JP2023177645A - 付加硬化型シリコーンコーティング剤及びゴム物品 - Google Patents

付加硬化型シリコーンコーティング剤及びゴム物品 Download PDF

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Takafumi Sakurai
知哉 南川
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Abstract

【課題】耐摩耗性と低い動摩擦係数を有する被膜を与える付加硬化型シリコーンコーティング剤。【解決手段】(A)アルケニル基含有シリコーンレジンと、アルケニル基含有量が0.0014モル/100g以上で平均重合度が50以上1,000未満のオルガノポリシロキサンと、アルケニル基含有量が0.00034モル/100g以上で平均重合度が1,000以上のオルガノポリシロキサン:100質量部(B)オルガノハイドロジェンシロキサン:(A)成分のアルケニル基の総量1モルに対してヒドロシリル基が0.1~20モル(C)付加反応触媒:白金族金属原子換算で0.1~1,000ppm(D)平均粒径が0.1~50μmのシリコーンパウダーと、平均重合度が1,000以上でアルケニル基を有さないオルガノポリシロキサン:1.5~130質量部(E)沸点が100℃以上250℃以下の希釈剤:0~30質量部(F)沸点が100℃未満の希釈剤:0~10質量部を含む付加硬化型シリコーンコーティング剤。【選択図】なし

Description

本発明は、付加硬化型であるシリコーンコーティング剤及び前記シリコーンコーティング剤で被覆されたゴム物品に関する。
シリコーンゴムは、優れた耐候性、電気特性、低圧縮永久歪み性、耐熱性、耐寒性などの特性を有しているため、電気機器、自動車、建築、医療、食品をはじめとして様々な分野で広く使用されている。例えば、リモートコントローラー、コンピューター端末、楽器などのゴム接点として使用されるラバーコンタクト材;建築用ガスケット材;複写機用ロール、現像用ロール、転写ロール等の各種ロール材;オーディオ装置等の防振ゴム材;コンピューターに使用されるコンパクトディスク用パッキン材などの用途が挙げられる。
回転軸などに使用される運動用のОリングは、高い耐摩耗性と低い動摩擦係数が求められ、その付与のためにシリコーンゴムコーティング被膜を与えるシリコーンコーティング剤が使用される。
例えば、特許文献1には、アルケニル基を有するポリシロキサンと高粘度でアルケニル基を有さないポリシロキサンを組み合わせて、低い摩擦係数を有するシリコーン材料を得る方法が示されている。しかし、充填剤の平均粒径が0.1μm以下であるため、すべり性が十分ではない。
また、特許文献2には、アルケニル基量と平均重合度が異なる2種のポリシロキサンと、アルケニル基を全く有さないポリシロキサンの3種のポリシロキサンを一定比率で使用した付加硬化タイプのシリコーンゴム組成物が示されている。だが、高伸長で高引裂きを有するシリコーンゴムに関する発明であり、すべり性には触れられていない。
また、特許文献3には、有機溶剤を含む低摩擦性シリコーンゴムコート剤組成物が示されているが、有機溶剤は硬化時に揮発するため、安全や環境の面から好ましくない。
特開2008-195939号公報 特開2012-082309号公報 特開2016-098319号公報
上記課題を解決するために、本発明では、耐摩耗性に優れかつ低い動摩擦係数を有するシリコーンゴムコーティング被膜を与えることができる、付加硬化型シリコーンコーティング剤、及び前記シリコーンコーティング剤で被覆されたゴム物品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)下記(A-1)~(A-3)で示されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:100質量部
(A-1)下記式(1)で示されるアルケニル基含有シリコーンレジン:10~80質量部
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (1)
(前記式(1)中、Rは独立して炭素数1から10のアルキル基および炭素数2から10のアルケニル基から選択される1価炭化水素基であり、1分子中に平均2.5個以上のアルケニル基を有し、a~dは、0<a≦0.7、0≦b≦0.2、0≦c≦0.2、0<d≦0.7であり、ただし、0.8≦a+d≦1、かつa+b+c+d=1となる数である。)
(A-2)1分子中に2個以上のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有し、かつアルケニル基含有量が0.0014モル/100g以上で、平均重合度が50以上1,000未満の25℃で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:10~80質量部
(A-3)1分子中に2個以上のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有し、かつアルケニル基含有量が0.00034モル/100g以上で、平均重合度が1,000以上の25℃で生ゴム状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:1~20質量部
(B)1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンシロキサン:前記(A)成分中に含まれるアルケニル基の総量1モルに対して、前記(B)成分のヒドロシリル基が0.1~20モルとなる量
(C)付加反応触媒:白金族金属原子換算で0.1~1,000ppmとなる量
(D)下記(D-1)成分及び(D-2)成分からなる滑り性付与剤:1.5~130質量部
(D-1)平均粒径が0.1~50μmであるシリコーンパウダー:1~100質量部
