JP2023016561A - 原料液濃縮システムおよび濃縮装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜蒸留用膜のウェッティングを抑制し、常温においても工業的に実現可能な処理速度を持つ、医薬および化学品製造プロセスにおける原料液の濃縮システムを提供すること。【解決手段】溶媒および溶質を含有する原料液と、冷却水とを、膜蒸留用膜を介して接触させ、前記原料液中の前記溶媒を、蒸気の状態で前記膜蒸留用膜を通過させ、前記冷却水側に移動させる膜蒸留法を用いる、原料液濃縮システムにおいて、前記膜蒸留用膜として、表面の水接触角が90°以上であり、平均孔径が0.02μm以上0.5μm以下の範囲であり、かつ、空隙率が60%以上90%以下である多孔質膜を用いる、医薬製造プロセス用の原料液濃縮システム。【選択図】図2

Description

本発明は、原料液濃縮システムおよび濃縮装置に関する。詳しくは、膜蒸留法により有機溶媒および溶質を含む原料水溶液から溶媒の一部を分離して原料液を濃縮することにより、原料液中の成分の変質、減少等を抑え、効率よく原料液を濃縮することが可能な、原料液濃縮システムおよび濃縮装置に関する。
濃縮を必要とする原料液が、溶媒として水および有機溶媒の双方を含む場合は、医薬品製造や化学品製造プロセスなど、工業上、数多く存在する。
特に、ペプチド、タンパク質等の、アミノ酸配列を有する物質は、診断・検査薬、医薬品として広く利用されている。これらは非常に高価であるため、製造工程において、変性をさせず、収率高く回収することが重要である。
近年、有機溶媒を含む溶液から非加熱で溶質を回収する方法として、OSN(OrganicSolvent Nanofiltraion)法が研究されている。OSN法は、成分を篩分けにより分離する技術であり、相変化を伴わない分離方法であるため、エネルギー負荷を下げることが可能である。また、膜を使用する方法は、蒸留法などに比べてスケールアップしやすいという利点がある(非特許文献1) 。
これらとは別の原料液の濃縮方法として、液体の持つ蒸気圧差を利用して原料液中の溶媒を分離する膜蒸留(MD:Membrane Distillation)法が知られている。膜蒸留法の1つの方法として、原料液と、当該原料液よりも温度の低い冷却水とを膜を介して接触させ、原料液から冷却水へ原料液中の有効物質を含まない蒸気が移動することにより、原料液が濃縮されるDCMD法(Direct Contact MD)がよく知られている(例えば、特許文献1)。
国際公開第2016/006670号
Journal of Membrane Science 2011、381、21-33 Journal of Membrane Science 1999、163、333-348
しかし、非特許文献1に記載のOSN法では、分子サイズの小さな有価物は膜を透過してしまうため、ロスなく回収することが難しい。また、原料液の加圧を要するため、原料液に含まれる溶質の膜表面への固着が起こり、回収率が低下する課題があった。
一方、特許文献1の膜蒸留法によると、膜蒸留用膜がウェッティングされると、原料液が冷却水側に流入するため、濃縮を行うことができなくなっていた。また、非特許文献2によると、膜蒸留用膜としては、孔径の小さい多孔質膜が選ばれているため、蒸気の透過量が小さいことが課題であった。さらに、蒸気の透過量を上げるには、原料液の温度を高くすることが必要となる。この場合、原料液は、一般的には60℃以上に加熱されることが多く、酵素、ペプチド等の熱による変性が懸念される溶質を含む原料液の濃縮には、膜蒸留法を適用した報告例は少ない。
本発明は、膜蒸留法の課題である、膜蒸留用膜のウェッティングを抑制し、常温においても工業的に実現可能な処理速度を持つ、医薬および化学品製造プロセスにおける原料液の濃縮システムおよび濃縮装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するべくなされたものである。
すなわち、本発明者らは、原料液を膜蒸留法で濃縮する際、膜蒸留用膜として、蒸気透過性が高く、かつ疎水性が高い多孔質膜を用いることにより、膜蒸留用膜の原料液によるウェッティングが抑制され、常温においても効率よく蒸気を取り出すことができ、その結果、原料液中の有効成分の変性を防ぎつつ、効率のよい濃縮を行えることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
《態様1》溶媒および溶質を含有する原料液と、冷却水とを、膜蒸留用膜を介して接触させ、前記原料液中の前記溶媒を、蒸気の状態で前記膜蒸留用膜を通過させ、前記冷却水側に移動させる膜蒸留法を用いる、原料液濃縮システムにおいて、
前記膜蒸留用膜として、表面の水接触角が90°以上であり、平均孔径が0.02μm以上0.5μm以下の範囲であり、かつ、空隙率が60%以上90%以下である多孔質膜を用い、
前記膜蒸留用膜は、少なくとも一部に疎水性ポリマーが付着している中空糸膜であり、
前記中空糸膜の内側の空隙率は外側の空隙率より大きい、
原料液濃縮システム。
《態様2》溶媒および溶質を含有する原料液と、冷却水とを、膜蒸留用膜を介して接触させ、前記原料液中の前記溶媒を、蒸気の状態で前記膜蒸留用膜を通過させ、前記冷却水側に移動させる膜蒸留法を用いる、原料液濃縮システムにおいて、
前記膜蒸留用膜として、表面の水接触角が90°以上であり、平均孔径が0.02μm以上0.5μm以下の範囲であり、かつ、空隙率が60%以上90%以下である多孔質膜を用い、
前記膜蒸留用膜は、少なくとも一部に疎水性ポリマーが付着している中空糸膜であり、
前記中空糸膜の前記中空糸膜の、濃度20重量パーセントのエタノール水溶液に対する液体侵入圧が0.1MPa以上0.5MPa以下である、
原料液濃縮システム。
《態様3》溶媒および溶質を含有する原料液と、冷却水とを、膜蒸留用膜を介して接触させ、前記原料液中の前記溶媒を、蒸気の状態で前記膜蒸留用膜を通過させ、前記冷却水側に移動させる膜蒸留法を用いる、原料液濃縮システムにおいて、
前記膜蒸留用膜として、表面の水接触角が90°以上であり、平均孔径が0.02μm以上0.5μm以下の範囲であり、かつ、空隙率が60%以上90%以下である多孔質膜を用い、
前記膜蒸留用膜は、少なくとも一部に疎水性ポリマーが付着している中空糸膜であり、
前記疎水性ポリマーは、ポリマー濃度0.2~5.0質量%の溶液を前記中空糸膜表面に接触させた後に乾燥されることにより付着している、
原料液濃縮システム。
《態様4》前記疎水性ポリマーが、側鎖にフッ素原子含有基を持つポリマーであり、
前記フッ素原子含有基が、(パー)フルオロアルキル基、(パー)フルオロポリエーテル基、アルキルシリル基、フルオロシリル基から選ばれる少なくとも1つである、
態様1~3のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
《態様5》前記膜蒸留用膜の材料が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、およびポリクロロトリフルオロエチレンから成る群から選ばれる少なくとも1つの樹脂を含む、態様1~4のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
《態様6》前記溶媒が、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールから成る群から選ばれる少なくとも1種を含む、態様1~5のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
《態様7》前記溶質の数平均分子量が100~50,000であり、
前記溶質が界面活性効果を有する化合物である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
《態様8》前記原料液の温度が、5℃以上50℃以下の範囲に調整されている、態様1~7のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
《態様9》溶媒および溶質を含有する原料液と、冷却水とを、膜蒸留用膜を介して接触させ、前記原料液中の前記溶媒を、蒸気の状態で前記膜蒸留用膜を通過させ、前記冷却水側に移動させる膜蒸留法を用いる、原料液濃縮システムにおいて、
前記原料液に含まれるすべての溶媒の蒸気圧、および前記冷却水に含まれるすべての溶媒の蒸気圧を求め、
前記原料液中の各溶媒の蒸気圧から、前記冷却水中の当該溶媒の蒸気圧を引いた蒸気圧差から、前記当該溶媒が蒸気の状態で前記膜蒸留用膜を通過する速度を求めることを含み、
前記当該溶媒の蒸気圧が、前記当該溶媒のモル濃度および温度から求めた蒸気分圧に、前記当該溶媒のモル濃度および温度から求めた活量係数を掛けることによって求められる、
原料液濃縮システムの性能予測方法。
《態様10》膜蒸留用膜を具備し、膜蒸留法によって原料液の濃縮を行うための濃縮装置であって、
前記膜蒸留用膜として、膜表面の水接触角が90°以上であり、平均孔径が0.02μm以上0.5μm以下の範囲であり、かつ、空隙率が60%以上90%以下である膜を用いる、
濃縮装置。
本発明の濃縮システムは、例えば、アミノ酸配列を有する溶質を含有する原料液を、常温付近の膜蒸留プロセスによって濃縮する際、ウェッティングを起こさず、かつ原料液の溶質組成を実質的に維持したまま、濃縮できる。
本発明の濃縮システムを、医薬品、化学品等の製造プロセスにおいて、有価物を含む原料液の濃縮に適用すれば、熱および圧力に弱い有価物を、変性することなく、かつ高回収率で濃縮することができる。
