JP2023553707A - 光学顕微鏡検査用の組織試料を光学的に透明化するための改良された方法 - Google Patents

光学顕微鏡検査用の組織試料を光学的に透明化するための改良された方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、光学顕微鏡検査用の生体組織またはヒト組織の透明な組織サンプルを製造する方法に関し、a)脱水溶剤を使用して組織サンプルを脱水するステップと、b)脱水した組織サンプルを芳香族エステルを含む埋込媒体に移すことによって透明化するステップとを含む。芳香族エステルは、フェニル酢酸エステルである。埋込媒体としてこれまで用いられてきた安息香酸ベンジル/ベンジルアルコール混合物やサリチル酸メチル/安息香酸ベンジル混合物と比較して、芳香族エステルは、ジベンジルエーテルと全く同じように純粋な物質として使用できる利点を有する。純粋な物質は、既に所望の屈折率を有するので、埋込媒体を混合して屈折率を設定する必要がない。さらに、芳香族エステルは無毒で、揮発性が低く、透明な組織を低温で保存することができる。

Description

本発明は、請求項1のプリアンブルに係る方法、請求項10に記載された生体組織試料を調製するためのキット、および請求項13に記載された使用に関するものである。
組織試料の、例えば光シート顕微鏡による3次元的な画像化の実行を可能にするためには、透明な生体組織試料が必要である。生体試料の透明化を達成するために、特に、血色素であるヘモグロビンのヘム基と脂質とを生体試料から除去する必要がある。「脱水」処理では、組織は、水混和性有機溶媒と水との様々な混合物を用いて処理される。この処理は、組織から水分を完全に除去するために、次第に割合が増加する有機溶媒を用いて実施される。ここでは、例えば、テトラヒドロフラン、メタノール、イソプロパノール、tert-ブタノールおよびエタノールなどの多くのオプションがある。エタノールは現在、病理組織の透明化に最もよく使われる脱水媒体である。全ての「脱水」処置の最終結果は、無水試料である。
様々な透明化方法の最後のステップは、屈折率を顕微鏡で観察する組織の屈折率に調整することである。Spalteholz(“Uber das Durchsichtigmachen von menschlichen und tierischen Praparaten”、[On the transparency of human and animal preparations]、S. Hirzel、1911、Deutsches Reichs-Patent No.229044)によれば、脱水された組織の屈折率は、骨について、n=1.547である。他の組織の屈折率は、彼が経験的に決定した最適な混合物に基づいて、およそ、n=1.551と推定することができる。このような高い屈折率を得るには、一般に水と混和しないか、わずかに混和する程度の芳香族化合物を使用する必要がある。Spalteholzは、研究のために、冬緑油(サリチル酸メチル)と安息香酸ベンジルまたはイソサフロールとの混合物を、種々の組織に適合する混合比で使用した。
Spalteholzの方法の変形例として、Dodt、Leischner、Schierloh、Jahrling、Mauch、Deininger、Deussing、Eder、Zieglgansberger、およびBeckerの“Ultramicroscopy:three-dimensional visualization of neuronal networks in the whole mouse brain”、Nat Methods、2007;4(4):331-6.)が知られている。ここでは、埋込媒体として「Murray’s clear」(安息香酸ベンジルとベンジルアルコールの2:1混合物で屈折率n=1.559)が使用される。他の変形例として、Becker、Jahrling、Saghafi、Weiler、およびDodt Hの“Chemical Clearing and Dehydration of GFP Expressing Mouse Brains”、(2012)PLoS ONE 7(3):e33916、https://doi.org/10.1371/journal.pone.0033916が知られている。Spalteholzの埋込媒体および多くの他の芳香族化合物が試験された。ジベンジルエーテル(DBE、屈折率n=1.562)が最も適した化合物であることが判明し、組織透明化における事実上の代表的基準となった。DBEの利点は、溶液を混合してから屈折率を確認する必要がないので、使い勝手が良いことであり、純粋な物質として直接使用できる。