(D-2)平均重合度が1,000以上で、アルケニル基を有さない25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサン:0.5~30質量部
(E)1013hPaの圧力下での沸点が、100℃以上250℃以下である希釈剤:0~30質量部
(F)1013hPaの圧力下での沸点が、100℃未満である希釈剤:0~10質量部
を含むものである付加硬化型シリコーンコーティング剤を提供する。
このような付加硬化型シリコーンコーティング剤であれば、耐摩耗性に優れかつ低い動摩擦係数を有するシリコーンゴムコーティング被膜を得ることができる。
また、前記(E)成分は直鎖状ジメチルポリシロキサンであることが好ましい。
このような付加硬化型シリコーンコーティング剤を用いれば、さらに耐摩耗性に優れるコーティング皮膜を得ることができる。
また、本発明は、ゴム物品であって、前記ゴム物品は、上記付加硬化型シリコーンコーティング剤で被覆されたものであるゴム物品を提供する。
このようなゴム物品であれば、高い耐摩耗性と低い動摩擦係数を有するゴム物品を得ることができる。
本発明の付加硬化型シリコーンコーティング剤によれば、耐摩耗性に優れかつ低い動摩擦係数を有するシリコーンゴムコーティング被膜を与えることができる。
上述のように、耐摩耗性に優れかつ低い動摩擦係数を有するシリコーンゴムコーティング被膜を得ることができるシリコーンコーティング剤が求められていた。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、アルケニル基を有するシリコーンレジン、アルケニル基を有する25℃で液状および生ゴム状のオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンパウダー、アルケニル基を含まないオルガノポリシロキサン、希釈剤及びヒドロシリル化反応用触媒を含む付加硬化型シリコーンコーティング剤が上記目標を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(A)下記(A-1)~(A-3)で示されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:100質量部
(A-1)下記式(1)で示されるアルケニル基含有シリコーンレジン:10~80質量部
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (1)
(前記式(1)中、Rは独立して炭素数1から10のアルキル基および炭素数2から10のアルケニル基から選択される1価炭化水素基であり、1分子中に平均2.5個以上のアルケニル基を有し、a~dは、0<a≦0.7、0≦b≦0.2、0≦c≦0.2、0<d≦0.7であり、ただし、0.8≦a+d≦1、かつa+b+c+d=1となる数である。)
(A-2)1分子中に2個以上のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有し、かつアルケニル基含有量が0.0014モル/100g以上で、平均重合度が50以上1,000未満の25℃で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:10~80質量部
(A-3)1分子中に2個以上のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有し、かつアルケニル基含有量が0.00034モル/100g以上で、平均重合度が1,000以上の25℃で生ゴム状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:1~20質量部
(B)1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンシロキサン:前記(A)成分中に含まれるアルケニル基の総量1モルに対して、前記(B)成分のヒドロシリル基が0.1~20モルとなる量
(C)付加反応触媒:白金族金属原子換算で0.1~1,000ppmとなる量
(D)下記(D-1)成分及び(D-2)成分からなる滑り性付与剤:1.5~130質量部
(D-1)平均粒径が0.1~50μmであるシリコーンパウダー:1~100質量部
(D-2)平均重合度が1,000以上で、アルケニル基を有さない25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサン:0.5~30質量部
(E)1013hPaの圧力下での沸点が、100℃以上250℃以下である希釈剤:0~30質量部
(F)1013hPaの圧力下での沸点が、100℃未満である希釈剤:0~10質量部
を含むものである付加硬化型シリコーンコーティング剤である。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<付加硬化型シリコーンコーティング剤>
本発明は、下記(A)~(E)成分を含む付加硬化型シリコーンコーティング剤である。
[(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン]
(A)成分は、下記(A-1)~(A-3)成分の配合量の合計が100質量部となるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンである。
(A-1)アルケニル基含有シリコーンレジン
(A-1)成分は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンであって、R SiO1/2単位(M単位)、R SiO2/2単位(D単位)、RSiO3/2単位(T単位)及びSiO4/2単位(Q単位)から選択される構成単位からなるシリコーンレジンであり、該シリコーンレジンは下記式(1)で示されるものである。
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (1)
