JP2023173435A - メルトブロー不織布及びこれを備えたフィルタ - Google Patents

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Shigeo Ito
俊也 田▲嶋▼
Toshiya Tajima
一美 福原
Kazumi Fukuhara
智彦 田村
Tomohiko Tamura
洪林 金
Jinfeng Kim
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Abstract

【課題】異孔径ノズルを用いて製造された従来のメルトブロー不織布に比べて、繊維径の分布範囲が広く、かつ繊維の粗密によるムラの少ないメルトブロー不織布を提供すること。【解決手段】繊維径の異なる複数の熱可塑性樹脂繊維を含むメルトブロー不織布であって、熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が5μm以上であり、平均繊維径の0.5倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が10%以上である、メルトブロー不織布。【選択図】なし

Description

本発明は、メルトブロー不織布及びこれを備えたフィルタに関する。
メルトブロー不織布は、気体及び液体を始めとする物質のフィルタとして広く使用されており、物質をより多くより長期間捕集できるよう、フィルタ寿命の長期化が求められている。
特許文献1は、小径のノズルと大径のノズルを一定比率で有するノズルピースを用いて製造されたメルトブロー不織布について開示している。このメルトブロー不織布では、太い繊維と細い繊維が混在することにより、太い繊維で繊維の空間を保ちながら、細い繊維で表面積を広げて捕集効率を上げることが可能となっており、圧力損失が低く、かつ粒子の捕集効率が高いフィルタ濾材が達成されている。
特許文献2は、繊維径0.1μm~1.5μmである繊維の割合が10~30%、繊維径3~10μmである繊維の割合が30~60%であることを特徴とするメルトブロー不織布シートについて開示している。特許文献2では、小孔径のノズルと大孔径のノズルとして特許文献1とは異なる比率(小孔径ノズル:大孔径ノズル=1:1)のノズルピースを用いている。また、かかるメルトブロー不織布シートをエレクトレット化することで高捕集性能と低圧力損失を得ている。特許文献2のメルトブロー不織布シートのQF値は0.130~0.250Pa-1となっている。
特許文献3は、互いに異なる熱可塑性樹脂を用いて構成された2種の長繊維が混繊されてなる不織布について開示している。異なる熱可塑性樹脂は、それぞれのギアポンプ及びノズルから紡糸され、好ましくは繊維径0.1~1.5μmである長繊維の割合が30構成本数%以上、かつ3μm~10μmである長繊維の割合が30%未満である。
特許文献4は、2~20列の多段ノズルから排出された複数のフィラメントを紡糸することで製造された幅広い繊維径を有するかさ高い不織ウェブについて開示している。
特許文献5は、混繊不織布を製造する方法において、繊維群Aを構成する樹脂と繊維群Bを構成する樹脂を、それぞれ別々の押出機で溶融すると共に別々の紡糸孔から吐出し、繊維群Aの吐出孔からのポリマー単孔吐出量を小さくし、繊維群Bの吐出孔からのポリマー単孔吐出量を大きく設定することにより、所望の単繊維径を有する混繊不織布を得ることについて開示している。
特開平11-131353 特開2006-37295 特開2013-40412 特表2020-505530 特開2016-160542
液体フィルタやエアフィルタでは、高効率、低圧力損失、かつ高寿命の製品が求められている。特許文献1のノズルピースを用いて不織布を製造する場合、高寿命は達成することができた。しかし、紡糸する繊維が太くなる場合や低目付とする場合、繊維を太くしていくと、不織布外観上で繊維の密集した部分と目の粗い部分からなるムラ、つまり繊維の粗密によるムラが大きくなり、この繊維ムラにより、地合の悪化が発生し、繊維密度の低い箇所で濾過対象物質を取り逃し、高効率化が困難となる場合がある。
特許文献2では、細繊維の割合が少ないため、効率と圧力損失のバランスが改善しきれていない。
特許文献3、4、5のような装置を用いた場合、設備が非常に大きくなりコストも増大する。
メルトブロー不織布における繊維の粗密によるムラを抑えつつ、繊維径の分布範囲をさらに広げることができれば、物質の捕集能力が向上し、フィルタの長寿命化の要求が叶えられる。
本発明の目的は、繊維径の分布範囲が広く、かつ繊維の粗密によるムラの少ないメルトブロー不織布を提供することにある。
かかる状況の下、本発明者らは、鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が5μm以上という繊維径が太い熱可塑性樹脂繊維を含むメルトブロー不織布であっても、繊維径が小さい熱可塑性樹脂繊維の割合を増加させることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。従って、本発明は、以下に記載の実施形態を包含する。
項1.繊維径の異なる複数の熱可塑性樹脂繊維を含むメルトブロー不織布であって、
熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が5μm以上であり、平均繊維径の0.5倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が10%以上である、メルトブロー不織布。
項2.メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が30%以上である、項1に記載のメルトブロー不織布。
項3.メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が1%以上である、項1又は2に記載のメルトブロー不織布。
項4.前記熱可塑性樹脂繊維の樹脂成分が、ポリオレフィン、ポリエステル及びポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、項1~3のいずれかに記載のメルトブロー不織布。
項5.一対の金属ロールから成る0.1mmクリアランスのカレンダーロールに前記メルトブロー不織布を通過させた後の圧縮による通気度の低下が、通過前の20%以下である項1~4のいずれかに記載のメルトブロー不織布。
項6.一対の金属ロールから成る0.1mmクリアランスのカレンダーロールに前記メルトブロー不織布を通過させた後の圧縮による厚みの低下が、通過前の35%以下である項1~4のいずれかに記載のメルトブロー不織布。
項7.一対の金属ロールから成る0.1mmクリアランスのカレンダーロールに前記メルトブロー不織布を通過させた後の圧縮による、通気度の低下の厚みの低下に対する比が0.8以下である項1~4のいずれかに記載のメルトブロー不織布。