WO2017/093323A1は、それまで使用されていた埋込媒体の無毒な代替品として、桂皮酸エチル(ECi)および関連する桂皮酸エステルの使用を開示している。それは、ジベンジルエーテル、ベンジルアルコールまたは安息香酸ベンジルなどの組織処理に使用される他の芳香族化合物よりも低毒性を示す。所望の屈折率は、純粋な物質によって達成されるので、混合ステップをなくすことができ、それによって誤差の原因となり得る作業ステップをなくすことができる。
このように、脱水した試料の埋込媒体として適した純粋な液体物質の選択肢は、現在、ジベンジルエーテルと桂皮酸エチルという2つの化合物に限られている。しかし、この2つの物質にはそれぞれ欠点がある。ジベンジルエーテルは毒性がある。桂皮酸エチルは、毒性は低いが、融点が6~9℃なので、桂皮酸エチルで透明化した試料は、埋込媒体が結晶化するため冷蔵庫で保存できない。また、桂皮酸エチルは比較的高い蒸気圧を有する。
本発明の目的は、上記の欠点を克服し、特に、埋込媒体として混合物を調製するよりも少ない労力を伴い、毒性の高い埋込媒体を回避し、脱水した組織試料の冷蔵保存を可能にする、光学顕微鏡による検査用の生体組織の透明な組織試料の調製する方法を提供することである。
この目的は、本発明に従って、請求項1に記載の方法により達成される。この目的は、さらに、請求項10に記載のキットおよび請求項13に記載の使用によって達成される。
さらなる実施形態は、従属請求項の主題であり、または、以下に説明される。
光学顕微鏡による検査のための生体組織の透明な組織試料を調製するための本発明に係る方法は、
a)脱水溶媒を用いて組織試料を脱水するステップと、
b)脱水された組織試料を、組織と一致する屈折率を有する液体埋込媒体内に配置することにより、透明化するステップと、
を含む。
埋込媒体は、式Iまたは式IVに対応する芳香族エステルを含む。
Figure 2023553707000001
ここで、
は、-H、-CHまたは-CH-CHであり、
は、式IIまたは式IIIの残基であり、
Figure 2023553707000002
Figure 2023553707000003
は、-H、-CH、-CH-CHまたは-OCHであり、
は、-Hまたは-CHであり、
は、-Hまたは-CHであり、
nは、1または2であり、
または、
Figure 2023553707000004

本発明に係るエステルは、好ましくは、式Iに対応する芳香族エステルである。
本発明に係る方法の目的は、光学顕微鏡のための生体またはヒト組織試料の光学的な透明化を達成することである。生体組織は、例えば、ヒト組織または動物組織である。
透明化方法の透明化ステップは、屈折率を、顕微鏡観察される組織の屈折率に調整することである。この目的のために、組織試料は、屈折率の調整のための溶媒である埋込媒体に移される。埋込媒体は、脱水処理に使用される溶媒と混和性がある必要がある。
一実施形態において、埋込媒体は、10~100体積%の芳香族エステルと、0~90体積%の、約1.3、好ましくは約1.5の屈折率を有する光学的に適した不活性有機溶媒とを含む。例えば、埋込媒体は、90~100体積%の式Iに対応する芳香族エステルを含む。
他の実施形態において、埋込媒体は、10~100体積%の芳香族エステルと、0~90体積%の、約2.0、好ましくは約1.65の屈折率を有する光学的に適した不活性有機溶媒とを含む。例えば、埋込媒体は、90~100体積%の式Iに対応する芳香族エステルを含む。
本発明に係る全ての百分率は、体積%(vol%)で与えられる。
好ましい実施形態において、埋込媒体は、式Iまたは式IV、好ましくは式Iに対応する芳香族エステルからなり、すなわち、芳香族エステルは純粋な物質として使用される。純粋な物質は、本明細書において、工業的に得られる純度のエステルを意味するものと理解される。
芳香族エステルは、好ましくは、芳香族アルコールを有するフェニル酢酸のエステルである。芳香族エステルは、より好ましくは、ベンジル2-フェニルアセテート、4-メトキシベンジルフェニルアセテート、安息香酸フェネチルまたは2-フリルメチルフェニルアセテートから選ばれ、特に好ましくはベンジル2-フェニルアセテートである。ベンジル2-フェニルアセテート(CAS番号102-16-9)は、工業製品として約98.0%の純度を有する。4-メトキシベンジル-フェニルアセテート(CAS番号102-17-0)は、工業製品として約99.0%の純度を有する。2-フェネチルフェニルアセテート(CAS番号102-20-5)は、工業製品として約99,0%の純度を有する。2-フリルメチルフェニルアセテート(CAS番号36707-28-5)は、工業製品として約96.0%の純度を有する。安息香酸フェネチル(CAS番号94-47-3)は、工業製品として約98%の純度を有する。