式(1)中、Rは独立して炭素数1から10のアルキル基および炭素数2から10のアルケニル基から選択される1価炭化水素基である。具体的には、アルキル基の例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。1分子中の平均2.5個以上、好ましくは2.5~5個のRがアルケニル基である。1分子中のアルケニル基が平均2.5個未満の場合、硬化物のべたつきが強く、取り扱いが困難となってしまう。
また、(A-1)成分は他の成分との相溶性の観点から、アルケニル基としてはビニル基が好ましく、Rの80モル%以上がメチル基であることが好ましい。各成分の相溶性が良ければ、付加硬化性シリコーンゴム組成物の硬化物の透明性が低下しない。また、aは、0<a≦0.7、好ましくは0.3<a<0.7であり、bは、0≦b≦0.2、好ましくは0≦b≦0.1であり、cは、0≦c≦0.2、好ましくは0≦c≦0.1であり、dは、0<d≦0.7、好ましくは0.3<d<0.7であり、0.8≦a+d≦1、かつa+b+c+d=1となる数である。
上記(A-1)成分のシリコーンレジン(式(1))において、上記4種の構成単位のうち、M単位及びQ単位は必須である。付加硬化性シリコーンコーティング剤のゴムコーティング皮膜の硬さを向上させるためには、全構成単位に占めるこの2種の構成単位の割合が80モル%以上(0.8≦a+d≦1.0)であることが必要であり、好ましくは90モル%以上(0.9≦a+d≦1.0)、より好ましくは100モル%(a+d=1.0)である。なお、D単位及びT単位は含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
M単位とQ単位とのモル比(a/d)が0.5以上であれば、(A-1)成分と他の成分との相溶性が悪化することがなく、1.5以下であれば、付加硬化性シリコーンコーティング剤の硬化皮膜の硬さが低下してしまうおそれがない。したがって、M単位とQ単位とのモル比(a/d)は0.5~1.5の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.7~1.2の範囲である。
上記(A-1)成分のアルケニル基含有量(アルケニル基量)は0.06~0.15モル/100gが好ましく、0.07~0.15モル/100gがより好ましい。アルケニル基含有量が0.06モル/100g以上であれば耐摩耗性が担保され、0.15モル/100g以下であれば動摩擦係数の低いゴムを得ることができる。
なお、本発明において、アルケニル基含有量は、29Si-NMRにより測定した値とする。
29Si-NMR測定条件]
測定装置:ECX500II(JEOL RESONANCE社製)
29Si核測定周波数:99.325MHz
積算回数:5,000
サンプル濃度:20質量%(溶媒:クロロホルム-d)
温度:25℃
この(A-1)成分のシリコーンレジンの具体例としては、ビニルジメチルシロキシ基とQ単位との共重合体、ビニルジメチルシロキシ基・トリメチルシロキシ基とQ単位との共重合体、ビニルジメチルシロキシ基・ジメチルシロキサンとQ単位との共重合体、トリメチルシロキシ基・ビニルメチルシロキサンとQ単位との共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(A-2)25℃で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
本発明の(A-2)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有する。また、アルケニル基含有量が0.0014モル/100g以上で、平均重合度が50以上1,000未満であり、25℃で液状(即ち、25℃で自己流動性を示す状態)のオルガノポリシロキサンである。
ここで、上記アルケニル基は、炭素数2~8であることが好ましく、炭素数2~6であることがより好ましい。アルケニルの例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等が挙げられる。中でもビニル基が好ましい。
上記アルケニル基以外の置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基などが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換したものを用いてもよい。なお、全置換基の90モル%以上、特にはアルケニル基以外の全ての基がメチル基であることが好ましい。
前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(A-2)成分としては、アルケニル基を含有する直鎖状のオルガノポリシロキサンであれば、分子構造(例えば、分子鎖末端のトリオルガノシロキシ基や主鎖のジオルガノシロキサン単位の置換基の種類やそれらの比率)や重合度の異なる1種又は2種以上のものを併用することができるため、好ましい。
(A-2)成分全体中のケイ素原子結合アルケニル基の含有量は、0.0014モル/100g以上である。好ましくは、0.0014~0.03モル/100g、より好ましくは0.0020~0.02モル/100gである。このアルケニル基は、分子鎖末端でケイ素原子に結合していても、分子鎖の途中(分子鎖非末端)のケイ素原子に結合していても、その両方であってもよいが、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
(A-2)成分のオルガノポリシロキサンの平均重合度は50以上1,000未満であり、25℃で流動性のある液状である。液状である(A-2)は、(A-1)や後述する(A-3)を溶解させる溶媒としても機能し、使用可能な有機溶剤の選択肢が広がるだけでなく、使用量を減らした組成が可能になる。