項8.破裂強度の目付に対する比(kPa/(g/m2))が1.0以上である項1~7のいずれかに記載のメルトブロー不織布。
項9.添加剤としてヒンダードアミン系光安定剤および/または結晶核剤を含むエレクトレット不織布であり、QF値が0.2以上である項1~8のいずれかに記載のメルトブロー不織布。
項10.項1~9のいずれかに記載のメルトブロー不織布を備えるフィルタ。
本発明によれば、繊維径の分布範囲が広く、かつ繊維の粗密によるムラの少ないメルトブロー不織布を提供することができる。かかる不織布は、圧力が加えられても厚みが減少しにくく、物質の濾過後も通気度が減少しにくい。このため、かかる不織布を用いたフィルタは捕集効率と圧力損失のバランスが改善されており、長寿命化が期待される。
本発明のメルトブロー不織布の製造方法のプロセスの概略図である。 (A)図1の装置におけるノズル3c部分の紡糸ノズルの配列を示す部分正面図である。(B)ノズル3cの部分斜視図である。(C)図2(A)に示すノズル3cのX1-X1での断面図である。
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであって、本発明はそれらに限定されるものではない。
本発明は、繊維径の異なる複数の熱可塑性樹脂繊維を含むメルトブロー不織布であって、熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が5μm以上であり、平均繊維径の0.5倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が10%以上である、メルトブロー不織布を提供する。
本発明のメルトブロー不織布における熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径は、5μm以上である。メルトブロー不織布の平均繊維径つまりメルトブロー不織布を構成する繊維の平均繊維径は、メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真において、1画像当たり25本程度の繊維が入る倍率にて、4枚の画像を撮影し、任意に選択した合計100本の繊維を、直径0.1μmオーダーまで繊維径を測定し、それらを平均して求める。
メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.5倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合は、メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真から任意に繊維100本を選択し、各繊維の繊維径を直径0.1μmオーダーまで測定して、100本の繊維の平均繊維径を算出すると共に、平均繊維径の0.5倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の本数を100で除して100を乗じた値である。
平均繊維径の0.5倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が10%以上であると、比較的繊維径の小さい繊維がメルトブロー不織布中に大きな割合で存在することになり、メルトブロー不織布の繊維の粗密によるムラが低減し、粒子捕集効率が良好となる。
このような本発明のメルトブロー不織布は、従来の平均繊維径が5μ以上であるメルトブロー不織布よりも、細い繊維径の割合が増えて繊維径の分布範囲が広くなっており、かつ繊維の粗密によるムラが少ない。かかる不織布は圧力が加えられても厚みが減少しにくく、濾過対象の物質(以下、濾過対象の物質を単に「物質」と称する場合がある)の濾過後も通気度が減少しにくい。このため、かかる不織布を用いたフィルタは繊維構造を保持する能力が高く、高度な濾過性能及び長寿命化が期待される。
好ましくは、メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合は、30%以上である。
メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合は、メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真から任意に繊維100本を選択し、各繊維の繊維径を直径0.1μmオーダーまで測定して、100本の繊維の平均繊維径を算出すると共に、平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の本数を100で除して100を乗じた値である。
平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が30%以上であると、繊維径の小さい繊維がメルトブロー不織布中に大きな割合で存在することになり、メルトブロー不織布の繊維の粗密によるムラが低減し、粒子捕集効率が良好となる。
好ましくは、本発明のメルトブロー不織布は、メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が1%以上である。
メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合は、メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真から任意に繊維100本を選択し、各繊維の繊維径を直径0.1μmオーダーまで測定して、100本の繊維の平均繊維径を算出すると共に、平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の本数を100で除して100を乗じた値である。
平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が1%以上であると、比較的繊維径の大きい繊維がメルトブロー不織布中に存在することになり、メルトブロー不織布の繊維間の隙間が確保されて通気性が増大するとともに、耐圧縮性が向上する。
本発明のメルトブロー不織布の熱可塑性樹脂繊維の繊維径の標準偏差は特に限定されないが、繊維径の標準偏差が1.2以上であってよい。本発明のメルトブロー不織布の繊維径の標準偏差が1.2以上であると、繊維径の分布範囲が大きく、より細い繊維とより太い繊維が混在することになる。このため、繊維の粗密によるムラが抑制され、地合いが良い。また、メルトブロー不織布をフィルタとして使用した時に細い繊維で高い粒子捕集能力を確保し、太い繊維で濾過圧力による圧縮を抑えられ、厚み方向でより多くの粒子を捕集できるため、フィルタ寿命が改善できる。いくつかの実施形態では、メルトブロー不織布の熱可塑性樹脂繊維の繊維径の標準偏差は4.0以上14.0以下である。
本発明において、繊維径の標準偏差uは、電子顕微鏡写真において、100本の繊維の各繊維の繊維径xiと、平均繊維径xaveとを算出し、以下の式(1)により求められる値である。
nは測定した繊維の総数(n=100)、xiは各繊維の繊維径の値、xave は平均繊維径の値である。