本発明の原料液濃縮システムに適用する膜モジュールの実施態様の一例を説明するための概念図である。 本発明の原料液濃縮システムの実施態様の一例を説明するための概念図である。 本発明の原料液濃縮システムに適用される膜に疎水性ポリマーを付着させる際の実施態様の一例を説明するための概念図である。 本発明の原料液濃縮システムに適用される液体侵入圧力の測定に関する実施態様の一例を説明するための概念図である。 実施例1で得られた原料液濃縮システムにおける中空糸膜の電子顕微鏡写真である。 実施例1~9の原料液の入り温度と、原料液のフラックス(全溶媒の合計フラックス)との関係を示すグラフである。 エタノール、アセトニトリル、および水の、各温度における蒸気圧(計算値)を表すグラフである。 実施例1~9の運転開始時における、原料液の入り温度と、エタノール、アセトニトリル、および水の蒸気圧差(計算値)との関係を表すグラフである。 実施例4、7、および10~13における運転開始時の、原料液中の有機溶媒濃度と、原料液のフラックス(全溶媒の合計フラックス)との関係を表すグラフである。 実施例4、7、および10~13における運転開始時の、原料液中の有機溶媒濃度と、各溶媒のフラックスとの関係を表すグラフである。 中空糸状膜蒸留用膜における疎水性ポリマーの分布の一例を示す概略断面図である。 図11に示した分布で疎水性ポリマーが付着した中空糸状膜蒸留用膜をエタノールに浸漬させたときの、エタノールによる濡れの状態を示す、概略断面図である。 実施例4~13おける運転開始時の、各溶媒の蒸気圧差とフラックスとの関係を表すグラフである。
以下、本発明の好ましい実施形態を、非限定的な例として具体的に説明する。
《原料液濃縮システム》
本発明の原料液濃縮システムは、溶媒および溶質を含有する原料液と、冷却水とを、膜蒸留用膜を介して接触させ、前記原料液中の前記溶媒を、蒸気の状態で前記膜蒸留用膜を通過させ、前記冷却水側に移動させる膜蒸留法を用いる、原料液濃縮システムである。
以下、本発明の原料液濃縮システムついて、図を参照にしつつ、説明する。
図1は、本発明の濃縮システムにおいて、原料液を膜蒸留によって濃縮するときに好ましく使用される、膜蒸留用膜モジュールの一例を示す。
図1の膜蒸留用膜モジュールは、ハウジング内に複数の中空糸状の膜蒸留用膜(Hollow Fiber Membrane)が収納され、これらの両端部は、接着樹脂(Adhesive)によって接着固定されている。ここで、膜蒸留用膜の両端は、閉塞されずに開口している。
ハウジングの側面には、冷却水)を流入させるための第1のハウジング側管と、冷却水を排出させるための第2のハウジング側管とを有し、これらにより、膜蒸留用膜の外部空間に冷却水を流通させることができる。図1では、第1及び第2のハウジング側管は、「Cooling Water inlet/outlet」として参照されている。
ハウジングの軸方向(図1の上下方向)の両端には、原料液を流入させるための下側開口部と、原料液を排出させるための上側開口部とを有し、これらにより、膜蒸留用膜の中空部に原料液を流通させることができる。図1では、下側開口部および上側開口部は「Feed inlet/outlet」として参照されている。
膜蒸留用膜モジュールの内部は、膜蒸留用膜によって、膜蒸留用膜の中空部側の空間と、膜蒸留用膜の外部空間側の空間とに分割されている。これら2つの空間は、所定の溶媒が膜蒸留用膜の外壁を通過して行き来することができる他は、流体的に遮断されている。
膜蒸留用膜は、例えば中空糸状であり、その外壁は、強い疎水性を有し、多孔質でありながら液体が内部に進入せず、かつ、外壁を気体のみが通過できる性状であることが必要である。また常温においても高い蒸気透過性が求められるため、高い空孔率と適切な平均孔径とを有する必要がある。
本発明では、膜蒸留用膜として、膜表面の水接触角が90°以上であり、平均孔径が0.02μm以上0.5μm以下の範囲であり、かつ、空隙率が60%以上90%以下の多孔質膜を用いる。
膜蒸留法にて原料液を濃縮するには、膜蒸留用膜の片側(図1では中空糸状の膜蒸留用膜の中空部側空間)に原料液を流し、一方、原料液よりも温度の低い冷却水をもう一方の側(図1では状の膜蒸留中空糸膜の外部空間側)に流す。すると、膜壁内部で両空間に連通する細孔は、膜壁を介して原料液および冷却水に接する。その結果、蒸気圧の高い原料液ら発生した蒸気が、膜壁を通過して蒸気圧の低い冷却水に移動して、冷却されて液化することにより、原料液が濃縮される。
図2は、本発明の濃縮システムの一例を示す。
図2の濃縮システムでは、図1で示した膜蒸留用膜モジュール(MD Membrane)の軸方向両端に、原料液(Feed solution)を循環させる手段(配管系統)が備えられている。原料液を循環させる配管系統には、原料液貯留タンク、原料液を循環するためのポンプ、原料液の温度を設定温度に保つ温調器が設置されている。本濃縮システムにおいては、必要に応じて、循環流量を示す流量計(図示せず)、循環流量を調整する流量調整装置(図示せず)、および膜蒸留用膜モジュールに原料液を供給するときの液圧を表示する圧力計を備えていてもよい。また、原料液貯留タンクに重量計、液面計等を備えることにより、液面、重量等の低下の程度により、膜性能および濃縮率を推定することができる。
一方、膜蒸留用膜モジュールのハウジング側管には、冷却水(Cooling Water)を循環させる手段(配管系統)が備えられている。この配管系統には、冷却水貯留タンク、冷却水を循環するためのポンプ、循環流量を示す流量計、循環流量を調整する流量調整装置(図示せず)、および冷却水の温度を設定温度に保つ温調器が設置されている。膜蒸留によって原料液から冷却水に溶媒が移動して冷却水の容量は経時的に増加する。そのため、冷却水貯留タンク(300)の貯留量は、膜蒸留の継続によって増加する。このとき、冷却水が廃棄可能である場合には、冷却水貯留タンクにオーバーフロー口を設置して、冷却水の貯留量を一定容積に維持することができる。
医薬品、化学品等の製造用の原料液濃縮システムにおいては、ペプチド、たんぱく質等の、加熱によって分解し得るものを含む原料液を取り扱うため、原料液を低温(例えば50℃以下)に保つことが必要である。また、原料液の溶媒として、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の表面張力の小さい液体が使用される。
これらのことから、膜蒸留用の膜には、低表面張力の液体にも濡れない強い疎水性、および、常温の原料液から溶媒の蒸気を効率的に取り出すために、蒸気通過性の高いことが求められる。
したがって、本発明で用いられる膜蒸留用膜は、強い疎水性であることが必要であり、水接触角が90°以上であることが求められる。また、高い蒸気通過性を確保することが必要であり、平均孔径が0.02μm以上0.5μm以下の範囲であり、かつ、空隙率が60%以上90%以下の多孔質膜であることが求められる。
これらの要件については後述する。
《原料液濃縮システムの各要素》
以上、本発明の原料液濃縮システムよる原料液の濃縮の概要を説明した。引き続き、本発明の原料液濃縮システムを構成する各要素について、以下に詳説する。
〈原料液〉
原料液とは、溶質および溶媒を含有する流体であり、本発明のシステムによって濃縮されることが予定されている。この原料液は、流体である限りにおいて、乳化物であってもよい。
本発明に適用される原料液としては、例えば、医薬品、医薬品原料、医薬品原体、医薬品中間体等(以下、これらを総称して「医薬品原体等」という。)、化学品を含む溶液または分散液;食品;海水;ガス田・油田等から排出される随伴水等を挙げることができる。
本発明の原料液濃縮システムでは、原料液aの組成がほぼそのまま維持されつつ、溶媒が除去された濃縮液が得られる。そのため、本発明の原料液濃縮システムを、溶質として医薬品原体や化学品等を含む溶液または分散液の濃縮に適用すると、溶質の性質を維持した状態で濃縮することが可能となる。
[原料液の溶質]
医薬品原体や化学品等としては、例えば、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖、ワクチン、核酸、抗生物質、抗体薬物複合体(ADC)、界面活性効果を有する化合物、およびビタミン類から成る群から選ばれる有用物質を溶質とし、この溶質が適当な溶媒中に溶解または分散されたものであることが好ましい。
アミノ酸は、カルボキシル基およびアミノ基、ならびにこれらを連結している部分から成るアミノ酸骨格を1個有する化合物である。本明細書におけるアミノ酸は、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、および非天然アミノ酸を包含する概念である。
必須アミノ酸としては、例えば、トリプトファン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン等が挙げられる。非必須アミノ酸としては、例えば、アルギニン、グリシン、アラニン、セリン、チロシン、システイン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
非天然アミノ酸とは、分子内にアミノ酸骨格を有する、天然に存在しない人工のあらゆる化合物を指す。しかしながら、医薬品原体等としての非天然アミノ酸としては、アミノ酸骨格に所望の標識化合物を結合させて得られるものが挙げられ。標識化合物としては、例えば、色素、蛍光物質、発光物質、酵素基質、補酵素、抗原性物質、タンパク質結合性物質等が挙げられる。
医薬品原体等として好ましい非天然アミノ酸の例として、例えば、標識アミノ酸、機能化アミノ酸等が挙げられる。
標識アミノ酸は、アミノ酸骨格と標識化合物とが結合した非天然アミノ酸であい、その具体例としては、例えば、側鎖に芳香環を含むアミノ酸骨格に、標識化合物が結合したアミノ酸等が挙げられる。
機能化アミノ酸の例としては、例えば、光応答性アミノ酸、光スイッチアミノ酸、蛍光プローブアミノ酸、蛍光標識アミノ酸等が挙げられる。
ペプチドは、2残基以上70残基未満のアミノ酸残基が結合した化合物を指し、鎖状であっても、環状であってもよい。ペプチドとしては、例えば、L-アラニル-L-グルタミン、β-アラニル-L-ヒスチジンシクロスポリン、グルタチオン等が挙げられる。
タンパク質は、一般的には、アミノ酸残基が結合した化合物のうちのペプチドよりも長鎖のものを指す。本明細書におけるタンパク質としては、例えば、タンパク製剤として適用されるものが好ましい。