なお、本発明における平均重合度(又は分子量)は、通常、トルエンを展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によって測定されたポリスチレン換算の重量平均重合度(又は重量平均分子量)から計算して求めることができる。
[測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:1mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:KF-805L×2(Shodex社製)
カラム温度:25℃
試料注入量:30μL(濃度0.2質量%のトルエン溶液)
(A-3)25℃で生ゴム状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
本発明の(A-3)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有し、アルケニル基含有量が0.00034モル/100g以上であり、平均重合度が1,000以上であり、25℃で生ゴム状(即ち、25℃で自己流動性を示さない状態)のオルガノポリシロキサンである。
ここで、上記アルケニル基は、炭素数2~8であることが好ましく、炭素数2~6であることがより好ましい。アルケニルの例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等が挙げられる。中でもビニル基が好ましい。上記アルケニル基以外の置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基などが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換したものを用いてもよい。全置換基の90モル%以上、特にはアルケニル基以外の全ての基がメチル基であることが好ましい。
前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(A-3)成分の25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状構造を有することが好ましく、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。また、構造や重合度の異なる1種又は2種以上のものを併用することができる。
(A-3)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃で生ゴム状であって、平均重合度が1,000以上、好ましくは1,000以上30,000以下、より好ましくは2,000以上20,000以下である。平均重合度が1,000未満では、低い動摩擦係数を付与せず、また十分な機械的強度を有するシリコーンゴムが得られない。
(A-3)成分全体中のケイ素原子結合アルケニル基の含有量は、0.00034モル/100g以上である。好ましくは、0.00034~0.2モル/100g、より好ましくは0.00034~0.15モル/100gである。
なお、(A-1)成分、(A-2)成分及び(A-3)の配合量は合計で100質量部であり、(A-1)成分;10~80質量部に対して(A-2)成分;10~80質量部かつ(A-3)成分;1~20質量部である。また、各成分の配合比率は、[(A-1)+(A-2)]>(A-3)となることが好ましい。この比率の範囲内であれば、動摩擦係数の低いシリコーンゴム硬化物が得易くなる。
[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(B)成分は、1分子中にヒドロシリル基(以下、SiH基と略記することがある)を2個以上有し、好ましくは3~200個、より好ましくは3~100個、更に好ましくは4~50個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの1種又は2種以上の混合物である。分子中のSiH基が前記(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル化付加反応により架橋し、組成物を硬化させるための硬化剤として作用するものである。
ここで、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの置換基としては、上記(A)成分のアルケニル基以外の基として例示したものと同様のものを挙げることができる。すなわち、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基などが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。メチル基等のアルキル基、もしくはフェニル基が好ましい。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基(SiH基)含有量は、0.0030~0.030モル/g、特に0.0040~0.025モル/gであることが好ましい。なお、本発明において、ヒドロシリル基含有量は、29Si-NMRにより測定した値である。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよく、25℃で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖非末端(分子鎖途中)のいずれのケイ素原子に結合するものであってもよく、また両者に結合するものであってもよい。
