を有している。
濃縮装置2では、濃縮運転中に、正浸透膜モジュール(100)及び膜蒸留用膜モジュール(500)の運転本数を、それぞれ独立に、0~3本の範囲で変更できる。
また、濃縮装置2では、近赤外分光分析装置は使用しなかった。
実施例2では、原料液(a)、誘導液(d)、及び冷却水(CW)として、それぞれ、以下を用いた。この実施例2は、原料液(a)として、溶質を含まない水/有機溶媒混合液を用い、所定の有機溶媒濃度を維持しつつ濃縮を行う、モデル実験である。
原料液:
溶質:なし
溶媒:水1,600g及びアセトニトリル400gから成る混合溶媒(有機溶媒濃度20質量%)
誘導液(d):50質量%イソプロピルアルコール水溶液2L
冷却水(CW):純水2L
原料液(a)、誘導液(d)、及び冷却水(CW)は、いずれも、20℃に調温し、
第1の濃縮方法(正浸透)及び第2の濃縮方法(膜蒸留)とも、20℃にて実施した。
なお、各モジュールへの各液の供給量は、モジュール1本当たり、それぞれ、以下のとおりとした。
正浸透膜モジュール(100)への供給量
原料液(a):120g/分
誘導液(d):240g/分
膜蒸留用膜モジュール(500)への供給量
原料液(a):300g/分
冷却水(CW):300g/分
実施例2の濃縮運転では、濃縮倍率1倍、有機溶媒濃度20質量%の初期原料液を、濃縮倍率10倍、有機溶媒濃度5質量%の濃縮原料液に濃縮することを目標とした。このとき、濃縮中の原料液(a)の濃縮倍率がA倍のとき、10.56-0.56×A(質量%)の有機溶媒濃度を基準値として設定した。そして、ロードセルによって測定された冷却液(CW)の質量増加分及び質量増加速度から、本発明の方法によって推定された原料液(a)中の有機溶媒濃度と上記の基準値とのずれの程度、及びその時点の濃縮倍率に応じて、正浸透膜モジュール(100)及び膜蒸留用膜モジュール(500)の運転本数を、それぞれ表2に示した本数に調節しながら、濃縮運転を行った。
上記の条件による濃縮運転の結果、8時間10分の運転で、濃縮倍率10倍の濃縮原料液が得られた。
この濃縮原料液中の有機溶媒濃度は、本発明の方法による推定値が5.0質量%であり、液体クロマトグラフィーによる分析値が4.9質量%であり、よい一致を示した。
この実施例2の運転を実施しているときの、原料液の濃縮倍率と有機溶媒濃度との関係を示すグラフ、及び正浸透膜モジュール(100)及び膜蒸留用膜モジュール(500)の運転本数を示すグラフを、図4に示す。
100 正浸透膜モジュール
200 原料液タンク
300 誘導液タンク
500 膜蒸留用膜モジュール
700 冷却水タンク
a 原料液
d 誘導液
CW 冷却水
LC ロードセル
NIR 近赤外線分光分析装置
P ポンプ
Pr プローブ

Claims (12)

  1. 溶質及び溶媒を含有する原料液の濃縮中に、前記原料液の組成を推定するための、組成推定方法であって、
    前記溶媒が水及び有機溶媒を含有し、
    前記原料液の濃縮が、第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法を組み合わせた方法によって行われ、
    前記第1の濃縮方法は、正浸透膜を介して前記原料液と誘導液とを接触させて、前記原料液と前記誘導液との浸透圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記誘導液中に移動させて前記原料液を濃縮して第1の濃縮原料液を得る、正浸透法によって行われ、
    前記第2の濃縮方法は、膜蒸留用膜を介して前記原料液と冷却水とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記冷却水中に移動させて前記原料液を濃縮して第2の濃縮原料液を得る、膜蒸留法によって行われ、
    前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法は、それぞれ、前記第1の濃縮原料液及び第2の濃縮原料液を前記原料液と混合して、再び前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法に供される、循環運転の方式で運転され、
    前記誘導液及び冷却液の、質量又は容量が追跡されており、
    前記組成推定方法が、以下の演算(A)~(D)を含む、
    組成推定方法:
    (A)前記冷却水の質量又は容量の増加分から、前記冷却水中の前記有機溶媒の濃度を算出すること;
    (B)前記冷却水の質量又は容量の増加速度から、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を推定すること;
    (C)前記演算(A)で得られた前記冷却水中の有機溶媒濃度、及び前記演算(B)で得られた前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差から、前記原料液中の前記有機溶媒の蒸気圧を算出すること;並びに
    (D)前記演算(C)で得られた前記原料液中の前記有機溶媒の蒸気圧から、前記原料液中の前記有機溶媒の濃度を算出すること。
  2. 以下の演算(E)及び(F)のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の組成推定方法:
    (E)前記誘導液の質量又は容量の増加分、前記冷却水の質量又は容量の増加分、及び前記原料液の初期の質量又は容量から、濃縮中の前記原料液の濃縮倍率を算出すること;並びに
    (F)前記原料液の初期の有機溶媒濃度、前記冷却水の質量又は容量の増加分、前記誘導液の質量又は容量の増加分、及び前記演算(D)で得られた前記原料液中の有機溶媒濃度から、前記誘導液中の有機溶媒の濃度を算出すること。
  3. 前記第2の濃縮方法において、前記原料液の温度と前記冷却水の温度との差が10℃以下である、請求項1に記載の組成推定方法。
