JP2023183770A - 沸騰冷却装置 - Google Patents

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Shuhei Shibata
幸平 村上
Kohei Murakami
正道 岩崎
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淳 中村
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Abstract

【課題】長期間安定的に冷却性能の低下を抑制することができる沸騰冷却装置を提供すること。【解決手段】沸騰冷却装置1は、液状の冷媒REと、冷媒REを収容し、発熱体100からの熱により冷媒REを沸騰させる伝熱面FTを有する容器11と、を備える。冷媒REは、純水と、エーテル型の非イオン性界面活性剤と、冷媒REのpHを7以上に保つ緩衝作用を有する添加物と、を含む。また、非イオン性界面活性剤は、親水基と疎水基とを有し、親水基は、ポリグリセリンであることが好ましい。また、親水基は、糖類であることが好ましい。【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 1:令和3年10月2日 日本機械学会熱工学コンファレンス2021予稿集(URL:https://www.jsme.or.jp/conference/tedconf21/online/index.html) 2:令和3年11月2日 日本機械学会第12回マイクロ・ナノ工学シンポジウム予稿集(URL:https://shunkosha1.sakura.ne.jp/mnm2021/) 3:令和4年3月12日 The 32nd International Symposium on Transport Phenomena予稿集(URL:https://istp32.scimeeting.cn/en/web/jump/1703?mid=138223&nid=50730) 4:令和4年5月11日 第59回日本伝熱シンポジウム予稿集(URL:https://htsj-conf.org/symp2022/proceedings/)
本開示は、沸騰冷却装置に関する。
冷媒の沸騰に伴う潜熱による熱輸送を利用して発熱体を冷却する沸騰冷却装置が知られている。
特許文献1に記載の沸騰冷却装置は、発熱体と接触する容器と、容器に収容される液体冷媒とを備える。当該容器は、液体冷媒に接触する伝熱面を有しており、当該伝熱面を介して発熱体の熱が液体冷媒に伝達されることにより、液体冷媒は沸騰する。
かかる沸騰冷却装置で用いられる液体冷媒は、エタノール水溶液と非イオン系のフッ素系界面活性剤とを含む。界面活性剤を用いることで、伝熱面が気泡で覆われることによる熱伝達の阻害が抑制される。
特開2013-24456号公報
特許文献1に記載の液体冷媒を含む沸騰冷却装置は、高温環境で長期間使用することが難しい。従来の沸騰冷却装置を高温で長期間使用すると、容器が金属製である場合、液体冷媒のpHの低下により金属腐食が生じるおそれがある。この結果、容器が破損し、液体冷媒の漏洩を引き起こすおそれがある。また、従来の沸騰冷却装置を高温環境で長期間使用すると、界面活性剤の分解が生じるおそれがある。界面活性剤の分解が生じると、界面活性剤による沸騰伝熱性能向上効果の低下、および分解生成物による金属腐食の助長を発生させるという問題がある。したがって、従来の沸騰冷却装置では、界面活性剤を用いることでの沸騰伝熱性能の向上と、液体冷媒のpHの低下により金属腐食および界面活性剤の分解による問題の解決と、の両立を図ることが難しい。
以上の課題を解決するために、本開示の好適な態様に係る沸騰冷却装置は、液状の冷媒と、前記冷媒を収容し、発熱体からの熱により前記冷媒を沸騰させる伝熱面を有する容器と、を備え、前記冷媒は、純水と、エーテル型の非イオン性界面活性剤と、前記冷媒のpHを7以上に保つ緩衝作用を有する添加物と、を含む。
第1実施形態に係る沸騰冷却装置の概略図である。 気泡の発生を説明するための図である。 気泡の成長を説明するための図である。 気泡の離脱を説明するための図である。 第2実施形態に係る伝熱部材の斜視図である。 図5に示す伝熱部材の部分断面図である。 気泡の発生を説明するための図である。 気泡の成長を説明するための図である。 気泡の離脱を説明するための図である。 図6に示す伝熱面の凹部による効果を説明するための図である。 第3実施形態に係る沸騰冷却装置の概略構成を示す斜視図である。 図11に示す沸騰冷却装置の断面図である。 図12中のA-A線断面図である。 図13中のB-B線断面図である。 気泡の離脱を説明するための図である。 変形例1に係る沸騰冷却装置の概略図である。 変形例2に係る沸騰冷却装置の伝熱面を説明するための図である。 変形例3に係る沸騰冷却装置の伝熱部材を説明するための図である。
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
1.第1実施形態
1-1.沸騰冷却装置の概要
図1は、第1実施形態に係る沸騰冷却装置1の概略図である。以下の説明は、便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向とは反対の方向がX2方向である。Y軸に沿う一方向がY1方向であり、Y1方向とは反対の方向がY2方向である。Z軸に沿う一方向がZ1方向であり、Z1方向とは反対の方向がZ2方向である。
ここで、典型的には、Z軸が鉛直線であり、Z1方向が鉛直上方に相当し、Z2方向が鉛直下方に相当する。なお、実空間でのZ軸の向きは、沸騰冷却装置1の設置姿勢に応じて決められる。Z軸は、鉛直線に対して45°以下の範囲内で傾斜してもよい。また、以下では、単に「上方」とは、鉛直線に沿う方向での位置を示しており、鉛直上方および鉛直斜め上方の双方を概念的に含む。同様に、単に「下方」とは、鉛直線に沿う方向での位置を示しており、鉛直下方および鉛直斜め下方の双方を概念的に含む。
図1に示す沸騰冷却装置1は、発熱体100を冷却する装置である。発熱体100は、例えば、ダイオード、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体素子である。パワー半導体素子は、例えば、鉄道車両、自動車、および家庭用電気機械等に用いられるインバーターおよび整流器等のパワーエレクトロニクス製品に搭載される。
沸騰冷却装置1は、冷媒REの沸騰で生じる潜熱を利用する冷却器である。当該潜熱を利用した冷却は、一般に、沸騰冷却と称される。冷媒REは、後に詳述するが、発熱体100を冷却させるための熱輸送に用いる媒体であり、沸騰冷却装置1内の圧力のもと常温で液状をなす。図1に示す例では、沸騰冷却装置1は、冷媒REの自然対流を利用したプール沸騰式である。
沸騰冷却装置1は、冷媒REと、冷媒REを収容する容器11を有する受熱部10とを備える。さらに、沸騰冷却装置1は、凝縮部20と蒸気輸送部30と液輸送部40とを備える。
受熱部10は、発熱体100からの熱を受ける。受熱部10が有する容器11は、伝熱部材12を有する。伝熱部材12は、発熱体100で生じた熱を冷媒REに伝える。図1に示す例では、伝熱部材12は、容器11の底部を構成する平板状の部材である。伝熱部材12は、受熱面FRと伝熱面FTとを有する。受熱面FRは、発熱体100に熱的に接続される。伝熱面FTは、容器11の内壁面を構成するように容器11の内部に露出しており、冷媒REと接触する。伝熱面FTは、発熱体100からの熱により冷媒REを沸騰させる。図1に示す例では、伝熱面FTは、平坦面である。具体的には、伝熱面FTは、Z軸に直交する平面である。発熱体100からの熱が伝熱面FTを介して冷媒REに伝わり、伝熱面FTの近傍の冷媒REが沸点以上の温度に過熱される。冷媒REが過熱されることにより、伝熱面FTに複数の気泡Bが発生する。
