JP2023175633A - 二酸化炭素供給装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】室内空気から二酸化炭素を濃縮して室内へ二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置において、室内の温湿度を調整できる二酸化炭素供給装置に関するものである。【解決手段】ビニールハウスや植物工場などの園芸施設に二酸化炭素供給装置を設け、その二酸化炭素供給装置によって施設内の空気を循環させ、その循環空気と外気とを全熱交換する全熱交換器を設け、施設内の環境を植物に最適な温度と湿度に調整できるようにしている。【選択図】図1

Description

本発明は、大気中の二酸化炭素を濃縮し、植物ハウスや植物用温室に供給することで植物の育成促進を図る全熱交換器を用いたサーマルスイング法による二酸化炭素濃縮装置及び方法に関するものである。
トマトやイチゴなどの植物工場や作物栽培ハウス等の作物生産用施設(以降「園芸施設」という)では、閉じた環境下にあるので、植物の光合成が進んでいくと室内の二酸化炭素濃度が次第に低下してくる。そこで、二酸化炭素の生ガスなどをチューブやダクトを使って葉の近くに局所的に施用して、大玉果収量及び商品果収量を多くする研究が行われている。
ビニールハウスや植物工場などの園芸施設への二酸化炭素供給装置として、灯油などを燃やした燃焼排ガス中の二酸化炭素を供給するものがある。しかし、この装置では、排ガス中の窒素酸化物や硫黄酸化物を植物の成長に影響を及ぼさない濃度以下にする必要があり、施設内の温度が高くなってしまうという欠点がある。その解決策として、二酸化炭素ボンベを用いることもあるが、価格が高く、発電所などで発生した二酸化炭素を回収、液化したものを使用しているので、前者同様に大気中の二酸化炭素を増加させ地球温暖化を促進してしまうという問題がある。
そこで、特許文献6のようにハニカムロータを用いて大気中の二酸化炭素を分離回収、濃縮して植物に供給する方法が開発されている。この方法では、二酸化炭素を施用するダクトを植物の葉の近傍に設置して局所施用する方法を検討していたが、ダクトを設置するのが煩雑であり、より簡単に二酸化炭素を施用し、葉の周りの二酸化炭素濃度をさらに上げる方法がユーザーから求められている。そこで園芸施設を密閉することで、外気が入ってこないようにすると局所施用ダクトを設けなくとも、施設内全体の二酸化炭素濃度を上げることができる。しかし、この場合、直射日光で施設内の温度と湿度が上がってしまう。通常は外気を取り込んで温度や湿度を下げて、適切な栽培環境にしているが、外気を取り込むと二酸化炭素濃度が上がらないという問題がある。
園芸施設内の栽培環境を改善するために、特許文献1~4のような従来技術では、外気を取り込み、施設内の空気と熱交換を行う方式が一般的である。さらに積極的に温度や湿度を下げたい場合はヒートポンプ等で冷却を行っている。しかし、直射日光で施設内の温度は容易に摂氏30℃以上(以降、温度は全て「摂氏」とする)になってしまうため、ヒートポンプ等での冷却はエネルギーが非常に掛かってしまう。また、湿度も植物からの蒸散で大量の除湿が必要となるため、消費電力が大きくなるという問題もある。
また、特許文献5では、植物工場内の栽培室の空気を吸い込み、熱交換器を通し、冷却して除湿した後に栽培室に再び吹き出している。この方法では、栽培室が大きくなると冷却に要する消費電力が大きくなるという問題もある。
特開2021-122248号公報 特開2016-121841号公報 特開2015-87026号公報 特開2011-160754号公報 特開2022-50159号公報 特開2019-62862号公報
