JP2023184168A - 脈管障害の予防又は治療用医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、脈管障害、特に重症下肢虚血の予防又は治療に用いられる医薬組成物を提供することにある。【解決手段】(a)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体;又は(b)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクター;を有効成分とする、脈管障害の予防又は治療用医薬組成物を調製する。【選択図】図1

Description

本発明は、脈管障害の予防又は治療用医薬組成物や、血管新生の促進作用を有するマイクロRNAを含有する脂質二重膜からなる膜小胞の作製方法に関する。
重症下肢虚血等の脈管障害における治療の第一選択は、ステントを使用した血管内治療やバイパス手術であるが、症例によっては、それらの血行再建手術を実施できない患者もいる。また、手術が成功しても、末梢循環が改善されない症例も存在している。そして、閉塞性動脈硬化による潰瘍や壊疽を有する重症下肢虚血患者においては、虚血部位の血流を改善させない限り下肢切断を回避することはできないのが現状である。その為に、日本では年間約4万人、米国では年間約16万人が指・下肢切断を余儀なくされている。また、重症下肢虚血患者の5年後の死亡率は70%を超えている。これは大腸癌のステージ4よりも悪い予後を示している。
こうした重症下肢虚血患者に対して、末梢循環を改善する方法として細胞移植による血管新生療法の開発が世界中で実施されている。細胞移植による血管新生療法の治療効果は、移植された細胞が生体に生着して血管を作るのではなく、移植された細胞が分泌する因子が生体の細胞を活性化させることで、生体の細胞が血管を作ると考えられている。このような治療効果はパラクライン効果と呼ばれている。このパラクライン効果をもたらす因子の中で重要であると考えられているのが、エクソソームである。
エクソソームは細胞が分泌する直径約20~120nmの脂質二重膜からなる膜小胞であり、DNA、RNA、タンパク等を内包している。エクソソームは、エクソソームを分泌する細胞の特性を受け継いでいると考えられている。細胞移植により血管新生をもたらす幹細胞が分泌するエクソソーム自体が血管新生をもたらす効果を持つことが動物モデルで報告されている。これまでの幹細胞や血管内皮細胞由来のエクソソームが血管新生を誘導する機序解析から、幹細胞や血管内皮細胞由来のエクソソームに内包されているマイクロRNAとして、miR126-3pやmiR-199b-5pが血管新生において重要であることが報告されている(非特許文献1、2参照)。さらに、トロンビン処理された間葉系幹細胞由来のエクソソームが虚血脳症や皮膚傷の治療効果を示すことが開示されている(特許文献1、2参照)。しかしながら、これまでのエクソソームによる血管新生療法の開発は、幹細胞由来エクソソームをそのまま投与する方法であり、エクソソームの機能を増強させる方法については着目されていなかった。
また、エクソソームが注目される理由の一つとして、エクソソームには免疫原性がないことが報告されている点である。免疫原性がなければ、細胞移植では議論の一つになる同種(他家)細胞移植による免疫拒絶の課題が克服できる。そのため、活きのよい細胞から分泌されるエクソソームを単離して、治療薬としてエクソソームを投与する治療法の開発が世界中で活発に実施されている。
本発明者らは、重症下肢虚血に対してエクソソームを用いる方法として、S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示し、虚血組織に集積するエクソソームを開示した(特許文献3参照)。さらに、本発明者らは、低酸素処理により血管成長因子の産生量が増加する細胞シートについて開示した(特許文献4、5参照)。
特表2020-514400号公報 特表2019-520365号公報 特開2020-174573号公報 国際公開第2016/043201号パンフレット 国際公開第2016/068217号パンフレット
Prabhu Mathiyalagan et al., Circ Res.2017; 120:1466-1476 doi: 10.1161/CIRCRESAHA.116.310557 Meng Ye et al., Int J Biol Sci. 2019; 15(1): 158-168 doi: 10.7150/ijbs.28392
本発明の課題は、脈管障害、特に重症下肢虚血の予防又は治療に用いられる医薬組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、血清中のエクソソームに含まれるマイクロRNAや、低酸素培養によって分泌されるエクソソームに含まれるマイクロRNAに着目した。その結果、血管新生効果を有する6つのマイクロRNAを同定した。さらに、それらのマイクロRNAをエクソソームに人工的に内包させてマウス下肢虚血モデルに投与したところ、血流が改善することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕(a)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体;又は
(b)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクター;
を有効成分とする、脈管障害の予防又は治療用医薬組成物。
〔2〕前記脈管障害が、重症下肢虚血、脳血管障害、末梢血管疾患、冠状動脈疾患、糖尿病性脈管障害、又はリンパ管障害である、上記〔1〕に記載の脈管障害の予防又は治療用医薬組成物。
〔3〕(a)に記載のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体、又は(b)に記載の発現ベクターが核酸送達媒体の中に包含されていることを特徴とする、上記〔1〕に記載の脈管障害の予防又は治療用医薬組成物。
〔4〕核酸送達媒体が、脂質二重膜からなる膜小胞であることを特徴とする、上記〔3〕に記載の脈管障害の予防又は治療用医薬組成物。
〔5〕miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を含有する、生体から分離された脂質二重膜からなる膜小胞の作製方法であって、
哺乳動物細胞にmiR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを導入して、前記発現ベクターを含有する哺乳動物細胞を作製する工程A;及び
前記工程Aで作製した哺乳動物細胞を培養してmiR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を発現させる工程B;
を含む、前記方法。
また、本発明の別の態様としては、(I)(a)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体、又は(b)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、脈管障害の予防又は治療方法や、(II)脈管障害の予防又は治療用医薬組成物の製造のための、(a)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体、又は(b)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの使用や、(III)脈管障害の予防又は治療に用いるための、(a)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体又は(b)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを挙げることができる。ここで、「有効量」は、対象において予防又は治療効果を期待するために投与に要求される量を意味する。したがって、投与対象の疾患の重症度、投与される剤形、年齢、体重、性別、投与時間、投与経路及び治療期間等によって調整できる。
