JP2020007466A - 無灰炭の製造方法 - Google Patents

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康爾 堺
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Abstract

【課題】本発明は、無灰炭の抽出率を維持しつつ、固液分離工程での未溶解成分の沈降速度を高められる無灰炭の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の無灰炭の製造方法は、石炭及び溶剤を含むスラリーを調製する工程と、上記スラリー調製工程で石炭の溶剤可溶成分を溶出したスラリーを、溶剤可溶成分を含む液体分及び溶剤不溶成分を含む固形分に固液分離する工程と、上記固液分離工程で分離した上記液体分から溶剤を蒸発回収する工程と、上記固液分離工程で分離した上記固形分から溶剤を蒸発回収する工程と、上記液体分及び上記固形分から蒸発回収した溶剤からその一部を分留する工程とを備え、上記固液分離工程として、上記分留工程で分留された溶剤を上記スラリーに混合する工程を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、無灰炭の製造方法に関する。
石炭は、火力発電やボイラーの燃料又は化学品の原料として幅広く利用されており、環境対策の一つとして石炭中の灰分を効率的に除去する技術の開発が強く望まれている。例えば、ガスタービン燃焼による高効率複合発電システムでは、LNG等の液体燃料に代わる燃料として、灰分が除去された無灰炭(HPC)を使用する試みがなされている。また高炉用コークス等の製鉄用コークスの原料炭として、無灰炭を使用する試みがなされている。
無灰炭の製造方法としては、重力沈降法を用いてスラリーから溶剤に可溶な石炭成分(以下、溶剤可溶成分とも言う)を含む溶液を分離する方法が提案されている(例えば特開2005−120185号公報参照)。この方法は、石炭及び溶剤を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリー調製工程で得られたスラリーを加熱して溶剤可溶成分を抽出する抽出工程とを備える。さらにこの方法は、抽出工程で溶剤可溶成分が抽出されたスラリーから溶剤可溶成分が溶解した溶液を分離する固液分離工程と、固液分離工程で分離された溶液から溶剤を分離して無灰炭を得る無灰炭取得工程とを備える。
また、上記従来の無灰炭の製造方法より溶剤可溶成分の抽出時間を短縮できる無灰炭の製造方法も提案されている(特開2016−56282号公報参照)。この無灰炭の製造方法では、高温の溶剤に石炭を混合し急速に昇温してスラリーを得ることで、溶剤可溶成分の抽出時間を短縮している。
これらの従来の無灰炭の製造方法では、いずれも無灰炭は、溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液から溶剤を分離して得られる。この分離された溶剤は、再びスラリーの調製に用いられる。このように分離した溶剤を再利用することで、無灰炭の製造コストを低減することができる。
このような無灰炭の製造において、さらに製造効率を高めるために、上記溶剤には上記抽出工程での溶剤に可溶な石炭成分の割合、つまり無灰炭の抽出率が高いことに加え、上記固液分離工程で未溶解成分の沈降速度が速いことが求められている。
特開2005−120185号公報 特開2016−56282号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、無灰炭の抽出率を維持しつつ、固液分離工程での未溶解成分の沈降速度を高められる無灰炭の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らが、固液分離工程での未溶解成分の沈降速度について鋭意検討した結果、溶剤のうちキシレンをはじめとする低沸点成分が沈降速度の向上に有効であることを見出した。一方、本発明者らはこの低沸点成分は石炭の溶解を阻害し、無灰炭の抽出率を下げることを知得している。本発明者らは、これらの知見により、再利用する溶剤から低沸点成分を分留し、分留した低沸点成分を固液分離工程に加えることで、無灰炭の抽出率を維持しつつ固液分離工程での未溶解成分の沈降速度を高められることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記課題を解決するためになされた発明は、石炭及び溶剤を含むスラリーを調製する工程と、上記スラリー調製工程で石炭の溶剤可溶成分を溶出したスラリーを、溶剤可溶成分を含む液体分及び溶剤不溶成分を含む固形分に固液分離する工程と、上記固液分離工程で分離した上記液体分から溶剤を蒸発回収する工程と、上記固液分離工程で分離した上記固形分から溶剤を蒸発回収する工程と、上記液体分及び上記固形分から蒸発回収した溶剤からその一部を分留する工程とを備え、上記固液分離工程として、上記分留工程で分留された溶剤を上記スラリーに混合する工程を備える無灰炭の製造方法である。
