JP2023174535A - インクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置 - Google Patents

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健太 萩原
Kenta Hagiwara
舜介 堀江
Shunsuke Horie
広紀 小林
Hiroki Kobayashi
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Abstract

【課題】本発明は、インクの供給経路の初期充填性の向上、及び印刷画像の耐擦過性の向上を同時に担保できるインクジェット印刷方法を提供することを目的とする。【解決手段】インク収容手段に収容されたインクを、ノズルから吐出する吐出工程と、前記インクを前記インク収容手段から前記吐出手段に供給する供給工程と、を含み、前記インクが、シリコーン系界面活性剤、有機溶剤、樹脂、及び水を含有し、かつ25℃における動的表面張力σと時間tの特定の関係式を満たし、前記供給工程が、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を自由に制御することにより行われ、前記インクの吐出前における前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差、及び前記吐出工程における前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が特定の範囲であるインクジェット印刷方法である。【選択図】図2

Description

本発明は、インクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置に関する。
近年、壁紙、広告、看板等の産業用途において、テキスタイル、キャンパス生地等の浸透性基材が使用されており、このような浸透性基材に用いられるインクが種々開発されている。
このようなインクとしては、例えば、溶媒として有機溶剤を用いた溶剤系インク、重合性モノマーを主成分とする紫外線硬化型インクなどが広く用いられている。しかし、前記溶剤系インクは、有機溶剤の蒸発による環境への影響が懸念される。また、前記紫外線硬化型インクは、安全性の面から使用する重合性モノマーの選択肢が限られる場合がある。そこで、環境負荷が少なく、浸透性基材に直接記録できる水性インクを含むインクセットが提案されている。
一方、インクジェット記録装置において、供給経路の初期充填性を向上させる際に、吐出部に係る圧力とインク収容部に係る圧力の差で定義される負圧でノズル孔の列を充填する吸引機構を有するものが開発されている。例えば、インクを供給する供給口と、当該供給口からインクの供給を中継する共通液室と、当該共通液室と連通し、かつインクを加圧する圧力を発生するための圧力発生手段を有する複数の個別液室と、当該複数の個別液室と連通してインク滴を吐出する複数のノズル孔とを有する記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置であって、前記ノズル孔の列を負圧で充填する吸引機構を有し、前記ノズル孔の列の全長が1.5インチ~4インチの範囲にあり、かつ、前記インクは消泡剤を含有していることを特徴とするインクジェット記録装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
本発明は、インクの供給経路の初期充填性の向上、及び印刷画像の耐擦過性の向上を同時に担保できるインクジェット印刷方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明のインクジェット印刷方法は、インク収容手段に収容されたインクを、ノズル形成面を有する吐出手段のノズルから吐出する吐出工程と、
前記インクを前記インク収容手段から前記吐出手段に供給する供給工程と、
を含み、
前記インクが、少なくともシリコーン系界面活性剤、有機溶剤、樹脂、及び水を含有し、
前記インクが、下記式(1)で示される25℃における動的表面張力σと時間tの関係式を満たし、
σ=a×Log10(t)+b ・・・ 式(1)
(前記式(1)中、a及びbは定数を示し、定数aは-17.5以上-5.9以下であり、定数bは38.0以上68.1以下であり、σは25℃におけるインクの動的表面張力(単位:mN/m)を示し、tは時間(単位:ミリ秒)を示す)
前記供給工程が、
前記ノズル形成面を蓋部材で覆うことで閉空間を形成し、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を自由に制御すること、及び
前記ノズル形成面において前記蓋部材を開くことで開空間を形成し、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を大気圧と同様にすること、で成立し、
前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が70mmAq以上120mmAq以下であり、
前記吐出工程における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が30mmAq以上80mmAq以下であり、
前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が、前記吐出工程における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差以上である、ことを特徴とする。
本発明によれば、インクの供給経路の初期充填性の向上、及び印刷画像の耐擦過性の向上を同時に担保できるインクジェット印刷方法を提供することができる。
図1は、本発明に係るインクジェット印刷装置の払拭手段の模式的な構成の一例を説明する図である。 図2は、本発明に係るインクジェット印刷装置の供給手段の形態の一例を示す基本構成図である。 図3は、本発明に係るインクジェット印刷装置の供給手段の形態の一例の作用を説明する図である。 図4は、本発明に係るインクジェット印刷装置の実施形態の構成例を概略的に示す斜視透視図である。 図5は、本発明に係るインクジェット印刷装置の実施形態の構成例を側面方向から示す模式図である。 図6は、本発明に係るインクジェット印刷装置の概略構成例を示す平面図である。 図7は、本発明に係るインクジェット印刷装置の機能構成を例示するブロック図である。
(インクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置)
本発明のインクジェット印刷方法は、インク収容手段に収容されたインクを、ノズル形成面を有する吐出手段のノズルから吐出する吐出工程と、
前記インクを前記インク収容手段から前記吐出手段に供給する供給工程と、
を含み、
前記インクが、少なくともシリコーン系界面活性剤、有機溶剤、樹脂、及び水を含有し、
前記インクが、下記式(1)で示される25℃における動的表面張力σと時間tの関係式を満たし、
σ=a×Log10(t)+b ・・・ 式(1)
(前記式(1)中、a及びbは定数を示し、定数aは-17.5以上-5.9以下であり、定数bは38.0以上68.1以下であり、σは25℃におけるインクの動的表面張力(単位:mN/m)を示し、tは時間(単位:ミリ秒)を示す)
前記供給工程が、
前記ノズル形成面を蓋部材で覆うことで閉空間を形成し、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を自由に制御すること、及び
前記ノズル形成面において前記蓋部材を開くことで開空間を形成し、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を大気圧と同様にすること、で成立し、
前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が70mmAq以上120mmAq以下であり、
前記吐出工程における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が30mmAq以上80mmAq以下であり、
前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が、前記吐出工程における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差以上であることを特徴とし、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明のインクジェット印刷装置は、インクを収容するインク収容手段と、
前記インクをノズルから吐出させるノズル形成面を有する吐出手段と、
前記ノズル形成面を覆う蓋部材と、
前記インクを前記インク収容手段から前記吐出手段に供給する供給手段と、
を有するインクジェット印刷装置において、
前記インクが、少なくともシリコーン系界面活性剤、有機溶剤、樹脂、及び水を含有し、
前記インクが、下記式(1)で示される25℃における動的表面張力σと時間tの関係式を満たし、
σ=a×Log10(t)+b ・・・ 式(1)
(前記式(1)中、a及びbは定数を示し、定数aは-17.5以上-5.9以下であり、定数bは38.0以上68.1以下であり、σは25℃におけるインクの動的表面張力(単位:mN/m)を示し、tは時間(単位:ミリ秒)を示す)
前記供給手段が、
前記ノズル形成面を前記蓋部材が覆う場合に形成される閉空間において、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を自由に制御する圧力制御部、及び
前記ノズル形成面を前記蓋部材が覆っていない場合に形成される開空間において、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を大気圧と同様にする大気開放部、を有しており、
前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が70mmAq以上120mmAq以下であり、
前記インクの吐出中における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が30mmAq以上80mmAq以下であり、
前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が、前記インクの吐出中における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差以上である、ことを特徴とし、更に必要に応じてその他の手段を有する。
従来から、インクの供給経路の初期充填性を向上させる際に、ノズル孔の列を負圧で充填する吸引機構を有するインクジェット印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、印刷画像の耐擦過性を担保するために、浸透性基材、特に表面の粗い壁紙に対し、樹脂を高濃度含有する水性インクを用いて印刷する場合、上述の方法を用いても供給経路の初期充填性が低下するという課題が存在する。
本発明者らは、特許文献1の従来技術では、ノズル孔の列を負圧で充填する吸引機構を有することで、供給経路内におけるインクの初期充填性を向上させているが、浸透性基材に樹脂を高濃度含有する水性インクを用いて印刷する場合、供給経路内におけるインクの初期充填性と印刷画像の耐擦過性を同時に向上させることができないという問題があることを知見し、本発明のインクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法を見出した。
本発明のインクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法は、少なくともシリコーン系界面活性剤、有機溶剤、樹脂、及び水を含有するインクを用い、該インクの供給経路内の負圧を制御することにより、浸透性基材に印刷した場合であっても、印刷画像の耐擦過性、及びインクの供給経路内におけるインクの初期充填性を同時に向上させることができる。
浸透性基材に印刷した場合における印刷画像の耐擦過性は、前記インク、好ましくは水性インク中に高濃度の樹脂を含有させることで向上することができる。前記樹脂は、印刷工程を通じて乾燥されることにより、印刷画像の最表面に被膜される。被膜された樹脂が外部の物理的な応力や刺激に対する緩衝材として機能することにより、印刷画像の耐擦過性が担保される。
前記樹脂を高濃度含有する水性インクを用いて印刷する場合、ノズル形成面を蓋部材が覆う場合に形成される閉空間において、吐出手段とインク収容手段との間(以下、「インク収容手段-吐出手段間」と称することがある)の圧力を自由に制御する圧力制御部、及び、ノズル形成面を蓋部材が覆っていない場合に形成される開空間において、吐出手段とインク収容手段との間(インク収容手段-吐出手段間)の圧力を大気圧と同様にする大気開放部を用いて、インクの吐出前(本明細書において、「インク初期充填時」と称することがある)及び前記吐出工程におけるインクの吐出中のインク収容手段-吐出手段間の負圧差を可逆的に変更することによって、供給経路内におけるインクの初期充填性が向上する。また、供給経路の負圧制御に伴い、インクの動的表面張力を制御することで吐出信頼性の向上につながる。
本発明のインクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法では、インク初期充填時におけるインク収容手段-吐出手段間の負圧差を、吐出工程のインクの吐出時におけるインク収容手段-吐出手段間の負圧差以上に設定することにより、樹脂含有比率が多い水性インクに対する高い吐出信頼性が担保される。
前記インク初期充填時におけるインク収容手段-吐出手段間の負圧差は、70mmAq以上120mmAq以下であり、90mmAq以上110mmAq以下であることが好ましい。前記インク初期充填時におけるインク収容手段-吐出手段間の負圧差が70mmAq未満又は120mmAqを超えると、インクの初期充填性が悪くなる。
