JP2024002389A - タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】氷雪路面におけるグリップ性能の向上を図る。【解決手段】トレッド部を備えたタイヤであって、トレッド部を形成するキャップゴム層が、スチレン量25質量%以下のスチレンブタジエンゴム(SBR)を、ゴム成分100質量部中に40質量部以下含有し、温度-30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(-30℃tanδ)が、0.10以上であるゴム組成物から形成されており、トレッド部の厚みが、10mm以上、20mm以下であるタイヤ。【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤに関する。
タイヤには、安全性の面から高い制動性能(グリップ性能)が要求され、グリップ性能の向上に関して、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1~3)。
特開2011-93386号公報 特開2013-79017号公報 特開2016-37100号公報
しかしながら、上記した従来技術に基づいて製造されたタイヤでは、氷雪路面におけるグリップ性能が、未だ、十分とは言えず、さらなる改善が強く望まれている。
そこで、本発明は、氷雪路面におけるグリップ性能の向上を図ることを課題とする。
本発明は、
トレッド部を備えたタイヤであって、
前記トレッド部を形成するキャップゴム層が、
スチレン量25質量%以下のスチレンブタジエンゴム(SBR)を、ゴム成分100質量部中に40質量部以下含有し、
温度-30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(-30℃tanδ)が、0.10以上であるゴム組成物から形成されており、
前記トレッド部の厚みが、10mm以上、20mm以下であることを特徴とするタイヤである。
本発明によれば、氷雪路面におけるグリップ性能の向上を図ることができる。
[1]本発明に係るタイヤの特徴
最初に、本発明に係るタイヤの特徴について説明する。
1.概要
本発明に係るタイヤは、トレッド部を備えたタイヤであって、トレッド部を形成するキャップゴム層が、スチレン量25質量%以下のSBRを、ゴム成分100質量部中に40質量部以下含有し、温度-30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(-30℃tanδ)が、0.10以上であるゴム組成物から形成されている。そして、トレッド部の厚みが、10mm以上、20mm以下である。
なお、ここにいうキャップゴム層は、トレッド部の最外層を形成するキャップゴム層に限られず、トレッド表面から内側に向かって5mm以内に2層以上ある場合は、少なくともいずれか1つの層が、前記ゴム組成物の要件を満たしていればよい。
これらの特徴を有することにより、後述するように、氷雪路面におけるグリップ性能の向上を図ることができる。
2.本発明に係るタイヤにおける効果発現のメカニズム
本発明に係るタイヤにおける上記した効果発現のメカニズムについては、以下のように考えられる。
上記したように、本発明に係るタイヤのキャップゴム層は、スチレン量25質量%以下のSBRを、ゴム成分100質量部中に40質量部以下含有している。
スチレン量が少ない、具体的には、スチレン量25質量%以下のSBRは、ガラス転移温度(Tg)が低いため、このような低スチレン量SBRをゴム成分中に含有させることにより、低温でもゴムの柔らかさを維持することができ、氷雪路面に対する追従性がよくなる。
同時に、スチレン量が少ない(スチレン量25質量%以下)SBRを40質量部以下含有することによって、ゴム表面に微小なスチレンドメインを適切に形成させることができるため、路面に対して食い込み易くなる。
また、微小なスチレンドメインの存在は、他のポリマー分子鎖との間で摩擦を生じ、低温下においても適度に発熱することができるため、氷雪路面上での摩擦を生じ易くすることができると考えられる。そして、微小なスチレンドメインにより、氷雪路面に対する引っ掻き効果も得ることができる。
なお、前記したスチレン量は、20質量%以下であるとより好ましく、15質量%以下であるとさらに好ましい。一方、下限としては、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であるとより好ましく、6質量%以上であるとさらに好ましい。
そして、本発明において、「スチレン量25質量%以下のSBRを、ゴム成分100質量部中に40質量部以下含有」とは、ゴム成分100質量部中に占めるSBR量が40質量部以下であり、SBR全体におけるスチレン量が25質量%以下であることを示している。
即ち、ゴム成分中にスチレン含有ポリマー(SBR)が単独で含有されている場合には、そのスチレン量が25質量%以下であることを示し、ゴム成分中にスチレン含有ポリマー(SBR)が複数含有されている場合には、それぞれのポリマー中のスチレン量(質量%)と、そのポリマーのゴム成分100質量部に対する配合量(質量部)との積の総和により求められたスチレン量が25質量%以下であることを示している。
より具体的には、ゴム成分100質量部中に、スチレン量S1質量%のSBR1(X1質量部)とスチレン量S2質量%のSBR2(X2質量部)とが含有されている場合、{(S1×X1)+(S2×X2)}/(X1+X2)の式から算出されたスチレン量が、25質量%以下であることを示している。
また、加硫後のゴム組成物においては、アセトン抽出後のゴム成分中に含まれるスチレン量を固体核磁気共鳴(固体NMR)やフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)により求めることによっても、算出することが可能である。
本発明においては、さらに、キャップゴム層を形成するゴム組成物の、温度-30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(-30℃tanδ)が、0.10以上である。
損失正接tanδは、エネルギーの吸収性能を示す粘弾性パラメータであり、値が大きいほどエネルギーを吸収して、熱に変換することができる。本発明においては、氷雪路面よりも低い温度の-30℃tanδを、0.10以上と大きくしているため、低温雰囲気であっても、転動時のエネルギーを十分に吸収して熱に変換し、発熱性を確保することができ、グリップ性能が向上する。0.50以上であるとより好ましく、0.65以上であるとさらに好ましい。上限は特に限定されないが、0.85以下であることが好ましく、0.80以下であるとより好ましく、0.75以下であるとさらに好ましい。
なお、氷雪路面の雰囲気温度が0℃付近であることを考慮すると、温度0℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(0℃tanδ)は、0.30以上であることが好ましく、0.35以上であるとより好ましく、0.45以上であるとさらに好ましい。0℃tanδが高いほど、前記した氷雪路面でのエネルギーロスが大きくなり、発熱性が向上するため、グリップ性能が向上する。
一方、トレッド部の発熱が過度になると、氷が溶けてスリップを招く恐れがあるため、ある程度発熱した状態では、tanδを低くしておくことが好ましく、例えば、温度30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(30℃tanδ)としては、0.20以下であることが好ましく、0.13以下であるとより好ましい。
上記において、損失正接(tanδ)は、例えば、GABO社製「イプレクサー(登録商標)」などの粘弾性測定装置を用いて、測定することができる。
なお、上記した-30℃tanδ、0℃tanδおよび30℃tanδは、後述する各配合材料の含有量を適宜変化させることにより、調整することができる。例えば、-30℃tanδであれば、SBR中のスチレン含有量を多くする、ゴム成分中のスチレン含有量を多くする、樹脂成分量を多くすることなどにより高めることができる。逆に、SBR中のスチレン含有量を少なくする、ゴム成分のスチレン含有量を少なくする、樹脂成分量を少なくすることなどにより低下させることができる。0℃tanδ、30℃tanδについても、SBR中のスチレン量を多くする、ゴム成分中のスチレン含有量を多くする、樹脂成分量を多くする、シリカ、カーボンブラックなどの充填剤量を多くすることなどにより高めることができる。逆に、SBR中のスチレン含有量を少なくする、ゴム成分中のスチレン含有量を少なくする、樹脂成分量を少なくする、シリカ、カーボンブラック量を少なくすることなどにより低下させることができる。
さらに、本発明に係るタイヤにおいては、上記したように、トレッド部の厚みを、10mm以上、20mm以下としている。これにより、トレッド部全体が撓んで変形し易くなり、接地性が向上するため、グリップ性能を向上させることができる。12mm以上、18mm以下であるとより好ましく、14mm以上、16mm以下であるとさらに好ましい。