前記特許文献6のようにハニカムロータを用いて大気中の二酸化炭素を分離回収、濃縮して植物に供給する方法では、装置から排出される二酸化炭素濃度は、取り込んだ空気の二酸化炭素濃度に300~400ppm程度増加させた二酸化炭素濃度となる。外気の二酸化炭素濃度は400ppm程度であるので、700~800ppmのガスを植物の葉の周りに局所施用ダクトを設置して吹き込んでいたが、葉の周りの二酸化炭素濃度は500ppm程度であった。これは直射日光により施設内の温度が上がるので、施設の天井または側面の扉や窓などが開き、外気を入れて施設内の温度を下げるため二酸化炭素濃度が上がらないこととなる。現状の試験でも農作物の収穫量増加は確認されているが、二酸化炭素濃度が800ppm程度までは光合成速度が比例的に増加、つまり収穫量の増加につながることが確認されている。
また、イチゴなどでは一列が30~50mくらいの長さの葉の周りに局所施用ダクトを設置するのは非常に手間がかかり、設置に時間がかかるため局所施用ダクトを無くしたい。
これらの問題を解決するため、施設の天井や側面を開かない状態で二酸化炭素を施用したいが、その様にすると施設内の温度と湿度が上がってしまう。例えば、ビニールハウス内は締め切ると直射日光でハウス内温度が直ぐに30℃以上になってしまう。また、植物からの蒸散で湿度も上がってしまう。高温、高湿環境では植物が枯れてしまったり、害虫や病気、カビによる影響が出てしまう。温度と湿度を調整するために冷却方式などで冷却、除湿を行うと莫大な消費電力がかかってしまう。現に農業従事者の話を聞くと、ハウス内の昼の温度上昇は大きく、ヒートポンプを用いて冷却すると、必要な冷却能力が大きすぎて、導入できないとの話であった。従って、温度や湿度を下げるために、現状はハウスの天井や側面を開けて、外気を導入する方法が最も費用対効果がよいので採用されている。また、植物は微風がある方が、葉の気孔に新鮮な空気が届けられ、成長が促進されると言われている。ビニールハウス内を締め切って、空気の流れがなくなってしまうと、植物の成長が阻害されてしまう。
本発明はこれらの課題を解消するためになされたもので、局所施用ダクトを設置しないで、全熱交換器により園芸施設内の植物に対して最適な温度と湿度にできる、二酸化炭素供給装置及び方法を提案するものである。
本発明の二酸化炭素供給装置は、全熱交換器を用いて園芸施設内の温度と湿度を調整して、施設の天井や側面を開かなくても良くし、局所施用ダクトを設置しなくても二酸化炭素を施用できることを最も主要な特徴とする。
本発明の二酸化炭素供給装置は、外気を極力取り込まないので園芸施設内の二酸化炭素濃度を装置が供給する二酸化炭素濃度程度にまで葉の周りの二酸化炭素濃度を高めることができる。また、二酸化炭素供給装置は取り込んだ空気に二酸化炭素濃度を300~400ppm増加させることができ、これまでの外気程度の二酸化炭素濃度400ppmを取り込んだ場合、700~800ppmで供給するのが限界である。しかし、密閉された園芸施設内の二酸化炭素濃度が外気よりも高い空気を取り込んで、再び園芸施設内にガスを供給することで、供給二酸化炭素濃度を高めることが出来る。その結果、植物の光合成が最も促進される1000ppm程度にすることが可能となる。
また、園芸施設などの室内が密閉された状態なので、葉の近傍で二酸化炭素を局所施用する必要が無いので、植物への二酸化炭素局所施用ダクトなどの設置が不要となる。
さらに、ビニールハウスの天井や側面を開けるための窓やモータなどが必要なくなるので、ビニールハウスの初期コストが抑えられる。窓をなくすことが出来るので、風雨の影響を完全に遮断できる。その上、害虫が外から入ってこないため、農薬を減らすことが可能となり、有機農業などの環境保全型農業の実現が可能となる。
加えて、全熱交換器を用いることで、園芸施設内の温度と湿度を調整できるので、全熱交換器のファンとロータ回転用のモータだけの消費電力なのでヒートポンプによる冷却などと比べて大幅な省エネルギーとなる。本発明の二酸化炭素供給装置は施設内の二酸化炭素濃度が上がった空気を取り込み、二酸化炭素を脱着して供給することになる。外気にリークする分は無いので、植物が吸った量だけ二酸化炭素を供給すればよくなるので、二酸化炭素を脱着させるためのエネルギーは最小限で済み、省エネルギー運転が可能となる。