なお、「熱的に接続」とは、次の条件a、bまたはcのいずれかを満たすことをいう。条件a:2つの部材が物理的に直接に接する。条件b:2つの部材が50μm以下の間隙を介して配置される。条件c:2つの部材が10W・m-1・K-1以上の熱伝導率の他の部材を介して物理的に接続される。なお、各条件における2つの部材間には、伝熱グリースおよび接着剤等が存在してもよい。この場合、接着剤は、熱伝導性を高める観点から、熱伝導性のフィラー等を含むことが好ましい。
伝熱部材12は、熱伝導性に優れる材料で構成される。伝熱部材12の具体的な構成材料としては、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属が挙げられる。また、容器11の伝熱部材12以外の部分の具体的な構成材料としては、特に限定されないが、伝熱部材12の構成材料と同様、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属が挙げられる。なお、伝熱部材12は、容器11の伝熱部材12以外の部分と一体的に形成されてもよく、別部材で形成されてもよい。さらに、伝熱部材12は、1つの部材で構成されてもよいし、複数の部材で構成されてもよい。
凝縮部20は、受熱部10に対して鉛直方向での上方に配置される。凝縮部20は、気化した冷媒REを凝縮する。このため、凝縮部20では、気化した冷媒REが液状の冷媒REに戻される。凝縮部20は、筐体21と冷却部材22とを有する。筐体21は、気化した冷媒REを液化させる空間を形成する構造体である。筐体21の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属が挙げられる。冷却部材22は、筐体21内の気化した冷媒REを冷却する構造体である。冷却部材22は、例えば、冷却された流体が流れる冷却管である。
蒸気輸送部30および液輸送部40のそれぞれは、受熱部10および凝縮部20のそれぞれに接続される管体であり、受熱部10内の空間と凝縮部20内の空間とを連通させる。ただし、蒸気輸送部30は、気化した冷媒REを受熱部10から凝縮部20に流すよう構成される。一方、液輸送部40は、液化した冷媒REを凝縮部20から受熱部10に流すよう構成される。蒸気輸送部30および液輸送部40の各構成材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属が挙げられる。
以上の構成の沸騰冷却装置1では、発熱体100の熱が伝熱部材12を介して容器11内の冷媒REに伝わることにより、冷媒REが伝熱面FT近傍で沸騰する。この結果、伝熱面FTには、気泡Bが発生する。発生した気泡Bは、浮力により伝熱面FTから離脱した後、冷媒REの液面よりも上方で気体状の冷媒REとなる。当該気体状の冷媒REは、受熱部10から蒸気輸送部30を介して凝縮部20に輸送される。凝縮部20に輸送された気体状の冷媒REは、凝縮部20で凝縮されることにより液状の冷媒REに戻る。当該液状の冷媒REは、凝縮部20から液輸送部40を介して受熱部10に輸送される。
このように、沸騰冷却装置1では、伝熱面FT近傍の冷媒REの相変化により、伝熱部材12を介して発熱体100を冷却させることができる。また、冷媒REの受熱部10での気化と凝縮部20での液化とが繰り返されることにより、発熱体100を継続的かつ安定的に冷却することができる。
なお、沸騰冷却装置1は、図1に示す構成に限定されず、例えば、受熱部10、凝縮部20、蒸気輸送部30および液輸送部40が一体で構成されるサーモサイフォンであってもよい。また、沸騰冷却装置1は、プール沸騰式に限定されず、冷媒REの流れを強制的に生じさせる強制対流沸騰式であってもよい。この場合、例えば、蒸気輸送部30に、図示しないポンプが接続される。
1-2.冷媒RE
冷媒REは、溶媒である純水と、エーテル型の非イオン性界面活性剤と、冷媒REのpHを7以上に保つ緩衝作用を有する添加物と、を含む。冷媒REがこれらを含むことにより、沸騰伝熱性能の向上と、冷媒REのpHの低下による金属腐食、および界面活性剤の分解による問題の解決と、の両立を実現することができる。したがって、沸騰冷却装置1を高温環境で長期間安定して用いることができる。以下、冷媒REを用いることでの気泡Bの挙動と、冷媒REの具体的な構成とについて説明する。
1-2a.純水
純水は、溶媒であり、冷媒REの主成分である。溶媒が純水であることで、溶媒が例えばエタノール水溶液である場合に比べ、高温環境での使用に適した沸騰冷却装置1を提供することができる。なお、本明細書において、純水とは、RO水、蒸留水、および超純水を含む。
1-2b.界面活性剤
界面活性剤は、分子内に疎水基と親水基とを有する。界面活性剤を含むことで、微細な気泡Bを多数発生させることができ、沸騰伝熱性能を向上させることができる。
液状の冷媒RE中で気泡Bが発生および成長するためには、気泡B内部の蒸気圧pが気泡B周囲の液状の冷媒REの圧力pよりも冷媒REの表面張力γに打ち勝つだけ高くなければならない。気泡Bの内外の圧力差Δp(=p-p)は、冷媒REの表面張力γ、気泡Bの曲率半径Rを用いて、以下の式(1)で表される。
Δp=(2γ/R) ・・・(1)
圧力差Δpに対応する過熱度ΔTは、気泡Bを構成する気体の密度である蒸気密度ρ、冷媒REの液密度ρ、飽和温度Tsat、圧力差Δp、蒸発潜熱hfgを用いて、以下の式(2)で表される。
ΔT=(ρ-ρ)×Tsat×Δp/(hfg×ρ×ρ) ・・・(2)
冷媒REが界面活性剤を含むことで、冷媒REの表面張力γを低下させることができる。このため、気泡Bの内外の圧力差Δpおよび過熱度ΔTを小さくすることができる。この結果、気泡Bが発生および成長しやすくなる。
また、冷媒REが界面活性剤を含むことで、冷媒REの表面張力γが低下するので、伝熱面FTに対する気泡Bの付着力Fが小さくなる。このため、気泡Bが伝熱面FTから離脱するための浮力Fが小さくて済むので、伝熱面FTからの離脱時の気泡Bの体積を小さくすることができる。したがって、伝熱面FTから離脱する際における気泡Bの直径、すなわち離脱気泡径Dbaseを小さくすることができる。
浮力Fは、以下の式(3)で表される。
=V(ρ-ρ)g ・・・・・(3)
Vは気泡Bの体積、gは、重力加速度である。
離脱気泡径Dbaseと表面張力γとの関係は、以下の式(4)で表される。
=πDbaseγsinθ ・・・・・(4)
θは、伝熱面FTに対する気泡Bの接触角である。Fは、伝熱面FTに対する気泡Bの付着力である。離脱気泡径Dbaseは、平面から離脱する際における気泡Bの直径である。
ここで、合体により大型化した気泡Bは、合体していない小型な気泡に比べ、1個当たりの気泡Bが伝熱面FTを覆う面積が大きい。そのため、伝熱面FTのうち大型な気泡Bが離脱した部分は、小型な気泡Bが離脱した部分に比べ、過熱され冷媒REが流れ込み難い。そのため、大型な気泡Bが離脱した部分では、小型な気泡Bが離脱した部分に比べ、次の気泡Bが発生するまでにかかる時間が長くなり易い。その結果、気泡Bの発生周期が長期化するという弊害が生じる。したがって、単位時間あたりの気泡Bの発生数を多くするためには、隣接する気泡B同士の合体を抑制することが好ましい。
前述のように、冷媒REは界面活性剤を含むため、クーロン力等により隣接する気泡B同士の合体を抑制することができる。この結果、合体した気泡Bにより伝熱面FTが覆われることによる前述の弊害を抑制することができる。
図2は、伝熱面FTでの気泡Bの発生を説明するための図である。図2では、例えば、3つの気泡Ba、Bb、およびBcが図示されている。前述のように、冷媒REには界面活性剤が含まれているので、気泡Ba、BbおよびBcのそれぞれは発生し易い。また、気泡Ba、BbおよびBcは、界面活性剤の作用により互いの合体が抑制されつつ、成長する。
図3は、伝熱面FTでの気泡Bの成長を説明するための図である。図3に示すように、