前記したトレッド部の厚みとは、タイヤ半径方向断面におけるタイヤ赤道面上でのトレッド部の厚みを指し、単一のゴム組成物でトレッド部が形成される場合においては、当該ゴム組成物の厚みであり、後述する複数のゴム組成物の積層構造で形成される場合においては、これらの層の全厚を指す。
タイヤ赤道面上に溝を有する場合においては当該溝のタイヤ半径方向最外部の端点を繋いだ直線とタイヤ赤道面の交点から、トレッド部のタイヤ半径方向最内部の界面までの厚みを指す。
なお、トレッド部とはタイヤの接地面を形成する領域の部材であるが、カーカス、ベルト層、ベルト補強層などの繊維材料等を含む部材よりタイヤ半径方向外側の部分を指す。前記したトレッド部の厚みは、タイヤを半径方向に切り出した断面において、ビード部を正規リム幅に合わせた状態にすることで測定することが可能である。
上記において、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association,Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
以上のように、本発明に係るタイヤにおいては、接地性を高めつつ、スチレンドメインによる氷や雪への食い込み及び摩擦性を得ることができるため、氷雪路面におけるグリップ性能を向上させることができると考えられる。
[2]本発明に係るタイヤにおけるより好ましい態様
本発明に係るタイヤは、以下の態様を採ることにより、さらに大きな効果を得ることができる。
1.キャップゴム層のガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度(Tg)が高いゴム組成物を用いて、キャップゴム層を形成した場合、走行温度付近において、トレッド部が硬くなるため、路面への追従性が悪化する恐れがある。このため、氷雪路面におけるグリップ性能の向上を図るためには、ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)を低くして、低温域でのゴムの硬度を低下させることが好ましく、具体的には、-40℃以下であることが好ましい。
上記したゴム組成物のガラス転移温度(Tg)は、GABO社製のイプレクサーシリーズなどの粘弾性測定装置を用い、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%及び昇温速度2℃/minの条件下で測定されたtanδの温度分布曲線を基にして求めることができ、本発明の場合には、測定された温度分布曲線の-70℃以上、30℃以下の範囲における最も大きいtanδ値に対応する温度をガラス転移点(Tg)とする。なお、-70℃以上、30℃以下の範囲内に、最も大きいtanδ値の点が2点以上ある場合は、最も温度が低い点をTgとする。例えば、本発明において、tanδの最大値が-70℃以上、30℃以下の範囲内にあれば、上記の定義により、その最大値を示す温度がTgとなる。また、例えば、-70℃以上、30℃以下の範囲内では温度上昇に従いtanδが漸減するなど、tanδの最大値を示す温度が-70℃となる温度分布曲線が得られた場合、上記の定義により、ガラス転移温度(Tg)は、-70℃となる。
また、ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)は、前記したtanδと同様に、後述する各配合材料の含有量を適宜変化させることにより、調整することができる。例えば、ゴム成分中のSBR量を多くする、SBR成分内のスチレン含有量を多くする、樹脂成分量を多くする、軟化点の高い樹脂成分を使用することなどにより、高めることができる。逆に、ゴム成分中のSBR量を少なくする、SBR成分内のスチレン含有量を少なくする、樹脂成分量を少なくする、軟化点の低い樹脂成分を使用することなどにより低下させることができる。
2.キャップゴム層の-30℃におけるtanδとトレッドの厚みの関係
前述の通り、本発明ではトレッドの厚みを10mm以上とすることにより、トレッド表面での接地性を得やすくしている。そのような中でも-30℃におけるキャップゴムのtanδとトレッドの厚みT(mm)とが、-30℃tanδ/T>0.04の関係を満たす様に、トレッドの厚みに対して、キャップゴム層の低温でのtanδを高めることにより、接地性を高めつつ、より一層大きな表面グリップ性能を得やすくなる。
3.トレッド部の複層化
本発明において、トレッド部は、キャップゴム層の1層のみで形成されていてもよく、キャップゴム層の内側にベースゴム層を設けて、2層にされていてもよく、また、3層でもよく、4層以上であってもよい。この場合、トレッド部全体におけるキャップゴム層の厚みは、10%以上であることが好ましい。これにより、トレッド部表面と路面との間に十分な摩擦を発生させてタイヤ内部に十分に摩擦力を伝達することが可能となるため、氷雪路面におけるグリップ性能を十分に向上させることができる。なお、トレッド部表面と路面との間における摩擦の発生を考慮すると、トレッド部全体におけるキャップゴム層の厚みは、70%以上であるとより好ましい。
キャップゴム層の厚みおよびベースゴム層の厚みは、前記したように、トレッド部の厚みにおけるキャップゴム層の厚みおよびベースゴム層の厚みを合計することにより算出することができる。
なお、この場合には、ベースゴム層の30℃tanδをキャップゴム層の30℃tanδよりも大きくすることが好ましい。前述の通り、キャップゴム層の30℃tanδは、トレッド表面温度が高くなり、路面上の氷を溶かしスリップを発生させることを抑制する観点から低いことが望まれる。このことは、内部に存在するベースゴム層の発熱性を高めることになり、タイヤ内部ではエネルギーロスを生じ易くし、これによりトレッド部全体でエネルギーロスを発生させやすくすることができるため、優れたグリップ性能が得られると考えられる。
そして、複層化されたトレッド部の場合、ベースゴム層の温度30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%、変形モード:伸長で測定された複素弾性率が、同様に測定されたキャップゴム層の-30℃の複素弾性率よりも大きいことが好ましい。なお、これらの複素弾性率は、例えば、GABO社製「イプレクサー(登録商標)」などの粘弾性測定装置を用いて、測定することができる。
複素弾性率は、ゴム層の剛性を示すパラメータである。ベースゴム層などのタイヤ内部は表面よりも走行時に温度が高くなると考えられる。そのため、ベースゴム層の30℃の複素弾性率をキャップゴム層の-30℃の複素弾性率よりも大きくすることにより、走行時、トレッド表面が路面に追従した後、内部のベースゴム層でトレッドゴムが過度に変形することを抑制し、反力を生じ易くすることができるため、優れたグリップ性能が得られる。
4.キャップゴム層におけるシリカの含有
本発明において、キャップゴム層を形成するゴム組成物には、シリカを含有することが好ましい。シリカを含有することにより、フレキシブルに運動する微小なスチレンドメインとシリカとが摩擦を生じ易くなり、さらに発熱性を高めて、氷雪路面におけるグリップ性能を向上させることができる。
具体的な含有量としては、ゴム成分100質量部に対して、50質量部超であることが好ましく、75質量部超であるとより好ましく、85質量部以上であるとさらに好ましい。上限は特に限定されないが、ゴム組成物の混練加工性や成形加工性を考慮すると、150質量部以下であることが好ましく、130質量部以下であるとより好ましく、110質量部以下であるとさらに好ましい。
そして、本発明において、シリカの粒子径(平均一次粒子径)としては、ポリマーとの摩擦のしやすさなどを考慮すると、17nm以下であることが好ましい。
なお、平均一次粒子径は、タイヤから切り出したゴム組成物から取り出したシリカを電子顕微鏡(TEM)などを用いて直接観察し、得られたそれぞれのシリカの粒子の面積から、等断面積径を算出し、平均値を求めることにより算出することができる。
5.キャップゴム層における樹脂成分の含有
本発明において、キャップゴム層を形成するゴム組成物には、樹脂成分が含有されていることが好ましい。
ゴム組成物に樹脂成分が含有されることにより、樹脂成分の粘着性によって路面に対するグリップ性を確保することができると考えられる。
好ましい樹脂成分としては、後述するロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、C5樹脂、C9樹脂、C5C9樹脂、アクリル系樹脂などが好ましく、これらの内でも、α-メチルスチレンなどのスチレン系樹脂がより好ましい。そして、ゴム成分100質量部に対する含有量としては、5質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であるとより好ましく、25質量部以上であるとさらに好ましい。
6.キャップゴム層のアセトン抽出分(AE)
本発明において、キャップゴム層のアセトン抽出分(AE)は、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であるとより好ましく、11質量%以上であるとさらに好ましい。一方、上限としては特に限定されないが、17質量%以下であることが好ましく、14質量%以下であるとより好ましく、15質量%以下であるとさらに好ましい。
