配列表
添付の配列表に収載されている核酸およびアミノ酸配列は、連邦規則集37巻1.822規則(37 C.F.R. 1.822)に定義されている通り、ヌクレオチド塩基のための標準文字略語およびアミノ酸のための3文字コードを使用して示されている。各核酸配列の一方の鎖のみが示されているが、相補鎖は、表示されている鎖の何らかの参照によって含まれていると理解される。配列表は、参照により本明細書に組み込まれるASCIIテキストファイル[Sequence_Listing、2021年4月15日、1.07KB]として提出される。添付の配列表において、
配列番号1~3は、miRNA配列である。
詳細な説明
本開示は、高サイトカイン血症、例えば、ウイルス感染症に関連する高サイトカイン血症に関連する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等、ARDSの処置においてマトリックス結合ナノ小胞(nanovesicle)(MBV)を使用する方法を提供する。本発明の様々な態様が、下のセクションに示される;しかし、ある1つの特定のセクションに記載される本発明の態様は、いずれか特定のセクションに限定されるべきではない。
本明細書におけるデータが例証する通り、MBVは、マクロファージの抗炎症特性を誘導する、マクロファージ活性の強力なモジュレーターである。マクロファージは、炎症性刺激に曝露されると、TNF、IL-1、IL-6、I-8およびIL-12等のサイトカインを分泌する。斯かるサイトカインは、ARDS等の状態に寄与する、炎症性細胞の血管透過性および動員を増加させる。しかし、本明細書に例証される通り、MBVと接触したマクロファージは、炎症促進性サイトカインの産生を下方調節すると共に、炎症の負の制御因子を上方調節する能力を有し、MBVが、高サイトカイン血症の「サイトカインストーム」を弱める能力を有することを示唆する。MBVのこれらの特有の特性のため、MBVは、本明細書に記載されているウイルス感染症から傷害にわたる多数の因子に起因し得る高サイトカイン血症による、肺における広汎な炎症から生じるARDSの処置において有用である。ウイルスに対する免疫応答が、サイトカインストームおよび結果として生じるARDSを引き起こす、COVID-19等の疾患において、MBVは、ARDS等のサイトカインストームの壊滅的な効果を予防するまたは逆転させる能力を有する。
概観
本明細書に開示されている通り、本開示のマトリックス結合ナノ小胞(MBV)は、高サイトカイン血症、例えば、感染症に関連する高サイトカイン血症に関連する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等、ARDSを処置する方法において使用される。ある特定の実施形態では、高サイトカイン血症は、病原体、例えば、細菌、ウイルス、真菌または原生動物(例えば、アメーバ)による感染の結果である。ある特定の実施形態では、細胞内病原体によって媒介される疾患または障害は、急性感染症である。一部の実施形態では、ARDSは、MERS、SARS-CoVまたはSARS-CoV2等のウイルス感染症の結果である。一実施形態では、ARDSは、SARS-CoV2の結果である。一実施形態では、ARDSは、インフルエンザの結果である。
治療適用
世界人口における既存の免疫の非存在下で、COVID-19はパンデミックとなり、初めての症例が報告されてから4ヶ月間未満で世界経済を破壊した。この短期間で、COVID-19は、季節性インフルエンザの300%~400%の死亡率を有する高度に致死的な感染症として出現した(WHO (2020) Coronavirus disease 2019 (COVID-19): Situation Report, 67)。現在、COVID-19の処置は主に支持的な性質であり、ARDSによる呼吸不全が死亡の主因である(Ruan Q, et al. (2020) Clinical predictors of mortality due to COVID-19 based on an analysis of data of 150 patients from Wuhan, China. Intensive Care Medicine: 1-3.)。ウイルス感染症および結果的な組織損傷は、結果的にARDSになり得るサイトカインストームを惹起することが公知である(Ware LB & Matthay MA (2000) The acute respiratory distress syndrome. NEJM. 342(18):1334-1349; Matthay MA, et al. (2012) The acute respiratory distress syndrome. Journal of Clin Inves. 122(8):2731-2740; Wheeler AP & Bernard GR (2007) Acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome: a clinical review. Lancet 369(9572):1553-1564)。ARDSの決定的な特色は、血管外好中球の蓄積をもたらす、血漿または気管支肺胞洗浄液(BALF)における炎症性サイトカイン(ケモカイン)増加として現れる、局所および全身性炎症の調節不全によるびまん性肺胞損傷、肺浮腫および低酸素血症を含む(Matthay MA et al. (2012) The acute respiratory distress syndrome. Journal Clin Inves. 122(8):2731-2740)。炎症促進性マクロファージおよび単球も、ARDSにおける原因となる役割を果たし、局所炎症増加により肺組織損傷を惹起および伝播する;次いでこの炎症は、上皮および内皮組織透過性増加に寄与する(Aggarwal NR et al. (2014) Diverse macrophage populations mediate acute lung inflammation and resolution. Amer Journal of Phys Lung Cell and Mol Phys. 306(8):L709-L725; Zemans RL & Matthay MA (2017) What drives neutrophils to the alveoli in ARDS? (BMJ Publishing Group Ltd); Thompson BT et al. (2017) Acute respiratory distress syndrome. New England Journal of Med. 377(6):562-572)。
対象における集約的な基礎研究および臨床試験にもかかわらず、依然として、ARDSを予防または消散するための有効な処置を欠いており、初期炎症を低下させる支持的な手順が、患者転帰における一貫した改善を提供するための唯一の手段である(Bellani G, et al. (2016) Epidemiology, patterns of care, and mortality for patients with acute respiratory distress syndrome in intensive care units in 50 countries. Jama 315(8):788-800)。
呼吸器ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV2)に対する初期応答は、重度ARDSを誘導し、より多くの免疫細胞を動員し、ウイルスに感染した細胞を貪食する、炎症促進性サイトカインを放出するマクロファージを含む(Conti P, et al. (2020) Induction of pro-inflammatory cytokines (IL-1 and IL-6) and lung inflammation by Coronavirus-19 (COVID-19 or SARS-CoV-2): anti-inflammatory strategies. J Biol Regul Homeost Agents. 34(2))。中華人民共和国の武漢における患者のレトロスペクティブコホート試験は、COVID-19関与の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)および肺における過剰炎症による約93%の死亡を示す(Zhou F, et al. (2020) Clinical course and risk factors for mortality of adult inpatients with COVID-19 in Wuhan, China: a retrospective cohort study. Lancet. 395(10229):1054-1062)。動員された単球は、ウイルスに対する宿主防御において優位な役割を果たすマクロファージへと分化するが、この同じ細胞はまた、炎症の消散および肺修復を容易にする。抗ウイルス免疫応答の初期に、M1様マクロファージは、より多くの免疫細胞を動員し、ウイルスに感染した細胞を貪食し、一部の場合では、ARDSを誘導する炎症促進性サイトカインを放出する(Conti P, et al. (2020) Induction of pro-inflammatory cytokines (IL-1 and IL-6) and lung inflammation by Coronavirus-19 (COVID-19 or SARS-CoV-2): anti-inflammatory strategies. J Biol Regul Homeost Agents. 34(2))。M1様(炎症促進性)マクロファージ活性化状態からM2様抗炎症性リモデリング促進性(pro-remodel)表現型への移行は、呼吸窮迫を軽減し、上皮バリア機能を回復し、14日間以内のウイルスに対する獲得免疫の発生を容易にすることができる(He W, et al. (2017) Alveolar macrophages are critical for broadly-reactive antibody-mediated protection against influenza A virus in mice. Nat Commun. 8(1):846)。しかし、マクロファージ表現型スイッチがなければ、上皮バリア機能は破壊され、細胞死および浮腫がARDSをもたらし得る。ヒドロキシクロロキン(hydroxycholorquine)(HCQ)等の薬物は、臨床パイロット試験におけるCOVID-19のための処置として研究中である;しかし、重要なことに、HCQは、免疫抑制により、ARDS症例に見られる過剰炎症等の過剰炎症に対処する(Liang N, et al. (2018) Immunosuppressive effects of hydroxychloroquine and artemisinin combination therapy via the nuclear factor-kappaB signaling pathway in lupus nephritis mice. Exp Ther Med 15(3):2436-2442)。よって、HCQおよび同様の免疫抑制薬は、二次感染症、例えば、続発性肺炎のより大きいリスクに患者を置き、抗ウイルス免疫の発生を阻害する(Liang N, et al. (2018) Immunosuppressive effects of hydroxychloroquine and artemisinin combination therapy via the nuclear factor-kappa B signaling pathway in lupus nephritis mice. Exp Ther Med 15(3):2436-2442)。よって、COVID-19の満足のいく処置は、サイトカインストームの消散および保護的な抗体媒介性免疫の同時の発生を要求する。ECM内の因子は、炎症促進性からリモデリング促進性状態への、マクロファージおよびTヘルパー細胞の表現型移行をモジュレートするため、本発明は、細胞外マトリックス(ECM)内に包埋された分子因子によって促進される、宿主免疫系のモジュレーション/リプログラミング(免疫適格性を損なうことのない)を対象にする(Hussey GS, et al. (2018) Extracellular matrix-based materials for regenerative medicine. Nature Rev Mater; Allman AJ, et al. (2002) The Th2-restricted immune response to xenogeneic small intestinal submucosa does not influence systemic protective immunity to viral and bacterial pathogens. Tissue Eng Part A. 8(1):53-62)。ECM足場の分解産物は、骨格筋修復、潰瘍性大腸炎の齧歯類モデル、視神経および上気道における強力なかつ臨床的に関連する抗炎症性および治癒促進性(pro-healing)効果を有する(例えば、国際特許出願公開番号WO2017/151862およびWO2018/204848を参照)。
したがって、COVID-19の満足のいくかつ好まれる処置は、免疫を損なうことのない高サイトカイン血症の消散を要求する。本明細書に開示されている通り、本開示のMBVは、高サイトカイン血症(例えば、ウイルス感染症に関連する高サイトカイン血症)に関連する過剰炎症等の過剰炎症を処置する方法において使用される。
本開示のMBV療法の前述および他の目的、特色および利点は、病院および非病院環境の両方で投与することができることである。一部の実施形態では、本開示のMBV療法は、COVID-19関連サイトカインストーム症候群を有する患者を処置するために投与される。炎症を限定し、機能的組織リモデリングを促進する応答に向けてデフォルトの炎症性治癒応答をリダイレクトするために患者に安全にかつ容易に投与され得る斯かる治療プラットフォームは、現在存在せず、したがって、長年にわたる切実な満たされていない必要である。
MBVは、ECMの内在性構成成分であり、エキソソームとは別個のものであり、前臨床モデルにおいて過剰炎症を有効にリダイレクトする(Hussey GS, et al. (2020) Lipidomics and RNA sequencing reveal a novel subpopulation of nanovesicle within extracellular matrix biomaterials. Sci Adv 6(12):eaay4361; van der Merwe Y, et al. (2019) Matrix-bound nanovesicles prevent ischemia-induced retinal ganglion cell axon degeneration and death and preserve visual function. Sci Rep 9(1):3482))。MBVはまた、骨生成および石灰化に関与する骨マトリックス小胞とも別個のものである。例えば、骨マトリックス小胞は、アルカリホスファターゼを発現する一方で、MBVはこれを発現しない。一部の実施形態では、MBVは、免疫調節性miRNA、タンパク質および脂質を含有し、マクロファージによって急速に取り入れられ、シグナル伝達カスケードを引き起こし、ECMに基づく生体材料の文脈でよく研究されている現象である表現型スイッチングに必須の遺伝子発現をモジュレートする(Hussey GS, et al. (2019) Matrix bound nanovesicle-associated IL-33 activates a pro-remodeling macrophage phenotype via a non-canonical, ST2-independent pathway. J Immunol Regen Med 3:26-35; Huleihel L, et al. (2017) Macrophage phenotype in response to ECM bioscaffolds. Semin Immunol 29:2-13)。さらに、一部の実施形態では、MBV投与は、ECMに基づく生体材料の文脈で以前に特徴付けられた現象である調節性T細胞(TREG)の上方調節をもたらす。MBVは、関節リウマチ、外傷性筋肉傷害、潰瘍性大腸炎および食道がんを含む過酷な環境における修復的免疫応答を急速にかつ有効に誘導する(Huleihel L, et al. (2017) Matrix-Bound Nanovesicles Recapitulate Extracellular Matrix Effects on Macrophage Phenotype. Tissue Eng Part A 23(21-22):1283-1294; Dziki JL, et al. (2016) Immunomodulation and Mobilization of Progenitor Cells by Extracellular Matrix Bioscaffolds for Volumetric Muscle Loss Treatment. Tissue Eng Part A 22(19-20):1129-1139; Keane TJ, et al. (2017) Restoring Mucosal Barrier Function and Modifying Macrophage Phenotype with an Extracellular Matrix Hydrogel: Potential Therapy for Ulcerative Colitis. J Crohns Colitis 11(3):360-368; Saldin LT, et al. (2019) Extracellular Matrix Degradation Products Downregulate Neoplastic Esophageal Cell Phenotype. Tissue Eng Part A 25(5-6):487-498.)。
MBV内に貯蔵されたサイトカインカーゴは、修復的および調節性M2マクロファージを支持し、細菌感染症および急性肺傷害後の炎症を制御する(Liu Q, et al. (2019) IL-33-mediated IL-13 secretion by ST2+ TREG controls inflammation after lung injury. JCI Insight 4(6))。ECM生体足場(bioscaffold)は、筋骨格、胃腸、泌尿生殖器およびCNS組織が関与する種々の臨床適用において有用である(Badylak SF (2007) The extracellular matrix as a biologic scaffold material. Biomaterials. 28(25):3587-3593)。ECMは、組織の正体を規定する、各組織の常在性細胞の分泌された構造的および機能的分子からなる。斯かる異種足場は、有害な自然免疫応答も適応免疫応答も誘発せず、その代わりに、抗炎症性および修復的な自然および適応免疫応答を支持する(Brown BN, et al. (2009) Macrophage phenotype and remodeling outcomes in response to biologic scaffolds with and without a cellular component. Biomaterials. 30(8):1482-1491)。このような天然に存在する生体材料の使用は典型的に、機能的な部位適切な組織の(少なくとも)部分的回復に関連する;これは、「構築的リモデリング」と称されるプロセスである(Badylak SF (2007) The extracellular matrix as a biologic scaffold material. Biomaterials. 28(25):3587-3593)。ECM生体足場またはECM生体足場の分解産物は、抗炎症性M2様マクロファージおよびTヘルパー2型(Th2)細胞応答の動員を介して組織修復を方向付けることが示されており、斯かる応答は、多くの場合、低下した局所炎症および前駆細胞との構築的クロストークに関連する。
マトリックス結合ナノ小胞(MBV)は、M2様修復的および抗炎症性マクロファージ表現型を活性化する。試験は、MBVが、体液中に見出されるエキソソームとは別の細胞外小胞の別個のクラスであることを示した(Hussey GS, et al. (2020) Lipidomics and RNA sequencing reveal a novel subpopulation of nanovesicle within extracellular matrix biomaterials. Sci Advances. 6(12):eaay4361)。MBVは、過酷な組織脱細胞化プロセスであっても残存するため、組織および臓器発生ならびに種をわたる恒常性における基礎的役割、ならびに傷害に対する組織応答における調節的役割を果たすことができる。MBVは、複数の多様な組織供給源に由来し得る。MBVは、豊富であり、凍結乾燥することができ、高度に安定しており、気管滴下注入または噴霧により容易に投与することができる。
MBVは、リモデリング促進性マクロファージ表現型の促進に対するECMの効果を再現することができる。マクロファージ遺伝子およびタンパク質発現、細胞表面マーカー、ならびに観察される食作用活性、一酸化窒素(NO)産生および抗菌活性によって決定される機能的能力は、MBVによる処置後の調節性/抗炎症性表現型の最も代表的なものであり、これは、マクロファージ表現型および機能に対するECMに基づく生体足場の効果について記載する以前の報告と一致した(例えば、PCT公開番号WO2017/151862A1を参照)。MBVは、miRNA、タンパク質およびリン脂質カーゴの組合せを介して免疫調節性効果を発揮することが示された。例えば、体液中に存在するエキソソームと比較して、MBVは、細胞外環境の炎症促進性/抗炎症性の文脈に依存した異なるホスホリパーゼによって活性化される消散促進性(pro-resolving)脂質メディエーターが高度に濃縮されている(Hussey GS, et al. (2020) Lipidomics and RNA sequencing reveal a novel subpopulation of nanovesicle within extracellular matrix biomaterials. Sci Adv 6(12):eaay4361)。さらに、MBVは、免疫細胞が修復的M2様表現型へと向かうようにシグナルを伝達し方向付けるIL-33の豊富かつ安定した供給源であり、一方で、損傷した肺においてTREGによる修復および調節性機能も刺激する(Liu Q, et al. (2019) IL-33-mediated IL-13 secretion by ST2+ TREG controls inflammation after lung injury. JCI Insight 4(6))。IL-33送達は、細菌クリアランスを改善することにより、H1N1感染後の細菌重感染を低下させる(Robinson KM, et al. (2018) Novel protective mechanism for interleukin-33 at the mucosal barrier during influenza-associated bacterial superinfection. Mucosal immunology. 11(1):199-208)。その上、MBVは、miRNA 125b-5p、143-3pおよび145-5pが濃縮されている。マクロファージ内のこれらのmiRNAの阻害は、抗炎症性/調節性表現型よりもむしろ炎症促進性と一致した、遺伝子およびタンパク質発現プロファイルに関連する(Huleihel L, et al. (2017) Matrix bound nanovesicles recapitulate extracellular matrix effects on macrophage phenotype. Tissue Eng Part A)。
実施例2に記載されている通り、プリスタン誘導性関節炎(PIA)の齧歯類モデルを利用して、MBVが関節炎スコアを軽減することができるか評価した。8週齢スプラーグドーリーラットは、試験0日目に300μLプリスタン(2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン(tetramethypentadecane))の皮内注射を受けた。4日目に、300μLプリスタンの第2の用量を皮内投与した。次に、プリスタンを受けている動物を次の実験群へとランダム化した:プリスタンのみ、メトトレキセートの腹腔内注射(IP MTX)、MBVの関節周囲注射(PA MBV)およびMBVの静脈内注射(IV MBV)。7、10、14、17および21日目に処置を投与した。7日目に始まり、動物毎に、7、10、14、17、21、28日目におよび100日間にわたりその後毎週、関節炎スコアを決定した。試験の結果は、MBVのPAおよびIV投与の両方が、プリスタン(pristine)のみの対照動物と比較して、関節炎スコアを有意に低下させたことを示した。21日目の後に、動物は、いかなるさらなる処置も受けなかったが、長期的に追跡されて、二次的な突然の再発(flare-up)を評価した。100日目の結果は、MBV処置動物が、追加的な処置が与えられなかったとしても、対照(非処置)群と比較して、関節炎スコアの持続的な低下を示すことを示した。さらに、足の肉眼的形態学的検査は、MBV処置群における低下した発赤および浮腫を示した。加えて、実施例4に示す通り、齧歯類KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)免疫化アッセイは、免疫抑制により異常炎症に対処する現在の治療薬とは対照的に、MBV療法が、免疫適格性を損なうことのない、宿主免疫系のモジュレーション/リプログラミングに方向付けられることを示した。実施例10~13は、MBVの全身性投与が、インフルエンザ感染症の動物モデルにおける急性ウイルス媒介性肺病理および長期炎症を軽減することのさらなる証拠を提供する。これらのデータが実証する通り、MBV療法は、ARDS等、異常炎症性応答が関与する多くの障害の処置において使用される潜在力を有する。
膀胱マトリックス(UBM)の脱細胞化した粉末の気管滴下注入は、ブレオマイシン誘導性肺線維症のマウスモデルにおける肺上皮細胞走化性、遊走および修復を促進する(Manni ML, et al. (2011) Extracellular matrix powder protects against bleomycin-induced pulmonary fibrosis. Tissue Eng Part A. 17(21-22):2795-2804)。その上、脱細胞化したECM粉末の気管滴下注入は、細菌負荷を有意に減少させ、細菌誘導性サイトカイン/ケモカイン分泌を減弱することによって、接種したマウスを重度細菌誘導性肺感染症から保護し、よって、ECM足場が、細菌誘導性感染症等、急性呼吸窮迫症候群から生じる二次合併症からの保護を提供することができることを示唆する(Chen C, et al. (2019) Urinary bladder matrix protects host in a murine model of bacterial-induced lung infection. Tissue Eng Part A. 25(3-4):257-270)。加えて、気管滴下注入または噴霧のいずれかによってラット肺内に送達された脱細胞化したECMは、持続性高酸素条件における減弱された肺胞中隔肥厚、細胞アポトーシスおよび酸化的損傷を含む、持続性高酸素曝露によって誘導される急性肺損傷に対する改善効果を示した。しかし、IPFの処置のためのECM粉末の臨床移行の潜在力は、噴霧され得る斯かるECM懸濁物の最大濃度および体積により限定される(Wu J, et al. (2017) Lung protection by inhalation of exogenous solubilized extracellular matrix. PloS One 12(2):e01711650)。そのナノメートルサイズを考慮すると、MBVは、肺へのECM粉末送達に関連する課題を克服し、肺への直接的な気管滴下注入または噴霧によりMBVを投与することができることを示唆する。
体液または細胞培養上清からのエキソソーム単離とは対照的に、ECM構造分子の複雑な超微細構造は、ECM足場材料からのMBVの単離に関する特有の課題を提示する。
一部の実施形態では、MBVは噴霧、および吸入または静脈内注射により送達され、急速な標的化または全身性送達を可能にする。MBVは、傷害後の初期免疫応答の強力な天然の制御因子であり、局所および全身性平衡状態を回復する。よって、MBVは、ネイティブの免疫を損なうことなく、ARDSを軽減することができる。MBVは、免疫抑制なしで炎症消散を促進する。サイトカインスクリーニングは、MBV内に貯蔵された大量の抗炎症性サイトカインを示し、MBVが、平衡状態を回復し、ARDSに対するレジリエンスを付与する免疫表現型を促進することを指し示し、ネイティブの免疫を損なわないという利点を有する。よって、MBVは、免疫抑制なしで炎症の消散を促進する。さらに、脱細胞化したブタ組織または臓器に由来するMBVおよびECMは、容易に入手でき、安全であり、有害免疫応答を生じず、結果的に、本技術は、臨床移行の用意ができている。
細胞外マトリックス(ECM)で構成された生物学的足場は、外科用メッシュ材料として開発されており、腹壁ヘルニア修復(Alicuban et al., Hernia. 2014;18(5):705-712)、筋骨格再建(Mase et al., Orthopedics. 2010;33(7):511)、食道再建(Badylak et al., Tissue Eng Part A. 2011; 17(11-12):1643-50)、硬膜置換術(Bejjani et al., J Neurosurg. 2007;106(6):1028-1033)、腱修復(Longo et al., Stem Cells Int. 2012;2012:517165)、乳房再建(Salzber, Ann Plast Surg. 2006;57(1):1-5)およびその他(Badylak et al., Acta Biomater. 2009; 5(1):1-13)を含む臨床適用において使用されている。
マトリックス結合ナノ小胞(MBV)は、ECMの細線維ネットワーク内に包埋されている。このようなナノ粒子は、ECM足場製造プロセスの際の分解および変性からそのカーゴを遮蔽する。
対照的に、エキソソーム(または細胞外小胞「EV」)は、ほとんど排他的に体液および細胞培養上清中において以前に同定されたマイクロ小胞である。MBVおよびエキソソームが別個のものであることが実証された。MBVは、例えば、界面活性剤および/または酵素消化に対して抵抗性であり、特有の脂質プロファイルを有し、異なるマイクロRNAのクラスターを含有するため、他の小胞とは異なる。MBVは、エキソソーム等の他の小胞に見出される同じ特徴的表面タンパク質を有しない。
本明細書に開示されている通り、MBVは、例えば、生物学的機能を保存または回復するように、全身性免疫応答をモジュレートする(全身性投与による等)。例えば、MBVの投与は、過剰炎症性免疫応答、例えば、ウイルス感染症に関連する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等のARDSをモジュレートするため等、免疫応答を保存または回復することができる。
ウイルス感染症に関連するARDSの処置
