JP2023518775A - シクロフィリン阻害剤およびその使用 - Google Patents

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Abstract

式1によって定義される化合物、および臓器傷害または臓器不全などの疾患または症状の予防または処置のためのその使用が提供される。JPEG2023518775000027.jpg117167【選択図】なし

Description

本発明は、シクロスポリン類似体、ならびに虚血もしくは虚血再灌流傷害、または毒素、感染もしくは機械的外傷などのいくつかの異なる理由によって引き起こされ得る疾患または障害、特に細胞傷害または細胞死に関連する疾患または症状を処置または予防するためのそれらの使用に関する。特に、本発明は、強力なシクロフィリンD阻害剤として提供され得る化合物に関する。
急性炎症は、PAMP(病原体活性化分子パターン)およびDAMP(細胞障害活性化分子パターン)シグナルに応答して作用して、起点となる傷害を解消する様々な細胞性(好中球、マクロファージ)および細胞外(補体、ヒスタミン)因子の複雑な相互作用を伴うことが十分に認識されている。シクロフィリンAは、炎症応答を支援するように白血球遊走を促進するケモカインとして機能することが実証されており、シクロフィリンAの遮断は、急性炎症の動物モデルにおいて有益であることが示されている。より最近では、細胞死および組織壊死を伴う重度の形態の炎症が記載されている。現在では、多数の証拠が、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)と呼ばれるミトコンドリア膜の孔の開口をこの壊死性炎症の発症および維持にとって極めて重要であるものとして支持している。このMPTP開口の鍵となる調節因子はシクロフィリンD(CypD)であり、CypDの阻害剤は壊死性炎症に関連する組織損傷の予防において優れた活性を示した。MPTPの開口およびその後の壊死性細胞死の開始は、過剰な生理学的シグナル(例えば、騒音外傷、興奮毒性)、酸化ストレス、低酸素、胆汁酸塩毒素などを含む様々な因子に起因する上昇した細胞内カルシウムレベルによって引き起こされる。注目すべきことに、CypDの遺伝子破壊または薬理学的阻害は、心臓組織の虚血-再灌流傷害に起因する組織分解に対して保護的であることが見出され、CypD阻害がより一般的に虚血-再灌流傷害のための実行可能な薬物標的であることを示唆している。マウスモデルにおいて、シクロフィリンD欠失は、重度の虚血-再灌流傷害によって腎臓に引き起こされる損傷に対して有意な保護効果を有することが示された(Am J Physiol Renal Physiol 297:F749-F759,2009)。この保護効果は、血清クレアチニンレベルによって測定される改善された腎機能において、および野生型対照と比較したシクロフィリンDノックアウト動物での組織損傷(組織学によって測定)において明らかであった。同様に、腎毒性薬物(Am J Physiol Renal Physiol.2019 Sep 1;317(3):F683-F694)の投与によって引き起こされる腎臓損傷のマウスモデルでは、シクロフィリンDがノックアウトされた動物は、酸化ストレスおよび低メチル化に対してより耐性が高く、野生型動物より腎毒性の徴候が低かった。
シクロフィリンDノックアウトマウスおよびシクロフィリン阻害剤を用いた薬理学的戦略を使用して行われた研究では、ミトコンドリア内膜の非特異的チャネルであるミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)の開口が、様々な傷害に起因する細胞死での基本的事象であることが明確に実証された。さらに、シクロフィリンDの阻害は、mPTPの開口を防止することができ、これはミトコンドリア機能に対して保護的であり、細胞の生存を保全する。
シクロスポリンAは、その免疫抑制特性について周知の化合物であるが、他の生物学的特性も記載されている。シクロスポリンAは、以下の化学構造を有する。
Figure 2023518775000002
シクロスポリンAの生物学的に活性な誘導体も作製されている。例えば、米国特許第6,583,265号、欧州特許第0484281号、欧州特許第0194972号は、免疫抑制、抗寄生虫および抗ウイルス特性を含む様々な特性を有するシクロスポリン誘導体を記載している。さらなる例としては、1位に施された修飾を有するシクロスポリン誘導体を記載する米国特許第6,809,077号、ならびに対象における臓器移植拒絶の予防および自己免疫疾患の処置などのための前記化合物を含む処置の方法が挙げられる。
米国特許第6,583,265号は、シクロスポリン大環状分子の3位で行われた修飾を有するシクロスポリン誘導体を記載している。特に、米国特許第6,583,265号は化合物1を開示している。
Figure 2023518775000003
化合物1
国際公開第2019/016572号も、急性または慢性炎症性障害の処置または予防において使用するための化合物1を記載している。
本発明の目的は、さらなるシクロスポリン類似体、特にシクロフィリン、例えばシクロフィリンA、BおよびD、ならびにシクロフィリンに関連する疾患および症状の阻害に有用であり得る類似体を提供することである。本発明のさらなる目的は、本発明の以下の説明、実施例および特許請求の範囲に基づいて明らかになるであろう。
米国特許第6,583,265号 欧州特許第0484281号 欧州特許第0194972号 国際公開第2019/016572号 米国特許第6,809,077号
Am J Physiol Renal Physiol 297:F749-F759,2009 Am J Physiol Renal Physiol.2019 Sep 1;317(3):F683-F694
発明の概要
第1の局面において、本発明は、式1の化合物
Figure 2023518775000004
またはその薬学的に許容され得る塩に関し、式中:
nは、2~5の整数から選択され;RおよびRは、独立して、H、C~Cアルキルから選択されるか、またはRおよびRは、一緒に結合されて、C~Cシクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル環を形成し得;Rは、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn-プロピルであり;式中、Rは、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリールおよび置換されたヘテロアリールであり、前記置換は、任意で、C~Cアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、C~Cアルコキシル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択される1つまたは複数の置換基であってもよい。
関連する局面において、本発明は、示されているとおりの式2の化合物を提供し、
Figure 2023518775000005
式中、RおよびR、RおよびRは、式1またはその特定の態様に対するように定義され得る。
さらなる局面において、本発明は、シクロフィリン阻害剤としての前記化合物の使用を提供する。なおさらなる局面において、本発明は、臓器傷害または臓器不全などの細胞傷害または細胞死に関連する疾患または症状を処置または予防する方法における前記化合物の使用を提供する。
発明の詳細な説明
本発明は、第1の局面において、式1の化合物またはその薬学的に許容され得る塩に関し、
Figure 2023518775000006
式中:
nは、2~5の整数から選択され、;
およびRは、独立して、H、C~Cアルキルから選択されるか、またはRおよびRは一緒に結合されて、C~Cシクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル環を形成し得;
は、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn-プロピルであり;
式中、Rは、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリールおよび置換されたヘテロアリールであり、前記置換は、任意で、C~Cアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、C~Cアルコキシル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択される1つまたは複数の置換基であってもよい。
本開示によるシクロスポリン化合物は、例えば上記式1について図示および定義されるように、3位のサルコシン残基にアミノアルコキシ置換基および大環状分子の1位にMeBmtの誘導体を含むシクロスポリンA化合物である。シクロスポリン大環状分子に関して本明細書で使用される位置の付番は、シクロスポリンのコアに含まれる11のアミノ酸残基の一般的に使用される命名法および番号割り当てを参照する。シクロスポリンAを基本として、アミノ酸残基は以下のように付番され得る:MeBmt(1)と略され得るメチル-ブテニル-トレオニン、アミノ酪酸(2))、Sar(3)と略され得るサルコシン、N-メチルロイシン(4)、バリン(5)、N-メチルロイシン(6)、アラニン(7)、D-アラニン(8)、N-メチルロイシン(9)、N-メチルロイシン(10)、N-メチルバリン(11)。
一態様において、アミノアルコキシサルコシン置換基は、式1に示されるとおりである。任意である態様において、この置換基のアルコキシ(すなわち、-(CH-)部分の水素原子はまた、アルキル置換基(例えば、メチル)などの置換基、または本明細書に記載されるような別の置換基で独立して置き換えられ得る。例えば、アミノアルコキシサルコシン置換基は、1-アミノ-2メチル-2-プロパノイル置換基であり得る。
本明細書で使用される「H」という用語は、水素を指す。
本明細書で使用される「C~Cアルキル」という用語は、任意の異性体配置で1~6個の炭素原子を含む飽和または不飽和アルキル炭化水素部分として定義される。メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、1-ペンチル、n-ヘキシルなどの、直鎖の直線状アルキルが含まれる。イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-ペンチル、3-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチルおよびヘキシルの異性体などの分岐アルキル(すなわち、分岐C~Cアルキル)も含まれる。「C~Cアルキル」の定義内にさらに含まれるのは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどの環状異性体である。不飽和C~Cアルキルの例としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニル、ならびに例えば1つまたは複数の二重結合を含むその他のアルケニルまたはアルキレン部分、例えばペンタジエニルが挙げられるが、これらに限定されない。「C~C」アルキルという用語は、同様に理解されるべきであるが、3~6個の炭素原子の範囲を含む部分を表す。好ましい態様において、アルキル置換基は、上で定義したような置換されていない炭化水素部分である。任意である態様において、C~Cアルキルは、以下で定義されているような1つまたは複数の置換基で置換され得、1つまたは複数の水素原子が、前記置換基への結合で置き換えられる。
一態様において、式1のRまたはRの少なくとも一方は、C~Cアルキルである。別の態様において、RおよびRの両方が、-CH(メチル)である。1つの特定の態様において、nは2であり、RおよびRの両方が-CH(メチル)である。
いくつかの態様において、2つの隣接するRおよびR置換基は、一緒に環、例えばC~Cシクロアルキル環を形成するように一緒に結合され得る。本明細書で使用される「シクロアルキル」は、飽和または不飽和の非芳香族炭化水素環である。隣接するRおよびR置換基が一緒に結合して環を形成することによって形成される部分の例としては、式1または2の本化合物の文脈において、アゼチジン、ピロリジンまたはピペリジンが挙げられ得る。任意である態様において、シクロアルキル部分は、以下で定義されているような1つまたは複数の置換基で置換され得、1つまたは複数の水素原子が、前記置換基への結合で置き換えられる。
「ヘテロ」という用語は、化合物または置換基を記述するために使用される場合、1つまたは複数の炭素原子が酸素、窒素または硫黄原子によって置き換えられていることを意味する。本開示のさらなる態様において、置換基RおよびRは、ヘテロシクロアルキル環、例えばC~Cヘテロシクロアルキル環を形成するために一緒に結合され得る。別段示されない限り、「ヘテロシクロアルキル」は、環構造の少なくとも一部を形成し、少なくとも1つまたは複数の炭素原子が酸素、窒素または硫黄原子によって置き換えられている(およびC~Cヘテロシクロアルキル環の場合には、3~6個の炭素原子を含む)飽和または不飽和の非芳香環を指す。例えば、置換基RおよびRは、式1に示されているように、RおよびRが結合されている窒素に加えて少なくとも1つのヘテロ原子を含む4員、5員または6員の飽和非芳香族環を形成するために一緒に結合され得る。ヘテロシクロアルキル環は、O、NまたはSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み得る。1つの特定の態様において、RおよびRは、モルホリン残基を形成するように一緒に結合される。さらなる態様において、整数nは2であり、RおよびRは、モルホリン残基を形成するように一緒に結合される。
本発明の一態様において、式1によって定義される化合物のRは、アリールまたは置換されたアリールである。
本明細書で使用される「アリール」という用語は、1つ(単環式)または複数(例えば、二環式)の芳香環を有する炭素環系を指し、例としては、フェニル、ナフタレニル、アントラセニルなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。一態様において、Rはナフタレンまたは置換されたナフタレンである。アリール環基は、環原子の任意の1つにおいて化合物または分子に結合され得る。
「置換された」アリールという用語は、1つまたは複数の水素が、独立して、C~Cアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル(-OH)、C~Cアルコキシル、アミノ(-NH)、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールおよびヘテロアリールを含むが、これらに限定されない少なくとも1つまたは複数の(例えば、2つ、3つまたはそれより多くの)置換基で置き換えられているアリール部分または基を指す。置換基は、化合物または分子に結合されていないアリール部分の環原子の任意の1つの上に備えられ得る。
別の態様において、Rは、C~Cアルキル、ヒドロキシル、C~Cアルコキシル、アミノ(-NH)、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールおよびヘテロアリールから選択される1つまたは複数の置換基で置換されたアリール(例えば、フェニルまたはナフタレニル)である。