前記インクの吐出時におけるインク収容手段-吐出手段間の負圧差は、30mmAq以上80mmAq以下であり、40mmHg以上60mmHg以下であることが好ましい。前記インクの吐出時におけるインク収容手段-吐出手段間の負圧差が30mmAq未満又は80mmAqを超えると、ノズル抜けが発生する。
前記インク収容手段-吐出手段間の負圧差は、後述の通り、前記供給工程及び前記供給手段により調整することができる。
前記負圧の測定方法として、例えば、インク収容手段-吐出手段間に圧力センサを設置し、直接負圧を測定する方法、インク収容手段及び吐出手段の位置ポテンシャルを制御し、インク収容手段-吐出手段間の位置エネルギー差から間接的に負圧を算出する方法などが挙げられる。
換言すると、本発明において「負圧」とは、下記式(2)により表すことができる。
負圧=吐出手段のノズル形成面にかかる圧力-インク収容手段に係る圧力 ・・・ 式(2)
したがって、本発明のインクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法は、少なくともシリコーン系界面活性剤、有機溶剤、樹脂、及び水を含有するインクを用い、前記インクの動的表面張力σを制御し、インクジェット印刷装置の構成要素である供給手段内で、インク初期充填時及びインクの吐出時におけるインク収容手段-吐出手段間の負圧差を制御することによって、供給経路内におけるインクの初期充填性と印刷画像の耐擦過性を同時に向上させることができる。
本発明におけるインクジェット印刷方法は、少なくとも吐出工程及び供給工程を含み、更に払拭工程及び加熱工程を含むことが好ましく、更に必要に応じて、被印刷物の給送、搬送、排出に係わる工程、前処理工程、後処理工程等のその他の工程を含んでいてもよい。
本発明におけるインクジェット印刷装置は、少なくともインク収容手段、ノズル形成面を有する吐出手段、蓋部材、及び供給手段から構成され、更に前記ノズル形成面に付着する前記インクを払拭する払拭手段、及びインクの吐出前後に被印刷物を熱するための加熱手段を有することが好ましく、更に必要に応じて、被印刷物の給送、搬送、排出に係わる手段、前処理手段、後処理手段等のその他の手段を有していてもよい。
本発明のインクジェット印刷方法は、本発明のインクジェット印刷装置により好適に行われる。以下に、本発明のインクジェット印刷方法の説明と併せて、本発明のインクジェット印刷装置について説明する。
<インク収容手段>
前記インク収容手段は、前記インクを収容する手段である。
前記インク収容手段としては、前記インクを収容できる手段であれば、特に制限はなく、例えば、インク収容容器、インクタンクなどが挙げられる。
前記インク収容容器としては、前記インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材などを有してなる。前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じて、その形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネ-トフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを少なくとも有するものなどが挙げられる。
前記インクタンクとしては、特に制限はなく、例えば、メインタンク、サブタンクなどが挙げられる。
また、前記インク収容手段は、前記インクと、容器とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有するカートリッジであってもよい。前記カートリッジは、各色の前記インクを一体的に収容していてもよく、各色の前記インクをそれぞれ独立に収容していてもよい。前記インクカートリッジは、インク交換などの作業において、インクに直接触れる必要がなく、手指や着衣の汚れなどの心配がなく、またインクへのごみ等の異物混入を防止できる点で有利である。
<<インク>>
本発明におけるインクは、少なくともシリコーン系界面活性剤、有機溶剤、樹脂、及び水を含有し、更に必要に応じて、色材、添加剤等のその他の成分を含有する。
前記インクは、水を含有するため、主に水性インクのことを示す。以下、前記水性インクが含有する各成分について説明する。
-シリコーン系界面活性剤-
前記インクは、シリコーン系界面活性剤を含有する。前記シリコーン系界面活性剤をインクに添加することで、インクの表面張力が低下し、被印刷物にインク滴が着弾した後の被印刷物中への浸透が速くなるため、フェザリングやカラーブリードを軽減することができ、結果として耐擦過性の向上へつながる。
一般的に、界面活性剤は、親水基の極性によりノニオン性、アニオン性、又は両性に分類される。また、疎水基の構造により、シリコーン系、フッ素系、アセチレン系などに分類される。本発明においては、界面活性剤を1種単独で使用する場合は、シリコーン系界面活性剤が用いられるが、2種以上の界面活性剤を使用する場合は、フッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等を前記シリコーン系界面活性剤と併用してもよい。
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。これらの中でも、前記シリコーン系界面活性剤は高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物などが挙げられる。
このようなシリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学株式会社などから入手できる。
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(S-1)で表される、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
(但し、前記一般式(S-1)において、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表し、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
前記シリコーン系界面活性剤の市販品の具体例としては、KF-618、KF-642、KF-643(以上、信越化学工業株式会社製)、EMALEX SS-5602、EMALEX SS-1906EX(以上、日本エマルジョン株式会社製)、DOWSIL FZ-2105、DOWSIL FZ-2118、DOWSIL FZ-2154、DOWSIL FZ-2161、DOWSIL FZ-2162、DOWSIL FZ-2163、DOWSIL FZ-2164(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、BYK-33、BYK-387、BYK-019、BYK-025(以上、ビックケミー株式会社製)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、シルフェイス SAG503A(日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
前記シリコーン系界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記インクの全質量に対して、4.00質量%以下が好ましく、0.01質量%以上4.00質量%以下がより好ましく、0.75質量%以上3.00質量%以下が更に好ましい。前記シリコーン系界面活性剤の含有量を4.00質量%以下とすることにより、インクの白濁化を抑えると共に、初期充填性の向上に大きく貢献する。
-有機溶剤-
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性有機溶剤を用いることができる。前記水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、エーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
--多価アルコール類--
前記多価アルコール類の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオールなどが挙げられる。
--エーテル類--
前記エーテル類としては、例えば、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
--含窒素複素環化合物--
前記含窒素複素環化合物の具体例としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
--アミド類--
前記アミド類の具体例としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドなどが挙げられる。
--アミン類--
前記アミン類の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
--含硫黄化合物類--
前記含硫黄化合物類の具体例としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノールなどが挙げられる。
--炭素数8以上のポリオール化合物--
前記炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
--グリコールエーテル化合物--
前記グリコールエーテル化合物の具体例としては、多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル;エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
前記有機溶剤としては、湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
また、前記有機溶剤としては、沸点が270℃以上の有機溶剤を用いることも好ましい。沸点が270℃以上の有機溶剤を含むことで、壁紙生地への十分な定着性を確保することができと共に、ノズル近傍での乾燥を抑えて吐出不良を軽減することができる。
そのため、沸点が250℃以下の有機溶剤と沸点が270℃以上の有機溶剤を併用して用いることがより好ましい。
前記有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記インクの全質量に対して、15質量%以上含有することが好ましく、15質量%以上60質量%以下含有することがより好ましく、25質量%以上30質量%以下含有することが更に好ましい。前記有機溶剤を15質量%以上含有することにより、被印刷物への高い密着性が得られ、耐擦過性の向上に貢献する。
また、前記沸点が270℃以上の有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記インクの全質量に対して1質量%以上含有されていることが好ましい。
-樹脂-
前記インク中に含有する前記樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などの樹脂群から構成分けされ、これらの樹脂群からなる樹脂粒子を用いてもよい。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種類以上の樹脂を組み合わせて使用しもよい。これらの中でも、前記樹脂は、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂などを含有することが好ましく、ウレタン樹脂を含有することがより好ましい。また、前記インクは、2種類以上の樹脂を含有することが好ましい。
前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルジョンの状態で、有機溶剤や色材などの材料と混合してインクを得ることが可能である。
前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で使用してもよく、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いることが好ましい。
前記インク中に含有する樹脂として、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いる場合、例えば、樹脂群Aとして、ガラス転移点が50℃以上70℃以下である樹脂を含有する、又は、樹脂群Bとしてガラス転移点が-30以上0℃以下である樹脂を含有する、若しくは、前記樹脂群A及び前記樹脂群Bを併用することで、印刷画像の密着性が更に向上し、結果として高い画像堅牢性が得られるため好ましい。
前記インクにおける前記樹脂群Aの含有量に対する前記樹脂群Bの含有量の比[樹脂群B/樹脂群A](質量比)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、0.30以上5.00以下であることが好ましく、0.30以上3.00以下であることがより好ましい。前記比[樹脂群B/樹脂群A]を0.30以上5.00以下とすることによって、印刷画像の密着性が更に向上し、結果としてより高い画像堅牢性が得られる。
また、樹脂群Aとして、ガラス転移点が50℃以上70℃以下であるウレタン樹脂群Aを含有し、又は、樹脂群Bとして、ガラス転移点が-30以上0℃以下であるウレタン樹脂群Bを含有する、若しくは、前記樹脂群Aとしてのウレタン樹脂群A及び前記樹脂群Bとしてのウレタン樹脂群Bを併用することで、印刷画像の密着性が更に向上し、結果として高い画像堅牢性が得られるためより好ましい。
前記インクにおける前記ウレタン樹脂群Aの含有量に対する前記ウレタン樹脂群Bの含有量の比[ウレタン樹脂群B/ウレタン樹脂群A](質量比)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、0.30以上5.00以下であることが好ましく、0.30以上3.00以下であることがより好ましい。前記比[ウレタン樹脂群B/ウレタン樹脂群A]を0.30以上5.00以下とすることによって、印刷画像の密着性が更に向上し、結果としてより高い画像堅牢性が得られる。
なお、前記樹脂のガラス転移点は、例えば、自動示差走査熱量計(DSCシステムQ-2000、TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。