ある特定の実施形態では、ARDSは、ウイルス感染症に関連する。ある特定の実施形態では、ウイルスは、レトロウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)-1、HTLV-2、HTLV-3、HTLV-4)、エボラウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)(例えば、HSV-1、HSV-2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス)、アデノウイルス、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、インフルエンザウイルスD、ソゴトウイルス)、フラビウイルス(例えば、デングウイルス、ジカウイルス)、ウエストナイルウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アレナウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス(例えば、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、MERSまたはSARS-CoV)、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス、軟属腫ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ポリオーマウイルス(例えば、JCウイルス、BKウイルス)、アルファウイルスおよびルビウイルス(例えば、風疹ウイルス)からなる群より選択される。一部の実施形態では、ウイルスは、コロナウイルスである。一部の実施形態では、ウイルス感染症に関連するARDSは、高サイトカイン血症に関連する。一実施形態では、ARDSは、SARS-CoV-2に起因する。別の実施形態では、ARDSは、インフルエンザウイルスに起因する。一部の実施形態では、ARDSは、細菌感染症に起因する敗血症に関連する。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されているMBVは、ウイルス感染症に関連するARDS、例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)、HTLV-1関連脊髄症/熱帯性痙性不全対麻痺症、エボラウイルス疾患、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペス、帯状疱疹、急性水痘、単核球症、呼吸器感染症、肺炎、インフルエンザ、デング熱、脳炎(例えば、日本脳炎)、ウエストナイル熱、リフトバレー熱、クリミア・コンゴ出血熱、キャサヌール森林病、黄熱、ジカ熱、無菌性髄膜炎、SARS、心筋炎、感冒、肺感染症、伝染性軟属腫(molloscum contagiosum)、地方病性ウシ白血病(enzootic bovine leucosis)、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)、ムンプス、胃腸炎、麻疹、風疹、りんご病(slapped-cheek disease)、天然痘、疣贅(例えば、性器疣贅)、伝染性軟属腫、ポリオ、狂犬病およびばら色粃糠疹からなる群より選択されるウイルス感染症に関連するARDSの処置に使用される。一部の実施形態では、ウイルス感染症に関連するARDSは、高サイトカイン血症に関連する。一部の実施形態では、本明細書に記載されているMBVは、エボラウイルスに関連するARDSの処置に使用される。一部の実施形態では、本明細書に記載されているMBVは、インフルエンザに関連するARDSの処置に使用される。一部の実施形態では、本明細書に記載されているMBVは、SARSに関連するARDSの処置に使用される。一部の実施形態では、本明細書に記載されているMBVは、COVID-19に関連するARDSの処置に使用される。一部の実施形態では、本明細書に記載されているMBVは、ウイルス感染症に起因する敗血症に関連するARDSの処置に使用される。
一部の実施形態では、感染症に関連するウイルスは、RNAウイルス(RNAで構成されたゲノムを有する)である。RNAウイルスは、一本鎖RNA(ssRNA)または二本鎖RNA(dsRNA)であり得る。RNAポリメラーゼは、プルーフリーディング能力を欠如するため、RNAウイルスは、DNAウイルスと比較して高い変異率を有する(Steinhauer DA, Holland JJ (1987). "Rapid evolution of RNA viruses". Annu. Rev. Microbiol. 41: 409-33を参照)。例示的なRNAウイルスは、ブニヤウイルス(例えば、ハンタウイルス)、コロナウイルス(例えば、MERS-CoV、SARS-CoV、SARS-CoV-2)、フラビウイルス(例えば、黄熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、デングウイルス)、肝炎ウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス)、インフルエンザウイルス(例えば、インフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型、インフルエンザウイルスC型)、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ノロウイルス(例えば、ノーウォークウイルス)、ポリオウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、レトロウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1))およびトロウイルスを限定することなく含む。一部の実施形態では、RNAウイルスは、インフルエンザウイルス、例えば、インフルエンザAである。一部の実施形態では、RNAウイルスは、RSVである。一部の実施形態では、RNAウイルスは、MERS-CoVである。一部の実施形態では、RNAウイルスは、SARS-CoVである。一部の実施形態では、RNAウイルスは、SARS-CoV-2である。一部の実施形態では、RNAウイルスは、SARS-CoV2である。一部の実施形態では、RNAウイルスは、ジカである。
RNAウイルスは、ゲノムの型(二本鎖、マイナス(-)またはプラス(+)一本鎖)によって分類される。二本鎖RNAウイルスは、1種または複数のウイルスタンパク質をそれぞれコードする、多数の異なるRNA分子を含有する。プラスセンスssRNAウイルスは、そのゲノムを直接的にmRNAとして利用する;宿主細胞内のリボソームは、mRNAを単一のタンパク質へと翻訳し、タンパク質は次いで修飾されて、ウイルス複製に必要とされる様々なタンパク質を形成する。斯かるタンパク質の1種は、二本鎖複製形態を形成するためにウイルスRNAをコピーするRNA依存性RNAポリメラーゼ(RNAレプリカーゼ)である。マイナスセンスssRNAウイルスは、そのゲノムをRNAレプリカーゼ酵素によってコピーさせて、複製のためにプラスセンスRNAを産生する。したがって、ウイルスは、RNAレプリカーゼ酵素を含む。結果としてのプラスセンスRNAは次いで、ウイルスmRNAとして作用し、宿主リボソームによって翻訳される。一部の実施形態では、ウイルスは、dsRNAウイルスである。一部の実施形態では、ウイルスは、マイナスssRNAウイルスである。一部の実施形態では、ウイルスは、プラスssRNAウイルスである。一部の実施形態では、プラスssRNAウイルスは、コロナウイルスである。
時に2019年の新型コロナウイルスまたは2019-nCoVとも称されるSARS-CoV2は、プラスセンス一本鎖RNAウイルスである。SARS-CoV2は、S(スパイク)、E(エンベロープ)、M(膜)およびN(ヌクレオカプシド)タンパク質として公知の、4種の構造タンパク質を有する。Nタンパク質は、RNAゲノムを保持する;一緒になって、S、EおよびMタンパク質は、ウイルスエンベロープを形成する。スパイクは、ウイルスが、ヒト細胞におけるACE2受容体等、宿主細胞の膜に付着することを可能にする(Kruse R.L. (2020), Therapeutic strategies in an outbreak scenario to treat the novel coronavirus originating in Wuhan, China (version 2). F1000Research, 9:72)。SARS-CoV2は、世界的パンデミックであるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の高度に伝染性の原因となるウイルス性因子である。一部の実施形態では、急性呼吸窮迫症候群は、SARS-CoV2(COVID-19)に関連する。一部の実施形態では、処置されているARDSは、SARS-CoV2(COVID-19)に関連する。一部の実施形態では、処置されているARDSは、SARS-CoV2(COVID-19)に関連する高サイトカイン血症に関連する。
一部の実施形態では、感染症に関連するウイルスは、DNAウイルス(DNAで構成されたゲノムを有する)である。例示的なDNAウイルスは、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、アデノウイルス、アスファウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1および2(HSV-1およびHSV-2)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV))、パピローマウイルス(papillomoviruses)(例えば、HPV)、ポリオーマウイルス(例えば、サル空胞化ウイルス40(SV40))およびポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、牛痘ウイルス、天然痘ウイルス、鶏痘ウイルス、羊痘ウイルス、粘液腫ウイルス)を限定することなく含む。ある特定の実施形態では、DNAウイルスは、アデノウイルス、例えば、AdV5である。ある特定の実施形態では、DNAウイルスは、エンテロウイルス、例えば、EV71である。ある特定の実施形態では、DNAウイルスは、ヘルペスウイルス、例えば、HSV-1である。
一部の実施形態では、感染は、全身性である。一部の実施形態では、感染は、例えば、臓器にまたは例えば、組織に局在化される。一部の実施形態では、感染は、眼、耳、内耳、肺、気管、気管支、細気管支、肝臓、胆嚢、胆管、腎臓、膀胱、精巣、子宮頸部、卵巣、子宮、皮膚または脳を含むがこれらに限定されない、臓器に局在化される。ある特定の実施形態では、感染は、肺に局在化される。
他の病原体感染症に関連するARDSの処置
ある特定の実施形態では、ARDSは、細菌感染症に関連する。ある特定の実施形態では、ARDSは、Chlamydia(例えば、C.trachomatis)、Escherichia coli(例えば、腸管病原性E.coli、腸管出血性(enterohemmorhagic)E.coli、尿路疾患性E.coli、腸管侵入性E.coli)、Helicobacter pylori、Mycobacterium(例えば、M.tuberculosis、M.leprae、M.lepromatosis)、Listeria(例えば、L.monocytogenes)、Shigella(例えば、S.flexneri)、Staphylococcus(例えば、S.aureus)、Streptococcus(例えば、S.pyogenes)、Streptomyces、Pneumococcus、Meningococcus、Gonococcus、Klebsiella(例えば、K.pneumoniae)、Proteus、Serratia、Pseudomonas(例えば、P.aeruginosa)、Legionella、Acinetobacter(例えば、A.baumannii)、Corynebacterium(例えば、C.diphtheria)、Coxiella(例えば、C.burnetii)、Bacillus(例えば、B.anthricis)、Bacteroides、Bordetella、Enterococcus(例えば、E.faecalis)、Francisella(例えば、F.tularensis)、Haemophilus influenza、Neisseria(例えば、N.meningitides、N.gonorrhoeae)、Rickettsia、Salmonella(例えば、S.typhimurium)、Vibrio cholerae、Clostridium(例えば、C.tetan、C.botulinum)、Yersinia(例えば、Y.pestis)、Borrielia(例えば、B.burgdorferi)、Brucella、Burkholderia、CampylobacterおよびMycoplasmaからなる群より選択される細菌に関連する。一部の実施形態では、細菌感染症に関連するARDSは、高サイトカイン血症に関連する。一部の実施形態では、ARDSは、細菌感染症に起因する敗血症に関連する。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されているMBVは、細菌感染症に関連するARDS、例えば、細胞内細菌感染症に関連するARDSの処置に、例えば使用される。本明細書に記載されている方法は、例えば、クラミジア、結核、消化性潰瘍、ハンセン病、リステリア症、唾液腺炎、細菌によって引き起こされる下痢または食中毒、連鎖球菌性咽頭炎(strep throat)、猩紅熱、膿痂疹、蜂巣炎、肺炎、髄膜炎、細菌性心内膜炎、憩室炎、播種性淋菌敗血症、敗血性関節炎、淋菌性新生児眼炎、尿路感染症、軟部組織感染症、脊椎関節症(例えば、強直性脊椎炎)、レジオネラ症(例えば、レジオネラ病、ポンティアック熱)、ジフテリア、サルモネラ症、炭疽、コレラ、テタヌス、ボツリヌス症、筋膜炎、ガス壊疽、プラーク、ライム病、ブルセラ症、類鼻疽、Q熱、野兎病、淋病、チフス、マイコプラズマ肺炎、胃腸炎および歩行性肺炎(walking pneumonia)からなる群より選択される細菌性疾患または障害に関連するARDSの処置に使用することができる。一部の実施形態では、細菌感染症に関連するARDSは、高サイトカイン血症に関連する。一部の実施形態では、MBVは、細菌感染症に起因する敗血症に関連するARDSの処置における使用のためのものである。
ある特定の実施形態では、ARDSは、真菌感染症に関連する。ある特定の実施形態では、ARDSは、真菌感染症に関連し、ここで、真菌は、Candida(例えば、C.albicans、C.krusei、C.glabrata、C.tropicalis)、Cryptococcus(例えば、C.neoformans、C.gattii)、Aspergillus(例えば、A.fumigatus、A.niger)、Mucorales(例えば、M.mucor、M.absidia、M.rhizopus)、Sporothrix(例えば、S.schenkii)、Blastomyces(例えば、B.dermatitidis)、Paracoccidioides(例えば、P.brasiliensis)、Coccidioides(例えば、C.immitis)、Histoplasma(例えば、H.capsulatum)、Acremonium、Basidiobolus(例えば、B.ranarum)、Cladophialophora(例えば、C.bantiana)、Cunninghamella(例えば、C.bertholletiae)、Epidermophyton、Exophiala、Exserohilum、Fonsecaea(例えば、F.pedrosoi)、Hortaea(例えば、H.werneckii)、Lacazia(例えば、L.loboi)、Leptosphaeria(例えば、L.maculans)、Madurella(例えば、M.mycetomatis)、Malassezia、Microsporum、Mucor、Neotestudina、Onychocola、Phialophora、Piedraia、Pneumocystis(例えば、P.jirovecii)、Pseudallescheria(例えば、P.boydii)、Pyrenochaeta、Rhizomucor、Scedosporium、Scytalidium、Sporothrix、Trichophyton、TrichosporonおよびZygomyceteからなる群より選択される。一部の実施形態では、真菌感染症に関連するARDSは、高サイトカイン血症に関連する。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されているMBVは、細胞内真菌感染症に関連するARDS、例えば、カンジダ症、クリプトコッカス症、アスペルギルス症、ムコール症、スポロトリクス症、ブラストミセス症、パラコクシジオイデス症、コクシジオイデス症、ヒストプラスマ症、真菌腫、爪真菌症、ヒアロヒホ真菌症、皮下接合真菌症、脳膿瘍、フェオヒフォミコーシス、クロモブラストミコーシス、菌腫、肺ムコール症、体部白癬、頭部白癬、股部白癬、足部白癬、爪白癬、黒癬、ローボ病、黒脚症(blackleg disease)、菌腫、癜風、マラセチア毛包炎、ステロイドざ瘡、脂漏性皮膚炎、新生児頭部膿疱症、ムコール症、マズラミコーシス、黒色砂毛、pneumocystis肺炎、シュードアレシェリア症、スケドスポリウム症、スポロトリコーシスおよび接合真菌症からなる群より選択される細胞内真菌感染症に関連するARDSの処置に使用される。一部の実施形態では、真菌感染症に関連するARDSは、高サイトカイン血症に関連する。一部の実施形態では、ARDSは、真菌感染症に起因する敗血症に関連する。
ある特定の実施形態では、ARDSは、細胞内原生動物感染症に関連する。一部の実施形態では、原生動物は、アメーバである。ある特定の実施形態では、アメーバは、Apicomplexans(Plasmodium(例えば、P.vivax、P.falciparum、P.ovale、P.malariae、Toxoplasma gondii、Cryptosporidium parvum、Babesia microti、Cyclospora cayetanensis、Cystoisospora belli)、Trypanosoma(例えば、Trypanosoma brucei、Trypanosoma cruzi)およびLeishmania(例えば、Leishmania donovani)からなる群より選択される。一部の実施形態では、原生動物感染症に関連するARDSは、高サイトカイン血症に関連する。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されているMBVは、細胞内アメーバ感染症に起因する疾患または障害、例えば、バベシア症、マラリア、クリプトスポリジウム症、シクロスポラ症、シストイソスポーラ症(cystoisosporiasis)、トキソプラズマ症、トリパノソーマ症、シャーガス病およびリーシュマニア症からなる群より選択されるアメーバ感染症に関連するARDSの処置に使用される。一部の実施形態では、アメーバ感染症に関連するARDSは、高サイトカイン血症に関連する。
サイトカイン放出のためのアッセイ
ケモカイン等のサイトカインの発現は、本明細書に開示されている方法において評価することができる。一部の実施形態では、ケモカインとして当技術分野で公知の炎症促進性サイトカインが試験される。ケモカインの例は、CXCL8、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11およびCXCL10を限定することなく含む。一部の実施形態では、サイトカイン放出は、in vitroで、例えば、細胞培養において試験される。ある特定の実施形態では、in vitroサイトカイン放出は、細胞培養上清から定量化される。一部の実施形態では、サイトカイン放出は、in vivoで、例えば、動物モデルにおいて試験される。ある特定の実施形態では、in vivoサイトカイン放出は、体液、例えば、全血、血清、血漿またはリンパ液から定量化される。ある特定の実施形態では、動物モデルは、マウスモデルである。ある特定の実施形態では、動物モデルは、非ヒト霊長類である。ある特定の実施形態では、サイトカイン放出は、ヒト患者において試験される。
一部の実施形態では、サイトカイン放出は、サイトカイン発現レベルの定量化により評価される。一部の実施形態では、サイトカイン発現レベルは、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用して定量化される。一部の実施形態では、サイトカイン発現レベルは、マルチプレックスイムノアッセイ、例えば、Luminexを使用して定量化される。一部の実施形態では、サイトカイン発現レベルは、サイトカインアレイを使用して定量化される。一部の実施形態では、サイトカイン発現レベルは、ウエスタンブロットを使用して定量化される。一部の実施形態では、サイトカイン発現レベルは、質量分析を使用して定量化される。
一部の実施形態では、サイトカイン放出は、免疫系の変化をモニタリングすることによりアッセイされる。免疫系を試験する方法は、当技術分野で公知であり、蛍光活性化細胞選別(FACS)、トランスクリプトームプロファイリング(例えば、RNA配列決定(RNA Seq)による)、血液スメア、全血球数およびヘマトクリットを限定することなく含む。
ある特定の実施形態では、発熱、肺炎、息切れおよび低い血液酸素レベル等、疾患または障害の症状は、免疫系の変化を指し示す。ある特定の実施形態では、発熱、肺炎、息切れおよび低い血液酸素レベル等、疾患または障害の症状の減少、すなわち、本明細書に開示されているMBV療法による処置後の症状の減少は、免疫系の変化を指し示す。
急性呼吸窮迫症候群の処置
本発明はまた、本明細書に記載されているMBVにより急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置する方法を提供する。
急性呼吸窮迫症候群は、不十分な血液酸素化、肺への流体浸潤および開始の重症度によって特徴付けられる障害である(Diamond et al. (2020). Acute Respiratory Distress Syndrome (ARDS). StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing)。ARDS開始は通常、原因となる事象の7日間以内に起こる。ARDSは、動脈血における患者の酸素レベル(PaO2)の吸気における酸素(FiO2)に対する比によって臨床的に定義される。ARDSは、300未満のPaO2/FiO2比を示す患者として定義される。ARDSは、高い罹患率および高い死亡率を有する。臨床ARDSは、例えば、Fan et al. (2018). Acute Respiratory Distress Syndrome: Advances in Diagnosis and Treatment. JAMA. 319 (7): 698-710にさらに記載されている。
ARDSのリスク因子は、感染性疾患または障害(例えば、ウイルス感染症、例えば、細菌感染症)、移植片対宿主病、大量輸血、臓器外傷、組織外傷(例えば、重症熱傷)、慢性アルコール中毒、血球貪食性リンパ組織球症、敗血症、全身性炎症性応答症候群、溺水(drowning)(例えば、水の吸引)、薬物過量服薬(例えば、嘔吐物の吸引)、食物の吸引、脂肪塞栓症、毒性煙霧(例えば、煙または化学物質煙霧)の吸入、および膵炎を限定することなく含む。「ベイピング」として公知の電子たばこの喫煙もまた、ARDS発症のリスク因子として決定された。ある特定の実施形態では、対象は、呼吸を制御する脳の一部分を損傷する頭部傷害を有する。ある特定の実施形態では、対象は、肺を損傷する胸部傷害を有する。一部の実施形態では、ARDSのリスク因子は、感染性疾患または障害、例えば、ウイルス、例えば、コロナウイルス、例えば、SARS-CoV2である。一部の実施形態では、ARDSのリスク因子は、感染性疾患または障害、例えば、ウイルス、例えば、エボラウイルスである。一部の実施形態では、ARDSのリスク因子は、感染性疾患または障害、例えば、細菌、例えば、Streptococcus pneumoniaeである。一部の実施形態では、ARDSは、高サイトカイン血症に関連する。特定の実施形態では、ARDSは、SARS-Cov2(COVID-19)に関連する高サイトカイン血症に関連する。一部の実施形態では、ARDSは、SARS-Cov2(COVID-19)に関連する死亡に関連する。これらの対象のいずれかを、本明細書に開示されている方法による処置のために選択することができる。
ARDSを有する患者のための既存の治療法は、シャント率(shunt fraction)の低下、酸素運搬の増加、酸素消費量の減少、ならびに罹患組織および臓器に対するさらなる傷害の回避を限定することなく含む、支持的および/または対症的ケアを含む。一部の実施形態では、ARDSを有する患者は、人工呼吸器につながれている。ある特定の実施形態では、人工呼吸器につながれた患者は、本明細書に記載されているMBVを投与される。ある特定の実施形態では、人工呼吸器につながれた患者は、本明細書に記載されているMBVを静脈内投与される。ある特定の実施形態では、患者にARDSのリスクがある場合、患者は、ARDSの開始前にMBVの投与を受ける。
本発明は、MBVが、ウイルス感染症によって引き起こされる疾患または障害等、免疫系の病的調節不全によって特徴付けられた疾患または障害を患う対象に投与されたときに、免疫系をモジュレートする能力を有するという発見に基づく。特に、全身性に送達されたMBVが、罹患組織へのMBVの局所投与から達成される治療効果に釣り合う、炎症性障害の症状の処置における治療効果を有することが発見された。さらに、MBVは、免疫系を抑制するのではなくモジュレートするため、MBV投与の治療効果は、免疫抑制により観察されることが多い二次感染症のリスクを呈さない。したがって、このことは、炎症性障害、例えば、急性呼吸窮迫症候群のための特有の全身性治療法としてMBVを位置付ける。本発明の方法は、自然免疫系を抑制せず、疾患を撃退し、二次感染症を予防する機能を維持するため、伝統的な抗炎症または免疫抑制薬とは対照的に、MBVにより処置された患者は、したがって、感染による二次感染症を発症するリスクの減少を経験することができる。例えば、COVID-19誘導ARDSを患う患者は、ARDSの処置のためにMBVを投与されたときに、ARDSを処置するために伝統的な抗炎症または免疫抑制薬を受ける同様の状況の患者と比較して、二次感染症を発症するリスクの減少を経験する。
後述する実施例2に記載されている通り、例示的な炎症性疾患としての関節リウマチのラットモデルにおいて、尾静脈の静脈内注射による全身性または関節周囲注射による局所のいずれかで、MBVを投与されたラットにおける関節炎スコアは、関節リウマチのための処置の絶対的な標準である関節周囲メトトレキセートを受けているラットの関節炎スコアと比較して改善された。驚いたことに、関節炎スコア改善は、全身性注射または局所注射のいずれかを受けているラットの間で同等であった。実施例10~13は、MBVの全身性投与が、インフルエンザ感染症の動物モデルにおける急性ウイルス媒介性肺病理および長期炎症を軽減することをさらに証明する。
したがって、MBVの全身性投与を使用して、身体の一部に局在化されないまたは局所処置に適さない、異常免疫応答から生じる障害、例えば、ARDSを処置することができる。ARDS等、免疫機能亢進の場合、根底にある原因(例えば、高サイトカイン血症)は、循環中に存在し、よって、全身性障害である。したがって、一部の実施形態では、全身性治療法は、身体全体にわたり免疫応答をモジュレートするための効率的な機構を提供する。
一部の実施形態では、投与は、全身性であり得る。全身性投与は、静脈内投与、経口投与、経腸投与、非経口投与、鼻腔内投与、気管内投与、直腸投与、舌下投与、頬側投与、口唇下(sublabial)投与、腹腔内投与または筋肉内投与であり得る。具体的かつ非限定的な例では、全身性投与は、静脈内投与である。ある特定の実施形態では、投与は、肺への等、局所的なものである。例えば、局所投与は、吸入または気管内である。例えば、投与は、噴霧による吸入または鼻腔内投与による吸入である。
一部の実施形態では、MBVの投与は、対象の肺におけるCD45+好中球の数の低下をもたらす。他の実施形態では、MBVの投与は、対象の肺におけるCD8+T細胞の数の増加およびCD4+T細胞の数の低下をもたらす。他の実施形態では、MBVの投与は、対象の脾臓におけるCD8+T細胞の数の増加およびCD4+T細胞の数の低下をもたらす。さらなる実施形態では、投与は、対象の脾臓におけるCD69+CD4+T細胞の数の増加をもたらす。さらに他の実施形態では、投与は、対象のリンパ節における抗ウイルスTbet+CD4+T細胞の数の増加をもたらす。さらに他の実施形態では、投与は、対象の脾臓における抗ウイルスTbet+CD8+T細胞の数の増加をもたらす。さらなる実施形態では、投与は、対象の脾臓におけるCD69+CD8+T細胞の数の増加をもたらす。より多くの実施形態では、投与は、対象の肺における免疫調節性CD11b+樹状細胞の数の増加をもたらす。一部の実施形態では、投与は、対象の肺におけるCD62L+/CD44+メモリーCD4およびCD8 T細胞の数の増加をもたらす。投与は、対象におけるこれらの効果のうち1つまたは複数をもたらすことができる。増加は、MBVの投与前の対象におけるパラメーターと比較してまたは標準値と比較して、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%または100%超の増加であり得る。減少は、MBVの投与前の対象におけるパラメーターと比較してまたは標準値と比較して、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%または100%超の減少であり得る。
より多くの実施形態では、投与は、対象におけるウイルス関連の組織損傷を低下させる。例えば、投与は、対象の肺への損傷低下をもたらすことができる。一部の実施形態では、ウイルス関連の組織損傷は、MBVの投与前の対象における組織と比較して、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%または100%を超えて減少する。
細胞外マトリックス(ECM)に由来するナノ小胞
ECMに由来するナノ小胞(マトリックス結合ナノ小胞、「MBV」とも呼ばれる)は一般に、参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開番号WO2017/151862、WO2018/204848およびWO2019/213482に記載されている。MBVが細胞外マトリックスに包埋されることが開示されている。このようなMBVは単離することができ、生物学的に活性がある。一部の実施形態では、MBVは、アルカリホスファターゼ、オステオポンチン、オステオプロテジェリン(osteoprogeterin)、補体C5および/またはc反応性タンパク質を含有しない。このようなMBVは、単独でまたはECMと共に、治療目的で使用することができる。
細胞外マトリックスは、哺乳動物組織内の細胞を取り囲み支持する、構造タンパク質、特殊化タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンおよび増殖因子を含むがこれらに限定されない、構造および機能的生体分子および/または生体高分子の複合混合物であり、他に指示がなければ、無細胞である。一般に、開示されているMBVは、いずれかの型の細胞外マトリックス(ECM)に包埋されており、この場所から単離することができる。よって、MBVは、ECMの表面に脱離可能に存在している訳ではなく、また、エキソソーム(細胞外小胞またはEVとしても公知)でもない。
細胞外マトリックスは、例えばであって、限定することなく、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,902,508号;同第4,956,178号;同第5,281,422号;同第5,352,463号;同第5,372,821号;同第5,554,389号;同第5,573,784号;同第5,645,860号;同第5,771,969号;同第5,753,267号;同第5,762,966号;同第5,866,414号;同第6,099,567号;同第6,485,723号;同第6,576,265号;同第6,579,538号;同第6,696,270号;同第6,783,776号;同第6,793,939号;同第6,849,273号;同第6,852,339号;同第6,861,074号;同第6,887,495号;同第6,890,562号;同第6,890,563号;同第6,890,564号;および同第6,893,666号に開示されている。しかし、ECMは、いずれかの組織から、またはいずれかのin vitro供給源から産生することができ、この場合、ECMは、培養細胞によって産生され、ネイティブECMの1種または複数のポリマー構成成分(構成物)を含む。ECM調製物は、細胞が供給源組織または培養物から除去されたことを意味する、「脱細胞化された」または「無細胞」であると考えることができる。
一部の実施形態では、ECMは、脊椎動物から、例えば、ヒト、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ等を含むがこれらに限定されない、哺乳類の脊椎動物から単離される。ECMは、膀胱、腸(小腸または大腸等)、心臓、真皮、肝臓、腎臓、子宮、脳、血管、肺、骨、筋肉、膵臓、胎盤、胃、脾臓、結腸、脂肪組織または食道を限定することなく含む、いずれかの臓器または組織に由来し得る。一部の実施形態では、ECMは、骨を除くいずれかの組織に由来し得る。具体的かつ非限定的な例では、細胞外マトリックスは、食道組織、膀胱(膀胱マトリックスまたは膀胱粘膜下組織等)、小腸粘膜下組織、真皮、臍帯、心膜、心組織または骨格筋から単離される。ECMは、例えばであって、限定することなく、粘膜下組織、上皮基底膜、固有層(tunica propria)等を含む、臓器から得られるいずれか一部分または組織を含むことができる。非限定的な一実施形態では、ECMは、膀胱から単離される。一部の実施形態では、ECMは、ヒト対象に由来する。他の実施形態では、ECMは、ブタ対象に由来する。
ECMは、基底膜を含んでも含まなくてもよい。別の非限定的な実施形態では、ECMは、基底膜の少なくとも一部分を含む。ECM材料は、毛細血管内皮細胞または線維細胞等、本来の組織を構成した細胞エレメントの一部を保持しても保持しなくてもよい。一部の実施形態では、ECMは、基底膜表面および非基底膜表面の両方を含有する。