「ハロ」と交換可能な「ハロゲン」という用語は、クロロ、ブロモ、ヨードまたはフルオロ原子を指す。「ハロアルキル」は、1つまたは複数の水素原子が1つまたは複数のハロゲン原子によって置き換えられているアルキル置換基を指す。一態様において、置換基は、C~Cハロアルキル、例えば、トリフルオロメチル(-CF)などのトリフルオロアルキルであり得る。
「ヒドロキシル」という用語は、-OH基を指す。いくつかの態様において、水素は、例えば当技術分野内のヒドロキシ保護基で置換され得る。「アルコキシル」などの用語は、アルキル化されたヒドロキシル置換基、すなわち、水素がアルキル基によって置き換えられていることを意味する。「C~Cアルコキシル」は、水素を上記で定義されたようなC~Cアルキルで置き換えることを指す。例としては、メトキシ、イソプロポキシ、フェノキシまたはt-ブトキシが挙げられる。
「アミノ」という用語は、-NH基を指す。いくつかの態様において、水素は、例えば保護基、またはアルキルなどの1つもしくは複数のさらなる置換基で置換され得る。「モノアルキルアミノ」という用語は、水素の1つがアルキル、例えば上記で定義されたようなC~Cアルキルで置き換えられているアミノ基(すなわち、-NHR、Rはアルキルである)を指す。「ジアルキルアミノ」は、両方の水素が独立してアルキルで置き換えられているアミノ基(すなわち、-NRR’、ここで、RおよびR’はアルキルであり、同じ(例えば、ジメチルアミノ)であり得る、または異なり得る。)を指す。
「チオアルキル」は、基-SR’’を指し、R’’は、アルキル、上記で定義されるようなC~Cアルキルである。本明細書で使用される「カルボキシル」という用語は、基-C(O)-Rを指し、Rは、水素、アルキル、アリール、ヘタリール、ヒドロキシ、アルコキシ(例えば、-OCH)、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキルなどから選択され得る。本明細書で使用される場合、用語「アルコキシカルボニル」は、基-OC(O)-Rを指し、Rは、アルキル(例えば、C~Cアルキル、例えば、メチル)、アリール、ヘタリール、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキルなどから選択される。
他の態様において、置換されたアリール環上の置換は、隣接する炭素原子上にあってもよく、置換基部分は結合されて、本明細書で定義されるシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルなどの環を形成する。
特定の態様において、式1の化合物中のRはフェニルまたは置換されたフェニルであり、置換は、任意で、C~Cアルキル(例えば、メチルまたはt-ブチル)、ハロゲン(例えば、クロロ、フルオロ、ブロモまたはヨード)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシル、C~Cアルコキシル(例えば、メトキシ、フェノキシまたはt-ブトキシ)、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノ)、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル((例えば、-COOCH)、アルコキシカルボニル(例えば、アセトキシ)、アリール(例えば、フェニル)およびヘテロアリールから独立して選択される1つまたは複数の置換基であってもよい。
さらなる態様において、Rは、一置換されたフェニル、例えばパラ置換されたフェニル(例えば、p-トリル、p-メトキシフェニル、p-トリフルオロメチルフェニル)、またはそのオルト/メタ異性体である。代替の態様において、Rは、二置換または三置換されたフェニルである。なおさらなる態様において、Rはフェニルであり、C1~C6アルキル、ヒドロキシル、C1~C6アルコキシル、アミノ(-NH2)、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールおよびヘテロアリールから選択される1つまたは複数の置換基で置換されている。
さらなる態様において、式1によって定義される化合物のRは、ヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールである。
「ヘテロアリール」という用語は、環原子の1つがS、OおよびNから選択される少なくとも1つの原子によって置き換えられており、残りの原子が炭素である1つまたは複数(例えば、二環式、例えば)の芳香環を有する環状芳香環系を指す。環状芳香環系は、例えば、5~10個の環原子を含み得、1つ、2つまたはそれより多くの環を含み得る。「置換されたヘテロアリール」は、1つまたは複数の水素原子が、独立して、本明細書で定義されるような少なくとも1つまたは複数の(例えば、2つ、3つ、またはそれより多くの)置換基で置き換えられているヘテロアリール部分を指す。ヘテロアリール基は、化合物に環原子のいずれかにおいて化合物に結合され得る。
一態様において、式1の化合物について定義されるRは、ヘテロアリールであり、任意で、C~Cアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、C~Cアルコキシル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい、ピリジン、ピロール、ピラジン、ピリミジン、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、フラン、キノリン、ピラゾールおよびイミダゾールからなる群から選択される。
式1の化合物の別の態様において、nは2である(すなわち、-2-二置換されたアミノエトキシ基を与える)。
特に、本発明は、nが2である式1の化合物またはその薬学的に許容され得る塩、すなわち式2の化合物:
Figure 2023518775000007
式中、置換基R、R、RおよびRは、上記の態様または選好の任意の1つまたは組み合わせに従って定義される、
に関し得る。
式1のおよび式2の化合物の1つの特定の態様において、Rはエチルである。式1のまたは式2の化合物に関してなおさらなる態様において、Rはエチルであり、RおよびRはアルキル、好ましくはC~Cアルキルから選択され、RおよびRは同一であり得る(例えば、いずれもメチルである)、または、RおよびRは独立して選択される(すなわち、異なる)C~Cアルキルである。特に、本発明は、Rがエチルであり、RおよびRがいずれもメチル(-CH)であり、Rが上記態様の任意の1つで定義されるとおりである式2の化合物に関し得る。
本発明による他の態様において、式1または式2によって定義される化合物の基Rは、イソプロピル、n-プロピルおよび1-ヒドロキシエチルから選択される。
より具体的な態様において、本開示は、以下から選択される式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩に関し得る。
Figure 2023518775000008
Figure 2023518775000009
さらに別の局面において、本開示は、式1および2に記載の化合物を調製するための過程にも関する。一態様において、化合物は、化合物形成反応を含む方法または過程によって調製され得、反応は、銅トリフラートおよびアミノアルコールの使用を含む。アミノアルコールは、式3の化合物:
Figure 2023518775000010
式中、置換基、XおよびZは、H、アルキル(例えば、C~Cアルキル、例えば、メチル)、置換されたアルキル、例えば、置換されたC~Cアルキルから独立して選択され得、またはXおよびZはC~Cシクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル環を形成するために一緒に結合され得;式中、整数n、R、Rは、本明細書に記載されている態様の任意の1つまたは組み合わせにおいて定義されるとおりである、であり得る。一態様において、式3のXおよびZはHであり、R、Rは、本明細書に記載される態様の任意の1つまたは組み合わせで定義されるとおりである。さらに別の態様において、XおよびZはいずれもHであり、RおよびRはいずれもアルキル、例えばC~Cアルキル、例えばメチルであり、nは2である。
別の局面において、本開示による化合物は、3(サルコシン)位に脱離基を含むシクロスポリンA中間体を、式3の化合物などのアミノアルコール化合物と反応させることを含む過程によって調製され得る、または取得可能である。別の態様において、本明細書に記載される化合物は、a)シクロスポリン化合物、例えばシクロスポリンAをジピリジルジスルフィドと反応させて、チオピリジルシクロスポリン中間体(例えば、[(2’-(2-チオピリジル)-Sar]-シクロスポリンA)を形成させること、およびb)銅トリフラートの存在下で前記中間体をアミノアルコール化合物と反応させることを含む過程または方法に従って取得可能であり得る。アミノアルコールは、上記の式3に従って定義される化合物であり得る。使用され得るアミノアルコール化合物の例としては、限定されないが、モルホリノエタノールまたはジメチルアミノエタノールが挙げられる。本発明による化合物の調製の過程は、工程b)で得られた化合物を、アルケニル部分(例えば、スチレン化合物;またはビニルアレーンもしくはヘテロアレーン化合物)を含む化合物および触媒、例えばグラブス触媒と反応させる工程c)をさらに含み得る。
本発明の化合物は、式に指定または示される立体中心に加えて、それらのすべてのエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体またはその他の混合物の他、多形、溶媒和物、水和物、錯体および塩を含み得ることが意図される。別段示されない限り、式に指定もしくは示されていないか、または本明細書に名称が与えられている/記載されている1つまたは複数の不斉中心を含む本発明の範囲内の化合物は、すべてのエナンチオマー、ジアステレオマー、それらの混合物、そのラセミ体またはその他も含むことも意図される。本開示における二重結合の表現は、図示されている異性体を指すが、任意で、他のZ(またはE)異性体も含み得る。本発明の文脈において、当技術分野で周知の方法によって決定または調製される、任意の光学的に純粋なまたは立体化学的に純粋な立体異性体、および立体異性体の任意の組み合わせの使用も含まれる。
任意で、本発明の化合物は、それらの同位体、すなわち、水素を重水素で、または炭素を炭素-13でなど原子が同位体で置き換えられている化合物も含み得る。
本明細書で定義されるとおり、薬学的に許容され得る化合物は、一般に安全で、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくないものではなく、許容され、ヒトにおける薬学的使用に適合する化合物である。
薬学的に許容され得る塩は、その生物学的特性を保持し、非毒性であり、薬学的使用に適合する、本明細書で提供されるような化合物の塩である。
本開示による塩は、式1、式2の化合物または本明細書に記載される特定の化合物の任意の1つへの酸の添加から生じ得る。得られる酸付加塩としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、クエン酸、乳酸、マンデル酸、グリコール酸、アジピン酸、アルギン酸、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸)、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)ショウノウ酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン、グルコン酸(例えば、D-グルコン酸)、グルクロン酸(例えば、D-グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L-グルタミン酸)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素(hydriodic)酸、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)-L-乳酸および(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸(例えば、(-)-L-リンゴ酸)、(±)-DL-マンデル酸、メタリン酸、メタンスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸(例えば(+)-L-酒石酸)、チオシアン酸、ウンデシレン酸および吉草酸とともに形成されたものを含み得る。特に、酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの鉱酸から;酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、アリールスルホン酸などの有機酸から誘導されるものを含み得る。
本発明の化合物は、疾患または医学的症状の治療または予防、および医薬品の製造において有用であり得る。
本明細書で使用される場合、「処置」という用語と同義に使用され得る「治療」という用語は、疾患、症状または前記疾患もしくは症状に関連する症候の治癒、改善、寛解、制御、進行の制御、進行の予防、再発の予防をもたらすことができる治療的介入に関する。
本明細書で理解されるように、用語「予防(prophylaxis)」と互換的に使用され得る用語「予防(prevention)」は、疾患、症状もしくは症候の発生を予防するための、または疾患、症状もしくは症候の発生の可能性を有意に低下させるための化合物または組成物の使用、および例えば、疾患、症状もしくは関連する症候のさらなる再発の予防を指す。また、この用語の意味の範囲内には、最初の改善後または疾患、症状もしくは症候の原因の最初の除去後の、前記疾患、症状または関連する症候の進行の予防も含まれる。
特に、本発明による化合物は、シクロフィリン媒介性疾患または症状の処置および/または予防のために使用され得る。
特に、本明細書に記載される化合物は、シクロフィリン、特にシクロフィリンA(CypA)および/またはシクロフィリンD(CypD)の阻害剤として使用され得る。一態様において、化合物は、シクロフィリンDの阻害剤として使用される、例えば、シクロフィリンDの阻害のために治療上適切な量で提供または投与される。本明細書で一般的に理解されるように、「治療有効量」という用語は、疾患または症状を処置または予防するために対象(例えば、ヒト対象)に投与された場合に、そのようなその処置または予防をもたらすのに十分である量である。