タンパク製剤としては、例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターロイキン1~12、成長ホルモン、エリスロポエチン、インスリン、顆粒状コロニー刺激因子(G-CSF)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ナトリウム利尿ペプチド、血液凝固第VIII因子、ソマトメジン、グルカゴン、成長ホルモン放出因子、血清アルブミン、カルシトニン等が挙げられる。
糖としては、例えば、単糖類、二糖類、糖鎖(二糖類を除く)、糖鎖誘導体等が挙げられる。
単糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース、デオキシリボース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、マルトース、スクロース、ラクトース等が挙げられる。
本明細書における糖鎖とは、二糖類を除く概念であり、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、グルクロン酸、イズロン酸等が挙げられる。糖鎖誘導体としては、例えば、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルノイラミン酸等の、糖類誘導体等が挙げられる。
ワクチンとしては、例えば、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、C型肝炎ワクチン等が;
核酸としては、例えば、オリゴヌクレオチド、RNA、アプタマー、デコイ等が;
抗生物質としては、例えば、ストレプトマイシン、バンコマイシン等が;
それぞれ挙げられる。
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC類等が挙げられ、これらの誘導体、塩等も含む概念である。ビタミンB類には、例えば、ビタミンB6、ビタミンB12等が包含される。
界面活性効果を有する化合物としては、例えば、多糖類、リン脂質、ペプチド、ラウリル硫酸ナトリウムのような陰イオン性界面活性剤、塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤、または両性界面活性剤、ポリエチレングリコールのような非イオン界面活性剤が挙げられる。
原料液に含まれる溶質の数平均分子量は、100~75,000程度であってよく、好ましくは100~50,000程度、より好ましくは100~10,000程度であり、100~6,000の低分子化合物であることが特に好ましい。
溶質の分子量が過度に小さいと、膜蒸留用膜を透過する場合があり、分子量が過度に大きいと、膜表面への溶質の付着が起こる場合があり、好ましくない。
[原料液における溶媒]
原料液における溶媒は、液体であり、原料液中の溶質を溶解または分散できるものである限り、あらゆる無機溶媒または有機溶媒であることができる。
溶媒として、好ましくは、水、または、アセトニトリル、メタノール、エタノール、もしくはイソプロパノールであり、これらのうちから選択される1種以上を適宜選択して使用してよい。溶媒は、例えば、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールから選択される2種以上を含む混合物であってもよい。
〈濃縮液〉
原料液が濃縮されて得られる濃縮液は、原料液中の溶質をほぼそのまま維持し、かつ、溶媒が優先的に分離されることにより得られる。本発明の原料液濃縮システムでは、原料液から分離される溶媒の種類および量を任意に制御することができる。
〈膜蒸留用膜〉
本発明で用いられる膜蒸留用膜としては、多孔質膜を用いることが好ましい。
多孔質膜は、膜の一方の表面から他方の表面まで厚み方向に連通している細孔(連通孔)を有している。細孔は、膜材料(例えばポリマー)のネットワークの空隙であってよく、枝分かれしていても直通孔でもよい。細孔は、蒸気を通すが液体を通さないものであってよい。
本発明で用いられる膜蒸留用膜は、少なくとも片側表面の水接触角が、膜のウェッティングを回避する観点から、90°以上であり、好ましくは90°よりも大きく、より好ましくは110°以上であり、さらに好ましくは120°以上である。膜の水接触角には、本発明の奏する効果との関係では上限はないが、現実的には150°以下であってよい。
本明細書における水接触角は、JIS R 3257準拠の液滴法により測定される値である。具体的には、2μLの純水を測定対象物表面に滴下し、測定対象物と液滴とが形成する角度を、投影画像から解析することで数値化する。
本発明で用いられる膜蒸留用膜では、片側表面のうちの実質的にすべての領域面で、上記範囲の水接触角を示すことが好ましい。
なお、本発明で用いられる膜蒸留用膜の形状については後述するが、中空糸状である場合、当該中空糸の外側表面が、上記範囲の水接触角を示すことが好ましい。
膜蒸留用膜の平均孔径は、0.02μm以上0.5μm以下の範囲内であり、好ましくは0.03μm以上0.3μm以下の範囲内である。平均孔径が0.02μm以上である場合、蒸気の透過抵抗が大きくなり過ぎず、原料液の濃縮速度が速くなる。平均孔径が0.5μm以下である場合、膜のウェッティングの抑制効果が良好である。平均孔径は、ASTM:F316-86に準拠して、ハーフドライ法で測定される値である。
蒸気透過性とウェッティング抑制との両立の観点から、膜の孔径分布は狭い方が好ましい。具体的には、平均孔径に対する最大孔径の比である孔径分布が、好ましくは1.2~2.5の範囲内、より好ましくは1.2~2.0の範囲内である。上記最大孔径は、バブルポイント法を用いて測定される値である。
膜蒸留用膜の空隙率は、高い蒸気透過性と、長期耐久性とを両立させる観点から、60%以上90%以下の範囲である。高い蒸気透過性を得るために、膜蒸留用膜の空隙率は、60%以上であり、好ましくは70%以上である。膜自体の強度が良好に維持され、長期使用の際に破断等の問題を発生させにくくする観点から、膜蒸留用膜の空隙率は、90%以下であり、好ましくは85%以下である。
膜蒸留用膜の表面開口率は、効率的な濃縮速度を得る観点から、各表面について、好ましくは15%以上、より好ましくは18%以上、さらに好ましくは20%以上であり、膜自体の強度が良好に維持され、長期使用の際に破断等の問題を発生させにくくする観点から、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下である。上記表面開口率は、膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察画像において、画像解析ソフトで孔部を検出することにより求められる値である。
膜蒸留用膜の空隙率は、膜厚方向に分布があってよい。原料液に接する側の空隙率を高くし、冷却水に接する側の空隙率を低くすることにより、蒸気の透過性を維持しながら長期耐久性を高めることが可能になる。
前記膜が中空糸状の場合、原料液を中空糸内側に通液することが多いことから、中空糸膜の外側よりも内側の空隙率が高いことが好ましい。具体的には、中空糸の膜断面方向における内側5%の空隙率が、外側5%の空隙率の1.0倍超3.0倍以下であることが好ましく、より好ましくは1.1倍以上2.0倍以下である。
膜蒸留用膜を構成する材料としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、およびポリクロロトリフルオロエチレンから成る群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む材料が挙げられる。疎水性、機械的耐久性、および熱的耐久性に優れる膜を、高い成膜性で製造できるとの観点からは、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、またはポリクロロトリフルオロエチレンが好ましい。
本発明の一様態として、疎水性向上のために、膜蒸留用膜の少なくとも一部に、疎水性ポリマーが付着していてよい。疎水性ポリマーは、膜蒸留用膜の少なくとも片側の表面または膜内部に疎水性の被膜を形成して、膜に撥水性を付与し、または膜の撥水性を向上させることができる。
疎水性ポリマーは、例えば、水、フッ素系溶媒等の適当な溶媒中に溶解した溶液状態で、膜蒸留用膜に塗布した後、溶媒を蒸発させることにより、膜の表面もしくは内部、又はこれらの双方に、付着させることができる。疎水性ポリマー溶液の塗布は、例えば、スプレー等の噴霧、浸漬等の適宜の方法によって、行われてよい。
本明細書において、「疎水性ポリマー」とは、水との親和性が低いポリマーを意味し、例えば、疎水性構造を有するポリマーであってよい。疎水性構造としては、非極性基または低極性基、非極性骨格または低極性骨格等が挙げられる。非極性基または低極性基としては、例えば、炭化水素基、含フッ素基等が挙げられ、非極性骨格または低極性骨格としては、例えば、炭化水素主鎖、シロキサン主鎖等が挙げられる。
疎水性ポリマーとしては、例えば、シロキサン結合を有するポリマー、フッ素原子含有ポリマー等が挙げられ、より具体的には、例えば、以下のものが挙げられる:
(ア)シロキサン結合を有するポリマーとして、例えば、ジメチルシリコーンゲル、メチルフェニルシリコーンゲル、有機官能基(アミノ基、フルオロアルキル基等)を有する反応性変性シリコーンゲル、シランカップリング剤と反応して架橋構造を形成するシリコーン系ポリマー等、およびこれらの架橋体であるポリマーゲル
(イ)フッ素原子含有ポリマーとして、側鎖にフッ素原子含有基を持つポリマー、ここで、フッ素原子含有基は、(パー)フルオロアルキル基、(パー)フルオロポリエーテル基、アルキルシリル基、フルオロシリル基等である。
特に、疎水性ポリマーが、炭素数1~12の(パー)フルオロアルキル基および/または(パー)フルオロポリエーテル基を有する、(メタ)アクリレート系モノマーおよび/またはビニル系モノマーの重合体であることが好ましい。
疎水性ポリマーは、膜蒸留用膜の細孔内全体に付着していてもよいが、細孔内への液体の進入を防ぎ、蒸気の透過性を確保する観点から、疎水性ポリマーの付着量が膜蒸留用膜の厚さ方向に分布を有し、液体と接する膜の表層に多くのポリマーが付着し、膜の厚み方向の内部は付着量が少なく細孔構造が維持されていることが好ましい。
