JP2023547961A - Tリンパ球の増殖能を測定するためのマーカーとしてのトルクテノウイルス(ttv)の使用 - Google Patents

Tリンパ球の増殖能を測定するためのマーカーとしてのトルクテノウイルス(ttv)の使用 Download PDF

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Abstract

本発明の主題は、対象におけるTリンパ球の増殖能を決定するための方法であり、前記方法は、以下の工程:a)前記対象の生体試料からトルクテノウイルスの量を測定する工程と;b)a)で測定されたウイルス量に基づきTリンパ球の増殖能を決定する工程と、を含む。

Description

免疫系は、病原性感染、細胞形質転換、物理的又は化学的損傷等の攻撃から体を防御する。このように、免疫能のある個体は、抗原刺激に対する防御免疫応答を引き起こすことができる。
しかしながら、免疫系が弱まったり、完全に欠如したりすると、免疫不全が発現する。これは様々な形態をとり、欠損の原因に応じて、自然免疫系又は適応免疫系又はその両方に影響を及ぼすことがある。多数の症例では、免疫不全は生涯にわたって獲得される。感染性かどうかにかかわらず(HIV感染等)、病理に起因することもあれば、放射線療法や化学療法等の治療によって誘発されることもある。患者はその後、細菌、ウイルス、寄生生物、真菌等の病原体による二次感染に対する易罹患性の増加を示すので、免疫不全状態は、特に危険である。例えば、移植片に対する免疫抑制治療、特に造血幹細胞移植(HSCT)の使用は、患者において再発性、又は場合によっては致命的な微生物感染を引き起こすことがある。
したがって、対象の免疫系の機能を決定できることが重要である。これは、特に免疫不全が特定されたときに適切な治療反応を適応させることを可能にする。
免疫能の測定には様々な技術が利用できるが、完全に満足できるものはない。これらの技術は、とりわけ細胞仲介に対する免疫応答を測定し、特にリンパ球の集団の分析、特にCD4T細胞の数又はCD4/CD8T細胞の比率の測定、リンパ球増殖能の測定、T細胞の細胞毒性の測定、抗体応答の測定、四量体の標識、産生されたサイトカインの検出、ELISpot等を含む。
例えばT細胞の計数等、これらの技術の幾つかは、これらの細胞の活性、ひいては免疫系の活性を必ずしも反映しない結果を与える。T細胞の絶対数は、これらの細胞が増殖する能力について何も示さない。例えば、HSCT後の少数のT細胞は、これらのT細胞が増殖できず、微生物感染から患者を守ることができないことを示しているとは言うことができない。更に、細胞増殖試験は、日常的に実施することが困難であり、標準化が困難なことがある。そのため、免疫能を決定するのに簡単に使える、簡便な方法が依然として求められている。
トルクテノウイルス(TTV)は、輸血後肝炎(1~7)の日本人患者において1997年に初めて同定されたAnelloviridae科のウイルスである。TTVは、小さなサイズ(約3.8kb)の一本鎖環状DNAを有するウイルスであり、大きな遺伝的多様性を有するコード領域と、よく保存された非コード領域(UTR)を含む。この非コード領域の配列を増幅するためのプライマーの使用は、TTVの高い世界的蔓延(約90%)を示してきた。TTVは、明確に関連する臨床所見を伴わずに慢性感染症を引き起こす。非病原性又はオーファンウイルスと呼ばれる。このように、多くの研究がヒトの病理学、特に特定の肝病理学におけるTTVの関与を扱っているが、このウイルスの明確な役割は特定されていない。
しかしながら、免疫不全の対象ではTTV量が高いことが観察されている。例えば、臓器移植の文脈(context)で、免疫抑制治療(非特許文献1)又はHSCT(非特許文献2)を受けた患者では、高レベルのTTVが認められる。更に、TTV量と、慢性感染症や癌に関連する免疫系の欠損との間には関連性があると考えられる(非特許文献3)が、一方でTTVは、HIVやHCV感染等の免疫抑制ウイルス感染に関連して見られる。
これらの観察は、TTV量が免疫能のマーカーである可能性を示唆した(8~11)。しかしながら、これらの研究では、免疫能は、免疫細胞の数又は望ましくない臨床イベントの発生からのみ評価された(11~14)。現在では、細胞の量は必ずしも細胞の質と関連しない、即ちT細胞の活性がその数に反映されないことが既に示唆されている(12)。
したがって、対象においてT細胞が活性化されることができるかどうかを決定することを可能にする、簡単で信頼性の高い方法が依然として必要である。
Rezahosseini et al.,Transplant Rev(Orlando). 33(3):137-144,2019 Albert et al.,Med Microbiol Immunol.208(2):253-258,2019 Zhong et al.,Ann NY Acad Sci.945:84-92,2001;Fogli et al.,Clin Dev Immunol.2012:829584,2012;Beland et al.,J infect Dis.209(2):247-254,2014;Gorzer et al.,J Heart Lung Transplant.33(3):320-323,2014)
本発明は、T細胞が対象において機能的であるかどうかを決定する方法に関する。より正確には、本発明者らは、特に、移植、より具体的にはHSCTを受けた患者において、T細胞の増殖能がトルクテノウイルス(TTV)の量と逆相関することを示した。TTVウイルス量は、T細胞の増殖と逆相関する:したがって、TTV量が高いほど、T細胞の増殖能は低くなる。ウイルス量は、これがT細胞の数であろうと臨床基準であろうと、別のパラメータと特異的に相関しておらず、特定された相関の関連性を強調する。TTV量は、特に移植、特にHSCTを受けた患者において、T細胞の活性の特定のマーカーである。したがって、免疫系の機能の展開は、対象において、TTV量を測定するだけで追跡されることができる。したがって、このパラメータを評価するために通常採用される面倒な技術的工程を実施する必要なく、免疫系の機能状態を迅速に評価することが可能である。
T細胞の増殖能を決定する方法
本記載は、患者におけるTTV量の測定を含む、対象におけるT細胞の増殖能を決定する方法に関する。
前述のように、T細胞の増殖能は、必ずしも当該T細胞の数と相関しない。したがって、T細胞の数を数える既知の方法は、T細胞の増殖能、したがって免疫系の機能について何ら情報を提供しない。したがって、発明者らは、T細胞の増殖能と有利に相関する、日常的に容易に測定可能な新しいパラメータを特定し、それによって免疫系の機能を評価することを可能にしたという利点を有する。
「T細胞(T cells)」又は「T細胞(T cells)」は、免疫応答を増幅又は減少させる役割を担う免疫系の必須細胞である。好ましくは、T細胞は、CD3と呼ばれる膜マーカーと、特定の受容体である、抗原認識に直接関与する特異的受容体TCR(「T細胞受容体」の意)の発現によって特徴づけられる。有利には、T細胞は他の表面マーカー、特にT細胞の特定の機能カテゴリーに対応するCD4及びCD8を発現することができる。HSCTの文脈では、関与されるT細胞は、特にレシピエントの少数の残存T細胞、又は移植において存在するドナーのT細胞であることができる。また、レシピエントの胸腺においてドナーの幹細胞と前駆細胞の分化の結果生じたナイーブT細胞であることもできる。
本明細書における「T細胞の活性化(activation of the T cells)」又は「T細胞の活性化(activation of T cells)」という表現は、ナイーブT細胞が免疫応答に関与できるようになるプロセスを指す。T細胞の活性化は、特にその増殖につながる。したがって、T細胞の活性化は、T細胞の増殖を測定することによって有利に評価される。T細胞の増殖の測定は、通常、当業者に知られる技術によって行われるが、実施するのは面倒である。特に、T細胞は、例えばコンカナバリンA(Con A)、ヨウシュヤマゴボウのマイトジェン(PWMは“ヨウシュヤマゴボウマイトジェン”の意)、及びフィトヘマグルチニン(PHA)のようなマイトジェンの存在下で、そのTCRの特異性とは無関係に、増殖できることがよく知られている。先行技術の方法は、マイトジェンによる刺激後のT細胞のDNAの合成を測定することによって、T細胞の増殖能を評価する。しかしながら、これらの方法は実施するのが面倒であるので、日常的に使用することは困難なことがある。比較すると、本明細書で記載される方法は、特に単純で強力である。
したがって、T細胞増殖試験は、以下の工程:
-遠心分離によって全血から末梢血単核球(PBMC)を単離する工程と;
-当該単離されたPBMCを、任意に、細胞培養プレート等の補足培地でインキュベーションする工程と;
-マイトジェンによる刺激(できれば2倍)工程と;
-インキュベーション工程と;
-T細胞の増殖を決定するために、例えば培養ペレットからのフローサイトメトリーによる分析工程と、
を含む。
実施形態の例において、特に、詳細なプロトコルが提供される。
第1の態様によれば、対象における、T細胞の増殖能を決定する方法が本明細書に記載され、前記方法は、
a)前記対象の試料からのTTV量の測定工程と;
b)a)で測定されたウイルス量に応じて対象のT細胞の増殖能を決定する工程と、
を含む。
好ましい実施形態によれば、高いTTV量は、T細胞の増殖能が低いことを示す。逆に、低いTTV量は、細胞の増殖能力が高いことを示す。
もちろん、生体試料中のTTV量が高いか低いかを決定し、T細胞の増殖能について結論を導くためには、当該TTV量を、本記載の後で定義される基準TTV量又は対照量と有利に比較されることができる。一例として、基準TTV量は、一人の同一個体で測定されたTTVウイルス量であることができる。
本方法は、より具体的には、免疫不全状態を有することがある対象におけるT細胞の増殖能力を評価するのにより適している。
本明細書で使用される「免疫不全」(又は「免疫抑制(immunodepression)」又は「免疫抑制(immunosuppression)」)という用語は、免疫系の機能の低下又は抑制を指す。したがって、本明細書における「免疫不全状態」とは、対象の免疫系が低下又は欠如している状態を示す。好ましくは、免疫不全状態の対象では、感染性病原体に対する体液性及び/又は細胞性の免疫応答が欠損している。より好ましくは、免疫不全状態は、少なくとも細胞性応答の低下によって発現される。
免疫不全は、原発性と続発性であることができる。原発性免疫不全症には、感染に対する易罹患性が増加した免疫系の先天性欠損を含む。対照的に、続発性免疫不全(又は後天性免疫不全)は、例えば、病原体への曝露、疾患(例えば、リンパ腫又は白血病)、疾患を治療する療法(例えば、放射線療法又は化学療法)、免疫抑制、又は加齢に伴うが、これらに限定はされない、生活の中で現れる免疫機能の損失に対応するものである。免疫不全を引き起こすことがある病原体は、とりわけ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)1(HIV-1)、HIV-2、梅毒トレポネーマ、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、二日熱マラリア原虫、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、プリオン、ウエストナイルウイルス、パルボウイルス、クルーズトリパノソーマ、SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2等のコロナウイルス、及び/又は牛痘ウイルスを含む。また、移植片拒絶反応を防ぐために、例えば臓器移植(例えば腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、腸等)やHSCT等の移植準備において、薬物によって意図的に免疫不全を誘発することもできる。
本記載による免疫不全は、続発性(又は後天性)免疫不全であることが好ましい。したがって、本明細書に記載されている免疫不全は、例えば、免疫抑制治療、薬物治療又は放射線療法を含む療法の免疫抑制副作用、遺伝性免疫抑制遺伝形質又は疾患、後天性免疫抑制疾患(AIDS等)、癌(白血病又はリンパ腫等)等、いかなる起源のものであってもよいが、これらに限定されない。特に、免疫不全は、移植、特にHSCTと関連している。
特定の実施形態では、免疫不全状態にある可能性が高い対象は、移植を受けた対象である。より特定の実施形態によれば、この移植はHSCTである。
より具体的には、本記載は、HSCTを受けた対象におけるT細胞の増殖能を決定するための方法に関するものであり、前記方法は以下の工程:
a)対象の試料からのTTV量を測定する工程と;
b)a)で測定されたウイルス量に応じて対象のT細胞の増殖能を決定する工程と、
を含む。
好ましい実施形態によれば、高いTTV量は、細胞の増殖能が低いことを示す。逆に、低いTTV量は、細胞の増殖能が高いことを示す。
本明細書では、「幹細胞」は、2つの主要な特性:自己複製能と非常に長い期間その場に留まる能力、及びその多能性を定義する特定の組織の全ての種類の分化した細胞を生成する能力、を有する未分化であるが特殊な細胞を示すことを意図している。本明細書では、「造血幹細胞」又は「HSC」は、より具体的には、異なる血液の細胞(特に赤血球、血小板、顆粒球、T細胞又はB細胞、単球)をもたらすことができる幹細胞を示す。HSCは、臍帯血から有利に得ることができる。或いは、末梢血から得ることもできる。骨髄から得ることも可能である。
本明細書において理解される「造血幹細胞移植」又は「HSCT」とは、一般に骨髄、末梢血、又は臍帯血に由来するHSCをドナーからレシピエントに移植する、血液学分野の治療手技である。
HSCTは、様々な疾患に対する潜在的な治療アプローチである。これらは特に血液疾患、特に急性白血病、脊髄形成異常症、及びリンパ腫のような特に悪性の血液疾患、及び体質的延髄形成不全及び異常ヘモグロビン症、固形腫瘍、免疫欠損、及び、例えばゴーシェ病等の造血組織の酵素欠損及び免疫欠損を含む、重度の予後を伴う非悪性の血液疾患である。病理は、血液疾患であることが好ましく、悪性の血液疾患であることがより好ましい。
HSCTは、自己由来のもの(患者自身の幹細胞が使用される、即ちドナーとレシピエントは同一人物である)と同種由来のもの(以下「同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)」という。本幹細胞は、レシピエント以外のドナー由来である)であることができる。本明細書で説明される方法のHSCTは、同種移植であることが好ましい。
この具体的な実施形態によれば、本記載は、同種造血幹細胞移植を受けた対象におけるT細胞の増殖能を決定する方法に関し、前記方法は、以下の工程:
a)対象の試料からのTTV量を測定する工程と;
b)a)で測定されたウイルス量に応じて対象のT細胞の増殖能を決定する工程と、
を含む。
好ましい実施形態によれば、高いTTV量は、細胞の増殖能が低いことを示す。逆に、低いTTV量は、細胞の増殖能が高いことを示す。
