JP2023174409A - 無灰炭の製造方法及び無灰炭の製造装置 - Google Patents

無灰炭の製造方法及び無灰炭の製造装置 Download PDF

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隆一 蘆田
Ryuichi Ashida
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Abstract

【課題】本発明は、石炭の溶剤可溶成分の抽出率を向上することができる無灰炭の製造方法及び無灰炭の製造装置を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の一態様に係る無灰炭の製造方法は、石炭、溶剤、水素及びギ酸を混合してスラリーを調製する調製工程と、調製された上記スラリーの上記溶剤中に上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる溶出工程と、上記溶出工程で上記溶剤可溶成分が上記溶剤に溶出した溶液を上記スラリーから分離する分離工程と、上記分離工程で分離された上記溶液から上記溶剤を蒸発させる蒸発工程とを備える。【選択図】図2

Description

本発明は、無灰炭の製造方法及び無灰炭の製造装置に関する。
高炉用コークス等の製鉄用コークスとして、高強度のコークスが使用されている。高強度のコークスを得る場合、原料石炭としては、従来粘結性の高い、いわゆる強粘結炭が使用されている。しかしながら、強粘結炭は比較的高価であるため、今日では、強粘結炭の使用量を少なくする技術が検討されている。
強粘結炭の使用量を抑制しつつ、高強度のコークスを得ることができる原料炭として、無灰炭を使用する試みがなされている。この無灰炭を製造する方法として、例えば特許文献1には、沸点が所定の温度範囲にある石炭由来の溶剤を用いることが提案されている。
特開2005-120185号公報
特許文献1には、所定の上記溶剤を用いることで、上記溶剤を廃棄することなく循環利用をすることができるため、比較的低コストで無灰炭が製造できることが記載されている。無灰炭をより低コストに製造する方法、具体的には、石炭の溶剤可溶成分の抽出率をさらに向上することが求められている。
このような事情に鑑みて、本発明は、石炭の溶剤可溶成分の抽出率を向上することができる無灰炭の製造方法及び無灰炭の製造装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の一態様に係る無灰炭の製造方法は、石炭、溶剤、水素及びギ酸を混合してスラリーを調製する調製工程と、上記スラリーの上記溶剤中に上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる溶出工程と、上記溶出工程で上記溶剤可溶成分が上記溶剤に溶出した溶液を上記スラリーから分離する分離工程と、上記分離工程で分離された上記溶液から上記溶剤を蒸発させる蒸発工程とを備える。
上記課題を解決する本発明の別の一態様に係る無灰炭の製造装置は、石炭、溶剤、水素及びギ酸を混合してスラリーを調製する調製部と、上記スラリーの上記溶剤中に上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる溶出部と、上記溶剤可溶成分が上記溶剤に溶出した溶液を上記スラリーから分離する分離部と、分離された上記溶液から上記溶剤を蒸発させる蒸発部とを備える。
本発明の無灰炭の製造方法及び無灰炭の製造装置は、石炭の溶剤可溶成分の抽出率を向上することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る無灰炭の製造装置を示す概念図である。 図2は、図1の製造装置を用いた本発明の一実施形態に係る無灰炭の製造方法を示すフロー図である。 図3は、図1とは異なる無灰炭の製造装置を示す概念図である。 図4は、スラリーにおける溶剤中に溶出した石炭の可溶成分の抽出率を比較したグラフである。 図5は、スラリーにおける溶剤中に溶出した石炭の可溶成分の軟化溶融性を比較したグラフである。 図6は、図5の試料とは異なる条件で得たスラリーにおける溶剤中に溶出した石炭の可溶成分の軟化溶融性を比較したグラフである。 図7は、水素とギ酸との混合気体におけるギ酸のモル分率を変化させ、温度変化における石炭の可溶成分の軟化溶融性を比較したグラフである。 図8は、水素とギ酸との混合気体におけるギ酸のモル分率を変化させ、このモル分率の変化における石炭の可溶成分の軟化溶融性を比較したグラフである。
本発明の一態様に係る無灰炭の製造方法は、石炭、溶剤、水素及びギ酸を混合してスラリーを調製する調製工程と、上記スラリーの上記溶剤中に上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる溶出工程と、上記溶出工程で上記溶剤可溶成分が上記溶剤に溶出した溶液を上記スラリーから分離する分離工程と、上記分離工程で分離された上記溶液から上記溶剤を蒸発させる蒸発工程とを備える。
当該無灰炭の製造方法は、上記調製工程で、石炭、溶剤、水素及びギ酸を混合してスラリーを調製し、上記溶出工程でこのスラリーの上記溶剤中に上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させているため、上記溶出工程における石炭の溶剤可溶成分の抽出率を向上することができる。具体的には、石炭は昇温するとラジカル(石炭ラジカル)を生じるが、この石炭ラジカルが存在していると、上記溶出工程で石炭が重縮合して高分子化するため、上記溶剤可溶成分の抽出率が不十分となる。当該無灰炭の製造方法は、上記スラリー中が上記ギ酸を含むため、石炭ラジカルを安定化することができる。このため、石炭ラジカルに起因する石炭の重縮合を抑制し、上記溶剤可溶成分の抽出率を向上することができる。また、当該無灰炭の製造方法は、上記スラリー中に水素をさらに含ませているため、石炭に水素ラジカルを容易に添加することができる。この水素ラジカルの添加によって、石炭の重縮合をより抑制し、上記溶剤可溶成分の抽出率をより向上することができる。
