JP2023174196A - 変性膨張性黒鉛及び耐火性部材 - Google Patents

変性膨張性黒鉛及び耐火性部材 Download PDF

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Abstract

【課題】耐火性部材等の製品において極めて重要な成分である膨張性黒鉛を簡便な方法で変性し、製品の製造時に用いる加工機等の機械部品の金属腐食の問題の抑制や、耐火性部材等の製品を施工することで生じる被着体の金属腐食の問題の抑制などが実現できる新たな変性膨張性黒鉛及び耐火性部材の提供。【解決手段】原料の酸性の膨張性黒鉛に、アミノ基を複数有する化合物とイソシアナート基を複数有するポリイソシアナート化合物とが添加されてなり、かつ、前記膨張性黒鉛の黒鉛粒子の表面の少なくとも一部に、前記アミノ基を複数有する化合物と前記ポリイソシアナート化合物との反応物が少なくとも被覆或いは付着してなることを特徴とする変性膨張性黒鉛及びこれを用いた耐火性部材。【選択図】なし

Description

本発明は、変性膨張性黒鉛及び耐火性部材に関し、詳しくは膨張性黒鉛の製造時の中和工程に起因する残存酸で酸性を呈する膨張性黒鉛を中性或いはアルカリ性(浸漬液のpH値が6以上9未満)に変性する新たな技術を開発することで、窓サッシなどに装着させて長期間使用した場合に生じることが懸念される金属の腐食(錆の発生)等が効果的に抑制できる新たな技術に関する。耐火性部材の好ましい形態は、窓サッシなどの被着体に粘着剤層を介して貼り付けて使用した場合に、粘着剤の粘着力の低下を安定して効果的に抑制できる実用価値の高い粘着剤層が設けられた粘着剤層付きの耐火性部材に関する。
建築分野においては、従来から使用する建材の耐火性能が重視されている。特に、窓サッシや戸口ドアは、火災時に炎の流出を一定時間遮断して人の回避活動を助けるものであること、が法令で定められている。この目的の実現のために、膨張性黒鉛粒子(以下、黒鉛粒子と略す場合がある)を含有してなる耐火性部材が広く利用されている。上記構成の耐火性部材では、火災時に、耐火性部材中の黒鉛粒子が急激に膨らみ炎を遮断することができる。このため、例えば、窓サッシや戸口ドア等の建築部材に耐火性部材を装着させることが広く行われている。また、施工性を高め、取り付け作業を簡便に行えるようにする目的で、予め粘着剤層が設けられている耐火性部材製品も提供されている。
膨張性黒鉛粒子を含有してなる耐火性部材を構成する樹脂成分には、燃えにくい塩化ビニル系樹脂や塩素化塩化ビニル系樹脂が主に用いられている。そして、これ等の樹脂を用いた場合には、柔軟性を付与するために可塑剤が必須成分として使用されている。可塑剤は一般的に低分子の化合物であるので、可塑剤を樹脂中に完全に保留することは極めて困難であり、上記した構成の樹脂組成物からなる成形体等から経時で接触物質に可塑剤が移行すること(可塑剤が表面に浮き出た場合はブリードと呼ぶ)が起こる。例えば、可塑剤を含有する塩化ビニル系樹脂からなるフィルム等の塩化ビニル系樹脂層を粘着剤層に直接積層させたラインテープ等において、可塑剤が粘着剤層に移行して粘着剤の粘着力の変質を招くことが問題にされている。これに対し、塩化ビニル系樹脂層と粘着剤層の間に可塑剤移行防止機能を有する基材を介在させることが提案されている(特許文献1参照)。また、可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂製の被着体への貼付用のラベルにおいて、粘着剤層とラベル基材との間に可塑剤移行防止層を介在させて、ラベル基材の性質を経時的に安定なものにすることについての提案などもある(特許文献2参照)。
膨張性黒鉛を含有してなる耐火性部材が適用される、窓サッシや戸口ドアは、一旦施工されると極めて長い年月に渡り使用される。このため、建築部材に適用されている耐火性部材の性能は、長期間の信頼性が求められる。
特許文献3には、耐火性部材の機能を果たすための重要な成分である熱膨張性黒鉛について、下記のことが記載されている。熱膨張性黒鉛は、通常、天然黒鉛、熱分解黒鉛、キッシュ黒鉛等の黒鉛を、濃厚な硫酸と強い酸化剤との混合物で処理した後、水洗し、乾燥して得られるが、黒鉛の層間に存在する硫酸の他の遊離硫酸を含有するため酸性を呈していること;この酸性度は、水洗操作を繰り返して行い、遊離硫酸を除去することで理論的には中性にすることが可能と考えられるが、かかる処理を加えることは主として経済性の観点から全く実用性が認めらないこと;工業的には、通常、黒鉛粒子の1重量%濃度の水分散液のpHが2.5~3.5程度であっても使用がされていること;などが記載されている。
なお、特許文献3では、上記の「遊離硫酸」について、層間化合物を形成している硫酸以外の「付着硫酸」のことであるとしている。膨張性黒鉛は、黒鉛の粉末を、硫酸に限らず、硝酸及びセレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過マンガン酸塩、過酸化水素及び重クロム酸塩等の強酸化剤で処理して黒鉛層間化合物を生成させ、炭素の六員環の層状構造を維持している化合物であるので、本願明細書では、層間化合物の形成に使用した強酸化剤以外の付着している酸を「残存酸」と呼ぶ。遊離酸とも呼ばれている。
特許文献3では、上記したような酸性が強い熱膨張性黒鉛は、水性エマルジョン製品や水性ラテックス製品に添加した際に安定性を阻害する要因となったり、プラスチック製品に添加して高温で加工する際に、成型加工用の機械部品を腐食するといった問題があり、アルカリ金属によって熱膨張性黒鉛のpHを制御することを提案している。そして、このようにすることで、経時安定性が高く、各種の用途に有用に使用されるとしている。これに対して、従来のアンモニアで処理された熱膨張性黒鉛は、上記した製品の不安定化や、機械部品の発錆の防止に十分でないばかりでなく、空気中に放置されたとき、経時的にその酸性度が増す傾向があるとして、上記した提案についての優位性を説明している。
特許第4132324号公報 実開昭62-180044号公報 特許第2690982号公報
先に挙げた特許文献3では、天然麟片状黒鉛を、濃硫酸と酸化剤の混合物で処理した後、反応した黒鉛を水で洗浄し、ついで乾燥させる際に、被洗浄物固形分に対する遊離硫酸の量が1mol/kg以下となるまで洗浄した後、遊離硫酸に対してアルカリ金属のモル比が2以上になるようにアルカリ金属化合物の水溶液で中和し、ついで乾燥することで、pHを制御した熱膨張性黒鉛を得ている。そして、このように処理した熱膨張性黒鉛は、該黒鉛粒子の1重量%濃度の水分散体のpHが4.5以上であることが好ましいとしている。また、pHの経時変化が少ないとしたことが記載されている。
しかしながら、本発明者らは、pH4.5は未だ強い酸性域であり、特許文献3に記載されている上記対策の効果は、用途にもよるが不十分であるとの認識をもった。また、特に、本発明が開発の目的としている耐火性部材のような、設置後、長期間(例えば、年単位)に渡って被着体に接触した状態が保たれるような用途の場合は、長期間に渡ってpHの経時変化を抑制し、酸性域にならないようにする技術の開発が望まれる。
このような従来技術に対し、本発明者らは、長期間に渡って配置され続けるような耐火性部材製品に適用した場合に特に必要になる、耐火性部材の重要な機能を発揮するための主成分である膨張性黒鉛を、その残存酸に起因する酸性域のものにならないように変性し、しかも、その変性は、変性させた酸性域でない状態を長期間に渡って維持でき、耐火性部材を長期間使用している経時において容易に酸性域のものにならないようにすることが重要であるとの認識を持った。例えば、窓サッシ用の耐火性部材製品において、その製造時は勿論、耐火性部材を被着体に接触して設置した状態で長期間に渡って使用した場合において、構成成分である膨張性黒鉛が酸性であることで生じる悪影響をできる限り低減することが望まれる。
本発明者らの検討によれば、市販されている多くの膨張性黒鉛は、後述するように往々にして残存酸による酸性を示す。この原因としては、下記のことが挙げられる。例えば、膨張性黒鉛製品の製造時における中和処理が未だ不十分である場合、或いは、中和処理に使用された中和剤の離脱による残存酸の復元、即ち、例えば、アンモニアで中和した場合の硫酸アンモニウムなどの酸アンモニウムが、温度によっては分解することで残存酸が復元することなどが挙げられる。
また、本発明者らの検討によれば、製造の際に一旦は中和されたが、層間に取り込まれた酸成分の滲み出しによる酸性化による場合が考えられる。この点について、本発明者らは検討の過程で、市販されている酸性の膨張性黒鉛粒子について、水洗作業を複数回繰り返しても強い酸性度が変わらなかったことを見出した。このことは、膨張性黒鉛が酸性域を示す要因となる残存酸は、黒鉛粒子表面に付着した強酸のみに由来するだけではないことを示している。そして、黒鉛粒子を原料とする高い膨張性を示す層間化合物の合成には、水に溶けやすい無機酸が用いられていることからも、耐火性部材の長期間の使用の際に、構成成分である膨張性黒鉛粒子の層間に取り込まれた酸成分の滲み出しが生じる可能性は高いと推論できる。また、特に、本発明が開発の目的としている、膨張性黒鉛の利用製品の代表例でもある耐火性部材の製品では、中和された膨張性黒鉛粒子と樹脂成分を混合して成形体等の製品にするため、混合熱や剪断力、摩擦力で、膨張性黒鉛粒子からの中和剤の離脱を招き、酸性域を示す状態になり易いと考えられる。
本発明者らは、市販品の膨張性黒鉛の多数の銘柄についてpHの測定試験をした結果、後述するように、その多くにおいて強い酸性を示すことを確認した。また、中性を示す黒鉛粒子であっても、上記挙げたような事由で酸性に変わる可能性が高い。また、弱い酸性或いは一時期的に中性であっても、黒鉛粒子は、本質的にその層間に多量の強酸を含有しているので、強いイオン結合で層間に保留されるとされているとしても、経時で層間から酸が滲み出て残存酸になる可能性が高い。この点については、後述する。特に、本発明が目的とする耐火性部材のように長期間に渡って設置される製品の場合は、その可能性がより高まる。本願明細書における「残存酸」とは、黒鉛粒子に付着していた酸及び黒鉛層間から滲み出した酸を少なくとも含むものを意味する。本発明では、後述の対策により酸性の膨張性黒鉛をアルカリ性に変えた後、3回の水洗でも中性ないし弱アルカリ性を保つことで、長期の安定性を得られると判断している。
