JP2008239487A - 難浸透性組織迅速固定液 - Google Patents

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Abstract

【課題】難浸透性組織等を含む全ての組織を迅速に固定すること、及び迅速に固定する際に組織の特異的抗原性を保持し、免疫組織化学的方法の精度を高く維持することができる組織固定方法及びそのための固定液を提供する。
【解決手段】アルコール類とアルデヒド類の混合液と、残部の水溶液とからなる組織標本作製用固定液。たとえば、40〜95容量%の脂肪族アルコールと1〜20容量%の脂肪族アルデヒドの混合液と、残部のカルボン酸若しくはそのアルカリ金属塩、又は非金属元素の酸化物若しくはそのアルカリ金属塩などを含む水溶液。
【選択図】なし

Description

本発明は組織標本等の作製に用いる新規の固定液、及び固定方法に関する。より詳細には、固定液が浸透し難い組織を含む全ての組織の標本作製に適した新規の固定液、及び固定方法に関する。
眼の水晶体は通常の固定液を用いた方法では固定し難い器官の代表例である。水晶体は水晶体カプセル(嚢)で包まれたレンズ状の器官で、カプセルの内側は単層の水晶体上皮細胞で裏打ちされ、その内側には同心円状に水晶体線維細胞や水晶体線維があり、中心部に水晶体核を有する構造をしている。各構成要素は全て一定の大きさ・方向性・形態をもち、相互に緊密に連携・接着して一つのまとまった構造体を形成している。水晶体以外の他の器官もそれぞれ特定の成分を含む特異な構造をしている。例えば、脳は脂質の含量が多く、腎臓は尿細管が密に詰まっており、肺は毛細血管で包まれた肺胞という小室の集合体であり、これらは何れも固定液が浸透し難い構造をしており、組織標本の作製が困難な器官である。
一般的な組織固定方法としては、ホルマリンやパラフォルムアルデヒドを使用する方法(例えば、特許文献1参照)が知られているが、これらの方法を用いて水晶体を固定すると、水晶体の中心部まで固定され難く、その為、パラフィンが中心部まで充分に浸透出来ない。その結果、薄切する際に水晶体上皮細胞層、水晶体線維細胞層、水晶体線維や水晶体核などに亀裂が入り、細胞相互間が離反して生体内の形態に近い状態で観察することが不可能となる。さらに、ホルマリン固定後に作製したパラフィン切片で免疫組織化学染色を行う場合には、ホルマリンによる蛋白質の架橋構造を部分的に除く処理(抗原賦活処理)がしばしば必要となる。また、パラフォルムアルデヒドを含む固定液では固定液自体の劣化が起こる為、調製後使用出来る期間に限度がある。一方、固定を行わずに凍結切片標本を作製する方法もあるが、ホルマリン固定と同様に本来あるべき水晶体の詳細な形態観察は出来ず、抗原賦活処理をする際に標本がスライドガラスから剥がれてしまうこともあり、水晶体等の難浸透性組織に適した固定方法の開発が望まれている。
従来、水晶体の全体標本を作製し、詳細な水晶体の構造や細胞の形態を観察する方法として、グルタールアルデヒドとオスミウム酸を使用して固定し、エポン樹脂包埋して電子顕微鏡観察用の標本を作製する方法や、グルタールアルデヒドのリン酸緩衝液を用いて固定化する方法(例えば、非特許文献1及び2参照)などが用いられてきた。しかし、該方法では水晶体の一部分や個々の細胞間の詳細な形態学的観察は出来るが、水晶体の全体像の観察やその後の組織化学的研究(免疫組織化学染色など)は不可能である。
ホルマリンにメタノールやクエン酸を添加した生体組織検査用固定液も報告されている(例えば、特許文献2参照)が、この方法では充分な固定効果を得る為にはホルマリン濃度をかなり高くしなければならず、その結果としてホルマリンの刺激臭が強く人体に悪影響を及ぼすこと、長期間固定液に入れたままにしておくと過固定となり抗原性が落ちること、及び施設によっては固定液を廃棄する際に希釈しなければならないことなどの問題がある。
特開平1−290602 特公平6−8818 菅野裕丈、外5名、「日本眼科紀要」1996年、第47巻、第3号、263〜267頁 菅野裕丈、外5名、「あたらしい眼科」1996年、第13巻、第1号、115〜119頁