上記調製工程が、石炭を水素及びギ酸で処理する処理工程と、上記処理工程後の石炭と上記溶剤とを混合する混合工程とを有することが好ましい。このようにすることで、水素及びギ酸を含むスラリーを容易に生成することができる。
上記処理工程で、上記石炭を水素とギ酸との混合気体の雰囲気下で貯蔵することが好ましい。このようにすることで、水素及びギ酸を含むスラリーをより容易に生成することができる。
上記水素と上記ギ酸との混合気体における上記ギ酸のモル分率が5%以上10%以下であることが好ましい。ギ酸のモル分率を上記範囲とすることで石炭の溶剤可溶成分の抽出率をさらに向上することができる。
上記混合工程で、上記スラリー中の上記石炭を昇温することが好ましい。このようにすることで、上記溶出工程における石炭の溶剤可溶成分の抽出をよりさらに容易に行うことができる。
本発明の別の一態様に係る無灰炭の製造装置は、石炭、溶剤、水素及びギ酸を混合してスラリーを調製する調製部と、上記スラリーの上記溶剤中に上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる溶出部と、上記溶剤可溶成分が上記溶剤に溶出した溶液を上記スラリーから分離する分離部と、分離された上記溶液から上記溶剤を蒸発させる蒸発部とを備える。
当該無灰炭の製造装置は、スラリーを調製する調製部で石炭、溶剤、水素及びギ酸を混合してスラリーを生成しているため、上記ギ酸によって上記スラリーにおける石炭の石炭ラジカルを安定化することができ、かつ上記水素によって上記石炭に水素ラジカルを添加することができる。このため、石炭の重縮合を効果的に抑制し、上記溶出部における石炭の溶剤可溶成分の抽出率を向上することができる。
上記調製部が、上記溶剤を貯留する溶剤貯留槽と、上記石炭を貯蔵する石炭貯蔵槽と、この石炭貯蔵槽にギ酸を供給するギ酸供給器と、上記石炭貯蔵槽に水素を供給する水素供給器とを有することが好ましい。このようにすることで、スラリー化する前の石炭に水素及びギ酸の混合気体を予め接触させることができ、上記調製部における混合を容易に行うことができる。
上記調製部が、上記溶剤を貯留する溶剤貯留槽と、上記石炭と上記ギ酸とを貯蔵する混合槽と、この混合槽に上記水素を供給する水素供給器とを有することが好ましい。このようにすることで、スラリー化する前の石炭に水素及びギ酸の混合気体を予め接触させることができ、上記調製部における混合を容易に行うことができる。
[発明を実施するための形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。なお、本明細書に記載の数値については、記載された上限値と下限値とを任意に組み合わせることが可能である。本明細書では、組み合わせ可能な上限値から下限値までの数値範囲が好適な範囲として全て記載されているものとする。また、当該無灰炭の製造装置を示す図は、各構成(各部材)を概念的又は模式的に示したものであって、実際の構成の形状、縮尺等は異なる。
[第一実施形態]
<無灰炭の製造装置>
本発明の一実施形態である無灰炭の製造装置1(以下、「製造装置1」ともいう)は、図1で示すように、石炭(不図示)、溶剤T、水素H及びギ酸Fを混合してスラリーYを調製する調製部2と、上記スラリーYの上記溶剤T中に上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる溶出部3と、上記溶剤可溶成分が上記溶剤Tに溶出した溶液Lを上記スラリーYから分離する分離部4と、分離された上記溶液Lから上記溶剤Tを蒸発させる蒸発部5とを主に備える。蒸発部5は、無灰炭Cを得るための第一蒸発器51と、副生炭Cを得るための第二蒸発部52とを含む。
〔石炭〕
上記石炭の種類としては、特に限定されるものではなく、瀝青炭、又は瀝青炭よりも安価な劣質炭(例えば亜瀝青炭又は褐炭)等が挙げられる。中でも上記石炭として瀝青炭を用いることで、無灰炭Cの製造効率をより高めることができる。上記石炭の粒度としては、特に限定されるものではないが、細かく粉砕されたもの、例えば粒度が1mm以下のものが好適に用いられる。また、上記石炭としては、塊炭を用いることもできる。塊炭は、粒度が大きいため、分離部4における分離の効率化を図ることができる。なお、「塊炭」とは、石炭全体の質量に対する粒度5mm以上の石炭の質量割合が50%以上の石炭を意味する。また、「粒度(粒径)」とは、JIS-Z8815(1994)のふるい分け試験通則に準拠して測定した値を意味する。石炭のふるい分けには、例えばJIS-Z8801-1(2019)に規定する金属製網ふるいを用いることができる。
また、上記石炭としては、最高流動度が1000ddpm未満の低流動度炭を用いることも好ましい。上記石炭として、上記低流動度炭を用いることで、無灰炭Cの製造効率を維持しつつ、無灰炭Cの製造コストを削減することができる。
〔溶剤〕
溶剤Tとしては、上記石炭の溶剤可溶成分を溶出可能なものであれば特に限定されないが、例えば石炭由来の二環芳香族化合物が好適に用いられる。この二環芳香族化合物は、基本的な構造が石炭の構造分子と類似していることから石炭との親和性が高く、比較的高い溶出率を得ることができる。石炭由来の二環芳香族化合物としては、例えば石炭を乾留してコークスを製造する際の副生油の蒸留油であるメチルナフタレン油、又はナフタレン油等を挙げることができる。