本発明においては、前記ガラス転移点の測定例として、以下の方法で実施されることが好ましい。
樹脂粒子分散液を70℃のオーブンで12時間以上加熱乾燥させ、固形分5mgをアルミニウム製の試料容器に入れて装置にセットし、窒素気流下にて以下の測定条件(1)~(4)にて測定する。また、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、中点法にてガラス転移点を求める。
(1)-70℃まで冷却後5分間保持
(2)10℃/分間で120℃まで昇温
(3)-70℃まで冷却後5分間保持
(4)10℃/分間で120℃まで昇温
前記インク中に含有するウレタン樹脂粒子の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる、ポリウレタン樹脂が好ましく、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂がより好ましい。
前記ポリウレタン樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などが挙げられる。
前記ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとポリオールとの反応性生物である。ポリウレタン樹脂の特徴として、凝集力が弱いポリオール成分からなるソフトセグメントと、凝集力の強いウレタン結合からなるハードセグメントとのそれぞれの性能を発揮することが挙げられる。前記ソフトセグメントはやわらかく、引き伸ばしや折り曲げなど基材の変形に強い。一方、前記ハードセグメントは基材に対する密着性が高く、耐摩耗性に優れている。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルジョンの状態で、有機溶剤などの材料と混合して表面処理用組成物を得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記樹脂の含有量(2種以上の樹脂を含む場合は、2種以上の樹脂の合計含有量)(固形分含有量)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、吐出信頼性や乾燥性、画像堅牢性の点から、前記インクの全質量に対して、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記樹脂粒子の体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラックWave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。本発明においては、樹脂粒子の濃度(質量濃度)が0.01質量%になるように純水で希釈したサンプルが測定に用いられることが好ましい。
-水-
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記インクにおける前記水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。また、前記インクを水性インクとする観点から、前記インクは実質的に水を含有することが好ましく、前記インクにおける前記水の含有量の下限値としては、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
-その他の成分-
前記インクにおける前記その他の成分としては、インクに使用可能な成分であれば、特に制限はなく、公知の成分を適宜使用することができ、例えば、色材、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤、pH緩衝剤、前記シリコーン系界面活性剤以外の界面活性剤などが挙げられる。
--色材--
前記色材としては、特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
前記顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、顔料として、混晶を使用してもよい。
前記顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色等の光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
前記有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。
これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
前記顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料などが挙げられる。
また、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213;C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51;C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264;C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38;C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63;C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。
前記染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、塩基性染料などが使用可能である。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料の具体例としては、C.I.アシッドイエロー17、23、42、44、79,142;C.I.アシッドレッド52,80,82,249、254、289;C.I.アシッドブルー9、45、249;C.I.アシッドブラック1、2、24、94;C.I.フードブラック1、2;C.I.ダイレクトイエロー1、12、24、33、50、55、58、86、132、142、144、173;C.I.ダイレクトレッド1、4、9、80、81、225、227;C.I.ダイレクトブルー1、2、15、71、86、87、98、165、199、202;C.I.ダイレクドブラック19、38、51、71、154、168、171、195;C.I.リアクティブレッド14、32、55、79、249;C.I.リアクティブブラック3、4、35などが挙げられる。
前記色材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、良好な耐擦過性や吐出安定性の点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
なお、前記インクは、前記色材を含有しないクリアインクとしても使用可能である。
前記顔料を分散してインクを得る方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法などが挙げられる。
前記顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えば、カーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
前記顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と換言することができる。この場合、前記インクに配合される顔料は全て樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
前記分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
前記分散剤としては、特に制限はなく、顔料に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などを使用することが可能である。
前記分散剤の具体例としては、RT-100(竹本油脂株式会社製、ノニオン系界面活性剤)、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物などが挙げられる。前記分散剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
---顔料分散体---
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合して前記インクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、及び顔料分散剤と、更に必要に応じてその他の成分とを混合して分散し、粒径を調整して得られる。前記分散は分散機を用いるとよい。
前記顔料分散体における顔料の粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度は20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。
前記顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラックWave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
顔料分散体における顔料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
顔料分散体に対し、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
--消泡剤--
前記消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
--防腐防黴剤--
前記防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
前記インク中の前記防腐防黴剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
--防錆剤--
前記防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、1,2,3-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
前記インク中の前記防錆剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
--pH調整剤--
前記pH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、pHを7以上に調整することが可能なものが好ましく、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
--pH緩衝剤--
前記pH緩衝剤としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸などが挙げられる。
--シリコーン系界面活性剤以外の界面活性剤--
前記インクに用いられる界面活性剤として、少なくともシリコーン系界面活性剤が用いられるが、複数の界面活性剤が用いられる場合は、前記シリコーン系界面活性剤と共に、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及びアニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
---フッ素系界面活性剤---
前記フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フッ素置換した炭素の数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素の数が4~16の化合物がより好ましい。
これらの中でも、前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが、起泡性が小さいので好ましく用いられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩などが挙げられる。
これらのフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、例えば、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
これらの中でも、前記フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいため好ましく、下記一般式(F-1)及び下記一般式(F-2)で表されるフッ素系界面活性剤が特に好ましい。
(但し、前記一般式(F-1)において、m及びnは、それぞれ独立に、整数を表す。)
前記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するために、mは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
(但し、前記一般式(F-2)において、Yは、H、C2m+1(但し、mは1~6の整数)、CHCH(OH)CH-C2m+1(但し、mは4~6の整数)、又はC2p+1(但し、pは1~19の整数)を表し、nは1~6の整数を表し、aは4~14の整数を表す。)