本発明の脈管障害の予防又は治療用医薬組成物により、脈管障害の予防又は治療が可能となる。また、本発明のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を含有する、生体から分離された脂質二重膜からなる膜小胞の作製方法により、脈管障害の予防又は治療に有効なマイクロRNAを含有する膜小胞を作製することが可能となる。
実施例1において、マウス下肢虚血モデルに対する血管新生マイクロRNA内包エクソソームの筋肉注射投与後の血流評価を行った結果である。 実施例2において、マウス下肢虚血モデルに対するmiR-709 mimicを内包させたエクソソーム投与後のbFGFの発現変化を調べた結果である。 実施例3において、miR-709 mimic及びコントロールであるScrambleを内包させたエクソソームに内包されているmiR-709の発現をqPCRによって解析した結果である。左カラムがスクランブル、右カラムがmiR-709を内包させたエクソソームの場合である(図3B、図4も同じ)。 実施例3において、ヒト大動脈内皮細胞(Human Aortic Endothelial Cells:HAoEc)にエクソソームを添加し、miR-709 mimic及びコントロールであるScrambleを内包させたエクソソーム内のmiR-709の発現をqPCRによって解析した結果である 実施例3において、ヒト大動脈内皮細胞(Human Aortic Endothelial Cells:HAoEc)にエクソソームを添加して8時間後、24時間後のHAoEcにおけるBone marrow kinase on chromosome X(BMX)およびbFGFの発現変化をqPCRで解析した結果である。 実施例4において、歯髄幹細胞を低酸素培養した場合の490nmの吸収に基づく細胞増殖能、エクソソーム濃度、エクソソームに内包されているVEGF量を調べた結果である。 実施例4において、2次スクリーニングとしてマイクロRNA内包エクソソーム添加によるHAoEcの細胞増殖アッセイを行った結果である。 実施例4において、マウス下肢虚血モデルに対するマイクロRNA mimicを内包させたエクソソーム投与後の血流改善効果を調べた結果である。 実施例5において、マウス下肢虚血モデルに対するマイクロRNA mimicを内包させたエクソソーム投与後の血管新生因子の発現を調べた結果である。
本発明の脈管障害の予防又は治療用医薬組成物は、
(a)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体;又は
(b)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクター(以下、「本件発現ベクター」ともいう);
を有効成分とする、脈管障害の予防又は治療用医薬組成物であれば特に制限されず、以下、「本件医薬組成物」ともいう。
また、本発明のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を含有する、生体から分離された脂質二重膜からなる膜小胞の作製方法は、miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を含有する、生体から分離された脂質二重膜からなる膜小胞の作製方法であって、
哺乳動物細胞にmiR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを導入して、前記発現ベクターを含有する哺乳動物細胞を作製する工程A;及び
前記工程Aで作製した哺乳動物細胞を培養してmiR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を発現させる工程B;
を含む、前記方法であれば特に制限されず、以下、「本件マイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を含有する、脂質二重膜からなる膜小胞の作製方法」ともいう。
本明細書において、脈管障害とは、血管(動脈若しくは静脈)又はリンパ管の障害を意味し、重症下肢虚血、脳血管障害、末梢血管疾患、冠状動脈疾患、糖尿病性脈管障害、又はリンパ管障害を挙げることができる。
本明細書におけるマイクロRNAは、miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種(以下、「本件マイクロRNA」ともいう)である。ここで、上記本件マイクロRNAは、一本鎖の成熟マイクロRNAであっても、上記一本鎖の成熟マイクロRNAに、その成熟マイクロRNAと相補的な塩基配列を有する2本鎖のマイクロRNAであってもよい。本件マイクロRNAのうち、一本鎖の成熟マイクロRNAのポリヌクレオチドは、
(I)配列番号1~6のいずれかに示す塩基配列からなるポリヌクレオチド
として表すことができる。
また、本件マイクロRNAには、以下の(II)又は(III)に示す一本鎖の成熟マイクロRNAの変異体も含まれる。
(II)配列番号1~6のいずれかに示す塩基配列において1又は数個の塩基が欠損、付加、又は置換したポリヌクレオチドであって、血管新生の促進作用を有するポリヌクレオチド
(III)配列番号1~6のいずれかに示す塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチドであって、血管新生の促進作用を有するポリヌクレオチド
上記(II)又は(III)において、血管新生の促進作用を有するか否かは、たとえば、配列番号1~6のいずれかに示す塩基配列において1又は数個の塩基が欠損、付加、又は置換したポリヌクレオチド、あるいは配列番号1~6のいずれかに示す塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチドを用いて、後述の実施例に記載の方法に準じて、大腿動脈での新生血管の観察による血管新生能の評価や、マウス下肢虚血モデルにおける血流比による血流評価や、bFGFなどの血管新生因子の発現量の測定などによって確認することができる。
本明細書におけるmiR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNAをコードするポリヌクレオチドとしては、上記本件マイクロRNAをコードするポリヌクレオチドであればよい。具体的には、たとえば一本鎖の成熟マイクロRNAである、配列番号1~6示す塩基配列からなるポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドは、それぞれ順に配列番号7~12に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドとして表すことができる。
上記一本鎖の成熟マイクロRNA、及び上記一本鎖の成熟マイクロRNAをコードするDNA配列を以下の表1に示す。表1中、MIMATはアクセッション番号である。これらの配列は、マイクロRNAデータベース(URL: www.mirbase.org/textsearch.shtml?q=0031416)で確認することができる。
上記「1又は数個」としては、1~5個が好ましく、1~4個がより好ましく、1~3個がさらに好ましく、1~2個が特に好ましく、1個が最も好ましい。また、配列番号1~6のいずれかに示す塩基配列において5’末端の核酸塩基7~9核酸塩基からなるシード配列は保持していることが好ましい。すなわち、(II)としては、(II)’配列番号1~6に示す塩基配列においてシード配列は保持し、かつ配列番号1~6に示す塩基配列において1又は数個の塩基が欠損、付加、又は置換したポリヌクレオチドであって、転写産物が血管新生の促進作用を有するポリヌクレオチド、(III)としては、(III)’配列番号1~6に示す塩基配列においてシード配列は保持し、かつ配列番号1~6に示す塩基配列と80%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチドであって、転写産物が血管新生の促進作用を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