溶剤Tの沸点は、特に限定されないが、例えば、溶剤Tの沸点の下限としては、180℃が好ましく、230℃がより好ましい。一方、溶剤Tの沸点の上限としては、300℃が好ましく、280℃がより好ましい。溶剤Tの沸点が上記下限未満であると、溶剤Tが揮発しやすくなるため、スラリーYにおける各成分の混合比の調整及び維持が困難となるおそれがある。一方、溶剤Tの沸点が上記上限を超えると、蒸発部5における上記石炭の溶剤可溶成分と溶剤Tとが、容易に分離できなくなるおそれがある。
〔調製部〕
調製部2は、溶剤Tを貯留する溶剤貯留槽21と、上記石炭を貯蔵する石炭貯蔵槽22とを有する。本実施形態の調製部2は、石炭貯蔵槽22にギ酸Fを供給するギ酸供給器23と、上記石炭貯蔵槽22に水素Hを供給する水素供給器24とを有する。
また、調製部2は、溶剤貯留槽21に貯留されている溶剤Tを圧送するための溶剤供給器25と、溶剤供給器25によって圧送される溶剤Tを加熱するための昇温器とを有する。上記昇温器は、昇温されたスラリーYを得るために溶剤Tを加熱する予熱器26である。
(溶剤貯留槽)
溶剤貯留槽21は、溶剤Tを貯留するための槽である。溶剤貯留槽21としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知の液体用タンク等が挙げられる。溶剤貯留槽21は、後述する蒸発部5で排出された溶剤T3が供給されるように構成されていてもよい。このようにすることで、低コストで無灰炭Cを製造できる。
(溶剤供給器)
溶剤供給器25は、溶剤貯留槽21と、後述する混合管27とを連通する溶剤供給ラインP1中に配設されている。溶剤供給器25としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知の容積型ポンプ及び非容積型ポンプ等が挙げられる。上記非容積型ポンプとしは、例えば、渦巻ポンプが挙げられる。
(予熱器)
予熱器26は、溶剤供給ラインP1中で溶剤供給器25の下流に配設されている。予熱器26としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知の抵抗加熱式ヒーター及び誘導加熱コイルが挙げられる。また、予熱器26としては、熱媒を用いて加熱するものを用いてもよい。
予熱器26による加熱後(予熱後)の溶剤Tの温度の下限としては、300℃が好ましく、350℃がより好ましい。一方、溶剤Tの温度の上限としては、480℃が好ましく、450℃がより好ましい。溶剤Tの温度が上記下限未満であると、上記石炭を構成する分子間の結合を十分に弱められず、上記石炭の溶剤可溶成分を十分に抽出できないおそれがある。一方、溶剤Tの温度が上記上限を超えると、溶剤Tの温度を維持するための熱量が不必要に大きくなるため、無灰炭Cの製造コストが増大するおそれがある。
(石炭貯蔵槽)
石炭貯蔵槽22は、上記石炭を貯蔵すると共に、後述する混合管27に石炭供給ラインP2を介して水素Hとギ酸Fとを混合した混合石炭Cを供給可能である。石炭貯蔵槽22としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知の常圧ホッパー又は加圧ホッパー等が挙げられる。
(ギ酸供給器)
ギ酸供給器23は、石炭貯蔵槽22にギ酸供給ラインP3を介してギ酸Fを供給する。ギ酸Fは、気体状態で石炭貯蔵槽22に供給される。ギ酸供給器23は、液体状態のギ酸Fを貯留する液体用タンクと、液体状態のギ酸Fを加熱して気化させるための加熱器(不図示)と、気化したギ酸Fを送出するための気体用ポンプ(不図示)とを含む。
ギ酸Fを気化するための温度としては、特に限定されるものではないが、例えば、下限値としては、20℃が好ましく、25℃がより好ましい。また、ギ酸Fを気化するための温度の上限値としては、50℃が好ましく、40℃がより好ましい。ギ酸Fは、気体状態で石炭貯蔵槽22に安定して供給されるように、ギ酸供給ラインP3にリボンヒーター等の加熱器(不図示)を設けることが好ましい。
(水素供給器)
水素供給器24は、石炭貯蔵槽22に水素供給ラインP4を介して水素Hを供給する。水素Hは、気体状態で石炭貯蔵槽22に供給される。水素供給器24としては、特に限定されるものではないが、例えば、気体状態の水素Hを高圧で貯蔵する公知の気体用タンクが挙げられる。水素供給ラインP4は、水素Hの供給開始と供給停止とを任意に行うための開閉弁(不図示)が設けられるのが好ましい。水素供給器24及び水素供給ラインP4は、ギ酸Fと同一の温度で水素Hが供給できるように、それぞれ加熱器(不図示)などを有することが好ましい。
〔混合管〕
調製部2は、溶剤貯留槽21から送られる溶剤Tと、石炭貯蔵槽22から送られる混合石炭Cとを混合する混合管27を有する。混合管27は、後述する溶出部3にスラリーYを供給する。
水素Hとギ酸Fとは、気体状態で石炭貯蔵槽22に供給されるため、混合管27では、水素Hとギ酸Fとの混合気体の雰囲気下にあった混合石炭Cと、加熱された溶剤Tとが混合されてスラリーYが調製される。混合管27では、加熱された溶剤Tと混合石炭Cとを混合することで300℃以上のスラリーYが生成される。混合管27は、スラリーYの温度を維持、又はスラリーYを加熱可能な加熱器(不図示)を有してもよい。
スラリーY中の無水炭基準での石炭濃度の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、上記石炭濃度の上限としては、40質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。上記石炭濃度が上記下限未満であると、後述する溶出槽31における上記石炭の溶剤可溶成分の溶出量がスラリーYの処理量に対して少なくなるため、無灰炭Cの製造効率が低下するおそれがある。逆に、上記石炭濃度が上記上限を超えると、溶剤T中で上記石炭の溶剤可溶成分が飽和することで、上記溶剤可溶成分の溶出率が低下するおそれがある。