一部の実施形態では、ECMは、ブタ膀胱から収集される(膀胱マトリックスまたはUBMとしても公知)。簡潔に説明すると、ECMは、ブタ等の哺乳動物から膀胱組織を除去し、脂肪組織を含む残渣の外側結合組織をそぎ落とすことによって調製される。水道水による反復洗浄によって、残渣尿を全て除去する。先ず、組織を上皮除去溶液、例えばであって、限定することなく、高張性食塩水(例えば、1.0N食塩水)に、10分間~4時間に及ぶ期間にわたり浸すことにより、組織を層間剥離する。高張性食塩水溶液への曝露は、根底にある基底膜から上皮細胞を除去する。必要に応じて、食塩水溶液にカルシウムキレート剤を添加することができる。初期層間剥離手順後に残っている組織は、上皮基底膜および上皮基底膜に対して反管腔側の組織層を含む。比較的脆い上皮基底膜は、管腔表面におけるいかなる機械的摩耗によっても、常に損傷および除去される。この組織は次に、反管腔側組織の大部分を除去するが、上皮基底膜および固有層を維持するためのさらなる処置に付される。外側漿膜、外膜、筋層粘膜(tunica muscularis mucosa)、粘膜下組織(tunica submucosa)、および粘膜筋板の大部分は、機械的摩耗によってまたは酵素処置(例えば、トリプシンまたはコラゲナーゼを使用した)とそれに続く水分補給および摩耗の組合せによって、残っている上皮除去された組織から除去される。これらの組織の機械的除去は、例えばであって、限定することなく、Adson-Brown鉗子およびMetzenbaumハサミを用いた腸間膜組織の除去、ならびに湿ったガーゼに包まれたメスの柄または他の硬い物体を用いた長手方向の拭き取り動作を使用した筋層および粘膜下組織の拭き取りによって達成される。切断刃、レーザーおよび他の組織分離方法が関与する自動ロボット手順も企図される。これらの組織が除去された後に、結果として生じるECMは、主に、上皮基底膜および下にある固有層からなる。
別の実施形態では、メスの柄および湿ったガーゼを用いた長手方向の拭き取り動作を使用して、ブタ膀胱組織を摩耗して、漿膜および筋層の両方を含む外側層を除去することにより、ECMが調製される。組織セグメントの外転後に、粘膜の管腔部分は、同じ拭き取り動作を使用して、根底にある組織から層間剥離される。粘膜下組織の穿孔を防ぐように注意する。これらの組織が除去された後に、結果として生じるECMは、主に、粘膜下組織からなる(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,277,999号の図2を参照)。
ECMは、粉末として調製することもできる。斯かる粉末は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gilbert et al., Biomaterials 26 (2005) 1431-1435の方法に従って作製することができる。例えば、UBMシートを凍結乾燥し、次いで、液体窒素中への浸漬のために、小さいシートへと刻むことができる。次に、ECMが粉末化される回転ナイフ製粉機の中に配置されるのに十分なほど、粒子が小さくなるように、瞬間凍結された材料を粉砕することができる。同様に、ECM組織内のNaClを沈殿させることによって、材料は、瞬間凍結、凍結乾燥および粉末化され得る、均一なサイズの粒子へと破砕するであろう。
非限定的な一実施形態では、ECMは、小腸粘膜下組織またはSISに由来する。市販の調製物は、SURGISIS(商標)、SURGISIS-ES(商標)、STRATASIS(商標)およびSTRATASIS-ES(商標)(Cook Urological Inc.;Indianapolis、Ind.)およびGRAFTPATCH(商標)(Organogenesis Inc.;Canton Mass.)を含むがこれらに限定されない。別の非限定的な実施形態では、ECMは、真皮に由来する。市販の調製物は、PELVICOL(商標)(欧州ではPERMACOL(商標)として販売;Bard、Covington、Ga.)、REPLIFORM(商標)(Microvasive;Boston、Mass.)およびALLODERM(商標)(LifeCell;Branchburg、N.J.)を含むがこれらに限定されない。別の実施形態では、ECMは、膀胱に由来する。市販の調製物は、UBM(ACell Corporation;Jessup、Md.)を含むがこれらに限定されない。
MBVは、下に開示されている方法を使用して、細胞外マトリックスから得る(これから放出される)ことができる。一部の実施形態では、ECMは、ペプシン、コラゲナーゼ、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼまたはプロテイナーゼK等の酵素で消化され、MBVが単離される。他の実施形態では、グリシンHCL、クエン酸、水酸化アンモニウム等の溶液によりpHを変化させることにより、EDTA、EGTA等が挙げられるがこれらに限定されない、キレート剤の使用により、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、ヨウ化ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム等が挙げられるがこれらに限定されない、塩の使用によるイオン強度および/もしくはカオトロピック効果によって、またはグアニジンHClもしくは尿素等の変性条件にECMを曝露することにより、MBVは、ECMから放出および分離される。
特定の実施形態では、MBVは、ペプシン、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、プロテイナーゼK、塩溶液またはコラゲナーゼ等の酵素によるECMの消化後に調製される。ECMは、凍結融解することができる、または機械的分解に付すことができる。
一部の実施形態では、CD63、CD81および/またはCD9の発現は、MBVにおいて検出することができない。よって、一部の実施形態では、MBVは、CD63および/またはCD81および/またはCD9を発現しない。特異的な一例では、CD63、CD81およびCD9は、ナノ小胞において検出することができない。他の実施形態では、MBVは、ウエスタンブロットによって検出可能なもの等、辛うじて検出可能なレベルのCD63、CD81およびCD9を有する。このようなMBVは、CD63loCD81loCD9loである。他の実施形態では、MBVは、検出可能レベルの、CD63、CD81またはCD9のうち1種または複数を発現しない。他の実施形態では、MBVは、辛うじて検出可能なレベルの、CD63、CD81またはCD9のうち1種または複数を発現する。当業者は、例えば、CD63、CD81およびCD9に特異的に結合する抗体を使用して、CD63loおよび/またはCD81loおよび/またはCD9loであるMBVを容易に同定することができる。これらのマーカーが低レベルであることは、CD63、CD81およびCD9の少ないおよび多い量の閾値を決定するための、蛍光活性化細胞選別(FACS)および蛍光標識された抗体等の手順を使用して確立することができる。さらなる実施形態では、MBVは、検出可能なアルカリホスファターゼ、オステオポンチン、オステオプロテジェリン、補体C5および/またはc反応性タンパク質を含有しない。in vivoでMBVはECMに結合しており、生体液中に見出されないため、開示されているMBVは、生体液中におけるその存在によりECMの表面に一過性に付着され得るエキソソーム等のナノ小胞とは異なる。
MBVは、例えば、エキソソームと比較して、特徴的なリン脂質含量を有する。一部の実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、85%もしくは90%、または約50%~90%、50%~65%、50%~60%、50%~70%、60%~70%、60%~90%もしくは70%~90%のホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルイノシトール(PI)の組合せである。具体的な実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、少なくとも55%のホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルイノシトール(PI)の組合せである。具体的な実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、少なくとも60%のホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルイノシトール(PI)の組合せである。一部の実施形態では、MBVのリン脂質含量は、8未満:1(例えば、7未満:1、6未満:1、5未満:1、4未満:1、3未満:1または2未満:1)のホスファチジルコリン(PC)対ホスファチジルイノシトール(PI)比を含む。一部の実施形態では、MBVのリン脂質含量は、0.5~1:1の範囲または1:0.5~1の範囲または0.5~1:2の範囲または2:0.5~1の範囲または0.8~1:1の範囲または1:0.8~1の範囲のホスファチジルコリン(PC)対ホスファチジルイノシトール(PI)比を含む。一実施形態では、MBVのリン脂質含量は、約1:1のホスファチジルコリン(PC)対ホスファチジルイノシトール(PI)比を含む。具体的な実施形態では、MBVのリン脂質含量は、約0.9:1のホスファチジルコリン(PC)対ホスファチジルイノシトール(PI)比を含む。
一部の実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%もしくはそれ未満のまたは約5%~10%、5%~15%、10%~15%もしくは8%~12%のスフィンゴミエリン(SM)である。具体的な実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、10%またはそれ未満のスフィンゴミエリン(SM)である。一部の実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、15%もしくはそれ未満のスフィンゴミエリン(SM)、14%もしくはそれ未満のスフィンゴミエリン、13%もしくはそれ未満のスフィンゴミエリン、12%もしくはそれ未満のスフィンゴミエリン、11%もしくはそれ未満のスフィンゴミエリン、10%もしくはそれ未満のスフィンゴミエリン、9%もしくはそれ未満のスフィンゴミエリン、8%もしくはそれ未満のスフィンゴミエリン、7%もしくはそれ未満のスフィンゴミエリン、6%もしくはそれ未満のスフィンゴミエリン、5%もしくはそれ未満のスフィンゴミエリンまたは4%もしくはそれ未満のスフィンゴミエリンである。
一部の実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%もしくは10%もしくはそれ未満または約10%~20%、15%~20%、14%~18%もしくは12%~16%のホスファチジルエタノールアミン(PE)である。具体的な実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、20%またはそれ未満のホスファチジルエタノールアミン(PE)である。
一部の実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、5%、10%、12%、15%、18%、20%、25%もしくは30%もしくはそれよりも高いまたは約5%~30%、10%~20%、10~25%、15%~25%もしくは12%~18%のホスファチジルイノシトール(PI)である。具体的な実施形態では、MBVは、15%またはそれよりも大きいホスファチジルイノシトール(PI)のリン脂質含量を含む。具体的な実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、15%またはそれよりも高いホスファチジルイノシトール、20%またはそれ未満のホスファチジルエタノールアミンおよび10%またはそれ未満のスフィンゴミエリンを含む。具体的な実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、15%またはそれよりも高いホスファチジルイノシトールおよび20%またはそれ未満のホスファチジルエタノールアミンである。具体的な実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、15%またはそれよりも高いホスファチジルイノシトールおよび10%またはそれ未満のスフィンゴミエリンである。具体的な実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、20%またはそれ未満のホスファチジルエタノールアミンおよび10%またはそれ未満のスフィンゴミエリンを含む。具体的な実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、15%超のホスファチジルイノシトール、20%またはそれ未満のホスファチジルエタノールアミン、10%またはそれ未満のスフィンゴミエリン、ならびに少なくとも55%のホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルコリンの組合せである。一実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、少なくとも55%のホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルイノシトール(PI)の組合せ、ならびに10%またはそれ未満のスフィンゴミエリン(SM)である。具体的な実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、少なくとも55%のホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルコリンの組合せ、ならびに15%超のホスファチジルイノシトールである。具体的な実施形態では、MBVの総リン脂質含量は、55%のホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルコリンの組合せ、ならびに20%またはそれ未満のホスファチジルエタノールアミンである。
MBVは、リジルオキシダーゼ(Lox)を含むこともできる。一般に、ECMに由来するナノ小胞は、エキソソームよりも高いLox含量を有する。Loxは、MBVの表面に発現される。Nano-LC MS/MSプロテオミクス解析を使用して、Loxタンパク質を検出することができる。Loxの定量化を行うことができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hill RC, et al., Mol Cell Proteomics. 2015;14(4):961-73を参照)。
ある特定の実施形態では、MBVは、1種または複数のmiRNAを含む。具体的かつ非限定的な例では、MBVは、miR-143、miR-145およびmiR-181のうち1、2または全3種を含む。miR-143、miR-145およびmiR-181は、当技術分野で公知である。
miR-145核酸配列は、参照により本明細書に組み込まれるMiRbase受託番号MI0000461に提供される。miR-145核酸配列は、CACCUUGUCCUCACGGUCCAGUUUUCCCAGGAAUCCCUUAGAUGCUAAGAUGGGGAUUCCUGGAAAUACUGUUCUUGAGGUCAUGGUU(配列番号1)である。miR-181核酸配列は、参照により本明細書に組み込まれるmiRbase受託番号MI0000269に提供される。miR-181核酸配列は、AGAAGGGCUAUCAGGCCAGCCUUCAGAGGACUCCAAGGAACAUUCAACGCUGUCGGUGAGUUUGGGAUUUGAAAAAACCACUGACCGUUGACUGUACCUUGGGGUCCUUA(配列番号2)である。miR-143核酸配列は、参照により本明細書に組み込まれるNCBI受託番号NR_029684.1、2018年3月30日に提供される。miR-143核酸配列をコードするDNAは、GCGCAGCGCC CTGTCTCCCA GCCTGAGGTG CAGTGCTGCA TCTCTGGTCA GTTGGGAGTC TGAGATGAAG CACTGTAGCT CAGGAAGAGA GAAGTTGTTC TGCAGC(配列番号3)である。
投与後に、MBVは、対象のマクロファージ表面におけるF4/80(マクロファージマーカー)およびCD-11bの発現を維持する。ナノ小胞処置マクロファージは優勢にF4/80+Fizz1+であり、M2表現型を指し示す。
本明細書に開示されているMBVは、薬学的送達のための組成物へと製剤化することができる。MBVは、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2017/151862にさらに開示および記載されている。
ECMからのMBVの単離
MBVを産生するために、上に記載されている通り、ECMは、いずれかの目的の細胞によって産生することができる、または商業的供給源から利用することができる。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Quijano et al., Tissue Eng, Part C 2020; (10):528-540. DOI: 10.1089/ten.tec.2020.0243. PMID: 33012221も参照されたい。MBVは、処置されている対象と同じ種またはそれとは異なる種から産生することができる。一部の実施形態では、このような方法は、ECMを酵素で消化して、消化されたECMを産生するステップを含む。具体的な実施形態では、ECMは、ペプシン、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、メタロプロテイナーゼおよび/またはプロテイナーゼKのうち1種または複数で消化される。具体的かつ非限定的な例では、ECMは、エラスターゼおよび/またはメタロプロテイナーゼのみで消化される。別の非限定的な例では、ECMは、コラゲナーゼおよび/またはトリプシンおよび/またはプロテイナーゼKで消化されない。他の実施形態では、ECMは、界面活性剤で処置される。さらなる実施形態では、方法は、酵素の使用を含まない。具体的かつ非限定的な例では、方法は、塩化カリウム等の塩等、カオトロピック剤またはイオン強度を利用して、MBVを単離する。追加的な実施形態では、ECMは、MBVの単離に先立ち、MBV含量を増加させるように操作することができる。ECMからMBVを単離するための技法は、例えば、国際特許出願WO2017/151862に記載されている。
一部の実施形態では、ECMは、酵素で消化される。ECMは、約12~約36時間等、約12~約48時間にわたり酵素で消化することができる。ECMは、約12、約24、約36または約48時間にわたり酵素で消化することができる。具体的かつ非限定的な一例では、ECMは、室温にて酵素で消化される。しかし、消化は、約4℃でまたは約4℃~25℃の間のいずれかの温度で起こることができる。一般に、ECMは、コラーゲン原線維の除去に十分な、いずれかの長さの時間にわたりいずれかの温度にて、酵素で消化される。消化プロセスは、組織供給源に応じて変動され得る。必要に応じて、ECMは、酵素による消化の前または後のいずれかに、凍結および解凍によって処理される。ECMは、イオン性および/または非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤で処置することができる。
次に、消化されたECMを、遠心分離等によって処理して、原線維不含上清を単離する。一部の実施形態では、消化されたECMは、例えば、第1のステップのため、約300~約1000gで遠心分離される。よって、消化されたECMは、約400g、約450g、約500gまたは約600g等、約400g~約750gで遠心分離することができる。この遠心分離は、約10、約11、約12、約14、約14または約15分間等、約10~約12分間等、約10~約15分間にわたり起こることができる。消化されたECMを含む上清は、収集される。
一部の実施形態では、MBVは、Loxを含む。一部の実施形態では、斯かるMBVを単離するための方法は、細胞外マトリックスをエラスターゼおよび/またはメタロプロテイナーゼで消化して、消化された細胞外マトリックスを産生するステップと、消化された細胞外マトリックスを遠心分離して、コラーゲン原線維レムナントを除去し、よって、原線維不含上清を産生するステップと、原線維不含上清を遠心分離して、固体材料を単離するステップと、担体に固体材料を懸濁するステップとを含む。
一部の実施形態では、消化されたECMは、第2のステップのため、約2000g~約3000gで遠心分離することもできる。よって、消化されたECMは、約2,000g、2,500g、2,750gまたは3,000g等、約2,500g~約3,000gで遠心分離することができる。この遠心分離は、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29または約30分間等、約20~約25分間等、約20~約30分間にわたり起こることができる。消化されたECMを含む上清は、収集される。
追加的な実施形態では、消化されたECMは、第3のステップのため、約10,000~約15,000gで遠心分離することができる。よって、消化されたECMは、約10,000g、11,000gまたは12,000g等、約10,000g~約12,500gで遠心分離することができる。この遠心分離は、約25~約30分間、例えば、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39または約40分間等、約25~約40分間にわたり起こることができる。消化されたECMを含む上清は、収集される。これらの遠心分離ステップのうち1、2または全3種を独立して利用することができる。一部の実施形態では、全3種の遠心分離ステップが利用される。遠心分離ステップは、2、3、4または5回等、反復することができる。一実施形態では、全3種の遠心分離ステップは、3回反復される。
一部の実施形態では、消化されたECMは、約500gで約10分間にわたり遠心分離される、約2,500gで約20分間にわたり遠心分離される、および/または約10,000gで約30分間にわたり遠心分離される。全3種のステップ等、これらのステップ(複数可)は、3回等、2、3、4または5回反復される。よって、非限定的な一例では、消化されたECMは、約500gで約10分間にわたり遠心分離され、約2,500gで約20分間にわたり遠心分離され、約10,000gで約30分間にわたり遠心分離される。これら3種のステップは、3回反復される。よって、原線維不含上清が産生される。次に、原線維不含上清を遠心分離して、MBVを単離する。一部の実施形態では、原線維不含上清は、約100,000g~約150,000gで遠心分離される。よって、原線維不含上清は、約100,000g、約105,000g、約110,000g、約115,000gまたは約120,000g等、約100,000g~約125,000gで遠心分離される。この遠心分離は、約70~約80分間、例えば、約60、約65、約70、約75、約80、約85または約90分間等、約60~約90分間にわたり起こることができる。非限定的な一例では、線維(fiber)不含上清は、約100,000gで約70分間にわたり遠心分離される。MBVである固体材料が収集される。次に、このようなMBVは、緩衝液等が挙げられるがこれに限定されない、いずれかの目的の担体に再懸濁することができる。
さらなる実施形態では、ECMは、酵素で消化されない。このような方法において、ECMは、リン酸緩衝食塩水等の等張性食塩水溶液に懸濁される。次に、塩の最終濃度が、約0.1Mよりも大きくなるように、塩が懸濁物に添加される。濃度は、例えば、最大約3M、例えば、約0.1M塩~約3Mまたは約0.1M~約2Mであり得る。塩は、例えば、約0.1M、0.15M、0.2M、0.3M、0.4M、0.7M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9Mまたは2Mであり得る。一部の非限定的な例では、塩は、塩化カリウム、塩化ナトリウムまたは塩化マグネシウムである。他の実施形態では、塩は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、ヨウ化ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、ナトリウム塩、リチウム塩、セシウム塩またはカルシウム塩である。
一部の実施形態では、ECMは、約15分間~約1時間、約30分間~約1時間または約45分間~約1時間等、約10分間~約2時間にわたり塩溶液に懸濁される。ECMは、約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115または120分間にわたり塩溶液に懸濁することができる。ECMは、約4℃~約25℃または約4℃~約37℃等が挙げられるがこれらに限定されない、4℃~約50℃の温度で塩溶液に懸濁することができる。具体的かつ非限定的な例では、ECMは、約4℃で塩溶液に懸濁される。他の具体的かつ非限定的な例では、ECMは、約22℃または約25℃(室温)で塩溶液に懸濁される。さらなる非限定的な例では、ECMは、約37℃で塩溶液に懸濁される。
一部の実施形態では、方法は、約0.4Mよりも高い塩濃度で細胞外マトリックスをインキュベートするステップと、消化された細胞外マトリックスを遠心分離して、コラーゲン原線維レムナントを除去するステップと、上清を単離するステップと、上清を遠心分離して、固体材料を単離するステップと、担体に固体材料を懸濁し、これにより、細胞外マトリックスからMBVを単離するステップとを含む。
塩溶液におけるインキュベーション後に、ECMを遠心分離して、コラーゲン原線維を除去する。一部の実施形態では、消化されたECMは、約2000g~約5000gで遠心分離することもできる。よって、消化されたECMは、約2,500g、約3,000g、3,500、約4,000gまたは約4,500g等、約2,500g~約4,500gで遠心分離することができる。具体的かつ非限定的な一例では、遠心分離は、約3,500gで為される。この遠心分離は、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30分間、約31、約32、約33、約34または約35分間等、約25~約35分間等、約20~約40分間にわたり起こることができる。次に、上清が収集される。
追加的な実施形態では、次に、上清は、第3のステップのため、約100,000~約150,000gで遠心分離することができる。よって、消化されたECMは、約100,000g、110,000gまたは120,000g等、約100,000g~約125,000gで遠心分離することができる。この遠心分離は、約1時間~約3時間、例えば、約30分間、約45分間、約60分間、約90分間または約120分間(2時間)等、約30分間~約2.5時間にわたり起こることができる。固体材料は収集され、緩衝食塩水等の溶液に懸濁され、これにより、MBVを単離する。
さらに他の実施形態では、ECMは、リン酸緩衝食塩水等が挙げられるがこれに限定されない、等張性緩衝塩溶液に懸濁される。遠心分離または他の方法を使用して、大きい粒子を除去することができる(下記を参照)。次に、限外濾過を利用して、約10nm~約300nmの間等、約10~約1,000nmの間等、約10nm~約10,000nmの間の粒子であるMBVをECMから単離する。
具体的かつ非限定的な例では、等張性緩衝食塩水溶液は、約0.164mMの総塩濃度および約7.2~約7.4のpHを有する。一部の実施形態では、等張性緩衝食塩水溶液は、約0.0027M KCl(リン酸緩衝食塩水におけるKCLの濃度)等、0.002M KCl~約0.164M KCLを含む。次に、この懸濁物は、超遠心分離によって処理される。
等張性緩衝塩溶液におけるインキュベーション後に、ECMを遠心分離して、コラーゲン原線維を除去する。一部の実施形態では、消化されたECMは、約2000g~約5000gで遠心分離することもできる。よって、消化されたECMは、約2,500g、約3,000g、3,500、約4,000gまたは約4,500g等、約2,500g~約4,500gで遠心分離することができる。具体的かつ非限定的な一例では、遠心分離は、約3,500gで為される。この遠心分離は、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30分間、約31、約32、約33、約34または約35分間等、約25~約35分間等、約20~約40分間にわたり起こることができる。
精密濾過(microfiltration)および遠心分離を使用および組み合わせて、懸濁物から大きい分子量の材料を除去することができる。一実施形態では、200nm超等、大きいサイズの分子材料は、精密濾過を使用して除去される。別の実施形態では、大きいサイズの材料は、遠心分離の使用によって除去される。第3の実施形態では、精密濾過および超遠心分離の両方を使用して、大きい分子量の材料を除去する。約10,000nmよりも大きい、約1,000nmよりも大きい、約500nmよりも大きいまたは約300nmよりも大きい材料等、大きい分子量の材料は、懸濁されたECMから除去される。
次に、精密濾過の流出液または上清は、限外濾過に付される。よって、約10,000nm未満、約1,000nm未満、約500nm未満または約300nm未満の粒子を含む流出液が収集され、利用される。次に、この流出液は、3,000~100,000の分子量カットオフ(MWCO)を有する膜による限外濾過に付される。100,000MWCOを実施例において使用した。
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置するための方法
それを必要とする対象におけるARDSを処置するための方法が本明細書に開示されている。これらの方法は、炎症を減少させるための処置を必要とする対象を選択するステップと、対象に治療有効量のMBVを投与し(治療有効量のMBVを含む医薬調製物を投与することによる等)、これにより、ARDSを処置するステップとを含む。
対象は、哺乳動物であり得る。対象は、ヒトであり得る。対象は、獣医学対象であり得る。対象は、ネコ、イヌまたはウサギ等、鳥類または飼育愛玩動物であり得る。対象は、非ヒト霊長類(サル等)、またはブタ、反芻動物、ウマおよび家禽を含む家畜であり得る。方法は、炎症を減少させるための処置を必要とする対象を選択するステップと、対象に治療有効量のMBVを投与するステップと(治療有効量のMBVを含む医薬調製物を投与することによる等)を含む。一部の実施形態では、MBVは、全身性投与することができる。他の実施形態では、MBVは、局所投与することができる。MBVは、炎症の減少を必要とする対象と同じまたは異なる種に由来し得る。MBVは、自家であり得る。
本明細書に開示されている方法は、対象における炎症の減少をもたらすことができる。一部の実施形態では、高サイトカイン血症等の過剰炎症性障害の徴候または症状が低下または排除される。例えば、本明細書における方法は、対象におけるARDSの処置をもたらすことができる。一部の実施形態では、本明細書における方法を使用して、対象におけるARDSの進行を予防するまたは対象におけるARDSを逆転させることができる。
一実施形態において、ARDSの処置は、関連する臨床徴候(indicia)に従って測定することができる。一部の実施形態では、ARDSは、重度であり得、例えば、急性肺傷害、低酸素血症PaO2/FiO2、PEEP(cmH2O)、コンプライアンス(ml/cmH2O)およびCXR浸潤四分円(quadrant)のためのMurrayスコアを使用してスコア化することができる。一部の実施形態では、ARDSは、例えば、呼吸数、チアノーゼ、退縮、呻吟および空気流入(air entry)によって決定される修正ダウネ(Modified Downe’s)スコア化システムを使用してスコア化することができる。一部の実施形態では、ARDSは、例えば、当技術分野で公知の別のスコア化システムを使用してスコア化することができる。MBVによる処置によるARDSにおける改善は、ARDS症状における改善に関連するスコア化の変化によって指し示すことができる。
一実施形態において、ARDSの処置は、関連する臨床徴候に従うことによって測定することができる。例えば、ARDSの処置は、例えば、酸素指数(OI)、酸素飽和度指数(OSI)または酸素飽和度(OS)における改善によって測定することができる。ARDSの処置における有効性は、例えば、OI、OSIまたはOSの増加によって測定することができる。例えば、一実施形態では、対象における酸素飽和度は、MBVの投与後に、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%または100%超増加する。別の実施形態では、対象における酸素飽和度指数は、MBVの投与後に、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%または100%超増加する。さらに別の実施形態では、対象における酸素指数は、MBVの投与後に、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%または100%超増加する。さらなる実施形態では、ARDSの処置は、対象における炎症促進性サイトカインのレベルを測定することにより指し示すことができる。例えば、炎症促進性サイトカインの減少は、ARDSの処置の有効性を指し示すことができる。例えば、MBVの投与後のTNF-α、IFN-γ、IL-8、IL-12、IL-6および/またはIL-1βの減少は、ARDSの処置における有効性を指し示すことができる。別の実施形態では、IL-10、IL-4および/またはTGF-β等の抗炎症性サイトカインの増加は、ARDSの処置における有効性の指標として使用することができる。サイトカインレベルは、前述の実施形態では、例えば、MBVによる処置の前および後に、対象の回収された気管支肺胞洗浄液からサンプリングすることにより決定することができる。サイトカインレベルは、前述の実施形態では、例えば、MBVによる処置の前および後に、血液からサンプリングすることにより決定することができる。体液または細胞試料におけるサイトカインレベルは、当業者にとって公知の従来方法によって決定される。例えば、細胞培養上清および気管支肺胞洗浄液におけるサイトカイン濃度は、ELISAキット(R&D systems、Minneapolis、MN)の製造業者によって推奨される通りに測定することができる。