その上、ビニールハウスを密閉すると空気の流れがなく、葉の気孔が開いていても、新鮮な空気が送られないが、全熱交換器によってビニールハウス内で空気の流れを作ることができ、葉の光合成を促進することが可能となる。また、空気の流れがあることで、ビニールハウス内の温度、湿度、二酸化炭素濃度を均一にすることも可能となる。
図1は本発明の二酸化炭素供給装置の実施例1の図である。 図2は本発明の二酸化炭素供給装置の実施例2の図である。 図3(A)、(B)は本発明の二酸化炭素供給装置の実施例3の図である。 図4は本発明の二酸化炭素供給装置の実施例4の図である。 図5(A)、(B)は本発明を実施した場合のビニールハウス内の温度と湿度の推移を示したグラフである。 図6は本発明を実施した場合と現状でのビニールハウス内の二酸化炭素濃度の推移を示したグラフである。 図7は本発明の二酸化炭素供給装置において、全熱交換器を停止または稼働した場合のビニールハウス内の温度と湿度の推移を示したグラフである。 図8は本発明の二酸化炭素供給装置において、全熱交換器を停止または稼働した場合のビニールハウス内の二酸化炭素濃度の推移を示したグラフである。
本発明は、ビニールハウスや植物工場などの園芸施設に二酸化炭素供給装置を設け、その二酸化炭素供給装置によって施設内の空気を循環させ、その循環空気と外気とを全熱交換する全熱交換器を設け、施設内の環境を植物に最適な温度と湿度に調整できるようにしている。
図1に本発明の二酸化炭素供給装置の実施例1の図を示す。なお、本実施例では、イチゴなどをビニールハウスで栽培する園芸施設について説明する。2は二酸化炭素吸着ロータを備えた二酸化炭素供給装置でビニールハウス1内に設置されてある。この二酸化炭素吸着ロータは、ガラス繊維やセラミック繊維紙などの不燃性のシートをコルゲート(波付け)加工しロータ状に巻き付け加工したもので、弱塩基性イオン交換樹脂やアミン担持固体吸収剤などの二酸化炭素吸着材が担持されている。さらに二酸化炭素吸着ロータは、ロータの回転方向に少なくとも外気を通して外気中の二酸化炭素を吸着して装置外へ排気する吸着ゾーンと、ビニールハウス1内の空気を再生ヒータ(図示せず)などで加熱した空気を通して、吸着ゾーンで吸着した二酸化炭素を脱着してビニールハウス1内に戻す脱着ゾーンを有している。このことによりビニールハウス1内の二酸化炭素を濃縮でき、高濃度の二酸化炭素を供給することが可能となる。なお、二酸化炭素吸着ロータについては、特許文献6のようにパージゾーンやプレパージゾーンなど吸着ゾーンと脱着ゾーンと異なるゾーンを有する構成としてもよい。
前記二酸化炭素供給装置2で高濃度の二酸化炭素を密閉されたビニールハウス1内に循環供給している。ビニールハウス1内に循環されている空気の一部が全熱交換器3に送られて外気と全熱交換された後、再びビニールハウス1内に戻される。これにより温度と湿度が高くなったビニールハウス1内の空気の温度と湿度を下げている。なお、全熱交換器3は全熱交換ロータを備えており、その全熱交換ロータはアルミニウム・シートをハニカム状に形成し、そのシートの上に湿気吸着剤を担持し、最終的に回転可能なロータ状に形成されている。湿気吸着剤としては、塩化カルシウム、珪藻土、シリカゲル、ゼオライト、イオン交換樹脂、高分子収着剤などである。この全熱交換ロータは、ロータの回転方向に外気を通して装置外へ排気する外気通風ゾーンと、ビニールハウス1内の空気を通してビニールハウス1内に再び空気を戻す室内空気通風ゾーンを有している。なお、本実施例では、全熱交換器3に全熱交換ロータを有するものを用いたが、これに限定されるものでは無く、静止型の直交全熱交換器など他の全熱交換器を用いてもよい。また、温度を下げるために特開平10-311691号公報に示されるような、静止型の間接気化冷却器を用いてもよい。全熱交換器を用いた後に、ヒートポンプユニットや気化冷却器と組み合わせてもよい。