当該製造装置1では、加熱された溶剤Tに混合石炭Cを混合しているため、混合石炭Cが急速昇温される。一般に、石炭を急速昇温すると石炭ラジカルによる重縮合が生じるが、当該製造装置1では、上記石炭をギ酸Fを含む混合気体の雰囲気下で貯蔵しているため、上記石炭が昇温される際に生じる石炭ラジカルを安定化することができる。その結果、石炭ラジカルに起因する上記石炭の重縮合を抑制し、上記石炭の溶剤可溶成分の抽出率を向上することができる。また、当該製造装置1では、上記石炭を水素Hを含む混合気体の雰囲気下で貯蔵しているため、上記石炭に水素ラジカルが添加され、上記石炭の重縮合をより抑制することができ、上記石炭の溶剤可溶成分の抽出率をより向上することができる。なお、「急速昇温」とは、例えば10℃/秒以上500℃/秒以下程度の加熱速度で加熱されることをいう。この急速昇温後のスラリーYの温度は、例えば350℃以上420℃以下程度である。
〔溶出部〕
溶出部3は、スラリーYにおける溶剤Tに上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる。溶出部3は、混合管27の下流側に接続されている溶出槽31を有する。溶出槽31は、スラリーYを貯留する槽であり、攪拌機311と、スラリーYの温度を維持し、又はスラリーYを加熱するためのヒーター(不図示)とを含む。溶出槽31には、混合管27内で混合されたスラリーYが送られる。
(溶出槽)
溶出槽31は、上記ヒーターによって混合管27から送られたスラリーYの温度を維持しながら攪拌機311によってスラリーYを攪拌する。所定の温度でスラリーYを攪拌することで、上記石炭の溶剤可溶成分が溶剤Tに溶出する。
溶出槽31の内部圧力の下限としては、1.1MPaが好ましく、1.5MPaがより好ましい。一方、溶出槽31の内部圧力の上限としては、5MPaが好ましく、4MPaがより好ましい。溶出槽31の内部圧力が上記下限未満であると、蒸発によって溶剤Tが減少することで石炭Cの溶剤可溶成分が十分に溶出できないおそれがある。逆に、上記内部圧力が上記上限を超えると、圧力を維持するためのコストが上昇して無灰炭Cの製造コストが増大するおそれがある。
なお、溶出槽31における攪拌時間としては、特に限定されないが、上記溶剤可溶成分の溶出効率の観点から10分以上70分以下とすることができる。
溶出槽31内で攪拌されたスラリーYは、スラリー供給ラインP5を介して分離部4に供給される。
〔分離部〕
分離部4は、上記溶剤可溶成分が溶剤Tに溶出した溶液LをスラリーYから分離する。分離部4は、遠心分離法又は重力沈降法等を用いた固液分離器41を含む。分離部4は、溶出槽31から送られたスラリーYを、上記溶剤可溶成分が溶剤Tに溶出した溶液Lと、溶剤不溶成分及び溶剤Tを含む固形分濃縮液Mとに固液分離する。分離部4は、溶液供給ラインP6を介して溶液Lを第一蒸発器51に供給し、濃縮液供給ラインP7を介して固形分濃縮液Mを第二蒸発器52に供給する。
(固液分離器)
分離部4における固液分離器41としては、沈降速度を高めて分離効率を向上できる重力沈降法を用いた装置が好ましい。また、重力沈降法は、スラリーYを連続処理できる観点からも好ましい。スラリーYを重力沈降法により分離する場合、上記溶剤可溶成分を含む溶液Lは分離部4の上部に溜まる。この溶液Lは、必要に応じてフィルターユニットを用いて濾過した後、第一蒸発器51に供給される。一方、上記溶剤不溶成分を含む固形分濃縮液Mは、分離部4の下部に溜まり、第二蒸発器52に供給される。
固液分離器41内は、加熱及び加圧されていることが好ましい。固液分離器41内の加熱温度の下限としては、300℃が好ましく、350℃がより好ましい。一方、固液分離器41内の加熱温度の上限としては、420℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、上記溶剤可溶成分が再析出し、分離効率が低下するおそれがある。一方、上記加熱温度が上記上限を超えると、加熱するためのコストが上昇して無灰炭Cの製造コストが増大するおそれがある。
固液分離器41の内部圧力の下限としては、1MPaが好ましく、1.4MPaがより好ましい。一方、上記内部圧力の上限としては、3MPaが好ましく、2MPaがより好ましい。上記内部圧力が上記下限未満であると、上記溶剤可溶成分が再析出し、分離効率が低下するおそれがある。一方、上記内部圧力が上記上限を超えると、加圧するためのコストが高くなるおそれがある。
〔蒸発部〕
蒸発部5は、分離部4で分離された溶液Lから溶剤T1を蒸発させる第一蒸発器51を有する。第一蒸発器51は、溶液L中の溶剤Tを蒸発させて上記溶剤可溶成分を析出させる。この析出した溶剤可溶成分が、当該製造装置によって製造される無灰炭Cである。蒸発部5は、分離部4で分離された固形分濃縮液Mから溶剤T2を蒸発させる第二蒸発器52を有する。第二蒸発器52は、固形分濃縮液M中の溶剤T2を蒸発させることで副生炭Cを析出させる。
蒸発部5は、第一蒸発器51で蒸発させた溶剤T1を排出する第一排出ラインP8と、第二蒸発器52で蒸発させた溶剤T2を排出する第二排出ラインP9と、第一排出ラインP8及び第二排出ラインP9の排出溶剤を調製部2に供給するための再利用ライン53とを有する。
(第一蒸発器)
第一蒸発器51は、溶液L中の溶剤Tを蒸発させることで溶剤可溶成分を無灰炭Cとして析出させる。第一蒸発器51で析出した無灰炭Cは、例えば、原料石炭よりも高い発熱量を示す。さらに、無灰炭Cは、製鉄用コークスの原料として特に重要な品質である軟化溶融性が大幅に改善されており、例えば、原料石炭よりも遥かに優れた流動性を示す。このため、無灰炭Cは、コークス原料に配合する原料炭として好適に用いられる。