気泡Ba、BbおよびBcのそれぞれの成長が進行すると、伝熱面FTに沿う方向すなわちX-Y平面に沿う方向での気泡Baの成長は、気泡BbおよびBcにより制限される。この結果、気泡Baは、Z1方向に成長し易くなる。これは、界面活性剤の作用により気泡Ba、BbおよびBcのそれぞれとの合体が抑制されるからである。また、気泡Baは、その成長に伴って、気泡Bbと気泡Bcとの間に挟まれた状態で浮力が作用する。当該作用により、気泡Baは、くびれた形状に変形していく。
図4は、伝熱面FTからの気泡Bの離脱を説明するための図である。図4に示すように、気泡Ba、BbおよびBcのそれぞれの成長がさらに進行すると、気泡Baが伝熱面FTから離脱する。このとき、図4に示すように、気泡Baは、気泡Ba1と気泡Ba2とに分離する。気泡Ba1は、伝熱面FTから離脱する。気泡Ba2は、残留気泡として伝熱面FT上に残る。その後、気泡Ba2は、新たな気泡Bの発生のための核として機能する。このように、気泡Baが伝熱面FT上に残ることにより、気泡Bの発生周期を短くすることができる。このため、単位時間あたりに離脱する気泡数を増加させることができる。よって、沸騰伝熱性能を高めることができる。また、界面活性剤分子の反発によって隣り合う気泡B同士の合体が抑制されることで、大型な気泡Bの形成が抑制される。このため、大型な気泡Bにより伝熱面FTが覆われることによる前述の弊害を抑制することができる。以上のように、冷媒REが界面活性剤を含むことで、沸騰伝熱性能を高めるので、沸騰冷却装置1の冷却性能を向上させることができる。
また、冷媒REに含まれる界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤を用いることで、界面活性剤分子の立体障害によって、隣り合う気泡B同士の合体が抑制される。非イオン性界面活性剤は純水中でイオンに解離する基を有さないため、金属腐食が生じ難い。
非イオン性界面活性剤は、エーテル型である。エーテル型は、例えばエステル型に比べて、高温環境で加水分解し難い。このため、エーテル型の非イオン性界面活性剤を用いることで、分解生成物による金属腐食が助長されるおそれが低減される。
界面活性剤の親水基としては、例えば、糖類、ポリオキシエチレン、およびポリグリセリンが挙げられる。これらの中でも親水基は、糖類またはポリグリセリンであることが好ましい。親水基がポリグリセリンであることで、水溶性を確保することができ、また、高温環境であっても分解し難い。また、親水基が糖類であることで、水溶性を確保することができ、また、高温環境であっても分解し難い。
ここで、非イオン性界面活性剤は曇点以上で水溶性が失われ、その結果、冷媒REは白濁する。非イオン性界面活性剤の水溶性が失われると、前述の界面活性剤による効果を得難い。このため、非イオン性界面活性剤の曇点は、沸騰冷却装置1の使用温度よりも高いことが好ましい。非イオン性界面活性剤の親水基がポリグリセリンまたは糖類であることで、冷媒REの曇点を特に高くすることができる。このため、高温環境で沸騰冷却装置1を安定的に使用することができる。
また、界面活性剤の疎水基は一般的に炭化水素を主体とするものであり、その中でもアルキル基であることが好ましい。疎水基がアルキル基であることで、低い分子量で疎水基の疎水性を確保でき、界面活性剤分子の易動度を高めることができる。また、界面活性剤は、親水基がポリグリセリンまたは糖類であり、かつ、疎水基がアルキル基であることで、高温環境で沸騰冷却装置1を特に安定的に使用することができ、かつ沸騰伝熱性能を特に高めることができる。なお、疎水基としては、アルキルフェニル基等でもよい。
さらに、疎水基がアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、6以上18以下であることが好ましい。炭素数が少ない場合、界面活性が弱くなり、表面張力を下げる効果が弱くなってしまう。炭素数が多すぎると、界面活性剤分子の冷媒RE中での易動度が低下してしまう。また、親水基がポリグリセリンである場合、アルキル基の炭素数は、8以上18以下であることがより好ましく、8以上10以下であることがさらに好ましい。また、親水基が糖類である場合、アルキル基の炭素数は、6以上10以下であることがより好ましく、8以上10以下であることがさらに好ましい
エーテル型の非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、およびポリグリセリルアルキルエーテルが挙げられる。アルキルグリコシドおよびポリグリセリルアルキルエーテルは、他の非イオン性界面活性剤に比べ水溶性かつ高温環境での安定性に優れる。
さらに、ポリグリセリルアルキルエーテルの中でも、ポリグリセリル-4ラウリルエーテルが好ましい。ポリグリセリル-4ラウリルエーテルは、水溶性に優れ、かつ、加水分解し難い。このため、ポリグリセリル-4ラウリルエーテルを用いることで、金属腐食が特に生じ難くなる。さらに、ポリグリセリル-4ラウリルエーテルは、沸騰伝熱性能を向上させる効果が大きい。このため、ポリグリセリル-4ラウリルエーテルを用いることで、冷却性能に優れる沸騰冷却装置1を高温環境で特に長期間安定的に使用することができる。
また、アルキルグリコシドとしては、例えば、n-オクチル-β-D-グルコシド、およびn-デシル-β-D-グルコシドが挙げられる。アルキルグリコシドの中でも、n-オクチル-β-D-グルコシドが好ましい。n-オクチル-β-D-グルコシドを用いることで、冷却性能に優れる沸騰冷却装置1を高温環境で特に長期間安定的に使用することができる。
なお、エーテル型の非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等でもよい。
界面活性剤の含有率は、例えば、0.02wt%以上2wt%以下であることが好ましい。界面活性剤の含有率が低すぎると、界面活性剤による前述の作用が不足するおそれがある。一方、界面活性剤の含有率が高すぎると、界面活性剤の水溶性が低下するおそれがある。
1-2c.添加物
添加物は、前述のように、冷媒REのpHを保つ緩衝作用を有する。当該添加物が含まれることで、冷媒REのpHを長期間一定の範囲に保つことができる。界面活性剤を高温環境で長期間安定的に使用するためには、冷媒REのpHを長期間一定の範囲に保つ必要がある。例えば、高温環境での長期間の使用により冷媒REのpHを低下させる要因が生じた場合、加水分解し難い界面活性剤を使用しても、界面活性剤の分解が促進されるおそれがある。このため、分解生成物による金属腐食、および更なるpHの低下が懸念される。そこで、純水およびエーテル型の非イオン性界面活性剤を含む冷媒REに、pHを7以上に保つ緩衝作用を有する成分を添加することにより、界面活性剤の分解および金属腐食を抑制することができる。
添加物は、pHを7以上に保つ緩衝作用を有すればよいが、pHを8以上10以下に保つ緩衝作用を有することがより好ましい。pHを上記範囲内に保つことで、沸騰冷却装置1お高温環境で過度に長期間使用した場合であっても、金属製の容器11の腐食速度を充分に低下させることができる。
添加物の具体例としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、および四ほう酸ナトリウムのうちの1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。これらの中でも、四ほう酸ナトリウムがより好ましい。添加物が四ほう酸ナトリウムであることで、何らかの要因により冷媒RE内で水素イオンが生じるような反応が発生した場合においても、冷媒REのpHを8以上10以下に長期間保つことができる。
添加物の含有率は、例えば、0.2wt%以上2wt%以下であることが好ましい。添加物の含有率が低すぎると、沸騰冷却装置1の使用環境によってはpHを所望の範囲に保つ効果が弱まるおそれがある。一方、添加物の含有率が高すぎると、水に溶解できない分が析出するおそれがある。
