JP2023515281A - ハロゲン化樹脂のための、アルキルで架橋されたスズに基づく熱安定剤、及びその合成及びその使用 - Google Patents

ハロゲン化樹脂のための、アルキルで架橋されたスズに基づく熱安定剤、及びその合成及びその使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、ハロゲン含有ポリマーのための安定剤組成物に関する。2つのスズ中心の間に架橋アルキル基を有するスズベースの熱安定剤が効果的な安定剤であると同時に、対応する非アルキル架橋安定剤の分子量を効果的に2倍にすることを最近発見した。 進行中の試験によって、アルキル架橋された安定剤の揮発性がはるかに低く、最終物品における安定剤のより大きな保持をもたらすことが確認されることが予測される。

Description

この出願は、2020年2月24日に出願した米国仮特許出願番号第62/980,834号の利益を主張し、それを参照により本願に援用する。これにより、2020年2月24日に出願した米国仮特許出願番号62/980,834号の優先権を主張する。
本発明は、ハロゲン含有ポリマーのための安定剤組成物に関する。より詳細には、本発明は、ハロゲン含有ポリマー、例えばポリ塩化ビニルすなわちPVCのための熱安定剤に関する。
非熱硬化性ポリマーの加工業者は、歴史的に、所定のポリマーベースの材料を加工する能力、加工中のその特性、及び完成した物品の最終特性の間のバランスに苦労してきた。 PVCは特に、従来の加工温度において熱的に不安定なポリマーであり、その固有の熱不安定性に対処することを意図した多くの安定剤システムが開発されている。これらの複数のアプローチには、有機ベース、混合金属ベース、及びスズベースの安定剤(スズに基づく安定剤)が含まれる。PVC及び関連ポリマーは、さまざまな他の成分とブレンド及び配合(コンパウンド)され、それには顔料、フィラー、潤滑剤(滑剤)、加工助剤、及び耐衝撃性改良剤が含まれるがそれらに限定されない。これらの混合物は、押出成形及び射出成形を含めた方法によるブレンド及び加工中に加熱され、それが揮発性物質の放出につながる可能性がある。これらの物質は、不快な臭いをもたらし、及び/又は曝露された労働者に潜在的な健康への影響を及ぼすおそれがあり、配合及び加工時のこれらの揮発性物質の一部は、安定化システムに由来する可能性がある。
揮発性物質を低減する技術の例には、ポリマー可塑剤、揮発性物質を除去するための安定剤のポストストリッピング、残留メルカプトエステルと反応させるためのアルキルスズオキシドの後添加、及び高分子量エステルの使用が含まれる。
PVC用のスズベースの安定剤(スズに基づく安定剤)の既存の技術には、「架橋硫黄」の使用が含まれる。本発明のアルキル架橋された安定剤とは対照的に、架橋硫黄部分は反応性であり、そのような基を含む安定剤の安定化作用の一部を形作る。結果として、これらの硫黄架橋基は本質的に一時的なものであり、そのような安定剤の分子量を効果的に増大させず、したがって、硫黄架橋されていない対応物に関してそのような材料の揮発性を低下させることはない。本発明のアルキル架橋された安定剤は、これらの問題を克服する。
本発明は、ハロゲン含有ポリマーのための安定剤組成物に関する。より詳細には、本発明は、ハロゲン含有ポリマー、例えばポリ塩化ビニルすなわちPVCのための熱安定剤に関する。
本発明は、ハロゲン含有ポリマー用の安定剤組成物である。最近、2つのスズ中心の間に架橋アルキル基を有するスズ系の熱安定剤が有効な安定剤であるとともに、対応する非アルキル架橋安定剤の分子量を効果的に2倍にすることが発見された。このアルキル架橋された安定剤は、非常に低い揮発性を有し、これが最終物品中の安定剤のより大きな保持をもたらす。非炭素系の架橋基を含めた他の架橋基も同様の結果をもたらすことが予想される。
本明細書に記載したアルキル架橋された材料は安定化プロセスにおいて活性ではなく、かつ安定化システムの分子量を増大させるのに有効であるスズ-アルキル結合に基づいている。このアプローチは、単一の架橋基をもつ2つのスズ部位を含む単量体種に限定されず、単一又は複数のスズ末端アルキルベースの架橋に基づく2より多い複数のスズ部位をもつ種もまた、同様の挙動をするはずである。
