JP2024001509A - 水系樹脂液及び水系樹脂塗布剤 - Google Patents

水系樹脂液及び水系樹脂塗布剤 Download PDF

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Abstract

【課題】セラックを主成分とする水性材料でありながら、耐水性及び基材への密着性に優れ、かつ乾燥時のアンモニア臭が低減されたコーティング剤やインク、接着剤等を提供すること。【解決手段】セラック100質量部、アンモニア1~6質量部、及びエタノール10~50質量部を含有する、水系樹脂液;並びに当該水系樹脂液を含有する水系コーティング剤、爪用コート剤、水系接着剤、及び水系インク。セラックの濃度は、好ましくは水系樹脂液の全質量に基づき5~80質量%である。【選択図】なし

Description

本発明は、水系樹脂液、並びに当該樹脂液を含有する水系コーティング剤、爪用コート剤、水系接着剤、及び水系インク等の水系樹脂塗布剤に関する。
従来より、コーティング剤やインク、接着剤の成分として、人体や環境に対する安全性の高い材料が検討されている。例えばセラックは、無毒かつ無公害な天然樹脂であるため、古くからニスや塗料等のコーティング剤、接着剤、錠剤や食品のコート剤、インク、壁材や床材の補修剤等として、種々の分野で使用されて来た(例えば特許文献1~5)。近年は環境面への配慮から脱合成樹脂の動きも進んでおり、セラックを始めとする天然樹脂は再び注目を集めている。
セラックを含有する塗布剤は、一般にハンドリング性が良好で、塗膜の強度や耐水性の点でも優れている。一方でセラックを含有するコーティング剤やインクは、保存安定性等に欠ける場合があるため、pH調整剤の併用等も検討されている。例えば、特許文献1記載の発明ではアミンや苛性アルカリ等を配合することにより、また、特許文献2記載の発明ではクエン酸塩等と共にモルホリンを配合することにより、それぞれ保存安定性の改善を図っている。特許文献3には、セラック100質量部に対して8質量部を超える量のアンモニアを配合し、保存安定性を改善した事例が記載されている。
コーティング剤やインクの安全性改善の観点から、使用する溶媒についても見直しが進んでいる。従来の一般的なコーティング剤では、アセトンや酢酸エチルのような有機溶剤が多用されるが、これらをより安全なアルコール、さらには水系溶媒に置き換える検討も成されている。セラックはアルコールへの溶解性に優れ、前述の特許文献1~3でもエタノール主体の溶媒が使用されている。セラックはまた、塩基性条件下では水溶性になる。例えば特許文献4及び5では、セラック100質量部に対して7質量部程度以上のアンモニアを配合することにより、エタノール/水系溶媒やプロパノール/水系溶媒の使用が可能となっている。
特開2021-31473号公報 特開昭60-110753号公報 特開2019-196426号公報 特開昭59-230071号公報 特開昭60-94479号公報
上記のように、セラックを含有する塗膜は耐水性に優れるが、水溶性塗布剤とするために塩基性物質を配合すると、そうした耐水性の利点がしばしば失われてしまう。特に、特許文献1記載のように苛性アルカリを配合すると、塗膜の耐水性は大きく損なわれる場合がある。他の特許文献記載の塗布剤においても、保存安定性を改善するために塩基性の高い液とされている場合があり、耐水性だけでなく基材に対する塗膜の密着性の点でも懸念が持たれる。例えばコーティング剤にアミン類やモルホリンを配合した場合も、耐水性や基材への塗膜の密着性・接着性が低下するおそれがある。
塩基性物質がアンモニアの場合は、塗膜の乾燥と共に塩基性物質が揮散し得るため、耐水性や密着性の低下はある程度抑制し得る。しかし、特許文献3~5に記載されたように比較的多量のアンモニアを配合すると、セラック全量がアンモニウム塩を形成して水溶性が長期間維持される反面、耐水性及び基材への密着性が不十分となる場合がある。また、塗膜乾燥時のアンモニアの揮散に起因する、臭気や健康被害の問題も無視できなくなる。
本発明は上記のような問題を解決すべく、セラックを主成分とする水性材料でありながら、耐水性及び基材への密着性に優れ、かつ乾燥時のアンモニア臭が低減された水性樹脂液を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、セラックに対して特定量のアンモニア及びエタノールを配合することにより、水溶性が発現すると共にアンモニアの臭気が低減され、耐水性及び基材への密着性に優れる水系樹脂液が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の(1)~(6)を提供する。
(1)セラック100質量部、アンモニア1~6質量部、及びエタノール10~50質量部を含有する、水系樹脂液。
(2)前記セラックの濃度が、前記水系樹脂液の全質量に基づき5~80質量%である、前記(1)の水系樹脂液。
(3)前記(1)又は(2)の水系樹脂液を含有する、水系コーティング剤。
(4)前記(1)又は(2)の水系樹脂液を含有する、爪用コート剤。
(5)前記(1)又は(2)の水系樹脂液を含有する、水系接着剤。
(6)前記(1)又は(2)の水系樹脂液、並びに顔料及び/又は染料を含有する、水系インク。