第一蒸発器51は、例えば蒸発分離法を用いた一般的な蒸留法によって溶剤Tを蒸発させるものであってもよく、スプレードライ法等の蒸発法によって溶剤Tを蒸発させるよう構成されたものであってもよい。
(第二蒸発器)
第二蒸発器52は、固形分濃縮液Mから溶剤Tを蒸発させることで副生炭Cを析出させる。第二蒸発器52は、第一蒸発器51と同様に、蒸発分離法又はスプレードライ法等の蒸発法によって溶剤Tを蒸発させるものであってよい。
第二蒸発器52で析出した副生炭Cは、軟化溶融性は示さないが、含酸素官能基が脱離されているため、配合炭として用いた場合にこの配合炭に含まれる他の石炭の軟化溶融性を阻害しない。従って、この配合炭は、コークス原料の配合炭の一部として使用することもできる。副生炭Cは回収せずに廃棄してもよい。
(第一排出ライン)
第一排出ラインP8は、第一蒸発器51で蒸発した溶剤Tを再利用ライン53に排出する。第一排出ラインP8は、排出された溶剤T1を液化するための熱交換器(不図示)を有していてもよい。
(第二排出ライン)
第二排出ラインP9は、第二蒸発器52で蒸発した溶剤Tを再利用ライン53に排出する。第二排出ラインP9は、排出された溶剤T2を液化するための熱交換器(不図示)を有していてもよい。
(再利用ライン)
再利用ライン53は、第一排出ラインP8から送られた排出溶剤T1及び第二排出ラインP9から送られた排出溶剤T2を混合した溶剤T3を溶剤貯留槽21に供給する。すなわち、当該製造装置1では、溶剤Tを還流して再利用している。
<無灰炭の製造方法>
当該無灰炭の製造方法(以下、「当該製造方法」ともいう。)は、図2で示すように、石炭、溶剤、水素及びギ酸の混合によりスラリーを調製する調製工程S1と、調製工程S1で調製されたスラリーの上記溶剤中に上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる溶出工程S2と、上記溶剤可溶成分が上記溶剤に溶出した溶液を上記スラリーから分離する分離工程S3と、分離工程S3で分離された上記溶液から上記溶剤を蒸発させる蒸発工程S4とを備える。本実施形態では、上記調製工程S1が、石炭を水素及びギ酸で処理する処理工程と、上記処理工程後の石炭と上記溶剤とを混合する混合工程とを有する。
蒸発工程S4では、上記溶剤を蒸発させることで、上記溶剤可溶成分を析出させる。この析出した溶剤可溶成分が、当該製造方法によって製造される無灰炭である。
以下では、図1の製造装置1を使用した場合を例にして、当該製造方法の各工程について詳説する。
〔調製工程〕
調製工程S1は調製部2で行う。調製工程S1では、上記石炭、溶剤T、水素H及びギ酸Fの混合によりスラリーを調製する。
(処理工程)
調製工程S1では、まず、ギ酸Fと水素Hとを上記石炭に処理する。具体的には、ギ酸供給器23と水素供給器24とが、上記石炭が貯蔵されている石炭貯蔵槽22にギ酸Fと水素Hとを気体状態で供給して、上記石炭にギ酸Fと水素Hとを含侵させ混合石炭Cを得る。
石炭貯蔵槽22におけるギ酸Fと水素Hとの混合気体の温度の下限値としては、20℃が好ましく、25℃がより好ましい。一方、上記混合気体の温度の上限値としては、50℃が好ましく、40℃がより好ましい。上記混合気体の温度が上記下限値及び上記上限値の範囲にないと、ギ酸Fが気化した状態を安定して維持することができなくなるおそれがある。
(混合工程)
続いて、調製工程S1では、石炭貯蔵槽22で水素H及びギ酸Fと処理した混合石炭Cと、溶剤貯留槽21から供給されて予熱器26で加熱された溶剤Tとを混合管27で混合する。すなわち、調製工程S1では、上記石炭に水素H及びギ酸Fを処理する処理工程と、この混合物と溶剤Tとを混合する混合工程との二段階の混合によってスラリーYを調製する。
(昇温工程)
調製工程S1では、予熱器26によって溶剤Tを加熱して、混合石炭Cと混合することで上記石炭を昇温している。すなわち、本実施形態では、加熱された溶剤Tと混合石炭Cとを混合することで、昇温されたスラリーYを生成している。
〔溶出工程〕
溶出工程S2は溶出部3で行う。溶出工程S2では、混合管27内で生成されて溶出槽31に供給されたスラリーYを溶出槽31でスラリーYの温度を維持又は昇温しつつスラリーYを攪拌する。溶出工程S2では、スラリーYの保温と攪拌とによって、溶剤Tに上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる。溶出工程S2におけるスラリーYの温度としては、300℃以上であり、350℃以上420℃以下とすることが好ましい。このような温度にすることにより、上記石炭の溶剤可溶成分を効率的に溶出させることができる。
上記石炭は、300℃以上に昇温されると石炭ラジカルを生じるが、昇温の際にギ酸Fが存在していることで石炭ラジカルを安定化することができる。具体的には、下記式1に表される反応によって水素及び電子が上記石炭に供給されることで、石炭ラジカルを安定化させることができる。その結果、石炭ラジカルに起因する上記石炭の重縮合を抑制し、上記石炭の溶剤可溶成分の抽出率を向上することができる。さらに、上記石炭に水素Hが供給され、水素ラジカルが添加されていることで上記石炭の重縮合をより抑制し、上記石炭の溶剤可溶成分の抽出率をより向上することができる。
HCOOH→CO+2H+2e ・・・(1)
〔分離工程〕
分離工程S3は分離部4で行う。分離工程S3では、溶出工程S2によって処理されたスラリーYを、遠心分離法又は重力沈降法等を用いて、溶剤可溶成分が溶剤Tに溶出した溶液Lと溶剤不溶成分及び溶剤Tを含む固形分濃縮液Mとに固液分離する。
〔蒸発工程〕
蒸発工程S4は第一蒸発器51及び第二蒸発器52それぞれで行う。蒸発工程S4では、第一蒸発器51が分離工程S3で分離された溶液L中の溶剤Tを蒸発させ、溶剤可溶成分を無灰炭Cとして析出させる。蒸発工程S4によって得られた無灰炭Cは、コークス原料に配合する原料炭として好適に用いられる。第二蒸発器52は、分離工程S3で分離された固形分濃縮液M中の溶剤Tを蒸発させ、副生炭Cを析出させる。