MBVによる処置の有効性は、当業者にとって公知の方法によって肺機能をモニタリングすることにより測定することができる。例えば、肺機能の様々な測定可能なパラメーターは、処置の前、その間またはその後に試験することができる。肺機能は、吸気流量、呼気流量および肺容量を含むがこれらに限定されない、肺のいくつかの物理的に測定可能な働きのいずれかを検査することによりモニターすることができる。これらのパラメーターの1種または複数の、当業者にとって周知の数式によって決定される統計的に有意な増加は、MBV処置の有効性を指し示す。
臨床診療において最も一般的に用いられる肺機能を測定する方法は、特異的パラメーターを測定するための吸気および呼気操作の時限測定を伴う。例えば、FVCは、初期深吸気から力強く患者によって吐き出されるリットル単位の総体積を測定する。このパラメーターは、FEV1と併せて評価される場合、気管支収縮が定量的に評価されることを可能にする。FVCまたはFEV1の、当業者にとって周知の数式によって決定される統計的に有意な増加は、気管支収縮の減少を反映し、MBV療法が有効であることを指し示す。
努力肺活量決定に伴う問題は、努力肺活量操作(すなわち、最大吸気から最大呼気への努力呼息)が大部分は技法依存性であることである。換言すると、所与の対象は、一連の連続したFVC操作の間に異なるFVC値を産生し得る。努力呼息操作の中央部にわたり決定されるFEF 25-75または努力呼気流量は、FVCよりも技法依存性が低くなる傾向がある。同様に、FEV1は、FVCよりも技法依存性が低くなる傾向がある。よって、FEF 25-75またはFEV1の、当業者にとって周知の数式によって決定される統計的に有意な増加は、気管支収縮の減少を反映し、MBV療法が有効であることを指し示す。
肺機能の指標としての吐き出された空気の体積の測定に加えて、呼気サイクルの異なる部分にわたり測定された1分間当たりのリットル単位での流量は、患者の肺機能の状態の決定において有用であり得る。特に、努力最大呼息中の1分間当たりのリットル単位での最高気流速度として受け取られたピーク呼気流量は、喘息および他の呼吸器疾患を有する患者における全体的な肺機能と十分に相関する。よって、MBVの投与後のピーク呼気流量の、当業者にとって周知の数式によって決定される統計的に有意な増加は、治療法が有効であることを指し示す。
対象は、処置の経過を構成する、MBVの1回または複数の投与を投与することができる。処置の経過は、全身性投与することができる。処置の経過は、ARDSが鎮まるまで1日1回のMBVの投与であり得る。あるいは、処置の経過は、ARDSが鎮まるまで1日2回のMBVの投与であり得る。処置の経過は、1回、または数時間の期間にわたり投与することができる。例えば、MBVは、ボーラスIV投与もしくはボーラス気管滴下注入によって投与することができる、または数分間もしくは数時間にわたる持続性投与のために人工呼吸器もしくは酸素マスクの酸素ストリーム中に注入することができる。例えば、MBVは、持続性IV点滴によって投与することができる。
一部の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり約1×101~約1×1020個のMBVを投与される。対象は、例えば、吸入のため等、マイクロリットル体積へと濃縮された、約1×101~約1×102個のMBV等、約1×101~約1×103個のMBVを投与することができる。例えば、一実施形態では、体積は、50μL~500μLである。例えば、一実施形態では、体積は、100μL~300μLである。例えば、一実施形態では、体積は、200μL~400μLである。例えば、一実施形態では、体積は、300μL~400μLである。さらなる実施形態では、体積は、250μLである。さらなる実施形態では、体積は、300μLである。より多くの実施形態では、体積は、約1μL~約4μL、約1μL~約3μLまたは約1μL~約2μL等、約1μL~約5μLであり得る。一実施形態では、約1×101~約1×103個のMBVが、約50~500μLの体積で吸入投与のために提供される。
追加的な実施形態において、対象は、投与当たり体重1kg当たり約1×106~約1×1012個のMBV等、約1×106~約1×1020個のMBV/kg体重を投与される。実施形態では、対象は、約1×106~約1×1019個のMBV、約1×106~約1×1018個のMBV、約1×106~約1×1017個のMBV、約1×106~約1×1016個のMBV、約1×106~約1×1015個のMBV、約1×106~約1×1014個のMBV、約1×106~約1×1013個のMBVまたは約1×106~約1×1012個のMBVを投与される。別の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり約1×107~約1×1011個のMBVを投与される。別の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり1×107~1×108個のMBVを投与される。別の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり1×108~1×1010個のMBVを投与される。別の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり1×109~1×1010個のMBVを投与される。別の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり1×106~1×108個のMBVを投与される。別の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり1×107~1×109個のMBVを投与される。別の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり1×108~1×1011個のMBVを投与される。別の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり1×109~1×1011個のMBVを投与される。別の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり1×1010~1×1011個のMBVを投与される。別の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり1×1011~1×1012個のMBVを投与される。別の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり1×106~1×1014個のMBVを投与される。別の実施形態では、対象は、投与当たり体重1kg当たり1×1012~1×1014個のMBVを投与される。一実施形態では、上述の量のいずれかに従ったMBVの投与は、全身性投与によって為される。例えば、一実施形態では、投与は、静脈内である。別の実施形態では、投与は、吸入によって為される。一実施形態では、吸入は、ネブライザーまたは吸入器ポンプによって為される。
別の実施形態では、MBVは、鼻腔内投与による設定体積の液体における用量当たりの量で投与される。例えば、一実施形態では、体積は、50μL~500μLである。例えば、一実施形態では、体積は、100μL~300μLである。例えば、一実施形態では、体積は、200μL~400μLである。例えば、一実施形態では、体積は、300μL~400μLである。さらなる実施形態では、体積は、250μLである。さらなる実施形態では、体積は、300μLである。より多くの実施形態では、体積は、約1μL~約4μL、約1μL~約3μLまたは約1μL~約2μL等、約1μL~約5μLであり得る。一実施形態では、約1×101~約1×103個のMBVが、約50~500μLの体積で鼻腔内投与のために提供される。一実施形態では、対象は、経鼻スプレーポンプによる等、鼻腔内投与のため、食塩水等の50~200μL担体へと濃縮された約1×101~約1×103個のMBVを投与される。一実施形態では、投与された全用量が総計で、体重1kg当たり約1×108~約1×1020個のMBVの量のMBVを提供するように、対象は、MBV濃縮溶液の複数の用量を投与することができる。
一実施形態では、用量におけるMBVの数は、1×108~1×1010個のMBVである。例えば、一実施形態では、用量におけるMBVの数は、1×109個のMBVである。一実施形態では、MBVは、生理学的に許容される担体、例えば、生理的食塩水中で噴霧される。例えば、噴霧されるべき用量におけるMBVの数は、投与当たり体重1kg当たり1×106~1×1020個のMBVである。例えば、噴霧されるべき用量におけるMBVの数は、投与当たり体重1kg当たり1×106~1×1012個のMBVである。例えば、用量は、投与当たり体重1kg当たり1×107~1×1011個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×107~1×108個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×108~1×1010個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×109~1×1010個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×106~1×108個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×107~1×109個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×108~1×1011個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×109~1×1011個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×1010~1×1011個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×1011~1×1012個のMBVである。
別の実施形態では、MBVは、気管内投与による設定体積の液体における用量当たり、1×107~1×1011個のMBVの量で投与される。例えば、一実施形態では、体積は、0.5mL~5.0mLである。他の実施形態では、体積は、マイクロリットル量である。別の実施形態では、体積は、1mL~3mLである。例えば、一実施形態では、体積は、2mL~4mLである。さらに別の実施形態では、体積は、3mLである。例えば、一実施形態では、用量におけるMBVの数は、1×108~1×1010個のMBVである。例えば、一実施形態では、用量におけるMBVの数は、1×109個のMBVである。例えば、一実施形態では、用量におけるMBVの数は、投与当たり体重1kg当たり1×1010~1×1011個のMBVである。例えば、一実施形態では、用量におけるMBVの数は、投与当たり体重1kg当たり1×1011~1×1012個のMBVである。
別の実施形態では、MBVは、静脈内投与による設定体積の液体における用量当たり、量1×107~1×1011個のMBVで投与される。例えば、一実施形態では、体積は、0.5mL~10.0mLである。別の実施形態では、体積は、1mL~5mLである。別の実施形態では、体積は、3mL~8mLである。さらに別の実施形態では、体積は、3mLである。例えば、一実施形態では、用量におけるMBVの数は、1×108~1×1010個のMBVである。例えば、一実施形態では、用量におけるMBVの数は、1×109個のMBVである。例えば、静脈内投与されるべき用量におけるMBVの数は、投与当たり体重1kg当たり1×106~1×1020個のMBVである。例えば、静脈内投与されるべき用量におけるMBVの数は、投与当たり体重1kg当たり1×106~1×1012個のMBVである。例えば、用量は、投与当たり体重1kg当たり1×107~1×1011個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×107~1×108個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×108~1×1010個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×109~1×1010個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×106~1×108個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×107~1×109個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×108~1×1011個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×109~1×1011個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×1010~1×1011個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×1011~1×1012個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×1012~1×1014個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×1014~1×1020個のMBVである。
別の実施形態では、MBVは、腹腔内投与による設定体積の液体における用量当たり、量1×107~1×1011個のMBVで投与される。例えば、一実施形態では、体積は、10mL~200mLである。別の実施形態では、体積は、50mL~100mLである。別の実施形態では、体積は、50mL~125mLである。さらに別の実施形態では、体積は、50mLである。例えば、一実施形態では、用量におけるMBVの数は、1×108~1×1010個のMBVである。例えば、一実施形態では、用量におけるMBVの数は、1×109個のMBVである。例えば、腹腔内投与されるべき用量におけるMBVの数は、投与当たり体重1kg当たり1×106~1×1020個のMBVである。例えば、用量は、投与当たり体重1kg当たり1×106~1×1012個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×107~1×1011個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×107~1×108個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×108~1×1010個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×109~1×1010個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×106~1×108個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×107~1×109個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×108~1×1011個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×109~1×1011個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×1010~1×1011個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×1011~1×1012個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×1012~1×1014個のMBVまたは投与当たり体重1kg当たり1×1014~1×1020個のMBVである。
一部の実施形態では、投与は、全身性である。全身性投与の例示的な経路は、静脈内投与、経口投与、経腸投与、非経口投与、鼻腔内投与、吸入性投与、気管内投与、直腸投与、舌下投与、頬側投与、腟投与、腹腔内投与、経皮、経粘膜または筋肉内投与を含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、全身性投与は、静脈内投与を含む。一部の実施形態では、静脈内投与は、全身性静脈内(IV)注射を含む。ある特定の実施形態では、IVは、ボーラス注射、持続性点滴またはポンプ注射を含む。一部の実施形態では、全身性静脈内注射は、標準IVラインまたは中心ラインの使用を含む。ある特定の実施形態では、標準IVラインは、手首、腕または手の静脈内に配置される。ある特定の実施形態では、中心ラインは、末梢挿入中心カテーテル(PICC)、鎖骨下ライン、内部頸静脈ライン(internal jugular line)、大腿ライン、トンネル型カテーテルまたは植え込み型ポートからなる群より選択される。特定の実施形態では、予想される長期治療法、すなわち、長期入院による患者、例えば、COVID-19を有する患者は、全身性静脈内注射のための中心ラインに配置される。
一部の実施形態では、投与は、例えば、肺への局所的なものである。例えば、投与は、鼻および/または口を経由した吸入性である。例えば、投与は、気管内である。COVID-19を有する患者において、例えば、気管内投与または鼻および/もしくは口による吸入性投与を使用することができる。
吸入性投与は、口腔および/または鼻腔を通して媒介することができる。ある特定の実施形態では、吸入は、MBVを含む医薬組成物のエアロゾル投与により容易にされる。一部の実施形態では、吸入は、ネブライザーまたは吸入器(例えば、定量吸入器または乾燥粉末吸入器)の補助を含む。一部の実施形態では、投与は、液体ミストの吸入を含む。一部の実施形態では、投与は、固体形態の吸入による。ある特定の実施形態では、固体は、ナノサイズであり、ナノ粒子、ナノダイヤモンドもしくはナノカーボンと組み合わせて製剤化される、またはリポソームもしくはリポソームに基づくパッケージ中にパッケージされる。一部の実施形態では、全身性投与は、気管内滴下注入としても公知の気管内投与を含む。ある特定の実施形態では、MBVの全身性投与は、それを必要とする対象、例えば、重度ARDSを有する対象、例えば、COVID-19に関連する重度ARDSを有する対象の肺への急速投与のための気管内チューブを経由した投与を含む。
吸入による投与のため、MBVは、適した噴霧体、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適したガスの使用により、加圧パックまたはネブライザーからエアロゾルスプレー提示の形態で簡便に送達することができる。加圧エアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを設けることにより決定することができる。吸入器または吹送器(insufflator)における使用のためのカプセルおよびカートリッジは、化合物と、ラクトースまたはデンプン等の適した粉末基剤との粉末ミックスを含有して製剤化することができる。吸入性調製物は、エアロゾル、微粒子その他を含むことができる。一般に、医薬品が、吸収のための肺の肺胞領域に達することができるように、吸入のための粒子サイズのための目標は、約1μmまたはそれ未満である。しかし、粒子サイズは、肺における配置領域を調整するために修飾することができる。よって、より大きい粒子を利用(約1~約5μmの直径等)して、呼吸細気管支および気腔における沈着を達成することができる。
活性成分として本明細書に記載されているMBVを含む医薬組成物は通常、選ばれた特定の投与様式に応じて適切な固体または液体担体と共に製剤化されるであろう。例えば、水、生理食塩水、他の平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールその他等、薬学的にかつ生理学的に許容される流体ビヒクルは、注射用製剤、または噴霧もしくはエアロゾル化製剤のために使用することができる。含まれ得る賦形剤は、例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿調製物等のタンパク質である。所望に応じて、投与されるべき医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存料およびpH緩衝化剤その他、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート(sorbitan monolaurate)等、少量の無毒性補助物質を含有することもできる。斯かる剤形を調製する実際の方法は、公知である、または当業者には明らかであろう。
MBVを含む医薬組成物は、一部の実施形態では、正確な投薬量の個々の投与に適した単位剤形で製剤化されるであろう。投与される活性化合物(複数可)の量は、処置されている対象、疾患の重症度および投与様式に依存するであろう、また、処方臨床医の判断に委ねられることが最良である。これらの限界内で、投与されるべき製剤は、処置されている対象において所望の効果を達成するのに有効な量で、活性構成成分(複数可)の含量を含有するであろう。
例として、個体の肺への投与の一方法は、ネブライザーまたは吸入器の使用による吸入による。例えば、MBVは、エアロゾルまたは微粒子において製剤化され、当業者にとって周知の標準ネブライザーを使用して肺内に引き込まれる。
投薬量処置は、投与当たり体重1kg当たり1×106~1×1012個のMBV(すなわち、小胞の絶対数)を最終的に送達するための単一の用量スケジュールまたは複数の用量スケジュールであり得る。投与は、単一の投与、定期的ボーラスとして、または持続放出薬物もしくは薬物送達デバイスからの特異的な期間にわたる持続性放出による等の持続性注入として提供することができる。対象は、適切な数の用量を投与することができる。複数の用量が投与される場合、投与は、間欠的であり得る。例としての実施形態では、治療有効量のMBVの投与(全身性投与、例えば、静脈内投与または他のいずれかの投与経路等)は、1回行うことができる、または1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10回等、反復して行うことができる。例としての実施形態では、投与は、ARDSの症状が鎮まるまで、1日1回、1日2回、2日ごとに行うことができる。他の実施形態では、単一の投与のみが、治療利益の達成に要求される。
個々の用量は典型的に、対象における測定可能な効果の産生に要求される量以上のものであり、対象組成物またはその副産物の吸収、分布、代謝および排泄(「ADME」)のための薬物動態および薬理学に基づき、よって、対象内の組成物の配置に基づき決定することができる。これは、投与経路、ならびに局所および全身性(例えば、静脈内)適用のために調整され得る投薬量の量の考慮を含む。用量の有効量および/または用量レジメンは、前臨床アッセイ、安全性および漸増および用量範囲治験、個々の臨床医-患者関係性ならびにin vitroおよびin vivoアッセイから経験的に容易に決定することができる。一般に、これらのアッセイは、炎症性障害(脳炎またはアトピー性皮膚炎等)を評価するであろう。
治療有効量のMBVは、薬学的に許容される担体に(医薬調製物中等)、例えば、約3.0~約8.0のpH、好ましくは、約3.5~約7.4、3.5~6.0または3.5~約5.0のpHの等張性緩衝溶液に懸濁することができる。有用な緩衝液は、クエン酸ナトリウム-クエン酸およびリン酸ナトリウム-リン酸および酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液を含む。保存料および抗細菌剤等、他の薬剤を組成物に添加することができる。このような組成物は、静脈内等、局所または全身性投与することができる。
治療有効量のMBVを含む医薬調製物は、正確な投薬量の個々の投与に適した単位剤形で製剤化することができる。投与される活性化合物(複数可)の量は、処置されている対象、苦痛の重症度および投与様式に依存するであろう、また、処方臨床医の判断に委ねられることが最良である。これらの限界内で、投与されるべき製剤は、処置されている対象において所望の効果を達成するのに有効な量で、活性構成成分(複数可)の含量を含有するであろう。一部の実施形態では、MBVによる処置は、投与時に存在する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の徴候または症状の減少または低下をもたらす。
一部の例では、MBVによる処置は、MBVの投与前の炎症のレベルよりも、対象における炎症の減少または低下をもたらすことができる。一部の例では、MBVによる処置は、ARDS、例えば、ウイルス感染症、例えば、COVID-19に関連するARDSの徴候または症状の低下または排除をもたらすことができる。
併用療法
本発明のMBV処置方法は、単独療法として、または疾患もしくは障害、例えば、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)もしくはARDSに関連する感染症の処置に使用することができる1種もしくは複数の他の治療法(例えば、抗ウイルス剤等の抗感染剤)と組み合わせて使用することができる。用語「組合せ(併用)」は、本明細書で使用される場合、ある時点で患者における処置の効果が重複するように、2種またはそれよりも多い異なる処置が、障害による対象の苦痛の経過中に対象に送達されることを意味するものと理解される。ある特定の実施形態では、投与の観点から重複が生じるように、第2の処置の送達が始まるときに、1種の処置の送達はまだ起こっている。これは時に、「同時」または「同時発生的送達」と本明細書で称される。他の実施形態では、他の処置の送達が始まる前に、1種の処置の送達は終わる。いずれかの場合のある特定の実施形態では、組み合わせた投与のため、処置は、より有効である。例えば、第2の処置は、より有効である、例えば、少ない第2の処置により、等価の効果が見られる、または第2の処置は、第1の処置の非存在下で第2の処置が投与された場合に見られるよりも大きい程度で、症状を低下させる、または第1の処置と類似の状況が見られる。ある特定の実施形態では、送達は、障害に関係する症状または他のパラメーターの低下が、他の処置の非存在下で送達される1種の処置により観察されるものよりも大幅であるようなものである。2種の処置の効果は、部分的に相加的、完全に相加的または相加的よりも大きくなることができる。送達は、第2の処置が送達されたときに、送達された第1の処置の効果が、まだ検出可能であるようなものであり得る。
対象は、同じまたは異なる組成物または医薬調製物において追加的な治療剤を投与することができる。一部の実施形態では、対象は、ARDSを有し、対象は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID、例えば、アスピリン、イブプロフェンおよびナプロキセン)、抗ロイコトリエン剤(antileukotriene)、免疫選択的抗炎症薬誘導体(ImSAID)、生理活性化合物、ステロイド(コルチコステロイド等)およびオピオイド等、抗炎症剤等の追加的な治療剤を投与される。
したがって、ある特定の実施形態では、対象は、疾患または障害の処置における使用に適した1種または複数の他の治療法を受けた、受けている、または受ける予定である。ある特定の実施形態では、本発明の処置方法は、疾患または障害、例えば、感染症の処置における使用に適した1種または複数の他の治療法を対象に投与するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、1種または複数の他の治療法は、細胞内病原体による感染症の1種または複数の症状を改善する薬剤を含む。ある特定の実施形態では、1種または複数の他の治療法は、感染した組織の外科的除去を含む。
本明細書に開示されている使用方法は、細胞内病原体に関連する疾患または障害の1種または複数の症状を改善する薬剤、例えば、抗感染剤と組み合わせて使用することができることが理解される。例えば、本明細書に開示されている使用方法は、抗ウイルス剤と組み合わせて使用することができる。
細胞内病原体による感染症の処置に適した治療法は一般に、当技術分野で公知であり、例えば、Kamaruzzaman et al. (2017) Br. J. Pharmacol. 174(14): 2225-36およびDe Clercq et al. (2016) Clin. Microbiol. Rev. 29(3): 695-747によって概説されている。ある特定の実施形態では、抗感染剤は、細胞内病原体の生存率、増殖、感染力および/またはビルレンスを阻害または低下させる。細胞内病原体は、潜伏状態で宿ることにより、免疫監視および負荷(challenge)を逃れることができる。したがって、ある特定の実施形態では、宿主の免疫系によって感染が認識され得るように、抗感染剤は、細胞内病原体の潜伏を逆転させる。
ある特定の実施形態では、細胞内病原体は、ウイルスであり、抗感染剤は、抗ウイルス剤である。組合せにおいて使用することができる例示的な抗ウイルス剤は、アバカビル、アシクロビル、アデホビル、アンプレナビル、アタザナビル、シドホビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エトラビリン、ファムシクロビル、ファビピラビル、ホスカルネット、ホミビルセン、ガンシクロビル、インジナビル、イドクスウリジン、ラミブジン、ロピナビル、マラビロク、MK-2048、ネルフィナビル、ネビラピン、ペンシクロビル、ラルテグラビル、リルピビリン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビルトリフルリジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、イバシタビン、アマンタジン、オセルタミビル、リマンタジン(rimantidine)、チプラナビル、ザルシタビン、ザナミビル、ペラミビル、ダノプレビル、レムデシビルおよびジドブジンを含むがこれらに限定されない。特に、細胞内病原体がHIVである場合、組合せにおいて使用することができる例示的な抗HIV剤は、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(例えば、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、スタブジン、ジダノシン、エムトリシタビンおよびテノホビル)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(例えば、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリンおよびネビラピン)、プロテアーゼ阻害剤(例えば、アンプレナビル、ホスアンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、インジナビル、ロピナビル、リトナビル、ネルフィナビル、サキナビルおよびチプラナビル)、融合または侵入阻害剤(例えば、エンフビルチドおよびマラビロク)、インテグラーゼ阻害剤(例えば、ラルテグラビルおよびカボテグラビル)および潜伏反転剤(latency-reversing agent)(例えば、HDAC阻害剤(例えば、ボリノスタット)およびTLR7アゴニスト(例えば、GS-9620、例えば、米国特許公開番号US20160008374A1に記載されている通り))を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV2であり、併用療法は、ヒドロキシクロロキンを含む。ある特定の実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV2であり、併用療法は、抗ウイルス剤を含む。ある特定の実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV2であり、併用療法は、二次感染症に対する予防的処置として抗細菌剤を含む。
ある特定の実施形態では、細胞内病原体は、細菌であり、抗感染剤は、抗細菌剤である。組合せにおいて使用することができる例示的な抗細菌剤は、アジスロマイシン、バンコマイシン、メトロニダゾール、ゲンタマイシン、コリスチン、フィダキソマイシン、テラバンシン、オリタバンシン、ダルババンシン、ダプトマイシン、セファレキシン、セフロキシム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフトビプロール、シプロ(cipro)、レバキン(Levaquin)、フロキシン(floxin)、テキン(tequin)、アベロックス、ノルフロックス(norflox)、テトラサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、アモキシシリン、アンピシリン、ペニシリンV、ジクロキサシリン、カルベニシリン、メチシリン、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォキソチン(cefoxotin)およびストレプトマイシンを含むがこれらに限定されない。
