JP2023183033A - 被膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】建築現場等における既設の壁面に対し、ローラー塗装によって、均質な斑点模様を付する被膜形成方法を提供する。【解決手段】本発明は、壁面に対し、被覆材(A)を塗装した後、被覆材(B)をローラー塗装する被膜形成方法であって、上記被覆材(A)として、赤外線反射性を有する被覆材を使用し、上記被覆材(B)として、合成樹脂エマルション(m)、及びかさ密度が1.0g/ml以下、平均粒子径が0.01~1mmである軽量着色粒子(n)を必須成分とし、上記合成樹脂エマルション(m)の固形分100重量部に対し、上記軽量着色粒子(n)を0.1~50重量部含有する被覆材を使用し、上記ローラーとして、毛丈10mm以上の繊維質ローラーを使用することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、新規な被膜形成方法に関するものである。
従来、建築物の壁面を構成する材料として、サイディングボード、ALC板等の無機質建材が汎用的に使用されている。このような無機質建材の塗装においては、その意匠性を高めるため、表面に斑点模様を付する手法等が採用されている。例えば特許文献1には、特定粘度に調製した着色塗材を用い、塗装時のパターンや吐出量等を制御しながらスプレー塗装して斑点模様を形成する方法が記載されている。また特許文献2には、ベース塗材を塗装した後、ベース塗材とは異色の着色塗材を不均一に塗装する方法が記載されている。
しかし、これらの手法は、いずれも工場内での塗装方法に関するものであり、着色塗材を機械的に制御しながらスパッタ塗装することにより斑点模様を付しているものである。建築現場で壁材として設置された無機質建材については、経時的に劣化が進行するため塗り替えの必要が生じるが、このような建築現場での塗装において上記特許文献の手法を適用しようとしても、所望の大きさの斑点模様を安定して得ることは難しく、実用性に欠くのが現状である。
一方、無機質建材に対し、珪砂、雲母等の骨材を樹脂液に分散させた上塗材を塗装することによって、斑点模様を付する方法も知られている。このような方法によれば、使用する骨材の粒度を設定することで、所望の大きさの斑点模様を得ることができる。例えば、特許文献3には、積層多彩模様塗膜上に、雲母等の扁平状着色物を含むクリヤー塗材を塗装する方法が記載されている。
特開平3-186381号公報 実開平4-77440号公報 特許第6180678号公報
しかしながら、上述のような、珪砂、雲母等の骨材を含む上塗材の塗装において、塗装器具としてローラーを用いると、被塗面において骨材どうしが寄り集まった状態となりやすく、斑点模様に偏りが生じるおそれがあり、均質な斑点模様は得られ難い。また、骨材を含むクリヤー塗材の塗り継ぎ部分では、骨材の密度が高くなる場合があり、塗り継ぎ部分が目立ってしまい、仕上り性が損なわれるおそれがある。
本発明は、上述の課題に鑑みなされたものであり、建築現場等における既設の壁面に対し、ローラー塗装によって、均質な斑点模様を付する被膜形成方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、壁面に対し、赤外線反射性を有する被覆材(A)を塗装した後、特定のかさ密度、粒子径を有する軽量着色粒子を必須成分とする特定の被覆材(B)を、特定のローラーを用いて塗装する方法に想到し、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.壁面に対し、被覆材(A)を塗装した後、被覆材(B)をローラー塗装する被膜形成方法であって、
上記被覆材(A)として、赤外線反射性を有する被覆材を使用し、
上記被覆材(B)として、合成樹脂エマルション(m)、及びかさ密度が1.0g/ml以下、平均粒子径が0.01~1mmである軽量着色粒子(n)を必須成分とし、上記合成樹脂エマルション(m)の固形分100重量部に対し、上記軽量着色粒子(n)を0.1~50重量部含有する被覆材を使用し、
上記ローラーとして、毛丈10mm以上の繊維質ローラーを使用する
ことを特徴とする被膜形成方法。
2.上記軽量着色粒子(n)は粒状であることを特徴とする1.記載の被膜形成方法。
本発明によれば、建築現場等における既設の壁面に対し、ローラー塗装によって、均質な斑点模様を形成することができ、美観性の高い仕上りを簡便に得ることができる。