本発明の性質、目的、及び利点をさらに理解するために、以下の詳細な説明を参照し、以下の図面と併せて読まなければならず、図面中、同様の参照番号は同様の要素を示す。
図1は、℃単位での、熱重量分析を示す図表である。 図2は、モノブチルスズトリクロリド(MT)のTGAを示す図である。 図3は、オクチルジスズヘキサクロリド(BT)のTGAを示す図である。 図4は、本発明の安定剤の好ましい態様を示す。 図5は、その他の可能な架橋基を示す。
本発明は、ハロゲン含有ポリマー用の安定剤組成物である。2つのスズ中心の間に架橋アルキル基をもつスズ系の熱安定剤が有効な安定剤であると同時に、対応する非アルキル架橋された安定剤の分子量を効果的に2倍にすることが最近発見した。このアルキル架橋された安定剤は非常に低い揮発性を有し、これが最終物品中での安定剤のより大きな保持をもたらす。
昇温した温度における安定剤前駆体の重量損失を決定するための試験をすることにより、架橋されていない安定剤は、本発明のアルキル架橋された安定剤よりも高い揮発性及び大きな重量損失を有することが確認された。このテストの焦点は、ハロゲン含有ポリマーの安定化の最終生成物であるハロゲン系スズ化合物、すなわちアルキルスズクロリドだった。この試験によって、モノブチルスズトリクロリドすなわちMTに代表される非架橋安定剤は、オクチルジスズヘキサクロリドすなわちBTに代表される架橋された類似体に対して、試験期間にわたってより高い揮発性及びしたがってより大きな重量損失を有することが確認される(図1を参照されたい)。図2及び3に示されているように、約200℃(これはPVC加工の温度範囲の高温端である)において、MTは完全に失われ、一方、BTは20%より少ない重量損失しか受けないことがさらに注目されうる。BTはMT種の有効な二量体とみることができ、これはモノブチルスズトリス(EHMA)のような従来の非架橋スズ安定剤の使用によって生じうる。図1中の両方のクロリドは、それらのそれぞれの出発の熱安定剤の反応性配位子の置き換えによる最終的な安定剤組成物として作り出される。加工時のより低い質量損失に加えて、架橋した種はまた、その使用寿命中に抽出をより受けにくくなると予想される。これらの種は、L3-xClSn-架橋-SnCl3-x(式中、図4に示すように、架橋している安定化剤についてx=1又は2であり、Lはとりわけメルカプチド配位子であることができる)のタイプの安定化による部分的に置換された種の予想される、より低い揮発性によって、改善された臭気特性をもたらすことが予測される。
PVCコンパウンド配合:
試験条件: PVCコンパウンドを、通常の添加剤の添加順序及び添加温度にしたがって配合した。各コンパウンドの色の安定性を、2分間隔で採取したサンプルを用いて、190℃/60rpmにおいて作動し運転されているブラベンダー(Brabender)を使用して評価した。各チップの色は、基準の白色タイルと比較して測定し、「L値」及び「b値」を下で表2及び3にそれぞれ報告した。
安定剤の調製の説明
ClSn-C16-SnCl(オクチルジスズヘキサクロリド)の合成。この物質は、刊行物に記載された方法にしたがって合成した。Organometallics, Vol. 21, No. 22, 2002を参照されたい。
高モノオクチルスズ(RE)の合成は、下に記載する経路Aに従う。この場合、メルメルカプト硫黄エステルはC16-C18不飽和脂肪酸の2-メルカプトエチルエステルである。これらは一般に、逆エステル(Reverse Ester)PVC安定剤といわれる。
(RE)Sn-C16-Sn(RE)の合成は、下に記載する経路Bに従う。この場合、メルカプト硫黄エステルはC16-C18不飽和脂肪酸の2-メルカプトエチルエステルである。これらは一般に、逆エステル(Reverse Ester)PVC安定剤といわれる。
高モノオクチルスズ(EHMA)の合成は、下に記載する経路Aに従う。この場合、メルカプト硫黄エステルは2-エチルヘキシルメルカプトアセテートである。
合成経路A