これらのシクロフィリンの過剰発現は、様々な疾患および症状、特にヒトにおける炎症性疾患と関連付けられ、または相関してきた。例えば、シクロフィリンAは、炎症応答を支援するように白血球遊走を促進するケモカインとして機能することが実証されており、シクロフィリンAの遮断は、急性炎症の動物モデルにおいて有益であることが示されている。現在では、多数の証拠も、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)と呼ばれるミトコンドリア膜の孔の開口を炎症の重傷形態である壊死性炎症の発症および維持にとって極めて重要であるものとして支持している。このMPTP開口の鍵となる調節因子はシクロフィリンDであり、CypDの阻害は壊死性炎症に関連する組織損傷の予防において優れた活性を示した。MPTPの開口およびその後の壊死性細胞死の開始は、酸化ストレス、低酸素、胆汁酸塩毒素などを含む様々な因子に起因する上昇した細胞内カルシウムレベルによって引き起こされる。したがって、CypDの薬理学的阻害は、臓器組織の虚血-再灌流傷害に起因する組織分解に対して保護的であり得る。
本開示による化合物は、実施例で証明されるように、シクロフィリン、特にシクロフィリンDの阻害剤として驚くほど有効であることが明らかとなった。したがって、化合物は、疾患または症状の処置または予防に有用であり得、ここで、シクロフィリンの上昇したレベルまたは活性は、前記疾患もしくは症状に関連するか、前記疾患もしくは症状に寄与するか、または前記疾患もしくは症状をもたらす。特に、本発明に従って処置または予防され得るシクロフィリン媒介性疾患または症状は、シクロフィリン-D媒介性疾患または症状であり得る。前記疾患または症状は、例えば、MPTPの上方制御された開口に起因するミトコンドリア機能不全の結果であり得る。
一態様において、(例えば、細胞損傷または細胞死の予防または軽減のための)細胞保護剤として、または(例えば、ミトコンドリア機能不全または損傷の予防または軽減のための)ミトコンドリア保護剤として本開示による化合物が使用され得る。
シクロフィリン媒介性疾患または症状は、典型的には、炎症応答、細胞損傷、障害および/または細胞死(例えば、壊死)に関連する疾患および症状であり、以下にさらに記載されるような疾患および症状を含み得るが、これらに限定されない。
一態様において、細胞傷害または細胞死、例えば細胞壊死(細胞膜の完全性の喪失および細胞外マトリックスへの細胞成分の放出に関連するプログラムされていない細胞死)に関連する疾患または症状の処置および/または予防において、本発明による化合物が使用され得る。細胞傷害および細胞死は、結果であり得るか、または誘導され得る、例えば、傷害、感染、梗塞、炎症、虚血、毒素への曝露、温度外傷、身体的外傷など)。
本明細書で理解されるように、「細胞」または「細胞の」という用語は、細胞の集合物または凝集物、すなわち細胞組織も指し得る。前記組織は、処置されるべき対象において典型的に見られる腎臓、肝臓、心臓、肺およびその他の臓器などの特定の臓器に関連し得るか、または位置し得る。
一態様において、本発明による化合物は、臓器不全または臓器傷害の処置または予防において使用され得る。前記臓器は、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、腸、角膜、皮膚、脳および神経組織から選択され得る。神経組織の例は、例えば、中枢神経組織または末梢神経組織である。一態様において、臓器は腎臓である。本明細書で理解されるように、臓器不全または臓器傷害は、対象中の1つ、2つ、または複数の臓器の不全または損傷を指し得る。例えば、腎不全または腎損傷は、対象または患者の1つの腎臓の症状を指し得るが、任意で2つまたは両方の腎臓の症状も指し得る。一態様において、化合物は、多臓器不全(例えば、腎臓、肺および肝不全)を処置および/または予防するために使用され得る。
別の態様において、腎臓の疾患または症状、すなわち腎臓の疾患または症状の予防および/または処置のために、本発明による化合物が使用され得る。腎臓の疾患または症状は、例えば、腎臓または腎組織の異常なまたは損なわれた機能によって特徴付けられ得る。異常なまたは損なわれた腎機能は、当技術分野における標準的な臨床診断方法、例えば、限定されないが、血中尿素窒素および/または血清クレアチニンなどの腎機能マーカーの測定に従って決定され得る。さらなる態様において、虚血、すなわち本明細書に記載されるような組織または臓器中の虚血の予防および/または処置のために、本発明による化合物が使用され得る。虚血または虚血傷害は、一般に、組織の領域への血液供給が遮断または中断されると起こり、要因の中でもとりわけ、酸素の不足または組織への酸素の不十分な供給をもたらす。虚血傷害の発生率は、例えば、限定されないが、心筋梗塞、脳卒中およびその他の血栓性事象に起因し得るおよび/またはその結果であり得る。組織が酸素欠乏を生き延びることができる時間の長さは様々であるが、最終的に虚血性組織は壊死状態になり得る。一態様において、化合物は、心筋虚血、腎虚血、脳虚血、または肝虚血の処置のために使用され得る。
虚血傷害は、血管が交差クランプされている手術の間、移植用臓器中で起こり得る。虚血-再灌流(再酸素化)傷害は、一定期間の虚血または酸素欠乏(無酸素症、低酸素症)後に血液供給が組織に復帰する際に引き起こされる組織損傷である。理論に束縛されるものではないが、虚血期間中の血液からの酸素および栄養素の欠如は、循環の回復が炎症および酸化的損傷をもたらす症状を作り出すと考えられる。
一態様において、本発明による化合物は、虚血-再灌流傷害の処置または予防において使用され得る。虚血-再灌流傷害は、外科的処置に関連し得るか、または外科的処置の結果であり得る。
外科的処置は移植処置であり得る。虚血-再灌流傷害は、レシピエント対象においてまたはドナー対象において起こり得る。臓器移植または臓器組織移植では、ドナーの血液供給から臓器または組織を除去してから、臓器または組織をドナーレシピエントの血液供給に再接続するまでの間に期間が存在する。いくつかの事例では、臓器を手術の場所まで長距離輸送する必要があることがあり得、臓器損傷の可能性が高まる。一態様において、本発明は、臓器移植に関連する、または臓器移植の結果としての虚血-再灌流傷害の処置または予防のための本明細書に記載される化合物の使用に関する。
一態様において、本発明の化合物は、臓器移植レシピエント(例えば、腎臓移植レシピエント)に投与される。
なおさらなる態様において、虚血-再灌流傷害は腎虚血-再灌流傷害であり、これは例えば、腎臓に供給する血管が腎移植などの外科的処置の少なくとも一部の期間にわたってクランプされる外科的処置から生じ得る。一態様において、本明細書に記載される化合物は、急性腎障害の予防または処置のために使用される。
腎移植処置は、腎虚血および腎虚血-再灌流傷害によって誘発されまたは引き起こされ得る急性腎障害などの症状のリスクを伴う。腎虚血は、動脈閉塞、ショックおよび腎移植から生じ得、腎細胞死および腎不全をもたらし得る。さらなる態様において、本明細書に記載される化合物は、腎移植処置に関連するまたは腎移植処置の結果生じる急性腎障害の予防または処置のために使用される。例えば、ドナー腎臓の取り出し後、血流の喪失(虚血)の結果として、腎組織は酸素欠乏を受け得、虚血性腎組織への損傷は、流れの再開時にさらに生じ得る(再灌流傷害)。シクロフィリンDの強力な阻害によって保護剤として使用され得る化合物の投与による、このような損傷の予防および虚血ストレス後のMPTP開口の予防は、移植された臓器の生存能力を改善するのに役立ち得る。
他の態様において、本発明は、任意で前記臓器もしくは臓器組織の移植の結果であってもよいまたは前記臓器もしくは臓器組織の移植に関連してもよい、肝臓のまたは心臓の虚血-再灌流傷害の処置または予防のための本明細書に記載される化合物の使用に関し得る。
本開示によれば、上記で定義される化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、例えば、移植手術中などに、臓器を保全するためのおよび/または臓器を臓器傷害から保護するための医薬品の製造において使用され得る。
(例えば、前記化合物を含む医薬品の製造における)化合物の使用の状況において、さらに移植手術の状況において、化合物または医薬品は、臓器ドナーから臓器レシピエントへの臓器の移植の前、その間および/またはその後に、臓器ドナーにおよび/または臓器レシピエントに投与され得る。
一態様において、本発明の化合物は、ドナー臓器の取り出しの前に、例えば全身投与、例えば注射または注入によってドナー対象に投与され得る。これに代えてまたはこれに加えて、本発明による化合物は、個体から臓器を取り出した後および移植または再付着の前に臓器に投与され得る。例えば、化合物は、その中に臓器が配置されている流体に添加され(またはその中に含まれ)得る、ならびに/または本明細書に記載される化合物は、臓器内および/もしくは臓器を通って再循環される流体に添加され(またはその中に含まれ)得る。
別の態様において、本発明による化合物は、手術の開始前に対象に、例えば移植手術の開始前に臓器移植レシピエントに投与され得る。なおさらなる態様において、化合物は、手術中および/または手術後にも、例えば移植レシピエントの場合には、移植中および/または移植後に投与され得る。なおさらなる態様において、化合物は、移植過程および/または回復期間の期間を通じて、ドナー、任意で、切除された臓器、およびレシピエントに投与され得る。
本明細書で使用される「ドナー」または「臓器ドナー」という用語は、臓器(または臓器の組織)がそこから取り出される対象を指す。前記ドナーは、生きたドナーであり得る。あるいは、ドナーは、臨床的に死亡したドナーであり得、「臨床的に死亡した」という用語は、当業者によって一般に理解され、例えばヒト対象に適用される、当技術分野における標準的な臨床的および/または法的ガイドラインによって定義される。
さらに、「対象」または「患者」という用語は互換的に使用され得、一態様において、ヒト対象を指す。同様に、本明細書で使用される「臓器ドナー」または「臓器レシピエント」などの用語は、ヒト対象を指し得る。これらの用語はまた、他の哺乳動物などの他の動物を指し得る。本発明は、さらなる態様において、例えば、家畜またはその他の獣医学的対象、特に、ネコ、イヌ、霊長類、ウマ、ウシおよびブタなどの哺乳動物にも適用され得る。本発明はまた、そのような動物がヒト移植に適した臓器を有するトランスジェニック動物(例えば、トランスジェニックブタ)にも適用され得る。
臓器の取り出し前に臓器ドナーに本発明の化合物の全身用量を投与することができる。これにより、取り出し前に臓器が保護用量の化合物を受けることが可能になり、それにより、除去中、およびドナーレシピエントへの移植の過程までおよびその間に臓器を損傷から保護することによって臓器が保全される。2つ以上の臓器がドナーから取り出されている場合、この全身用量は、各臓器が化合物の用量を確実に受け取るようにする。全身用量はまた、移植されるべき臓器組織に化合物の均一な用量を提供する可能性がより高い。ドナーが法的に死亡している場合、用量は、生きている対象に通常与えられるよりも大きくすることができる。
化合物は、臓器摘出手術の直前または臓器摘出手術中に投与することができる。例えば、本発明の化合物は、手術の8、7、6、5、4、3、2または1時間前まで投与され得る。
これらに代えてまたはこれらに加えて、臓器レシピエントは、その血液供給が本発明の化合物の保護用量を含有し、それによって移植された臓器または身体部分を手術後に損傷から保全するように、臓器を受け入れる直前に本発明の化合物の用量を受けることができる。
本明細書で上述した化合物(または方法もしくは使用)の態様において、臓器は任意の移植可能な臓器であり得、例えば、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、腸、角膜、皮膚、脳および神経組織であり得る。
上記のように、本開示は、臓器に対する損傷を予防し、処置し、改善し、および/または低減するためのシクロフィリン阻害剤として作用する化合物の投与を提供する。任意で、処置はまた、四肢、手、足、手指または足指などの身体部分への損傷の処置および予防に適用され得る。例えば、四肢の切断を伴う事故では、血液供給からの身体部分の切断から血液供給への身体部分の再接続までに期間が存在する。この期間中、虚血再灌流傷害の可能性も存在し得る。いくつかの事例では、身体部分および患者を手術の場所まで長距離輸送する必要があることがあり得、再付着前、再付着中および再付着後の損傷の可能性を増大させる。身体部分の場合、これらは、同じ個体から切断され、同じ個体に再付着され得るか、または第2の個体に移植片として与えられ得る。身体部分が対象から切断される場合、切断は完全または部分的であり得る。部分的な切断は、例えば血液供給の切断であり得るが、身体部分は、例えば皮膚、骨または筋肉組織を介して付着したままである。化合物は、(i)切断された身体部分に;および/または(ii)身体部分の再付着の前に対象に;および/または(iii)身体部分の再付着中もしくは再付着後に対象に投与され得る。
本発明の化合物は、任意で、1つまたは複数のさらなる活性物質とともに投与され得る。
さらなる局面において、本開示は、腎臓症状または疾患を誘導することができる腎毒素に曝露された対象における前記腎臓症状または疾患の処置または予防において使用するための本明細書に記載される化合物(すなわち、式1または式2の化合物またはその特定の態様)であって、前記腎毒素は腎毒性原薬または内因性腎毒素である、化合物も提供し得る。
腎毒素は、対象の腎臓およびその関連組織の機能を破壊し、または損なうことができる化合物または物質である。本開示の一態様において、腎臓症状または疾患を誘導することができる腎毒素は腎毒性原薬である。
本明細書で使用される場合、「腎毒性原薬」という用語は、症状、障害または疾患の予防、診断、安定化、処置または管理における医学的または治療的用途に有用であり、腎機能を破壊し、障害し、または低下させることができる、有効活性成分または薬理学的もしくは診断的に活性な化合物もしくは化合物の混合物である。腎毒性原薬は、前記腎毒性原薬または腎毒性物質の混合物と、1つまたは複数の非薬理学的に活性な賦形剤または担体とを含む医薬品または薬学的剤形として対象に提供または投与され得る。特に、腎毒性原薬は、その指示された治療または診断用途のための投与が、腎毒性副作用の可能性のために単一および/または累積用量で与えられる閾値用量量に関して制限される用量制限された原薬であり得る。腎毒性原薬はまた、その処方情報によると腎毒性が副作用としてもしくは有害作用として列記されている原薬として、ならびに/またはその意図される治療/診断用途のためのその所定の使用が、腎毒性原薬が投与される対象における腎毒性原薬の用量濃度(例えば、その血清濃度)および/もしくは例えば、腎毒性に関連する徴候およびマーカーに対するレシピエント対象の腎機能を監視するための助言を含む原薬としてさらに定義され得る。
本明細書で理解されるように、「腎毒素への曝露」または類似の語句は、症状、症候または疾患に対する処置の過程における腎毒素への対象の曝露を表し得、対象は、治療または診断目的のために、本明細書の様々な態様において定義されている腎毒性原薬の任意の1つまたは組み合わせなどの腎毒素の1つまたは複数の用量を投与される。本明細書で使用される「腎毒素への曝露」という語句はまた、腎毒素への対象の任意の意図しない曝露、例えば、限定されないが、針刺し損傷などからの偶発的曝露、または内因性腎毒素の放出および/もしくは蓄積を引き起こし得る身体的外傷もしくは長期の身体的ストレスなどの状況により生じた/不測の出来事を含む。