繊維質ローラーの一例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、壁面に対し、被覆材(A)を塗装した後、被覆材(B)をローラー塗装する被膜形成方法に関するものである。
本発明で塗装対象となる被塗面は、建築物、土木構造物等として存在する既設の壁面である。壁面を構成する基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板、珪酸カルシウム板、石膏ボード、プラスチックボード、硬質木片セメント板、塩ビ押出サイディングボード、合板等、あるいはこれらの表面に塗膜を有するもの等が挙げられる。本発明は、とりわけ、サイディングボード、ALC板等の無機質建材で構成された既設の壁面に対して好ましく適用できる。壁面が複数の無機質建材で構成される場合、無機質建材どうしの継ぎ目は、シーリング材、乾式目地材等の目地材等が充填されたものであってもよい。
本発明では、上述のような壁面に対し、被覆材(A)の塗装前に、下塗材を塗装することができる。
下塗材としては、例えば、密着性、耐透水性、基材補強性、隠蔽性、下地調整性、下地追従性等から選ばれる少なくとも1以上の機能を有するものが使用できる。このような下塗材としては、例えば、フィラー、サーフェーサー、シーラー、プライマー等が挙げられる。本発明では、必要に応じ、1種または2種以上の下塗材を使用することができる。
本発明では、被覆材(A)が、赤外線反射性を有することを特徴とする。これにより、仕上り性、美観性に優れた被膜の形成が可能となる。その作用としては、例えば、以下のような機構が考えられる。
被覆材(B)は、被覆材(A)により形成された被膜(A)の上に塗付されると、徐々に硬化して被膜(B)(斑点模様被膜)を形成するが、この際に塗り継ぎ部分が目立つ場合がある。これは、被覆材の硬化性と馴染み性が関係するものと考えられる。すなわち、所定の領域に先に塗付した被覆材の硬化が過剰に速く進行してしまうと、その隣の領域に後から塗付した被覆材と馴染みにくくなり、その結果塗り継ぎ部分が目立ってしまうと考えられる。特に、本発明の被覆材(B)のようなクリヤー被膜中に着色粒子が散在した斑点模様を付与する場合、継ぎ部分において着色粒子の重なりや密度の高い部分が生じやすく、その結果塗り継ぎ部分の意匠がムラになりやすい場合がある。
これに対し、本発明では、被覆材(A)が赤外線反射性を有することによって、被覆材(B)の被膜形成過程における太陽光等の影響を低減し、被覆材(B)の硬化を安定的且つ適度に進行させることができる。このような作用によって、塗付面において隣接する被覆材同士の馴染み性が向上するため、仕上り性、美観性に優れた模様面を形成することができる。
さらに、被覆材(A)が赤外線反射性を有し、かつ特定の軽量着色粒子(n)を含む被覆材(B)を毛丈10mm以上の繊維質ローラーを使用して塗装することにより、被覆材(B)の塗装と硬化を安定的かつ適度に進行させることができるため、均質な斑点模様を形成することが可能となる。
本発明の被覆材(A)は、赤外線反射性を有することを特徴とする。このような被覆材(A)は、結合材及び赤外線反射性粉体を必須成分として含むことが好ましい。
被覆材(A)における結合材としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂等、あるいはこれらを複合したもの等が挙げられる。これらは架橋反応性を有するものであってもよく、またその形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。本発明では特に、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、水溶性樹脂等の水性樹脂が好適に用いられる。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。この中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等が好適である。