アセトン抽出分(AE)は、ゴム組成物において、軟化剤などの量を示す指標と考えることができ、この量が多いほど、ゴム分子がフレキシブルに動きやすく路面に対する追従性が良いと考えることができる。このため、キャップゴム層において上記したように、AE量をある程度多くした場合、タイヤが路面と接する面積を十分に確保して、優れたグリップ性能を安定して発揮することができる。
なお、アセトン抽出分(AE)の測定は、JIS K 6229:2015に準拠して行うことができる。具体的には、測定部位から切り出した加硫ゴム試験片を所定の時間、アセトンに浸漬して、試験片の質量減少率(%)を求めることにより、AE(質量%)を得ることができる。
また、前記したアセトン抽出分は、ゴム組成物内の可塑剤の配合比率を変更することにより、適宜変更することが可能である。
7.ゴム成分中のスチレン量とランド比
(1)ランド比
本発明に係るタイヤにおいては、正規リムに組み込み、正規内圧としたタイヤのトレッド部におけるランド比が、55%以上であることが好ましく、60%以上がより好ましく、63%以上がさらに好ましい。
「ランド比」は、トレッド部の表面に配された溝部を全て埋めた仮想の接地面に対する、実際の接地面の比率であり、ランド比が大きいと、路面と接する面積が大きくなるため、十分なグリップ性能を安定して得ることができる。
なお、ランド比の上限は特に限定されないが85%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、75%以下がさらに好ましい。
上記したランド比は、正規リム、正規内圧、正規荷重条件下における接地形状から求めることができる。
具体的には、タイヤを正規リムに組み付け、正規内圧を加え、25℃で24時間静置した後、タイヤトレッド表面に墨を塗り、正規荷重を負荷して厚紙に押しつけ(キャンバー角は0°)、紙に転写させることにより、接地形状を得ることができるため、タイヤを周方向に72°ずつ回転させて、5か所で転写させる。すなわち、5回、接地形状を得る。このとき、5つの接地形状について、その接地形状の輪郭の溝で途切れた部分を滑らかに繋ぎ、得られる形状を仮想接地面とする。
そして、ランド比は、(厚紙に転写された5つの接地形状(墨部分)の平均面積/5つの接地形状から得られた仮想接地面の面積の平均値)×100(%)から求めることができる。
なお、上記した「正規内圧」とは、前記したタイヤが基づいている規格を含む規格体系における各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を指し、「正規リム」の場合と同様に、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(規格に定められているもの)の正規内圧(但し、250KPa以上)を指す。なお、250KPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指す。
そして、「正規荷重」とは、前記したタイヤが基づいている規格を含む規格体系における各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、タイヤに負荷されることが許容される最大の質量を指しており、JATMAであれば最大負荷能力、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を指し、前記した「正規リム」や「正規内圧」の場合と同様に、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合は、以下の計算により、正規荷重Wを求める。
V={(Dt/2)-(Dt/2-Ht)}×π×Wt
=0.000011×V+175
:正規荷重(kg)
V:タイヤの仮想体積(mm
Dt:タイヤ外径Dt(mm)
Ht:タイヤの断面高さ(mm)
Wt:タイヤの断面幅(mm)
(2)ゴム成分中のスチレン量
また、本発明において、ゴム成分100質量部中に含まれるスチレン量は、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であるとより好ましく、10質量%以下であるとさらに好ましい。また、下限としては特に限定されないが、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であるとより好ましく、4質量%以上であるとさらに好ましい。
上記した「ゴム成分中のスチレン量」とは、ゴム成分100質量部中に含まれるゴム成分由来のスチレン量を差し、樹脂成分などのアセトンに可溶な成分によるスチレン成分は除いた量である。ゴム成分が複数のスチレン含有ポリマーを有する場合はそれぞれのスチレン含有量とポリマーの含有量の積から求めることができる。例えば、ゴム成分100質量部中、スチレン含有量A1のSBRをX1質量部、スチレン含有量A2のSBRをX2質量部含む場合は、(A1×X1+A2×X2)/100として求めることができる。
(3)ゴム成分中のスチレン量とランド比との関係
さらに、本発明において、前記したランド比(%)に対するゴム成分中のスチレン量(質量%)の比は、0.10以下であることが好ましく、0.08以下であることがより好ましい。
ゴム成分中のスチレン部はスチレン部由来のドメインを形成し、これらが路面に対して食い込むことで氷雪路面でグリップ性能を向上させることができると考えられるが、トレッド部表面に過度にスチレンドメインが形成されると、かえって路面に対して食い込みにくくなると考えられる。そのため、実際の接地面積比率であるランド比に対するゴム成分中のスチレン量を一定以下とすることにより、氷雪路面にスチレンドメインが食い込みやすくなり、グリップ性能が向上しやすくなると考えられる。
8.ゴム成分中のスチレン量とトレッド部の厚み
本発明に係るタイヤにおいては、前記したゴム成分中のスチレン量(質量%)とトレッドの厚み(mm)の積が100以下であることが好ましく、80以下であるとより好ましく、60以下であるとさらに好ましい。一方、下限としては特に限定されないが、10以上であることが好ましく、15以上であるとより好ましく、20以上であるとさらに好ましい。
ゴム成分内で形成されたスチレンドメインは他のゴム分子鎖との間で摩擦を生じることで、発熱を得ることが期待できるが、過度に生じていると、転動時に過度に発熱し、トレッド表面温度を高めることが懸念される。そのため、トレッド部の厚みとの積を一定以下とすることにより、トレッド部の熱を逃がしやすくし、蓄熱を抑制することができるため、氷雪路面上でのグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。
9.扁平率
扁平率はタイヤ断面幅に対する断面高さであり、この比率が小さいほどトレッド部で得られた摩擦に対して、タイヤ幅方向に変形する部分の割合を小さくし、力を伝達しやすくなるため、グリップ性能が向上する。その一方、扁平率が低くなると、サイド部でのたわみ量が小さくなるため、乗り心地性能の悪化を招く恐れがある。
これらの点を考慮すると、本発明に係るタイヤにおいて、具体的な扁平率としては、30%以上、60%以下であることが好ましい。
なお、上記した扁平率(%)は、内圧を250kPaとしたときのタイヤの断面高さHt(mm)と断面幅Wt(mm)とタイヤ外径Dt(mm)とリム径R(mm)を用いて、下式により求めることができる。
扁平率(%)=(Ht/Wt)×100(%)
Ht=(Dt-R)/2
[3]実施の形態
以下、実施の形態に基づいて、本発明を具体的に説明する。
1.ゴム組成物
本発明に係るタイヤにおいて、キャップゴム層を形成するゴム組成物は、以下に記載するゴム成分、充填剤、軟化剤、加硫剤および加硫促進剤などの各種配合材料について、その種類や量を、適宜、調整することにより得ることができる。
(1)配合材料
(a)ゴム成分
ゴム成分としては特に限定されず、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)などのジエン系ゴム、ブチルゴムなどのブチル系ゴム、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンブタジエンブロック共重合体(SB)などの熱可塑性エラストマーなど、タイヤの製造に一般的に用いられるゴム(ポリマー)を用いることができる。これらのゴム成分は後述の通り、変性されていても良い。また、これらのゴム成分に予めオイル、樹脂、液状ゴムなどの可塑剤成分で伸展した伸展ゴムを用いても良い。
本発明においては、これらの中でも、ゴム成分中にスチレンを含ませる点から、SBR、SBS、SBなどのスチレン系のポリマーのいずれか1種を含み、SBRを含むことが好ましい。また、これらのスチレン系ポリマーと他のゴム成分を併用してもよく、例えば、SBRとBRの併用、SBRとBRとイソプレン系ゴムの併用が好ましい。
(イ)SBR
SBRの重量平均分子量は、例えば、10万超、200万未満である。そして、本発明においては、前記したように、SBR成分中におけるスチレン量を25質量%以下とする。SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン含量)は、例えば、5質量%超、70質量%未満である。なお、SBRのビニル含量とは、SBR成分内におけるブタジエン部全体に対する1,2-結合ブタジエン含量のことを指す。また、SBRの構造同定(スチレン量、ビニル含量の測定)は、例えば、日本電子(株)製JNM-ECAシリーズの装置を用いて行うことができる。