好ましくは、本発明のメルトブロー不織布は、地合指数の平均繊維径に対する比が50以下であり、より好ましくは20以上50以下である。地合指数の平均繊維径に対する比が50以下であると、繊維の粗密によるムラが少ないため地合いがより均一となり、安定した高い捕集能力が期待できる。
不織布の地合指数は、微細単位面積当たりの目付の指標であり、繊維配向の均一性を表す指数である。不織布の地合指数は、試料に透過光をあて、画像の濃淡の分布を用いて算出することができる。地合指数が小さいほど、均一性が高いことを示す。また、地合指数が小さいほど、不織布による物質の捕集能力が高い。具体的には、測定に透過式地合計(野村商事株式会社製FMT-M III)を用い、サンプルをセットしない状態で、光源点灯時/消灯時の透過光量をCCDカメラでそれぞれ測定する。続いてA4サイズにカットした不織布をセットした状態で同様に透過光量を測定し、平均透過率、平均吸光度、標準偏差を求める。地合指数は、標準偏差÷平均吸光度×1000で求めることができる。
本発明のメルトブロー不織布の平均繊維径については、特に限定されないが、流体フィルタの用途および耐圧縮性の観点から、5~50μmであることが好ましい。いくつかの実施形態では、平均繊維径は5~40μmである。別のいくつかの実施形態では、平均繊維径は5~25μmである。
本発明のメルトブロー不織布の目付については、特に限定されないが、平均目付の範囲は、好ましくは5~150g/m2であり、より好ましくは15~100g/m2であり、さらに好ましくは20~50g/m2である。強度の向上(強度が向上するとフィルタへの加工がしやすくなる)の観点、及びフィルタ化の際、剛性が高すぎないよう抑え、他材との密着性を向上してより均一な積層を行う観点(より均一な積層は効果的な濾過性能につながる)から、メルトブロー不織布の平均目付を上記範囲とすることが好ましい。目付けが好ましくは20g/m2以上、より好ましくは40g/m2以上であると、50以下の地合指数の平均繊維径に対する比の達成がより容易である。
好ましいメルトブロー不織布のいくつかの実施形態では、平均繊維径が5~25μmの場合に、目付けが20g/m2以上である。好ましいメルトブロー不織布のいくつかの実施形態では、平均繊維径が5~25μmの場合に、目付けが20g/m2以上、50g/m2以下である。
本発明のメルトブロー不織布の厚みについては、特に限定されないが、一枚のメルトブロー不織布当たり、平均厚みで好ましくは0.01~10mmであり、より好ましくは0.1~5mmである。
本発明のメルトブロー不織布の通気度については、特に限定されないが、100mm×100mmのメルトブロー不織布試験片に対して、JIS L1096に従ってフラジール型試験機により測定した値が、1~1700cm3/cm2/秒であることが好ましく、50~1000cm3/cm2/秒がより好ましい。濾過時の圧力抵抗の上昇を抑え、かつ所定の強度の不織布を得る観点から、メルトブロー不織布の通気度を上記範囲とすることが好ましい。
いくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が5μm以上であり、メルトブロー不織布の通気度が50cm3/cm2/秒以上である。別のいくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が5μm~50μmであり、メルトブロー不織布の通気度が50cm3/cm2/秒~800cm3/cm2/秒である。
本発明のメルトブロー不織布の破裂強度については、特に限定されないが、平均繊維径が5~50μm、かつ目付が20g/m2から50g/m2の場合、好ましくは30kPa以上、より好ましくは40kPa以上である。メルトブロー不織布に繊維の粗密ムラがあると、フィルタとして使用した場合に濾過媒体の圧力耐性が低下し、破膜してしまう可能性がある。破裂強度の上限値は特に限定されないが、メルトブロー不織布の加工性低下が懸念されるため、通常、1000kPa以下であることが好ましく、500kPa以下であることがより好ましい。メルトブロー不織布の破裂強度は、JIS P8112:2008に準拠して、株式会社東洋精機製ミューレン破裂試験機M2-LDを用いて3回行った試験で測定した値の平均値とする。
破裂強度は目付が高くなるほど向上するため、特に限定されないが、破裂強度/目付(kPa/(g/m2))は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.0以上2.0以下である。破裂強度が1.0以上であると、メルトブロー不織布の強度が上昇し、割れにくく、潰れにくい。
エアフィルタ用途など、空気中の粒子捕集効率を向上させる目的で、不織布をエレクトレット化して使用しても良い。通常、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布をエレクトレット化する場合、不織布に高電圧を負荷するコロナ荷電法や、不織布に水流による摩擦を負荷する水流荷電法が使用される。また、不織布に生じた帯電状態は、温度、湿度などの影響により時間と共に徐々に消失するため、エレクトレットの性能低下防止として、熱可塑性樹脂中にあらかじめ帯電の維持に効果的な添加剤を練り込んで防止することが一般的である。帯電維持に特に有効な添加剤として、結晶核剤およびヒンダードアミン系光安定剤がある。どちらも帯電維持効果が認められるため、どちらか一方の使用でも良い。一方、単独の使用では添加量が多くなり紡糸性が良くない場合があるため、全体としての添加量を減らした上で同等以上の帯電維持効果をもたらすために2種類以上の添加剤を併用しても良い。
結晶核剤としては、例えば、ソルビトール系核剤、ノニトール系核剤、キリシトール系核剤、リン酸系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、およびカルボン酸金属塩核剤などが挙げられる。
ソルビトール系核剤には、ジベンジリデンソルビトール(DBS)、モノメチルジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4-ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール(p-MDBS))、ジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4-ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール(3,4-DMDBS))などが含まれ、“Millad”(登録商標)3988(ミリケン・ジャパン(株)製)、および“ゲルオール”(登録商標)E-200(新日本理化(株)製)などが挙げられる。
ノニトール系核剤には、例えば、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトールなどが含まれ、“Millad”(登録商標)NX8000(ミリケン・ジャパン(株)製)などが挙げられる。