同種移植の場合、移植手術前に準備のための治療(又は前処置(conditioning)治療)を行い、レシピエントの免疫系の活性を破壊又は低下させる。この前処置は、移植片の拒絶反応を防ぎ、腫瘍の量を軽減することを目的としている。
前処置は、「骨髄破壊的」であることができる。本明細書で理解されている「骨髄破壊的」前処置とは、レシピエントの骨髄の細胞を破壊する前処置である。有利なことに、骨髄破壊的前処置は、レシピエントの免疫系も破壊するため、移植片の受け入れを容易にする。骨髄破壊的前処置は、特に化学療法及び/又は放射線療法の1以上の工程を含むことができる。例えば、一般的に使用される前処置のうち2つは、ブスルファン-シクロホスファミドとシクロホスファミド-全身照射(TBI)との組合せである。好ましくは、骨髄破壊的前処置は、55歳未満、好ましくは50歳未満の患者に適用される。
或いは、前処置は、非骨髄破壊的前処置であり、これは減弱的であり、「低下された強度」とも呼ばれる。「減弱的前処置」とは、レシピエントの骨髄を完全に破壊するのではなく、レシピエントの免疫系を阻害し、移植片の受け入れを促進する前処置である。この減弱的前処置は、免疫抑制剤の投与を含むことが好ましい。例えば、減弱的前処置のプロトコルは、フルダラビン、シクロホスファミド、又は他のアルキル化剤と、TBIとの組合せを含むことができる。減弱的前処置のプロトコルの別の例は、フルダラビン、抗リンパ球血清(ALS)、及びブスルファンの組合せを含むことができる。減弱的前処置のプロトコルの別の例は、フルダラビン、イダルビシン、及びシタラビンの組合せを含むことができる。最後に、減弱的前処置のプロトコルの別の例は、フルダラビンと完全なミニ照射(mini-irradiation)の組合せを含むことができる。好ましい実施形態では、減弱的前処置は75歳未満の患者に適用される。
本明細書で使用される「ドナー」という用語は、HSCをレシピエントに移植する対象を指す。本明細書では、「レシピエント」又は「患者」は、ドナーからHSCを受け取る対象を意味する。特定の実施形態では、レシピエントは、完全であるか部分的であるかにかかわらず、HSCTが治療上の利益を提供すべき病理によって影響される。
本明細書で使用されるように、「対象」という用語は、脊椎動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを指す。例えば、ヒトは患者である。
好ましくは、以下に説明する方法では、その全ての実施形態において、対象は患者である。
「患者」という用語は、例えば、医師等の医療専門家、医療組織、病院等の医療施設に接触したヒトを指す。
本明細書では、「生体試料」とは、対象から採取されることができるいずれの試料を意味する。一般に、生体試料は、TTV量の決定を可能にしなくてはならない。本明細書で理解されているように、生体試料は、とりわけ、全血、血清、血漿、痰、鼻咽頭の試料、尿、糞便、皮膚、脳脊髄液(cerebrospinal fluid)、唾液、胃液分泌物、精液、精漿、涙、脊髄組織又は脊髄液、脳脊髄液(cerebral fluid)、三叉神経節の試料,仙骨リンパ節の試料、脂肪組織、リンパ組織、胎盤組織、上部生殖器系の組織、胃腸管系の組織、生殖器組織、及び中枢神経系の組織が挙げられるが、これらに限定されない。試験試料は、生体源から直接、又は試料の特性を修正するための前処理後に使用されることができる。例えば、この前処理は、血液からの血漿の調製、粘性流体の希釈等を含む。前処理の方法は、濾過、沈殿、希釈、蒸留、混合、濃縮、阻害成分の不活性化、試薬の添加、溶解等を含むこともできる。更に、固体の試験試料を修正して液体培地を形成したり、分析物(analyte)を放出したりすることが有益な場合もある。生体試料は、血液又はその誘導体(血漿や血清等)であることが好ましい。したがって、生体試料は、試験される対象に由来する血液、血漿、又は血清であることが好ましい。
「トルクテノ(Torque Teno)ウイルス又はトルクテノ(Torque teno)ウイルス又はTTV」とは、Anelloviridae科のウイルスを意味する。本明細書で理解されるように、TTVは、非エンベロープウイルスであり、負の極性を持つ環状一本鎖DNAのゲノムを有する。本明細書では、「TTVゲノム」とは、alphatorquevirus(TTV)、betatorquevirus(TTMV)、gammatorquevirus(TTMDV)を含む全てのAnelloviridae科のゲノムを指す。例として、本明細書では、トルクテノウイルスのプロトタイプ株であるTTV-1aのゲノムを参照する。より具体的には、TTVゲノムの例は、例えば配列番号1で表され、Genbank受入番号がAB017610であるような配列である。
TTVゲノムのサイズは、約3.8kbであることが好ましい。TTVの構造及びゲノム構成は、よく知られており(例えば、Biagini,Curr Top Microbiol Immunol.331:21-33,2009を参照)、図1に例示されている。したがって、TTVゲノムは、約1~1.2kbの非翻訳領域(UTR)及び約2.6~2.8kbの潜在的なコード領域に分割されることができる。コード領域は、特に、ORF1及び/又はORF2という2つの大きなオープンリーディングフレームを含み、それぞれ770残基と202残基を有する2つのタンパク質をコードする。配列番号1で表されるTTVゲノムでは、オープンリーディングフレームORF1及び/又はORF2は、それぞれヌクレオチド589~2901と107~715との間にある。TTVゲノムは、他のオープンリーディングフレームを有することができる。例えば、TTVゲノムは、ORF3及び/又はORF4という2つの追加のリーディングフレームを含むことができる(図1)。
対照的に、非翻訳領域UTRはよく保存されている。これは特に、二次構造を形成することができるGCリッチな配列を含む。非翻訳領域UTR-5’で選択された配列の増幅は、全世界の人口を通してウイルスの有病率が非常に高いことを実証することを可能にする(Hu et al.,J Clin Microbiol.43(8):3747-3754,2005)。この領域は特に、TTV R-GENE(登録商標)診断キット(bioMerieux、フランス)で増幅可能な128bpの配列を含む。
本明細書で理解されるように、「ウイルス量」は、生体試料中に存在するウイルス粒子の数である。ウイルス量は、ウイルス感染の重症度を反映する。ウイルス量は、この生体試料中のウイルスの成分(ゲノムDNA、mRNA、タンパク質等)の1つの量を測定することによって決定されることができる。したがって、ウイルス量とは、生体試料中の当該ウイルスに属する核酸配列の割合を指すことが好ましい。より好ましくは、ウイルス量は、生体試料中の当該ウイルスのゲノムのコピー数を表す。
この場合、ウイルス量はTTV量を表す。本明細書での「TTV量」は、より具体的にはTTVのウイルス量、即ち生体試料中に存在するTTVのウイルス粒子の数に対応する。対象におけるTTV量は、当該被験者が有する全てのTTVのウイルス量を意味する。TTV量は、この生体試料中の核酸又はタンパク質等のTTVの成分の量を測定することによって決定されることができる。TTV量は、生体試料中に存在するTTVの核酸配列の量に対応することが好ましい。したがって、本発明による対象中のTTV量の決定は、当該対象からの生体試料中の全てのTTVの配列数の推定を含む。特に、本発明によれば、当該生体試料中で測定されるTTVの特定の菌株の選択はない。TTV量の決定は、活性及び/又は不活性なウイルスコピーの量の決定を含むことが好ましい。それは、組み込まれた又は潜在的に循環しているウイルスコピーの量を決定することからなる。
TTVのレベル、つまりTTV量は、TTV DNA、TTV RNA、又はTTVタンパク質のレベルを測定することによって決定されることができる。したがって、本発明に係る方法は、患者から試料を得ることと、上記で定義された工程a)との間に、生体試料を二本鎖DNAの試料、又はmRNA(又は対応するcDNA)の試料、又はタンパク質の試料への転換に対応する、他の予備工程を含むことができ、その後、工程a)でTTVのインビトロ検出に使用する準備が整う。細胞試料から出発される二本鎖ウイルスDNA、mRNA(及び後者のcDNAへの逆転写)、又はタンパク質の調製又は抽出は、当業者にはよく知られた日常的な手順にすぎない。二本鎖DNAはTTVゲノム全体に対応する場合もあれば、その一部にのみ対応する場合もある。二本鎖DNA、mRNA(又は対応するcDNA)、又はすぐに使用できるタンパク質の試料が利用可能になれば、試料や形質転換の種類に応じて、ゲノムDNA(即ち、TTVゲノムの少なくとも一部からなる少なくとも1つの配列の存在に基づく)、mRNA(即ち、試料中のTTV mRNAの含有量に基づいて)、又はタンパク質レベル(即ち、試料中のTTVタンパク質の含有量に基づいて)のいずれかによって、TTVの検出を行うことができる。
好ましくは、TTVのレベルは、TTV核酸、より好ましくはTTV DNAのレベルを測定することによって決定される。
生体試料中の核酸の検出方法は、とりわけ、PCR増幅、配列決定、標識プローブとのハイブリダイゼーション、及び当業者に知られている他の全ての方法を含む増幅を含む。
第1の実施形態によれば、TTV量は、TTV配列の増幅によって決定される。
好ましいアプローチは、TTVゲノムに特異的であることが知られている配列の増幅からなる。本明細書では、「TTVゲノムに特異的な配列」とは、既知のTTVの大部分に存在するが、他の大多数のウイルス、特に他の大多数のanellovirusには存在しない配列を意味する。TTVに特異的な配列は、既知のTTVのゲノムの少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%に存在することが好ましい。既知のTTVのゲノムの100%に存在することがより好ましい。或いは、TTV以外の既知のanellovirusのゲノムの10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満に、TTVに特異的な配列が存在する。TTV以外の既知のanellovirusの全ゲノムに、TTVに特異的な配列が存在しないことが好ましい。このような配列は、例えば、非翻訳領域UTRに含まれる配列である。より具体的には、このような配列は、TTV R-GENE(登録商標)診断キット(bioMerieux、フランス)を使用して増幅される非翻訳領域5’-UTRの128bpの配列に対応する。
したがって、この実施形態によれば、本明細書で記載される方法は、TTVゲノムに特異的であることが知られている配列の増幅のためのプライマーとプローブの使用を含む。本技術分野では通常、これらのプライマーはオリゴヌクレオチドであることが好ましい。例えば、これらのプライマーは、30ヌクレオチド未満、25ヌクレオチド未満、20ヌクレオチド未満、15ヌクレオチド未満、又は12ヌクレオチド未満を含むことができる。或いは、これらのプライマーは、少なくとも12、15、20、25、又は30ヌクレオチドを含む。使用されるプライマーは、12~20ヌクレオチド、12~25ヌクレオチド、15~20ヌクレオチド、又は15~25ヌクレオチドを含むことが好ましい。当業者であれば、TTVに特異的な配列が選択された後に使用される増幅プライマーの長さ及び配列を決定する方法を知っているであろう。例えば、TTV R-GENE(登録商標)診断キット(bioMerieux、フランス)で提供されているものと同じプライマーを使用することが可能であろう。
特に、増幅技術は、等温法と、PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)に基づく技術とを含む。等温増幅法には多数の方法がある。病原体の検出に最もよく用いられる方法は、LAMP(ループ媒介増幅;Loop-Mediated Amplification)及びRPA(リコンビナーゼポリメラーゼ増幅;Recombinase Polymerase Amplification)である。等温増幅の方法は、例えば、NASBA(核酸配列に基づく増幅;nucleic acid sequence-based amplification)、HDA(ヘリカーゼ依存性増幅;helicase-dependent amplification)、RCA(ローリングサイクル増幅;rolling circle amplification)及びSDA(鎖置換増幅;strand displacement amplification)、EXPAR(指数的増幅反応;exponential amplification reaction)、ICAN(等温の、キメラプライマーによって開始される核酸の増幅;isothermal and chimeric primer-initiated amplification of nucleic acids)、SMART(RNAのシグナル媒介増幅技術;signal-mediated amplification of RNA technology)等の方法も含む(例えば、Asiello and Baeumner,Lab Chip 11(8):1420-1430,2011参照)。使用されるPCR技術は、DNA、cDNA、又はRNAの初期量を定量的に測定することが好ましい。本明細書で記載される方法で使用できるPCRに基づく技術の例としては、リアルタイムPCR(Q-PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、多重逆転写PCR、リアルタイム逆転写PCR(QRT-PCR)、及びデジタルPCR等の技術が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの技術は、当業者にとってよく知られており、容易に入手できる技術であるため、本明細書で詳述する必要はない。
TTV量は、リアルタイム定量的PCRによって決定されることが好ましい。TTVの検出及び定量のための多数の方法が、先行技術に記載されてきた(例えば、Maggi et al.,J Virol.77(4):2418-2425,2003参照)。特に、Kulifajらによって記載された方法が参照される(J Clin Virol.105:118-127,2018)。この方法は、その単純さと頑強性(robustness)のために特に有利である。それは、非コーディング領域UTRに含まれる配列の増幅に基づいている。この配列は、既知の全てのTTVに存在するため、この方法に非常に大きな特異性を与えている。更に、これは特に汎用性があり、任意のタイプのPCRプラットフォームで実行されることができる。この方法を実行するために、TTV R-GENE(登録商標)診断キット(bioMerieux、フランス)を使用することは特に有利である。