この観点から、疎水性ポリマーの付着量については、膜蒸留用膜の少なくとも片面の表層における付着量が、内部の付着量よりも多いことが好ましく、膜蒸留用膜の片面の表層から反対面の表層に向かって減少して行くことがより好ましい。
ここでいう「膜の表層」とは、液体と接する膜の部位、およびその近傍を意味する。定量的には、膜の最外層部分から、膜厚方向の内部に向かう10μm程度の範囲をいう。一方、「膜の内部」とは、膜のうち、液体と接することがなく、蒸気のみが通過する部位を意味し、膜の表層以外の部位を指す。
本明細書において、TOF-SIMS分析等において、疎水性ポリマーの量を表層(膜の内側、外側)と内部とを比較するときは、内部の測定データは膜厚部のちょうど中央部からおおむね±5%の位置における測定データを採用する 。
図11に、膜蒸留用膜が中空糸状である場合の、疎水性ポリマーの分布の一例を示す。図11(a)は、中空糸の長手方向に垂直な断面における疎水性ポリマーの分布を示し、図11(b)は、中空糸の長手方向の断面における疎水性ポリマーの分布を示す。図11(a)および(b)では、グレーが濃いほど、疎水性ポリ―が高濃度で存在していることを示している。
図11(a)および(b)を参照すると、この中空糸状の膜蒸留用膜の場合、中空糸膜の内側表面近傍に、疎水性ポリマーが多く付着しており、外側表面近傍の疎水性ポリマー量は少ない。この場合、疎水性ポリマーの付着量が多い内側面に接する中空部分に、原料液(a)を通すことが、膜のウェッティング防止の観点から好ましい。
疎水性ポリマーの分布は、中空糸の外側表面近傍で多く、内側表面近傍で少なくても構わない。この場合には、疎水性ポリマーの付着量が多い外側面に接する中空糸の外部空間に、原料液(a)を通すことが好ましい。
膜蒸留用膜への疎水性ポリマー付着量は、疎水性ポリマーが付着した膜蒸留用膜を、当該疎水性ポリマーの良溶媒で抽出して得られた抽出液から、溶媒を除去することにより、直接質量として、求めることができる。
また、適当な表面解析装置を用いて疎水性ポリマーが付着した膜蒸留用膜の分析を行い、膜蒸留用膜の構成材料と、疎水性ポリマーとのシグナル強度比から、付着量を求めることができる。表面解析装置によれば、膜蒸留用膜の任意の部分についての分析が可能であることから、膜の部分ごとのシグナル強度比を比較することによって、疎水性ポリマーの付着分布を知ることができる。この場合の表面解析機器としては、例えば、IR(赤外線スペクトル吸収)装置、XPS(X線光電子分光)装置、TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン分析)装置等を例示できる。
本発明においては、疎水性ポリマーの付着に関し、内側の付着量と外側の付着量との比率が重要な意味をもつ。強度比が1.2倍以上あれば本発明の内側と外側の状態に差があると判断し、特に3.0倍以上の差がある場合に非常に大きな差があると判断する。
膜蒸留用膜に疎水性ポリマーを付着させるには、疎水性ポリマーを適当な溶媒に溶解した塗工液を膜に塗布し、乾燥する方法によることができる。所望の疎水性ポリマー分布を得るには、塗屋部位、塗工液の溶媒の揮発性(沸点)、塗工液中の疎水性ポリマーの濃度、および塗工後の乾燥条件を、適宜に調整する、等の方法によることができる。例えば、塗工を浸漬法によって行う場合には、塗工液中の溶媒の揮発性が低く(沸点が高く)、塗工後の乾燥条件が緩やかなほど、乾燥工程の間に疎水性ポリマーを含んだ塗工液が膜表面方向に移動することができ、したがって、膜の厚さ方向に分布を発生させることができる。
疎水性ポリマーが、膜蒸留用膜の片面の表層から、反対面の表層に向かって減少して行く分布で付着している場合には、疎水性ポリマーの付着量が少ない側の面が、親水化処理されていてもよい。
疎水性ポリマーの付着量が少ない側の面は、疎水性が低く、親水性の高い溶媒との親和性が高いのに対して、疎水性ポリマーが多く付着している側の面は、疎水性が高く、親水性の高い溶媒との親和性が低い。このことを利用して、疎水性ポリマーの付着量が少ない側の面のみを、親水性の高い溶媒で濡れた状態とし、親水化することができる。
例えば、疎水性ポリマーの付着量が、膜蒸留用膜の片面の表層から、反対面の表層に向かって減少して行く分布の膜を、例えば、エタノール等に浸漬させると、図12に示したように、疎水性ポリマーの付着量が少ない部分のみ、エタノールに濡れた状態になる。この状態の膜蒸留用膜を用いて膜蒸留法による濃縮を行うと、蒸気が通過する膜の厚さ方向の距離が、実質的に短くなるため、時間当たりの蒸気通過量を増やすことができる。
このような親水化処理がされた膜蒸留用膜を使用する場合には、親水化処理された側の面を冷却水と接触させ、かつ、疎水性ポリマーの付着量が多い反対面の側を原料液に接触させることが好ましい。
疎水性ポリマーの付着工程に用いる疎水性ポリマー溶液中の疎水性ポリマー濃度は、ある一定の範囲内であることが好ましい。具体的には、ポリマー濃度が0.2~5.0質量%であることが好ましく、0.4~4.0質量%であることがより好ましく、0.6~3.0質量%であることがさらに好ましい。
ポリマー濃度が0.2質量%以上であると、ポリマーが膜内で分配された後でもポリマーが不足することがなく、ポリマーが付着していない部分が生じずに膜の疎水化を十分に行える。また、ポリマー濃度が5.0質量%以下であると、膜の空隙部分がポリマーで埋まることがなく、乾燥後の膜の空隙率を維持して、蒸気透過速度の低下を回避することができる。
膜蒸留用膜の疎水性は、一般的に水の液体侵入圧を測定することにより、求めることが出来る。ただし、有機溶媒、界面活性剤等を含む原料液を扱う際、膜蒸留用膜には有機溶媒を含有する溶液に対する高い疎水性が求められる。具体的には、20重量パーセント濃度のエタノール水溶液に対する液体侵入圧が、0.1MPa以上0.5MPa以下であることが好ましく、より好ましくは0.2MPa以上0.4MPa以下である。この液体侵入圧が高いと、有機溶媒を含む原料液を扱っても膜が濡れにくい。一方、高い液体侵入圧を実現するためには、膜の最大孔径を小さくする必要があるため、高すぎる液体侵入圧の実現には空隙率の低い膜を用いる必要がある。したがって、一定の蒸気透過性を保持するためには、液体侵入圧は高すぎない方が好ましい。
[膜蒸留用膜の形状およびサイズ]
膜蒸留用膜の形状は、例えば、平膜、中空糸膜、チューブ型等、いかなる形状の膜でも構わない。膜モジュールの形状は平膜を用いた場合、スパイラル型、プリーツ型、積層型等を選ぶことができる。膜蒸留用膜が平膜状である場合、原料液と冷却液とが混合されず、流路が確保されるよう、膜は袋状にシールされ、適宜スペーサー等を挿入する。
本発明の膜蒸留用膜の厚さは、蒸気透過性と膜の機械的強度との両立の観点から、10μm以上1,000μm以下であることが好ましく、20μm以上500μm以下であることがより好ましい。膜厚が1,000μm以下であれば、高い蒸気透過性を得ることができ、他方、膜厚が10μm以上であれば、膜が変形することなく使用することができる。
膜蒸留用膜が中空糸膜の場合、外径は、300μm以上5,000μm以下、好ましくは350μm以上4,000μm以下であり、中空糸膜の内径は、例えば、200μm以上4,000μm以下、好ましくは250μm以上3,000μm以下である。
〈膜蒸留モジュール〉
本発明では、膜蒸留用膜が中空糸状である場合には、中空糸状の膜蒸留用膜を複数束ねた膜束を、適当なモジュール内に充填した膜蒸留用膜モジュールの形態で使用してもよい。
モジュールの形状は、円筒型、多角柱型、その他の多面体型型等であってよく、形状の制限はない。
好ましくは、円筒型または多角柱型のハウジングに、中空糸の長手方向がハウジングの軸方向と一致するように、中空糸膜束を収納し、該中空糸束の両端が、適当な接着樹脂にてハウジング内に固定された構造であってよい。この場合、接着樹脂による中空糸束の固定を液密に行い、中空糸膜の内外の流路が混合されないようにすることが好ましい。
接着樹脂には、機械的強度が強く、かつ100℃での耐熱性を有することが望まれる。接着樹脂としては、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂、熱硬化性のウレタン樹脂等が挙げられる。耐熱性の観点ではエポキシ樹脂が好ましい。ハンドリング性の観点ではウレタン樹脂が好ましい。
接着固定の方法は、膜蒸留用膜モジュール作製に関する公知の接着方法にしたがえばよい。
ハウジングの構成は、原料液および冷却水に含まれる溶質および溶媒により、諸性能が劣化しない耐薬品性を主として、耐圧性、耐熱性、耐衝撃性、耐候性等の観点から選定される。例えば、樹脂、金属等が使用できる。上記の観点からは、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ABS樹脂、繊維強化プラスチック、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂、およびステンレス、真鍮、チタン等の金属から選択されることが好ましい。
〈原料液濃縮システムの性能予測〉
本発明の原料液濃縮システムでは、
原料液に含まれるすべての溶媒の蒸気圧、および冷却水に含まれるすべての溶媒の蒸気圧を求め、
原料液中の各溶媒の蒸気圧から、冷却水中の当該溶媒の蒸気圧を引いた蒸気圧差から、当該溶媒が蒸気の状態で膜蒸留用膜を通過する速度を求めることができる。
ここで、当該溶媒の蒸気圧は、当該溶媒のモル濃度および温度から求めた蒸気分圧に、当該溶媒のモル濃度および温度から求めた活量係数を掛けることによって求められる。
膜蒸留における、原料液から冷却水への蒸気透過速度(フラックス)は、下記数式(1)により求めることが出来る。
Figure 2023016561000002
Jは膜蒸留用膜のフラックスであり、膜面積1m、運転時間1hあたりの蒸気移動量(kg)を示している。α(kg/m・h)は膜蒸留用膜の蒸気透過係数(kg/m・h・kPa)であり、蒸気圧差1kPaあたりのフラックスを示している。原料液と透過側の蒸気圧差(kPa)は、原料液の蒸気圧(Pfeed:kPa)、透過側(冷却水)の蒸気圧(Ppermeate:kPa)の差から求めることが出来る。
ラウールの法則およびドルトンの法則によると、理想状態の混合溶媒における各溶媒(成分i)の蒸気分圧Piは、下記数式(2)および(3)で表すことが出来る。