本明細書で理解されるように、「原薬」という用語、およびその属、科または種は、原薬自体、およびその任意の薬学的に許容され得る塩、水和物、誘導体またはプロドラッグを指し得る。例えば、「ゲンタマイシン」という用語は、その一般的な市販形態である硫酸ゲンタマイシンも含み得る。同様に、「アミノグリコシド」という用語は、例えば「アミノグリコシド系抗生物質」という用語と交換可能であり、当技術分野におけるその一般的な定義または分類内に入る任意の化合物を指す。
1つの特定の態様において、腎毒性原薬は化学療法剤である。化学療法剤は、好ましくは、例えば腫瘍細胞の標的化および死滅のために、対象における癌の治療において使用される細胞傷害剤または抗新生物剤である。1つの特定の態様において、化学療法剤は、プラチン(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチンまたはネダプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン)、ブレオマイシン、マイトマイシン、アクチノマイシン、シクロホスファミド、カペシタビン、シタラビン、ゲムシタビン、イホスファミド、インターロイキン-2、ストレプトゾシン、ゲムツズマブオゾガマイシン、メルファラン、メトトレキサート、ペメトレキセド、プリカマイシンおよびトリメトレキセートからなる群から選択される。
好ましくは、化学療法剤はシスプラチンである。白金錯体であるシスプラチンは、卵巣癌、肺癌、頭部癌、頸部癌、精巣癌および膀胱癌を含む様々な癌を処置するために使用される。しかしながら、シスプラチンは累積的かつ用量依存的な腎毒性を誘発し得るので、高用量は制限される。シスプラチンは、腎尿細管細胞、特に内側皮質および外側髄質の近位尿細管細胞によって取り込まれる。これらの細胞および部位は、障害および壊死性細胞喪失を受けやすく、急性腎障害および腎機能の障害をもたらす。腎毒性は、シスプラチンによる処置の反復過程とともにより重度になり、シスプラチンの腎毒性を軽減するための方法には、静脈内水和を伴う6~8時間の注入の使用が含まれる。本開示の特定の態様において、式1の化合物は、シスプラチン誘発性急性腎障害の処置および/または予防のために使用される。
一態様において、式1(または式2)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩が、癌処置を受けている対象に投与され、癌処置は、対象への化学療法剤の投与を含む。一態様において、対象は、化学療法剤の用量、例えばシスプラチンの用量を受け取る前に、本開示による化合物の用量を投与され得る。式1(または式2)の化合物はまた、化学療法の処置過程を通じて投与され得るか、または化学療法剤での癌処置を受けている対象に投与され得、前記対象は、前記化学療法薬への曝露後にまたはその結果として腎臓症状または疾患を発症した。前記化学療法薬はシスプラチンであり得る。
本開示の別の態様において、腎毒性原薬は抗菌剤であり得る。好ましくは、抗菌剤は、細菌、例えばグラム陰性および/またはグラム陽性細菌に対して活性な抗生物質剤である。一態様において、抗菌剤は、アミノグリコシド、βラクタム、ポリペプチド抗生物質、糖ペプチド抗生物質ペプチド模倣抗生物質、外膜タンパク質標的化抗生物質および抗真菌剤(例えば、アムホテリシンB)ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
1つの具体的な態様において、式1の化合物もしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、腎毒性原薬への曝露によって誘発される腎臓症状または疾患の予防または処置のために使用され、ここで、原薬は、アミノグリコシド系抗生物質である。アミノグリコシド系抗生物質は、特に、細菌感染症、特にグラム陰性細菌感染症の臨床的管理および処置のために使用される。アミノグリコシドは、腎尿細管細胞傷害および壊死に寄与することが見出されている。本明細書に記載される化合物は、アミノグリコシド系抗生物質処置を受けている対象における腎機能を保護するために使用され得る。一態様において、アミノグリコシド系抗生物質は、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、アプラマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ネオマイシンおよびシソマイシンからなる群から選択される。好ましい態様において、アミノグリコシド系抗生物質はゲンタマイシンである。ゲンタマイシンは、ブドウ球菌種、シトロバクター種、エンテロバクター種、大腸菌(escherichia coli)、クレブシエラ-エンテロバクター-セラチア種、プロテウス種およびシュードモナス・エルジノーサ(pseudomonas aeruginosa)を原因とする重篤な感染症の処置のための注射(筋肉内または静脈内)として投与される。抗生物質として有効であるが、ゲンタマイシンの使用は、血中尿素窒素(BUN)、血清クレアチニンまたは乏尿などの腎機能マーカーの上昇を特徴とする有害な腎作用および腎毒性の可能性のために、臨床医による慎重な監視および制御を必要とする。ゲンタマイシンの投与は、特に腎機能障害を有する患者について、治療上妥当であるが過剰でないレベルの薬物を維持するために、慎重に監視し、調整し、綿密に監視する必要がある。
一態様において、本発明による化合物は、腎機能の低下、特にゲンタマイシン誘発性腎臓症状、すなわち急性腎障害に対する保護剤として使用され得る。本開示の1つの特定の態様において、式1もしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、ゲンタマイシン誘発性急性腎障害の処置および/または予防のために使用され得る。化合物または前記化合物を含む医薬品は、ゲンタマイシンでの処置を必要とする感染症に罹患している対象の処置のために使用され得、前記対象はゲンタマイシンが投与される。一態様において、本開示による化合物の用量は、ゲンタマイシンの用量の投与前に対象に投与され得る。別の態様において、前記化合物は、低下した腎機能の開始後に、例えばゲンタマイシンへの曝露後に対象に投与され得る。
さらなる態様において、抗菌剤はβラクタムである。βラクタム抗生物質の例としては、セファロスポリン、およびウレイドペニシリン(例えば、ピペラシリン)、アミノペニシリン、カルボキシペニシリン、カルバペネムを含むペニシリンが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の文脈内には、タゾバクタム、スルバクタムおよびクラブラン酸などのβラクタマーゼ阻害剤との併用処置も含まれる。
別の態様において、抗菌剤は、ポリペプチド、糖ペプチドまたはペプチド模倣抗生物質である。非リボソームポリペプチドを含み得るポリペプチド抗生物質の例としては、バシトラシン、およびポリミキシンA、B、C、D、E(コリスチン)などのポリミキシンが挙げられる。糖ペプチドペプチドの例は、バンコマイシン、テイコプラニンである。抗菌剤は、天然由来のペプチドもしくは糖ペプチドに基づき得るか、またはアミノ酸修飾を有する合成もしくは半合成、例えばペプチド模倣化合物であり得る。ペプチド模倣抗生物質の例は、シュードモナス・エルジノーサに関連する重篤な感染症の処置において使用するための外膜タンパク質を標的とする抗生物質であるムレパバジンである。
一態様において、抗菌剤はムレパバジンである。一態様において、本明細書に記載される式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、感染症(例えば、シュードモナス・エルジノーサ感染症)に罹患している対象に投与され、前記感染症はムレパバジンの投与によって処置される。前記態様において、本明細書に記載される式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の用量は、ムレパバジンの用量の投与前に投与され得る。式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩はまた、ムレパバジンでの処方された処置の過程を通じて投与され得る。
別の態様において、式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、感染症(例えば、細菌および/または真菌感染症)に罹患している対象に投与され得、前記感染症は、抗菌剤を対象に投与することによって処置される。一態様において、対象は、抗菌剤の用量を受ける前に、例えばゲンタマイシンの用量を受ける前に、化合物の用量を投与され得る。化合物はまた、抗菌剤の処置過程を通じて投与され得、または前記抗菌剤での処置を受けており、前記抗菌剤への曝露の後またはその結果として、腎臓症状または疾患を発症した対象に投与され得る。前記態様において、好ましくは、抗菌剤は、ゲンタマイシンなどのアミノグリコシド系抗生物質である。
別の態様において、抗菌剤は、限定されないが、アスペルギルス、カンジダ、クリプトコッカスなどの真菌種に対して活性な抗真菌剤であり、真菌感染症に罹患している対象の処置のために使用される。抗真菌剤の例としては、5-フルオロシトシン、アムホテリシンB、フルコナゾールおよびカスポファンギンが挙げられる。
さらに別の態様において、腎毒性原薬は、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤またはアンジオテンシン受容体遮断薬などの血圧制御薬または医薬である。本明細書に記載される式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、高血圧または血圧の低下を必要とする症状に罹患している対象に投与され得、前記症状は、前記血圧制御薬または薬剤の対象への投与によって処置される。ACE阻害剤の例としては、カプトプリル、ラミプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リソノプリル(lisonopril)、キナプリルが挙げられるが、これらに限定されない。アンジオテンシン受容体遮断薬の例には、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、エプロサルタンおよびロサルタンが含まれるが、これらに限定されない。
別の態様において、腎毒性原薬は、マクロラクトン免疫抑制剤である。マクロライド免疫抑制薬とも呼ばれるこれらの化合物は、臓器移植レシピエントにおける臓器移植拒絶などの症状または疾患の予防または処置において使用され得る。一態様において、マクロラクトン免疫抑制剤は、タクロリムス、またはシロリムス(ラパマイシン)などのmTor阻害剤である。
別の態様において、腎毒性原薬はHIVプロテアーゼ阻害剤である。式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、HIVもしくは関連症状と診断されたかまたはHIVもしくは関連症状に罹患している対象に投与され得、前記HIVまたは関連症状は、HIVプロテアーゼ阻害剤を対象に投与することによって処置される。HIVプロテアーゼ阻害剤の例としては、インジナビルおよびリトナビルが挙げられるが、これらに限定されない。
一態様において、腎毒性原薬は、消化性潰瘍薬または医薬である。式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、潰瘍、例えば胃潰瘍と診断されたまたは罹患している対象に投与され得、潰瘍は、消化性潰瘍の薬または医薬を対象に投与することによって処置される。消化性潰瘍薬の例としては、シメチジン、エソメプラゾール、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾールおよびラベプラゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
一態様において、腎毒性原薬は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である。式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、疼痛、発熱および/または炎症を患っている対象に投与され得、前記疼痛、発熱および/または炎症は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を対象に投与することによって処置される。あるいは、本開示による化合物はまた、NSAIDを過量服用した対象に投与され得る。NSAIDの例としては、イブプロフェン、ケトプロフェン、ジクロフェナクおよびアスピリンが挙げられるが、これらに限定されない。
一態様において、腎毒性原薬は、緩下剤である。式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、便秘に罹患している対象に投与され得、前記便秘は、対象に緩下剤を投与することによって処置される。あるいは、本開示による化合物はまた、緩下剤を過量服用した対象に投与され得る。本開示の文脈における緩下剤の例は、リン酸ナトリウムである。
さらに別の態様において、腎毒性原薬は造影剤である。造影剤は、内臓または組織の視覚化のための診断ツールとして使用される物質である。造影剤は静脈内に投与され得る。1つの具体的な態様において、造影剤は、ヨウ素化された造影剤、例えば、ジアトリゾエート、イオタラメート、イオヘキソール、イオジキサノールまたはイオパミドールであるが、これらに限定されない。式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、造影剤誘発性急性腎障害または腎症の予防または処置において使用され得、ヨウ素化された造影剤などの造影剤を使用して診断を受けている、受けたことがある、または診断を必要とする対象に投与され得る。
本開示による化合物またはその薬学的に許容され得る塩で処置されるまたは投与される対象は、一態様において、治療法としてまたはインビボ診断用途のために腎毒性薬を投与され得る。他の態様において、対象は、2つ以上の腎毒性原薬を受け得る。例えば、式1もしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩で処置または投与された対象は、同時に、例えば、併用処置として、または、異なる症状もしくは異なる局面もしくは症状もしくは疾患に関連する症候に対する別個の処置として、2つ以上の原薬を受け得る。一態様において、本開示による化合物が投与される対象は、腎毒性原薬と、第2のさらなる原薬(例えば、ピペラシリン/タゾバクタム)との特定の組合せでの一連の処置を受けていてもよく、任意で、第2のさらなる原薬も腎毒性原薬であってもよい。一態様において、1つの腎毒性薬物での処置は、別の(腎毒性)原薬の腎毒性のリスクを助長または増強し得る。他の態様において、対象は、本開示の化合物が投与される期間中に2つ以上の原薬を受け得る。
本開示の別の態様において、腎臓症状または疾患を誘導することができる腎毒素は、内因性腎毒素である。本明細書で定義されるように、内因性腎毒素は、外因性毒素と考えられ得る上記の腎毒性原薬とは対照的に、対象によって内因的に産生される分子または物質(例えば、タンパク質)であり、外部から投与されない。内因性腎毒素は、正常な生理学的および恒常的状態の間には、非腎毒性濃度または量で対象または対象の血液もしくは血清中に存在し得るが、上昇したレベル、すなわち閾値またはベースライン濃度を超えると、腎毒性になり、腎毒性成分に分解もしくは崩壊し、ならびに/または腎毒性の発現および腎組織傷害につながる細胞性または炎症性応答事象を誘発し得る。