上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン環状重合体、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位と(CHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CSiO1/2単位とからなる共重合体、並びにこれらの化合物においてメチル基の一部又は全部が他の非置換アルキル基やトリフロロプロピル基、フェニル基等で置換されたものなどが挙げられる。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分の合計100質量部に対して0.2~20質量部、好ましくは0.3~15質量部である。(B)成分の配合量が0.2質量部以上であれば、架橋が十分にされ、ゴムがべたつかず、20質量部以下であれば、成形物(シリコーンゴム硬化物)に発泡が見られず、金型から離型しやすい。
また、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計に対する(B)成分中のSiH基のモル比(SiH基/アルケニル基)は0.1~20の範囲であり、好ましくは0.8~10.0、より好ましくは1.0~5.0の範囲となる量で配合することもできる。この比が0.1より小さいと、架橋が不十分になり、べたついたゴムになってしまう場合があり、20より大きいと、成形物に発泡が見られたり、金型からの離型が困難になったりする場合がある。
[(C)付加反応触媒]
(C)成分の付加反応触媒としては、ヒドロシリル化付加反応用のものであれば特に限定されないが、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられる。
付加反応触媒である(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、白金族金属(質量換算)として0.1~1,000ppmであり、特に0.5~1,000ppmが好ましい。
(C)成分の配合量が(A)成分100質量部に対して0.1ppmより少ないと硬化が進行しにくくなり、1,000ppmより多くとなると硬化物が着色してしまう恐れがある。
[(D)滑り性付与剤]
本発明の(D)成分は、下記(D-1)成分及び(D-2)成分からなる滑り性付与剤であり、本発明のシリコーンコーティング剤に、滑り性(表面潤滑性)を付与するために配合するものである。上記(A)成分100質量部に対して、(D)成分は1.5~130質量部配合される。
(D-1)平均粒径が0.1~50μmであるシリコーンパウダー
(D-1)成分のシリコーンパウダーは、硬化時、その一部を表面に発現させ、表面粗さを大きくすることで、実質的な接触面積が小さくなり表面の摩擦係数を低減させることを目的として添加されるものであり、この目的のためには、平均粒径が0.1~50μmであることが必要であり、好ましくは0.2~40μm、より好ましくは0.5~30μm、更に好ましくは1~25μmとする。
なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法による粒度分測定における累積質量平均径D50(又はメジアン径)等として求めることができる。平均粒径が、0.1μmより小さい場合には、溶剤揮発、硬化時に表面に発現しにくくなり、50μmより大きい場合には、表面粗さが大きくなりすぎて基材の外観を大きく損なう。
このような本発明で用いられるシリコーンパウダーは、たとえば、無機担持体にシリコーンオイルを配合させてパウダー化したもの、シリコーンオイルを三次元架橋させてなるシリコーンレジンを粉末化したもの、あるいは、シリコーンゴムを粉末化したものなどを用いることができる。(D-1)成分は、1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
(D-1)成分のシリコーンパウダーの配合量は、(A)成分100質量部に対して1~100質量部であり、好ましくは1~80質量部、より好ましくは1~60質量部である。
(D-1)成分の配合量が、1質量部より少ない場合には、表面に移行・発現するシリコーンパウダーが少なくなり、表面粗さが大きくならず、低摩擦性能は得られず、100質量部より多い場合には、加工性が悪くなり、表面粗さも大きくなりすぎて基材の外観を大きく損なう。
(D-2)平均重合度が1,000以上で、アルケニル基を有さない25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサン
本発明の(D-2)成分のオルガノポリシロキサンは、分子中にアルケニル基を有さない25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサンである。この(D-2)成分を配合することにより上記(A)成分のみから得られる硬化皮膜に比べて、より動摩擦係数の低いシリコーンゴム硬化皮膜を得ることができるという効果が得られる。
ここでの置換基は、前記(A-3)成分において例示した中で、アルケニル基を除いたものと同様であり、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基などが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換したものを用いてもよい。全置換基の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
(D-2)成分のオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には、前記(A-3)成分と同様、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状構造を有することが好ましく、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。
また、(D-2)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃で生ゴム状であって、平均重合度が1,000以上、好ましくは1,000以上30,000以下、より好ましくは2,000以上20,000以下である。平均重合度が1,000未満では、低い動摩擦係数を付与しない。