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、固定液が浸透し難い組織を含む全ての組織を迅速に固定することを目的とする。また、本発明の固定液を使用することで、固定液が充分に浸透するため従来組織標本作成が困難であった組織でも生体内の状態を保持したまま、綺麗な標本を作成することが出来る。さらに、免疫組織化学染色等の組織化学的研究精度を高めることも可能にした組織固定方法、及びその為の固定液を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、脂肪族アルコール類を主成分とする比較的簡易な組成の固定液を用いることによってどんな難浸透性組織でも迅速、且つ効果的に固定出来ること、さらに本固定液を使用することで生体内の状態をほぼ完全に保持したままの標本を作成できることを見出して本発明を完成した。
すなわち、第1の特徴としては、本発明の難浸透性組織迅速固定液は、アルコール類とアルデヒド類の混合液と、残部の水溶液とからなることを特徴とする。前記アルコール類は、飽和脂肪族アルコールであることが好ましく、炭素数1〜3の一価の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上であることがさらに好ましい。また、前記アルデヒド類は、脂肪族アルデヒドであることが好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜3のカルボニル化合物の単体、または重合体である。残部水溶液には、カルボン酸若しくはそのアルカリ金属塩、又は非金属元素の酸化物若しくはそのアルカリ金属塩などを含むことが好ましい。1つの実施形態として、本発明の組織迅速固定液は、実質的に、40〜95容量%の飽和脂肪族アルコールと1〜20容量%の脂肪族アルデヒドの混合液と、残部はカルボン酸若しくはそのアルカリ金属塩、又は非金属元素の酸化物若しくはそのアルカリ金属塩などを含むことのある水溶液とから成ることを特徴とする。本発明の固定液は全ての組織を固定することが可能であるが、特に、眼球(水晶体を含む)、脳、腎臓、及び肺等の難浸透性組織のパラフィン標本作製用に用いるとより有効である。さらに、一般的な臓器においても固定速度が速いため、迅速固定液としても使用出来る。
本発明の他の特徴としては、(a)実質的に、40〜95容量%の飽和脂肪族アルコールと1〜20容量%の脂肪族アルデヒドの混合液と、残部のカルボン酸若しくはそのアルカリ金属塩、又は非金属元素の酸化物若しくはそのアルカリ金属塩などを含むことが望ましい水溶液とから成る第一の固定液を用いて組織を固定する工程と、(b)必要に応じて、1〜10重量%の第一の固定液とは異なるアルデヒド類とカルボニル化合物を含む第二の固定液で前記組織を固定する工程と、を含むことを特徴とする組織の固定方法が提供される。即ち、固定する組織に合わせて前記工程(b)を省略してもよく、また、前記第一、及び第二の固定液のいずれか一方又は両方が、更に中性等張緩衝剤などを含むことが好ましい。
本発明の難浸透性組織迅速固定液は、飽和脂肪族アルコール類を主成分とするため、固定するのと同時に組織内の水分を脱水することが出来る。また、低濃度で含まれている脂肪族アルデヒド類溶液により蛋白質分子間の架橋形成もある程度進行する。その為、水晶体のように細胞が密集している組織でも速やかに、かつ種々の細胞間が剥がれないように、また細胞形態を維持した状態で固定することが出来る。標本は通常の方法でパラフィン包埋することができ、組織形態、及び詳細な免疫組織化学的研究をすることが出来る。凍結標本よりもさらに薄い標本の作製も可能であり、凍結標本と違ってブロックや薄切標本を室温で長期保存することも出来る。さらに、凍結標本作成時にも本固定液を使用することで、従来法よりも生体内の状態を保持したまま、従来法よりもより厚さの薄い凍結切片標本を作成することも出来る。本固定液は安定しているため、ある程度まとめて作製し、摂氏4度の冷蔵庫などの冷暗所に保存することにより長期間(1年以上)固定液の変性を防ぐことが出来る。また、主に飽和脂肪族アルコール類の固定液であるため防腐剤等の添加は必要ない。さらに、人体に対する悪影響も従来の固定液と比較するとはるかに少ない。
[固定液の組成]
本発明の難浸透性組織迅速固定液は、実質的に、脂肪族アルコール類と脂肪族アルデヒド類の混合液と、残部の水溶液とからなる。該固定液に使用される脂肪族アルコール類は試薬1級以上の飽和脂肪族アルコールであることが好ましい。更に、より生体に近い状態で組織を固定するため、残部水溶液にはカルボン酸若しくはそのアルカリ金属塩、又は非金属元素の酸化物若しくはそのアルカリ金属塩などを含む水溶液を用いることが好ましい。また、前記固定液中の最終濃度が生体とほぼ同じ浸透圧になるようにNaClなどを加えて調節してもよい。固定する組織によって、適宜飽和脂肪族アルコールの濃度を調節することが可能である。例えば、脂肪が多く含まれる組織では、飽和脂肪族アルコールと脂肪族アルデヒドの混合液の濃度を低くして使用することが望ましい。本発明の固定液に使用する飽和脂肪族アルコール類は二種以上を混合して使用することも出来る。使用まで冷暗所で保存することにより、長期間保存することが出来る。本発明の固定液は主成分が脂肪族アルコール類であるため、組織内の蛋白質(抗原)やmRNAの保存状態もよいと考えられる。