上記したような事由で生じる残存酸は強酸であるので、膨張性黒鉛を利用した製品である耐火性部材に悪影響を及ぼすだけでなく、製品の製造時に用いる加工機の機械部品及び使用の際に装着させた被着体が金属製である場合は、金属腐食の問題などを引き起こすことが懸念される。本発明者らは、この点について、簡便で効果的な腐食対策処置が必要であるとの認識をもった。また、本発明者らの検討によれば、残存酸によって、耐火性部材製品の装着の際に使用される粘着剤の粘着力の変質が引き起こされることも懸念される。例えば、粘着剤を構成する成分の構造中にエステル結合がある場合は加水分解を促進し、また、エーテル結合がある場合は熱分解を促進することが考えられる。更に、粘着剤を構成する成分の構造中に酸基があるとアマイド結合に変えることが考えられる。このため、本発明が目的としている長期使用が求められている耐火性部材においては、粘着剤の粘着力の変質に対して十分な対策が必要であると予想できる。
従って、本発明の目的は、耐火性部材製品の機能を発揮する上で極めて重要な成分である膨張性黒鉛における残存酸の問題を簡便な方法で解決し、製品の製造時に用いる加工機等の機械部品の金属腐食の問題の抑制や、耐火性部材製品を窓サッシ等に施工することで生じる被着体の金属腐食の問題の抑制などが実現できる有用な技術を提供することにある。また、本発明の別の目的は、耐火性部材の形成成分である膨張性黒鉛粒子における残存酸の問題を改善すると同時に、本発明が目的とする耐火性部材は塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含むことから懸念される、耐火性部材製品を施工する際に使用される粘着剤の粘着力の変質の問題を効果的に抑制することにある。具体的には、本発明の、膨張性黒鉛、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を含む樹脂製の耐火性部材を、粘着剤層を用いて金属製の被着体に装着させた場合に、経時において、耐火性部材を構成している可塑剤が粘着剤層に移行することで生じる粘着剤の粘着力の変質の問題を、より安定して抑制できる技術を提供することである。
上記した目的は、下記の本発明によって達成される。本発明は、下記の変性膨張性黒鉛を提供する。
[1]原料の酸性の膨張性黒鉛に、アミノ基を複数有する化合物とイソシアナート基を複数有するポリイソシアナート化合物とが添加されてなり、かつ、前記膨張性黒鉛の黒鉛粒子の表面の少なくとも一部に、前記アミノ基を複数有する化合物と前記ポリイソシアナート化合物との反応物が少なくとも被覆或いは付着してなることを特徴とする変性膨張性黒鉛。
上記した本発明の変性膨張性黒鉛の好ましい実施形態としては、下記のものが挙げられる。
[2]添加されている前記アミノ基を複数有する化合物と前記ポリイソシアナート化合物との合量が、前記酸性の膨張性黒鉛100質量部に対し、0.5質量部~10質量部の範囲内である上記[1]に記載の変性膨張性黒鉛。
[3]前記アミノ基を複数有する化合物が、ポリエチレンイミン化合物、尿素化合物及びメラミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種である上記[1]又は[2]に記載の変性膨張性黒鉛。
[4]前記ポリエチレンイミン化合物と、前記ポリイソシアナート化合物の添加比率が、前記ポリエチレンイミン化合物のアミノ基とイミノ基の合計と、前記ポリイソシアナート化合物のイソシアナート基との比で、30/70~80/20である上記[3]に記載の変性膨張性黒鉛。
[5]前記尿素化合物又は前記メラミン化合物と、前記ポリイソシアナート化合物の添加比率が、前記尿素化合物又は前記メラミン化合物のアミノ基と、前記ポリイソシアナート化合物のイソシアナート基との比で、70/30~90/10である上記[3]に記載の変性膨張性黒鉛。
[6]前記ポリイソシアナート化合物が、水系ポリイソシアナート化合物である上記[1]~[5]に記載の変性膨張性黒鉛。
[7]前記ポリエチレンイミン化合物の重量平均分子量が、300~10000である上記[3]又は[4]に記載の変性膨張性黒鉛。
また、本発明は、別の実施形態として下記の耐火性部材を提供する。
[8]膨張性黒鉛と、塩化ビニル系樹脂及び塩素化塩化ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂と、可塑剤とを少なくとも有してなる耐火性部材であって、前記膨張性黒鉛が酸性の膨張性黒鉛であり、アミノ基を複数有する化合物とイソシアナート基を複数有するポリイソシアナート化合物とが添加されてなり、かつ、前記アミノ基を複数有する化合物と、前記ポリイソシアナート化合物の合量の添加量が、前記酸性の膨張性黒鉛粒子100質量部に対し、0.5質量部~10質量部の範囲内であることを特徴とする耐火性部材。
また、本発明は、別の実施形態として下記の耐火性部材を提供する。
[9]膨張性黒鉛粒子と、塩化ビニル系樹脂及び塩素化塩化ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂と、可塑剤とを少なくとも有してなる耐火性部材であって、前記膨張性黒鉛粒子が、原料とした酸性の膨張性黒鉛の黒鉛粒子の表面の少なくとも一部に、アミノ基を複数有する化合物と、イソシアナート基を複数有するポリイソシアナート化合物との反応物が被覆又は付着されていることを特徴とする耐火性部材。
上記した本発明の耐火性部材の好ましい実施形態としては、下記のものが挙げられる。
[10]前記アミノ基を複数有する化合物が、ポリエチレンイミン化合物、尿素化合物及びメラミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種である上記[8]又は[9]に記載の耐火性部材。
[11]前記ポリエチレンイミン化合物と、前記ポリイソシアナート化合物の添加比率が、前記ポリエチレンイミン化合物のアミノ基とイミノ基の合計と、前記ポリイソシアナート化合物のイソシアナート基との比で、30/70~80/20である上記[10]に記載の耐火性部材。
[12]前記尿素化合物又は前記メラミン化合物と、前記ポリイソシアナート化合物の添加比率が、前記尿素化合物又は前記メラミン化合物のアミノ基と、前記ポリイソシアナート化合物のイソシアナート基との比で、70/30~90/10である上記[10]に記載の耐火性部材。
[13]前記樹脂100質量部に対し、前記膨張黒鉛粒子を10質量部~200質量部、前記可塑剤を100質量部以下の量で有してなる上記[8]~[12]のいずれかに記載の耐火性部材。
[14]前記可塑剤が、フタル酸系可塑剤、トリメット系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及びポリエステル系高分子可塑剤からなる群から選ばれる少なくともいずれかである上記[8]~[13]のいずれかに記載の耐火性部材。
[15]前記樹脂の重合度が、400~3000範囲内である上記[8]~[14]のいずれかに記載の耐火性部材。
[16]シート又は成形体である上記[8]~[15]のいずれかに記載の耐火性部材。
[17]更に、少なくともいずれかの一面に、粘着剤層(A)/シート状又はフィルム状の樹脂製層(B)/粘着剤層(C)がこの順に積層されて一体化されてなる3層構造を有する複合粘着剤層が、前記粘着剤層(A)と直接接した状態で設けられている上記[8]~[16]のいずれかに記載の耐火性部材。
[18]前記シート状又はフィルム状の樹脂製層(B)が、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる少なくともいずれかの樹脂製である上記[17]に記載の耐火性部材。
[19]前記シート状又はフィルム状の樹脂製層(B)が、ポリエステル系樹脂製である上記[17]に記載の耐火性部材。
[20]前記粘着剤層(A)及び前記粘着剤層(C)が、いずれもアクリル系樹脂粘着剤からなる上記[17]~[19]のいずれかに記載の耐火性部材。
本発明によれば、耐火性部材の重要な構成成分である原料の膨張性黒鉛が酸性であることの問題、長期使用において悪影響を生じることが懸念されるその残存酸の問題を、酸性域のものになり難い膨張性黒鉛粒子に変性できる新たな技術を提供することで改善することが可能になる。具体的には、耐火性部材製品の製造時に、製造用の加工機等の機械部品の金属に生じる腐食の問題の抑制や、耐火性部材製品を施工し、長期に渡って使用した場合に被着体に生じる金属腐食の問題を、安定して抑制することが可能になる。また、本発明によれば、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を含む樹脂製の耐火性部材の重要な構成成分である膨張性黒鉛が酸性で、長期使用において悪影響を生じることが懸念されるその残存酸の問題が改善されることに加えて、可塑剤を含む耐火性部材を、粘着剤層を用いて装着させた場合に、経時において、耐火性部材を構成している可塑剤が粘着剤層に移行することで生じる粘着剤の粘着力の変質の問題を効果的に安定して抑制することができる、粘着剤層を設けてなる耐火性部材の提供が可能になる。
以下、好ましい実施形態を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明者らは、先に説明した特許文献3の記載事項について確認するため、多くの市販品の膨張性黒鉛についてのpHをそれぞれ測定した。具体的には、下記の手順で膨張性黒鉛のpHを測定した。まず、市販品の膨張性黒鉛の保管条件等によるpHへの影響を考慮して、下記の前処理をした。市販品の膨張性黒鉛を、150℃、30分間の条件で加熱乾燥して、表面の水分等の揮発分を除去後、25℃まで冷却したものを、それぞれ測定用の膨張性黒鉛とした。そして、測定用の膨張性黒鉛1gをそれぞれ精製水15gに浸漬し、密閉状態で60℃、24時間加温後浸漬した黒鉛を取り出し後の液を、25℃に冷却してpH測定器でpHを測定した。pH測定器には、FUSO社製のPH-221E(商品名)を使用した。上記のようにして膨張性黒鉛を精製水に浸漬し、浸漬液について測定したpH値を、膨張性黒鉛の「初期pH値」と呼ぶ。また、他の検討例でも、膨張性黒鉛のpH値の測定は、上記した手順で行った。
上記のようにして初期pH値を測定した結果、表1に示したように、いずれの市販品の膨張性黒鉛も酸性を示すことが確認された。また、多くの銘柄(商品名)の市販品では、かなり強い酸性を示すこともわかった。なお、本発明の技術は、酸性を示す膨張性黒鉛を利用した耐火性部材の品質向上を目的としているため表には記載していないが、市販されている全ての膨張性黒鉛が酸性を示すものではなく、調べた中にも中性を示すものもあった。表1中に略称を記載した。これは、後述する実施例で原料に使用した膨張性黒鉛製品の表示として、これらの略称を用いたことによる。