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロン(登録商標)S-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(以上、AGCセイミケミカル株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(以上、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(以上、DIC株式会社製);ゾニール(Zonyl)(登録商標)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(以上、Chemours社製);フタージェント(FT)-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(以上、株式会社ネオス製)、ポリフォックス(PF)-136A、PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(以上、オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のPF-151N、及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
---両性界面活性剤---
前記両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
---ノニオン系界面活性剤---
前記ノニオン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
---アニオン系界面活性剤---
前記アニオン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記インク中における前記シリコーン系界面活性剤以外の界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、前記インクの全質量に対して、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
-インクの物性-
前記インクの物性として、例えば、動的表面張力、静的表面張力、粘度、pH、インク中の固形分の粒径などが挙げられる。
--動的表面張力--
前記インクは、下記式(1)で示される25℃における動的表面張力σと時間tの関係式を満たす。前記インクが下記式(1)を満たすことにより、前記供給手段内へのインクの初期充填性が担保される。
σ=a×Log10(t)+b ・・・ 式(1)
(前記式(1)中、a及びbは定数を示し、定数aは-17.5以上-5.9以下であり、定数bは38.0以上68.1以下であり、σは25℃におけるインクの動的表面張力(単位:mN/m)を示し、tは時間(単位:ミリ秒)を示す)
前記インクの25℃における寿命時間15ミリ秒時の動的表面張力σとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30.0mN/m以上45.0mN/m以下であることが好ましく、30.0mN/m以上45.0mN/m以下であることがより好ましい。前記インクの25℃における寿命時間15ミリ秒時の動的表面張力σが、30.0mN/m以上45.0mN/m以下であると、前記吐出工程や前記供給工程に対して適応することでインク初期充填の安定性が担保される。
前記インクの25℃における寿命時間150ミリ秒時の動的表面張力σとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25.0mN/m以上35.0mN/m以下であることが好ましく、25.0mN/m以上35.0mN/m以下であることがより好ましい。前記インクの25℃における寿命時間150ミリ秒時の動的表面張力σが、25.0mN/m以上35.0mN/m以下であると、前記吐出工程や前記供給工程に対して適応することでインク初期充填の安定性が担保される。
前記インクの25℃における寿命時間1,500ミリ秒時の動的表面張力σとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30.0mN/m以下であることが好ましい。前記インクの25℃における寿命時間1,500ミリ秒時の動的表面張力σが、30.0mN/m以下であると、前記吐出工程や前記供給工程に対して適応することでインク初期充填の安定性が担保される。
前記インクの動的表面張力σは、前記シリコーン系界面活性剤の種類や添加量により制御することが可能である。
前記インクの動的表面張力σは、周知慣用の方法を用いて測定することができるが、本発明では最大泡圧法によって測定された値であることが好ましい。最大泡圧法による動的表面張力の測定装置は市販されており、例えば、動的表面張力計(Dynoteter、SITA社製)などが挙げられる。
最大泡圧法とは、測定する液体に浸漬させたプローブの先端部分から気泡を放出させ、泡を放出するために必要な最大圧力から表面張力を求める方法である。気泡の半径がプローブ先端の半径に等しくなるとき、最大圧力を示し、このときのインクの動的表面張力σは下記式(3)で示される。
σ=(ΔP・r)/2 ・・・ 式(3)
(前記式(3)中、rはプローブ先端の半径を示し、ΔPは気泡にかかる最大圧力と最小圧力との差を示す。)
また、本明細書における「寿命時間」とは、最大泡圧法において、気泡がプローブの先端から離れて、新しい表面が形成されてから次の最大泡圧までの時間を言う。
--静的表面張力--
前記インクの25℃における静的表面張力としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、10.0mN/m以上30.0mN/m以下であることが好ましい。前記インクの25℃における静的表面張力が、10.0mN/m以上30.0mN/m以下であると、前記吐出工程や前記供給工程のみならず、汎用的なものに対しても、インク初期充填の安定性が担保される。
前記インクの静的表面張力は、前記シリコーン系界面活性剤の種類や添加量により制御することが可能である。
前記インクの静的表面張力は、周知慣用の方法を用いて測定することができるが、本発明ではWilhelmy法によって測定されるものであることが好ましい。Wilhelmy法による静的表面張力の測定装置は市販されており、例えば、自動表面張力計(DY-300、協和界面科学株式会社製)などが挙げられる。
--粘度--
前記インクの粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性及び初期充填性が得られる点から、25℃における粘度が、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、6.5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。
前記インクの粘度は、例えば、回転式粘度計(RE-80L、東機産業株式会社製)を用いて測定することができる。この場合の測定条件としては、標準コーンローター(1°34’×R24)、測定サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間である。
--pH--
前記インクのpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
--電導度--
前記インクの電導度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、接液する金属部材の腐食防止の観点から、3,000ミリ秒/m以下が好ましく、1,000ミリ秒/m以下がより好ましく、100ミリ秒/m以下が更に好ましい。
--固形分の粒径--
前記インク中の固形分の粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、前記インク中の固形分の粒径の最大頻度が最大個数換算で20nm以上1,000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。前記固形分としては、前記樹脂粒子や前記顔料の粒子などが含まれる。
前記インク中の固形分の粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラックWave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記インク中に含有される各成分の定性方法又は定量方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などが挙げられる。前記ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による測定装置としては、例えば、GCMS-QP2020NX(株式会社島津製作所製)などが挙げられる。
前記インク中に含有される水分量は、一般的な方法として、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による揮発成分の定量や、熱重量・示差熱同時測定法(TG-DTA)による質量変動等により測定することができる。
なお、前記水性インクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
なお、前記インクの用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。更に、前記インクは、2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段、乾燥手段等を備えるものを使用することができる。前記立体造形物には、前記インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物及び構造体に対して、加熱延伸、打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーター、操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
<吐出工程及び吐出手段>
前記吐出工程は、前記インク収容手段に収容されたインクを、ノズル形成面を有する吐出手段のノズルから吐出する工程である。
前記吐出手段は、前記インクをノズルから吐出させるノズル形成面を有する手段であり、更に加圧室及び刺激発生部を有することが好ましい。
前記吐出工程及び前記吐出手段により、前記インクを吐出して印刷層を形成する。
-ノズル形成面-
前記ノズル形成面は、ノズル基板と、前記ノズル基板上に付された撥インク膜とを有する。
-加圧室-
前記加圧室は、前記ノズル形成面に設けられた複数の前記ノズル孔に個別に対応して配置され、前記ノズル孔と連通する複数の個別流路であり、インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室などと称することもある。
-刺激発生部-
前記刺激発生部は、インクに印加する刺激を発生する部材である。
前記刺激発生部における刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱(温度)、圧力、振動、光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
前記刺激発生部としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。前記刺激発生部としては、具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
前記刺激が「熱」の場合、前記吐出手段内のインクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを、例えば、サーマルヘッド等を用いて付与する。前記熱エネルギーにより前記インクに気泡を発生させ、前記気泡の圧力により、前記ノズル基板の前記ノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
前記刺激が「圧力」の場合、例えば、前記吐出手段内のインク流路内にある前記圧力室と呼ばれる位置に接着された前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記圧電素子が撓む。それにより、前記圧力室の容積が収縮して、前記吐出手段の前記ノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。これらの中でも、ピエゾ素子に電圧を印加してインクを飛翔させるピエゾ方式が好ましい。
<払拭手段及び払拭工程>
前記払拭手段は、前記ノズル形成面に付着する前記インクを払拭する手段である。
前記払拭工程は、前記払拭手段により好適に行われる。
払拭手段の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不織布、織布、編布、多孔質体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記不織布、織布、編布などの繊維の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、綿、麻、絹、パルプ、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、レーヨン、キュプラ、アクリル、ポリ乳酸などが挙げられる。1種類の繊維からなる不織布だけではなく、複数種類の繊維が混ざった不織布でもよい。
なお、前記払拭手段は多孔質体で構成されることが好ましい。
前記多孔質体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン、ポリオレフィン、PVAなどが挙げられる。
前記不織布の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、ウェブの形成として、例えば、湿式や乾式、スパンボンド、メルトブローン、フラッシュ紡糸などの方法が挙げられる。また、前記ウェブの結合として、例えば、スパンレースやサーマルボンド、ケミカルボンド、ニードルパンチなどの方法が挙げられる。
以下に図1を用いて前記払拭手段について具体的に説明するが、本発明における払拭手段はこれに限られるものではない。図1は、前記払拭手段の模式的な構成の一例を説明する図である。
図1に示す通り、払拭手段320に洗浄液を一定量塗布した後、払拭手段320がノズル形成面6nに押し当てられながらクリーニングユニットと吐出手段が相対的に移動することでノズル形成面6nに付着した異物500を払拭する。
