JP2023178802A - シアヌル酸含有排水の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シアヌル酸を含有する排水から、シアヌル酸を効果的に分離除去することができ、その排水を再利用が可能な処理水とすることができる方法を提供すること。【解決手段】本発明は、シアヌル酸と塩化物イオンとを含有する排水の処理方法であって、排水を、OH型のII型強塩基性イオン交換樹脂と接触させることにより、その排水の含まれるシアヌル酸をII型強塩基性イオン交換樹脂に吸着させる工程を含む。好ましくは、処理対象である排水のpHをあらかじめ7以上に調整してII型強塩基性イオン交換樹脂と接触させる。【選択図】なし
Description
本発明は、シアヌル酸含有排水の処理方法に関する。
シアヌル酸は、塩素化した塩素化シアヌル酸の形態で主にプール等の消毒に用いられている。塩素化シアヌル酸は、次亜塩素酸ナトリウムに比べて安定で保管中の自己分解がほとんどないため、上述した用途で広く用いられている。
塩素化シアヌル酸は、水に溶解すると次亜塩素酸を生成するため、その次亜塩素酸の消毒作用を利用してプール等での消毒が行われているが、次亜塩素酸の生成と共にシアヌル酸が生成する。シアヌル酸は、水中で安定に存在するため、プール等で水を循環し継続して消毒しながら使用すると、水中にシアヌル酸が蓄積し濃度が高くなる。シアヌル酸が高濃度になると、次亜塩素酸の消毒作用を阻害し、水のpHを低下させるため、通常は水の一部を排水して新水と入れ替え、シアヌル酸の蓄積を防止している。そのため、シアヌル酸を除去して水を再利用できれば、新水の使用量削減が期待される。
水中のシアヌル酸を除去する方法としては、例えば特許文献1~3に開示の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、微生物を用いた分解法が開示されている。微生物を用いる分解法は、処理水を放流する場合には好適な方法であると考えられる。ところが、上述したように処理水を循環再使用する場合には、微生物の完全な分離や臭気対策、設備の小型化の観点で問題があり、好適な方法とは言い難い。
特許文献2及び特許文献3には、陰イオン交換樹脂にシアヌル酸を吸着する方法が開示されているが、その詳細な条件等については示されていない。また、吸着後には必ず溶離工程が必要となり、その溶離液には高濃度のシアヌル酸が含まれることになるため、その処理も必要となる。これらの文献には、その処理自体、及びその処理を容易にするために吸着工程及び溶離工程で要求される条件等について記載も示唆もない。
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、シアヌル酸を含有する排水から、シアヌル酸を効果的に分離除去することができ、その排水を再利用が可能な処理水とすることができる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、シアヌル酸を含む排水を、OH型のII型強塩基性イオン交換樹脂と接触させることで、シアヌル酸を効果的に分離除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、シアヌル酸と塩化物イオンとを含有する排水の処理方法であって、前記排水を、OH型のII型強塩基性イオン交換樹脂と接触させることにより、該排水の含まれるシアヌル酸を該II型強塩基性イオン交換樹脂に吸着させる工程を含む、シアヌル酸含有排水の処理方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、処理対象である前記排水のpHをあらかじめ7以上に調整して前記II型強塩基性イオン交換樹脂と接触させる、シアヌル酸含有排水の処理方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記シアヌル酸が吸着したII型強塩基性イオン交換樹脂から該シアヌル酸を溶離させる工程をさらに含み、濃度2.0mol/L以上の苛性ソーダ溶液を用いて溶離の処理を行う、シアヌル酸含有排水の処理方法である。
本発明によれば、排水からシアヌル酸を効果的に分離除去することができ、その排水を再利用可能な処理水とすることができる。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」ともいう)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
≪シアヌル酸含有排水の処理方法≫
本実施の形態に係る方法は、シアヌル酸を含有する排水の処理方法である。
本実施の形態に係る方法は、シアヌル酸を含有する排水の処理方法である。
上述したように、シアヌル酸は、塩素化した塩素化シアヌル酸の形態で、プール水等の消毒に用いられる。下記化学式に示されるように、塩素化シアヌル酸を水に溶解させると、次亜塩素酸を生成させて消毒作用を発揮するとともに、水中で安定なシアヌル酸(イソシアヌル酸)が生成して水中に蓄積する。また、その水中には、塩素化シアヌル酸に由来する塩化物イオンが、シアヌル酸と共存した状態となる。