或いは、ウイルス量の決定は、デジタルPCRによって行われる。デジタルPCRは、極端に希釈された核酸における幾つかのPCR分析を含み、それによって陽性(positive)増幅の殆どが単一のマトリックス分子のシグナルを反映する。したがって、デジタルPCRは、個々のモデル分子を計測することができる。分析されたPCRの総数のうちの陽性増幅の割合によって、元の試料又は希釈されていない試料のマトリックスの濃度を推定することができる。この技術は、様々な遺伝現象の検出を可能にするために提案された(Vogelstein et al.,Proc Natl Acad Sci USA 96:9236-924,1999)。デジタルPCRは、リアルタイムPCRと同様に、試料間の標的配列の細かい定量的な違いを潜在的に識別できる。
別の実施形態によると、TTV DNAのレベルはシークエンシングによって測定される。本明細書で使用されているように、「シークエンシング」という用語は、最も広く受け入れられているものであり、ポリヌクレオチド分子(DNA又はRNA)の配列を決定するため、即ち、この分子を構成するヌクレオチドの連続を決定するために、当業者に知られている技術を指す。
したがって、TTV DNAは、当技術分野で知られる技術によって配列決定されることができる。本明細書で理解されるように、シークエンシングは、とりわけ、サンガー法によるシークエンシング、ゲノム全体のシークエンシング、ハイブリダイゼーションによるシークエンシング、パイロシークエンシング(特に、454シークエンシング、Solexa Genome Analyzerシークエンシング)、キャピラリー電気泳動によるシークエンシング、サイクルシークエンシング(sequencing in cycles)、単一塩基伸長シークエンシング、固相シークエンシング、超高速シークエンシング、超並列署名シークエンシング(massively parallel signature sequencing;MPSS)、可逆的ダイターミネーターシークエンシング(reversible dye terminator sequencing)、対のシークエンシング(sequencing with paired pairs)、短期間シークエンシング(short term sequencing)、エキソヌクレアーゼによるシークエンシング、ライゲーションによるシークエンシング、単一分子シークエンシング、合成によるシークエンシング、電子顕微鏡によるシークエンシング、リアルタイムシークエンシング、リバースターミネーションシークエンシング(reverse termination sequencing)、ナノポアによるシークエンシング、可逆的ターミネーターシークエンシング(reversible terminator sequencing)、半導体によるシークエンシング、SOLiD(R)シークエンシング、SMRTシークエンシング(単一分子リアルタイム分析)、MS-PETシークエンシング、質量分析、及びこれらの組合せを含む。特定の実施形態は、例えば、Illuminaにより開発されたプラットフォームMiSeq、NextSeq 500、及びHiSeqシリーズ(Reuter et al.,Mol Cell,58:586-597,2015;Bentley et al.Nature;456:53-59,2008)、454ゲノムシークエンサー及びRocheプラットフォーム(Margulies et al.Nature;437:376-380,2005)、Applied BiosystemsのSOLiDプラットフォーム(McKernan et al.,Genome Res;19:1527-1541,2009)、Polanatorプラットフォーム(Shendure et al.,Science,309:1728-1732)又はHelicos単一分子シークエンシングプラットフォーム(Harris et al.Science;320:106-109,2008)を用いた、超高速DNAシークエンシングを使用する。超高速シークエンシングは、SMRTリアルタイムシークエンシング(Roads et al.,Genomics,Proteomics&Bioinformatics,13(5):278-289,2015)、Ion Torrentシークエンシング(WO2010/008480;Rothberg et al.,Nature,475:348-352,2011)、及びナノポアを用いたシークエンシング(Clarke J et al.Nat Nanotechnol:4:265-270,2009)等の方法も含む。
シークエンシングは、生体試料に含まれるDNA全体又は生体試料に含まれるDNAの一部に対して行われる。当業者であれば、当該試料が少なくとも宿主対象者のDNAとTTV DNAとの混合物を含むことは、すぐに明らかであろう。更に、TTV DNAはおそらく試料中に存在する全DNAのごく一部を表すであろう。有利なことに、DNAは配列決定の前に、一般的に、物理的な方法によってランダムに断片化される。
第1のアプローチは、TTVの種のゲノムの特定の配列の配列決定からなる。他のアプローチは、生体試料から得られた核酸の定量的な遺伝子型決定を非常に正確に行うことができる方法を使用することからなる。特定の実施形態では、標的配列(即ち、この場合、TTVの配列)の事前知識に基づいたプロトコルを使用して、増幅を行わずに、多数(例えば、数百万又は数十億等)の核酸分子を分析することによって精度が得られる。
好ましい実施形態では、本発明の方法は、リーディングの数を定量化する工程を含む。
特定の実施形態では、生体試料の核酸分子のランダムなサブセットが超高速シークエンシングにかけられる。好ましくは、TTV配列は、公開で寄託されるTTV配列と比較することによって、グローバルシークエンシングで同定される。この比較は、既知のTTV配列との配列同一性のレベルに有利に基づいており、遠縁の変異体でさえも検出することを可能にする。BLAST等の一般的なソフトウェアを使用して、配列間の同一性のレベルを決定することができる。
したがって、既知のTTV配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有する配列は、TTV配列として同定される。したがって、この実施形態によれば、TTV量の決定は、対象からの生体試料におけるシークエンシングによって同定されたTTV配列のナンバリングを含む。
別の実施形態では、TTV量は、生体試料におけるウイルスタンパク質の量を測定することによって決定される。したがって、特に免疫沈降法、免疫組織学、ウエスタンブロット、ドットブロット、ELISA又はELISPOT、電気化学ルミネセンス (ECLIA)、プロテインチップ、抗体チップ、又は免疫組織学に結合した組織チップ等のよく知られた技術で、特定の抗体を使用することが可能である。使用されることができる他の方法は、FRET又はBRET技術、特に共焦点顕微鏡及び電子顕微鏡の方法を含む顕微鏡又は組織化学の方法、電気化学方法(ボルタンメトリー及びアンペロメトリー技術)等の適応光学方法及び1以上の励起波長の使用に基づく方法、原子間力顕微鏡、及び高周波方法(radiofrequency method)(多極性、共焦点、及び非共焦点共鳴スペクトロスコピー等)、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、及び複屈折率(birefractive power)又は屈折率(例えば、表面プラズモン共鳴、エリプリメトリー、共鳴ミラー方法等によって)の検出、フローサイトメトリー、放射性同位元素又は磁気共鳴画像法、ポリアクリルアミドゲルにおける電気泳動(SDS-PAGE)、質量分析、及び質量分析と連結した液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)による分析を含む。これらの技術は全て当業者にはよく知られており、本明細書で詳述する必要はない。更に、TTVタンパク質の特異的抗体は既に利用可能である。
好ましい実施形態では、本明細書で説明される方法は、測定された核酸又はウイルスタンパク質の量の標準化の追加工程を含む。
好ましい実施形態によれば、生体試料中に存在するTTVのレベル、即ちTTV DNA、TTV RNA、又はTTVタンパク質の量を、この試料の特定のパラメータに標準化することは有利なことがある。測定されたTTV量を特定へのパラメータへ標準化することは、2つの異なる生体試料のウイルス量を比較する際のエラー率を低減することを可能にする。この標準化に有用であることができるパラメータの例としては、例えば後の体積等、試料の含有量に依存しない物理的パラメータであることができる。また、TTV DNA、TTV RNA、又はTTVタンパク質の量を、試料中に存在するDNA、RNA、又はタンパク質の総量に標準化することも可能である。或いは、特定のDNA又はRNA配列、又は特定のタンパク質を標準化ツールとして使用することも可能である。例えば、この配列又はこのタンパク質は、ヒトの配列又はタンパク質であることができる。
或いは、所定の試料中のTTV DNA又はRNA、又はTTVタンパク質の量を内部対照と比較する。このため、生体試料で測定されたTTV核酸又はタンパク質の量は、例えば宿主又は外因性の核酸又はタンパク質等、特定及び定量されることができる核酸又は適切なタンパク質の定義された量に対して、参照されることができる。この同定可能及び定量可能な核酸又はタンパク質を標的核酸又はタンパク質として扱われることが好ましい(例えば、増幅される、配列決定される等)。したがって、この同定可能及び定量可能な核酸又はタンパク質の既知の量を試料に加えることが最初から可能であり、その後、標的核酸又はタンパク質として扱われ、このウイルス核酸又はタンパク質の量の測定の前に試料調製の全ての工程を通る。調製工程は、例えば様々なヌクレアーゼを使用して、ウイルス核酸を保護し、宿主核酸を破壊する手段を含むことができる。或いは、これらの工程は、例えば様々なプロテアーゼを使用して、ウイルスタンパク質を保護し、宿主タンパク質を破壊する手段を含むことができる。内部制御により、試料中の検討中の分子(核酸又はタンパク質)の品質と処理の程度(例えば、増幅又は配列決定)を評価することができる。好ましくは、当該内部制御は既知の配列の核酸分子であり、この核酸分子は既知の濃度で試料中に存在する。この核酸分子は、試料中の既知の配列と濃度のウイルスのゲノム一本鎖環状DNAの分子であることがより好ましい。この既知のウイルスは、例えば、サーコウイルス科のウイルスであることができる。対照に対する試料の配列数の比によって、既知の配列と濃度のTTVゲノムの絶対数を推定することができる。或いは、この内部制御は既知の配列のタンパク質であり、既知の濃度で試料中に存在する。
決定されたTTV核酸又はタンパク質の量を測定することによってTTV量が決定され、後で任意で標準化されると、基準TTV量と比較することが有利になる場合がある。
「基準TTV量」又は「基準ウイルス量」とは、本出願の意味において、基準として使用されるTTV量を意味する。これは、基準TTV量が「基準レベルのTTV核酸(又はタンパク質)」又は「基準レベルのTTV核酸(又はタンパク質)」、即ち基準として使用されるTTV核酸(又はタンパク質)の濃度に対応することを意味する。本明細書で理解されているように、「基準濃度のTTV核酸(又はタンパク質)」とは、被験物質と同等の対照試料で測定され、特定の免疫適格性状態を有する対象又は対象群から得られるベースラインレベルである。例えば、健康である、又は免疫抑制につながる疾患を有していない、対象又は対象群であることができる。また、例えば、免疫抑制治療後の、免疫抑制された対象又は対象群であることもできる。最後に、例えば免疫抑制の前又は直後の、移植手術を受けた同じ個体であることができる。
基準レベルは、複数の方法で決定されることができる。例えば、対照は、様々な形式を想定することができる所定の値であってもよい。中央値や平均値等、一意の閾値であることができる。「基準レベル」は、患者ごとに適用可能な一意の値であることができる。或いは、基準レベルは、患者の特定の亜集団の関数として変化することができる。したがって、例えば、高齢の男性は、TTV量の基準レベルが若い男性と異なり、女性はこのウイルス量の基準レベルが男性と異なることがある。更に、「基準レベル」は、TTV核酸(又はタンパク質)のレベルが高くない群とTTV核酸(又はタンパク質)のレベルが高い群等の比較群に基づいて立証されることができる。比較群の別の例は、疾患、状態、又は特定の症状を持つ群と、疾患のない群がある。例えば、試験集団を低リスク群、中リスク群、高リスク群等の群に均等に(又は不均等に)分割する場合に、所定値を定義することができる。
基準レベルは、移植を受けた患者や免疫抑制につながる疾患を有する患者の集団におけるTTV核酸(又はタンパク質)のレベルを比較することによって決定されることもできる。これは、例えば、ヒストグラム分析によって達成されることができ、対象のコホート全体がグラフで示され、第1の軸は当該TTV核酸(又はタンパク質)のレベルを表し、第2の軸は所定のレベルでTTV核酸(又はタンパク質)を発現している患者の群における患者数を表す。同一又は類似のレベルのTTV核酸(又はタンパク質)を有するコホートの亜集団を特定することによって、2以上の別々の対象群を決定することができる。その後、これらの別々の群を最もよく区別するレベルに基づいて、基準レベルを決定することができる。基準レベルは、存在する2つ以上のTTV核酸(又はタンパク質)のレベルを表すこともできる。2つ以上のマーカーは、例えば、各マーカーのレベルの値の比率によって表されることができる。
更に、明らかに健康な個体群は、高濃度の当該TTV核酸(又はタンパク質)と関連する状態を有することが知られている個体群とは「異なる」正常範囲を有するであろう。したがって、選択される所定値は、個体がどのカテゴリーに分類されるかを考慮することができる。適切な範囲及びカテゴリーは、単に当業者による日常的な実験によって選択されることができる。「高い」又は「上昇した」は、選択された対照に対して高いことを意味する。一般的に、対照は、適切な年齢群において明らかに健康な正常な個体に基づく。
好ましい実施形態では、基準濃度は、一般集団におけるTTV核酸(又はタンパク質)の濃度又は複数のTTV核酸(又は複数のTTVタンパク質)の組合せの濃度に相当する。
本明細書で記載されている方法における対照は、所定値の他に、試験試料と並行して測定された生体試料であってもよいことが理解されるであろう。この実施形態によれば、基準レベルは、健康な対象から得られた試料中のTTV核酸又は複数のTTV核酸(又はタンパク質又は複数のタンパク質)の基準レベルであろう。
TTV核酸(又はタンパク質)の基準濃度は、健康な対象又は健康な対象の集団におけるこのTTV核酸(又はこのTTVタンパク質)の濃度であることが好ましい。別の好ましい実施形態によれば、TTV核酸(又はタンパク質)の基準濃度は、免疫抑制された対象又は免疫抑制された対象の集団(例えば、免疫抑制治療後)におけるこのTTV核酸(又はこのTTVタンパク質)の濃度である。別の好ましい実施形態によれば、TTV核酸(又はタンパク質)の基準濃度は、例えば後者の前又は直後の特定の時点で移植を受けた同じ個体におけるこのTTV核酸(又はこのTTVタンパク質)の濃度である。
好ましくは、上記の方法では、全ての実施形態において、T細胞は、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、又はCD3+及び/又はCD4+及び/又はCD8+T細胞の集団、好ましくはCD3+T細胞である。