Figure 2023174196000001
上記した「初期pH値」が酸性域を示した多くの酸性の膨張性黒鉛の市販品に対して、本発明者らは、本発明の耐火性部材の原料に用いる膨張性黒鉛の場合は、まず、膨張性黒鉛を浸漬させた液の「初期pH値」が酸性域を示さない程度に変性することが重要であり、更には、変性して実現させた酸性域でない状態を、できるだけ長期間に渡り安定して維持できるものにすることが望まれるとの認識をもった。即ち、例えば、本発明が目的としている耐火性部材は、窓サッシや戸口ドアの建築部材における耐火層を形成する重要な機能性部材であり、取り付けた後、場合によっては火災が生じない限り半永久的に使い続けられ、また、設置場所によっては風雨に晒される。これらのことから、原料とした酸性の膨張性黒鉛を「酸性でない状態」にしたとしても、使用されている間に「酸性でない状態」が次第に損なわれることが懸念される。このため、できるだけ長期間に渡って膨張性黒鉛が強い酸性を示さないようにすることが重要になる。
本発明者らの検討によれば、市販品に多い「初期pH値」が酸性の膨張性黒鉛を、「初期pH値」が酸性域にならない状態に変化させて変性することで、該膨張性黒鉛を含有してなる耐火性部材において、下記の優れた効果が得られる。即ち、市販品の膨張性黒鉛の「初期pH値」が酸性域であることの原因である強酸の残存酸を少なくできることで、残存酸による耐火性部材への影響を低減できる。具体的には、耐火性部材の加工機において、金属製の機械部品に生じる腐食の問題が低減できる。また、膨張性黒鉛において「酸性でない状態」ができるだけ長く維持できるようにすることで、使用時に、耐火性部材製品と貼り合わせする被着体が金属の場合などに引き起こされることがあった腐食の問題を低減することができる。
本発明の耐火性部材は、耐火性に優れる塩化ビニル系樹脂及び塩素化塩化ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂と可塑剤を少なくとも有してなり、かつ、機能性を発揮させるための膨張性黒鉛に、市販品に多い酸性の膨張性黒鉛を原料として用いた場合における改良である。具体的には、本発明の耐火性部材は、上記した成分に、更に、原料に用いた酸性の膨張性黒鉛の酸性度を中性域或いはアルカリ性域にする目的で、アミノ基を複数有する化合物とイソシアナート基を複数有する化合物のポリイソシアナート化合物とを併用して利用したことを特徴とする。以下、この点について説明する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、酸性の膨張性黒鉛に、アミノ基を複数有する化合物とポリイソシアナート化合物とを併用させて処理すると、「初期pH値」が酸性の膨張性黒鉛のpH値が、中性域或いはアルカリ性域(浸漬液のpH値が6以上9未満)を示すものになり、また、その状態が長く保たれることを見出した。この点についての詳細については後述する。本発明者らは、上記した2種類の化合物を併用させて酸性の膨張性黒鉛を処理したことで以下のことが起こり、上記した効果が得られたものと考えている。本発明で規定するアミノ基を複数有する化合物としては、ポリエチレンイミン化合物のような、イソシアナート基といずれも反応するポリアミノ基とポリイミノ基を有する化合物を含むものである。以下、これらを意味する本発明で規定する「アミノ基を複数有する化合物」を「アミノ基含有化合物」と呼ぶ。アミノ基含有化合物はアミノ基とイミノ基を有する化合物を含むため、これらをアミノ基等と呼ぶ場合もある。
まず、酸性の膨張性黒鉛に、アミノ基含有化合物と、ポリイソシアナート化合物(以下、「イソシアナート基含有化合物」とも呼ぶ)とを併用して添加させると、アミノ基等とイソシアナート基が反応して、反応物としていわゆる架橋樹脂が形成される。この反応後の状態は、アミノ基等が過多であると反応物がアミノ基等を有する構造のものになり、それによりアミノ基等を有する化合物が残存して、アルカリ性を示すことになる。このことが酸性の膨張性黒鉛のpHを変化させ、長期間に渡って「酸性でない状態」が保たれた大きな要因と考えられる。
しかし、本発明者らの検討によれば、酸性の膨張性黒鉛のpH値を変化させた要因は、上記したアミノ基含有化合物の添加のみに限らないことがわかった。本発明者らは、検討の過程で、アミノ基含有化合物を併用せずに、膨張性黒鉛にイソシアナート基含有化合物だけを添加したところ、著しくはないが、酸性の膨張性黒鉛のpH値が中性域側に変化する傾向にあることを見出した。そして、膨張性黒鉛に、アミノ基含有化合物を、併用するイソシアナート基含有化合物のイソシアネート基に対してアミノ基が過多である条件で添加した場合は勿論、アミノ基とイソシアナート基が50/50となる量で上記2種類の化合物を添加した場合も、更には、イソシアナート基が過多になる量で上記2種類の化合物を添加した場合にも、長期に渡って「酸性でない状態」が保たれることがわかった。本発明者らは、その要因は、イソシアナート基含有化合物のイソシアナート基が、膨張性黒鉛に由来する成分の活性水素基と反応したことによるか、或いは、アミノ基とイソシアナート基の反応で生成したウレア基に更にイソシアナート基が反応(ビューレット)すると考えている。即ち、膨張性黒鉛に添加されたイソシアナート基は、併用して添加されたアミノ基含有化合物のアミノ基と、膨張性黒鉛に由来する他の成分の活性水素との競争反応で消費されるため、必ずしも反応後にアミノ基が過多となる条件で添加する必要はなく、イソシアナート基が過多となる条件で添加した場合も、酸性の膨張性黒鉛を中性域或いはアルカリ性域のものにできることを見出した。また、この場合も膨張性黒鉛を「酸性でない状態」に保つことが可能になる。
上記したように、本発明の耐火性部材は、その構成成分として用いた酸性の膨張性黒鉛に、アミノ基含有化合物とイソシアナート基含有化合物とを併用して添加することで、膨張性黒鉛の残存酸による酸性を中和又は弱アルカリ性に変化させることができ、しかも、残存酸の中和が、継続的に保てるようになる。その結果、本発明の耐火性部材によれば、使用する膨張性黒鉛が酸性であることによる悪影響を、効果的に抑制できるようになる。これに対し、先に述べたように、従来技術では、アンモニアやアルカリ金属によって酸性の熱膨張性黒鉛を中和することが行われている。しかし、これらの物質による中和処理では、長期に渡って変化の少ない継続的な中和は困難であり、一旦は膨張性黒鉛粒子の表面の中和がなされても、経時的に生じる酸性化を安定して抑制することができない。
本発明の耐火性部材は、酸性の膨張性黒鉛粒子に、アミノ基含有化合物とイソシアナート基含有化合物とを併用させることを特徴とし、先に述べたように、アミノ基含有化合物と、イソシアナート基含有化合物とを併用したことで、アミノ基等とイソシアナート基が反応して、反応物として架橋樹脂が形成される。形成される樹脂としては、下記のようなものが挙げられる。
例えば、メラミンシアヌレートのアミノ基の一部又は全部をポリイソシアナートで架橋してなる樹脂、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラアミン等の脂肪族ポリアミンや、アミノビフェニルメタンのような芳香族ポリアミンと、ポリイソシアナートでアミノ基の一部又は全部を架橋した樹脂、ポリエチレンイミンのような樹脂と、ポリイソシアナートとの反応で、アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を架橋に組み込んだ架橋樹脂、尿素とホルマリンの樹脂で、ポリイソシアナートでアミノ基の一部又は全部を反応させた架橋樹脂、若しくは、尿素のアミノ基の一部とポリイソシアナートにより、末端にアミノ基を有する架橋樹脂等が代表的な例として挙げられる。中でも、ポリエチレンイミン、尿素化合物、メラミン化合物等とポリイソシアナート化合物の反応は水系で行えるので、作業の安全性の点でも好ましい。
本発明者らの検討によれば、アミノ基含有化合物とイソシアナート基含有化合物とを併用させる条件としては、これらの反応物である架橋樹脂の構造中にアミノ基が残存するようにすることが好ましい。しかし、先に述べたように、イソシアナート基が過多になる条件で併用させても結果としてアミノ基が残存すれば、本発明の効果を得ることができる。
本発明の耐火性部材は、その構成成分として酸性の膨張性黒鉛を用い、該膨張性黒鉛に、アミノ基含有化合物とイソシアナート基含有化合物とを併用させて処理すればよいが、予め、酸性の膨張性黒鉛に、イソシアナート基含有化合物とを用いて、その酸性を中性域或いはアルカリ性域に変化させる方法を用いてもよい。例えば、ポリイソシアナート基含有化合物を膨張性黒鉛粒子の表面に付着させてから水と接触させれば、イソシアナート基と水の反応でアミノ基が生成し、更に、このアミノ基の一部にイソシアナート基が反応してアミノ基を構造中に有する架橋樹脂が生成できる。しかしながら、この方法は、初めのポリイソシアナート基含有化合物を黒鉛粒子の表面に付着させる際に、ブロッキングを起こさずにするのは非常に困難であるという課題がある。
上述の各種のアミノ基、イミノ基との反応物として、ポリイソシアナート基以外の官能基、例えば、ポリカルボン酸基等との反応物も考えられる。しかしながら、カルボン酸基とアミノ基等との反応は比較的に高い温度を必要とし、膨張性黒鉛を用いたことで必要になる、膨張開始温度以下で反応させるとした条件を満たすことが困難である。或いは、塩素を有する化合物と、先に挙げたアミノ基含有化合物との反応物も考えられる。例えば、エピクロルヒドリン系ゴムや、塩素含有樹脂が挙げられる。しかしながら、塩素を有する化合物と、アミノ基含有化合物との反応では、発生する塩化水素の除去が必要になるといった別の問題がある。
膨張性黒鉛の表面の少なくとも一部に、予め、アミノ基含有化合物とイソシアナート基含有化合物との反応物を被覆或いは付着させた状態にする場合には、先に挙げた多様な選択肢の中から、下記に挙げる点を考慮して化合物を選択することが好ましい。水系で反応できること、反応が比較的低温で完結すること、反応成分が膨張性黒鉛粒子の表面の少なくとも一部を被覆或いは付着できるように反応が比較的穏やかに進行すること、などの諸条件を具備し、更には、反応時に除去すべき生成物の発生がないことなどが望まれる。
アミノ基等とイソシアナート基との反応は、高温であることを要しない付加反応であり、副生物も発生しないので簡便であり、極めて好ましい。反応溶媒については、下記の点を検討し、工夫をすることが好ましい。即ち、溶媒としては、油性と水性があり、いずれも利用できるが、作業の危険性や作業環境の向上から、水性溶媒を用いることが望ましい。一般的に、アミノ基含有化合物であって、かつ、水に溶解し易い化合物は多くあるので、材料選択の範囲は広い。