本発明において、ゴム成分100質量部中のSBRの含有量は、前記したように、40質量部以下であるが、35質量部以下であるとより好ましく、30質量部以下であるとさらに好ましい。一方、下限としては、15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であるとより好ましく25質量部以上であるとさらに好ましい。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよい。また、SBR中のブタジエン部を水素添加させた水添SBRを用いてもよく、水添SBRはSBR中のBR部を後発的に水素添加処理して得てもよく、スチレン、エチレン、ブタジエンを共重合させて同様の構造を得てもよい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖および末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。
また、変性SBRとして、例えば、下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたSBRを使用できる。
Figure 2024002389000001
なお、式中、R、RおよびRは、同一または異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)またはこれらの誘導体を表す。RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはアルキル基を表す。RおよびRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性SBRとしては、溶液重合のスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたSBR(特開2010-111753号公報に記載の変性SBR等)を使用できる。
、RおよびRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。RおよびRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、RおよびRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
上記変性剤の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、変性SBRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性SBRも使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基および/または置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基および/または置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドンN-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。なお、SBRは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ロ)BR
本発明において、ゴム組成物には、BRを含んでもよい。この場合、ゴム成分100質量部中のBRの含有量は、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であるとより好ましい。一方、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であるとより好ましい。
BRの重量平均分子量は、例えば、10万超、200万未満である。BRのビニル含量は、例えば1質量%超、30質量%未満である。BRのシス量は、例えば1質量%超、98質量%未満である。BRのトランス量は、例えば1質量%超、60質量%未満である。
BRとしては特に限定されず、高シス含量(シス含量が90%以上)のBR、低シス含量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよく、変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
(ハ)イソプレン系ゴム
本発明において、ゴム組成物には、イソプレン系ゴムを含んでもよい。この場合、ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量は、30質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であるとより好ましい。一方、70質量部以下であることが好ましく、60質量部未満であるとより好ましい。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。
NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20、SVR-L等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(ニ)その他のゴム成分
また、その他のゴム成分として、ニトリルゴム(NBR)などのタイヤの製造に一般的に用いられるゴム(ポリマー)を含んでもよい。
(b)ゴム成分以外の配合材料
(イ)充填剤
本実施の形態において、ゴム組成物は、充填剤を含有することが好ましい。具体的な充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどを挙げることができる。
(i―1)シリカ
本発明において、ゴム組成物には、シリカを含むことが好ましく、シリカと共にシランカップリング剤を含有することが好ましい。
シリカのBET比表面積は、良好な耐久性能が得られる観点から140m/g超が好ましく、160m/g超がより好ましい。一方、良好な高速走行時の転がり抵抗性を得られる観点からは250m/g未満が好ましく、220m/g未満であることがより好ましい。なお、上記したBET比表面積は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定されるNSAの値である。
本発明において、外側キャップゴム層を形成するゴム組成物には、前記したように、粒子径が17nm以下のシリカを使用することが好ましく、小粒子径のシリカを使用することにより、ポリマー(スチレンドメイン)との接触頻度を上げて、グリップ性能を向上させることができる。下限は特に限定されないが、混合時の分散性の観点から10nm以上であると好ましい。
充填補強剤としてシリカを用いる場合、ゴム成分100質量部に対して、50質量部超であると好ましく、75質量部超であるとより好ましく、85質量部以上であるとさらに好ましい。なお、前記したように、ゴム組成物の混練加工性や成形加工性を考慮すると、150質量部以下であることが好ましく、130質量部以下であるとより好ましく、110質量部以下であるとさらに好ましい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。また、含水ガラスなどを原料としたシリカや、もみ殻などのバイオマス材用を原料としたシリカなどを用いてもよい。
シリカとしては、例えば、エボニックインダストリーズ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
(i-2)シランカップリング剤
充填補強剤としてシリカを用いる場合、ゴム組成物は、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、エボニックインダストリーズ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、例えば、3質量部超、25質量部未満である。
(ii)カーボンブラック
本発明において、ゴム組成物には、補強性の観点からカーボンブラックを含むことが好ましい。
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの具体的な含有比率としては、2質量部以上であることが好ましく、4質量部以上であるとより好ましい。一方、10質量部以下であることが好ましく、6質量部以下であるとより好ましい。
カーボンブラックとしては特に限定されず、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCFおよびECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FTおよびMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPCおよびCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック)などを挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックのCTAB比表面積(Cetyl Tri-methyl Ammonium Bromide)は、130m/g以上が好ましく、160m/g以上であるとより好ましく、170m/g以上であるとさらに好ましい。一方、250m/g以下が好ましく、200m/g以下であるであるとより好ましい。なお、CTAB比表面積は、ASTM D3765-92に準拠して測定される値である。