ある特定の実施形態では、細胞内病原体は、真菌であり、抗感染剤は、抗真菌剤である。組合せにおいて使用することができる例示的な抗真菌剤は、ナタマイシン、リモシジン(rimocidin)、フィリピン、ニスタチン、アンホテリシンB、カンジシン(candicin)およびハミシン(hamycin)、ミコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、オモコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール、ラブコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、テルコナゾールおよびアルバコナゾール、アバファンギン(abafungin)、テルビナフィン、ナフチフィン、ブテナフィン、アニデュラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギン、ポリゴジアール(polygodial)、安息香酸、シクロピロクス、トルナフテート、ウンデシレン酸、フルシトシンまたは5-フルオロシトシン、グリセオフルビンおよびハロプロジンを含むがこれらに限定されない。
ある特定の実施形態では、細胞内病原体は、原生動物であり、抗感染剤は、抗原生動物剤である。組合せにおいて使用することができる例示的な抗原生動物剤は、キニーネ(必要に応じてクリンダマイシンと組み合わせた)、クロロキン、アモジアキン、アルテミシニンおよびその誘導体(例えば、アルテメテル、アーテスネート、ジヒドロアルテミシニン、アルテテル)、ドキシサイクリン、ピリメタミン、メフロキン、ハロファントリン、ヒドロキシクロロキン、エフロルニチン、ニタゾキサニド、オルニダゾール、パロモマイシン、ペンタミジン、プリマキン、ピリメタミン、プログアニル(必要に応じてアトバコンと組み合わせた)、スルホンアミド(例えば、スルファドキシン、スルファメトキシピリダジン)、タフェノキン(tafenoquine)およびチニダゾールを含むがこれらに限定されない。具体的な実施形態では、細胞内病原体は、Plasmodium(例えば、P.vivax、P.falciparum、P.ovale、P.malariae)であり、抗感染剤は、抗マラリア剤である。組合せにおいて使用することができる例示的な抗マラリア剤は、キニーネ(必要に応じてクリンダマイシンと組み合わせた)、クロロキン、アモジアキン、アルテミシニンおよびその誘導体(例えば、アルテメテル、アーテスネート、ジヒドロアルテミシニン、アルテテル)、ドキシサイクリン、ハロファントリン、メフロキン、プリマキン、プログアニル(必要に応じてアトバコンと組み合わせた)、スルホンアミド(例えば、スルファドキシン、スルファメトキシピリダジン)、タフェノキンを含むがこれらに限定されない。これらの抗マラリア剤は、ARDSを処置するためにMBVと組み合わせて使用することができる。
ARDSまたはARDSに関連する高サイトカイン血症の処置における併用療法の一部として使用することができる薬剤の追加的なクラスは、抗炎症剤および/または免疫抑制剤、例えば、サイトカイン阻害剤、カルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤またはステロイドである:一部の実施形態では、抗炎症剤は、カルシニューリン阻害剤、例えば、タクロリムスおよびシクロスポリンを含む。一部の実施形態では、抗炎症剤は、mTOR阻害剤、例えば、シロリムスを含む。一部の実施形態では、抗炎症剤は、ステロイド、例えば、プレドニゾンを含む。一部の実施形態では、抗炎症剤は、サイトカイン阻害剤、例えば、IL-6アンタゴニスト、IL-1アンタゴニスト、可溶性腫瘍壊死因子受容体、IL-1受容体アゴニストおよびTGF-β1潜伏関連ペプチドを含む。ある特定の実施形態では、サイトカイン阻害剤は、トシリズマブ、サリルマブ、アナキンラまたはシルツキシマブを含む。ある特定の実施形態では、抗炎症剤は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、例えば、トファシチニブ、ルキソリチニブまたはバリシチニブを含む。
適切な治療法は、特異的感染症の診断に従って選択することができる。対象が、複数の病原体(例えば、複数の細胞内病原体、例えば、複数のウイルス感染症、例えば、SARS-CoV2および二次感染症)に感染している場合、これらの感染症を処置するための2種またはそれよりも多い適切な治療法を、本明細書に開示されているMBV療法と組み合わせて使用することができる。
一実施形態では、本発明の組成物は、SARS-CoV2に対する抗体療法、例えば、バムラニビマブ、エテセビマブ、カシリビマブもしくはイムデビマブまたはこれらの組合せによる併用療法の一部として使用される。
一部の実施形態では、方法は、治療利益が達成されたことを検出するステップを含む。治療有効性の尺度は、修飾されている特定の疾患に適用可能となり、当業者は、治療有効性の測定に使用するための適切な検出方法を認識するであろう。対象は、当技術分野で公知のいずれかの方法を使用して、応答について評価され得る。例としての実施形態では、対象は、炎症性障害(脳炎またはアトピー性皮膚炎等)を有し、対象における治療応答は、白血球数、多形核好中球(PMN)の数、PMN活性化の程度(ルミノール増強ケミルミネッセンス等)、サイトカインの量、C反応性タンパク質および当技術分野で公知の他の尺度によって測定することができる。
用語
用語および方法の次の説明は、本開示をより十分に表し、本開示の実施において当業者を導くために示される。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそれ以外を明らかに指示しない限り、1個または1個超を指す。例えば、用語「1つの細胞(a cell)を含む」は、単一のまたは複数の細胞を含み、語句「少なくとも1個の細胞を含む」と均等と考えられる。用語「または/もしくは」は、文脈がそれ以外を明らかに指し示さない限り、記述されている二者択一の(alternative)エレメントまたは2個もしくはそれよりも多いエレメントの組合せのうち単一のエレメントを指す。本明細書で使用される場合、「を含む(comprises)」は、「を含む(includes)」を意味する。よって、「AまたはBを含む(comprising)」は、追加的なエレメントを除外することなく、「A、B、またはAおよびBを含む(including)」を意味する。本明細書に参照されているGENBANK(登録商標)受託番号の日付は、少なくとも早くも2015年9月16日には利用できる配列である。本明細書に引用されているあらゆる参考文献、特許出願および刊行物ならびにGENBANK(登録商標)受託番号は、参照により本明細書に組み込まれる。他に指示がなければ、「約」は、5パーセント以内を指し示す。本開示の様々な実施形態の概説を容易にするために、特異的な用語の次の説明が示される:
急性呼吸窮迫症候群:急性呼吸窮迫症候群または「ARDS」は、肺における広汎な炎症の急速な開始によって特徴付けられる呼吸不全の一型を指し、重度低酸素血症が特徴症状である。徴候および症状は通常、原因となる事象の数時間以内であるが、数日間または最大1週間以内に起こり得る。ARDSにおいて、流体は、肺における最小の血管から肺の肺胞へと漏出する。正常生理学において、肺胞毛細血管膜は、斯かる流体から肺を保護する。しかし、肺胞毛細血管膜への重度肺および/または全身性損傷の場合、膜が損なわれるようになり、ARDSをもたらす場合がある。ある特定の実施形態では、ARDSは、肺感染症に関連する。
ARDSの症状は、息切れ、速い呼吸、減少した血液酸素化、頭痛、低血圧、発熱、咳、錯乱、極度の疲労、ならびに低酸素血症により変色した皮膚および/または爪を限定することなく含むことができる。ARDSは、酸素および二酸化炭素を交換する肺の能力を損なう。ARDS患者の胸部X線検査は、例えば、両方の肺における広汎な「すりガラス(ground-glass)」に見える陰影により、肺における両側性浸潤を明らかにする。診断の観点から、ベルリン(Berlin)判断基準に従って、5cm H2O超の呼気終末陽圧換気(PEEP)にもかかわらず、PaO2/FiO2(動脈酸素の分圧および吸入酸素の分率の比)が300mm Hg未満の場合、ARDSが診断される。軽症例では、PaO2/FiO2は、200mg Hg超かつ300mg未満である。中等症例では、PaO2/FiO2は、100mg Hg超かつ200mg未満である。重症例では、PaO2/FiO2は、100mm Hg未満である。一次処置は、酸素の投与および/または機械的人工呼吸を伴う。
投与:選ばれた経路による対象への組成物(MBVまたはMBVを含む医薬調製物等)の導入。経路は、局所または全身性であり得る。例えば、選ばれた経路が静脈内である場合、組成物は、対象の静脈へと組成物を導入することにより投与される。選ばれた経路が局所的なものである場合、組成物は、対象の組織へと直接的に組成物を導入することにより投与することができる。
動物:例えば、哺乳動物およびトリを含むカテゴリーである、生きている多細胞の脊椎のある生物。用語「哺乳動物」は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に、用語「対象」は、ヒトおよび獣医学対象の両方を含む。
関節炎:関節炎は、身体における1個または複数の関節の滑膜が罹患する炎症性疾患である。これは、最も一般的な型の関節疾患であり、関節の炎症によって特徴付けられる。この疾患は通常、少数関節性(oligoarticular)(数個の関節に罹患する)であるが、全般性となる場合もある。一般的に関与する関節は、股関節、膝関節、下部腰椎および頸椎、手指の近位および遠位指節間関節、第一手根中手関節、ならびに足の第一足根中足関節を含む。症状は、罹患関節の関節痛および硬直、発赤、温感、腫脹および減少した可動域を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されている組成物および方法を使用して、関節炎を処置することができる。関節炎の型は、関節リウマチおよび乾癬性関節炎を限定することなく含む。
生体適合性:哺乳動物対象に植え込まれたときに、対象において有害な応答を引き起こさない、いずれかの材料。生体適合性材料は、個体の中に導入されたときに、その意図される機能を行うことができ、当該個体にとって毒性でも傷害性でもなく、対象において材料の免疫学的拒絶を誘導することもない。
濃縮された:プロセスを指し、これによって、混合物中に存在するナノ小胞等の目的の構成成分は、濃縮プロセス前と比較して、濃縮プロセス後に、当該混合物における当該構成成分の量の他の望まれない構成成分の量に対する比が増加する。
細胞外マトリックス(ECM):組織内で細胞を取り囲み支持し、他に指示がなければ、無細胞である、構造タンパク質、特殊化タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンおよび増殖因子を含むがこれらに限定されない、構造および機能的な生体分子および/または生体高分子の複合混合物。ECM調製物は、本明細書に記載されておりかつ当技術分野で公知のプロセスにより供給源組織から細胞が除去されたことを意味する、「脱細胞化された」または「無細胞」であると考えることができる。「ECM由来ナノ小胞」、「マトリックス結合ナノ小胞」、「MBV」または「ECMに由来するナノ小胞」等の「ECM由来材料」とは、天然のECMから、または培養細胞によってECMが産生されるin vitro供給源から調製されたナノ小胞である。ECM由来ナノ小胞は、下に定義されている。
高サイトカイン血症または「サイトカイン放出症候群」:「サイトカインストーム」または「サイトカインストーム症候群」としても当技術分野で公知の、免疫系の急性過剰反応;斯かる免疫応答は、感染性疾患または障害から生じ得る全身性炎症性応答症候群である。病原性炎症の正のフィードバックループにおいて、多数の白血球細胞が活性化され、炎症性サイトカインを放出し、これが次いでさらにより多くの白血球細胞を活性化すると、高サイトカイン血症が起こる。加えて、免疫細胞上のその同族受容体に結合する炎症促進性サイトカインは、さらなるサイトカイン産生の活性化および刺激をもたらす。高サイトカイン血症病理は、局所部位において始まり、例えば、全身性循環経由で身体全体にわたり伝播する炎症に関連し、多臓器不全をもたらし得る。ウイルス感染症から生じる高サイトカイン血症病理は、急性肺傷害および急性呼吸窮迫症候群に関連する。高サイトカイン血症病理は、例えば、Tisonick et al., (2012) "Into the Eye of the Cytokine Storm," Microbiol. Mol. Biol. Rev., 76(1):16-32に記載されている。過剰に放出されるサイトカインは、例えば、IL-6、IFN-γ、IL-8(CXCL8)、IL-10、GM-CSF、MIP-1α/β、MCP-1(CCL2)、CXCL9およびCXCL10を含むことができるがこれらに限定されない。
感染:宿主、例えば、患者内に正常には存在しない、または宿主における特定の場所に正常には存在しないが宿主における別の場所に侵入する(例えば、消化管内に正常に存在する病原体が、尿路に進入する場合、または皮膚表面に正常に存在する病原体が、血流に進入する場合)、病原体、例えば、ウイルス、細菌、真菌または原生動物の侵入および増殖を指す。感染は、症状を引き起こさず、無症状性であり得る、または症状を引き起こし、臨床的に明らかであり得る。感染は、局在化されたままであり得る、または例えば、血管またはリンパ管を通って伝播して、全身性であり得る。
炎症:炎症は、炎症性因子を隔離するように働く、組織への傷害によって誘発される局在化された防御応答である。炎症は、病原体、損傷した細胞または刺激物等、有害な刺激に対する脈管組織の複雑な生物学的応答によって編成される。これは、生物による、傷害性刺激を除去すると共に、組織のための治癒プロセスを惹起する防御的な試みである。炎症性応答は、全身性の、または炎症部位における局所の、白血球細胞の蓄積によって特徴付けられる。炎症性応答は、白血球細胞の数、多形核好中球(PMN)の数、ルミノール増強ケミルミネッセンス等のPMN活性化の程度の尺度、または存在するサイトカインの量の尺度の測定を含むがこれらに限定されない、多くの方法によって測定することができる。C反応性タンパク質は、全身性炎症性応答のマーカーである。
炎症性障害は、炎症が正常なまたは通常の生理学的機能を破壊する障害の一属である。炎症性障害は、自己免疫性障害(内在性抗原に対する不適切な炎症性応答)、および外傷または外来性抗原による炎症に起因する障害等、種々の状態を含むことができる。原発性炎症性障害は、炎症それ自体に起因する疾患または障害である。続発性炎症性障害は、別の障害の結果である炎症である。炎症は、炎症性障害、例えば、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)をもたらすことができる。
一部の実施形態では、炎症性疾患または障害、例えば、ARDSを処置するために、抗炎症剤が投与される。抗炎症剤は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID、例えば、アスピリン、イブプロフェンおよびナプロキセン)、抗ロイコトリエン剤、免疫選択的抗炎症薬誘導体(ImSAID)、生理活性化合物、ステロイド(コルチコステロイド等)およびオピオイドを限定することなく含む。
インフルエンザ:インフルエンザ(「フルー(flu)」としても公知)は、インフルエンザウイルスに起因する感染性疾患である。3つの型のインフルエンザウイルスが、ヒトに感染することができる:A型、B型およびC型;D型は、ヒトに感染することが示されていない。インフルエンザウイルスは、高度に伝染性である;非限定的な例では、インフルエンザウイルスは、感染した個体の咳またはくしゃみの飛沫(air in droplet)を介して伝播される。インフルエンザは、毎年の大流行において世界的に伝播し、重度疾病の約300万~500万件の症例および約290,000~650,000人の死亡をもたらす("Influenza (Seasonal)". World Health Organization (WHO). 6 November 2018)。高リスクの人について、世界保健機関(World Health Organization)(WHO)によってインフルエンザに対する毎年のワクチン接種が推奨されている。毒性インフルエンザ株のより大規模な世界的大流行が起こり得る、例えば、1918年のスペイン風邪(Spanish influenza)(1700万~1億人の死亡をもたらした)、1957年のアジアインフルエンザ(200万人の死亡をもたらした)、および1968年の香港(Hong Kong)インフルエンザ(100万人の死亡をもたらした)。2009年6月に、WHOは、インフルエンザA、H1N1(「ブタインフルエンザ」としても公知)の新型の大流行が、パンデミックであることを宣言した(Chan M. (2009). "World now at the start of 2009 influenza pandemic". World Health Organization (WHO). Archived from the original on 12 June 2009)。インフルエンザ感染症の症状は、発熱、鼻汁、咽頭炎、筋肉および関節痛、頭痛、咳ならびに疲労を限定することなく含む。ある特定の実施形態では、インフルエンザは、ウイルス性肺炎に関連する。ある特定の実施形態では、インフルエンザは、続発性細菌性肺炎に関連する。
単離された:「単離された」生物学的構成成分(核酸、タンパク質、細胞またはナノ小胞等)は、構成成分が天然に存在する生物の細胞またはECMにおける他の生物学的構成成分から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸およびタンパク質は、標準精製方法によって精製された核酸およびタンパク質を含む。単離されたMBVは、ECMの線維性材料から除去されている。この用語は、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質、ならびに化学合成された核酸も包含する。
リジルオキシダーゼ(Lox):コラーゲンおよびエラスチン前駆体におけるリシン残基からアルデヒドの形成を触媒する銅依存性酵素。このようなアルデヒドは、高度に反応性であり、他のリジルオキシダーゼ由来アルデヒド残基または無修飾リシン残基と自発的な化学反応を起こす。in vivoでは、この反応は、コラーゲンおよびエラスチンの架橋をもたらし、この架橋は、コラーゲン原線維の安定化におけるならびに成熟エラスチンの完全性および弾性のための役割を果たす。コラーゲン(3個のリシン残基に由来するピリジノリン)およびエラスチン(4個のリシン残基に由来するデスモシン)において複雑な架橋が形成され、これらは構造が異なる。種々の生物からLox酵素をコードする遺伝子がクローニングされた(Hamalainen et al., Genomics 11:508, 1991;Trackman et al., Biochemistry 29:4863, 1990;参照により本明細書に組み込まれる)。ヒトリジルオキシダーゼの配列の残基153~417および残基201~417が、触媒機能に重要であることが示された。LoxL1、LoxL2、LoxL3およびLoxL4と呼ばれる4種のLox様アイソフォームが存在する。
マクロファージ:細胞デブリ、異物、微生物およびがん細胞を貪食および分解する白血球細胞の一型。ファゴサイトーシスにおけるその役割に加えて、このような細胞は、発生、組織維持および修復における、ならびにリンパ球等の免疫細胞を含む他の細胞を動員し影響を与えるという点において、自然および適応免疫の両方における重要な役割を果たす。マクロファージは、M1およびM2と称されてきた表現型を含む多くの表現型で存在することができる。主に炎症促進性機能を果たすマクロファージは、M1マクロファージ(CD86+/CD68+)と呼ばれ、一方、炎症を減少させ、組織修復を促し調節するマクロファージは、M2マクロファージ(CD206+/CD68+)と呼ばれる。マクロファージの様々な表現型を同定するマーカーは、種間で変動する。マクロファージ表現型が、M1およびM2の両極端の間の範囲に及ぶスペクトルによって表されることに留意されたい。F4/80(接着型Gタンパク質共役受容体E1(ADGRE1)遺伝子によってコードされる)は、マクロファージマーカーである。両者共に参照により本明細書に組み込まれる、GENBANK(登録商標)受託番号NP_001243181.1、2018年4月6日、およびNP_001965、2018年3月5日を参照されたい。理論に制約されることは望まないが、MBVが、マクロファージの表現型をモジュレートする能力を有し、M2様、調節性またはリモデリング促進性マクロファージの増加をもたらすと考えられる。マクロファージにおけるMBVの効果は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2017/151862A1においてさらに特徴付けられる。一部の実施形態では、本発明のMBVを使用して、マクロファージにおけるM2表現型を誘導し、対象におけるM1マクロファージを阻害することができる。
マイクロRNA:標的mRNA翻訳を典型的に抑制することにより遺伝子発現を転写後調節する、約17~約25ヌクレオチド塩基の長さである小分子非コードRNA。より多量の特異的miRNAが、より低レベルの標的遺伝子発現と相関することになるように、miRNAは、負の制御因子として機能することができる。miRNAの3種の形態、一次miRNA(pri-miRNA)、未熟miRNA(pre-miRNA)および成熟miRNAが存在する。一次miRNA(pri-miRNA)は、約数百塩基~1kb超のステムループ構造の転写物として発現される。pri-miRNA転写物は、ステムループの基部付近でステムの両方の鎖を切断するドローシャと呼ばれるRNase IIエンドヌクレアーゼによって核内で切断される。ドローシャは、互い違いのカット(staggered cut)でRNA二重鎖を切断し、5’リン酸および3’末端における2ヌクレオチドオーバーハングを残す。切断生成物、未熟miRNA(pre-miRNA)は、折り返す(fold-back)様式で形成されたヘアピン構造を有する約60~約110ヌクレオチド長である。pre-miRNAは、Ran-GTPおよびエクスポーチン-5によって核から細胞質へと輸送される。pre-miRNAは、ダイサーと呼ばれる別のRNase IIエンドヌクレアーゼによって細胞質においてさらにプロセシングされる。ダイサーは、5’リン酸および3’オーバーハングを認識し、ステムループ接合部からループを切断して、miRNA二重鎖を形成する。miRNA二重鎖は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に結合し、そこで、アンチセンス鎖が優先的に分解され、センス鎖成熟miRNAは、RISCをその標的部位に方向付ける。これが、miRNAの生物学的に活性がある形態であり、約17~約25ヌクレオチドの長さである、成熟miRNAである。
ナノ小胞:約10~約1,000nmの直径のナノ粒子である細胞外小胞。ナノ小胞は、いくつかある分子の中でもとりわけ、生物学的に活性があるシグナル伝達分子(例えば、マイクロRNA、タンパク質)を運搬する、脂質膜結合粒子である。一般に、ナノ小胞は、脂質二重層によって限定され、生物学的分子は、二重層に封入されるおよび/または包埋され得る。よって、ナノ小胞は、原形質膜によって取り囲まれた腔を含む。小胞の異なる型は、細胞外マトリックス由来または分泌された等、直径、細胞内起源(subcellular origin)、密度、形状、沈降速度、脂質組成、タンパク質マーカー、核酸含量および起源に基づき区別することができる。ナノ小胞は、ECM由来のマトリックス結合ナノ小胞等のその起源(上述を参照)、タンパク質含量および/またはmiR含量によって同定することができる。
「エキソソーム」または「液相細胞外小胞(EV)」は、細胞によって分泌される膜性小胞であり、直径10~150nmの範囲に及ぶ。一般に、後期エンドソームまたは多胞体は、限定されたエンドソーム膜からこのような封入された小胞への、小胞の内向き出芽および分断によって形成された腔内(intralumenal)小胞を含有する。次に、このような腔内小胞は、原形質膜との融合後のエキソサイトーシスの際に、多胞体腔から細胞外環境へと、典型的には、血液、脳脊髄液または唾液等の体液へと放出される。膜のセグメントが陥入し、エンドサイトーシスされる場合、エキソソームは、細胞内に創出される。より小型の小胞へと破壊され最終的に細胞から排出される、内部移行されたセグメントは、タンパク質ならびにmRNAおよびmiRNA等のRNA分子を含有する。血漿由来エキソソームは、大部分はリボソームRNAを欠如する。細胞外マトリックス由来エキソソームは、特異的miRNAおよびタンパク質構成成分を含み、血液、尿、唾液、精液および脳脊髄液等、事実上全ての体液に存在することが示された。エキソソームは、CD11c、CD63、CD81および/またはCD9を発現することができ、よって、CD11c+および/またはCD63+および/またはC81+および/またはCD9+であり得る。エキソソームは、その表面に高レベルのリジルオキシダーゼを有しない。
「ECMに由来するナノ小胞」、「マトリックス結合ナノ小胞」、「MBV」または「ECM由来ナノ小胞」は全て、細胞挙動に影響を与えるタンパク質、脂質、核酸、増殖因子およびサイトカイン等の生物学的に活性があるシグナル伝達分子を含有する、細胞外マトリックスに存在する10nm~1000nmのサイズに及ぶ、同じ膜結合粒子を指す。これらの用語は互換的であり、同じ小胞を指す。このようなナノ小胞は、ECM内に包埋され、これに結合しており、表面に単純に付着されている訳でも、体液中を自由に循環している訳でもない。このようなナノ小胞は、凍結融解、ならびにペプシン、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、プロテイナーゼKおよびコラゲナーゼ等のプロテアーゼによる消化、ならびに界面活性剤による消化等、過酷な単離条件に対して抵抗性である。MBVは、エキソソームを含む他の細胞外小胞とは別個のものであり、エキソソームとは別個のリン脂質組成を有する。ある特定の状況では、MBVは、エキソソームに一般的に起因するある特定のマーカーの非存在に基づきエキソソームから区別することもできる。MBVはまた、アルカリホスファターゼを発現する、骨の生成および石灰化に関与する骨マトリックス小胞とも別個のものである。MBVは、アルカリホスファターゼを発現しない。
一部の実施形態では、MBVは、タンパク質発現または脂質含量の次の特色のうち1つまたは複数によって特徴付けられる:
(i)MBVは、CD63および/もしくはCD81および/もしくはCD9のうち1種もしくは複数を発現することができない、またはエキソソーム等の他の小胞と比較して、低いもしくは辛うじて検出可能なレベルのCD63および/もしくはCD81および/もしくはCD9を有する(CD63loおよび/またはCD81loおよび/またはCD9lo)(例えば、実施例1を参照)(実施例17および図24も参照)。種々の方法、例えば、ウエスタンブロッティングまたはフローサイトメトリー等の抗体に基づく方法を使用して、MBVにおけるCD63および/またはCD81および/またはCD9の低い発現、辛うじて検出可能な発現または発現なしを区別することができる(例えば、Bashashati and Brinkman, Adv Bioinformatics, 2009: 584603を参照)。一部の実施形態では、MBVにおけるCD63および/またはCD81および/またはCD9の発現が、エキソソーム等の他の小胞の平均発現を少なくとも1標準偏差または少なくとも2標準偏差下回る場合、CD63および/またはCD81および/またはCD9のMBV発現は、他の小胞と比較して、低いまたは辛うじて検出可能と考えられる;
(ii)MBVは、総リン脂質の少なくとも55%が、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルイノシトール(PI)の組合せを含む、リン脂質含量を有する;
(iii)MBVは、総リン脂質の10%またはそれ未満が、スフィンゴミエリン(SM)を含む、リン脂質含量を有する;
(iv)MBVは、総リン脂質の20%またはそれ未満が、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を含む、リン脂質含量を有する;
(v)MBVは、総リン脂質含量の15%またはそれよりも多くが、ホスファチジルイノシトール(PI)を含む、リン脂質含量を有し、パーセントは、脂質濃度のパーセントを表す。
一部の実施形態では、MBVは、次の特色の全てによって特徴付けられる:
(i)CD63および/もしくはCD81および/もしくはCD9のうち1種もしくは複数を発現しない、または低いもしくは辛うじて検出可能なレベルのCD63および/もしくはCD81および/もしくはCD9を有する(CD63loおよび/またはCD81loおよび/またはCD9lo)(上にさらに記載されている通り);
(ii)総リン脂質の少なくとも55%が、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルイノシトール(PI)の組合せを含む、リン脂質含量;
(iii)総リン脂質の10%またはそれ未満が、スフィンゴミエリン(SM)を含む、リン脂質含量;
(iv)総リン脂質の20%またはそれ未満が、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を含む、リン脂質含量;ならびに
(v)総リン脂質含量の15%またはそれよりも多くが、ホスファチジルイノシトール(PI)である、リン脂質含量。
一部の実施形態では、MBVは、次の特色の全てによって特徴付けられる:
(i)総リン脂質の少なくとも55%が、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルイノシトール(PI)の組合せを含む、リン脂質含量;
(ii)総リン脂質の10%またはそれ未満が、スフィンゴミエリン(SM)を含む、リン脂質含量;
(iii)総リン脂質の20%またはそれ未満が、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を含む、リン脂質含量;ならびに
(iv)総リン脂質含量の15%またはそれよりも多くが、ホスファチジルイノシトール(PI)である、リン脂質含量。
一部の実施形態では、MBVは、次の特色のうち1つまたは複数によって特徴付けられる:
(i)総リン脂質の少なくとも55%が、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルイノシトール(PI)の組合せを含む、リン脂質含量;
(ii)総リン脂質の10%またはそれ未満が、スフィンゴミエリン(SM)を含む、リン脂質含量;
(iii)総リン脂質の20%またはそれ未満が、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を含む、リン脂質含量;ならびに
(iv)総リン脂質含量の15%またはそれよりも多くが、ホスファチジルイノシトール(PI)である、リン脂質含量。
MBVが単離されるECMは、組織由来のECMであり得る、培養中の細胞から産生することができる、または商業的供給源から購入することができる。
一部の実施形態では、MBVは、次の特色のうち1つまたは複数によって特徴付けられる:
(i)検出可能レベルのアルカリホスファターゼを含有しない;
(ii)検出可能レベルのオステオポンチンを含有しない;
(iii)検出可能レベルのオステオプロテジェリンを含有しない;
(iv)検出可能レベルの補体C5を含有しない;および/または
(v)検出可能レベルのc反応性タンパク質を含有しない。
一部の実施形態では、MBVは、次の特色のうち1つまたは複数によって特徴付けられる:
(i)EpCAMを低いレベルで含有するもしくはこれを検出可能レベルで含有しない、
(ii)ANXA5を低いレベルで含有するもしくはこれを検出可能レベルで含有しない、
(iii)TSG101を低いレベルで含有するもしくはこれを検出可能レベルで含有しない;
(iv)FLOT1を低いレベルで含有するもしくはこれを検出可能レベルで含有しない;
(v)ICAM1を低いレベルで含有するもしくはこれを検出可能レベルで含有しない;
(vi)GM130を低いレベルで含有するもしくはこれを検出可能レベルで含有しない;および/または
(vii)ALIXを低いレベルで含有するもしくはこれを検出可能レベルで含有しない。
一実施形態では、MBVは、低いまたは検出不能なレベルのANXA5、TSG101およびICAM1によって特徴付けられる。
一実施形態では、MBVは、低いまたは検出不能なレベルのCD81、CD63、ANXA5、TSG101およびICAM1によって特徴付けられる。
酸素飽和度指数(OSI):酸素飽和度指数は、比酸素レベル(specific oxygen level)(SpO2)を使用して計算される、酸素指数(OI)の非侵襲的代替物である。OSI=(FiO2×平均気道圧×100)/SpO2。SpO2(酸素飽和度)は、非侵襲的に、例えば、パルスオキシメトリによって測定することができ、血液における総ヘモグロビン(不飽和および飽和)に対する酸素飽和ヘモグロビンの分率の尺度である。
酸素指数(OI):酸素指数=(FiO2×平均気道圧×100)/PaO2であり、OSIとは異なり、侵襲的である動脈血ガス測定を要求する。
薬学的に許容される担体:特許請求されている医薬調製物において有用な薬学的に許容される担体は、従来のものである。Remington's Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition (1975)は、本明細書に開示されている融合タンパク質の薬学的送達に適した組成物および製剤について記載する。