以上のように、冷媒REは、溶媒である純水と、エーテル型の非イオン性界面活性剤と、pHを7以上に保つ緩衝作用を有する添加物と、を含む。前述のように、冷媒REが純水を溶媒として含むことで、エタノール水溶液を冷媒として含む場合に比べ高温環境での使用に適した沸騰冷却装置1を提供できる。また、エーテル型の非イオン性界面活性剤を用いることで、加水分解を抑制することにより分解生成物による金属腐食の助長を抑制しつつ、微細な気泡Bを多数発生させることができる。さらに、pHを7以上に保つ緩衝作用を有する添加物を用いることで、純水およびエーテル型の非イオン性界面活性剤を含む冷媒REにおいて、界面活性剤の分解および金属腐食を抑制することができる。したがって、冷媒REを用いることで、沸騰伝熱性能の向上と、高温環境での冷媒REのpHの低下による金属腐食、および界面活性剤の分解による問題の解決と、の両立を実現できる。このため、高温環境で長期間使用される沸騰冷却装置1において、沸騰冷却装置1の破損、および沸騰冷却性能の低下を防止することができる。したがって、高温環境で長期間安定的に冷却性能の低下を抑制することができる沸騰冷却装置1を提供することができる。
さらに、前述のように、界面活性剤の親水基がポリグリセリンまたは糖類であることで、界面活性剤の水溶性を高めることができるので、高温環境で沸騰冷却装置1をより安定的に使用することができる。また、疎水基がアルキル基であることで、隣り合う気泡B同士の合体を効果的に抑制することができるので、沸騰伝熱性能の更なる向上を図ることができる。
特に、界面活性剤がポリグリセリル-4ラウリルエーテルであり、かつ、添加物が四ほう酸ナトリウムであることで、沸騰伝熱性能の向上を図ることができるとともに、冷媒REのpHを8以上10以下に長期間保つことができる。よって、沸騰冷却装置1を高温環境で特に長期間安定的に用いることができる。
さらに、冷媒REは、ポリグリセリル-4ラウリルエーテルを0.02wt%以上2wt%以下と、四ほう酸ナトリウムを0.2wt%以上2wt%以下と、を含むことが好ましい。上記成分を上記含有率で含むことにより、沸騰伝熱性能の向上を図ることができるとともに、冷媒REのpHを8以上10以下により長期間安定的に保つことができる。高温環境でより長期間安定的に用いることができる沸騰冷却装置1を提供することができる。
また、特に、界面活性剤がn-オクチル-β-D-グルコシドであり、かつ、添加物が四ほう酸ナトリウムであることで、沸騰伝熱性能の向上を図ることができるとともに、冷媒REのpHを8以上10以下に長期間保つことができる。よって、沸騰冷却装置1を高温環境で特に長期間安定的に用いることができる。
さらに、冷媒REは、n-オクチル-β-D-グルコシドを0.02wt%以上2wt%以下と、四ほう酸ナトリウムを0.2wt%以上2wt%以下と、を含むことが好ましい。上記成分を上記含有率で含むことにより、沸騰伝熱性能の向上を図ることができるとともに、冷媒REのpHを8以上10以下により長期間安定的に保つことができる。高温環境でより長期間安定的に用いることができる沸騰冷却装置1を提供することができる。
なお、冷媒REは、純水、エーテル型の非イオン性界面活性剤、およびpHを7以上に保つ緩衝作用を有する添加物以外の物質を含んでもよい。ただし、この場合、当該物質は、冷媒REの作用に悪影響を与えない範囲内の含有率で冷媒REに含まれる。また、エーテル型の非イオン性界面活性剤、およびpHを7以上に保つ緩衝作用を有する添加物は、2種以上含まれてもよい。
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が前述の第1実施形態と同様である要素については、前述の第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
2-1.伝熱部材12Aの構成
図5は、第2実施形態に係る伝熱部材12Aの斜視図である。図6は、図5に示す伝熱部材12Aの部分断面図である。図6では、伝熱部材12Aの一部をY軸に直交する平面で切断した断面が示される。
伝熱部材12Aが有する伝熱面FTAは、Z軸に直交する平面に沿って配置される。すなわち、伝熱面FTAは、X軸およびY軸の両方に平行な平面に沿って配置される。伝熱面FTAは、複数の凹部12aを有する。図5に示す例では、各凹部12aは、Y軸に平行に延びる溝である。ここで、複数の凹部12aは、X軸に沿う方向に並んでおり、互いに平行に等ピッチで配置される。このような伝熱面FTAには、複数の凹部12aのうち隣り合う2つの凹部12aの間に凸部12bが設けられる。すなわち、伝熱面FTAには、凹部12aおよび凸部12bがX軸に沿う方向に交互に並んで複数組設けられる。このような伝熱面FTAは、例えば、切削加工等の機械加工により形成される。
図6に示すように、各凹部12aは、底部に向かうに従って幅の縮小する形状をなす。図6に示す例では、各凹部12aの断面形状がV字形状であり、各凹部12aの幅が底部に向かうに従って連続的に縮小する。なお、凹部12aの断面形状は、図6に示す例に限定されない。この点については、後述の変形例で説明する。
凹部12aの幅Wは、隣り合う凹部12a同士の中心間距離P以下である。図6に示す例では、幅Wが中心間距離Pに等しい。ここで、中心間距離Pは、平面での冷媒REの沸騰により生じる気泡Bの離脱気泡径Dbaseよりも小さい。このため、前述の界面活性剤による気泡Bの合体を抑制する効果と相まって、凹部12aで生じた気泡Bを隣り合う気泡Bの影響により上方に向かって成長させ易くすることができる。
中心間距離Pは、離脱気泡径Dbaseよりも小さければよいが、前述の伝熱面FTAの複数の凹部12aによる効果を好適に得る観点から、離脱気泡径Dbaseに対して、0.1倍以上0.5倍以下であることが好ましく、0.1倍以上0.4倍以下であることがより好ましい。
また、複数の凹部12aのそれぞれの深さDは、複数の凹部12aのそれぞれの幅Wに対して、0.5倍以上であることが好ましく、0.8倍以上3.0倍以下であることがより好ましく、2.0倍以上3.0倍以下であることがさらに好ましい。この場合、比較的低コストで、伝熱面FTAの複数の凹部12aによる効果を得ることができる。これに対し、各凹部12aの深さが浅すぎると、凹部12aの形状等によっては、伝熱面FTAから離脱する際に気泡Bの一部を凹部12aの底部に残存させる作用を好適に得ることが難しい。一方、各凹部12aの深さが深すぎると、凹部12aの形状が複雑化したり、凹部12aの加工コストが極端に高くなったりする傾向がある。
1-4.気泡Bの挙動
図7は、伝熱面FTAでの気泡Bの発生を説明するための図である。以下では、複数の凹部12aのうちの任意の1個の凹部12aが凹部12a_1であり、凹部12a_1に対して隣り合う2つの凹部12aのうち、一方の凹部12aが凹部12a_2であり、他方の凹部12aが凹部12a_3である。また、凹部12a_1に発生する気泡Bが気泡B_1であり、凹部12a_2に発生する気泡Bが気泡B_2であり、凹部12a_3に発生する気泡Bが気泡B_3である。
図7では、気泡B_1の発生タイミングと気泡B_2、B_3の発生タイミングとがずれた場合の各気泡Bの状態が示される。ここで、各気泡Bは、例えば、凹部12aの最深位置を起点として発生する。そして、凹部12aの内壁面により伝熱面FTAに沿う方向(図7では、XY平面に沿う方向)での各気泡Bの成長が制限される。このため、各気泡Bが伝熱面FTから離れる方向(図7では、Z1方向)に成長しやすい。なお、凹部12aの内壁面により凹部12aの幅方向での各気泡Bが制限されることにより、その影響を受けて、凹部12aの延びる方向での各気泡Bの成長も制限される。