さらに、本発明の固定液は、1〜10重量%の第一の固定液とは異なる脂肪族アルデヒド類とカルボニル化合物を含む第二の固定液とセットで使用することも出来る。但し、対象組織に合わせて前記第一の固定液のみを用いてもよく、あるいは前記第一の固定液と第二の固定液とを組み合わせて用いても良い。
[固定方法]
水晶体の場合、水晶体を眼球から摘出し、カプセルのついた水晶体をそのまま固定液に入れて冷所で固定する。ホルマリンを主成分とする従来の固定液と異なり、本発明の固定液は飽和脂肪族アルコール類が主成分であるため摂氏4度ないし室温の範囲では固定速度は固定温度による影響を殆ど受けない。従って冷所で固定することも出来るため、組織内の抗原が温度等により変性を受けにくい。ヒト水晶体の場合、60分程度固定することにより良好な標本作製が可能である。また、それ以上固定しても抗原性等は保持され、固定し過ぎることはない。
[固定液の浸透速度]
マウス、ラットの水晶体のみでは30分間程度、ヒト、ブタの水晶体のみでは60分間程度で迅速に固定することが出来る。水晶体以外の組織として、脳などのように脂質含量の高い組織、肺や腎臓などのように肺胞や尿細管が密に詰まっていて固定液が浸透し難い組織を固定するのに適しているがこれらに限定されず、全ての組織の迅速固定に用いることも出来る。
以下に本発明の固定液を用いて水晶体を固定しパラフィン切片を作製した実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]固定液1及び固定液2の調製
脂肪族アルデヒドを溶解させた溶液(パラフォルムアルデヒドのような重合体、またはその単量体、およびアセトアルデヒド、アセトンから選択される1種類又は2種類以上)に容量%で脂肪族アルデヒドの10倍量程度の飽和脂肪族アルコール(n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルアルコール及びエチルアルコールから選択される1種又は2種以上)を混合し、冷却して過剰発熱を抑制しながら、最終的に1リットル(1000ml)になるようにカルボン酸、非金属元素の酸化物、又はそれらのアルカリ金属塩などを含む水溶液などを加えてよく攪拌し固定液1(A液)を調製した。
一方、1〜10重量%の第一の固定液とは異なる脂肪族アルデヒド類の試薬を蒸留水に溶解させ、pHをほぼ中性に調整した後、試薬の変性を防ぐため、カルボニル化合物を加えて攪拌し、pHを7.2とし、最終的に蒸留水を加えて1リットル(1000ml)として固定液2(B液)を調製した。
[実施例2]
(1)試料として4週令のDBA2/Crマウスの眼球を用いてパラフィン切片のH.E.染色標本を作製するために、以下の処理を行った。
(i) 固定、および固定からパラフィンブロック作製:固定液の容量は容積比で最低でも組織片:固定液を1:20以上とする。A液で15分・室温で固定した後、組織片をB液に移して15分・室温で固定した。B液で固定終了後、再度A液に眼球を入れて、再固定し、日常用いられている方法でパラフィンブロックを作成した。なお、脱水、脱脂、パラフィン浸透の各過程は全て真空式自動包埋装置で行った。
(ii) パラフィン切片標本の作製と標本の染色前処理:パラフィンブロックを氷水中に入れて充分に冷やした後、通常のミクロトーム(滑走式・回転式など)を使用して薄切切片を作製した。その際、使用するミクロトームの刃は硬組織用の替刃を用いた。切片の乾燥、および脱パラフィン・脱キシレン・親水化処理などは通常の方法で行った。
(iii) 染色
ヘマトキシリン・エオジン染色:通常のヘマトキシリン・エオジン染色(H.E.染色)を行い、マイヤーのヘマトキシリンで細胞核を、エオジンで細胞質を染色した。染色後は通常の封入剤を使用してカバーガラスで封入した。
(2)結果:組織構造の保持性
光学顕微鏡観察では、マウス眼球の角膜、水晶体、虹彩、毛様体、網膜の全組織において、従来の固定液で観察されていた組織の微細構造の崩壊を完全に防ぐことができた。図1は、上記方法により固定した水晶体の(a)角膜、(b)水晶体、(c)毛様体、(d)網膜、及び(e)眼球全体の標本の写真を示す。