被覆材(A)における赤外線反射性粉体としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄-クロム複合酸化物、マンガン-ビスマス複合酸化物、マンガン-イットリウム複合酸化物、黒色酸化鉄、鉄-マンガン複合酸化物、鉄-銅-マンガン複合酸化物、鉄-クロム-コバルト複合酸化物、銅-クロム複合酸化物、銅-マンガン-クロム複合酸化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
赤外線反射性粉体の比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは3~800重量部、より好ましくは5~600重量部である。なお、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
被覆材(A)は、さらに赤外線透過性粉体を含むものであってもよい。これら赤外線透過性粉体を適宜組み合わせることにより、幅広い様々な色調が表出できる。赤外線透過性粉体としては、例えば、ペリレン顔料、アゾ顔料、黄鉛、弁柄、朱、チタニウムレッド、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
赤外線透過性粉体の比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは1~200重量部、より好ましくは2~100重量部である。
被覆材(A)には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記以外の粉体(例えば、着色顔料、体質顔料等)が含まれていてもよい。但し、カーボンブラック等の赤外線吸収性粉体については、粉体全量に対して、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であり、赤外線吸収性粉体を含まない態様が最も好ましい。
被覆材(A)は、本発明の効果が著しく損われない範囲内であれば、上記成分以外の各種成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、艶消し剤、骨材、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、カップリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、触媒等が挙げられる。
被覆材(A)の塗装には、公知の方法を採用することができる。塗装方法としては、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り等が可能である。ローラー塗りの場合は、繊維質ローラーが好ましく使用できる。被覆材(A)の塗付け量は、好ましくは0.05~0.8kg/m、より好ましくは0.1~0.6kg/mである。塗装時には水等の希釈剤を混合して粘性を適宜調製することもできる。被覆材(A)の乾燥は、好ましくは常温(0~40℃)で行えばよい。被覆材(B)は、被覆材(A)により形成された被膜(A)の乾燥後に塗装することができる。
被覆材(A)の塗装においては、1種(1色)の被覆材(A)で壁面全体を塗装することもできるし、色調が異なる2種以上の被覆材(A)を用いて塗装を行うこともできる。後者の場合は、例えば、第1被覆材(A)を被塗面全体に塗装後、第2被覆材(A)(第1被覆材(A)とは異色)を部分的に塗装する方法、あるいは、第1被覆材(A)、第2被覆材(A)をそれぞれ所定の領域に塗り分ける方法等により、2色以上の色彩が混在する多色模様を形成することができる。本発明では、このような被覆材(A)の塗装により、被塗面に所望の色彩を付与しつつ、被塗面のテクスチャを活かした仕上げも可能となる。
被覆材(A)の塗装によって形成される被膜(A)は、艶有り、艶消し(7分艶、5分艶、3分艶等を含む)のいずれであってもよい。
本発明では、上述の被覆材(A)を塗装した後に、被覆材(B)をローラー塗装するものである。本発明における被覆材(B)は、合成樹脂エマルション(m)と特定の軽量着色粒子(n)を必須成分として含むものであり、被覆材(B)をローラー塗装する際に用いるローラーは、特定の毛丈を有する繊維質ローラーである。本発明では、このような特定の被覆材(B)を特定ローラーで塗装することにより、均質な斑点模様を形成することが可能となる。最終的な仕上り外観は、背景色[被覆材(A)により形成された被膜(A)の色彩。]に、軽量着色粒子(n)による斑点模様が付されたものとなり、優れた意匠性が発現される。