図8は、伝熱面FTAでの気泡Bの成長を説明するための図である。図8に示すように、気泡B_1、B_2、B_3のそれぞれの成長が進行すると、伝熱面FTAに沿う方向での気泡B_1の成長が気泡B_2、B_3により制限される。これは、前述のように、界面活性剤の作用により気泡B_1と気泡B_2および気泡B_2のそれぞれとの合体が抑制されるからである。このように、伝熱面FTAに沿う方向での気泡B_1の成長が制限されることにより、気泡B_1がZ1方向に成長しやすくなる。以上のように、気泡B_1は、界面活性剤による効果と凹部12aによる効果との相乗効果により、Z1方向に成長しやすくなる。
気泡B_1は、その成長に伴って、気泡B_2と気泡B_3との間に挟まれた状態で浮力が作用する。ここで、前述のように凹部12aの中心間距離Pが平面での冷媒REの沸騰により生じる気泡Bの離脱気泡径Dbaseよりも小さい。このため、図8に示すように、気泡B_1は、くびれた形状に変形していく。
図9は、伝熱面FTAからの気泡Bの離脱を説明するための図である。図9に示すように、気泡B_1、B_2、B_3のそれぞれの成長がさらに進行すると、気泡B_1が伝熱面FTAから離脱する。このとき、図9に示すように、気泡B_1は、気泡Baと気泡Bbとに分離する。気泡Baは、伝熱面FTAから離脱する。気泡Bbは、気泡B_1の一部が凹部12a_1内に残留する残留気泡として伝熱面FTA上に残る。その後、気泡Bbは、新たな気泡B_1の発生のための核として機能する。このように、気泡Bbが伝熱面FT上に残ることにより、気泡Bの発生周期を短くすることができる。この結果、単位時間あたりに離脱する気泡数を増加させることができる。
ここで、平面での冷媒REの沸騰により生じる気泡Bの離脱気泡径Dbaseは、例えば、減圧場での純水に対するCole and Rohsenowの式を用いた計算により求められる。当該式は、以下の式(5)で表される。
base=1.5×10-4√(σ/g(ρ-ρ))×Ja5/4 ・・・(5)
ここで、Ja=ρPLsat/ρVhfg
satは飽和温度であり、σは表面張力であり、ρは液密度であり、ρは蒸気密度であり、cPLは液比熱であり、hfgは蒸発腺熱であり、gは重力加速度である。
例えば、圧力50kPaでの純水の離脱気泡径Dbaseを求める場合、
飽和温度Tsat:355[K]
表面張力σ:62.4[mN/m]
液密度ρ:971[kg/m
蒸気密度ρ:0.309[kg/m
液比熱cPL:4.20[kJ/kg・K]
蒸発潜熱hfg:2305[kJ/kg]
重力加速度g=9.81[m/s
であり、式(5)を用いて計算すると、離脱気泡径Dbaseは、5.24[mm]である。
ここで、冷媒REへの界面活性剤の添加により冷媒REの表面張力が低下するため、例えば、表面張力σを26.5[mN/m]とすると、離脱気泡径Dbaseは、3.41[mm]となる。
図10は、伝熱面FTAの凹部12aによる効果を説明するための図である。図10では、前述のように離脱気泡径Dbaseが3.41[mm]である場合、伝熱面FTAが平面である構成と凹部12aの中心間距離Pが1.3mmである構成と凹部12aの中心間距離Pが0.5mmである構成とのそれぞれについて、熱伝達率を測定した結果が沸騰伝熱性能として示される。なお、図10に示す結果は、伝熱面FTAが平面である場合の沸騰伝熱性能の結果を1として規格化された結果である。また、中心間距離Pが1.3mmである構成と中心間距離Pが0.5mmである構成とについては、いずれも、凹部12aの深さDが1.2mmである。
図10に示すように、凹部12aを有する構成では、伝熱面FTAが平面である構成に比べて、沸騰伝熱性能を向上させることができる。ここで、中心間距離Pが1.3mmである構成は、伝熱面FTAが平面である構成に比べて約1.5倍の沸騰伝熱性能を有する。中心間距離Pが0.5mmである構成は、伝熱面FTAが平面である構成に比べて約1.8倍の沸騰伝熱性能を有する。このように、中心間距離Pが0.5mmである構成は、中心間距離Pが1.3mmである構成に比べて、優れた沸騰伝熱性能を有する。
前述のように、中心間距離Pは、離脱気泡径Dbaseに対して、0.1倍以上0.5倍以下であることが好ましく、0.1倍以上0.4倍以下であることがより好ましい。したがって、冷媒REを用いる場合、前述のように離脱気泡径Dbaseが3.41[mm]であることから、中心間距離Pは、0.34mm以上1.7mm以下であることが好ましく、0.34mm以上1.4mm以下であることがより好ましい。
以上のように、伝熱面FTAは、底部に向かうに従って幅の縮小する複数の凹部12aを有する。そして、複数の凹部12aのうち隣り合う2つの凹部12aの中心間距離Pは、平面での冷媒REの沸騰により生じる気泡Bの離脱気泡径Dbaseよりも小さい。このため、伝熱面FTAに沿う方向での気泡Bの成長が抑制されるので、気泡Bの合体が第1実施形態に比べてさらに抑制される。しかも、複数の凹部12aのうち隣り合う2つの凹部12aの中心間距離Pが平面での冷媒REの離脱気泡径Dbaseよりも小さいことにより、前述の界面活性剤による気泡Bの合体を抑制する効果と相まって、凹部12aで生じた気泡Bが隣り合う気泡Bの影響により上方に向かって成長しやすい。また、各凹部12aの幅が底部に向かうに従って縮小することにより、気泡Bが伝熱面FTAから離脱する際、後続する気泡Bの発生のための核として気泡Bの一部を凹部12aの底部に残存させることができる。このため、気泡Bの離脱後の伝熱面FTAでの後続する気泡Bの発生および成長の速度を速くすることができる。この結果、気泡Bの発生周期をさらに短くすることができる。
したがって、複数の凹部12aを有する伝熱面FTAを有する容器11と、第1実施形態で説明した冷媒REとを備えることで、沸騰伝熱性能の更なる向上と、高温環境での冷媒REのpHの低下による金属腐食、および界面活性剤の分解による問題の解決と、の両立を実現できる。よって、高温環境で長期間安定的に冷却性能の低下を抑制することができる沸騰冷却装置1Bを提供することができる。
また、各凹部12aの幅が底部に向かうに従って縮小することにより、各凹部12aの幅が底部に向かうに従って拡大する構成、または、各凹部12aの幅が一定である構成に比べて、凹部12a内に異物が入り込んでしまっても、当該異物が除去されやすい。この結果、沸騰冷却装置1を長期にわたり使用しても、沸騰冷却装置1の冷却性能の低下を防止することができる。
前述のように、複数の凹部12aは、互いに平行に配列される複数の溝である。このような複数の凹部12aは、機械加工等により容易に形成可能である。このため、沸騰冷却装置1の製造コストを低減することができる。また、凹部12a内に異物が入り込んでしまっても、凹部12aに沿って当該異物が移動しやすいので、当該異物が除去されやすい。なお、「平行」とは、厳密に平行である場合だけでなく、製造誤差等の範囲内において平行とみなすことが可能である場合をも概念的に含む。
また、前述のように、複数の凹部12aは、水平面に沿って配置される。したがって、複数の凹部12aのそれぞれの延びる方向と水平面とのなす角度が45°以下である。このため、凹部12aに沿った方向での気泡Bの移動を抑制することができる。ここで、当該角度が小さいほど、凹部12aに沿った方向での気泡Bの移動が抑制しやすい。当該角度が0°である場合、凹部12aに沿った方向での気泡Bの移動を最も抑制することができる。
さらに、前述のように、複数の凹部12aのそれぞれの幅Wは、底部に向かうに従って連続的に縮小する。このため、仮に各凹部12aの幅が底部に向かうに従って段階的に縮小する構成に比べて、伝熱面FTAに沿う方向での気泡Bの成長が好適に抑制される。また、凹部12aの形成も容易である。
また、前述のように、複数の凹部12aは、等ピッチで配列される。このため、伝熱面FTでの気泡Bの発生分布を均一化することができる。また、複数の溝が等ピッチでない構成に比べて、溝の形成も容易である。なお、「等ピッチ」とは、厳密に等ピッチである場合だけでなく、製造誤差等の範囲内において等ピッチとみなすことが可能である場合をも概念的に含む。