Figure 2023016561000003
は成分iのみの場合の蒸気圧(kPa)、χは混合溶媒中の成分iのモル分率、Ptotalは混合溶媒の全圧(kPa)を示している。
ただし、多くの場合、混合溶媒中の成分は理想状態ではない。例えば、混合溶媒中に共沸する成分がある場合のPiは、下記数式(4)のように、活量係数γを乗じた値となる。
Figure 2023016561000004
したがって、各溶媒(成分i)のフラックスJは、下記数式(5)で表すことが出来る。
Figure 2023016561000005
αは成分iの蒸気透過係数、χifeedおよびχipermeateはそれぞれ原料液及び冷却水中の成分iのモル分率、γifeedおよびγipermeateはそれぞれ原料液および冷却水中の成分iの活量係数を示している。
前記混合溶媒が、共沸する2成分iとjの混合溶媒である場合、それぞれの活量係数γおよびγは、例えばWilsonの法則を用いて下記数式(6)および(7)で求めることが出来る。
Figure 2023016561000006
ΛijおよびΛjiは、それぞれ、Wilsonパラメータと呼ばれ、下記数式(8)で求めることが出来る。
Figure 2023016561000007
Tは絶対温度(K)、aijおよびbijは、それぞれ、係数を示している。aijおよびbijは、実験により求めることができ、Aspenplus(登録商標)によると、エタノール水溶液、およびアセトニトリル水溶液中における各成分の係数は、下記表1のとおりである。
Figure 2023016561000008
前記P は、下記数式(9)で示されるAntone式によって求めることが出来る。
Figure 2023016561000009
、B、およびCは、それぞれ、成分iに固有の係数である。National Institute of Standards and Technology(NIST)によると、エタノール、アセトニトリル、および水の係数は下記表2のとおりである。
Figure 2023016561000010
なお、表2に示した数字を用いる場合、上記数式(9)で得られるPの単位はbarである。
上記のように、原料液及び冷却水の組成及び温度から、原料液中の各成分のフラックスを求めることが出来る。各成分のフラックスが分かれば、原料液濃縮における溶媒組成、濃縮速度等の、濃縮システムの性能を予測することが可能になる。
すなわち、原料液濃縮システムの構成及び膜蒸留の温度が決まれば、特定の溶媒について、原料液中の当該溶媒の蒸気圧から、冷却水中の当該溶媒の蒸気圧を引いた蒸気圧差から、当該溶媒が蒸気の状態で膜蒸留用膜を通過する速度が分かる。
この情報を用いて、例えば、濃縮後の溶媒組成を予測することができる。原料液に含まれる有価物にとって、濃縮後の溶媒組成が好ましくない場合(析出、変質等が予測される場合)には、例えば、冷却水組成の変更、膜蒸留温度の変更、濃縮物の溶媒組成を調節しながらの膜蒸留実施、等の措置により原料液中の有価物の損失を最小限にしながら、効率的な原料液濃縮が可能となる。
また、上記の情報から、所定の濃縮倍率に至るまでの時間を知ることができる。したがって、例えば、冷却水組成の変更、膜蒸留温度等を変更して、この時間を比較することにより、最短の時間で所定の倍率の濃縮液を得るための、原料液濃縮システムの最適化が可能になる。
〈本発明の原料液濃縮システムの成分維持性〉
上記のような本発明の原料液濃縮システムによると、原料液に含有される溶質の組成が実質的に維持された高濃度の濃縮物を効率的に得ることができる。
したがって、本発明の原料液濃縮システムは、例えば、医薬品、化学品等の製造プロセスにおいて使用するのに好適である。
得られた濃縮物中の溶質の分析は、原料液およびその濃縮物に含まれる成分の種類に応じて適宜に選択されてよい。例えば、ICP-MS(誘導結合高周波プラズマ質量分析)、核磁気共鳴分光(NMR)法、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)法、比色法、蛍光法、高速液体クロマトグラフ(HPLC)等の各種の公知の分析方法によって分析することができる。
<本発明の濃縮装置>
本発明の濃縮装置は、上記のような本発明の膜蒸留用膜を含む。
したがって、本発明の濃縮装置は、
膜蒸留用膜を具備し、膜蒸留法によって原料液の濃縮を行うための濃縮装置であって、
膜蒸留用膜として、膜表面の水接触角が90°以上であり、平均孔径が0.02μm以上0.5μm以下の範囲であり、かつ、空隙率が60%以上90%以下である膜を用いる、
濃縮装置である。
上記の膜蒸留用膜の少なくとも一部に疎水性ポリマーを付着していてもよいし、疎水性ポリマーの付着量につき、膜蒸留用膜の厚さ方向に分布があり、膜蒸留用膜の少なくとも片面の表層における付着量が、内部の付着量よりも多くてもよい。
本発明の濃縮装置におけるその他の態様は、本発明の濃縮システムについての説明を参照してよい。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等についてさらに説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
《中空糸状の膜蒸留用膜の諸物性》
本実施例では、以下に記載する各種の測定方法で、中空糸状膜蒸留用膜の諸物性を求めた。
[中空糸膜外側表面の水接触角]
中空糸状膜蒸留用膜の水接触角を、JIS R 3257準拠の液滴法によって測定した。
23℃の温度および50%の相対湿度の条件下で、中空糸膜試料の外側表面に、2μLの純水の液滴を滴下し、液滴と中空糸膜の外側表面とが形成する角度を画像解析により算出して接触角を求めた。測定は5回行い、数平均値を水接触角として採用した。
[中空糸膜の外径、内径、および膜厚]
中空糸状膜蒸留用膜の外径および内径は、顕微鏡観察により求めた。具体的には、中空糸膜を、長手方向に垂直な方向にカミソリ等で薄く切って、断面の顕微鏡像を得て、該断面の外径および内径をそれぞれ測定して求めた。中空糸膜の膜厚は、下記数式(10)により算出した:
Figure 2023016561000011
[中空糸膜の平均孔径]
中空糸状膜蒸留用膜の平均孔径は、ASTM:F316-86に記載されている平均孔径の測定方法(別称:ハーフドライ法)により測定した。
約10cm長の中空糸膜に対し、液体としてエタノールを用いて、25℃、昇圧速度0.01atm/秒での標準測定条件で行った。
平均孔径は、下記数式(11)により求めた:
平均孔径[μm]=2,860×(s[dyne/cm])/(p[Pa]) (11)
{上記数式中、sは使用液体の表面張力であり、pはハーフドライ空気圧力である。}
ここで、使用液体エタノールの25℃における表面張力sの値は21.97dyne/cmであるので、2,860×s=62,834として数式(11)を変形して下記数式(12)とし、この数式(12)に、ハーフドライ空気圧力pの値を代入して、中空糸膜の平均孔径を求めた。
平均孔径[μm]=62,834/(p[Pa]) ・・・(12)
[中空糸膜の最大孔径]
中空糸状膜蒸留用膜の最大孔径は、浸漬液としてエタノールを用い、バブルポイント法を用いて測定した。
長さ8cmの中空糸膜の一方の末端を閉塞し、他方の末端に圧力計を介して窒素ガス供給ラインを接続した。この状態で窒素ガスを供給してライン内部を窒素に置換した後、中空糸膜をエタノール中に浸漬した。このとき、エタノールがライン内に逆流しないように、極僅かに窒素で加圧した状態で、中空糸膜を浸漬した。空糸膜をエタノール中に浸漬した状態で、窒素ガスの圧力をゆっくりと増加させ、中空糸膜から窒素ガスの泡が安定して出始めた圧力P(kg/cm)を記録した。このPを、下記式(13):
d=C1γ/P (13)
{数式(13)中、dは中空糸の最大孔径、C1は定数、γは浸漬液の表面張力、そしてPは圧力である。}に代入して、中空糸膜の最大孔径dを算出した。このとき、エタノールを浸漬液としたときのC1γの値を0.632(kg/cm)として、最大孔径d(μm)を求めた。
[中空糸膜の空隙率]
中空糸状膜蒸留用膜の空隙率は、中空糸膜の質量と中空糸膜を構成する材料の密度(真密度)とから算出した。
すなわち、中空糸膜を一定長さに切り、その質量を測定し、下記数式(14):
Figure 2023016561000012
{上記数式中、dは中空糸膜の原料ポリマーの真密度であり、πは円周率である。}により、中空糸の空隙率を求めた。
また、中空糸膜内側5%および外側5%の空隙率は、中空糸膜断面の電子顕微鏡写真を画像解析処理ソフトで処理して求めた。画像解析ソフトとして、ImageJ(フリーソフト)を使用して処理を行った。とり込んだ画像の孔部分を黒、非孔部分を白となるように強調・フィルタ操作を実施した。その後、孔部をカウントした。孔内部に下層のポリマー鎖が見て取れる場合には、ポリマー鎖を孔部分とみなしてカウントした。表面開孔率は、下記数式(15)から算出した。
表面開孔率[%]=100×(各孔面積の総和)/(測定範囲の面積) (15)
(測定範囲の面積)は、(各孔面積の総和)+(各非孔部分面積の総和)である。また、測定範囲境界上の孔は除外しないで計算に含めた。
[疎水性ポリマーの付着量]
(1)IR、ATR法
中空糸状膜蒸留用膜における疎水性ポリマーの付着量の比較を、IRスペクトル解析、ATR法(全反射法,内部反射法)により、プリズムとしてZnSe結晶を用いて行った。
測定装置は、PerkinElmer社製 Spectrum Oneを用い、結晶の押し付け圧については、圧力コンターの値を約30として行った。そして、得られたIRスペクトルから、疎水性ポリマー由来のピーク強度と中空糸膜の構成材料由来のピーク強度との比を求めることで、膜表面に付着した疎水性ポリマー量を算出した。
中空糸膜試料は、モジュールから切り出した。中空糸膜の外側表面を分析するための試料には、中空糸膜を長手方向に垂直な断面で1cm間隔にて切断した試料を用い、内側表面を分析するための試料には、中空糸膜を長手方向に切断した試料を用いた。