T細胞の活性を監視する方法
本明細書で記載される方法は、対象におけるT細胞の増殖能を迅速かつ容易に評価することを可能にする。
複数の要因が、HSCT、特に同種造血幹細胞移植のレシピエントにおける重度の免疫抑制状態に関与する。前処置は、特にレシピエントのリンパ組織を変化させる。GvHDの存在及びその治療は、新たな免疫性合併症を引き起こす。最後に、免疫適格者のT細胞コンパートメントの大きさと比較して、移植されたT細胞が僅かであること、及び移植片に存在するドナーの免疫前駆体の数が極めて限られていることも、レシピエントの免疫回復の遅れに関与する。これら全ての要因により、レシピエントは微生物感染症やGvHD等の移植後合併症にかかりやすくなる。
本明細書で記載された方法のおかげで、例えばHSCT後、特に同種造血幹細胞移植後等、免疫系が損なわれた状況でT細胞の活性を容易に評価することができる。
したがって、本開示の他の態様は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者におけるT細胞の活性を監視する方法に関する。本方法は、以下の工程:
a)上記の方法で、最初の時点でT細胞の増殖能を測定する工程と;
b)a)で測定されたT細胞の増殖能とT細胞の基準増殖能とを比較する工程と;
c)工程b)における比較に応じて、患者のT細胞の活性の変化を決定する工程と、
を含む。
本明細書で理解されるように、「T細胞の基準増殖能」とは、上述の基準TTV量から推定されるT細胞の増殖能である。当然、工程a)で決定された患者の試料のTTV量を基準TTV量と比較するだけによって、工程b)の比較を行うことができる。
例えば、この最初の時点での患者のT細胞の増殖能と、免疫抑制された個体のT細胞の基準増殖能を比較することで、この最初の時点で、HSCT、特に同種造血幹細胞移植後の患者の免疫能の回復を推定することができる。本明細書で、「免疫能」とは、免疫細胞による機能の獲得を意味する。したがって、免疫抑制された個体の増殖能に対して、患者のT細胞の増殖能が増加していることは、患者の免疫能の回復が進行中であることを示す。前述のように、免疫抑制された対象に対して、患者のT細胞の増殖能が増加していることは、TTV量が低いことに相当する。
或いは、T細胞の基準増殖能は、健康な個体のものであることができる。この場合、T細胞の基準増殖能に対する患者のT細胞の増殖能の低下は、患者の免疫能が完全には回復していないことを示す。健康な対象に対する患者のT細胞の増殖能の低下は、TTV量の増加に対応することが直ちに理解されるであろう。
本明細書において特定の実施形態で使用される「増加した」という用語は、より多い量、例えば元の量を僅かに上回る量、又は例えば元の量に対して非常に過剰な量、特に範囲内の全ての量を意味する。変形として、「増加」は、増加した量又は活性が比較される量又は活性よりも、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%多い量又は活性を指すことができる。本明細書では、「強化した」、「~より大きい」、「更に大きい」、及び「増加した」という用語は同じ意味で使用されている。
本明細書において特定の実施形態で使用される「減少した」という用語は、より小さな量、例えば元の量を僅かに少ない量、又は例えば元の量に対して非常に不十分な量、特に範囲内の全ての量を意味する。変形として、「減少」は、減少した量又は活性が比較される量又は活性よりも、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%少ない量又は活性を指すことができる。本明細書では、「減少した」、「~より小さい」、「更に低い」、及び「低下した」という用語は同じ意味で使用されている。
T細胞の基準増殖能として、2回目の時点での同じ患者のT細胞の増殖能を使用することもできる。したがって、高価で複雑な検査機器を使用することなく、第1の時点及び第2の時点での患者のTTV量を簡単に測定することによって、移植後のこの患者におけるこれらのT細胞の活性の変化を容易に監視することができる。
この特定の実施形態によれば、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者におけるT細胞の活性を監視する本方法は、以下の工程:
a)上記の方法で、最初の時点でT細胞の増殖能を測定する工程と;
b)上記の方法で、工程a)における最初の時点よりも遅い第2の時点で、T細胞の増殖能を測定する工程と;
c)a)及びb)で測定されたT細胞の増殖能を比較する工程と;
d)工程c)における比較に応じて、患者のT細胞の活性の変化を決定する工程と、
を含む。
他の特定の実施形態によれば、移植、好ましくはHSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた対象におけるT細胞の活性を監視する本方法は、以下の工程:
a)最初の時点で採取された対象の生体試料からのTTVウイルス量を決定する工程と;
b)工程a)における最初の時点よりも後である第2の時点で採取された対象の生体試料からのTTVウイルス量を決定する工程と:
c)a)及びb)で測定されたTTVのウイルス量を比較する工程と;
d)工程c)における比較に応じて、対象のTTV量における変化を決定する工程と、
を含む。
上記で説明されたように、TTVウイルス量は、T細胞の増殖能と逆相関しているため、TTV量の変化によってT細胞の増殖能が増加しているか減少しているかを判断することができるため、T細胞の活性、特に対象の免疫能の回復(又はその逆)等の指標を提供する。
したがって、この方法は、患者のT細胞の活性を経時的に監視する上で特に有用である。好ましい実施形態では、工程a)における最初の時点は移植時に位置する。他の好ましい実施形態では、HSCT後少なくとも30日後、60日後、90日後、100日後、120日後、150日後、180日後、210日後、240日後、270日後、300日後、330日後、360日後、720日後、又は1080日後に採取した試料を用いて、工程b)でT細胞の増殖能を測定する。或いは、試料は、HSCTの30日後、60日後、90日後、100日後、120日後、150日後、180日後、210日後、240日後、270日後、300日後、330日後、360日後、720日後、又は1080日後に採取する。
最初の時点に対して第2の時点で細胞が増加した増殖能を有する場合、その細胞の活性自体がこの時点で増加することは明らかである。例えば、最初の時点が移植の時点である場合、この第2の時点でT細胞の増殖能が増加していることは、より多くのT細胞が活性化しており、患者が特に脅威に抵抗する能力が高いことを意味する。T細胞の増殖能におけるこれらの変化は、逆方向のTTV量の変化に変換される:したがって、時間の経過とともにTTV量の減少は、T細胞の増殖能力の増加、即ち患者の免疫能の回復を反映する。したがって、現在の方法は、レシピエントの免疫系の回復を推定することを可能にする。言い換えれば、T細胞の増殖能の変化は、移植後の患者における免疫能の再出現を評価することを可能にする。
T細胞の活性の変化を経時的に監視することで、特に、前処置を受けた患者における移植後の免疫能の回復を監視することが可能である。この特定の実施形態によれば、上記のT細胞の活性を監視する方法は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受ける前の前処置を受けた患者において、採用される。好ましい実施形態では、前処置は骨髄破壊的である。他の好ましい実施形態では、前処置は減弱的である。
微生物感染のリスクを評価する方法
HSCT、特に同種造血幹細胞移植は、患者によってかなり異なる早期又は後期の合併症を引き起こすことがある。
特に、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者は、免疫系が回復するまで、細菌性、ウイルス性、寄生動物性、真菌性を問わず、微生物感染に対して罹りやすいままである。HSCT、特に同種造血幹細胞移植後の所定時のT細胞の増殖能を評価することで、移植手術を受けた患者の微生物感染に対する易罹患性を決定することができる。
この特定の態様において、本記載は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者の微生物感染に対する易罹患性を決定する方法に関する。この方法は、以下の工程:
a)最初の時点で、上記の方法で患者の試料からT細胞の増殖能を測定する工程と;
b)T細胞の増殖能とT細胞の基準増殖能とを比較する工程と;
c)工程b)における比較から、患者において微生物感染に対する易罹患性を決定する工程と、
を含む。
T細胞の活性の変化を経時的に監視することで、特に、前処置を受けた患者における移植後の免疫能の回復を監視することが可能である。この特定の実施形態によれば、上記のT細胞の活性を監視する方法は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受ける前の前処置を受けた患者において採用される。好ましい実施形態では、前処置は骨髄破壊的である。他の好ましい実施形態では、前処置は減弱的である。
本明細書に記載された方法は、例えば、以下で詳細に記載される、1以上の感染性病原体(細菌、ウイルス、寄生生物又は酵母、及び糸状菌等)の存在の特定の診断の1つ以上の工程を更に含むことができる。これらの病原体の検出は、特にHSCTに関連した日常的な臨床診療であり、当業者であれば、対応する技術はなじみがあるので、本明細書で詳述する必要はない。
これらの微生物感染は、特にウイルス感染、細菌感染、寄生生物感染、真菌感染である。ウイルス感染は、特にウイルスHSV、VZV、HHV-6、エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)又はヒトサイトメガロウイルス(HCMV)等のヘルペスウイルス科のウイルスによる感染である。これらのウイルス感染は、アデノウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス(influenzavirus又はMyxovirus influenzaeとも呼ばれる)、又はBKウイルスによって引き起こされることもできる。中でも、細菌感染の原因となる細菌は、黄色ブドウ球菌又はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌等のブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌、又はインフルエンザ菌等の莢膜細菌、レジオネラ属(Legionella sp.)、又はシュードモナス属、アシネトバクター属、ステノトロホモナス属、バークホルデリア属、アルカリゲネス属(Alkaligenes)等の絶対好気性非発酵性グラム陰性杆菌等であることができる。非定型抗酸菌による感染も観察されることができる。特にカリニ肺炎菌による、罹患率と死亡率の高い寄生生物感染が発生することがあり、トキソプラズマ症(トキソプラズマ原虫によって引き起こされる)によっても発生することがある。最後に、カンジダやクリプトコッカス等の酵母だけでなく、アスペルギルス等の糸状菌も、HSCT後の感染性死亡率の主要な原因の1つである侵襲性真菌感染症の原因である。
T細胞の基準増殖能は、上記のように基準TTV量から決定されたT細胞の増殖能に相当する。工程b)における比較は、単に工程a)で決定された患者の試料のTTV量を基準TTV量と比較することによって、行われることができる。
この基準TTV量は、例えば、免疫抑制されていない健康な個体のTTV量であることができる。次に、T細胞の基準増殖能は、この免疫抑制されていない健康な個体のTTV量であることができる。
この特定の実施形態では、本記載は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者における微生物感染に対する易罹患性を決定する方法に関する。この方法は、以下の工程:
a)最初の時点で、上記の方法で患者の試料からT細胞の増殖能を測定する工程と;
b)T細胞の増殖能と健康な対象のものと比較する工程と;
c)工程b)における比較から、患者において微生物感染に対する易罹患性を決定する工程と、
を含む。
T細胞の活性の変化を経時的に監視することで、特に、前処置を受けた患者における移植後の免疫能の回復を監視することが可能である。この特定の実施形態によれば、上記のT細胞の活性を監視する方法は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受ける前の前処置を受けた患者において採用される。好ましい実施形態では、前処置は骨髄破壊的である。他の好ましい実施形態では、前処置は減弱的である。
この場合、健康な対象に対して患者における減少したT細胞の増殖能は、患者の免疫系が十分に機能していないことを示す。健康な対象のものよりも低い患者のT細胞の増殖能は、健康な対象のTTV量よりも多い患者の試料で測定されたウイルス量に相当する。言い換えれば、対象には免疫系が不足しているため、病原体による攻撃を受ける可能性がある。したがって、患者は微生物に感染されるリスクがある。しかしながら、T細胞が健康な対象のものと実質的に同じ増殖能を有する場合、患者は微生物に感染しにくい。
第2の時点での同じ患者におけるT細胞の増殖能は、T細胞の基準増殖能としても使用されることができる。したがって、当業者は、移植後の経時の微生物感染のリスクの展開を監視することができる。したがって、抗感染治療は、患者の生活の質を向上させながら、耐性出現のリスクを制限する、患者の微生物感染に対する実際の易罹患性の関数として適応されることができる。
この特定の実施形態では、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者において、微生物感染に対する易罹患を決定する方法は、以下の工程:
a)上記の方法で、最初の時点でT細胞の増殖能を測定する工程と;
b)上記の方法で、工程a)における最初の時点よりも遅い第2の時点で、T細胞の増殖能を測定する工程と;
c)a)及びb)で測定されたT細胞の増殖能を比較する工程と;
d)工程c)における比較に応じて、患者における微生物感染に対する易罹患性を決定する工程と、
を含む。
T細胞の活性の変化を経時的に監視することで、特に、前処置を受けた患者における移植後の免疫能の回復を監視することが可能である。この特定の実施形態によれば、上記のT細胞の活性を監視する方法は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受ける前の前処置を受けた患者において採用される。好ましい実施形態では、前処置は骨髄破壊的である。他の好ましい実施形態では、前処置は減弱的である。
したがって、患者における微生物感染に対する易罹患性の経時的な展開を追跡することが可能である。工程a)に対して工程b)における増加したT細胞の増殖能は、その活性が増加していることを反映しているので、2つの時点間に微生物感染に対する患者の易罹患性が低下していることを反映する。現在の方法は、特に、移植後の経過時間が長いほど、患者は微生物に感染しにくくなる、即ち、免疫系がますます機能的になることを検証することを可能にする。