さらに、前述のように、各凹部12aの幅Wは、中心間距離Pに等しい。したがって、複数の凹部12aのそれぞれの幅Wは、中心間距離Pに対して0.9倍以上1倍以下である。このため、冷媒REに添加された界面活性剤による効果と伝熱面FTAの複数の凹部12aによる効果との両立を図りやすいという利点がある。
3.第3実施形態
以下、本開示の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が前述の第2実施形態と同様である要素については、前述の第2実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
3-1.沸騰冷却装置の概要
図11は、第3実施形態に係る沸騰冷却装置1Bの概略構成を示す斜視図である。沸騰冷却装置1Bは、図11中に二点鎖線で示す2個の発熱体100を冷却する。図11に示す例では、各発熱体100がXZ平面に沿う扁平形状をなす。ここで、2個の発熱体100は、沸騰冷却装置1Bを挟むように、Y軸に沿う方向に並んで配置される。なお、図11では、発熱体100の外形が概略的に示される。発熱体100の形状は、図11に示す例に限定されず、任意である。また、2個の発熱体100のうちの一方が省略されてもよい。
沸騰冷却装置1Bは、気化した冷媒REと液化した冷媒REとの密度差を利用したループ型サーモサイフォンの冷却器である。沸騰冷却装置1Bは、受熱部10Bと凝縮部20Bと蒸気輸送部30Bと液輸送部40Bとを有する。
図12は、図11に示す沸騰冷却装置1Bの断面図である。図13は、図12中のA-A線断面図である。なお、図12では、沸騰冷却装置1BをX軸およびZ軸を含む平面で切断した断面が示される。また、図13では、受熱部10BをX軸およびY軸を含む平面で切断した断面が示される。
受熱部10Bは、液状の冷媒REを収容する収容室S10を有する構造体であり、発熱体100からの熱を受ける。受熱部10Bでは、発熱体100の熱によって冷媒REが気化されることにより気体状の冷媒REが生成される。受熱部10Bは、容器11Bを有する。容器11Bは、伝熱部材12Bを有する。
容器11Bは、収容室S10を内部空間として有する。図12および図13に示す例では、容器11Bの外形は、XZ平面に沿う扁平形状をなす。ここで、容器11BのY1方向およびY2方向を向くそれぞれの外壁面は、発熱体100に熱的に接続される受熱面FRBである。なお、容器11Bの形状は、図12および図13に示す例に限定されず、任意である。
伝熱部材12Bは、収容室S10を上下に二分するように配置される。ここで、伝熱部材12Bは、冷媒REの液面RE0よりも下方に配置される。
伝熱部材12Bは、Z軸に直交する面に沿って広がる板状またはブロック状をなしており、Z2方向を向く第1面F1と、Z1方向を向く第2面F2と、Z軸に沿う方向に貫通する複数の貫通孔12cと、を有する。各貫通孔12cは、第1面F1および第2面F2のそれぞれに開口する空間である。このため、収容室S10では、伝熱部材12BよりもZ1方向に位置する空間とZ2方向に位置する空間とが各貫通孔12cを介して連通する。
図12および図13に示す例では、伝熱部材12Bに設けられる貫通孔12cの数は、3個である。また、複数の貫通孔12cは、互いに同一形状をなす。さらに、各貫通孔12cの幅は、一定である。ここで、各貫通孔12cの横断面は、円形をなす。このような形状の貫通孔12cは、例えば、切削等により形成される。
なお、複数の貫通孔12cの形状は、互いに異なってもよい。また、各貫通孔12cの幅は、一定でなくてもよい。さらに、各貫通孔12cの横断面形状は、円形に限定されず、例えば、四角形等の多角形、楕円形等でもよい。ただし、後述のように、各貫通孔12cの内壁面にネジ溝を設ける観点から、各貫通孔12cの幅が一定であり、かつ、各貫通孔12cの横断面形状が円形であることが好ましい。また、伝熱部材12Bに設けられる貫通孔12cの数は、3個に限定されず、2個以下または4個以上でもよい。また、伝熱部材12Aに設けられる複数の貫通孔12cは、X軸に沿う方向に並ぶ態様に限定されず、例えば、Z軸に直交する平面に沿って、千鳥状または行列状等に規則的に配置されてもよいし、不規則に配置されてもよい。
ここで、各貫通孔12cの内壁面は、冷媒REに接触する伝熱面FTBを構成する。伝熱面FTBについては、後に図14および図15に基づいて説明する。
以上の受熱部10Bの容器11Bは、熱伝導性に優れる材料で構成される。容器11Bの具体的な構成材料としては、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属が挙げられる。なお、伝熱部材12Bは、容器11Bの伝熱部材12B以外の部分と一体的に形成されてもよく、別部材で形成されてもよい。さらに、伝熱部材12Bは、1つの部材で構成されてもよいし、複数の部材で構成されてもよい。
凝縮部20Bは、冷媒REを気化した状態から凝縮液化させる凝縮室S20を有する構造体であり、受熱部10Bからの熱を放熱する。凝縮部20Bでは、受熱部10Bで生成された気体状の冷媒REが凝縮されることにより液状の冷媒REが生成される。凝縮部20Bは、筐体21Bと複数の放熱フィン23とを有する。
筐体21Bは、凝縮室S20を内部空間として有する。筐体21Bは、熱伝導性に優れる材料で構成される。筐体21Bの具体的な材料としては、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属が挙げられる。図12および図13に示す例では、筐体21Bは、Z軸に沿う方向に延びており、有底の円筒状をなす。なお、筐体21Bの形状は、図12および図13に示す例に限定されず、任意である。
各放熱フィン23は、筐体21Bの外部の流体との熱交換により凝縮室S20の気体状の冷媒REを放熱するための板状の部材であり、筐体21Bに熱的に接続される。当該外部の流体は、凝縮室S20の外部を流動する流体であればよく、特に限定されず、液体でも気体でもよいが、典型的には、例えば空気である。
複数の放熱フィン23は、互いに厚さ方向に間隔を隔てて配置される。各放熱フィン23は、熱伝導性に優れる材料で構成される。放熱フィン23の具体的な材料としては、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属材料が挙げられる。各放熱フィン23には、筐体21Aを挿入するための孔が設けられる。放熱フィン23は、例えば、筐体21Bに対して拡管、圧入、接着剤、ネジ止め、ロウ付けまたは溶接等により固定される。
なお、放熱フィン23の形状は、図12に示す例に限定されず、任意である。また、放熱フィン23は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。ただし、凝縮部20Bが複数の放熱フィン23を有することにより、凝縮室S20の気体状の冷媒REを効率的に凝縮させることができる。
蒸気輸送部30Bは、受熱部10Bで生成された気体状の冷媒REを凝縮部20Bに輸送する第1流路S30を有する。蒸気輸送部30Bは、第1流路S30を内部空間として有する蒸気管31で構成される。図12に示す例では、蒸気管31は、Z軸に沿って直線状に延びる管である。なお、蒸気輸送部30Bを構成する蒸気管31の数は、1個に限定されず、複数であってもよく、例えば、後述の貫通孔12cの数に対応して3個でもよい。
第1流路S30の幅は、一定である。また、第1流路S30の横断面の形状は、円形である。なお、第1流路S30の横断面の形状は、円形に限定されず、例えば、四角形等の多角形、楕円形等でもよい。また、第1流路S30は、屈曲または湾曲する部分を有してもよい。
蒸気管31は、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属で構成される。また、蒸気管31は、容器11Bおよび筐体21Bのそれぞれに対してロウ付け等により固定される。なお、蒸気管31の構成材料は、金属に限定されず、例えば、セラミックスまたは樹脂等でもよい。