当該無灰炭の製造方法では、上記分留工程で、溶剤から低沸点成分を分留し、分留した低沸点成分を固液分離工程に加えるので、固液分離工程での未溶解成分の沈降速度を高められる。また、当該無灰炭の製造方法では、上記低沸点成分はスラリー調製工程に加えないので、スラリー調製工程での無灰炭の抽出率が低下することを抑止できる。従って、当該無灰炭の製造方法を用いることで、無灰炭の抽出率を維持しつつ、固液分離工程での未溶解成分の沈降速度を高められる。
上記スラリー調製工程の溶剤が上記分留工程で残留する溶剤を含むとよい。本発明者らは、上記分留工程で残留する溶剤、すなわち上記低沸点成分が除去された溶剤は、溶剤の再利用時における抽出率を改善できることを見出している。従って、上記スラリー調製工程の溶剤に上記分留工程で残留する溶剤を含めることで、無灰炭の抽出率を高めることができる。また、蒸発回収した溶剤を効率的に再利用できるので、溶剤の再利用率が高められ、無灰炭の製造コストを低減できる。
上記分留工程で分留する際の温度としては、150℃以上200℃以下が好ましい。上記温度を上記範囲内とすることで、未溶解成分の沈降速度を高められる低沸点成分、例えばキシレンをより確実に分留できるので、この分留された溶剤を固液分離工程で再利用することで、未溶解成分の沈降速度をさらに高められる。
上記スラリー調製工程として、溶剤を加熱する工程と、上記溶剤加熱工程で加熱した上記溶剤を搬送する工程と、上記溶剤搬送工程で上記溶剤に石炭を供給する工程と、上記供給工程で得られたスラリー中の上記石炭から上記溶剤に可溶な成分を溶出させる工程とを備えるとよい。
上記スラリー調製工程として、溶剤を加熱する溶剤加熱工程と、上記溶剤加熱工程で加熱した上記溶剤を搬送する溶剤搬送工程と、上記溶剤搬送工程で上記溶剤に石炭を供給する供給工程と、上記供給工程で得られたスラリー中の上記石炭から上記溶剤に可溶な成分を溶出させる溶出工程とを備えるとよい。このように搬送中の加熱された溶剤に石炭を供給することで、石炭を急速に昇温できると共に、溶剤の流れにより石炭と溶剤とを攪拌することができる。これにより、短い時間で石炭を溶剤に溶解できるので、無灰炭の抽出率をさらに高められる。
上記供給工程における石炭の昇温速度が600℃/分以上となるように、上記溶剤加熱工程での溶剤の加熱温度を調整するとよい。このように上記供給工程における石炭の昇温速度を上記下限以上とすることで、無灰炭の抽出率をさらに高められる。
ここで、無灰炭(ハイパーコール、HPC)とは、石炭を改質した改質炭の一種であり、溶剤を用いて石炭から灰分と非溶解性成分とを可能な限り除去した改質炭である。しかしながら、無灰炭の流動性や膨張性を著しく損ねない範囲で、無灰炭は灰分を含んでもよい。一般に石炭は7質量%以上20質量%以下の灰分を含むが、無灰炭においては2質量%程度、場合によっては5質量%程度の灰分を含んでもよい。なお、「灰分」とは、JIS−M8812:2004に準拠して測定される値を意味する。
以上説明したように、当該無灰炭の製造方法を用いることで、無灰炭の抽出率を維持しつつ、固液分離工程での未溶解成分の沈降速度を高められる。
本発明の一実施形態の無灰炭の製造方法を示すフロー図である。 図1のスラリー調製工程を示す概略フロー図である。 図1の無灰炭の製造方法で用いる無灰炭の製造装置を示す概略図である。 図3の無灰炭の製造装置のスラリー調製部とは異なるスラリー調製部を示す概略図である。 実施例における無灰炭の未溶解成分濃度の分布を示すグラフである。
以下、本発明に係る無灰炭の製造方法の一実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の無灰炭の製造方法は、図1に示すように、スラリー調製工程S1と、固液分離工程S2と、第1溶剤蒸発工程S3と、第2溶剤蒸発工程S4と、分留工程S5とを備える。また、当該無灰炭の製造方法は、図2に示すように、スラリー調製工程S1として、溶剤加熱工程S11と、溶剤搬送工程S12と、供給工程S13と、溶出工程S14とを備える。
当該無灰炭の製造方法は、図3に示す無灰炭の製造装置を用いて行うことができる。以下、図3の無灰炭の製造装置について説明する。
図3に示す無灰炭の製造装置は、スラリー調製部1と、固液分離部2と、第1溶剤蒸発部3と、第2溶剤蒸発部4と、分留部5とを主に備える。
[スラリー調製部]
スラリー調製部1は、溶剤タンク11と、ポンプ12と、予熱器13と、石炭供給器14と、抽出槽15とを備える。また、スラリー調製部1は、溶剤タンク11の溶剤を抽出槽15へ搬送する搬送管16を備える。
<溶剤タンク>
溶剤タンク11は、石炭と混合する溶剤を貯留する。
上記溶剤は、石炭を溶解するものであれば特に限定されないが、例えば石炭由来の二環芳香族化合物が好適に用いられる。この二環芳香族化合物は、基本的な構造が石炭の構造分子と類似していることから石炭との親和性が高く、比較的高い抽出率を得ることができる。石炭由来の二環芳香族化合物としては、例えば石炭を乾留してコークスを製造する際の副生油の蒸留油であるメチルナフタレン油、ナフタレン油等を挙げることができる。
上記溶剤の沸点は、特に限定されないが、例えば上記溶剤の沸点の下限としては、180℃が好ましく、230℃がより好ましい。一方、上記溶剤の沸点の上限としては、300℃が好ましく、280℃がより好ましい。上記溶剤の沸点が上記下限未満であると、溶剤が揮発し易くなるため、スラリー中の石炭と溶剤との混合比の調整及び維持が困難となるおそれがある。逆に、上記溶剤の沸点が上記上限を超えると、溶剤可溶成分と溶剤との分離が困難となるため、溶剤の回収率が低下するおそれがある。