  4. 前記第2の濃縮方法において、前記原料液の温度が0℃以上50℃以下である、請求項1に記載の組成推定方法。
  5. 前記第2の濃縮方法において、前記原料液の温度が0℃以上50℃以下である、請求項3に記載の組成推定方法。
  6. 前記原料液の前記溶媒が、
    水と、
    アセトニトリル、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選ばれる1種以上と
    を含む、混合物である、
    請求項1に記載の組成推定方法。
  7. 前記原料液の前記溶質が、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖、ワクチン、核酸、抗生物質、抗体薬物複合体(ADC)、及びビタミン類からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の組成推定方法。
  8. 前記原料液の前記溶質の数平均分子量が100~50,000である、請求項1に記載の組成推定方法。
  9. 前記第1の濃縮方法における前記誘導液が、誘導物質として、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の組成推定方法。
  10. 溶質及び溶媒を含有する原料液を濃縮するための、原料液濃縮方法であって、
    前記溶媒が水及び有機溶媒を含有し、
    前記原料液濃縮方法は、第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法を組み合わせた方法によって行われ、
    前記第1の濃縮方法は、正浸透膜を介して前記原料液と誘導液とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との浸透圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記誘導液中に移動させて前記原料液を濃縮して第1の濃縮原料液を得る、正浸透法によって行われ、
    前記第2の濃縮方法は、膜蒸留用膜を介して前記原料液と冷却水とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記冷却水中に移動させて前記原料液を濃縮して第2の濃縮原料液を得る、膜蒸留法によって行われ、
    前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法は、それぞれ、前記第1の濃縮原料液及び第2の濃縮原料液を前記原料液と混合して、再び前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法に供される、循環運転の方式で運転され、
    前記原料液濃縮方法によって得られる原料液濃縮物における所望の有機溶媒濃度と、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成推定方法によって得られる、前記原料液中の有機溶媒濃度との大小関係及び差に応じて、前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法の実施、濃縮速度の変更、又は停止を決定する、
    原料液濃縮方法。
  11. 請求項10に記載の原料液濃縮方法を実施するための、原料液濃縮システムであって、
    前記原料液濃縮システムは、第1の濃縮装置、第2の濃縮装置、及び演算装置を含み、
    前記第1の濃縮装置は、正浸透膜を介して原料液と誘導液とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との浸透圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記誘導液中に移動させて前記原料液を濃縮して第1の濃縮原料液を得る、正浸透法を行うことができ、
    前記第2の濃縮装置は、膜蒸留用膜を介して原料液と冷却水とを接触させて、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を駆動力として、前記原料液中の溶媒を前記冷却水中に移動させて前記原料液を濃縮して第2の濃縮原料液を得る、膜蒸留法を行うことができ、
    前記第1の濃縮装置及び第2の濃縮装置は、それぞれ、前記第1の濃縮原料液及び第2の濃縮原料液を前記原料液と混合して、再び前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法に供される、循環運転の方式で運転されることができ、
    前記システムは、更に、前記誘導液及び冷却液の質量又は容量を追跡し得る測定器を含み、
    前記演算装置は、以下の演算(A)~(D)を含む演算を行う、
    原料液濃縮システム:
    (A)前記冷却水の質量又は容量の増加分から、前記冷却水中の前記有機溶媒の濃度を算出すること;
    (B)前記冷却水の質量又は容量の増加速度から、前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差を推定すること;
    (C)前記演算(A)で得られた前記冷却水中の有機溶媒濃度、及び前記演算(B)で得られた前記原料液と前記冷却水との蒸気圧差から、前記原料液中の前記有機溶媒の蒸気圧を算出すること;並びに
    (D)前記演算(C)で得られた前記原料液中の前記有機溶媒の蒸気圧から、前記原料液中の前記有機溶媒の濃度を算出すること。
  12. 前記原料液濃縮方法によって得られる原料液濃縮物における所望の有機溶媒濃度と、前記演算(D)で得られた、前記原料液中の有機溶媒濃度との大小関係及び差に応じて、前記第1の濃縮方法及び第2の濃縮方法の実施、濃縮速度の変更、又は停止を決定することができる、
    請求項11に記載の原料液濃縮システム。
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