1.02当量のメルカプト硫黄含有エステルを、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、クロライドが1.0当量になるモノオクチルスズトリクロリド(95質量%)及びジオクチルスズジクロリド(5質量%)の混合物と反応させて、クロリドをメルカプチドへと転化させた。この混合物を60分間置いておき、有機相と水相が分離するようにさせておく。下部の水層を除去し、残る有機相を減圧及び加熱下で乾燥させた。これを次にろ過して、透明な液体を得た。
合成経路B
1.02当量のメルカプト硫黄含有エステルを、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、クロライドが1.0当量になるオクチルスズヘキサクロリド混合物と反応させて、クロリドをメルカプチドへと転化した。この混合物を60分間置いておき、有機相と水相が分離するようにさせておく。下部の水層を除去し、残る有機相を減圧及び加熱下で乾燥させた。これを次にろ過して、透明な液体を得た。
これらの安定剤を、PVC加工へのそれらの影響、特に、それらの従来の非架橋の対応するもの、すなわち高モノオクチルSn(EHMA)及び高モノオクチルSn(RE)と比較して、熱及び時間の関数としての色の発現へのそれらの影響について評価した。これらの安定剤を、示しているPVC配合中にコンパウンドした。
Figure 2023515281000002
試験条件: 標準的な添加剤の添加順序及び添加温度に従って、PVCコンパウンドをブレンドした。各コンパウンドの色の安定性を、2分間隔で採取したサンプルを用いて、190℃/60rpmにおいて作動し運転されているブラベンダー(Brabender)を使用して評価した。各チップの色は、基準の白色タイルと比較して測定し、「L値」及び「b値」を下で表2及び3にそれぞれ報告した。
サンプル1及び2は、配位子としてのEHMAとオクチルスズ中心に基づく非アルキル架橋の及びアルキル架橋された種である。表2及び3に概略を示しているとおり、当量のスズにおいて、色の発現の類似性によって判断して、アルキル架橋された種は、その非架橋対応物に対して事実上同等の安定化性能をもたらす。
サンプル3及び4は、配位子としてのREとオクチルスズ中心に基づく、非アルキル架橋種及びアルキル架橋された種である。表2及び3に概略を示しているとおり、当量のスズにおいて、色の発現の類似性によって判断して、アルキル架橋された種は、その非架橋対応物に対して事実上同等の安定化性能をもたらす。
Figure 2023515281000003
Figure 2023515281000004
ハロゲン含有ポリマー用の本発明の安定剤組成物は、好ましくは、スズベースの中心の間に架橋アルキル基を有する少なくとも2つのスズベースの中心を含む。この式は、複数のスズベースの中心と、対応する複数の架橋アルキル基を有することができる。この安定剤は、以下のタイプのうちの1つであることができる。
Sn-X-SnL
Sn-(X)(Y)-SnL
これらのタイプにおいて、Lは、好ましくは、従来の配位子、例えば、チオグリコール酸のエステル、C12-C18脂肪酸の2-MEエステル、カルボキシレート、マレート、スルフィド、2-ME、メルカプタン、又はそれらの混合(ブレンド)である。X及びYは、好ましくは、スズ末端のアルキルベースの架橋基である。X及び/又はYは、直鎖状又は分枝鎖状で、飽和又は不飽和で、ヘテロ原子を有するか又は有さず、及び/又はヘテロ環を有するか又は有しない。アルキル架橋は、好ましくは、C1~C80である。
他の実施態様においては、安定剤組成物は、-[SnL-X-](式中、Xはスズを末端とするアルキルベースの架橋基であり、Lは従来の配位子である)の繰り返し単位を少なくとも3つ含む。これらの実施形態において、Xは、直鎖状又は分枝鎖状の、飽和又は不飽和の、ヘテロ原子を含むか又は含まず、及び/又はヘテロ環を含むか又は含まないものであり得る。好ましくは、アルキル架橋はC1~C80である。好ましくは、Lは、チオグリコール酸のエステル、C12-C18脂肪酸の2-MEエステル、カルボキシレート、マレート、スルフィド、2-ME、メルカプタン、あるいは、チオグリコール酸のエステル、C12-C18脂肪酸の2-MEエステル、カルボキシレート、マレート、スルフィド、2-ME、又はメルカプタンの、2つ以上の任意の組み合わせである。