一態様において、内因性腎毒素はミオグロビンであり、任意で、ミオグロビンに関連する任意の崩壊もしくは分解生成物または放出された成分であってもよい。ミオグロビンは、筋肉組織に見られる酸素および鉄結合タンパク質である。高レベルのミオグロビンおよびその関連成分は、腎尿細管細胞に対して直接毒性であり得、病態の中でも特に、腎血管収縮、尿細管内円柱の形成ももたらし得る。
横紋筋融解症は、骨格筋組織の損傷または分解を特徴とする症状であり、組織の内容物が循環中に放出される。高レベルのミオグロビンの放出は、ミオグロビン尿症の関連症状にも関連する。内因性細胞成分が腎毒性になり得る他の症状としては、限定されないが、溶血(損傷を受けた赤血球の内容物、例えばヘムが循環中に放出される赤血球溶解)および腫瘍溶解または骨髄腫などの症状が挙げられる。癌患者中の腫瘍は、(例えば、化学療法の過程で)溶解し、腫瘍細胞内容物を循環中および腎臓に放出し得る。
特に、対象は、横紋筋融解症およびその関連症状に罹患し得るか、または罹患するリスクがあり得、多数の因子、特に身体的活動または外傷に起因するミオグロビンなどの内因性腎毒素への曝露のリスクがあり得る。一態様において、式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、内因性腎毒素(例えば、横紋筋融解症またはミオグロビン尿症誘発性急性腎障害)への曝露によって誘発される腎臓症状または疾患の予防および/または処置のために使用され、身体的外傷、挫滅創、極端な身体的労作または活動、極端な温度、電流への曝露、ならびに筋組織の損傷および筋線維および/または血球の崩壊をもたらし得る他の活動または事象の任意の1つまたは組み合わせを経験したか、または患っている対象に投与される。
さらなる関連する態様において、本開示による化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、横紋筋融解症の発症に関連するか、または横紋筋融解症の発症のリスクがある活動(例えば、極端な身体的活動または労作)への曝露または関与の前に対象に投与され得る。極端なまたは身体的な活動または労作は、例えば、骨格筋傷害の他、任意で重度の脱水を引き起こすまたはもたらす激しい運動であり得る。
横紋筋融解症の発症のリスクがあり得る対象には、ミオパシーを潜在的に引き起こし得るかまたはもたらし得る毒素またはスタチンなどの原薬に曝露された対象が含まれる。任意で、式1(または式2)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩はまた、遺伝性ミオパシーを有する対象における横紋筋融解症およびその関連する症状または疾患の予防または処置のために使用され得る。
式1(または式2)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、別の態様において、横紋筋融解症溶血、ミオグロビン尿症、または任意で腫瘍溶解もしくは骨髄腫誘発性急性腎障害もしくは不全の予防および/または処置において使用するために提供される。
一態様において、本開示による化合物またはその薬学的に許容され得る塩が投与され得る対象は、上昇した血清および/または尿ミオグロブリンレベル、すなわち、血清中および/または尿中のミオグロビンの上昇した濃度を有し得る。これらに代えて、またはこれらに加えて、前記対象はまた、上昇した血清レベル、すなわち、上昇した血清濃度のクレアチンホスホキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、カルシウム、カリウム、ホスファートの任意の1つまたは組み合わせを有し得、筋肉損傷の存在を示す。さらなる関連する態様において、式1もしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩が与えられる対象は、ベースラインより少なくとも5倍高い血清クレアチンホスホキナーゼレベルを有する。
本明細書で定義されるように、クレアチンホスホキナーゼの血清濃度レベルに関連して使用される「ベースライン」という用語は、腎毒素にまだ曝露されていない個体についての臨床的に適用可能なまたは予想される血清クレアチンホスホキナーゼレベルもしくは範囲、または年齢群、性別、既存の併存症などの、但しこれらに限定されない基準の任意の1つまたは組み合わせに起因し得る変動性を考慮に入れる内因性腎毒素、例えばミオグロビンの腎毒性レベルもしくは濃度を指す。血清クレアチンホスホキナーゼまたは任意の他のマーカーのベースライン値またはベースライン範囲は、当業者の知識の範囲内であり得、または当技術分野の一般的な方法に基づいて決定され得る。
一態様において、腎毒性原薬は、対象に繰り返し投与される。換言すれば、原薬は1回より多く、すなわち少なくとも2回投与される。腎毒性原薬は、一定期間にわたって、例えば臨床的に決定された処置期間の過程にわたって、規則的な間隔で投与され得る。いくつかの態様において、腎毒性原薬は、少なくとも3日、もしくは少なくとも7日の期間にわたって少なくとも1日1回投与され得るか、または7~10日間、少なくとも1日1回投与され得る。代替の態様において、腎毒性原薬は、例えば診断用途のために1回投与され得る。
本明細書に記載される式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、腎毒性原薬または内因性腎毒素によって誘発される対象における腎臓症状または疾患の予防および/または処置のために使用され得る。好ましい態様において、腎臓症状または疾患は、腎毒素誘発性急性腎障害または腎不全である。一態様において、誘発された急性腎障害は、例えば腎臓への低下した血流に関連する前腎性急性腎障害である。例えば、ACE阻害剤およびアンジオテンシン受容体遮断剤は腎灌流を損なうことがある。NSAIDはまた、糸球体濾過速度も減少させ得る。さらなる態様において、誘導された急性腎障害は内因性であり、糸球体、尿細管(急性尿細管傷害または壊死)、間質(intersititum)および/または脈管構造を含む腎臓への細胞または組織の損傷を伴う。急性尿細管傷害または壊死は、例えば、尿細管細胞への細胞傷害性原薬の蓄積または局在化に起因して起こり得る。
一態様において、本明細書に記載される、例えば、式1に従う、もしくは式2に従う化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、本明細書で定義される腎毒素に曝露された場合に、腎臓症状または疾患を発症する対象のリスクを増加させる既存の症状または疾患を有する対象に投与され得、例えば、対象は、肺(例えば、慢性閉塞性肺閉塞)、肝臓(例えば、慢性肝疾患)もしくは心臓(例えば、冠動脈疾患、または心不全)などの臓器における既存の機能不全もしくは機能障害などの既存の症状もしくは併存疾患を有し得る、および/または前記臓器に関連する大手術を最近受けたことがあり得る。さらなる態様において、対象が(高齢の)老人である、および/または糖尿病を有する。
さらなる態様において、対象は、腎臓の既存の症状、例えば慢性腎疾患、多発性嚢胞腎疾患、腎結石、または腎炎症も既に有し得る。任意で、対象は腎機能障害の病歴を有し、および/または透析を必要とする。
なおさらなる態様において、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、低下した腎機能を有する対象に投与され得る。低下した腎機能は、ベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血中尿素窒素(BUN)レベル、および/または概ねベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血清クレアチニンレベル、および/または乏尿の任意の1つまたは組み合わせを特徴とし得る。一態様において、対象は、ベースラインより少なくとも2倍高い血清クレアチニンおよびBUNレベルを特徴とする低下した腎機能を有する。
本明細書で定義されるように、クレアチニンの血清レベル、すなわち血清濃度および/または血中尿素窒素(BUN)レベル、すなわち血中尿素窒素濃度に関連して使用される用語「ベースライン」は、腎毒性原薬への曝露の開始前に(例えば、腎毒性原薬の投与を含む処置レジメンの前に)対象について決定されたこれらの腎機能マーカーのベースライン値を指し得る。対象が腎毒素への曝露前および低下した腎機能の開始前に測定された血清クレアチニンまたはBUNレベルを有していない状況では、「ベースライン」という用語は、年齢群、性別、既存の併存症などの、但しこれらに限定されない基準に起因し得る変動性を考慮に入れた、腎毒素にまだ曝露されていない個体の臨床的に適用可能なまたは予想される血清クレアチニンおよび/または血中尿素窒素の値または値の範囲を指し得る。これらのベースライン値または値の範囲は、当業者の知識の範囲内であり得、および/または当技術分野の一般的な方法の範囲内で決定され得る。
式1もしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、一態様において、腎毒性原薬への対象の曝露前に対象に投与され得る。本明細書で理解されるように、曝露前の式1または式2の化合物の投与は、腎毒性薬物の第1の用量が投与される前の前記化合物の第1の用量の投与を指す。
さらに、いくつかの態様において、本開示による化合物またはその薬学的に許容され得る塩の用量は、例えば、腎毒性原薬がその定められた処置過程の間に繰り返して、例えば2回以上投与されれば、腎毒性原薬の任意の用量が投与される前に投与され得る。したがって、化合物の用量は、腎毒性原薬の連続用量の間の期間に投与され得る。任意で、腎毒性原薬の連続する用量の間の期間に、本開示による化合物の2つ以上の用量が投与され得る。
一態様において、本開示は、本明細書に定義される腎毒性原薬(例えば、急性腎障害)によって誘発される腎臓症状または疾患の予防または処置において使用するための本開示による化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供し、該化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、対象が腎毒性原薬に繰り返して曝露されるかまたは腎毒性原薬を投与される第2の期間の前に開始し、第2の期間と重複する第1の期間中に対象に繰り返して投与される。本明細書で使用される場合、「繰り返して」とは、少なくとも2回、すなわち2回以上の投与または曝露を指す。期間は、例えば、症状、障害または疾患の予防、安定化、処置または管理における意図された薬理学的効果に関して治療的に適切と臨床的に決定される処置の経過または期間として理解され得る。
本明細書で使用される場合、時間、時間間隔の指示または量の指示が前置または後置されていなければ、用語「用量」または「投与量」それ自体は、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容され得る塩または原薬の単回用量または単位用量を表す。例えば、「1日用量」または「1日投与量」は、1日(24時間)の間に投与される本明細書に記載される化合物、または原薬の総用量量を指す。1日用量は、1用量のみが1日当たり1回投与される場合には、1用量のみを含み得るが、例えば、1日の間に、2つ以上の時間を設定された間隔で2つ以上の単位用量が投与される場合には、1日の間に投与された複数の単位用量の合計に基づく総量でもあり得る。用量間の間隔は、例えば、およそ12時間ごとに投与される2用量、またはおよそ8時間ごとに投与される3用量であり得る。また、本明細書で使用される場合、化合物の用量は、単位用量の式1の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を指し得るが、化合物またはその薬学的に許容され得る塩の前記単位用量を含む医薬品または組成物または剤形にも適用可能であり得る。
一態様において、本開示による化合物またはその薬学的に許容され得る塩の用量は、腎毒性原薬の用量が対象に投与される前の24時間以内に対象に投与され得る。別の態様において、化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、アミノグリコシド、例えばゲンタマイシンの用量が対象に投与される前の24時間以内に対象に投与され得る。
一態様において、本明細書中に記載される、例えば、式1もしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、低下した腎機能の開始後に対象に投与される。低下した腎機能の開始は、生理学的マーカーの中でも特に、血清クレアチニンおよび/もしくは血中尿素窒素(BUN)の上昇したレベルならびに/または乏尿によって特徴付けられ得る。一態様において、前記低下した腎機能の開始は、ベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血中尿素窒素レベルおよび/またはベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血清クレアチニンレベルおよび/または乏尿によって特徴付けられ得る。一態様において、対象は、ベースラインより少なくとも2倍高い血清クレアチニンおよびBUNレベルを特徴とする低下した腎機能を有する。
低下した腎機能の開始は、一態様において、腎毒性原薬への曝露に起因し得る。例えば、対象は、腎毒性原薬での処置の過程中に、腎毒性原薬の蓄積(例えば、血中濃度または特定の腎臓細胞または組織への局在化)、すなわち腎毒性原薬の累積用量への曝露に起因する腎臓の機能障害または機能不全を突然発症し得る。腎毒性原薬での処置の過程中に生じるまたは悪化する疾患または症状に対する併存症は、低下した腎機能の開始に寄与し得、急性腎障害をもたらす。他の態様において、低下した腎機能の開始は、例えば、上記態様の任意の1つに記載される内因性腎毒素への曝露によるものであり得、内因性腎毒素の蓄積をもたらす上記の条件のいずれかの下であり得る。
本明細書で使用される場合、用量量などの属性または値に関連する「約」などの用語は、正確な属性または正確な値に加えて、当技術分野および前記属性または値を測定または決定する方法に関連する通常のまたは受容された変動に含まれると通例考えられる任意の属性または値も含む。本用語は、一般的な実施において、評価されている製品が、特許請求される製品の記載された強度または用量と哺乳動物中で生物学的に同等であると考えられることを許容する任意の変動を許容する。
さらなる局面において、本開示は、上記態様の任意の1つまたは態様の組み合わせにおいて定義されるような腎毒素、例えば腎毒性原薬または内因性腎毒素に曝露された対象におけるベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血中尿素窒素レベルおよび/またはベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血清クレアチニンレベルの予防および/または低下において使用するための化合物または本明細書に記載されるその薬学的に許容され得る塩を提供する。