具体的なカーボンブラックとしては特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上述のような鉱物油を原料としたカーボンブラック以外にリグニンなどを原料としたカーボンも適宜用いても良い。
(iii)その他の充填剤
ゴム組成物には、必要に応じて、上記したシリカやカーボンブラックの他に、タイヤ工業において一般的に用いられている、例えば、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ、バイオ炭(BIO CHAR)等の充填剤をさらに含有してもよい。これらの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、200質量部未満である。
(ロ)可塑剤成分
ゴム組成物は、ゴムを軟化させる成分として、オイル、液状ゴム、および樹脂を可塑剤成分として含んでもよい。なお、可塑剤成分は、加硫ゴム中からアセトンにより抽出可能な成分である。可塑剤成分の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であるとより好ましい。一方、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であるとより好ましい。なお、ゴム成分として伸展ゴムが使用されている場合には、伸展成分量も、可塑剤の含有量に含まれるものである。そして、例えば、オイル伸展であれば、その伸展オイルは後述のオイル量にも含まれるものである。
(i)オイル
オイルとしては、例えば、鉱物油(一般にプロセスオイルと言われる)、植物油脂、またはその混合物が挙げられる。鉱物油(プロセスオイル)としては、例えば、MES(Mild Extract Solvated)、DAE(Distillate Aromatic Extract)、TDAE(Treated Dstillate Aromatic Extract)、TRAE(Treated Residual Aromatic Extract)、RAE(Residual Aromatic Extract)などのパラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合用のミキサーや自動車用エンジンなどの潤滑油として用いられた後の廃オイルや、廃食用油などを適宜用いてもよい。
具体的なプロセスオイル(鉱物油)としては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、ENEOS(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
(ii)液状ゴム
可塑剤として挙げた液状ゴムとは、常温(25℃)で液体状態の重合体であり、加硫後のタイヤからアセトン抽出により抽出可能なゴム成分である。液状ゴムとしては、ファルネセン系ポリマー、液状ジエン系重合体及びそれらの水素添加物等が挙げられる。
ファルネセン系ポリマーとは、ファルネセンを重合することで得られる重合体であり、ファルネセンに基づく構成単位を有する。ファルネセンには、α-ファルネセン((3E,7E)-3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン)やβ-ファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)などの異性体が存在する。
ファルネセン系ポリマーは、ファルネセンの単独重合体(ファルネセン単独重合体)でも、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合体(ファルネセン-ビニルモノマー共重合体)でもよい。
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。
液状ジエン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、例えば、1.0×10超、2.0×10未満である。なお、本明細書において、液状ジエン系重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
液状ゴムの含有量(液状ファルネセン系ポリマー、液状ジエン系重合体等の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1質量部超、100質量部未満である。
液状ゴムとしては、例えば、クラレ(株)、クレイバレー社等の製品を使用できる。
(iii)樹脂成分
樹脂成分は、粘着性付与成分としても機能し、常温で固体であっても、液体であってもよく、具体的な樹脂成分としては、例えば、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、C5樹脂、C9樹脂、C5C9樹脂、アクリル系樹脂などの樹脂が挙げられ、2種以上を併用しても良い。樹脂成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2質量部超で、45質量部未満が好ましく、30質量部未満がより好ましい。なお、これらの樹脂成分は、必要に応じて、シリカ等と反応できる変性基を付与してもよい。
ロジン系樹脂は、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とする樹脂である。このロジン系樹脂(ロジン類)は、変性の有無によって分類可能であり、無変性ロジン(未変性ロジン)、ロジン変性体(ロジン誘導体)に分類できる。無変性ロジンとしては、トールロジン(別名トール油ロジン)、ガムロジン、ウッドロジン、不均斉化ロジン、重合ロジン、水素化ロジン、その他の化学的に修飾されたロジンなどが挙げられる。ロジン変性体は無変性ロジンの変性体であって、ロジンエステル類、不飽和カルボン酸変性ロジン類、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類、ロジンのアミド化合物、ロジンのアミン塩などが挙げられる。
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体およびこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸またはその酸無水物等が例示できる。
クマロン系樹脂の中でも、クマロンインデン樹脂が好ましい。クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロンおよびインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
クマロンインデン樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1.0質量部超、50.0質量部未満である。
クマロンインデン樹脂の水酸基価(OH価)は、例えば、15mgKOH/g超、150mgKOH/g未満である。なお、OH価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
クマロンインデン樹脂の軟化点は、例えば、30℃超、160℃未満である。なお、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
テルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。ポリテルペンは、テルペン化合物を重合して得られる樹脂およびそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素およびその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
ポリテルペンとしては、上述したテルペン化合物を原料とするα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β-ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂も挙げられる。テルペンフェノールとしては、上記テルペン化合物とフェノール系化合物とを共重合した樹脂、および該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられ、具体的には、上記テルペン化合物、フェノール系化合物およびホルマリンを縮合させた樹脂が挙げられる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂、および該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられる。なお、芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体;クマロン、インデンなどが挙げられる。