なお、上述の各工程の他、当該製造方法は、蒸発工程S4で蒸発した溶剤Tを排出して回収する第一溶剤回収工程と、分離工程S3で分離された固形分濃縮液Mからこの固形分濃縮液Mに含まれている溶剤Tを排出して回収する第二溶剤回収工程と、上記第一溶剤回収工程及び上記第二溶剤回収工程で回収された溶剤を調製工程S1で再利用する再利用工程とを備えている。以下、上記第一溶剤回収工程、上記第二溶剤回収工程及び上記再利用工程の具体的な手順の一例について説明する。
〔第一溶剤回収工程>
上記第一溶剤回収工程は第一排出ラインP8で行う。上記第一溶剤回収工程では、蒸発工程S4で蒸発した溶剤Tを第一排出ラインP8に排出し、排出された溶剤T1を再利用ライン53に送る。上記第一溶剤回収工程では、排出された溶剤T1を液化したうえで再利用ライン53に送ってもよい。
<第二溶剤回収工程>
上記第二溶剤回収工程は第二排出ラインP9で行う。上記第二溶剤回収工程では、蒸発工程S4で蒸発した溶剤Tを第二排出ラインP9に排出し、排出された溶剤T2を再利用ライン53に送る。上記第二溶剤回収工程では、排出された溶剤T2を液化したうえで再利用ライン53に送ってもよい。
<再利用工程>
上記再利用工程は再利用ライン53で行う。上記再利用工程では、上記第一溶剤回収工程で回収された排出溶剤T1及び上記第二溶剤回収工程で回収された排出溶剤T2を溶剤貯留槽21に供給する。溶剤貯留槽21に供給された溶剤T3は、調製工程S1で溶剤Tの一部として再利用される。
<利点>
当該製造装置1及び当該製造方法は、調製部2における調製工程S1で水素Hとギ酸Fとを上記石炭に処理した混合石炭Cと、加熱した溶剤Tとを混合してスラリーYを生成し、溶出部3における溶出工程S2でスラリーYの溶剤T中に上記石炭の可溶成分を溶出させているため、上記石炭の溶剤可溶成分の抽出率を向上することができる。このため、当該製造装置1及び当該製造方法によると、無灰炭Cを効率的に製造することができ、低コスト化を図ることができる。
[第二実施形態]
以下、本発明の他の実施形態である無灰炭の製造装置100及び無灰炭の製造方法について説明する。なお、上述の第一実施形態における無灰炭の製造装置1及び無灰炭の製造方法と同一の構成については、図中に同一の符号を付して説明を省略する。
当該製造装置100は、図3で示すように、石炭、溶剤T、水素及びギ酸を混合してスラリーYを調製する調製部200と、上記スラリーYにおける上記溶剤Tに上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる溶出部3と、上記溶剤可溶成分が上記溶剤Tに溶出した溶液Lを上記スラリーYから分離する分離部4と、分離された上記溶液Lから上記溶剤Tを蒸発させる蒸発部5とを主に備える。蒸発部5は、無灰炭Cを得るための第一蒸発器51と、副生炭Hを得るための蒸発部52とを含む。
〔調製部〕
調製部200は、溶剤Tを貯留する溶剤貯留槽21と、上記石炭とギ酸Fと水素Hとを混合する混合槽201と、ギ酸Fと水素Hとを処理した混合石炭Cを混合管27に供給する石炭供給器202と、混合槽201に水素Hを供給する水素供給器204とを有する。また、調製部200は、水素供給器204及び混合槽201を連通する水素供給ラインP10と、混合槽201及び石炭供給器202を連通する混合槽ラインP11と、石炭供給器202及び混合管27を連通する石炭供給ラインP12とを含む。
(混合槽)
混合槽201は、上記石炭と液体状態のギ酸Fとを貯蔵する。具体的には、ギ酸水溶液又はギ酸化合物の態様のギ酸Fに侵漬されるようにして上記石炭が混合槽201に貯蔵されている。混合槽201には、水素供給器204が水素供給ラインP10を介して気体状態の水素Hを供給する。具体的には、液体状態のギ酸F中に水素供給ラインP10の排出口が設けられ、バブリングによってギ酸F中に水素Hが供給される。このようにして、上記石炭にギ酸Fと水素Hとが処理がされ、混合石炭Cが生成される。
混合槽201における上記石炭とギ酸Fとの混合温度の上限としては、80℃が好ましく、60℃がより好ましい。一方、上記混合温度の下限としては、20℃が好ましく、25℃がより好ましい。上記混合温度が上記上限を超えると、ギ酸Fの揮発量が多くなり、溶出槽31において溶剤Tに上記石炭の溶剤可溶成分を十分に溶出させることができないおそれがある。上記混合温度が上記下限に満たないと、ギ酸Fの粘度が大きくなることで、混合石炭Cのハンドリング性が低下するおそれがある。
混合槽201での混合後の混合石炭Cにおけるギ酸Fの含有量(上記石炭及びギ酸Fの合計質量に対するギ酸Fの質量の比)の上限としては、6質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。ギ酸Fの含有量が上記上限を超えると、無灰炭Cの製造コストが高くなるおそれがある。一方、ギ酸Fの含有量の下限としては、特に限定されないが、上記石炭の溶剤可溶成分の抽出率を十分に大きくする観点から、例えば、0.2質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。
(石炭供給器)
石炭供給器202は、混合槽201から供給された混合石炭Cを一時的に貯蔵し、混合管27に供給する。石炭供給器202としては、上述の石炭貯蔵槽22と同様に例えば、公知の常圧ホッパー又は加圧ホッパー等としてもよい。