<ポンプ>
ポンプ12は搬送管16に配設され、溶剤タンク11の溶剤を抽出槽15へ搬送する。
ポンプ12の種類は、搬送管16を介して上記溶剤を抽出槽15へ圧送できるものであれば特に限定されないが、例えば容積型ポンプ又は非容積型ポンプを用いることができる。より具体的には、容積型ポンプとしてダイヤフラムポンプやチューブフラムポンプ等を用いることができ、非容積型ポンプとして渦巻ポンプ等を用いることができる。
ポンプ12により上記溶剤を抽出槽15へ圧送する際の圧力(搬送管16の内部圧力)の下限としては、1.1MPaが好ましく、1.5MPaがより好ましい。一方、上記搬送管16の内部圧力の上限としては、5MPaが好ましく、4MPaがより好ましい。上記搬送管16の内部圧力が上記下限未満であると、後述する搬送中の溶剤への石炭供給時に溶剤が石炭を攪拌する力が弱くなるため石炭の溶解が不十分となるおそれがある。逆に、上記搬送管16の内部圧力が上記上限を超えると、スラリー調製部1に必要な耐圧を確保するための製造設備のコスト上昇に対して得られる石炭溶解の向上効果が不十分となるおそれがある。
また、ポンプ12により搬送される上記溶剤は、層流状態で搬送されてもよいが、乱流状態で搬送されるとよい。このように溶剤を乱流状態で搬送することで、搬送中の溶剤への石炭供給時に溶剤が石炭を攪拌する力が高まるので、石炭が溶剤と混合し易くなると共に、石炭の溶解が促進される。ここで、「層流状態」とはレイノルズ数Reが2100未満の状態をいい、「乱流状態」とはレイノルズ数Reが2100以上、より好ましくはレイノルズ数Reが4000以上の状態をいう。
ポンプ12により搬送される上記溶剤の流速の下限としては、0.5m/秒が好ましく、1m/秒がより好ましい。一方、上記溶剤の流速の上限としては、10m/秒が好ましく、5m/秒がより好ましい。上記溶剤の流速が上記下限未満であると、搬送中の溶剤への石炭供給時に溶剤が石炭を攪拌する力が弱くなるため石炭の溶解が不十分となるおそれがある。逆に、上記溶剤の流速が上記上限を超えると、ポンプ12を強力なものとするためのコスト上昇に対して得られる石炭溶解の向上効果が不十分となるおそれがある。
<予熱器>
予熱器13は、予熱器13内を通過する溶剤を加熱できるものであれば特に限定されないが、例えば抵抗加熱式ヒーターや誘導加熱コイルが挙げられる。また、熱媒を用いて加熱を行ってもよい。例えば予熱器13を通過する溶剤の流路の周囲に加熱管を配し、この加熱管に蒸気、油等の熱媒を供給することで予熱器13内を通過する溶剤を加熱することができる。
予熱器13による加熱後の溶剤の温度の下限としては、300℃が好ましく、350℃がより好ましい。一方、上記溶剤の温度の上限としては、溶出可能な温度であれば特に限定されないが、480℃が好ましく、450℃がより好ましい。上記溶剤の温度が上記下限未満であると、抽出槽15において石炭を構成する分子間の結合を十分に弱められず、溶剤可溶成分の溶出率が低下するおそれがある。逆に、上記溶剤の温度が上記上限を超えると、溶剤の温度を維持するための熱量が不必要に大きくなるため、製造コストが増大するおそれがある。
予熱器13による加熱速度の下限としては、10℃/分が好ましく、20℃/分がより好ましい。一方、上記加熱速度の上限としては、100℃/分が好ましく、50℃/分がより好ましい。上記加熱速度が上記下限未満であると、溶剤を所定温度まで加熱する時間が長くなるため、無灰炭の製造効率が低下するおそれがある。逆に、上記加熱速度が上記上限を超えると、加熱するためのエネルギーや製造設備等のコストが不要に増大するおそれがある。
予熱器13による加熱時間としては、特に限定されないが、上述の温度や加熱速度の関係から、例えば10分以上30分以下とできる。
<石炭供給器>
石炭供給器14は、石炭を搬送管16へ供給する。石炭供給器14としては、常圧状態で使用される常圧ホッパー、常圧状態及び加圧状態で使用される加圧ホッパー等の公知のホッパーを用いることができる。
(石炭)
石炭供給器14から供給する石炭としては、様々な品質の石炭を用いることができる。上記石炭としては、例えば無灰炭の抽出率の高い瀝青炭や、より安価な劣質炭(亜瀝青炭や褐炭)が好適に用いられる。また、石炭を粒度で分類すると、細かく粉砕された石炭が好適に用いられる。ここで「細かく粉砕された石炭」とは、例えば石炭全体の質量に対する粒度1mm未満の石炭の質量割合が80%以上である石炭を意味する。また、石炭供給器14から供給する石炭として塊炭を用いることもできる。ここで「塊炭」とは、例えば石炭全体の質量に対する粒度5mm以上の石炭の質量割合が50%以上である石炭を意味する。塊炭は、細かく粉砕された石炭に比べて石炭の粒度が大きいため、後述する固液分離部2での分離を効率化することができる。ここで、「粒度(粒径)」とは、JIS−Z8815(1994)のふるい分け試験通則に準拠して測定した値をいう。なお、石炭の粒度による仕分けには、例えばJIS−Z8801−1(2006)に規定する金属製網ふるいを用いることができる。