図1(a)に示したように、本固定液、及び固定法で固定した角膜は角膜上皮細胞、角膜実質、角膜内皮細胞の間や細胞層の間に隙間が出来ることなく、微細構造まで観察することができた。
図1(b)に示したように、本固定液、及び固定法で固定した水晶体は水晶体嚢、水晶体上皮細胞、水晶体線維細胞、水晶体線維、水晶体核などの細胞や線維の間に隙間が出来ることなく、従来の固定法を用いたパラフィン切片で観察することが出来なかった微細構造まで初めて観察することが出来るようになった。後述([実施例4])する水晶体の免疫組織化学染色も可能であったため、組織や細胞の抗原性の維持が非常に良好であることも解った。
図1(c)に示したように、本固定液、及び固定法で固定した毛様体、虹彩、毛様体と網膜との接合部などの細胞同士や細胞層の間に隙間が出来ることなく、従来法によるパラフィン切片で観察することが出来なかった微細構造まで初めて観察することが出来るようになった。
図1(d)に示したように、本固定液、及び固定法で固定した網膜は組織膜(内境界膜様構造、強膜、脈絡膜など)、細胞同士、及び細胞層の間(網膜神経細胞層と網膜色素上皮細胞層の間など)に隙間が出来ることなく、従来の固定法を用いたパラフィン切片で観察することが出来なかった微細構造まで初めて観察することが出来るようになった。
図1(e)は、本固定液、及び固定法で固定した眼球全体、及び眼球周囲組織の弱拡大の写真を示した。従来の固定法を用いたパラフィン切片で観察することが出来なかった眼球全体の微細構造まで初めて同一切片で観察することが出来るようになった。さらに角結膜の結合部や眼瞼も眼球と同一切片で観察することが出来るようになった。
[実施例3]従来の固定法との組織学的比較
眼の切片標本を従来法、又は本発明の方法を用いて作製し、顕微鏡観察により組織学的な比較を行った。図2(a)は[実施例2]と同じ4週齢のDBA2/Cマウスの眼球を従来法の10%中性緩衝ホルマリンで固定し、実施例2と同様の方法でパラフィン切片標本を作製し、H.E.染色を行った。水晶体上皮細胞が水晶体嚢(カプセル)から離れてしまっており、水晶体線維細胞同士の間や1個の水晶体線維細胞の中にも亀裂が入ってしまっている。このような亀裂は生体内における水晶体では存在しないため、標本作製時のアーティファクトである。
次に、従来の電子顕微鏡標本作製方法で標本を作製し、その結果を図2(b)に示した。簡単に方法を述べると、グルタールアルデヒド固定液とオスミウム酸固定液で二重固定し、エポン樹脂で樹脂包埋し、ダイヤモンドナイフを使用してウルトラミクロトームで薄切し、トルイジン青染色を実施した。水晶体上皮細胞、水晶体線維細胞、及び水晶体線維の間に亀裂などができず、綺麗な標本を作製することが出来る。しかし、この方法だと眼球の一部分の組織形態学的観察は出来るが、免疫組織化学染色法などの研究は非常に困難であり、殆どの場合は免疫組織化学染色法は実施出来ない。遺伝子などの発現部位の研究(ISH法)も実施することは現在の技術では出来ない。
これに対して、本発明の固定液で固定し、実施例2と同様の方法でパラフィン切片標本を作製、H.E.染色を行った結果を図2(c)に示した。水晶体上皮細胞が水晶体嚢(カプセル)から離れる(亀裂が入る)ことなく、水晶体上皮細胞、水晶体線維細胞、水晶体線維、及び水晶体核の間に亀裂などができず、綺麗な標本を作製することができた。本法で固定し、作製した標本はパラフィン切片であり、組織の抗原性も非常によく保持されている(実施例4を参照)ため、免疫組織化学染色法や組織内遺伝子の発現部位の検索(ISH法)にも利用出来る。
[実施例4]免疫組織化学染色法による従来の固定法との比較
(1) 従来法で固定した正常水晶体の標本
〔方法〕従来法の10%中性緩衝ホルマリンで固定し、実施例2と同じ方法でパラフィン切片標本を作製し、免疫組織化学染色を行った。免疫組織化学染色の方法としては、一般的な方法であるが、パラフィン切片を脱パラフィン、脱キシレン処理をして親水化した後、内因性ペルオキシダーゼの処理、及びブロッキング処理をしてから、一次抗体を反応させた。一次抗体は正常(透明)水晶体では分子生物学的研究の結果から発現していないことが解っている細胞膜・細胞質蛋白と反応する抗体を使用し、一次抗体反応終了後、洗浄してからパーオキシダーゼ標識二次抗体を使用し、二次抗体反応終了後、一次抗体の時と同様に洗浄してからDABによる発色(茶色)・可視化を行った。