キシリトール系核剤には、例えば、ビス-1,3:2,4-(5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-2-ナフトアルデヒドベンジリデン)1-アリルキシリトールなどが含まれる。
リン酸系核剤には、例えば、アルミニウム-ビス(4,4’,6,6’-テトラ-tert-ブチル-2,2’-メチレンジフェニル-ホスファート)-ヒドロキシドなどが含まれ、“アデカスタブ”(登録商標)NA-11((株)ADEKA製)や、“アデカスタブ”(登録商標)NA-21((株)ADEKA製)などが挙げられる。
トリアミノベンゼン誘導体核剤には、例えば、1,3,5-トリス(2,2-ジメチルプロパンアミド)ベンゼンなどが含まれ、1,3,5-トリス(2,2-ジメチルプロパンアミド)ベンゼンを含む商品としては“Irgaclear(登録商標)XT386”(BASFジャパン株式会社製)などが挙げられる。
カルボン酸金属塩核剤には、例えば、安息香酸ナトリウムや、1,2-シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩などが含まれる。
結晶核剤の添加量は、核剤の種類により効果および紡糸性が著しく異なるため、一概には言えないがメルトブロー不織布全体の0.005~20質量%が好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)](BASF・ジャパン株式会社製、“Chimassorb”(登録商標)944FDL)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(BASFジャパン(株)製、“Tinuvin”(登録商標)622SF)、および2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(BASFジャパン(株)製、“Tinuvin”(登録商標)144)などが挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤についても、使用する種類によるが、メルトブロー不織布全体の0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
本発明のメルトブロー不織布は、上記の結晶核剤およびヒンダードアミン系光安定剤の他に、熱安定剤、耐候剤および重合禁止剤等の添加剤を添加することもできる。
本発明のメルトブロー不織布のNaCl捕集効率は5%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。
本発明のメルトブロー不織布の圧力損失は、好ましくは30Pa以下、より好ましくは0.1Pa以上20Pa以下である。
NaCl捕集効率と圧力損失は、フィルタ効率自動測定装置(TSI社、モデルAFT8130)を用いて、濾材の有効測定面積100cm2、風速5.3cm/sの条件で測定することができる。
エレクトレット不織布のQF値は、捕集効率と圧力損失の値から、以下の式で求められる。
QF値=-LN[(100-捕集効率(%))/100(%)]/[圧力損失(Pa)]
式中、LNは自然対数、すなわちネイピア数が底の対数を表す。
QF値は0.1以上、好ましくは0.2以上である。
好ましくは、本発明のメルトブロー不織布は、一対の金属ロールから成る0.1mmクリアランスのカレンダーロールにメルトブロー不織布を通過させた後の圧縮による通気度の低下が、通過前の20%以下である。このようなメルトブロー不織布は、圧力耐性があり、圧力が加えられても通気度が減少しにくい。このため、長寿命化、メルトブロー不織布を通る水の通水速度維持につながる。なお、通水速度は、1時間中に単位面積当たりのメルトブロー不織布を通過できる純水の量を表す。カレンダーロールによる圧縮時の温度は特に限定されないが、好ましくは5~40℃であり、より好ましくは20~30℃である。
好ましくは、本発明のメルトブロー不織布は、一対の金属ロールから成る0.1mmクリアランスのカレンダーロールに前記メルトブロー不織布を通過させた後の圧縮による厚みの低下が、通過前の35%以下である。このようなメルトブロー不織布は、圧力耐性があり、圧力が加えられても厚みが減少しにくい。このため、捕集した粒子の保持量が低下しにくく、かつメルトブロー不織布を通る水の通水速度維持につながる。
好ましくは、本発明のメルトブロー不織布は、一対の金属ロールから成る0.1mmクリアランスのカレンダーロールに前記メルトブロー不織布を通過させた後の圧縮による、通気度の低下の厚みの低下に対する比が0.8以下である。このようなメルトブロー不織布は、圧力耐性があり、圧力が加えられたときに通気度と厚みの両方がいずれも同様に減少しにくく、かつ厚みの低下に比べて通気度の低下が起こりにくい。このため、長寿命化、メルトブロー不織布を通る水の通水速度維持につながる。
本発明に係るフィルタ用のメルトブロー不織布を構成するポリマーは、メルトブロー可能な熱可塑性樹脂であれば、特に限定されない。メルトブロー不織布を構成するポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等、好ましくはポリプロピレン等)、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。二種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせて使用する場合、その配合比は限定されない。本発明において、ある熱可塑性樹脂を主体に構成されたメルトブロー不織布とは、当該熱可塑性樹脂を主成分として含むメルトブロー不織布といいかえることもできる。また、本発明において、ある熱可塑性樹脂を主体に構成されたメルトブロー不織布とは、主要な原料として熱可塑性樹脂を用いて得られたメルトブロー不織布を意味し、当該熱可塑性樹脂のみを用いて得られたメルトブロー不織布だけでなく、例えば、当該熱可塑性樹脂を原料の50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上等の割合で用いて得られたメルトブロー不織布も含まれる。本発明におけるメルトブロー不織布においては、ポリオレフィン、ポリエステル、及びポリアミドが好ましく、ポリオレフィンが特に好ましい。
前記ポリオレフィンとしては、プロピレン、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンの単独重合体、及びこれらのα-オレフィンの2種類以上のランダム又はブロック共重合体が挙げられ、ポリプロピレンが好ましい。本発明において不織布の原料としてポリプロピレンを用いる場合、そのメルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、例えば、5~2,500g/10分のメルトフローレート(MFR)を有するポリプロピレンが好ましい。MFRが5g/10分未満のポリプロピレンを用いた場合、溶融混練温度及び吐出温度を比較的高くする必要があり、ポリプロピレン由来の炭化物が発生するおそれがある。またMFRが2,500g/10分を超えると、不織布の伸度が低下し脆くなってしまう。本発明において原料としてポリプロピレンを用いる場合、MFRが10~2,000g/10分が好ましく、15~100g/10分がより好ましい。ポリプロピレンのMFRは、JIS K7210に基づき荷重2.16kg、及び温度230℃で測定することができる。