「C5樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
「C9樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
「C5C9樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
アクリル系樹脂としては特に限定されないが、例えば、無溶剤型アクリル系樹脂を使用できる。
無溶剤型アクリル系樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)が挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリルは、メタクリルおよびアクリルを意味する。
上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。
上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良い。また、上記アクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していても良い。
樹脂成分としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
(ハ)ステアリン酸
本発明において、ゴム組成物には、ステアリン酸を含むことが好ましい。ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部超、10.0質量部未満である。ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
(ニ)老化防止剤
本発明において、ゴム組成物には、老化防止剤を含むことが好ましい。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部超、10質量部未満であり、1質量部以上がより好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
(ホ)ワックス
本発明において、ゴム組成物には、ワックスを含むことが好ましい。ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5~20質量部、好ましくは1.0~15質量部、より好ましくは1.5~10質量部である。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
(ヘ)酸化亜鉛
ゴム組成物は、酸化亜鉛を含んでもよい。酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、例えば、0.5質量部超、10質量部未満である。酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
(ト)架橋剤および加硫促進剤
ゴム組成物は、硫黄等の架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、10.0質量部未満である。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
硫黄以外の架橋剤としては、例えば、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200、ランクセス社製のKA9188(1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)等の硫黄原子を含む加硫剤や、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。
ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.3質量部超、10.0質量部未満である。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(チ)その他
ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、脂肪酸金属塩、カルボン酸金属塩、有機過酸化物、リバージョン(加硫戻り)防止剤等を、必要に応じて、さらに配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、200質量部未満である。
(2)ゴム組成物の作製
キャップゴム層を形成するゴム組成物は、上記した各種配合材料の適宜、調整して、一般的な方法、例えば、ゴム成分とカーボンブラック等のフィラーとを混練するベース練り工程と、前記ベース練り工程で得られた混練物と架橋剤とを混練する仕上げ練り工程とを含む製造方法により作製される。
混練は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなどの公知の混練機を用いて行うことができる。
ベース練り工程の混練温度は、例えば、50℃超、200℃未満であり、混練時間は、例えば、30秒超、30分未満である。ベース練り工程では、上記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、オイル等の軟化剤、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、加硫促進剤などを必要に応じて適宜添加、混練してもよい。なお、混合時の材料の投入順序は特に制限されず、ゴム成分をミキサー内で粉砕した後、充填剤や軟化剤を加えても良く、ミキサー内で予め充填剤と軟化剤を混ぜ合わせた後、ゴム成分を投入しても良い。
仕上げ練り工程では、前記ベース練り工程で得られた混練物と架橋剤とが混練される。仕上げ練り工程の混練温度は、例えば、室温超、80℃未満であり、混練時間は、例えば、1分超、15分未満である。仕上げ練り工程では、上記成分以外にも、加硫促進剤、酸化亜鉛等を必要に応じて適宜添加、混練してもよい。
2.タイヤの製造
本発明に係るタイヤは、上記で得られたゴム組成物をキャップゴム層として、所定の形状のトレッドゴムに成形した後、他のタイヤ部材と共に、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤとして作製することができる。
なお、トレッド部をベースゴム層との複層構造とする場合には、基本的には、上記したゴム成分および配合材料を用いて、その配合量を適宜変更して、同様に混練することにより、ベースゴム層を形成するゴム組成物を得ることができる。そして、キャップゴム層と共に押し出して所定の形状のトレッドゴムに成形した後、他のタイヤ部材と共に、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤとして作製することができる。
具体的には、成形ドラム上に、タイヤの気密保持性を確保するための部材としてのインナーライナー、タイヤの受ける荷重、衝撃、充填空気圧に耐える部材としてのカーカス、カーカスを強く締付けトレッドの剛性を高める部材としてのベルト部材などを巻回し、両側縁部にカーカスの両端を固定すると共に、タイヤをリムに固定させるための部材としてのビード部を配置して、トロイド状に成形した後、外周の中央部にトレッド、径方向外側にサイドウォールを貼り合せてサイド部を構成させることにより、未加硫タイヤを作製する。
その後、作製された未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。加硫工程は、公知の加硫手段を適用することで実施できる。加硫温度としては、例えば、120℃超、200℃未満であり、加硫時間は、例えば、5分超、15分未満である。
得られたタイヤは、先に述べたように、接地性を高めつつ、スチレンドメインによる氷や雪への食い込みを図ることができるため、氷雪路面におけるグリップ性能を十分に向上させることができる。
なお、本発明に係るタイヤは、特にカテゴリーは限定されず、乗用車用タイヤ、トラックやバス等の重荷重車用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、ランフラットタイヤ、非空気入りタイヤ等として使用することができるが、乗用車用タイヤとすることが好ましい。また、空気入りタイヤとすることが好ましい。
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は当該実施例に限られない。実施例においては、以下に示す各種薬品を用いて各表に従って配合を変化させて得られる組成物から作製される空気入りタイヤ(タイヤサイズ:205/55R16、扁平率:55%、ランド比:65%)を検討して下記評価方法に基づいて算出した結果を表2~表4に示す。
1.キャップゴム層を形成するゴム組成物
(1)配合材料
(a)ゴム成分
(イ)NR:TSR20
(ロ)SBR-1:次段落に示す方法により得られる変性S-SBR
(スチレン含量:25質量%、ビニル含量:25質量%)
(ハ)SBR-2:JSR(株)製のHPR840
(スチレン含量:10質量%、ビニル含量:42質量%)
(ニ)BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(ハイシスBR)