上記マイクロRNAの前駆体とは、ステムループ構造であり、前駆体の鎖に上記一本鎖成熟マイクロRNA若しくはその変異体を含有しているものを意味する。マイクロRNAの前駆体の長さとしては50~100nt、好ましくは65~85ntを挙げることができる。
上記本件マイクロRNAあるいは上記本件マイクロRNAをコードするポリヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性の向上若しくは安定化のため、若しくは相補鎖核酸とのアフィニティーを上げるために、糖部修飾ヌクレオチド類似体やリン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド類似体等の修飾を施した類似体、あるいは核酸誘導体としてもよい。さらに、上記本件マイクロRNAは、そのパッセンジャー鎖を化学修飾した二本鎖RNAであるマイクロRNAミミックでもよい。
上記糖部修飾ヌクレオチド類似体としては、ヌクレオチドの糖の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の化学構造物質を付加あるいは置換したものであればいかなるものでもよい。糖部修飾ヌクレオチド類似体の具体例には、2’-O-メチルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-O-プロピルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-メトキシエトキシリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-O-メトキシエチルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-O-[2-(グアニジウム)エチル]リボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-フルオロリボースで置換されたヌクレオチド類似体、糖部に架橋構造を導入することにより2つの環状構造を有する架橋構造型人工核酸(Bridged Nucleic Acid)(BNA)、より具体的には、2’位の酸素原子と4’位の炭素原子がメチレンを介して架橋したロックド人工核酸(Locked Nucleic Acid)(LNA)、及びエチレン架橋構造型人工核酸(Ethylene bridged nucleic acid)(ENA)[Nucleic Acid Research, 32, e175(2004)]を挙げることができ、さらにペプチド核酸(PNA)[Acc. Chem. Res., 32, 624(1999)]、オキシペプチド核酸(OPNA)[J. Am.Chem. Soc., 123, 4653 (2001)]、及びペプチドリボ核酸(PRNA)[J.Am. Chem. Soc., 122, 6900 (2000)]等を挙げることができる。
上記リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド類似体としては、ヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の化学物質を付加あるいは置換したものを挙げることができる。リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド類似体の具体例としては、ホスフォロチオエート結合に置換されたヌクレオチド類似体、N3’-P5’ホスフォアミデート結合に置換されたヌクレオチド類似体等[細胞工学, 16, 1463-1473 (1997)][RNAi法とアンチセンス法、講談社(2005)]を挙げることができる。
上記核酸誘導体としては、核酸に比べて、ヌクレアーゼ耐性を向上させるため、安定化させるため、相補鎖核酸とのアフィニティーを上げるため、細胞透過性を上げるため、あるいは可視化させるために、当該核酸に別の化学物質を付加した分子であればいかなる分子でもよい。具体例には、5’-ポリアミン付加誘導体、コレステロール付加誘導体、ステロイド付加誘導体、胆汁酸付加誘導体、ビタミン付加誘導体、Cy5付加誘導体、Cy3付加誘導体、6-FAM付加誘導体、及びビオチン付加誘導体等を挙げることができる。
上記本件マイクロRNAの由来としては特に制限されないが、ヒト、サル、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、マウス、ウサギを挙げることができる。
本件発現ベクターに用い、本件マイクロRNA、若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドと連結させる発現ベクターとしては、哺乳動物細胞と接触させて細胞内に導入し、本件マイクロRNA、若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドにコードされた所定の本件マイクロRNA若しくはそれらの前駆体を哺乳動物細胞において発現させることが可能な発現ベクターであればよく、非ウイルス系ベクターであっても、ウイルス系ベクターであってもよく、プラスミドベクター、ファージベクター、ファージミドベクター、コスミドベクター、又はウイルスベクター等の公知のベクターを使用することができる。
さらに、本件発現ベクターには、選別マーカーをさらに含有してもよい。具体的には、ピューロマイシン、ネオマイシン、ブラストサイジン、ハイグロマイシン、アンピシリン、ルシフェラーゼや、mCherryやGFP等の蛍光タンパク質を挙げることができる。
本明細書において、核酸送達媒体としては、本件マイクロRNA若しくはそれらの前駆体、あるいは本件発現ベクターを生体内に送達可能な媒体であれば特に制限されないが、生体組織又は生体試料由来の拡散送達媒体の場合には生体から分離された核酸送達媒体であることが好ましい。核酸送達媒体の具体的な例としては、脂質二重膜からなる膜小胞、界面活性剤ペプチド、脂質ナノ粒子(LNP)、カチオン性ポリマー、非カチオン性ポリマー、βグルカン、アテロコラーゲン、PLGAナノ粒子、スーパーアパタイトを挙げることができる。上記脂質二重膜からなる膜小胞としては、エクソソーム、カチオン性リポソーム、非カチオン性リポソームを挙げることができる。界面活性剤ペプチドとしては、たとえば4~10の親水性アミノ酸からなる頭部及び1又は2の疎水性アミノ酸からなる尾部からなるペプチド界面活性、具体的には、A6K(特開2016-74663、特開2014-139235号公報参照)を挙げることができる。なお、上記核酸送達媒体には、ウイルスベクターやプラスミドベクター等のようにDNA断片を連結するベクターは含まれない。
本件マイクロRNA若しくはそれらの前駆体、あるいは本件発現ベクターは、上記核酸送達媒体の中に包含されていてもよく、あるいは上記核酸送達媒体と結合若しくは接着していてもよい。