また、溶出時間の短縮という観点から、石炭供給器14から供給する石炭として劣質炭を多く含むものを用いることが好ましい。この場合、供給する石炭全体における劣質炭の割合の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましい。供給する石炭に含まれる劣質炭の割合が上記下限未満であると、溶剤可溶成分を溶出する時間が長くなるおそれがある。
上記劣質炭の炭素含有率の下限としては、70質量%が好ましい。一方、上記劣質炭の炭素含有率の上限としては、85質量%が好ましく、82質量%がより好ましい。上記劣質炭の炭素含有率が上記下限未満であると、溶剤可溶成分の溶出率が低下するおそれがある。逆に、上記劣質炭の炭素含有率が上記上限を超えると、供給する石炭のコストが高くなるおそれがある。
上記石炭は、予熱しておくとよい。上記石炭を予熱しておくことで、搬送管16へ供給し、溶剤と混合した際にスラリーの温度が低下することを防ぐことができる。上記石炭の予熱温度としては、特に限定されないが、例えば200℃以上300℃以下とできる。
なお、石炭供給器14から搬送管16へ供給する石炭として、溶剤を混合してペースト化した石炭(以下、「石炭ペースト」ともいう)を用いてもよい。石炭供給器14からペースト化した石炭を搬送管16へ供給することにより、搬送管16内で石炭が溶剤と混合し易くなり、石炭をより早く溶解させることができる。
上記石炭ペーストにおける無水炭基準での石炭濃度の下限としては、20質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。一方、上記石炭濃度の上限としては、70質量%が好ましく、60質量%がより好ましい。上記石炭濃度が上記下限未満であると、後述する抽出槽15で溶出される溶剤可溶成分の溶出量がスラリー処理量に対して少なくなるため、無灰炭の製造効率が低下するおそれがある。逆に、上記石炭濃度が上記上限を超えると、ペースト化による石炭と溶剤との混合容易化効果が不十分となるおそれがある。
<搬送管>
搬送管16は、溶剤タンク11の溶剤を抽出槽15へ搬送する。また、石炭供給器14から搬送管16に供給された石炭は、搬送管16内を流れる加熱後の溶剤とこの搬送管16内で混合され、急速昇温される。ここで、「急速昇温」とは、例えば10℃/秒以上500℃/秒以下程度の加熱速度で加熱されることをいう。その結果、溶剤と石炭との混合体であるスラリーの温度は、石炭を投入後、数秒から十数秒の間に比較的均一な温度となる。なお、上記スラリーの温度は、加熱後の溶剤の温度より石炭の顕熱分だけ低く、例えば350℃以上420℃以下程度である。
上記スラリー中の無水炭基準での石炭濃度の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、上記石炭濃度の上限としては、40質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。上記石炭濃度が上記下限未満であると、後述する抽出槽15で溶出される溶剤可溶成分の溶出量がスラリー処理量に対して少なくなるため、無灰炭の製造効率が低下するおそれがある。逆に、上記石炭濃度が上記上限を超えると、溶剤中で上記溶剤可溶成分が飽和するため、上記溶剤可溶成分の溶出率が低下するおそれがある。
<抽出槽>
抽出槽15は、石炭及び溶剤を含むスラリー中の上記石炭から溶剤に可溶な石炭成分を溶出させる。
抽出槽15には、搬送管16で混合された石炭及び溶剤を含むスラリーが供給される。抽出槽15では、このスラリーの温度を保持しながら溶剤に可溶な石炭成分が石炭から溶出される。また、抽出槽15は、攪拌機15aを有している。この攪拌機15aによりスラリーを攪拌することで溶出を促進できる。
抽出槽15の内部圧力の下限としては、1.1MPaが好ましく、1.5MPaがより好ましい。一方、抽出槽15の内部圧力の上限としては、5MPaが好ましく、4MPaがより好ましい。抽出槽15の内部圧力が上記下限未満であると、溶剤が蒸発することで減少し、石炭の溶解が不十分となるおそれがある。逆に、抽出槽15の内部圧力が上記上限を超えると、圧力を維持するためのコスト上昇に対して得られる石炭溶解の向上効果が不十分となるおそれがある。
なお、抽出槽15での溶出時間としては、特に限定されないが、溶剤可溶成分の抽出量と抽出効率との観点から10分以上70分以下とできる。
抽出槽15で可溶な石炭成分が溶出されたスラリーは供給管を介して固液分離部2へ送られる。
[固液分離部]
固液分離部2は、抽出槽15で得られた石炭成分が溶剤に溶解した液体分と溶剤不溶成分を含む固形分とを上記スラリーから分離する。なお、溶剤不溶成分とは、主に抽出用溶剤に不溶な灰分と不溶石炭とで構成されており、抽出用溶剤も含まれている抽出残分をいう。
固液分離部2における分離は、遠心分離法や重力沈降法等を用いて行うことができるが、沈降速度の向上により固液分離工程の効率を高め易い重力沈降法により行うことが好ましい。ここで重力沈降法とは、沈降槽内で重力を利用して固形分を沈降させて固液分離する分離方法である。重力沈降法により分離を行う場合、溶剤可溶成分を含む液体分は固液分離部2の上部に溜まる。この液体分は必要に応じてフィルターユニットを用いて濾過した後、第1溶剤蒸発部3に排出される。一方、溶剤不溶成分を含む固形分は、固液分離部2の下部に溜まり、第2溶剤蒸発部4に排出される。