実施例1では、二酸化炭素供給装置2をビニールハウス1内に、全熱交換器3をビニールハウス1外に設置したが、これに限定されるものでは無く、どちらもビニールハウス1内や外に設置する構成としてもよい。また、二酸化炭素供給装置2と全熱交換器3をビニールハウス1の室内と室外の間に設置し、二酸化炭素供給装置2の吸着ゾーンをビニールハウス1の外側、脱着ゾーンをビニールハウス1の内側にし、全熱交換器3の外気通風ゾーンをビニールハウス1の外側、室内空気通風ゾーンをビニールハウス1の内側に設置するような構成としてもよい。このようにすれば二酸化炭素供給装置2、全熱交換器3とビニールハウス1とを接続するダクトを無くすことができる。さらに、二酸化炭素供給装置2、全熱交換器3を一台ずつ設置したが、これに限定されるものでは無く、どちらか一方又は両方とも複数台で設置する構成としてもよい。例えば、ビニールハウスが大型の場合や、ビニールハウス内の温度上昇や湿度増加が大きい場合など、温湿度調整を一台の装置で賄おうとするとロータ径などが大きくなり装置も大型化する必要があるが、複数台の装置とすることにより、冗長性を持たせつつ装置が小型化できるため、装置の設置スペースに問題がある時などに有効となる。
なお、二酸化炭素供給装置2には、二酸化炭素吸着ロータを備えた二酸化炭素供給装置を用いたが、二酸化炭素ボンベや灯油などを燃やした燃焼排ガス中の二酸化炭素を供給するものなど、他の二酸化炭素供給装置と全熱交換器を組合わせた構成としてもよい。そうすることにより、すでに二酸化炭素供給装置が設置されている園芸施設では、全熱交換器を設置するだけで、本発明を実施できるようになる。
図2に本発明の二酸化炭素供給装置の実施例2の図を示す。実施例2では、装置構成は実施例1とほぼ同様となっているので重複する説明は省略する。図2の実施例2では、二酸化炭素供給装置2と全熱交換器3を組み合わせた一体型の装置(ユニット)としている。
実施例2の場合、密閉されたビニールハウス1内へ供給する濃度の高い二酸化炭素を比較的低温で供給することができる。
なお、全熱交換器3に備えられている全熱交換ロータを顕熱交換ロータと除湿ロータの2段ロータに替えて、別々にロータ回転数を制御できるようにすれば(熱交換効率と除湿量の制御が可能)、ビニールハウス1内の温湿度状態をモニタリングして、より精密な温湿度制御も可能となる。
図3(A)に本発明の二酸化炭素供給装置の実施例3の側面から見た図を示し、図3(B)に本発明の二酸化炭素供給装置の実施例3の上部から見た図を示す。実施例3でも、装置構成は実施例2とほぼ同様となっているので重複する説明は省略する。図3の実施例3では、二酸化炭素供給装置2と全熱交換器3を組み合わせた一体型の装置(ユニット)からの低温高濃度二酸化炭素ガスをビニールハウス1内に吹き込むダクト4を設けている。
実施例3の場合、低温高濃度二酸化炭素ガスをビニールハウス1周囲に配置したダクト4から側面(ダクト下方向)と内側(ビニールハウス中央方向)に向かって吹き、ビニールハウス1の中央付近の吸込口5から吸込むことで、ビニールハウス1内の特に植物栽培エリアだけの温湿度、二酸化炭素濃度を調整できるようにしている。ビニールハウスは、一般的に気密性がそれほど良くないので、側面と上面を風の流れでエアーカーテンを作り、空気調整空間を小さくすることで省エネルギーとなる。なお、実施例3では、ダクト4から側面と内側に向かって吹くようにしたが、側面または内側の片方から吹くようにしてもよい。また、二酸化炭素供給装置2と全熱交換器3を組み合わせた一体型の装置(ユニット)に限らず、実施例1の二酸化炭素供給装置2や全熱交換器3とダクト4を接続し、脱着ゾーンや室内空気通風ゾーンを通過した空気をビニールハウス1内に同様に吹き込むようにしてもよい。