ノズル形成面6nに付着する異物500としては、ノズルからインクを吐出した際に発生するミストインクや、クリーニング等でノズルからインクを吸引したときに付着するインク、ミストインクや蓋部材に付着したインクがノズル形成面で乾燥した固着インク、被印刷物から発生する紙粉などが挙げられる。
前記洗浄液は、予め払拭手段に含ませておいてもよい。また、シーケンスによっては、前記洗浄液を塗布せずに払拭してもよい。特に、長時間の待機などによりノズル形成面でインクが乾燥し、固着していると想定されるときには、洗浄液を含んだシート状の払拭手段320でノズル形成面6nを複数回払拭して取り除くことが望ましい。
<蓋部材>
前記蓋部材は、前記吐出手段のノズル面を覆う部材である。前記蓋部材をノズル形成面に密着させることで、該蓋部材とノズル形成面とが密着状態になり、インク収容手段-吐出手段間内の空間が閉空間となる。また、前記蓋部材によって密着状態にあるノズル形成面から該蓋部材を取り外すことにより、インク収容手段-吐出手段間内の空間が開空間となる。
換言すると、本明細書における「閉空間」とは、前記蓋部材と前記ノズル形成面とを密着状態にすることで得られるインク収容手段-吐出手段間内の空間を意味する。また、本明細書における「開空間」とは、前記蓋部材と前記ノズル形成面とを非密着状態にすることで得られるインク収容手段-吐出手段間内の空間を意味する。
前記閉空間及び前記開空間は自由に生み出すことができるが、前記インクの吐出後においては、前記吐出手段の表面に位置するノズル形成面を前記払拭手段で払拭した後に蓋部材を覆うことが好ましく、前記吐出手段の表面に位置するノズル形成面を前記払拭手段で払拭した後、及び、前記蓋部材を前記払拭手段で払拭した後又は任意の方法でクリーニングした後に蓋部材を覆うことがより好ましい。ここで、「クリーニング」とは、前記払拭手段による払拭のみならず、洗浄等も含む広義の概念を示す。
前記蓋部材の材質としては、前記閉空間及び前記開空間を生み出すことができるものであれば、特に制限はない。
<供給工程及び供給手段>
前記供給工程は、前記インクを前記インク収容手段から前記吐出手段に供給する工程である。前記供給工程は、前記ノズル形成面を蓋部材で覆うことで閉空間を形成し、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を自由に制御すること、及び、前記ノズル形成面において前記蓋部材を開くことで開空間を形成し、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を大気圧と同様にすることにより行われる。
前記供給手段は、前記インクを前記インク収容手段から前記吐出手段に供給する手段であり、少なくとも圧力制御部及び大気開放口から構成される。
前記供給工程は、前記供給手段により好適に行われる。
-圧力制御部-
前記圧力制御部は、前記ノズル形成面を前記蓋部材が覆う場合に形成される閉空間において、前記吐出手段と前記インク収容手段との間(インク収容手段-吐出手段間)の圧力を自由に制御する部材である。
前記インク収容手段-吐出手段間の圧力制御方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、前記インク収容手段及び前記吐出手段の水頭差(位置ポテンシャル、負圧)を制御する方法;空気ポンプと圧力センサを用いて制御する方法、任意のポンプと大気開放弁を用いて制御する方法など様々な方法が挙げられる。これらの中でも、前記圧力制御部は、任意のポンプと大気開放弁を用いて制御する方法で圧力制御が設定されることが、負圧制御の簡便性の観点から好ましい。
前記任意のポンプとしては、例えば、チュービングなどが挙げられる。
-大気開放部-
前記大気開放部は、前記ノズル形成面を前記蓋部材が覆っていない場合に形成される開空間において、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を大気圧と同様にする部材である。前記大気開放部は、開閉可能である。
前記供給手段は、この大気開放部の開閉と、前記圧力制御部によって、インク収容手段-吐出手段間に負圧が発生する構成となっている。
前記インクジェット印刷装置における前記大気開放部の設置場所としては、前記供給手段内であれば、特に制限はないが、前記吐出手段又は前記収容手段に設置されることが、ユーザの操作性の観点で好ましい。
また、前記大気開放部は、ばね部材やゴム部材等により密閉状態を維持する大気開放弁が設けられていることが好ましい。
前記大気開放部を有する供給手段にあっては、更に外部から液体を注入するための液体注入部を有することが好ましく、大気開放部よりも液体注入部が低い位置に設けられていることが更に好ましい。また、液体注入部からの液体の逆流を防止する逆流防止部材、例えば、逆流方向への液体の流れを阻止する弁部材又は流体抵抗の大きな流体抵抗部材が設けられることが好ましい。
更に、前記供給手段の内部上方には、少なくとも2個の検知電極が異なる深さに設けられていることが好ましい。また、液体注入部と大気開放部とを有する液体容器にあっては、少なくも2個の検知電極の内の1つの検知電極は大気開放口に連通する空気抜き流路内に設けられていることが好ましい。
以下に図2から図4を用いて前記供給手段の実施形態例について具体的に説明するが、本発明における供給手段はこれに限られるものではない。なお、図2は、インク収容容器を含む供給手段の形態の一例を示す基本構成を説明する説明図である。図3は、図2の供給手段の作用説明に供する説明図である。図4は、吐出手段を備えるインクジェット印刷装置100の概略構成を斜め上方向から一部透視して示す図(斜視透視図)である。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
図2から図4に示す実施形態では、インク収容容器41には内部を大気に開放する大気開放部47を設け、この大気開放部47には大気開放弁48を設けて大気開放部47を開閉可能としている。
そして、このインク収容容器41を含み、インク収容容器41に必要に応じてインクを補充する供給手段は、インク収容容器41のフィルム43を圧縮ばね44に抗して押圧し、押圧を解除するための進退自在のプランジャ31aを有する、ソレノイドアクチュエータなどからなる駆動手段である押圧手段31を備えている。なお、駆動手段としての押圧手段31としては、ソレノイドアクチュエータ等の駆動素子を直接用いてもよいし、リンク機構等を介して機能させることもできる。
また、大量にインクを収納したインク補充手段であるメインカートリッジ32を備え、このメインカートリッジ32とインク収容容器41のインク注入口45とを供給チューブ33で接続し、この供給チューブ33の途中にはメインカートリッジ32のインクを圧送するための補充ポンプ34及びインク補充経路を開閉するための補充バルブ35を設けている。
このように構成したインク収容容器41を含む供給手段において、インク収容容器41にインクを初期充填するには、図4に示すように、先ず、ノズル形成面6nを蓋部材としてのキャップ部80aに密着させていないことにより開空間を発生させた後、図2に示すように、大気開放弁48を開いて大気開放部47を開放し、インク収容容器41内を大気解放する。次いで、押圧手段31を駆動してプランジャ31aを進出させ、インク収容容器41のフィルム43を圧縮ばね44の付勢力に抗して外側から負圧が70mmAq以上120mmAq以下、好ましくは90mmAq以上110mmHg以下となるよう押圧し、インク収容容器41の容積を減少させる。
そして、この状態で補充バルブ35を開き、補充ポンプ34を動作させて、供給チューブ33を介してインク収容容器41内にメインカートリッジ32内のインクを圧送して、インク収容容器41に所要量のインクを補充する。インク補充が完了したら、補充ポンプ34を停止させると共にバルブ35を閉じて供給チューブ33による供給系を遮断し、また、ノズル形成面6nをキャップ部80aに密着させることにより閉空間を発生させ、大気開放弁48を閉じてインク収容容器41の大気開放経路を遮断する。
その後、図3に示すように、押圧手段31を非駆動状態にしてプランジャ31aを引いて(後退させて)離間させることにより、圧縮ばね44の復元力によってフィルム43が外方に押され、インク収容容器41内に負圧が発生する。次いで、ノズル形成面6nをキャップ部80aに密着させていないことにより開空間を発生させた後、大気開放弁48を開いて大気開放部47を開放しインク収容容器41内を大気解放し、負圧が30mmAq以上80mmAq以下、好ましくは40mmAq以上60mmHg以下となるよう調整する。以上の過程を以て、インクを吐出手段6から吐出する工程へと遷移する。
このようにインク収容容器41の大気開放部47の開閉と容積変化によって負圧を発生させるので、インク補充の際の捨てインク増大やメインカートリッジ内のインク品質低下等が生じることなくインク収容容器41にインクを補充することができる。
<加熱工程及び加熱手段>
前記加熱工程は、インクの吐出前後に被印刷物を熱する工程である。
前記加熱手段は、インクの吐出前後に被印刷物を加熱する手段である。
前記加熱工程は、前記加熱手段により好適に行われる。
前記加熱手段としては、被印刷物の印刷面や裏面を加熱及び/又は乾燥する手段が含まれ、例えば、赤外線ヒーター、温風ヒーター、加熱ローラなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記被印刷物を乾燥させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクが付与された被印刷物に加熱手段として温風等の加熱された流体を接触させる方法、インクが付与された被印刷物と加熱手段とを接触させ伝熱により加熱する方法、赤外線や遠赤外線等のエネルギー線を照射することによりインクが付与された被印刷物を加熱する方法などが挙げられる。
加熱は、印刷前、印刷中、及び印刷後の少なくともいずれかに行うことができる。印刷前又は印刷中の加熱により、加温した被印刷物に印刷することが可能となる。また、印刷後の加熱では、印刷物を乾燥することができる。
加熱の時間としては、被印刷物の表面温度が所望温度に制御することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。加熱時間の制御は、被印刷物の搬送速度を制御することにより行うことが好ましい。
<<被印刷物>>
本明細書において、「被印刷物」とは、前記インク、更に必要に応じて、前処理液や後処理液等の各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
前記被印刷物としては、普通紙、光沢紙、特殊紙等の記録媒体用途のものに限られず、例えば、壁紙、床材、タイル等の建材;Tシャツ等の衣料用布;テキスタイル;皮革などの中から適宜選択することができる。なお、前記被印刷物を搬送する経路の構成を調整することにより、該被印刷物として、セラミックス、ガラス、金属などを使用することもできる。これらの中でも、前記被印刷物としては、普通紙、光沢紙、特殊紙、壁紙、布、テキスタイル等の浸透性基材を用いることが好ましく、壁紙がより好ましい。
前記壁紙の具体例としては、紙系壁紙、繊維系壁紙、塩化ビニル樹脂系壁紙、プラスチック系壁紙、無機質系壁紙、その他の特有壁紙などが挙げられる。
前記浸透性基材とは、水透過性及び吸収性が高い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30ミリ秒1/2までの水吸収量が10mL/m以上である基材をいう。
前記被印刷物の浸透性は、前記インクを前記被印刷物の上に吐出されたインクの容積の変化から定義できる。具体的には、被印刷物上に吐出された容積2.5μLの前記インクの液滴が、容積0.1μL以下に減容するまでの時間が、25℃で10.0秒間以下である被印刷物を浸透性基材として扱う。
前記被印刷物の浸透性の評価は、接触角を測定することにより行うことができる。前記被印刷物の浸透性の評価に用いる接触角計としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Dmo-5-1(協和界面科学株式会社製)などが挙げられる。測定の際には、シリンジニードルを装着したシリンジから2.5μLの前記インクを押し出し、液滴法により前記被印刷物上に前記インクを吐出して容積の変化を測定する。前記シリンジニードルは測定の再現性の向上のためにテフロン(登録商標)製のシリンジニードルを用いることが好ましい。前記被印刷物上に前記インクを乗せた後のある時間における前記インクの容積は、下記式(4)により算出することができる。
・・・ 式(4)
前記式(4)において、V(t)は、ある時間における前記被印刷物上の前記インクの体積(単位:μL)を示し、Rv(t)は、ある時間における前記被印刷物上の前記インク液滴の半径(単位:mm)を示し、θ(t)は、ある時間における前記被印刷物上の前記インク液滴の接触角(単位:ラジアン)を示す。前記Rv(t)及び前記θ(t)は、接触角計を用いて測定することができる。本発明においては、前記θ(t)は、θ/2法を用いて求めた値を用いることとする。
前記インクジェット印刷方法及び前記インクジェット印刷装置では、算術平均表面粗さが10μm以上30μm以下の被印刷物を用いることが好ましく、算術平均表面粗さが10μm以上30μm以下の浸透性基材を用いることがより好ましく、算術平均表面粗さが10μm以上30μm以下の壁紙を用いることが更に好ましい。
前記算術平均表面粗さとは、表面の凸凹の平均値を基準線として、その区間の基準線からの距離の平均値のことを表す。前記算術平均表面粗さは、周知慣用の方法を用いて測定することができるが、本発明では走査型白色干渉顕微鏡を用いてISO 25178に準拠して測定されることが好ましい。走査型白色干渉顕微鏡は市販されており、例えば、VS1550(日立ハイテクサイエンス株式会社製)などが挙げられる。
前記インクジェット印刷装置としては、特に限定しない限り、吐出手段を移動させるシリアル型装置、吐出手段を移動させないライン型装置のいずれも含まれる。更に、前記インクジェット印刷装置には、卓上型だけでなく、広幅の記録装置や、例えば、ロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