シアヌル酸が水中に蓄積すると、その水のpHが低下する。また、シアヌル酸の蓄積により、次亜塩素酸による消毒反応を阻害する。したがって、このようにプール水等に塩素化シアヌル酸を添加して用いて消毒等の操作を行ったあとの水(排水)、すなわち、シアヌル酸と塩化物イオンとを少なくとも含有する排水からシアヌル酸を除去する処理を行うことで、pH低下を抑え、また次亜塩素酸による消毒作用が生じる、再利用可能な水を得ることができる。
具体的に、本実施の形態に係る方法では、処理対象の排水を、OH型のII型強塩基性イオン交換樹脂と接触させることにより、その排水の含まれるシアヌル酸をII型強塩基性イオン交換樹脂に吸着させる工程(吸着工程)を含む、ことを特徴としている。
(1)OH型のII型強塩基性イオン交換樹脂を用いた吸着(吸着工程)
[イオン交換樹脂の種類及び吸着反応について]
ここで、シアヌル酸の酸解離定数(pKa)は6.88、11.4、13.5であり、中性よりも高いpHでなければ解離しない、つまり陰イオンとして存在し得ない。プール水等の想定される処理対象水は中性であるが、イオン交換の過程でpHが低下することは好ましくない。一般的な強塩基性陰イオン交換樹脂のイオン型は、Cl型である。そのため、例えば、シアヌル酸イオンが下記[式1]に従って強塩基性イオン交換樹脂に吸着すると、溶液中のシアヌル酸イオン濃度が徐々に低下するに伴い、下記[式2]に示した反応の平衡が左辺側へと移行して、処理水中のpHが低下する。なお、下記式中の「R」は樹脂を表す。
[イオン交換樹脂の種類及び吸着反応について]
ここで、シアヌル酸の酸解離定数(pKa)は6.88、11.4、13.5であり、中性よりも高いpHでなければ解離しない、つまり陰イオンとして存在し得ない。プール水等の想定される処理対象水は中性であるが、イオン交換の過程でpHが低下することは好ましくない。一般的な強塩基性陰イオン交換樹脂のイオン型は、Cl型である。そのため、例えば、シアヌル酸イオンが下記[式1]に従って強塩基性イオン交換樹脂に吸着すると、溶液中のシアヌル酸イオン濃度が徐々に低下するに伴い、下記[式2]に示した反応の平衡が左辺側へと移行して、処理水中のpHが低下する。なお、下記式中の「R」は樹脂を表す。
R-Cl+H2C3N3O3
- → R-H2C3N3O3+Cl- ・・・[式1]
H2C3N3O3 -+H+ ⇔ H3C3N3O3 ・・・[式2]
H2C3N3O3 -+H+ ⇔ H3C3N3O3 ・・・[式2]
上述したように、pHが低下するとシアヌル酸の解離(イオン化)が進みにくくなるため、処理対象の排水のpHを、あらかじめ7以上に調整しておくことが好ましい。また、排水のpHは、好ましくは8以上、より好ましくは10以上に調整しておくことがよい。シアヌル酸の解離定数からみて、そのシアヌル酸を含む排水のpHが7以上であれば50%以上、pH8以上であれば90%以上のシアヌル酸が解離してイオン化した状態となる。非解離のシアヌル酸の比率が低ければ、強塩基性陰イオン交換樹脂(Cl型)に吸着していたCl-が、上記[式1]に基づいてシアヌル酸と入れ替わる反応が起こったとき、上記[式2]に基づくpH低下が起こり難くなる。そして、pHが低下しにくい状態であると、シアヌル酸がイオン化した状態が維持される。
なお、詳しくは後述するが、排水のpH調整、すなわち排水のpHをあらかじめ7以上に調整しておくことで、排水のpH低下を抑制してシアヌル酸のイオン化状態を維持し、より効率的に強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着させ除去可能とする作用は、本実施の形態に係る方法において用いる「OH型」の強塩基性イオン交換樹脂であっても同様であり、好適となる。
さて、陰イオン交換樹脂は、その官能基の違いにより、「I型強塩基性陰イオン交換樹脂」、「II型強塩基性陰イオン交換樹脂」、「弱塩基性陰イオン交換樹脂」の3種類に分類される。そのなかで、弱塩基性陰イオン交換樹脂は、使用可能なpH範囲が酸性~中性であり、その領域ではシアヌル酸自体がほとんど解離しない。そのため、シアヌル酸を樹脂に吸着させること自体が難しいか、吸着したとしても吸着容量が小さくなる。したがって、排水中のシアヌル酸を吸着させ除去する処理においては、強塩基性陰イオン交換樹脂を用いることが必要となる。
処理対象の排水(溶液)には、シアヌル酸と共に、塩化物イオンが存在する。塩化物イオンよりもシアヌル酸の方が、強塩基性陰イオン交換樹脂への選択性は高い。ところが、I型の強塩基性陰イオン交換樹脂を使用した場合では、その選択性の差は小さい。また、シアヌル酸の吸着が破か点に到達する段階では、シアヌル酸と塩化物イオンとが共に吸着された状態となり、結果としてシアヌル酸基準での吸着容量は小さくなる。このことから、強塩基性陰イオン交換樹脂としてはII型のものを用いることで、シアヌル酸の吸着選択性を高め、吸着容量を大きくすることができる。