(シス含量97質量%、トランス含量2質量%、ビニル含量1質量%)
(SBR-1の製造)
上記SBR-1は、以下の手順に従って作製する。まず、内容積10Lで、底部に入口、頭部に出口を有し、撹拌機およびジャケットを付けたオートクレーブを反応器として2基直列に連結し、ブタジエン、スチレン、シクロヘキサンを各々所定の比率で混合する。この混合溶液を、活性アルミナを充填した脱水カラムを経由し、不純物を除去するためにn-ブチルリチウムをスタティックミキサー中で混合した後、1基目の反応器底部より連続的に供給し、さらに極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを所定の速度でそれぞれ1基目の反応器底部より連続的に供給し、反応器内温を95℃に保持する。反応器頭部より重合体溶液を連続的に抜き出し、2基目の反応器へ供給する。2基目の反応器の温度を95℃に保ち、変性剤としてテトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(単量体)と、オリゴマー成分との混合物を所定の速度でシクロヘキサン1000倍希釈液として連続的に加えて変性反応を行なう。この重合体溶液を反応器から連続的に抜き出し、スタティックミキサーで連続的に酸化防止剤を添加した後、溶媒を除去して、目的とする変性ジエン系重合体(SBR-1)を得る。
当該SBR-1のビニル含量(単位:質量%)は、赤外分光分析法により、ビニル基の吸収ピークである910cm-1付近の吸収強度より求める。また、スチレン量(単位:質量%)は、JIS K6383(1995)に従って、屈折率より求める。
(b)ゴム成分以外の配合材料
(イ)カーボンブラック:三菱化学社製のダイヤブラックN220
(N2SA:115m2/g)
(ロ)シリカ:エボニックインダストリーズ社製のウルトラシルVN3
(N2SA:175m2/g、平均一次粒子径:17nm)
(ハ)シランカップリング剤:エボニックインダストリーズ社製のSi266
(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
(ニ)樹脂:クレイトン社製のSYLVATRAXX4401
(α-メチルスチレン系樹脂)
(ホ)オイル:H&R社製のVivatec500
(アロマ系プロセスオイル:TDAEオイル)
(ヘ)酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
(ト)老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C
(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
(チ)ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
(リ)ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
(ヌ)硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄(5%オイル含有)
(ル)加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS))
(2)キャップゴム層を形成するゴム組成物
表2~表4に示す各配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りして、混練物を得る。
次に、得られた混練物に、硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、キャップゴム層を形成するゴム組成物を得る。
2.ベースゴム層を形成するゴム組成物
並行して、ベースゴム層を形成するゴム組成物を表1に示す配合に基づいて、キャップゴム層を形成するゴム組成物の製造と同様にして、ベースゴム層を形成するゴム組成物を得る。
Figure 2024002389000002
3.空気入りタイヤの製造
得られた各ゴム組成物を用いて、(キャップゴム層の厚み/ベースゴム層の厚み)比率が6/4となるように、所定の形状で押出成形して、表2~表4に示す厚みT(mm)のトレッド部を形成する。
その後、他のタイヤ部材と共に貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して、表2、3に示す実施例1~実施例12の各空気入りタイヤ(試験用タイヤ)、および表4に示す比較例1~比較例6の各各空気入りタイヤ(試験用タイヤ)を製造する。
4.パラメータの算出
その後、各試験用タイヤについて、以下のパラメータを求める。
(1)tanδ
各試験用タイヤのトレッド部のキャップゴム層から、タイヤ周方向が長辺となるように、長さ20mm×幅4mm×厚さ2mmで切り出して、粘弾性測定用ゴム試験片を作製し、各ゴム試験片について、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、周波数10Hz、初期歪5%、動歪1%、変形モード:引張の条件下、測定温度:-30℃、0℃、30℃で、tanδを測定し、それぞれ、-30℃tanδ、0℃tanδ、30℃tanδを求める。なお、ベースゴム層の30℃tanδは、0.22とする。
次いで、キャップゴム層の-30℃tanδと、前記トレッド部の厚みT(mm)とより、-30℃tanδ/T(mm)を求める。
(2)Tg
キャップゴム層から同様に切り出して作製した粘弾性測定用ゴム試験片について、GABO社製「イプレクサー(登録商標)」を用いて、周波数10Hz、初期歪2%、振幅±1%及び昇温速度2℃/minの条件下、-70℃から30℃まで温度を変化させてtanδを測定し、得られた温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度を、Tgとして求める。
(3)複素弾性率
キャップゴム層から同様に切り出して作製した粘弾性測定用ゴム試験片について、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度-30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪1%の条件下、変形モード:伸長で複素弾性率(MPa)を測定した。なお、ベースゴム層の30℃の複素弾性率は、12.0MPaとする。
(4)キャップゴム層のアセトン抽出分(AE)
各試験用タイヤのトレッド部のキャップゴム層から切り出した加硫ゴム試験片を用い、JIS K 6229:2015に準拠してAE(質量%)を求める。
(5)その他のパラメータ
そして、ゴム成分中のスチレン量(質量%)を求め、さらに、ゴム成分中のスチレン量(質量%)×トレッド部の厚みT(mm)、および、ゴム成分中のスチレン量(質量%)/ランド比(%)を求める。
5.性能評価試験(氷雪路面におけるグリップ性能の評価)
各試験用タイヤを車輌(国産のFF車、排気量2000cc)の全輪に装着させて、内圧が250kPa(乗用車の正規内圧)となるように空気を充填した後、氷雪路面のテストコース上を60km/hで走行し、走行中のグリップ性能について、20人のドライバーのそれぞれが、5段階(数値が大きいほど良好)で官能評価する。そして、20人のドライバーによる評価の合計点を算出する。
次いで、比較例4における結果を100として、下式に基づいて指数化し、氷雪路面におけるグリップ性能(氷雪グリップ性能)の評価とする。数値が大きいほど、氷雪グリップ性能が優れていることを示す。
氷雪グリップ性能=[(試験用タイヤの結果)/(比較例4の結果)]×100
Figure 2024002389000003
Figure 2024002389000004
Figure 2024002389000005
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
本発明(1)は、
トレッド部を備えたタイヤであって、
前記トレッド部を形成するキャップゴム層が、
スチレン量25質量%以下のスチレンブタジエンゴム(SBR)を、ゴム成分100質量部中に40質量部以下含有し、
温度-30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(-30℃tanδ)が、0.10以上であるゴム組成物から形成されており、
前記トレッド部の厚みが、10mm以上、20mm以下であることを特徴とするタイヤである。
本発明(2)は、
前記スチレンブタジエンゴム(SBR)の含有量が、35質量部以下であることを特徴とし、本発明(1)に記載のタイヤである。
本発明(3)は、
前記-30℃tanδが、0.50以上であることを特徴とし、本発明(1)または(2)に記載のタイヤである。
本発明(4)は、
前記-30℃tanδが、0.65以上であることを特徴とし、本発明(3)に記載のタイヤである。
本発明(5)は、
前記キャップゴム層の温度0℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(0℃tanδ)が、0.30以上であることを特徴とし、本発明(1)から(4)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
本発明(6)は、