一方、イソシアナート基含有化合物の場合は、親水性の成分、例えば、エーテル結合を構造中に有することで水性にするなどの工夫が必要になる。市販されているイソシアナート基を有し、かつ、水性で利用可能なポリイソシアナート化合物としては、例えば、アクアネートシリーズ(商品名、東ソー社製)がある。但し、水性で利用した場合、イソシアナート基は、水と、アミノ基やイミノ基との競走反応になるので、反応の安定性に欠けるという問題がある。
上記の問題を考慮し、水系で反応をする場合は、アミノ基含有化合物と反応させる前に、予めイソシアナート基をブロックしておくことが好ましい。具体的には、アミノ基含有化合物と反応させる前に、低温で乖離するブロック剤とイソシアナート化合物とを反応させておけば、水系でもイソシアナート基が保護され安定であり、アミノ基含有化合物との反応を確実に行うことができる。
イソシアナート基のブロック剤としては、多数の構造の化合物が市販されている。特にメチルエチルケトンオキシムは、乖離開始温度が、膨張性黒鉛の膨張開始温度以下の、130~140℃の範囲であるので最適であり、市販品としては、例えば、MEKオキシム(商品名、宇部興産社製)などが挙げられる。また、同様に、低温乖離用のブロック剤として、3,5ジメチルピラゾール(日本ファインケム社製)が市販されており、その乖離温度は110~120℃であり、上記に挙げた市販品よりも更に低温である。しかし、水道水等の残存塩素と反応して異臭を放つことが知られており、取り扱いに注意を要する。なお、後述するように、本発明の試験例では、メチルエチルケトンオキシムを用いてブロックした。この点の詳細については後述する。勿論、ブロック剤を使用しなくても、イソシアナート基が水と反応する前にアミノ基等と優先的に反応し、かつ、黒鉛の表面を被覆或いは付着できる条件が確保されればよい。しかし、前述したように、水と、アミノ基やイミノ基との競争反応になることを完全には回避できないので、反応物である架橋樹脂が安定した組成(構造)に欠けるものになる。
先に述べたように、本発明の技術では、酸性の膨張性黒鉛に、アミノ基含有化合物とイソシアナート基含有化合物の、互いに反応する2種の化合物を併存させて処理したことで、膨張性黒鉛の酸性の「初期pH値」を中和域或いはアルカリ性域に変化させたことを特徴とする。本発明者らは、本発明の効果を得るためには、上記した2種の化合物をどのような比率で併用させることがより好ましいかについて、市販の酸性の膨張性黒鉛を用い、下記の方法で検討を行った。
酸性の膨張性黒鉛として、先に説明した表1に挙げた初期pH値が3.5である「富士EXP」と、初期pH値が2.2である「中越SFF」の2種を用い、アミノ基含有化合物としてポリエチレンイミン(エポミンSP012、日本触媒社製)を用い、併用するイソシアナート基含有化合物としてアクアネート200及びアクアネート105(商品名、東ソー社製)を用いて検討した。そして、(アミノ基+イミノ基)の基とイソシアナート基との比を調整した処理液を用いて膨張性黒鉛をそれぞれ処理した。
上記の(アミノ基+イミノ基)の基とイソシアナート基との比は、下記のようにして求めた。例えば、アクアネート200をXg採取した時に含有するイソシアナート基のモル量は、(X×0.12)/42となりアクアネート105の場合は(X×0.2)/42とした。対応するブロック剤のメチルエチルケトンオキシム(分子量87.12)は、イソシアナート基のモル数と同じになるように採取した。ポリエチレンイミンの「エポミンSP012」Yg中の(アミノ基+イミノ基)のアミノ基換算モル量は、(Y×19)/1000とした。そして、上記の各成分を所定のモル比になるように溶解して処理液とした。その際、検討に使用する処理液の固形分を3.3~3.4%濃度に統一した。なお、処理液の作製手順及び浸漬条件、乾燥条件、pH測定については、後述する実施例と同様にした。処理後の膨張性黒鉛について水洗操作を3回繰り返して、各水洗操作後の膨張性黒鉛のpH値を測定した。水洗操作の詳細については後述する。また、水洗処理後の膨張性黒鉛を用い、後述する促進試験を行って錆の発生の有無を調べて、上記pH値の変化と合わせて評価に用いた。その結果を表2-1と表2-2にまとめて示した。
本発明の目的は、先に説明したように、市販され、使用されている酸性の膨張性黒鉛に起因する、使用開始時点における、更には長期間使用した場合における金属の腐食(錆の発生)を効果的に抑制することにある。長期間の使用後における金属の腐食の抑制効果については、後述するように、金属の腐食の促進試験を行って、処理後の膨張性黒鉛が3回の水洗後においても錆発生の抑制効果を示すか否かで評価した。
Figure 2023174196000002
Figure 2023174196000003
表2-1及び表2-2の結果から明らかのように、処理液の調製において、(アミノ基+イミノ基)の合量とイソシアナート基との比率を変化させた場合、(アミノ基+イミノ基)の比率が増加するにつれて、処理後の膨張性黒鉛のpH値がアルカリ性に変化することが強まることが確認できた。しかし、(アミノ基+イミノ基)の比率が一定の比率を超えると、次第にアルカリ性への変化が飽和した状態になった。表2-1及び表2-2の結果に示されている通り、比を90/10にした処理液で処理した膨張性黒鉛のpH値は、100/0と同じ値であり、原料のポリエチレンイミンとほぼ同じであった。従って、ポリエチレンイミンの比率を多くし過ぎても本発明の効果の向上に寄与し得ないことに加えて、ポリエチレンイミンのSDSによる取扱い上の毒性を考慮すると安全性の点からも好ましくない。
表2-1及び表2-2の結果から、アミノ基含有化合物がポリエチレンイミン化合物である場合は、アミノ基含有化合物とイソシアナート基含有化合物との添加比率を、使用するポリエチレンイミン化合物のアミノ基とイミノ基の合量と、ポリイソシアナート化合物のイソシアナート基との比で、30/70~80/20とすることが好ましい。より好ましくは、比率が40/60~80/20の近辺となるように2種の化合物を使用するとよい。イソシアナート基の比率が多過ぎると、反応後に残存するアミノ基等が少な過ぎて、膨張性黒鉛における残存酸の中和が十分に行われなくなることが懸念される。一方、イソシアナート基の比率が少な過ぎると、アミノ基等が多く残存するので、ポリエチレンイミン単独に近い強アルカリ性となることが懸念される。
なお、表2-1及び表2-2及び後述の表11に示したように、本発明では、酸性の膨張性黒鉛に2種の化合物を併用して処理した後の膨張性黒鉛のpHの適正範囲を、3回目の水洗操作後のpH値で、下限を6.0以上、上限を9.0未満とした。また、総合判定は錆の発生の有無及びpH領域の両方の合格をもって合格とした。
ここで、50/50の比率で2種の化合物を用いて処理した場合、反応が反応比に忠実であればアミノ基等がイソシアナート基で消費されるので酸性の膨張性黒鉛が保有する残存酸に基づく酸性を示すと予想される。しかし、表2-1及び表2-2の結果では、中性域或いはアルカリ性域を示しており、上記の予想のようにはなっていない。おそらくイソシアナート基は、その全てが併用した化合物のアミノ基等と反応せず、先に記述した如く、一部が併用した化合物のアミノ基等以外の未確認の成分とも反応に用いられたと考えられる。このことは、後述する表7の比較例に示されているように、初期pH値が3.5である酸性の富士EXP、初期pH値が2.2である酸性の中越SFFに、それぞれイソシアナート基含有化合物を添加して該化合物のみで処理した場合に、pH値が変化したことからも推論される。即ち、先述したように、膨張性黒鉛に添加されたイソシアナート基は、併用して添加されたアミノ基等と膨張性黒鉛に由来する他の成分の活性水素基との競争反応でも消費されると考えられる。なお、アミノ基等の添加量を増やした場合に、膨張性黒鉛のpH値が飽和を示したことの理由については不明であるが、塩基点の数よりも塩基の強度の要素が大きいのかも知れない。
上記した2種の化合物を酸性の膨張性黒鉛に添加して処理することで確認された酸性の膨張性黒鉛のpH値の変化から、2種の化合物が反応してなる反応物(架橋樹脂)や黒鉛粒子由来の未確認の成分やすでに反応して生成した結合部とイソシアナート基との反応物が、黒鉛粒子の表面の少なくとも一部に被覆或いは付着したと考えられる。また、水洗後もpH値の変化が酸性に戻らず持続性を示したことから、黒鉛粒子の表面への被覆或いは付着した量は、膨張性黒鉛の残存酸による酸性を抑制するために必要な量も保持されていると考えられる。このため、酸性の膨張性黒鉛のpH値を変化させた本発明の膨張性黒鉛を利用することで、膨張性黒鉛粒子の内部から滲み出る残存酸があったとしても継続的な中和がなされるので、膨張性黒鉛を構成成分に用いた耐火性部材製品において、製造の際に生じる金属の腐食や、装着した被着体等の周囲への腐食が抑制され、膨張性黒鉛に起因した腐食が生じる危険性を低減することができる。
本発明者らは、機能性に優れる、膨張性黒鉛と、塩化ビニル系樹脂及び塩素化塩化ビニル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂(以下、塩化ビニル系樹脂と呼ぶ)と、可塑剤とを有してなる本発明の耐火性部材においては、窓サッシ等に粘着剤を用いて装着された状態で長期間に渡って使用されるため、上記した構成成分の膨張性黒鉛に起因した腐食の問題に加え、従来よりの課題である可塑剤の移行の問題について検討する必要があるとの認識をもった。特に、本発明の耐火性部材は、酸性の膨張性黒鉛のpHを中性域或いはアルカリ性域に変化させ、これを保つことができるように前記した2種類の化合物を併用する構成としたことから、これらの化合物を用いたことによる可塑剤への影響について検討する必要がある。耐火性部材が、膨張性黒鉛と、塩化ビニル系樹脂と、該樹脂を用いる場合に必要になる可塑剤とを有する構成である場合に、可塑剤の移行により粘着剤の粘着力の変質を招くことが知られている。本発明者らは、上記した膨張性黒鉛と可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂製の耐火性部材において生じる可塑剤の移行の問題を、より効果的に解決すべく鋭意検討を行った。上記に対し、可塑剤の構成を可塑剤の移行が低減されたものにする検討や提案もされているが、可塑剤としての性能低下が懸念されたり、何よりも材料が高価になるといった問題もある。特に、広く一般的に用いられているフタル酸系可塑剤を使用した場合において、可塑剤の粘着剤層への移行が低減されることが望まれている。