本件医薬組成物における「医薬組成物」という用語は、予防又は治療上有効量の本件マイクロRNA若しくはそれらの前駆体、あるいは本件マイクロRNA若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクター(以下、「本件有効成分」ともいう)、および少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は溶剤を含んでなる組成物を意味する。本件医薬組成物の剤型としては、溶液剤、ローション剤、噴霧剤、乳剤、懸濁剤などの液剤とすることができるが、散剤、顆粒剤などの固形製剤、軟膏剤、又はゲル化剤とすることもできる。前記液剤の製造方法としては、例えば本件有効成分を生理食塩水、PBS等の緩衝液、滅菌水などの溶剤と混合する方法や、さらにそれらの溶剤に懸濁化剤、乳化剤、抗酸化剤等を混合する方法を挙げることができる。必要に応じてフィルターろ過等により滅菌処理してもいい。また、固形製剤とする場合には、製剤上の必要に応じて、適宜の薬学的に許容される担体、例えば、賦形剤、結合剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、緩衝剤、安定化剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤、吸着剤、甘味剤、希釈剤などの任意成分を配合することができる。
本明細書において、「予防」という用語には、脈管障害の発症を抑制若しくは防止すること、及び脈管障害の再発を抑制することが含まれる。「治療」という用語には、脈管障害を治癒すること、脈管障害の症状を軽減させること、及び脈管障害の進展を抑制することが含まれる。
本件医薬組成物の投与方法としては、所望の脈管障害の予防又は治療効果が得られる限り特に制限されず、静脈内注射による投与や、脈管障害部分又はその周辺部分への筋肉注射による投与等挙げることができる。また、本件医薬組成物の投与量、投与回数及び投与濃度は、投与対象の脈管障害の状態や投与対象の体重等に応じて適宜調節することができる。特に複数回の静脈内注射によって、より脈管障害を高めることが可能となる。
本件医薬組成物の投与対象としては、ヒト、サル、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、マウス、ウサギを挙げることができる。
<本件マイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を含有する、脂質二重膜からなる膜小胞の作製方法>
本件マイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を含有する、脂質二重膜からなる膜小胞の作製方法における工程Aにおいて、哺乳動物細胞に本件発現ベクターを導入する方法としては特に制限されないが、リン酸カルシウム法、リポソームを用いる方法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、ウイルスベクター法等の公知の方法を用いるほか、市販の形質転換キットを用いることができる。なお、用語「導入」とは、形質導入によって外来DNAを細胞に流入させることを意味する。
上記本件発現ベクターを導入する哺乳動物細胞としては、幹細胞でも非幹細胞であってもよく、また浮遊細胞であっても接着細胞であってもよい。具体的には、293T細胞、HEK293細胞、Vero細胞、CHO細胞等の非幹細胞や、歯髄幹細胞、間葉系幹細胞等の幹細胞を挙げることができる。
また、本件マイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を含有する、脂質二重膜からなる膜小胞の作製方法における工程Bにおいて、上記哺乳動物細胞を培養する際の培地としては特に制限されないが、血清を含まないダルベッコ改変イーグル培地(DMEM培地)、RPMI-1640、FI200、HE100、HE400(Gmep社)、HFDM-1(+)(細胞科学研究所社)、ADSC-4(コージンバイオ社)等を挙げることができる。また、培養時間は24~168時間、培養温度は33~37℃を挙げることができる。なお、工程Bの培養によって、細胞内に本件マイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を含有する、脂質二重膜からなる膜小胞が作製され、その膜小胞が細胞外に分泌されるため、培地中に上記膜小胞が蓄積することとなる。
培養後の培地は、遠心(たとえば2,000rpm、3min、4℃)してエクソソーム等の膜小胞を含む画分を得て、その画分から膜小胞を分離又は単離することができる。膜小胞を分離又は単離する方法は特に制限されないが、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)等の濾過、超遠心法を用いる他、市販の膜小胞単離キットを用いることもできる。また、CD9、CD41a、CD41b、CD42b、CD61、CD62P、CD63、CD81等のエクソソームマーカーに基づいて膜小胞を濃縮することもできる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの
例示に限定されるものではない。
[実施例1]血管新生能を有するマイクロRNAの同定(1)
血管新生能を有するマイクロRNAとして、miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、及びmiR-8110を次の方法により同定した。
(1次スクリーニング)
マウスとして、血管新生能が高いC57BL/6マウス(オス、8週齢)及び血管新生能が低いBALB/Cマウス(オス、8週齢)を用いた。下肢虚血モデルとして、それぞれのマウスにおいて、イソフルラン麻酔下で左大腿動脈を2箇所結紮後、結紮間の左大動脈を電気メスで切断し、切開部は2~3針縫合した。
下肢虚血モデルを作製して24時間後、採血して血漿を作製した。具体的には、1mLシリンジに26G針を取付けて、生理食塩水で調製した1%EDTAを0.1mL取り、腹部大静脈から採血(約1~1.1mL)し、1.5mLチューブに移してそのチューブを氷上に置いた。前記1.5mLチューブを遠心(1,200g、20min、4℃)し、エクソソームを含む上清(約400~500μL)を新しい1.5mLチューブに移し、-80℃で保存した。
次に、マイクロRNAを以下の方法で抽出した。-80℃から上記1.5mLチューブを取り出し、氷上に1時間静置することで、上記で得られたエクソソームを含む上清を解凍した。1.5mLチューブを軽く振り、遠心(10,000g、20min)し、上清400μLを新しい1.5mLチューブに移し、PBS 200μLを入れてVortexで攪拌し、spin downした。次に、1.5mLチューブにTotal Exosome Isolation Kit(from plasma)(# 4484450、ThermoFisherScientific社)を120μL入れてVortexで攪拌し、室温で10分間静置後、遠心(10,000g、5min、室温)した。遠心後、上清を1,000μLマイクロピペットで除去し、再度、遠心(10,000g、30second、室温)した。遠心後の上清を200μLマイクロピペットで除去した。Total Exosome RNA and Protein Isolation Kit(#4478545、ThermoFisherScientific社)を使用して、エクソソームに内包されているマイクロRNAを抽出した。抽出したマイクロRNAは1.5mLチューブに入れて-80℃で保存した。抽出したマイクロRNAの発現解析は、miRNA Oligo chip(東レ社に委託)で行った。
上記マイクロRNAの発現解析により、血管新生能が高いC57BL/6下肢虚血マウスに特異的に発現した、すなわちBALB/c下肢虚血マウスでは発現が検出されず、C57BL/6下肢虚血マウスのみ検出されたNo.1~No.31の31種類のマイクロRNAを表2に示す。また、BALB/c下肢虚血マウスと比較してC57BL/6下肢虚血マウスで発現レベルが20倍以上であったNo.32~No.43の12種類のマイクロRNAを表3に示す。こうして、血管新生能を有するマイクロRNAの候補として、1次スクリーニングにより43種類のマイクロRNAを同定した。
(2次スクリーニング)
・ベクターの作製