前記0℃tanδが、0.35以上であることを特徴とし、本発明(5)に記載のタイヤである。
本発明(7)は、
前記0℃tanδが、0.45以上であることを特徴とし、本発明(6)に記載のタイヤである。
本発明(8)は、
前記キャップゴム層の温度30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(30℃tanδ)が、0.20以下であることを特徴とし、本発明(1)から(7)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
本発明(9)は、
前記30℃tanδが、0.13以下であることを特徴とし、本発明(8)に記載のタイヤである。
本発明(10)は、
前記トレッド部の厚みTが、12mm以上、18mm以下であることを特徴とし、本発明(1)から(9)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
本発明(11)は、
前記トレッド厚みTと、キャップゴム層の-30℃のtanδが、下記式を満足することを特徴とし、本発明(1)から(10)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
-30℃tan/T>0.04
本発明(12)は、
前記キャップゴム層のガラス転移温度(Tg)が、-40℃以下であることを特徴とし、本発明(1)から(11)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
本発明(13)は、
前記トレッド部が、前記キャップゴム層および前記キャップゴム層の内側に設けられたベースゴム層とから形成されていることを特徴とし、本発明(1)から(12)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
本発明(14)は、
前記キャップゴム層の厚みが、前記トレッド部全体の厚みに対して、50%以上であることを特徴とし、本発明(13)に記載のタイヤである。
本発明(15)は、
前記ベースゴム層における30℃tanδが、前記キャップゴム層における30℃tanδよりも大きいことを特徴とし、本発明(13)または(14)に記載のタイヤである。
本発明(16)は、
前記ベースゴム層の温度30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%、変形モード:伸長で測定された複素弾性率が、同様に測定された前記キャップゴム層の-30℃における複素弾性率よりも大きいことを特徴とし、本発明(13)から(15)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
本発明(17)は、
前記キャップゴム層が、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、C5樹脂、C9樹脂、C5C9樹脂、アクリル系樹脂の群から選択される樹脂成分を含むことを特徴とし、本発明(1)から(16)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
本発明(18)は、
前記キャップゴム層のアセトン抽出分(AE)が、8質量%以上であることを特徴とし、本発明(1)から(17)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
本発明(19)は、
前記トレッド部におけるランド比(%)に対するゴム成分中のスチレン量(質量%)の比(ゴム成分中のスチレン量/ランド比)が0.10以下であることを特徴とし、本発明(1)から(18)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
本発明(20)は、
ゴム成分中のスチレン量(質量%)と前記トレッド部の厚みT(mm)の積が120以下であることを特徴とし、本発明(1)から(19)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。

Claims (20)

  1. トレッド部を備えたタイヤであって、
    前記トレッド部を形成するキャップゴム層が、
    スチレン量25質量%以下のスチレンブタジエンゴム(SBR)を、ゴム成分100質量部中に40質量部以下含有し、
    温度-30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(-30℃tanδ)が、0.10以上であるゴム組成物から形成されており、
    前記トレッド部の厚みが、10mm以上、20mm以下であることを特徴とするタイヤ。
  2. 前記スチレンブタジエンゴム(SBR)の含有量が、35質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記-30℃tanδが、0.50以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
  4. 前記-30℃tanδが、0.65以上であることを特徴とする請求項3に記載のタイヤ。
  5. 前記キャップゴム層の温度0℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(0℃tanδ)が、0.30以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ。
  6. 前記0℃tanδが、0.35以上であることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ。
  7. 前記0℃tanδが、0.45以上であることを特徴とする請求項6に記載のタイヤ。
  8. 前記キャップゴム層の温度30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%の条件下、変形モード:引張で測定された損失正接(30℃tanδ)が、0.20以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のタイヤ。
  9. 前記30℃tanδが、0.13以下であることを特徴とする請求項8に記載のタイヤ。
  10. 前記トレッド部の厚みTが、12mm以上、18mm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のタイヤ。
  11. 前記トレッド厚みTと、キャップゴム層の-30℃のtanδが、下記式を満足することを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のタイヤ。
    -30℃tan/T>0.04
  12. 前記キャップゴム層のガラス転移温度(Tg)が、-40℃以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のタイヤ。
  13. 前記トレッド部が、前記キャップゴム層および前記キャップゴム層の内側に設けられたベースゴム層とから形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載のタイヤ。
  14. 前記キャップゴム層の厚みが、前記トレッド部全体の厚みに対して、50%以上であることを特徴とする請求項13に記載のタイヤ。
  15. 前記ベースゴム層における30℃tanδが、前記キャップゴム層における30℃tanδよりも大きいことを特徴とする請求項13または請求項14に記載のタイヤ。
  16. 前記ベースゴム層の温度30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪率1%、変形モード:伸長で測定された複素弾性率が、同様に測定された前記キャップゴム層の-30℃における複素弾性率よりも大きいことを特徴とする請求項13ないし請求項15のいずれか1項に記載のタイヤ。
  17. 前記キャップゴム層が、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、C5樹脂、C9樹脂、C5C9樹脂、アクリル系樹脂の群から選択される樹脂成分を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載のタイヤ。
  18. 前記キャップゴム層のアセトン抽出分(AE)が、8質量%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項17のいずれか1項に記載のタイヤ。
  19. 前記トレッド部におけるランド比(%)に対するゴム成分中のスチレン量(質量%)の比(ゴム成分中のスチレン量/ランド比)が0.10以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項18のいずれか1項に記載のタイヤ。
  20. ゴム成分中のスチレン量(質量%)と前記トレッド部の厚みT(mm)の積が120以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項19のいずれか1項に記載のタイヤ。
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