したがって、患者の微生物感染に対する易罹患性は、本明細書に記載された方法を使用して決定されることができ、患者のニーズに合わせた治療を適応させることを可能にする。したがって、本発明の方法による患者の免疫抑制された状態の予備的決定は、先行技術の方法に基づいて設計された治療よりも安全な治療につながる。
好ましくは、上記の方法では、全ての実施形態で、T細胞の増殖能は、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞の増殖能又はCD3+及び/又はCD4+及び/又はCD8+T細胞の集団の増殖能、好ましくはCD3+T細胞の増殖能に対応する。
したがって、本発明は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者における微生物感染のための治療を設計する方法にも関し、前記方法は、以下の工程:
a)上記の方法によって、患者の、微生物感染に対する易罹患性を決定する工程と
b)工程a)の結果に従って治療を決定する工程と、
を含む。
T細胞の活性の変化を経時的に監視することで、特に、前処置を受けた患者における移植後の免疫能の回復を監視することが可能である。この特定の実施形態によれば、上記のT細胞の活性を監視する方法は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受ける前の前処置を受けた患者において採用される。好ましい実施形態では、前処置は骨髄破壊的である。他の好ましい実施形態では、前処置は減弱的である。
治療は予防的に決定されることができる、即ち、感染の発生を防ぐために、患者の免疫不全状態を考慮して処方されることができる。この文脈では、後述されるHSCT、特に同種造血幹細胞移植後に一般的に使用される治療的又は予防的治療を処方することを決定することができる。本方法は、このような感染のリスクが特定された場合に、ウイルス感染、細菌感染、寄生生物感染、又は真菌感染の予防的又は治療的治療を決定及び実施することを可能にする。
したがって、本記載は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者における感染を治療する方法にも関し、前記方法は、以下の工程:
a)上記の方法によって、患者の、微生物感染に対する易罹患性を決定する工程と;
b)前記対象に好適な治療を施す工程と、
を含む。
したがって、本発明は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた対象における感染の治療に使用されることを意図した治療を提案し、前記使用は、以下の工程:
a)上記の方法によって、患者の、微生物感染に対する易罹患性を決定する工程と;
b)前記対象に好適な治療を施す工程と、
を含む。
言い換えれば、本発明は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた対象における感染を治療するための医薬製品の調製における治療の使用に関し、前記使用は以下の工程:
a)上記の方法によって、患者の、微生物感染に対する易罹患性を決定する工程と;
b)前記対象に好適な治療を施す工程と、
を含む。
T細胞の活性の変化を経時的に監視することで、特に、前処置を受けた患者における移植後の免疫能の回復を監視することが可能である。この特定の実施形態によれば、上記のT細胞の活性を監視する方法は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受ける前の前処置を受けた患者において採用される。好ましい実施形態では、前処置は骨髄破壊的である。他の好ましい実施形態では、前処置は減弱的である。
上記で説明されたように、HSCT、特に同種造血幹細胞移植後に遭遇する感染は、ウイルス感染、細菌感染、寄生生物感染、又は真菌感染である。これらの感染の治療は、よく知られ、長年にわたって臨床現場で使用されてきた(例えば、Tomblyn et al.,Biol Blood Marrow Transplant.15(10):1143-1238,2009を参照)。したがって、ウイルス感染は、アシクロビル、ガンシクロビル、シドホビル、エンテカビル、フルダラビン、ラミブジン、テノホビル、リバビリン、又はバラシクロビル等の抗ウイルス剤、又はパリビズマブ(RSVに対して)等の特定のモノクローナル抗体によって予防されることができる。抗生物質は、通常、細菌感染の治療を可能にする。特に、βラクタム系抗生物質、糖ペプチド、ホスホマイシン、マクロライド、テトラサイクリン、アミノグリコシド、クロラムフェニコール、キノロン、リファンピシン、及びスルファミド等の広域抗生物質が用いられる。通常、コトリモキサゾール、ピリメタミン、及びスルファジアジン等の抗寄生生物剤を投与することで、寄生生物感染症を治療する。最後に、投与されることができる抗真菌剤はよく知られており、特にフルコナゾールとエキノキャンディンを含む。
移植片対宿主病(GvHD)のリスクの評価方法
本明細書に記載された方法は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者におけるGvHDの発症リスクを推定できるという利点も提供する。
したがって、本記載は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者におけるGvHDに対する易罹患性を決定する方法にも関し、前記方法は、以下の工程:
a)前記方法によって、最初の時点で患者の試料からのT細胞の増殖能を測定する工程と;
b)工程a)における測定から患者におけるGvHDに対する易罹患性を決定する工程と、
を含む。
T細胞の活性の変化を経時的に監視することで、特に、前処置を受けた患者における移植後の免疫能の回復を監視することが可能である。この特定の実施形態によれば、上記のT細胞の活性を監視する方法は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受ける前の前処置を受けた患者において採用される。好ましい実施形態では、前処置は骨髄破壊的である。他の好ましい実施形態では、前処置は減弱的である。
本明細書で理解されるように、「移植片対宿主病」又は「GvHD」は、レシピエントに対する炎症性免疫反応であり、移植片に存在する免疫適格性細胞が関与する。通常、移植後約100日間で発生する急性GvHDと、一般的にこの範囲を超えて発生する慢性GvHDの2つの臨床型のGvHDがある。急性GvHDは、皮膚、肝臓、消化管の3つの臓器にのみ同種炎症反応が出現することを指す。対照的に、慢性GvHDは、皮膚、口、目、消化管、肝臓、肺、筋肉、関節、筋膜、及び生殖器の8つの臓器の少なくとも1つに影響を及ぼすことがある。急性型であれ慢性型であれ、GvHDは通常、問題の臓器の生検の組織学的分析を含む臨床検査によって診断される(Schoemans et al.Bone Marrow Transplant 53:1401-1415,2018)。
この点で、例えば、患者の免疫抑制治療を中断する可能性を予測し、それによって患者の生存を保証するため、本方法は、特に有用であることに留意すべきである。本方法は、免疫抑制治療の継続を必要とする活動性(active)GvHDと、もはや全く活動性がなく、治療を中止することができるGvHDとを容易に識別する可能性を提供する(Magro et al.,Bull Cancer.104S:S145-S168,2017を参照)。
より具体的には、急性GvHDは移植手術後最初の月(30日)に発生するが、慢性GvHDは移植手術後100日~400日に発生する。いずれも移植片に存在するドナーのT細胞の活性化によって特徴づけられる。宿主の抗原とドナーのT細胞の相互作用は、T細胞の同種活性化、その増殖、そして宿主の上皮細胞を攻撃するエフェクター細胞への分化をもたらす。
HSCTのレシピエント、特に同種造血幹細胞移植のレシピエントは、患者の試料中のT細胞が増殖できる場合、GvHDを発症する可能性がある。特に、免疫系がまだ回復していない時期に患者のT細胞が増殖することは、患者がGvHDの影響を受けやすいことを強く示す。これは、上記の方法を用いてTTV量を測定することで容易に評価できる。この検査によって示される徴候は、必要に応じて、患者の臨床検査、特に患者の臓器の1以上から採取された1以上の生検の組織学的分析によって補足されることができる。
患者の試料は、移植手術後400日未満に採取されることが好ましい。試料は、移植手術後100日未満に採取されることがより好ましい。或いは、試料は、移植手術後100日~400日に採取される。特定の実施形態では、GvHDは、急性GvHDであり;別の特定の実施形態では、GvHDは慢性GvHDである。
特定の実施形態では、工程b)からの測定値を、既知のT細胞の増殖能を有する基準、即ちT細胞の基準増殖能と比較することが有用な場合がある。T細胞の基準増殖能は、上記のように基準TTV量から推定されるT細胞の増殖能に相当する。工程b)における比較は、単に、工程a)で決定された患者の試料のTTV量を基準TTV量と比較することによって行われることができる。
この基準TTV量は、例えば、免疫抑制されていない健康な個体のものである。次に、T細胞の基準増殖能は、この免疫抑制されていない健康な個体のものである。
或いは、基準TTV量は、免疫抑制された個体のものであることができる。この特定の実施形態では、本記載は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者におけるGvHDに対する易罹患性を決定する方法にも関する。前記方法は、以下の工程:
a)最初の時点で、上記の方法で患者の試料からT細胞の増殖能を測定する工程と;
b)T細胞の増殖能と免疫抑制された対象のものと比較する工程と;
c)工程b)における比較から患者におけるGvHDに対する易罹患性を決定する工程と、
を含む。
T細胞の活性の変化を経時的に監視することで、特に、前処置を受けた患者における移植後の免疫能の回復を監視することが可能である。この特定の実施形態によれば、上記のT細胞の活性を監視する方法は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受ける前の前処置を受けた患者において採用される。好ましい実施形態では、前処置は骨髄破壊的である。他の好ましい実施形態では、前処置は減弱的である。
この場合、免疫抑制された対象と比較して患者のT細胞の増殖能が増加していることは、患者の免疫系が再び機能していることを示す。患者のT細胞の増殖能が免疫抑制された対象の増殖能よりも大きいことは、患者の試料で測定されたウイルス量が免疫抑制された対象のTTV量よりも低いことに相当する。言い換えれば、対象は活性T細胞を有し、これが移植片の細胞を攻撃してGvHDを誘発することがある。しかしながら、患者のT細胞が免疫抑制された対象と実質的に同じ増殖能を有する場合、患者はGvHDを発症する可能性は低い。
また、T細胞の基準増殖能として、第2の時点での同一患者のT細胞の増殖能を用いることも可能である。したがって、当業者であれば、移植手術後の経時的なGvHDの発生リスクの展開を監視することができる。したがって、抗GvHD治療は、患者の生活の質を向上させながら、抵抗性の出現リスクを制限する、患者のGvHDに対する実際の易罹患性の機能として適応されることができる。
この特定の実施形態では、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者におけるGvHDに対する易罹患性を決定する方法は、以下の工程:
a)上記の方法で、最初の時点でT細胞の増殖能を測定する工程と;
b)上記の方法で、工程a)における最初の時点よりも遅い第2の時点で、T細胞の増殖能を測定する工程と;
c)a)及びb)で測定されたT細胞の増殖能を比較する工程と;
d)工程c)における比較に応じて、患者におけるGvHDに対する易罹患性を決定する工程と、
を含む。
T細胞の活性の変化を経時的に監視することで、特に、前処置を受けた患者における移植後の免疫能の回復を監視することが可能である。この特定の実施形態によれば、上記のT細胞の活性を監視する方法は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受ける前の前処置を受けた患者において採用される。好ましい実施形態では、前処置は骨髄破壊的である。他の好ましい実施形態では、前処置は減弱的である。
したがって、患者におけるGvHDに対する易罹患性の展開を経時的に追跡することが可能である。工程a)と比較して、工程b)のT細胞の増殖能が増加していることは、その活性の増加を反映しているので、2つの時点間のGvHD発症に対する患者の易罹患性が増加していることを反映する。このリスクは、移植手術後すぐに発生する場合、即ち、活性T細胞がドナーのもののみであり、それらが宿主の臓器を攻撃するリスクがある場合に、より大きくなる。
したがって、患者のGvHDに対する易罹患性は、本明細書に記載された方法を使用して決定されることができ、これにより、患者のニーズに特化した治療を練ることが可能になる。
したがって、本発明は、HSC、特にHSCTを受けた対象のためのGvHDの治療を設計する方法にも関し、前記方法は、以下の工程:
a)上記の方法によって、患者の、GvHDに対する易罹患性を決定する工程と;
b)工程a)の結果に従って治療を決定する工程と、
を含む。
T細胞の活性の変化を経時的に監視することで、特に、前処置を受けた患者における移植後の免疫能の回復を監視することが可能である。この特定の実施形態によれば、上記のT細胞の活性を監視する方法は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受ける前の前処置を受けた患者において採用される。好ましい実施形態では、前処置は骨髄破壊的である。他の好ましい実施形態では、前処置は減弱的である。
本記載は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた患者におけるGvHDの治療方法にも関し、前記方法は、以下の工程:
a)上記の方法によって、患者の、GvHDに対する易罹患性を決定する工程と;
b)前記対象に好適な治療を施す工程と、
を含む。
したがって、本発明は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた対象におけるGvHDの治療に使用されるために意図された治療を提案し、前記使用は、以下の工程:
a)上記の方法によって、患者の、GvHDに対する易罹患性を決定する工程と;
b)前記対象に好適な治療を施す工程
を含む。
言い換えれば、本発明は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受けた対象におけるGvHDを治療するための医薬製品の調製における治療の使用に関し、前記使用は、以下の工程:
a)上記の方法によって、患者の、GvHDに対する易罹患性を決定する工程と;
b)前記対象に好適な治療を施す工程と、
を含む。