〔結果〕図3(a)に示したように、点線で囲まれた部位に非特異的な反応によるDABの発色や組織内の細胞相互間が離反していた。この原因は10%中性緩衝ホルマリンが組織内に充分に浸透していないため、固定が不充分であり、その結果として、本来の抗体反応ではない非特異的な反応がおこり、結果としてDABによる発色(着色)がおこっている。
(2)本発明の方法で固定した正常水晶体の標本
〔方法〕本発明の固定液で固定し、実施例2と同じ方法でパラフィン切片標本を作製し、免疫組織化学染色を行った。免疫組織化学染色は実施例4の(1)の方法と全て同じ試薬、同じ方法で行った。
〔結果〕図3(b)に示したように、従来法でみられたような非特異的な反応は一切みられなかった。免疫組織化学染色陽性の細胞は全く観察されていないが、この染色結果は分子生物学的研究の結果と一致しているため、この染色結果は正しいといえる。
(3)本発明の方法で固定した皮質白内障の標本
〔方法〕本発明の固定液で固定し、実施例2と同じ方法でパラフィン切片標本を作製し、免疫組織化学染色を行った。免疫組織化学染色は実施例4の(1及び2)で使用した抗体とは異なる細胞膜・細胞質蛋白に反応する抗体を使用した。また、一次抗体以外は実施例4の(1及び2)と同じ試薬、同じ方法で免疫組織化学染色を行った。
〔結果〕従来法では白内障の水晶体標本を作製することは非常に困難であった。かなり組織が壊れているため図には示すことができなかったが、免疫組織化学染色の特徴としては図3(a)に示した“正常(透明)水晶体”の場合と同様に本来の抗体反応ではない非特異的な反応が強く観察され、抗体と反応している細胞はごく僅かしか検出されなかった。一方、本発明の方法を使用すると、皮質白内障の水晶体の形態を完全に維持したまま標本を作製することが出来た。免疫組織染色の結果は、図3(c)に示したように従来法でみられた非特異的な反応はみられず、抗体と反応している細胞は従来法よりもはるかに鮮明に検出された。従って本発明法の方が従来法より組織の構造や抗原の保存性(保持性)が優れていることが解った。つまり、本発明法による固定液を使用すると、従来法と比べると免疫組織化学染色の感度が良くなることが示唆された。
(4)本発明の方法で固定した正常水晶体の標本
〔方法〕本発明の固定液で固定し、実施例2と同じ方法でパラフィン切片標本を作製し、免疫組織化学染色を行った。一次抗体は細胞核内蛋白質と反応する抗体を使用し、一次抗体以外の試薬は実施例4の(1)の方法と同じ試薬で免疫組織化学染色を行った。その結果を図3(d)に示した。
〔結果〕図3(d)に示したように、免疫組織化学染色の方法で、通常、細胞核内蛋白質を染色するには、一次抗体を反応させる前に酵素などで処理をする必要があるが、本固定液はアルコール類を含有するため、抗体が細胞の膜を容易に透過出来るようになるため、この実施例で使用した一次抗体では切片の酵素処理や界面活性剤による処理が不要であった。細胞核内蛋白質を染色することが出来たのは、やはり、固定液の組織への浸透性が良いため、免疫組織化学染色法を実施するにあたり、組織全体での抗原抗体反応の感度が良くなることも示唆された。また、本発明の方法による固定液では、固定すると同時に細胞核内へ試薬が浸透し易くなるという効果もあることが示唆された。
[実施例5]
(1)試料として軽度白内障のみられる40週令のNC/Ngaマウスの眼球を用いてパラフィン切片標本を作製した。標本の作製方法は実施例2と同じ方法でパラフィン切片のH.E.染色を実施した。
(2)結果:組織構造の保持性
肉眼的・実体顕微鏡下での観察では、供試マウスの加令に伴うと思われる水晶体中心部(水晶体核)に僅かに混濁(軽度白内障)が観察された。そこで、観察した眼球について本固定液、及び固定法で固定した眼球全体のパラフィン切片のH.E.染色標本の弱拡大の写真を図4に示した。肉眼的・実体顕微鏡下で観察された僅かな混濁に一致した箇所がH.E.染色で濃染しているのが観察された(図4aの矢印)。また、加令に伴う水晶体の硬化や白内障を発症した眼球(水晶体)ついても、従来の固定液や固定方法ではパラフィン切片で観察することが出来なかったが、本固定液、及び固定法で固定した場合、眼球全体の微細構造までパラフィン切片で初めて観察することが出来るようになった。白内障を発症した水晶体について、実施例4−(3)で示したように免疫組織化学染色も可能であったため、組織や細胞の抗原性の維持が非常に良好であったことも解った。今後の白内障発症原因の解明に対する研究の為の有用な固定液、及び固定法であると思われる。なお
図4bに同じ40週令の正常(透明)な水晶体、および眼球周辺組織の標本を示した。
[実施例6]