被覆材(B)を構成する成分のうち、合成樹脂エマルション(m)(以下「(m)成分」ともいう)は、結合材として作用するものである。(m)成分としては、透明被膜を形成するものが使用できる。具体的に(m)成分としては、例えば、酢酸ビニル樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション等、あるいはこれらの複合樹脂エマルション等を挙げることができる。この中でも耐候性等の点から、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション等、あるいはこれらの複合樹脂エマルション等が好適である。これらは(m)成分は、1種または2種以上で使用することができ、2種以上の(m)成分を混合することもできる。(m)成分は、架橋反応性を有するものであってもよい。
(m)成分は、例えば、1段ないし多段(2段、または3段以上)の乳化重合法等によって製造することができる。このうち多段乳化重合を採用した場合は、例えば、多層構造型エマルション(コアシェル型エマルション等)を得ることができる。
(m)成分の平均粒子径は、好ましくは30~500nm、より好ましくは50~300nmである。なお、(m)成分の平均粒子径は、動的光散乱測定装置を用いて測定することができる(測定温度25℃)。また、(m)成分を構成する樹脂のガラス転移温度は、好ましくは-30~80℃、より好ましくは-20~60℃である。ガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。
被覆材(B)における軽量着色粒子(n)(以下「(n)成分」ともいう)としては、かさ密度が1.0g/ml以下、平均粒子径が0.01~1mmであるものを使用する。(n)成分としては、このような条件を満たす1種または2種以上の軽量着色粒子が使用できる。
(n)成分のかさ密度は、1.0g/ml以下、好ましくは0.01~0.95g/ml、より好ましくは0.1~0.9g/ml、さらに好ましくは0.2~0.8g/mlである。(n)成分のかさ密度が上記範囲内であることにより、均質な斑点模様を形成することが可能となり、塗装作業性等の点でも好適である。(n)成分のかさ密度が上記上限値を超える場合は、ローラー塗装時に被塗面において粒子どうしが寄り集まった状態となりやすく、斑点模様に偏りが生じるおそれがある。なお、本発明におけるかさ密度は、円筒容器に軽量着色粒子を供給し、容器内の軽量着色粒子のかさ変化が終了するまで上下振動(タッピング振動)を与えることによって測定される値である。
(n)成分の平均粒子径は、0.01~1mmであり、好ましくは0.02~0.5mm、より好ましくは0.03~0.3mmである。(n)成分の平均粒子径が上記範囲内であることにより、均質な斑点模様を形成することが可能となり、塗装作業性等の点でも好適である。(n)成分の平均粒子径が上記下限値よりも小さい場合は、塗装後の仕上面において斑点模様が認識され難くなる。(n)成分の平均粒子径が上記上限値よりも大きい場合は、粒子どうしの寄り集まりや、粒子の凸状等が目立つようになり、仕上り性、美観性等の点で不利となる。また、塗装作業性が低下するおそれもある。
(n)成分の形状は、特に限定されないが、本発明では粒状のものが好適である。ここに言う粒状とは、平均粒子径と平均厚みが近似した値を示す形状のことである。具体的に、(n)成分としては、平均粒子径と平均厚みの比(平均粒子径/平均厚み)が2以下(好ましくは1.5以下)のものが好適である。このような形状のものを用いると、斑点模様の均質化の点でよりいっそう好適であり、形成被膜の美観性を高めることができる。
なお、(n)成分の平均粒子径は、最も安定な姿勢で水平面に置かれた粒子を上方から観察したときの長径の平均値である。平均厚みは、最も安定な姿勢で水平面に置かれた粒子を水平な面ではさんだときの面間隔の平均値である。
被覆材(B)における(n)成分としては、被覆材(B)塗装前の背景色[被膜(A)]とは異色のものを含むことが望ましい。これにより、塗装後の仕上面において(n)成分による斑点模様を十分に視認することができる。被覆材(B)の塗装前に、2種以上の被覆材(A)を用いて塗り分けを行った場合、(n)成分の色調は、少なくとも1種の被覆材(A)被膜に対して異色であればよい。