また、重力沈降法による分離では、スラリーを固液分離部2内に連続的に供給しながら溶剤可溶成分を含む液体分及び溶剤不溶成分を含む固形分濃縮液を沈降槽から排出することができる。これにより連続的な固液分離処理が可能となる。
固液分離部2内でスラリーを維持する時間は、特に限定されないが、例えば30分以上120分以下とでき、この時間内で固液分離部2内の沈降分離が行われる。なお、石炭として塊炭を使用する場合には、沈降分離が効率化されるので、固液分離部2内でスラリーを維持する時間を短縮できる。
固液分離部2内は、加熱及び加圧することが好ましい。固液分離部2内の加熱温度の下限としては、300℃が好ましく、350℃がより好ましい。一方、固液分離部2内の加熱温度の上限としては、420℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、溶剤可溶成分が再析出し、分離効率が低下するおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、加熱のための運転コストが高くなるおそれがある。
また、固液分離部2内の圧力の下限としては、1MPaが好ましく、1.4MPaがより好ましい。一方、上記圧力の上限としては、3MPaが好ましく、2MPaがより好ましい。上記圧力が上記下限未満であると、溶剤可溶成分が再析出し、分離効率が低下するおそれがある。逆に、上記圧力が上記上限を超えると、加圧のための運転コストが高くなるおそれがある。
[第1溶剤蒸発部]
第1溶剤蒸発部3は、固液分離部2で分離した上記液体分から溶剤を蒸発回収して、無灰炭HPCを得る。蒸発回収した溶剤は、分留部5へ送られる。
このようにして得られる無灰炭HPCは、例えばコークスの原料石炭よりも高い発熱量を示す。さらに無灰炭は、製鉄用コークスの原料として特に重要な品質である軟化溶融性が大幅に改善され、例えば原料石炭よりも遥かに優れた流動性を示す。従って無灰炭は、コークス原料に配合する石炭として使用することもできる。
溶剤を蒸発分離する方法としては、蒸発分離器を用いた一般的な蒸留法や蒸発法(スプレードライ法等)を含む分離方法を用いることができる。第1溶剤蒸発部3で蒸発させた溶剤は、例えば熱交換器により液化される。
[第2溶剤蒸発部]
第2溶剤蒸発部4は、固液分離部2で分離された上記固形分から、溶剤を蒸発回収して副生炭RCを得る。蒸発回収した溶剤は、分留部5へ送られる。
副生炭RCは、軟化溶融性は示さないが、含酸素官能基が脱離されている。そのため、副生炭RCは、配合炭として用いた場合にこの配合炭に含まれる他の石炭の軟化溶融性を阻害しない。従って、この副生炭RCは例えばコークス原料の配合炭の一部として使用することができる。また、副生炭RCは一般の石炭と同様に燃料として利用してもよい。
固形分から溶剤を分離する方法としては、第1溶剤蒸発部3の分離方法と同様に、蒸発分離器を用いた一般的な蒸留法や蒸発法(スプレードライ法等)を用いることができる。第2溶剤蒸発部4で蒸発させた溶剤は、例えば熱交換器により液化される。
[分留部]
分留部5は、第1溶剤蒸発部3及び第2溶剤蒸発部4で回収した溶剤からその一部を分留する。
分留部5では、主に溶剤中の低沸点成分を含む溶剤を分留により取り出し、高沸点成分を含む溶剤を残留させる。このように溶剤を分留する分留部5としては、例えば低圧塔と高圧塔の2つの塔を備える蒸留塔を用いることができる。上記蒸留塔は、両塔の間で流体を移動させることにより、低圧塔からは溶剤中の主として高沸点成分を液相状態で取出し、高圧塔からは溶剤中の主として低沸点成分を気相状態で取出すことができる。従って、上記蒸留塔では、低沸点成分を含む溶剤と、高沸点成分を含む溶剤とを分離して得ることができる。
分留部5により得られる低沸点成分を含む溶剤の一部又は全ては、配管51により固液分離部2に送られる。また、分留部5により得られる高沸点成分を含む溶剤の一部又は全ては、配管52により溶剤タンク11に送られる。
[無灰炭の製造方法]
以下、図3の無灰炭の製造装置を用いた当該無灰炭の製造方法について詳説する。
<スラリー調製工程>
スラリー調製工程S1は、石炭及び溶剤を含むスラリーを調製する。このスラリー調製工程S1は、上述のように、溶剤加熱工程S11と、溶剤搬送工程S12と、供給工程S13と、溶出工程S14とを備える。
溶剤加熱工程S11では、溶剤を加熱する。具体的には、溶剤タンク11に貯留された溶剤をポンプ12により搬送管16へ流し、この搬送管16内を流れる溶剤が予熱器13を通る間に加熱される。
このスラリー調製工程S1の溶剤が、後述する分留工程S5で残留する溶剤を含むとよい。分留後に残留する溶剤では、石炭の溶解が阻害される成分が減少しているので、これをスラリー調製工程S1の溶剤として用いることで、無灰炭の抽出率を高めることができる。また、蒸発回収した溶剤を効率的に再利用できるので、溶剤の再利用率が高められ、無灰炭の製造コストを低減できる。
溶剤搬送工程S12では、溶剤加熱工程S11で加熱した上記溶剤を溶出工程S14に搬送する。具体的には、搬送管16により溶剤が抽出槽15へ供給される。