(1)試料として生後6日目のニワトリの眼球を用いてパラフィン切片標本を作製した。標本の作製方法は実施例2と同じ方法でパラフィン切片のH.E.染色を実施した。
(2)結果:組織構造の保持性
図5に示したように、本固定液、及び固定法で固定した場合、ニワトリの眼球に特有の眼胚裂(optic fissure)とよばれる組織(図5の矢印)や、ヒト、マウスとは異なるニワトリ特有の水晶体の構造、及び神経網膜層と網膜色素上皮細胞層などの微細構造が完全に保存されたままの状態でパラフィン切片標本を作製することが出来た。
[実施例7]
(1)試料として胎生4日目の発生過程におけるニワトリの眼球を用いてパラフィン切片標本を作製した。標本の作製方法は実施例2と同じ方法でパラフィン切片のH.E.染色を実施した。
(2)結果:組織構造の保持性
図6に示したように、発生過程の水晶体や網膜神経細胞層の微細構造などを観察することが出来た。
[実施例8]
(1)試料として8週令のDBA2/Crマウスの各種組織を用いて従来の固定液と本固定液の固定能力についての比較実験を行った。
(2)固定:本固定液(A液)と従来の固定液の20%中性緩衝ホルマリン液(F液)で2時間、室温で固定し、肉眼的、及び実体顕微鏡下での組織への固定液の浸透、及び固定状態について観察した。
(i) 結果:組織への固定液の浸透、及び固定状態の比較
図7(a)は、A液で2時間固定した眼球を示す。水晶体が固定されているため、白濁しているのが解る。眼球の形態も球状を維持している。一方、(b)は、F液で2時間固定した眼球を示す。角膜が固定されているため、僅かに水晶体の上の部分が混濁しているようにも見えるが、実際には水晶体が未固定のため、水晶体自体は透明のままである。このまま固定を続けてもA液のように水晶体が固定されることはなく、未固定のままである。眼球自体も少し変形しており、角膜にも凹凸が観察された。
(c)は、A液で2時間固定した肝臓を示す。固定されているため、肝臓の色が赤色から乳白色に変化しているのが解る。肝臓(c)の割断面を(d)に示す。固定液がムラなく浸透しているため、肝臓の割断面が一様に乳白色になっているのが解る。肝臓の中の血管に残っている血液も黒褐色に変化して固定されているのが解る。
一方、F液で2時間固定した肝臓を(e)示す。固定が不充分であるため、肝臓の色がまだ赤褐色である。肝臓(e)の割断面を(f)に示す。固定液が殆ど浸透していないため、肝臓の割断面がピンク色のままである。肝臓の中の血管に残っている血液も赤色のままである。
被膜を剥がしてからA液で2時間固定した腎臓を(g)に示す。腎臓の色が赤色から黄白色に変化しているのが解る。腎臓(g)の割断面を(h)に示す。固定液がムラなく浸透しているため、腎臓の割断面が一様に桃白色になっているのが解る。
被膜を付けたままA液で2時間固定した腎臓を(i)に示す。固定されているため、腎臓の色が赤色から黄白色に変化しているのが解る。腎臓(i)の割断面を(j)に示す。被膜が付いている場合、従来の固定液では固定され難かった。A液を用いた場合には、2時間だけの固定でも腎実質は桃白色に固定されているのが解る。しかし、腎盂はまだ若干赤色を帯びている。一方、被膜を剥がしてからF液で2時間固定した腎臓を(k)に示す。固定が不充分であるため、腎臓の色がまだ赤褐色のままである。腎臓(k)の割断面を(l)に示す。固定液が殆ど浸透していないため、腎臓の割断面が赤色のままである。被膜を付けたままF液で2時間固定した腎臓を(m)に示す。固定がより不充分であるため、腎臓の色がまだ赤褐色のままである。腎臓(m)の割断面を(n)に示す。被膜が付いているため、被膜を剥がしてF液で固定した腎臓の割断面(l)よりもさらに固定液が殆ど浸透していないため、腎臓の割断面が赤色のままの部位が多い。
次に、図7(o)はA液で2時間固定した脳を示す。固定されているため、脳の色が乳白色に変化しているのが解る。これに対し、F液で2時間固定した脳を(p)に示す。固定が不充分であるため、脳の色がまだ黄白色のままである。
更に、図7(q)はA液で2時間固定した胸腺を示す。固定されているため、胸腺の色が乳白色に変化しているのが解る。これに対し、F液で2時間固定した胸腺を(r)に示す。固定が不充分であるため、胸腺の色がまだ黄白色のままである。
続いて、(s)はA液で2時間固定した脾臓を示す。固定されているため、脾臓の色が赤褐色に変化しているのが解る。これに対し、F液で2時間固定した脾臓を(t)に示す。固定が不充分であるため、脾臓の色がまだ黒褐色のままである。