また、前記インクジェット印刷方法及び前記インクジェット印刷装置は、前記インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するものも含まれる。
以下に図4から図7を用いて本発明のインクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法の一例について具体的に説明するが、本発明における払拭手段はこれに限られるものではない。図4は、吐出手段を備えるインクジェット印刷装置100の概略構成を斜め上方向から一部透視して示す図(斜視透視図)である。図5は、本発明のインクジェット印刷装置100を側面方向から示す模式図である。図6は、本発明のインクジェット印刷装置100が備える画像形成部104の要部を一部透視して示す平面図である。図7は、本発明のインクジェット印刷装置の機能構成を例示するブロック図である。
以下のインクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法の実施態様の一例の説明では、ブラック(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、及びイエロー(Y)インクを用いた場合について説明するが、これらに代えて、あるいは、これらに加えて、オレンジ(Or)インク、グリーン(Gr)インク、ホワイト(Wh)インク、レッド(R)インク、グリーン(Gr)インク、ブルー(Bl)インク、並びに前記色材を含有しないクリア(Cl)インクなどの特殊インクを用いることもできる。
インクジェット印刷装置の一例としてのインクジェット印刷装置100は、液体カートリッジの脱着を制限する脱着制限部材を差し込み式にすることで、脱着制限部材を液体カートリッジ内のインク袋に傾斜を付与する傾斜付与部材としても用いることができる構成を備える。この構成によって、インクエンド時の液体残り量を削減するための傾斜付与部材を新たに設ける必要がなくなり、コストを削減することができる。また、脱着制限部材の状態によって、インク袋への傾斜の付与が確実に行われていることを容易に視認でき、ユーザの操作性も向上する。
給送装置102には、中空軸部115に用紙が巻かれたロール体112が保持されている。巻取装置103には、用紙を巻き取る中空軸部114が備えられていて、この中空軸部114にロール体112が巻き取られる。なお、給送装置102及び巻取装置103は、装置本体101と別体でなく一体的に構成してもよい。
給送装置102は、ロールメディア120を装置本体101の内部に供給する。装置本体101の内部には、図5中の矢印のB方向で示される搬送方向に供給されたロールメディア120に画像を形成する画像形成部104が配置されている。
画像形成部104は、両側板にガイド部材であるガイドロッド1及びガイドステー2が掛け渡され、これらのガイドロッド1及びガイドステー2にキャリッジ5が図4中の矢印のA方向で示される主走査方向へ移動可能に支持される。巻取装置103は、画像が形成されたロールメディア120を巻き取る。
主走査方向の一方側にはキャリッジ5を往復移動させる駆動源である主走査モータ8が配置されている。この主走査モータ8によって回転駆動される駆動プーリ9と主走査方向の他方側に配置された従動プーリ10との間にタイミングベルト11が掛け回されている。このタイミングベルト11にキャリッジ5のベルト保持部が固定され、主走査モータ8を駆動することによってキャリッジ5を主走査方向に往復移動させる。
キャリッジ5には、吐出手段及び当該吐出手段にインクを供給するサブタンクを一体にした複数の吐出手段6(6a~6d)が搭載されている。また、キャリッジ5には、吐出手段6からインクが吐出される位置にロールメディア120などの被印刷物があるか否かを検知する被印刷物検知センサ6sが搭載されている。本実施形態では、キャリッジ5に4つの吐出手段6が搭載されているものを例示しているが、吐出手段6の数は、これに限定されるものではない。
また、図6に例示するように、インクジェット印刷装置100は、吐出手段6aと吐出手段6b、6c、及び6dのキャリッジ5における搭載位置を、主走査方向と直交する副走査方向に1ヘッド分(1ノズル列分)位置をずらして搭載している。なお、吐出手段6(6a~6d)は、インクを吐出する複数のノズルからなるノズル列を副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて搭載している。
また、吐出手段6はいずれも複数(例えば2列)のノズル列を有している。そして、吐出手段6a及び6bについては、いずれのノズル列からも同色であるブラックインクを吐出する。吐出手段6cは、一方のノズル列からシアンインクを吐出し、他方のノズル列は未使用ノズル列としている。また、吐出手段6dは、一方のノズル列からイエローインクを、他方のノズル列からマゼンタインクを吐出する。
これにより、モノクロ画像については吐出手段6a及び6bを使用して1スキャンの主走査方向で2ヘッド分の幅の画像形成を行うことができ、カラー画像については例えば、吐出手段6b、6c、及び6dを使用して画像形成を行うことができる。なお、吐出手段の構成はこれに限定されるものではなく、複数の吐出手段を主走査方向に全て並べて配置する構成でもよい。
また、キャリッジ5の移動方向に沿ってエンコーダシート12が配置され、キャリッジ5にはエンコーダシート12を読み取るエンコーダセンサ13が設けられている。これらのエンコーダシート12及びエンコーダセンサ13によってリニアエンコーダ14を構成し、リニアエンコーダ14の出力からキャリッジ5の位置及び速度を検出する。
キャリッジ5の主走査領域のうち、記録領域では、給送装置102からロールメディア120が給送される。その後、搬送手段21によってキャリッジ5の主走査方向と直交する副走査方向(紙搬送方向)に間欠的にロールメディア120が搬送される。
キャリッジ5の主走査方向の一方側には、搬送ガイド部材25の側方に吐出手段6の維持回復を行う維持回復機構80が配置されている(図4参照)。
また、図5に示すように、インクジェット印刷装置100は、その筐体の上方かつ前方の位置に液体カートリッジの実施形態であるインクカートリッジ150を保持するカートリッジホルダ160が設置されている。カートリッジホルダ160に保持されているインクカートリッジ150から、液体ポンプ170の動作により供給チューブを介して、キャリッジ5に搭載されている吐出手段6(6a~6d)のサブタンクに各色インクが供給される。
また、インクジェット印刷装置100は、搬送手段21と、給送装置102から給紙されるロールメディア120を搬送する搬送ローラ23と、これに対向して配置された加圧ローラ24と、ロールメディア120の搬送量を検知するエンコーダなどからなる副走査センサ21a(図7参照)と、搬送ローラ23を回転させる副走査モータ21b(図7参照)とを有する。
搬送ローラ23及び加圧ローラ24は搬送制御手段を構成する。そして、搬送ローラ23の下流側に複数の吸引穴が形成された搬送ガイド部材25と、搬送ガイド部材25の吸引穴から吸引を行う吸引手段としての吸引ファン26と、が備えられる。また、搬送手段21の下流側には、吐出手段6から吐出されたインクによって画像形成されたロールメディア120を所定の長さで切断する切断手段としてのカッターが配置されている。
給送装置102のロール体112は、芯部材である紙管等の中空軸部115に長尺なシート状のロールメディア120を巻き付けたものである。ここでのロール体112は、ロールメディア120の終端を糊付け等の接着で中空軸部115に固定したもの、またロールメディア120の終端を中空軸部115に接着していない非固定のものについていずれも装着可能である。
給送装置102は、給送装置102によるロールメディア120の給送量を検知する給送センサ102a及び給送ローラ102bを備えており、給送ローラ102bは、給送モータ102c(図7参照)の駆動により回転する。巻取装置103は、巻取装置103によるロールメディア120の巻取量を検知する巻取センサ103a、巻取ローラ103bを備えており、巻取ローラ103bは、巻取モータ103c(図7参照)の駆動により回転する。
したがって、給送装置102から送り出されたロールメディア120は、搬送手段21によって画像形成部104の直下に搬送されて画像が形成され、巻取装置103において巻き取られる。
図5に示されるように、装置本体101側には、給送装置102のロール体112から引き出されるロールメディア120をガイドするガイド部材130と、搬送ガイド部材25の下流で吸引後のロールメディア120をガイドする排メディアガイド部材131とが配置されている。巻取装置103は、芯部材である紙管等の中空軸部114を有している。ロールメディア120の先端は中空軸部114にテープ等で接着されている。
インクジェット印刷装置100は、画像形成時にキャリッジ5を主走査方向に移動し、給送装置102のロール体112から引き出されてガイド部材130に沿って案内されるロールメディア120を搬送手段21によって間欠的に搬送する。
そして、吐出手段6(6a~6d)を画像情報(印字情報)に応じて駆動してインクを吐出させることにより、ロールメディア120上に所要の画像が形成される。この画像形成されたロールメディア120は、排メディアガイド部材131に案内され、巻取装置103内の中空軸部114に巻きとられる。搬送ローラ23上のロールメディア120は、給送装置102側、巻取装置103側のそれぞれから張力が付与されながら搬送される。
以上の説明は、ロール体112を保持する給送装置102を備えるインクジェット印刷装置100を本発明の実施形態とするものである。本発明に係るインクジェット印刷装置としては、これに限定されるものではない。例えば、ロール体112を保持する給送装置102を備えたインクジェット印刷装置であってもよい。
なお、このインクジェット印刷装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置及び/又は後処理装置と称される装置などを含むことができる。前処理装置及び後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液又は後処理液を有する液体収容部と、吐出手段を追加し、前処理液及び/又は後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前記前処理装置及び前記後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置及び後処理装置を設ける態様がある。
なお、前記インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。前記インクジェット記録方法以外の方法としては、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
本発明の用語における、記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
本発明の用語における、吐出手段、ヘッドは、いずれも同義語とする。
本発明の用語におけるインク収容手段、インクタンク、インク収容容器、カートリッジは、いずれも同義語とする。
本発明の用語における蓋部材、キャップ部は、いずれも同義語とする。
以下に合成例、調製例、実施例、及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの合成例、調製例、及び実施例に何ら限定されるものではない。
<ガラス転移点の測定方法>
以下の合成例2-1、合成例2-2、及び合成例3-1において、樹脂のガラス転移点は、自動示差走査熱量計(DSCシステムQ-2000、TAインスツルメント社製)を用いて以下のようにして測定した。
各合成例で得られた樹脂エマルジョンを70℃のオーブンで12時間以上加熱乾燥させ、固形分5mgをアルミニウム製の試料容器に入れて装置にセットし、窒素気流下にて以下の測定条件(1)~(4)にて測定した。また、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、中点法にてガラス転移点を求めた。
(1)-70℃まで冷却後5分間保持
(2)10℃/分間で120℃まで昇温
(3)-70℃まで冷却後5分間保持
(4)10℃/分間で120℃まで昇温
<体積平均粒径の測定方法>
以下の合成例1-1~合成例1-4における各顔料分散体の顔料の粒径(最大個数換算で最大頻度)、及び合成例2-1、合成例2-2、及び合成例3-1の各樹脂粒子の体積平均粒径は、粒度分析装置(ナノトラックWave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した。
(合成例1-1:ブラック顔料分散体の合成)
フラスコ内に、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12g、ポリエチレングリコールメタクリレート4g、スチレンマクロマー4g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108g、ポリエチレングリコールメタクリレート36g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60g、スチレンマクロマー36g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を、2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。その後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。次に、65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成して反応を行った。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、固形分濃度50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。次いで、ポリマー溶液Aを28g、カーボンブラック(BLACK PEARLS(登録商標) 1000、Cabot Corporation社製)42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及び水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルで混練してペーストを得た。得られたペーストを純水200gに入れて充分に攪拌した後、エバポレータでメチルエチルケトンを除去し、平均孔径5μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過した後、固形分濃度が20質量%になるように水分量を調整し、固形分濃度20質量%のブラック顔料分散体を得た。なお、得られたブラック顔料分散体の顔料の粒径は78nmであった。