なお、本発明において、異色とは、相互の色調が目視にて異色と認識できる程度のもののことを言う。その色差(△E)は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上である。なお、色差(△E)は、色彩色差計を用いて測定されるL値、a値、b値に基づき算出される値である。(n)成分等の粒子については、ガラス板上に、ガラス面が隠蔽されるまで粒子を載置し、その上にPEフィルム(無色透明)を被せた面を対象に測定する。
(n)成分としては、例えば、ゴム、樹脂、鉱物、木材、植物等を母体とするものが使用でき、とりわけ、ゴムまたは樹脂を母体とする有機質粒子が好適である。このような(n)成分は、かさ比重、平均粒子径等が上記条件を満たす限り、その内部構造は特に限定されず、例えば、中実体、発泡体、多孔体等が挙げられる。(n)成分の色調は、例えば、母体元来の色調をそのまま生かしたものであってもよいし、母体に着色処理等(例えば、母体内部の着色処理、母体表面の着色被覆等)を施すことによって付与することもできる。
(n)成分の混合量は、(m)成分の固形分100重量部に対し、0.1~50重量部であり、好ましくは0.5~30重量部、より好ましくは1~20重量部である。(n)成分の混合量がこのような範囲内であることにより、背景色に斑点が付与された、美観性の高い均質な斑点模様を形成することが可能となる。(n)成分の混合量が上記上限値を超える場合は、斑点模様にムラが生じやすくなり、また下層の背景色が隠ぺいされやすくなり、斑点模様形成の点で不利となる。(n)成分の混合量が上記下限値に満たない場合は、塗装後の仕上面において斑点模様が認識され難くなる。
被覆材(B)は、少なくとも1種(1色)の軽量着色粒子を含むものであればよく、色調が異なる2種以上の軽量着色粒子を含むものであってもよい。
被覆材(B)は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、例えば、着色顔料、体質顔料、染料、艶消し剤、増粘剤、湿潤剤、レベリング剤、凍結防止剤、造膜助剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、密着性付与剤、低汚染化剤、親水化剤、撥水剤、架橋剤、硬化剤、硬化促進剤、可塑剤、カップリング剤、吸着剤、pH調整剤、触媒、水、溶剤等を含むものであってもよい。被覆材(B)は、このような成分を常法により均一に混合することで製造できる。
被覆材(B)の加熱残分は、好ましくは10~80重量%、より好ましくは20~60重量%、さらに好ましくは30~55重量%である。加熱残分は、JIS K5601-1-2「加熱残分」の方法に準じて測定することができる(加熱温度135℃、加熱時間60分)。
被覆材(B)の形成被膜[被膜(B)]は、透明被膜中に(n)成分が散在して、斑点模様を表出するものである。すなわち、被覆材(B)塗装前の背景色[被膜(A)]が視認可能な透明性を有するものである。被覆材(B)によって形成される透明被膜は、無色透明、着色透明のいずれであってもよく、また艶有り、艶消し(7分艶、5分艶、3分艶等を含む)のいずれであってもよい。このうち、着色透明の被膜は、例えば、着色顔料、染料等を含む被覆材(B)によって形成でき、その着色の程度は、背景色や斑点模様が視認可能な範囲内で設定すればよい。艶消しの被膜は、例えば、体質顔料、艶消し剤等を含む被覆材(B)によって形成できる。
本発明の被覆材(B)は、多彩模様塗料(多彩塗料)、石材調仕上塗材(石材調塗料)等と称される材料とは異なるものである。一般的に、多彩模様塗料は、液状またはゲル状の色粒を高比率で含み、これら色粒によって多彩模様を形成するものであり、石材調仕上塗材は、有色骨材や天然骨材を高比率で含み、これら骨材の発色により石材調の風合いを表出するものである。これに対し、本発明の被覆材(B)は、上述のような構成により、軽量着色粒子(n)が点在した斑点模様を形成するものである。主たる色彩は、背景色[被膜(A)]によって表出される。
本発明では、毛丈10mm以上の繊維質ローラーを使用して、上述の被覆材(B)をローラー塗装する。これにより、均質な斑点模様を形成することが可能となる。このような効果が奏される理由は、以下に限定されるものではないが、被覆材(B)に含まれる軽量着色粒子(n)は、軽く、小さいために、分散しやすく、繊維質ローラーの長い繊維が、ローラー塗装時にこれら軽量着色粒子(n)の分散を十分に促すことによって、均質な斑点模様が形成できるものと考えられる。