脱水ステップa)の目的は、無水組織試料を得ることである。好ましい実施形態において、組織から水分を完全に除去するために、組織試料は、好ましくは、下降水系列における種々の脱水組成物、すなわち、水混和性の有機溶媒の割合が次第に増加する複数の混合物を用いて、多数回に分けて処理される。脱水媒体として、アルコール類、エーテル類またはケトン類が使用される。適切な脱水溶媒は、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール(IUPAC:2-メチルプロパン-2-オール)、テトラヒドロフランまたはアセトンである。本発明に係る方法において、脱水ステップa)は、例えば、
- エタノール濃度が次第に増加する水性エタノールからなり、脱水組成物のエタノール濃度が30体積%~100体積%の範囲である、または、
- テトラヒドロフランの濃度が次第に増加する水性テトラヒドロフランからなり、脱水組成物のテトラヒドロフラン濃度が30体積%~100体積%の範囲である、または、
- メタノールの濃度が次第に増加する水性メタノールからなり、脱水組成物のメタノール濃度が30体積%~100体積%の範囲である、または、
- その他のアルコール、エーテルまたはケトンの水性混合物からなり、脱水組成物の溶媒濃度が30体積%~100体積%の範囲である、
脱水組成物の使用を含む。
本明細書において脱水媒体は、以下の特性を有する。
1.水および固定剤を上昇濃度系列によって組織から徐々に除去することができように、水と完全に混合可能である。
2.屈折率を脱水組織の屈折率と一致させる埋込媒体と完全に混和可能である、
代替の実施形態において、脱水ステップa)は、組織に含まれる水分との化学反応によって組織から水分を除去する、2,2-ジメトキシプロパン(DMP)を用いて実施される。
本発明に係る方法の一実施形態において、組織試料は、ステップa)において脱水され、ステップb)において光学的に透明化される前に、
・固定され、かつ/または、
・ホルムアルデヒドを用いて固定され、かつ/または、
・洗浄され、かつ/または、
・水を用いて洗浄され、かつ/または、
・非イオン性洗剤を含むアルカリ性水溶液中でインキュベートされ、かつ/または、
・洗剤溶液を用いて脱脂され(脱脂)、かつ/または、
・有機溶媒を用いて脱脂され(脱脂)、かつ/または、
・酸化試薬を用いて漂白され、かつ/または、
・アミノアルコールを用いて脱色される。
本発明に係る方法の一実施形態においては、組織試料は、ステップa)において脱水され、ステップb)において光学的に透明化される前に、固定され、かつ、固定化剤が、
- ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アクロレイン、カルボジイミド、ピロ炭酸ジエチル、ビスイミドエステルもしくはグリオキサール、またはそれらの混合物などの架橋固定剤、および/または、
- アルコールおよび他の有機溶媒、酸、重クロム酸カリウム、硝酸鉛、硫酸銅および塩化水銀、ならびにそれらの混合物などの凝固固定剤
から選択される。
本発明に係る方法は、好ましくは、組織調製ステップの後、および電気泳動ステップの後に実施される。したがって、本発明に係る方法を用いて処理される組織試料は、好ましくは、既に前処理されている。電気泳動による前処理は、好ましくは、DE 10 2016 123 458 B3に記載の電気泳動透明化法に従って実施される。電気泳動透明化の性能については、特許明細書DE 10 2016 123 458 B3を参照し、その内容は本明細書に組み込まれるものとする。
本発明に係る方法において、光学的に透明化された組織試料は、好ましくは、試料の内部構造の画像を得るために、さらなるステップにおいて顕微鏡を用いて検査される。顕微鏡は、光学顕微鏡であり、好ましくは光シート顕微鏡、共焦点顕微鏡、二光子顕微鏡または光投影トモグラフィ顕微鏡(OPT)である。
これまで使用された埋込媒体であるジベンジルエーテル(DBE)は、n=1.562の屈折率を有する。第2の純粋な物質である桂皮酸エチルは、n=1.559の屈折率を有する。
式Iに対応する芳香族エステルのうち、例えば、フェニルメチルベンジルアセテートはn=1.555~1.558の屈折率、4-メトキシベンジルフェニルアセテートはn=1.559の屈折率、2-フェネチルフェニルアセテートはn=1.551の屈折率、2-フリルメチルフェニルアセテートはn=1.548(計算値)の屈折率を有する。式Iに対応する芳香族エステルを脱水組織試料の組織透明化のための埋込媒体として使用することにより、サリチル酸メチル/安息香酸ベンジルおよび桂皮酸エチルを用いて処理した組織試料と同一の透明性が達成された。アルコキシ置換だけでなく、特に、フェニル酢酸エステルの短いアルキル置換もこの範囲の屈折率を提供し、これはSpalteholzが決定した組織の屈折率と同様である。