一般に、担体の性質は、用いられている特定の投与様式に依存するであろう。例えば、非経口製剤は通常、ビヒクルとして水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールその他等の薬学的にかつ生理学的に許容される流体を含む注射用流体を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤またはカプセル形態)のため、従来の無毒性固体担体は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムを含むことができる。生物学的に中性の担体に加えて、投与されるべき医薬調製物は、湿潤剤または乳化剤、保存料およびpH緩衝化剤その他、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート等、少量の無毒性補助物質を含有することができる。
医薬剤:対象または細胞に適切に投与されたときに、所望の治療または予防的効果を誘導することができる化合物または組成物。
リン脂質:2本の疎水性脂肪酸尾部と、リン酸基からなる親水性頭部とからなる構造を有する脂質のクラス。リン脂質の主要なクラスは、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)、スフィンゴミエリン(SM)、カルジオリピン(CL)、ホスファチジン酸(PA)およびビス-モノアシルグリセロホスフェート(BMP)を含む。リン脂質は、種々の仕方で測定することができる。例えば、LC-MSに基づく網羅的リピドミクスおよびレドックスリピドミクスを使用することができる。一部の実施形態では、比リン脂質含量(specific phospholipid content)は、総リン脂質(MBVにおける総リン脂質等)のパーセント濃度として指し示され、パーセント濃度は、重量/重量である。
肺炎:一方または両方の肺における肺胞(空気嚢)に炎症を起こさせる感染症。一部の実施形態では、肺は、流体または膿汁で満たされる。一部の実施形態では、肺炎は、ウイルス感染症、例えば、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV2、SARS-CoV、MERS-CoV)、例えば、インフルエンザウイルス(例えば、インフルエンザA)、例えば、エボラウイルスに関連する。一部の実施形態では、肺炎は、細菌感染症、例えば、Streptococcus pneumoniaeに関連する。一部の実施形態では、肺炎は、真菌感染症、例えば、Pneumocystis jiroveciiに関連する。一部の実施形態では、肺炎は、二次感染症である、すなわち、既存の感染症(例えば、COVID-19)を有する患者が、肺炎を発症する。一部の実施形態では、肺炎は、院内感染による。一部の実施形態では、肺炎は、市中感染による。肺炎の症状は、咳、発熱、速い呼吸、息切れ、胸部痛および疲労を限定することなく含む。ある特定の実施形態では、肺炎は、ARDSに関連する。
ポリヌクレオチド:いずれかの長さの核酸配列(線状配列等)。したがって、ポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドを含み、また、染色体中に見出される遺伝子配列も含む。「オリゴヌクレオチド」は、ネイティブホスホジエステル結合によって繋がれた、複数の繋がれたヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、6~300ヌクレオチドの間の長さのポリヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドアナログは、オリゴヌクレオチドと同様に機能するが、天然に存在しない一部分を有する部分を指す。例えば、オリゴヌクレオチドアナログは、ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド等、変更された糖部分または糖間(inter-sugar)連結等、天然に存在しない一部分を含有することができる。天然に存在するポリヌクレオチドの機能的アナログは、RNAまたはDNAに結合し、ペプチド核酸(PNA)分子を含むことができる。
予防的:本明細書で使用される場合、疾患または障害が起こるのを防止するように設計および使用された薬物療法または処置を指す。本明細書で使用される場合、用語「予防的」および「予防」は、互換的に使用される。
精製された:用語「精製された」は、絶対的な純度を要求しない;むしろ、これは、相対的な用語として意図される。よって、例えば、精製された核酸分子調製物は、参照されている核酸(nucleic)が、細胞内のその天然の環境における核酸(nucleic)よりも純粋である調製物である。例えば、核酸の調製物は、核酸が、調製物の総タンパク質含量の少なくとも50%となるように精製されている。同様に、精製されたMBV調製物は、エキソソームが、マイクロ小胞およびエキソソームが存在する細胞を含む環境中よりも純粋である調製物である。核酸またはMBVの精製された集団は、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を超えて純粋である、またはそれぞれ他の核酸または細胞構成成分を含まない。
疾患を予防または処置すること:疾患を「予防すること」は、例えば、疾患の素因を有することが分かっている人物における疾患の発症を阻害することを指す。分かっている素因を有する人物の例は、家族に疾患の病歴がある者、または対象をある状態に罹り易くする因子に曝露された者である。「処置」は、発症が始まった後に疾患または病的状態の徴候または症状を改善する治療介入を指す。
2019-新型コロナウイルスまたは2019-nCoVとしても当技術分野で公知の、SARS-CoV-2または重症急性呼吸器症候群-コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、2019年後期に中華人民共和国の武漢で起こった新型コロナウイルスであり、2020年の世界的パンデミックの原因である。SARS-CoV-2に起因する疾患は、コロナウイルス疾患2019またはCOVID-19と呼ばれる。COVID-19は、咳、発熱、疲労、体の痛みおよび息切れを含む種々の症状を引き起こす。重度疾患を有するCOVID-19患者は、急性呼吸窮迫症候群を経験し、機械的人工呼吸を要求し得る。
敗血症:敗血症は、血流中に放出された(例えば、感染、例えば、細胞内病原体またはウイルスと戦うために)サイトカインおよびケモカインが、身体全体にわたり全身性炎症を生じる際に起こり得る障害である。敗血症は、広汎な臓器損傷、臓器不全および死亡をもたらし得る。敗血症の症状は、上昇した心拍数、錯乱または失見当識、極度の疼痛または不快感、発熱および息切れを限定することなく含む。一部の実施形態では、敗血症は、ARDSに関連する。一部の実施形態では、敗血症は、高サイトカイン血症に関連する。
対象:非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類および爬虫類等、哺乳動物および非哺乳動物等、あらゆる脊椎動物を含む、ヒトおよび非ヒト動物。記載されている方法の多くの実施形態では、対象は、ヒトである。「対象」は、用語「患者」と互換的に使用される。対象は、疾患もしくは障害、例えば、感染性疾患もしくは障害を発症する高いリスクがあると診断された個体(例えば、免疫低下個体、医療従事者)、疾患もしくは障害、例えば、感染性疾患もしくは障害を有すると診断された者、疾患もしくは障害、例えば、感染性疾患もしくは障害を以前に患ったことがある者、または疾患もしくは障害、例えば、感染性疾患もしくは障害の症状もしくは徴候について評価された個体であり得る。
治療有効量:処置されている対象における所望の効果の達成に十分な、MBV等の特異的な物質の含量。対象に投与される場合、所望のin vitro効果を達成することが示された、標的組織濃度(例えば、肺における)を達成するであろう投薬量が一般に使用されるであろう。
総リン脂質含量:「総リン脂質」または「総リン脂質含量」は、MBVに関して本明細書で使用される場合、単離されたMBV、すなわち、ECMから単離されたMBVの所与の含量において存在する全リン脂質の和を指す。MBVは、例えば、脱細胞化したECMの酵素消化および分画遠心分離によって単離することができる。総リン脂質含量は、LC-MSに基づく網羅的リピドミクスおよびレドックスリピドミクス等の方法によって決定することができる。総リン脂質含量は、重量によって測定される。総リン脂質含量のパーセンテージは、重量/重量基準でのパーセント濃度を指す。
移植すること:それを必要とする対象へのMBV等の生体適合性基材の配置。
処置すること、処置および治療法:症状の緩解、軽快、縮小等、いずれかの客観的もしくは主観的パラメーターを含む、傷害、病理もしくは状態の減弱もしくは改善、患者にとって状態をより耐えられるものとすること、変性もしくは減退の速度を遅くすること、変性の最終地点の衰弱を抑えること、または対象の身体的もしくは精神的福祉を改善することにおける、いずれかの成功または成功の徴候。処置は、身体検査、神経学的検査または精神医学的評価の結果を含む、客観的または主観的パラメーターによって評価することができる。
特に断りのない限り、技術用語は、従来用法に従って使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, published by Oxford University Press, 1994 (ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Science Ltd., 1994 (ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)に見出すことができる。
上述は、本発明の複数の態様および実施形態について記載する。本特許出願は、本態様および実施形態のあらゆる組合せおよび並べ替えを特に企図する。
本開示は、ここで全般的に記載されているが、次の実施例を参照することによりさらに容易に理解され、実施例は、単に本開示のある特定の態様および実施形態を説明する目的で含まれており、決して本開示の範囲の限定を意図するものではない。
(実施例1)
リピドミクスおよびRNA配列決定によるマトリックス結合小胞(MBV)および細胞外小胞(EV)の識別
マトリックス結合ナノ小胞(MBV)は、ECM生体足場の内在性構成成分として報告された。液相細胞外小胞(EV)は、集中的な研究の対象であったが、MBVに対するその類似性は、サイズおよび形状に限定される。本実施例は、LC-MSに基づくリピドミクスおよびレドックスリピドミクスを利用して、液相EVおよびMBVリン脂質の詳細な比較を行った。小胞内カーゴの包括的RNA配列決定およびバイオインフォマティクス解析と組み合わせて、本実施例は、MBVが、EVの別個かつ特有の亜集団であること、およびECMに基づく生体材料の際立った特色を示す。
本実施例は、EVの液相(すなわち、エキソソーム)およびマトリックス結合形態(すなわち、MBV)の間の類似性および差を同定する。しかし、生体液中に存在するEV、ならびにネイティブ組織ECMおよびECMに基づく生体材料中に存在するMBVが、複数の細胞供給源から分泌される異種性集団を表すことを考慮すると、これらの推定EV集団の間の直接比較in vivo解析は問題がある。体液または組織由来小胞を使用することの代替として、培養細胞によってin vitroで産生されたECMおよび馴化培地を単離することができる(Fitzpatrick et al., Biomater Sci., 3, 12-24 (2015))。このアプローチは、単一の細胞型供給源の使用(これにより、小胞起源に関するいかなる疑いも取り除く);液相または固相区画のいずれかから小胞を選択的に収集する能力;ならびに細胞培養環境を制御する、よって、小胞組成およびカーゴも制御する能力等、いくつかの利点を提供する。
材料および方法
in vitro細胞由来ECMの調製:ヒト骨髄幹細胞(BMSC)、ヒト脂肪幹細胞(ASC)およびヒト臍帯幹細胞(UCSC)ECMプレートは、StemBioSys(San Antonio、Texas)によって提供され、発表されたプロトコール(Lai et al., Stem cells and development 19, 1095-1107 (2010))に従って調製された。簡潔に説明すると、ヒトBMSC、ヒトASCまたはヒトUCSCを、3,500個の細胞/cm2の細胞密度で、ヒトフィブロネクチンでコーティングされた(37℃で1時間)75cm2細胞培養フラスコに播種し、20%ウシ胎仔血清(FBS)および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したα-MEM培地において14日間培養した。培地は、初期播種の翌日に、次いで3日毎に新しくした。7日目に、アスコルビン酸2-ホスフェート(Sigma Aldrich)を50μMの最終濃度で培地に添加した。14日目に、5分間にわたり20mM水酸化アンモニウムにおける0.5%Tritonを使用してプレートを脱細胞化し、カルシウムおよびマグネシウムの両方を含有するハンクス平衡塩類溶液(HBSS+/+)で2回、超高純度H2Oで1回リンスした。マウスNIH 3T3線維芽細胞を、3,500個の細胞/cm2の細胞密度で75cm2細胞培養フラスコに播種し、エキソソーム枯渇FBS(G. V. Shelke, et al, Journal of extracellular vesicles 3, 24783 (2014))、1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび50μMの最終濃度のアスコルビン酸2-ホスフェート(Sigma Aldrich)を補充したDMEM培地において7日間培養した。7日目に、培養された3T3線維芽細胞由来の上清を収集し、プレーティングされた培養物をPBSで3回洗浄し、5分間にわたり20mM水酸化アンモニウムにおける0.5%Tritonを使用して脱細胞化し、次いで、超高純度H2Oで3回リンスした。
MBVおよび液相EVの単離:MBVを単離した(L. Huleihel et al., Science advances 2, e1600502 (2016))。簡潔に説明すると、脱細胞化したECMを、1時間37℃で緩衝液(50mM Tris pH7.5、5mM CaCl2、150mM NaCl)における100ng/mlリベラーゼ(Liberase)DL(Roche)で酵素消化した。液相EVを含有する細胞培養上清、およびMBVを含有する消化されたECMを、500g(10分間)、2500g(20分間)および10,000g(30分間)における分画遠心分離に付し、上清を0.22μmフィルター(Millipore)に通した。次に、遊離したMBVまたは液相EVを含有する清澄化された上清を100,000×g(Beckman Coulter Optima L-90K超遠心分離機)で4℃にて70分間遠心分離して、小胞をペレットにした。次に、小胞ペレットを1×PBSにおいて洗浄および再懸濁し、さらなる使用まで-20℃で貯蔵した。
膀胱マトリックス(UBM)の調製:市場出荷体重の(market-weight)ブタ(Tissue Source;LLC、Lafayette、IN)からUBMを調製した(L. Huleihel et al., Science advances 2, e1600502 (2016))。簡潔に説明すると、機械的層間剥離によって漿膜、外筋層、粘膜下組織および粘膜筋板を除去し、脱イオン水による洗浄によって粘膜の尿路上皮細胞を基底膜から解離した。残っている基底膜および粘膜固有層(まとめてUBMと称される)を、2時間300rpmでの4%エタノールを有する0.1%過酢酸における撹拌によって脱細胞化し、続いて、リン酸緩衝食塩水(PBS)およびタイプ(type)1水で洗浄した。次に、UBMを凍結乾燥し、#60メッシュスクリーンを備えるWiley Millを使用して製粉した。
走査型電子顕微鏡(SEM):冷2.5%グルタルアルデヒドにおいてUBMを24時間固定し、続いて、1×PBSにおいて3回の30分間洗浄を行った。次に、段階的アルコール系列(30%、50%、70%、90%、100%エタノール)において洗浄毎に30分間にわたり試料を脱水し、次いで、一晩4℃で100%エタノールに置いた。100%エタノールにおいてさらに3回、各回30分間にわたり試料を洗浄し、移行媒体(transitional medium)としての二酸化炭素を用いるLeica EM CPD030 Critical Point Dryer(Leica Microsystems、Buffalo Grove、IL、USA)を使用して臨界点乾燥した。次に、Sputter Coater 108 Auto(Cressington Scientific Instruments、UK)を使用して、4.5nm厚さ(thick)の金/パラジウム合金コーティングで試料をスパッタコーティングし、JEOL JSM6330f走査型電子顕微鏡(JEOL、Peabody、MA、USA)で撮像した。
透過型電子顕微鏡(TEM):炭素コーティングされたグリッド上にロードされ、4%パラホルムアルデヒドにおいて固定されたMBVまたは液相EVにおいて、TEMイメージングを行った(L. Huleihel et al., Science advances 2, e1600502 (2016))。高分解能Advanced Microscopy Techniquesデジタルカメラを備えるJEOL 1210 TEMにより80kVでグリッドを撮像した。JEOL TEMソフトウェアを使用して、代表的画像からMBVのサイズを決定した。
ナノ粒子追跡解析(NTA):高速ビデオキャプチャーおよび粒子追跡ソフトウェアを備えたNanosight(NS300)機器を使用して、液相EVおよびMBVの粒子サイズおよび濃度を計算した。粒子不含水を使用して1000μlの最終体積となるように試料を1:500希釈した。シリンジポンプを使用して、システムへと試料を分注した。各試料45秒間の3つのキャプチャーから測定を行った。ビデオ加工および粒子計算のため、検出閾値を4に調整した。データは、評価されている試料のそれぞれについて濃度 対 粒子サイズとして提示される。
RNA単離:製造業者の使用説明書に従ってRNeasyミニキット(Qiagen)を使用して、3T3細胞、液相EVおよびMBVから全RNAを単離した。RNA単離の前に、液相EVおよびMBV試料を、RNase A(10μg/ml)で37℃にて30分間処置して、いかなる混入RNAも分解した。NanoDrop分光光度計を使用してRNA含量を決定し、その品質をAgilent Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies)によって決定した。
RNA配列決定およびバイオインフォマティクス解析:製造業者の使用説明書に従って、100ngの各試料およびQIASEQ(商標)miRNAライブラリーキット(Qiagen)を用いてmiRNAライブラリー調製を開始した。簡潔に説明すると、成熟miRNAを、その3’および5’末端においてアダプターにライゲーションした。次に、特有の分子指標(UMI)を有する逆転写(RT)プライマーを使用して、ライゲーションされたmiRNAをcDNAへと逆転写した。次に、cDNAを浄化して、アダプタープライマーを除去し、続いて、ユニバーサルフォワードプライマー、および試料指標を割り当てる48種のリバースプライマーのうち1種により、ライブラリーの増幅を行った。Agilent RNA ScreenTape Systemを使用して、プレ配列決定品質管理を行った。2.5pMのローディング濃度により、NextSeq 500機器において次世代配列決定を行った。Genevia Technologies(Tampere、Finland)によってバイオインフォマティクス解析を行った。FastQCソフトウェアを使用して、配列決定読み取りデータの品質を点検した。デフォルト設定を用いて、全試料において、TrimGalore![バージョン0.4.5;]を使用してアダプター配列を除去した。全読み取りデータは、fastx_trimmerソフトウェア(FASTX Toolkit、Hannon Labによる;バージョン0.0.14)を使用して、マイクロRNAの典型的なサイズである21塩基へと短縮された。
次に、各試料の読み取りデータを、対応する参照ゲノム(hg38、GRCm38)に対して整列した。ソフトウェアbowtie[バージョン1.2.2]およびmiRDeep2[バージョン0.0.8]を使用して、試料にわたるmiRNA計数の表を作成した。このプロセスにおいて、試験に関与する種毎の前駆体miRNAおよび成熟miRNA配列をmiRbaseから取得した。それらに関連する全ての前駆体miRNAの中央値を取得することにより、成熟miRNAの計数を得た。DESeq2を使用して、全試料の成熟miRNAの計数を正規化した。さらなる解析前にデータ品質を確実にするために、マウスおよびヒト試料について別々に、主成分解析(PCA)を行い、ggplot2を使用して結果を可視化した。
成熟miRNAデータの正規化および試料群間の統計的検定をDESeq2により行った。Benjamini-Hochberg方法を使用して多重検定のためにP値を補正した。調整されたp値<0.05および絶対的なlog2の倍数変化>1を有するmiRNAは、有意に差次的に発現されたと考えられた。実験により検査されたmiRNA-標的相互作用のmirTARbaseデータベースを使用して、差次的に発現されたmiRNAの表は、それらの標的およびそれらの信頼度でアノテートされた。RパッケージmiRNAtapを使用して、差次的に発現されたmiRNAはまた、予測される標的によりアノテートされた。miRNAtapは、5種の異なるデータベース(PicTar、DIANA、TargetScan、miRanda、miRDB)からmiRNA標的予測を集約し、全体的なmiRNA標的スコアを計算する。アノテーションに含まれるべき潜在的miRNA標的相互作用に要求されるデータベース供給源の最小量は、3であった。
Ingenuity経路解析(IPA):差次的に発現された(DE)miRNAの機能解析のために、Ingenuity経路解析ソフトウェア(バージョン01-14)を使用した。IPAコア解析を使用して、miRNA標的を同定した。実験により観察される知見にフィルターを設定して、miRNAによって影響された、有意に濃縮された分子および細胞機能ならびに生理系発生機能に関する情報を得た。
qPCR検証:TAQMAN(登録商標)Advanced miRNAアッセイプロトコール(Applied Biosystems)を使用して、逆転写(RT)および定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を行った。簡潔に説明すると、TAQMAN(登録商標)Advanced miRNA cDNA合成キット(Applied Biosystems、Cat No.A28007)と共に10ngの全RNAを使用して、miRNAに3’-ポリ(A)テイルを合成して加えた。ポリ(A)テイルを認識するユニバーサルRTプライマーを使用して、RT反応においてcDNAを合成し、続いて、miR-AMPフォワードおよびリバースユニバーサルプライマーを使用してmiR-AMPステップを行って、cDNA分子の数を増加させた。TAQMAN(登録商標)Fast Advancedマスターミックス(Applied Biosystems、Cat No.4444556)、ならびにmmu-miR-163-5p、mmu-miR-27a-5p、mmu-miR-92a-1-5p、mmu-miR-451a、mmu-miR-93-5pおよびmmu-miR-99b-5pを認識する特異的TAQMAN(登録商標)Advanced miRNAアッセイ(Applied Biosystems、Cat No.A25576)を使用して、QUANTSTUDIO(商標)システム機械においてqPCRを行った。参照として液相EVを使用して、特異的標的のそれぞれについて、MBV試料における倍数変化の発現が計算された。
イムノブロットおよび銀染色アッセイ:3T3線維芽細胞の3種の別々の培養物に由来する液相EVおよびMBVをそれぞれプールし、ナノトラッキング(nanotracking)粒子解析によって定量化した。イムノブロットおよび銀染色解析の両方について、液相EVおよびMBV試料の両方の同数の小胞を、ゲルにロードした。21×1011個のMBVまたは液相EVを、5%βメルカプトエタノール(Sigma-Aldrich)を含有する2×レムリ(Laemmli)緩衝液(R&D Systems)と混合し、4~20%勾配SDS-PAGE(Bio-Rad)において分離し、次いで、PVDF膜に転写した。膜を、次の一次抗体と共に一晩インキュベートした:ウサギ抗CD63、ウサギ抗CD81、ウサギ抗CD9およびウサギ抗Hsp70、1:1000希釈(System Biosciences)。1:5,000希釈のヤギ抗ウサギ二次抗体(System Biosciences)と共にインキュベートされる前および後に各15分間で3回、膜を洗浄した。洗浄された膜を化学発光基質(Bio-Rad)に曝露し、次いで、ChemiDoc Touch機器(Bio-Rad)を使用して可視化した。製造業者の使用説明書に従ってSilver Stain Plusキット(Bio-Rad)を使用してゲルの銀染色を行い、ChemiDoc Touch機器(Bio-Rad)を使用して可視化した。
リン脂質のLC/MS解析:Folchの手順(J. Folch, et al, J biol Chem 226, 497-509 (1957))によって、3T3細胞、エキソソームおよびMBVから脂質を抽出した。Orbitrap(商標)Fusion(商標)Lumos(商標)質量分析計(ThermoFisher)においてリン脂質およびその酸素化産物のMS解析を行った(Y. Y. Tyurina et al., ACS nano 5, 7342-7353 (2011))。簡潔に説明すると、DIONEX ULTIMATE 3000 HPLCシステムにおいて、0.2ml/分の流速の順相カラム(Luna 3μmシリカ(2)100Å 150×2.0mm、(Phenomenex))においてリン脂質を分離した。カラムを35℃で維持した。10mM酢酸アンモニウムを含有する勾配溶媒(AおよびB)を使用して解析を行った。溶媒Aは、プロパノール:ヘキサン:水(285:215:5、v/v/v)を含有し、溶媒Bは、プロパノール:ヘキサン:水(285:215:40、v/v/v)を含有した。全ての溶媒がLC/MSグレードであった。10%~32%Bの直線勾配による0~23分目;32~65%Bの直線勾配を使用した23~32分目;65~100%Bの直線勾配による32~35分目;100%Bにおける35~62分目の保持;100%~10%Bの直線勾配による62~64分目、続いて10%Bにおける64~80分目の平衡化で、カラムを溶出した。負イオンモードでスペクトルを獲得した。内部標準として重水素化リン脂質を使用した(Avanti Polar Lipids)。試料毎に3回の技術的反復を実行して、再現性を評価した。所内で作成された解析ワークフローおよび非酸化/酸化リン脂質データベースを用いて、ソフトウェアパッケージCompound DISCOVERER(商標)(ThermoFisher)を使用して、LC/MSデータの解析を行った。保持時間によって脂質をさらにフィルタリングし、断片化質量スペクトルによって確認した。
遊離脂肪酸およびその酸化産物のLC/MS解析:Q-Exactiveハイブリッド四重極-オービトラップ(orbitrap)質量分析計(ThermoFisher Scientific、San Jose、CA)にオンラインで繋がれたDIONEX ULTIMATE(商標)3000 HPLCシステム使用したLC/MSによって、遊離脂肪酸を解析した(Y. Y. Tyurina et al., Nature chemistry 6, 542 (2014).)。簡潔に説明すると、溶媒の勾配(A:メタノール(20%)/水(80%)(v/v)およびB:メタノール(90%)/水(10%)(v/v)、両者共に、5mM酢酸アンモニウムを含有)を使用したC18カラム(Accliam PepMap RSLC、300μm 15cm、Thermo Scientific)によって、脂肪酸およびその酸化的誘導体を分離した。70分間にわたる30%溶媒B~95%溶媒Bの直線勾配、70~80分目の95%Bにおける保持、続いて、83分目までに初期条件に戻る、および追加的な7分間にわたる再平衡化を使用して、12μL/分の流速でカラムを溶出した。負イオンモードでスペクトルを獲得した。Xcaliburソフトウェアを使用して、解析データを獲得および解析した。試料毎に最小で3回の技術的反復を実行して、再現性を増加させた。
結果
液相EVおよびマトリックス結合ナノ小胞の単離:走査型電子顕微鏡検査(SEM)を行って、ブタ膀胱マトリックス(UBM)に由来するECM生体足場内に包埋されたMBVの高分解能、高拡大率イメージングを提供した。SEM画像は、コラーゲン線維全体にわたり分散したおよそ100nmの直径の個別の球を明らかにした(図1A)。固体ECM基材中に沈着したMBVが、液相へと分泌されるEVとは別の、細胞外小胞の特有のクラスであるか検査するために、液相または固相細胞外区画からの小胞の選択的な収集を可能にするin vitro 3T3線維芽細胞培養モデルを使用した(図1B)。位相差顕微鏡、ならびにH&EおよびDAPI染色された切片の代表的な画像は、細胞培養プレートの脱細胞化後に残渣細胞も無傷核も目に見えないことを示した(図1C)。細胞培養上清から収集された液相EVおよび脱細胞化したECMから単離されたMBVのTEMイメージング(図1D)は、これらの2種の小胞集団が、同様の形態を共有することを示した。さらに、ナノ粒子追跡解析(NTA)分布プロットは、液相EVおよびMBVの両方の同様の小胞サイズを示し、大部分の小胞は、直径<200nmを有した(図1E)。
MBVが、エキソソームに一般的に起因するマーカーを含有するか決定するために、CD63、CD81、CD9およびHsp70に関してイムノブロット解析を行った(J. Loetvall et al. (Taylor & Francis, 2014))。結果は、液相EVとは対照的に、MBVが、CD63、CD81、CD9の顕著な減少を示したことを示した。MBVは、イムノブロットアッセイにおいて辛うじて検出可能であり、EVにおいて発現されるレベルと比べて顕著に減少した、CD9およびCD81のレベルを発現した。MBVはまた、EVにおいて観察されるものよりも有意に低いCD63発現を呈した(図1F)。換言すると、液相EV(すなわち、エキソソーム)は、MBVと比較して、CD63、CD81、CD9の発現されるレベルが濃縮されている。さらに、電気泳動により分離されたタンパク質の銀染色は、MBVが、液相EVとは明らかに異なるタンパク質カーゴを含有したことを示し(図1G)、MBVが、ナノ小胞の特有の亜集団であり得ることを示唆する。
miRNAは、3T3線維芽細胞に由来する液相EVおよびMBV中に選択的にパッケージされる:包括的次世代RNA-配列決定(RNA-seq)を用いて、MBVおよび液相EVにおいて、これらの小胞が由来する3T3線維芽細胞親細胞と比べて差次的に発現されたmiRNAの目録を作った。バイオアナライザー解析は、液相EVおよびMBVから単離された全RNAにおける、18Sおよび28SリボソームRNAの非存在、ならびに小型のRNA分子(<200nt)の濃縮を明らかにした。しかし、液相EVにおける100~200ntの間の小型のRNA分子の顕著な濃縮により、液相EVの小型のRNAサイズ分布は、MBVよりもはるかに広かった(図2A)。解析は、親細胞RNA、液相EVおよびMBV単離物(群毎にn=3)から生成されたmiRNAライブラリーの次世代配列決定を行うことにより、差次的miRNAシグネチャーに焦点を置いた。主成分解析(PCA)は、それぞれの群内で、反復miRNAプロファイルが、互いに近くにクラスター形成したことを示した(図2B)。
親細胞および液相EVおよびMBV単離物の間に、miRNA含量の広範な差が観察された。全体的に見て、28種の(50.91%)miRNAが、少なくとも2倍、液相EVと比較してMBVにおいて差次的に発現されることが見出された(図2C)。その上、それぞれの液相EVまたはMBVおよび親細胞miRNAプロファイルは、明らかに別個のものであった(図2B、図2C)。miRNA配列決定の結果を検証するために、RT-qPCRを行って、3T3線維芽細胞から単離された液相EVと比較して、MBVにおいて、3種の上方調節されたmiRNA(miR-163-5p、miR-27a-5p、miR-92a-1-5p)および3種の下方調節されたmiRNA(miR-451a、miR-93b-5p、miR-99b-5p)を検出した(図2D)。結果は、液相EVと比較して、MBVにおいて、miR-163-5p、miR-27a-5pおよびmiR-92a-1-5pのレベルが上方調節され、miR-451a、miR-93b-5pおよびmiR-99b-5pが下方調節されたことを示し、これにより、miRNA配列決定データの結果を確証する。液相EVと比較してMBVにおいて差次的に濃縮されたmiRNAのIngenuity経路解析(IPA)は、臓器および系の発生および機能との強い関連を示した。対照的に、MBVと比較して液相EVにおいて差次的に濃縮されたmiRNAは、細胞の成長、発生、増殖および形態に関与する経路に関連した(図2E)。