当該製造装置100では、上記石炭に液体状態のギ酸Fと水素Hとが処理された混合石炭Cが溶剤Tと混合されることで昇温される。上記石炭は、溶剤Tと混合されて300℃以上に昇温されることで石炭ラジカルを生じるが、昇温の際にギ酸Fが存在していることで石炭ラジカルを安定化することができる。その結果、石炭ラジカルに起因する上記石炭の重縮合を抑制し、上記石炭の溶剤可溶成分の抽出率を向上することができる。また、当該製造装置100では、上記石炭に水素Hを混合しているため、上記石炭に水素ラジカルが添加され、上記石炭の重縮合をより抑制することができ、上記石炭の溶剤可溶成分の抽出率をより向上することができる。
〔溶出部〕
溶出部3は、スラリーYにおける溶剤Tに上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる。溶出部3は、混合管27の下流側に接続され、撹拌機311を含む溶出槽31を有する。
〔分離部〕
分離部4は、上記溶剤可溶成分が溶剤Tに溶出した溶液LをスラリーYから分離する。分離部4は、遠心分離法又は重力沈降法等を用いた固液分離器41を含む。
〔蒸発部〕
蒸発部5は、分離部4で分離された溶液Lから溶剤Tを蒸発させて無灰炭Cを得る第一蒸発器51と、分離部4で分離された固形分濃縮液Mから溶剤Tを蒸発させて副生炭Cを得る第二蒸発器52を有する。
<無灰炭の製造方法>
当該無灰炭の製造方法(以下、「当該製造方法」ともいう。)は、石炭、溶剤、水素及びギ酸の混合によりスラリーを調製する調製工程S1と、調製工程S1で調製されたスラリーにおける上記溶剤に上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる溶出工程S2と、上記溶剤可溶成分が上記溶剤に溶出した溶液を上記スラリーから分離する分離工程S3と、分離工程S3で分離された上記溶液から上記溶剤を蒸発させる蒸発工程S4とを備える。また、上記調製工程S1及び上記溶出工程S2の少なくとも一方で、上記スラリーを昇温する昇温工程S11を有する。
以下では、図3の製造装置を使用した場合を例にして、当該製造方法の各工程について詳説する。
〔調製工程〕
調製工程S1は調製部2で行う。調製工程S1では、まず、ギ酸Fと水素Hとを上記石炭に処理するため、液体状態のギ酸Fと上記石炭とを貯蔵している混合槽201に、水素供給器204が水素Hを供給して混合石炭Cを生成する。
続いて、調製工程S1では、混合槽201が石炭供給器202に混合石炭Cを供給し、石炭供給器201は、この混合石炭Cを混合管27に供給する。混合管27は、混合石炭Cと、溶剤貯留槽21から供給されて予熱器26で加熱された溶剤Tとを混合する。すなわち、調製工程S1では、上記石炭と水素Hとギ酸Fとの処理と、この混合物と溶剤Tとの混合との二段階の混合によってスラリーYを調製する。
〔溶出工程〕
溶出工程S2は溶出部3で行う。溶出工程S2では、混合管27内でスラリーYを混合した後、溶出槽31で、スラリーYの温度を維持しつつスラリーYを攪拌する。
〔分離工程〕
分離工程S3は分離部4で行う。分離工程S3では、溶出工程S2によって処理されたスラリーYを、遠心分離法又は重力沈降法等を用いて、溶剤可溶成分が溶剤Tに溶出した溶液Lと溶剤不溶成分及び溶剤Tを含む固形分濃縮液Mとに固液分離する。
〔蒸発工程〕
蒸発工程S4は第一蒸発器51で行う。蒸発工程S4では、分離工程S3で分離された溶液L中の溶剤T1を蒸発させ、溶剤可溶成分を無灰炭Cとして析出させる。
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
上述の第一実施形態では、ギ酸供給器23は、液体状態のギ酸Fを貯留する液体タンクと、液体状態のギ酸Fを加熱して気化させるための加熱器と、気化したギ酸Fを送出するための気体用ポンプとを含むもので説明したが、気体状態のギ酸Fを高圧で貯蔵する気体用タンクと、開閉弁とを有するものであってもよい。
また、第一実施形態におけるギ酸Fと水素Hとは、混合気体の状態で石炭貯蔵槽22に供給してもよい。例えば、ギ酸供給ラインP3の一部と水素供給ラインP4の一部とが石炭貯蔵槽22の手前で一体化し、この一体化した部分で混合気体として石炭貯蔵槽22に供給してもよい。また、液体状態のギ酸Fを貯留する液体用タンク中に水素Hをバブリングし、上記液体用タンクからギ酸Fと水素Hとの混合気体を石炭貯蔵槽22に供給してもよい。
さらに、第一排出ラインP8及び第二排出ラインP9の双方に排出された溶剤T1,T2を調製部2で再利用するのではなく、一方の排出溶剤のみを回収して再利用してもよい。また、再利用ライン53は、第一排出ラインP8に排出された溶剤T1及び第二排出ラインP9に排出された溶剤T2の両方又はいずれか一方に分留処理を施したうえで、分留後の溶剤を溶剤貯留槽21に供給するようにしてもよい。
当該製造方法は、上述の第一溶剤回収工程、第二溶剤回収工程及び再利用工程を備えていなくてもよい。この場合、当該製造装置は、上述の第一排出ラインP8、第二排出ラインP9及び再利用ライン53を備えていなくてもよい。また、当該製造方法が、第一溶剤回収工程及び第二溶剤回収工程のうちの一方のみを備えている場合、当該製造装置は、第一溶剤回収工程に対応する第一排出ラインP8及び第二溶剤回収工程に対応する第二排出ラインP9のいずれか一方を備えていればよい。
上記調製工程では、上記石炭と溶剤Tとを混合してスラリーとした後に、このスラリーに水素Hとギ酸Fとを混合してもよい。例えば、上記スラリー中に水素Hとギ酸Fとをバブリングする等してもよい。この場合、上記スラリーに水素Hとギ酸Fと混合した後に上記スラリーを昇温してもよい。
昇温工程としては、溶剤Tを予熱器26で加熱することに限定されるものでなく、混合管27でスラリーYを生成した後に、混合管27に設けられた加熱器でスラリーYを昇温してもよく、溶出槽31が有するヒーターでスラリーYを昇温してもよい。また、スラリーYの昇温は調整工程及び溶出工程のいずれか一方で行われてもよく、双方で行われてもよい。
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