T細胞の活性の変化を経時的に監視することで、特に、前処置を受けた患者における移植後の免疫能の回復を監視することが可能である。この特定の実施形態によれば、上記のT細胞の活性を監視する方法は、HSCT、特に同種造血幹細胞移植を受ける前の前処置を受けた患者において採用される。好ましい実施形態では、前処置は骨髄破壊的である。他の好ましい実施形態では、前処置は減弱的である。
GvHDの治療はよく知られており、臨床医側の推奨事項の対象となっている(例えば、Magro et al.,BullCancer.104S:S145-S168,2017;Penack et al.,Lancet Haematol.7(2):e157-e167;2020参照)。GvHDの治療は予防的に使用されることができ、シクロスポリン又はタクロリムス等の免疫抑制治療による治療から最も多くなる。
GvHDの治療が治療的に使用される場合、合併症の重症度によって異なる。しかしながら、これらの治療は、殆ど一般的に、免疫抑制剤、コルチコイド、特にプレドニゾロン及びメチルプレドニゾロンを含む。コルチコイドが無効の場合は、抗リンパ球血清(ALS)も使用される。最後に、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト(登録商標))、モノクローナル抗体(抗TNFα又はIL2抗受容体)等、他の第二選択薬物を使用することができる。
本記載は、対象のT細胞の増殖能を決定するために、対象におけるTTV量の変動の測定の使用にも関する。
量の変動は、最初の時点で採取された試料で測定されたTTV量と、第1の時点よりも後である第2の時点で採取された試料で測定されたTTV量とを比較することで、決定されることができる。
前述のように、TTV量が経時で増加する場合、これはT細胞の増殖能の低下を通じて、当該T細胞の活性の低下を反映する。逆に、TTV量が経時で減少することは、T細胞の増殖能の増加を通じて、当該T細胞の活性の上昇を反映する。
本記載はまた、以下の実施形態に関する。
実施形態1:対象における、T細胞の増殖能を決定する方法であって、前記方法は、以下工程:
a)前記対象の生体試料からTTV量を測定する工程と;
b)a)で測定されたウイルス量に応じてT細胞の増殖能を決定する工程と、
を含む。
実施形態2:TTV量が、TTV配列の増幅、シークエンシング、又はハイブリダイゼーションによって、好ましくは増幅によって、より好ましくはリアルタイムPCRによって、測定される、実施形態1に記載の方法。
実施形態3:生体試料が、全血、血漿、又は血清の試料である、実施形態1から2のいずれかに記載の方法。
実施形態4:工程b)における決定が、a)で測定されたTTV量と基準TTV量とを比較することを含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
実施形態5:患者が移植を受けた、実施形態1から4のいずれかに記載の方法。
実施形態6:患者が造血幹細胞移植(HSCT)、好ましくは同種造血幹細胞移植を受けた、実施形態5に記載の方法。
実施形態7:患者が、移植手術前に、前処置、好ましくは骨髄破壊的又は減弱的前処置を受けた、実施形態5から6のいずれかに記載の方法。
実施形態8:同種造血幹細胞移植を受けた患者において、T細胞の活性を監視する方法であって、前記方法が、
a)実施形態1から6のいずれかにおいて、最初の時点で、前記患者におけるT細胞の増殖能を測定する工程と;
b)a)で測定されたT細胞の増殖能とT細胞の基準増殖能とを比較する工程と;
c)工程b)における比較に応じて、前記患者のT細胞の活性における変化を決定する工程と、
を含む。
実施例9:同種造血幹細胞移植を受けた患者において、微生物感染に対する易罹患を決定する方法であって、前記方法が、
a)実施形態1から6のいずれかにおいて、最初の時点で、前記患者におけるT細胞の増殖能を測定する工程と;
b)a)で測定されたT細胞の増殖能とT細胞の基準増殖能とを比較する工程と;
c)工程b)における比較に応じて、患者の、微生物感染に対する易罹患性を決定する工程と、
を含むこと。
実施形態10:前記微生物感染がウイルス、細菌、原虫、又は真菌感染である、実施形態9に記載の方法。
実施形態11:同種造血幹細胞移植を受けた患者において、移植片対宿主病(GvHD)に対する易罹患性を決定する方法であって、前記方法が、
a)実施形態1から6のいずれかにおいて、最初の時点で、前記患者におけるT細胞の増殖能を測定する工程と;
b)a)で測定されたT細胞の増殖能とT細胞の基準増殖能とを比較する工程と;
c)工程b)における比較に応じて、患者の、GvHDに対する易罹患性を決定する工程と、
を含む。
実施形態12:前記T細胞の基準増殖能が、健康な個体のT細胞の増殖能又は免疫抑制された個体のT細胞の増殖能である、実施形態8から11のいずれかに記載の方法。
実施形態13:前記T細胞の基準増殖能が、第2の時点で、前記患者で測定されたT細胞の増殖能である、実施形態8から11のいずれかに記載の方法。
本発明は、以下に示す実施例によってより正確に記載される。
TTV分離株のゲノムの構造の表現。 プロトタイプTTV(TTV-1a分離株)のゲノムの組織体。矢印は主要なORF(50アミノ酸超の長さを有する)を表す。GCリッチ領域と領域N22(TTVが元々単離された)を示す。非翻訳領域UTRは、ORF4の3’末端からORF2の5’末端までの領域に相当する。From Biagini,Curr Top Microbiol Immunol.331:21-33,2009より。 同種造血幹細胞移植のレシピエント及び健康な被験者からの血漿試料からのTTVウイルス量。 41人の同種造血幹細胞移植のレシピエント(黒)及び54人の健康な被験者(白)のTTVウイルス量を定量化した。DNA抽出後、TTV R-GENE(登録商標)キット(診断のためではなく、調査のためのみに使用可能、Ref#69-030,bioMerieux.Marcy-l’Etoile、フランス)を用いて、TTVウイルス量を定量化した。検出された最小ウイルス量は、0.46Logコピー/mL(log cp/mL)であった。logコピー/mLは、2つの集団間のTTVのウイルス量の発現を記述するために使用される。分散はF検定を使用して比較された(##p<0.01)。平均TTVウイルス量(黒い線)は、対応のないt検定(unpaired t-test)とウェルチ補正を使用して比較された(***p<0.001)。 略号:DNA デオキシリボ核酸;Allo 同種間;HSCT 造血幹細胞移植;TTV トルクテノウイルス 41人の同種造血幹細胞移植のレシピエント(黒)と20人の健康な被験者(白)からのCD3T細胞の増殖能を、マイトジェン(PHA)を用いた3日間の刺激後に定量化し、Click-It(登録商標)EdU AF488キットを用いたフローサイトメトリーで測定した。F検定を用いて、両集団の分散を比較した(##p<0.01)。平均値(黒い線)の比較は、ウェルチ補正を用いた対応のないt検定を用いて行った(***p<0.001)。略語:Allo 同種間;HSCT 造血幹細胞移植;PHA フィトヘマグルチニン TTVウイルス量と、T細胞数及びCD3+T細胞の増殖能との相関関係 幾つかのT細胞サブタイプの数に対して、及びCD3T細胞の増殖能に対して、41人の同種造血幹細胞移植のレシピエントからの、血漿のTTVウイルス量の全体の相関関係(A)。評価された全てのパラメータにおけるピアソンのロー(ρ)及び95%信頼区間(CI95)は、それぞれ、黒い点と黒い線で表される。 (B)CD3T細胞の増殖能、(C)絶対的リンパ球数、及び(D)CD3T細胞の数の関数として、41人の同種造血幹細胞移植のレシピエントからの血漿のLogコピー/mLで表される、TTVウイルス量の詳細な相関関係。患者は、ドットで表される。一番極端な(extreme)患者:「A」(正方形)及び「B」(三角形)、並びに線形回帰(黒い線)を示す。 T細胞膜マーカーの広範なパネルを使用して、免疫学研究室でフローサイトメトリーによってリンパ球の数を測定した。CD3T細胞の増殖能を、マイトジェン(PHA)を用いた3日間の刺激後に決定し、Click-It(登録商標)EdU AF488キットを用いたフローサイトメトリーで測定した。TTVウイルス量(x軸)と、リンパ球の数又はCD3T細胞の増殖能(y軸)との相関関係は、ピアソン相関係数(各図に示される)を用いて決定した。略語:Allo 同種間;HSCT 造血幹細胞移植;NK ナチュラルキラー;PHA フィトヘマグルチニン;TTV トルクテノウイルス T細胞の免疫表現型検査及びCD3T細胞の増殖能に対して、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿から得られた血漿TTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の全体的な相関関係(A)。CD3T細胞の増殖能に対する、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿のTTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の詳細な相関関係(B)。絶対的リンパ球数に対する、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿のTTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の詳細な相関関係(C)。CD3T細胞の数に対する、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿のTTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の詳細な相関関係(D)。Edouard Herriot hospital(Hospices Civils de Lyon)の免疫学研究室で、T細胞の膜マーカーの幅広いパネルを用いて、フローサイトメトリーによってサブタイプ及び絶対的リンパ球数を測定した。CD3の増殖能を、マイトジェン(PHA)を用いた3日間の刺激後に決定し、Click-It(登録商標)EdU AF488フローキットを用いたフローサイトメトリーで測定した。TTVウイルス量(横座標)とCD3T細胞の増殖能又は細胞数(縦座標)との相関関係は、ピアソン相関係数(各図に示される)を用いて決定した。(A)黒の点線で表される-0.5~0.5の値は、相関関係信頼区間の範囲に対応する。全てのパラメータにおけるピアソンのロー(ρ)及び95%信頼区間(CI95)は、それぞれ、点と黒い線で表される(B、C、及びD)。患者は黒の点、一番極端な患者は、正方形と三角形で表される。線形回帰は黒い線で表される。 TTVウイルス量と、T細胞数及びCD3+T細胞の増殖能との相関関係 幾つかのT細胞サブタイプの数に対して、及びCD3T細胞の増殖能に対して、41人の同種造血幹細胞移植のレシピエントからの、血漿のTTVウイルス量の全体の相関関係(A)。評価された全てのパラメータにおけるピアソンのロー(ρ)及び95%信頼区間(CI95)は、それぞれ、黒い点と黒い線で表される。 (B)CD3T細胞の増殖能、(C)絶対的リンパ球数、及び(D)CD3T細胞の数の関数として、41人の同種造血幹細胞移植のレシピエントからの血漿のLogコピー/mLで表される、TTVウイルス量の詳細な相関関係。患者は、ドットで表される。一番極端な(extreme)患者:「A」(正方形)及び「B」(三角形)、並びに線形回帰(黒い線)を示す。 T細胞膜マーカーの広範なパネルを使用して、免疫学研究室でフローサイトメトリーによってリンパ球の数を測定した。CD3T細胞の増殖能を、マイトジェン(PHA)を用いた3日間の刺激後に決定し、Click-It(登録商標)EdU AF488キットを用いたフローサイトメトリーで測定した。TTVウイルス量(x軸)と、リンパ球の数又はCD3T細胞の増殖能(y軸)との相関関係は、ピアソン相関係数(各図に示される)を用いて決定した。略語:Allo 同種間;HSCT 造血幹細胞移植;NK ナチュラルキラー;PHA フィトヘマグルチニン;TTV トルクテノウイルス T細胞の免疫表現型検査及びCD3T細胞の増殖能に対して、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿から得られた血漿TTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の全体的な相関関係(A)。CD3T細胞の増殖能に対する、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿のTTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の詳細な相関関係(B)。絶対的リンパ球数に対する、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿のTTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の詳細な相関関係(C)。CD3T細胞の数に対する、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿のTTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の詳細な相関関係(D)。Edouard Herriot hospital(Hospices Civils de Lyon)の免疫学研究室で、T細胞の膜マーカーの幅広いパネルを用いて、フローサイトメトリーによってサブタイプ及び絶対的リンパ球数を測定した。CD3の増殖能を、マイトジェン(PHA)を用いた3日間の刺激後に決定し、Click-It(登録商標)EdU AF488フローキットを用いたフローサイトメトリーで測定した。TTVウイルス量(横座標)とCD3T細胞の増殖能又は細胞数(縦座標)との相関関係は、ピアソン相関係数(各図に示される)を用いて決定した。(A)黒の点線で表される-0.5~0.5の値は、相関関係信頼区間の範囲に対応する。全てのパラメータにおけるピアソンのロー(ρ)及び95%信頼区間(CI95)は、それぞれ、点と黒い線で表される(B、C、及びD)。患者は黒の点、一番極端な患者は、正方形と三角形で表される。線形回帰は黒い線で表される。 TTVウイルス量と、T細胞数及びCD3+T細胞の増殖能との相関関係 幾つかのT細胞サブタイプの数に対して、及びCD3T細胞の増殖能に対して、41人の同種造血幹細胞移植のレシピエントからの、血漿のTTVウイルス量の全体の相関関係(A)。評価された全てのパラメータにおけるピアソンのロー(ρ)及び95%信頼区間(CI95)は、それぞれ、黒い点と黒い線で表される。 (B)CD3T細胞の増殖能、(C)絶対的リンパ球数、及び(D)CD3T細胞の数の関数として、41人の同種造血幹細胞移植のレシピエントからの血漿のLogコピー/mLで表される、TTVウイルス量の詳細な相関関係。患者は、ドットで表される。一番極端な(extreme)患者:「A」(正方形)及び「B」(三角形)、並びに線形回帰(黒い線)を示す。 T細胞膜マーカーの広範なパネルを使用して、免疫学研究室でフローサイトメトリーによってリンパ球の数を測定した。