実施例1~3では、植物への二酸化炭素局所施用ダクトを設置しない構成としたが、ビニールハウスの長さが例えば60mなど長く大型のものである場合、ハウス内の温度や湿度、二酸化炭素濃度の分布にムラが生じやすい。そこで、ハウス内における各部分を均一な環境状態に維持するために、特開2011-101630号公報に示されるように、イチゴの高設ベッドの真下のハウス床面部分に沿ってビニールシート製の可撓性ダクトを配置し、この可撓性ダクトに開けた空気吹き出し孔から空気を上方に吹き出すものがある。しかしこの方法では、植物が栽培されている既設のハウスへの設置はスペースが取れないこと、高額な追加設置費用がかかってしまう問題があった。また、ビニールダクト(ビニールシート製の可撓性ダクト)を設置した場合、ビニールダクトを膨らますために動力の大きいファンを設置しなければならなかった。
そこで実施例4では、図4に示すように、植物の栽培レーン(高設ベッド)の下の空間を利用して、ビニールシート6をテントのように三角形に張り、その中に二酸化炭素供給装置2や全熱交換器3からの空気を送風することで、送風動力が低く、低コストでハウス内の温度と湿度を均一にすることが可能である。ビニールシートは市販されているものを用いており、栽培レーンの下から床面まで延伸してビニールシートを張って設け、床面にビス留めして固定し、二酸化炭素供給装置2や全熱交換器3からの空気を送風する空間を形成している。三角に張ったシート6の長手方向に沿って側面に一定間隔で穴をあけておくと、そこから供給空気が噴き出て、ハウス内の温湿度の均一化を促進できる。三角に張ったシート6の一端は開口または閉口しており、他方の一端は二酸化炭素供給装置2及び/又は全熱交換器3から室内に供給空気を供給するダクト等と接続する。なお、ビニールシートに限らず同様の機能を果たすシートであれば別のものでもよい。三角に張ったシートを用いれば、ビニールダクトに比べて配管作業が簡単であり、コストも掛らない。膨らみ状態を目視することにより空気が正常に各部分に供給されていることを簡単に確認できる。なお、植物によっては栽培レーンの下に床面までビニールシートを既に設置している園芸施設もあり、この場合そのビニールシートに囲まれた空間を利用し、送風するようにしてもよい。よって三角形に限らず、栽培レーンの下から床面までシートを張って空間を形成することができれば、四角形など他の形であってもよい。
図5(A)に本発明でのビニールハウス内の温度変化の時刻毎の推移を示す。ビニールハウスを密閉した状態で全熱交換器を用いず、循環無しの場合はビニールハウス内の温度が急激に上昇してしまう。循環回数(1時間に何回ビニールハウス内の空気が循環することによって入替るか)を多くして、全熱交換器を通って循環する流量を多くすると、ビニールハウス内の温度が低下する。植物の栽培においては、ビニールハウス内の温度を30℃以下にする必要があるため、循環回数20回以上が必要と言える。図5(B)にビニールハウス内の湿度の時刻毎の推移を示す。ビニールハウスを密閉した状態で全熱交換器を用いず、循環無しの場合は、温度と同様に湿度が急激に上昇してしまう。これは植物に灌水しているため、植物からの水の蒸散により湿度が増加する。循環回数を多くすることで、湿度の増加を抑えることが出来ることが分かる。
図6にビニールハウス内の二酸化炭素濃度の変化を示す。なお、本発明を実施した場合の二酸化炭素供給装置の循環回数は、0.45回とする。現状は日中にビニールハウスの側面を開けて、外気を取り入れることで温度や湿度を低下させている。外気を取り込んでいるが、二酸化炭素を施用しない場合(無施用)、葉の周辺で測定した二酸化炭素濃度は400ppm以下となってしまう。二酸化炭素供給装置により、葉の局所に配管を設置して、二酸化炭素を供給すると、二酸化炭素濃度の測定値は無施用に比べて100ppm程度増加していた。しかし、外気が取り込まれているため、二酸化炭素供給装置からの流量を上げても、これ以上の二酸化炭素濃度の増加はなかった。ハウスを密閉した状態で、全熱交換器によって温度と湿度を調整した場合、無施用の二酸化炭素濃度の予測値は、植物の光合成で二酸化炭素が使われるため、二酸化炭素濃度が低下してしまう。一方、本発明で二酸化炭素供給装置も用いて二酸化炭素を供給した場合、二酸化炭素濃度を1000ppmにコントロールすることが可能となる。