本発明において原料としてポリプロピレンを用いる場合、当該ポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1×104~5×105が好ましく、5×104~3×105がより好ましい。ポリプロピレンの分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]も特に限定されないが、1.1~10が好ましく、1.5~8がより好ましく、2~6がさらに好ましい。
本発明において原料としてポリプロピレンを用いる実施形態において、ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体を用いてもよく、過半重合割合のプロピレンと他のα-オレフィン(例えば、エチレン、ブテン、ヘキセン、4-メチルペンテン、オクテン等)、不飽和カルボン酸又はその誘導体(例えば、アクリル酸、無水マレイン酸等)、芳香族ビニル単量体(例えば、スチレン等)等とのランダム、ブロック又はグラフト共重合体を用いてもよい。本発明において、これらのポリプロピレンを、単独で使用してもよく、複数種類のポリプロピレンの混合物として使用してもよく、ポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン等)との混合物として使用してもよい。
本発明において原料としてポリエステルを用いる実施形態において、ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましい。
本発明において原料としてポリアミドを用いる実施形態において、ポリアミドとしては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド3(ナイロン3)(登録商標)、ポリアミド4(ナイロン4)(登録商標)、ポリアミド6(ナイロン6)(登録商標)、ポリアミド6-6(ナイロン6-6)(登録商標)、ポリアミド12(ナイロン12)(登録商標)等が挙げられる。
本発明において、上記熱可塑性樹脂には、本発明の効果が得られる範囲において、結晶核剤、艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、親水剤、光安定剤、流動性向上剤等を添加してもよい。
次に、本発明の好ましい実施形態におけるメルトブロー不織布の製造方法を図面を参照して説明するが、当該製造方法は下記に限定されない。図1は、本発明のメルトブロー不織布の製造装置の一例を示す。この製造装置は、原料を投入するホッパー1aと、原料を溶融混練する押出機1bと、押出機1bから押出された溶融ポリマーを下流に送る定量ポンプ2と、溶融ポリマーを繊維状に水平方向に吐出するダイ3aと、ダイ3aから溶融ポリマーと一緒に排出される高温高速エアー用の温度調整ヒーター3bと、ダイ先端に取り付けられた紡糸ノズル3cと、ダイ3aの近傍に設けられた繊維捕集用のコレクタ4aと、コレクタ4a(及びコレクタ4aで捕集した繊維状の溶融ポリマー5a)を吸引するためのサクションブロワー4bと、ダイから吐出された繊維状の溶融ポリマー5aと、繊維状の溶融ポリマー5aがコレクタ4a上で冷却固化してなるメルトブロー不織布5bと、メルトブロー不織布5bを巻き取る巻取機6とからなる。
図2(A)は、図1の装置におけるノズル3c部分の紡糸ノズルの配列を示す部分正面図である。また、図2(B)は、ノズル3cの部分斜視図である。さらに図2(C)は、当該図2(A)に示すノズル3cのX1-X1での断面図である。図2(A)に示す実施形態において、ダイ3aにおける紡糸ノズル3cのノズル孔3dは、孔径D1のノズル孔3d1と、2つのノズル孔3d1の間に設けられた、ノズル孔3d1の孔径D1よりも先端における孔径が小さいノズル孔3d2とからなる。図2(C)において、ノズル孔3d1の長さをL1、直径すなわち孔径をD1とすると、紡糸ノズル3cからの溶融ポリマーの吐出流量を均等にするために、紡糸ノズル孔3d1の長さL1と直径D1との比L1/D1は好ましくは3以上であり、より好ましくは6以上である。図2(C)の実施形態において、ノズル孔3d1の孔径D1は長さ方向に沿って一定である。吐出された前記ポリマーの繊維の絡まりを防止しつつ効率的にメルトブロー不織布を得るために、紡糸ノズル孔3dの密度は、1インチ当たり3~40個が好ましく、5~35個がより好ましい。
2つのノズル孔3d1の間にはn個の列のノズル孔3d2を設けることができ、nは2~4の範囲であることが好ましい(図ではnは3である)。ノズル孔3dの中心間距離、いわゆるピッチ間隔は隣接する孔径同士3d1-3d2の間および3d2-3d2の間では等しい。
小径のノズル孔3d2の長さL2は、大径のノズル孔3d1の長さL1と同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。小径のノズル孔3d2の孔径D2は、先端と基端で異なっており、先端の孔径D2dが基端の孔径D2pよりも小さくなるように構成されている。大径のノズル孔3d1の長さL1及び小径のノズル孔3d2の長さL2は好ましくはそれぞれ0.3~20mmであり、より好ましくは3~10mmである。
ノズル孔3d1,3d2のD1,D2(D2d,D2p)は好ましくは、0.1~2.0mmであり、ノズル孔3d1の孔径D1のノズル3d2の先端の孔径D2dに対する比R(D1/D2d)は例えば1.3~2.0の範囲である。孔径比Rが1.3以上であると、繊維径分布が広がり、孔径比Rが2.0以下であると、孔径の大小差に基づく樹脂の吐出バランスが保たれ、安定した紡糸状態が得られる。例えば、ノズル孔3d1の孔径D1は、0.20~1.20mmであり、ノズル孔3d2の先端の孔径D2dは、0.10~0.80mmである。
本願では、紡糸ノズル3cの小径のノズル孔3d2の径が小さくても樹脂が出にくくなることを防止又は抑制し、繊維径の分布範囲を広げるために、大径のノズル孔3d1の先端にかかる圧力と、小径のノズル孔3d2の先端にかかる圧力とを、従来よりも近づけている。流体力学の当業者に容易に理解されるように、このような圧力は、小径のノズル孔3d2の断面積を、ノズル孔3d2の長さ方向における先端よりも基端で増大するようノズル孔3d2を設計することにより満たされる。
好ましくは、大径のノズル孔3d1の先端にかかる圧力と、小径のノズル孔3d2の先端にかかる圧力とが実質的に等しい。言い換えると、小径のノズル孔3d2の先端から吐出される溶融ポリマーの単位面積当たりの流量と、大径のノズル孔3d1の先端から吐出される溶融ポリマーの単位面積当たりの流量とが実質的に等しい。ここで、圧力が実質的に等しいとは、圧力が等しいか、又は比較する2つの圧力の差が±30%以内の範囲内であることを指す。