CD3T細胞の増殖能を、マイトジェン(PHA)を用いた3日間の刺激後に決定し、Click-It(登録商標)EdU AF488キットを用いたフローサイトメトリーで測定した。TTVウイルス量(x軸)と、リンパ球の数又はCD3T細胞の増殖能(y軸)との相関関係は、ピアソン相関係数(各図に示される)を用いて決定した。略語:Allo 同種間;HSCT 造血幹細胞移植;NK ナチュラルキラー;PHA フィトヘマグルチニン;TTV トルクテノウイルス T細胞の免疫表現型検査及びCD3T細胞の増殖能に対して、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿から得られた血漿TTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の全体的な相関関係(A)。CD3T細胞の増殖能に対する、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿のTTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の詳細な相関関係(B)。絶対的リンパ球数に対する、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿のTTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の詳細な相関関係(C)。CD3T細胞の数に対する、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿のTTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の詳細な相関関係(D)。Edouard Herriot hospital(Hospices Civils de Lyon)の免疫学研究室で、T細胞の膜マーカーの幅広いパネルを用いて、フローサイトメトリーによってサブタイプ及び絶対的リンパ球数を測定した。CD3の増殖能を、マイトジェン(PHA)を用いた3日間の刺激後に決定し、Click-It(登録商標)EdU AF488フローキットを用いたフローサイトメトリーで測定した。TTVウイルス量(横座標)とCD3T細胞の増殖能又は細胞数(縦座標)との相関関係は、ピアソン相関係数(各図に示される)を用いて決定した。(A)黒の点線で表される-0.5~0.5の値は、相関関係信頼区間の範囲に対応する。全てのパラメータにおけるピアソンのロー(ρ)及び95%信頼区間(CI95)は、それぞれ、点と黒い線で表される(B、C、及びD)。患者は黒の点、一番極端な患者は、正方形と三角形で表される。線形回帰は黒い線で表される。 TTVウイルス量と、T細胞数及びCD3+T細胞の増殖能との相関関係 幾つかのT細胞サブタイプの数に対して、及びCD3T細胞の増殖能に対して、41人の同種造血幹細胞移植のレシピエントからの、血漿のTTVウイルス量の全体の相関関係(A)。評価された全てのパラメータにおけるピアソンのロー(ρ)及び95%信頼区間(CI95)は、それぞれ、黒い点と黒い線で表される。 (B)CD3T細胞の増殖能、(C)絶対的リンパ球数、及び(D)CD3T細胞の数の関数として、41人の同種造血幹細胞移植のレシピエントからの血漿のLogコピー/mLで表される、TTVウイルス量の詳細な相関関係。患者は、ドットで表される。一番極端な(extreme)患者:「A」(正方形)及び「B」(三角形)、並びに線形回帰(黒い線)を示す。 T細胞膜マーカーの広範なパネルを使用して、免疫学研究室でフローサイトメトリーによってリンパ球の数を測定した。CD3T細胞の増殖能を、マイトジェン(PHA)を用いた3日間の刺激後に決定し、Click-It(登録商標)EdU AF488キットを用いたフローサイトメトリーで測定した。TTVウイルス量(x軸)と、リンパ球の数又はCD3T細胞の増殖能(y軸)との相関関係は、ピアソン相関係数(各図に示される)を用いて決定した。略語:Allo 同種間;HSCT 造血幹細胞移植;NK ナチュラルキラー;PHA フィトヘマグルチニン;TTV トルクテノウイルス T細胞の免疫表現型検査及びCD3T細胞の増殖能に対して、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿から得られた血漿TTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の全体的な相関関係(A)。CD3T細胞の増殖能に対する、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿のTTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の詳細な相関関係(B)。絶対的リンパ球数に対する、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿のTTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の詳細な相関関係(C)。CD3T細胞の数に対する、41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿のTTVウイルス量(Log cp/mLで表される)の詳細な相関関係(D)。Edouard Herriot hospital(Hospices Civils de Lyon)の免疫学研究室で、T細胞の膜マーカーの幅広いパネルを用いて、フローサイトメトリーによってサブタイプ及び絶対的リンパ球数を測定した。CD3の増殖能を、マイトジェン(PHA)を用いた3日間の刺激後に決定し、Click-It(登録商標)EdU AF488フローキットを用いたフローサイトメトリーで測定した。TTVウイルス量(横座標)とCD3T細胞の増殖能又は細胞数(縦座標)との相関関係は、ピアソン相関係数(各図に示される)を用いて決定した。(A)黒の点線で表される-0.5~0.5の値は、相関関係信頼区間の範囲に対応する。全てのパラメータにおけるピアソンのロー(ρ)及び95%信頼区間(CI95)は、それぞれ、点と黒い線で表される(B、C、及びD)。患者は黒の点、一番極端な患者は、正方形と三角形で表される。線形回帰は黒い線で表される。 TTVウイルス量の一番極端な値を有する患者の経時的な記述的モニタリング 患者「A」及び患者「B」の、HSCTから組み入れ(inclusion)までの間の、主な臨床ステージ(黒)及び感染エピソード(灰色)の経時的な記載。患者「A」は、TTVウイルス量が最も低く、逆に患者「B」は、TTVウイルス量が最も高かった。略語:CMV サイトメガロウイルス;EBV エプスタイン・バール・ウイルス;HSCT 造血幹細胞移植;GvHD 移植片対宿主病;M 月 TTVウイルス量とHSCTからの時間との相関関係。 詳細の相関関係 41人の同種造血幹細胞移植レシピエントの血漿の血漿TTVウイルス量(Log cp/mLで表される)と、HSCTから組み入れまでの間の時間経過(月で表される)との詳細の相関関係。TTVウイルス量(横座標)と遅延(delay)(縦座標)との相関関係は、ピアソン相関係数(各図に示される)を用いて決定した。患者は黒の点で表され、線形回帰は黒い線で表される。略語:HSCT 造血幹細胞移植;TTV トルクテノウイルス
実施例1
本研究では、同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)レシピエントの移植手術後の免疫回復期におけるTTVウイルス量と免疫細胞数との相関関係、及び免疫細胞の機能を評価・比較した。
材料及び方法
研究集団
同種造血幹細胞移植を受けた患者から得られた、ヘパリン化された全血の試料及びEDTAで処理された血漿試料は、前述の前向きコホートVaccheminfから得られた(13)。このコホートは地域の審査委員会(Comite de protection des personnes Sud-Est V, Grenoble, France, number 69HCL17_0769)によって承認され、ClinicalTrial.gov(NCT03659773)に登録される。CHU Lyonの血液学科で同種造血幹細胞移植を受けた治療継続成人患者を、患者の書面による同意が得られた時点で将来を見越して組み入れた。
入院時には、電子症例報告書(eCRF)を用いて、人口統計学的特徴(年齢、性別)及び臨床データ(移植の種類、免疫表現型検査、免疫抑制治療、GvHD状態、及びGvHD治療)等の収集データを記録した。
並行して、80人の健康な個体(HV)は、Lyon血液バンク(Etablissement Francais du Sang,EFS)のドナーから集められた。献血のためのEFSの標準化された手順及び公衆衛生法(public health code)の第R.1243-49条等により、研究目的での献血血液の使用に反対しない書面が健康な人から得られた。供血者の年齢と性別は匿名で研究室に送られた。これらの試料の取り扱いと保管に関する規制当局の許可は、地域倫理委員会(Comite de protection des personnes Sud-Est II,Bron、フランス)及びフランス研究省(Ministry of Higher Education,Research and Innovation, Paris、フランス)から得られた。
TTVウイルス量の定量化
製造業者の使用説明書に従って、easyMag抽出器(bioMerieux、フランス)を用いて、200μlの血漿試料から50μLのウイルスDNAの溶出体積を抽出した。次にTTVの存在及びTTV量を、前述のTTV R-GENE(登録商標)キット(bioMerieux,Marcy-l’Etoile、フランス)を用いて決定した(14、15)。
T細胞増殖試験
Ficoll密度勾配遠心法(U-04; Eurobio,Les Ulis、フランス)によりヘパリン化された新鮮血液試料(ヘパリン化された全血)から末梢血単核球(PBMC)を分離した。次に、10細胞/ウェルを、37℃、5%COの96ウェル細胞培養プレート(RPMI 1640;Eurobio)内の補充培養培地で24時間インキュベートした。次に、PBMCをマイトジェン、フィトヘマグルチニン(PHA)で4μg/mL(R30852801;Remel,Oxoid,Thermo Fisher Scientific,USA)で2回刺激し、72時間インキュベートした。PBMCの培養上清を回収し、製造業者の使用説明書に従ってELLAナノ流体システム(ProteinSimple, San Jose, CA, USA)上でSimple Plexカートリッジを使用してIFNγ分泌検査(IGRA、「IFNγ-遊離検査」)を行った。公表されたプロトコル(16)に従って、5-エチニル-2’-デオキシウリジン(EdU)の組込みを測定する、Click-iT(商標)Plus EdU Alexa Fluor(商標)488フローサイトメトリーアッセイキット(C10420;Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)を用いて、ペレット内でT細胞の増殖を分析した。簡単に言えば、BD LSR Fortessa(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences,San Jose,CA,USA)で実施されたフローサイトメトリー分析によって、(CD3細胞の中で)EdU+増殖細胞の割合が判明した(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)。各実験について、少なくとも2.5×10CD3細胞を測定した。データは、BD FACSDiva(登録商標)ソフトウェア(バージョン8.0.3,BD Biosciences)を使用して分析した。
移植手術後のT細胞の免疫表現型検査
白血球、並びにCD4及びCD8T細胞をEdouard Herriot hospital(Hospices Civils de Lyon)の免疫学研究室で計数した。更に、全血において、T細胞の膜マーカーの幅広いパネルをフローサイトメトリーで測定した。前に記載されるように(14)、この方法で計数されたのは以下である:ナイーブCD4及びCD8T細胞(CD45 CCR7)、セントラルメモリーCD4及びCD8T細胞(CD45RA CCR7)、エフェクターメモリーCD4及びCD8T細胞(CD45 CCR7)、及び分化されたメモリーCD4及びCD8T細胞(CD45RA CCR7)。結果は、細胞/μLで表される。
統計分析
免疫表現型検査データ、TTVウイルス量、及びT細胞の増殖能は、平均値(範囲)で表される。Log形式に変換したTTV量を分析に用いた(logコピー/mL)。健康なレシピエントと同種造血幹細胞移植レシピエントとの差は、ウェルチ補正を用いた対応のないパラメトリックt検定(unpaired parametric t test)を用いて計算された。相関関係は、パラメトリックピアソンロー(ρ)相関係数を用いて評価した。回帰分析は、従属変数(TTVウイルス量)と独立変数(増殖細胞の割合、リンパ球の絶対数、CD3T細胞の数)との関連性を評価するために実施された。分散分析は、F検定を用いて実施された。マン・ホイットニー検定を用いて、様々な臨床的特徴に対する血漿TTV量の差を決定した。p<0.05の値を有意とみなした。統計解析は、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェア(バージョン5;GraphPad software,La Jolla,CA,USA)及びR(バージョン3.5.1)を用いて行った。
結果
コホートの特徴
2018年5月~2020年4月に、健康な被験者(n=80)と同種造血幹細胞移植レシピエント(n=41)を登録した。健康な個体と同種造血幹細胞移植のレシピエントでは、年齢(中央値[IR]:それぞれ56[40~64]対46[31~53]年)と性別(性比はそれぞれ1.6対1.4)で、有意差はなかった。登録時の移植手術後の中央値期間[IR]は、同種造血幹細胞移植のレシピエントで6[5~8]か月であった。組入れ時、同種造血幹細胞移植のレシピエントの78%が免疫抑制剤薬物(コルチコイド、カルシニューリン阻害剤、その他...)を受け、17%が慢性移植片対宿主病を有していた(表1)。
健康な被験者及び同種造血幹細胞移植からの血漿試料におけるTTVウイルス量
80人の健康なレシピエントと41人の同種造血幹細胞移植レシピエントから得られた血漿試料中のTTVウイルス量を研究した。TTVウイルス量は、リアルタイムPCRによって、健康な試料の68%(54/80)において検出された。同種造血幹細胞移植レシピエントに関しては、本研究に含まれる全ての患者は、TTVウイルス量の検出可能な値を有していた。平均値(範囲)TTVウイルス量は、健康な対象と比較して、同種造血幹細胞移植レシピエントにおいて、有意に高かった(それぞれ、3.9(0.7~7.7)対2.1(0.5~4.3)logコピー/mL、p<0.0001)[図2]。