(合成例1-2:シアン顔料分散体の合成)
合成例1-1のブラック顔料分散体の合成において、カーボンブラックの代わりにピグメントブルー15:4(SMART Cyan 3154BA、SENSIENT社製)を使用したこと以外は、合成例1-1と同様にして固形分濃度20質量%のシアン顔料分散体を得た。なお、得られたシアン顔料分散体の顔料の粒径は147nmであった。
(合成例1-3:マゼンタ顔料分散体の合成)
合成例1-1のブラック顔料分散体の合成において、カーボンブラックの代わりにピグメントレッド122(Pigment Red 122、Sun Chemical社製)を使用したこと以外は、合成例1-1と同様にして固形分濃度20質量%のマゼンタ顔料分散体を得た。なお、得られたマゼンタ顔料分散体の顔料の粒径は131nmであった。
(合成例1-4:イエロー顔料分散体の合成)
合成例1-1のブラック顔料分散体の合成において、カーボンブラックの代わりにピグメントイエロー74(SMART Yellow 3074BA、SENSIENT社製)を使用したこと以外は、合成例1-1と同様にして固形分濃度20質量%のイエロー顔料分散体を得た。なお、得られたイエロー顔料分散体の顔料の粒径は128nmであった。
(合成例2-1:アクリル樹脂エマルジョン1の合成)
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解して反応溶液を調製した。予めイオン交換水450gに、ラウリル硫酸ナトリウム3g、アクリル酸-2-エチルヘキシル568g、及びメタクリル酸メチル447gを撹拌化に加えて乳化物を調製し、この乳化物を前記反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温(23±3℃)まで冷却した後、イオン交換水及び1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して固形分濃度30質量%、pH8に調整し、アクリル樹脂エマルジョン1を得た。得られたアクリル樹脂エマルジョン1について、ガラス転移点を測定したところ、-21℃であった。また、体積平均粒径は152nmであった。
(合成例2-2:アクリル樹脂エマルジョン2の合成)
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解して反応溶液を調製した。予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3g、アクリルアミド20g、スチレン365g、ブチルアクリレート545g、及びメタクリル酸10gを撹拌化に加えて乳化物を調製し、この乳化物を前記反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温(23±3℃)まで冷却した後、イオン交換水及び1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して固形分濃度30質量%、pH8に調整し、アクリル樹脂エマルジョン2を得た。得られたアクリル樹脂エマルジョン2について、ガラス転移点を測定したところ、86℃であった。また、体積平均粒径は158nmであった。
(合成例3-1:ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン1の合成)
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとの反応生成物、数平均分子量(Mn):1,200)1,500g、2,2-ジメチロ-ルプロピオン酸(DMPA)220g、及びN-メチルピロリドン(NMP)1,347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。次いで、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1,445g(5.5モル)及びジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149gを添加し、混合したものの中から4,340gを抜き出して、強撹拌下、水5,400g及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。次いで、氷1,500gを投入し、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30質量%となるように溶媒を留去し、脂環式ジイソシアネートに由来する構造を有するポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン1を得た。得られたポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン1について、ガラス転移点を測定したところ、55℃であった。また、体積平均粒径は55nmであった。
(調製例1:インクAの製造)
下記のインク処方を、全量で100質量部になるようにイオン交換水を加え、混合撹拌し、平均孔径5μmの酢酸セルロースフィルター(ミニザルト(登録商標)、ザルトリウス社製)で濾過して、インクAを製造した。
[インク処方]
・シリコーン系界面活性剤(シルフェイス SAG503A、日信化学工業株式会社製):0.75質量部
・脂肪族ジアルコール界面活性剤(サーフィノール AD01、日信化学工業株式会社製):0.15質量部
・ブラック顔料分散体(合成例1-1):20質量部
・ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン1(合成例3-1):6.2質量部(固形分含有量)
・ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン2(タケラック(登録商標)W6110、ガラス転移点:-20℃、体積平均粒径:41nm、三井化学株式会社製):5.8質量部(固形分含有量)
・グリセリン(阪本薬品工業株式会社製):1.0質量部
・3-メチル-1,3-ブタンジオール(イソプレングリコール、株式会社クラレ製):25質量部
・防腐防黴剤(プロキセルLV、アビシア社製):0.2質量部
・防錆剤(1,2,3-ベンゾトリアゾール):0.05質量部
・pH緩衝剤(N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸):0.05質量部
・イオン交換水:残量
(合計:100質量部)
(調製例2~18:インクB~インクRの製造)
調製例1のインクAの製造において、インク処方を下記表1~表3に記載のインク処方に変更したこと以外は、調製例1のインクAの製造方法と同様にして、インクB~インクRを製造した。なお、下記表1~表3中の樹脂の含有量は固形分含有量を示す。
また、下記表1~表3において、各成分の詳細な内容については、以下のとおりである。
・BYK-019(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン系界面活性剤含有消泡剤、ビックケミー・ジャパン株式会社製)
・BYK-025(破泡性ポリシロキサン系界面活性剤含有消泡剤、ビックケミー・ジャパン株式会社製)
・シアン顔料分散体(合成例1-2)
・マゼンタ顔料分散体(合成例1-3)
・イエロー顔料分散体(合成例1-4)
・アクリル樹脂エマルジョン1(合成例2-1)
・アクリル樹脂エマルジョン2(合成例2-2)
・pH調整剤(2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ACROS ORGANICS社製)
・1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール、株式会社ADEKA製)
・1,3-プロパンジオール(Dupont社製)
・1,4-ブタンジオール(東京化成工業株式会社製)
・2,3-ブタンジオール(東京化成工業株式会社製)
・1,5-ペンタンジオール(東京化成工業株式会社製)
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル(東京化成工業株式会社製)
<動的表面張力の測定>
調製例1~18のインクA~Rの動的表面張力σは、25.0℃において、動的表面張力計(Dynoteter、SITA社製)を用いて最大泡圧法によって測定した。動的表面張力σの測定は、寿命時間15ミリ秒、寿命時間150ミリ秒、及び寿命時間1,500ミリ秒について行った。結果を下記表1~表3に示す。
なお、最大泡圧法とは、測定する液体に浸漬させたプローブの先端部分から気泡を放出させ、泡を放出するために必要な最大圧力から表面張力を求める方法である。気泡の半径がプローブ先端の半径に等しくなるとき、最大圧力を示し、このときのインクの動的表面張力σは下記式(3)で示される。
σ=(ΔP・r)/2 ・・・ 式(3)
(前記式(3)中、rはプローブ先端の半径を示し、ΔPは気泡にかかる最大圧力と最小圧力との差を示す。)
<静的表面張力の測定>
調製例1~18のインクA~Rの静的表面張力は、25.0℃において、自動表面張力計(DY-300、協和界面科学株式会社製)を用いてWilhelmy法によって測定した。結果を下記表1~表3に示す。
(実施例1~24及び比較例1~12)
インクジェット印刷装置(RICOH Pro L5130e、株式会社リコー製)を、調製例1~18のインクA~Rが独立して充填されたインク収容手段と、各インクをノズルから吐出させるノズル形成面を有する吐出手段と、前記ノズル形成面を覆う蓋部材と、各インクを前記インク収容手段から前記吐出手段に供給する供給手段と、を有し、前記供給手段が前述の圧力制御部及び大気開放部を有するように改変した印刷装置を用いて印刷を行った。この際、前記供給手段における、各インクの吐出前(インク初期充填時)のインク収容部-吐出部間の負圧差、及びインクの吐出中におけるインク収容部-吐出部間の負圧差を、それぞれ下記表4~表8に示すように設定した。使用したメディアは、以下の各評価にて詳述する。
実施例1~24及び比較例1~12について、以下の方法で「初期充填性」及び「耐擦過性」を評価した。各インクの処方は下記表1~表3に示し、評価結果は下記表4~表10に示した。
<初期充填性>
実施例1~24及び比較例1~12について、以下のようにして初期充填性の評価を行った。
インクと、インク収容部-吐出部間の負圧差の条件とを下記表3に示すように組み合わせ、ノズル抜けを判別できるチャートを印刷し、ノズル抜けが全回復する回数、及び合計印刷数を確認し、下記式(5)によりノズル回複確率を算出した。ここで、ノズル回複確率とは平均ノズル抜け数が0である確率を示す。ノズル回復率から下記評価基準に基づいて初期充填性を評価した。結果を下記表4~表9に示した。
ノズル回復率(%)=ノズルが全回復する回数/合計印刷数×100 ・・・ 式(5)
[初期充填性の評価基準]
A:ノズル回復率が、95%以上
B:ノズル回復率が、90%以上95%未満
C:ノズル回復率が、70%以上90%未満
D:ノズル回復率が、70%未満
なお、評価としては、A、B、及びCが実用可能な範囲であり、Bが好ましく、Aがより好ましい。
<耐擦過性>
前記初期充填性の評価において、前記ノズル回復率が70%以上であった実施例及び比較例について、以下の方法で耐擦過性の評価を行った。換言すると、前記初期充填性の評価において、前記ノズル回復率が70%未満であった場合(即ち、評価結果がDの場合)、耐擦過性の評価の測定対象外とした。
まず、実施例1~24及び比較例1~12において、それぞれ下記表4~表9に示すメディアを用い、該メディア表面に、調製例1~14のインクA~インクNのいずれかを600dpi×600dpiの条件で印字し、画像を形成した。1時間放置後、形成した前記画像に学振摩耗試験機(染色物摩擦堅牢度試験機、INTEC社製)を用いて金巾を擦過させた。この際、荷重は200gf、擦過回数は25回とした。擦過後に金巾へ転写した画像彩度及び濃度(L値)を測定し、擦過前後の色差であるΔ(デルタ)Eを評価した。ΔEから下記評価基準に基づいて耐擦過性を評価した。結果を下記表4~表9に示した。なお、測定対象外であった比較例1~9については、下記表8及び表9において「N.D.」で示した。
次に、実施例1~24及び比較例10~12において、下記表10~表12に示すメディアを用い、同様の方法で擦過前後の色差であるΔ(デルタ)Eを評価した。ΔEから下記評価基準に基づいて耐擦過性を評価した。結果を下記表10~表12に示した。
[耐擦過性の評価基準]
A:ΔEが、3.0未満
B:ΔEが、3.0以上6.0未満
C:ΔEが、6.0以上10.0未満
D:ΔEが、10.0以上
なお、評価としては、A、B、及びCが実用可能な範囲であり、Bが好ましく、Aがより好ましい。
ここで、色差であるΔEは画像のL値を用いて下式(6)によって定義される。L値は、分光測色計(X-Rite eXact、エックスライト社製)を用いて、D65光源、10°視野で測定した。
・・・ 式(6)
なお、耐擦過性の評価時に使用したメディアの詳細な内容については、以下の通りである。
・Tybec(登録商標)(壁紙メディア、旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ株式会社製)
・Sunlight(壁紙メディア、TAYA社製)
・Aoi(壁紙メディア、小島織物株式会社製)
・Irodori(壁紙メディア、小島織物株式会社製)