いくつかの実施形態において、小径のノズル孔3d2は、長手方向において基端と先端の間で一段階又は複数段階で断面積が小さくなり、よってノズル孔3d2の孔径D2も基端の孔径D2pから先端の孔径D2dまで段階的に減少する。例えば、2段階の場合はL2=L21+L22となり、L21に対する孔径はD2pで一定、L22に対する孔径はD2dで一定となる。別のいくつかの実施形態において、小径のノズル孔3d2は、長手方向において基端と先端の間で連続的に断面積が小さくなり、よってノズル孔3d2の孔径D2も基端の孔径D2pから先端の孔径D2dまで連続的に減少する。後者の構成は、ノズル孔3d2を区画形成する壁を、基端から先端まで、または基端と先端の間の位置から先端まで、テーパ状に狭くすることにより達成することができる。
孔径D2pのD1に対する比R2(D1/D2p)は例えば、0.3~0.95である。
本発明のメルトブロー不織布は、ポリマーを溶融混練する工程、溶融ポリマーを紡糸ノズルから吐出し、別のノズルから加熱空気を噴出してポリマーの繊維を形成する工程を含む方法により製造することができる。前記で説明した装置を参照して説明すると、メルトブロー不織布を製造する場合、前記紡糸ノズル3cから吐出した繊維状の溶融ポリマー5aを空気ノズルから噴出する加熱空気により延伸し、必要な場合には追加のプロセスを行い、メルトブロー不織布を得ることが可能である。得られたメルトブロー不織布に対して、必要に応じて、カレンダー処理、帯電処理、親水化処理等を施しても良い。
(1)溶融混練工程
前記ポリマーの溶融混練温度は(前記ポリマーの融点+50℃)~(前記ポリマーの融点+300℃)が好ましい。ポリプロピレンの場合、溶融混練温度は210~460℃が好ましく、230~420℃がより好ましい。
(2)繊維形成工程
溶融ポリマーを多数の紡糸ノズル3cから吐出するとともに、ノズルから加熱空気を噴出し、前記ポリマーの繊維を形成する。ダイ3a及び加熱空気の温度は(前記ポリマーの融点)~(前記ポリマーの融点+200℃)とするのが好ましい。ポリプロピレンの場合、ダイ3a及び加熱空気の温度は160~360℃が好ましく、190~330℃がより好ましい。ポリマーが紡糸ノズル3cから吐出した直後に急速に固化してしまうことを抑制し、かつ形成されたポリマー繊維の融着を抑制して、繊維径のバラツキを抑える観点から、上記温度範囲が好ましい。
ポリマー繊維を形成するために、紡糸ノズル3c当たりの溶融ポリマーの吐出量は0.1~2g/分/ホール以下が好ましく、0.5~1g/分/ホール以下がより好ましい。繊維化するのに十分な吐出圧力を得ることができ、かつ過剰な吐出圧力でノズルを破損することを避ける観点から、上記紡糸ノズル3c当たりの溶融ポリマーの吐出量は上記範囲が好ましい。
加熱空気の噴出量は紡糸ノズルの幅当たり、1~50Nm3/分/mが好ましく、3~40Nm3/分/mがより好ましい。
本発明のメルトブロー不織布は、繊維径の分布範囲が広く、かつ繊維の粗密によるムラが少ない。従って、本発明のメルトブロー不織布及びその積層体は、流体フィルタ用のフィルタ材として有用である。流体には気体及び液体が含まれる。本発明のメルトブロー不織布及びその積層体は特に、液体フィルタ用のフィルタ材として有用である。
また、本発明は、当該積層体を備える流体用フィルタを提供する。本発明にかかるメルトブロー不織布は、上記性能を有するため、フィルタ材を構成するメルトブロー不織布として前記本発明のメルトブロー不織布のみを用いた場合であっても、繊維径の分布範囲が広く、かつ繊維ムラの少ない、従って物質の捕集能力が高く長寿命な流体用フィルタを得ることができる。一方、本発明の別の実施形態において、濾過の目的等に応じて、フィルタ材を構成するメルトブロー不織布として、本発明のメルトブロー不織布に、その他のメルトブロー不織布を組み合わせて用いてもよく、このようなメルトブロー不織布の組合せを含む積層体を備える液体フィルタも本発明の液体フィルタに包含される。従って、本発明において、「メルトブロー不織布を積層してなる液体フィルタ用の積層体」には、メルトブロー不織布のみを積層してなる液体フィルタ用の積層体だけでなく、積層体の少なくとも1層(好ましくは、積層体を構成するメルトブロー不織布の枚数の半分以上)にメルトブロー不織布を用いているものであれば、メルトブロー不織布以外のメルトブロー不織布を含む積層体も包含される。
以上、本発明のメルトブロー不織布及びその製造方法を好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明は、上記特定の実施形態に限定されない。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
1.メルトブロー不織布の製造
実施例1
メルトブロー製造装置の原料ホッパーにMFR40のホモポリプロピレン樹脂(重量平均分子量1.7×105。以下の実施例、比較例でも同じ)98.97質量%と、添加剤としてヒンダードアミン系光安定剤(BASF製Chimassorb(登録商標)944FDL)1質量%と、結晶核剤(BASF製Irgaclear(登録商標)XT386)0.03質量%を投入し、溶融混練温度を305℃とした。ダイとコレクタの間隔400mmで、290℃の加熱圧縮空気10Nm3/min/mと共に、図2に示す異孔径ノズル(3d1:3d2=1:3、D1=0.6mm、D2d=0.4mm、D2p=0.8mm、L1=L2=8.0mm、以下の実施例でも同じ)より樹脂を大気中に吐出し、吸引量100Nm3/minのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を調節して、目付44g/m2、厚み1.05mm、通気度686cm3/cm2/s、繊維径17.7μmのメルトブロー不織布を得た。
得られたメルトブロー不織布を、特許第6842022号に記載のエレクトレット加工品製造装置を用い、水の供給量0.2g/cm2、搬送速度33cm/秒、水を吸引するまでの時間0.1秒で水を浸透させ、最後に乾燥装置で乾燥してエレクトレット化した。得られたメルトブロー不織布の捕集効率46%、圧力損失0.4Pa、QF値は1.5であった。
実施例2
メルトブロー製造装置の原料ホッパーに実施例1と同様にポリプロピレン樹脂と2種類の添加剤を投入し、溶融混練温度を310℃とした。ダイとコレクタの間隔400mmで、290℃の加熱圧縮空気12Nm3/min/mと共に、実施例1に記載のノズルより樹脂を大気中に吐出し、吸引量100Nm3/minのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を調節して、目付42g/m2、厚み0.61mm、通気度189cm3/cm2/s、繊維径7.4μmのメルトブロー不織布を得た。
得られたメルトブロー不織布を実施例1と同様にエレクトレット化した。得られたメルトブロー不織布の捕集効率82%、圧力損失4.0Pa、QF値は0.43であった。