本発明の樹脂液は、セラックを原料とする水性材料でありながら、耐水性及び基材への密着性・接着性に優れ、かつ乾燥時のアンモニア臭が低減されており、ハンドリング性も良好である。また、本発明のコーティング剤や接着剤等は、主成分がセラックであるため安全性が高く、使用者や周辺環境に害を及ぼすリスクが低減されている。併用する成分によっては、乾燥後に100%天然のバイオマス系生分解性塗膜を得ることもでき、食品や医療用途に使用することも可能である。
以下、本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。
≪水系樹脂液≫
本発明のコーティング剤やインク等は、セラックを主成分とする水系樹脂液を含有する。先ずはこの水系樹脂液について詳記する。
本発明の水系樹脂液は、セラック100質量部、アンモニア1~6質量部、及びエタノール10~50質量部を含有する。
<セラック>
セラックとは、ラックカイガラムシ等のカイガラムシから分泌される虫体被覆物を精製して得られる樹脂状の物質であり、シェラックとも呼ばれる。幅広い分子量分布を有する、軟化点70~80℃前後の樹脂であり、粘接着性に優れる。熱硬化性も示し、特に硬化物は耐水性や耐油性が良好である。アルコール等に溶解させて塗布・乾燥させると、光沢に優れ、透明性が高く滑らかな被膜を形成する。被膜は基材との密着性に優れ、耐摩耗性も良好である。また、無味・無臭・無毒で、アメリカ食品医薬品局からも安全性が認可されている。そのため、塗料やインクのバインダー、接着剤の他、錠剤や食品の表面コート剤としても用いられる。
セラックは種々のオキシカルボン酸類から主としてなり、少量のワックス及び脂肪酸等を含むが、その組成は完全には解明されていない。元来が天然物である上、精製法も製品毎に異なるので、厳密な組成は商品番手やロットにより異なるが、概して95質量%程度の樹脂成分(カルボン酸類)と5質量%前後のワックスを含有する。ワックス分を除去した脱蝋セラックや、漂白処理を行ったセラック(脱色セラック、白セラック)も市販されており、本発明においてはどのようなセラックを使用することもできる。但し、本発明の水系樹脂液を医療・食品用途に使用する場合は脱蝋セラックを、色物塗料等のコーティング剤やインクに使用する場合は脱色セラックを使用することが好ましい。
セラック中の樹脂成分は、主にアレウリチン酸(C1529(OH)-COOH)等の長鎖ヒドロキシ脂肪酸;シェロリン酸(C1316(OH)(COOH))、ジャラール酸(C1316(OH)(CHO)-COOH)、ラクシジャラール酸(C1317(OH)(CHO)-COOH)、ラクショリック酸(Laksholic Acid:C1418(OH)-COOH)等のセスキテルペン系樹脂酸;及びそれらのエステル等の誘導体;並びにそれらが結合した多量体と推定されている。熱硬化の際には、樹脂成分中のカルボキシ基とヒドロキシ基とが脱水縮合し、複雑なネットワークを形成すると考えられている。尚、硬化触媒として酸又はアミンが配合される場合もある。
セラックはアルコールに可溶な一方、水には殆ど溶解しない。しかし、塩基性条件下では水溶性となるため、アンモニア等の塩基を多めに配合した水性コーティング剤等も用いられている。セラックのけん化価は一般に200~260mg/g程度と報告されているので、セラック100gをけん化するために必要な塩基の量は0.4モル前後であり、アンモニア量に換算すると7g程度となる。尚、このことから、特許文献3~5記載の組成物では、セラック成分がほぼ完全にけん化されて均一な溶液が形成されていると推定される。
<主成分の配合比>
本発明者らは、セラック100質量部に対して1~6質量部前後の量のアンモニアを、10~50質量部程度のエタノールと共に配合することにより、不溶分や沈降物等のない均質な水系樹脂液が得られることを見出した。また、本発明の水系樹脂液におけるより好適なアンモニア量は、使用するセラックの純度や組成にもよるが、セラック100質量部に対して、好ましくは1.5~5.0質量部、さらに好ましくは2.0~4.0質量部、特に好ましくは2.5~3.0質量部である。アンモニア量が例えば1.5~5.0質量部であれば、取扱時や乾燥時のアンモニア臭がさらに低減されるだけでなく、耐水性及び基材への密着性・接着性により優れる塗膜が得られる。このように、本発明においては、アンモニア量がセラックのけん化量未満、例えば半分程度以下であるにも拘らず、均質でハンドリング性がよく、しかも優れた物性の塗膜を与える水系樹脂液が得られている。
本発明は特定の理論により限定されるものではないが、本発明が効果を奏する理由として、少量のアンモニア配合によってセラック成分の一部がアンモニウム塩となり、これが界面活性剤のように機能して残りのセラック成分を可溶化させていることが考えられる。カルボン酸アンモニウム等の界面活性剤は、水中で会合してミセルを形成し、そのミセルが油相成分を可溶化して水-油-界面活性剤(乳化剤)の3成分1相系を形成し得る。本発明においても、アンモニウム塩となった一部のセラック成分が、けん化されていないセラック成分を会合により可溶化してミセル中に取り込み、均質な1相系の水系樹脂液が形成されていると考えられる。