MBV miRNA含量は、細胞起源に特有である:3T3線維芽細胞モデルによる結果は、細胞培養上清中に分泌された液相EVと比較した、ECMに沈着したMBV内のmiRNAの選択的パッケージングを示した。MBV miRNAカーゴが、細胞起源に特有であるか決定するために、異なるヒトドナーから単離された骨髄由来幹細胞(BMSC)、脂肪幹細胞(ASC)および臍帯幹細胞(UCSC)によってin vitroで産生されたECMから単離されたMBVのmiRNA組成を、次世代配列決定方法により特徴付けおよび比較した。脱細胞化したBMSC細胞培養プレートの代表的位相差顕微鏡画像は、細胞の非存在および分枝状の細線維構造の存在を示した(図3A)。脱細胞化したBMSC細胞培養プレート由来の単離されたMBVのTEMイメージングは、細胞外小胞に起因する特徴的な形態を示した(図3B)。さらに、ナノ粒子追跡解析は、BMSC、ASCおよびUCSC由来MBVの間の同様の分布プロットを示し、大部分の小胞は、直径<200nmを有する(図3C~図3E)。これらの試料からの全RNAの単離後に、バイオアナライザー解析は、リボソームRNAの非存在および小型のRNA分子(<200nt)の濃縮を示した(図3F)。試料(BMSC、n=3名のヒトドナー;ASC、n=3名のヒトドナー;UCSC、n=3名のヒトドナー)からmiRNAライブラリーを生成し、miRNA配列決定に付した。主成分解析は、試料が、主に、それらが由来する細胞型によってクラスター形成したことを示した(図3G)。MBV試料の生成に使用された細胞型毎に3名の別々のヒトドナーの使用にもかかわらず、主成分解析は、それぞれの群内のmiRNAプロファイルにおいて高い程度の均一性を示した(図3G)。加えて、ボルケーノ(volcano)プロットは、BMSC-ASCおよびUCSC-ASCの間よりも少ないmiRNAが、BMSCおよびUCSC由来MBVの間で差次的に発現されることが見出されたことを示した。
液相EV、MBVおよび親細胞のリン脂質プロファイル:いくつかの試験が、EVの脂質組成を特徴付けた(T. Skotland, et al, Journal of lipid research 60, 9-18 (2019))。しかし、MBVのリン脂質組成に関するデータは存在しない。したがって、LC-MSに基づく網羅的リピドミクスおよびレドックスリピドミクス解析を行って、それらの3T3線維芽細胞親細胞と比較して、MBVおよび液相EVのリン脂質組成を比較により評価した(図4A、図4D)。試料の3つの型にわたり、9種の主要なリン脂質クラスが検出され、検出された分子種の総数536が、次の主要なクラスの間に分布された:ビス-モノアシルグリセロホスフェート(BMP) - 59種、ホスファチジルグリセロール(PG) - 37種、カルジオリピン(CL) - 117種、ホスファチジルイノシトール(PI) - 33種、ホスファチジルエタノールアミン(PE) - 102種、ホスファチジルセリン(PS) - 45種、ホスファチジン酸(PA) - 26種、ホスファチジルコリン(PC) - 107種およびスフィンゴミエリン(SM) - 10種(図4D)。その多価不飽和脂肪酸(PUFA)残基含量の観点から、PE、PI、PCおよびPSは、4~7個の二重結合を含有するこれらの多価不飽和PL種の主要リザーバーを表した(図4B)。これらのPUFAリン脂質は、シグナル伝達脂質メディエーターの可能性のある前駆体を表す。メディエーターの形成は、5-リポキシゲナーゼまたは15-リポキシゲナーゼによるPUFAリン脂質の触媒作用による酸素化により起こって、酸素化リン脂質を生じ、これはその後、特殊化ホスホリパーゼA2の1種によって加水分解されて、酸素化脂肪酸(脂質メディエーター)を放出する(Z. Zhao et al., Endocrinology 151, 3038-3048 (2010);Y. Y. Tyurina et al., Journal of leukocyte biology, (2019))。加えて、酸化PUFAリン脂質は、アポトーシス、フェロトーシスおよび炎症を含む、多くの細胞内プロセスおよび細胞応答を協調させるシグナル伝達分子として作用する(Y. Y. Tyurina et al., Antioxidants & redox signaling 29, 1333-1358 (2018).)。これらのリン脂質の分子種分化およびそれらの相対的含量における有意差が、液相EVおよびMBVの間に観察された(図4E)。SMを明らかな例外として、アラキドン酸(AA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)残基は、全リン脂質において検出された(図4E)。リン脂質の多くについて、量は、液相EVおよび親細胞に対してMBVにおいて有意により高く(図4E)、このことは、PUFA-リン脂質の豊富なリザーバーとしてMBVを同定する。PUFAリン脂質をPLA
2によって加水分解し、遊離PUFAおよびLPLの放出をもたらすことができる(V. D. Mouchlis, et al, Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Molecular and Cell Biology of Lipids 1864, 766-771 (2019))。前者は、2種の主要オキシゲナーゼ、COXおよびLOXによってさらに利用されて、炎症促進性または抗炎症性能力を有する脂質メディエーターを産生することができる(Y. Y. Tyurina et al., Redox (phospho) lipidomics of signaling in inflammation and programmed cell death. Journal of leukocyte biology, (2019);C. A. Rouzer, et al., Chemical reviews 103, 2239-2304 (2003).;H. Kuhn, et al., Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Molecular and Cell Biology of Lipids 1851, 308-330 (2015))。この知見は、細胞/組織文脈に依存して、これらの脂質メディエーターの合成のための潜在的な前駆体としてMBVを認定する(Y. Y. Tyurina et al., Journal of leukocyte biology, (2019).)。定量的に、MBVは、PI、PS、PGおよびBMPが濃縮された(図4Cおよび表2)。図4Cに示すリン脂質含量は、表1にも提示されている。
表1. 総リン脂質のパーセントとしてのリン脂質含量
対照的に、PE、PAおよびSMの含量は、液相EVにおいてより高かった。PCは、細胞および液相EVにおける優勢なリン脂質であった。特有のミトコンドリアリン脂質、カルジオリピン(CL)の含量は、MBVおよび親細胞と比較して、液相EVにおいて有意により低かった(図4F)。CLは、ミトコンドリア内膜において優勢に局在化した特有のミトコンドリア特異的リン脂質であるため(M. Schlame, et al., Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Molecular and Cell Biology of Lipids 1862, 3-7 (2017))、この知見は、細胞のミトコンドリア区画とMBV新生の可能なリンクを表す。プラスマローゲンリン脂質(またはエーテルリン脂質)は、ジアシル-リン脂質(またはエステル-リン脂質)とは構造的に異なる(M. Schlame, et al., Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Molecular and Cell Biology of Lipids 1862, 3-7 (2017))。プラスマローゲンにおいて、ビニルエーテル結合は、sn-1飽和または一不飽和鎖を、リン脂質のグリセロール骨格に連結している(N. E. Braverman, et al., Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Molecular Basis of Disease 1822, 1442-1452 (2012))。エーテル脂質、PEおよびPCプラスマローゲンが、膜融合を容易にし(P. E. Glaser, et al., Biochemistry 33, 5805-5812 (1994))、細胞外小胞の膜の厚さを増加させることができ(X. Han, et al., Biochemistry 29, 4992-4996 (1990);T. Rog, et al., Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Biomembranes 1858, 97-103 (2016))、したがって、細胞によるナノ小胞取込みにおいて役割を果たすことができることが示された。詳細なMS/MS解析は、液相EVおよびMBVの両方における高レベルのエーテルPEおよびPC種(プラスマローゲン)を示した。これらの種は、それぞれPE-16:0p/20:4、PE-16:1p/20:4、PE-18:1p/20:4、PE-18:1p/22:6およびPC-16:0p/20:4、PC-18:0p/20:4、PC-20:0p/20:4、PC-18:0p/22:6として同定された(図4E)。
表2. MBV、エキソソームおよび親3T3細胞におけるカルジオリピン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロールおよびビス-モノグリセロホスフェートの含量。データは、リン脂質1nmolあたりのpmol、平均±s.d.として提示されている。*細胞に対してp<0.05、#液相EVに対してp<0.05。
液相EV、MBVおよび親細胞のリゾリン脂質プロファイル:ホスホリパーゼAによって創出されるリン脂質の加水分解性代謝物である、リゾリン脂質(LPL)は、とりわけマクロファージ活性化(R. Ray, et al., Blood 129, 1177-1183 (2017))、炎症および線維症(A. M. Tager et al., Nature medicine 14, 45 (2008))組織修復およびリモデリング(K. Masuda, et al., The FEBS journal 280, 6600-6612 (2013))ならびに創傷治癒(K. M. Hines et al., Analytical chemistry 85, 3651-3659 (2013))を含む種々の生理学的応答をモジュレートする生理活性シグナル伝達分子である。LC-MS解析は、MBVおよび液相EVにおけるそれらの総含量は、親細胞と比較して1.7~1.8倍大きいものの、LPLが、試料の3つの型全てに存在することを示した。より具体的には、LPLの7種のクラスが同定された:リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジルセリン(LPS)、リゾホスホイノシトール(LPI)、リゾホスファチジン酸(LPA)、リゾホスファチジルグリセロール(LPG)およびモノリゾカルジオリピン(mCL)(図5A)。MBVは、親細胞と比較して、LPE、LPAおよびLPGが濃縮されていた(図5B)。LPIおよびmCLの含量は、細胞に対してMBVおよび液相EVにおいて有意により低かった。LPAおよびLPGの含量は、EVと比較して、MBVにおいて有意により高かった。MBVにおけるmLCLおよびLPIのレベルは、EVよりも3および6.3倍高かったが、細胞と比較して3.3分の1および1.9分の1であった(図5C、図5D)。MBVおよびEVの間にLPE、LPCおよびLPSの含量の有意な変化は見出されなかった。16:0、16:1、18:0および18:1を含有する酸化できない分子種は、検出される全LPL種に見出される主要な型であった(図5C)。これらの知見は、マクロファージ分化、組織修復、リモデリングおよび創傷治癒に重要である生理活性分子であるリゾリン脂質の高レベルが、MBVの特徴的な特色であることを示唆する。
MBVおよび液相EVの遊離および酸素化脂肪酸の解析:MBVへのマウス骨髄由来マクロファージの曝露は、構築的マクロファージ表現型に関連する、M2様マーカー、Fizz1およびArg1の発現をもたらすため(L. Huleihel et al., Science advances 2, e1600502 (2016))、MBV 対 液相EVおよび親細胞におけるPUFAおよびその酸素化産物のLC/MS解析を行った。MBVは、アラキドン酸(20:4、AA)、ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)脂肪酸が強く濃縮されていた(図6A)。換言すると、MBVは、それぞれの酵素機構 - COXおよびLOXによる、シグナル伝達脂質メディエーターの生合成のための基質のリザーバーを表す。液相EVにおいて、主要なPUFAは、リノール酸(18:2)およびリノレン酸(18:3)であった(図6A)。
細胞外小胞は、AA由来脂質メディエーターの生合成のための酵素の仕組みを含有するため(E. Boilard, Journal of lipid research 59, 2037-2046 (2018))、酸素化脂肪酸のレドックスリピドミクス解析を行った。12-HETE、15-HETE、リポキシンA4等、AA代謝物のより高いレベルが、MBVに対して液相EVにおいて見出された(図6B)。組織修復の文脈において、リポキシンA4(LXA4)およびD-シリーズレゾルビンD1(RvD1)(アラキドン酸(20:4、AA)およびドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)から12/15-LOXによって産生)は、M2様表現型へとマクロファージ活性化を刺激する(C. N. Serhan, The American journal of pathology 177, 1576-1591 (2010))。最後に、MBVおよび液相EVにおける酸素化AAおよびDHAを含有する酸化リン脂質が特徴付けられた。酸素化種のレベルは、MBVにおいて、液相EVよりも高く、PS、PIおよびPCは、一酸素化種によって表された。BMP、PGおよびCLは、単独でおよび二重に酸素化されたAAおよびDHA残基を含有した;三重に酸素化されたPUFAは、PEのみにおいて見出された(図6C)。全体的に見て、リピドミクスおよび酸化的リピドミクス結果は、遊離AA、DHAおよびDPAならびにPUFA含有リン脂質、ならびにそれらの酸化的に修飾された分子種のレベルが、液相EVにおけるレベルと比較して、MBVにおいてより高いことを示す。MBVではPUFA非酸素化および酸素化リン脂質が濃縮されているが、液相EVでは濃縮されておらず、したがって、MBVは、細胞外環境の炎症促進性/抗炎症性の文脈に依存して、異なるホスホリパーゼによって活性化される脂質メディエーターの潜在的な供給源を表す、酸化されたおよび酸化できるエステル化PL種の潜在的なリザーバーを表す。
上述のLC-MSに基づくリピドミクスおよびレドックスリピドミクス試験に着手して、液相EVおよびMBVリン脂質の詳細な比較を行った。小胞内カーゴの包括的RNA配列決定およびバイオインフォマティクス解析と組み合わせて、これらのデータは、MBVが、EVの別個かつ特有の亜集団であり、液相EV(すなわち、エキソソーム)とは別個のものであり、小胞のサイズおよび形状に限定される類似性を有するECMに基づく生体材料の際立った特色であることを反映する。
本明細書において、小胞集団は、液相細胞培養培地または固相ECM基材のいずれかへのその区画化に基づき分画された。組成の観点から、3T3線維芽細胞のECMから単離されたMBVは、液相EVとおよび親細胞と比較して、差次的なmiRNAおよび脂質シグネチャーを含有した。これらのデータは、小胞新生の際に分子選別が起こって、異なる細胞外の場所に運命付けられた小胞にmiRNAおよび脂質を特異的に分布させるというシナリオを示唆する。さらに、液体界面および固体基材の間を識別し、別個の脂質シグネチャーを有する適合した小胞亜集団をこれらの異種の区画へと選択的に沈着させる細胞の能力は、液相へと分泌されるEVの新生とは異なるかつ独立したMBVの膜新生の証拠を提供する。MBVが、細胞外マトリックスの高密度細線維ネットワーク内に組み込まれることが示されたことを考慮して、MBVは、組織発生および恒常性の際のマトリックス沈着の際に、ならびに傷害後の動的マトリックスリモデリングの際に、ECM構成成分と協力して細胞によって分泌されるはずである。さらに、ECMが、組織特異的3Dアーキテクチャに配置されたタンパク質、プロテオグリカンおよびグリコサミノグリカンの複合混合物であることを考慮すると(Hussey et al., Nature Review Materials, 3(7):159-173, 2018)、MBVカーゴおよび脂質含量も、組織および細胞起源に特有のものであるはずである。解剖学的に別個の供給源組織に由来するECM生体足場から単離されたMBVは、差次的なmiRNAシグネチャーを有する(Huleihel et al., Science Advances, 2, e1600502, 2016)。本試験の結果は、異なるヒトドナーに由来する骨髄由来幹細胞、脂肪幹細胞および臍帯幹細胞によってin vitroで産生されたECMから単離されたMBVが、細胞供給源に特異的な、特徴的なmiRNAシグネチャーを含有したことをさらに示す。加えて、BMSC-ASCおよびUCSC-ASCの間よりも少ないmiRNAが、BMSCおよびUCSC由来MBVの間で差次的に発現されることが見出され、これは、脂肪幹細胞の組織特異的分化能に起因し得る知見である(L. Xu et al., Stem cell research & therapy 8, 275 (2017))。これらの知見は、ドナーの固有の可変性によって有意に影響されなかった、MBV miRNAプロファイルの細胞特異的特色をさらに強調する。しかし、3名のヒトドナーが全員男性であったことを考慮すると、幹細胞試料由来のMBVのmiRNAカーゴにおける性別関連の変動を決定するためのさらなる試験が必要とされる。重要なことに、主成分解析は、異なるヒトドナーから単離された特異的な細胞型によって沈着されたMBV由来のmiRNAカーゴの高い程度のバッチ間の一貫性を示し、このことは、研究ツールまたは臨床治療薬としてのMBVおよびECM生体材料製造を支持する。本試験は、マトリックスへ組み込まれたMBVが、EVの特有の亜集団であることを確立する。加えて、MBVは、エキソソームに一般的に起因するタンパク質(例えば、CD63、CD81、CD9)の顕著な減少を示した。
体液中に分泌され、細胞間情報交換に容易に利用できるEVとは対照的に、組織ECM内に包埋されるMBVは、マトリックスに安定に会合し、ECM材料の分解後のみに単離することができる(Huleihel et al., Science advances 2, e1600502 (2016))。MBVを放出するためのマトリックス分解の要件は、消散促進性脂質メディエーターを生成するその能力に関するものを含む、その作用機構を部分的に規定することができる。脱細胞化の後であっても、MBVは、無傷で、ECMに付着されたままであるため、その構成物リン脂質の分子種分化は、斯かるMBV-ECM相互作用を容易にする可能性がある。LC-MSに基づくリピドミクスおよびレドックスリピドミクスアプローチを使用して、MBVリン脂質、リゾリン脂質ならびに酸素化および非酸素化PUFAの分子種分化の詳細な特徴付けを行った。マクロファージ分化、組織修復、リモデリングおよび創傷治癒に重要な生理活性分子であるリゾリン脂質が高レベルであることは、MBVの特徴的な特色である。加えて、融合性脂質として、リゾリン脂質は、細胞内標的への小胞内容物の移動を容易にすることができる。MBVではPUFA非酸素化および酸素化リン脂質が濃縮されているが、液相EVでは濃縮されておらず、したがって、MBVは、酸化されたおよび酸化できるエステル化PL種の潜在的なリザーバーを表す。注目すべきことに、PUFA濃縮MBVは、細胞外環境の炎症促進性/抗炎症性の文脈に依存した異なるホスホリパーゼによって活性化される脂質メディエーターの重要な供給源である。
(実施例2)
プリスタン誘導性関節炎の処置のためのMBVの使用
実施例1に記載されている方法論を使用して、膀胱マトリックスを調製した。
24時間室温でオービタル揺動機(orbital rocker)において、緩衝液(50mM Tris pH7.5、5mM CaCl2、150mM NaCl)におけるリベラーゼTL(高度に精製されたコラゲナーゼIおよびコラゲナーゼII)による酵素消化によって、研究室で産生されたブタUBMからMBVを単離した。次に、消化されたECMを、10,000×gで30分間の遠心分離に付して、ECMデブリを除去した。次に、遊離したMBVを含有する清澄化された上清を、100,000×g(Beckman Coulter Optima L-90K超遠心分離機)で4℃にて2時間遠心分離して、MBVをペレットにした。
本実施例では、炎症性因子(inflammatory agent)プリスタンで処置したマウスモデルにおけるMBVの全身性または局所投与の後に、抗炎症性効果を評価した。ラットにおけるプリスタン誘導性関節炎モデルは、関節リウマチを試験するための臨床的に関連する動物モデルとして確立された(Tuncel et al. PLoS One. 2016; 11(5):e0155936)。プリスタン誘導性関節炎は、試験0日目に、基部に対して1cm遠位で、尾の背側における300μLプリスタン(2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン)の皮内注射によって、8週齢、雌のスプラーグドーリーラットにおいて誘導された。対照動物は、0日目にプリスタンの皮内注射を受けなかった。300μLプリスタンの第2の用量を、4日目に、背側尾基部に対しておよそ1cm遠位に、皮内投与した。プリスタンを受けている動物は、ケージに一緒に収容した。プリスタンを受けている動物を、次の実験群へとランダム化した:プリスタンのみ、メトトレキセート、関節周囲MBVおよび静脈内MBV。関節周囲および静脈内MBV投与経路の描写を図7に示す。
動物毎に、7、10、14、17、21、28日目に、および100日間のエンドポイントに至るまでその後毎週、関節炎スコアを決定した。それぞれ手掌および足底視点から見られるように、各前肢および後肢の写真を撮った。60ポイント関節炎スコア化判断基準を使用して、関節炎を評価した:炎症した指関節または足指毎に1ポイントを与え、罹患した足首に最大5ポイントを割り当てた(足毎に15ポイント、各ラットに60ポイント)。プリスタンのみとして指定された動物は、7、10、14、17および21日目にいかなる処置も受けなかった。メトトレキセート動物は、7、10、14、17および21日目に腹腔内送達される、1×滅菌PBSにおける0.1mg/kgメトトレキセートを受けた。関節周囲MBV動物は、それぞれ後肢および前肢の足底および手掌表面において送達される、25μLの500μg/mLブタ由来UBM MBVを受けた。静脈内MBV群は、動物の側方尾静脈へと静脈内送達される、100μLの500μg/mL UBM MBVを受けた。各群における4匹の動物を28日間の短期試験に割り当て、4匹の動物を100日間試験に割り当てた。試料サイズは、予め決定されたアルファ0.05およびベータ0.80により、メトトレキセートの以前に発表された効果サイズを使用して決定した。関節炎スコアは、平均+/-平均の標準誤差として表した。7~21日目は、群毎に8のnを表し、次いで、28日目および以降は、群毎に4のnを表す。テューキーの事後補正による分散の二元配置解析を使用して、群における差を解析した。0.05のアルファにより試験前に有意性を決定した。
標的化されたPA(関節周囲)および全身性IV投与の両方による、MBVの投与は、ラットにおける関節炎の重症度を有意に低下させ、ケアの絶対的な標準であるメトトレキセートと同様の有効性を呈した。全ラットが、7日目に0の関節炎スコアを呈したが(図8A)、早くも10日目に、プリスタンのみラットにおいて高い関節炎スコアが観察され、処置を受けている全ラットは、より低い関節炎スコアを呈した(図8B)。驚いたことに、13日目に始まり、MBV処置は、関節炎処置の絶対的な標準であるメトトレキセートと同じほどに効率的であった(図8Cおよび図8D)。21日目までに、MBV処置ラット(IVおよびPA処置の両方)は、メトトレキセート処置ラットよりも低い関節炎スコアを呈した(図8E)。ラット足の撮られた写真は、プリスタンのみおよびメトトレキセートおよびMBV処置ラットにおける紅斑および浮腫の差を実証する(図9A~図9B)。実験の最初の21日間にわたる処置群に及ぶ平均関節炎スコアを図10に示す。MBV投与のPA投与は、プリスタンのみラットと比較して、関節炎スコアの匹敵する低下を呈し、メトトレキセート処置に匹敵する低下した関節炎スコアを呈したが、静脈内投与が、関節炎スコアの低下において、PAおよびメトトレキセートと同じ有効性を有することが予想外に発見された。IV投与は、MBVの効力の希釈をもたらし、よって、炎症した関節に、あるとしても限定的な効果を有することが予測されたが、そのようなことは観察されなかった。驚いたことに、MBV投与のPAおよびIV経路の両方が、プリスタンのみラットと比較して、関節炎スコアの匹敵する低下を呈し、両者共に、メトトレキセート処置に匹敵して関節炎スコアを低下させた。炎症部位における関節周囲注射は有痛性であり、個体における多くの関節が炎症し得るため、MBVの静脈内投与が、PA投与と全く同じように有効であるという予想外の知見は、投与当たり単一の注射のみを要求し(関節当たり複数の注射ではなく)、したがって患者にとってより快適である、侵襲性が低いが等しく有効な治療効果のために、全身性送達経路を使用することができることを示唆する。
予想外なことに、IVおよびPA投与の両方によりMBVを受けているラットにおいて、炎症再発も減少した。実験77日目に至るまで収集されたデータは、炎症の慢性および再燃期における関節炎のための効率的な治療法としてのMBV処置を支持する。図11Aの写真に示す通り、表現型的には、PAまたはIV MBVで処置したラット足は、メトトレキセートで処置したものと等価な紅斑および浮腫を呈する。PAおよびIV MBVは、関節リウマチのためのケアの絶対的な標準であるメトトレキセートと等しい有効性で、炎症の慢性および再燃期におけるプリスタン誘導性関節炎臨床スコア化を低下させる(図11B)。関節リウマチのラットモデル由来の組織の解析は、組織炎症および組織間の減少した間隙をもたらした。MBV処置試料において、メトトレキセート処置により観察されるものに匹敵する間隙の回復および減少した炎症が見られ、生物および組織レベルの両方におけるMBVの有効性を明らかにする。
24日目にマウスから収集された血清試料を使用して、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって炎症促進性サイトカインの解析を評価した。図12に示す通り、プリスタンのみ動物と比較して、関節周囲または静脈内のいずれかで投与されたMBVは、IL-1-ベータ血清レベルを有意に減少させた(図12B)。その上、局所投与されたMBV(すなわち、PA MBV)は、TNFアルファ血清レベルの減少をもたらした(図12A)。これらのデータは、MBVが、免疫系のモジュレーターであることを強く示唆する。
まとめると、これらの実験由来のデータは、全身性または局所のいずれかのMBVの初期処置経過が、MBVの初期処置経過が終わった後に数週間~数ヶ月間にわたり、関節炎症状の緩和において治療効果を有し、これにより、関節リウマチ症状のその後のフレアの重症度または頻度を低下させ、またはさらには、これらを排除し、軽快をもたらすことができることを示唆する。
データは、一般に、炎症性免疫応答をモジュレートするためのMBVの有用性も示唆し、MBVが、炎症促進性サイトカインの産生を下方調節することができることを示す。このことは、サイトカインストーム等の過剰炎症性事象の軽減におけるMBVの有効性を示唆し、これにより、MBVを、肺における過剰炎症から生じるARDS等の状態の処置に有用なものにする。
(実施例3)
イミキモド誘導性乾癬の処置のためのMBVの使用
UBMおよびUBMに由来するMBVは、実施例2(上記参照)に記載されている方法論を使用して調製される。
外用適用されるとマウスにおいて乾癬様状態を誘導することが公知の化合物であるイミキモド(IMQ)を、15日間にわたりマウスの剪毛した背中および右耳介への62.5mgの5%イミキモドクリームの毎日の外用適用によって8週齢雌C57/bl6マウスに投与した。対照動物は、試験全体を通して外用イミキモドを受けず、代わりに、剪毛した背中および右耳介へのワセリンの外用投与を受けた。処置群および治療法パラダイムを、乾癬フレアの予防および既存のフレアの管理へと分けた。予防的治療法を受けている動物は、試験0~16日目の間に処置を受け、管理治療法を受けている動物は、試験7~16日目の間に処置を受けた。処置群は、腹腔内MBVおよびビヒクルのみ対照からなった。腹腔内MBVを受けている動物は、処置予定表によって指定される通り、試験の各日に、109個のブタ由来UBM MBVを受けた。
7日目に、組織試料を収集し、組織学によって評価した。MBVが腹腔内注射によって投与される場合(7日間の処置期間にわたる、109個のMBVの1日用量)、図13に示す通り、乾癬性病変は消散される。
Foxp3発現細胞は、TREG細胞によって直接的に調節されるため、処置がTREG活性に影響を与えたか決定するために、Foxp3 RNAを定量化した。製造業者の使用説明書に従ってトリゾールを使用して、試験部位の組織生検材料からRNAを単離した。NanoDrop分光光度計(NanoDrop)を使用して、RNA含量およびA260/280を決定した。SuperScript III逆転写酵素を使用した第1鎖逆転写によってcDNAを合成した。Power SYBER Green PCRマスターミックス(Applied Biosystems)を使用して、foxp3のためのqPCRを行った。SYBR Greenを使用して行われた全qPCRは、50℃2分間、95℃10分間、ならびに40サイクルの95℃15秒間および60℃1分間で行った。DeltaDeltaCT方法によってqPCRを解析し、Log(倍数変化)は、陰性対照(イミキモドなし+PBSビヒクル)におけるfoxp3発現と比較したものである。Foxp3プライマー(フォワード:5’-TCTCCAGGTTGCTCAAAGTC-3’およびリバース:5’-GCAGAAGTTGCTGCTTTAGG-3’)およびGapdhプライマー(フォワード:5’-CTGGAGAAACCTGCCAAGTA-3’およびリバース:5’-TGTTGCTGTAGCCGTATTCA-3’)。図14に示す通り、MBVによる処置は、Foxp3 RNAレベルを有意に増加させており、MBVが、TREG細胞を刺激することを指し示す。まとめると、これらのデータは、MBV処置が、全身性投与された場合であっても、同じ組織における増加した数の抗炎症性細胞表現型をもたらすことを指し示す。よって、局所および全身性投与の両方をARDSの処置に使用することができる。
(実施例4)
キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)マウスモデルにおけるMBVの使用
UBMおよびUBMに由来するMBVは、実施例2(上記参照)に記載されている方法論を使用して調製される。
本実験では、免疫抑制および免疫毒性のキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)ラットモデルを使用して、全身性送達されたMBVの免疫毒性を評価した。8週齢スプラーグドーリーラットを、4種の別々の群へと分けた:KLH対照は、KLHによる免疫化後の正常な抗KLH応答の実証に使用され、ビヒクル対照は、処置にもKLH免疫化にも関係しないいずれか潜在的な効果の制御に使用され、シクロホスファミド陽性対照は、強力な免疫抑制薬として使用され、MBV処置群は、全身性免疫におけるMBV投与の効果の評価に使用された。-7日目に、シクロホスファミド処置動物は、腹腔内に200mg/kgを受けた。MBV処置動物は、-7、-4および-1日目に、静脈内に1×109個の粒子のMBVを受けた。0日目に、ビヒクル対照以外の全群を、フロイント不完全アジュバントにおける0.4mLの1000μg/ml再構成KLHで免疫化した。免疫化後7、14および21日目に、側方尾静脈から全血を収集し、抗KLH IgGの解析のために血清を単離した。図15に示す通り、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用して、全動物の血清における抗KLH IgGを評価した。まとめると、これらのデータは、MBVで処置された動物が、依然として免疫適格性であり、免疫グロブリンに基づく応答を開始することができることを示唆する。
この知見は、抗炎症性処置としてのMBVの有用性のための広い意義を有する。例えば、高サイトカイン血症から生じる過剰炎症を含む炎症を低下させるための多くの標準処置は、免疫抑制薬であり、対象を二次感染症のリスクにさらし、免疫応答を引き起こす薬剤に対して十分な免疫応答を開始する能力を減少させ、免疫の回復および発生に干渉する。しかし、MBVは、免疫応答を開始する対象の能力に干渉しないことが実証されているため、MBVは、例えば、SARS-CoV-2等のウイルス感染症に起因する、例えば、ARDSにおける、抗炎症性処置として有用である。なぜなら、MBVが、依然として、炎症性サイトカインの産生を低下させ、修復および治癒に向かって免疫応答をモジュレートする一方で、ウイルスに対する免疫応答を開始する対象の能力には干渉しないはずだからである。
(実施例5)
MBVの投与は、in vivoでTREGを増加させる
UBMおよびUBMに由来するMBVは、実施例2(上記参照)に記載されている方法論を使用して調製される。
ノックアウトまたは野生型C57/bl6マウスにおいて心臓毒筋肉傷害外科手術を行った;マウスは、野生型IL-33発現Arg-1GFP(「WT B6」)またはノックアウトIL-33欠損Arg-1GFPB6(「KO B6」)であった。これらのマウスの細胞におけるアルギナーゼ発現は、GFP発現によって検出することができ、M2様表現型の同定を可能にする。IL-33を天然に含有するMBV(国際特許出願公開番号WO2019/213482を参照)を、1×109個のMBVの含量で筋肉傷害部位に投与した。手術後日数(POD)がPOD3およびPOD7に、傷害された腹横(transverse abdominal)(TA)筋を、マウスから外科的に収集し、組織検体を刻み、ディスパーゼで処置し、食塩水においてリンスし、このプロセスを反復して、非細胞デブリを除去した。フローサイトメトリー解析(FACS)によって浸潤白血球を評価した。