(D-2)成分の25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサンの配合量は、(A)成分の合計を100質量部として0.5~30質量部であり、好ましくは1~25質量部、より好ましくは2~20質量部の範囲である。この(D-2)成分が0.5質量部未満であると、滑り性が付与されず、また30質量部より多く使用しても、更なる滑り性は付与されない。
[(E)沸点が100℃以上250℃以下である希釈剤]
(E)成分の希釈剤は、本発明のシリコーンコーティング剤の溶剤として作用する。1013hPaの圧力下での沸点が、100℃以上250℃以下であり、好ましくは200℃以上250℃以下である。沸点が250℃を超えると、加熱硬化時に希釈剤が揮発せずに残留するため好ましくない。
(E)成分として使用する希釈剤としては、本発明のシリコーンコーティング剤のシリコーン成分(すなわち、(A)、(B)、及び(D-2)成分)を溶解するもので、上記沸点範囲内ならば、特に制限はない。例えば、n-オクタン、n-デカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンなどの直鎖状ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。中でも、直鎖状ジメチルポリシロキサンが好ましく、JIS Z8803:2011記載のキャノン-フェンスケ粘度計で測定した25℃での動粘度が2mm/s以下の直鎖状ジメチルポリシロキサンが好ましい。
(E)成分の希釈剤の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0~30質量部であり、好ましくは1~30質量部、より好ましくは1~15質量部である。(E)成分の配合量が、30質量部よりも多い場合には、加工性が悪くなる恐れがある。
[(F)沸点が100℃未満である希釈剤]
(F)成分の希釈剤も、本発明のシリコーンコーティング剤の溶剤として作用する。1013hPaの圧力下での沸点が、100℃未満であり、好ましくは100℃未満60℃以上、より好ましくは100℃未満80℃以上である。
(F)成分として使用する希釈剤としては、本発明のシリコーンコーティング剤のシリコーン成分(すなわち、(A)、(B)、及び(D-2)成分)を溶解するもので、上記沸点範囲内ならば、特に制限はない。例えば、n-ヘプタンが挙げられる。
(F)成分の希釈剤の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0~10質量部であり、好ましくは1~10質量部である。(E)成分の配合量が、10質量部よりも多い場合には、硬化前に大量の希釈剤が揮発することにより、コーティング被膜表面に剥がれを生じる場合がある。
なお、(E)成分と(F)成分は、両方とも配合してもよいし、いずれか一方だけを上記上限値以下の配合量で配合してもよいし、両方とも配合しなくてもよい。
なお、必要に応じて、上記沸点範囲外の希釈剤を加えてもよい。
[その他の成分]
その他の成分として、必要に応じて、石英粉、珪藻土、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムのような充填剤や、カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤、窒素含有化合物やアセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウムのような耐熱剤、ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤、分散剤、接着性付与剤、チクソ性付与剤等を配合することができる。
[コーティング剤の調製方法]
本発明の付加硬化型シリコーンコーティング剤は、該コーティング剤を構成する成分をニーダー、バンバリーミキサー、二本ロール等の公知の混練機で混合することにより得ることができる。
該シリコーンコーティング剤として上記(A)~(E)成分を含有する組成物を用いる場合、(A)成分のオルガノポリシロキサンと(E)成分の溶剤、(D)成分の滑り性付与剤を混合して混合物を得た後、該混合物に(B)および(C)成分の硬化剤を添加することが好ましい。
また、上記(A)~(E)成分を含有するコーティング剤が更にその他の成分を含む場合には、(A)成分のオルガノポリシロキサンと(E)成分の溶剤、(D)成分の滑り性付与剤とその他の成分とを混合して混合物を得た後、該混合物に(B)および(C)成分の硬化剤を添加することが好ましい。
さらに、本発明は、(A)、(B)、(D)及び(E)を混合して得られた一次組成物に、(C)成分を加えて、本発明の付加硬化型シリコーンコーティング剤としてもよい。
[低摩擦性シリコーンゴムコーティング被膜の形成方法]
低摩擦性シリコーンゴムコーティング被膜の形成方法は、上記付加硬化型シリコーンコーティング剤を、基材表面に塗工した後加熱することにより、該コーティング剤を硬化させて基材表面にシリコーンゴムコーティング被膜を形成するものである。
基材表面への塗工方法としては、コーティング、スプレー、及びディッピング等の公知の方法を使用することができる。基材表面への塗工、加熱、硬化後に形成されるシリコーンゴムコーティング被膜量は、通常0.3~100g/m、特に0.6~50g/m、とりわけ1~10g/m程度が好ましい。
シリコーン被膜量が、0.3g/m以上であれば、その被膜量が不足せず、動摩擦係数低減の効果が十分に発現し、100g/m以下の場合には、その被膜量が過多にならないため動摩擦係数低減の効果が飽和せず経済的である。
なお、上記範囲の被膜量によって形成されるシリコーンゴムコーティング被膜の厚みは、通常、約0.3~100μm、特に約0.6~50μm、とりわけ約1~10μm程度に相当する。
基材表面への塗工後の加熱温度は、通常120~250℃、好ましくは150~200℃であり、加熱時間は、通常1~60分間、好ましくは5~20分間である。