供給工程S13では、溶剤搬送工程S12で上記溶剤に石炭を供給する。具体的には、石炭供給器14から上記加熱後の溶剤が流れる搬送管16へ石炭を供給し、石炭と溶剤とを混合してスラリーとする。搬送管16へ供給された石炭は溶剤により急速昇温され、また、搬送管16を流れる溶剤が石炭を攪拌するので、石炭が溶解し易く、溶剤と石炭とがよく混合されたスラリーが得られる。
供給工程S13における石炭の昇温速度の下限としては、600℃/分が好ましく、700℃/分がより好ましい。上記昇温速度が上記下限未満であると、無灰炭の抽出率の向上効果が不足するおそれがある。一方、上記昇温速度の上限としては、特に限定されないが、30000℃/分とできる。上記昇温速度が上記上限を超えると、昇温のためのコストが不要に増大するおそれがある。なお、上記昇温速度は、溶剤加熱工程S11での溶剤の加熱温度により調整できる。
溶出工程S14では、供給工程S13で得られたスラリー中の上記石炭から溶剤に可溶な石炭成分を溶出させる。具体的には、供給工程S13で混合されたスラリーを抽出槽15に供給し、攪拌機15aで攪拌しながら所定温度で保持して抽出を行う。
<固液分離工程>
固液分離工程S2では、溶出工程S14で溶出後の上記スラリーを、溶剤可溶成分を含む液体分及び溶剤不溶成分を含む固形分に固液分離する。具体的には、抽出槽15から排出されるスラリーを固液分離部2へ供給し、固液分離部2内に供給されたスラリーを重力沈降法により上記液体分及び固形分に固液分離する。
当該無灰炭の製造方法では、固液分離工程S2として、後述する分留工程S5で分留された溶剤を上記スラリーに混合する工程を備える。つまり、分留工程S5で分留され、配管51を介して送られてくる低沸点成分を含む溶剤を、溶出工程S14で溶出後の上記スラリーとともに固液分離部2に供給する。
<第1溶剤蒸発工程>
第1溶剤蒸発工程S3では、固液分離工程S2で分離した上記液体分から溶剤を蒸発回収する。具体的には、固液分離部2で分離された液体分を第1溶剤蒸発部3に供給し、第1溶剤蒸発部3で溶剤を蒸発させ、回収する。これにより上記液体分を溶剤と無灰炭HPCとに分離する。
<第2溶剤蒸発工程>
第2溶剤蒸発工程S4では、固液分離工程S2で分離した上記固形分から溶剤を蒸発回収する。具体的には、固液分離部2で分離された固形分を第2溶剤蒸発部4に供給し、第2溶剤蒸発部4で溶剤を蒸発させて溶剤と副生炭RCとに分離する。
なお、第1溶剤蒸発工程S3と第2溶剤蒸発工程S4とは、同時に行うことができる。
<分留工程>
分留工程S5では、第1溶剤蒸発工程S3で液体分から蒸発回収した溶剤及び第2溶剤蒸発工程S4で固形分から蒸発回収した溶剤からその一部を分留する。具体的には、第1溶剤蒸発工程S3及び第2溶剤蒸発工程S4で回収した溶剤を分留部5で主に低沸点成分を分留し、低沸点成分を含む溶剤を得るとともに、高沸点成分を含む溶剤を残留させる。
上記低沸点成分としては、ベンゼン誘導体、フェノール誘導体、アルカン類(直鎖炭化水素)、アルコール類、エーテル類、カルボニル類、ケトン類、カルボン酸誘導体等が挙げられる。中でもベンゼン誘導体のキシレンが低沸点成分に含まれるように溶剤を分離するとよい。キシレンは、固液分離工程S2での未溶解成分の沈降速度を高める効果が高い。また、キシレンは石炭の溶解を阻害し易いので、キシレン(沸点144℃)を低沸点成分に含めることで、分留後に残留する高沸点成分を含む溶剤のキシレン含有率を低減できる。このため、高沸点成分を含む溶剤をスラリー調製工程S1で再利用する場合、無灰炭の抽出率をさらに高められる。
上記低沸点成分を分留する際の温度の下限としては、150℃が好ましく、160℃がより好ましい。一方、上記温度の上限としては、200℃が好ましく、180℃がより好ましい。上記温度が上記下限未満であると、低沸点成分としてキシレンを十分に分留できず、固液分離工程S2での未溶解成分の沈降速度を高める効果が不十分となるおそれや、分留後に残留する高沸点成分を含む溶剤をスラリー調製工程S1で再利用しても、無灰炭の抽出率が低下するおそれがある。逆に、上記温度が上記上限を超えると、低沸点成分を含む溶剤の量が増加し、相対的にキシレンの含有量が低下するため、固液分離工程S2での未溶解成分の沈降速度を高める効果が不十分となるおそれがある。なお、「分留する際の温度」は、1気圧における温度を指し、異なる圧力で行われる分留を行う場合は、除去対象とする物質(例えばキシレン)の蒸気圧曲線に基づき適宜換算される。
上記高沸点成分としては、二環芳香族誘導体や三環芳香族誘導体等が挙げられる。ただし、無灰炭の抽出率の低下を抑止する観点からは、二環芳香族誘導体に含まれ比較的沸点の低いナフタレン(沸点218℃)が分留後に残留する溶剤に含まれないことが好ましい。ナフタレンを除去するために分留する際の温度としては、220℃以上250℃以下とできる。ナフタレンを除去する場合、低沸点成分を分留した後にさらにナフタレンの除去を行ってもよいが、低沸点成分と同時に除去してもよい。低沸点成分と同時に除去する場合、分留はナフタレンが除去できる温度で行われる。
分留後の低沸点成分を含む溶剤は、固液分離工程S2で加える溶剤として、配管51により固液分離部2に送られる。また、分留後に残留する高沸点成分を含む溶剤は、スラリー調製工程S1の溶剤として、配管52により溶剤タンク11に送られる。
[利点]