本発明で用いる繊維質ローラーの一例を図1に示す。図1の繊維質ローラーは、筒状の芯材の外表面に繊維質層が備わったものである。筒状の芯材は、軸を備えたハンドルが装着できるように空洞となっており、該空洞に、ハンドルを装着して使用することができるものである。筒状の芯材としては、例えば、プラスチック製、木製、金属製、紙製等の芯材を用いることができ、また、ハンドルの軸と芯材との装着性等を高めるために、ハンドルの軸と芯材の間には、装着補助材等を設けることができる。繊維質ローラーの外径は、好ましくは30~80mmである。繊維質ローラーの長さは、好ましくは50~300mmである。
本発明で用いる繊維質ローラーは、その毛丈が10mm以上であり、好ましくは12mm以上、より好ましくは15~40mm、さらに好ましくは18~38mm、特に好ましくは20~36mmである。なお、毛丈とは、繊維質ローラーを構成する繊維の長さである。具体的に、毛丈は、乾燥状態の繊維質ローラーの繊維を指で軽くつまんで、芯材から外側に引き延ばしたときの、繊維の長さを測定し、その平均値を算出することにより求めることができる。本発明では、このような毛丈を有する繊維質ローラーを被覆材(B)の塗装に用いることにより、均質な斑点模様を形成することができる。繊維質ローラーの毛丈が、上記下限値に満たない場合は、均質な斑点模様の形成が困難となる。
繊維質層を構成する繊維の材質としては、例えば、豚毛、馬毛、山羊毛、羊毛、狸毛、人毛、絹、綿等、あるいは、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維等が挙げられる。繊維質層は、このような繊維の集合体(例えば、綿状のパイル、糸状のパイル等)を、編み込んだり、織り込んだりすること等によって形成できる。
このような繊維質ローラーを用いて被覆材(B)を塗装する際、被覆材(B)の粘性は適宜設定することができる。塗装に供する被覆材(B)は、必要に応じ水等を用いて希釈することができる。被覆材(B)の粘度(塗装時)は、好ましくは0.1~15Pa・s、より好ましくは0.3~13Pa・sである。被覆材(B)のチクソトロピーインデックス(塗装時)は、好ましくは6以下、より好ましくは1~5である。なお、粘度は、BH型粘度計による20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)を測定することにより求められる値である。チクソトロピーインデックス(TI)は、BH型粘度計を用い、下記式により求められる値である。いずれも測定温度は23℃である。
<式>TI=η1/η2
(式中、η1は2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)。η2は20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
本発明における被覆材(B)は、壁面全体(被塗面)に対して塗装を行うことができる。被覆材(B)の塗付け量は、好ましくは50g/m以上、より好ましくは100~500g/m、さらに好ましくは105~400g/mである。被覆材(B)の塗り回数は、好ましくは1~2回であり、より好ましくは1回である。このような条件で被覆材(B)を塗装することにより、比較的厚膜の状態となり、軽量着色粒子(n)の分散がいっそう促されやすく、均質な斑点模様形成の点で一段と有利である。
被覆材(B)を塗装した後の乾燥は、好ましくは常温(0~40℃)で行えばよい。乾燥時間は、好ましくは1時間以上、好ましくは2~24時間程度である。
本発明では、上述のような被膜形成方法によって、建築現場等における既設の壁面の美観性を高めることができる。本発明は、このような壁面の改修(改装)を行う場合に好適である。本発明の被膜形成方法を、経年劣化した壁面に対して適用することにより、壁面の美観性を高めることができ、新築時の色彩を回復させることも可能であり、新築時とは異なる新たな色彩を付与することも可能である。サイディングボード、ALC板等の無機質建材で構成され、無機質建材どうしの継ぎ目にシーリング材等が充填された目地部を有する壁面に対しては、無機質建材と目地部を含む全面に対して本発明方法を適用することもできる。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
被覆材(A)としては、それぞれ以下に示すものを用意した。
・被覆材(A1)