そしてさらに、本実施の形態に係る方法では、「OH型」であるII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いることを特徴としている。
OH型であるII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いることで、I型強塩基性陰イオン交換樹脂と比べたとき、塩化物イオンとシアヌル酸の選択性の差がより大きくなる。その理由は明らかではないが、以下に述べる理由が考えられる。
すなわち、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いて排水処理を施すことで、排水中のシアヌル酸や塩化物イオンが樹脂に吸着し、一方で、樹脂側からは水酸化物イオンが脱着(脱離)される。II型の強塩基性陰イオン交換樹脂では、I型の強塩基性陰イオン交換樹脂と比べて、水酸化物イオンの選択性が相対的に大きい。そのため、塩化物イオンと水酸化物イオンの選択性の差は小さくなる。そして、樹脂からの水酸化物イオンの脱離によって溶液側の水酸化物イオン濃度が大きくなると、一旦吸着した塩化物イオンが脱離し、そのサイトにシアヌル酸が吸着するようになると推測される。OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いることで、このような現象によって、シアヌル酸基準での吸着容量が増加すると考えられる。
なお、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた場合、シアヌル酸が破か点に到達した時点で、吸着している塩化物イオンが少ないため、溶離時に塩化物イオンのために消費される溶離用薬剤の量を低減でき、より効率的な溶離が可能となる。この点からも、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いることが好適となる。
より具体的に説明すると、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた場合には、以下の反応式に示すような吸着反応が生じるとともに、排水(溶液)のpHが変化する。なお、下記式中の「H3Cy」はシアヌル酸(非解離シアヌル酸)を、「H2Cy-」はシアヌル酸イオンを、「R」は樹脂をそれぞれ表す。
H2Cy-+R-OH → OH-+R-H2Cy ・・・[式3]
Cl-+R-OH → OH-+R-Cl ・・・[式4]
H3Cy → H2Cy-+H+ ・・・[式5]
H2Cy-+R-Cl → Cl-+R-H2Cy ・・・[式6]
H2Cy-+R-OH → OH-+R-H2Cy ・・・[式3]
Cl-+R-OH → OH-+R-Cl ・・・[式4]
H3Cy → H2Cy-+H+ ・・・[式5]
H2Cy-+R-Cl → Cl-+R-H2Cy ・・・[式6]
まず、上記[式3]にあるように、シアヌル酸を含む排水にOH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を接触させることで、その樹脂にシアヌル酸イオン(H2Cy-)が吸着するとともに、樹脂から水酸化物イオン(OH-)が脱離する交換反応が生じる。また、OH-の脱離に伴い、排水のpHが上昇する。
また、上記[式4]にあるように、排水中に共存する塩化物イオン(Cl-)が樹脂に吸着するとともに、樹脂からOH-が脱離する交換反応が生じ、OH-の脱離に伴って排水のpHがさらに上昇する。
一方で、上記[式5]にあるように、[式3]に示したH2Cy-の樹脂への吸着により、また[式3]及び[式4]に示した排水のpH上昇により、非解離のシアヌル酸(H3Cy)の解離が生じる。これにより、排水中において吸着の対象となるH2Cy-が増加する。なお、このときのH3Cyからのプロトン(H+)の解離により、排水のpHの低下が徐々に進む。
そして、上記[式6]にあるように、樹脂に一旦吸着したCl-([式4])と、排水中のH2Cy-との交換反応が生じ、これにより、排水中のH2Cy-の更なる吸着が生じることになる。なお、[式6]に示す交換反応は、排水のpHが高いほど起こりやすい。
このように、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いることで、H2Cy-の樹脂への吸着に伴い、吸着の初期段階から排水のpH上昇が生じ、シアヌル酸基準での吸着容量が増加し、より効率的にかつ効果的にシアヌル酸を分離除去することができる。
これに対し、Cl型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた場合では、上記[式5]及び[式6]の反応によって、排水のpH低下が急速に進行していく。そのため、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂に比べて、シアヌル酸基準での吸着容量は小さく、排水中のシアヌル酸を十分に分離除去できない。