図7に全熱交換器を停止または稼働した場合のビニールハウス内の温度と湿度の測定結果を示す。全熱交換器を停止している時(0~17分と65~73分)はハウス内の温度と湿度が上昇していることがわかる。全熱交換器を稼働させる(18~64分)とハウス内の温度と湿度が低下、維持できることが確認できる。
図8にビニールハウス内における全熱交換器稼働時の二酸化炭素濃度変化の測定結果を示す。二酸化炭素供給装置よりビニールハウス内に二酸化炭素を供給すると(0~25分)、二酸化炭素濃度が上昇している。その後、二酸化炭素の供給を停止すると植物の光合成で緩やかに二酸化炭素濃度が低下している。この時、全熱交換器を稼働(52~69分)させても二酸化炭素濃度の低下は閉鎖時と同じであることがわかる。また天窓を開けて換気が行われると(70分以降)、二酸化炭素濃度が急激に低下している。このことから、全熱交換器稼働時に外気がビニールハウス内に入っていないことが確認でき、本発明で温度と湿度を低下させ、適切な栽培条件に保ちながら、ビニールハウス内の二酸化炭素濃度を高濃度に維持できることが確認できた。
本発明の二酸化炭素供給装置は、植物の育成に適した二酸化炭素濃度の空気を適切な温湿度で供給することができるため、植物工場やビニールハウスなどの園芸施設に適用できる。また、外気と隔離された室内であれば、本発明の二酸化炭素供給装置を酸素や窒素など別のガスの供給装置にすることにより、園芸施設以外の他の用途にも応用できる。
1 ビニールハウス
2 二酸化炭素供給装置
3 全熱交換器
4 ダクト
5 吸込口
6 三角に張ったシート

Claims (8)

  1. 室内に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置において、循環する前記室内の空気を外気と全熱交換して前記室内に戻す全熱交換器を備えたことを特徴とする二酸化炭素供給装置。
  2. 前記二酸化炭素供給装置が前記室内の空気を用いて二酸化炭素を供給することを特徴とする二酸化炭素供給装置。
  3. 前記室内が園芸施設の室内であることを特徴とする請求項2に記載の二酸化炭素供給装置。
  4. 前記二酸化炭素供給装置と前記全熱交換器を一体型のユニットとしたことを特徴とする請求項2に記載の二酸化炭素供給装置。
  5. 請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の二酸化炭素供給装置において、前記室内の周囲に配置したダクトから、前記室内の側面または内側、または両方に向かって二酸化炭素を供給し、前記室内から前記二酸化炭素供給装置に前記室内空気を吸込むことを特徴とする二酸化炭素供給装置。
  6. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の二酸化炭素供給装置において、前記室内の植物の栽培レーンの下から床面までシートを張って空間を形成し、前記空間に前記二酸化炭素供給装置及び/又は前記全熱交換器からの空気を送風し、前記室内に供給するようにしたことを特徴とする二酸化炭素供給装置。
  7. 園芸施設において、二酸化炭素供給装置及び前記園芸施設の室内空気を外気と全熱交換して前記園芸施設の室内に戻す全熱交換器を設置したことを特徴とする園芸施設。
  8. 室内の空気を用いて二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給方法において、循環する前記室内の空気を外気と全熱交換して前記室内に戻す全熱交換器を備えたことを特徴とする二酸化炭素供給方法。
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