実施例3
メルトブロー製造装置の原料ホッパーに実施例1と同様にポリプロピレン樹脂と2種類の添加剤を投入し、溶融混練温度を310℃とした。ダイとコレクタの間隔400mmで、290℃の加熱圧縮空気12Nm3/min/mと共に、実施例1に記載のノズルより樹脂を大気中に吐出し、吸引量100Nm3/minのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を調節して、目付21g/m2、厚み0.39mm、通気度271cm3/cm2/s、繊維径8.0μmのメルトブロー不織布を得た。
得られたメルトブロー不織布を実施例1と同様にエレクトレット化した。得られたメルトブロー不織布の捕集効率72%、圧力損失1.9Pa、QF値は0.67であった。
実施例4
メルトブロー製造装置の原料ホッパーに実施例1と同じMFR40のホモポリプロピレン樹脂(重量平均分子量1.7×105)のみを投入し、溶融混練温度を305℃とした。ダイとコレクタの間隔400mmで、290℃の加熱圧縮空気8Nm3/min/mと共に、実施例1に記載のノズルより樹脂を大気中に吐出し、吸引量100Nm3/minのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を調節して、目付47g/m2、厚み1.10mm、通気度713cm3/cm2/s、繊維径22.9μmのメルトブロー不織布を得た。
比較例1
メルトブロー製造装置の原料ホッパーに実施例1と同じホモポリプロピレン樹脂のみを投入し、溶融混練温度を308℃とした。ダイとコレクタの間隔400mmで、290℃の加熱圧縮空気9Nm3/min/mと共に、単一孔径ノズル(D=0.9mm、L=8.0mm)より樹脂を大気中に吐出し、吸引量100Nm3/minのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を調節して、目付45g/m2、厚み1.10mm、通気度645cm3/cm2/s、繊維径18.6μmのメルトブロー不織布を得た。
比較例2
メルトブロー製造装置の原料ホッパーに実施例1と同じホモポリプロピレン樹脂のみを投入し、溶融混練温度を308℃とした。ダイとコレクタの間隔400mmで、290℃の加熱圧縮空気11Nm3/min/mと共に、異孔径ノズル(3d1:3d2=1:3、D1=0.6mm、D2=0.4mm、L1=L2=6.0mm)より樹脂を大気中に吐出し、吸引量100Nm3/minのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を調節して、目付47g/m2、厚み1.20mm、通気度801cm3/cm2/s、繊維径14.5μmのメルトブロー不織布を得た。
比較例3
メルトブロー製造装置の原料ホッパーに実施例1と同じホモポリプロピレン樹脂のみを投入し、溶融混練温度を310℃とした。ダイとコレクタの間隔350mmで、290℃の加熱圧縮空気12Nm3/min/mと共に、比較例1と同じ単一孔径ノズルより樹脂を大気中に吐出し、吸引量100Nm3/minのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を調節して、目付40g/m2、厚み0.37mm、通気度88cm3/cm2/s、繊維径5.2μmのメルトブロー不織布を得た。
比較例4
メルトブロー製造装置の原料ホッパーに実施例1と同じMFR40のホモポリプロピレン樹脂(重量平均分子量1.7×105)99.99質量%と、添加剤として結晶核剤(BASF製 Irgaclear(登録商標)XT386)0.01質量%を投入し、溶融混練温度を308℃とした。ダイとコレクタの間隔350mmで、290℃の加熱圧縮空気11Nm3/min/mと共に、比較例1と同じ単一孔径ノズルより樹脂を大気中に吐出し、吸引量100Nm3/minのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を調節して、目付20g/m2、厚み0.30mm、通気度220cm3/cm2/s、繊維径5.5μmのメルトブロー不織布を得た。
得られたメルトブロー不織布を実施例1と同様にエレクトレット化した。得られたメルトブロー不織布の捕集効率48%、圧力損失3.5Pa、QF値は0.19であった。
比較例5
メルトブロー製造装置の原料ホッパーに実施例1と同様にポリプロピレン樹脂と2種類の添加剤を投入し、溶融混練温度を305℃とした。ダイとコレクタの間隔400mmで、290℃の加熱圧縮空気12Nm3/min/mと共に、比較例1と同じ単一孔径ノズルより樹脂を大気中に吐出し、吸引量100Nm3/minのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を調節して、目付20g/m2、厚み0.27mm、通気度220cm3/cm2/s、繊維径7.6μmのメルトブロー不織布を得た。
得られたメルトブロー不織布を実施例1と同様にエレクトレット化した。得られたメルトブロー不織布の捕集効率85%、圧力損失6.4Pa、QF値は0.30であった。
各種物性値の測定及び評価
次に、得られた実施例1-4、比較例1-5のメルトブロー不織布の各物性値を下記のように測定、算出した。結果を表1に示す。
(1)平均目付
平均目付は、100mm×100mmの10枚のメルトブロー不織布試験片に対して、温度23℃及び湿度50%における水分平衡状態の質量(g)を測定し、平均することにより求めた。
(2)厚み
100mm×100mmのメルトブロー不織布試験片に対して、直径2.5cm、荷重7g/cm2の測定子を付けたリニアゲージにより試験片の重心に当たる中央部分の厚みを測定し、10枚の測定値を平均することにより求めた。
(3)通気度
通気度は100mm×100mmの10枚のメルトブロー不織布試験片に対して、JIS L1096に従ってフラジール型試験機により測定し、平均することにより求めた。通気度が高い不織布は測定機の上限を超えるため、1枚当たり100cm3/cm2/s以上の場合は、100mm×100mmの試験片3枚を単純積層して通気度を測定した。測定数は10組とし、3枚積層での平均値を求めた。表1には3枚積層による平均値を3倍した値を記載した。
(4)平均繊維径
平均繊維径は、電子顕微鏡写真にて1画像当たり25本程度の繊維が入る倍率にて、4枚の画像を撮影し、合計100本の繊維を、直径0.1μmオーダーまで繊維径を測定し、それらを平均して求めた。
繊維径割合は、繊維総数に対する特定の繊維径を有する繊維の数の割合をパーセントで示したものである。
メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.25倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合は、メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真から任意に繊維100本を選択し、各繊維の繊維径を直径0.1μmオーダーまで測定して、100本の繊維の平均繊維径を算出すると共に、平均繊維径の0.25倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の本数を100で除して100を乗じた値である。
メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.5倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合は、メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真から任意に繊維100本を選択し、各繊維の繊維径を直径0.1μmオーダーまで測定して、100本の繊維の平均繊維径を算出すると共に、平均繊維径の0.5倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の本数を100で除して100を乗じた値である。
メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合は、メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真から任意に繊維100本を選択し、各繊維の繊維径を直径0.1μmオーダーまで測定して、100本の繊維の平均繊維径を算出すると共に、平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の本数を100で除して100を乗じた値である。
メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合は、メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真から任意に繊維100本を選択し、各繊維の繊維径を直径0.1μmオーダーまで測定して、100本の繊維の平均繊維径を算出すると共に、平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の本数を100で除して100を乗じた値である。
(5)地合指数
地合指数は、A4サイズの3枚のメルトブロー不織布試験片に対して、地合計(野村商事製FMT-M III)を用いて測定し、平均することにより求めた。
(6)破裂強度
破裂強度は、JIS P8112:2008「紙―破裂強さ試験方法」に準拠し、株式会社東洋精機製ミューレン破裂試験機M2-LDを用いて3回行った試験で測定した値の平均値とした。
(7)NaCl捕集効率と圧力損失
NaCl捕集効率と圧力損失は、A4サイズの3枚のメルトブロー不織布試験片に対して、フィルタ効率自動測定装置(TSI社、モデルAFT8130)を用いて、濾材の有効測定面積100cm2、風速5.3cm/sの条件で測定し、平均することにより求めた。
(8)QF値
QF値は、捕集効率と圧力損失の値から、以下の式で求められる。
QF値=-LN[(100-捕集効率(%))/100(%)]/[圧力損失(Pa)]
式中、LNは自然対数である。
(9)0.1mmクリアランス加工後の厚み
実施例1-4及び比較例1-5の各メルトブロー不織布の厚み測定は、一対の金属ロールから成る0.1mmクリアランスの25℃のカレンダーロールに各メルトブロー不織布を通過させる前と後に行った。厚みの測定は上記(2)厚みの記載に従った。
厚み減少率(D)は、(カレンダーロール通過前のメルトブロー不織布の厚み-カレンダーロール通過後のメルトブロー不織布の厚み)/(カレンダーロール通過前のメルトブロー不織布の厚み)*100より計算した。
(10)0.1mmクリアランス加工後の通気度
実施例1-4及び比較例1-5の各メルトブロー不織布の通気度測定は、一対の金属ロールから成る0.1mmクリアランスの25℃のカレンダーロールに各メルトブロー不織布を通過させる前と後に行った。通気度の測定は上記(3)通気度の記載に従った。
通気減少率(T)は、(カレンダーロール通過前のメルトブロー不織布の通気度-カレンダーロール通過後のメルトブロー不織布の通気度)/(カレンダーロール通過前のメルトブロー不織布の通気度)*100より計算した。
表1に示されるように、本発明の実施例1-4のメルトブロー不織布は、繊維径分布が広く、細繊維と太繊維が均一に分散し、繊維ムラが少ない。このようなメルトブロー不織布はフィルタとして使用した場合、高い粒子捕集性能、及び長寿命を期待することができる。

Claims (10)

  1. 繊維径の異なる複数の熱可塑性樹脂繊維を含むメルトブロー不織布であって、
    熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径が5μm以上であり、平均繊維径の0.5倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が10%以上である、メルトブロー不織布。
  2. メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の0.75倍以下の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が30%以上である、請求項1に記載のメルトブロー不織布。
  3. メルトブロー不織布中の熱可塑性樹脂繊維のうちの、平均繊維径の2.5倍以上の繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維の割合が1%以上である、請求項1又は2に記載のメルトブロー不織布。
  4. 前記熱可塑性樹脂繊維の樹脂成分が、ポリオレフィン、ポリエステル及びポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のメルトブロー不織布。
  5. 一対の金属ロールから成る0.1mmクリアランスのカレンダーロールに前記メルトブロー不織布を通過させた後の圧縮による通気度の低下が、通過前の20%以下である請求項1に記載のメルトブロー不織布。
  6. 一対の金属ロールから成る0.1mmクリアランスのカレンダーロールに前記メルトブロー不織布を通過させた後の圧縮による厚みの低下が、通過前の35%以下である請求項1に記載のメルトブロー不織布。
  7. 一対の金属ロールから成る0.1mmクリアランスのカレンダーロールに前記メルトブロー不織布を通過させた後の圧縮による、通気度の低下の厚みの低下に対する比が0.8以下である請求項1に記載のメルトブロー不織布。
  8. 破裂強度の目付に対する比(kPa/(g/m2))が1.0以上である請求項1に記載のメルトブロー不織布。
  9. 添加剤としてヒンダードアミン系光安定剤および/または結晶核剤を含むエレクトレット不織布であり、QF値が0.2以上である請求項1に記載のメルトブロー不織布。
  10. 請求項1~9のいずれかに記載のメルトブロー不織布を備えるフィルタ。
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