また、本発明の水系樹脂液において、エタノール量はセラック100質量部に対して10~50質量部であるが、好ましくは10質量部超40質量部以下、より好ましくは15質量部以上35質量部以下、特に好ましくは20質量部以上30質量部以下である。エタノール量が例えば10質量部超40質量部以下であれば、本発明の水系樹脂液の取り扱い時や乾燥時のアンモニア臭をさらに低減させ、また、塗膜の耐水性をさらに高めることが可能となる。
こうして配合されたエタノールは、上記のミセル形成における助剤として機能している可能性がある。本発明の水系樹脂液においては、少量のエタノールの配合によって上記のミセル生成、さらには生じたミセル中へのセラック成分の取り込みが促進されていると考えられる。その結果として、アンモニア量が少量であっても、十分な量のミセルが生成し、均質な1相系が形成されていると推定される。
本発明においてアンモニアの臭気が抑制され、かつ塗膜が耐水性を示す理由も、明らかではないが、ミセル形成の促進が一因と考えられる。エタノール配合によって、セラック成分を取り込むミセルの形成において、必要となるアンモニアの量が減じられるため、アンモニアの臭気は当然に低減される。アンモニア量がさらに減じられる故に、セラック成分が完全にけん化されることもない上、分子中のアンモニウム塩が乾燥時にカルボキシ基に変化して水不溶性のセラック成分に戻り易くなる結果、塗膜の耐水性も良好となる。さらに、ミセル中ではセラック成分とそのアンモニウム塩とが会合しているため、乾燥時にアンモニウム塩から遊離したアンモニアは、近傍のセラック成分と一旦反応してトラップされ易くなる。その結果、水系樹脂液中のアンモニア成分が一度に遊離することなく徐々に放出され、臭気が低減されている可能性がある。
上記の理由の他に、エタノールの一部がアンモニアと会合してCOH・・・NHのようなアダクトを一時的に形成し、アンモニアの遊離を遅延させている可能性も考えられる。本発明の水系樹脂液においてはまた、エタノールの配合質量はアンモニア質量に対して2~30倍程度、特に5~15倍程度とすることが好ましい。
<水系樹脂液の組成>
本発明の水系樹脂液におけるセラックの濃度に特に制限はなく、用途及びセラックの性状に応じて任意に設定することができる。水系樹脂液のハンドリング性や付与効率を考慮すると、セラックの濃度は、水系樹脂液の全質量に基づき5~80質量%程度であることが好ましいが、この範囲に限定されない。後記するように、水系樹脂液を例えばトップコートとして用いる場合には、セラックの濃度を低めに設定してもよく、接着剤として使用する場合には高めにしてもよい。このセラックの濃度を基にして、アンモニア及びエタノールの濃度を設定すればよい。
尚、本発明の水系樹脂液においては、主溶媒は水であることが好ましいが、セラック及びエタノールの濃度によっては、エタノールが主溶媒となっていてもよい。また、n-プロパノールやi-プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル等の溶媒を少量、例えば1~5質量%程度含有していてもよい。但し、人体及び環境への安全性の観点からは、本発明の水系樹脂液中の溶媒は、不可避的不純物は例外として、水とエタノールのみから実質的になることが好ましく、溶媒中の70質量%程度以上、特に90質量%程度以上が水であることが望ましい。
<水系樹脂液の用法>
本発明の水系樹脂液は、そのままで、あるいは後記する色材等の添加剤を配合し、又は水等の溶媒をさらに加えて希釈した上で、水系コーティング剤、爪用コート剤、水系接着剤、及び水系インク等として使用することができる。本発明の水系樹脂液は、上記のように均一な1相系でハンドリング性に優れ、アンモニアの臭気も低減されているため、様々な条件で簡便に用いることが可能である。水系樹脂液及びそれを含有する水系コーティング剤等の付与方法にも制限はなく、刷毛塗り、ロール塗り、ナイフコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディッピング等、種々の慣用の方法を用いることができる。
本発明の水系樹脂液においては、セラック成分の内で水溶性のアンモニウム塩となっているものは一部であるため、塗膜の耐水性が良好で、基材への密着性や接着性にも優れる。また、塩基成分がアンモニアであるため、塗布後の乾燥処理、あるいは任意的な硬化処理の際にアンモニアが揮散して非水溶性のセラックとなり、耐水性や密着性はさらに改善される。ここで、乾燥処理の条件にも制限はなく、例えば水系樹脂液を付与した後に室温で放置してもよく、約40℃以上、特に50℃程度以上に加温する方法を採ってもよい。例えば家庭用ドライヤー等を用いて乾燥させることも可能である。基材の種類や用途によっては、真空乾燥を行うこともできる。
セラックのアンモニウム塩からのアンモニアの脱離や、セラック中の樹脂成分の硬化は、室温でも進行し得る。そのため本発明の水系樹脂液は、塗布後に室温又は加温下で乾燥させるだけでも、良好な耐水性や密着性を示す。しかしながら、耐水性や密着性をさらに高めるために、任意的に硬化処理を施すこともできる。硬化処理条件に特に制限はなく、基材の種類や用途に応じて所望の方法で行うことができる。例えばドライヤーやオーブンで100℃程度以上、特に150℃以上の温度に数秒~数時間加熱してもよく、水蒸気加熱炉等を用いてもよい。基材の種類によっては、熱プレスや熱ロール等の装置を用いて硬化させることも可能である。