篩分けにより粒子径を150μm未満とした瀝青炭(試料炭)0.3gをアルミナ製ボートに載せ、石英管内に配置し、下記表1に示す条件で処理した。
Figure 2023174409000002
表1中、「-」とは、処理をしなかったもの、及び測定できないものを意味する。「Tb」とは、石英管内に供給する気体の温度を意味する。「雰囲気」とは、石英管内の雰囲気を意味する。「Tr」とは、石英管内を昇温した最終温度を意味する。なお、石英管内は、昇温速度10℃/minで昇温し、試料炭は最終温度(Tr)で90分間保持した。
この試料炭と溶剤とを混合してスラリーとし、このスラリーを攪拌して上記試料炭の可溶成分を上記溶剤中に溶出させた。溶剤として工業用の二環芳香族化合物である1-メチルナフタレンを用いた。試料炭を用いたスラリーに溶剤抽出フラクネーションを350℃で実施し、350℃で抽出され室温においても溶剤に可溶である成分(Soluble)、350℃で抽出されるが室温では固体として析出する成分(Deposit)、抽出温度でも抽出されない成分(Residue)に分離した。分離した結果を図4に示す。なお、「溶剤抽出フラクショネーション法」とは、無極性溶剤による石炭及び改質炭(無灰炭)の抽出により、石炭分子を分解することなく分子量の異なる複数の成分に分離して評価する方法を意味する。
未処理の原炭(試験例1)と比較して、試験例2,3の抽出物収率(SolubleとDepositの収率の和)が向上しているのが分かる。石英管内の温度を110℃とした試験例3は、試験例1と比較して、抽出物収率が、乾燥石炭基準で15%、抽出物基準で44%も増加している。
350℃で抽出された成分(Soluble及びDeposit)について熱機械分析を実施した。各抽出成分を内径5.3mmの白金セルに厚さ1mm程度堆積させ、直径4.3mmのロッドで10gfの荷重を掛けながら試料を窒素気流中で、昇温速度10℃/minで900°Cまで昇温し、ロッドの初期位置からの位置変化を測定した。結果を図5及び図6に示す。
図5及び図6より、水素とギ酸との混合雰囲気で処理した試験例2,3は、未処理の試験例1、水素雰囲気で処理した試験例4、及び窒素及びギ酸の混合雰囲気で処理した試験例5に比較して、熱機械分析でのロッド位置が低下し、軟化溶融性が向上していることが分かる。
次に、水素とギ酸との混合気体におけるギ酸のモル分率を変化させて熱機械分析を行った。結果を図7及び図8に示す。図7及び図8より、ギ酸のモル分率が7.5%を境に軟化溶融性が低下から上昇に転じていることが分かる。
本発明の無灰炭の製造方法及び無灰炭の製造装置は、石炭の溶剤可溶成分の抽出率を高めることができるので、無灰炭の効率的な製造に適している。
1,100 無灰炭の製造装置
2,200 調製部
21 溶剤貯留槽
22 石炭貯蔵槽
23 ギ酸供給器
24,204 水素供給器
25 溶剤供給器
26 予熱器
27 混合管
201 混合槽
202 石炭供給器
3 溶出部
31 溶出槽
311 攪拌機
4 分離部
41 固液分離器
5 蒸発部
51 第一蒸発器
52 第二蒸発器
53 再利用ライン
混合石炭
無灰炭
副生炭
F ギ酸
H 水素
L 溶液
M 固形分濃縮液
P1 溶剤供給ライン
P2 石炭供給ライン
P3 ギ酸供給ライン
P4 水素供給ライン
P5 スラリー供給ライン
P6 溶液供給ライン
P7 濃縮液供給ライン
P8 第一排出ライン
P9 第二排出ライン
P10 水素供給ライン
P11 混合槽ライン
P12 石炭供給ライン
T,T3 溶剤
T1,T2 排出溶剤
Y スラリー

Claims (8)

  1. 石炭、溶剤、水素及びギ酸を混合してスラリーを調製する調製工程と、
    上記スラリーの上記溶剤中に上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる溶出工程と、
    上記溶出工程で上記溶剤可溶成分が上記溶剤に溶出した溶液を上記スラリーから分離する分離工程と、
    上記分離工程で分離された上記溶液から上記溶剤を蒸発させる蒸発工程と
    を備える無灰炭の製造方法。
  2. 上記調製工程が、
    石炭を水素及びギ酸で処理する処理工程と、
    上記処理工程後の石炭と上記溶剤とを混合する混合工程と
    を有する請求項1に記載の無灰炭の製造方法。
  3. 上記処理工程で、上記石炭を水素とギ酸との混合気体の雰囲気下で貯蔵する請求項2に記載の無灰炭の製造方法。
  4. 上記混合気体における上記ギ酸のモル分率が5%以上10%以下である請求項3に記載の無灰炭の製造方法。
  5. 上記混合工程で、上記スラリー中の上記石炭を昇温する請求項2、請求項3又は請求項4に記載の無灰炭の製造方法。
  6. 石炭、溶剤、水素及びギ酸を混合してスラリーを調製する調製部と、
    上記スラリーの上記溶剤中に上記石炭の溶剤可溶成分を溶出させる溶出部と、
    上記溶剤可溶成分が上記溶剤に溶出した溶液を上記スラリーから分離する分離部と、
    分離された上記溶液から上記溶剤を蒸発させる蒸発部と
    を備える無灰炭の製造装置。
  7. 上記調製部が、
    上記溶剤を貯留する溶剤貯留槽と、
    上記石炭を貯蔵する石炭貯蔵槽と、
    この石炭貯蔵槽にギ酸を供給するギ酸供給器と、
    上記石炭貯蔵槽に水素を供給する水素供給器と
    を有する請求項6に記載の無灰炭の製造装置。
  8. 上記調製部が、
    上記溶剤を貯留する溶剤貯留槽と、
    上記石炭と上記ギ酸とを貯蔵する混合槽と、
    この混合槽に上記水素を供給する水素供給器と
    を有する請求項6に記載の無灰炭の製造装置。
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