次に図7(u)はA液で2時間固定した肺を示す。肺は固定されにくい臓器の一つであるが、2時間の固定で既に肺の辺縁が固定され、乳白色に変化しているのが解る。これに対し、F液で2時間固定した肺を(v)に示す。固定が不充分であるため、肺の色がまだ赤褐色のままである。図には示していないが、A液を用いて還流固定を行うこともできるため、還流固定を実施すると肺全体が速やかに固定された。
図7(w)はA液で2時間固定した膵臓を示す。固定されているため、膵臓の色が乳白色に変化しているのが解る。これに対し、F液で2時間固定した膵臓を(x)に示す。固定が不充分であるため、膵臓の色がまだ褐色のままである。
本固定液は、従来のホルマリン固定法などでは固定の困難な難浸透性組織に対し非常に迅速に固定することが出来る。本固定液は還流固定にも用いることが出来るため、実験動物などの全臓器を速やかに固定することも出来る。固定液の浸透性のよい組織に対しても勿論迅速固定液として利用することが出来る。組織標本以外にも培養した細胞の固定も細胞の形態を変化させることなく、細胞膜抗原性などを保持出来るため、細胞迅速固定液としての使用も期待出来る。さらに従来の固定法に比べると人体にも安全で、これまで困難であった組織標本を生体内の状態をほぼ完全に保持したまま比較的安価で標本を作成できるようになる。このため最先端の医科学研究の進展に大いに利すると考えられる。また、研究領域のみならず、臨床領域においても一般の病理検査、及び組織化学的検査などの広い範囲での利用が期待される。
従来の固定液では標本を作成することが出来ない代表例として、水晶体や眼球全体を例に挙げると本固定液で固定して作成したパラフィン標本や凍結切片標本は水晶体全体が本来ある形態のままで保持され、さらに抗原などもそのまま保存されるため免疫組織染色を行う際に抗原賦活処理をしなくてもよいこともある。さらに抗原検出感度を上げるために抗原賦活処理をしても固定が充分にされているため、スライドから標本が剥がれ難くなるという利点もある。その結果として抗原の発現分布を詳細に、且つ正確に観察でき、水晶体の透明性の保持されている機構の解明や透明水晶体と白内障の水晶体との比較などの研究が進むことで白内障などの水晶体の疾患の発症メカニズムなどについての詳細なデータを得ることが充分に期待される。ここでは難浸透性組織の一例として水晶体を主に示したが、他の臓器についても同様の効果が期待出来ることは[ 実施例8]の結果からも窺える。従って本固定液と固定方法は極めて広範囲な医科学分野の基礎・臨床の研究に役立つと考えられる。
実施例2で作製した4週令のDBA2/Crマウス眼球のパラフィン切片のH.E.染色標本の顕微鏡写真である。(a)角膜、(b)水晶体、(c)毛様体、(d)網膜、(e)眼球全体。本固定液、及び本固定方法を用いることにより、生体内の構造をそのまま保持した標本を作製することが出来た。 実施例3で行った眼の切片標本について従来の固定法、及び固定液と本固定法、及び本固定液との比較をした顕微鏡写真である。(a)は従来のホルマリン固定液で作製したパラフィン切片のH.E.染色標本、(b)は電子顕微鏡標本作製する際に利用するグルタールアルデヒドとオスミウム酸で二重固定し、作製したエポン樹脂切片のトルイジン青染色標本、(c)は本固定液で作製したパラフィン切片のH.E.染色標本である。 実施例4で行った免疫組織化学染色法による本固定法と従来の固定法との比較である。(a)は従来の固定液で固定した正常(透明)水晶体のパラフィン切片標本を正常(透明)水晶体には存在しない細胞膜・細胞質蛋白に反応する一次抗体を使用して免疫組織化学染色を行った結果である。固定が不充分であるため、非特異的な反応や組織内の細胞相互間が離反していた(点線で囲まれた部位)。(b)は本固定液で固定した正常水晶体のパラフィン切片標本を(a)と同じ一次抗体を使用して免疫組織化学染色を行った結果である。固定が充分されているため、非特異的な反応が一切みられない。(c)は本固定液で固定した白内障の水晶体について(a)とは異なる細胞膜・細胞質蛋白と反応する一次抗体を使用して免疫組織化学染色を行った結果である。本固定液を使用すると、白内障水晶体の切片標本も作製することができ、且つ非特異的な反応はみられず、さらに従来法と比較すると抗体の感度や特異性などが良くなっていた。(d)は本固定液で固定した正常水晶体について細胞核内蛋白質と反応する一次抗体を使用して免疫組織化学染色を行った結果である。非特異的な反応はみられず、通常細胞核内蛋白質を染色する際に行われることが多い前処理を行わなくても、この実施例で使用した一次抗体による免疫組織化学染色では陽性細胞を染色することが出来た。 (a)は実施例5で作製した40週令のNC/Ngaマウス眼球の軽度核白内障のパラフィン切片のH.E.染色標本の顕微鏡写真である。水晶体中心部の混濁した部位がH.E.染色で濃染しているのが解る。(b)は同じ40週令の正常(透明)な水晶体、および眼球周辺組織の標本の顕微鏡写真である。 実施例6で作製した生後6日目のニワトリ眼球のパラフィン切片のH.E.染色標本写真である。ニワトリ眼球に特有の眼胚裂(矢印)や水晶体構造を詳細に観察することが出来た。 実施例7で作製した胎生4日目のニワトリ眼球のパラフィン切片のH.E.染色標本写真である。発生過程の水晶体や網膜神経細胞層の微細構造が観察出来た。 実施例8で作製した8週令のDBA2/Crマウスの各組織を用いて行った比較実験の結果である。(a)は本固定液で2時間固定した眼球、(b)は従来法で2時間固定した眼球を示す。(c)は本固定液で2時間固定した肝臓、(d)は肝臓(c)の割断面を示す。(e)は従来法で2時間固定した肝臓、(f)は肝臓(e)の割断面を示す。(g)は被膜を剥がしてから本固定液で2時間固定した腎臓、(h)は腎臓(g)の割断面を示す。(i)は被膜を付けたまま本固定液で2時間固定した腎臓、(j)は腎臓(i)の割断面を示す。(k)は被膜を剥がしてから従来法で2時間固定した腎臓、(l)は腎臓(k)の割断面を示す。何れも本固定液の方が組織を迅速に固定出来ているのが解る。 実施例8で作製した8週令のDBA2/Crマウスの各組織を用いて行った比較実験の結果である。(m)は被膜を付けたまま従来法で2時間固定した腎臓、(n)は腎臓(m)の割断面を示す。(o)は本固定液で2時間固定した脳、(p)は従来法で2時間固定した脳を示す。(q)は本固定液で2時間固定した胸腺、(r)は従来法で2時間固定した胸腺を示す。(s)は本固定液で2時間固定した脾臓、(t)は従来法で2時間固定した脾臓を示す。(u)は本固定液で2時間固定した肺、(v)は従来法で2時間固定した肺を示す。(w)は本固定液で2時間固定した膵臓、(x)は従来法で2時間固定した膵臓を示す。何れも本固定液の方が組織を迅速に固定出来ているのが解る。

Claims (11)

  1. 従来、標本の作成が困難、又は不可能であった難浸透性組織を含む全ての組織を迅速にかつ組織特異的抗原性を保持したままの標本作成を可能とすることを特徴とする組織迅速固定液。
  2. アルコール類とアルデヒド類の混合液と、残部の水溶液とからなることを特徴とする請求項1に記載の組織迅速固定液。
  3. 前記アルコール類が飽和脂肪族アルコールである請求項2に記載の組織迅速固定液。
  4. 前記飽和脂肪族アルコールが炭素数1〜3の一価の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項3に記載の組織迅速固定液。
  5. 前記アルデヒド類が脂肪族アルデヒドである請求項2に記載の組織迅速固定液。
  6. 前記脂肪族アルデヒドが炭素数1〜3のカルボニル化合物の単体、または重合体である請求項5に記載の組織迅速固定液。
  7. 残部水溶液にカルボン酸若しくはそのアルカリ金属塩、又は非金属元素の酸化物若しくはそのアルカリ金属塩などを含む請求項2〜6の何れか一項に記載の組織迅速固定液。
  8. 実質的に、40〜95容量%の脂肪族アルコールと1〜20容量%の脂肪族アルデヒドの混合液と、残部の水溶液とからなる第一の固定液を用いて組織を固定する工程と、
    必要に応じて、1〜10重量%の第一の固定液とは異なるアルデヒド類とカルボニル化合物を含む第二の固定液で前記組織を固定する工程と、を含むことを特徴とする組織の固定方法。
  9. 実質的に、40〜95容量%の脂肪族アルコールと1〜20容量%の脂肪族アルデヒドの混合液と、残部の水溶液とからなる第一の固定液と、
    1〜10重量%の第一の固定液とは異なるアルデヒド類とカルボニル化合物を含む第二の固定液と、を含むことを特徴とする固定液セット。
  10. 前記第一、及び/又は第二の固定液の残部水溶液にカルボン酸若しくはそのアルカリ金属塩、又は非金属元素の酸化物若しくはそのアルカリ金属塩などを含む請求項9に記載の固定液セット。
  11. 難浸透性組織以外の組織においても従来法と比較すると、迅速固定の際に組織の特異的抗原性を保持し、免疫組織化学的方法の精度を高く維持することができる請求項1〜7の何れか一項に記載の固定液又は請求項9若しくは10に記載の固定液セット。



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