1次スクリーニングで同定した43種類のマイクロRNAを発現するベクターを作製するために、C57BL/6マウス由来のゲノムDNAを、表4のプライマーとTaKaRa Ex Taq(登録商標)(#RR001A、タカラバイオ社)を使用して増幅し、DNA Ligation Kit <Mighty Mix>(#6023、タカラバイオ社)を使用してT-Vector pMD20(#3270、タカラバイオ社)に結合した。そして、T-Vector pMD20に挿入されたゲノムDNA配列を、それぞれ表5に記載の制限酵素で切り出し、DNA Ligation Kit <Mighty Mix>を使用して、切り出したDNA断片をpmR-mCherry Vector(#Z2542N、タカラバイオ社)に挿入した。
・マイクロRNA内包エクソソームの作製
24-ウェル プレートに293T細胞をDMEM(ThermoFisherScientific社)と10% Exosome-depleted FBS(ThermoFisherScientific社)の培地で、1×10cell/500μL/ウェルで播種し、一晩培養した。
24-ウェル プレートの1ウェルにおいて、X-tremeGENE HP DNA Transfection Reagent 2μLとOpti-MEMTM I Reduced Serum Medium(ThermoFisherScientific社)を使用して、上記で作製した、1次スクリーニングで同定したマイクロRNAを発現する43種類のベクターとコントロールとしてベクターのみ、合計44種類のベクター2μgを293T細胞に導入し、一晩培養した。ウェルから培養液を除去し、1ウェルにDMEM(ThermoFisherScientific社)と10% Exosome-depleted FBS(ThermoFisherScientific社)の培地1.2mLを入れて、3日間培養した。
3日間培養した培養液を1.5mLチューブに移し、遠心(2,000rpm、3min、4℃)し、その上清1mLと、Total Exosome Isolation Reagent(from cell culture media)(#4478359、 ThermoFisherScientific社)0.5mLを新しい1.5mLチューブに移し、Vortexで攪拌後、4℃で一晩培養した。一晩4℃に置いた1.5mLチューブを遠心(10,000g、60min、4℃)し、上清を1,000μLマイクロピペットで除去し、再度、遠心(2~4秒)後、上清を200μLマイクロピペットで除去した。ペレットのエクソソームを再懸濁する為に、Opti-METM I Reduced Serum Mediumを420μL入れて、10分以上静置後、Vortexで攪拌してSpin downしてマイクロRNA内包エクソソーム溶液を調製した。
・Aortic ring assay
BALB/cマウス10匹の左右の大腿動脈を採取し、PBSに浸した。ピンセットとメスを使用して、顕微鏡下で大腿動脈を細切した。96-ウェル プレートを氷上に置き、1ウェル毎にマトリゲルを50μLずつ入れ、その上に細切した大腿動脈を置き、そのウェルに再度マトリゲル50μLを入れた後に、培養器(37℃、5%CO)で一晩培養した。1回の実験では、上記の96-ウェル プレートの44ウェルに細切した大腿動脈を入れた。一晩培養後、1ウェル毎に上記で作製したマイクロRNA内包エクソソーム溶液50μLを入れて5~7日間、培養(37℃、5%CO)した。顕微鏡下での観察で、細切した大腿動脈から新生血管が観察された場合、そのウェルに添加したマイクロRNA内包エクソソームを血管新生能があると判断した。この実験を3回実施して1回でも新生血管が観察されたものは、血管新生能があると判断し、血管新生能があるマイクロRNAとして、表6に記載のマイクロRNA14種類を同定した。
(3次スクリーニング)
マウス下肢虚血モデルに対する血管新生マイクロRNA内包エクソソームの筋肉注射投与後の血流評価を以下の方法で行った。
・マイクロRNA内包エクソソームの作製
6-ウェル プレートに293T細胞をDMEM(ThermoFisherScientific社及び10% Exosome-depleted FBS(ThermoFisherScientific社)を含む培地で播種し培養した。細胞密度が80~90%になった後、ウェルから培養液を除去し、1ウェルにDMEM及び5% Exosome-depleted FBSを含む培地を2mLほど加えて一晩培養した。
6-ウェル プレートの1ウェルに、導入するベクター(2次スクリーニングで同定した表6に示すマイクロRNAを発現する14種類のベクターとコントール(ベクターのみ)の計15種類のベクター(マイクロRNA内包エクソソームの作製欄に記載の方法で作製)2μgを、X-tremeGENE HP DNA Transfection Reagent 2μL及びOpti-MEMTM I Reduced Serum Medium (ThermoFisherScientific社)を使用して293T細胞に導入し、一晩培養(37℃、5%CO)した。ウェルから培養液を除去し、1ウェルにDMEM及び5% Exosome-depleted FBSの培地を2mLほど入れて、5日間培養した。
5日間培養した培養液を2mLチューブに移し、遠心(3,000rpm、5min、4℃)し、新しい2本の1.5mLに、遠心後の上清1mLずつ、及びTotal Exosome Isolation Reagent (from cell culture media)(#4478359、 ThermoFisherScientific社)0.5mLずつを入れ、攪拌後、4℃で一晩培養した。一晩4℃に置いた1.5mLチューブを遠心(10,000g、60min、4℃)し、上清を1,000μLマイクロピペットで除去し、再度、遠心後(2~4秒)、上清を200μLマイクロピペットで除去した。PBS 400μLで2本の1.5mLチューブのペレットを再懸濁して1本のサンプルとしてマイクロRNA内包エクソソーム溶液とし、4℃に保存した。
・マウス下肢虚血モデルへのエクソソーム溶液の投与
マウスとしてBALB/Cマウス(オス、7週齢)を用い、前記マウスの左大腿部の動脈と静脈を1か所結紮後、切開部を2針縫合して下肢虚血モデルを作製した。下肢虚血モデル作製の翌日に縫合糸を切断し、左大腿部の2箇所に50μLずつ上記エクソソーム溶液を投与し(6-ウェル プレートの1ウェル2mLで作製した培養液のうち0.5mL分のエクソソームを投与)、再度、切開部を2針縫合した。経時的に、血流をドップラー(laser speckle perfusion imaging system(OMEGA ZONE, Omega Wave社))で測定した。15群(マイクロRNA内包エクソソームが14群、コントロールが1群)で行ったが、1回の実験では1群は3匹で実験を行い、2回独立した実験を行い、各群は合計6匹として解析した。結果を図1に示す。
図1より、miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、及びmiR-8110を内包したエクソソームを投与した場合は、コントロールと比較してそれぞれ1.96倍、1.73倍、1.57倍、1.53倍の血流比となることが明らかとなった。したがって、miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、及びmiR-8110は、重症下肢虚血をはじめとする虚血組織における虚血関連疾患の治療に効果があることが示された。なお、実施例1で発現させたmiR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、及びmiR-8110は、それぞれ順に配列番号1~4に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド(表1参照)である。
[実施例2]miR-709の血管新生能評価