TTV ウイルス量とT細胞の数との相関関係及び後者の増殖能
移植手術後6か月を含めた同種造血幹細胞移植レシピエントを考慮すると、リンパ球サブタイプの集団の殆どは正常値(NV)の範囲内であった。しかしながら、T細胞CD4、ナイーブCD4、セントラルメモリーCD4、最終分化におけるエフェクターメモリーCD4、ナイーブCD8、及びセントラルメモリーCD8の量、並びにCD4/CD8比は、正常値以下であった([表1]参照)。
[表1] 同種造血幹細胞移植レシピエントのベースライン特徴
全ての研究室データは、レシピエントの登録時に記録された。骨髄系及びリンパ系腫瘍の世界保健機構分類の2016年改訂版による。#免疫抑制治療は、抗胸腺細胞グロブリン、シクロスポリン、タクロリムス、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、副腎皮質ステロイド≧1mg/kg>21日間を含んだ。Edouard Herriot hospital(Hospices Civils de Lyon)の免疫学研究室で、T細胞の膜マーカーの幅広いパネルを用いて、フローサイトメトリーによってリンパ球の総数及びサブタイプを測定した。示された正常値は、Edouard Herriot hospital(Hospices Civils de Lyon)の研究室から提供される。
略語:Allo 同種間;DLI ドナーリンパ球注入;GvHD 移植片対宿主病;HLA ヒト白血球抗原;HSCT 造血幹細胞移植;IR 四分位範囲;TBI 全身照射;IS 免疫抑制剤;IVIG 静脈内ポリクローナル免疫グロブリン;MAC 骨髄破壊的前処置;NK ナチュラルキラー;ECP 体外循環式光化学療法;CR 完全寛解;RIC 強度軽減移植前治療;NV 正常値
健康な対象と比較して、同種造血幹細胞移植レシピエントにおけるCD3細胞中の有意に低い増殖能を除いては(それぞれ、40.5%対21.3%、p<0.0001)、より大きくより有意な不均一な分布も認められ(同種造血幹細胞移植及び健康な対象において、それぞれ[2.9%~42.3%]及び[29.7%~55.3%];F検定p=0.0040)、同種造血幹細胞移植レシピエントの免疫の回復において、個人間の可変性が根底にある(図表では示されない)。
ピアソン相関検定(ロー(ρ)[CI95])を用いて、最も高い相関関係は、TTVウイルス量とT細胞の増殖能との間で観察された((3A)及び(3B))。なお、リンパ球の総数又は特定の細胞のサブセット(例えば、CD3)との間には有意な相関関係は観察されなかったことに注意すべきである(それぞれ、ピアソンのロー(ρ)ρ=-0.39[CI95%-0.62~-0.09])対(ρ=0.13[-0.19~0.42])及び(ρ=0.09[-0.23~0.38]))(図3C)及び(図3D)。
一番極端な値のTTV量を有する患者の臨床的特徴
PHA刺激に応答したT細胞の増殖能とTTV量との相関関係を個人レベルで分析したところ、最も低いウイルス量(0.65logコピー/mL)を有する患者(A、正方形で表される)は、増殖細胞の高い割合(41.6%)を有し、反対に、最も高いウイルス量(7.72logコピー/mL)を有する患者(B、三角形で表される)は、増殖細胞の低い割合(2.9%)を有した(図3B)。この二人の患者(男性及び女性)は同じ年齢層(50<年齢<60歳)であり、移植手術前には完全寛解状態にあった。患者(A)は、ゲノ同一性(geno-identical)ドナーから幹細胞の移植を受けていたが、患者(B)は、フェノ同一性(pheno-identical)ドナーから末梢血細胞の移植を受けていた。患者(A)は、移植手術から登録までの間に、感染エピソード、GvHD、免疫抑制治療等の特定の臨床イベントがなく、移植後の展開は、単純であった(図4)。逆に、患者(B)は、面倒な免疫抑制治療を受けており、急性のGvHD及び複数の重篤な細菌/ウイルス感染症を患っていた(図4)。
議論
まず、単一中心性前向きコホートVaccHemInf(13)の80人の健康な免疫適格対象及び41人の免疫抑制された同種造血幹細胞移植移植者の、二つの異なる集団について、TTVの有病率及び血漿中のウイルス量を比較した。
最近の研究(18)によると、健康な対象からの試料において、68%のTTVの有病率が観察された。これに対し、免疫抑制された患者の試料の100%でTTVが検出された。また、同種造血幹細胞移植のレシピエントでは、TTVの血漿ウイルス量がHVと比較して有意に高いことが確認された(10、19)。そのため、同種造血幹細胞移植の6ヶ月後には、十分な数のT細胞にもかかわらず、TTVのウイルス量を調節できない患者もいる。移植後の遅延[5~8ヶ月]と血漿TTVウイルス量との間に相関関係は認められなかった。本研究の主な結果の一つは、TTVの血漿ウイルス量が、健康な対象と比較して同種造血幹細胞移植レシピエント(移植手術後6ヶ月)で有意に高かったことであり、Tyagiら(2013年)(移植手術後の遅延は記載されず)及びMasouridiら(2016年)(移植手術後2~3か月)の観察結果を確認した(10、18)。この結果は、ウイルス感染に対する免疫応答の主要な細胞であるT細胞(19、20)が、TTVの主要な複製部位(21、22)の一つであるという事実によって説明されることができるかもしれない。移植後6ヶ月の同種造血幹細胞移植レシピエントでは、免疫系が回復しつつあるため、T細胞の増殖が進行中であり、これによってウイルスが複製できる大量の細胞を供給する。また、TTV量は移植手術後約3~6ヶ月で最大となり、その後いわゆる正常値(23、24年)に戻ると記載される(23、24)。したがって、TTVはまだナイーブで機能していないT細胞の増殖を利用して複製を行い、最終的に免疫系と機能細胞によって制御されると仮定されることができ、TTVウイルス量と免疫機能との間の重要な関連性を示唆する。本研究は、血漿TTV量と定量的マーカーである免疫細胞数との相関関係の評価を含み、幾つかの研究で既に評価されているが、矛盾した結果が出ており(17、23~25)、また免疫回復の定性的マーカーである非特異的刺激後のT細胞の増殖の測定も含む。同種造血幹細胞移植移植手術から登録までの期間の影響は認められなかった(図5)。免疫抑制された集団の個人間の可変性を強調する、不均一なT細胞の増殖値の分布の不均一性にもかかわらず、TTVウイルス量とT細胞の増殖との間には、免疫細胞数よりも、より大きな相関関係が認められた(図3A)。より正確には、興味深いことに逆相関であり、機能的な免疫細胞の数が多いほど、TTV量が低いことを示唆する。この結果は、固体臓器の移植手術において、De Vlaminckらによって2013年に記載されたもの(11)と一貫し、そこでは免疫抑制のレベルの低下がTTVウイルス量の低下と相関していた。これは、移植手術後のTTVウイルス量の動態に関する多くの記載にも対応し(23、26)、そこでは、最初に免疫抑制治療に関連した減少の段階が観察され、その後、TTVの複製のための免疫細胞能力の拡大に関連した成長段階、その後安定化の段階を経て、最終的にベースラインレベルまでウイルス量が減少し、このことは機能的免疫回復を反映する。同種造血幹細胞移植の6ヶ月後には、TTVの有意な複製を可能にするのに十分な数の免疫細胞が拡大しているが、それらはTTVウイルス量を調節するのに十分に機能的ではないだろうと考えられる。したがって、免疫抑制された患者は、十分な数のT細胞にもかかわらず、TTVウイルス量を調節することができないであろう。これは、サイトメガロウイルス(CMV)又はエプスタイン・バール・ウイルス(EBV)等、同種造血幹細胞移植のレシピエントに古典的に記載されている他のウイルスにも当てはまる(24、27、28)。我々のコホートでは、それぞれ24%と37%の患者がこれら2つのウイルスに感染していた。これは、TTVウイルス量の一番極端な値を有する患者に対して行われた観察とも一致する。
TTVウイルス量は、免疫老化の潜在的マーカーとして記述されるリンパ球のサブタイプであるCD8/CD57T細胞の数とも関連付けられており、後天性免疫不全状態、移植又は持続的なウイルス感染等の特定の病理の過程で増加する。したがって、これら全ての結果は、TTVと免疫系の機能との間、特にウイルス量を調整する能力に関して、潜在的に重要な関連性があることを示唆する。
我々の研究では、TTV量に対する様々な臨床的特徴(例えば、状態、基礎疾患、免疫抑制治療、又はGvHD)の影響は観察されなかった(表2)。
表2 同種造血幹細胞移植の41人のレシピエントの血漿TTV量と臨床的特徴との比較
全てのデータは、レシピエントの登録時に記録された。骨髄系及びリンパ系腫瘍の世界保健機構分類の2016年改訂版による。#免疫抑制治療は、抗胸腺細胞グロブリン、シクロスポリン、タクロリムス、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、副腎皮質ステロイド≧1mg/kg>21日間を含んだ。マン・ホイットニー検定(***、p<0.001)を用いて、中央値血漿TTV量[IR]を臨床データと比較した。
略語:GvHD 移植片対宿主病;IR 四分位範囲;IVIG 静脈内ポリクローナル免疫グロブリン;MAC 骨髄破壊的前処置;RIC 強度軽減移植前治療;TBI 全身照射;TTV トルクテノウイルス
要約すると、本研究は、TTVウイルス量とT細胞機能との間に相関関係が存在することを立証し、この相関関係が細胞数に依存しないことを示す。
実施例2
実施例1から、同種造血幹細胞移植(HSCTとも)を受けた複数の患者間の、T細胞の数、前記T細胞の増殖能、及び血漿TTVウイルス量間の比較
TTVウイルス量の定量化、増殖試験、及びCD3+T細胞の計測を実施例1と同じプロトコルに従って行った。結果を以下表3に示す。
表3 血漿TTVウイルス量、CD3+T細胞の数、及び前記リンパ球の増殖能の比較
TTVウイルス量とCD3+T細胞の数とを比較すると、患者の同程度のウイルス量ではCD3+T細胞の数が有意に異なることがあり(患者1対患者2)、逆に有意に異なるウイルス量では(患者3対患者4)、CD3+T細胞の数が同程度であることができることが分かる。したがって、これは、TTVウイルス量は、CD3+T細胞の数と相関しないことを確認する。
しかしながら、CD3+T細胞の数と増殖能を比較すると、CD3+T細胞の増殖能が同程度の患者では、当該リンパ球の数が有意に異なることがあることが分かる(患者1対患者2)。逆に、CD3+T細胞の数が同程度の場合は、増殖能が有意に異なることがある(患者3対患者4)。
結果として、このことは、CD3+T細胞の数がその増殖能と排他的に相関しているわけではなく、TTVウイルス量とは対照的に、CD3+T細胞の数が多いことは、当該リンパ球の刺激後の増殖能、ひいては免疫系の機能の示唆ではないことを確認する。
実際、TTVウイルス量を見ると、CD3T細胞の増殖能と逆相関していることが分かる(患者3対患者4)。
参照
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Claims (15)

  1. 対象における、T細胞の増殖能を決定する方法であって、前記方法は、
    a)前記対象の生体試料からTTV量を測定する工程と;
    b)a)で測定されたウイルス量に応じてT細胞の増殖能を決定する工程と、
    を含むことを特徴とする方法。
  2. TTV量が、TTV配列の増幅、シークエンシング、又はハイブリダイゼーションによって、好ましくは増幅によって、より好ましくはリアルタイムPCRによって、測定される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記生体試料が、全血、血漿、又は血清の試料である、請求項1から2のいずれかに記載の方法。
  4. 工程b)における決定が、a)で測定されたTTV量と基準TTV量とを比較する工程を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記対象が移植を受けた、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 対象が造血幹細胞移植(HSCT)、好ましくは同種造血幹細胞移植を受けた、請求項5に記載の方法。
  7. 前記対象が、移植手術前に、前処置、好ましくは骨髄破壊的又は減弱的前処置を受けた、請求項5から6のいずれかに記載の方法。
  8. 同種造血幹細胞移植を受けた対象において、T細胞の活性を監視する方法であって、前記方法が、
    a)請求項1から6のいずれかに特許請求されるように、最初の時点で、前記対象におけるT細胞の増殖能を測定する工程と;
    b)a)で測定されたT細胞の増殖能とT細胞の基準増殖能とを比較する工程と;
    c)工程b)における比較に応じて、前記対象のT細胞の活性における変化を決定する工程と、
    を含むことを特徴とする方法。
  9. 移植、好ましくはHSCT、より好ましくは同種造血幹細胞移植を受けた対象において、T細胞の活性を監視する方法であって、前記方法が、
    a)最初の時点で患者から採取された生体試料からのTTVウイルス量を決定する工程と;
    b)工程a)における前記最初の時点よりも後である第2の時点で前記患者から採取された生体試料から、TTVウイルス量を決定する工程と;
    c)a)及びb)で測定されたTTVウイルス量を比較する工程と;
    b)工程c)での比較に応じて、患者のTTV量の変化を決定する工程と、
    を含むことを特徴とする方法。
  10. 同種造血幹細胞移植を受けた対象において、微生物感染に対する易罹患を決定する方法であって、前記方法が、
    a)請求項1から6のいずれかに特許請求されるように、最初の時点で、前記対象におけるT細胞の増殖能を測定する工程と;
    b)a)で測定されたT細胞の増殖能とT細胞の基準増殖能とを比較する工程と;
    c)工程b)における比較に応じて、前記対象の微生物感染に対する易罹患性を決定する方法と、
    を含むことを特徴とする方法。
  11. 前記微生物感染が、ウイルス、細菌、原虫、又は真菌感染である、請求項10に記載の方法。
  12. 同種造血幹細胞移植を受けた対象において、移植片対宿主病(GvHD)に対する易罹患性を決定する方法であって、前記方法が、
    a)請求項1から6のいずれかに特許請求されるように、最初の時点で、前記対象におけるT細胞の増殖能を測定する工程と;
    b)a)で測定されたT細胞の増殖能とT細胞の基準増殖能とを比較する工程と;
    c)工程b)における比較に応じて、GvHDに対する前記対象の易罹患性を決定する工程と、
    を含むことを特徴とする方法。
  13. T細胞の基準増殖能が、健康な個体のT細胞の増殖能又は免疫抑制された個体のT細胞の増殖能である、請求項8から12のいずれかに記載の方法。
  14. T細胞の基準増殖能が、第2の時点で、前記対象で測定されたT細胞の増殖能である、請求項8から12のいずれかに記載の方法。
  15. 対象のT細胞の増殖能を決定するための、前記対象におけるTTV量の変化の測定の使用。
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