当該無灰炭の製造方法では、分留工程S5で、溶剤から低沸点成分を分留し、分留した低沸点成分を固液分離工程S2に加えるので、固液分離工程S2での未溶解成分の沈降速度を高められる。また、当該無灰炭の製造方法では、上記低沸点成分はスラリー調製工程S1に加えないので、スラリー調製工程S1での無灰炭の抽出率が低下することを抑止できる。従って、当該無灰炭の製造方法を用いることで、無灰炭の抽出率を維持しつつ、固液分離工程S2での未溶解成分の沈降速度を高められる。
また、当該無灰炭の製造方法では、スラリー調製工程S1として、溶剤加熱工程S11と、溶剤搬送工程S12と、供給工程S13と、溶出工程S14とを備える。このように搬送中の加熱された溶剤に石炭を供給することで、石炭を急速に昇温できると共に、溶剤の流れにより石炭と溶剤とを攪拌することができる。これにより、短い時間で石炭を溶剤に溶解できるので、無灰炭の抽出率をさらに高められる。
〔第2実施形態〕
図4に示すスラリー調製部10は、図3の無灰炭の製造装置のスラリー調製部1に代えて用いられる。図4のスラリー調製部10は、溶剤タンク11と、石炭供給器14と、抽出槽15と、調製槽17と、ポンプ18と、加熱器19とを備える。なお、溶剤タンク11、石炭供給器14及び抽出槽15は、図3の無灰炭の製造装置におけるものと同様であるので、同一符合を付して説明を省略する。
<調製槽>
調製槽17は、溶剤タンク11から供給する溶剤と、石炭供給器14から供給する石炭とを混合する。
この調製槽17には、供給管を介して上記石炭及び溶剤が供給される。調製槽17では、この供給された石炭及び溶剤が混合され、スラリーが調製される。また、調製槽17は、攪拌機17aを有しており、混合したスラリーを攪拌機17aで攪拌しながら保持することによりスラリーの混合状態を維持する。
なお、調製槽17で調製されたスラリーは、供給管を介して加熱器19へ送られる。
<ポンプ>
ポンプ18は、調製槽17から加熱器19へスラリーを供給する供給管に配設されており、調製槽17に貯留されているスラリーを加熱器19へ圧送する。
ポンプ18の種類は、供給管を介して上記スラリーを加熱器19へ圧送できるものであれば特に限定されないが、例えば容積型ポンプ又は非容積型ポンプを用いることができる。上記容積型ポンプとしては、ダイヤフラムポンプやチューブフラムポンプ等が挙げられ、上記非容積型ポンプとしては、渦巻ポンプ等が挙げられる。
<加熱器>
加熱器19は、調製槽17で得られるスラリーを昇温する。
加熱器19としては、内部を通過するスラリーを昇温できるものであれば特に限定されないが、例えば抵抗加熱式ヒーターや誘導加熱コイルが挙げられる。また、加熱器19は、熱媒を用いて昇温を行うよう構成されていてもよく、例えば内部を通過するスラリーの流路の周囲に配設される加熱管を有し、この加熱管に蒸気、油等の熱媒を供給することでスラリーを昇温可能に構成されていてもよい。
加熱器19による昇温後のスラリーの温度の下限としては、300℃が好ましく、360℃がより好ましい。一方、上記スラリーの温度の上限としては、420℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記スラリーの温度が上記下限未満であると、石炭を構成する分子間の結合を十分に弱められず、溶出率が低下するおそれがある。逆に、上記スラリーの温度が上記上限を超えると、スラリーの温度を維持するための熱量が不必要に大きくなるため、無灰炭の製造コストが増大するおそれがある。
[無灰炭の製造方法]
当該無灰炭の製造方法は、スラリー調製工程と、固液分離工程と、第1溶剤蒸発工程と、第2溶剤蒸発工程と、分留工程とを備える。当該無灰炭の製造方法は、図4のスラリー調製部10を有する無灰炭の製造装置を用いて行うことができる。なお、固液分離工程、第1溶剤蒸発工程、第2溶剤蒸発工程及び分留工程は、第1実施形態の無灰炭の製造方法と同様に行うことができるので、ここではスラリー調製工程についてのみ説明する。
<スラリー調製工程>
スラリー調製工程では、石炭及び溶剤を含むスラリーを調製する。上記スラリー調製工程は、混合工程と、昇温工程と、溶出工程とを備える。
混合工程では、石炭及び溶剤を混合する。具体的には、石炭供給器14から供給される石炭と、溶剤タンク11から供給される溶剤とを調製槽17により混合してスラリーとする。
昇温工程では、上記混合工程で得られたスラリーを昇温する。具体的には、上記スラリーをポンプ18によって加熱器19に供給してスラリーを昇温する。
溶出工程では、昇温工程後のスラリー中の上記石炭から上記溶剤に可溶な成分を溶出させる。具体的には、昇温工程後のスラリーを抽出槽15に供給し、攪拌機15aで攪拌しながら所定温度で保持して抽出を行う。
[利点]
当該無灰炭の製造方法では、石炭及び溶剤を混合した後に昇温するので、スラリーの温度制御が容易である。
〔その他の実施形態〕
なお、本発明の無灰炭の製造装置及び無灰炭の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、分留工程後に残留する高沸点成分を含む溶剤をスラリー調製工程の溶剤として用いる場合を説明したが、スラリー調製工程の溶剤として用いることは必須ではない。この高沸点成分を含む溶剤は廃棄してもよいし、他の用途、例えば液体燃料、樹脂原料、塗料用溶剤、接着剤用溶剤等として利用してもよい。