実施例においては、中空糸膜の構成材料はポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)であり、疎水性ポリマーとして、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するアクリレートポリマーを用いた。そのため、1,734cm-1のν(C=O)および1,180cm-1付近の(ν(C-F)+ν(C-O))のピーク強度比、ν(C=O)/(ν(C-F)+ν(C-O))の値を算出して、疎水性ポリマー付着量の指標とした。
このピーク強度比を、中空糸膜の部位ごとに測定し、最小値を1.0倍としたときに、1.2倍以上の値を示した部位は、疎水性ポリマーの付着量が多いと判断できる。
(2)TOF-SIMS分析
中空糸状膜蒸留用膜における疎水性ポリマーの付着量の比較は、上記のIR、およびATR法の他、TOF-SIMSによる中空糸膜断面の観察によっても行った。
観察試料としては、中空糸膜を薄片状にスライスしたサンプルを用いた。
使用機器は、アルバック・ファイ社製、nano-TOFであり、一次イオンにBi ++、加速電圧30kV、電流0.1nA(DCとして)、分析面積350 μm×350 μm、積算時間120 分、検出イオン負イオンとし、中和は電子銃で行った。中空糸膜構成材料および疎水性ポリマーそれぞれの素材につき、特徴的に強度が強いm/zによるマッピングを行い、得られた強度比を比較することで、各部部分における疎水性ポリマーの存在率を求めた。本条件においては積算時間としては30分で十分であるが、本実施例においては120分の積算時間で行った。
実施例においては、中空糸膜の構成材料はポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)であり、疎水性ポリマーとして、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するアクリレートポリマーを用いた。そのため、PVDFの強度が特に強いm/z=67と、パーフルオロ化アクリレートポリマーの」強度が特に強いm/z=293とを採用し、これらの強度比を求めた。
ここでは、強度比が2倍以上であった場合に、疎水性ポリマーの存在率に有意差があると判断できる。
《実施例1》
(1)膜蒸留用中空糸膜の作製
実施例1では、膜蒸留用膜として中空糸状の多孔質膜を用い、疎水性ポリマーを付着させた後、原料液の膜蒸留による濃縮を行った。この膜蒸留用膜は、図1に示した構成の膜蒸留用膜モジュールに充填して使用した。中空糸状の多孔質膜は、下記の製法により製膜した。
平均一次粒径0.016μm、比表面積110m/gの疎水性シリカ(日本アエロジル社製、AEROSIL-R972)23質量部と、DOP(フタル酸ジ-2-エチルヘキシルフタル酸ジオクチル)31質量部と、DBP(フタル酸ジブチル)6質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合し、これに重量平均分子量が310,000のポリフッ化ビニリデン(SOLVAY社製、Solef(登録商標)6010)40質量部を添加し、再度ヘンシェルミキサーで混合した。この混合物を2軸混練押し出し機で混合した後、ペレット化した。
得られたペレットを2軸混練押し出し機で溶融混練し(240℃)、得られた溶融混錬物を、押し出し機先端のヘッド内の押し出し口に装着した中空糸成形用紡口の押し出し面にある溶融物押し出し用円環穴から押し出した。同時に、溶融混錬物押し出し用円環穴の内側にある中空部形成流体吐出用の円形穴から、中空部形成流体として窒素ガスを吐出させ、中空糸状押し出し物の中空部内に注入した。中空糸状押し出し物を空走距離20cmにて水浴(40℃)中に導入し、20m/分の速度で巻き取った。
得られた中空糸状物を塩化メチレン中に浸漬して、中空糸状物中のDOP及びDBPを抽出除去した後、乾燥させた。次いで、50質量%エチルアルコール水溶液中に浸漬した後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液中に40℃にて1時間浸漬して、中空糸状物中のシリカを抽出除去した。その後、水洗し、乾燥してポリフッ化ビニリデン製多孔中空糸膜を得た。
(2)膜蒸留用膜モジュールの作製
実施例1では、膜蒸留用膜として中空糸状の多孔質膜を用い、疎水性ポリマーを付着させない状態で、原料液の膜蒸留による濃縮を行った。この膜蒸留用膜は、図1に示した構成の膜蒸留用膜モジュールに充填して使用した。
膜蒸留用膜としては、上記製膜法により得られた内径(ID)0.68mm、外径(OD)1.25mm、厚み(Thickness)0.28mm、ASTM-F316-86に準拠して求めた平均孔径0.21μm、最大孔径0.29μm、および空隙率72%のPVDF製の多孔質中空糸膜を、長さ15cmに切出したものを使用した。
この多孔質中空糸膜の水接触角(Contact angle)を、上述の方法によって測定したところ、103°であった。
上記の膜蒸留用膜を複数本束ねて膜束とし、これをハウジング内に収納し、接着樹脂として熱硬化性のエポキシ樹脂を使用して、遠心接着により膜蒸留用膜の膜束を、ハウジング内に接着固定した。
以上の操作により、実効長さ(接着樹脂中に埋没していない部分の長さ)8cm、膜蒸留用膜の内表面の合計膜面積120cmの、中空糸状の膜蒸留用膜束が収納された膜蒸留用膜モジュールを、3個作製した。
(3)膜蒸留用モジュールの疎水化処理
上記操作で得られた膜蒸留用膜モジュールに対して、以下に示す疎水化処理を行った。
疎水性ポリマーとしては、フロロテクノロジー社製のフッ素樹脂系撥水剤「FS-392B」(ポリマー濃度0.15質量%)を用い、該撥水剤中の溶媒を留去して3倍に濃縮し、ポリマー濃度を0.45質量%に濃縮した後に使用した。
疎水化処理においては、シリンジを用いて上記撥水剤を膜モジュールの入り口から中空糸膜内側に注入した。膜全体が撥水剤で濡れ、中空糸膜内側に注入した撥水剤が中空糸膜外側に染み出るように注入を続けた後(図3参照)、余分な撥水剤を膜モジュールから除去した。その後、中空糸膜内側に25℃の乾燥空気を流して終夜乾燥させて、膜全体が疎水化処理された膜蒸留用膜モジュールを得た。
得られた膜蒸留用膜モジュールのうちの2本は、疎水化処理前および疎水化処理後に液体侵入圧を測定した後、解体して中空糸膜の物性の測定に供した。
液体侵入圧は、図4に示す装置を用いて測定した。まず、20質量%のエタノール水溶液500mLをタンクに入れ、加圧して膜蒸留用膜モジュールの中空糸内側をエタノール水溶液で満たした。続いて、膜蒸留用膜モジュールの中空糸膜外側をエタノール水溶液で満たした。その後、タンクに印加している圧力を、モジュールの中空糸膜外側の水位が上昇する(水溶液が膜を通過する)まで少しずつ上昇させた。モジュールの中空糸膜外側の水位が上昇し始めたときの加圧圧力を、液体侵入圧(LEP)とした。
疎水化処理前後の測定結果を、表3に示す。
Figure 2023016561000013
膜蒸留用膜モジュールの残りの1本は、原料液の濃縮に用いた。
疎水化処理後の中空糸膜の走査型電子顕微鏡(SEM)像を、図5に示す。
図5a)は中空糸膜断面の画像であり、画像の左上が中空糸外側、右下が内側である。図5b)は、図5a)の中空糸膜の内側表面近傍の拡大画像であり、図5c)は、図5(a)の中空糸膜の外側表面近傍の拡大画像である。図5d)は、中空糸膜内表面のSEM像であり、図5e)は、中空糸膜外表面のSEM像である。図5f)は、中空糸膜の断面全体を示すSEM像である。
(2)膜蒸留の実施
上記で作製した膜蒸留用膜モジュールを用いて、図2に示す構成の膜蒸留装置を作製して、膜蒸留を行った。
有価物を含む原料液の模擬液として、以下の構成の溶液を用いた。
溶媒:水
溶質:NaCl 1,000ppm
液量:1,000g
NaClは、有価物の代替であるとともに、膜蒸留用膜がウェッティングした場合の確認手段として、原料液に添加された。
上記の原料液を、原料液貯留タンクに充填した。
原料液は、ポンプを用いて300ml/分の流量で、膜蒸留用膜モジュールの中空糸膜内側を通るように循環させた。このとき、原料液の温度は、膜蒸留用膜モジュールの入側において25℃に維持されるように、温度調節器を用いて調整した。
一方、冷却水1,000gを保持する冷却水貯留タンクを設け、ポンプを用いて300ml/分の流量で膜蒸留用膜モジュールの中空糸膜の外側に流した。このとき、冷却水の温度が、10℃に維持されるように、温度調節器を用いて調整した。また、膜蒸留用膜モジュールを出た冷却水の導電率を常時測定した。冷却水の導電率が500μS/cm以上に上昇した場合には、原料液に添加したNaClが冷却水に混入したことによると考えられる。したがって、この場合には、膜蒸留用膜がウェッティングしたものと判断した。冷却水は、図2に示すとおり、原料液と対向する方向でモジュール内に流入させた。
膜蒸留用膜のフラックスJp(kg/m・h)は、下記数式(15)を用いて求めた。
Figure 2023016561000014
Wpは透過した蒸気の重量(kg)であり、これは一定時間経過前後の冷却水重量W(kg)から初期の冷却水重量Wc0を引いた値に等しい。Aは膜蒸留用膜の膜面積(m)、tは運転時間(h)である。
有価物の透過速度J(g/m・h)は、下記数式(16)を用いて求めた。
Figure 2023016561000015
Δmは冷却水中に含まれる溶質の変化量(kg)であり、これは運転前後における冷却水の重量WおよびWc0と、冷却水中の溶質濃度CおよびCc0とから求めることが出来る。
また、原料液における溶質の濃縮倍率F(倍)は、運転前後における原料液中の溶質濃度CおよびCf0を用い、下記数式(17)により求めた。
Figure 2023016561000016
原料液における溶質の阻止率β(%)については、運転前後における原料液中の溶質重量m(kg)およびmf0(kg)、原料液重量W(kg)およびWf0(kg)、ならびに原料液中の溶質濃度C(%)およびCf0(%)を用い、下記数式(18)により求めた。
Figure 2023016561000017