本発明者らは、上記した認識の下、鋭意検討した結果、後述するように、本発明の耐火性部材においては、アミノ基含有化合物であるポリエチレンイミンに由来するアルカリ性物質が可塑剤に溶出し、可塑剤を変質させることを見出した。このため、本発明の耐火性部材においては、特に耐火性部材を装着する際に相互に接触した状態で使用される粘着剤層への可塑剤の移行に対する対策をより確実に行う必要があるとの認識をもった。
本発明者らは、上記検討を行う過程で、まず、可塑剤の移行が、従来技術で問題とされている粘着剤層の粘着力に影響するだけでなく、本発明で問題としている膨張性黒鉛の残存酸が、先に述べたように、窓サッシや戸口ドア等の建築部材(以下、被着体とも呼ぶ)に腐食等の悪い現象を引き起こすことに加えて、残存酸が可塑剤に溶け込み、このことが粘着剤層の変質を招くとの認識をもった。これらの残存酸の問題に対して、本発明では、酸性の膨張性黒鉛の酸性を中性域或いはアルカリ性域にする目的で、アミノ基含有化合物とイソシアナート基含有化合物とを添加して処理することが有効であることを見出した。このように構成したことで、残存酸に由来して酸性を示す膨張性黒鉛を中性域或いはアルカリ性域に変化させ、しかも酸性域の状態になることを長期間にわたり抑制することが可能になるため、残存酸に起因する粘着剤層の変質は抑制される。
しかしながら、本発明者らは、その一方で、例えば、アミノ基含有化合物としてポリエチレンイミンを用いた場合、ポリエチレンイミンが可塑剤に溶出することを見出した。そして、結果として、表2-1、表2-2に示されているように、水洗により生じるpH値の変化が、2回目と3回目の変化よりも、1回目と2回目のpH値の変化が大きかったことから、脱離しやすいポリエチレンイミンが存在するとの知見を得た。これらのことから、耐火性部材と直接接触する粘着剤層への可塑剤の移行によって、可塑剤だけでなく、溶出ポリエチレンイミンによる粘着剤層の変質の問題が懸念される。上記のことから、本発明の耐火性部材に直接接する粘着剤層について、可塑剤の移行に好適に対応できる粘着剤層の検討は重要である。
先に従来技術として挙げた特許文献1では、粘着剤層が設けられているテープにおいて、テープの基材である可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂層と、該基材に積層させる粘着剤層との間に、可塑剤移行防止層を介在させて、基材から可塑剤が粘着剤層に移行することで生じる粘着剤の粘着力の低下を抑制することを提案している。この提案は、可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂層と粘着剤層とが直接接しないようにしたものである。また、先に従来技術として挙げた特許文献2では、可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂製の被着体への貼付用のラベルにおいて、粘着剤層とラベル基材との間に可塑剤移行防止層を介在させて、ラベル基材の性質を経時的に安定なものにすることを提案している。この提案では、粘着剤層への可塑剤の移行が、更に積層したラベルの基材に及ばないように可塑剤移行防止層を介在させている。即ち、いずれの方法も、積層する層間に可塑剤の移行を物理的に遮断する可塑剤移行防止層を設けることで、課題を解決している。
これに対し、本発明者らは鋭意検討した結果、粘着剤層を、単層でなく、下記のような3層構造を有する構成とすることが極めて効果的であることを見出した。具体的には、耐火性部材の少なくともいずれかの一面に、粘着剤層(A)/シート状又はフィルム状の樹脂製層(B)/粘着剤層(C)がこの順に積層されて一体化されてなる3層構造を有する複合粘着剤層を、前記粘着剤層(A)と直接接した状態で設けられた構成の、粘着剤層付きの耐火性部材とすることが好ましいことを見出した。この粘着剤層付きの耐火性部材では、例えば、耐火性部材の少なくともいずれかの一面に粘着層(A)が密着して配置されており、該耐火性部材を被着体に取り付ける際には粘着剤(C)を被着体に密着させる。
上記のようにして粘着剤層付きの耐火性部材を被着体に取り付けることで、シート状又はフィルム状の樹脂製層(B)の存在によって、耐火性部材の形成材料中に含まれる可塑剤やポリエチレンイミンに由来する成分が粘着層(A)に移行しても、粘着層(C)への移行を効果的に抑制することができる。このため、可塑剤の移行によって生じる粘着剤(C)の被着体に対する粘着力の変質の発生を効果的に防止することができる。
シート状又はフィルム状の樹脂製層(B)に使用される樹脂としては、可塑剤成分の移行を遮断する機能を有するものであればよく、特に限定されない。汎用性と柔軟性を考慮すると、例えば、ポリエステル、ハイインパクトポリスチレン、ポリエチレンエラストマー、ポリアミノ及びポリオレフィンを用いることが好ましい。上記に挙げた中で最も好ましいのは、ポリエステル(PET)である。
粘着剤層(A)又は粘着剤層(C)を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系、シリコン系、ブタジエンゴム系等を用いることができる。しかし、シリコン系は粘着力が弱く、ブタジエンゴム系はべたつきが強く、作業時に周囲汚染が激しいといった課題があるので、アクリル系の粘着剤が最も好ましい。
本発明の粘着剤層付きの耐火性部材の粘着剤層として好適な、粘着剤層(A)/シート状又はフィルム状の樹脂製層(B)/粘着剤層(C)の3層構造を有する粘着剤層を有するものとしては、いわゆる両面テープが挙げられる。中でも、基材有り両面テープと呼ばれているものが該当する。例えば、厚みが4~16μのポリエステル樹脂(PET)製のシート状又はフィルム状の樹脂製層(B)の両面に、アクリル系樹脂からなる粘着剤層(A)及び(C)が設けられており、両面テープの総厚み(A~C層の合計)が約50μ程度のものを用いることができる。なお、本発明の耐火性部材を粘着剤層付きにする場合、基材のない粘着剤層のみの構造の両面テープを用いることができる。しかし、可塑剤の移行の影響を回避するためには、先に説明した3層構造を有する粘着剤層を設けることが有効であり、好ましい。
以下、実施例、検討例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明する。下記の例で用いた原料の膨張性黒鉛には、先の表1に示した市販の膨張性黒鉛の中でも酸性の強い、富士EXP(初期pH値=3.5)、エアSS(初期pH値=2.0)、中越SFF(初期pH値=2.2)、伊藤953(初期pH値=4.4)及び日本EXP(初期pH値=1.9)を用いた。そして、まず、これらの膨張性黒鉛について、酸性の強い初期pH値を中性或いはアルカリ性に変化させる手段についての検討及び確認を行った。更に、初期pH値を中性或いはアルカリ性に変化させる該手段で変化させた膨張性黒鉛のpHが、容易には元の初期の酸性域にはならないことについて促進試験を行って確認をした。
表3に、上記に挙げた市販品の酸性の膨張性黒鉛のpH値を変化させる際に用いた「アミノ基含有化合物」の製造会社と商品名(銘柄)及び主要な特性を示した。表3中の枠外に、各製造会社から公表されている化合物の水溶液のpH値を参考値として示した。また、表4に、酸性の膨張性黒鉛の初期pH値を変化させる際に用いた、水分散可能な水系の自己乳化型硬化剤である、「イソシアナート基含有化合物」の製造会社と商品名(銘柄)と、実施例等の説明で用いた略称と、カタログに記載されたイソシアナート基の含有量を示した。また、表5に、使用したその他の薬品等をまとめて示した。表4及び表5中の略名は、説明の際に用いた呼び名である。
Figure 2023174196000004
Figure 2023174196000005
Figure 2023174196000006
<膨張性黒鉛の初期pH値を変化させる手段についての検討>
「アミノ基含有化合物」と「イソシアナート基含有化合物」とを酸性の膨張性黒鉛に併用して添加することで、酸性の膨張性黒鉛の初期pH値を変化させることについての検討及び確認を行った。下記に述べる手順で、酸性の膨張性黒鉛の初期pH値を変化させる際に用いる処理液を調製した。
[イソシアナート基のブロック]
まず、表4に示した水系のイソシアナート基含有化合物のイソシアナート基を公知の方法でブロック剤にてブロックして水溶液とした。ブロック剤にはMEKオキシムを用い、表6に示した量で用いた。なお、先に述べたように、イソシアナート基のブロックは、必要条件ではない。しかし、本発明では、水系で、アミノ基含有化合物と併用することでアミノ基等と反応させて反応物を形成させることを目的としているため、イソシアネート基をブロックして使用することが好ましい。
[処理液の調製]
先の表4に示したイソシアナート基含有化合物である「アクア200」と「アクア105」と、先の表3に示したアミノ基含有化合物であるポリエチレンイミンの「エポミンSP012」をそれぞれ表6に示した量で使用して、処理液A及び処理液Bを調製した。処理液Bでは、使用する溶媒をエタノールと精製水との混合溶媒とした。また、比較のため、処理液Cとして、アミノ基含有化合物を使用しない処理液を調製した。「アクア200」と「アクア105」は、後述したようにしてブロック剤のMEKオキシムでイソシアナート基をブロックして用いた。なお、組成に使用した各化合物等は、表3~表5に記載した略名で示した。表6に示した配合の各処理液の調製は、それぞれ下記のようにして行った。
Figure 2023174196000007
(処理液Aの調製)
表6に示した配合で、下記のようにして処理液Aを調製した。「イソシアナート基含有化合物」であるアクアネート200の全量と、ブロック剤であるMEKオキシム全量を混合すると発熱反応が生起する。100℃で30分間加熱し、次いで130℃で30分間加熱した。加熱後、室温まで冷却すると極めて粘調な液体が得られた。この際、イソシアナート基がブロックできたことについては、イソシアナート基の赤外の特性吸収帯(2260cm-1)が実質上消えていることで確認した。このブロック化したイソシアナート基含有化合物の液体に、「アミノ基含有化合物」であるエポミンの全量と、精製水を全量添加して、強力に撹拌して溶解液を作製し、白濁状の処理液Aを調製した。表6に示したように、処理液Aは「アミノ基含有化合物」のアミノ基等と「イソシアナート基含有化合物」のイソシアナート基の比率が60/40であり、固形分は、質量基準で3.35%である。