Spalteholzの研究は既に、異なる組織の屈折率が互いにわずかに異なることを示唆している。1911年に発表された彼の原著には、サリチル酸メチルとBBとの最適混合比に基づいて経験的に決定された屈折率が大きい順に、一連のヒト組織が記載されている。若い胚(重量に応じて5:1~3:1)<成人の脱灰骨(5:3)n=1.547<古い胚とほぼ同じ成人の筋組織(2:1)<脳および脊髄(1:1)。このばらつきは、異なる組織の透明度および顕微鏡検査を用いた組織の検査、および、特に、顕微鏡を用いて実施できる定量的な分光判定に直接影響する。本発明に係る方法は、組織の屈折率に近似するように組織に応じて選択可能な種々の純粋な物質を埋込媒体として使用するという利点を提供する。
これまで一般的に埋込媒体として使用されてきた安息香酸ベンジル/ベンジルアルコール混合物(BABB)およびサリチル酸メチル/安息香酸ベンジル混合物と比較して、式Iに対応する芳香族エステルは、ジベンジルエーテルと同様に、純粋な物質として使用できるという利点がある。純粋な物質であることによって既に所望の屈折率が達成されているので、埋込媒体を混合して屈折率を調整する必要がない。これにより、混合ステップが不要となり、したがって、余分な作業ステップおよびエラーの原因の可能性がなくなる。
式Iに対応する芳香族エステルは、また、低毒性を有する。これは、顕微鏡内の組織試料が使用者の気道のすぐ下に位置し、使用者が試料から立ち上る蒸気を吸い込む可能性があるため、埋込媒体として使用する場合に有利である。欧州化学品庁ECHAによれば、酢酸フェニルメチルベンジルの毒性は、ジベンジルエーテルまたは安息香酸ベンジル/ベンジルアルコール混合物と異なり、毒性的に問題ない。
さらに、式Iに対応するフェニル酢酸エステルは、低揮発性であり、既知の埋込媒体よりも著しく低い蒸気圧を有するため、組織試料から上昇する蒸気が少なくなる。これは、式Iに対応する芳香族エステルの既に低い毒性をさらに低減する。
これまで埋込媒体として使用されてきた芳香族化合物の欠点は、その腐食性効果である。芳香族化合物はレンズと顕微鏡自体を攻撃し、これらの揮発性化合物の蒸気でさえ、時間の経過とともに顕微鏡の液体に面する表面を腐食させるのに十分であることが知られている。式Iに対応する芳香族エステルの揮発性が低いということは、本発明に係る埋込媒体が、腐食を引き起こし得る蒸気が大幅に少ないので、著しく高い材料適合性を提供することを意味する。要約すると、式Iに対応する芳香族エステルの低い揮発性は、臭気、呼吸器の刺激/毒性、ならびに顕微鏡に対する蒸気の腐食効果を低減する。
フェニルメチルベンジルアセテートは、さらに、ジャスミンとチョコレートの特徴を有する、心地よい甘さとフローラルの香りを有し、それにより実験室の作業者による埋込媒体の受け入れやすさが高まる。したがって、顕微鏡観察時に、従来使用されてきた埋込媒体のように、ステージから立ち上る不快な臭い(ジベンジルエーテルはプラスチックの不快な臭い、ベンジルアルコールはフェノールの臭いを有する)に悩まされることはない。
また、式Iおよび式IVに対応するフェニル酢酸エステルは、透明化した試料を冷蔵庫で保存することを可能にする。例えば、フェニルメチルベンジルアセテートの融点は-13.54℃~-9℃の間であり、すなわち、この化合物は冷蔵庫に保存可能であり、氷上またはクールパック内での貯蔵または輸送さえも許容する。
光学顕微鏡用の生体組織試料の調製のための本発明に係るキットは、
- 組織試料を脱水するための脱水溶媒と、
- 脱水された組織試料を埋込媒体内に配置することによって当該組織試料を透明化するための埋込媒体と、を備え、
埋込媒体は、上記の式Iまたは式IVの芳香族エステルである。好ましくは、本発明に係るキットにおける芳香族エステルは、ベンジル2-フェニルアセテート、4-メトキシベンジルフェニルアセテート、フェネチルベンゾエートまたは2-フリルメチルフェニルアセテート、好ましくはベンジル2-フェニルアセテートである。芳香族エステルは、好ましくは上述した濃度および純度で使用される。
キットにおける脱水溶媒は、好ましくはエーテル、ケトンまたはアルコールであり、好ましくは、溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、2,2’-チオジエタノール、トリクロロエタノール、テトラヒドロフラン、またはアセトンから選択される。
本発明によれば、式Iまたは式IVに対応する芳香族エステルは、光学顕微鏡検査のための生体、特にヒトの組織試料の調製のための埋込媒体として使用される。