合成樹脂エマルションa(アクリル樹脂エマルション、固形分50重量%、ガラス転移温度20℃、平均粒子径110nm)200重量部に対し、赤外線反射性粉体1(マンガンビスマス複合酸化物)20重量部、添加剤(造膜助剤、増粘剤、消泡剤等)10重量部を常法により均一に混合し、赤外線反射性を有する黒色の被覆材(A1)を得た。
・被覆材(A2)
合成樹脂エマルションa(上記と同様)200重量部に対し、赤外線反射性粉体2(鉄クロム複合酸化物)20重量部、添加剤(造膜助剤、増粘剤、消泡剤等)10重量部を常法により均一に混合し、赤外線反射性を有する黒色の被覆材(A2)を得た。
・被覆材(A3)
合成樹脂エマルションa(アクリル樹脂エマルション、固形分50重量%、ガラス転移温度20℃、平均粒子径110nm)200重量部に対し、赤外線反射性粉体1(マンガンビスマス複合酸化物、酸化チタン)20重量部、添加剤(造膜助剤、増粘剤、消泡剤等)10重量部を常法により均一に混合し、赤外線反射性を有する濃灰色の被覆材(A3)を得た。
・被覆材(A4)
合成樹脂エマルションa(上記と同様)200重量部に対し、赤外線吸収性粉体(カーボンブラック)20重量部、添加剤(造膜助剤、増粘剤、消泡剤等)10重量部を常法により均一に混合し、赤外線吸収性を有する黒色の被覆材(A4)を得た。
被覆材(B)としては、それぞれ以下に示すものを用意した。
・被覆材(B1)
合成樹脂エマルションb(アクリルシリコン樹脂エマルション、固形分50重量%、ガラス転移温度32℃、平均粒子径110nm)200重量部に対し、軽量着色粒子a(白色樹脂粒子、かさ密度0.72g/ml、平均粒子径0.1mm、平均粒子径/平均厚み=1.0)を4重量部、造膜助剤を12重量部、紫外線吸収剤を1重量部、粘性調整剤を2重量部、消泡剤を3重量部混合し、さらに水を混合して加熱残分40重量%に調製することにより、被覆材(B1)を得た。
・被覆材(B2)
合成樹脂エマルションc(アクリル樹脂エマルション、固形分50重量%、ガラス転移温度34℃、平均粒子径150nm)200重量部に対し、軽量着色粒子b(白色樹脂粒子、かさ密度0.72g/ml、平均粒子径0.08mm、平均粒子径/平均厚み=1.0)を8重量部、造膜助剤を12重量部、粘性調整剤を2重量部、消泡剤を3重量部混合し、さらに水を混合して加熱残分45重量%に調製することにより、被覆材(B2)を得た。
・被覆材(B3)
合成樹脂エマルションd(アクリルシリコン樹脂エマルション、固形分50重量%、ガラス転移温度38℃、平均粒子径100nm)200重量部に対し、軽量着色粒子c(白色樹脂粒子、かさ密度0.73g/ml、平均粒子径0.15mm、平均粒子径/平均厚み=1.0)を2重量部、造膜助剤を12重量部、紫外線吸収剤を1重量部、粘性調整剤を2重量部、消泡剤を3重量部混合し、さらに水を混合して加熱残分42重量%に調製することにより、被覆材(B3)を得た。
・被覆材(B4)
上記被覆材(B1)において、軽量着色粒子aの混合量を12重量部とした以外は、被覆材(B1)と同様にして被覆材(B4)を得た。
・被覆材(B5)
上記被覆材(B1)において、軽量着色粒子aの混合量を32重量部とした以外は、被覆材(B1)と同様にして被覆材(B5)を得た。
・被覆材(B6)
上記被覆材(B1)において、軽量着色粒子aに替えて、白色珪砂(かさ密度1.2g/ml、平均粒子径0.12mm、平均粒子径/平均厚み=1.2)を4重量部混合した以外は、被覆材(B1)と同様にして被覆材(B6)を得た。
・被覆材(B7)
上記被覆材(B1)において、軽量着色粒子aに替えて、白色雲母(かさ密度0.40g/ml、平均粒子径0.12mm、平均粒子径/平均厚み=28)を4重量部混合した以外は、被覆材(B1)と同様にして被覆材(B7)を得た。
・被覆材(B8)
合成樹脂エマルションb(同上)200重量部に対し、軽量着色粒子d(白色樹脂粒子、かさ密度0.72g/ml、平均粒子径0.1mm、平均粒子径/平均厚み=1.0)を4重量部、造膜助剤を12重量部、艶消し剤(無着色樹脂粒子、平均粒子径15μm)を50重量部、紫外線吸収剤を1重量部、粘性調整剤を2重量部、消泡剤を3重量部混合し、さらに水を混合して加熱残分40重量%に調製することにより、被覆材(B8)を得た。
ローラーとしては、以下のものを用意した。
・ローラー1(繊維質ローラー(ウールローラー)、毛丈25mm)
・ローラー2(繊維質ローラー(ウールローラー)、毛丈32mm)