シリコーンコーティング剤が塗工(塗布)される基材としては、コーティング被膜が接着すれば特に指定はないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、金属、ガラスからなる群より選ばれる原料から成る成形物が挙げられる。
こうして形成される低摩擦性シリコーンゴムコーティング被膜は、動摩擦係数が0.35以下、特に0.32以下となり、かつ耐摩耗性に優れる。例えば、上記シリコーンゴムコーティング被膜をOリング表面上に形成することによって、高い耐摩耗性と低い動摩擦係数を有する、運動用に適したOリングを与えることになる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
シリコーンゴムコーティング被膜を形成させるために用いられたシリコーンコーティング剤の各成分は下記のとおりである。
〈(A)成分〉
(A-1):1分子中にビニル基を平均4個有し、数平均分子量が3,000のビニルジメチルシロキシ基・トリメチルシロキシ基とQ単位との共重合体であるシリコーンレジン(アルケニル基含有量:0.085モル/100g、構成単位モル比はM:D:T:Q=43:0:0:57、M/Q=0.75)
(A-2):両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が450であるジメチルポリシロキサンオイル(アルケニル基含有量:0.006モル/100g)
(A-3):両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、側鎖に、アルケニル基が0.0064モル/100gとなるメチルビニルシロキシ基を有し、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム(全アルケニル基含有量:0.00674モル/100g)
〈(B)成分〉
(B):両末端トリメチルシリル基封鎖で、平均48個のメチルハイドロジェンシロキシ基からなるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH基量:0.0212モル/g、信越化学社製)
〈(C)成分〉
(C):白金触媒(塩化白金酸の重曹中和品(信越化学社製)、金属質量換算で1質量%の白金を含有)
〈(D)成分〉
(D-1):平均粒径2μmのシリコーンパウダー
(D-2):ジメチルシロキシ単位100モル%からなり、平均重合度が8,000であるジメチルポリシロキサン生ゴム
〈(E)成分〉
(E):両末端トリメチルシリル基封鎖で、ジメチルシロキシ単位が3個の直鎖状ジメチルポリシロキサンであるシリコーンオイル(沸点229℃、商品名:KF-96L-2cs、信越化学社製)
〈(F)成分〉
(F):N-ヘプタン(沸点98.42℃)
[シリコーンコーティング剤の調製、及びシリコーンゴムコーティング被膜の形成]
(A)、(B)、(D)、(E)及び(F)を表1、2の配合量で混合して得られた各々の一次組成物に、(C)白金触媒を(A)成分に対して白金金属質量に換算して67ppm加えて、実施例1~5、比較例1~11のシリコーンコーティング剤とし、シリコーンゴムシートの基材表面にコーターにより塗布してから、加熱条件120℃で30分間加熱し、硬化させて、該シリコーンゴムシートの表面に、約10μm厚のシリコーンゴムコーティング被膜を形成した。実施例1~5、比較例1~12の内容は、下記の通りである。
(実施例1)
表1の実施例1の組成で作製したシリコーンコーティング剤を用いた。
(実施例2)
表1の実施例2の組成で作製したシリコーンコーティング剤を用いた。
(実施例3)
表1の実施例3の組成で作製したシリコーンコーティング剤を用いた。
(実施例4)
表1の実施例4の組成で作製したシリコーンコーティング剤を用いた。
(実施例5)
表1の実施例5の組成で作製したシリコーンコーティング剤を用いた。
(比較例1)
実施例1の組成から(D)成分を配合しないシリコーンコーティング剤を用いた。
(比較例2)
実施例1の組成から(D-2)成分を配合しないシリコーンコーティング剤を用いた。
(比較例3)
実施例1の組成から(D-1)成分を配合しないシリコーンコーティング剤を用いた。
(比較例4)
実施例1の(D-1)成分に変え、(D-3)BET法比表面積が200m/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)を48質量部使用したシリコーンコーティング剤を用いた。
(比較例5)
実施例1の(A)成分を(A-3)100質量部のみに、(D-1)成分に変え、(D-3)BET法比表面積が200m/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)を48質量部使用したシリコーンコーティング剤を用いた。
(比較例6)
比較例5の(E)成分をシリコーンオイルから変更し、(F)成分のN-ヘプタン(沸点98.42℃)400質量部を使用したシリコーンコーティング剤を用いた。
(比較例7)
比較例5の(A)成分を、(A-4)両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が8,000であるジメチルポリシロキサン生ゴム(アルケニル基含有量:0.00034mol/100g)97.5質量部と(A-2)成分2.5質量部に変更したシリコーンコーティング剤を用いた。
(比較例8)
比較例7の(E)成分をシリコーンオイルから変更し、(F)成分のN-ヘプタン(沸点98.42℃)400質量部を使用したシリコーンコーティング剤を用いた。
(比較例9)
実施例2の(E)成分を9質量部から50質量部に変更したシリコーンコーティング剤を用いた。
(比較例10)
実施例5の(F)成分を9質量部から30質量部に変更したシリコーンコーティング剤を用いた。
(比較例11)
比較例5の(E)成分9質量部を(F)成分9質量部に変更したシリコーンコーティング剤を用いた。