上記実施形態では、第2溶剤蒸発工程を備える場合を説明したが、例えば副生炭を利用しない場合、この第2溶剤蒸発工程は省略可能である。第2溶剤蒸発工程を行わない場合、無灰炭の製造装置は、第2溶剤蒸発部を備えなくともよい。また、この場合、第1溶剤蒸発工程で回収される溶剤のみから、分留工程でその一部が分留される。
上記第1実施形態では、スラリー調製部としてポンプの下流側に予熱器が配設されている場合を説明したが、ポンプと予熱器との配設順は逆であってもよい。
上記第2実施形態では、無灰炭の製造装置のスラリー調製部が調製槽を有する構成について説明したが、この構成に限らず、溶剤と石炭との混合ができれば、調製槽を省略してもよい。例えばラインミキサーにより上記混合が完了するような場合には、調製槽を省略して供給管と昇温部との間にラインミキサーを備える構成としてもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[溶剤1]
溶剤1として、ナフタレン1.4質量%、2−メチルナフタレン1.6質量%、1−メチルナフタレン73.4質量%、キシレン23.6質量%を混合し調製した溶剤を準備した。この溶剤1は、溶剤を1−メチルナフタレンとし、当該無灰炭の製造方法において、分留工程で分留する際の温度を180℃として得られる分留後の低沸点成分を含む溶剤を再利用する場合に、固液分離工程でその成分が平衡した状態の溶剤を模擬した組成を有する。
[溶剤2]
溶剤2として、1−メチルナフタレンを準備した。
[No.1]
石炭として、瀝青炭を325g準備した。なお、上記石炭は、全石炭に対する粒子径1mm未満の石炭の割合が90質量%以上となるように粉砕して使用した。また、無灰炭の抽出用溶剤として、上述の溶剤1を1625g準備した。この石炭及び溶剤1を混合してスラリーを調製した。
上記スラリーを内径62mm、高さ1000mmの高圧容器に投入し、2.0MPaの圧力条件で380℃に昇温した。そして、温度を380℃に保持したまま40分間、700rpmの回転数で攪拌し、石炭から溶剤に可溶な石炭成分を溶出させた。
抽出後、攪拌を停止し、250秒後に上記高圧容器の深さ方向の内液を採取し、各深さにおける未溶解成分の濃度分布を取得した。結果を図5に示す。
[No.2]
石炭及び溶剤2を混合してスラリーを調製した以外は、No.1と同様にして各深さにおける未溶解成分の濃度分布を取得した。結果を図5に示す。
図5の結果から、深さ500mm程度までは、溶剤1を用いる方が溶剤2を用いるよりも未溶解成分の濃度が低いことが分かる。つまり、溶剤1を用いる方が溶剤2を用いるよりも未溶解成分の沈降速度が大きい。このことから、分留工程で、溶剤から低沸点成分を分留し、分留した低沸点成分を固液分離工程に加えることで、固液分離工程での未溶解成分の沈降速度を高められると言える。
以上説明したように、当該無灰炭の製造方法を用いることで、無灰炭の抽出率を維持しつつ、固液分離工程での未溶解成分の沈降速度を高められる。
1、10 スラリー調製部
11 溶剤タンク
12、18 ポンプ
13 予熱器
14 石炭供給器
15 抽出槽
15a 攪拌機
16 搬送管
17 調製槽
17a 攪拌機
19 加熱器
2 固液分離部
3 第1溶剤蒸発部
4 第2溶剤蒸発部
5 分留部
51、52 配管

Claims (5)

  1. 石炭及び溶剤を含むスラリーを調製する工程と、
    上記スラリー調製工程で石炭の溶剤可溶成分を溶出したスラリーを、溶剤可溶成分を含む液体分及び溶剤不溶成分を含む固形分に固液分離する工程と、
    上記固液分離工程で分離した上記液体分から溶剤を蒸発回収する工程と、
    上記固液分離工程で分離した上記固形分から溶剤を蒸発回収する工程と、
    上記液体分及び上記固形分から蒸発回収した溶剤からその一部を分留する工程と
    を備え、
    上記固液分離工程として、
    上記分留工程で分留された溶剤を上記スラリーに混合する工程
    を備える無灰炭の製造方法。
  2. 上記スラリー調製工程の溶剤が上記分留工程で残留する溶剤を含む請求項1に記載の無灰炭の製造方法。
  3. 上記分留工程で分留する際の温度が150℃以上200℃以下である請求項1又は請求項2に記載の無灰炭の製造方法。
  4. 上記スラリー調製工程として、
    溶剤を加熱する工程と、
    上記溶剤加熱工程で加熱した上記溶剤を搬送する工程と、
    上記溶剤搬送工程で上記溶剤に石炭を供給する工程と、
    上記供給工程で得られたスラリー中の上記石炭から上記溶剤に可溶な成分を溶出させる工程と
    を備える請求項1、請求項2又は請求項3に記載の無灰炭の製造方法。
  5. 上記供給工程における石炭の昇温速度が600℃/分以上となるように、上記溶剤加熱工程での溶剤の加熱温度を調整する請求項4に記載の無灰炭の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN111534352A (zh) * 2020-05-14 2020-08-14 太原理工大学 一种废油脂煮煤提质的研究方法

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