マウス下肢虚血モデルに対するマイクロRNA mimic(化学修飾を施した二本鎖RNA)を内包させたエクソソーム投与後の塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の発現変化について、以下の方法により調べた。なお、bFGFは血管新生を促す因子である。
・マイクロRNA mimicを内包させたエクソソームの作製
miR-709 mimicおよびコントロールであるScrambleは、味の素バイオファーマサービス・ジーンデザイン社により合成した。293T細胞は、L-グルタミンを添加したHE100(#HE100-0010、Gmep社)で培養した。10cm dishに、293Tを2×10 cells/10mLで播種し、一晩培養した。10cm dish 1枚に対するマイクロRNA mimicの導入は、マイクロRNA mimic 600pmolを、LipofectaminTM RNAiMAX Transfection Reagent(#13778075、ThermoFisherScientific社) 25μLを用いて実施し、約24時間培養(37℃、5%CO)した。マイクロRNA mimicを導入して24時間後に10cm dishから培養液を除去し、新しい培地10mLを加えた後に3日間培養(37℃、5%CO)した。同一のマイクロRNA mimic内包エクソソームを含む培養液は、10cm dish 2枚で作製した。培養液は、Amicon Ultra-15(#UFC901024、メルク社)を用いて濃縮した。マイクロRNA mimic内包エクソソームの濃縮は、qEV2 70カラム(70nm:メイワフォーシ社)を通すことで行い、4℃で保存した。濃縮されたエクソソームの濃度は、CD9/CD63 Exosome ELISA Kit(#EXH0102EL、コスモ・バイオ社)で測定した。
マウスとしてBALB/Cマウス(オス、14ヵ月齢)を用い、前記マウスの左大腿部動脈を1か所結紮後、切開部を2針縫合して下肢虚血モデルを作製した。マイクロRNA mimic内包エクソソームは100pg/200μLで調整した。下肢虚血モデル作製4日後に縫合糸を切断し、左大腿部の2箇所に100μLずつエクソソームを投与し(エクソソーム100pg分)、再度、切開部は2針で縫合した。エクソソームを投与して2日後に、左大腿部を採取し、RNAlaterTM Stabilization Solution(#AM7020、ThermoFisherScientific社)に浸漬させて4℃に一晩保存した。RNeasy Mini Kit(#74104、キアゲン社)を使用して、採取した組織からtotal RNAを抽出した。PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)(#RR036A、タカラバイオ社)を使用してtotal RNAからcDNAを作製した。qPCRは、SYBRTM Select Master Mix(#4472918、ThermoFisherScientific社)を用いてStepOnePlus(ThermoFisherScientific社)で行った。bFGFの発現を解析するためのqPCRに用いたプライマーを表7に示す。bFGFの発現はACTBの発現を基準として、その相対値として求めた。結果を図2に示す。
図2から明らかなように、miR-709を内包するエクソソームを下肢虚血モデルに投与するによって、下肢虚血モデルにおいてbFGFの発現が増加することが確認された。したがって、miR-709は重症下肢虚血の治療に効果があることが示された。また、実施例1の3次スクリーニングにおけるmiR-709の血流改善の機序において、血管新生誘導能があるbFGFの発現が上昇することが関与すると考えられる。
[実施例3]ヒト大動脈内皮細胞HAoEcにおけるmiR-709の発現
ヒト大動脈由来の内皮細胞であるHAoEcに対するマイクロRNA mimic内包エクソソーム添加後の遺伝子発現を解析した。
実施例2と同様の方法で、miR-709 mimic及びコントロールであるScrambleを内包させたエクソソームを作製した。得られたエクソソーム内のmiR-709の発現をqPCRによって解析した。結果を図3Aに示す。次に、ヒト大動脈内皮細胞HAoEc(# D10039、タカラバイオ社)を6-ウェル プレートの1ウェルに6×10cells/2mLで播種し、一晩培養した。上記で作製したmiR-709 mimic及びScrambleを内包させたエクソソームをPBSで1,000pg/1,000μLに調整し、ウェルにエクソソーム1,000pgと培地を添加した。添加から8時間後、24時間後、48時間後のHAoEcにおけるmiR-709の発現をTaqMan(登録商標)Advanced miRNA Assay(ThermoFisherScientific社)を用いてqPCRで解析した。miR-709の発現は、miR-186-5pを基準とした相対値で解析した。結果を図3Bに示す。また、エクソソームを添加して8時間後、24時間後のHAoEcにおけるBone marrow kinase on chromosome X(BMX)およびbFGFの発現変化をqPCRで解析した。発現は、ACTBを基準とした相対値で解析した(ΔCt法)。結果を図4示す。qPCRに用いたプライマーを表8に示す。
図3Aにより、作製したmiR-709 mimic内包エクソソームにおいてmiR-709の発現が確認された。また、図3Bから明らかなように、HAoEcにmiR-709を内包したエクソソームを添加することによってmiR-709がHAoEcの細胞内に取り込まれることすることを確認した。
CD157陽性の内皮細胞は、内皮幹細胞を多く含んでいると報告されており、内皮幹細胞の細胞表面抗原分子として、CD157およびCD200が報告されている。また、CD157およびCD200を発現している内皮幹細胞では、非受容体型チロシンキナーゼの一つであり、動脈のマーカーとして知られているBMXの発現が高いと報告されている(Cell Stem Cell. 2018 Mar 1;22(3):384-397)。図4から明らかなように、HAoEcにmiR-709を内包したエクソソームを添加することによってBMX及びbFGFの遺伝子発現が上昇することが確認された。このように、miR-709内包エクソソームがヒト大動脈由来内皮細胞に取り込まれ、動脈マーカーであるBMXの発現が上昇していることから、miR-709がヒト大動脈由来内皮細胞を活性化させることができると考えられた。また、bFGFの発現も上昇していることから、miR-709は大動脈由来内皮細胞を活性化させて血管新生を促す作用があると考えられた。
[実施例4]血管新生能を有するマイクロRNAの同定(2)
血管新生能を有するマイクロRNAとして、miR-765及びmiR-3678-3pを次の方法により同定した。
(スクリーニング前の検討)
・歯髄幹細胞を低酸素培養した場合の細胞増殖能、エクソソーム分泌量、エクソソームに内包されているVEGF量
移植前の細胞を低酸素培養することで、細胞の機能が増強されることを、本発明者らは報告している(Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2008 Feb;294(2):H590-5. doi: 10.1152/ajpheart.00856.2007.、Biochem Biophys Res Commun. 2014 Feb 14;444(3):370-5. doi: 10.1016/j.bbrc.2014.01.054.、Am J Transl Res. 2014 Oct 11;6(5):570-9.、特許第6544656号、特許第6583830号)。そこで、歯髄幹細胞を低酸素培養(33℃、5%CO、2%O)および通常培養(37℃、5%CO、大気圧酸素濃度)の条件で7日間培養したときの細胞増殖能、エクソソーム分泌量、エクソソームに内包されているVEGF量を比較した。
細胞増殖能:
歯髄幹細胞(Dental Pulp Stem cells、#PT-5025、LONZA社)を1,000cells/100μLに調整し、8枚の96-ウェル プレートの3ウェルずつに100μLずつ播種し、その周囲のウェルにはPBS 300μLを入れ、96-ウェル プレートを低酸素培養(33℃、5%CO、2%O)または通常培養(37℃、5%CO、大気圧酸素濃度)の培養器に入れたて培養した。培地としてはKBM ADSC-4(#16030044、コージンバイオ社)を用いた。そして、播種から1日後、3日後、5日後、7日後の細胞増殖(細胞活性)をCellTiter 96(登録商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(MTS)(#G3580、プロメガ社)で反応後、490nmの吸光度をARVO X4(PerkinElmer社)で測定した。
歯髄幹細胞を7日間培養したときの培養液へのエクソソーム分泌量:
歯髄幹細胞を7日間培養後の培養液中のエクソソームの濃度は、CD9/CD63 Exosome ELISA Kit(#EXH0102EL、コスモ・バイオ社)で測定した。
歯髄幹細胞を7日間培養したときのエクソソームに内包されているVEGF量:
歯髄幹細胞を7日間培養後の培養液中のエクソソームは、Total Exosome Isolation Reagent (from cell culture media)(#4478359、ThermoFisherScientific社)と混合し、遠心でペレットにされ、Total Exosome RNA and Protein Isolation Kit(#4478545、ThermoFisherScientific社)の試薬であるExosome Resuspension Buffer 200μLを加えて攪拌した後に、-80℃で保存した。VEGF濃度は、R&D Systems社のVEGF(# DVE00)ELISA kitで測定した。
結果を図5に示す。図5中、左から順に細胞増殖能、エクソソーム分泌量、エクソソームに内包されているVEGF量である。
図5の結果から、低酸素培養では通常培養の場合と比較して細胞数は少なく、かつエクソソーム量も少ないにもかかわらず、エクソソームに内包されているVEGF量が多いことが明らかとなった。血管新生に重要な働きをするVEGF量が、低酸素培養によりエクソソーム内で上昇したことから、低酸素培養により歯髄幹細胞が分泌するエクソソームには、血管新生能を有するマイクロRNAの内包量が上昇するのではないかと考えられた。そこで、歯髄幹細胞を低酸素培養して以下に記載の方法で血管新生能を有するマイクロRNAのスクリーニングを行った。
(1次スクリーニング)
KBM ADSC-4を用いて、10cm dish 1枚に歯髄幹細胞(Dental Pulp Stem cells、#PT-5025、LONZA社)を2×10cell /10mLとなるように播種した。播種した歯髄幹細胞は、低酸素培養(33℃、5%CO、2%O)および通常培養(37℃、5%CO、大気圧酸素濃度)、それぞれの培養条件下で、10cm dishを10枚ずつで7日間培養した。7日間培養後、培養液を50mLチューブに移し、遠心(3,000rpm、5min、20℃)し、上清をAmicon Ultra-15(#UFC901024、メルク社)を用いて濃縮した。約9mLの濃縮液が得られた。その濃縮液は、Total Exosome Isolation Reagent(from cell culture media)(#4478359、ThermoFisherScientific社)と混合し、遠心によりペレットにした。miRNeasy Micro Kit(# 217084、キアゲン社)を用いて、上記ペレットからエクソソームに内包されているマイクロRNAを150μLのHOで抽出した。そのうち120μLをアレイ解析に使用して、低酸素培養された歯髄幹細胞が分泌するエクソソームが内包するマイクロRNAの変化を調べた。結果を表9に示す。表9中、Hypoは低酸素培養下、Normalは通常培養下、Hypo/Normoのratioは通常培養下に対する低酸素培養下のマイクロRNAの発現量の比を意味する。なお、抽出したマイクロRNAの発現解析は、miRNA Oligo chip(東レ社に委託)で行った。また、No.1~5は低酸素培養で新たに発現したマイクロRNA、No.6~13は低酸素培養下で発現量が通常培養下と比較して2.5倍以上になったマイクロRNAである。
表9に示すように、いずれも低酸素条件下で培養した場合に、マイクロRNAの発現が増加していることが確認された。なお、以後の実験においてNo.8を除くNo.1~7、9~13を用いた。
・ベクター作製
1次スクリーニングで同定した12種類(No.8以外)のマイクロRNAを発現するベクターを以下の方法で作製した。まず、293T細胞由来のゲノムDNAを表10のプライマーとTaKaRa Ex Taq(登録商標)(#RR001A、タカラバイオ社)を使用して増幅させ、DNA Ligation Kit<Mighty Mix>(#6023、タカラバイオ社)を使用してT-Vector pMD20(#3270、タカラバイオ社)に結合させた。そして、T-Vector pMD20に挿入されたゲノムDNA配列を、表11に記載されている制限酵素で切り出して、pmR-mCherry Vector(#Z2542N、タカラバイオ社)にDNA Ligation Kit<Mighty Mix>を使用して挿入して12種類のベクターを作製した。
(2次スクリーニング)
・マイクロRNA内包エクソソームの作製
1次スクリーニングで同定したhas-miR-1973(表9 No8)を除くマイクロRNAを発現する、上記で作製した12種類のベクターとコントール(ベクターのみ)を導入する為に、293T細胞をL-グルタミン添加HE100で、2×10cells/mLに調整し、6-ウェル プレートの1ウェルに2mLずつ播種し、一晩培養した。6-ウェル プレートの1ウェルに導入するベクター2μgを、X-tremeGENE HP DNA Transfection Reagent 2μlとOpti-MEMTM I Reduced Serum Medium(ThermoFisherScientific社)を使用して293T細胞に導入し、24時間培養(37℃、5%CO)した。ウェルから培養液を除去し、1ウェルにL-グルタミン添加HE100を2mLずつ入れて、3日間培養した。
3日間培養した培養液を2mLチューブに移し、遠心(3,000rpm、5min、4℃)し、培養上清を新しい2mLチューブに移した。qEV original 70カラム(メイワフォーシス社)を使用して、培養上清中のエクソソームを単離し、4℃に保存した。単離されたエクソソームの濃度は、CD9/CD63 Exosome ELISA Kit(#EXH0102EL、コスモ・バイオ社)で測定した。
・miRNA内包エクソソーム添加によるHAoEcの細胞増殖アッセイ
HAoEcを、内皮細胞増殖培地MV2:Endothelial Cell Growth Medium MV 2(Ready-to-use)(# D12020、タカラバイオ社)で培養した。HAoEcを内皮細胞増殖培地MV2で、1,000cells/100μLに調整し、96-ウェル プレートの1ウェルに100μLずつ播種した。上記単離したエクソソームをPBSで750pg/mLに調整し、1ウェルに100μLずつ添加した。同一のエクソソームは、3ウェルで実験を行った。細胞を播種した周囲のウェルにはPBSを300μLずつ入れた。HAoEcは、7日間培養(37℃、5%CO)後、細胞増殖(細胞活性)はCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(MTS)(#G3580、プロメガ社)で反応後、490nmの吸光度をARVO X4(PerkinElmer社)で測定した。結果を図6に示す。