<その他添加剤>
本発明の水系樹脂液にはさらに、セラック、アンモニア、及びエタノール以外の添加剤が含有又は添加されていてもよい。その他の添加剤としては例えば、顔料や染料等の色材、艶出し剤、艶消し剤、粘度調整剤、油剤、保湿剤、界面活性剤、乳化剤、消泡剤、pH調整剤、分散剤、安定剤、防錆剤、帯電防止剤、キレート化剤(錯化剤)、流動性調整剤、防腐剤、酸化防止剤、劣化防止剤、殺菌剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、極圧剤、さらには各種薬剤や香料、甘味料、無機フィラー、ポリマーエマルジョン、滑剤、可塑剤等が挙げられるが、これらに限定されない。以下では、これら添加剤の内で比較的重要なものについて説明する。
(色材)
本発明の水系樹脂液は、そのままコーティング剤等として使用することもできるが、顔料や染料等の色材を配合して用いてもよい。特に、水系樹脂液をインクや塗料に使用する場合は、顔料及び/又は染料を配合することが望ましい。色材は特に限定されるものではなく、染料系であってもよいし、顔料系であってもよい。特に、耐水性や耐光性等が良好な、顔料系の色材を使用することが好ましい。また、顔料や染料等の色材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料にも特に制限はなく、汎用のインクや塗料等で用いられている各種の顔料を使用することができる。例として、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ニッケルアゾ系顔料、イソインドリノン系顔料、ピランスロン系顔料、チオインジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、キナクリドン系固溶体顔料、ペリレン系固溶体顔料等の有機顔料;酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、弁柄、黒酸化鉄、黄酸化鉄、青金石(ウルトラマリンブルー)、マイカ等の無機顔料;さらにはパール顔料、プルシアンブルー、カーボンブラック等が挙げられるが、これらに限定されない。予め水溶性溶媒中に分散させた顔料分散体や自己分散型顔料を使用することもできる。
医療、食品、化粧品等の用途には、食用色材を使用することも好ましい。具体例として、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色105号、赤色202号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色2号、緑色3号、緑色201号、紫色401号、黒色401号等の食用色材;さらにはクチナシエキスやその加水分解物、トウガラシ果実エキス、モナスカスエキス、カカオエキス、ブドウ果皮抽出物、クロロフィル含有抽出物、炭等の天然由来色素が挙げられるが、これらに限定されない。
(粘度調整剤)
粘度調整剤は、水系樹脂液の粘度を、用途に応じた適切な値とするための添加剤である。本発明においては、セラックの濃度を調整することによって所望の粘度を得ることができるが、別途に汎用の粘度調整剤を配合してもよい。粘度調整剤に特に制限はないが、好ましくは水溶性の粘度調整剤を使用する。水溶性の粘度調整剤としては、ポリ酢酸ビニルやポリエチレンオキシド(コポリマー)等の合成樹脂、キサントンガム等の多糖類、さらにはカゼイン等のタンパク質が挙げられる。無機フィラーや、ポリ(メタ)アクリル酸(エステル)等のポリマーエマルジョンを配合して粘度を調整することも可能である。これらの内、多糖類、例えばキサントンガム、アラビアゴム、デンプン、寒天等は、粘度調整が容易な上に安全性が高いので、特に好適である。
(油剤)
水系樹脂液の用途によっては、油剤を配合していてもよい。例えばホホバ油、オリーブ油、ヤシ油、菜種油、ゴマ油、アボガド油、パーム油、トウモロコシ油、綿実油、大豆油、アマニ油、ヒマシ油、カルナバワックスや牛脂、さらにはワセリン、スクワラン、オレイン酸やリチノレイン酸のような脂肪酸、グリセリンやステアリルアルコールのようなアルコール類、さらにはシリコーンオイル等を配合することもできる。これら油剤は、本発明の水系樹脂液を食品や化粧品関係の物品に使用する場合に、特に有用である。
(保湿剤)
本発明の水系樹脂液はまた、用途に応じて、保湿剤を含有していてもよい。保湿剤の例としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、尿素等が挙げられるが、これらに限定されない。複数の保湿剤を、併用することも可能である。本発明の水系樹脂液を化粧品関係の物品に使用する場合は特に、こうした保湿剤の配合は有用である。
(界面活性剤)
本発明の水系樹脂液はまた、界面活性剤を含有していてもよい。上記のように、セラックのアンモニウム塩は界面活性剤として機能している可能性があるが、さらに界面活性剤を別途配合することにより、分散性や流れ性、他材料との混和性、基材との親和性等が改善される場合がある。界面活性剤としては、特に制限はなく、通常のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤等から所望のものを選択することができる。
アニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンノニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸ジナトリウム等のナフトールスルホン酸塩、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等の(ポリ)アルキルナフタレンスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えばモノ~トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルアンモニウム塩、オクタデセニルジメチルエチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ドデシルピコリニウム塩、ドデシルイミダゾリニウム塩、オレイルイミダゾリニウム塩、オクタデシルアミンアセテート、ドデシルアミンアセテート等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば糖エステル、脂肪酸エステル、アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、脂肪族アミド等とエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとの付加縮合物、シリコン系ポリオキシエチレンエーテル、シリコン系ポリオキシエチレンエステル、フッ素系ポリオキシエチレンエーテル、フッ素系ポリオキシエチレンエステル、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化あるいはスルホン化付加物等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばベタイン、カルボキシベタイン、イミダゾリニウムベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸等が挙げられる。
(防腐剤)
本発明の水系樹脂液は、保管安定性等の観点から、防腐剤等を含有していてもよい。防腐剤の例としては、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、安息香酸塩、ソルビン酸塩、ナイシン、ナタマイシン、プロピオン酸カルシウム、ソルビン酸、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、フェノール、クレゾール、第4級アンモニウム塩、ソルビン酸カリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。2種以上の防腐剤を併用することもできる。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、アミン系化合物やヒンダードフェノール等の汎用の高分子用老化防止剤の他、L-アスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール、ローズマリー抽出物等が挙げられるが、これらに限定されない。2種以上の酸化防止剤を併用することもできる。
(無機フィラー)
本発明の水系樹脂液には、用途によってはさらに無機フィラーを配合してもよい。無機フィラーの配合によって、粘度やコストを調整することが可能である。無機フィラーの種類にも特に制限はなく、例として炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、チタン酸カリウム、ベントナイト、ウォラストナイト、ドロマイト、黒鉛等が挙げられるが、これらに限定されない。2種以上の無機フィラーを併用することもできる。尚、これら無機フィラーの一部は、顔料としての機能も奏する。
<水系樹脂液の調製>
本発明の水系樹脂液は、セラック、アンモニア、及びエタノールを、任意に上記のようなその他添加剤と共に、水と混合することによって調製することができる。混合操作は、汎用の撹拌機、例えばディスパー、ボールミル、SGミル、ロールミル、プラネタリーミキサー等を用いて行うことができる。小バッチであれば、ビーカーやフラスコ等の容器やジューサーミキサー中で混合することも可能である。
セラック、アンモニア、及びエタノールに加えて、その他添加剤を配合する場合、その含有量に特に制限はなく、目的及び添加剤の種類に応じて任意に設定することができる。例えば色材等は、本発明の水系樹脂液を艶出し用コーティング剤のような無着色のコーティング剤等として使用する場合には無添加であってもよいが、インクや塗料として使用するために、これらインクや塗料等の全質量に対して1~60質量%程度、例えば2~50質量%配合してもよい。また、界面活性剤や防腐剤、酸化防止剤等の配合量は、セラック100質量%に対して例えば0.1~3質量%程度、特に0.5~2質量%とすることができる。それ以外の添加剤、例えば粘度調整剤や油剤、保湿剤、無機フィラー等の含有量は、使用目的だけでなく水系樹脂液中のセラックの濃度等にも応じて、所望の値に設定すればよい。