2時間の運転における平均のフラックスは0.8(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.02倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
《実施例2》
膜蒸留用膜モジュールの入側における原料液温度を35℃としたこと以外は実施例1と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転における平均のフラックスは1.7(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.04倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
《実施例3》
膜蒸留用膜モジュールの入側における原料液温度を45℃としたこと以外は実施例1と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転における平均のフラックスは3.1(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.08倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
《実施例4》
原料液として15質量%のエタノール水溶液を用い、膜蒸留用膜モジュール(100)の入側における原料液温度を24℃としたこと以外は実施例1と同様の条件で膜蒸留を行った。
有機溶媒のフラックスは、有機溶媒の透過量Wos(kg)、運転前後における冷却水重量W(kg)およびWc0(kg)、ならびに冷却水中有機溶媒濃度Cos(%)およびCos0(%)を用い、下記数式(19)により求めた。
Figure 2023016561000018
なお、原料液および冷却水中の溶媒濃度は、ATAGO製屈折率計を用い、原料液および冷却水の屈折率を測定することにより求めた。
2時間の運転後、原料液中のエタノール濃度は12.9質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは1.6(kg/m・h)、水のフラックスは0.6(kg/m・h)、エタノールのフラックスは1.1(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.04倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
Wilson方程式により求めた水の活量係数は1.0、エタノールの活量係数は3.5であった。原料液と冷却水との蒸気圧差は、エタノールが1.7kPa、水が1.7kPaであった。
《実施例5》
膜蒸留用膜モジュールの入側における原料液温度を34℃としたこと以外は実施例4と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転後、原料液中のエタノール濃度は12.2質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは3.2(kg/m・h)、水のフラックスは1.6(kg/m・h)、エタノールのフラックスは1.6(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.08倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
Wilson方程式により求めた水の活量係数は1.0、エタノールの活量係数は3.6であった。原料液と冷却水の蒸気圧差は、エタノールが3.1kPa、水が3.9kPaであった。
《実施例6》
膜蒸留用膜モジュールの入側における原料液温度を45℃としたこと以外は実施例3と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転後、原料液中のエタノール濃度は10.7質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは5.4(kg/m・h)、水のフラックスは3.0(kg/m・h)、エタノールのフラックスは2.4(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.15倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
Wilson方程式により求めた水の活量係数は1.0、エタノールの活量係数は3.6であった。原料液と冷却水の蒸気圧差は、エタノールが5.4kPa、水が7.9であった。
《実施例7》
原料液として15質量%のアセトニトリル水溶液を用いたこと以外は実施例4と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転後、原料液中のアセトニトリル濃度は10.4質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは2.8(kg/m・h)、水のフラックスは0.6(kg/m・h)、アセトニトリルのフラックスは2.2(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.07倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
Wilson方程式により求めた水の活量係数は1.0、アセトニトリルの活量係数は7.9であった。原料液と冷却水の蒸気圧差は、アセトニトリルが6.7kPa、水が1.7kPaであった。
《実施例8》
膜蒸留用膜モジュールの入側における原料液温度を35℃としたこと以外は実施例7と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転後、原料液中のアセトニトリル濃度は9.0質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは4.5(kg/m・h)、水のフラックスは1.6(kg/m・h)、アセトニトリルのフラックスは2.9(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.12倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
Wilson方程式により求めた水の活量係数は1.0、アセトニトリルの活量係数は7.6であった。原料液と冷却水の蒸気圧差は、アセトニトリルが10.1kPa、水が4.0kPaであった。
《実施例9》
膜蒸留用膜モジュールの入側における原料液温度を45℃としたこと以外は実施例8と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転後、原料液中のアセトニトリル濃度は8.3質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは6.5(kg/m・h)、水のフラックスは3.1(kg/m・h)、アセトニトリルのフラックスは3.3(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.18倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
Wilson方程式により求めた水の活量係数は1.0、アセトニトリルの活量係数は7.3であった。原料液と冷却水の蒸気圧差は、アセトニトリルが14.9kPa、水が7.9kPaであった。
《実施例10》
原料液として30質量%のエタノール水溶液を用いたこと以外は実施例4と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転後、原料液中のエタノール濃度は26.9質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは2.4(kg/m・h)、水のフラックスは0.5(kg/m・h)、エタノールのフラックスは1.9(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.06倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
Wilson方程式により求めた水の活量係数は1.0、エタノールの活量係数は2.6であった。原料液と冷却水の蒸気圧差は、エタノールが2.7kPa、水が1.5kPaであった。
《実施例11》
原料液として50質量%のエタノール水溶液を用いたこと以外は実施例4と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転後、原料液中のエタノール濃度は47.6質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは3.4(kg/m・h)、水のフラックスは0.8(kg/m・h)、エタノールのフラックスは2.6(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.09倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
Wilson方程式により求めた水の活量係数は1.2、エタノールの活量係数は1.8であった。原料液と冷却水の蒸気圧差は、エタノールが3.8kPa、水が1.3kPaであった。
《実施例12》
原料液として30質量%のアセトニトリル水溶液を用いたこと以外は実施例4と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転後、原料液中のアセトニトリル濃度は24.2質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは4.7(kg/m・h)、水のフラックスは1.2(kg/m・h)、アセトニトリルのフラックスは3.6(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.13倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
Wilson方程式により求めた水の活量係数は1.1、アセトニトリルの活量係数は4.5であった。原料液と冷却水の蒸気圧差は、アセトニトリルが8.1kPa、水が1.6kPaであった。