図6より、No6のmiR-4485-3p、No7のmiR-765、No10のmiR-4284及びNo11のmiR-3678-3pを内包するエクソソームの添加によって、HAoEcの増殖を促すことが明らかとなった。
(3次スクリーニング)
マウス下肢虚血モデルに対する血管新生マイクロRNA内包エクソソームの筋肉注射投与後の血流評価を行った。
・マイクロRNA内包エクソソームの作製
6-ウェル プレートに293T細胞をDMEM(ThermoFisherScientific社)と5% Exosome-depleted FBS(ThermoFisherScientific社)の培地で1ウェルに2mLずつ播種し、一晩培養した。6-ウェル プレートの1ウェルに、miR-4485-3p、miR-765、miR-4284及びmiR-3678-3pの4種類のマイクロRNAを発現するベクター、及びコントール(ベクターのみ)2μgを、X-tremeGENE HP DNA Transfection Reagent 2μlとOpti-MEMTM I Reduced Serum Medium(ThermoFisherScientific社)を使用して293T細胞に導入し、24時間培養(37℃、5%CO)した。ウェルから培養液を除去し、1ウェルにDMEM(ThermoFisherScientific社)と5% Exosome-depleted FBS(ThermoFisherScientific社)の培地2mLを入れて、5日間培養した。培養液を2mLチューブに移し、遠心(3,000rpm、5min、4℃)し、新しい2本の1.5mLそれぞれに、遠心後の上清1mLと、Total Exosome Isolation Reagent(from cell culture media)(#4478359、 ThermoFisherScientific社)0.5mLを入れ、Vortexで攪拌後、4℃で一晩培養した。一晩4℃に置いた1.5mLチューブを遠心(12,000g、60min、4℃)し、上清を1,000μLマイクロピペットで除去し、再度、遠心後(12,000g、1min、4℃)し、上清を200μLマイクロピペットで除去した。PBS 400μLで2本の1.5mLチューブのペレットを再懸濁して1本のサンプルとしてマイクロRNA内包エクソソーム溶液とし、4℃に保存した。
マウスとしてBALB/Cマウス(オス、8週齢)を用い、左大腿部の動脈と静脈を1か所結紮後、切開部は2針で縫合してマウス下肢虚血モデルを作製した。マウス下肢虚血モデル作製の翌日に縫合糸を切断し、左大腿部の2箇所に50μLずつエクソソーム溶液を投与し(6-ウェル プレートの1ウェル2mLで作製した培養液のうち0.5mL分のエクソソームを投与)、再度、切開部を2針縫合した。経時的に、血流をドップラー(laser speckle perfusion imaging system(OMEGA ZONE, Omega Wave社))で測定した。1群は6匹で実験を行った。結果を図7に示す(Ordinary one-way ANOVA解析)。
図7より、コントロールに対してmiR-765、miR-3678-3p、miR-4485-3p及びmiR-4284の血流はそれぞれ順に2.93倍、1.94倍、1.23倍、1.19倍であった。したがって、miR-765及びmiR-3678-3pはマウス下肢虚血モデルにおいて血流改善効果を示すことが確認された。なお、実施例4で発現させたmiR-765、miR-3678-3pは、それぞれ順に配列番号59、6に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド(表1参照)である。
[実施例5]マウス下肢虚血モデルに対するマイクロRNA mimicを内包させたエクソソーム投与後の遺伝子発現変化
(マイクロRNA mimicを内包させたエクソソームの作製)
miR-765 mimicおよびコントロールであるScrambleを内包させたエクソソームは、実施例4と同じ方法で作製した。
マウスとしてBALB/Cマウス(オス、8週齢)を用い、前記マウスの左大腿部動脈を1か所結紮後、切開部を2針縫合して下肢虚血モデルを作製した。miR-765 mimicおよびコントロールであるScrambleを内包させたエクソソームは100pg/100μLで調整した。下肢虚血モデル作製4日後に縫合糸を切断し、左大腿部の2箇所に50μLずつエクソソームを投与し(エクソソーム100pg分)、再度、切開部は2針で縫合した。エクソソームを投与して2日後に、左大腿部を採取し、RNAlaterTM Stabilization Solution(#AM7020、ThermoFisherScientific社)に浸漬させて4℃保存した。RNeasy Mini Kit(#74104、キアゲン社)を使用して、採取した組織からtotal RNAを抽出した。PrimeScriptTM RT Master Mix (Perfect Real Time)(#RR036A、タカラバイオ社)を使用してtotal RNAからcDNAを作製した。qPCRは、SYBRTM Select Master Mix(#4472918、ThermoFisherScientific社)を用いてStepOnePlus(ThermoFisherScientific社)で行った。血管新生因子であるbFGF、血小板由来成長因子(PDGF)-B、PDGF-A、HGF、VEGF及びデザートヘッジホッグ(DHH)の発現を解析するためのqPCRに用いたプライマーを表12に示す。それぞれの発現はACTBの発現を基準として、その相対値として求めた。結果を図8に示す。
図8より、miR-765により、血管新生因子であるbFGF、PDGF-B、PDGF-A、HGF、VEGF及びHDDのいずれも発現が増加していることが確認された。これらの結果から、miR-765による下肢虚血モデルにおける血流改善には、血管新生因子の発現増加が関与することが示された。

Claims (5)

  1. (a)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体;又は
    (b)miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクター;
    を有効成分とする、脈管障害の予防又は治療用医薬組成物。
  2. 前記脈管障害が、重症下肢虚血、脳血管障害、末梢血管疾患、冠状動脈疾患、糖尿病性脈管障害、又はリンパ管障害である、請求項1に記載の脈管障害の予防又は治療用医薬組成物。
  3. (a)に記載のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体、又は(b)に記載の発現ベクターが核酸送達媒体の中に包含されていることを特徴とする、請求項1に記載の脈管障害の予防又は治療用医薬組成物。
  4. 核酸送達媒体が、脂質二重膜からなる膜小胞であることを特徴とする、請求項3に記載の脈管障害の予防又は治療用医薬組成物。
  5. miR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を含有する、生体から分離された脂質二重膜からなる膜小胞の作製方法であって、
    哺乳動物細胞にmiR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを導入して、前記発現ベクターを含有する哺乳動物細胞を作製する工程A;及び
    前記工程Aで作製した哺乳動物細胞を培養してmiR-709、miR-1247-3p、miR-671-5p、miR-8110、miR-765及びmiR-3678-3pから選択される少なくとも1種のマイクロRNA、若しくはそれらの前駆体を発現させる工程B;
    を含む、前記方法。

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