・ローラー3(繊維質ローラー(ウールローラー)、毛丈21mm)
・ローラー4(繊維質ローラー(ウールローラー)、毛丈13mm)
・ローラー5(繊維質ローラー(ウールローラー)、毛丈7mm)
(実施例1)
平坦なスレート板に対し、下塗材a(水性エポキシ系シーラー)を塗付け量100g/mで全面にスプレー塗装し、24時間乾燥後、被覆材(A1)を塗付け量150g/mで全面にスプレー塗装し、2時間乾燥後、再度被覆材(A1)を塗付け量150g/mで全面にスプレー塗装し、24時間乾燥させ被膜(A1)を形成した。
次いで、被膜(A1)の表面に250Wの赤外線ランプを3時間照射して被膜(A1)が加熱されたところで、その右半分をローラー1を用いて被覆材(B1)を塗付け量120g/mで塗装し、3分後に重なり部分(塗り継ぎ部分)が生じるように左半分をローラー1を用いて塗付け量120g/mとなるように同一の被覆材(B1)で塗装した。なお、以上の工程はすべて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下で行った。白色樹脂粒子と被覆材(A1)との色差は67であった。
以上の方法で得られた試験体の仕上り性を目視にて評価した。
(評価1)
評価1では、塗り継ぎ部分とそれ以外の領域とを対比観察し、塗り継ぎ部分が目立ちにくいものを「A」、塗り継ぎ部分が目立つものを「D」として、4段階(優:A>B>C>D:劣)で評価した。
(評価2)
評価2では、塗り継ぎ部分以外の領域を観察し、着色粒子によって均質な斑点模様が形成されたものを「A」、着色粒子の寄り集まり等が生じて斑点模様の偏りが目立つ仕上りとなったものを「D」とする4段階(優:A>B>C>D:劣)で評価した。結果を表1に示す。
(実施例2~10、比較例1~5)
被覆材(A1)、被覆材(B1)、ローラー1に替えて、表1に記載の被覆材(A)、被覆材(B)、ローラーをそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、仕上り性を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2023183033000001
(実施例11)
煉瓦調の凹凸柄を有する窯業系サイディングボードに対し、下塗材b(水性エポキシ系サーフェーサー)を塗付け量200g/mで全面にスプレー塗装し、3時間乾燥後、被覆材(A1)を塗付け量150g/mで全面にスプレー塗装し、2時間乾燥後、再度被覆材(A1)を塗付け量150g/mで全面にスプレー塗装し、2時間乾燥させた。その後、ローラー5を用いて被覆材(A3)を部分的に塗装し(塗付け量60g/m)、24時間乾燥させ黒色と濃灰色が混在する被膜(A13)を形成した。
次いで、被膜(A13)の表面に250Wの赤外線ランプを3時間照射して被膜(A13)が加熱されたところで、その右半分をローラー1を用いて被覆材(B8)を塗付け量180g/mで塗装し、3分後に重なり部分(塗り継ぎ部分)が生じるように左半分をローラー1を用いて塗付け量180g/mとなるように同一の被覆材(B8)で塗装した。なお、以上の工程はすべて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下で行った。白色樹脂粒子と被覆材(A1)との色差は67、白色樹脂粒子と被覆材(A3)との色差は53であった。
以上の方法で得られた試験体について、実施例1と同様に仕上り性を評価した。その結果、評価1「A」、評価2「A」であった。

Claims (2)

  1. 壁面に対し、被覆材(A)を塗装した後、被覆材(B)をローラー塗装する被膜形成方法であって、
    上記被覆材(A)として、赤外線反射性を有する被覆材を使用し、
    上記被覆材(B)として、合成樹脂エマルション(m)、及びかさ密度が1.0g/ml以下、平均粒子径が0.01~1mmである軽量着色粒子(n)を必須成分とし、上記合成樹脂エマルション(m)の固形分100重量部に対し、上記軽量着色粒子(n)を0.1~50重量部含有する被覆材を使用し、
    上記ローラーとして、毛丈10mm以上の繊維質ローラーを使用する
    ことを特徴とする被膜形成方法。
  2. 上記軽量着色粒子(n)は粒状であることを特徴とする請求項1記載の被膜形成方法。

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