[陰イオン交換樹脂の準備、吸着操作について]
上述したように、本実施の形態に係る方法では、シアヌル酸を吸着するための陰イオン交換樹脂として、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いる。OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂は、特に限定されず、一般的に市販されているものを用いることができる。
上述したように、本実施の形態に係る方法では、シアヌル酸を吸着するための陰イオン交換樹脂として、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いる。OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂は、特に限定されず、一般的に市販されているものを用いることができる。
あるいは、Cl型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を準備し、その樹脂に、苛性ソーダ溶液等を通液する前処理を行うことによって、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を調製するようにしてもよい。
シアヌル酸を含む処理対象の排水を、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させる方法、すなわち吸着処理の方法としては、特に限定されず、例えば、カラムに樹脂を充填し、そのカラムへ処理対象の排水を通水する方式を用いることができる。
[処理対象排水のpH調整について]
上述したように、処理対象の排水については、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させるに先立ち、そのpHを7以上に調整しておくことが好ましい。また、好ましくは8以上、より好ましくは10以上に調整しておく。
上述したように、処理対象の排水については、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させるに先立ち、そのpHを7以上に調整しておくことが好ましい。また、好ましくは8以上、より好ましくは10以上に調整しておく。
シアヌル酸が含まれる排水のpHが7以上であることで、シアヌル酸の解離(イオン化)が進むとともに、シアヌル酸がイオン化した状態が維持される。これにより、上記[式3]に示す反応がより効率的に進行し、シアヌル酸を効果的に吸着させることができる。
また、処理対象の排水のpH調整は、OH型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂へのシアヌル酸の吸着反応の進行に伴って行うようにしてもよい。上記[式5]に示したように、[式3]でのH2Cy-の樹脂への吸着、また[式3]及び[式4]での排水のpH上昇によって、非解離のシアヌル酸(H3Cy)の解離が生じるが、このとき、H3Cyからのプロトン(H+)の解離に伴って排水のpHの低下が徐々に進んでいく。
したがって、排水のpHを連続的に測定して、反応の進行に伴って変動するpHをモニタリングするようにし、pHの低下が確認された場合には、排水のpHが7以上を維持するように調整する。これにより、シアヌル酸基準での吸着容量が増加させ、より効率的にシアヌル酸を吸着させることができる。
排水のpH調整の方法については、特に限定されない。例えば、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)等のpH調整剤を添加して行うことができる。
(2)イオン交換樹脂からのシアヌル酸の溶離(溶離工程)
本実施の形態に係る方法では、上述した吸着工程ののち、シアヌル酸が吸着したII型強塩基性イオン交換樹脂からシアヌル酸を溶離させる工程(溶離工程)を含んでもよい。このように、II型強塩基性イオン交換樹脂からシアヌル酸を溶離することで、そのII型強塩基性イオン交換樹脂を再利用することができる。
本実施の形態に係る方法では、上述した吸着工程ののち、シアヌル酸が吸着したII型強塩基性イオン交換樹脂からシアヌル酸を溶離させる工程(溶離工程)を含んでもよい。このように、II型強塩基性イオン交換樹脂からシアヌル酸を溶離することで、そのII型強塩基性イオン交換樹脂を再利用することができる。
ここで、II型強塩基性イオン交換樹脂から吸着したシアヌル酸を溶離したあと、得られた溶離液(溶離後液)を中和することでシアヌル酸を沈澱させることになる。このとき、シアヌル酸を沈殿させた溶液における上澄み液側のシアヌル酸濃度は、シアヌル酸の溶解度で一義的に決まる。排水処理の観点からすると、排水側へ移行するシアヌル酸の量をできるだけ小さくする必要がある。そのため、排水量、すなわち上澄み液の水量をできるだけ小さくすることが求められる。