尚、本発明の「水系樹脂液」は、そのままで実使用に供すことも可能であるが、本明細書中では主としてコーティング剤等のベース材料の位置付けとし、特定量のセラック、アンモニア、及びエタノール、並びに水と共に、物性保持に寄与する少量の添加剤(例えば界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤等)を含有する組成物として扱うこととする。一方で実際にコーティング剤やインク等として使用もしくは供給される材料又はその前段階の液状物(例えば最終使用者が希釈して使用するための塗料濃縮物等)は、「水系樹脂塗布剤」と総称することとする。前記した粘度調整剤や油剤、保湿剤、無機フィラー等、着色等の機能付与の目的で比較的多量配合される添加剤は、「水系樹脂液」ではなく「水系樹脂塗布剤」の成分として便宜上取り扱う。以下では、これら成分を含有する水系樹脂塗布剤、例えばコーティング剤、爪用コート剤、接着剤、インク等について、さらに説明する。
≪水系コーティング剤≫
本発明はまた、上記の水系樹脂液を含有する、水系コーティング剤を包含する。すなわち、本発明の水系コーティング剤は、セラック100質量部、アンモニア1~6質量部、及びエタノール10~50質量部を、少なくとも含有する。本発明の水系コーティング剤は、乾燥後に、特に硬化処理後に耐水性や基材への密着性・接着性に優れる塗膜を与えるので、各種物品のコーティングに有用である。
本発明の水系コーティング剤は通常、セラックに起因する光沢のある耐水性の塗膜を形成し得るため、色材等を配合せずにトップコートや保護膜形成材等として使用することができる。また、上記したような色材を配合して塗料や絵の具等として使用することも可能である。勿論、界面活性剤や酸化防止剤等を配合してもよく、所望により粘度調整剤や無機フィラーを配合することもできる。
本発明の水系コーティング剤においては、色材以外の成分の合計量に対するセラックの含有量が5~80質量%であることが好ましい。セラックの含有量が5質量%程度以上であれば塗膜の耐水性や密着性がさらに高められ、80質量%程度以下であればハンドリング性が特に良好となる。
尚、水系コーティング剤中の適切なセラック濃度は、使用目的やコーティング時に用いる装置、さらには添加剤の種類や量によっても異なる。例えば家庭用艶出しコーティング剤等であれば、水系コーティング剤全体に対するセラックの含有量は5~30質量%程度、特に10~25質量%であってもよく、錠剤等を専用の装置でコーティングする場合は30~80質量%程度、特に50~70質量%としてもよい。
また、水系コーティング剤が塗料である場合は、色材の配合量は全質量の1~60質量%程度、例えば2~50質量%、中でも3~40質量%、特に5~20質量%とすることが好ましい。色材の含有量が1質量%程度以上であれば、発色性に優れるコーティング剤とすることができ、60質量%程度以下であれば、水系コーティング剤のハンドリング性も十分に良好となる。
例えばセラックを好ましくは5~80質量%程度、より好ましくは7~50質量%、さらに好ましくは10~40質量%、さらにまた好ましくは12~30質量%、特に好ましくは15~25質量%含有し、かつ色材を2~50質量%程度、中でも3~40質量%、特に5~20質量%含有する水系コーティング剤であれば、特に良好な発色性及びハンドリング性が発現し得る。所望により、セラックの濃度を低めに、例えば10~20質量%とし、上記したような粘度調整剤や無機フィラーを5~40質量%、特に10~20質量%配合してもよい。
本発明の水系コーティング剤において、アンモニア及びエタノールの量は上記セラック量を基にして設定すればよい。水系コーティング剤の全質量に基づくセラック濃度が例えば10~40質量%の場合、アンモニアの濃度を0.1~2.4質量%、エタノールの濃度を1~20質量%とすることができる。水系コーティング剤をさらにリスクの低いものとし、取扱性をさらに改善する上で、例えば上記のアンモニア濃度を0.2~2.0質量%、中でも0.3~1.5質量%、特に0.4~1.0質量%程度とし、エタノール濃度を2~15質量%、中でも3~10質量%、特に4~8質量%程度としてもよい。
≪爪用コート剤≫
本発明はまた、上記の水系樹脂液を含有する、爪用コート剤を包含する。本発明の爪用コート剤はセラックを主成分とする上、使用時や乾燥時のアンモニア臭が低減されているので、安全でリスクの低い塗布剤である。さらに、乾燥後の被膜は耐水性や爪に対する密着性及び接着性に優れるため、入浴や水仕事、運動時の汗等によって剥がれるリスクも低く、爪の保護剤として有用である。また、各種の色材を配合して様々な色相を付すこともできる。そのため本発明の爪用コート剤は、マニキュアやぺディキュア用のネイルエナメル、ベースコート、トップコート、ネイルポリッシュ、ジェルネイル、ネイルカラー等として好適である。
本発明の爪用コート剤における各成分の含有量は、上記水系コーティング剤と同様の範囲とすることができる。例えば爪用コート剤の全質量に対するセラック量を、好ましくは5~80質量%程度、より好ましくは7~50質量%、さらに好ましくは10~40質量%、さらにまた好ましくは12~30質量%、特に好ましくは15~25質量%とし、爪用保護剤として使用してもよい。また、色材を2~50質量%、中でも3~40質量%、特に5~20質量%程度配合することもできる。