(処理液Bの調製)
表6に示した配合で、下記のようにして処理液Bを調製した。「イソシアナート基含有化合物」であるアクアネート105の全量と、ブロック剤であるMEKオキシム全量を混合すると発熱反応が生起する。100℃で30分間加熱し、次いで130℃で30分間加熱した。室温に冷却してからエタノールを全量添加して、粘調な反応物を溶解させる。次いで、「アミノ基含有化合物」であるエポミンの全量と、精製水を全量添加して白濁状の処理液Bを調製した。表6に示したように、処理液Bは「アミノ基含有化合物」のアミノ基等と「イソシアナート基含有化合物」のイソシアナート基の比率が60/40であり、固形分は、質量基準で3.37%である。
(処理液Cの調製)
「アミノ基含有化合物」であるエポミンを使用せずに、処理液Aと固形分がほぼ同様になるようにした処理液Cを調製した。具体的には、表6に示した配合で、「イソシアナート基含有化合物」であるアクアネート200の全量と、ブロック剤であるMEKオキシム全量の全量を混合し、加熱して得られた粘稠な液体に精製水の全量を添加して、処理液Cを調製した。固形分は、質量基準で3.32%である。
[処理液による酸性の膨張性黒鉛の処理]
上記のようにして調製した処理液A~Cをそれぞれ用いて、先に表1に挙げた市販の膨張性黒鉛の中でも酸性の強い、表7に示した5種の銘柄の酸性の膨張性黒鉛の初期pH値を変化させるための操作を、下記のようにして行った。上記でそれぞれ調製した各処理液に、予め150℃、30分間加熱乾燥して重量を測定した各膨張性黒鉛をそれぞれ浸漬させ、下記のようにして処理した。具体的には、表7に示した処理前の酸性の膨張性黒鉛の1gをそれぞれ、先に調製した処理液A又は処理液B又は処理液Cの各15gに10分間浸漬して取り出し、次いで、150℃、30分間加熱して黒鉛粒子の表面の少なくとも一部に反応物を生成させ、その後に25℃に冷却させて処理後の膨張性黒鉛を得た。即ち、処理液A又はBに浸漬させることで、酸性の黒鉛粒子の表面の少なくとも一部に、アミン基等を有する反応物を生成させて膨張性黒鉛の残存酸の中和を行った。比較のため、「アミノ基含有化合物」であるエポミンを使用しない処理液Cを用い、上記と同様の処理を行った。
[処理後の膨張性黒鉛pH値の変化の検討]
上記のような処理をすることで得られた「処理後の膨張性黒鉛」について下記のようにしてpH値を測定し、処理前の酸性の膨張性黒鉛の初期pH値と比較して、処理液による処理によって生じるpH値の変化について検討を行った。また、処理液の処理によって生じた、処理後の膨張性黒鉛の重量の増加について検討した。そして、結果を表7にまとめて示した。
(処理後の膨張性黒鉛の変化-初期pH値との比較と付着量)
表7における「処理前pH」とは、先に説明した表1に記載した「初期pH値」である。また、「処理後pH」とは、先に述べたようにして処理液で処理して得た膨張性黒鉛について、先に記述した「初期pH値」の測定と同様にして、処理後の膨張性黒鉛を浸漬させた液について測定したpH値である。また、表7における「反応物等付着%」は、質量基準で、各処理液で処理した前後で測定した重量から求めた膨張性黒鉛の重量の増加%であり、下記式で求めた数値である。下記式で用いた処理前の「処理前黒鉛重量」は、処理対象(原料)の市販の酸性の膨張性黒鉛を、処理試験前に150℃、30分間加熱した後、直ちに乾燥剤入りの密閉容器に入れて25℃まで冷却し、この冷却後の膨張性黒鉛について測定した数値である。
[(処理後黒鉛重量-処理前黒鉛重量)÷処理前黒鉛重量]×100
Figure 2023174196000008
表7の結果にある通り、処理液A及び処理液Bで処理された膨張性黒鉛は、いずれの場合も、pH値が、処理前の酸性域が、処理後にはアルカリ性域に変化したことを確認した。処理液Cで処理された膨張性黒鉛は、処理前の酸性域のpH値が、処理後に、若干、酸性度が変化したことが認められるものの、依然として酸性域のpH値であり、大きなシフトはみられなかった。このことは、ポリイソシアナート(架橋剤)のみの配合の処理液Cによる処理では、酸性の膨張性黒鉛の酸性度をアルカリ性域に極度にシフトさせることはできないものの、膨張性黒鉛の残存酸の低減に若干の効果があったことを示している。
上記した実施例における酸性域からアルカリ性域への極度の変化の要因は、膨張性黒鉛の表面に被覆或いは付着した2種の化合物の反応物(架橋樹脂)等中に存する、処理液に使用した「アミノ基含有化合物」に由来するアミノ基やイミノ基によると判断される。なお、上記実施例で使用したエポミン(商品名)は、ポリエチレンイミン化合物であり、該化合物は、構造中にイミノ基、アミノ基の両方を有しているので併記した。本発明者らは、上記実施例の反応物(架橋樹脂)が被覆或いは付着された膨張性黒鉛を取り出して、繰り返し精製水に浸漬して水洗を繰り返した場合に、水洗操作後の膨張性黒鉛は、処理液による処理前の膨張性黒鉛原料が示した「初期pH値」の強い酸性には戻らないことを確認した。以下、この点について説明する。
(処理前後の膨張性黒鉛のpH値の変化-水洗操作の繰り返しに対して)
表7に示した実施例1A、実施例2A、実施例3、実施例4及び実施例5の、いずれも処理液Aで酸性の膨張性黒鉛原料を処理して、その初期pH値を変化させた膨張性黒鉛について、その後のpH値の変化について確認する試験をした。具体的には、処理液Aで処理する前の膨張性黒鉛の原料と、該原料を処理液Aで処理した後の膨張性黒鉛の2種類について、繰り返し水洗をした後にそれぞれpH値を測定して、その変化の違いを確認した。pH値の測定は、同様の条件で行った水洗操作後に、同様の手順でpH値を測定するようにして、水洗操作を繰り返すことによって生じるpH値の変化を比較した。水洗操作は、下記に説明した手順を繰り返して、各回の水洗操作の終了後、水洗した各膨張性黒鉛について、それぞれpHの測定を行った。表8に、その結果を示した。
水洗操作の繰り返し及びpH値の測定は下記のように行った。まず、先に述べた原料の膨張性黒鉛(処理前の黒鉛)の「初期pH値」と比較するため、処理液Aで処理した後の各膨張性黒鉛(処理後の黒鉛)について、先に説明した「初期pH値」の測定の際に行ったと同様にして処理後の黒鉛を精製水に浸漬して得た液を用いてpH値を測定した。この測定結果を水洗操作1回目の「処理後の黒鉛のpH値」とした。上記したように、原料の膨張性黒鉛(処理前の黒鉛)についての水洗操作1回目のpH値は、「初期pH値」が該当する。
水洗操作2回目のpH値は、下記の水洗操作後に測定した。まず、処理前及び処理後のそれぞれの膨張性黒鉛についての水洗操作1回目のpH値の測定用の液から取り出した黒鉛を、60℃で30分間加熱して乾燥した。2回目の水洗操作として、乾燥後の膨張性黒鉛1gを再度15gの新たな精製水に浸漬して、60℃、20時間加温した。そして、黒鉛を取り出した後に25℃に冷却した液についてpH測定器でpHを測定し、その値を水洗操作2回目のpH値とした。pH測定器には、FUSO社製のPH-221E(商品名)を使用した。2回目のpH値を測定後、上記と同じの水洗操作を繰り返して3回目のpH値をそれぞれ測定した。処理前及び処理後のそれぞれの膨張性黒鉛について、水洗操作とpH値の測定を上記したようにして行った結果を、表8にまとめて示した。なお、表8中の1回目の結果は、先に表7で処理前及び処理後のpH値として示した値である。
Figure 2023174196000009
表8に示したように、同様の操作で水洗した場合、原料に用いたいずれの市販品も「処理前の黒鉛」の結果にある通り、水洗操作を3回繰り返してもpH値は強い酸性を示すことが確認された。本発明者らは、水洗操作によって、黒鉛粒子表面の残存酸が水に流出して少なくなり、水洗回数を重ねることで次第に酸性が弱まると想定した。しかし、想定に反して、表8に示した通り、先に行った水洗試験の条件では、pH値は、1回目のpH測定の酸性数値に比べて若干変化しているものの、水洗操作を繰り返してもほぼ保持しており、酸性域の値となった。
膨張性黒鉛の製造に使用されるのは硫酸に代表される無機酸であり、水への溶解度は極めて高いことから、水洗を繰り返す試験結果で、上記したようにpH値がそれほど変化していない事実についての理由は不明である。しかし、この点については下記の事由も考えられる。黒鉛粒子表面の残存酸が流出しても、黒鉛粒子の内部から表面に新たな残存酸の補填、即ち、滲み出しが生じたことが考えられる。主な理由が残存酸の滲みだしが事由であるかどうかは上記の水洗試験だけでは断言できないが、上記の試験結果は、水洗操作だけで、酸性の膨張性黒鉛を中性域或いはアルカリ性域にすることは難しく、可能にするためには非常に多くの洗浄操作が必要になることを示している。
上記に対し、酸性の膨張性黒鉛を処理して、アミノ基等を有する反応物(架橋樹脂)が被覆或いは付着してなる構成にした、先の実施例のpH値を変化させた膨張性黒鉛(処理後の黒鉛)の場合は、表8に示したように、1回目の水洗操作後の測定で、いずれの市販品についてもpH値が8.4以上のアルカリ性域になった。また、2回、3回の繰り返しの水洗操作後の測定で、水洗操作を繰り返すことでアルカリ強度が若干低下して収斂していくものの、いずれの場合も、中性域から弱アルカリ性域を保持することを確認した。
[処理後の膨張性黒鉛についての検討-反応物等の量]
まず、先の表6に示した組成の、固形分3.35%の処理液Aの組成比率を変えずに、固形分の値のみを表9中に示したように上げた複数種の処理液を調製した。調製した固形分の異なる処理液Aをそれぞれに用い、それ以外は実施例で行ったと同様にして、表1に示した「富士EXP」と「中越SFF」の2種類の市販の膨張性黒鉛を原料にして、それぞれ処理を行った。その結果、架橋樹脂(反応物)の付着量が異なる変性した膨張性黒鉛を得た。表9に、得られた変性した膨張性黒鉛についての特性と、先に説明したようにして測定した処理後の黒鉛のpH値を示した。表9中に、変性した膨張性黒鉛についての特性として、架橋樹脂の付着量と外観の違いをまとめて示した。また、表9中に、表6中に示した、固形分3.35%の処理液Aで「富士EXP」を処理した実施例1A、「中越SFF」を処理した実施例3の変性した膨張性黒鉛の特性を合わせて示した。
Figure 2023174196000010