このことから、II型強塩基性イオン交換樹脂から溶離する過程で(溶離工程において)、得られる溶離液中のシアヌル酸濃度をできるだけ高めて、溶離液量を極力少なくすることが好ましい。
溶離工程では、II型強塩基性イオン交換樹脂からシアヌル酸を溶離するために、苛性ソーダ溶液を用いる。シアヌル酸を含む溶液においては、酸性~中性では溶解度が低く、アルカリ性で溶解度が高くなる。したがって、シアヌル酸を溶離させて得られる溶離液中のシアヌル酸濃度を高くするためには、アルカリ液で溶離するのがよく、その中でも苛性ソーダ溶液を用いることが好ましい。苛性ソーダ溶液を用いて溶離することで、樹脂のイオン型はOH型となるため、そのまま吸着工程へ移行して再利用することが可能となる。なお、Cl型で使用するためには、NaCl溶液を通水してイオン型をOHからClへ変換する操作が必要となる。
また、溶離液中のシアヌル酸濃度を高める目的からすると、溶離に用いる苛性ソーダ溶液の濃度は高いほうが望ましい。具体的には、濃度が2.0mol/L以上の苛性ソーダ溶液を用いることが好ましい。また、濃度が2.5mol/L以上の苛性ソーダ溶液がより好ましい。濃度が2.0mol/L未満であっても、シアヌル酸を溶離すること自体は可能であるものの、溶離液中のシアヌル酸濃度が小さくなる。
このような溶離工程での処理を経て得られた溶離液を中和すると、シアヌル酸が沈澱する。それをろ過して分離して、沈澱物であるシアヌル酸を回収再利用し、一方でろ液は排出する。ろ液量が最小化されているため、排出されるシアヌル酸は極めて少なくなる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。ただし、下記のいずれかの実施例に本発明の範囲が限定されるものではない。
≪シアヌル酸の陰イオン交換樹脂への吸着についての検証≫
[実施例1]
シアヌル酸200mg/Lと、塩化物イオン100mg/Lと、を含み、pH7に調整した処理対象の排水を、OH型としたII型強塩基性イオン交換樹脂60mlを充填したカラムへ20ml/minで通水して接触させた。カラム出口水のシアヌル酸濃度が30mg/Lを上回った点を破か点としたところ、破か点は280BV(=積算通水量/充填樹脂量)であった。
[実施例1]
シアヌル酸200mg/Lと、塩化物イオン100mg/Lと、を含み、pH7に調整した処理対象の排水を、OH型としたII型強塩基性イオン交換樹脂60mlを充填したカラムへ20ml/minで通水して接触させた。カラム出口水のシアヌル酸濃度が30mg/Lを上回った点を破か点としたところ、破か点は280BV(=積算通水量/充填樹脂量)であった。
破か点で排水のカラムへの通水を停止し、2.5mol/Lの苛性ソーダ溶液を通水して溶離した。得られた溶離液のうち、シアヌル酸濃度が500mg/L以上の溶液を分画して採取したところ、シアヌル酸濃度は28000mg/Lであった。
分画して得た溶離液に塩酸を加えてpHを7に調整したところ、シアヌル酸が沈澱し、その沈澱をろ過してろ液を得た。ろ液中のシアヌル酸濃度は1100mg/Lであった。
[実施例2]
処理対象の排水のpHをあらかじめ8に調整したこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。破か点は300BV(=積算通水量/充填樹脂量)であった。
処理対象の排水のpHをあらかじめ8に調整したこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。破か点は300BV(=積算通水量/充填樹脂量)であった。
破か点で排水のカラムへの通水を停止し、2.5mol/Lの苛性ソーダ溶液を通水して溶離した。得られた溶離液のうち、シアヌル酸濃度が500mg/L以上の溶液を分画して採取したところ、シアヌル酸濃度は30000mg/Lであった。
[実施例3]
処理対象の排水のpHをあらかじめ10に調整したこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。破か点は400BV(=積算通水量/充填樹脂量)であった。
処理対象の排水のpHをあらかじめ10に調整したこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。破か点は400BV(=積算通水量/充填樹脂量)であった。
破か点で排水のカラムへの通水を停止し、2.5mol/Lの苛性ソーダ溶液を通水して溶離した。得られた溶離液のうち、シアヌル酸濃度が500mg/L以上の溶液を分画して採取したところ、シアヌル酸濃度は40000mg/Lであった。
[比較例1]
I型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。破か点は160BVであった。
I型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。破か点は160BVであった。