図16Aおよび図16Bは、CD45+CD3-B220-CD11b+Ly6G-ゲートにおける炎症性マクロファージの代表的なドットプロットおよび頻度を示す。IL-33がないと、増加した数のマクロファージが存在し、これらは、M1炎症促進性表現型のものである。IL-33を含有するMBVは、有意に炎症性応答を減少させる。
図16Cおよび図16Dは、CD45+CD3+B220-CD4+ゲートにおけるST2+TREGの代表的なドットプロットおよび頻度を示す。これらの結果は、IL-33が、Foxp3陽性であるTREG細胞の数の増加に必要とされることを示す。全p値は、一元配置ANOVAを使用して計算した(*P<0.05、**P<0.01)。
(実施例6)
MBVの投与は、IL-4産生を誘導する
UBMおよびUBMに由来するMBVは、実施例2(上記参照)に記載されている方法論を使用して調製される。
本実験では、正常マウスの脾臓からナイーブTリンパ球を単離した。Tリンパ球を刺激して、T細胞応答を誘導した。一次標識試薬としてCD8a、CD11b、CD11c、CD19、CD45R、CD49b、CD105、抗MHC-クラスII、Ter-119およびTCRに対するビオチンコンジュゲート抗体のカクテルを使用した非CD4+T細胞の枯渇によって、8週齢C57/Bl6Jマウスの脾臓から初代マウスCD4+T細胞を単離した。抗ビオチンマイクロビーズにより細胞を磁気標識し、磁石支援細胞選別を使用して非標識CD4+T細胞を分離した。単離されたCD4+細胞を、10%ウシ胎仔血清、完全RPMI 1640培地においてウェル毎に1.0×106個の細胞/mLの最終濃度で、抗マウスCD3イプシロン(3μg/mL)で予めコーティングされた12ウェルプレートにおいて培養した。
それぞれのTh(Tヘルパー)サブセットをそれぞれ、次の培養条件における5日間の培養によって誘導した。Th1:抗マウスCD28(3μg/ml)、抗マウスIL-4、クローン(10μg/mL)、組換えマウスIl-2(5ng/mL)および組換えマウスIl-12(10ng/mL)。Th2:抗マウスCD28(3μg/ml)、抗マウスIFN-ガンマ(10μg/mL)、組換えマウスIl-2(5ng/mL)および組換えマウスIl-4(10ng/ml)。Th17:抗マウスCD28(3μg/ml)、組換えマウスTGFb(2.5ng/ml)、IL6(20ng/ml)、抗IFNg(10μg/ml)、抗IL4(10μg/ml)および抗IL2(10μg/ml)。ThMBV:抗マウスCD28(3μg/ml)、組換えマウスIl-2(5ng/mL)および1×109個の粒子のMBV。これらの条件においてT細胞を5日間培養した。5日目に、細胞を洗浄し、無血清完全RPMI 1640に交換し、50ng/mLホルボール12-ミリステート13-アセテートで24時間刺激した。24時間後に、細胞培養上清を収集し、Il-4のELISAを行った。
図17に示す通り、Th1の公知活性化因子(炎症促進性応答)で刺激された場合、このような細胞によって最小のIL-4(強力な抗炎症性シグナル伝達分子)が産生された。Th2の活性化因子(抗炎症性応答)が与えられた場合、予想通り細胞によって大量のIL-4が産生された。細胞が、炎症促進性Th17表現型に向かって活性化された場合、IL-4は産生されなかった。細胞が、MBV(109個のMBV/ウェル)に曝露された場合、IL-4産生の顕著な増加が起こった。まとめると、これらのデータは、MBVによる処置が、Tヘルパー細胞の強い抗炎症性表現型を誘導することを指し示す。
(実施例7)
MBVは、マクロファージにおいてサイトカインストームのメディエーターを下方調節し、サイトカインストームの負の制御因子の発現を増加させる
UBMおよびUBMに由来するMBVは、実施例2(上記参照)に記載されている方法論を使用して調製される。
6~8週齢B6マウスからマウス骨髄を収集した。骨髄から収集された細胞を洗浄し、2×10
6個の細胞/mLでプレーティングし、48時間毎の完全培地交換により、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)の存在下で7日間にわたりマクロファージへと分化させた。次に、1×10
9個のMBV/mlありまたはなしで、マクロファージを処置した(群毎にn=3)。37℃における24時間インキュベーション期間の後に、細胞を滅菌PBSで洗浄し、全RNAを収集し、RNA配列決定を使用して解析した。Genevia Technologies(Tampere、Finland)によってバイオインフォマティクス解析を行った。RパッケージDESeq2、バージョン1.24.0(Love et al., 2014. Genome Biology 15: 550)を使用して、差次的発現(DE)解析を行った。独立したフィルタリングの最適化に使用される有意性カットオフとして設定された0.05のpによる統計的検定のためにWald検定を使用し、帰無仮説は、対比群の間のlog2の倍数変化が、ゼロに等しいことである。Benjamini-Hochberg手順(Benjamini et al. 1995. Journal of the Royal Statistical Society B 57: 289-300)を使用した多重検定のためにP値を調整した。次に、調整されたp値のための閾値としての0.05および絶対的なlog2の倍数変化のための閾値としての1を使用して、得られた結果を事後フィルタリングした。遺伝子はまた、biomaRt、バージョン2.40.5(Durinck et al. 2009. Nature Protocols, 4: 1184-1191)を使用して、MGI記号、遺伝子の説明および遺伝子バイオタイプによりアノテートされた。配列決定結果は、MBV処置が、表3に示す通り、CD163、Igf1、Nlrpインフラマソーム、C5ar2、Hrh1、Hdac9、Igfbp4およびPpargを含む、サイトカインストームの決定的なメディエーターであることが公知の遺伝子の発現を有意に減少させたことを示した。さらに、MBVは、表4に示す通り、IL-10およびSocs1-3を含む、サイトカインストームの負の制御因子の発現を増加させることが示された。
表3: MBVは、サイトカインストームに関与する遺伝子の発現を減少させた。
表4: MBVは、サイトカインストームの負の制御因子として作用する遺伝子の発現を増加させた。
本データが実証する通り、MBVは、炎症促進性サイトカイン産生、特に、高サイトカイン血症(「サイトカインストーム」)に寄与する炎症促進性サイトカインの強力なモジュレーターであることが示される。MBVのこの特色は、肺における過剰炎症から生じるサイトカインストームおよびARDSの処置または軽減のための候補としてのその有用性を示唆する。
(実施例8)
マウスインフルエンザモデルにおけるウイルス誘導性免疫応答の処置のためのMBVの使用
UBMおよびUBMに由来するMBVは、実施例2(上記参照)に記載されている方法論を使用して調製される。
肺に局在化するMBVの能力を決定するために、PKH67蛍光標識MBVを、109個の粒子/mLの用量で、C57BL/6マウスへと鼻腔内にエアロゾル形態で250μl投与した。際立ったことに、マウス組織の免疫蛍光顕微鏡は、肺気道および肺胞におけるMBVの有意な濃縮を示した。図18に示す通り、MBVは、処置された肺組織の大小の気道において、特に、上皮において、明らかに検出可能であった(矢印で指し示される)が、実質においては観察されなかった。無処置対照肺組織(右パネル)は、MBV処置組織に似ていない拡散したパターンで、非特異的な低レベル自己蛍光を示し、左および中央パネルにおける蛍光が、MBV局在化を実際に指し示すことを実証する。
COVID-19に関連する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等、ウイルス誘導性ARDSに対するMBVの治療有効性を評価するために、H1N1のマウスモデルが使用される。インフルエンザH1N1は、COVID-19患者において観察されるものと同様の肺病理を誘導し、無症状期間、急速ARDS様肺傷害、および数週間または数ヶ月間持続する持続性肺胞炎を含む同様の発病時間経過をたどる。2009 H1N1パンデミックウイルスは、その高い感染力および世界的伝播の観点からSARS-CoV2にさらに似ている。
雄および雌C57BL/6マウスに、生存試験のための106pfuの致死用量または免疫学試験のための104pfuの亜致死用量のいずれかにおける中咽頭吸引によって、インフルエンザA/CA/07/2009(H1N1パンデミックインフルエンザ)を感染させる。感染後3日目または5日目に、マウスを、鼻腔内または静脈内送達によってMBVで処置する。
マウスを、次の6つの実験群にランダムに割り当てる(群毎に8匹のマウス、4匹のマウス/群の2つのコホート、雄および雌マウスの両方で実施):1)インフルエンザA/CA/07/2009のみ;2)インフルエンザA/CA/07/2009+対照(ビヒクルのみ);3)インフルエンザA/CA/07/2009+鼻腔内MBV処置 用量250μLの1×106個のMBV/ml;4)インフルエンザA/CA/07/2009+鼻腔内MBV処置 用量250μLの1×109個のMBV/ml;5)インフルエンザA/CA/07/2009+静脈内MBV処置 用量250μLの1×106個のMBV/ml;6)インフルエンザA/CA/07/2009+静脈内MBV処置 用量250μLの1×109個のMBV/ml。健康なマウスの群が、ベースライン対照に使用される。マウスは、罹患率の代用としての毎日の体重追跡によって経過観察され、マウスは、25%体重減少が観察された場合に屠殺される。これらの生存試験は、ウイルス誘導性死亡率に対するMBVの有効性を実証し、投薬量および送達経路に基づくMBVの有効性をさらに実証する。
3つの実験群に対して、上で決定された最も効果的な投薬戦略を使用して、免疫学的試験を行う:1)インフルエンザA/CA/07/2009;2)インフルエンザA/CA/07/2009+対照;3)インフルエンザA/CA/07/2009+MBV。マウス組織試料(肺およびリンパ節(LN)、気管支肺胞洗浄液(BALF)および血清を含むがこれらに限定されない)を感染後7および21日目に収集する。FLEXIVENT(登録商標)(SCIREQ、Quebec、CA)によって各時点で肺機能を測定して、炎症および浮腫の尺度としての準静的肺コンプライアンスを決定する。製造業者の使用説明書に従って肺機能測定を行う。
製造業者の使用説明書に従ってBio-Plex(商標)サイトカインアッセイ(Bio-Rad)によって、局所サイトカインレベルを決定するために肺タンパク質ホモジネートを使用して、肺傷害および炎症を評価する。病理学的評価のための肺葉のヘマトキシリンおよびエオシン染色等の組織学的解析を行う。白血球数、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)による抗体アイソタイプおよびレベルの定量化、抗ヘマグルチニン抗体レベル、ならびに血清サイトカインのBio-Plex(商標)サイトカインアッセイ評価を含む血液評価を行う。その上、Bio-Plex(商標)サイトカインアッセイによる気腔サイトカインレベルおよび鑑別(differential)炎症性細胞計数を決定するための試料の収集のために、気管支肺胞洗浄を行う。
肺消化物、LN懸濁物およびBALF由来の単一細胞を、蛍光標識された抗体で染色し、製造業者の使用説明書に従ってCytek(登録商標)Auroraを使用して、マルチパラメータースペクトルフローサイトメトリーを完了する。フローサイトメトリー評価を使用して、骨髄系区画(すなわち、炎症促進性サイトカイン分泌M1マクロファージならびに/または修復的および調節性M2マクロファージ)およびリンパ系区画(すなわち、調節性T細胞と共にウイルス特異的Tエフェクター細胞)の両方の変化を定量化する。LNおよび肺組織の単一細胞RNA配列決定解析も行って、ウイルス感染症およびMBV療法が、一緒におよび独立して、分子レベルで組織および免疫細胞集団をどのように形作っているのかを同定する。
結果は、MBVで処置された動物が、無処置対照動物と比較して、有意に減少したウイルス罹患率を示すことを示す。さらに驚いたことに、MBVで処置された感染した動物は、白血球数およびサイトカインレベルに見られる通り、減少した肺傷害および炎症を呈する。これらのデータは、MBVの投与が、急性呼吸窮迫をもたらす疾患および障害の免疫調節に有効な治療法であることと、ならびにMBVが、ウイルス感染症によって誘導されたARDSの重症度または発生率を低下させることができることを示す。これは、他の適応症の中でもとりわけ、パンデミックH1N1またはSARS-CoV2等、治療法が存在しないウイルス疾患、ならびに他のインフルエンザおよびコロナウイルス誘導性呼吸器疾患のための効果的な治療法を提供する。
(実施例9)
クリニックにおけるCOVID-19関連の急性呼吸窮迫症候群の処置のためのMBVの使用
UBMおよびUBMに由来するMBVを、上記実施例2に記載された方法論を使用して調製する。
SARS-CoV2誘導性急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と診断された患者、COVID-19陽性患者を、MBVで処置する。自力で呼吸ができる患者は、ネブライザー器具によって噴霧され、鼻および/または口を介して肺中に吸入される、3mLの生理食塩水中およそ1×109のMBVの用量を受ける。挿管された患者は、気管内送達される、3mLの生理食塩水中1×109のMBVの用量を受ける。腹腔内注射が好ましい投与様式であると決定された一部の患者は、腹腔内投与によって、約50mLの生理食塩水中1×109のMBVを受ける。
血液酸素化レベルを、MBV療法の用量を受ける前および受けた後に各患者において測定して、処置の治療有効性を決定する。さらに、洗浄により肺から流体試料を得、サイトカイン発現レベル、例えば、上記表3および4中に提供されるサイトカインを、ELISAによって決定する。継続的な人工呼吸も酸素サポートもなしに酸素レベルを維持する能力、ならびに肺からの流体のクリアランスを示す胸部X線における改善および/または洗浄液試験から決定された炎症促進性サイトカインレベルにおける減少を含む改善の徴候を患者が示すまで、患者は、6~24時間毎にこの用量を受け続ける。
(実施例10)
実施例11~15のための材料および方法
ウイルス誘導性急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、例えば、COVID-19に関連するARDSに対するMBVの治療有効性を評価するために、H1N1のマウスモデルを使用した。インフルエンザH1N1は、COVID-19患者において観察されたものと同様の肺病理を誘導し、無症状期間、迅速なARDS様肺傷害、および数週間または数ヶ月持続する持続性肺胞炎を含む、同様の発病時間経過に従う。2009 H1N1パンデミックウイルスは、その高い感染性および世界的伝播の観点から、SARS-CoV2とさらに似ている。
雄および雌C57BL/6マウスに、生存試験のためには106pfuの致死用量、または免疫学試験のためには104pfuの亜致死用量のいずれかで、中咽頭吸引によってインフルエンザA/CA/07/2009(H1N1パンデミックインフルエンザ)を感染させた。感染後の3日目および5日目に、マウスを、静脈内送達によってMBVで処置した。
マウスを、次の6つの実験群にランダムに割り当てた(群毎に8匹のマウス、4匹のマウス/群の2つのコホート、雄および雌マウスの両方で実施):1)インフルエンザA/CA/07/2009のみ;2)インフルエンザA/CA/07/2009+対照(ビヒクルのみ);3)インフルエンザA/CA/07/2009+静脈内MBV処置 用量250μLの1×106MBV/ml;4)インフルエンザA/CA/07/2009+静脈内MBV処置 用量250μLの1×109MBV/ml。健康なマウスの群を、ベースライン対照として使用した。マウスを、罹患率の代用として毎日の体重追跡によって経過観察され、25%の体重減少が観察された時点でマウスを屠殺する。これらの生存試験は、ウイルス誘導性死亡率に対するMBVの有効性を実証し、投薬量および送達経路に基づくMBVの有効性をさらに実証する。
3つの実験群に対して、上で決定した最も効果的な投薬戦略を使用して免疫学的試験を行った:1)インフルエンザA/CA/07/2009;2)インフルエンザA/CA/07/2009+対照;3)インフルエンザA/CA/07/2009+MBV。マウス組織試料(肺およびリンパ節(LN)、気管支肺胞洗浄液(BALF)、ならびに血清が含まれるがこれらに限定されない)を、感染後7および21日目に収集する。
製造業者の使用説明書に従ってBIO-PLEX(商標)サイトカインアッセイ(Bio-Rad)によって、局所サイトカインレベルを決定するために肺タンパク質ホモジネートを使用して、肺傷害および炎症を評価した。病理学的評価のために、肺葉の組織学的解析、例えば、ヘマトキシリンおよびエオシン染色ならびにトリクローム染色を行った。白血球数、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)による抗体アイソタイプおよびレベルの定量化、抗ヘマグルチニン抗体レベル、ならびに血清サイトカインのBIO-PLEX(商標)サイトカインアッセイ評価を含む血液評価を行った。さらに、気管支肺胞洗浄を、BIO-PLEX(商標)サイトカインアッセイによる気腔サイトカインレベルおよび鑑別炎症細胞計数を決定するための試料の収集のために行った。
肺消化物、LN懸濁物およびBALFからの単一細胞を、蛍光標識した抗体で染色し、製造業者の使用説明書に従ってCYTEK(登録商標)Auroraを使用して、マルチパラメータースペクトルフローサイトメトリーを完了する。フローサイトメトリー評価を使用して、骨髄性区画(即ち、炎症促進性サイトカイン分泌M1マクロファージならびに/または修復性および調節性M2マクロファージ)およびリンパ系区画(即ち、調節性T細胞、ならびにウイルス特異的Tエフェクター細胞)の両方の変化を定量化した。LNおよび肺組織の単一細胞RNA配列決定解析も行って、ウイルス感染およびMBV療法が、一緒におよび独立して、分子レベルで組織および免疫細胞集団をどのように形作っているかを同定する。
(実施例11)
MBVの全身性投与は、急性ウイルス媒介性肺病理を緩和する。
H1N1による気管内接種の7日後、マトリックス結合ナノ小胞の全身性投与は、肺組織のH+E染色上で明らかなように、急性ウイルス関連肺病理を実質的に緩和した。7日目に、インフルエンザ+i.v.PBSビヒクル対照群は、肺間質空間における細胞密度および硬化における増加を実証したが、インフルエンザ+i.v.MBV群は、細胞密度における低下ならびに間質炎症性浸潤物における低下を示す(図19A)。ヒートマップの形態で細胞密度を可視化するためにquPath人工知能を使用すると、インフルエンザ+i.v.MBV群は、インフルエンザ+i.v.PBS群と比較して、細胞密度における低下を示した(図19A)。インフルエンザ感染後の肺の細胞浸潤物の組成のさらなる調査により、細気管支洗浄液(BALF)、肺間質空間および脾臓におけるCD45+好中球における増加が示された(図19B、p<.05)。静脈内MBVは、BALF、肺間質空間および脾臓におけるCD45+好中球の頻度を有意に低下させた(図19B、p<.05)。全身性MBV投与による細胞浸潤および好中球存在における低下は、炎症促進性サイトカインおよびケモカインにおける低下に関連していた(図19C)。具体的には、全身性MBVは、感染症における組織への好中球および骨髄性細胞動員に関与する、肺で産生されたG-CSFを低下させた(図19C、p<.05)。MBVの全身性投与は、インフルエンザ+i.v.PBS群と比較して、Il-6、Il-1b、TNF-アルファおよびIFN-ガンマを含む炎症促進性サイトカインの肺濃度を減少させた(図19C、p<.05)。
(実施例12)
MBVは、H1N1接種後の抗ウイルスCD4およびCD8表現型を促進する。
気管内H1N1接種後の7日目に、MBVの全身性投与は、PBSのみの対照におけるベースライン比と比較して、肺におけるCD4:CD8 T-細胞の比を有意に変更した(図20A、p<.05)。MBV投与による増加したCD8:CD4 T-細胞比のこの促進は、肺では感染の部位において局所的に見られ、脾臓でも全身性に見られた(図20Aおよび20B、p<.05)。CD4およびCD8 T-細胞のさらなる調査により、MBVは、PBSのみの対照と比較して、CD8:CD4 T-細胞の増加した比を支持するシフトを促進しただけでなく、活性化された(CD69+)および抗ウイルス(Tbet+)の両方のCD4およびCD8 T-細胞における増加もまた促進した(図20Cおよび20D、p<.05)。具体的には、脾臓のレベルでは、MBVは、PBSのみの群およびインフルエンザ+i.v.PBS群と比較して、CD69+CD4 T-細胞の頻度を増加させた(図20C、p<.05)。全身性MBVは、PBSのみの群およびインフルエンザ+i.v.PBS群と比較して、リンパ節における抗ウイルスTbet+CD4 T-細胞の頻度も増加させた(図20C、p<.05)。MBVは、PBSのみの群およびインフルエンザ+i.v.PBS群の両方と比較して、脾臓におけるCD69+の活性化されたCD8 T-細胞の頻度も増加させた(図20D、p<.05)。有意ではないが、インフルエンザ+i.v.PBS群と比較して、全身性MBV群において、脾臓におけるTbet+の抗ウイルスCD8 t-細胞の漸増する頻度の傾向が存在した(図2.D、p>.05)。
(実施例13)
MBVは、長期ウイルス媒介性肺炎症を緩和する
H1N1による気管内接種の21日後に、MBVの全身性投与は、インフルエンザ+i.v.PBS群と比較して、肺組織における全体的細胞密度を実質的に低下させた(図21A)。感染後の7日目と同様に、MBVの全身性投与は、肺では局所的レベルで、ならびに脾臓では全身性に、CD45+好中球の全体的頻度を有意に低下させた(図21B)。炎症促進性好中球の低下と組み合わせて、肺における免疫調節性CD11+樹状細胞の頻度における同時発生的な増加が存在する(図21C)。さらに、MBVの全身性投与は、長期ウイルス炎症において上昇したものと比較して、炎症促進性ケモカインおよびサイトカインを低下させる(図3.D、p<.05)。具体的には、MBVは、IL12、Il1-ベータ、MCP1およびKCの肺濃度を低下させる(図3.D、p<.05)。
(実施例14)
MBVの全身性投与は、CD4 T-細胞およびCD8 T-細胞の両方において、プロメモリー(Pro-Memory)免疫応答を誘導する。
インフルエンザ+i.v.PBSと比較して、MBV i.v.の投与は、ウイルス媒介性肺病理において炎症および細胞浸潤の消散を促進しただけでなく、メモリー免疫応答もまた促進した。具体的には、MBVの全身性投与は、インフルエンザ+i.v.PBS群と比較して、CD62l+/CD44+メモリーCD4およびCD8 T-細胞の頻度を増加させた(図22Aおよび22B、p<.05)。
(実施例15)
ウイルス関連の組織損傷および細胞外マトリックス堆積は、MBVの全身性投与によって減少される。
H1N1接種の21日後に、インフルエンザ+i.v.PBSと比較した全身性MBVは、quPath人工知能で定量化したトリクローム画像上で可視化されたように、ウイルス関連の組織損傷および新たな細胞外マトリックス堆積を有意に低下させた(図23Aおよび23B、p<.05)。
結果は、MBVで処置した動物が、未処置の対照動物と比較して、有意に減少したウイルス罹患率を示したことを示している。さらに驚いたことに、MBVで処置した感染動物は、白血球数およびサイトカインレベルにおいて見られたように、減少した肺傷害および炎症を示す。これらのデータは、MBVの投与が、急性呼吸窮迫をもたらす疾患および障害の免疫調節のための有効な治療法であったこと、ならびにMBVがウイルス感染によって誘導されるARDSの重症度または発生率を低下させることができることを示した。これは、他の適応症の中でもとりわけ、ARDS、治療法が存在しないウイルス疾患、例えば、H1N1またはSARS-CoV2によって引き起こされる疾患のための効果的な治療を提供する。データは、他のインフルエンザおよびコロナウイルス誘導性呼吸器疾患を処置するための方法もまた提供する。
(実施例16)
実施例17~19のための材料および方法
四頭筋を、0.02%トリプシンおよび0.05%EDTAで最初に脱細胞化し、0.01%過酢酸で消毒した後、ECMからMBVを放出するための室温で一晩の緩衝液(50mM Tris pH7.5、5mM CaCl2、150mM NaCl)中でのリベラーゼTHによる酵素消化を行う。
エキソソームを、Innovative Researchから得たC57Bl6マウス血漿から単離した。
cMVを、Chaudhary et al. Matrix Biol. 52-54:284-300, 2016中に以前に記載されたように、17IIAプレ-象牙芽細胞(pre-odontoblast cell)から単離した。簡潔に述べると、17IIA細胞の骨形成性分化を、24時間にわたって10mM Na-Pi緩衝液(pH7.4)および50μg/mlのアスコルビン酸を用いて誘導し、その後、緩衝液中1mg/mlのコラゲナーゼIAによる37℃で2時間の酵素消化を行った。
小胞の単離:次いで、上記のような適切な調製の後に、試料を、500×gで10分間、2,500×gで20分間および10,000×gで30分間の遠心分離に供して、細胞およびECMデブリを除去し、上清を0.22μmフィルターに通過させた。次いで、小胞を含有する清澄化した上清を、100,000×g(Beckman Coulter Optima L-90K Ultracentrifuge)で4℃、70分間遠心分離して、小胞をペレットにした。小胞ペレットを、1×PBS中に再懸濁し、アリコートに分け、さらなる使用まで-20℃で貯蔵した。
小胞タンパク質マーカーの特徴付け:小胞サブタイプを分析して、エキソソームに共通して関連するタンパク質マーカーの発現レベルを決定した。タンパク質マーカーを、50μgの小胞タンパク質を用いてExo-Check(商標)エキソソーム抗体アレイ(System Biosciences)を使用して解析した。ImageJを使用して、解析した各タンパク質の相対的発現を定量化した。
マウス骨髄由来マクロファージの単離および処置:骨髄由来マクロファージを、Sicari et al., Biomaterials 35:8605-8612, 2014によって以前に記載されたように、C57Bl6マウスの脛骨および大腿骨から単離した。収集した単核細胞を、2×106細胞/mLの比で播種し、単球を、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)含有培地との37℃および5%CO2で7日間の培養によって、マクロファージへと分化させた。得られた細胞を、ナイーブマクロファージと称した。ナイーブマクロファージを、24時間にわたり、次の処置のうちの1つに曝露させた:1)M1マクロファージを誘導するためのLPS/IFNγ、2)M2マクロファージを誘導するためのIL-4、3)1×109粒子/mLの血漿エキソソーム、4)1×109粒子/mLの17IIA cMV、または5)1×109粒子/mLの筋肉MBV。
遺伝子発現:24時間後、RNAを、トリゾールを用いて回収した。1000ngのRNAを、製造業者の使用説明書に従ってHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(ThermoFisher Scientific)を使用して、cDNAに変換した。リアルタイムqPCRを、PowerUp(商標)SYBR(登録商標)Greenマスターミックスを使用して実施した。相対的遺伝子発現を、処置なし(M0)対照と比較して、2-ΔΔCt法によって決定した。
統計的解析:二元配置分散分析(ANOVA)およびテューキー補正を伴う事後解析により、群間の有意な比較を決定した。全ての統計的解析を、GraphPad Prismを用いて完了させた。*P<0.05、**P<0.01、***P<.001。
(実施例17)
MBVは、共通のエキソソームマーカーであるCD63もCD81も発現しない。
EXO-CHECK(商標)エキソソーム抗体アレイ(System Biosciences)を使用して、マウスエキソソーム、マウス骨髄骨マトリックス小胞(骨MV)およびマウスマトリックス結合ナノ小胞(MBV)上の共通のエキソソームマーカーの存在または非存在を比較した。結果は、図24の上パネルに示され、MBVが、エキソソームの標準的で十分に受容されたマーカー、例えば、CD63およびCD81を事実上欠くことを明らかに示している。さらに、図24の上パネルで同定された他のシグナル伝達分子は、MBV中には存在しなかったが、これらは、骨マイクロ小胞およびエキソソームにおいて、中等度の程度または高い程度のいずれかまで存在した。発現値のデンシトメトリープロットは、図24の下パネルに示される。
データは、エキソソームおよび骨MVが、これらのマーカーの中等度~高い発現を有する同様の発現プロファイルを共有するが、MBVは、これらのEVマーカーの発現において有意に異なることを示している。例えば、MBVはまた、エキソソームウェル上の同じ位置にある濃いリングまたは塗りつぶしの濃いスポットの存在と比較してブランクウェルによって、および下パネルのグラフ中に示されるこれらのマーカーの相対的発現レベルによって示されるように、EpCAM、ANXA5、TSG101、FLOT1、ICAM1およびALIXのうち1種または複数を事実上欠く、即ち、「低い」または「検出不能な」レベルの、EpCAM、ANXA5、TSG101、FLOT1、ICAM1およびALIXのうち1種または複数を有する。骨MVは、ウェル上の濃いスポットによっておよび下パネルのグラフ中に示されるこれらのマーカーの相対的発現レベルによって示されるように、MBVと比較して、これらのマーカーの全ての、より高いレベルの発現もまた有する。
一実施形態では、MBVは、EXO-CHECK(商標)エキソソーム抗体アレイの陽性対照と比較して低いまたは検出不能なレベルの、CD63、CD81、EpCAM、ANXA5、TSG101、FLOT1、ICAM1およびALIXのうち1種または複数を有する。一実施形態では、MBVは、エキソソーム、例えば血漿エキソソームと比較して低いまたは検出不能なレベルの、CD63、CD81、EpCAM、ANXA5、TSG101、FLOT1、ICAM1およびALIXのうち1種または複数を有する。一実施形態では、MBVが、骨MVと比較して低いまたは検出不能なレベルの、Cd63、CD81、EpCAM、ANXA5、TSG101、FLOT1、ICAM1およびALIXのうち1種または複数を有する。一実施形態では、MBVは、エキソソームまたは骨MVと比較して低いまたは検出不能なレベルの、ANXA5、TSG101およびICAM1によって特徴付けられる。一実施形態では、MBVは、骨MVまたは血漿エキソソームと比較して低いまたは検出不能なレベルの、CD81、CD63、ANXA5、TSG101およびICAM1によって特徴付けられる。
(実施例18)
MBVは、骨MVマーカーの低い発現を有するまたは発現を有さない。
骨MVマーカーアネキシンVおよび組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)の発現を、ウエスタンブロット解析によって評価した。結果は図25に示される。1711A細胞から調製した溶解物を、陽性対照として使用した。この実験の結果は、マトリックス結合ナノ小胞(MBV)が、骨マイクロ小胞の両方のマーカー、TNAPおよびアネキシンVのいずれの発現をも欠くことを示している。血漿エキソソームは、アネキシンVを発現するが、TNAPは発現しない。これらの結果は、エキソソームおよび骨マイクロ小胞の両方からMBVを明らかに識別する。
(実施例19)
MBVは、エキソソームまたは骨MVと比較して、差次的な免疫調節効果を有する。
マウスから収集した骨髄由来マクロファージ(BMDM)を、未処置とした(M0)、または次の試験物品で24時間処置した:M1表現型を誘導するためのIFNγ+LPS(M1)、M2様表現型を誘導するためのIL-4(M2)、血漿に由来するエキソソーム、17A細胞に由来する骨MV、または筋肉から単離されたMBV。処置後、示された遺伝子の発現における倍数変化を、qPCRによって評価した。図26に示される結果は、MBVによる炎症促進性マーカーIL-6およびTNF-αの下方調節が、エキソソームおよび骨マイクロ小胞による同じ2種の炎症性メディエーターの下方調節から明らかに識別されることを示している。MBVは、強力な抗炎症効果を有した;しかし、エキソソームおよび骨マイクロ小胞は有さなかった。
参照による組み込み
反対の主張がなされない限り、本明細書で言及される特許文献および科学論文の各々の全開示が、全ての目的のために参照により組み込まれる。
均等物
本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなしに、他の特定の形態で具体化され得る。したがって、上述の実施形態は、全ての態様において、本明細書に記載される発明を限定するのではなく例示するとみなすべきである。したがって、本発明の範囲は、上述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内に入る全ての変化が、本明細書で容認されることが意図される。