表9に示したように、処理液の固形分濃度を上げても処理した膨張性黒鉛の水に対するpH値はそれほど大きく上昇しないことが確認された。表9中の独立粒子とは、手で軽くもむと解砕される状態を意味し、やや塊りとは、軽くもむことで解砕するが塊が多少残ることを意味する。架橋樹脂(反応物)の付着量が多くなり過ぎると、塊になり易くなるので十分に解砕して使用する必要が生じる。本発明の耐火性部材を製造する場合、膨張性黒鉛は、塩化ビニル系樹脂類及び可塑剤とともに混合され配合されるので、塊が多少残っても問題なく使用できる。しかし、黒鉛の解砕性を考慮すると架橋樹脂の付着量は、質量基準で、変性後の膨張性黒鉛を100%として、その0.5~10.0%増の範囲内であることが好ましい。本発明の変性膨張性黒鉛は、処理後に測定したpH値が、少なくとも中性域であり、アルカリ性域であることが好ましい。具体的にはpH値が9.0以下であればよく、表9から、解砕を考慮すると、より好ましくは9.0未満である。なお、pH値は、先の表7に記載した処理後の膨張性黒鉛のpH測定と同様にして測定した値である。
[処理後の膨張性黒鉛についての検討-ポリエチレンイミンの分子量]
実施例1Aの変性した膨張性黒鉛を得る際に用いた膨張性黒鉛の「富士EXP」と、処理液Aに用いたポリエチレンイミンを、分子量が異なるポリエチレンイミンに替えたこと以外は同様の処理液を用いて膨張性黒鉛を処理して、pH値の変化に与える影響について確認試験を行った。その際、表10に示したように、黒鉛粒子への架橋樹脂(反応物)の被覆・付着量をほぼ同じにした。ポリエチレンイミンには、エポミン(商品名、日本触媒社製)シリーズの、重量平均分子量が300、1200、1800、10000の4種を用いた。表10に、変性後の膨張性黒鉛についてのpH値まとめて示した。表6に示したと同様に、処理後に、先に説明した方法での水洗操作を3回繰り返し、各水洗後のpH値を測定した。その結果、表10に示したようにポリエチレンイミンの分子量による違いは殆どないことを確認した。
Figure 2023174196000011
[尿素又はメラミンを含む処理液で処理した膨張性黒鉛についての検討]
上記した例では、アミノ基含有化合物として、いずれもポリエチレンイミンを使用した。以下では、アミノ基含有化合物の例として、尿素及びメラミンについて同様の試験を実施した。使用したそれぞれの処理液の組成を表11に示した。メラミンは難溶であったので、比率は処理液Aに準じるが希薄溶液で使用した。膨張性黒鉛には「富士EXP」を使用した。「富士EXP」の処理前のpH値は、表7に示したように3.5である。処理液に膨張性黒鉛を投入し、取り出し後に60℃で乾燥した後、更に上記処理液に投入を繰り返して、架橋樹脂付着量(%)が0.5%以上になるまで行った。その他の操作及び測定方法は、先に説明した実施例1と同じにした。
表11に、変性した各膨張性黒鉛について、使用した処理液の組成と、反応物等の付着量(%)、水洗操作の1回目と3回目の後に測定したpH値を示した。黒鉛粒子に付着させた架橋樹脂は、「アミノ基含有化合物である尿素又はメラミン」と「イソシアナート」との反応物である。表11の実施例6A及び6B、実施例7A及び7Bの例では、理論上、反応物の構造中に「アミノ基含有化合物に由来するアミノ基を有する」ようにした。これらの例では、3回目の水洗後においてもpH値が7.0以上を示した。一方、処理液の組成が、理論上、官能基が残らない「アミノ基/イソシアナート基比=50/50」のものを用いた実施例6C、実施例7Cの例では、1回目の水洗でpH値が6.0、6.8であり、初期pH=3.5から中性域に変化したものの、上記した例に比べてpH値の変化が小さいことがわかった。
また、尿素又はメラミンを含む処理液で処理した膨張性黒鉛は、先の表7に示した実施例1Aのポリエチレンイミンを用いた処理液で「富士EXP」を処理した処理後の膨張性黒鉛と比べて、pH値が弱いアルカリ域となることが確認できた。このことから、処理に用いる「アミノ基含有化合物」として、本発明の目的に対しては、ポリエチレンイミンが尿素などよりも適しているといえる。なお、上記の試験で得た処理後の膨張性黒鉛は全て独立粒子であり、手で軽くもむと解砕され、耐火性部材の材料として適していると判断できた。
Figure 2023174196000012
[処理後の膨張性黒鉛を利用したことの実用上の評価(金属への影響)]
ポリエチレンイミンを含む処理液Aを用いてそれぞれ処理した、酸性の膨張性黒鉛に「富士EXP」を用いた実施例1Aの処理後の膨張性黒鉛と、酸性の膨張性黒鉛に「中越SFF」を用いた実施例3の処理後の膨張性黒鉛について、金属板と長期間接触させた場合の金属への影響について検討試験をした。尿素を含む処理液を用いた実施例6の処理後の膨張性黒鉛と、メラミンを含む処理液を用いた実施例7の処理後の膨張性黒鉛についても同様に、金属への影響を検討した。具体的には、上記した実施例の、膨張性黒鉛の表面の少なくとも一部に反応物(架橋樹脂)が被覆或いは付着された処理後の更に3回水洗後の膨張性黒鉛を、清浄処理した2枚の銅板間に挟み密着させ、密封した状態にして60℃で72時間ホールドした。72時間経過後、室温まで冷却して開封して銅板の状態を目視観察した。
そして、上記した促進試験による銅板の錆の発生の有無で、変性した膨張性黒鉛による影響を評価した。目視観察で、明らかに錆の発生がない場合を○と評価し、明らかに錆が発生した場合を×と評価し、明確な錆には見えないが変色している場合は△とした。結果を表12に示した。この3回洗浄という過酷な促進試験で錆の発生が無いことで、長期の安定性が確信できると判断される。
Figure 2023174196000013
表12に示した結果から、本発明の目的である耐火性部材を長期間取り付ける場合に懸念される被着体の金属への接触腐食(錆)の原因となる、構成材料の膨張性黒鉛の酸性の問題を、アミノ基含有化合物とイソシアナート基含有化合物との反応物(架橋樹脂)を膨張性黒鉛に被覆(付着)させることで回避(抑制)できることが確認された。先の試験例や上記した試験結果から、原料の酸性の膨張性黒鉛に被覆或いは付着させた、アミノ基含有化合物とイソシアナート基含有化合物との反応物(架橋樹脂)は、特に反応物中にアミノ基等を有するように上記2種の化合物を併用するように構成することで、変性した膨張性黒鉛が酸性域になることを長時間抑制でき、そのことによって被着体である金属への接触腐食(錆)の問題を抑制されることが確認できる。
[実施例の処理後の膨張性黒鉛について-可塑剤との相溶性]
表7に示したように、処理後の膨張性黒鉛は特定の処理液で処理することで、いずれの市販品についてもpH値が8.4以上のアルカリ性域になり、水洗操作を繰り返すと、pH値が、これにより中性域ないし弱アルカリ性域になることが確認された。そして、この水洗操作を繰り返すとpH値が弱アルカリ性ないし中性域へと変化した事実は、膨張性黒鉛の少なくとも一部から、アルカリ成分が周囲に流出することを示している。但し、水洗を重ねても弱アルカリ性ないし中性域に収斂してゆくので、その場合であっても原料に用いた膨張性黒鉛の酸性は失われており、高い酸性の初期pH値に戻ることはない。また、先に述べたように、塩素とアミノ基は反応するので、耐火性材料を形成するための樹脂組成物中に塩化ビニル系樹脂を用いると、高温では黒鉛粒子に被覆或いは付着した架橋樹脂のアミノ基の一部が失われることも想定されるが、常温では殆ど反応しないと考えられる。
本発明者らは、この点について鋭意検討する過程で、本発明の変性した膨張性黒鉛を特徴づける反応物(架橋樹脂)或いは該反応物の形成に用いた化合物が、塩化ビニル系樹脂と併用される可塑剤に相溶することを見出した。即ち、本発明の変性した膨張性黒鉛は、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを有してなる耐火性部材に適用することが好ましい。上記構成の耐火性部材において、本発明の変性した膨張性黒鉛は、塩化ビニル系樹脂とともに可塑剤と混和されている。ここで、先述したように、可塑剤は、ブリード及び移行の性質がある。本発明者らは、上記構成の耐火性部材中に本発明を特徴づける反応物(架橋樹脂)或いは該反応物の形成に用いた化合物が存在することで可塑剤に与える影響について確認する目的で、下記の溶出試験を行った。
先のようにして処理液での処理後の各膨張性黒鉛5gに、種類の異なる可塑剤5gを加えて軽く撹拌後、60℃で24時間放置した。次に、膨張性黒鉛と可塑剤を分離して、分離した可塑剤3gにテトラヒドロフラン(THF)2gと水2gを加え、これにフェノールフタレインを指示薬として滴下し、5分間撹拌した。この結果、極めて淡いがピンク色が確認された。得られた結果から、イソシアナート化合物とポリエチレンイミンで処理した処理後の膨張性黒鉛から、ポリエチレンイミンに由来するアルカリ性物質が可塑剤に溶出したと判断した。上記試験結果を、表13にまとめて示した。上記試験では、膨張性黒鉛として、表1に示した略称で、「富士EXP」、「中越SFF」及び「中越EMF」をそれぞれ用い、可塑剤には、汎用されている表13に記載のものを用いた。
Figure 2023174196000014
表13に示したように、SE100(エポキシ化大豆油)は、変色を示さないのでこの可塑剤には、ポリエチレンイミンに由来するアルカリ性物質が溶出しないと考えられる。確認のため、黒鉛粒子が存在しない状態で、別の試験方法で可塑剤とポリエチレンイミンの相溶性の確認を行った。先に試験をした各可塑剤10gに、変性処理に用いたポリエチレンイミン(SP012)1gとフェノールフタレンを指示薬として加えて撹拌して、60℃で24時間放置した。その結果、表13に示した試験結果に比べてより鮮明な赤色の呈色を示しこと以外、先の試験例と同様の結果を得た。この試験結果からも、ポリエチレンイミンは可塑剤に対して相溶性があることが確認された。即ち、処理後の変性した膨張性黒鉛を用いた耐火性材料で、膨張性黒鉛から離脱する変性処理に用いたポリエチレンイミンに由来する物質があれば、耐火性材料の構成材料として共存している可塑剤に溶出すると判断される。このことは、耐火性部材を構成する可塑剤の多くがポリエチレンイミンに由来する物質で変質することを意味する。そして、変質した可塑剤の移行の問題は残ると考えられるので、下記に述べるように、耐火性部材と直接接触する粘着剤層への可塑剤の移行を防止する必要がある。
耐火性材料は、取り付けの際に粘着剤層に接して使用される。本発明者らは、基材無し両面テープを粘着剤層として、従来の熱膨張性黒鉛を含んでなる耐火性材料からの可塑剤の滲み出しの状況を確認した。その結果、従来の耐火性材料からブリードした可塑剤が粘着剤層を突き抜けて粘着剤層の表面まで滲み出るほど多量であることを確認した。本発明では、その対策として、先に述べた変性した熱膨張性黒鉛を用いることに加えて、粘着剤層に、後述するように、粘着剤層(A)/シート状又はフィルム状の樹脂製層(B)/粘着剤層(C)がこの順に積層されて一体化されてなる3層構造を有する複合粘着剤層を用いることでブリードの影響を大幅に改善した。