・PRFL300(壁紙メディア、リンテックサインシステム社製)
・PE601(壁紙メディア、関西フェルトファブリック株式会社製)
・PROW-AP400F(壁紙メディア、リンテックサインシステム社製)
・TP-188(PETメディア、KIMOTO社製)
・Viewful 100ST(PETメディア、KIMOTO社製)
表1~12より、実施例1~24と比較例1~12とを比較すると、インクの動的表面張力及び静的表面張力によって、初期充填性が向上することが確認された。また、初期充填時の負圧よりも吐出時の負圧が大きく、かつ、初期充填時の負圧が70mmHg以上120mmHg以下であって、吐出時の負圧が少なくとも30mmHg以上80mmHg以下、より好ましくは40mmHg以上60mmHg以下であることが初期充填性を担保する条件であることが明らかとなった。更に、質量含有比率樹脂総含有量が5質量%~30質量%であって、比[樹脂群B/樹脂群A]が0.30以上5.00以下の範囲内であると画像の耐擦過性が担保されることが確認された。なお、算術平均表面粗さが10μm以上30μm以下の浸透系メディア、特に壁紙メディア、において、本発明の効果が顕著になることが確認された。以上より、初期充填性と耐擦過性を両立させるインクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置を知見した。
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> インク収容手段に収容されたインクを、ノズル形成面を有する吐出手段のノズルから吐出する吐出工程と、
前記インクを前記インク収容手段から前記吐出手段に供給する供給工程と、
を含み、
前記インクが、少なくともシリコーン系界面活性剤、有機溶剤、樹脂、及び水を含有し、
前記インクが、下記式(1)で示される25℃における動的表面張力σと時間tの関係式を満たし、
σ=a×Log10(t)+b ・・・ 式(1)
(前記式(1)中、a及びbは定数を示し、定数aは-17.5以上-5.9以下であり、定数bは38.0以上68.1以下であり、σは25℃におけるインクの動的表面張力(単位:mN/m)を示し、tは時間(単位:ミリ秒)を示す)
前記供給工程が、
前記ノズル形成面を蓋部材で覆うことで閉空間を形成し、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を自由に制御すること、及び
前記ノズル形成面において前記蓋部材を開くことで開空間を形成し、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を大気圧と同様にすること、で成立し、
前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が70mmAq以上120mmAq以下であり、
前記吐出工程における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が30mmAq以上80mmAq以下であり、
前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が、前記吐出工程における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差以上である、ことを特徴とするインクジェット印刷方法である。
<2> 前記インクの25℃における15ミリ秒時の動的表面張力σが30.0mN/m以上45.0mN/m以下であり、
前記インクの25℃における150ミリ秒時の動的表面張力σが25.0mN/m以上35.0mN/m以下であり、
前記インクの25℃における1,500ミリ秒時の動的表面張力σが30.0mN/m以下であり、
前記インクの25℃における静的表面張力が10.0mN/m以上30.0mN/m以下である、前記<1>に記載のインクジェット印刷方法である。
<3> 前記インクが2種類以上の樹脂を含有する、前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法である。
<4> 前記インクにおける前記樹脂の含有量が5質量%以上30質量%以下であり、
前記2種類以上の樹脂が、ガラス転移点が50℃以上70℃以下のウレタン樹脂群Aと、ガラス転移点が-30以上0℃以下のウレタン樹脂群Bとを含有し、
前記インクにおける前記ウレタン樹脂群Aの含有量に対する前記ウレタン樹脂群Bの含有量の比[ウレタン樹脂群B/ウレタン樹脂群A]が0.30以上5.00以下である、
前記<3>に記載のインクジェット印刷方法である。
<5> 前記インクジェット印刷方法に用いられる被印刷物の算術平均表面粗さが10μm以上30μm以下である、前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法である。
<6> 前記被印刷物が壁紙である、前記<5>に記載のインクジェット印刷方法である。
<7> インクを収容するインク収容手段と、
前記インクをノズルから吐出させるノズル形成面を有する吐出手段と、
前記ノズル形成面を覆う蓋部材と、
前記インクを前記インク収容手段から前記吐出手段に供給する供給手段と、
を有するインクジェット印刷装置において、
前記インクが、少なくともシリコーン系界面活性剤、有機溶剤、樹脂、及び水を含有し、
前記インクが、下記式(1)で示される25℃における動的表面張力σと時間tの関係式を満たし、
σ=a×Log10(t)+b ・・・ 式(1)
(前記式(1)中、a及びbは定数を示し、定数aは-17.5以上-5.9以下であり、定数bは38.0以上68.1以下であり、σは25℃におけるインクの動的表面張力(単位:mN/m)を示し、tは時間(単位:ミリ秒)を示す)
前記供給手段が、
前記ノズル形成面を前記蓋部材が覆う場合に形成される閉空間において、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を自由に制御する圧力制御部、及び
前記ノズル形成面を前記蓋部材が覆っていない場合に形成される開空間において、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を大気圧と同様にする大気開放部、を有しており、
前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が70mmAq以上120mmAq以下であり、
前記インクの吐出中における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が30mmAq以上80mmAq以下であり、
前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が、前記インクの吐出中における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差以上である、ことを特徴とするインクジェット印刷装置である。
前記<1>から<6>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法、及び前記<7>に記載のインクジェット印刷装置は、従来における諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
1…ガイドロッド
2…ガイドステー
5…キャリッジ
6(6a~6d)…吐出手段
6n…ノズル形成面
6s…被印刷物検知センサ
8…主走査モータ
9…駆動プーリ
10…従動プーリ
11…タイミングベルト
12…エンコーダシート
13…エンコーダセンサ
14…リニアエンコーダ
21…搬送手段
21a…副走査センサ
21b…副走査モータ
23…搬送ローラ
24…加圧ローラ
25…搬送ガイド部材
26…吸引ファン
31…押圧手段
31a…プランジャ
32…メインカートリッジ
33…供給チューブ
34…補充ポンプ
35…補充バルブ
41…インク収容容器
43…フィルム
44…圧縮ばね
45…インク注入口
47…大気開放部
48…大気開放弁
80…維持回復機構
80a…キャップ部
100…インクジェット印刷装置
101…装置本体
102…給送装置
102a…給送センサ
102b…給送ローラ
102c…給送モータ
103…巻取装置
103a…巻取センサ
103b…巻取ローラ
103c…巻取モータ
104…画像形成部
112…ロール体
114…中空軸部
115…中空軸部
120…ロールメディア
130…ガイド部材
131…排メディアガイド部材
150…インクカートリッジ
160…カートリッジホルダ
170…液体ポンプ
320…払拭手段
500…異物
A…主走査方向
B…搬送方向
特開2005-305780号公報

Claims (7)

  1. インク収容手段に収容されたインクを、ノズル形成面を有する吐出手段のノズルから吐出する吐出工程と、
    前記インクを前記インク収容手段から前記吐出手段に供給する供給工程と、
    を含み、
    前記インクが、少なくともシリコーン系界面活性剤、有機溶剤、樹脂、及び水を含有し、
    前記インクが、下記式(1)で示される25℃における動的表面張力σと時間tの関係式を満たし、
    σ=a×Log10(t)+b ・・・ 式(1)
    (前記式(1)中、a及びbは定数を示し、定数aは-17.5以上-5.9以下であり、定数bは38.0以上68.1以下であり、σは25℃におけるインクの動的表面張力(単位:mN/m)を示し、tは時間(単位:ミリ秒)を示す)
    前記供給工程が、
    前記ノズル形成面を蓋部材で覆うことで閉空間を形成し、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を自由に制御すること、及び
    前記ノズル形成面において前記蓋部材を開くことで開空間を形成し、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を大気圧と同様にすること、で成立し、
    前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が70mmAq以上120mmAq以下であり、
    前記吐出工程における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が30mmAq以上80mmAq以下であり、
    前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が、前記吐出工程における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差以上である、ことを特徴とするインクジェット印刷方法。
  2. 前記インクの25℃における15ミリ秒時の動的表面張力σが30.0mN/m以上45.0mN/m以下であり、
    前記インクの25℃における150ミリ秒時の動的表面張力σが25.0mN/m以上35.0mN/m以下であり、
    前記インクの25℃における1,500ミリ秒時の動的表面張力σが30.0mN/m以下であり、
    前記インクの25℃における静的表面張力が10.0mN/m以上30.0mN/m以下である、
    請求項1に記載のインクジェット印刷方法。
  3. 前記インクが2種類以上の樹脂を含有する、請求項1に記載のインクジェット印刷方法。
  4. 前記インクにおける前記樹脂の含有量が5質量%以上30質量%以下であり、
    前記2種類以上の樹脂が、ガラス転移点が50℃以上70℃以下のウレタン樹脂群Aと、ガラス転移点が-30以上0℃以下のウレタン樹脂群Bとを含有し、
    前記インクにおける前記ウレタン樹脂群Aの含有量に対する前記ウレタン樹脂群Bの含有量の比[樹脂群B/樹脂群A]が0.30以上5.00以下である、
    請求項3に記載のインクジェット印刷方法。
  5. 前記インクジェット印刷方法に用いられる被印刷物の算術平均表面粗さが10μm以上30μm以下である、請求項1に記載のインクジェット印刷方法。
  6. 前記被印刷物が壁紙である、請求項5に記載のインクジェット印刷方法。
  7. インクを収容するインク収容手段と、
    前記インクをノズルから吐出させるノズル形成面を有する吐出手段と、
    前記ノズル形成面を覆う蓋部材と、
    前記インクを前記インク収容手段から前記吐出手段に供給する供給手段と、
    を有するインクジェット印刷装置において、
    前記インクが、少なくともシリコーン系界面活性剤、有機溶剤、樹脂、及び水を含有し、
    前記インクが、下記式(1)で示される25℃における動的表面張力σと時間tの関係式を満たし、
    σ=a×Log10(t)+b ・・・ 式(1)
    (前記式(1)中、a及びbは定数を示し、定数aは-17.5以上-5.9以下であり、定数bは38.0以上68.1以下であり、σは25℃におけるインクの動的表面張力(単位:mN/m)を示し、tは時間(単位:ミリ秒)を示す)
    前記供給手段が、
    前記ノズル形成面を前記蓋部材が覆う場合に形成される閉空間において、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を自由に制御する圧力制御部、及び
    前記ノズル形成面を前記蓋部材が覆っていない場合に形成される開空間において、前記吐出手段と前記インク収容手段との間の圧力を大気圧と同様にする大気開放部、を有しており、
    前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が70mmAq以上120mmAq以下であり、
    前記インクの吐出中における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が30mmAq以上80mmAq以下であり、
    前記インクの吐出前における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差が、前記インクの吐出中における、前記インク収容手段と前記吐出手段との間の負圧差以上である、ことを特徴とするインクジェット印刷装置。
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