(比較例12)
シリコーンゴムシート基材にシリコーンコーティング剤を塗布せずに評価した(ブランク)。
[シリコーンゴムシート基材の作成条件]
材料:KE-871C-U/KE-951KU=1/1(質量比)(いずれも信越化学社製)
大きさ:175×150mm、厚さ:2mm
硬化条件:165℃×10分間プレスキュア後、200℃×4時間ポストキュア
〔評価手法〕
得られた表面処理シリコーンシートについて、下記特性について試験・測定し評価した。結果を表1、2に示す。
・動摩擦係数:
上記シートの動摩擦係数は、HEIDEN社製商品名TYPE14FWを用いて測定した。荷重は100gに設定し、擦り剤:SUSボールは直径10mmのものを使用した。
・耐摩耗性:
上記動摩擦係数測定後、コート剤表面に剥がれ・くぼみの有無で評価した。評価基準は、以下の通りである。
○:剥がれ・くぼみなし
×:剥がれ・くぼみあり
Figure 2023177645000001
*(C)成分は(A)成分に対する配合量(質量比)。
Figure 2023177645000002
*(C)成分は(A)成分に対する配合量(質量比)。
実施例1~5において、本発明の付加硬化型コーティング剤は、基材表面に良好なコーティング皮膜を形成し、低摩擦性と耐摩耗性を兼ね備えたコーティング皮膜を与えることが確認できた。
比較例1~3では、(D)成分のうち、(D-1)成分、(D-2)成分のいずれか、もしくは両方を欠いた組成であるため、動摩擦係数が実施例1~5よりも高くなった。
比較例4では、シリコーンパウダーではなく、ヒュームドシリカを用いたため滑り性への寄与が小さくなり、動摩擦係数が実施例1~5よりも高くなった。
比較例5、7、11では、(A)成分を生ゴムのみ、または生ゴムを主としたため、コーティング剤の粘度が高すぎてしまい、基材に塗布できなかった。
比較例6と8では、(A-1)成分が含まれていないため耐摩耗性が低くなり、希釈剤をジメチルポリシロキサンから沸点の低いN-ヘプタンを大量に使用したため、硬化前に希釈剤が揮散してしまい、動摩擦係数測定後に、コーティング皮膜表面に剥がれが確認された。
比較例9では、(E)成分の希釈剤を大量に使用したために、硬化性が低下してしまい、加工性が悪いものであった。
比較例10では、(F)成分の希釈剤を大量に使用したために、硬化前に希釈剤が大量に揮散してしまい、動摩擦係数測定後に、コーティング皮膜表面に剥がれが確認された。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

Claims (3)

  1. (A)下記(A-1)~(A-3)で示されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:100質量部
    (A-1)下記式(1)で示されるアルケニル基含有シリコーンレジン:10~80質量部
    (R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (1)
    (前記式(1)中、Rは独立して炭素数1から10のアルキル基および炭素数2から10のアルケニル基から選択される1価炭化水素基であり、1分子中に平均2.5個以上のアルケニル基を有し、a~dは、0<a≦0.7、0≦b≦0.2、0≦c≦0.2、0<d≦0.7であり、ただし、0.8≦a+d≦1、かつa+b+c+d=1となる数である。)
    (A-2)1分子中に2個以上のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有し、かつアルケニル基含有量が0.0014モル/100g以上で、平均重合度が50以上1,000未満の25℃で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:10~80質量部
    (A-3)1分子中に2個以上のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有し、かつアルケニル基含有量が0.00034モル/100g以上で、平均重合度が1,000以上の25℃で生ゴム状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:1~20質量部
    (B)1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンシロキサン:前記(A)成分中に含まれるアルケニル基の総量1モルに対して、前記(B)成分のヒドロシリル基が0.1~20モルとなる量
    (C)付加反応触媒:白金族金属原子換算で0.1~1,000ppmとなる量
    (D)下記(D-1)成分及び(D-2)成分からなる滑り性付与剤:1.5~130質量部
    (D-1)平均粒径が0.1~50μmであるシリコーンパウダー:1~100質量部
    (D-2)平均重合度が1,000以上で、アルケニル基を有さない25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサン:0.5~30質量部
    (E)1013hPaの圧力下での沸点が、100℃以上250℃以下である希釈剤:0~30質量部
    (F)1013hPaの圧力下での沸点が、100℃未満である希釈剤:0~10質量部
    を含むものであることを特徴とする付加硬化型シリコーンコーティング剤。
  2. 前記(E)成分は直鎖状ジメチルポリシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の付加硬化型シリコーンコーティング剤。
  3. ゴム物品であって、前記ゴム物品は、請求項1または請求項2に記載の付加硬化型シリコーンコーティング剤で被覆されたものであることを特徴とするゴム物品。
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