蒸気管31は、収容室S10に向けて開口するとともに、凝縮室S20に向けて開口する。これにより、収容室S10および凝縮室S20が第1流路S30を介して互いに連通する。図12に示す例では、蒸気管31が容器11Bの天板を貫通しており、蒸気管31のZ2方向での端が当該天板の内壁面と同一平面上に位置する。また、蒸気管31が筐体21Bの底板を貫通しており、蒸気管31のZ1方向での端が当該底板よりも上方に位置する。なお、蒸気管31のZ2方向での端の位置は、収容室S10内で液状の冷媒REの液面RE0よりも上方の位置であればよく、例えば、容器11Bの天板から突出した位置でもよい。
液輸送部40Bは、凝縮部20Bで生成された液状の冷媒REを受熱部10Bに輸送する第2流路S40を有する。液輸送部40Bは、第2流路S40を内部空間として有する液管41で構成される。液管41は、Z軸に沿って直線状に延びる管である。なお、液輸送部40Bを構成する液管41の数は、1個に限定されず、複数であってもよく、例えば、後述の貫通孔12cの数に対応して3個でもよい。
第2流路S40の断面積は、前述の第1流路S30の断面積よりも小さい。すなわち、第1流路S30の断面積は、第2流路S40の断面積よりも大きい。このため、第1流路S30の断面積が第2流路S40の断面積以下である構成に比べて、収容室S10から第1流路S30を介して凝縮室S20に気体状の冷媒REを円滑に輸送することができる。また、第2流路S40の幅は、一定である。さらに、第2流路S40の横断面の形状は、円形である。なお、第2流路S40の横断面の形状は、円形に限定されず、例えば、四角形等の多角形、楕円形等でもよい。また、第2流路S40は、屈曲または湾曲する部分を有してもよい。さらに、第2流路S40の断面積は、第1流路S30の断面積に等しくてもよい。
液管41は、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金等の金属で構成される。また、液管41は、容器11Bおよび筐体21Bのそれぞれに対してロウ付け等により固定される。なお、液管41の構成材料は、金属に限定されず、例えば、セラミックスまたは樹脂等でもよい。また、液管41の構成材料は、蒸気管31の構成材料と同一であってもよいし異なってもよい。
液輸送部40Bは、収容室S10に向けて開口するとともに、凝縮室S20に向けて開口する。これにより、収容室S10および凝縮室S20が第2流路S40を介して互いに連通する。図12に示す例では、液管41が容器11Bの天板および前述の貫通孔12cを貫通しており、液管41のZ2方向での端が伝熱部材12Bよりも下方に位置する。また、液管41が筐体21Bの底板を貫通しており、液管41のZ1方向での端が当該底板の内壁面と同一平面上に位置する。
なお、液管41のZ1方向での端の位置は、液管41が凝縮室S20内の液状の冷媒REを回収し得る位置であればよく、例えば、液管41が容器11Bの側板の内壁面に開口する位置でもよい。液管41のZ2方向での端の位置は、収容室S10内の液状の冷媒REの液面RE0よりも下方の位置であればよく、例えば、貫通孔12c内の位置でもよい。ただし、液管41への気泡Bの混入を防止する観点から、液管41のZ2方向での端が伝熱部材12Bよりも下方に位置することが好ましい。
図14は、図13中のB-B線断面図である。図14に示すように、伝熱面FTBは、貫通孔12cの内周面であり、Z軸に沿って配置される。すなわち、伝熱面FTBは、鉛直軸に沿って配置される。伝熱面FTBは、複数の凹部12dを有する。図14に示す例では、各凹部12dは、貫通孔12cの周方向に沿って延びる溝である。ここで、複数の凹部12dは、Z軸に沿う方向に並んでおり、互いに平行に等ピッチで配置される。このような伝熱面FTBには、複数の凹部12dのうち隣り合う2つの凹部12dの間に凸部12eが設けられる。すなわち、伝熱面FTBには、凹部12dおよび凸部12eがZ軸に沿う方向に交互に並んで設けられる。
ここで、凹部12dは、ネジ溝のように貫通孔12cの内周面に沿って、らせん状をなす。このため、凹部12dは、水平面F0に対して傾斜する方向に延びる。このような伝熱面FTAは、例えば、ネジ切加工等の機械加工により形成される。なお、凹部12dおよび凸部12eがZ軸に沿う方向に交互に並んで複数組設けられてもよい。
各凹部12dは、前述の第2実施形態の凹部12aと同様、底部に向かうに従って幅の縮小する形状をなす。また、凹部12dの幅Wは、隣り合う凹部12d同士の中心間距離P以下である。ここで、中心間距離Pは、離脱気泡径Dbaseよりも小さい。このため、前述の界面活性剤による気泡Bの合体を抑制する効果と相まって、凹部12dで生じた気泡Bを隣り合う気泡Bの影響により上方に向かって成長させやすくすることができる。
図15は、伝熱面FTBからの気泡Bの離脱を説明するための図である。なお、図15では、複数の凹部12dのうちの任意の1個の凹部12dが凹部12d_1であり、凹部12d_1に対して隣り合う2つの凹部12dのうち、一方の凹部12dが凹部12d_2であり、他方の凹部12dが凹部12d_3である。また、凹部12d_1に発生する気泡Bが気泡B_1であり、凹部12d_2に発生する気泡Bが気泡B_2であり、凹部12d_3に発生する気泡Bが気泡B_3である。
伝熱面FTBでは、前述の第2実施形態の伝熱面FTと同様、気泡B_1、B_2、B_3が発生した後に成長する。図15に示すように、気泡B_1、B_2、B_3のそれぞれの成長が進行すると、気泡B_1が伝熱面FTBから離脱する。このとき、気泡B_1は、伝熱面FTBから離脱する気泡Baと、凹部12d_1内に残る気泡Bbと、に分離する。このように、気泡Bbが伝熱面FTB上に残ることにより、気泡Bの発生周期を短くすることができる。この結果、単位時間あたりに離脱する気泡数を増加させることができる。
以上の第3実施形態によっても、前述の第2実施形態と同様、伝熱面FTBを有する容器11と、第1実施形態で説明した冷媒REとを備えることで、沸騰伝熱性能の更なる向上と、高温環境での冷媒REのpHの低下による金属腐食、および界面活性剤の分解による問題の解決と、の両立を実現できる。よって、高温環境で長期間安定的に冷却性能の低下を抑制することができる沸騰冷却装置1Bを提供することができる。
また、本実施形態では、前述のように、複数の凹部12dのそれぞれの延びる方向と水平面F0とのなす角度θが45°以下である。このため、凹部12dに沿った方向での気泡Bの移動を抑制することができる。ここで、当該角度θが0°よりも大きいので、凹部12d内に異物が入り込んでしまっても、凹部12dに沿って当該異物が移動しやすいので、当該異物が除去されやすい。
また、前述のように、伝熱面FTBは、鉛直軸に沿って配置される。このため、気泡Bに対して伝熱面FTBに沿う方向に浮力が作用する。したがって、前述の伝熱面FTBの複数の凹部12dによる気泡Bの合体を抑制する効果が顕著に得られる。
さらに、前述のように、伝熱部材12Bには、伝熱面FTBを内壁面とする孔である貫通孔12cが設けられる。このような伝熱面FTBは、ネジ切加工等の機械加工により簡単かつ精度よく形成可能である。
4.変形例
本開示は前述の各実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせてもよい。
4-1.変形例1
前述の第1実施形態では、伝熱面FTが水平面に沿って配置される構成が例示されるが、伝熱面FTの配置は、当該構成に限定されない。すなわち、伝熱面FTは水平面に沿って配置されなくてもよい。前述の第2実施形態についても同様である。また、前述の第3実施形態では、伝熱面FTBが鉛直軸に沿って配置される構成が例示されるが、伝熱面FTBの配置は、当該構成に限定されない。
図16は、変形例1に係る沸騰冷却装置1Cの概略図である。沸騰冷却装置1Cは、実空間での設置姿勢が異なる以外は、前述の第2実施形態の沸騰冷却装置1と同様に構成される。なお、図16では、凝縮部20の図示が省略される。