尚、本発明の爪用コート剤においては、アンモニア及びエタノールの配合量は上記の水系樹脂液と同様の範囲内で設定できるが、人体に直接塗布することを考慮すると、アンモニア量を上記水系コーティング剤よりも少なめに、例えば爪用コート剤全質量に対して0.05~2.4質量%程度、中でも0.1~1.0質量%、特に0.2~0.8質量%程度に設定してもよい。また、色材や油剤として、食品用や天然由来の原材料を使用することが好ましい。
本発明の爪用コート剤に、上記したような無機フィラーや可塑剤を配合して、ハンドリング性や塗膜の硬度を調節することもできる。無機フィラーとしてマイカ粉末等を用い、塗膜の外観に変化を与えることも可能である。大小様々な色や模様の樹脂粒子を混合してもよい。さらには、油剤や保湿剤、抗菌剤、各種薬剤等を配合し、薬理作用を付すことも可能である。
≪水系接着剤≫
本発明はまた、上記の水系樹脂液を含有する、水系接着剤をも包含する。本発明の水系樹脂液は、乾燥後に、特に硬化処理後に優れた基材密着性・接着性を示すため、各種材料の接着剤として有用である。
本発明の水系接着剤における各成分の含有量は、上記水系コーティング剤と同様の範囲としてもよいが、接着に用いる点を考慮すると、セラック含有量を多めとすることが好ましい。例えば水系接着剤の全質量に対するセラック量を、好ましくは5~80質量%程度、より好ましくは20~70質量%、さらに好ましくは30~60質量%、特に好ましくは40~50質量%程度とすることができる。
本発明の水系接着剤において、アンモニア及びエタノールの量は上記セラック量を基にして設定すればよい。但し、水系接着剤の全質量に基づくセラック濃度が例えば60質量%以上と高い場合には、エタノール等の配合量を減じてもよい。例えばセラック60質量%、アンモニア1~2質量%、エタノール6~25質量%を含有し、残分の13~33質量%が水であるような組成とすることもできる。あるいはセラック濃度を20~50質量%とし、アンモニア濃度を0.2~1.2質量%、特に0.3~1.0質量%程度に、エタノール濃度を2~25質量%、特に3~15質量%程度に設定することも可能である。
本発明の水系接着剤はまた、セラックと共に、バインダーとして上記したような粘度調整剤、例えばポリ酢酸ビニルやポリエチレンオキシド(コポリマー)等の合成樹脂や、キサントンガム等の多糖類を5~30質量%程度、特に10~20質量%含有していてもよい。接着層の機械特性向上のために、無機フィラーや可塑剤等を配合することもできる。その他、上記したような分散剤等の添加剤を配合することも可能である。接着対象によっては、水系接着剤に酢酸エチルやエチレングリコールモノメチルエーテル等の有機溶媒を、例えば5~30質量%程度、特に10~20質量%含有していてもよい。
≪水系インク≫
本発明はさらに、上記の水系樹脂液、並びに顔料及び/又は染料を含有する、水系インクをも包含する。これら水系インクは、ボールペン等の手書き用には勿論、インクジェットプリンタやレーザープリンタ等の家庭用プリンタ、各種業務用印刷装置で使用することができる。樹脂製のリボンに本発明の水系インクを付して、熱転写プリンタのインクリボンとすることも可能である。本発明の水系インクは、バインダー成分としてセラックを含有するため、乾燥後に、特に硬化処理後に耐水性に優れた印刷物を得ることができる。
本発明の水系インクにおける各成分の含有量は、上記水系コーティング剤等と同様の範囲とすることができる。例えば水系インクの全質量に対するセラック量を、好ましくは5~80質量%程度、より好ましくは7~50質量%、さらに好ましくは10~40質量%、さらにまた好ましくは12~30質量%、特に好ましくは15~25質量%とし、顔料及び/又は染料等の色材量を、好ましくは1~60質量%程度、より好ましくは2~50質量%、さらに好ましくは3~40質量%、特に好ましくは5~20質量%又は少し多めに10~30質量%とすることもできる。セラック、色材、アンモニア、及びエタノールの他に、上記したような粘度調整剤や分散剤等の添加材を配合することも可能である。
<水系樹脂塗布剤の用途>
上記のような本発明の水系コーティング剤、爪用コート剤、水系接着剤、及び水系インクはいずれも、ハンドリング性が良好で、水性材料でありながら耐水性及び基材への密着性・接着性に優れる。そのため、マニキュアやペディキュアだけでなく、工業用品、自動車等の輸送部品、日用品等のコーティングや印刷、接着、さらには建材、住宅設備、壁材や床材の補修剤等に有用である。また、人体や環境に対する安全性が高いため、特に医療、介護、食品工場等の設備や備品に使用することもでき、食品や錠剤等のコーティングに用いることも可能である。
以下、本発明を、実施例に基づきより具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本明細書に開示され、また添付の請求の範囲に記載された、本発明の概念及び範囲の理解を、より容易なものとする上で、特定の態様及び実施形態の例示の目的のためにのみ記載するのであって、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(各種試料の調製)