Figure 2023553707000005
ここで
は、-H、-CHまたは-CH-CHであり、
は、式IIまたは式IIIの残基であり、
Figure 2023553707000006
Figure 2023553707000007
は、-H、-CH、-CH-CHまたはOCHであり、
は、-Hまたは-CHであり、
は、-Hまたは-CHであり、かつ、
nは、1または2であり、
または、
Figure 2023553707000008
芳香族エステルは、好ましくは、ベンジル2-フェニルアセテート、4-メトキシベンジルフェニルアセテート、フェネチルベンゾエートまたは2-フリルメチルフェニルアセテート、より好ましくは、ベンジル2-フェニルアセテートである。芳香族エステルは、好ましくは、上述した濃度および純度で使用される。
種々の埋込媒体の蒸気圧は、文献で知られている。
図1は、様々な埋込媒体の蒸気圧を示す。本発明のフェニルメチルベンジルアセテート(ベンジルフェニルアセテート(BPA))は、現在の技術水準で使用されている埋込媒体に比べて著しく低い蒸気圧を有する。BPAは、揮発性が最も低く、比較された埋込媒体の中で蒸気圧が最も低い。BPAの(25℃における)蒸気圧は、桂皮酸エチルの蒸気圧よりも約275倍低い。また、BABBおよびBBMSの2つの埋込媒体も同様に、著しく(約180倍)高い蒸気圧を有する。
図1の拡大図によれば、BPAは、DBEよりもさらに揮発性が(約4倍)低いことが分かる。DBEは、同様に2つの芳香環基を含み、著しく低い蒸気圧によりECiよりも揮発性が低く、(BBとの混合物に含まれる)サリチル酸メチルおよびECiよりも低い値を有する。
約0.25ml(0.5×0.5×1cm)の体積を有する組織試料(豚肺)を、エタノールを用いて数回に分けて脱水した。最終回では高純度エタノールが使用され、脱水された組織試料が撮影された。その結果を図2の左側に示す。次に、この組織試料を5mlの各埋込媒体内に3時間配置した。使用した埋込媒体は、サリチル酸メチルと安息香酸ベンジルとの混合物、および、本発明のベンジルフェニルアセテートである。透明化ステップの結果も撮影され、図2の右側に示した。
サリチル酸メチル/安息香酸ベンジルは、既に組織試料の透明化が良好であることがわかる。しかし、本発明のベンジルフェニルアセテートを用いて達成された透明性は、さらに良好であった。
本発明は、上述した実施形態のいずれにも限定されず、様々な方法で変更することが可能である。
特許請求の範囲、明細書および図面から明らかであり方法のステップを含む全ての特徴および利点は、個別におよび多種多様な組み合わせのいずれにおいても、本発明において必須であり得る。
様々な埋込媒体の蒸気圧を示す図である。 実施例において撮影された組織試料の写真である。

Claims (13)

  1. 光学顕微鏡による検査のための生体組織の透明な組織試料を調製する方法であって、
    a)脱水溶媒を用いて前記組織試料を脱水するステップと、
    b)脱水された前記組織試料を、式Iまたは式IVに対応する芳香族エステルを含む埋込媒体内に配置することによって透明化するステップと、を含む方法。
    Figure 2023553707000009
    ここで、
    は、-H、-CHまたは-CH-CHであり、
    は、式IIまたは式IIIの残基であり、
    Figure 2023553707000010
    Figure 2023553707000011
    は、-H、-CH、-CH-CHまたは-OCHであり、
    は、-Hまたは-CHであり、
    は、-Hまたは-CHであり、かつ、
    nは、1または2であり、
    または、
    Figure 2023553707000012
  2. 前記埋込媒体が、10~100体積%の芳香族エステルと、0~90体積%の約1.3、好ましくは1.5の屈折率を有する光学的に適した不活性有機溶媒とを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記埋込媒体が、10~100体積%の芳香族エステルと、0~90体積%の、屈折率が約2.0、好ましくは1.65の光学的に適した不活性有機溶媒とを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記埋込媒体が、式Iまたは式IVに対応する芳香族エステルからなる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記芳香族エステルが、ベンジル2-フェニルアセテート、4-メトキシベンジルフェニルアセテート、フェネチルベンゾエートまたは2-フリルメチルフェニルアセテート、好ましくはベンジル2-フェニルアセテートである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記脱水するステップa)が、水性アルコール、ケトンまたはエーテルの脱水組成物の使用を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記ステップa)において脱水され、前記ステップb)において光学的に透明化される前に、前記組織試料が、