本発明はまた、上述した新規な安定剤を含む、得られたPVC、CPVC、又はPVC及びCPVCのブレンド物である。好ましくは、得られる組成物は、少なくとも0.5質量%の安定剤を含む。
非炭素ベースの架橋基を含めたその他の架橋基が、同様の結果をもたらすことが予測される。たとえば、図5に示す、シリコーン (シロキサン)、シラン (シリレン)、シラザン、カルボシラン、及びシルフェニレンは、炭素ベースの架橋基よりも簡単な合成経路を提供しうる。
本発明はまた、新規なアルキル架橋された安定剤を調製する方法を含む。
本発明はまた、新規なアルキル架橋された安定剤を含有するPVC、CPVC、又はそれらのブレンド物を調製する方法も含む。好ましくは、これらの組成物は、上述した合成経路A又Bに従って調製される。

Claims (16)

  1. 少なくとも2つのスズベースの中心;及び
    前記の少なくとも2つのスズベースの中心のあいだの少なくとも1つの架橋アルキル基
    を含む、ハロゲン含有ポリマーのための安定剤組成物。
  2. Sn-X-SnLのタイプの、請求項1に記載の安定剤組成物。
  3. Sn-(X)(Y)-SnLのタイプの、請求項1に記載の安定剤組成物。
  4. X及びYが、スズ末端のアルキルに基づく架橋基であり、前記架橋基は安定化プロセスにおいて活性ではなく、それにより、架橋基が前記安定剤組成物の分子量を有効に増大させる、請求項3に記載の安定剤組成物。
  5. X及び/又はYが、直鎖状又は分枝鎖状であり、飽和又は不飽和であり、ヘテロ原子を有するか又は有さず、ヘテロ環を有するか又は有さず、アルキル架橋がC1~C80である、請求項4に記載の安定剤組成物。
  6. Lが従来の配位子である、請求項4に記載の安定剤組成物。
  7. ハロゲン含有ポリマーのための熱安定剤組成物であって、
    -[SnL-X-]
    (式中、Xはスズ末端のアルキルに基づく架橋基であり;
    Lは従来の配位子であり、かつ
    前記架橋基は安定化プロセスにおいて活性ではなく、それにより、架橋基が前記安定剤組成物の分子量を有効に増大させる)
    の繰り返し単位を少なくとも3つ含む組成物。
  8. Xが、直鎖状又は分枝鎖状であり、飽和又は不飽和であり、ヘテロ原子を有するか又は有さず、ヘテロ環を有するか又は有さず、アルキル架橋がC1~C80である、請求項7に記載の安定剤組成物。
  9. Lが、以下のもの:チオグリコール酸のエステル、C12-C18脂肪酸の2-MEエステル、カルボキシレート、マレート、スルフィド、2-ME、メルカプタンのうちの1つ、あるいは、チオグリコール酸のエステル、C12-C18脂肪酸の2-MEエステル、カルボキシレート、マレート、スルフィド、2-ME、又はメルカプタンの2つ以上の任意の組み合わせ、から選択される、請求項7に記載の安定剤組成物。
  10. PVC、CPVC、又はそれらのブレンド物の組成物であって、安定剤を含み、前記安定剤が、
    少なくとも2つのスズベースの中心;及び
    前記少なくとも2つのスズべースの中心のあいだの少なくとも1つの架橋アルキル基
    を含む、組成物。
  11. 前記安定剤がLSn-X-SnLのタイプである、請求項10に記載の組成物。
  12. 前記安定剤がLSn-(X)(Y)-SnLのタイプである、請求項10に記載の組成物。
  13. X及びYが、スズ末端のアルキルに基づく架橋基である、請求項12に記載の組成物。
  14. X及び/又はYが、直鎖状又は分枝鎖状であり、飽和又は不飽和であり、ヘテロ原子を有するか又は有さず、ヘテロ環を有するか又は有さず、アルキル架橋がC1~C80である、請求項10に記載の組成物。
  15. Lが従来の配位子である、請求項14に記載の組成物。
  16. Lが、以下のもの:チオグリコール酸のエステル、C12-C18脂肪酸の2-MEエステル、カルボキシレート、マレート、スルフィド、2-ME、メルカプタンのうちの1つ、あるいは、チオグリコール酸のエステル、C12-C18脂肪酸の2-MEエステル、カルボキシレート、マレート、スルフィド、2-ME、又はメルカプタンの2つ以上の任意の組み合わせ、から選択される、請求項15に記載の組成物。
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