《実施例13》
原料液として50質量%のアセトニトリル水溶液を用いたこと以外は実施例4と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転後、原料液中のアセトニトリル濃度は45.6質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは5.3(kg/m・h)、水のフラックスは1.0(kg/m・h)、アセトニトリルのフラックスは4.2(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.14倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
Wilson方程式により求めた水の活量係数は1.3、アセトニトリルの活量係数は2.5であった。原料液と冷却水の蒸気圧差は、アセトニトリルが8.9kPa、水が1.6kPaであった。
《実施例14》
原料液中の溶質として、1000ppmのSodium Dodecyl sulfate(SDS)を用いた、溶媒として50質量%のアセトニトリル水溶液を用いたこと以外は実施例7と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転後、原料液中のアセトニトリル濃度は10.1質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは3.2(kg/m・h)、水のフラックスは0.8(kg/m・h)、アセトニトリルのフラックスは2.4(kg/m・h)、SDSの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.08倍、およびSDSの阻止率は99.9%以上であった。
《比較例1》
膜蒸留用中空糸膜として、疎水化処理後の中空糸膜内側の空隙率40%、中空糸膜外側の空隙率70%、中空糸膜全体の空隙率60%である中空糸膜を使用した以外は実施例7と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転後、原料液中のアセトニトリル濃度は14.1質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは0.57(kg/m・h)、水のフラックスは0.12(kg/m・h)、アセトニトリルのフラックスは0.44(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.01倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
《比較例2》
膜蒸留用中空糸膜として、疎水化処理前の膜を使用した以外は実施例7と同様の条件で膜蒸留を行った。
運転開始10分後、膜のウェッティングが発生し、冷却水中の導電率が500μS/cm以上になったため、運転を終了した。
《比較例3》
膜蒸留用中空糸膜の疎水化処理として、疎水性ポリマー濃度5.5質量%の撥水剤を使用した以外は実施例7と同様の条件で膜蒸留を行った。
2時間の運転後、原料液中のアセトニトリル濃度は13.7質量%であった。2時間の運転における平均の全体フラックスは0.82(kg/m・h)、水のフラックスは0.15(kg/m・h)、アセトニトリルのフラックスは0.67(kg/m・h)、NaClの透過は0.01(g/m・h)以下、濃縮倍率1.02倍、およびNaClの阻止率は99.9%以上であった。
以上の結果を、表4~10にまとめた。
Figure 2023016561000019
Figure 2023016561000020
Figure 2023016561000021
Figure 2023016561000022
Figure 2023016561000023
Figure 2023016561000024
Figure 2023016561000025
表中の略語は、それぞれ、以下の意味である。
〈中空糸膜構成材料〉
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
〈疎水性ポリマー〉
FS-392B:フロロテクノロジー社製、フッ素樹脂系撥水剤「FS-392B」
〈溶媒(b)〉
AcCN:アセトニトリル
IPA:イソプロパノール
また、
実施例1~9の原料液の入り温度と、原料液のフラックス(全溶媒の合計フラックス)との関係を表すグラフを図6に;
エタノール、アセトニトリル、および水の、各温度における蒸気圧(計算値)を表すグラフを図7に;
実施例1~9の運転開始時における、原料液の入り温度と、エタノール、アセトニトリル、および水の蒸気圧差(計算値)表すグラフを図8に;
実施例4、7、および10から13における運転開始時の、原料液中の有機溶媒濃度と、原料液のフラックス(全溶媒の合計フラックス)との関係を表すグラフを図9に;
実施例4、7、および10~13における運転開始時の、原料液中の有機溶媒濃度と各溶媒のフラックスとの関係を表すグラフを図10に;
実施例4~13おける運転開始時の、各溶媒の蒸気圧差とフラックスとの関係を表すグラフを図13に;
それぞれ示す。

Claims (10)

  1. 溶媒および溶質を含有する原料液と、冷却水とを、膜蒸留用膜を介して接触させ、前記原料液中の前記溶媒を、蒸気の状態で前記膜蒸留用膜を通過させ、前記冷却水側に移動させる膜蒸留法を用いる、原料液濃縮システムにおいて、
    前記膜蒸留用膜として、表面の水接触角が90°以上であり、平均孔径が0.02μm以上0.5μm以下の範囲であり、かつ、空隙率が60%以上90%以下である多孔質膜を用い、
    前記膜蒸留用膜は、少なくとも一部に疎水性ポリマーが付着している中空糸膜であり、
    前記中空糸膜の内側の空隙率は外側の空隙率より大きい、
    原料液濃縮システム。
  2. 溶媒および溶質を含有する原料液と、冷却水とを、膜蒸留用膜を介して接触させ、前記原料液中の前記溶媒を、蒸気の状態で前記膜蒸留用膜を通過させ、前記冷却水側に移動させる膜蒸留法を用いる、原料液濃縮システムにおいて、
    前記膜蒸留用膜として、表面の水接触角が90°以上であり、平均孔径が0.02μm以上0.5μm以下の範囲であり、かつ、空隙率が60%以上90%以下である多孔質膜を用い、
    前記膜蒸留用膜は、少なくとも一部に疎水性ポリマーが付着している中空糸膜であり、
    前記中空糸膜の前記中空糸膜の、濃度20重量パーセントのエタノール水溶液に対する液体侵入圧が0.1MPa以上0.5MPa以下である、
    原料液濃縮システム。
  3. 溶媒および溶質を含有する原料液と、冷却水とを、膜蒸留用膜を介して接触させ、前記原料液中の前記溶媒を、蒸気の状態で前記膜蒸留用膜を通過させ、前記冷却水側に移動させる膜蒸留法を用いる、原料液濃縮システムにおいて、
    前記膜蒸留用膜として、表面の水接触角が90°以上であり、平均孔径が0.02μm以上0.5μm以下の範囲であり、かつ、空隙率が60%以上90%以下である多孔質膜を用い、
    前記膜蒸留用膜は、少なくとも一部に疎水性ポリマーが付着している中空糸膜であり、
    前記疎水性ポリマーは、ポリマー濃度0.2~5.0質量%の溶液を前記中空糸膜に浸漬させた後に乾燥されることにより付着している、
    原料液濃縮システム。
  4. 前記疎水性ポリマーが、側鎖にフッ素原子含有基を持つポリマーであり、
    前記フッ素原子含有基が、(パー)フルオロアルキル基、(パー)フルオロポリエーテル基、アルキルシリル基、フルオロシリル基から選ばれる少なくとも1つである、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
  5. 前記膜蒸留用膜の材料が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、およびポリクロロトリフルオロエチレンから成る群から選ばれる少なくとも1つの樹脂を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
  6. 前記溶媒が、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールから成る群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
  7. 前記溶質の数平均分子量が100~50,000であり、
    前記溶質が界面活性効果を有する化合物である、
    請求項1~6のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
  8. 前記原料液の温度が、5℃以上50℃以下の範囲に調整されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
  9. 溶媒および溶質を含有する原料液と、冷却水とを、膜蒸留用膜を介して接触させ、前記原料液中の前記溶媒を、蒸気の状態で前記膜蒸留用膜を通過させ、前記冷却水側に移動させる膜蒸留法を用いる、原料液濃縮システムにおいて、
    前記原料液に含まれるすべての溶媒の蒸気圧、および前記冷却水に含まれるすべての溶媒の蒸気圧を求め、
    前記原料液中の各溶媒の蒸気圧から、前記冷却水中の当該溶媒の蒸気圧を引いた蒸気圧差から、前記当該溶媒が蒸気の状態で前記膜蒸留用膜を通過する速度を求めることを含み、
    前記当該溶媒の蒸気圧が、前記当該溶媒のモル濃度および温度から求めた蒸気分圧に、前記当該溶媒のモル濃度および温度から求めた活量係数を掛けることによって求められる、
    原料液濃縮システムの性能予測方法。
  10. 膜蒸留用膜を具備し、膜蒸留法によって原料液の濃縮を行うための濃縮装置であって、
    前記膜蒸留用膜として、膜表面の水接触角が90°以上であり、平均孔径が0.02μm以上0.5μm以下の範囲であり、かつ、空隙率が60%以上90%以下である膜を用いる、
    濃縮装置。
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