[処理後の膨張性黒鉛を利用した耐火性シートに用いる粘着剤層についての検討]
ポリエチレンイミンを含む処理液Aを用いて変性した「富士EXP」の実施例1Aの黒鉛を用い、表14の配合の耐火性シートを作製した。具体的には、表14の配合物を離型紙にコートして、160~200℃、20分間加熱して、厚さ1.5mmの耐火性シートを作製した。そして、得られた耐火性シートから巾15mm、長さ100mmを切り出して、試験用の試料とした。
Figure 2023174196000015
上記のようにして調製した短冊状の耐火性シートの試験試料の片側に、下記の構成の異なる2種類の接着剤層をそれぞれに貼り合わせて積層体として、後述の方法で促進させた耐火性シートからの可塑剤のブリード試験を行った。具体的には、試験試料に粘着剤のみからなる単層の粘着剤層を貼り合わせた積層体と、粘着剤層(A)/樹脂シート(B)/粘着剤層(C)の3層構造の粘着剤層を貼り合わせた積層体の2種類について試験した。単層の粘着剤層として、表15に記載した複数種の基材無し(レス)両面テープ製品を用い、3層構造の粘着剤層として、表15に記載した複数種の基材有り両面テープ製品を用いた。両面テープには、いずれも15mm巾のものを用いた。
それぞれの接着剤層への耐火性シートからの可塑剤のブリードを確認するための促進試験は、下記の手順で行った。まず、短冊状の耐火性シートと粘着剤層の貼り合わせを、巾15mmの短冊状の耐火性シートに各両面テープの一方の粘着剤面を配置し、荷重2kgで2回往復させることで密着させた後、40℃で5時間加熱してから室温に冷却する条件で行った。次に、各両面テープの、耐火性シート側でない他方の粘着剤層面までの可塑剤のブリードの有無を確認するため、検出紙を用い下記の方法でブリードの発生を調べた。
具体的には、下記の2種類の市販のあぶらとり紙を検出紙として用い、下記のようにしてブリードの発生の有無を調べ、評価した。まず、検出紙を上記粘着剤層面に配置し、15mm巾に荷重2kgで1回往復させて、検出紙を粘着剤層表面に密着させた後、80℃で4時間加熱した後、室温に戻してから粘着剤層から検出紙を剥離した。そして、検出紙に生じた可塑剤の滲み出しの有無を目視にて観察し、粘着剤層への影響を評価した。検出紙には、検出紙Aとしてあぶらとり紙(Laihao社製)、検出紙Bとして高級あぶらとり紙(貝印社製)の2種の市販品を用いた。
上記のようにして確認した結果を表15にまとめて示した。評価は、目視観察で、検出紙に滲み出しがある場合を可塑剤のブリードありとして「×」、検出紙に滲み出しがない場合を可塑剤のブリードなしとして「○」とした。表15にある通り、粘着剤層(A)/樹脂シート(B)/粘着剤層(C)の3層構造の粘着剤層をもつ「基材有り両面テープ」では、可塑剤のブリードは全て無かった。一方、単層の粘着剤層で構成された「基材無し両面テープ」では、可塑剤のブリードが全て顕著であった。従って、本発明の処理後の膨張性黒鉛を使用してなる、塩化ビニル系樹脂類と可塑剤が配合されてなる耐火性部材では、耐火性部材を貼り付けるための粘着剤層として「基材有り両面テープ」を利用することが特に好ましいことが確認された。
Figure 2023174196000016
本発明の耐火性部材は、樹脂成分として塩化ビニル系樹脂を用いてなるが、このような樹脂成分を含む耐火性シートなどを貼り付ける場合に使用される粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ブチルゴム系粘着剤が考えられる。しかし、シリコン系粘着剤は接着力が弱く、また、ブチル系粘着剤は流動性が高く作業時に周囲を汚染する欠点があるので、市販品の殆どがアクリル系粘着剤である。このため、実用性を考慮して、上記では、アクリル系粘着剤を使用した粘着剤層について検討を行った。表15に示したように、粘着剤層(A)/シート状又はフィルム状の樹脂製層(B)/粘着剤層(C)がこの順に積層されて一体化されてなる3層構造の、基材有りの両面テープを粘着剤層として用いることで、検討した全ての両面テープで、可塑剤を含有する耐火性シートからのブリードを効果的に抑制できることが確認された。一方、基材無しの粘着剤層のみの単層の両面テープを用いた場合は、検討した全ての両面テープについて可塑剤の移行が確認された。このことは、3層構造の基材有りの両面テープを使用した場合は、耐火性シートに接する粘着剤層(A)に耐火性シートからのアルカリ成分を含む可能性のある可塑剤の移行が避けられなくとも、基材であるシート状又はフィルム状の樹脂製層(B)で可塑剤の移行が遮断されるので、被着体と接する粘着剤層(C)にまで可塑剤が移行することが抑制され、阻止されることを示している。上記した結果から、本発明の耐火性部材を被着体である窓サッシや戸口ドアなどに貼り付けて使用する場合に、粘着剤層として3層構造を有する基材有りの両面テープを用いれば、基材の無い単層の粘着剤層の両面テープを用いた場合と比較して、高い粘着力が保持され、長期間、良好な状態で耐火性シート等の部材を設置できることがわかった。

Claims (20)

  1. 原料の酸性の膨張性黒鉛に、アミノ基を複数有する化合物とイソシアナート基を複数有するポリイソシアナート化合物とが添加されてなり、かつ、前記膨張性黒鉛の黒鉛粒子の表面の少なくとも一部に、前記アミノ基を複数有する化合物と前記ポリイソシアナート化合物との反応物が少なくとも被覆或いは付着してなることを特徴とする変性膨張性黒鉛。
  2. 添加されている前記アミノ基を複数有する化合物と前記ポリイソシアナート化合物との合量が、前記酸性の膨張性黒鉛100質量部に対し、0.5質量部~10質量部の範囲内である請求項1に記載の変性膨張性黒鉛。
  3. 前記アミノ基を複数有する化合物が、ポリエチレンイミン化合物、尿素化合物及びメラミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の変性膨張性黒鉛。
  4. 前記ポリエチレンイミン化合物と、前記ポリイソシアナート化合物の添加比率が、前記ポリエチレンイミン化合物のアミノ基とイミノ基の合計と、前記ポリイソシアナート化合物のイソシアナート基との比で、30/70~80/20である請求項3に記載の変性膨張性黒鉛。
  5. 前記尿素化合物又は前記メラミン化合物と、前記ポリイソシアナート化合物の添加比率が、前記尿素化合物又は前記メラミン化合物のアミノ基と、前記ポリイソシアナート化合物のイソシアナート基との比で、70/30~90/10である請求項3に記載の変性膨張性黒鉛。
  6. 前記ポリイソシアナート化合物が、水系ポリイソシアナート化合物である請求項1又は2に記載の変性膨張性黒鉛。
  7. 前記ポリエチレンイミン化合物の重量平均分子量が、300~10000である請求項3に記載の変性膨張性黒鉛。
  8. 膨張性黒鉛と、塩化ビニル系樹脂及び塩素化塩化ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂と、可塑剤とを少なくとも有してなる耐火性部材であって、
    前記膨張性黒鉛が酸性の膨張性黒鉛であり、アミノ基を複数有する化合物とイソシアナート基を複数有するポリイソシアナート化合物とが添加されてなり、かつ、前記アミノ基を複数有する化合物と、前記ポリイソシアナート化合物の合量の添加量が、前記酸性の膨張性黒鉛粒子100質量部に対し、0.5質量部~10質量部の範囲内であることを特徴とする耐火性部材。
  9. 膨張性黒鉛粒子と、塩化ビニル系樹脂及び塩素化塩化ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂と、可塑剤とを少なくとも有してなる耐火性部材であって、
    前記膨張性黒鉛粒子が、原料とした酸性の膨張性黒鉛の黒鉛粒子の表面の少なくとも一部に、アミノ基を複数有する化合物と、イソシアナート基を複数有するポリイソシアナート化合物との反応物が被覆又は付着されていることを特徴とする耐火性部材。
  10. 前記アミノ基を複数有する化合物が、ポリエチレンイミン化合物、尿素化合物及びメラミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種である請求項8又は9に記載の耐火性部材。
  11. 前記ポリエチレンイミン化合物と、前記ポリイソシアナート化合物の添加比率が、前記ポリエチレンイミン化合物のアミノ基とイミノ基の合計と、前記ポリイソシアナート化合物のイソシアナート基との比で、30/70~80/20である請求項10に記載の耐火性部材。
  12. 前記尿素化合物又は前記メラミン化合物と、前記ポリイソシアナート化合物の添加比率が、前記尿素化合物又は前記メラミン化合物のアミノ基と、前記ポリイソシアナート化合物のイソシアナート基との比で、70/30~90/10である請求項10に記載の耐火性部材。
  13. 前記樹脂100質量部に対し、前記膨張黒鉛粒子を10質量部~200質量部、前記可塑剤を100質量部以下の量で有してなる請求項8又は9に記載の耐火性部材。
  14. 前記可塑剤が、フタル酸系可塑剤、トリメット系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及びポリエステル系高分子可塑剤からなる群から選ばれる少なくともいずれかである請求項8又は9に記載の耐火性部材。
  15. 前記樹脂の重合度が、400~3000範囲内である請求項8又は9に記載の耐火性部材。
  16. シート又は成形体である請求項8又は9に記載の耐火性部材。
  17. 更に、少なくともいずれかの一面に、粘着剤層(A)/シート状又はフィルム状の樹脂製層(B)/粘着剤層(C)がこの順に積層されて一体化されてなる3層構造を有する複合粘着剤層が、前記粘着剤層(A)と直接接した状態で設けられている請求項8又は9に記載の耐火性部材。
  18. 前記シート状又はフィルム状の樹脂製層(B)が、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる少なくともいずれかの樹脂製である請求項17に記載の耐火性部材。
  19. 前記シート状又はフィルム状の樹脂製層(B)が、ポリエステル系樹脂製である請求項17に記載の耐火性部材。
  20. 前記粘着剤層(A)及び前記粘着剤層(C)が、いずれもアクリル系樹脂粘着剤からなる請求項17に記載の耐火性部材。
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