セラック100.0質量部、28%アンモニア水溶液10.0質量部(アンモニア純分2.8質量部)、及びエタノール30.0部を、フラスコ中で360.0質量部の純水と混合し、水系樹脂液試料を調製した。この試料について、調製から約0.5~1時間後に目視観察を行い、セラック等の成分の溶解・分散状態を以下の基準に従い評価した。
〇:調製から約1時間経過しても、沈降物等は観察されず、均質な液状であった。
△:調製から約0.5時間経過後には沈降物等は観察されなかったが、約1時間後には沈降物等が生じていた。
×:調製から約0.5時間以内に、沈降物等の不溶成分が観察された。
(水系樹脂液試料の評価)
上記により得られた水系樹脂液試料を爪用コート剤として試用し、乾燥後の塗膜の爪への密着性及び乾燥時の臭気を評価した。パネラー5名に、試料を自身の手爪に塗布し、乾燥後に手指を温水(約40℃)に浸してもらい、乾燥後塗膜の爪への密着性及び乾燥時の臭気を、以下の基準により評価した。評価結果を、各成分の配合と共に、後記する表1に示す。
(密着性)
A:パネラー全員が、温水浸漬後にも爪用コート剤の剥離が観察されなかったと報告。
B:パネラー1名が、温水浸漬後に爪用コート剤の剥離が観察されたと報告。
C:パネラー2~4名が、温水浸漬後に爪用コート剤の剥離が観察されたと報告。
D:パネラー全員が、温水浸漬後に爪用コート剤の剥離が観察されたと報告。
E:Dにおいてさらに、複数のパネラーが、温水接触直後に爪用コート剤の剥離が観察されたと報告。
(臭気)
〇:過半数のパネラーが、アンモニア等の臭気は僅かであったと報告。
△:過半数のパネラーが、アンモニア等の臭気が気になったと報告。
×:過半数のパネラーが、アンモニア等の臭気を強く感じたと報告。
[比較例1~6]
使用する成分の種類及び量を表1に示すように変化させ、実施例1と同様の操作を行った。各試料の評価結果を、表1に示す。
Figure 2024001509000001
本発明に従い、セラック100質量部に対して2.8質量部のアンモニアと30質量部のエタノールを含有する実施例1の水系樹脂液試料では、沈降物等が観察されず、セラック等の成分は水中に溶解して均質分散していた。一方でアンモニア等の塩基を含有していない比較例1の水系樹脂液試料では、セラックが溶解分散しなかった。
実施例1の水系樹脂液試料ではまた、乾燥後の塗膜が温水中でも剥離せず、良好な密着性が発現していた。比較例2及び3の水系樹脂液試料も同様であった。一方でアンモニアの代わりにアルギニン、モノエタノールアミン、又はトリエタノールアミンを含有する比較例4~6の水系樹脂液試料では、乾燥後の塗膜は温水中でいずれも剥離してしまった。塩基成分が乾燥後にも試料中に残存したために、セラック成分が水溶性のままとなり、爪に対して十分に接着しなかったと推定される。
実施例1の水系樹脂液試料では、乾燥時等におけるアンモニアの臭気も僅かであった。エタノールの配合によってアンモニア臭が抑制されることが示された。一方でエタノール不含の比較例2や、エタノールの代わりに酢酸エチルを含有する比較例3の水系樹脂液試料では、アンモニアの臭気がきつかった。比較例3の結果を考慮すると、実施例1の水系樹脂液試料では、単にエタノールの臭気によってアンモニア臭がかき消されているのではなく、実際にアンモニアの臭気自体が低減されていることが示唆される。
[実施例2~4、比較例7~9]
アンモニア及びエタノールの配合量を表2のように変化させた以外は、実施例1と同様の操作を行った。各水系樹脂液試料の配合及び評価結果を、表2に示す。
Figure 2024001509000002
本発明に従い、セラック100質量部、アンモニア1~6質量部、及びエタノール10~50質量部を含有する、実施例2~4の水系樹脂液では、沈降物等が観察されず、均質な1相系の水系樹脂液が形成されていた。また、乾燥時等のアンモニア臭が低減されていた。一方で、アンモニア量が6質量部超の比較例8及び9では、アンモニアの臭気がきつかった。エタノール量が10質量部未満の比較例7でも、アンモニア量が等しい実施例2~4の水系樹脂液に比べ、アンモニア臭が強いと報告された。
また、アンモニア量が大の比較例8及び9の水系樹脂液では、アンモニア臭がきついだけでなく、爪に対する密着性も低下していた。比較例8及び9では、多量の塩基成分によってセラックのけん化が進み、乾燥後の密着強度が低下した可能性が考えられる。一方で実施例2~4、特にアンモニア量が3質量部未満である実施例2及び3の水系樹脂液では、溶解・分散性が良好でアンモニア臭が低減されていただけでなく、爪に対する密着性も極めて良好であった。従来技術に対して、本発明は顕著な効果を奏することが示された。

Claims (6)

  1. セラック100質量部、アンモニア1~6質量部、及びエタノール10~50質量部を含有する、水系樹脂液。
  2. 前記セラックの濃度が、前記水系樹脂液の全質量に基づき5~80質量%である、請求項1記載の水系樹脂液。
  3. 請求項1又は2に記載の水系樹脂液を含有する、水系コーティング剤。
  4. 請求項1又は2に記載の水系樹脂液を含有する、爪用コート剤。
  5. 請求項1又は2に記載の水系樹脂液を含有する、水系接着剤。
  6. 請求項1又は2に記載の水系樹脂液、並びに顔料及び/又は染料を含有する、水系インク。

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