破か点で排水のカラムへの通水を停止し、2.5mol/Lの苛性ソーダ溶液を通水して溶離した。得られた溶離液のうち、シアヌル酸濃度が500mg/L以上の溶液を分画して採取したところ、シアヌル酸濃度は15000mg/Lであった。
[比較例2]
弱基性陰イオン交換樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。破か点は70BVであった。
弱基性陰イオン交換樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。破か点は70BVであった。
破か点で排水のカラムへの通水を停止し、2.5mol/Lの苛性ソーダ溶液を通水して溶離した。得られた溶離液のうち、シアヌル酸濃度が500mg/L以上の溶液を分画して採取したところ、シアヌル酸濃度は6500mg/Lであった。
[比較例3]
Cl型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。破か点は20BVであった。
Cl型のII型強塩基性陰イオン交換樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。破か点は20BVであった。
破か点で排水のカラムへの通水を停止し、2.5mol/Lの苛性ソーダ溶液を通水して溶離した。得られた溶離液のうち、シアヌル酸濃度が500mg/L以上の溶液を分画して採取したところ、シアヌル酸濃度は1700mg/Lであった。
以上の結果から、排水に含まれるシアヌル酸を選択的に吸着して分離できることが確認された。また、OH型としたII型強塩基性イオン交換樹脂を用いることで、シアヌル酸の吸着容量を高めることができ、効率的にかつ効果的にシアヌル酸を樹脂に吸着させ、排水から除去できることがわかった。
≪陰イオン交換樹脂に吸着したシアヌル酸の溶離についての検証≫
[実施例4]
陰イオン交換樹脂に吸着したシアヌル酸を溶離するにあたり、濃度を2.0mol/Lとした苛性ソーダ溶液を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。
[実施例4]
陰イオン交換樹脂に吸着したシアヌル酸を溶離するにあたり、濃度を2.0mol/Lとした苛性ソーダ溶液を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。
得られた溶離液のうち、シアヌル酸濃度が500mg/L以上の溶液を分画して採取したところ、シアヌル酸濃度は24000mg/Lであった。
[実施例5]
陰イオン交換樹脂に吸着したシアヌル酸を溶離するにあたり、濃度を1.0mol/Lとした苛性ソーダ溶液を用いた以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。
陰イオン交換樹脂に吸着したシアヌル酸を溶離するにあたり、濃度を1.0mol/Lとした苛性ソーダ溶液を用いた以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。
得られた溶離液のうち、シアヌル酸濃度が500mg/L以上の溶液を分画して採取したところ、シアヌル酸濃度は12000mg/Lであった。
[実施例6]
陰イオン交換樹脂に吸着したシアヌル酸を溶離するにあたり、濃度を0.5mol/Lとした苛性ソーダ溶液を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。
陰イオン交換樹脂に吸着したシアヌル酸を溶離するにあたり、濃度を0.5mol/Lとした苛性ソーダ溶液を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で試験を行った。
得られた溶離液のうち、シアヌル酸濃度が500mg/L以上の溶液を分画して採取したところ、シアヌル酸濃度は6000mg/Lであった。
実施例1、並びに実施例4~5の結果から、陰イオン交換樹脂に吸着したシアヌル酸の溶離においては、濃度が2.0mol/L以上の苛性ソーダ溶液を用いることで、得られる溶離液中のシアヌル酸濃度を有効に高くすることができ、好ましいことがわかった。
Claims (3)
- シアヌル酸と塩化物イオンとを含有する排水の処理方法であって、
前記排水を、OH型のII型強塩基性イオン交換樹脂と接触させることにより、該排水の含まれるシアヌル酸を該II型強塩基性イオン交換樹脂に吸着させる工程を含む、
シアヌル酸含有排水の処理方法。 - 処理対象である前記排水のpHをあらかじめ7以上に調整して前記II型強塩基性イオン交換樹脂と接触させる、
請求項1に記載のシアヌル酸含有排水の処理方法。 - 前記シアヌル酸が吸着したII型強塩基性イオン交換樹脂から該シアヌル酸を溶離させる工程をさらに含み、
濃度2.0mol/L以上の苛性ソーダ溶液を用いて溶離の処理を行う、
請求項1又は2に記載のシアヌル酸含有排水の処理方法。
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