    ・固定され、かつ/または、
    ・ホルムアルデヒドを用いて固定され、かつ/または、
    ・洗浄され、かつ/または、
    ・水を用いて洗浄され、かつ/または、
    ・アルカリ水溶液内においてインキュベートされ、かつ/または、
    ・洗剤溶液を用いて脱脂され、かつ/または、
    ・有機溶媒を用いて脱脂され、かつ/または、
    ・酸化試薬を用いて漂白され、かつ/または、
    ・アミノアルコールを用いて脱色される、
    請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記ステップa)において脱水され、前記ステップb)において光学的に透明化される前に、前記組織試料が、固定され、その固定化剤が、好ましくは、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アクロレイン、カルボジイミド、ピロ炭酸ジエチル、ビスイミドエステルもしくはグリオキサールまたはそれらの混合物などの架橋性固定化剤、および/または、アルコールおよび他の有機溶媒、酸、重クロム酸カリウム、硝酸鉛、硫酸銅および塩化水銀ならびにそれらの混合物などの凝固性固定化剤から選択される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 光学的に透明化された前記組織試料が、さらなるステップにおいて、該試料の内部構造の画像を得るために顕微鏡下で検査され、前記顕微鏡が、光学顕微鏡である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 光学顕微鏡用の生体組織試料を調製するためのキットであって、
    - 前記組織試料を脱水するための脱水溶媒と、
    - 脱水された前記組織試料を埋込媒体内に配置することにより透明化するための埋込媒体と、
    を備え、
    前記脱水溶媒が、アルコール、ケトンまたはエーテルであり、かつ、
    前記埋込媒体が、式Iまたは式IVの芳香族エステルであるキット。
    Figure 2023553707000013
    ここで、
    は、-H、-CHまたは-CH-CHであり、
    は、式IIまたは式IIIの残基であり、
    Figure 2023553707000014
    Figure 2023553707000015
    は、-H、-CH、-CH-CHまたはOCHであり、
    は、-Hまたは-CHであり、
    は、-Hまたは-CHであり、かつ、
    nは、1または2であり、
    または、
    Figure 2023553707000016
  11. 前記芳香族エステルが、ベンジル2-フェニルアセテート、4-メトキシベンジルフェニルアセテート、フェネチルベンゾエートまたは2-フリルメチルフェニルアセテート、好ましくはベンジル2-フェニルアセテートである、請求項10に記載のキット。
  12. 前記脱水溶媒が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、2,2’-チオジエタノール、トリクロロエタノール、テトラヒドロフランまたはアセトンから選択される、請求項10または請求項11に記載のキット。
  13. 式Iに対応する、または式IVに対応する芳香族エステルの、光学顕微鏡による検査のための生体組織試料の調製のための埋込媒体としての使用。
    Figure 2023553707000017
    ここで、
    は、-H、-CHまたは-CH-CHであり、
    は、式IIまたは式IIIの残基であり、
    Figure 2023553707000018
    Figure 2023553707000019
    は、-H、-CH、-CH-CHまたはOCHであり、
    は、-Hまたは-CHであり、
    は、-Hまたは-CHであり、かつ、
    nは、1または2であり、
    または、
    Figure 2023553707000020
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