沸騰冷却装置1Cは、Y軸まわりに傾斜した姿勢で設置される。これに伴い、伝熱面FTAは、水平面F0に対して傾斜して配置される。ここで、各凹部12aは、水平面F0に対して平行に延びる。このように、沸騰冷却装置1Cが傾斜した姿勢で設置される場合でも、前述の伝熱面FTの複数の凹部12aによる効果が顕著に得られる。
4-2.変形例2
前述の第2実施形態では、幅Wが中心間距離Pに等しい構成が例示されるが、当該構成に限定されず、幅Wが中心間距離Pよりも小さい構成でもよい。
図17は、変形例2に係る沸騰冷却装置の伝熱面FTCを説明するための図である。伝熱面FTCは、断面形状が異なる以外は、前述の第2実施形態の伝熱面FTAと同様に構成される。伝熱面FTCは、複数の凹部12fを有する。また、伝熱面FTCには、複数の凹部12fのうち隣り合う2つの凹部12fの間に凸部12gが設けられる。
各凹部12fの幅Wは、中心間距離Pよりも小さい。このため、隣り合う凹部12fの外縁同士が平坦面12g1を介して接続される。平坦面12g1は、隣り合う凹部12fの間に設けられる凸部12gの頂部である。ここで、平坦面12g1の幅WTは、できる限り小さいことが好ましいが、具体的には、凹部12fによる効果を好適に発揮させる観点から、幅Wが中心間距離Pに対して0.9倍以上となるような幅であることが好ましい。
各凹部12fは、底部に向かうに従って幅の連続的に縮小する形状をなす。図17に示す例では、凹部12fの底部12f1が平坦面で構成される。当該平坦面は、例えば、製造上不可避的に形成される面である。当該平坦面の幅WBは、凹部12fの深さDに残留気泡を好適に生じさせる観点から、できる限り小さいことが好ましい。
以上の変形例2によっても、前述の第2実施形態と同様、沸騰冷却装置1の冷却性能を向上させることができる。また、以上の変形例2によっても、前述の第2実施形態と同様、沸騰伝熱性能の更なる向上と、高温環境での冷媒REのpHの低下による金属腐食、および界面活性剤の分解による問題の解決と、の両立を実現することができる。
4-3.変形例3
第2実施形態では、伝熱面FTAに設けられる凹部が溝である構成が例示されるが、当該構成に限定されない。
図18は、変形例3に係る沸騰冷却装置の伝熱部材12Dを説明するための図である。伝熱部材12Dは、伝熱面FTDを有する。伝熱面FTDは、行列状に配列される複数の凹部12hを有する。以上の変形例3によっても、前述の第2実施形態と同様、沸騰冷却装置1の冷却性能を向上させることができる。また、前述の第2実施形態と同様、沸騰伝熱性能の更なる向上と、高温環境での冷媒REのpHの低下による金属腐食、および界面活性剤の分解による問題の解決と、の両立を実現することができる。なお、複数の凹部12hの配置は、行列状の配置に限定されず、例えば、千鳥配置でもよい。
なお、第2実施形態の伝熱面FTAに設けられる凹部12aは、底部に向かうに従って連続的に幅が縮小するが、底部に向かうに従って段階的に幅が縮小してもよい。また、第2実施形態では、伝熱面FTAに設けられる凹部12aの内壁面が平坦面であるが、凹部12aの内壁面は湾曲または屈曲した面でもよい。さらに、第2実施形態では、凹部12aの断面形状が幅方向に対称であるが、凹部12aの断面形状が幅方向に非対称であってよい。
なお、前述の第2実施形態に関する変形例は、第3実施形態および他の変形例に矛盾の無い範囲で適用され得る。
4-4.変形例4
第3実施形態では、伝熱面FTBは複数の凹部12dおよび複数の凸部12eを有するが、伝熱面FTBは複数の凹部12dおよび複数の凸部12eを有さない平坦面でもよい。つまり、貫通孔12cの内壁面は、平坦面であってもよい。平坦面であっても、冷媒REを用いているため、沸騰伝熱性能の向上と、高温環境での冷媒REのpHの低下による金属腐食、および界面活性剤の分解による問題の解決と、の両立を実現することができる。
また、本願の「伝熱面」の形状は、前述の実施形態で示す形状に限定されず、任意である。したがって、「伝熱面」は、平坦面でなくてもよく、第2実施形態に示す凹凸形状以外の凹凸形状であってもよい。例えば、「伝熱面」の形状は、山形、曲面、または粗面でよい。また、「伝熱面」は、例えば、放熱用フィンの放熱面であってもよい。
1…沸騰冷却装置、1B…沸騰冷却装置、1C…沸騰冷却装置、10…受熱部、10B…受熱部、11…容器、11B…容器、12…伝熱部材、12A…伝熱部材、12B…伝熱部材、12D…伝熱部材、12a…凹部、12a_1…凹部、12a_2…凹部、12a_3…凹部、12b…凸部、12c…貫通孔、12d…凹部、12d_1…凹部、12d_2…凹部、12d_3…凹部、12e…凸部、12f…凹部、12f1…底部、12g…凸部、12g1…平坦面、12h…凹部、20…凝縮部、20B…凝縮部、21…筐体、21A…筐体、21B…筐体、22…冷却部材、23…放熱フィン、30…蒸気輸送部、30B…蒸気輸送部、31…蒸気管、40…液輸送部、40B…液輸送部、41…液管、100…発熱体、B…気泡、B_1…気泡、B_2…気泡、B_3…気泡、Ba…気泡、Ba1…気泡、Ba2…気泡、Bb…気泡、Bc…気泡、F0…水平面、F1…第1面、F2…第2面、FR…受熱面、FRB…受熱面、FT…伝熱面、FTA…伝熱面、FTB…伝熱面、FTC…伝熱面、FTD…伝熱面、P…中心間距離、R…曲率半径、RE…冷媒、RE0…液面、S10…収容室、S20…凝縮室、S30…第1流路、S40…第2流路、θ…角度。

Claims (11)

  1. 液状の冷媒と、
    前記冷媒を収容し、発熱体からの熱により前記冷媒を沸騰させる伝熱面を有する容器と、を備え、
    前記冷媒は、純水と、エーテル型の非イオン性界面活性剤と、前記冷媒のpHを7以上に保つ緩衝作用を有する添加物と、
    を含むことを特徴とする沸騰冷却装置。
  2. 前記添加物は、pHを8以上10以下に保つ緩衝作用を有する、
    請求項1に記載の沸騰冷却装置。
  3. 前記添加物は、四ほう酸ナトリウムである、
    請求項2に記載の沸騰冷却装置。
  4. 前記非イオン性界面活性剤は、親水基と疎水基とを有し、
    前記親水基は、ポリグリセリンである、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の沸騰冷却装置。
  5. 前記非イオン性界面活性剤は、親水基と疎水基とを有し、
    前記親水基は、糖類である、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の沸騰冷却装置。
  6. 前記疎水基は、アルキル基であり、
    前記アルキル基の炭素数は、8以上14以下である、
    請求項4に記載の沸騰冷却装置。
  7. 前記疎水基は、アルキル基であり、
    前記アルキル基の炭素数は、8以上14以下である、
    請求項5に記載の沸騰冷却装置。
  8. 前記非イオン性界面活性剤は、ポリグリセリル-4ラウリルエーテルである、
    請求項4に記載の沸騰冷却装置。
  9. 前記非イオン性界面活性剤は、n-オクチル-β-D-グルコシドである、
    請求項5に記載の沸騰冷却装置。
  10. 前記冷媒は、
    前記非イオン性界面活性剤としてのポリグリセリル-4ラウリルエーテルを0.02wt%以上2wt%以下と、
    前記添加物としての四ほう酸ナトリウムを0.2wt%以上2wt%以下と、を含む、
    請求項8に記載の沸騰冷却装置。
  11. 前記冷媒は、
    前記非イオン性界面活性剤としてのn-オクチル-β-D-グルコシドを0.02wt%以上2wt%以下と、
    前記添加物としての四ほう酸ナトリウムを0.2wt%以上2wt%以下と、を含む、
    請求項9に記載の沸騰冷却装置。
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