さらなる態様において、例えば式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、腎毒素に曝露された対象におけるベースラインより少なくとも2倍高い血中尿素窒素および血清クレアチニンレベルの予防のためにまたは低下のために使用され得、腎毒素は腎毒性原薬(例えば、ゲンタマイシン、または本明細書に記載される物質の任意の1つもしくは組み合わせ)である。なおさらなる態様において、式1、式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、腎毒素に曝露された対象におけるベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血中尿素窒素および血清クレアチニンレベルの低下の予防および/または低下のために使用され得、腎毒素はアミノグリコシド系抗生物質、好ましくはゲンタマイシンである。
別の態様において、式1もしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、対象、例えば腎毒性原薬(例えばゲンタマイシン)または内因性腎毒素に曝露された対象における血中尿素窒素および/または血清クレアチニンレベルを低下させるために使用され、任意で、血中尿素窒素および/または血清クレアチニンレベルは、用量、例えば式1の化合物または式2の化合物の第1の用量の投与後に低下される。BUNおよび血清クレアチニンの低下は、(例えば、第1の)用量の式1の化合物または式2の化合物の投与前および投与後に、当技術分野で確立された方法を使用して測定されたBUNおよび血清クレアチニン値を比較することによって決定され得る。
式1の化合物、もしくは式2の化合物、もしくはその薬学的に許容され得る塩の使用、または本明細書に記載される態様の任意の1つもしくは態様の組み合わせにおいて記載される処置もしくは予防の方法におけるそれらの使用は、前記使用または処置および/もしくは予防の方法に対して適合されたおよび指定された医薬品または医薬の製造または調製も提供し得ることを理解されたい。
本開示による化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、対象に経腸的または非経口的に投与され得る。一態様において、化合物、または式1のもしくは式2の前記化合物もしくはその塩を含む組成物もしくは医薬品は、投与に対して適合され得るか、または非経口的に、例えば、静脈内注射によって、または皮下注射によって、または筋肉内注射によって、または静脈内もしくは皮下注入によって投与され得る。代替の態様において、化合物、または化合物を含む組成物もしくは医薬品は、投与に対して適合され得るか、または対象に経腸的に、例えば経口的に投与され得る。
本発明は、本明細書で上記された態様の任意の1つまたは組み合わせによる化合物、例えば、式1のもしくは式2の化合物またはその薬学的に許容され得る塩と、1つまたは複数の薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬品または薬学的組成物にも関し得る。医薬品または組成物は、治療有効量または単位用量の前記化合物を含み得る。前記化合物を含む医薬品または薬学的組成物は、上記の投与方法のいずれかによる注射または注入に適したまたは適合された剤形で製剤化され得る。あるいは、経口投与のために、本開示による化合物を含む医薬品または薬学的組成物は、経口投与に適したまたは適合された剤形、例えば、限定されないが、錠剤、カプセル、ジェルキャップまたはフィルムなどで提供され得る。前記医薬品または薬学的組成物は、本明細書に記載される処置もしくは予防の方法または使用のいずれかに従って使用され得る。
以下の付番された項目のリストは、本開示中に含まれる態様である。
1.式1の化合物またはその薬学的に許容され得る塩、
Figure 2023518775000011
式中、
nは、2~5の整数から選択され;
およびRは、独立して、H、C~Cアルキルから選択されるか、またはRおよびRは、一緒に結合されて、C~Cシクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル環を形成し得;
は、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn-プロピルであり;
式中、Rは、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリールおよび置換されたヘテロアリールであり、前記置換は、任意で、C~Cアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、C~Cアルコキシル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択される1つまたは複数の置換基であってもよい。
2.RまたはRの少なくとも1つが、C~Cアルキルである、項目1に記載の化合物。
3.RおよびRがいずれも-CHである、項目2に記載の化合物。
4.RおよびRが一緒に結合されて、C~Cシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル環を形成する、項目1に記載の化合物。
5.RおよびRが一緒に結合されてモルホリニル残基を形成する、項目4に記載の化合物。
6.nが2である、項目1~5のいずれか1つに記載の化合物。
7.Rがエチルであるか;またはRがエチルであり、nが2であり、RおよびRがいずれも-CH(メチル)である、項目1~6のいずれか1つに記載の化合物。
8.Rが、イソプロピル、n-プロピルもしくは1-ヒドロキシエチルであるか;または
が、イソプロピル、n-プロピルもしくは1-ヒドロキシエチルであり、nが2であり、RおよびRがいずれも-CH(メチル)である、項目1~7のいずれか1つに記載の化合物。
9.Rが、アリールまたは置換されたアリールである、項目1~8のいずれか1つに記載の化合物。
10.Rがフェニルまたは置換されたフェニルであり、前記置換が、任意で、C~Cアルキル(例えば、メチルまたはt-ブチル)、ハロゲン(例えば、クロロ、フルオロ、ブロモまたはヨード)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシル、C~Cアルコキシル(例えば、メトキシ、フェノキシまたはt-ブトキシ)、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノ)、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル((例えば、-COOCH)、アルコキシカルボニル(例えば、アセトキシ)、アリール(例えば、フェニル)およびヘテロアリールから独立して選択される1つまたは複数の置換基であってもよい、項目1~9のいずれか1つに記載の化合物。
11.Rが、ナフタレンまたは置換されたナフタレンである、項目1~9のいずれか1つに記載の化合物。
12.Rが、ヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールである、項目1~8のいずれか1つに記載の化合物。
13.前記Rが、任意で、C~Cアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、C~Cアルコキシル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい、ピリジン、ピロール、ピラジン、ピリミジン、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、フラン、キノリン、ピラゾールおよびイミダゾールからなる群から選択され、項目12に記載の化合物。
14.前記化合物またはその薬学的に許容され得る塩が式2のものであり、以下から選択される、項目1に記載の化合物。
Figure 2023518775000012
Figure 2023518775000013
15.例えば疾患または症状、例えば腎疾患または症状の処置のための医薬品の製造における、項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用。
16.シクロフィリン媒介性疾患または症状、例えば、腎臓のシクロフィリン媒介性疾患または症状の予防または処置のための医薬品の製造における、項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用。
17.細胞傷害または細胞死に関連する疾患または症状の予防または処置のための医薬品の製造における、項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用。
18.前記細胞傷害または細胞死に関連する疾患または症状が臓器不全または臓器傷害である、項目15~17に記載の使用。
19.前記臓器が、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、腸、角膜、皮膚、脳および神経組織からなる群から選択される、項目18に記載の使用。
20.前記疾患または症状が虚血-再灌流傷害である、項目15~19のいずれか1つに記載の使用。
21.前記虚血-再灌流傷害が腎虚血-再灌流傷害である、項目20に記載の使用。
22.前記疾患または症状が急性腎障害である、項目15~19のいずれか1つに記載の使用。
23.前記急性腎障害が腎移植に関連するか、または腎移植の結果である、項目22に記載の使用。
24.医薬品が臓器移植レシピエントに投与される、項目15~23のいずれか1つに記載の使用。
25.前記医薬品が経口投与に対して適合されているか、または静脈内注射もしくは注入による投与に対して適合されている、項目15~24のいずれか1つに記載の使用。
26.前記医薬品が、臓器ドナーから臓器レシピエントへの臓器の移植の前、移植の間および/または移植の後に、前記臓器ドナーにおよび/または前記臓器レシピエントに投与される、項目15~25のいずれか1つに記載の使用。
27.臓器傷害から臓器を保全するためのおよび/または臓器を保護するための医薬品の製造における項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用であって、臓器ドナーからの前記臓器の取り出しの前に前記ドナーに、および/または前記臓器の移植の前、移植の間もしくは移植の後に臓器レシピエントに前記化合物を投与することを含む、使用。
28.臓器傷害から臓器を保全するためのおよび/または臓器を保護するための項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用であって、臓器ドナーからの前記臓器の取り出しの前に前記ドナーに、および/または臓器に前記化合物を投与することを含む、使用。
29.臓器傷害から臓器を保全または保護する方法であって、項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を、臓器ドナーからの前記臓器の取り出しの前に前記ドナーに、および/または臓器に投与する工程を含む、方法。
30.前記臓器が、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、腸、角膜、皮膚、脳および神経組織からなる群から選択される、項目27~29のいずれか1つに記載の使用または方法。
31.前記ドナーが生きたドナーであるか、または前記ドナーが臨床的に死亡したドナーである、項目27~30のいずれか1つに記載の使用または方法。
32.前記化合物が、静脈内注射または注入によって前記ドナーおよび/またはレシピエントに投与される、項目27~31のいずれか1つに記載の使用または方法。
33.腎臓症状または疾患を誘導することができる腎毒素に曝露された対象における前記腎臓症状または疾患の予防および/または処置のための医薬品の製造における項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用であって、前記腎毒素が腎毒性原薬または内因性腎毒素である使用。
34.前記腎毒性原薬が、抗菌剤、癌化学療法剤、ACE阻害剤およびアンジオテンシン受容体遮断薬を含む血圧薬、マクロラクトン免疫抑制剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、消化性潰瘍薬、非ステロイド系抗炎症薬、プロトンポンプ阻害剤、緩下剤および造影剤からなる群から選択される、項目33に記載の使用。
35.前記腎毒性原薬が、プラチン(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチンまたはネダプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン)、ブレオマイシン、マイトマイシン、アクチノマイシン、シクロホスファミド、シタラビン、カペシタビン、ゲムシタビン、イホスファミド、インターロイキン-2、ストレプトゾシン、ゲムツズマブオゾガマイシン、メルファラン、メトトレキサート、ペメトレキセド、プリカマイシンおよびトリメトレキセートからなる群から選択される化学療法剤である、項目34に記載の使用。
36.前記対象が癌処置を受けており、前記癌処置が対象への化学療法剤の投与を含む、項目35に記載の使用。
37.前記腎毒性原薬が、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、アプラマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、シソマイシン)、β-ラクタム(例えば、タゾバクタム、またはピペラシリン/タゾバクタム)、ポリペプチド抗生物質(例えば、ポリミキシンA、B、C、D、E(コリスチン)などのポリミキシン、糖ペプチド抗生物質(例えば、バンコマイシン)、外膜タンパク質を標的とする抗生物質(例えば、ムレパバジン)、抗真菌剤(例えば、アムホテリシンB)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される抗菌剤である、項目34に記載の使用。
38.前記抗菌剤がゲンタマイシンである、項目37に記載の使用。
39.前記対象が感染症に罹患しており、前記感染症が前記抗菌剤を前記対象に投与することによって処置される、項目33~38のいずれか1つに記載の使用。
40.前記血圧薬が、任意で、カプトプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、フォシノプリルおよびラミプリルからなる群から選択されてもよいACE阻害剤であるか、または任意で、カンデサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、エプロサルタンおよびロサルタンからなる群から選択されてもよいアンジオテンシン受容体遮断薬である、項目34に記載の使用。
41.前記HIVプロテアーゼ阻害剤が、インジナビルおよびリトナビルからなる群から選択される、項目34に記載の使用。
42.前記消化性潰瘍薬が、シメチジン、エソメプラゾール、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群から選択される、項目34に記載の使用。
43.前記非ステロイド系抗炎症薬が、イブプロフェン、ケトプロフェン、ジクロフェナクおよびアスピリンからなる群から選択される、項目34に記載の使用。
44.前記緩下剤がリン酸ナトリウムから選択される、項目34に記載の使用。
45.前記腎毒性原薬が造影剤である、任意で、ヨウ素化された造影剤(例えば、イオタラメート、またはイオジキサノール、またはイオヘキソール)であってもよい、項目34に記載の使用。
46.前記内因性腎毒素がミオグロビンであり、任意で、前記対象がベースラインより少なくとも5倍高いクレアチンホスホキナーゼ血清レベルを有してもよい、項目33に記載の使用。
47.前記対象が、身体的外傷または挫滅創、電流への曝露、極端な身体的労作または活動、および極端な温度を経験したか、または患っている、項目46のいずれか1つに記載の使用。
48.横紋筋融解症の発症に関連するまたは発症のリスクがある活動(例えば、極端な身体的活動)への曝露または関与の前に、前記医薬品が前記対象に投与される、項目46または47のいずれか1つに記載の使用。
49.前記腎毒性原薬が前記対象に繰り返し投与される、任意で、前記腎毒性原薬が、少なくとも2回、任意で、少なくとも3日または7日の期間にわたって少なくとも1日1回投与されてもよい、項目33~45のいずれか1つに記載の使用。
50.前記腎臓症状または疾患が腎毒素誘発性急性腎障害または腎不全である、項目33~49のいずれか1つに記載の使用。
51.前記腎臓症状または疾患が、横紋筋融解症、溶血、ミオグロビン尿症から選択され、または任意で腫瘍融解もしくは骨髄腫誘発性急性腎障害から選択されてもよい、項目33~50のいずれか1つに記載の使用。
52.前記対象が、腎毒素に曝露された場合に腎臓症状または疾患を発症する対象のリスクを増加させる既存の症状または疾患を有し、任意で、前記既存の腎症状が慢性腎疾患であってもよく、さらに任意で、前記対象が腎機能障害の病歴を有するか、または透析を必要としてもよい、項目33~51のいずれか1つに記載の使用。
53.前記対象が低下した腎機能を有し、任意で、前記対象がベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血中尿素窒素レベル、および/またはベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血清クレアチニンレベル、および/または乏尿を有する、項目52に記載の使用。
54.前記医薬品が、前記腎毒性原薬への前記対象の曝露前に前記対象に投与され、任意で、前記医薬の用量が、前記腎毒性原薬の用量が前記対象に投与される前の24時間以内に前記対象に投与され、さらに任意で、前記医薬の用量が、前記腎毒性原薬が前記対象に投与される前の約6時間以内、任意で約2時間以内に前記対象に投与される、項目33~53のいずれか1つに記載の使用。
55.前記医薬品が、ベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血中尿素窒素レベル、ベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血清クレアチニンレベルおよび乏尿の任意の1つまたは組み合わせによって特徴付けられる低下した腎機能の発症後に前記対象に投与される、項目33~54のいずれか1つに記載の使用。
56.前記医薬品の用量が低下した腎機能の発症の1~24時間後に前記対象に投与される、項目55に記載の使用。
57.対象が前記腎毒性原薬に繰り返し曝露される第2の期間の前に開始し、前記第2の期間と重複する第1の期間の間、前記医薬品が前記対象に繰り返し投与される、項目33~56のいずれか1つに記載の使用。
58.腎毒素に曝露された対象において、ベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血中尿素窒素レベルおよび/またはベースラインより少なくとも1.5~3倍高い血清クレアチニンレベルを予防および/または低下させるための医薬品の製造における、項目1に記載の化合物Iまたはその薬学的に許容され得る塩の使用。
59.前記腎毒素が、項目33~35、37~38または項目40~46のいずれか1つに定義されるとおりである、項目58に記載の使用。
60.前記対象が、項目33、36、39、46~47、52または53のいずれか1つに定義されている、項目58または59に記載の使用。
61.前記医薬品が、項目48~51または項目54~57のいずれか1つに定義されるように投与される、項目58~60に記載の使用。
62.前記レシピエント、ドナーおよび/または対象がヒトである、項目1~88のいずれか1つに記載の使用。
63.前記医薬品が、注入によるまたは注射による、好ましくは皮下、筋肉内もしくは静脈内注射、もしくは静脈内もしくは皮下注入による投与に対して適合されているもしくは製剤化されている、または経口投与に対して適合されているもしくは製剤化されている、項目1~89のいずれか1つに記載の使用。
64.医薬として使用するための、任意で、疾患または症状、例えば腎疾患または症状の処置のための医薬として使用するための、項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
65.シクロフィリン阻害剤(例えば、シクロフィリンAおよび/またはシクロフィリンD、または好ましくはシクロフィリンD)として使用するための、好ましくは、シクロフィリン媒介性疾患または症状、例えば、腎臓のシクロフィリン媒介性疾患または症状の予防および/または処置において使用するための項目64に記載の使用のための化合物。
66.前記使用が、細胞傷害または細胞死に関連する疾患または症状の予防および/または処置を含む、項目64または65に記載の使用のための化合物。
67.項目18~26の特徴の任意の1つまたは組み合わせをさらに含む、項目66に記載の使用のための化合物。
68.臓器傷害からの臓器の保全および/または臓器の保護において使用するための項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩であって、前記使用が、臓器ドナーからの前記臓器の取り出しの前に前記ドナーに、および/または前記臓器の移植の前、移植の間もしくは移植の後に臓器レシピエントに前記化合物を投与することを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
69.項目30~32に対して定義された特徴の任意の1つまたは任意の組み合わせをさらに含む、項目76に記載の使用のための化合物。
70.腎臓症状または疾患を誘導することができる腎毒素に曝露された対象における前記腎臓症状または疾患の予防および/または処置において使用するための項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩であって、前記腎毒素が腎毒性原薬または内因性腎毒素である、項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
71.項目33~63において定義された特徴の任意の1つまたは任意の組み合わせをさらに含む、請求項80に記載の使用のための化合物。
72.疾患または症状を処置するための方法であって、項目1~14のいずれか1つにおいて定義される化合物またはその薬学的に許容され得る塩を、項目1~14のいずれか1つにおいて定義され得る化合物またはその薬学的に許容され得る塩を投与することを必要とする対象、例えば腎臓の疾患または症状に投与することを含む、方法。
73.シクロフィリンを阻害するための、またはシクロフィリンの阻害によってシクロフィリン媒介性疾患もしくは症状を処置もしくは予防するための方法であって、項目1~14のいずれか1つにおいて定義される化合物またはその薬学的に許容され得る塩を、項目1~14のいずれか1つにおいて定義される化合物またはその薬学的に許容され得る塩を必要とする対象に投与することを含み、任意で、前記シクロフィリンがシクロフィリンAであり、および/または前記シクロフィリンがシクロフィリンDである、方法。
74.前記疾患または症状が細胞傷害または細胞死に関連する、項目72または73に記載の方法。
75.項目18~26において定義された特徴の任意の1つまたは組み合わせをさらに含む、項目74に記載の方法。
76.臓器傷害から臓器を保全するおよび/または臓器を保護するための方法であって、項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を、前記臓器を臓器ドナーから取り出す前に前記ドナーに、および/または前記臓器の移植前、移植中または移植後に、臓器レシピエントに投与することを含む、方法。
77.項目30~32に対して定義された特徴の任意の1つまたは任意の組み合わせをさらに含む、項目76に記載の方法。
78.腎臓症状または疾患を誘導することができる腎毒素に曝露された対象における前記腎臓症状または疾患を予防および/または処置するための方法であって、前記腎毒素が腎毒性原薬または内因性腎毒素であり、前記方法が、項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を前記対象に投与することを含む、方法。
79.前記方法が、項目33~63において定義された特徴の任意の1つまたは組み合わせを含む、項目98に記載の方法。
80.項目1~14のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩と、1つまたは複数の薬学的に許容され得る賦形剤とを含む薬学的組成物。
81.項目1~80のいずれか1つもしくは組み合わせに記載されている疾患もしくは症状の予防および/もしくは処置における、または上記項目のいずれか1つもしくは組み合わせに記載されている疾患もしくは症状の予防および/もしくは処置において使用するための医薬品の製造における、項目80に記載の薬学的組成物の使用。
82.前記項目のいずれか1つに記載の使用のいずれか1つまたは組み合わせに従って使用するための、項目80に記載の薬学的組成物。
83.項目1~82のいずれか1つに記載の方法、例えば、予防および/もしくは処置の方法、または保全および/もしくは保護の方法であって、前記方法が、項目80に記載の薬学的組成物を投与することを必要とする対象に項目80に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
84.R、R、RおよびRが、項目1~14に記載されている特徴の任意の1つまたは組み合わせにおいて定義されるとおりであり、前記アミノアルコキシサルコシン置換基の-(CH-部分の1つまたは複数の水素原子が、置換基、例えば、アルキル置換基(例えば、メチル)または本明細書に記載されている別の置換基で独立して置き換えられている、式1の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
85.項目15~63に定義される特徴の任意の1つまたは組み合わせによる医薬品を製造するための項目84に記載の化合物の使用。
86.項目1~14に定義される式1または2の化合物の任意の1つまたは項目84に定義される化合物を調製するための方法であって、シクロスポリンA中間体、例えばチオピリジル中間体を、アミノアルコール化合物、および任意で銅トリフラートと反応させる工程a)を含む、方法。
87.前記アミノアルコールが式3の化合物:
Figure 2023518775000014
であり、式中、置換基、XおよびZは、独立して、H、アルキル(例えば、C~Cアルキル、例えばメチル)、置換されたアルキル、例えば、置換されたC~Cアルキルから選択され得、またはXおよびZは一緒に結合されてC~Cシクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル環を形成し得、式中、整数n、R、Rは、項目1~14において定義されている特徴の任意の1つまたは組み合わせにおいて定義されているとおりである、項目86の方法。
88.工程a)から得られた化合物の反応を含み、前記反応がアルケニルまたはビニル化合物および触媒、例えばグラブス触媒を含む、項目86~87に記載の方法。
以下の実施例は、本発明を例示する役割を果たすが、本発明の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
実施例1-化合物の調製
本明細書に上記されるような化合物2~6は、上記の化合物1から調製され得る。化合物1の調製は、例えば、国際公開第2019/016572号に記載されている。
化合物2の調製
Figure 2023518775000015
1.5mLのDCM中の化合物1(50mg、0.0388mmol)の溶液に、グラブス触媒(20mg、0.0236mmol)を添加した。オレフィンV3(92mg、0.7760mmol)を室温で混合物に滴加した。得られた混合物を40℃で16時間撹拌した。室温に冷却した後、混合物を濾過した。濾液を濃縮し、クロマトグラフィーによって精製すると、所望の生成物である化合物2が得られた(H-NMR(400MHz CDCl,δ(ppm)):5.99、サルコシン残基);HRMSエレクトロスプレー(M+1)1366.6;1367.6);同位体分布による質量(1364.94(100%)、1365.94(77.9%))。
化合物3
Figure 2023518775000016
1.5mLのCCl中の化合物1(200mg、0.155mmol)の溶液に、グラブス触媒(100mg、0.118mmol)を添加した。オレフィンV2(534mg、3.101mmol)を70℃で混合物に滴加した。得られた混合物を70℃で48時間撹拌した。室温に冷却した後、混合物を濾過した。濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって精製すると、所望の生成物である化合物3が得られた(H-NMR(400MHz CDCl,δ(ppm)):6.17、サルコシン残基);HRMSエレクトロスプレー(M+1)1420.70;1422.25;同位体分布による質量1418.91(100%)、1419.92(77.9%))。
化合物4
Figure 2023518775000017
1.5mLのDCM中の化合物1(50mg、0.0388mmol)の溶液に、グラブス触媒(20mg、0.0236mmol)を添加した。オレフィンV8(85mg、0.7753mmol)を室温で混合物に滴加した。混合物を40℃で16時間撹拌した。室温に冷却した後、混合物を濾過した。濾液を濃縮し、クロマトグラフィーによって精製すると、所望の生成物である化合物4が得られた((H-NMR(400MHz CDCl,δ(ppm)):5.99、サルコシン残基);HRMSエレクトロスプレー(M+1)1358.5;1359.4;同位体分布による質量、1356.88(100%)、1357.89(74.6%))。
化合物5
Figure 2023518775000018
室温で1.5mLのDCM中の化合物1(50mg、0.0388mmol)の溶液に、グラブス触媒(20mg、0.0236mmol)を添加した。オレフィンV9(104mg、0.7753mmol、20.0当量)を混合物に滴加した。混合物を40℃で16時間撹拌した。室温に冷却した後、混合物を濾過した。濾液を濃縮し、クロマトグラフィーによって精製すると、所望の生成物である化合物5が得られた((H-NMR(400MHz CDCl,δ(ppm)):5.99、サルコシン残基);HRMSエレクトロスプレー(M+1)1382.6;1383.6;同位体分布による質量1380.94(100%)、1381.94(77.9%))。
化合物6
Figure 2023518775000019
10mLのCCl中の化合物1(500mg、0.388mmol)の溶液に、グラブス触媒(400mg、0.466mmol)を添加した。5mLのCCl中のオレフィンV14(1.2g、7.753mmol)の溶液を混合物に滴加した。混合物を40℃で16時間撹拌した。室温に冷却した後、混合物を濾過した。濾液を濃縮し、クロマトグラフィーによって精製すると、所望の生成物である化合物6が得られた(H-NMR(CDCl):δ(ppm)5.95,サルコシン残基);HRMSエレクトロスプレー(M+1)1402.10;1403.15;同位体分布に従って計算された質量1400.94(100%)1401.94(81.1%))。
実施例2-機能アッセイおよび阻害アッセイ
ヒト組換え酵素を使用したシクロフィリンAおよびDペプチジル-プロリルイソメラーゼ機能アッセイ(PPIaseアッセイ)、ならびにシクロフィリンAありおよびなしのカルシニューリン阻害アッセイを実施する。これらの化合物は、透過処理されたHepG2におけるカルシウム保持能(CRC)アッセイにおいても試験される。すべてのアッセイにおいてシクロスポリンAを対照として使用する。
化合物は乾燥粉末または油として供給され、100%DMSO中の10mMストック溶液として作られる。その後の希釈は、すべてのアッセイでの使用について100%DMSO中で行った。
シクロフィリンペプチジル-プロリルイソメラーゼ機能アッセイ
Agilent 8453分光光度計を使用して測定を行う。アッセイ緩衝液を精密ガラスキュベット中で(撹拌しながら)10℃に冷却し、DMSOストック溶液から阻害剤を添加して、1%未満のDMSOの最終濃度を得る。ブランクスペクトルを得、次いで、酵素および基質を添加し、5分間にわたって吸光度の変化を測定する。一次速度を吸光度データに適合させて、速度定数を得る(混合のために、最初の10秒~15秒は除外された)。酵素速度からバックグラウンド速度を差し引いて触媒速度を計算する。各阻害剤濃度において2つ組で決定された酵素速度定数を阻害剤濃度に対してプロットし、SigmaPlotによる非線形フィットによりKを得る。
シクロフィリンAありおよびなしのカルシニューリンホスファターゼ阻害アッセイ
この比色96ウェルアッセイは、組換えカルシニューリン(CaN)の阻害剤スクリーニング用に設計されている。カルシニューリンについて知られている最も効率的かつ選択的なペプチドであるRIIホスホペプチド基質を使用して活性を決定し、放出された遊離リン酸の検出は古典的なマラカイトグリーンアッセイに基づく。CypAおよびCsAは、RIIペプチドの脱リン酸化を阻害するCaN/カルモジュリンを結合する複合体を形成する。組換えCypAの存在下で、シクロスポリン様シクロフィリン阻害剤をアッセイにおいてスクリーニングして、カルシニューリンホスファターゼ活性の阻害を決定した。96ウェルプレートにおいて、一方がシクロフィリンA酵素を含み(7点)、もう一方はシクロフィリンA酵素を含まない(4点)2つの希釈系列を調製する。アッセイ緩衝液/カルシニューリン/カルモジュリンマスターミックスを添加した後、ホスホペプチド基質(RII)を添加する。30℃でのインキュベーション後、マラカイトグリーン/モリブダート試薬の添加によって反応を停止させる。遊離したホスファートとともに形成された着色した複合体を、620nmでの吸光度を読み取ることによって定量する。ブランクを補正したデータを阻害剤濃度に対してプロットして、IC50値を決定した。
透過処理されたHepG2におけるカルシウム保持能(CRC)アッセイ
1mM EGTAを含有する氷冷緩衝液中で10分間、100μMジギトニンでHepG2細胞を透過処理する。ジギトニンを除去するための2回の洗浄工程の後、0.5μMのカルシウムグリーン5Nを含有する180μLのアッセイ緩衝液中、ウェルあたり1e細胞で、96ウェル黒および透明プレート中に細胞を蒔く。最終濃度の1000倍になるように化合物の希釈液をDMSO中に作製し、アッセイ緩衝液中で1:100に希釈し、ウェルあたり20μLとしてアッセイに添加する。アッセイ緩衝液は、5mMグルタマートおよび2.5mMマラートを含有した。3秒ごとにプレートを読み取りながら5μLの200μM(5μM)塩化カルシウムを5分ごとに添加したFLIPR Tetra(商標)上で、細胞プレートを直ちに走行させる。化合物の各濃度における曲線下面積を計算する。EC50値を計算する。
化合物2、ならびに基準化合物1および対照としてのシクロスポリンAに対してこれらのアッセイを行った。結果を以下の表1~3に要約する。
Figure 2023518775000020

Figure 2023518775000021
Figure 2023518775000022

Figure 2023518775000023
試験した化合物は、ヒトシクロフィリンの阻害剤、特にヒトシクロフィリンDの阻害として一般に有効であることが観察された(表1参照)。シクロフィリンDの阻害は、一般に、シクロスポリンA対照と比較して改善され、また、基準化合物1と同等のレベルであることが観察される。
表2に示されるように、シクロフィリンAの存在下または非存在下での試験された化合物のカルシニューリン阻害活性は、対照シクロスポリンAおよび基準化合物1と比較して一般により低かった。
シクロフィリンAへの結合およびカルシニューリンの阻害は、免疫抑制と密接に関連している。理論に拘束されることを望むものではないが、細胞傷害または細胞死、例えば細胞壊死および関連する疾患または症状は炎症過程によって引き起こされ、その予防または処置は、強力な抗炎症活性を有するが、シクロフィリンA/カルシニューリンへの減少した結合によって特徴付けられるなど、より低いまたは減少したレベルの免疫抑制活性を有する化合物によってより良好に達成され得ると考えられる。
特に、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(PTP)の開口を調節する特にシクロフィリンDの増加した阻害は、細胞傷害または細胞死の改善された処置および/または予防に、したがって関連する症状または疾患の予防または処置につながり得ると考えられる。
カルシウム保持能(CRC)アッセイは、ミトコンドリア膜透過性遷移孔の開口の阻害に基づいた、ミトコンドリア機能のモデルである。長時間にわたるCa++過負荷は、延長されたPTP開口およびミトコンドリア機能障害を誘発し、細胞死を引き起こすと理解されている。上記のアッセイは、アッセイで使用されるカルシウム結合色素の蛍光報告の増加された強度によって決定されるカルシウムの放出に基づいて阻害の喪失を測定する。試験された化合物は、シクロスポリンA対照と比較して増加したカルシウム保持能を有することが観察された(表3)。

Claims (32)

  1. 式1の化合物またはその薬学的に許容され得る塩、
    Figure 2023518775000024
    式中、
    nは、2~5の整数から選択され;
    およびRは、独立して、H、C~Cアルキルから選択されるか、またはRおよびRは、一緒に結合されて、C~Cシクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル環を形成し得;
    は、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn-プロピルであり;
    式中、Rは、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリールおよび置換されたヘテロアリールであり、前記置換は、任意で、C~Cアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、C~Cアルコキシル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択される1つまたは複数の置換基であってもよい。
  2. またはRの少なくとも1つが、C~Cアルキルである、請求項1に記載の化合物。
  3. およびRがいずれも-CHである、請求項2に記載の化合物。
  4. およびRが一緒に結合されて、C~Cシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル環を形成する、請求項1に記載の化合物。
  5. およびRが一緒に結合されてモルホリニル残基を形成する、請求項4に記載の化合物。
  6. nが2である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
  7. がエチルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
  8. が、イソプロピル、n-プロピルまたは1-ヒドロキシエチルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
  9. が、アリールまたは置換されたアリールである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
  10. がフェニルまたは置換されたフェニルであり、前記置換が、任意で、C~Cアルキル(例えば、メチルまたはt-ブチル)、ハロゲン(例えば、クロロ、フルオロ、ブロモまたはヨード)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシル、C~Cアルコキシル(例えば、メトキシ、フェノキシまたはt-ブトキシ)、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノ)、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル((例えば、-COOCH)、アルコキシカルボニル(例えば、アセトキシ)、アリール(例えば、フェニル)およびヘテロアリールから独立して選択される1つまたは複数の置換基であってもよい、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
  11. が、ナフタレンまたは置換されたナフタレンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
  12. が、ヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
  13. 前記Rが、任意で、C~Cアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、C~Cアルコキシル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい、ピリジン、ピロール、ピラジン、ピリミジン、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、フラン、キノリン、ピラゾールおよびイミダゾールからなる群から選択され、請求項12に記載の化合物。
  14. 前記化合物またはその薬学的に許容され得る塩が式2のものであり、以下から選択される、請求項1に記載の化合物。
    Figure 2023518775000025
    Figure 2023518775000026
  15. 医薬品の製造における、請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用。
  16. a)シクロフィリン媒介性疾患もしくは症状の予防および/もしくは処置ならびに/またはb)腎疾患もしくは症状の予防および/もしくは処置のための医薬品の製造における、請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用。
  17. 細胞傷害または細胞死に関連する疾患または症状の予防および/または処置のための医薬品の製造における、請求項1~14のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用。
  18. 前記細胞傷害または細胞死に関連する疾患または症状が臓器不全または臓器傷害である、請求項17に記載の使用。
  19. 前記臓器が、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、腸、角膜、皮膚、脳および神経組織からなる群から選択される、好ましくは、前記臓器が腎臓から選択される、請求項18に記載の使用。
  20. 前記疾患または症状が虚血-再灌流傷害である、請求項15~19のいずれか一項に記載の使用。
  21. 前記虚血-再灌流傷害が腎虚血-再灌流傷害である、請求項20に記載の使用。
  22. 前記疾患または症状が急性腎障害である、請求項15~19のいずれか一項に記載の使用。
  23. 前記急性腎障害が腎移植に関連するか、または腎移植の結果である、請求項22に記載の使用。
  24. 医薬品が臓器移植レシピエントに投与される、請求項15~23のいずれか一項に記載の使用。
  25. 前記医薬品が経口投与に対して適合されているか、または静脈内注射もしくは注入による投与に対して適合されている、請求項15~24のいずれか一項に記載の使用。
  26. 前記医薬品が、臓器ドナーから臓器レシピエントへの臓器の移植の前、移植の間および/または移植の後に、前記臓器ドナーにおよび/または前記臓器レシピエントに投与される、請求項15~25のいずれか一項に記載の使用。
  27. 臓器傷害から臓器を保全するためのおよび/または臓器を保護するための医薬品の製造における請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用であって、臓器ドナーからの前記臓器の取り出しの前に前記ドナーに、および/または前記臓器の移植の前、移植の間もしくは移植の後に臓器レシピエントに前記化合物を投与することを含む、使用。
  28. 臓器傷害から臓器を保全するためのおよび/または臓器を保護するための請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用であって、臓器ドナーからの前記臓器の取り出しの前に前記ドナーに、および/または臓器に前記化合物を投与することを含む、使用。
  29. 臓器傷害から臓器を保全または保護する方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を、臓器ドナーからの前記臓器の取り出しの前に前記ドナーに、および/または臓器に投与する工程を含む、方法。
  30. 前記臓器が、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、腸、角膜、皮膚、脳および神経組織からなる群から選択される、請求項27~29のいずれか一項に記載の使用または方法。
  31. 前記ドナーが生きたドナーであるか、または前記ドナーが臨床的に死亡したドナーである、請求項27~30のいずれか一項に記載の使用または方法。
  32. 前記化合物が、静脈内注射または注入によって前記ドナーおよび/またはレシピエントに投与される、請求項27~31のいずれか一項に記載の使用または方法。
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